(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/50 20210101AFI20241029BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241029BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20241029BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20241029BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M50/50 201Z
B23K26/21 G
H01M50/528
H01M50/557
H01M50/562
(21)【出願番号】P 2021146767
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 正剛
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/035696(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/016441(WO,A1)
【文献】特開2013-111640(JP,A)
【文献】特表2018-533820(JP,A)
【文献】特開2019-181496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50 - 528
H01M 50/562
H01M 50/528
H01M 50/552 - 56
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の製造方法であって、
第1電極端子を有する第1電池セルと第2電極端子を有する第2電池セルとを積層する工程と、
溶接構造の製造方法を使用することにより、前記第1電極端子と前記第2電極端子とを互いに溶接によって接合した溶接構造を形成する工程と、を備え、
前記溶接構造の製造方法は、
前記
第1電極端子と前記
第2電極端子とを互いに接触させることにより、前記
第1電極端子と前記
第2電極端子とで囲まれた空間を形成する工程を備え、
前記
第1電極端子と前記
第2電極端子との間、または、前記
第1電極端子および前記
第2電極端子のうちの少なくとも一方の金属部材には、減圧口が形成されており、
前記溶接構造の製造方法はさらに、
前記減圧口を通して前記空間に対して吸引動作を行なって前記空間を減圧することにより、前記
第1電極端子の第1部分を前記
第2電極端子の第2部分に接触させるか、または、前記
第1電極端子の前記第1部分と前記
第2電極端子の前記第2部分との間の距離を前記空間を減圧していない場合に比べて小さくする工程と、
前記空間を減圧した状態で、前記
第1電極端子の前記第1部分と前記
第2電極端子の前記第2部分とを互いに溶接する工程と、を備える、
電池の製造方法。
【請求項2】
前記
第1電極端子が銅から形成され、
前記
第2電極端子がアルミニウムから形成されている、
請求項1に記載の
電池の製造方法。
【請求項3】
前記
第2電極端子の外表面に、前記
第2電極端子の前記第2部分の側から前記
第1電極端子の前記第1部分の側に向かう方向に進行するレーザーを照射することによって、前記
第1電極端子の前記第1部分と前記
第2電極端子の前記第2部分とを互いに溶接する、
請求項1または2に記載の
電池の製造方法。
【請求項4】
前記
第1電極端子は、底板部と、前記底板部の周囲を取り囲む周壁部と、を有し、
前記底板部、前記周壁部、および前記
第2電極端子によって前記空間が区画形成されており、
前記底板部には凸状部が設けられており、前記凸状部は、前記底板部から突出しており、
前記凸状部の突出方向における先端部が、前記第1部分を規定しており、
前記
第2電極端子のうち、前記第1部分に対向する部分が、前記第2部分を規定している、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1電池セルと前記第2電池セルとが積層されている方向を積層方向と規定し、前記積層方向に対して交差する方向を交差方向と規定した場合、
前記第1電極端子は、前記第1電池セルの本体部から前記交差方向に延出する第1延出部と、前記第1延出部の延出方向における先端に形成された第1折曲部と、前記第1折曲部から前記積層方向に対して平行な方向に沿って延びる第1接合部と、を有し、
前記第2電極端子は、前記第2電池セルの本体部から前記交差方向に延出する第2延出部と、前記第2延出部の延出方向における先端に形成された第2折曲部と、前記第2折曲部から前記積層方向に対して平行な方向に沿って延びる第2接合部と、を有し、
前記第1接合部と前記第2接合部とを互いに溶接することによって前記溶接構造が形成される、
請求項
1から4のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接構造およびその製造方法、ならびに電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-181496号公報(特許文献1)には、金属板同士の間に生じている隙間が大きい場合であっても、金属板同士を容易に接合することができるレーザー溶接方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、金属部材同士がより十分に接合される溶接構造およびその製造方法、ならびに、電池セルの電極端子同士がより十分に接合される電池およびその製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に従った溶接構造の製造方法は、第1金属部材と第2金属部材とを互いに溶接によって接合した溶接構造の製造方法であって、上記第1金属部材と上記第2金属部材とを互いに接触させることにより、上記第1金属部材と上記第2金属部材とで囲まれた空間を形成する工程を備え、上記第1金属部材と上記第2金属部材との間、または、上記第1金属部材および上記第2金属部材のうちの少なくとも一方の金属部材には、減圧口が形成されており、上記溶接構造の製造方法はさらに、上記減圧口を通して上記空間に対して吸引動作を行なって上記空間を減圧することにより、上記第1金属部材の第1部分を上記第2金属部材の第2部分に接触させるか、または、上記第1金属部材の上記第1部分と上記第2金属部材の上記第2部分との間の距離を上記空間を減圧していない場合に比べて小さくする工程と、上記空間を減圧した状態で、上記第1金属部材の上記第1部分と上記第2金属部材の上記第2部分とを互いに溶接する工程と、を備える。
【0006】
上記溶接構造の製造方法において、上記第1金属部材が銅から形成され、上記第2金属部材がアルミニウムから形成されていてもよい。
【0007】
上記溶接構造の製造方法において、上記第2金属部材の外表面に、上記第2金属部材の上記第2部分の側から上記第1金属部材の上記第1部分の側に向かう方向に進行するレーザーを照射することによって、上記第1金属部材の上記第1部分と上記第2金属部材の上記第2部分とを互いに溶接してもよい。
【0008】
上記溶接構造の製造方法において、上記第1金属部材は、底板部と、上記底板部の周囲を取り囲む周壁部と、を有し、上記底板部、上記周壁部、および上記第2金属部材によって上記空間が区画形成されており、上記底板部には凸状部が設けられており、上記凸状部は、上記底板部から突出しており、上記凸状部の突出方向における先端部が、上記第1部分を規定しており、上記第2金属部材のうち、上記第1部分に対向する部分が、上記第2部分を規定していてもよい。
【0009】
本開示に従った電池の製造方法は、第1電極端子を有する第1電池セルと第2電極端子を有する第2電池セルとを積層する工程と、本開示に従った上記の溶接構造の製造方法を使用することにより、上記第1金属部材としての上記第1電極端子と上記第2金属部材としての上記第2電極端子とを互いに溶接した溶接構造を形成する工程と、を備える。
【0010】
上記電池の製造方法において、上記第1電池セルと上記第2電池セルとが積層されている方向を積層方向と規定し、上記積層方向に対して交差する方向を交差方向と規定した場合、上記第1電極端子は、上記第1電池セルの本体部から上記交差方向に延出する第1延出部と、上記第1延出部の延出方向における先端に形成された第1折曲部と、上記第1折曲部から上記積層方向に対して平行な方向に沿って延びる第1接合部と、を有し、上記第2電極端子は、上記第2電池セルの本体部から上記交差方向に延出する第2延出部と、上記第2延出部の延出方向における先端に形成された第2折曲部と、上記第2折曲部から上記積層方向に対して平行な方向に沿って延びる第2接合部と、を有し、上記第1接合部と上記第2接合部とを互いに溶接することによって上記溶接構造が形成されてもよい。
【0011】
本開示に従った溶接構造は、第1金属部材と、上記第1金属部材に溶接によって接合された第2金属部材と、を備え、上記第1金属部材と上記第2金属部材とは互いに接触し、上記第1金属部材と上記第2金属部材とで囲まれた空間が形成されており、上記第1金属部材と上記第2金属部材との間、または、上記第1金属部材および上記第2金属部材のうちの少なくとも一方の金属部材には、減圧口が形成されており、上記第1金属部材は、底板部と、上記底板部の周囲を取り囲む周壁部と、を有し、上記底板部、上記周壁部、および上記第2金属部材によって上記空間が区画形成されており、上記底板部には凸状部が設けられており、上記凸状部は、上記底板部から突出しており、上記凸状部の突出方向における先端部と、上記第2金属部材のうち、上記先端部に対向する部分とが、互いに溶接されている。
【0012】
本開示に従った電池は、第1電極端子を有する第1電池セルと、第2電極端子を有し、上記第1電池セルに積層された第2電池セルと、を備え、本開示に従った上記の溶接構造が、上記第1金属部材としての上記第1電極端子と上記第2金属部材としての上記第2電極端子とを互いに溶接することによって形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、金属部材同士がより十分に接合される溶接構造およびその製造方法、ならびに、電池セルの電極端子同士がより十分に接合される電池およびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電池100に備えられる第1電池セル1および第2電池セル2により形成される溶接構造30a,30bを示す斜視図である。
【
図2】電池100に備えられる第1電池セル1および第2電池セル2を相互に分離した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線に沿った矢視断面斜視図である。
【
図4】電極端子10と電極端子20とを溶接によって接合する際の様子を示す斜視図である。
【
図5】
図3中のV-V線に沿った矢視断面図である。
【
図6】
図3中のVI-VI線に沿った矢視断面図である。
【
図7】
図3中のVII-VII線に沿った矢視断面図である。
【
図8】比較例1における溶接構造の製造方法を説明するための断面図である。
【
図9】比較例2における溶接構造の製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】比較例2における溶接構造の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本開示にとって必ずしも必須のものではない。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0016】
[電池100]
図1は、電池100に備えられる第1電池セル1および第2電池セル2により形成される溶接構造30a,30bを示す斜視図である。電池100は、たとえば、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、および電気自動車などの車両に搭載され得る。
【0017】
電池100は、第1電池セル1と、第1電池セル1に積層された第2電池セル2とを備える。電池100に含まれる電池セルの数は、特に限定されない。電池セルの例として、たとえば、リチウムイオン電池が挙げられる。
図2は、電池100に備えられる第1電池セル1および第2電池セル2を相互に分離した状態を示す斜視図である。
【0018】
図1,
図2には、第1電池セル1と第2電池セル2とが積層されている方向である積層方向ARを、矢印で示している。
図1にはさらに、積層方向ARに対して交差する方向(ここでは、一例として直交する方向)である交差方向CRも、矢印で示している。ここで規定される積層方向ARおよび交差方向CRは、他の図面(
図3~
図10)にも示されている。
【0019】
第1電池セル1は、本体部1a、電極端子10(第1電極端子)、および電極端子18(
図2)を備える。第1電池セル1は、たとえばラミネート型セルである。詳細な図示は省略するが、第1電池セル1の本体部1aにおいては、複数の電極体を積層することで発電要素が構成され、この発電要素が電解液とともにラミネートフィルムで封止され、本体部1aは全体として扁平な形状を呈している。本体部1aの交差方向CRにおける一方側から電極端子10が突出しており、本体部1aの交差方向CRにおける他方側から電極端子18が突出している。
【0020】
第2電池セル2は、本体部2a、電極端子20(第2電極端子)、および電極端子28(
図2)を備える。第2電池セル2は、たとえばラミネート型セルである。詳細な図示は省略するが、第2電池セル2の本体部2aにおいては、複数の電極体を積層することで発電要素が構成され、この発電要素がラミネートフィルムで封止され、本体部2aは全体として扁平な形状を呈している。本体部2aの交差方向CRにおける一方側から電極端子20が突出しており、本体部2aの交差方向CRにおける他方側から電極端子28が突出している。
【0021】
[溶接構造30a,30b]
電池100は、溶接構造30a,30b(
図1)を備える。溶接構造30a,30bは、第1電池セル1の電極端子10と第2電池セル2の電極端子20とを互いに溶接によって接合することで形成される。
【0022】
電極端子10は、溶接構造30a,30bにおける第1金属部材として機能する。電極端子10は、たとえば負極端子であり、銅から形成される。電極端子20は、溶接構造30a,30bにおける第2金属部材として機能する。電極端子20は、たとえば正極端子であり、アルミニウムから形成される。電池100には、溶接構造30a,30bのうちの一方のみが形成されていてもよい。
【0023】
図3は、
図1におけるIII-III線に沿った矢視断面斜視図である。
図1においては、電極端子10,20が溶接によって相互に接合された後の状態が示されている。一方、
図3においては、説明の便宜上、電極端子10,20が溶接によって相互に接合される前の状態が示されている。
【0024】
(電極端子10(第1金属部材))
電極端子10(
図1,
図2参照)は、第1電池セル1の本体部1aから交差方向CRに延出する第1延出部10aと、第1延出部10aの延出方向における先端に形成された第1折曲部10bと、第1折曲部10bから積層方向ARに対して平行な方向に沿って延びる第1接合部10cと、を有する。電極端子10は、全体として略L字状の断面形状を呈しており、第1延出部10aおよび第1接合部10cがいずれも略平板状に形成されている。第1延出部10aおよび第1接合部10cが、第1折曲部10bの位置で約90°の角度を有して折れ曲がるような形態で互いに接続されている。
【0025】
電極端子10はさらに、底板部10c1(
図2,
図3)と、底板部10c1の周囲を取り囲む周壁部10c2とを有している。ここでは、底板部10c1および周壁部10c2は、いずれも電極端子10の第1接合部10cに形成されている。第1接合部10cにおいては、第1接合部10cの一部が交差方向CRとは反対側(本体部1aに近づく方向)に向かって凹むようにして、底板部10c1および周壁部10c2が形成されている。
【0026】
さらに、底板部10c1にはプレス成型などによって凸状部10t1,10t2が設けられており、凸状部10t1,10t2は、交差方向CRに沿って(本体部1aから離れる方向に)底板部10c1から突出している。凸状部10t1の突出方向における先端部が、第1部分11aを規定しており、電極端子20の第2接合部20cに溶接によって接合される。凸状部10t2の突出方向における先端部が、第1部分11bを規定しており、電極端子20の第2接合部20cに溶接によって接合される。
【0027】
(電極端子20(第2金属部材))
電極端子20(
図1~
図3参照)は、第2電池セル2の本体部2aから交差方向CRに延出する第2延出部20aと、第2延出部20aの延出方向における先端に形成された第2折曲部20bと、第2折曲部20bから積層方向ARに対して平行な方向に沿って延びる第2接合部20cと、を有する。電極端子20は、全体として略L字状の断面形状を呈しており、第2延出部20aおよび第2接合部20cがいずれも略平板状に形成されている。第2延出部20aおよび第2接合部20cが、第2折曲部20bの位置で約90°の角度を有して折れ曲がるような形態で接続されている。
【0028】
電極端子20の第2接合部20cのうち、凸状部10t1の先端部に対向する部分が、第2部分21aを規定しており、電極端子10の上記の第1部分11aに溶接によって接合される。電極端子20の第2接合部20cのうち、凸状部10t2の先端部に対向する部分が、第2部分21bを規定しており、電極端子10の上記の第1部分11bに溶接によって接合される。
【0029】
電極端子20はさらに、減圧口20h1,20h2が形成されている。ここでは、減圧口20h1,20h2は、電極端子20の第2接合部20cを板厚方向に貫通するように形成されている。ここでは、第1接合部10cおよび第2接合部20cの長手方向(すなわち、積層方向ARおよび交差方向CRに直交する方向において、減圧口20h1,20h2および凸状部10t1,10t2の位置がずれている。
【0030】
(空間SP)
電極端子10と電極端子20とは互いに接触するように配置されており、電極端子10と電極端子20とで囲まれた空間SPが電極端子10と電極端子20との間に形成されている。ここでは、電極端子10の底板部10c1、電極端子10の周壁部10c2、および、電極端子20の第2接合部20cによって空間SP(
図1,
図3)が区画形成されている。これらが互いに接触した状態で、より気密性の高い空間SPが形成されるように、これらの部材の表面には、連続的にまたは断続的に、環状に延びるスポンジや接着剤などを設けることも可能である。
【0031】
(溶接痕31a,31b)
図1に示すように、電極端子10に凸状部10t1が設けられており、凸状部10t1の突出方向における先端部(第1部分11a)と、電極端子20の第2接合部20cにおける第2部分21aとが、相互に対向するように配置される。後述するような吸引による減圧が行われていない状態で、第1部分11aが第2部分21aに押し当てられるような設計がなされていてもよい。電極端子10のうちの第1部分11aと電極端子20のうちの第2部分21aとが互いに溶接されることによって、これらが相互に接合されて、電極端子20の第2接合部20cの外表面20s上に溶接痕31aが形成される。
【0032】
同様に、電極端子10に凸状部10t2が設けられており、凸状部10t2の突出方向における先端部(第1部分11b)と、電極端子20の第2接合部20cにおける第2部分21bとが、相互に対向するように配置される。後述するような吸引による減圧が行われていない状態で、第1部分11bが第2部分21bに押し当てられるような設計がなされていてもよい。電極端子10のうちの第1部分11bと電極端子20のうちの第2部分21bとが互いに溶接されることによって、これらが相互に接合されて、電極端子20の第2接合部20cの外表面20s上に溶接痕31bが形成される。
【0033】
(製造方法)
溶接構造30a,30bの製造方法は、次のとおりである。
図2に示すように、第1電池セル1と第2電池セル2とを準備し、
図3(および
図1)に示すように、第1電池セル1と第2電池セル2とを積層する。電極端子10(第1金属部材)と電極端子20(第2金属部材)とを互いに接触させることにより、電極端子10と電極端子20とで囲まれた空間SPを形成する。
【0034】
図4は、電極端子10と電極端子20とを溶接によって接合する際の様子を示す斜視図である。
図5~
図7は、それぞれ、
図3中のV-V線、VI-VI線、VII-VII線に沿った矢視断面図である。
図5~
図7は、電極端子10の第1接合部10cの底板部10c1(換言すると、空間SP)を通る位置の断面構造を示しており、特に、
図5は、減圧口20h2を通る位置の断面構造を示しており、
図6は、凸状部10t1,10t2および減圧口20h1,20h2を通らない位置の断面構造を示しており、
図7は、凸状部10t2を通る位置の断面構造を示している。
【0035】
溶接構造30a,30bの製造方法においては、減圧口20h1,20h2のために吸引装置60(
図5)のダクトないしノズルが設置され、減圧口20h1,20h2を通して空間SPに対して吸引動作を行なって空間SPを減圧する(
図4,
図5における矢印SC)。
【0036】
図6,
図7に示すように、空間SPの内圧が大気圧に比べて小さくなることによって、第1接合部10cと第2接合部20cとには、これらを相互に接近させる方向の力が発生する(
図6,
図7における矢印PS)。これにより、電極端子10の第1部分11aを電極端子20の第2部分21aにより強く接触させるか、または、電極端子10の第1部分11aと電極端子20の第2部分21aとの間の距離を空間SPを減圧していない場合に比べて小さくすることができる。
【0037】
空間SPを減圧した状態で、
図4,
図7に示すように、電極端子10の第1部分11aと電極端子20の第2部分21aとを互いに溶接する。ここでは、電極端子20の外表面20sに、電極端子20の第2部分21aの側から電極端子10の第1部分11aの側に向かう方向に進行するレーザーLSを照射することによって、電極端子10の第1部分11aと電極端子20の第2部分21aとを互いに溶接する。たとえば、アルミニウムから形成された融点の低い電極端子20に、銅から形成された電極端子10よりも先にレーザーの熱エネルギーが供給され、電極端子20を電極端子10に溶接する。
【0038】
[作用および効果]
2つの金属部材を溶接によって接合する場合には、金属部材同士の間の隙間、より具体的には溶接の対象箇所同士の間の隙間をできるだけ小さくすることが好ましい。また、金属部材同士の間の隙間(凝固収縮量)が、溶接を行うたびに変動しないことが好ましい。
【0039】
上記実施の形態においては、電極端子10,20を相互に接触させた状態で電極端子10,20の間に空間SPが形成されており、この空間SPを減圧口20h1,20h2を利用して減圧することによって(パスカルの原理)、上記隙間の大きさや、隙間のばらつきを小さくすることができる。減圧の程度、レーザーの強度を最適化することによって、溶接品質の向上を図りやすい。したがって上記の実施の形態によれば、金属部材同士がより十分に接合される溶接構造およびその製造方法、ならびに、電池セルの電極端子同士がより十分に接合される電池およびその製造方法を得ることができる。
【0040】
図8は、比較例1における溶接構造の製造方法を説明するための断面図である。
図8に示すように、たとえば抵抗溶接の場合には、電圧を供給するための端子部材41,42によって2つの金属部材(電極端子10,20)がクランプされて位置決めされるため、隙間の大きさや、隙間のばらつきを小さくすることができる。しかしながら、端子部材42の厚みDT(
図8)の分だけ、第1接合部10cと本体部1aとの間のスペース、および、第2接合部20cと本体部2aの間のスペースを確保する必要が生じるため、装置全体の小型化を図ることが難しい。
【0041】
上述の実施の形態によれば、端子部材41,42を配置することなく、電極端子10,20に対してレーザー溶接によって非接触でこれらを接合することが可能であるため、
図8に示す比較例1の場合に比べて装置全体の小型化を図ることが可能である。上述の実施の形態で開示した思想は、第1接合部10cと第2接合部20cとの接合面が積層方向ARに対して平行に延びるような構成に限られず、第1接合部10cと第2接合部20cとの接合面が積層方向ARに対して交差する(たとえば直交する)ような構成にも適用可能である。
【0042】
図9は、比較例2における溶接構造の製造方法を説明するための断面図である。レーザー溶接の場合には、押圧部材43を用いて片側のみから押圧力を第1接合部10cおよび第2接合部20cに作用させて、上記の隙間を小さくすることも検討の余地がある。これによれば、装置全体の小型化を図ることができる。しかしながら、
図10に示すように、押圧部材43のような機械的な手段を用いて片側のみから押圧力を付与する場合には、実施の形態の場合に比べて、片あたりや応力集中等に起因した、隙間のばらつきが発生しやすい。
【0043】
上述の実施の形態によれば、減圧によるパスカルの原理の作用を利用することによって、空間SPの全体に略均等に負圧を発生させることが可能となり、ひいては上記の比較例2の場合に比べて上記隙間の大きさや、隙間のばらつきを小さくすることができる。
【0044】
上述の実施の形態では、電極端子20に2つの減圧口20h1,20h2を設けているが、減圧口は1つであってもよいし、電極端子10に設けられていてもよいし、電極端子10,20の両方に減圧口が設けられていてもよい。また、電極端子10の一部と電極端子20の一部とがあわさることでこれらの間に減圧口が形成されてもよい。
【0045】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 第1電池セル、1a,2a 本体部、2 第2電池セル、10 電極端子(第1電極端子、第1金属部材)、10a 第1延出部、10b 第1折曲部、10c 第1接合部、10c1 底板部、10c2 周壁部、10t1,10t2 凸状部、11a,11b 第1部分、18,28 電極端子、20 電極端子(第2電極端子、第2金属部材)、20a 第2延出部、20b 第2折曲部、20c 第2接合部、20h2,20h1 減圧口、20s 外表面、21a,21b 第2部分、30a,30b 溶接構造、31a,31b 溶接痕、41,42 端子部材、43 押圧部材、60 吸引装置、100 電池、AR 積層方向、CR 交差方向、DT 厚み、LS レーザー、PS,SC 矢印、SP 空間。