(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】自動駐車システム、設定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241029BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241029BHJP
B60W 30/06 20060101ALI20241029BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20241029BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 P
B60W30/06
B60W30/09
(21)【出願番号】P 2021164228
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】森田 孝治
(72)【発明者】
【氏名】菅野 達也
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131787(JP,A)
【文献】特開2007-030851(JP,A)
【文献】特開2019-091279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 30/00 - 60/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両の状態を推定する推定手段と、
前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、
を備え、
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定される
ことを特徴とする自動駐車システム。
【請求項2】
前記設定手段は、地図情報に基づいて前記対象車両に係る走行経路を設定することを特徴とする請求項1に記載の自動駐車システム。
【請求項3】
前記地図情報には、通路構造に係る情報及び静的障害物に係る情報が含まれることを特徴とする請求項2に記載の自動駐車システム。
【請求項4】
対象車両の状態を推定する推定手段と、
前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、
を備え、
前記設定手段は
更に、
前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の周囲を走行する他車両の走行態様を、前記対象車両との関係に起因するリスクが低減される走行態様に設定する
ことを特徴とする自動駐車システム。
【請求項5】
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る目標車間距離が、前記低温状態でない場合に比べて長い距離に設定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動駐車システム。
【請求項6】
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る上限速度が、前記低温状態でない場合に比べて低い速度に設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動駐車システム。
【請求項7】
前記設定手段は、前記低リスク走行態様が設定された前記対象車両の状態が、前記低温状態でなくなったときに、前記低リスク走行態様を解除することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動駐車システム。
【請求項8】
前記対象車両との衝突リスクが低減される走行態様では、前記他車両の走行経路が、前記対象車両との関係に起因するリスクが低減される走行経路に設定されることを特徴とする請求項4に記載の自動駐車システム。
【請求項9】
自動駐車システムにおける設定方法であって、
前記自動駐車システムが、対象車両の状態を推定する推定工程と、
前記自動駐車システムが、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定工程と、
を含み、
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定される
ことを特徴とする設定方法。
【請求項10】
自動駐車システムが備えるコンピュータを、
対象車両の状態を推定する推定手段と、
前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、
として機能させ、
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定される
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
自動駐車システムにおける設定方法であって、
前記自動駐車システムが、対象車両の状態を推定する推定工程と、
前記自動駐車システムが、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定工程と、
を含み、
前記設定工程は
更に、
前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の周囲を走行する他車両の走行態様を、前記対象車両との関係に起因するリスクが低減される走行態様に設定する
ことを特徴とする設定方法。
【請求項12】
自動駐車システムが備えるコンピュータを、
対象車両の状態を推定する推定手段と、
前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する
ことに加えて、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の周囲を走行する他車両の走行態様を、前記対象車両との関係に起因するリスクが低減される走行態様に設定する設定手段と、
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動駐車システム、該自動駐車システムにおける設定方法、及び、コンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムに適用可能な技術として、例えば、運転者による車両の減速要求があった場合であって、摩擦ブレーキの温度が設定値以下である又は摩擦ブレーキが所定時間使用されていない場合、摩擦ブレーキが特定状態であると判定され、特定状態であると判定されない場合に比べて摩擦ブレーキを強く動作させて、冷間時の制動性能の低下を防ぐ技術が提案されている(特許文献1参照)。その他関連する技術として、特許文献2が挙げられる。特許文献2には、車外装置から送信されたトリガが受信されたことに応じて、車両の周辺環境の認識結果に基づいて、速度制御及び操舵制御の少なくとも一方を行い、車両をユーザの乗車位置まで自動的に走行させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-199814号公報
【文献】特開2020-149233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駐車場において車両が低温環境下で比較的長時間駐車した後に、該車両が走行を開始すると、例えば摩擦ブレーキの性能が低下していることにより制動距離が延びることがある。駐車場には、比較的多くの駐車車両(即ち、障害物)や、駐車場内を走行している他車両が存在する。このため、低温環境に起因して摩擦ブレーキの性能が低下している車両が駐車場内を走行すると、駐車場内の安全性が低下する可能性がある。上述した従来技術では、このような問題に十分に対応することができない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、駐車場内の安全性の低下を抑制することができる自動駐車システム、設定方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自動駐車システムは、対象車両の状態を推定する推定手段と、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、を備え、前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定されるというものである。
【0007】
本発明の一態様に係る設定方法は、自動駐車システムにおける設定方法であって、前記自動駐車システムが、対象車両の状態を推定する推定工程と、前記自動駐車システムが、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定工程と、を含み、前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定されるというものである。
【0008】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、自動駐車システムが備えるコンピュータを、対象車両の状態を推定する推定手段と、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、として機能させ、前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定されるというものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る管制サーバの構成を示す図である。
【
図4】実施形態に係る出庫動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態の変形例に係る低温判定動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態の変形例に係る出庫動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係るコンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<自動駐車システム>
自動駐車システムに係る実施形態について
図1乃至
図5を参照して説明する。ここでは、自動バレー駐車(Automated Valet Parking:AVP)に係る自動駐車システムを一例として挙げる。自動バレー駐車では、車両からユーザが降車した後に、該車両が駐車場内を自走して駐車スペースに自動で駐車する。また、出庫要求があった場合、車両が駐車場内を自走してユーザの乗車位置近傍に自動で停車する。
【0011】
先ず、自動バレー駐車の概要について説明する。ここでは、自動バレー駐車が適用される駐車場の一例として、
図1に示す駐車場を挙げる。
【0012】
図1において、ユーザは降車場において車両から降車し、乗車場において車両に乗車するものとする。自動運転機能を有する車両は、駐車時に、入庫ゲートを通り駐車場内に進入し、駐車スペースに自動で駐車する。自動運転機能を有する車両は、出庫時に、出庫ゲートを通り駐車場から退出し、乗車場の待機スペース(図示せず)に自動で停車する。
【0013】
自動バレー駐車を可能にするシステムについて
図2を参照して説明する。
図2において、システム1は、駐車場管理センタ10、予約サーバ20、認証サーバ30、スマートセンタ40、車両50及びユーザ端末60を備えて構成されている。
【0014】
スマートセンタ40は、駐車場管理センタ10、予約サーバ20、認証サーバ30、車両50及びユーザ端末60相互間において情報が共有されるように、情報の橋渡しを行う。つまり、スマートセンタ40は、いわゆるデータハブに相当する。尚、システム1は、スマートセンタ40を備えていなくてもよい。
【0015】
車両50は、自動運転機能を有する車両である。ユーザ端末60は、車両50のユーザが所持する端末(例えばスマートフォン等)である。尚、車両及びユーザ端末は、夫々複数存在するが、説明の煩雑化を避けるため車両50及びユーザ端末60だけを図示している。また、車両50は、ユーザ端末60のユーザが所有していなくてよい(即ち、車両50は、レンタカー等であってよい)。
【0016】
システム1の動作について具体例を挙げて説明する。尚、以下の説明では、「ユーザ所有の車両の駐車動作」、「ユーザ所有の車両の出庫動作」、「車両貸出動作」及び「車両返却動作」の4つの具体例を挙げるが、便宜上、全ての具体例で「車両50」及び「ユーザ端末60」と表記する。
【0017】
(ユーザ所有の車両の駐車動作)
ユーザが、自身の車両50を駐車場に駐車させる場合の動作について説明する。車両50が降車場(
図1参照)に到着した後、ユーザは所定のチェックイン手続を行う。具体的には、先ず、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と認証サーバ30との間で所定の認証処理が行われる。認証が成功すると、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と予約サーバ20との間で所定のチェックイン処理(例えば予約確認、新規申込、対象車両に係る情報取得等)が行われる。このとき、予約サーバ20は、スマートセンタ40を介して、駐車場管理センタ10に、例えば駐車状況等について問い合わせをしてよい。
【0018】
チェックイン処理が成功した場合、ユーザ端末60は、例えば「自動運転機能を有効にして、ドアを閉めてください」等のメッセージをユーザに報知してよい。チェックイン処理が成功すると、予約サーバ20は、駐車場管理センタ10に対して、対象車両としての車両50に係る情報等を、スマートセンタ40を介して送信する。
【0019】
車両50に係る情報を受信した駐車場管理センタ10は、スマートセンタ40を介して、車両50(具体的には、通信ECU(Electronic Control Unit)51)と通信を行う。このとき、駐車場管理センタ10は、車両50の状態(例えばドアの開/閉、シフトポジション等)を確認してよい。駐車場管理センタ10は、車両50に対して、例えば走行ルート等に係る情報を、スマートセンタ40を介して送信する。
【0020】
走行ルート等の情報を受信した車両50は、自動運転機能により、該情報により示される走行ルートに沿って移動し、所定の駐車スペースに駐車する。車両50の駐車が完了した場合、駐車場管理センタ10は、ユーザ端末60に対して、例えば駐車が完了した旨、駐車位置等を示す情報を、スマートセンタ40を介して送信してよい。
【0021】
(ユーザ所有の車両の出庫動作)
ユーザが、駐車場に駐車している自身の車両50を出庫させる場合の動作について説明する。ユーザは、ユーザ端末60を用いて、予約サーバ20に出庫時刻を予約又は出庫指示を行っているものとする。予約された出庫時刻が近づいた場合又は出庫指示があった場合、予約サーバ20は、駐車場管理センタ10に対して、ユーザ端末60に紐づけられた対象車両としての車両50に係る情報と、出庫時刻又は出庫指示を示す情報とを、スマートセンタ40を介して送信する。
【0022】
車両50に係る情報等を受信した駐車場管理センタ10は、スマートセンタ40を介して、車両50と通信を行う。このとき、駐車場管理センタ10は、車両50に対して、例えば走行ルート等に係る情報を、スマートセンタ40を介して送信する。走行ルート等の情報を受信した車両50は、自動運転機能により、該情報により示される走行ルートに沿って乗車場(
図1参照)に移動して停車した後、待機状態となる。
【0023】
乗車場において車両50を確認したユーザは、所定のチェックアウト手続を行う。具体的には、先ず、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と認証サーバ30との間で所定の認証処理が行われる。認証が成功すると、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と駐車場管理センタ10との間で所定のチェックアウト処理(例えば料金確認、支払い手続等)が行われる。
【0024】
(車両貸出動作)
例えばレンタルサービス、シェアリングサービス等で駐車場に駐車している車両50をユーザが借りる場合の動作について説明する。ユーザは、ユーザ端末60を用いて利用予約手続を行う。具体的には、先ず、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と認証サーバ30との間で所定の認証処理が行われる。認証が成功すると、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と予約サーバ20との間で所定の利用予約処理(例えば利用開始時刻や返却予定時刻の入力、貸出車両の選択等)が行われる。
【0025】
利用予約処理が終了した後、予約サーバ20は、駐車場管理センタ10に対し、例えば貸出対象としての車両50に係る情報、ユーザ(又はユーザ端末60)に係る情報等を、スマートセンタ40を介して送信する。
【0026】
車両50に係る情報等を受信した駐車場管理センタ10は、スマートセンタ40を介して、車両50と通信を行う。このとき、駐車場管理センタ10は、車両50に対して、例えば走行ルート等に係る情報を、スマートセンタ40を介して送信する。走行ルート等の情報を受信した車両50は、自動運転機能により、該情報により示される走行ルートに沿って乗車場(
図1参照)に移動して停車した後、待機状態となる。
【0027】
乗車場において車両50を確認したユーザは、所定の利用開始手続を行う。具体的には、先ず、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と認証サーバ30との間で所定の認証処理が行われる。認証が成功すると、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と駐車場管理センタ10との間で所定の利用開始処理(例えばユーザ(又はユーザ端末60)に係る情報の照合等)が行われる。利用開始処理が成功した場合、駐車場管理センタ10は、例えば車両50のドアロックを解除し、ユーザが車両50に乗車できるようにする。
【0028】
(車両返却動作)
例えばレンタルサービス、シェアリングサービス等で借りた車両50をユーザが返却する場合の動作について説明する。車両50が降車場(
図1参照)に到着した後、ユーザは所定の利用終了手続を行う。具体的には、先ず、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と認証サーバ30との間で所定の認証処理が行われる。認証が成功すると、スマートセンタ40を介して、ユーザ端末60と予約サーバ20との間で所定の利用終了処理(例えばユーザ(又はユーザ端末60)に係る情報や貸出時に入力された情報の確認、支払い手続等)が行われる。
【0029】
利用終了処理が成功すると、予約サーバ20は、駐車場管理センタ10に対して、ユーザ端末60に紐づけられた対象車両としての車両50に係る情報等を、スマートセンタ40を介して送信する。
【0030】
車両50に係る情報を受信した駐車場管理センタ10は、スマートセンタ40を介して、車両50と通信を行う。このとき、駐車場管理センタ10は、車両50の状態(例えばドアの開/閉、シフトポジション等)を確認してよい。駐車場管理センタ10は、車両50に対して、例えば走行ルート等に係る情報を、スマートセンタ40を介して送信する。走行ルート等の情報を受信した車両50は、自動運転機能により、該情報により示される走行ルートに沿って移動し、所定の駐車スペースに駐車する。
【0031】
ところで、車両は、低温環境下(例えば外気温が氷点下である環境等)において、比較的長時間駐車していることがある。この場合、ブレーキフルードの温度が低下することに起因して、車両の摩擦ブレーキの性能が低下する可能性がある。この結果、例えば車両の制動距離が延びる可能性がある。このとき何らの対策も採らなければ、摩擦ブレーキの性能が低下している車両が、例えば障害物に衝突する等のリスクが高くなるおそれがある。
【0032】
この問題に対して、システム1では、低温環境に起因して摩擦ブレーキの性能が低下しているか否かが推定される。そして、システム1では、推定結果に応じて車両の走行態様が、上記リスクが低減されるような走行態様に設定される。以下、システム1の中核をなす駐車場管理センタ10の動作について
図2に加えて、
図3乃至
図5を参照して具体的に説明する。
【0033】
図2において、駐車場管理センタ10は、認識サーバ11、管制サーバ12及び管理者端末13を備えて構成されている。認識サーバ11は、例えば一又は複数のカメラの画像を取得して、駐車場等の状況(例えば走行車両の位置、障害物の有無、降車場及び乗車場の歩行者、等)を認識する。管制サーバ12は、駐車しようとする車両及び出庫しようとする車両各々の走行を制御する。管理者端末13は、駐車場の管理者が、例えば管制サーバ12により制御されている車両の状況等を確認する等のために用いられる。
【0034】
図3において、管制サーバ12は、その内部に、ブレーキ温度低温判定装置121、走行ルート演算装置122及び走行ルート配信装置123を有する。尚、「ブレーキ温度低温判定装置121」、「走行ルート演算装置122」及び「走行ルート配信装置123」は、夫々、「ブレーキ温度低温判定機能」、「走行ルート演算機能」及び「走行ルート配信機能」と言い換えられてよい。「ブレーキ温度低温判定装置121」を「低温判定装置121」と、「走行ルート演算装置122」を「演算装置122」と、「走行ルート配信装置123」を「配信装置123」と、適宜称する。
【0035】
駐車場に駐車しようとする車両は、乗車場まで走行してきているので、十分に暖機されていると考えられる。つまり、駐車しようとする車両の摩擦ブレーキの性能が低温環境に起因して低下している可能性は極めて低い。そこで、出庫しようとする車両に対する駐車場管理センタ10(特に、管制サーバ12)の動作について説明する。ここでは、出庫しようとする車両として車両50を挙げる。
【0036】
管制サーバ12の低温判定装置121は、出庫しようとする車両としての車両50に係る状態や諸元等を含む車両データベース(
図3の“車両DB(自車)”参照)を取得する。尚、車両50に係る車両データベースに含まれる情報の少なくとも一部は、車両50の通信ECU51を介して取得されてよい。
【0037】
低温判定装置121は、例えば外気温の履歴(即ち、外気温の時間変動の記録)、天候等の情報を含む環境データベース(
図3の“環境DB”参照)を取得する。尚、環境データベースは、駐車場管理センタ10内の記憶装置(図示せず)から取得されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して取得されてもよい。
【0038】
低温判定手段121は、車両50に係る車両データベース及び環境データベースに基づいて、車両50の状態が低温状態であるか否かを判定する。つまり、低温判定手段121は、車両50が低温環境下に置かれていたか否かを判定する。尚、具体的な判定方法については後述する。
【0039】
管制サーバ12の演算装置122は、他車両(ここでは、車両50以外の車両:図示せず)に係る状態や諸元等を含む車両データベース(
図3の“車両DB(他車)”参照)を取得する。他車両に係る車両データベースに含まれる情報には、例えば認識サーバ11による認識結果が反映されていてよい。また、他車両に係る車両データベースに含まれる情報の少なくとも一部は、他車両に搭載された通信ECU(図示せず)を介して取得されてよい。
【0040】
演算装置122は、駐車場の地図を含む地図データベース(
図3の“地
図DB”参照)を取得する。ここで、駐車場の地図には、例えば、駐車場の通路構造に係る情報、静的障害物(フェンス、ポール、縁石等)に係る情報、等が含まれていてよい。尚、地図データベースは、駐車場管理センタ10内の記憶装置(図示せず)から取得されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して取得されてもよい。
【0041】
演算装置122は、低温判定装置121による判定結果と、他車両に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、車両50の走行ルートを演算する。尚、具体的な走行ルートの例については後述する。また、走行ルートの演算方法には、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0042】
管制サーバ12の配信装置123は、車両50に対して、演算装置122により演算された走行ルートを、スマートセンタ40を介して配信する。尚、該演算された走行ルートには、例えば上限速度、目標車間距離等を示す情報が含まれていてよい。配信装置123は、車両50に対し、走行ルートに加えて、例えば、認識サーバ11による認識結果のうち、車両50の走行ルート上に存在する障害物に係る情報を、スマートセンタ40を介して送信してよい。
【0043】
次に、管制サーバ12の出庫動作について
図4のフローチャートを参照して説明を加える。
図4において、管制サーバ12は、車両50の出庫予約指示があるか否かを判定する(ステップS101)。ここで、管制サーバ12は、例えば予約サーバ20から車両50に係る出庫時刻又は出庫指示を示す情報を受信した場合、出庫予約指示があると判定してよい。また、管制サーバ12は、ステップS101の処理の開始時から所定期間内に指示がない場合は、出庫予約指示がないと判定してよい。
【0044】
ステップS101の処理において、車両50の出庫予約指示がないと判定された場合(ステップS101:No)、管制サーバ12は、車両50について出庫に係る制御を実施せずに(ステップS110)、
図4に示す動作を終了する。
【0045】
ステップS101の処理において、車両50の出庫予約指示があると判定された場合(ステップS101:Yes)、管制サーバ12の低温判定装置121は、出庫しようとする車両としての車両50の駐車時間を算出する(ステップS102)。このとき、低温判定装置121は、例えば車両50に係る車両データベースに基づいて、駐車時間を算出してよい。
【0046】
ステップS102の処理と並行して又は相前後して、管制サーバ12は、車両50に対して、ウェイクアップ指示を、スマートセンタ40を介して送信する。該ウェイクアップ指示を受信した車両50は、所定のウェイクアップ制御を行う。このとき、車両50は、認証サーバ30との間で所定の認証処理を行う。認証が成功すると、スマートセンタ40を介して、車両50と管制サーバ12との間で通信が可能となる。
【0047】
その後、管制サーバ12は、車両50に対して、出庫に係る準備指示を、スマートセンタ40を介して送信する。このとき、車両50には、例えば駐車場内のランドマークに係る情報が配信される。車両50は、例えば、衛星測位システム(Navigation Satellite System:NSS)等により取得された位置情報と、車載カメラにより撮像された画像と、ランドマークに係る情報とに基づいて、駐車場における自身の位置(言い換えれば、出庫の初期位置)を推定する。
【0048】
図4に戻り、ステップS102の処理の後、低温判定装置121は、ステップS102の処理において算出された駐車時間が、判定値より長いか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103の処理において、駐車時間が判定値より長いと判定された場合(ステップS103:Yes)、低温判定装置121は、外気温が閾気温より低いか否かを判定する(ステップS104)。ここで、外気温は、現在の外気温であってもよいし、車両50の駐車期間における外気温の平均値であってもよい。
【0049】
上記「判定値」は、例えば、摩擦ブレーキの性能低下を引き起こすほど外気温が低いと仮定して、駐車完了直後の車両のブレーキフルードの温度が十分に低下するまでに要する時間の最小値等として設定すればよい。上記「閾気温」は、例えば、車両のブレーキフルードの温度が摩擦ブレーキの性能低下を引き起こすほど低下する可能性のある気温の最大値等として設定すればよい。
【0050】
ステップS104の処理において、外気温が閾気温より低いと判定された場合(ステップS104:Yes)、低温判定装置121は、車両50の状態が低温状態である(言い換えれば、摩擦ブレーキの性能が低下するほどの低温環境下に車両50が置かれていた)と推定し、低温判定フラグをON状態にする(ステップS105)。
【0051】
次に、管制サーバ12の演算装置122は、低温判定フラグの状態(即ち、低温判定装置121の判定結果)と、他車両に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、車両50の走行ルートを演算する。
【0052】
低温判定フラグがON状態であるので、演算装置122は、例えば
図5(b)の左側に示すような、車両50が車線にかかわらず通路の中央近傍を走行するような走行ルート(言い換えれば、通路の幅方向において車両50と通路端部との間の距離が比較的広い走行ルート)を演算してよい。このとき、演算装置122は、駐車場の通路のうち、幅員が比較的広い通路を積極的に選択してよい。
【0053】
尚、車両50が走行する通路に対向車両(即ち、他車両)が存在する場合、演算装置122は、例えば
図5(b)の右側に示すような、車両50が車線の対向車線側に寄って走行するような走行ルートを演算してよい。このとき、対向車両には、例えば、通路の幅方向において車両50から離れて停止するように、指示が発せられてよい。つまり、管制サーバ12は、車両50の周囲を走行する他車両の走行態様を、車両50との関係に起因するリスクが低減される走行態様に設定してよい。具体的には、他車両の走行経路が、車両50との関係に起因するリスクが低減される走行経路に設定されてよい。
図5(b)に示すような走行ルートを、以降、適宜「低リスクルート」と称する。
【0054】
ここで、他車両(例えば対向車両)に指示が発せられる場合、管制サーバ12は、
図3の「車両DB(自車)」として他車両に係る車両データベースを取得し、
図3の「車両DB(他車)」として車両50に係る車両データベースを取得する。管制サーバ12の演算装置122は、「車両DB(他車)」として車両50に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、他車両の走行ルートを演算する。このとき演算される走行ルートは、車両50との関係に起因するリスクが低減される走行ルート(例えば、通路端部側に寄せる走行ルート等)であってよい。また、走行ルートとして、所定位置で一時停止するような走行ルートが演算されてもよい。この結果、例えば
図5(b)に示すように、他車両を車両50から離して停止させることができる。
【0055】
演算装置122は、車両50の走行ルートを演算するときに、走行ルートに加えて、走行ルートを走行するときの車両50の上限速度や目標車間距離も演算してよい。この場合、「低リスクルート」では、車両50の上限速度が、後述する「通常ルート」に比べて低く設定されてよい。また、「低リスクルート」では、車両50の目標車間距離が、後述する「通常ルート」に比べて長く設定されてよい。このように、低温判定フラグがON状態である場合、演算装置122は、車両50の走行態様を低リスクな走行態様に設定する。
【0056】
その後、管制サーバ12の配信装置123は、車両50に対して、演算装置122により演算された低リスクルートを示す情報を、スマートセンタ40を介して送信する。つまり、車両50に係る走行ルートが低リスクルートに設定される。このとき、配信装置123は、車両50に対して、地図データベースに含まれる駐車場の地図を、スマートセンタ40を介して送信してよい。その後、管制サーバ12は、車両50に対して、制御開始指示を、スマートセンタ40を介して送信する(ステップS106)。
【0057】
低リスクルートを示す情報等を受信した車両50は、自動運転機能により自身が走行するための目標走行経路等を生成する。そして、車両50は、低リスクルートに沿って駐車スペースから乗車場(
図1参照)まで走行する。乗車場に到着した車両50は、待機状態となる(ステップS109)。尚、目標走行経路の生成方法については、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0058】
ステップS109の処理において、車両50が乗車場に到着したとき、車両50は、管制サーバ12に対して、乗車場に到着したことを示す情報を、スマートセンタ40を介して送信する。該情報を受信した管制サーバ12は、車両50に対して、出庫に係る制御の終了指示を、スマートセンタ40を介して送信する。そして、管制サーバ12は、車両50との通信を切断する。上記出庫に係る制御の終了指示を受信した車両50は、所定のシャットダウン制御を行い、待機状態となる。
【0059】
ステップS103の処理において、駐車時間が判定値より短いと判定された場合(ステップS103:No)、又は、ステップS104の処理において、外気温が閾気温より高いと判定された場合(ステップS104:No)、低温判定装置121は、車両50の状態が低温状態ではない(言い換えれば、摩擦ブレーキの性能が低下するほどの低温環境下に車両50が置かれてはいない)と推定し、低温判定フラグをOFF状態にする(ステップS107)。尚、ステップS103の処理において、駐車時間が判定値と「等しい」と判定された場合は、どちらかの場合に含めて扱えばよい。同様に、ステップS104の処理において、外気温が閾気温と「等しい」と判定された場合は、どちらかの場合に含めて扱えばよい。
【0060】
次に、演算装置122は、低温判定フラグの状態と、他車両に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、車両50の走行ルートを演算する。低温判定フラグがOFF状態であるので、演算装置122は、例えば
図5(a)に示すような、車線の中央近傍を車両50が走行するような走行ルートを演算してよい。
図5(a)に示すような走行ルートを、以降、適宜「通常ルート」と称する。
【0061】
上述したように、演算装置122は、車両50の走行ルートを演算するときに、走行ルートに加えて、走行ルートを走行するときの車両50の上限速度や目標車間距離も演算してよい。この場合、「通常ルート」では、車両50の上限速度が、「低リスクルート」に比べて高く設定されてよい。また、「通常ルート」では、車両50の目標車間距離が、「低リスクルート」に比べて短く設定されてよい。
【0062】
その後、管制サーバ12の配信装置123は、車両50に対して、演算装置122により演算された通常ルートを示す情報を、スマートセンタ40を介して送信する。つまり、車両50に係る走行ルートが通常ルートに設定される。その後、管制サーバ12は、車両50に対して、制御開始指示を、スマートセンタ40を介して送信する(ステップS108)。この結果、車両50は、通常ルートに沿って駐車スペースから乗車場まで走行する。乗車場に到着した車両50は、待機状態となる(ステップS109)。
【0063】
(技術的効果)
当該システム1では、車両50(即ち、対象車両)の状態が低温状態である場合に(即ち、低温判定フラグがON状態である場合に)、車両50に係る走行ルートが低リスクルートに設定される。低リスクルートでは、例えば
図5(b)に示すように、通路の幅方向において、車両50から通路端部までの距離が比較的長い。このため、摩擦ブレーキの性能低下に起因して制動距離が延びていたとしても、例えば車両50が障害物に衝突する可能性を抑制することができる。
【0064】
上述したように、低リスクルートでは、車両50の上限速度を比較的低く設定してよく、また、車両50の目標車間距離を比較的長く設定してよい。このように構成すれば、例えば車両50が障害物に衝突する可能性を一層抑制することができる。従って、当該システム1によれば、駐車場内の安全性の低下を抑制することができる。
【0065】
<変形例>
上述した実施形態では、管理サーバ12の低温判定装置121は、ステップS101の処理において、出庫予約指示があると判定された場合に低温判定を行っている。しかしながら、低温判定装置121は、駐車車両(即ち、将来出庫する車両)について低温判定を逐次行ってよい。
【0066】
変形例に係る低温判定動作の一例として、駐車場に駐車している車両50を対象とした低温判定動作について
図6を参照して説明する。尚、
図6に示す低温判定動作は、車両50の駐車が完了した後、車両50の出庫が完了するまで逐次行われてよい。
【0067】
図6において、低温判定装置121は、車両50についての低温判定に係るカウンタXの値を算出してからの経過時間が所定時間より長いか否かを判定する(ステップS201)。ステップS201の処理において、経過時間が所定時間より短いと判定された場合(ステップS201:No)、後述するステップS203の処理が行われる。
【0068】
ステップS201の処理において、経過時間が所定時間より長いと判定された場合(ステップS201:Yes)、低温判定装置121は、車両50についての低温判定に係るカウンタXの値を算出する(ステップS202)。
【0069】
ここで、カウンタXの値は、外気温に応じて変化する第1のスコアを積算することにより求められる。第1のスコアは、例えば、外気温が低いほど小さくなり、外気温が高いほど大きくなる。尚、第1のスコアは、正の値に限らず、零や負の値であってよい。低温判定装置121は、ステップS201の処理において、経過時間が所定時間より長いと判定される度に(例えば所定時間毎に)、第1のスコアを求める。そして、低温判定装置121は、車両50の駐車完了後に求められたn回分の第1のスコアを積算することにより、カウンタXの値を求める(ここで、“n”は自然数である)。
【0070】
車両50に外気温センサが設けられている場合、低温判定装置121は、車両50の外気温センサにより測定された外気温を、第1のスコアを求めるために用いてよい。或いは、車両50に外気温センサが設けられている場合、低温判定装置121は、車両50の外気温センサにより測定された外気温と、環境データベースに含まれる外気温の履歴とを、第1のスコアを求めるために用いてよい。
【0071】
低温判定装置121は、車両50において摩擦ブレーキに係る制御が実施されたか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の処理において、摩擦ブレーキに係る制御が実施されてないと判定された場合(ステップS203:No)、後述するステップS205の処理が行われる。
【0072】
ステップS203の処理において、摩擦ブレーキに係る制御が実施されたと判定された場合(ステップS203:Yes)、低温判定装置121は、車両50についての低温判定に係るカウンタYの値を算出する(ステップS204)。
【0073】
ここで、カウンタYの値は、摩擦ブレーキに係る制御の実施期間に応じて変化する第2のスコアを積算することにより求められる。第2のスコアは、例えば、摩擦ブレーキに係る制御の実施期間が短いほど小さくなり、実施期間が長いほど大きくなる。低温判定装置121は、ステップS203の処理において、摩擦ブレーキに係る制御が実施されたと判定される度に第2のスコアを求める。そして、低温判定装置121は、車両(例えば車両50)の駐車完了後に求められたm回分の第2のスコアを積算することにより、カウンタYの値を求める(ここで、“m”は自然数である)。
【0074】
低温判定装置121は、車両50についての低温判定に係るカウンタXの値とカウンタYの値との加算値が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205の処理において、上記加算値が閾値より小さいと判定された場合(ステップS205:Yes)、低温判定装置121は、低温判定フラグをON状態にする(ステップS206)。他方で、ステップS205の処理において、上記加算値が閾値より大きいと判定された場合(ステップS205:No)、低温判定装置121は、低温判定フラグをOFF状態にする(ステップS207)。
【0075】
変形例に係る管制サーバ12の出庫動作の一例として、車両50を対象とした出庫動作について
図7のフローチャートを参照して説明する。
図7に示す出庫動作は、
図6に示す低温判定動作とは別個に行われる。
【0076】
図7において、管制サーバ12は、車両50の出庫予約指示があるか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101の処理において、車両50の出庫予約指示がないと判定された場合(ステップS101:No)、管制サーバ12は、車両50について出庫に係る制御を実施せずに(ステップS110)、車両50についての出庫動作は終了される。
【0077】
ステップS101の処理において、車両50の出庫予約指示があると判定された場合(ステップS101:Yes)、管制サーバ12は、車両50に係る低温判定動作(
図6参照)の結果に基づいて、低温判定フラグがON状態であるか否かを判定する(ステップS301)。
【0078】
ステップS301の判定において、低温判定フラグがON状態であると判定された場合(ステップS301:Yes)、管制サーバ12の演算装置122は、低温判定フラグの状態と他車両に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、低リスクルートを、車両50の走行ルートとして演算する。その後、管制サーバ12の配信装置123は、車両50に対して、演算装置122により演算された低リスクルートを示す情報を、スマートセンタ40を介して送信する。その後、管制サーバ12は、車両50に対して、制御開始指示を、スマートセンタ40を介して送信する(ステップS302)。
【0079】
ステップS301の処理において、低温判定フラグがON状態ではない(即ち、低温判定フラグがOFF状態である)と判定された場合(ステップS301:No)、演算装置122は、低温判定フラグの状態と他車両に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、通常ルートを、車両50の走行ルートとして演算する。その後、配信装置123は、車両50に対して、演算装置122により演算された通常ルートを示す情報を、スマートセンタ40を介して送信する。その後、管制サーバ12は、車両50に対して、制御開始指示を、スマートセンタ40を介して送信する(ステップS303)。
【0080】
ステップS302又はS303の処理の後、管制サーバ12は、車両50の出庫が完了したか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の処理において、車両50の出庫が完了したと判定された場合(ステップS304:Yes)、車両50についての出庫動作は終了される。
【0081】
ステップS304の処理において、車両50の出庫が完了していないと判定された場合(ステップS304:No)、ステップS301の処理が実施される。上述したように、
図6に示す低温判定動作は、
図7に示す出庫動作と別個に行われる。このため、車両50の出庫が完了するまでに、
図6に示す低温判定動作により低温判定フラグの状態が変化する可能性がある。
【0082】
例えば、車両50の出庫開始時に低温判定フラグがON状態であったが、車両50が乗車場(
図1参照)に向かって走行しているときに低温判定フラグがOFF状態になると、上述したステップS302の処理に代えて、上述したステップS303の処理が行われる。つまり、この場合、車両50について低リスクな走行態様が解除される。
【0083】
尚、上述したステップS302の処理において、演算装置122は、例えば、
図6に示す低温判定動作のカウンタYの値(即ち、車両50のブレーキフルードの温度を反映していると考えられる値)に応じて、車両50の目標車間距離を変更してよい。つまり、車両50の走行時に摩擦ブレーキが制御され、ブレーキフルードの温度が上昇したと推定される場合には、演算装置122は、車両50の目標車間距離を短くしてよい。同様に、演算装置122は、カウンタYの値に応じて、車両50の上限速度を変更してよい。つまり、車両50の走行時に摩擦ブレーキが制御され、ブレーキフルードの温度が上昇したと推定される場合には、演算装置122は、車両50の上限速度を高くしてよい。
【0084】
<コンピュータプログラム>
コンピュータプログラムに係る実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は、実施形態に係るコンピュータの構成を示すブロック図である。
【0085】
図8において、コンピュータ90は、例えば管制サーバ12を構成する。コンピュータ90は、CPU(Central Processing Unit)91、RAM(Random Access Memory)92、HDD(Hard Disk Drive)93及びI/O(Input/Output)94を備えて構成されている。CPU91、RAM92、HDD93及びI/O94は、バス95により相互に接続されている。HDD93には、本実施形態に係るコンピュータプログラム931が予め格納されている。
【0086】
コンピュータプログラム931によるCPU91の処理の一例として、車両50を対象とした出庫処理について説明する。CPU91は、車両50の出庫予約指示があるか否かを判定する。車両50の出庫予約指示があると判定された場合、CPU91は、車両50の駐車時間を算出する。CPU91は、駐車時間が、判定値より長いか否かを判定する。
【0087】
駐車時間が判定値より長いと判定された場合、CPU91は、外気温が閾気温より低いか否かを判定する。外気温が閾気温より低いと判定された場合、CPU91は、車両50の状態が低温状態であると推定し、低温判定フラグをON状態にする。他方で、駐車時間が判定値より短いと判定された場合、又は、外気温が閾気温より高いと判定された場合、CPU91は、低温判定フラグをOFF状態にする。
【0088】
次に、CPU91は、低温判定フラグの状態と、他車両に係る車両データベース及び地図データベースとに基づいて、車両50の走行ルートを演算する。低温判定フラグがON状態である場合、CPU91は、車両50の走行ルートとして低リスクルートを演算する。他方で、低温判定フラグがOFF状態である場合、CPU91は、車両50の走行ルートとして通常ルートを演算する。
【0089】
その後、CPU91は、車両50に対して、演算された走行ルート(即ち、低リスクルート又は通常ルート)を、スマートセンタ40を介して送信する。そして、CPU91は、車両50に対して、制御開始指示を、スマートセンタ40を介して送信する。
【0090】
尚、コンピュータ90が、例えば、コンピュータプログラム931を格納するCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の光ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、等の記録媒体から、コンピュータプログラム931を読み込むことにより、HDD93にコンピュータプログラム931が格納されてよい。或いは、コンピュータ90が、例えばインターネット等のネットワークを介して、コンピュータプログラム931をダウンロードすることにより、HDD53にコンピュータプログラム931が格納されてよい。
【0091】
コンピュータプログラム931によれば、上述した実施形態におけるシステム1と同様に、駐車場内の安全性の低下を抑制することができる。コンピュータプログラム931によれば、上述した実施形態における、例えば管制サーバ12を比較的容易に実現することができる。
【0092】
以上に説明した実施形態及び変形例から導き出される発明の各種態様を以下に説明する。
【0093】
発明の一態様に係る自動駐車システムは、対象車両の状態を推定する推定手段と、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、を備えるというものである。上述の実施形態においては、「ブレーキ温度低温判定装置122」が「推定手段」の一例に相当し、「走行ルート演算装置122」が「設定手段」の一例に相当し、「車両50」が「対象車両」の一例に相当する。
【0094】
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る走行経路が、前記対象車両と通路端部との間の距離が前記低温状態でない場合に比べて広い走行経路に設定されてよい。
【0095】
当該自動駐車システムでは、前記設定手段は、地図情報に基づいて前記対象車両に係る走行経路を設定してよい。ここで、前記地図情報には、通路構造に係る情報及び静的障害物に係る情報が含まれてよい。
【0096】
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る目標車間距離が、前記低温状態でない場合に比べて長い距離に設定されてよい。
【0097】
前記低リスク走行態様では、前記対象車両に係る上限速度が、前記低温状態でない場合に比べて低い速度に設定されてよい。
【0098】
当該自動駐車システムでは、前記設定手段は、前記低リスク走行態様が設定された前記対象車両の状態が、前記低温状態でなくなったときに、前記低リスク走行態様を解除してよい。
【0099】
当該自動駐車システムでは、前記設定手段は、前記対象車両の周囲を走行する他車両の走行態様を、前記対象車両との関係に起因するリスクが低減される走行態様に設定してよい。この態様では、前記他車両の走行経路が、前記対象車両との関係に起因するリスクが低減される走行経路に設定されてよい。
【0100】
本発明の一態様に係る設定方法は、自動駐車システムにおける設定方法であって、前記自動駐車システムが、対象車両の状態を推定する推定工程と、前記自動駐車システムが、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定工程と、を含むというものである。
【0101】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、自動駐車システムが備えるコンピュータを、対象車両の状態を推定する推定手段と、前記対象車両の状態が低温状態であることを条件に、前記対象車両の走行態様を、前記対象車両に係るリスクが低減される走行態様である低リスク走行態様に設定する設定手段と、として機能させるというものである。
【0102】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動駐車システム、設定方法及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…システム、10…駐車場管理センタ、11…認証サーバ、12…管制サーバ、13…管理者端末、20…予約サーバ、30…認証サーバ、40…スマートセンタ、50…車両、51…通信ECU、60…ユーザ端末