(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】遠隔運転システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241029BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241029BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241029BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241029BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241029BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
H04N7/18 J
G06T1/00 330Z
G16Y10/40
G16Y40/10
(21)【出願番号】P 2021146252
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 康佑
(72)【発明者】
【氏名】須田 理央
(72)【発明者】
【氏名】玉川 周一
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-009823(JP,A)
【文献】特開平10-145777(JP,A)
【文献】特開2019-029922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G05D 1/43
G08G 1/09
H04N 7/18
G06T 1/00
G16Y 10/40
G16Y 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の動作を遠隔で操作するための遠隔運転システムであって、
前記移動体に搭載された複数カメラによって撮像されたカメラ画像情報と、前記移動体の走行状況を示す走行状況情報及び前記移動体の乗員の音声情報の少なくとも一方の情報と、が記録された1又は複数の記憶装置と、
1又は複数のプロセッサと、
表示装置と
を備え、
前記カメラ画像情報は、メインカメラ画像及びサブカメラ画像を含み、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記走行状況情報及び前記音声情報の少なくとも一方に基づき、前記サブカメラ画像の透過率を制御することにより補正される透過率補正画像を生成し、
前記透過率補正画像を前記メインカメラ画像に重畳表示する重畳画像を生成し、
前記重畳画像を前記表示装置に表示する
遠隔運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔運転システムであって、
前記サブカメラ画像は、サイドカメラ画像及び後方カメラ画像を含み、
前記走行状況情報は、速度情報を含み、
前記1又は複数のプロセッサは、前記サブカメラ画像の透過率の制御において、
前記速度情報の速度が現在の値から小さくなるにつれて、線形的、非線形的、又は段階的に、前記サイドカメラ画像又は前記後方カメラ画像の透過率を高くなるように設定し、
前記速度情報の速度が現在の値から大きくなるにつれて、線形的、非線形的、又は段階的に、前記サイドカメラ画像又は前記後方カメラ画像の透過率を低くなるように設定する
遠隔運転システム。
【請求項3】
請求項1に記載の遠隔運転システムであって、
前記サブカメラ画像は、サイドカメラ画像を含み、
前記走行状況情報は、ウインカー指示方向の情報を含み、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記ウインカー指示方向の情報と同じ方向の前記サイドカメラ画像の透過率を高くなるように設定する
遠隔運転システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遠隔運転システムであって、
前記サブカメラ画像は、室内カメラ画像を含み、
前記1又は複数のプロセッサは、前記サブカメラ画像の透過率の制御において、
前記音声情報が前記乗員からの呼びかけ音声を含むか否かを判定し、
前記音声情報が前記乗員からの呼びかけ音声を含むと判定した場合、
前記室内カメラ画像の透過率を低くなるように設定する
遠隔運転システム。
【請求項5】
コンピュータにより移動体の動作を遠隔で操作するための遠隔運転プログラムであって、
前記移動体に搭載された複数カメラによって撮像されたメインカメラ画像及びサブカメラ画像を含むカメラ画像情報と、前記移動体の走行状況を示す走行状況情報及び前記移動体の乗員の音声情報の少なくとも一方の情報と、を取得する処理と、
前記走行状況情報及び前記音声情報の少なくとも一方に基づき、前記サブカメラ画像の透過率を制御したことにより補正される透過率補正画像を生成する処理と、
前記透過率補正画像を前記メインカメラ画像に重畳表示する重畳画像を生成する処理と、
前記重畳画像を表示装置に表示する処理と
を前記コンピュータによって実行させる
遠隔運転プログラム。
【請求項6】
移動体の動作を遠隔で操作するための遠隔運転方法であって、
前記移動体に搭載された複数カメラによって撮像されたメインカメラ画像及びサブカメラ画像を含むカメラ画像情報と、前記移動体の走行状況を示す走行状況情報及び前記移動体の乗員の音声情報の少なくとも一方の情報と、を取得する処理と、
前記走行状況情報及び前記音声情報の少なくとも一方に基づき、前記サブカメラ画像の透過率を制御したことにより補正される透過率補正画像を生成する処理と、
前記透過率補正画像を前記メインカメラ画像に重畳表示する重畳画像を生成する処理と、
前記重畳画像を表示装置に表示する処理と
を含む
遠隔運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の動作を遠隔で運転する技術に関する。特に、本発明は、移動体に搭載された複数のカメラによって撮像された画像情報において、画像の一部に重畳表示される画像の透過率を制御し、移動体の動作を遠隔で運転する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像に重畳アイテムを重畳して表示する表示制御に関する技術が開示されている。この技術では、画像の拡大率が高くなるほど重畳アイテムの透過率を高くする制御を行うことで、重畳アイテムによって見えない下の画像を見やすくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両、ロボット等の移動体の動作を遠隔で支援するためには、移動体に搭載されたカメラによって撮像された画像が有用である。カメラによって撮像された画像は、遠隔運転システムの情報処理装置内の記録装置に記録される。遠隔オペレータは、遠隔運転システムの表示装置に表示される画像をみて、移動体の周囲の状況を把握し、移動体の動作を遠隔で運転する。ここで、表示装置に表示される画像とは、前方を見るために撮像されたメインカメラ画像に、側方や後方等を見るために撮像されたサブカメラ画像を重畳表示した画像のことである。
【0005】
メインカメラ画像の一部に重畳表示されたサブカメラ画像が常に表示されていると、重畳表示されているメインカメラ画像の一部が死角となることから次の問題がある。例えば、側方を見るために撮像したサブカメラ画像をメインカメラ画像の下部に常に重畳表示した場合、交差点左折時等において、車両近傍付近を確認できない。従って、移動体の走行状況に応じてサブカメラ画像の重畳表示の態様を変更するための改良が望まれる。
【0006】
本発明の1つの目的は、移動体の遠隔運転を行う場合において、移動体の走行状況に応じてメインカメラの画像の一部に重畳表示されるサブカメラ画像の表示態様を変更することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、移動体の動作を遠隔で操作するための遠隔運転システムに関連する。
遠隔運転システムは、
移動体に搭載された複数カメラによって撮像されたカメラ画像情報と、移動体の走行状況を示す走行状況情報及び移動体の乗員の音声情報の少なくとも一方の情報と、が記録された1又は複数の記憶装置と、
1又は複数のプロセッサと、
表示装置と
を備える。
カメラ画像情報は、メインカメラ画像及びサブカメラ画像を含む。
1又は複数のプロセッサは、走行状況情報及び音声情報の少なくとも一方に基づき、サブカメラ画像の透過率を制御することにより補正される透過率補正画像を生成する。
1又は複数のプロセッサは、透過率補正画像をメインカメラ画像に重畳表示する重畳画像を生成する。
そして、1又は複数のプロセッサは、重畳画像を表示装置に表示する。
【0008】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
サブカメラ画像はサイドカメラ画像及び後方カメラ画像を含み、走行状況情報は速度情報を含む。
1又は複数のプロセッサは、サブカメラ画像の透過率の制御において、速度情報の速度が現在の値から小さくなるにつれて、線形的、非線形的、又は段階的に、サイドカメラ画像又は後方カメラ画像の透過率を高くなるように設定する。
そして、1又は複数のプロセッサは、サブカメラ画像の透過率の制御において、速度情報の速度が現在の値から大きくなるにつれて、線形的、非線形的、又は段階的に、サイドカメラ画像又は後方カメラ画像の透過率を低くなるように設定する。
【0009】
第3の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
サブカメラ画像は、サイドカメラ画像を含み、走行状況情報は、ウインカー指示方向の情報を含む。
1又は複数のプロセッサは、更に、ウインカー指示方向の情報と同じ方向のサイドカメラ画像の透過率を高くなるように設定する。
【0010】
第4の観点は、第1の観点乃至第3の観点のいずれかの観点に加えて、次の特徴を更に有する。
サブカメラ画像は、室内カメラ画像を含む。
1又は複数のプロセッサは、サブカメラ画像の透過率の制御において、音声情報が乗員からの呼びかけ音声を含むか否かを判定する。
そして、1又は複数のプロセッサは、音声情報が乗員からの呼びかけ音声を含むと判定した場合、室内カメラ画像の透過率を低くなるように設定する。
【0011】
第5の観点は、移動体の動作を遠隔で操作するための遠隔運転プログラムに関連する。
遠隔運転プログラムは、
移動体に搭載された複数カメラによって撮像されたメインカメラ画像及びサブカメラ画像を含むカメラ画像情報と、移動体の走行状況を示す走行状況情報及び移動体の乗員の音声情報の少なくとも一方の情報と、を取得する処理と、
走行状況情報及び音声情報の少なくとも一方に基づき、サブカメラ画像の透過率を制御したことにより補正される透過率補正画像を生成する処理と、
透過率補正画像をメインカメラ画像に重畳表示する重畳画像を生成する処理と、
重畳画像を表示装置に表示する処理と
をコンピュータによって実行させる。
【0012】
第6の観点は、移動体の動作を遠隔で操作するための遠隔運転方法に関連する。
遠隔運転方法は、
移動体に搭載された複数カメラによって撮像されたメインカメラ画像及びサブカメラ画像を含むカメラ画像情報と、移動体の走行状況を示す走行状況情報及び移動体の乗員の音声情報の少なくとも一方の情報と、を取得する処理と、
走行状況情報及び音声情報の少なくとも一方に基づき、サブカメラ画像の透過率を制御したことにより補正される透過率補正画像を生成する処理と、
透過率補正画像をメインカメラ画像に重畳表示する重畳画像を生成する処理と、
重畳画像を表示装置に表示する処理と
を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1の観点によれば、走行状況情報及び音声情報の少なくとも一方の情報に基づいて、サブカメラ画像の透過率を制御する。更に、サブカメラ画像に対して透過率を制御したことにより補正した透過率補正画像をメインカメラ画像の一部に重畳表示した重畳画像を生成する。そして、重畳画像が表示装置に表示される。これにより、遠隔オペレータは、走行状況及び乗員の音声の少なくとも一方に応じて移動体の周囲の状況を正確に把握しやすくなる。このことは、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。
【0014】
第2の観点によれば、サイドカメラ画像又は後方カメラ画像は、速度情報の速度に応じて透過率の制御が行われる。これにより、遠隔オペレータは、移動体の周囲の状況を更に正確に把握しやすくなる。このことは、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。
【0015】
第3の観点によれば、サイドカメラ画像は、ウインカー指示方向の情報に基づいて透過率の設定が行われる。これにより、遠隔オペレータは、移動体の周囲の状況を更に正確に把握しやすくなる。このことは、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。
【0016】
第4の観点によれば、室内カメラ画像の透過率は、音声情報に乗員からの呼びかけ音声が含まれる場合に低くなるように設定される。これにより、遠隔オペレータは、移動体室内で異常事態が発生していないかを正確に把握しやすくなる。このことは、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。
【0017】
第5の観点によれば、第1の観点と同じ効果が得られる。
【0018】
第6の観点によれば、第1の観点と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの記憶装置に記録された各種情報を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの機能例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの速度情報に基づいた透過率制御部による処理を示すグラフである。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムのウインカー情報に基づいた透過率制御部による処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの音声情報に基づいた透過率制御部による処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの画像重畳部による処理結果例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの速度情報に基づいて透過率制御部の処理を実施したときの表示装置における表示例を示した図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムのウインカー情報に基づいて透過率制御部の処理を実施したときの表示装置における表示例を示した図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る遠隔運転システムの音声情報に基づいて透過率制御部の処理を実施したときの表示装置における表示例を示した図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係る遠隔運転システム構成例を示すブロック図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係る遠隔運転システムの機能例を示すブロック図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態に係る遠隔運転システムのオペレータ操作情報に基づいた透過率制御部による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る遠隔運転システム、遠隔運転プログラム及び遠隔運転方法について説明する。
【0021】
1.第1の実施の形態
1-1.構成例
本実施の形態に係る遠隔運転システムは、移動体の動作を遠隔で操作するためのものである。
図1は、本実施の形態に係る遠隔運転システム10の構成例を示すブロック図である。遠隔運転システム10は、情報処理装置20及び表示装置30を含んでいる。
【0022】
情報処理装置20は、各種情報処理を行う。情報処理装置20は、1又は複数のプロセッサ40(以下、単にプロセッサ40と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置50(以下、単に記憶装置50)を含んでいる。プロセッサ40は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ40は、CPUを含んでいる。記憶装置50は、カメラ画像情報60、走行状況情報70及び音情報80の各種情報を格納する。記憶装置50としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD、等が例示される。プロセッサ40がコンピュータプログラムである遠隔運転プログラムを実行することによって、情報処理装置20の機能が実現される。遠隔運転プログラムは、記憶装置50に格納される。遠隔運転プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。遠隔運転プログラムは、ネットワーク経由で提供されてもよい。
【0023】
表示装置30は、各種情報を表示する。表示装置30としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、タッチパネル、等が例示される。
【0024】
図2は、記憶装置に記録されたカメラ画像情報60、走行状況情報70及び音情報80の各種情報の詳細を示すブロック図である。
【0025】
カメラ画像情報60は、メインカメラ画像100及びサブカメラ画像200を含んでいる。更に、メインカメラ画像100には、左メインカメラ画像110、正面メインカメラ画像120及び右メインカメラ画像130を含んでおり、サブカメラ画像200には、サイドカメラ画像210(サイドカメラ画像210は左サイドカメラ画像211及び右サイドカメラ画像212を含む)、後方カメラ画像220及び室内カメラ画像230を含んでいる。ここで、メインカメラ画像100とは、移動体の前方の状況を見るために移動体に搭載された複数カメラから取得した画像のことである。サブカメラ画像200とは、移動体の側方、後方及び移動体の室内の状況を見るために、移動体に搭載された複数カメラから取得した画像のことである。
【0026】
走行状況情報70は、速度情報300及びウインカー指示方向の情報310を含んでいる。速度情報300とは、移動体の車速情報のことであり、ウインカー指示方向の情報310とは、移動体を遠隔運転するオペレータ(遠隔オペレータ)が方向指示器を操作した場合に、この方向指示器に入力される移動体の進むべき方向(左方向又は右方向)の情報のことである。
【0027】
音情報80は、移動体の室内及び室外の音の情報である。音情報80は、移動体の乗員(即ち、移動体のドライバ、及びドライバ以外の搭乗者)の音声情報320を含んでいる。音声情報320としては、乗員間で行われる会話の音声、室内外の状況に関して乗員が発する音声、オペレータに呼びかけるために乗員が発する音声、等が含まれる。
【0028】
1-2.情報処理の詳細
表示装置30に表示される画像とは、メインカメラ画像100の一部にサブカメラ画像200を重畳表示した画像のことである。メインカメラ画像100の一部にサブカメラ画像200を重畳表示すると、メインカメラ画像100の一部は死角となる。死角となっている状態での交差点左折等は、遠隔運転による移動体の安全性を低下させる。そこで、移動体の走行状況に応じて、メインカメラ画像100の一部に重畳されるサブカメラ画像200を補正してメインカメラ画像100の一部を見えるようにする。本実施の形態に係る情報処理は、以下に説明されるような特徴的な処理を含む。
【0029】
図3は、本実施の形態に係る情報処理に関連する機能例を示すブロック図である。遠隔運転システム10の情報処理装置20は、機能ブロックとして、情報入力部400、画像透過率制御部410、画像重畳部420、及び表示処理部430を備えている。これらの機能ブロックは、プロセッサ40が遠隔運転プログラムを実行することによって実現される。
【0030】
情報入力部400は、記憶装置50に記録されている各種情報を入力する処理を行う。各種情報のうち、サブカメラ画像200、速度情報300、ウインカー指示方向の情報310及び音声情報320は画像透過率制御部410に入力され、メインカメラ画像100は画像重畳部420に入力される。
【0031】
画像透過率制御部410は、入力された速度情報300、ウインカー指示方向の情報310及び音声情報320の少なくとも一方に基づいて、入力されたサブカメラ画像200に対して、透過率を制御することによって補正したサブカメラ画像200の透過率補正画像500を生成する。速度情報300、ウインカー指示方向の情報310及び音声情報320の各種情報に基づいた画像透過率制御部410の処理については詳細を後述する。
【0032】
画像重畳部420は、画像透過率制御部410で生成された透過率補正画像500をメインカメラ画像100の一部に重畳表示した重畳画像510を生成する。
【0033】
表示処理部430は、画像重畳部420で生成された重畳画像510を表示装置30に出力するための処理を行う。
【0034】
図4は、速度情報300に基づいたサブカメラ画像200のサイドカメラ画像210及び後方カメラ画像220に対する画像透過率制御部410の処理の例を示すグラフである。速度情報300の速度が現在の値から小さくなるにつれて、線形的、非線形的、又は段階的に、サイドカメラ画像210及び後方カメラ画像220の透過率を高くなるように設定し、速度情報300の速度が現在の値から大きくなるにつれて、線形的、非線形的、又は段階的に、サイドカメラ画像210及び後方カメラ画像220の透過率を低くなるように設定する。
【0035】
透過率の設定により補正されるサイドカメラ画像210及び後方カメラ画像220の透過率補正画像500を生成し、透過率補正画像500を画像重畳部420に出力する。
【0036】
図5は、ウインカー指示方向の情報310に基づいたサブカメラ画像200のサイドカメラ画像210に対する画像透過率制御部410の処理を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS100において、画像透過率制御部410は、入力されるウインカー指示方向の情報310において、ウインカー指示方向の左方向又は右方向の情報が含まれているか否かを判定する。
【0038】
ウインカー指示方向の左方向又は右方向の情報が含まれていると判定された場合(ステップS100;Yes)、処理は、ステップS110に進む。それ以外の場合(ステップS100;No)、処理は、ステップS120に進む。
【0039】
ステップS110において、画像透過率制御部410は、入力されるサイドカメラ画像210に対して、ウインカー指示方向の情報310と同じ方向のサイドカメラ画像210の透過率を高くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。ウインカー指示方向の情報310と異なる方向のサイドカメラ画像210に対しては透過率を低くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0040】
ステップS120において、画像透過率制御部410は、入力されるサイドカメラ画像210に対して、サイドカメラ画像210の透過率を低くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0041】
ステップS130において、画像透過率制御部410は、透過率補正画像500を表示処理部430に出力する。
【0042】
図6は、音声情報320に基づいた室内カメラ画像230に対する画像透過率制御部410の処理を示すフローチャートである。
【0043】
S200において、画像透過率制御部410は、入力される音声情報320に基づいて、音声情報320が含まれているか否かを判定する。
【0044】
音声情報320が含まれていると判定された場合(ステップS200;Yes)、処理は、ステップS210に進む。それ以外の場合(ステップS200;No)、処理は、ステップS230に進む。
【0045】
ステップS210において、画像透過率制御部410は、音声情報320が乗員からの呼びかけ音声を含むか否かを判定する。
【0046】
音声情報320が乗員からの呼びかけ音声を含むと判定された場合(ステップS210;Yes)、処理は、ステップS220に進む。それ以外の場合(ステップS210;No)、処理は、ステップS230に進む。
【0047】
ステップS220において、画像透過率制御部410は、入力される室内カメラ画像230に対して、透過率を低くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0048】
ステップS230において、画像透過率制御部410は、入力される室内カメラ画像230に対して、透過率を高くなるように設定する。透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0049】
移動体が停止している時は、室内カメラ画像230の状況を把握できるようにするため、音声情報320に関係なく、ステップS230の処理を行う。移動体が走行している時は、音声情報320が乗員からの呼びかけ音声を含むと判定された場合(ステップS210;Yes)を除き、室内カメラ画像230の状況が把握できなくてもよいため、速度情報300の速度が大きくなるにつれて、室内カメラ画像230の透過率を高くなるように設定し、室内カメラ画像230が見えなくなる状態とする。
【0050】
ステップS240において、画像透過率制御部410は、透過率補正画像500を表示処理部430に出力する。
【0051】
1-3.重畳画像の表示例
図7は、画像重畳部420で生成される重畳画像510の表示例である。メインカメラ画像100の所定の位置に画像透過率制御部410で生成される透過率補正画像500を重畳表示した重畳画像510である。具体的に、左メインカメラ画像110に左サイドカメラ画像211の透過率補正画像500を重畳表示し、正面メインカメラ画像120に後方カメラ画像220及び室内カメラ画像230の透過率補正画像500を重畳表示し、右メインカメラ画像130に右サイドカメラ画像212の透過率補正画像500を重畳表示したものである。
【0052】
図8は、速度情報300に基づいてサブカメラ画像200のサイドカメラ画像210及び後方カメラ画像220を透過率制御したときの表示例である。具体的に、サイドカメラ画像210の左サイドカメラ画像211及び後方カメラ画像220に対して透過率制御した場合の表示を例として挙げた。速度情報300の速度が小さくなるにつれて、左サイドカメラ画像211及び後方カメラ画像220の透過率は高くなるように設定されるため、左メインカメラ画像110において重畳表示されている部分が見えるようになる。一方、速度情報300の速度が大きくなるにつれて、左サイドカメラ画像211及び後方カメラ画像220の透過率は低くなるように設定されるため、左サイドカメラ画像211及び後方カメラ画像220が見えるようになる。
【0053】
図9は、ウインカー指示方向の情報310に基づいてサブカメラ画像200のサイドカメラ画像210を透過率制御したときの表示例である。ウインカー指示方向の情報310が有る場合、ウインカー指示方向と同じ方向のサイドカメラ画像210(左サイドカメラ画像211又は右サイドカメラ画像212)の透過率は高くなるように設定されるため、ウインカー指示方向と同じ方向のメインカメラ画像100(左メインカメラ画像110又は右メインカメラ画像130)が見えるようになる。一方、ウインカー指示方向の情報310が無い場合、サイドカメラ画像210の透過率は低くなるように設定されるため、サイドカメラ画像210(左サイドカメラ画像211又は右サイドカメラ画像212)が見えるようになる。
【0054】
図10は、音声情報320に基づいて室内カメラ画像230を透過率制御したときの表示例である。音声情報320が有り、かつ、乗員からの呼びかけ音声がこれに含まれる場合、室内カメラ画像230の透過率は低くなるように設定されるため、室内カメラ画像230が見えるようになる。一方、音声情報320が有り、かつ、乗員の呼びかけ音声がこれに含まれない場合、又は音声情報320が無い場合、室内カメラ画像230の透過率は高くなるように設定されるため、メインカメラ画像100の正面メインカメラ画像120が見えるようになる。
【0055】
移動体が停止している時は、室内カメラ画像230の状況を把握できるようにするため、音声情報320に関係なく、透過率を低くなるように設定し、室内カメラ画像230が見える状態とするが、移動体が走行している時は、乗員からの呼びかけ音声が含まれる場合を除き、室内カメラ画像230の状況が把握できなくてもよいため、速度情報300の速度が大きくなるにつれて、室内カメラ画像230の透過率を高くなるように設定し、室内カメラ画像230が見えなくなる状態とする。
【0056】
1-4.効果
遠隔運転操作において、画像透過率制御が行われている場合、オペレータは、移動体の周囲の状況を正確に把握しやすくなる。従って、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。このように、本実施の形態によれば、遠隔運転操作において、画像透過率制御が行われた場合であっても、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。
【0057】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態は、情報処理の詳細の内容が第1の実施の形態と異なる。遠隔運転システム10の基本構成は、第1の実施の形態の場合と同じである。第1の実施の形態と重複する説明は適宜省略される。
【0058】
第2の実施の形態では、ウインカー指示方向の情報310に基づいたサイドカメラ画像210の画像透過率制御部410について着目する。入力されるウインカー指示方向の情報310において、ウインカー指示方向の左方向又は右方向の情報が含まれている場合、ウインカー指示方向と同じ方向のサイドカメラ画像210の透過率が高くなるため、サイドカメラ画像210が見えにくくなる。すなわち、移動体の側方の状況を正確に把握しづらくなる。その結果、交差点左折時等において巻き込み事故等、遠隔運転による移動体の安全性を低下させる。そこで、第2の実施の形態では、情報処理の詳細において、サイドカメラ画像210の透過率をオペレータの操作でも補正できるようにする。
【0059】
図11は、第2の実施の形態に係る遠隔運転システム10の構成例を示すブロック図である。遠隔運転システム10は、情報処理装置20、表示装置30及び入力装置90を含んでいる。入力装置90は、遠隔オペレータからの入力を受け付けるためのインタフェースである。入力装置90としては、タッチパネル、キーボード、マウス、等が例示される。情報処理装置20及び表示装置30は、第1の実施の形態の場合と同じである。
【0060】
2-1.構成例
図12は、第2の実施の形態に係る情報処理に関連する機能例を示すブロック図である。遠隔運転システム10の情報処理装置20は、機能ブロックとして、情報入力部400、画像透過率制御部410、画像重畳部420、及び表示処理部430を備えている。これらの機能ブロックは、プロセッサ40が遠隔運転プログラムを実行することによって実現される。画像重畳部420及び表示処理部430は、第1の実施の形態の場合と同じである。
【0061】
情報入力部400は、記憶装置50に記録されている各種情報を入力する処理を行う。各種情報のうち、サブカメラ画像200、速度情報300、ウインカー指示方向の情報310、音声情報320及びオペレータ操作情報330は画像透過率制御部410に入力され、メインカメラ画像100は画像重畳部420に入力される。
【0062】
画像透過率制御部410は、入力された速度情報300、ウインカー指示方向の情報310、音声情報320及びオペレータ操作情報330の少なくとも一方に基づいて、入力されたサブカメラ画像200に対して、透過率を制御することによって補正したサブカメラ画像200の透過率補正画像500を生成する。速度情報300、ウインカー指示方向の情報310、音声情報320及びオペレータ操作情報330の各種情報に基づいた画像透過率制御部410の処理については詳細を後述する。
【0063】
2-2.情報処理例
図13は、第2の実施の形態に係るウインカー指示方向の情報310及びオペレータ操作情報330に基づいたサブカメラ画像200のサイドカメラ画像210に対する画像透過率制御部410の処理を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS300において、画像透過率制御部410は、入力されるウインカー指示方向の情報310において、ウインカー指示方向の左方向又は右方向の情報が含まれているか否かを判定する。
【0065】
ウインカー指示方向の左方向又は右方向の情報が含まれていると判定された場合(ステップS300;Yes)、処理は、ステップS310に進む。それ以外の場合(ステップS300;No)、処理は、ステップS340に進む。
【0066】
ステップS310において、画像透過率制御部410は、入力されるオペレータ操作情報330において、オペレータ指示による透過率の情報が含まれているか否かを判定する。
【0067】
オペレータ指示による透過率の情報が含まれていると判定された場合(ステップS310;Yes)、処理は、ステップS320に進む。それ以外の場合(ステップS310;No)、処理は、ステップS330に進む。
【0068】
ステップS320において、画像透過率制御部410は、入力されるサイドカメラ画像210に対して、ウインカー指示方向の情報310と同じ方向のサイドカメラ画像210の透過率をオペレータ指示による透過率に基づいた値に設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0069】
ステップS330において、画像透過率制御部410は、入力されるサイドカメラ画像210に対して、ウインカー指示方向の情報310と同じ方向のサイドカメラ画像210の透過率を高くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。ウインカー指示方向の情報310と異なる方向のサイドカメラ画像210に対しては透過率を低くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0070】
ステップS340において、画像透過率制御部410は、入力されるサイドカメラ画像210に対して、サイドカメラ画像210の透過率を低くなるように設定し、透過率の設定により補正される透過率補正画像500を生成する。
【0071】
ステップS350において、画像透過率制御部410は、透過率補正画像500を表示処理部430に出力する。
【0072】
以上に説明されたように、第2の実施の形態によれば、ウインカー指示方向の情報310があった場合においても、サイドカメラ画像210の透過率をオペレータの操作により補正できるようになる。これにより、オペレータは、移動体の側方の状況を正確に把握しやすくなる。このことは、遠隔運転による移動体の安全性の確保に繋がる。
【符号の説明】
【0073】
10 遠隔運転システム
20 情報処理装置
30 表示装置
40 プロセッサ
50 記憶装置
60 カメラ画像情報
70 走行状況情報
80 音情報
90 入力装置
100 メインカメラ画像
110 左メインカメラ画像
120 正面メインカメラ画像
130 右メインカメラ画像
200 サブカメラ画像
210 サイドカメラ画像
211 左サイドカメラ画像
212 右サイドカメラ画像
220 後方カメラ画像
230 室内カメラ画像
300 速度情報
310 ウインカー指示方向の情報
320 音声情報
330 オペレータ操作情報
400 情報入力部
410 画像透過率制御部
420 画像重畳部
430 表示処理部
500 透過率補正画像
510 重畳画像