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特許7578123木架構の接続構造、及び、木架構の接続方法
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  • 特許-木架構の接続構造、及び、木架構の接続方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】木架構の接続構造、及び、木架構の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241029BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
E04B1/58 504L
E04B1/26 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022125484
(22)【出願日】2022-08-05
(65)【公開番号】P2024022120
(43)【公開日】2024-02-16
【審査請求日】2024-07-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-256622(JP,A)
【文献】特開2010-7436(JP,A)
【文献】特開2011-162938(JP,A)
【文献】実開昭55-156104(JP,U)
【文献】特開2008-202252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対向する上内面及び下内面を有する貫通孔を有する木質縦材と、前記貫通孔を貫通する木質貫通材とを接続する木架構の接続構造であって、
前記上内面又は前記下内面のうちのいずれか一方に設けられ前記木質縦材よりも高強度の支圧伝達材、及び、
前記貫通孔に貫通された前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記支圧伝達材側に位置する第1面と前記支圧伝達材との間隔を離隔する離隔材、
を有し、
前記離隔材は、前記木質貫通材に螺合される雄ねじ部を備える押圧部材を有し、前記押圧部材が前記支圧伝達材に向かって螺退されて当該支圧伝達材を押圧していることを特徴とする木架構の接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の木架構の接続構造であって、
前記木質貫通材は、上下方向に沿って設けられ前記第1面側に位置する端に雌ねじが形成されたラグスクリューボルトを有し、
前記押圧部材は前記雌ねじに螺合されていることを特徴とする木架構の接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の木架構の接続構造であって、
前記雄ねじ部に螺合部材が螺合されていることを特徴とする木架構の接続構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の木架構の接続構造であって、
前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記第1面の裏に位置する第2面に前記木質縦材よりも高強度の第1補強材を備え、
前記ラグスクリューボルトは、前記木質貫通材の高さ方向の全長に亘って設けられており、
前記ラグスクリューボルトの前記第2面側の端が前記第1補強材に当接していることを特徴とする木架構の接続構造。
【請求項5】
請求項3に記載の木架構の接続構造であって、
前記木質貫通材の前記第1面に前記木質貫通材よりも高強度の第2補強材を備えており、
前記第2補強材は、前記雄ねじ部が挿通されて前記ラグスクリューボルトの前記第1面側の端が当接され、
前記螺合部材は、前記第2補強材に向かって螺退され、当該第2補強材を押圧していることを特徴とする木架構の接続構造。
【請求項6】
貫通孔を有する木質縦材と、前記貫通孔を貫通する木質貫通材でなる木架構の接続方法であって、
前記木質縦材に形成され、上下方向に対向する上内面及び下内面を有する前記貫通孔の、前記上内面又は前記下内面のいずれか一方に前記木質縦材よりも高強度の支圧伝達材を備える木質縦材準備ステップと、
前記木質貫通材に螺合される雄ねじ部を備える押圧部材を有し前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記支圧伝達材側に位置する第1面と前記支圧伝達材との間隔を離隔する離隔材を前記木質貫通材に備える木質貫通材準備ステップと、
前記離隔材を備えた前記木質貫通材を前記貫通孔に貫通させる貫通ステップと、
前記押圧部材を前記支圧伝達材に向かって螺退させ当該支圧伝達材を押圧する支圧伝達材押圧ステップと、
を有することを特徴とする木架構の接続方法。
【請求項7】
請求項6に記載の木架構の接続方法であって、
前記木質貫通材準備ステップは、一方の端に雌ねじが形成されたラグスクリューボルトを前記木質貫通材の上下方向に沿わせ、前記一方の端を前記第1面側に配置して備えるラグスクリューボルト螺着ステップと、
前記ラグスクリューボルトの前記雌ねじに前記押圧部材を螺合する押圧部材螺合ステップと、
を有することを特徴とする木架構の接続方法。
【請求項8】
請求項7に記載の木架構の接続方法であって、
前記木質貫通材準備ステップは、前記雄ねじ部に螺合部材を螺合する螺合部材螺合ステップを有しており、
前記支圧伝達材押圧ステップの後に、前記螺合部材を前記押圧部材に対して螺退させる螺合部材螺退ステップを有することを特徴とする木架構の接続方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の木架構の接続方法であって、
前記ラグスクリューボルトは前記木質貫通材の高さ方向の全長に亘って設けられており、
前記木質貫通材準備ステップは、前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記第1面の裏に位置する第2面に前記木質縦材よりも高強度の第1補強材を、前記ラグスクリューボルトの他方の端に当接させて備える第1補強材取付ステップを有することを特徴とする木架構の接続方法。
【請求項10】
請求項8に記載の木架構の接続方法であって、
前記木質貫通材準備ステップは、前記木質貫通材の前記第1面に前記木質貫通材よりも高強度の第2補強材を、前記ラグスクリューボルトの前記一方の端を当接させて備える第2補強材配置ステップを有し、
前記第2補強材配置ステップの後に、前記螺合部材が螺合された前記押圧部材の前記雄ねじ部を、前記第2補強材に設けられた挿通孔を挿通させて前記ラグスクリューボルトに螺合する前記押圧部材螺合ステップを実行し、
前記支圧伝達材押圧ステップの後に、前記螺合部材螺退ステップを実行し、前記螺合部材により前記第2補強材を前記木質貫通材側に押圧することを特徴とする木架構の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木架構の接続構造、及び、木架構の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木質の柱に貫通孔を形成し、この貫通孔に木質の梁などを通した木架構では楔を用いて貫通孔と梁などとの緩みを防止していた。木質の部材は、繊維と直交する方向の強度が低いため楔を用いてもめり込みが生じるなどして高い強度は得られない。このため、例えば、特許文献1のように、木質部材同士の接触面と直交し、かつ木質部材の繊維の方向と直交する埋設穴を形成し、この埋設穴内にめり込み防止部材をなす棒状軸部を埋設し、エポキシ樹脂等の固着材により棒状軸部の周囲を埋設穴に固着することによりめり込みを抑えることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-202252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の接続構造では、エポキシ樹脂等の固着材により棒状軸部を埋設穴に固着しているので、施工が煩雑であると共に、固着材を使用しているため木架構を解体して木質の梁、柱をリユースすることが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、施工性に優れ、木質材のリユースを可能とする木架構の接続構造、及び、木架構の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の木架構の接続構造は、
上下方向に対向する上内面及び下内面を有する貫通孔を有する木質縦材と、前記貫通孔を貫通する木質貫通材とを接続する木架構の接続構造であって、
前記上内面又は前記下内面のうちのいずれか一方に設けられ前記木質縦材よりも高強度の支圧伝達材、及び、
前記貫通孔に貫通された前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記支圧伝達材側に位置する第1面と前記支圧伝達材との間隔を離隔する離隔材、
を有し、
前記離隔材は、前記木質貫通材に螺合される雄ねじ部を備える押圧部材を有し、前記押圧部材が前記支圧伝達材に向かって螺退されて当該支圧伝達材を押圧していることを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書および添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工性に優れ、木質材のリユースを可能とする木架構の接続構造、及び、木架構の接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる木架構の接続構造を示す斜視図である。
図2】木架構の接続構造を示す分解斜視図である。
図3】離隔材の構成を示す分解斜視図である。
図4】貫通ステップを示す縦断面図である。
図5】木質柱の貫通孔に木質梁が貫通している貫通ステップ後の状態を示す縦断面図である。
図6】木架構の接続方法を示すフロー図である。
図7図7(a)は、貫通ステップ後の六角ボルト、六角ナット及び支圧伝達材の状態を示す縦断面図であり、図7(b)は、支圧伝達材が六角ボルトに押圧されている状態を示す縦断面図であり、図7(c)は、六角ナットにより第2補強材が押圧されている状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1:上下方向に対向する上内面及び下内面を有する貫通孔を有する木質縦材と、前記貫通孔を貫通する木質貫通材とを接続する木架構の接続構造であって、
前記上内面又は前記下内面のうちのいずれか一方に設けられ前記木質縦材よりも高強度の支圧伝達材、及び、
前記貫通孔に貫通された前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記支圧伝達材側に位置する第1面と前記支圧伝達材との間隔を離隔する離隔材、
を有し、
前記離隔材は、前記木質貫通材に螺合される雄ねじ部を備える押圧部材を有し、前記押圧部材が前記支圧伝達材に向かって螺退されて当該支圧伝達材を押圧していることを特徴とする木架構の接続構造である。
【0010】
態様1の木架構の接続構造によれば、木質縦材が有する貫通孔に貫通された木質貫通材に設けられた離隔材は、雄ねじ部を備える押圧部材が木質貫通材に螺合されており、この押圧部材が支圧伝達材に向かって螺退されて支圧伝達材を押圧している。このため、押圧部材により木質縦材との間で緩みなく接続されるので高い強度を備えることが可能である。
【0011】
また、押圧部材は上内面又は下内面のうちのいずれか一方に設けられ木質縦材よりも高強度の支圧伝達材を押圧するので、押圧部材から伝達される支圧を支圧伝達材全体で受けることが可能である。このため、支圧が木質縦材の局所に作用しないので、木質縦材の損傷を防止することが可能である。
【0012】
また、押圧部材は木質貫通材に螺合されており、接着剤などの固着材を使用していない。このため、施工が容易であり、接続された木質縦材と木質貫通材とを解体して容易にリユースすることが可能となる。
【0013】
態様2:態様1に記載の木架構の接続構造であって、
前記木質貫通材は、上下方向に沿って設けられ前記第1面側に位置する端に雌ねじが形成されたラグスクリューボルトを有し、
前記押圧部材は前記雌ねじに螺合されていることを特徴とする。
【0014】
態様2の木架構の接続構造によれば、押圧部材が、木質貫通材の上下方向に沿って設けられるラグスクリューボルトの、第1面側に位置する端に形成された雌ねじ螺合されているので、ラグスクリューボルトのほぼ全長に亘って外周に設けられている雄ねじにより支圧を伝達するので、押圧部材が単独で螺合されている場合よりも支圧が分散される。このため、支圧が木質貫通材の局所に集中することを防止することが可能となる。
【0015】
態様3:態様2に記載の木架構の接続構造であって、
前記雄ねじ部に螺合部材が螺合されていることを特徴とする。
態様3の木架構の接続構造によれば、雄ねじ部に螺合されている螺合部材を、押圧部材に対して螺退させることにより、螺合部材をラグスクリューボルト側に移動させて螺着させ、押圧部材の緩みを防止することが可能となる。
【0016】
態様4:態様2または3に記載の木架構の接続構造であって、
前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記第1面の裏に位置する第2面に前記木質縦材よりも高強度の第1補強材を備え、
前記ラグスクリューボルトは、前記木質貫通材の高さ方向の全長に亘って設けられており、
前記ラグスクリューボルトの前記第2面側の端が前記第1補強材に当接していることを特徴とする。
【0017】
態様4の木架構の接続構造によれば、木質貫通材の高さ方向の全長に亘って設けられたラグスクリューボルトは、木質貫通材の第1面の裏に位置する第2面側の端が木質貫通材の第2面に備えられた第1補強材に当接している。このため、押圧部材が螺退されて支圧伝達材を押圧する際には、ラグスクリューボルトの第2面側の端が第1補強材を押圧する。このため、支圧を第1補強材の全体で受けるので、木質縦材に作用する支圧を分散させることが可能である。
【0018】
態様5:態様3または4に記載の木架構の接続構造であって、
前記木質貫通材の前記第1面に前記木質貫通材よりも高強度の第2補強材を備えており、
前記第2補強材は、前記雄ねじ部が挿通されて前記ラグスクリューボルトの前記第1面側の端が当接され、
前記螺合部材は、前記第2補強材に向かって螺退され、当該第2補強材を押圧していることを特徴とする。
【0019】
態様5の木架構の接続構造によれば、第2補強材を挿通している押圧部材を螺退させて支圧伝達材を押圧させた後に、雄ねじ部に螺合されている螺合部材を第2補強材に向かって螺退させることにより、ラグスクリューボルトに螺合されている押圧部材の緩みを防止することが可能となる。また、螺合部材が第2補強材を押圧することにより、支圧を第2補強材の全体で受けるので、木質貫通材に作用する支圧を分散させることが可能である。
【0020】
態様6:貫通孔を有する木質縦材と、前記貫通孔を貫通する木質貫通材でなる木架構の接続方法であって、
前記木質縦材に形成され、上下方向に対向する上内面及び下内面を有する前記貫通孔の、前記上内面又は前記下内面のいずれか一方に前記木質縦材よりも高強度の支圧伝達材を備える木質縦材準備ステップと、
前記木質貫通材に螺合される雄ねじ部を備える押圧部材を有し前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記支圧伝達材側に位置する第1面と前記支圧伝達材との間隔を離隔する離隔材を前記木質貫通材に備える木質貫通材準備ステップと、
前記離隔材を備えた前記木質貫通材を前記貫通孔に貫通させる貫通ステップと、
前記押圧部材を前記支圧伝達材に向かって螺退させ当該支圧伝達材を押圧する支圧伝達材押圧ステップと、
を有することを特徴とする木架構の接続方法である。
【0021】
態様6の木架構の接続方法によれば、木質縦材に貫通孔に形成して上内面又は下内面のいずれか一方に支圧伝達材を設け、木質貫通材に螺合される雄ねじ部を備えた押圧部材を有する離隔材が設けられた木質貫通材を貫通孔に貫通させて、押圧部材を支圧伝達材に向かって螺退させるだけで、木質縦材と木質貫通材とを緩みなく接続することが可能となり、また支圧を支圧伝達材全体で受けることが可能となる。また、本発明の木架構の接続方法では、接着剤などの固着材を使用しないので、施工が容易であり、接続された木質縦材と木質貫通材とを解体して容易にリユースすることが可能となる。
【0022】
態様7:態様6に記載の木架構の接続方法であって、
前記木質貫通材準備ステップは、一方の端に雌ねじが形成されたラグスクリューボルトを前記木質貫通材の上下方向に沿わせ、前記一方の端を前記第1面側に配置して備えるラグスクリューボルト螺着ステップと、
前記ラグスクリューボルトの前記雌ねじに前記押圧部材を螺合する押圧部材螺合ステップと、
を有することを特徴とする。
【0023】
態様7の木架構の接続方法によれば、木質貫通材の上下方向に沿って設けられるラグスクリューボルトの、第1面側に位置する端に形成された雌ねじに押圧部材を螺合するので、押圧部材を上下方向に沿わせてより確実に螺進及び螺退させることが可能となる。また、木質貫通材にラグスクリューボルトを備え、このラグスクリューボルトに押圧部材を螺合するだけで、押圧部材に伝達される支圧をラグスクリューボルトのほぼ全長に亘って外周に設けられている雄ねじにより分散して伝達する構造を容易に実現することが可能となる。
【0024】
態様8:態様7に記載の木架構の接続方法であって、
前記木質貫通材準備ステップは、前記雄ねじ部に螺合部材を螺合する螺合部材螺合ステップを有しており、
前記支圧伝達材押圧ステップの後に、前記螺合部材を前記押圧部材に対して螺退させる螺合部材螺退ステップを有することを特徴とする。
【0025】
態様8の木架構の接続方法によれば、支圧伝達材押圧ステップにより押圧部材を支圧伝達材に向かって螺退させ当該支圧伝達材を押圧した後に、雄ねじ部に螺合されている螺合部材を押圧部材に対して螺退させることにより、螺合部材をラグスクリューボルト側に移動させて螺着させ、押圧部材の緩みを防止することが可能となる。このため、押圧部材が支圧伝達材を押圧している状態をより確実に維持させることが可能となる。
【0026】
態様9:態様7または8に記載の木架構の接続方法であって、
前記ラグスクリューボルトは前記木質貫通材の高さ方向の全長に亘って設けられており、
前記木質貫通材準備ステップは、前記木質貫通材の上面及び下面のうちの前記第1面の裏に位置する第2面に前記木質縦材よりも高強度の第1補強材を、前記ラグスクリューボルトの他方の端に当接させて備える第1補強材取付ステップを有することを特徴とする。
【0027】
態様9の木架構の接続方法によれば、木質貫通材の高さ方向の全長に亘って設けられているラグスクリューボルトの他方の端に当接するように、木質貫通材の第2面に第1補強材を備えることにより、押圧部材及びラグスクリューボルトを介して伝達される支圧を、第1補強材により分散して伝達する構造を容易に実現することが可能となる。
【0028】
態様10:態様8または9に記載の木架構の接続方法であって、
前記木質貫通材準備ステップは、前記木質貫通材の前記第1面に前記木質貫通材よりも高強度の第2補強材を、前記ラグスクリューボルトの前記一方の端を当接させて備える第2補強材配置ステップを有し、
前記第2補強材配置ステップの後に、前記螺合部材が螺合された前記押圧部材の前記雄ねじ部を、前記第2補強材に設けられた挿通孔を挿通させて前記ラグスクリューボルトに螺合する前記押圧部材螺合ステップを実行し、
前記支圧伝達材押圧ステップの後に、前記螺合部材螺退ステップを実行し、前記螺合部材により前記第2補強材を前記木質貫通材側に押圧することを特徴とする。
【0029】
態様10の木架構の接続方法によれば、ラグスクリューボルトの一方の端に当接するように、木質貫通材の第1面に第2補強材を備え、押圧部材を螺退させて支圧伝達材を押圧させた後に、雄ねじ部に螺合されている螺合部材を押圧部材に対して螺退させて第2補強材に当接させることにより、ラグスクリューボルトに螺合されている押圧部材の緩みを防止することが可能である。また、螺合部材が第2補強材に当接されることにより、押圧部材及びラグスクリューボルトを介して伝達される支圧を、第2補強材により分散して伝達する構造を容易に実現することが可能となる。
【0030】
===本実施の形態について===
以下、本発明の一実施形態に係る木架構の接続構造及び木架構の接続方法について図面を参照して説明する。
【0031】
本実施形態に係る木架構の接続構造を、図1に示すように、木質縦材としての木質柱1と、木質柱1に設けられた貫通孔10に貫通する木質貫通材としての木質梁2との接続部を例に挙げて説明する。以下の説明においては、木質梁2の長手方向をX方向、木質梁2の幅方向をY方向、木質柱1の長手方向(鉛直方向)をZ方向として示す。また、木質柱1と木質梁2との接続構造を構成する各部位であっても、また、木質柱1と木質梁2との接続構造を構成する各部材については単体の状態であっても、木質柱1と木質梁2とが接続された状態でX方向、Y方向、Z方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0032】
本実施形態に係る木架構の接続構造に用いられる木質柱1及び木質梁2は、木目の方向(繊維方向)が長手方向に沿っている。木質柱1と木質梁2との接続構造は、図1図2に示すように、木質柱1に設けられた貫通孔10に後述する離隔材3が設けられた木質梁2が貫通されて接続される。
【0033】
木質柱1に設けられている貫通孔10は、Y方向の幅が、木質梁2の幅とほぼ同じ幅を有し、Z方向の高さは、木質梁2の梁成よりも大きく形成され、断面形状が上下方向に長い長方形状をなしている。すなわち、貫通孔10は、当該貫通孔10に貫通された木質梁2の上面2aと上下方向に対向する上内面10aと、木質梁2の下面2bと上下方向に対向する下内面10bとが上下方向に対向しており、木質梁2のY方向における両側面と対向する左内面10c及び右内面10dとにより形成されている。
貫通孔10の上内面10aには、ほぼ全面を覆う鋼板でなる支圧伝達材4がねじ止めされている。
【0034】
木質梁2には、貫通孔10に貫通されて接続される接続状態で、貫通孔10内に配置される位置に離隔材3が設けられている。また、本実施形態においては、木質梁2の上面2aが、貫通孔に貫通された木質貫通材の支圧伝達材側に位置する第1面に相当し、下面2bが、木質貫通材の第1面の裏に位置する第2面に相当する。
【0035】
離隔材3は、図3図4に示すように、木質梁2の下面2bの下に設けられ鋼板でなる第1補強材31と、木質梁2の上面2aに載置され鋼板でなる第2補強材32と、第1補強材31と第2補強材32との間に上下方向に沿って木質梁2に螺着されるラグスクリューボルト33と、ラグスクリューボルト33に螺合される押圧部材としての六角ボルト34と、六角ボルト34に螺合された螺合部材としての六角ナット35と、を有している。
【0036】
木質梁2に螺着されるラグスクリューボルト33は、接続状態において上内面10aと下内面10bとの間に配置される部位に複数螺着されている。各ラグスクリューボルト33は、木質梁2の梁成と同一の長さをなしている。このため、木質梁2に螺着されたラグスクリューボルト33の上下の端面は、それぞれ木質梁2の上面2aまたは下面2bと面一の状態で露出している。木質梁2に螺着されたラグスクリューボルト33の上端には、六角ボルト34が螺合される雌ねじ33aが設けられている。
【0037】
第1補強材31は、図5に示すように、接続状態において木質柱1の下内面10bと対向し、下内面10bのほぼ全面を覆う大きさをなし、木質梁2の下面2bにねじ止めされている。第2補強材32は、接続状態において木質柱1に設けられた支圧伝達材4と対向し、支圧伝達材4とほぼ同じ大きさをなしている。第2補強材32には、木質梁2に螺着されたラグスクリューボルト33の位置に合わせて、六角ボルト34の雄ねじ部34aが挿通される挿通孔32a(図3)が設けられている。挿通孔32aは、雄ねじ部34aの外径よりも大きく、ラグスクリューボルト33の外径よりも小さく形成されている。
【0038】
離隔材3は、予め木質梁2に取り付けておく。図6に示すように、離隔材3の木質梁2への取り付け方法は、木質梁2の所定の位置にラグスクリューボルト33を螺着し(ラグスクリューボルト螺着ステップS2a)、木質梁2の下面2bに第1補強材31をねじ止めし(第1補強材取付ステップS2b)、第2補強材32を、ラグスクリューボルト33の位置に挿通孔32aを合わせて木質梁2の上面2aに載置し(第2補強材配置ステップS2c)、六角ナット35を六角ボルト34に螺合して(螺合部材螺合ステップS2d)、雄ねじ部34aを挿通孔32aに挿通させてラグスクリューボルト33に螺合する(押圧部材螺合ステップS2e)。このとき、離隔材3が設けられた木質梁2を貫通孔10に貫通させる前における、第1補強材31の下面から六角ボルト34の頭部34bの上面までの高さは、貫通孔10の上内面10aと下内面10bとの間隔より低くなるように六角ボルト34をラグスクリューボルト33に螺合しておく。
【0039】
本実施形態における木架構の接続方法は、図6に示すように、まず、図4に示すように、予め木質柱1に支圧伝達材4をねじ止めし(木質縦材準備ステップS1)、また上述したように木質梁2に離隔材3を取り付けておく(木質貫通材準備ステップS2)。
次に、図5に示すように、離隔材3が備えられた木質梁2を、支圧伝達材4が設けられた木質柱1の貫通孔10に貫通させ(貫通ステップS3)、離隔材3が貫通孔10内に収容される位置に木質梁2を配置する。このとき、図7(a)に示すように、六角ボルト34の頭部34bの上面と支圧伝達材4の下面とは間隔が空いている。
【0040】
次に、図7(b)に示すように、六角ボルト34を支圧伝達材4に向かって螺退させ、すなわち、ラグスクリューボルト33から抜け出る方向に回転させ、六角ボルト34の頭部34bの上面を支圧伝達材4に密着させて、六角ボルト34の頭部34bにより支圧伝達材4を押圧する(支圧伝達材押圧ステップS4)。
【0041】
次に、図7(c)に示すように、六角ボルト34に螺合されている六角ナット35を六角ボルト34に対して螺退させ、すなわち、六角ボルト34から抜ける方向に回転させ、六角ナット35を第2補強材に密着させて、六角ナット35により第2補強材32を木質梁2側に押圧する(螺合部材螺退ステップS5)。これにより、六角ボルト34の緩みが防止されて六角ボルト34の螺進が規制され、六角ボルト34が支圧伝達材4を押圧する状態が維持され、木質柱1と木質梁2とがより強固に接続される。
【0042】
本実施形態の木架構の接続構造及び木架構の接続方法によれば、第2補強材32を挿通している六角ボルト34を螺退させて支圧伝達材4を押圧させた後に、雄ねじ部34aにおいて第2補強材32よりも支圧伝達材4側に螺合されている六角ナット35を、六角ボルト34に対して螺退させて、すなわち六角ボルト34から抜ける方向に回転させて第2補強材32に当接させることにより、ラグスクリューボルト33に螺合されている六角ボルト34の緩みを防止することが可能となる。また、六角ナット35が第2補強材32に当接されることにより、支圧を第2補強材32の全体で受けるので、木質梁2に作用する支圧を分散させることが可能である。
【0043】
また、木質梁2に設けられたラグスクリューボルト33に螺合された六角ボルト34を螺退させることにより支圧伝達材4を押圧しているので、木質柱1と木質梁2との接続には接着剤などの固着材を使用していない。このため、施工が容易であり、接続された木質柱1と木質梁2とを解体した場合には、木質柱1及び木質梁2を容易にリユースすることが可能となる。 また、木質柱1と木質梁2との接続に接着剤等を用いていないので、硬化を待つための養生時間が不要であり、短時間で施工を完了することが可能となる。
【0044】
また、工場などにより木質柱1に貫通孔10を形成すると共に、上内面10aに支圧伝達材4を取り付け、木質梁2に離隔材3を取り付けて施工現場に搬入し、施工現場にて木質柱1を立設し、立設した木質柱1の貫通孔10に離隔材3が設けられた木質梁2を貫通させて、離隔材3の六角ボルト34を螺退させて支圧伝達材4に押圧させるだけで、木質柱1と木質梁2とを容易に且つ強固に接続することが可能である。
【0045】
上記実施形態においては、貫通孔10の上内面10aに支圧伝達材4を備え、木質梁2に設けた離隔材3の六角ボルト34を螺退することにより六角ボルト34が上方に移動して支圧伝達材4を押圧する例について説明したがこれに限るものではない。例えば、貫通孔10の下内面10bに支圧伝達材4を備え、木質梁2に設けた離隔材3の六角ボルト34を螺退することにより六角ボルト34が下方に移動して支圧伝達材4を押圧する構成であっても構わない。
【0046】
また、上記実施形態においては、支圧伝達材4、第1補強材31及び第2補強材32を鋼板により形成した例について説明したが、これに限らず、例えば、木質柱または木質梁よりも高強度の部材で形成されていれば構わない。
【0047】
また、上記実施形態においては、離隔材3が螺合部材として六角ナット35を備えている例について説明したが、六角ナットは必ずしも設けられていなくとも構わない。また、第1補強材31及び第2補強材32も必ずしも設けられていなくとも構わない。六角ナット35、第1補強材31及び第2補強材32が設けられていない場合であっても、木質梁2にラグスクリューボルト33が螺着され、ラグスクリューボルト33に螺合された六角ボルト34が支圧伝達材4を押圧する状態が維持できれば構わない。この場合には、ラグスクリューボルト33の外周に設けられている雄ねじにより支圧が伝達されるので、六角ボルト34が単独で木質梁2に螺合される場合よりも支圧を分散することが可能となる。
【0048】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1 木質柱(木質縦材)、 2 木質梁(木質貫通材)、
2a 木質梁の上面(第1面)、2b 木質梁の下面(第2面)
3 離隔材、4 支圧伝達材、10 貫通孔、10a 貫通孔の上内面
10b 貫通孔の下内面、10c 貫通孔の左内面、10d 貫通孔の右内面、
31 第1補強材、32 第2補強材、32a 挿通孔、
33 ラグスクリューボルト、33a 雌ねじ、
34 六角ボルト(押圧部材)、34a 雄ねじ部、34b 頭部、
35 六角ナット(螺合部材)、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7