(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ステータ及び回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H02K1/20 C
(21)【出願番号】P 2023073096
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】上野 駿
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-197962(JP,A)
【文献】実開昭56-027842(JP,U)
【文献】実開昭61-046855(JP,U)
【文献】特開2018-107921(JP,A)
【文献】特開2019-161752(JP,A)
【文献】特開2013-013182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機のステータであって、
ステータコアと、前記ステータコアのスロットに収容されたステータコイルと、を有し、
前記ステータコアは、電磁鋼板を積層した積層鋼板で形成され、
前記ステータコアは、軸方向に分割された複数の分割ステータコアを有し、
前記複数の分割ステータコアは、
前記スロットを構成する第1スロットと、冷媒の流路であって、径方向外側に開放し、径方向内側に開放せず、前記第1スロットと連通しない第1流路と、を有する第1ステータコアと、
前記第1スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第2スロットと、径方向外側に開放せず、前記第1流路と軸方向で連通し、前記第2スロットと連通する第2流路と、を有する第2ステータコアと、
前記第1スロット又は前記第2スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第3スロットを有する第3ステータコアと、
を有し、
ステータコアは、軸方向両端に前記第3ステータコアを有し、軸方向両端の前記第3ステータコアの間に前記第1ステータコア及び
前記第2ステータコアを有し、
前記第1スロット、前記第2スロット及び前記第3スロットは、前記ステータコアを軸方向に貫通する軸方向流路を有し、
前記軸方向流路は、前記スロット内で前記ステータコイルの径方向外側に設けられており、
絶縁部材であって、前記ステータコイルの径方向外側に配置される第1ガイド部材を含み、
前記第1ガイド部材は、径方向と直交する面を有する第1天部と、前記第1天部の周方向一方側で径方向内側に延びる第1側部と、前記第1天部の周方向他方側で径方向内側に延びる第2側部と、を有し、
前記第1ガイド部材は、軸方向と直交する面での断面形状がコの字であり、
前記第1ガイド部材は、前記第1天部、前記第1側部及び前記第2側部が、軸方向に延び、
前記第1ガイド部材の軸方向長さは、前記ステータコアの軸方向長さと同じであり、
前記第1天部は、前記第1天部を径方向に貫通する第1貫通孔を有し、
前記第1貫通孔は、前記第2流路から前記軸方向流路へ流れる冷媒を通す位置に設けられ、
前記軸方向流路は、少なくとも前記ステータコイル及び前記第1ガイド部材で囲まれている、
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
回転機のステータであって、
ステータコアと、前記ステータコアのスロットに収容されたステータコイルと、を有し、
前記ステータコアは、電磁鋼板を積層した積層鋼板で形成され、
前記ステータコアは、軸方向に分割された複数の分割ステータコアを有し、
前記複数の分割ステータコアは、
前記スロットを構成する第1スロットと、冷媒の流路であって、径方向外側に開放し、径方向内側に開放せず、前記第1スロットと連通しない第1流路と、を有する第1ステータコアと、
前記第1スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第2スロットと、径方向外側に開放せず、前記第1流路と軸方向で連通し、前記第2スロットと連通する第2流路と、を有する第2ステータコアと、
前記第1スロット又は前記第2スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第3スロットを有する第3ステータコアと、
を有し、
ステータコアは、軸方向両端に前記第3ステータコアを有し、軸方向両端の前記第3ステータコアの間に前記第1ステータコア及び
前記第2ステータコアを有し、
前記第1スロット、前記第2スロット及び前記第3スロットは、前記ステータコアを軸方向に貫通する軸方向流路を有し、
前記軸方向流路は、前記スロット内で前記ステータコイルの径方向内側に設けられており、
絶縁部材であって、前記ステータコイルの径方向内側に配置される第2ガイド部材を含み、
前記第2ガイド部材は、V字状の第1底部及び第2底部と、前記第1底部の径方向外側端から径方向外側に延びる第3側部と、前記第2底部の径方向外側端から径方向外側に延びる第4側部と、を有し、
前記第2ガイド部材は、前記第1底部、前記第2底部、前記第3側部及び前記第4側部が、軸方向に延び、
前記第2ガイド部材の軸方向長さは、前記ステータコアの軸方向長さと同じであり、
前記スロットは、径方向内側に開放しており、
前記第2ガイド部材の前記第1底部及び前記第2底部は、前記スロットの径方向内側での開放を塞ぎ、
前記第3側部は、前記第3側部を周方向に貫通する第2貫通孔を有し、
前記第2貫通孔は、前記第2流路から前記軸方向流路へ流れる冷媒を通す位置に設けられ、
前記第4側部は、前記第4側部を周方向に貫通する第3貫通孔を有し、
前記第3貫通孔は、前記第2流路から前記軸方向流路へ流れる冷媒を通す位置に設けられ、
前記軸方向流路は、少なくとも前記ステータコイル及び前記第2ガイド部材で囲まれている、
ことを特徴とするステータ。
【請求項3】
絶縁層の両側を発泡接着層で挟んだ3層構造の絶縁シートを有し、
前記ステータコイルは、前記絶縁シートに包まれて前記スロットに収容される、
ことを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記絶縁シートは、前記ステータコイルの四方を覆う、
ことを特徴とする
請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のステータと、前記ステータの径方向内側に配置されたロータと、を有する回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、電動車両用駆動モータや発電機等の回転機の高出力化が著しく、高出力化に伴う発熱を冷却する技術が非常に重要となっている。回転機の冷却技術としては、冷媒としてのオイルでステータコイルを冷却する油冷方式が知られているが、ステータコイルのうち露出しているのはコイルエンドのみであり、ステータコイルのうちスロット内部の部分は油を直接当てることができない。このためスロット内部のコイルの冷却方法が課題となっている。
【0003】
これに対して、特許文献1では、軸方向で2分割されたステータコアの間に、絶縁材で形成された冷媒分配プレートを配置する技術を開示している。この技術によれば、冷媒は冷媒分配プレートを介してスロット内部のコイルに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、絶縁材の冷媒分配プレートの部分はトルク発生に寄与しないため、冷媒分配プレートを用いない場合と同等のトルクを得るためには大型化してしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献1の場合、ステータコイルは接着層によって互いに接着されることが記載されている。この接着層は通常、ワニス処理によって形成されるが、ステータコアに冷媒分配プレートとステータコイルを組付けた状態でワニス処理を行う場合、ワニスが冷媒の流路に入り込んで塞いでしまうという問題があった。
【0007】
このため、従来は、スロット内部のステータコイルを冷却する冷却構造に改善の余地があった。
【0008】
本発明は、スロット内部のステータコイルを冷却する冷却構造について改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るステータは、回転機のステータであって、ステータコアと、前記ステータコアのスロットに収容されたステータコイルと、を有し、前記ステータコアは、電磁鋼板を積層した積層鋼板で形成され、前記ステータコアは、軸方向に分割された複数の分割ステータコアを有し、前記複数の分割ステータコアは、前記スロットを構成する第1スロットと、冷媒の流路であって、径方向外側に開放し、径方向内側に開放せず、前記第1スロットと連通しない第1流路と、を有する第1ステータコアと、前記第1スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第2スロットと、径方向外側に開放せず、前記第1流路と軸方向で連通し、前記第2スロットと連通する第2流路と、を有する第2ステータコアと、前記第1スロット又は前記第2スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第3スロットを有する第3ステータコアと、を有し、ステータコアは、軸方向両端に前記第3ステータコアを有し、軸方向両端の前記第3ステータコアの間に前記第1ステータコア及び前記第2ステータコアを有し、前記第1スロット、前記第2スロット及び前記第3スロットは、前記ステータコアを軸方向に貫通する軸方向流路を有し、前記軸方向流路は、前記スロット内で前記ステータコイルの径方向外側に設けられており、絶縁部材であって、前記ステータコイルの径方向外側に配置される第1ガイド部材を含み、前記第1ガイド部材は、径方向と直交する面を有する第1天部と、前記第1天部の周方向一方側で径方向内側に延びる第1側部と、前記第1天部の周方向他方側で径方向内側に延びる第2側部と、を有し、前記第1ガイド部材は、軸方向と直交する面での断面形状がコの字であり、前記第1ガイド部材は、前記第1天部、前記第1側部及び前記第2側部が、軸方向に延び、前記第1ガイド部材の軸方向長さは、前記ステータコアの軸方向長さと同じであり、前記第1天部は、前記第1天部を径方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔は、前記第2流路から前記軸方向流路へ流れる冷媒を通す位置に設けられ、前記軸方向流路は、少なくとも前記ステータコイル及び前記第1ガイド部材で囲まれている。
本発明の一態様に係るステータは、回転機のステータであって、ステータコアと、前記ステータコアのスロットに収容されたステータコイルと、を有し、前記ステータコアは、電磁鋼板を積層した積層鋼板で形成され、前記ステータコアは、軸方向に分割された複数の分割ステータコアを有し、前記複数の分割ステータコアは、前記スロットを構成する第1スロットと、冷媒の流路であって、径方向外側に開放し、径方向内側に開放せず、前記第1スロットと連通しない第1流路と、を有する第1ステータコアと、前記第1スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第2スロットと、径方向外側に開放せず、前記第1流路と軸方向で連通し、前記第2スロットと連通する第2流路と、を有する第2ステータコアと、前記第1スロット又は前記第2スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第3スロットを有する第3ステータコアと、を有し、ステータコアは、軸方向両端に前記第3ステータコアを有し、軸方向両端の前記第3ステータコアの間に前記第1ステータコア及び前記第2ステータコアを有し、前記第1スロット、前記第2スロット及び前記第3スロットは、前記ステータコアを軸方向に貫通する軸方向流路を有し、前記軸方向流路は、前記スロット内で前記ステータコイルの径方向内側に設けられており、絶縁部材であって、前記ステータコイルの径方向内側に配置される第2ガイド部材を含み、前記第2ガイド部材は、V字状の第1底部及び第2底部と、前記第1底部の径方向外側端から径方向外側に延びる第3側部と、前記第2底部の径方向外側端から径方向外側に延びる第4側部と、を有し、前記第2ガイド部材は、前記第1底部、前記第2底部、前記第3側部及び前記第4側部が、軸方向に延び、前記第2ガイド部材の軸方向長さは、前記ステータコアの軸方向長さと同じであり、前記スロットは、径方向内側に開放しており、前記第2ガイド部材の前記第1底部及び前記第2底部は、前記スロットの径方向内側での開放を塞ぎ、前記第3側部は、前記第3側部を周方向に貫通する第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔は、前記第2流路から前記軸方向流路へ流れる冷媒を通す位置に設けられ、前記第4側部は、前記第4側部を周方向に貫通する第3貫通孔を有し、前記第3貫通孔は、前記第2流路から前記軸方向流路へ流れる冷媒を通す位置に設けられ、前記軸方向流路は、少なくとも前記ステータコイル及び前記第2ガイド部材で囲まれている。
【0010】
上記の一態様のステータにおいて、絶縁層の両側を発泡接着層で挟んだ3層構造の絶縁シートを有し、前記ステータコイルは、前記絶縁シートに包まれて前記スロットに収容されることを特徴とする。
【0011】
上記の一態様のステータにおいて、前記絶縁シートは、前記ステータコイルの四方を覆う。
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る回転機は、上記のステータと、前記ステータの径方向内側に配置されたロータと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、スロット内部のステータコイルを冷却する冷却構造について改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るステータの斜視図である。
【
図2】ステータコア110を構成する複数のステータコアのうちステータコア111、ステータコア115及びステータコア113を軸方向一方側から見た側面図である。
【
図3】第2実施形態におけるステータコア1111を軸方向一方側から見た側面図である。
【
図4】第3実施形態におけるステータコア2111を軸方向一方側から見た側面図である。
【
図6】第4実施形態のステータコア3111、ステータコア3115及びステータコア3113を軸方向一方側から見た側面図である。
【
図7】第6実施形態におけるステータコア4111を軸方向一方側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るステータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0019】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図1の上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向及びY軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0020】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。周方向において、+Z側から-Z側を見たときの時計回りの側を「周方向一方側」と呼び、反時計回りの側を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0021】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。また「軸方向と直交する方向に拡がる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)と直交する方向に拡がる場合に加えて、軸方向(Z軸方向)と直交する方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に拡がる場合も含む。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るステータの斜視図である。
図1のステータ100は、モータのステータである。このモータは、回転機の一例である。このモータは、円筒形状のステータ100と、ステータ100の径方向内側に配置されたロータと、を有する。このロータの図示は省略している。このロータの回転軸は、中心軸Jと一致する。このロータは、ステータ100と同軸である。このロータは、ギャップを介してステータ100と径方向に対向する。
【0023】
ステータ100は、円筒形状のステータコア110と、ステータコア110のスロット110aに収容されたステータコイル130と、を有する。ステータコイル130は例えば、平角線である。また、ステータ100は、ステータコア110とステータコイル130との間に絶縁シート150を有する。なお、
図1では、ステータコイル130のコイルエンドの図示を省略している。
【0024】
ステータコア110は、軸方向で複数に分割された複数のステータコアで構成されている。ステータコア110は、ステータコア111、ステータコア112、ステータコア113、ステータコア114及びステータコア115の5つの分割ステータコアを有する。ステータコア111、ステータコア112、ステータコア113、ステータコア114、及びステータコア115のそれぞれは、例えば電磁鋼板を軸方向に積層した積層鋼板によって形成される。
【0025】
ステータコア111は、ステータコア110を構成する複数のステータコアのうち最も軸方向一方側に位置する。ステータコア113は、ステータコア111の軸方向他方側に隣接する。ステータコア115は、ステータコア113の軸方向他方側に隣接する。ステータコア114は、ステータコア115の軸方向他方側に隣接する。ステータコア112は、ステータコア114の軸方向他方側に隣接する。ステータコア112は、ステータコア110を構成する複数のステータコアのうち最も軸方向他方側に位置する。ステータコア112は、ステータコア111と同一の形状であるため、以下ではステータコア111についてのみ説明する。また、ステータコア114は、ステータコア113と同一の形状であるため、以下ではステータコア113についてのみ説明する。
【0026】
図2は、ステータコア110を構成する複数のステータコアのうちステータコア111、ステータコア115及びステータコア113を軸方向一方側から見た側面図である。
図2(A)は、ステータコア111の側面図であり、
図2(B)は、ステータコア115の側面図であり、
図2(C)は、ステータコア113の側面図である。
【0027】
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)は、ステータコア111、ステータコア115及びステータコア113のそれぞれについてスロット一つ分を周方向で切り出して示している。ステータコア111、ステータコア115及びステータコア113のそれぞれは、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示す形状を周方向に繰り返して形成される。
【0028】
図2(A)に示すように、ステータコア111は、径方向内側に開放し、径方向内側から径方向外側に延びるスロット111aを有する。スロット111aは、ステータコア111の径方向外側に開放しない。スロット111aは、ステータコア111を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット111aは、ステータコア111の周方向に等間隔で複数配置される。
【0029】
スロット111aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。ステータコア111は、スロット111aの径方向外側の面である面111bよりも径方向外側に凹む溝部111cを有する。ステータコア111は、スロット111aの周方向一方側及び周方向他方側に溝部111cを有する。ステータコイル130の径方向外側端は、面111bよりも径方向内側に位置する。ステータコア111は、面111b、ステータコイル130の径方向外側端、及びスロット111aの径方向に延びる内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット111aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0030】
絶縁シート150は、その面がほぼ長方形のシート状部材である。絶縁シート150は、三層構造のシートであり、一方の外側の層は発泡接着層であり、中間の層は絶縁層であり、他方の外側の層は発泡接着層である。発泡接着層は、加熱により発泡して接着する。絶縁シート150は、その面で折り曲げ可能である。絶縁シート150は、少なくとも三層構造であり、三層以上の層構造であってもよい。
【0031】
絶縁シート150の面は、長方形の短辺である第1辺及び第2辺、並びに長方形の長辺である第3辺及び第4辺を有する。絶縁シート150の第1辺及び第2辺は、軸方向と直交する辺である。絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、軸方向と平行な辺である。絶縁シート150の第3辺及び第4辺の長さは、少なくともステータコア110の軸方向長さ以上である。絶縁シート150は径方向内側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、溝部111cに嵌まる。これにより、絶縁シート150は、ステータコイル130とステータコア111との間に位置し、両者を接着するとともに絶縁する。溝部111cは、絶縁シート150の倒れを防止する。
【0032】
図2(B)に示すように、ステータコア115は、径方向内側に開放し、径方向内側から径方向外側に延びるスロット115aを有する。スロット115aは、ステータコア115の径方向外側に開放しない。スロット115aは、ステータコア115を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット115aは、ステータコア115の周方向に等間隔で複数配置される。スロット115aは、周方向及び径方向において、スロット111aと一致する。
【0033】
スロット115aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。ステータコア115は、スロット115aの径方向外側の面である面115bよりも径方向外側に凹む溝部115cを有する。ステータコア115は、スロット115aの周方向一方側及び周方向他方側に溝部115cを有する。ステータコイル130の径方向外側端は、面115bよりも径方向内側に位置する。ステータコア115は、面115b、ステータコイル130の径方向外側端、及びスロット115aの径方向に延びる内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット115aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0034】
絶縁シート150は径方向内側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、溝部115cに嵌まる。これにより、絶縁シート150は、ステータコイル130とステータコア115との間に位置し、両者を接着するとともに絶縁する。溝部115cは、絶縁シート150の倒れを防止する。
【0035】
ステータコア115は、更に、軸方向に貫通する貫通孔115dを有する。貫通孔115dは、ステータコア115の径方向外側に開放する。貫通孔115dは、ステータコア115の径方向内側に開放しない。貫通孔115dは、スロット115aに貫通しない。貫通孔115dは、ステータコア115の周方向に等間隔で複数配置される。貫通孔115dの数は、スロット115aの数と同じである。
【0036】
図2(C)に示すように、ステータコア113は、径方向内側に開放し、径方向内側から径方向外側に延びるスロット113aを有する。スロット113aは、ステータコア115の径方向外側に開放しない。しかし、スロット113aは、径方向外側において、後述の貫通孔113dに貫通する。スロット113aは、ステータコア113を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット113aは、ステータコア113の周方向に等間隔で複数配置される。スロット113aは、周方向及び径方向において、スロット111aと一致する。
【0037】
スロット113aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。ステータコア113は、スロット113aの径方向外側の面である面113bよりも径方向外側に凹む溝部113cを有する。ステータコア113は、スロット113aの周方向一方側及び周方向他方側に溝部113cを有する。ステータコイル130の径方向外側端は、面113bよりも径方向内側に位置する。ステータコア113は、面113b、ステータコイル130の径方向外側端、及びスロット113aの径方向に延びる内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット113aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0038】
絶縁シート150は径方向内側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、溝部113cに嵌まる。これにより、絶縁シート150は、ステータコイル130とステータコア113との間に位置し、両者を接着するとともに絶縁する。溝部113cは、絶縁シート150の倒れを防止する。
【0039】
ステータコア113は、更に、軸方向に貫通する貫通孔113dを有する。貫通孔113dは、ステータコア113の径方向外側に開放しない。貫通孔113dは、ステータコア113の径方向内側に開放しない。しかし、貫通孔113dは、径方向内側において、スロット113aに貫通する。貫通孔113dは、ステータコア113の周方向に等間隔で複数配置される。貫通孔113dの数は、スロット113aの数と同じである。
【0040】
また、ステータコア113の貫通孔115dは、少なくとも一部が周方向及び径方向でステータコア113の貫通孔113dと一致することで、少なくとも一部が軸方向で対向する。これにより、貫通孔115dは、貫通孔113dに貫通する。
【0041】
ステータコア110は、5つの分割ステータコアを、ステータコア111、ステータコア113、ステータコア115、ステータコア114、ステータコア112の順で配置して成る。5つの分割ステータコアは、隣接する分割ステータコア同士を、カシメ、溶接、接着剤、又は樹脂等により接着して一体化される。
【0042】
上記した構造のステータコア110においては、貫通孔115dは、貫通孔113dと連通し、貫通孔113dは、スロット113aにおける軸方向流路と連通し、スロット113aにおける軸方向流路は、スロット111aにおける軸方向流路及びスロット115aにおける軸方向流路に連通する。これにより、貫通孔115dの径方向外側端からステータ100に供給した冷媒としてのオイルは、貫通孔115d及び貫通孔113dを介して、スロット113aにおける軸方向流路、スロット115aにおける軸方向流路及びスロット111aにおける軸方向流路に達する。また、ステータコア112及びステータコア114も、ステータコア111及びステータコア113と同じ形状であることから、貫通孔115dの径方向外側端からステータ100に供給した冷媒としてのオイルは、スロット112aにおける軸方向流路及びスロット141aにおける軸方向流路に達する。各スロットにおける軸方向流路では、オイルがステータコイル130に直接触れるので、軸方向の全体に亘って各所においてステータコイル130を冷却することが出来る。
【0043】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態におけるステータコア1111を軸方向一方側から見た側面図である。
図3は、ステータコア1111についてスロット一つ分を周方向で切り出して示している。ステータコア1111は、
図3に示す形状を周方向に繰り返して形成される。
【0044】
本実施形態は、第1実施形態におけるステータコア111に代えてステータコア1111を有する。本実施形態においては、ステータコア112も第1実施形態と異なる形状であるが、ステータコア1111と同一の形状であるため、以下ではステータコア1111についてのみ説明する。本実施形態においては、第1実施形態におけるステータコア113、ステータコア114、及びステータコア115も第1実施形態と異なる形状であるが、スロットの形状がステータコア1111と同じ形状となる点で、第1実施形態と異なるだけであるので説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、ステータコア1111は、径方向内側に開放し、径方向内側から径方向外側に延びるスロット1111aを有する。スロット1111aは、ステータコア1111の径方向外側に開放しない。スロット1111aは、ステータコア1111を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット1111aは、ステータコア111の周方向に等間隔で複数配置される。
【0046】
スロット1111aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。スロット1111aは、径方向に延びる内壁に、周方向の幅を狭める方向に突出する凸部1111b及び凸部1111cを有する。凸部1111b及び凸部1111cは、絶縁シート1150を介してステータコイル130の径方向外側端と当接することで、ステータコイル130の径方向外側の位置を規制し、位置決めを行う。ステータコイル130の径方向外側端は、凸部1111b及び凸部1111cよりも径方向内側に位置する。
【0047】
絶縁シート1150は、第1実施形態における絶縁シート150と同じ材質、同じ形状である。絶縁シート1150は、径方向外側からステータコイル130を包み、ステータコイル130の径方向内側端を覆う方向に折り曲げられる。絶縁シート1150は、ステータコイル130の四方を覆う。
【0048】
ステータコア1111は、スロット1111aの径方向外側で周方向に延びる内壁、スロット1111aの径方向に延びる内壁、凸部1111b、凸部1111c及び絶縁シート1150の径方向外側の面で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット1111aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0049】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態におけるステータコア2111を軸方向一方側から見た側面図である。
図4は、ステータコア2111についてスロット一つ分を周方向で切り出して示している。ステータコア2111は、
図4に示す形状を周方向に繰り返して形成される。
【0050】
本実施形態は、第1実施形態におけるステータコア111に代えてステータコア2111を有する。本実施形態においては、ステータコア112も第1実施形態と異なる形状であるが、ステータコア2111と同一の形状であるため、以下ではステータコア2111についてのみ説明する。本実施形態においては、第1実施形態におけるステータコア113、ステータコア114、及びステータコア115も第1実施形態と異なる形状であるが、スロットの形状がステータコア2111と同じ形状となる点で、第1実施形態と異なるだけであるので説明を省略する。
【0051】
図4に示すように、ステータコア2111は、径方向内側に開放し、径方向内側から径方向外側に延びるスロット2111aを有する。スロット2111aは、ステータコア2111の径方向外側に開放しない。スロット2111aは、ステータコア2111を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット2111aは、ステータコア2111の周方向に等間隔で複数配置される。
【0052】
スロット2111aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。本実施形態のステータ100は、スロット内を軸方向に流れるオイルのガイドとなるガイド部材2170を有する点で、第1実施形態と異なる。ガイド部材2170は、スロット2111aの径方向外側に収容される。ガイド部材2170は、絶縁部材である。
【0053】
図5は、ガイド部材2170の斜視図である。ガイド部材2170は、径方向と直交する面を有する天部2170aと、天部2170aの周方向一方側で径方向内側に延びる側部2170cと、天部2170aの周方向他方側で径方向内側に延びる側部2170bと、を有する。ガイド部材2170は、軸方向と直交する面での断面形状がコの字である。ガイド部材2170は、天部2170a、側部2170c及び側部2170bが、軸方向に延びる。ガイド部材2170の軸方向長さは、ステータコア110の軸方向長さと同じである。ガイド部材2170の天部2170aは、天部2170aを径方向に貫通する貫通孔2170dを有する。この貫通孔2170dは、ステータコア113の貫通孔113dからスロット113aへの貫通を塞がないための貫通孔である。貫通孔2170dは、貫通孔113dからスロット113aへ流れるオイルを通す位置に設けられている。
【0054】
絶縁シート150は、第1実施形態における絶縁シート150と同じである。絶縁シート150は、径方向内側からステータコイル130を包み、その先端は、ガイド部材2170とスロット2111aの内壁との間に挿入される。
【0055】
ステータコア2111は、ガイド部材2170の内壁、及びステータコイル130の径方向外側の面で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット2111aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0056】
<第4実施形態>
第4実施形態では、第1実施形態のステータコア111、ステータコア115及びステータコア113に代えて、
図6のステータコア3111、ステータコア3115及びステータコア3113を用いる。
【0057】
図6は、第4実施形態のステータコア3111、ステータコア3115及びステータコア3113を軸方向一方側から見た側面図である。
図6(A)は、ステータコア3111の側面図であり、
図6(B)は、ステータコア3115の側面図であり、
図6(C)は、ステータコア3113の側面図である。
【0058】
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)は、ステータコア3111、ステータコア3115及びステータコア3113のそれぞれについてスロット一つ分を周方向で切り出して示している。ステータコア3111、ステータコア3115及びステータコア3113のそれぞれは、
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に示す形状を周方向に繰り返して形成される。本実施形態において、第1実施形態のステータコア112の代わりに用いるステータは、ステータコア3111と同一の形状であるため、以下ではステータコア3111についてのみ説明する。また、第1実施形態のステータコア114の代わりに用いるステータは、ステータコア3113と同一の形状であるため、以下ではステータコア3113についてのみ説明する。なお、
【0059】
図6(A)に示すように、ステータコア3111は、径方向内側に開放せずに、径方向内側から径方向外側に延びるスロット3111aを有する。スロット3111aは、ステータコア3111の径方向外側に開放しない。スロット3111aは、ステータコア3111を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット3111aは、ステータコア3111の周方向に等間隔で複数配置される。
【0060】
スロット3111aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。絶縁シート150は径方向外側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、ステータコイル130の径方向内側の面に接しないで、スロット3111aの径方向に延びる内壁に接する。
【0061】
ステータコイル130の径方向外側端は、絶縁シート150を介して、スロット3111aの径方向外側の内壁に接する。ステータコア3111は、ステータコイル130の径方向内側端、スロット3111aの径方向に延びる内壁、及びスロット3111aの径方向内側の内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット3111aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0062】
図6(B)に示すように、ステータコア3115は、径方向内側に開放せずに、径方向内側から径方向外側に延びるスロット3115aを有する。スロット3115aは、ステータコア3115の径方向外側に開放しない。スロット3115aは、ステータコア3115を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット3115aは、ステータコア3115の周方向に等間隔で複数配置される。スロット3115aは、周方向及び径方向において、スロット3111aと一致する。
【0063】
スロット3115aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。絶縁シート150は径方向外側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、ステータコイル130の径方向内側の面に接しないで、スロット3115aの径方向に延びる内壁に接する。ステータコア3115は、ステータコイル130の径方向内側端、スロット3115aの径方向に延びる内壁、及びスロット3115aの径方向内側の内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット3115aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0064】
ステータコア3115は、更に、軸方向に貫通する貫通孔3115bを有する。貫通孔3115bは、ステータコア3115の径方向外側に開放する。貫通孔3115bは、ステータコア3115の径方向内側に開放しない。貫通孔3115bは、スロット3115aに貫通しない。貫通孔3115bは、ステータコア3115の周方向に等間隔で複数配置される。貫通孔3115bの数は、スロット3115aの数と同じである。貫通孔3115bは、スロット3115aの周方向他方側に配置される。
【0065】
ステータコア3115は、更に、軸方向に貫通する貫通孔3115cを有する。貫通孔3115cは、ステータコア3115の径方向外側に開放する。貫通孔3115cは、ステータコア3115の径方向内側に開放しない。貫通孔3115cは、スロット3115aに貫通しない。貫通孔3115cは、ステータコア3115の周方向に等間隔で複数配置される。貫通孔3115cの数は、スロット3115aの数と同じである。貫通孔3115cは、スロット3115aの周方向一方側に配置される。
【0066】
図6(C)に示すように、ステータコア3113は、径方向内側に開放せずに、径方向内側から径方向外側に延びるスロット3113aを有する。スロット3113aは、ステータコア3113の径方向外側に開放しない。スロット3113aは、ステータコア3113を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット3113aは、ステータコア3113の周方向に等間隔で複数配置される。スロット3113aは、周方向及び径方向において、スロット3111aよりも大きい。
【0067】
スロット3113aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。絶縁シート150は径方向外側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、ステータコイル130の径方向内側の面に接しない。ステータコア3115は、ステータコイル130の径方向内側端、スロット3113aの径方向に延びる内壁、及びスロット3113aの径方向内側の内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット3113aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0068】
ステータコア3113は、更に、軸方向に貫通する貫通孔3113bを有する。貫通孔3113bは、ステータコア3113の径方向外側に開放しない。貫通孔3113bは、ステータコア3113の径方向内側に開放しない。しかし、貫通孔3113bは、径方向内側において、スロット3113aに貫通する。貫通孔3113bは、ステータコア3113の周方向に等間隔で複数配置される。貫通孔3113bの数は、スロット3113aの数と同じである。貫通孔3113bは、スロット3113aの周方向他方側に配置される。
【0069】
ステータコア3113は、更に、軸方向に貫通する貫通孔3113cを有する。貫通孔3113cは、ステータコア3113の径方向外側に開放しない。貫通孔3113cは、ステータコア3113の径方向内側に開放しない。しかし、貫通孔3113cは、径方向内側において、スロット3113aに貫通する。貫通孔3113cは、ステータコア3113の周方向に等間隔で複数配置される。貫通孔3113cの数は、スロット3113aの数と同じである。貫通孔3113cは、スロット3113aの周方向他方側に配置される。
【0070】
上記した第4実施形態の構造のステータコア110においては、貫通孔3115bは、貫通孔3113bと連通し、貫通孔3115cは、貫通孔3113cと連通する。貫通孔3113b及び貫通孔3113cは、スロット3113aにおける軸方向流路と連通し、スロット3113aにおける軸方向流路は、スロット3111aにおける軸方向流路及びスロット3115aにおける軸方向流路に連通する。これにより、貫通孔3115b及び貫通孔3115cの径方向外側端からステータ100に供給した冷媒としてのオイルは、貫通孔3115b及び貫通孔3115c並びに貫通孔3113b及び貫通孔3113cを介して、スロット3113aにおける軸方向流路、スロット3115aにおける軸方向流路及びスロット3111aにおける軸方向流路に達する。
【0071】
<第5実施形態>
第4実施形態では、絶縁シート150は径方向外側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、ステータコイル130の径方向内側の面に接しないとしていた。第5実施形態では、絶縁シート150は、径方向外側からステータコイル130を包み、ステータコイル130の径方向内側端を覆う方向に折り曲げられる。
【0072】
<第6実施形態>
図7は、第6実施形態におけるステータコア4111を軸方向一方側から見た側面図である。
図7は、ステータコア4111についてスロット一つ分を周方向で切り出して示している。ステータコア4111は、
図7に示す形状を周方向に繰り返して形成される。
【0073】
本実施形態は、第4実施形態におけるステータコア3111に代えてステータコア4111を有する。本実施形態においては、第4実施形態におけるステータコア3115、及びステータコア3113も第4実施形態と異なる形状であるが、スロットの形状がステータコア4111と同じ形状となる点で、第4実施形態と異なるだけであるので説明を省略する。
【0074】
図7に示すように、ステータコア4111は、径方向内側に開放し、径方向内側から径方向外側に延びるスロット4111aを有する。スロット4111aは、ステータコア4111の径方向外側に開放しない。スロット4111aは、ステータコア4111を軸方向に貫通する貫通孔である。スロット4111aは、ステータコア4111の周方向に等間隔で複数配置される。
【0075】
スロット4111aは、ステータコイル130の長さ方向が軸方向と一致するように、ステータコイル130を収容する。本実施形態のステータ100は、スロット内を軸方向に流れるオイルのガイドとなるガイド部材4190を有する点で、第4実施形態と異なる。ガイド部材4190は、スロット4111aの径方向内側に収容される。ガイド部材4190は、絶縁部材である。また、第6実施形態のステータコア4111は、第4実施形態のステータコア3111と比べて、スロット4111aが径方向内側で開放している点で異なる。ガイド部材4190は、このスロット4111aが径方向内側で開放していてもオイルの軸方向への流路を確保する部材である。また、第6実施形態では、第4実施形態の絶縁シート150に代えて絶縁シート4150を用いており、絶縁シート4150の形状を絶縁シート150と異ならせている。絶縁シート4150の材質や層構造は、絶縁シート150と同じである
【0076】
絶縁シート4150は径方向外側からステータコイル130を包み、絶縁シート150の第3辺及び第4辺は、ステータコイル130の径方向内側の面に接しないで、スロット4111aの径方向に延びる内壁に接する。ステータコイル130の径方向外側端は、絶縁シート4150を介して、スロット4111aの径方向外側の内壁に接する。
【0077】
絶縁シート4150は、ステータコイル130の径方向外側端に接する天部4150aを有する。絶縁シート4150は、径方向と直交する面を有する天部4150aと、天部4150aの周方向一方側で径方向内側に延びる側部4150cと、天部4150aの周方向他方側で径方向内側に延びる側部4150bと、を有する。絶縁シート4150は、軸方向と直交する面での断面形状がコの字である。絶縁シート4150は、天部4150a、側部4150c及び側部4150bが、軸方向に延びる。絶縁シート4150の軸方向長さは、ステータコア110の軸方向長さと同じである。
【0078】
ガイド部材4190は、スロット4111aの径方向内側に収容される。ガイド部材2170は、V字状の底部4190a及び底部4190bと、底部4190aの径方向外側端から径方向外側に延びる側部4190cと、底部4190bの径方向外側端から径方向外側に延びる側部4190dと、を有する。ガイド部材5190は、底部4190a、底部4190b、側部4190c、及び側部4190dが、軸方向に延びる。ガイド部材4190の軸方向長さは、ステータコア110の軸方向長さと同じである。ガイド部材4190の底部4190a及び底部4190bは、スロット4111aの径方向内側での開放を塞ぐ。ガイド部材4190の底部4190a及び底部4190bの形状は、スロット4111aの径方向内側での開放を塞ぐため、スロット4111aの径方向内側の形状に応じた形状である。
【0079】
ステータコア4111は、ステータコイル130の径方向内側の面、絶縁シート4150の内側の面、及びガイド部材4190の内壁で囲まれた空間で、冷媒としてのオイルが軸方向に流れる流路(以下、「スロット4111aにおける軸方向流路」という)を形成している。
【0080】
図8は、絶縁シート4150の斜視図である。絶縁シート4150の側部4150bは、側部4150bの径方向内側端から径方向外側に切り欠いた切り欠き部4150dを有する。絶縁シート4150の側部4150cは、側部4150cの径方向内側端から径方向外側に切り欠いた切り欠き部4150eを有する。
【0081】
切り欠き部4150dは、
図6(C)に示した第4実施形態のステータコア3113における貫通孔3113bを流れるオイルを、スロット4111aにおける軸方向流路に流入させるための切り欠きである。切り欠き部4150dの軸方向位置は、貫通孔3113bの軸方向位置と同じ位置に設けられている。
【0082】
切り欠き部4150eは、
図6(C)に示した第4実施形態のステータコア3113における貫通孔3113cを流れるオイルを、スロット4111aにおける軸方向流路に流入させるための切り欠きである。切り欠き部4150eの軸方向位置は、貫通孔3113cの軸方向位置と同じ位置に設けられている。
【0083】
図9は、ガイド部材4190の斜視図である。ガイド部材4190の側部4190cは、側部4190cを周方向に貫通する貫通孔4190eを有する。ガイド部材4190の側部4190dは、側部4190dを周方向に貫通する貫通孔4190fを有する。
【0084】
貫通孔4190eは、
図6(C)に示した第4実施形態のステータコア3113における貫通孔3113bを流れるオイルを、スロット4111aにおける軸方向流路に流入させるための切り欠きである。貫通孔4190eの軸方向位置は、貫通孔3113bの軸方向位置と同じ位置に設けられている。
【0085】
貫通孔4190fは、
図6(C)に示した第4実施形態のステータコア3113における貫通孔3113cを流れるオイルを、スロット4111aにおける軸方向流路に流入させるための切り欠きである。貫通孔4190fの軸方向位置は、貫通孔3113cの軸方向位置と同じ位置に設けられている。
【0086】
<その他の実施形態>
上述の実施形態では、ステータコイル130の径方向外側又は径方向内側のどちらかに、オイルがステータコイル130に直接触れる軸方向流路を設けた。本発明はこれに限られず、ステータコイル130の径方向外側及び径方向内側の両方に、オイルがステータコイル130に直接触れる軸方向流路を設けてもよい。
【0087】
<まとめ>
以上説明した本発明の実施形態では、ステータコアとして、3種類の分割ステータコアを組み合わせたものを用いた。これによりステータコアのすべてを電磁鋼板で構成することができ、周方向に分割する必要がない。
【0088】
ステータコアを軸方向に2分割し、間に冷媒分配プレートを設置している従来技術では、接合方法や位置決めが課題であった。本発明の実施形態では分割ステータコアは同じ電磁鋼板であり、カシメや溶接、接着等で容易に一体化することができる。
【0089】
従来技術では、スロット内とステータコアの径方向外側とを連通させる孔部を設ける場合、ステータコイル固定のためのワニスやモールド樹脂が孔部に入り込み、そのまま硬化することで冷媒流路を塞いでしまう問題があった。本発明の実施形態では、ステータコイルの固定を発泡絶縁シートで行うことで、冷媒流路を塞ぐことなくステータコイルをステータコアに接着することが可能となる。
【0090】
本発明の実施形態では、スロット内に供給された冷媒は、ステータコアの軸方向両端部から噴射され、コイルエンドを冷却することができる。
【0091】
なお、本発明の実施形態では、径方向外側に開放する貫通孔を有する形状の1つの分割ステータコアを、スロット内の軸方向流路に連通する貫通孔を有する2つの分割ステータコアで挟む構造を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、スロット内の軸方向流路に連通する貫通孔を有する1つの分割ステータコアを、径方向外側に開放する貫通孔を有する形状の2つの分割ステータコアで挟む構造としてもよい。径方向外側に開放する貫通孔を有する形状の分割ステータコア、及びスロット内の軸方向流路に連通する貫通孔を有する分割ステータコアの数や位置は任意である。
【0092】
本発明の実施形態によれば、スロット内に供給された冷媒がステータコイルを直接冷却するため、高い冷却効果を発揮する。
【0093】
本発明の実施形態では、ステータコアには絶縁シートの倒れ込みを防止するための溝部を設けたが(
図2参照)、突起などによって絶縁シートの倒れ込みを防止してもよい。
【0094】
なお、モータの電圧が高い場合、絶縁シートでステータコアを完全に包み込まずに開口したものとした場合、ステータコイルとステータコアとの絶縁沿面距離が不足する場合がある。このため、絶縁シートの先端を折りたたんでステータコアを完全に包み込むクローズ形状(
図3参照)とすることで絶縁沿面距離を確保できる。このとき絶縁シートはスロットの径方向外側、径方向内側のどちら側で閉じてもよい。
【0095】
ステータコイルは絶縁シートを介して冷媒により冷却されることになるが、ステータコアは冷媒により直接冷却され、ステータコイルからステータコアへの抜熱が向上する。また、ステータコアにはステータコイルの位置決めのための凸部を設けてもよい(
図3参照)。
【0096】
絶縁シートを冷媒の流路とする代わりに、
図4のように冷媒の流路としてガイド部材を設けてもよい。これによりステータコイルの位置決めと絶縁沿面距離の確保が同時に行える(
図3参照、ガイド部材2170により絶縁と、ステータコイル130の位置決めができる)。
【0097】
ステータコイルは、径方向内側の方が径方向外側よりも損失が大きいため、冷媒流路を径方向内側に設けることで冷却効率を向上できる。このときスロットが開口していると冷媒がロータとのエアギャップ部に入り込み、引きずり損失の原因となる。スロットをクローズ形状とすることで軸方向への流路とし(
図6参照)、ギャップ部への冷媒流出を防止することができる。なお、
図6では、冷媒供給孔が1スロット当たり2つ(貫通孔3113b及び3113c)としたが、いずれか一つだけでもよい。
【0098】
スロットをクローズ形状とする場合、磁束がロータに渡る前に隣のティースに渡ってしまいトルクが低下する可能性がある。また、積層コアの製造方法を生産性の高いカシメや溶接とする場合、一般的にステータコアの径方向外側を接合するため径方向内側は積層された電磁鋼板同士の間に若干の隙間が発生することがある。このときスロットがクローズ形状であっても積層したステータコアの隙間から冷媒がギャップ部へ流出する。そこで、コイル位置決め治具を兼ねたオイルガイド(
図7参照)を追加することで、積層に隙間が生じた場合やセミオープンまたはオープンスロットとした場合でも冷媒のギャップ部への流出を防止できる。
【0099】
上述した実施形態では、ステータコアのスロット断面が長方形となっているが、これに限らず、スロット断面形状は、丸底スロット、台形スロット、その他流路を考慮した異形断面等であってもよい。
【0100】
また、ステータコイルは、平角線に限らず、丸線や、丸線を四角断面に成型したコイル、リッツ線等であってもよい。さらに、冷媒は、オイルに限らず絶縁性の冷却液やブロアによる強制空冷等でも良い。
【0101】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
100…ステータ
110、111、112、113、114、115…ステータコア
130…ステータコイル
150…絶縁シート
【要約】
【課題】ステータコイルを冷却する冷却構造について改善することを目的とする。
【解決手段】ステータコアは、軸方向に分割された複数の分割ステータコアを有し、前記複数の分割ステータコアは、前記スロットを構成する第1スロットと、冷媒の流路であって、径方向外側に開放し、径方向内側に開放せず、前記第1スロットと連通しない第1流路と、を有する第1ステータコアと、前記第1スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第2スロットと、径方向外側に開放せず、前記第1流路と軸方向で連通し、前記第2スロットと連通する第2流路と、を有する第2ステータコアと、前記第1スロット又は前記第2スロットと軸方向で連通し、前記スロットを構成する第3スロットを有する第3ステータコアとを有する。
【選択図】
図1