IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7578142フィルタ装置およびそれを備える高周波フロントエンド回路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】フィルタ装置およびそれを備える高周波フロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/075 20060101AFI20241029BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H03H7/075 Z
H01F27/00 S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022553935
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035278
(87)【国際公開番号】W WO2022071191
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020167576
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021050290
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭介
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/077498(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097774(WO,A1)
【文献】特開昭63-076313(JP,A)
【文献】国際公開第2012/066873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/075
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合する複数の共振器とを備え、
前記複数の共振器は、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置された第2共振器と、
前記第1共振器に対して、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置された第3共振器と、
前記第3共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第4共振器とを含み、
前記第3共振器および前記第4共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されており、
前記複数の共振器の各々は、
平板電極と、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端がキャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端が前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記第3共振器の第2ビアと、前記第4共振器の第2ビアとが共通化されており、
前記第3共振器の平板電極および前記第4共振器の平板電極は、前記第1方向に延伸する帯状電極として一体的に構成された第1部分を含み、
前記第3共振器の第1ビアは、前記第1部分の第1端部に接続され、
前記第4共振器の第1ビアは、前記第1部分の第2端部に接続され、
前記第1部分の前記第1端部と前記第2端部との間に、前記第3共振器および前記第4共振器の共通化された第2ビアが接続され、
前記共通化された第2ビアは、前記本体の前記第1部分が配置される位置とは異なる位置においてオフセットしている、フィルタ装置。
【請求項2】
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合する複数の共振器とを備え、
前記複数の共振器は、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置された第2共振器と、
前記第1共振器に対して、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置された第3共振器と、
前記第3共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第4共振器とを含み、
前記第3共振器および前記第4共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されており、
前記複数の共振器の各々は、
平板電極と、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端がキャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端が前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記第3共振器の第2ビアと、前記第4共振器の第2ビアとが共通化されており、
前記第3共振器の平板電極および前記第4共振器の平板電極は、
前記第1方向に延伸する帯状電極として一体的に構成された第1部分と、
前記第1部分における前記第1方向に沿った中央部から、前記第1共振器側の前記第2方向に突出した第2部分とを含み、
前記第3共振器の第1ビアは、前記第1部分の第1端部に接続され、
前記第4共振器の第1ビアは、前記第1部分の第2端部に接続され、
前記第2部分に、前記第3共振器および前記第4共振器の共通化された第2ビアが接続される、フィルタ装置。
【請求項3】
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合する複数の共振器とを備え、
前記複数の共振器は、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置された第2共振器と、
前記第1共振器に対して、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置された第3共振器と、
前記第3共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第4共振器とを含み、
前記第3共振器および前記第4共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されており、
前記複数の共振器の各々は、
平板電極と、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端がキャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端が前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記第3共振器の第2ビアと、前記第4共振器の第2ビアとが共通化されており、
前記第3共振器の平板電極および前記第4共振器の平板電極は、
前記第1方向に延伸する帯状電極として一体的に構成された第1部分と、
前記第1部分における前記第1方向に沿った中央部から、前記第1共振器側の前記第2方向に突出した第2部分と、
前記第1部分の第1端部から前記第2部分と同方向に突出した第3部分と、
前記第1部分の第2端部から前記第2部分と同方向に突出した第4部分とを含み、
前記第3共振器の第1ビアは前記第3部分に接続され、
前記第4共振器の第1ビアは前記第4部分に接続され、
前記第2部分に、前記第3共振器および前記第4共振器の共通化された第2ビアが接続される、フィルタ装置。
【請求項4】
前記第1共振器は、前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分によって囲まれた領域に配置されており、
前記第2共振器は、前記第1部分、前記第2部分および前記第4部分によって囲まれた領域に配置されている、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合する複数の共振器とを備え、
前記複数の共振器は、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置された第2共振器と、
前記第1共振器に対して、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置された第3共振器と、
前記第3共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第4共振器とを含み、
前記第3共振器および前記第4共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されており、
前記複数の共振器の各々は、
平板電極と、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端がキャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端が前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記第3共振器の第2ビアと、前記第4共振器の第2ビアとが共通化されており、
前記第3共振器の平板電極および前記第4共振器の平板電極は、
前記第1方向に延伸する帯状電極として一体的に構成された第1部分と、
前記第1部分における前記第1方向に沿った中央部から、前記第1共振器側の前記第2方向に突出した第2部分と、
前記第1部分の第1端部から前記第2部分とは逆方向に突出した第5部分と、
前記第1部分の第2端部から前記第2部分とは逆方向に突出した第6部分とを含み、
前記第3共振器の第1ビアは前記第5部分に接続され、
前記第4共振器の第1ビアは前記第6部分に接続され、
前記第2部分に、前記第3共振器および前記第4共振器の共通化された第2ビアが接続される、フィルタ装置。
【請求項6】
前記第1共振器の第2ビアおよび前記第2共振器の第2ビアは、前記第3共振器の第2ビアおよび前記第4共振器の第2ビアと共通化されている、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合する複数の共振器とを備え、
前記複数の共振器は、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置された第2共振器と、
前記第1共振器に対して、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置された第3共振器と、
前記第3共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第4共振器とを含み、
前記第3共振器および前記第4共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されており、
前記複数の共振器の各々は、
平板電極と、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端がキャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記平板電極に接続され、他方端が前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記第3共振器の第2ビアと、前記第4共振器の第2ビアとが共通化されており、
前記第1共振器の第2ビアおよび前記第2共振器の第2ビアは、前記第3共振器の第2ビアおよび前記第4共振器の第2ビアと共通化されている、フィルタ装置。
【請求項8】
前記第1共振器の第2ビアおよび前記第2共振器の第2ビアは、前記本体の前記平板電極が配置される位置とは異なる位置において、前記第3共振器の第2ビアおよび前記第4共振器の第2ビアと共通化されている、請求項または請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記第1共振器および前記第2共振器における平板電極は、前記本体の法線方向を巻回方向とするコイルである、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記第1共振器および前記第2共振器における平板電極は、前記本体の法線方向に直交する方向を巻回方向とするコイルである、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記複数の共振器は、
前記第3共振器に対して、前記第2方向に隣り合って配置された第5共振器と、
前記第5共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第6共振器とをさらに含み、
前記第3共振器~前記第6共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合する複数の共振器とを備え、
前記複数の共振器は、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置された第2共振器と、
前記第1共振器に対して、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置された第3共振器と、
前記第3共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第4共振器とを含み、
前記第3共振器および前記第4共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されており、
前記複数の共振器は、
前記第3共振器に対して、前記第2方向に隣り合って配置された第5共振器と、
前記第5共振器に対して、前記第1方向に隣り合って配置された第6共振器とをさらに含み、
前記第3共振器~前記第6共振器において、前記接地端子に接続される経路の一部が共通化されている、フィルタ装置。
【請求項13】
前記フィルタ装置は、特定の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタである、請求項1~12のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えた、高周波フロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はフィルタ装置およびそれを備える高周波フロントエンド回路に関し、より特定的には、フィルタ装置の特性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のLC共振器が配置された多段型のフィルタ装置が知られている。たとえば、特開2019-79865号公報(特許文献1)には、直方体の本体において、4つのLC共振器が一方向に並んで配置されたバンドパスフィルタが開示されている。特開2019-79865号公報(特許文献1)においては、中間の2つの共振器の接地側のビア配線が共通化された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなフィルタ装置は、スマートフォン、携帯電話、あるいは携帯電話基地局のような通信装置に広く用いられている。このような通信装置においては、挿入損失のさらなる低減によるフィルタ特性の向上が求められている。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数のLC共振器を含むフィルタ装置における損失特性を改善させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るフィルタ装置は、本体と、接地端子と、複数の共振器とを備える。複数の共振器は、本体に配置されており、互いに電磁界結合している。複数共振器は、入力端子に接続された第1共振器と、出力端子に接続された第2共振器と、第3共振器および第4共振器とを含む。第2共振器は、第1共振器に対して第1方向に隣り合って配置される。第3共振器は、第1共振器に対して第1方向と直交する第2方向に隣り合って配置される。第4共振器は、3共振器に対して第1方向に隣り合って配置される。第3共振器および第4共振器において、接地端子に接続される経路の一部が共通化されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るフィルタ装置は4つの共振器を含んでおり、入力端子に接続される共振器(第1共振器)および出力端子に接続される共振器(第2共振器)が第1方向に隣り合って配置されており、これらの共振器に対して第2方向に2つの共振器(第3共振器,第4共振器)が配置されている。第3共振器および第4共振器は、第1方向に隣り合って配置されており、接地端子に接続される経路の一部が共通化されている。4つの共振器を上記のような配置とすることで、隣接する共振器との間隔を確保することができるので、フィルタ装置のQ値を向上させることができる。また、中段の共振器(第3共振器,第4共振器)の一部が共通化されており、これらの共振器間の磁気結合を強めることができるので、フィルタ装置のQ値をさらに向上させることができる。したがって、本開示に係るフィルタ装置において、フィルタ装置における損失特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路を有する通信装置のブロック図である。
図2】実施の形態1のフィルタ装置の等価回路図である。
図3図2のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図4図3のフィルタ装置の平面図である。
図5】比較例のフィルタ装置の平面図である。
図6】実施の形態1および比較例のフィルタ装置の共振器の配置を説明するための図である。
図7】実施の形態1および比較例のフィルタ装置における各モードの違いによる電流方向を説明するための図である。
図8】実施の形態1および比較例のフィルタ装置の通過特性を説明するための図である。
図9図8における挿入損失のグラフの部分拡大図である。
図10】変形例1のフィルタ装置の平面図である。
図11図10のフィルタ装置の等価回路図である。
図12】変形例2のフィルタ装置の平面図である。
図13】変形例3のフィルタ装置の平面図である。
図14】変形例4のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図15】変形例5のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図16】変形例6のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図17】変形例7のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図18】変形例8のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図19】変形例9のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図20】実施の形態2のフィルタ装置の等価回路図である。
図21図20のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図22】変形例10のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図23】変形例11のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図24】実施の形態3のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図25】実施の形態4のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図26図25のフィルタ装置の平面図である。
図27】変形例12のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図28図27のフィルタ装置の平面図である。
図29】変形例13のフィルタ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路20を有する通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、スマートフォンに代表される携帯端末、あるいは、携帯電話基地局である。
【0011】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナ12と、高周波フロントエンド回路20と、ミキサ30と、局部発振器32と、D/Aコンバータ(DAC)40と、RF回路50とを備える。また、高周波フロントエンド回路20は、バンドパスフィルタ22,28と、増幅器24と、減衰器26とを含む。なお、図1においては、高周波フロントエンド回路20が、アンテナ12から高周波信号を送信する送信回路を含む場合について説明するが、高周波フロントエンド回路20はアンテナ12を介して高周波信号を受信する受信回路を含んでいてもよい。
【0012】
通信装置10は、RF回路50から伝達された送信信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ12から放射する。RF回路50から出力された送信信号である変調済みのデジタル信号は、D/Aコンバータ40によってアナログ信号に変換される。ミキサ30は、D/Aコンバータ40によってデジタル信号からアナログ信号に変換された送信信号を、局部発振器32からの発振信号と混合して高周波信号へとアップコンバートする。バンドパスフィルタ28は、アップコンバートによって生じた不要波を除去して、所望の周波数帯域の送信信号のみを抽出する。減衰器26は、送信信号の強度を調整する。増幅器24は、減衰器26を通過した送信信号を、所定のレベルまで電力増幅する。バンドパスフィルタ22は、増幅過程で生じた不要波を除去するとともに、通信規格で定められた周波数帯域の信号成分のみを通過させる。バンドパスフィルタ22を通過した送信信号は、アンテナ12から放射される。
【0013】
上記のような通信装置10におけるバンドパスフィルタ22,28として、本開示に対応したフィルタ装置を採用することができる。
【0014】
(フィルタ装置の構成)
次に図2図4を用いて、実施の形態1のフィルタ装置100の詳細な構成について説明する。
【0015】
図2は、フィルタ装置100の等価回路図である。図2を参照して、フィルタ装置100は、入力端子T1と、出力端子T2と、共振器RC1~RC4とを備える。共振器RC1~RC4の各々は、インダクタおよびキャパシタを含むLC並列共振器である。共振器RC1は入力端子T1に接続されており、共振器RC2は出力端子T2に接続されている。共振器RC3,RC4は、共振器RC1と共振器RC2との間に接続されている。
【0016】
共振器RC1は、並列接続されたインダクタL1およびキャパシタC1を含む。インダクタL1およびキャパシタC1の一方の接続ノードN1Aは、入力端子T1に接続されている。インダクタL1およびキャパシタC1の他方の接続ノードN1Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0017】
共振器RC2は、並列接続されたインダクタL2およびキャパシタC2を含む。インダクタL2およびキャパシタC2の一方の接続ノードN2Aは、出力端子T2に接続されている。インダクタL2およびキャパシタC2の他方の接続ノードN2Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0018】
共振器RC3は、直列接続されたインダクタL3,L34と、当該インダクタL3,L34に並列に接続されたキャパシタC3とを含む。インダクタL3とキャパシタC3との接続ノードN3Aは、キャパシタC13を介して共振器RC1の接続ノードN1A(すなわち、入力端子T1)に接続されている。インダクタL34とキャパシタC3との接続ノードN3Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0019】
共振器RC4は、直列接続されたインダクタL4,L34と、当該インダクタL4,L34に並列に接続されたキャパシタC4とを含む。インダクタL4とキャパシタC4との接続ノードN4Aは、キャパシタC24を介して共振器RC2の接続ノードN2A(すなわち、出力端子T2)に接続されている。インダクタL34とキャパシタC4との接続ノードN4Bは、接地端子GNDに接続されている。すなわち、共振器RC4と共振器RC3とは、インダクタL34を共有している。
【0020】
キャパシタC12は、接続ノードN1Aと接続ノードN2Aとの間に接続されている。また、キャパシタC34は、接続ノードN3Aと接続ノードN4Aとの間に接続されている。
【0021】
各共振器同士は、電磁界結合により結合している。このように、フィルタ装置100は、入力端子T1と出力端子T2との間に、互いに電磁界結合する4段の共振器が配置された構成を有している。入力端子T1に入力された高周波信号は、共振器RC1~RC4の電磁界結合により伝達されて、出力端子T2から出力される。このとき、各共振器の共振周波数によって定まる周波数帯域の信号のみが出力端子T2に伝達される。すなわち、フィルタ装置100は各共振器の共振周波数を調整することによって、所望の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタとして機能する。
【0022】
図3は、フィルタ装置100の積層構造の一例を示す分解斜視図である。また、図4は、図3のフィルタ装置100における誘電体層LY2の平面図である。
【0023】
図3および図4を参照して、フィルタ装置100は、複数の誘電体層LY1~LY6が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の本体110を備えている。本体110において、複数の誘電体層LY1~LY6が積み上げられている方向を積層方向とする。本体110の各誘電体層は、たとえば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミック、あるいは樹脂により形成されている。本体110の内部において、各誘電体層に設けられた複数の電極、および、誘電体層間に形成された複数のビアによって、LC共振器を構成するためのインダクタおよびキャパシタが構成される。なお、本明細書において「ビア」とは、異なる誘電体層に設けられた電極同士を接続するために設けられた、積層方向に延在する導体を示す。ビアは、たとえば、導電ペースト、めっき、および/または金属ピンなどによって形成される。
【0024】
なお、以降の説明においては、本体110の積層方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって本体110の長辺に沿った方向を「X軸方向」(第1方向)とし、本体110の短辺に沿った方向を「Y軸方向」(第2方向)とする。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上側、負方向を下側と称する場合がある。
【0025】
本体110の上面111(誘電体層LY1)には、フィルタ装置100の方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。本体110の下面112(誘電体層LY6)には、当該フィルタ装置100と外部機器とを接続するための外部端子である入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDが配置されている。入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDの各々は平板状の電極であり、本体110の下面112に規則的に配置されたLGA(Land Grid Array)端子である。
【0026】
フィルタ装置100は、図2で説明したように、4段のLC並列共振器RC1~RC4を有している。より具体的には、共振器RC1は、ビアV10,V11、キャパシタ電極P1および平板電極PC1を含む。共振器RC2は、ビアV20,V21、キャパシタ電極P2および平板電極PC2を含む。共振器RC3は、ビアV30,V31、キャパシタ電極P3および平板電極PC34を含む。共振器RC4は、ビアV40,V31、キャパシタ電極P4および平板電極PC34を含む。共振器RC3および共振器RC4において、ビアV31および平板電極PC34が共通化されている。
【0027】
共振器RC1のキャパシタ電極P1は、誘電体層LY4に設けられている。本体110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、キャパシタ電極P1の一部は、誘電体層LY5に設けられた接地電極PGと重なっている。キャパシタ電極P1と接地電極PGとによって図2のキャパシタC1が構成される。キャパシタ電極P1は、ビアVT11によって、誘電体層LY5に設けられた平板電極PT1に接続されている。平板電極PT1は、ビアVT10によって入力端子T1に接続される。
【0028】
共振器RC1の平板電極PC1は、略U字形状を有している。平板電極PC1は、図4に示されるように、誘電体層LY2において、U字形状の開口部がX軸の正方向に向くように配置されている。平板電極PC1の一方端は、ビアV10を介してキャパシタ電極P1に接続されている。平板電極PC1の他方端は、ビアV11を介して、誘電体層LY5の接地電極PGに接続される。接地電極PGは、複数のビアVGによって、接地端子GNDに接続される。平板電極PC1およびビアV10,V11によって、図2におけるインダクタL1が構成される。
【0029】
共振器RC2のキャパシタ電極P2は、誘電体層LY4に設けられている。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P2の一部は、誘電体層LY5に設けられた接地電極PGと重なっている。キャパシタ電極P2と接地電極PGとによって図2のキャパシタC2が構成される。キャパシタ電極P2は、ビアVT21によって、誘電体層LY5に形成された平板電極PT2に接続されている。平板電極PT2は、ビアVT20によって出力端子T2に接続される。
【0030】
共振器RC2の平板電極PC2は、平板電極PC1と同様に略U字形状を有している。平板電極PC2は、図4に示されるように、誘電体層LY2において、U字形状の開口部がX軸の負方向に向くように配置されている。言い換えれば、平板電極PC1と平板電極PC2とは、誘電体層LY2において、開口部が互いに対向するように、X軸方向に隣り合って配置されている。平板電極PC2の一方端は、ビアV20を介してキャパシタ電極P2に接続されている。平板電極PC2の他方端は、ビアV21を介して、誘電体層LY5の接地電極PGに接続される。平板電極PC2およびビアV20,V21によって、図2におけるインダクタL2が構成される。
【0031】
共振器RC3のキャパシタ電極P3は、誘電体層LY4に設けられている。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P3の一部は、誘電体層LY5に設けられた接地電極PGと重なっている。キャパシタ電極P3と接地電極PGとによって図2のキャパシタC3が構成される。キャパシタ電極P2は、ビアV30によって、誘電体層LY2に設けられた平板電極PC34に接続されている。
【0032】
平板電極PC34は、図4に示されるように、略T字形状を有している。平板電極PC34は、X軸方向に延伸する帯状電極として構成された第1部分PC341と、第1部分PC341のX軸方向の中央部からY軸の負方向に突出した第2部分PC342とを含む。平板電極PC34の第1部分PC341は、平板電極PC1,PC2に対して、Y軸の正方向に離間して配置されている。平板電極PC34の第2部分PC342は、第1部分PC341から平板電極PC1,PC2の間に向かって突出している。
【0033】
ビアV30は、第1部分PC341における、X軸の負方向の端部(第1端部)に接続されている。第2部分PC342におけるY軸の負方向の端部には、ビアV31が接続されている。ビアV31は、誘電体層LY5の接地電極PGに接続されている。ビアV30と、第1部分PC341におけるビアV30の接続位置から第2部分PC342までの部分とによって、図2におけるインダクタL3が構成される。また、第2部分PC342とビアV31,VGとによって、図2におけるインダクタL34が構成される。
【0034】
共振器RC4のキャパシタ電極P4は、誘電体層LY4に設けられている。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P4の一部は、誘電体層LY5に設けられた接地電極PGと重なっている。キャパシタ電極P4と接地電極PGとによって図2のキャパシタC4が構成される。キャパシタ電極P4は、ビアV40によって、平板電極PC34の第1部分PC341におけるX軸の正方向の端部(第2端部)に接続されている。ビアV40と、第1部分PC341におけるビアV40の接続位置から第2部分PC342までの部分とによって、図2におけるインダクタL4が構成される。
【0035】
誘電体層LY3には、キャパシタ電極P12,P13,P24,P34が設けられている。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P12は、誘電体層LY4のキャパシタ電極P1,P2と部分的に重なっている。キャパシタ電極P1と、キャパシタ電極P2と、キャパシタ電極P12とによって図2のキャパシタC12が構成される。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P13は、誘電体層LY4のキャパシタ電極P1,P3と部分的に重なっている。キャパシタ電極P1と、キャパシタ電極P3と、キャパシタ電極P13とによって図2のキャパシタC13が構成される。
【0036】
本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P24は、誘電体層LY4のキャパシタ電極P2,P4と部分的に重なっている。キャパシタ電極P2と、キャパシタ電極P4と、キャパシタ電極P24とによって図2のキャパシタC24が構成される。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P34は、誘電体層LY4のキャパシタ電極P3,P4と部分的に重なっている。キャパシタ電極P3と、キャパシタ電極P4と、キャパシタ電極P34とによって図2のキャパシタC34が構成される。
【0037】
各共振器の接地側のビアV11~V31は、X軸方向に沿って並んで配置されており、共振器RC3,RC4における共通化されたビアV31は、共振器RC1のビアV11と共振器RC2のビアV21との間に配置されている。ビア同士の間隔を調整することによって、共振器間の磁気結合の強度を調整することができる。
【0038】
平板電極PC34において、第1部分PC341の長さ(すなわち、図4におけるLG1)および/または第1部分PC341の幅(図4のW)を調整することによって、共振器RC3のインダクタL3、および、共振器RC3のインダクタL4のインダクタンスを調整することができる。また、平板電極PC34の第2部分PC342の長さLG2を調整することによって、インダクタL34のインダクタンスを調整することができる。
【0039】
なお、以降の説明においては、ビアV10,V20,V30,V40のように各共振器においてキャパシタを介して接地端子GNDに接続されるビアを「第1ビア」と称する。また、ビアV11,V21,V31のように各共振器においてキャパシタを介さずに接地端子GNDに接続されるビアを「第2ビア」と称する。
【0040】
上記のような多段型の積層LCフィルタ装置は、スマートフォン、携帯電話、あるいは携帯電話基地局のような通信装置に広く用いられている。このような通信装置においては、通信品質の向上および機器の電力消費の低減などの目的から、フィルタ装置についても挿入損失のさらなる低減が求められている。
【0041】
実施の形態1のフィルタ装置100においては、当該フィルタ装置に含まれる複数の共振器の配置を工夫するとともに、共振器間の磁気結合の強さを調整することによって挿入損失が向上する。以下に、従来から知られているフィルタ装置の構成と比較しながら、実施の形態1のフィルタ装置100の特徴の詳細について説明する。
【0042】
図5は、比較例のフィルタ装置100Xにおいて各共振器の平板電極が配置された誘電体層の平面図である。フィルタ装置100Xにおいては、4つの共振器RC1X~RC4XがX軸方向に配列された構成となっている。
【0043】
図5を参照して、フィルタ装置100Xは、本体110Xにおいて、X軸の負方向の短辺側に共振器RC1Xが配置されており、X軸の正方向の短辺側に共振器RC2Xが配置されている。共振器RC3X,RC4Xは、共振器RC1Xと共振器RC2Xとの間に配置されている。
【0044】
共振器RC1Xは、平板電極PC1XとビアV10X,V11Xとを含む。平板電極PC1Xは、Y軸の正方向が開放した略U字形状を有している。平板電極PC1Xにおいて第1ビアに対応するビアV10Xが一方端に接続され、第2ビアに対応するビアV11Xが他方端に接続されている。
【0045】
共振器RC2Xは、平板電極PC2XとビアV20X,V21Xとを含む。平板電極PC2Xも、平板電極PC1Xと同様にY軸の正方向が開放した略U字形状を有している。平板電極PC2Xにおいて第1ビアに対応するビアV20Xが一方端に接続され、第2ビアに対応するビアV21Xが他方端に接続されている。
【0046】
共振器RC3Xは、平板電極PC34XとビアV30X,V31Xとを含む。また、共振器RC4Xは、平板電極PC34XとビアV40X,V31Xとを含む。すなわち、実施の形態1のフィルタ装置100と同様に、共振器RC3Xの平板電極および共振器RC4Xの平板電極は一体的に構成されており、接地側のビアV31Xが共通化されている。
【0047】
平板電極PC34Xは、略Y字形状を有しており、Y軸の負方向に開放したU字形状を有する第1部分PC341Xと、当該第1部分の中央部からY軸の正方向に突出した第2部分PC342Xとを有する。第1部分PC341Xにおける共振器RC1X側の端部にV30Xが接続されており、共振器RC2X側の端部にV40Xが接続されている。第2部分PC342Xには、共通化されたビアV31Xが接続されている。
【0048】
図6は、実施の形態1のフィルタ装置100および比較例のフィルタ装置100Xの共振器の配置を説明するための図である。図6の左図(a)にはフィルタ装置100における各共振器の概略配置が示されており、右図(b)には比較例のフィルタ装置100Xにおける各共振器の概略配置が示されている。
【0049】
図6に示されるように、実施の形態1のフィルタ装置100においては、入力側の共振器RC1および出力側の共振器RC2が、本体110の長手方向(X軸方向)に隣り合って配置されており、中段の共振器RC3および共振器RC4もX軸方向に隣り合って配置されている。そして、共振器RC1および共振器RC2の組(第1共振器群)と、共振器RC3および共振器RC4の組(第2共振器群)とが、Y軸方向に隣り合って配置されている。一方、比較例のフィルタ装置100Xにおいては、本体110XのX軸の正方向に向かって、共振器RC1X,RC3X,RC4X,RC2Xの順に配置されている。
【0050】
比較例のフィルタ装置100Xにおいては、4つの共振器が一次元的に配置されているため、隣接する共振器における導体部分の間隔が確保しにくくなる。特に、中段の共振器RC3X,RC4Xの各々については、2つの共振器に挟まれて配置されるため、一方の共振器との間隔を広くしようとすると、他方の共振器との間隔が狭くなってしまう。そのため、フィルタ装置100Xのような共振器の配置ではQ値を大きくできない状態となり得る。
【0051】
それに対して、実施の形態1のフィルタ装置100においては、X軸方向に2つの共振器が配置され、さらに、Y軸方向にも2つの共振器が配置されている。すなわち、フィルタ装置100では、4つの共振器が二次元的に配置されている。そのため、たとえば、各共振器の導体を本体110の外周縁に近づけるように配置することで、隣接する共振器同士の間隔が広くなる。そのため、誘電体層の全体の面積が同じ場合でもQ値を大きくすることができ、フィルタ装置の損失を低減することが可能となる。
【0052】
また、実施の形態1のフィルタ装置100においては、中段の共振器RC3,RC4の平板電極PC34が、比較例のフィルタ装置100Xの平板電極PC34Xに比べて直線的な形状となっている。一般的に、信号伝達経路(すなわち、電流経路)において屈曲した部分が存在すると、当該屈曲部分において電流が集中しやすくなる。そうすると、電流が集中した部分における損失が大きくなってしまう。比較例の平板電極PC34Xでは、ビアV30XおよびビアV40XからビアV31Xに至る経路においてそれぞれ2回の屈曲部分が生じている。それに対して実施の形態1の平板電極PC34では、ビアV30およびビアV40からビアV31に至る経路には、それぞれ1回の屈曲部分しか生じない。そのため、この点からもフィルタ装置100の方が、比較例のフィルタ装置100Xに比べて損失を低減することができる。
【0053】
さらに、実施の形態1の平板電極PC34の形状は、比較例の平板電極PC34Xと比べて特性のばらつきが生じにくいという利点がある。図7は、実施の形態1および比較例のフィルタ装置における各モードの電流方向を説明するための図である。図7においては、上段に比較例の場合が示されており、下段に実施の形態1の場合が示されている。
【0054】
図7を参照して、一般的に2つの伝送経路に高周波信号が伝達される場合、各伝送経路に同方向の電流が流れる第1モード(Even Mode)と、互いに逆方向の電流が流れる第2モード(Odd Mode)とが存在する。たとえば、上記のフィルタ装置100の共振器RC3,RC4の場合、第1モードにおいては、共振器RC3ではビアV30からビアV31へと電流が流れ、共振器RC4ではビアV40からビアV31へと電流が流れる。一方、第2モードにおいては、たとえば共振器RC3ではビアV30からビアV31へと電流が流れ、共振器RC4ではビアV31からビアV40へと電流が流れる。なお、第2モードの場合、ビアV31に流れ込む電流とビアV31から流れ出る電流とが相殺されるため、結果として、電流はビアV30からビアV40へと流れることになる。なお、比較例のフィルタ装置100Xについても同様になる。
【0055】
ここで、製造過程において、平板電極PC34,PC34Xの形状にばらつきが生じる場合を考える。比較例においては、平板電極PC34XのU字形状の第1部分におけるY軸方向の寸法のばらつきおよび位置ズレが生じやすい。この場合でも、第1モードであれば、共振器RC3Xにおけるビアを含めた電流経路(ビアV30X+矢印AR10,AR12+ビア31X)の経路長と、共振器RC4Xにおけるビアを含めた電流経路(ビアV40X+矢印AR11,AR12+ビアV31X)の経路長は、ほとんど変化しない。しかしながら、第2モードの場合には、電流経路が矢印AR20,AR22,AR21となるため、第1部分のY軸方向の寸法が変動すると、ビアV30XからビアV40Xまでの経路長が変動する。そうすると、フィルタ特性への影響が生じ得る。
【0056】
一方、実施の形態1のフィルタ装置100においては、ビアV30からビアV40までの経路が直線であるため、仮に平板電極PC34の寸法がばらついたとしても、第1モードにおける電流経路(矢印AR15,AR17:矢印AR16,AR17)および第2モードにおける電流経路(矢印AR25)の経路長はほとんど変化しない。
【0057】
以上のように、比較例のフィルタ装置100Xに比べて、実施の形態1のフィルタ装置100のほうが平板電極の形状のばらつきによるフィルタ特性への影響が小さくなる。
【0058】
図8は、実施の形態1のフィルタ装置100および比較例のフィルタ装置100Xの通過特性を説明するための図である。図8においては、横軸には周波数が示されており、縦軸にはフィルタ装置の挿入損失(LN10,LN11)および反射損失(LN15,LN16)が示されている。なお、実線LN10,LN15が実施の形態1のフィルタ装置100の場合を示しており、破線LN11,LN16が比較例のフィルタ装置100Xの場合を示している。また、図9は、図8における挿入損失のグラフの部分拡大図である。
【0059】
図8および図9を参照して、実施の形態1のフィルタ装置100および比較例のフィルタ装置100Xのいずれにおいても、通過帯域内(3.8~5.2GHz)における反射損失、および、非通過帯域における減衰特性はほぼ同程度の特性となっている。しかしながら、図9に示されるように、通過帯域内における挿入損失のピークは、比較例のフィルタ装置100Xの場合の1.52dBに対して実施の形態1のフィルタ装置100の場合は1.37dBとなっており、約10%程度改善していることがわかる。
【0060】
以上のように、4つの共振器を含むフィルタ装置において、共振器を二次元的に配列して導体間の間隔を確保するとともに、中段の共振器の一部を共通化して磁気結合を強めることによってQ値を向上させることができ、その結果として、フィルタ装置の損失を低減することが可能となる。
【0061】
[変形例1~3]
変形例1~3においては、本体110の誘電体層LY2において、共振器RC3,RC4を構成する平板電極の形状の異なる態様について説明する。
【0062】
(変形例1)
図10は、変形例1のフィルタ装置100Aの平面図である。図10を参照して、フィルタ装置100Aにおいては、図3で示したフィルタ装置100における誘電体層LY2の平板電極PC34が平板電極PC34Aに置き換わった構成となっている。平板電極PC34Aは、平板電極PC34の第1部分PC341に対応する帯状電極として構成されている、すなわち、平板電極PC34Aは、平板電極PC34における第2部分PC342が除去された形状となっている。
【0063】
そして、接地電極PGに接続される共通化されたビアV31は、平板電極PC34Aにおいて、第1端部に接続されたビアV30と、第2端部に接続されたビアV40との間に接続されている。フィルタ装置100Aにおいては、ビアV30とビアV31との距離LG11と、ビアV40とビアV31との距離LG12とを調整することによって、共振器RC3におけるインダクタL3のインダクタンス値、および、共振器RC4におけるインダクタL4のインダクタンス値を調整することができる。
【0064】
図11は、図10のフィルタ装置100Aの等価回路図である。フィルタ装置100Aにおいては、上述のように、フィルタ装置100に比べて、ビアV31の位置がY軸の正方向に変更されている。これに伴って、図3の誘電体層LY3におけるキャパシタ電極P34が削除される。そのため、フィルタ装置100Aにおいては、図11の等価回路に示されるように、図3の等価回路から、共振器RC3の接続ノードN3Aおよび共振器RC4の接続ノードN4Aとの間のキャパシタC34が除去された回路となる。
【0065】
このようなフィルタ装置100Aにおいても、共振器RC1,RC2の配列方向に平行になるように共振器RC3,RC4が配置され、かつ、共振器RC3,RC4における接地端子に至る経路の一部が共通化されている。したがって、フィルタ装置のQ値が向上し、結果として、フィルタ装置における損失特性が改善する。
【0066】
なお、実施の形態1のフィルタ装置100においては、共通化されたビアV31は、共振器RC1のビアV11と共振器RC2のビアV21との間の配置されている。このため、共振器RC1と共振器RC3,RC4との間の磁気結合、および、共振器RC2と共振器RC3,RC4との間の磁気結合は比較的強くなるが、一方で、共振器RC1と共振器RC4との間の磁気結合は、ビアV31の影響でやや弱くなる。
【0067】
一方、変形例1のフィルタ装置100Aの構成においては、共通化されたビアV31の位置が、実施の形態1のフィルタ装置100の場合よりもY軸の正方向に移動した位置となっている。そのため、共振器RC1と共振器RC3,RC4との間の磁気結合、および、共振器RC2と共振器RC3,RC4との間の磁気結合は、実施の形態1のフィルタ装置100の場合に比べて弱くなる。しかしながら、共振器RC1のビアV11と共振器RC2のビアV21の間に共通化されたビアV31がないため、共振器RC1と共振器RC2との間の磁気結合はフィルタ装置100の場合に比べて強くなる。
【0068】
すなわち、共通化されたビアV31のY軸方向の位置を変化させることによって、共振器間の磁気結合の強さを調整することができる。
【0069】
(変形例2)
図12は、変形例2のフィルタ装置100Bの平面図である。図12を参照して、フィルタ装置100Bにおいては、フィルタ装置100における誘電体層LY2の平板電極PC34が平板電極PC34Bに置き換わった構成となっている。平板電極PC34Bは略E字形状であり、X軸方向に延伸する帯状電極として構成された第1部分PC341Bと、当該第1部分PC341BからY軸の負方向に突出した3つの突出部分(第2部分PC342B,第3部分PC343B,第4部分PC344B)とを含む。
【0070】
より詳細には、第2部分PC342Bは、第1部分PC341Bにおいて延伸方向(X軸方向)に沿った中央部から、平板電極PC1,PC2の間に向かって突出している。第3部分PC343Bは、第1部分PC341BのX軸の負方向の端部(第1端部)から平板電極PC1に向かって突出している。第4部分PC344Bは、第1部分PC341BのX軸の正方向の端部(第2端部)から平板電極PC2に向かって突出している。
【0071】
共振器RC3におけるビアV30は、第3部分PC343Bに接続されている。また、共振器RC4におけるビアV40は、第4部分PC344Bに接続されている。接地電極PGに接続される共通化されたビアV31は、第2部分PC342Bに配置されている。
【0072】
このような構成とすることによって、共振器RC3,RC4におけるビアV30とビアV31との間の距離、および、ビアV40とビアV31との間の距離(矢印LG20に対応)を、フィルタ装置100の場合よりも長くすることができる。これにより、共振器RC3におけるインダクタL3、共振器RC4におけるインダクタL4、および共通化されたインダクタL34の各々のインダクタンスを調整することができる。
【0073】
また、平板電極PC34Bにおける第1部分PC341Bと、平板電極PC1および平板電極PC2との間隔(矢印LG21に対応)が広くなる。これによって、共振器RC1と共振器RC3との間の磁気結合、および、共振器RC2と共振器RC4との間の磁気結合を、実施の形態1のフィルタ装置100の場合よりも弱めることができる。
【0074】
このようなフィルタ装置100Bにおいても、共振器RC1,RC2の配列方向に平行になるように共振器RC3,RC4が配置され、かつ、共振器RC3,RC4における接地端子に至る経路の一部が共通化されている。したがって、フィルタ装置のQ値が向上し、結果として、フィルタ装置における損失特性が改善する。
【0075】
(変形例3)
図13は、変形例3のフィルタ装置100Cの平面図である。図13を参照して、フィルタ装置100Cにおいては、フィルタ装置100における誘電体層LY2の平板電極PC34が平板電極PC34Cに置き換わった構成となっている。平板電極PC34Cは略Y字形状であり、X軸方向に延伸する帯状電極として構成された第1部分PC341Cと、当該第1部分PC341CからY軸方向に突出した3つの突出部分(第2部分PC342C,第5部分PC345C,第6部分PC346C)とを含む。
【0076】
より詳細には、第2部分PC342Cは、第1部分PC341Cにおいて延伸方向(X軸方向)に沿った中央部から、平板電極PC1,PC2の間に向かって突出している。第5部分PC345Cは、第1部分PC341CのX軸の負方向の端部(第1端部)から平板電極PC1とは逆方向(Y軸の正方向)に向かって突出している。第6部分PC346Cは、第1部分PC341CのX軸の正方向の端部(第2端部)から平板電極PC2とは逆方向(Y軸の正方向)に向かって突出している。
【0077】
共振器RC3におけるビアV30は、第5部分PC345Cに接続されている。また、共振器RC4におけるビアV40は、第6部分PC346Cに接続されている。接地電極PGに接続される共通化されたビアV31は、第2部分PC342Cに配置されている。
【0078】
このような構成とすることによって、共振器RC3,RC4におけるビアV30とビアV31との間の距離、および、ビアV40とビアV31との間の距離(矢印LG25に対応)が、フィルタ装置100の場合よりも長くなる。これにより、共振器RC3におけるインダクタL3、共振器RC4におけるインダクタL4、および共通化されたインダクタL34の各々のインダクタを調整することができる。
【0079】
また、平板電極PC34Cにおける第1部分PC341Cと、平板電極PC1および平板電極PC2との間隔(矢印LG26に対応)が狭くなる。これによって、共振器RC1と共振器RC3との間の磁気結合、および、共振器RC2と共振器RC4との間の磁気結合を、実施の形態1のフィルタ装置100の場合よりも強めることができる。
【0080】
このようなフィルタ装置100Cにおいても、共振器RC1,RC2の配列方向に平行になるように共振器RC3,RC4が配置され、かつ、共振器RC3,RC4における接地端子に至る経路の一部が共通化されている。したがって、フィルタ装置のQ値が向上し、結果として、フィルタ装置における損失特性が改善する。
【0081】
[変形例4~6]
変形例4~6においては、各共振器間の磁気結合を調整するための態様について説明する。
【0082】
(変形例4)
図14は、変形例4のフィルタ装置100Dの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Dにおいては、本体110Dの誘電体層LY2における各共振器の平板電極が、平板電極PCDとして一体化された構成を有している。より具体的には、平板電極PCDは、実施の形態1の図4において、共振器RC1のビアV11が接続される平板電極PC1の端部、および、共振器RC2のビアV21が接続される平板電極PC2の端部が、共振器RC3,RC4を構成する平板電極PC34の第2部分PC342に接続された形状を有している。すなわち、共振器RC1のビアV11、共振器RC2のビアV21、および共振器RC3,RC4のビアV31が、1つのビアV31Dとして共通化されている。ビアV31Dは、誘電体層LY2の平板電極PCDと、誘電体層LY5の接地電極PGとを接続している。なお、その他の構成は、図3で示したフィルタ装置100と同様であり、共通する要素の説明は繰り返さない。
【0083】
フィルタ装置100Dにおいては、4つの共振器RC1~RC4がビアV31Dを共有することによって接続されている。これにより、実施の形態1のフィルタ装置100の場合に比べて、各共振器間の磁気結合が強くなるので、フィルタ装置のQ値がさらに向上さする。したがって、フィルタ装置における損失特性を改善することができる。
【0084】
(変形例5)
図15は、変形例5のフィルタ装置100Eの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Eは、概略的には、図3で示した実施の形態1のフィルタ装置100と、図14で示した変形例4のフィルタ装置100Dとの間の中間的な構成を有しており、各共振器において接地端子GNDに至るビアが、誘電体層に設けられる平板電極よりも下層で一体化されている。
【0085】
図15を参照してより詳細に説明する。なお、図15において、図3のフィルタ装置100と同様の要素には同じ参照符号が付されている。
【0086】
フィルタ装置100Eは、複数の誘電体層LY11~LY17が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の本体110Eを備えている。本体110Eの上面111(誘電体層LY11)には、フィルタ装置100Eの方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。本体110Eの下面112(誘電体層LY17)には、当該フィルタ装置100Eと外部機器とを接続するための外部端子である入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDが配置されている。
【0087】
フィルタ装置100Eは、実施の形態1のフィルタ装置100と同様に、4段のLC並列共振器RC1~RC4を有している。共振器RC1は、ビアV10,V11E、キャパシタ電極P1および平板電極PC1を含む。共振器RC2は、ビアV20,V21E、キャパシタ電極P2および平板電極PC2を含む。共振器RC3は、ビアV30,V31E、キャパシタ電極P3および平板電極PC34を含む。共振器RC4は、ビアV40,V31E、キャパシタ電極P4および平板電極PC34を含む。共振器RC3および共振器RC4において、ビアV31Eおよび平板電極PC34が共通化されている。
【0088】
誘電体層LY12には、フィルタ装置100と同様に、共振器RC1に含まれる平板電極PC1、共振器RC2に含まれる平板電極PC2、および共振器RC3,RC4において共通化された平板電極PC34が設けられている。
【0089】
誘電体層LY13には、X軸方向に延伸する帯状電極として構成された平板電極PA1が配置されている。共振器RC1のビアV11Eは、平板電極PC1と平板電極PA1に接続されている。共振器RC2のビアV21Eは、平板電極PC2と平板電極PA1に接続されている。また、共振器RC3,RC4において共通化されているビアV31Eは、平板電極PC34から当該平板電極PA1を通って誘電体層LY16に設けられた接地電極PGに接続されている。言い換えれば、共振器RC1のビアV11Eおよび共振器RC2のビアV21Eは、平板電極PA1によって、共振器RC3,RC4のビアV31Eと共通化されている。
【0090】
なお、誘電体層LY14から誘電体層LY17の構成については、上記の共通化されたビアV31Eを除いて、図3のフィルタ装置100の誘電体層LY3から誘電体層LY6の構成にそれぞれ対応した構成となっている。そのため、誘電体層LY14から誘電体層LY17の詳細な説明は繰り返さない。
【0091】
このように、変形例5のフィルタ装置100Eにおいては、共振器RC1,RC2における、誘電体層LY12の平板電極から接地電極PGに至る経路の一部が、共振器RC3,RC4のビアV31Eに共通化されている。これにより、各共振器間の磁気結合を実施の形態1のフィルタ装置100の場合よりも強くすることができる。したがって、実施の形態1のフィルタ装置100に比べて、フィルタ装置のQ値がさらに向上し、フィルタ装置における損失特性が改善する。
【0092】
なお、フィルタ装置100Eにおける各共振器間の磁気結合は、変形例4のフィルタ装置100Dにおける各共振器間の磁気結合よりも弱くなる。すなわち、各共振器の接地側のビアを共通化する位置(誘電体層)を調整することによって、共振器間の磁気結合を微調整することができる。
【0093】
(変形例6)
図16は、変形例6のフィルタ装置100Fの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Fは、概略的には、図3で示した実施の形態1のフィルタ装置100における平板電極PC34の第2部分PC342が、第1部分PC341とは異なる層に配置された構成を有している。
【0094】
図16を参照してより詳細に説明する。本体110Fの誘電体層LY12において、共振器RC3,RC4で一体化された平板電極PC34Fは、図10のフィルタ装置100Aと同様に、X軸方向に延伸する帯状電極として構成されている。また、誘電体層LY13には、Y軸方向に延伸する帯状電極として構成された平板電極PA2が配置されている。
【0095】
共振器RC3,RC4において共通化された接地側のビアV31F1は、平板電極PC34Fの中央部と、平板電極PA2の一方端とに接続されている。平板電極PA2の他方端は、ビアV31F2を介して誘電体層LY16の接地電極PGに接続されている。すなわち、フィルタ装置100Fにおいては、共振器RC3,RC4において共通化された接地側のビアが、平板電極PC34Fが配置される位置(誘電体層LY12)とは異なる位置(誘電体層LY13)においてオフセットした構成となっている。
【0096】
誘電体層LY13から誘電体層LY16まで延在するビアV31F2は、図3におけるビアV31と同様に、共振器RC1のビアV11と共振器RC2のビアV21との間に配置されている。ここで、フィルタ装置100FのビアV31F2は、実施の形態1のフィルタ装置100のビアV31よりも短く、互いに対向する領域がフィルタ装置100の場合に比べて少なくなる。そのため、共振器RC1,RC2と、共振器RC3,RC4との磁気結合は、フィルタ装置100の場合に比べて弱くなる。
【0097】
一方で、ビアV31F2の長さがビアV11,V21の長さよりも短いため、ビアV11とビアV21とが直接対向する領域が生じる。これにより、共振器RC1と共振器RC2との間の磁気結合が、フィルタ装置100の場合に比べて強くなる。
【0098】
このように、変形例6のフィルタ装置100Fにおいては、中段の共振器RC3,RC4の共通化された接地側のビアの延伸方向の中間部でオフセットさせることによって、各共振器間の磁気結合を調整することができる。
【0099】
[変形例7~9]
変形例7~9においては、入力端子T1に接続される共振器RC1の入力インピーダンス、および、出力端子T2に接続される共振器RC2の出力インピーダンスを高くすることによって、小型化および特性向上を実現する構成について説明する。
【0100】
(変形例7)
図17は、変形例7のフィルタ装置100Gの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Gは、概略的には、実施の形態1のフィルタ装置100における入力側共振器RC1の平板電極PC1および出力側共振器RC2の平板電極PC2が、複巻型のコイルとして構成された構成を有している。なお、図17において、誘電体層LY14から誘電体層LY17は、図3のフィルタ装置100の誘電体層LY3から誘電体層LY6にそれぞれ対応した構成となっているため、誘電体層LY14から誘電体層LY17の詳細な説明は繰り返さない。
【0101】
図17を参照して、本体110Gの誘電体層LY12には、共振器RC1の一部を構成する平板電極PC1G2、共振器RC2の一部を構成する平板電極PC2G2、および、共振器RC3,RC4の一部を構成する平板電極PC34が配置されている。また、誘電体層LY13には、平板電極PC1G1および平板電極PC2G1が設けられている。平板電極PC1G1,PC1G2,PC2G1,PC2G2の各々は、積層方向(Z軸方向)を巻回軸とするループ形状に構成されている。
【0102】
平板電極PC1G2の一方端は、ビアV11を介して誘電体層LY16に設けられた接地電極PGに接続されている。平板電極PC1G2の他方端は、ビアV10G2を介して誘電体層LY13の平板電極PC1G1の一方端に接続されている。平板電極PC1G1の他方端は、ビアV10G1を介して誘電体層LY15のキャパシタ電極P1に接続されている。平板電極PC1G1,PC1G2およびビアV10G2によってZ軸方向を巻回方向とする複巻コイルが構成される。この構成によって、ビアV10G1,V10G2,V11および平板電極PC1G1,PC1G2によって構成されるインダクタL1のインダクタンスを大きくすることができるので、共振器RC1のインピーダンス(すなわち、フィルタ装置100Fの入力インピーダンス)を高くすることができる。
【0103】
また、平板電極PC2G2の一方端は、ビアV21を介して誘電体層LY16に設けられた接地電極PGに接続されている。平板電極PC2G2の他方端は、ビアV20G2を介して誘電体層LY13の平板電極PC2G1の一方端に接続されている。平板電極PC2G1の他方端は、ビアV20G1を介して誘電体層LY15のキャパシタ電極P2に接続されている。平板電極PC2G1,PC2G2およびビアV20G2によってZ軸方向を巻回方向とする複巻コイルが構成される。この構成によって、ビアV20G1,V20G2,V21および平板電極PC2G1,PC2G2によって構成されるインダクタL2のインダクタンスを大きくすることができるので、共振器RC2のインピーダンス(すなわち、フィルタ装置100Fの出力インピーダンス)を高くすることができる。
【0104】
入出力インピーダンスを高インピーダンス化することによって、当該フィルタに接続される外部機器との結合度合いが大きくなるので、外部機器に対するQ値が低減する。これによって、通過帯域内の反射損失の低減および広帯域化を実現することができる。
【0105】
(変形例8)
変形例7においては、積層方向(Z軸方向)を巻回軸とする複巻型コイルを構成することによって、入出力インピーダンスを高くする構成について説明した。変形例8においては、積層方向に直交する方向を巻回軸とする複巻型コイルを構成することによって、入出力インピーダンスを高くする構成について説明する。
【0106】
図18は、変形例8のフィルタ装置100Hの積層構造の一例を示す分解斜視図である。本体110Hの誘電体層LY12には、共振器RC1の一部を構成する平板電極PC11,PC13、共振器RC2の一部を構成する平板電極PC21,PC23、および、共振器RC3,RC4の一部を構成する平板電極PC34が配置されている。また、誘電体層LY13には、平板電極PC12および平板電極PC22が設けられている。なお、図18フィルタ装置100Hにおいて、図17と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0107】
平板電極PC11,PC13,PC21,PC23は、X軸方向に延伸する帯状電極として構成されている。平板電極PC11,PC13は、平板電極PC34の第2部分PC342よりもX軸の負方向の領域に平行に配置されている。また、平板電極PC21,PC23は、上記第2部分PC342よりもX軸の正方向の領域に平行に配置されている。
【0108】
平板電極PC11のX軸の負方向の端部は、ビアV10を介して誘電体層LY15のキャパシタ電極P1に接続される。平板電極PC11のX軸の正方向の端部は、ビアVC11を介して誘電体層LY13に設けられた平板電極PC12の一方端に接続される。平板電極PC12の他方端は、ビアVC12を介して、平板電極PC13のX軸の負方向の端部に接続される。平板電極PC13のX軸の正方向の端部は、ビアV11を介して誘電体層LY16の接地電極PGに接続される。平板電極PC11~PC13およびビアVC11,VC12によって、Y軸方向を巻回方向とする複巻型コイルが構成される。この構成によって、ビアV10,V11,VC11,VC12および平板電極PC11~PC13によって構成されるインダクタL1のインダクタンスが大きくなるので、フィルタ装置100Hの入力インピーダンスが高くなる。
【0109】
また、平板電極PC21のX軸の正方向の端部は、ビアV20を介して誘電体層LY15のキャパシタ電極P2に接続される。平板電極PC21のX軸の負方向の端部は、ビアVC21を介して誘電体層LY13に設けられた平板電極PC22の一方端に接続される。平板電極PC22の他方端は、ビアVC22を介して、平板電極PC23のX軸の正方向の端部に接続される。平板電極PC23のX軸の負方向の端部は、ビアV21を介して誘電体層LY16の接地電極PGに接続される。平板電極PC21~PC23およびビアVC21,VC22によって、Y軸方向を巻回方向とする複巻型コイルが構成される。この構成によって、ビアV20,V21,VC21,VC22および平板電極PC21~PC23によって構成されるインダクタL2のインダクタンスが大きくなるので、フィルタ装置100Hの出力インピーダンスが高くなる。
【0110】
なお、図18においては、共振器RC1,RC2における複巻型コイルがY軸方向を巻回軸とする例について説明したが、巻回軸の方向はZ軸方向に直交する方向であればよく、たとえばX軸方向を巻回軸とするコイルとしてもよい。
【0111】
変形例8のフィルタ装置100Gの構成においても、入出力インピーダンスが高くなるため、共振周波数の低周波数化、フィルタ装置の小型化、通過帯域内の反射損失の低減および広帯域化が実現される。
【0112】
(変形例9)
図19は、変形例9のフィルタ装置100Iの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Iは、概略的には、図14で示した変形例4のフィルタ装置100Dの構成と、図17で示した変形例7のフィルタ装置100Gの構成とを組み合わせた構成となっている。言い換えれば、本体110Iの誘電体層LY12において、各共振器の一部として構成される平板電極がフィルタ装置100Dと同様に1つの平板電極PCIとして構成されており、さらに、共振器RC1,RC2において積層方向を巻回軸とする複巻型のコイルを構成している。
【0113】
図19を参照して、本体110Iの誘電体層LY12における平板電極PCIは、共通化されたビアV31Iによって、誘電体層LY16の接地電極PGに接続されている。平板電極PCIにおいて、図3の平板電極PC1に対応するループ状の部分における端部は、ビアV10I2を介して誘電体層LY13に設けられたループ状の平板電極PC11の一方端に接続される。平板電極PC11の他方端は、ビアV10I1を介して誘電体層LY15のキャパシタ電極P1に接続される。平板電極PCI,PC11およびビアV10I2によって、積層方向を巻回軸とする複巻型のコイルが構成される。
【0114】
また、平板電極PCIにおいて、図3の平板電極PC2に対応するループ状の部分における端部は、ビアV20I2を介して誘電体層LY13に設けられたループ状の平板電極PC21の一方端に接続される。平板電極PC21の他方端は、ビアV20I1を介して誘電体層LY15のキャパシタ電極P2に接続される。平板電極PCI,PC21およびビアV20I2によって、積層方向を巻回軸とする複巻型のコイルが構成される。
【0115】
なお、フィルタ装置100Iにおいて図17のフィルタ装置100Gと重複する要素の説明は繰り返さない。
【0116】
フィルタ装置100Iのように、各共振器の接地側のビアを共通化することによって共振器間の磁気結合が強まるため、それによってフィルタ装置における損失特性が改善する。また、入力側共振器および出力側共振器に複巻型コイルを構成して入出力インピーダンスを高めることによって、共振周波数の低周波数化、フィルタ装置の小型化、通過帯域内の反射損失の低減および広帯域化が実現される。
【0117】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、フィルタ装置が4つの共振器を含む構成について説明した。実施の形態2においては、フィルタ装置が6つの共振器を含む構成について説明する。
【0118】
図20は、実施の形態2のフィルタ装置100Jの等価回路図である。図20を参照して、フィルタ装置100Jは、入力端子T1と、出力端子T2と、共振器RC1~RC6とを備える。共振器RC1~RC6の各々は、インダクタおよびキャパシタを含むLC並列共振器である。共振器RC1は入力端子T1に接続されており、共振器RC2は出力端子T2に接続されている。共振器RC3~RC6は、共振器RC1と共振器RC2との間に接続されている。フィルタ装置100Jは、概略的には、図2で説明したフィルタ装置100における共振器RC3と共振器RC4との間に、共振器RC5,RC6がさらに接続された構成となっている。
【0119】
共振器RC1は、並列接続されたインダクタL1およびキャパシタC1を含む。インダクタL1およびキャパシタC1の一方の接続ノードN1Aは、入力端子T1に接続されている。インダクタL1およびキャパシタC1の他方の接続ノードN1Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0120】
共振器RC2は、並列接続されたインダクタL2およびキャパシタC2を含む。インダクタL2およびキャパシタC2の一方の接続ノードN2Aは、出力端子T2に接続されている。インダクタL2およびキャパシタC2の他方の接続ノードN1Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0121】
共振器RC3は、直列接続されたインダクタL3,L36と、当該インダクタL3,L36に並列に接続されたキャパシタC3とを含む。インダクタL3とキャパシタC3との接続ノードN3Aは、キャパシタC13を介して共振器RC1の接続ノードN1A(すなわち、入力端子T1)に接続されている。インダクタL36とキャパシタC3との接続ノードN3Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0122】
共振器RC4は、直列接続されたインダクタL4,L36と、当該インダクタL4,L36に並列に接続されたキャパシタC4とを含む。インダクタL4とキャパシタC4との接続ノードN4Aは、キャパシタC24を介して共振器RC2の接続ノードN2A(すなわち、出力端子T2)に接続されている。インダクタL36とキャパシタC4との接続ノードN4Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0123】
共振器RC5は、直列接続されたインダクタL5,L36と、当該インダクタL5,L36に並列に接続されたキャパシタC5とを含む。インダクタL5とキャパシタC5との接続ノードN5Aは、キャパシタC35を介して共振器RC3の接続ノードN3Aに接続されている。インダクタL36とキャパシタC5との接続ノードN5Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0124】
共振器RC6は、直列接続されたインダクタL6,L36と、当該インダクタL6,L36に並列に接続されたキャパシタC6とを含む。インダクタL6とキャパシタC6との接続ノードN6Aは、キャパシタC46を介して共振器RC4の接続ノードN4Aに接続されている。インダクタL36とキャパシタC6との接続ノードN6Bは、接地端子GNDに接続されている。上述のように、共振器RC3~RC6は、インダクタL36を共有している。
【0125】
キャパシタC12は、接続ノードN1Aと接続ノードN2Aとの間(すなわち、入力端子T1と出力端子T2との間)に接続されている。また、キャパシタC34は、接続ノードN3Aと接続ノードN4Aとの間に接続されている。さらに、キャパシタC56は、接続ノードN5Aと接続ノードN6Aとの間に接続されている。
【0126】
各共振器同士は、電磁界結合により結合している。このように、フィルタ装置100Jは、入力端子T1と出力端子T2との間に、互いに電磁界結合する4段の共振器が配置された構成を有している。入力端子T1に入力された高周波信号は、共振器RC1~RC6の電磁界結合により伝達されて、出力端子T2から出力される。このとき、各共振器の共振周波数によって定まる周波数帯域の信号のみが出力端子T2に伝達される。すなわち、フィルタ装置100Jは各共振器の共振周波数を調整することによって、所望の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタとして機能する。
【0127】
図21は、図20のフィルタ装置100Jの積層構造の一例を示す分解斜視図である。図21において、図3で示した実施の形態1のフィルタ装置100と同様の要素には同じ参照符号を用いている。図3と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0128】
図21を参照して、フィルタ装置100Jは、複数の誘電体層LY21~LY26が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の本体110Jを備えている。本体110Jの各誘電体層は、LTCCなどのセラミック、あるいは樹脂により形成されている。
【0129】
本体110Jの上面111(誘電体層LY21)には、フィルタ装置100Jの方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。本体110Jの下面112(誘電体層LY26)には、当該フィルタ装置100Jと外部機器とを接続するための外部端子である入力端子T1、出力端子T2および複数の接地端子GNDが配置されている。複数の接地端子GNDの各々は、対応するビアVGによって、誘電体層LY25に設けられた接地電極PGに接続されている。
【0130】
フィルタ装置100Jは、図20で説明したように、6段のLC並列共振器RC1~RC6を有している。より具体的には、共振器RC1は、ビアV10,V11、キャパシタ電極P1および平板電極PC1を含む。共振器RC2は、ビアV20,V21、キャパシタ電極P2および平板電極PC2を含む。共振器RC3~RC6は、ビアV30,V40,V50,V60と、共通化された平板電極PCJおよびビアV31Jとを含む。
【0131】
共通化された平板電極PCJは、誘電体層LY22に設けられており、X軸方向に延伸する帯状電極として構成された第1部分PCJ1および第3部分PCJ3と、当該第1部分PCJ1と第3部分PCJ3とを接続する第2部分PCJ2とを含む。第2部分PCJ2は、第1部分PCJ1および第3部分PCJ3の中央部からY軸方向に延伸している。
【0132】
平板電極PCJの第1部分PCJ1は、共振器RC1,RC2の一部をそれぞれ構成する平板電極PC1,PC2から、Y軸の正方向に隣り合って配置されている。平板電極PCJの第3部分PCJ3は、第1部分PCJ1からさらにY軸の正方向に隣り合って配置されている。すなわち、第1部分PCJ1は、第3部分PCJ3と、平板電極PC1,PC2との間に配置されている。
【0133】
第2部分PCJ2は、ビアV31Jを介して誘電体層LY25の接地電極PGに接続されている。ビアV31Jは、共振器RC3~RC6において、共通化された接地側のビアとして機能する。
【0134】
第1部分PCJ1のX軸の負方向の端部にはビアV30が接続されている。第1部分PCJ1およびビアV30,V31Jによって共振器RC3が構成される。第1部分PCJ1のX軸の正方向の端部にはビアV40が接続されている。第1部分PCJ1およびビアV40,V31Jによって共振器RC4が構成される。
【0135】
第3部分PCJ3のX軸の負方向の端部にはビアV50が接続されている。ビアV50は、誘電体層LY24に設けられたキャパシタ電極P5に接続されている。本体110Jの法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P5の一部は、接地電極PGと重なっている。キャパシタ電極P5と接地電極PGとによって図20のキャパシタC5が構成される。また、本体110Jの法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P5の一部は、誘電体層LY23に設けられた平板電極P35とも重なっている。平板電極P35は、ビアV30に接続されている。キャパシタ電極P5と平板電極P35とによって、図20のキャパシタC35が構成される。
【0136】
第3部分PCJ3のX軸の正方向の端部にはビアV60が接続されている。ビアV60は、誘電体層LY24に設けられたキャパシタ電極P6に接続されている。本体110Jの法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P6の一部は、接地電極PGと重なっている。キャパシタ電極P6と接地電極PGとによって図20のキャパシタC6が構成される。また、本体110Jの法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P6の一部は、誘電体層LY23に設けられた平板電極P46とも重なっている。平板電極P46は、ビアV40に接続されている。キャパシタ電極P6と平板電極P46とによって、図20のキャパシタC46が構成される。
【0137】
また、本体110Jの法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P5の一部およびキャパシタ電極P6の一部は、誘電体層LY23に設けられた平板電極P56にも重なっている。キャパシタ電極P5,P6および平板電極P56によって、図20のキャパシタC56が構成される。
【0138】
共振器の段数を増やすことで、通過帯域外における減衰特性の改善および広帯域設計がしやすいことが知られている。しかしながら、同じ製品サイズで共振器の段数を増加した場合、本体内における共振器間の間隔が狭められることによってQ値が低下し、結果的に損失が増加して通過特性が劣化してしまう場合がある。
【0139】
実施の形態2のフィルタ装置100Jのように、本体の長辺に沿った方向(X軸方向)に2つの共振器を配置した共振器群を、本体の短辺に沿った方向(Y軸方向)に隣り合わせて配置することによって、本体内において各共振器群の間隔をできるだけ大きくすることができる。さらに、一部の共振器において、接地側のビアを共通化することによって、共振器間の磁気結合が強められる。これらの構成によって、複数の共振器を一方向に隣り合わせて配置したフィルタ装置に比べてQ値が向上する。したがって、フィルタ装置における損失特性が改善する。
【0140】
[変形例10,11]
変形例10,11においては、6段の共振器を含むフィルタ装置において、共振器RC3~RC6の一部を構成する平板電極の構成を変更することによって、共振器間の磁気結合を調整する態様について説明する。
【0141】
(変形例10)
図22は、変形例10のフィルタ装置100Kの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Kは、概略的には、図21で示した実施の形態2のフィルタ装置100Jにおける平板電極PCJを、共振器RC3,RC4用の平板電極と共振器RC5,RC6用の平板電極とに分離し、共振器RC5,RC6用の平板電極を異なる位置(誘電体層)に配置した構成となっている。
【0142】
図22を参照してより詳細に説明する。フィルタ装置100Kは、複数の誘電体層LY31~LY37が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の本体110Kを備えている。なお、図22における誘電体層LY31,LY34~LY37は、図21における誘電体層LY21,LY23~LY26にそれぞれ対応している。図22において、図21と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0143】
本体110Kの誘電体層LY32には、共振器RC1の一部を構成する平板電極PC1と、共振器RC2の一部を構成する平板電極PC2と、共振器RC3,RC4用に共通化された平板電極PC34Kとが設けられている。また、誘電体層LY33には、共振器RC5,RC6用に共通化された平板電極PC56Kが設けられている。
【0144】
平板電極PC34Kは、X軸方向に延伸する第1部分と、当該第1部分からY軸の正方向に突出した第2部分とを含む。平板電極PC34Kの第1部分の一方端には共振器RC3のビアV30が接続されており、他方端には共振器RC4のビアV40が接続されている。
【0145】
平板電極PC56Kは、X軸方向に延伸する第1部分と、当該第1部分からY軸の負方向に突出した第2部分とを含む。平板電極PC56Kの第1部分の一方端には共振器RC5のビアV50が接続されている。平板電極PC56Kの第1部分の他方端には共振器RC6のビアV60が接続されているが、図22においては、ビアV60は他の要素の背後に隠れている。
【0146】
本体110Kを法線方向から平面視した場合に、平板電極PC34Kの第2部分の一部は、平板電極PC56Kの第2部分の一部と重なっており、この重なり合った部分を通るビアV31Kによって、平板電極PC34Kおよび平板電極PC56Kが誘電体層LY36の接地電極PGと接続されている。
【0147】
フィルタ装置100Kにおいては、共振器RC3,RC4の一部を構成する平板電極PC34Kと、共振器RC5,RC6の一部を構成する平板電極PC56Kとが異なる誘電体層に設けられているため、ビアV31Kにおいて共通化された部分の長さが実施の形態2のフィルタ装置100Jよりも短くなる。また、共振器RC5,RC6におけるビアV50,V60の長さが共振器RC3,RC4におけるビアV30,V40の長さよりも短いため、ビア同士の対向領域が短くなっている。そのため、フィルタ装置100Kにおいては、フィルタ装置100Jの場合に比べて、共振器RC3,RC4と共振器RC5,RC6との磁気結合が弱くなる。
【0148】
変形例10のフィルタ装置100Kのように、共振器RC3,RC4に用いられる平板電極と、共振器RC5,RC6に用いられる平板電極とを異なる誘電体層に配置することによって、共振器間の磁気結合を調整することができる。
【0149】
(変形例11)
図23は、変形例11のフィルタ装置100Lの積層構造の一例を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Lは、概略的には、図21で示した実施の形態2のフィルタ装置100Jにおける平板電極PCJの第2部分PCJ2が、異なる誘電体層に設けられた構成となっている。なお、図23において、図21および図22と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0150】
図23を参照して、本体110Lの誘電体層LY32には、共振器RC1の一部を構成する平板電極PC1および共振器RC2の一部を構成する平板電極PC2に加えて、共振器RC3,RC4の一部を構成する平板電極PC34Lと、共振器RC5,RC6の一部を構成する平板電極PC56Lとが配置されている。平板電極PC34Lはフィルタ装置100Jにおける平板電極PCJの第1部分PCJ1に対応し、平板電極PC56Lはフィルタ装置100Jにおける平板電極PCJの第3部分PCJ3に対応する。
【0151】
平板電極PC34Lの中央部にはビアV31Lが接続される。また、平板電極PC56Lの中央部にはビアV51Lが接続される。ビアV31LおよびビアV51Lの各々は、誘電体層LY33に設けられた平板電極PA3に接続されている。平板電極PA3は、誘電体層LY33においてY軸方向に延伸する帯状電極として構成されている。平板電極PA3の中央部には、ビアV35Lが接続されている。平板電極PA3は、ビアV35Lを介して、誘電体層LY36の接地電極PGに接続される。
【0152】
このような構成とすることによって、共振器RC3,RC4と共振器RC5,RC6との間における接地側ビアの共通化領域を調整することができる。フィルタ装置100Lにおいては、図21のフィルタ装置100Jの場合に比べて、共振器RC3,RC4と共振器RC5,RC6との間における接地側ビアの共通化領域が小さくなる。そのため、フィルタ装置100Lにおける共振器RC3,RC4と共振器RC5,RC6との磁気結合は、フィルタ装置100Jにおける共振器RC3,RC4と共振器RC5,RC6との磁気結合よりも弱くなる。
【0153】
変形例11のフィルタ装置100Lのように、共振器RC3,RC4に用いられる平板電極と、共振器RC5,RC6に用いられる平板電極とを、異なる誘電体層で接続することによって、共振器RC3,RC4と共振器RC5,RC6との磁気結合を調整することができる。
【0154】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、各共振器においてインダクタの一部を構成する平板電極の各々を多層化することによって、フィルタ装置の挿入損失を低減する構成について説明する。
【0155】
図24は、実施の形態3のフィルタ装置100Mの積層構造の一例を示す分解斜視図である。図24を参照して、フィルタ装置100Mは、概略的には、図3で説明した実施の形態1のフィルタ装置100における誘電体層LY2の構成が複数の誘電体層に設けられた構成となっている。なお、図24のフィルタ装置100Mにおいて、図3のフィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0156】
フィルタ装置100Mは、複数の誘電体層LY41~LY47が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の本体110Mを備えている。本体110Mにおける誘電体層LY41および誘電体層LY43~LY47は、図3における誘電体層LY1~LY6にそれぞれ対応する。
【0157】
誘電体層LY43には、平板電極PC1M,PC2M,PC34Mが設けられている。平板電極PC1M,PC2M,PC34Mは、それぞれ誘電体層LY42の平板電極PC1,PC2,PC34と同じ形状を有している。
【0158】
平板電極PC1Mは、ビアV10、V11に対して平板電極PC1と並列に接続されている。平板電極PC2Mは、ビアV20、V21に対して平板電極PC2と並列に接続されている。平板電極PC34Mは、ビアV30、V31,V40に対して平板電極PC34と並列に接続されている。
【0159】
このように、各共振器における平板電極を多層化することによって、各平板電極に流れる電流が低減するため、各共振器のインダクタにおける電力損失が低減する。これによって、フィルタ装置において通過帯域における挿入損失が低減して通過特性が向上する。
【0160】
[実施の形態4]
実施の形態4においては、共振器の性能の低下を抑制しつつ小型化を実現する構成について説明する。
【0161】
図25は、実施の形態4のフィルタ装置100Nの積層構造の一例を示す分解斜視図である。また、図26はフィルタ装置100Nの誘電体層から誘電体層の部分を積層方向から見たときの平面図である。フィルタ装置100Nの等価回路は、図2に示したフィルタ装置100と同様である。
【0162】
図25および図26を参照して、フィルタ装置100Nは、複数の誘電体層LY51~LY60を有する本体110N内に共振器RC1~RC4が設けられている。
【0163】
共振器RC1は、ビアV10,V10N,V11、キャパシタ電極P1、および平板電極PC10N,PC10N1,PC11N,PC11N1を含む。共振器RC2は、ビアV20,V20N,V21、キャパシタ電極P2、および平板電極PC20N,PC20N1,PC21N,PC21N1を含む。
【0164】
また、共振器RC3は、ビアV30,V31、キャパシタ電極P3、および平板電極PC34N,PC34N1を含む。共振器RC4は、ビアV40,V31、キャパシタ電極P4、および平板電極PC34N,PC34N1を含む。なお、共振器RC3および共振器RC4において、ビアV31および平板電極PC34N,PC34N1が共通化されている。
【0165】
本体110Nの上面111(誘電体層LY51)には、フィルタ装置100Nの方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。本体110Nの下面112(誘電体層LY60)には、当該フィルタ装置100Nと外部機器とを接続するための外部端子である入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDが配置されている。
【0166】
入力端子T1は、ビアVT10によって、誘電体層LY59に設けられた平板電極PT1に接続されている。平板電極PT1は、ビアVT11によって誘電体層LY57に設けられた、共振器RC1のキャパシタ電極P1に接続される。
【0167】
キャパシタ電極P1の一部は、本体110の法線方向から平面視した場合に、誘電体層LY58に設けられたキャパシタ電極PT11と重なっている。キャパシタ電極PT11は、ビアVG1を介して誘電体層LY59の接地電極PGに接続される。また、接地電極PGは、ビアVGを介して接地端子GNDに接続される。したがって、キャパシタ電極P1とキャパシタ電極P11とによって図2のキャパシタC1が構成される。
【0168】
キャパシタ電極P1は、ビアV10を介して、誘電体層LY54の平板電極PC11N、および、誘電体層LY55の平板電極PC11N1の一方端に接続される。平板電極PC11N,PC11N1は、ともに同一の略C字形状に構成されている。平板電極PC11N,PC11N1の他方端は、ビアV10Nを介して、誘電体層LY52の平板電極PC10N、および、誘電体層LY53の平板電極PC10N1の一方端に接続される。平板電極PC10N,PC10N1は、ともに同一の略C字形状に構成されている。平板電極PC10N,PC10N1の他方端は、ビアV11を介して、誘電体層LY59の接地電極PGに接続される。平板電極PC10N,PC10N1,PC11N,PC11N1およびビアV10,V10N,V11によって、図2おけるインダクタL1が構成される。
【0169】
出力端子T2は、ビアVT20によって、誘電体層LY59に設けられた平板電極PT2に接続されている。平板電極PT2は、ビアVT21によって誘電体層LY57に設けられた、共振器RC2のキャパシタ電極P2に接続される。
【0170】
キャパシタ電極P2の一部は、本体110の法線方向から平面視した場合に、誘電体層LY58に設けられたキャパシタ電極PT12と重なっている。キャパシタ電極PT12は、ビアVG2を介して誘電体層LY59の接地電極PGに接続される。キャパシタ電極P2とキャパシタ電極PT12とによって図2のキャパシタC2が構成される。
【0171】
キャパシタ電極P2は、ビアV20を介して、誘電体層LY54の平板電極PC21N、および、誘電体層LY55の平板電極PC21N1の一方端に接続される。平板電極PC21N,PC21N1は、ともに同一の略C字形状に構成されている。平板電極PC21N,PC21N1の他方端は、ビアV20Nを介して、誘電体層LY52の平板電極PC20N、および、誘電体層LY53の平板電極PC20N1の一方端に接続される。平板電極PC20N,PC20N1は、ともに同一の略C字形状に構成されている。平板電極PC20N,PC20N1の他方端は、ビアV21を介して、誘電体層LY59の接地電極PGに接続される。平板電極PC20N,PC20N1,PC21N,PC21N1およびビアV20,V20N,V21によって、図2におけるインダクタL2が構成される。
【0172】
共振器RC1のキャパシタ電極P1および共振器RC2のキャパシタ電極P2は、本体110の法線方向から平面視した場合に、誘電体層LY56に設けられたキャパシタ電極P12と部分的に重なっている。キャパシタ電極P1,P2,P12によって、図2におけるキャパシタC12が構成される。
【0173】
共振器RC1のビアV10は、誘電体層LY56においてY軸方向に延伸するキャパシタ電極P13にも接続されている。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P13の一部は、誘電体層LY57に設けられた、共振器RC3のキャパシタ電極P3と重なっている。キャパシタ電極P3とキャパシタ電極P13とによって、図2におけるキャパシタC13が構成される。キャパシタ電極P3は、ビアV30を介して、誘電体層LY52の平板電極PC34N、および、誘電体層LY53の平板電極PC34N1に接続される。
【0174】
共振器RC2のビアV20は、誘電体層LY56においてY軸方向に延伸するキャパシタ電極P24にも接続されている。本体110の法線方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P24の一部は、誘電体層LY57に設けられた、共振器RC4のキャパシタ電極P4と重なっている。キャパシタ電極P4とキャパシタ電極P24とによって、図2におけるキャパシタC24が構成される。キャパシタ電極P4は、ビアV40を介して、誘電体層LY52の平板電極PC34N、および、誘電体層LY53の平板電極PC34N1に接続される。
【0175】
平板電極PC34N,PC34N1の各々は、ともに同一の略E字形状を有している。平板電極PC34Nは、図26に示されるように、X軸方向に延伸する帯状電極として構成された第1部分PC341Nと、当該第1部分PC341NからY軸の正方向に延伸する3つの突出部分(第2部分PC342N,第3部分PC343N,第4部分PC344N)とを含む。第2部分PC342Nは、第1部分PC341Nにおいて延伸方向(X軸方向)に沿った中央部から、平板電極PC10N,PC20Nの間に向かって延伸している。第3部分PC343Nは、第1部分PC341NのX軸の負方向の端部(第1端部)からY軸の正方向に向かって延伸している。第4部分PC344Nは、第1部分PC341NのX軸の正方向の端部(第2端部)からY軸の正方向に向かって延伸している。なお、平板電極PC34N1も、平板電極PC34Nと同様の形状を有している。
【0176】
共振器RC3のビアV30は、平板電極PC34N,PC34N1における、第3部分の端部に接続されている。共振器RC4のビアV40は、平板電極PC34N,PC34N1における、第3部分の端部に接続されている。
【0177】
平板電極PC34N,PC34N1における第2部分の端部には、共振器RC3,RC4で共通化されたビアV31が接続されている。ビアV31は、誘電体層LY59の接地電極PGに接続される。
【0178】
共振器RC3のキャパシタ電極P3および共振器RC4のキャパシタ電極P4は、本体110の法線方向から平面視した場合に、誘電体層LY56に設けられたキャパシタ電極P34と部分的に重なっている。キャパシタ電極P3,P4,P34によって、図2におけるキャパシタC34が構成される。
【0179】
上述のように、実施の形態4のフィルタ装置100Nの等価回路は、基本的には実施の形態1のフィルタ装置100と同様であり、X軸方向に2つの共振器が配置され、さらに、Y軸方向にも2つの共振器が配置されている。これにより、隣接する共振器同士の間隔が広くなるので、誘電体層の全体の面積が同じ場合でもQ値が大きくなり、フィルタ装置の損失が低減される。
【0180】
さらに、実施の形態4のフィルタ装置100Nにおいては、図26に示されるように、入力端子T1に接続される共振器RC1が、共振器RC3を構成する平板電極PC34Nの第1部分PC341N、第2部分PC342Nおよび第3部分PC343Nによって囲まれた領域に配置されている。また、出力端子T2に接続される共振器RC2が、共振器RC4を構成する平板電極PC34Nの第1部分PC341N、第2部分PC342Nおよび第4部分PC344Nによって囲まれた領域に配置されている。
【0181】
このような共振器の配置とすることによって、2段目の共振器RC3および3段目の共振器RC4について、平板電極に接続されるビア間の距離を長くなるので、共振器のインダクタンスが大きくなる。共振周波数を低くする、または、フィルタ装置を小型化する場合には、共振器のキャパシタンスあるいはインダクタンスを大きくすることが一般的に行なわれる。しかしながら、キャパシタンスを大きくすると、かえってQ値が低下してしまう。そのため、フィルタ装置100Nのように、平板電極の線路長を長くしてインダクタンスを大きくすることよって、Q値の低下を抑制しつつ、共振周波数の低減および/または小型化を実現することが可能となる。
【0182】
また、4段フィルタにおいては、入力端子T1に接続される共振器RC1と出力端子T2に接続される共振器RC4との飛び越し結合によって減衰極が生じる。そのため、入出力端子に接続されるビアが、フィルタ装置の外部に配置された他の機器あるいは筐体のシールドと結合すると、フィルタ特性に影響がおよぶ可能性がある。
【0183】
実施の形態4のフィルタ装置100Nにおいては、共振器RC1および共振器RC4が、本体110を積層方向から平面視した場合に、共振器RC2,RC3の内側に設けられているため、入出力端子に接続されるビアは、共振器RC2,RC3よりも本体110の中央寄りに配置されることになる。したがって、入出力端子に接続されるビアが本体110の周辺近くに配置される場合に比べて、入出力端子に接続されるビアと外部シールドとの結合が抑制されるので、外部シールドによるフィルタ特性への影響が抑制される。
【0184】
(変形例12)
図27は、変形例12のフィルタ装置100Pの積層構造の一例を示す分解斜視図である。また、図28はフィルタ装置100Pの誘電体層から誘電体層の部分を積層方向から見たときの平面図である。
【0185】
フィルタ装置100Pにおいては、実施の形態4のフィルタ装置100Nにおける誘電体層LY52の各平板電極と接地電極PGとを接続するビアが、途中で共通化された構成となっている。図27および図28において、図25および図26と重複する部分の説明は繰り返さない。
【0186】
図27および図28を参照して、フィルタ装置100Pは、複数の誘電体層LY71~LY80が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の本体110Pを備えている。
【0187】
本体110Pにおいては、共振器RC1を構成する平板電極PC10N,PC10N1の一方端は、ビアV11に接続されている。ビアV11は、誘電体層LY72から誘電体層LY75まで延伸しており、誘電体層LY74で平板電極PC50に接続され、誘電体層LY75で平板電極PC51に接続されている。平板電極PC50,PC51は、それぞれ誘電体層LY74および誘電体層LY75において、X軸方向に延伸する直線状の電極である。
【0188】
平板電極PC50,PC51には、共振器RC2を構成する平板電極PC20N,PC20N1の一方端に接続されたビアV21、および、共振器RC3,RC4を構成する平板電極PC34N,PC34N1の一方端に接続されたビアV31も接続されている。ビアV21は、ビアV11同様に、誘電体層LY72から誘電体層LY75まで延伸している。一方、ビアV31は、誘電体層LY72から誘電体層LY79まで延伸し、接地電極PGに接続されている。すなわち、平板電極PC50,PC51によって、ビアV11,V21がビアV31と共通化されている。
【0189】
このように、共振器を構成する平板電極から接地電極PGまでのビアを共通化することによって、実施の形態4のフィルタ装置100Nの場合に比べて、共振器RC1と共振器RC2との間の磁気結合、共振器RC1と共振器RC3との間の磁気結合、および共振器RC2と共振器RC4との間の磁気結合がより強くなる。共振器間の磁気結合が強くなると、インピーダンスが高くなるため、通過帯域幅の拡大、および/または、通過帯域幅近傍における減衰の急峻度が高まる。
【0190】
(変形例13)
図29は、変形例13のフィルタ装置100Qを積層方向から見たときの平面図である。フィルタ装置100Qにおいては、共振器RC1を構成する平板電極PC1Qの一方端、および、共振器RC2を構成する平板電極PC2Qの一方端が、ともに共振器RC3,RC4におけるビアV31に接続された構成となっている。すなわち、平板電極PC1Q,PC2Q,PC34Qは、共通のビアV31によって接地電極PGに接続されている。このように、すべての共振器RC1~RC4を共通のビアV31で接地電極PGに接続することによって、各共振器間の磁気結合が、変形例12の場合よりもさらに強まる。したがって、通過帯域幅の拡大、および、減衰の急峻性がより一層高まる。
【0191】
さらに、変形例13のフィルタ装置100Qにおいては、入出力端子に接続されるビアV10,V20が、フィルタ装置100N,100Pに比べてさらに本体110の中央寄りに配置されている。したがって、フィルタ装置100Qにおいては、外部シールドによるフィルタ特性の低下をさらに抑制することができる。
【0192】
なお、上記の実施の形態および各変形例において「共振器RC1」~「共振器RC6」は、本開示における「第1共振器」~「第6共振器」にそれぞれ対応する。
【0193】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0194】
10 通信装置、12 アンテナ、20 高周波フロントエンド回路、22,28 バンドパスフィルタ、24 増幅器、26 減衰器、30 ミキサ、32 局部発振器、40 D/Aコンバータ、50 RF回路、100,100A~100N,100P,100Q,100X フィルタ装置、110,110D~110N,110P,110Q,110X 本体、111 上面、112 下面、C1~C6,C12,C13,C24,C34,C35,C46,C56 キャパシタ、DM 方向性マーク、GND 接地端子、L1~L6,L34~L36 インダクタ、LY1~LY6,LY11~LY17,LY21~LY26,LY31~KY37,LY41~LY47,LY51~LY60,LY71~LY80 誘電体層、N1A~N6A,N1B~N6B 接続ノード、P1~P6,P12,P13,P24,P34 キャパシタ電極、P34,P35,P46,P56,PA1~PA3,PC1,PC1G1,PC1G2,PC1M,PC1X,PC2,PC2G1,PC2G2,PC2M,PC2X,PC10N,PC10N1,PC11~PC13,PC11N,PC11N1,PC20N,PC20N1,PC21~PC23,PC21N,PC21N1,PC34,PC34A~PC34C,PC34F,PC34K~PC34M,PC34X,PC50,PC51,PC56K,PC56L,PCD,PCI,PCJ,PT1,PT2,PT11~PT14 平板電極、PG 接地電極、RC1~RC6,RC1X~RC4X 共振器、T1 入力端子、T2 出力端子、V10~V12,V10G1,V10G2,V10I1,V10I2,V10N,V10X,V11E,V11X,V12E,V20,V20G1,V20G2,V20I1,V20I2,V20N,V20X,V21,V21E,V21X,V30,V30X,V31E,V31,V31D,V31E,V31F1,V31F2,V31I~V31K,V31X,V35L,V40,V40X,V50,V51L,V60,VC11,VC12,VC21,VC22,VG,VG1,VG2,VT10,VT11,VT20,VT21 ビア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29