(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】物品、物品の製造方法、発泡性接着シートおよび接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241029BHJP
B32B 5/20 20060101ALI20241029BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20241029BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241029BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241029BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B32B5/20
C09J163/00
C09J7/35
C09J11/08
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2023114269
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-07-12
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】星 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 信哉
(72)【発明者】
【氏名】生田目 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泉
(72)【発明者】
【氏名】小谷 純子
(72)【発明者】
【氏名】神田 信之
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/193848(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047611(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/064378(WO,A1)
【文献】特開2013-104044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J 201/00
C09J 163/00
C09J 7/35
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、
接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、
前記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、前記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
前記熱硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、前記エポキシ樹脂系接着剤が複数のエポキシ樹脂を含有し、
前記接着層の厚さが、10μm以上、200μm以下であり、
前記支持体の一方の面に前記発泡性接着シートを配置し、前記発泡性接着シートを前記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、前記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、前記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、前記発泡体層の厚さ方向の長さが前記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、前記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、発泡性接着シート。
【請求項2】
第一接着層と第二接着層とを有し、
前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、前記発泡剤含有接着層である、請求項
1に記載の発泡性接着シート。
【請求項3】
前記第一接着層および前記第二接着層が、前記発泡剤含有接着層である、請求項
2に記載の発泡性接着シート。
【請求項4】
前記第一接着層のタックが、0gf以上、10gf未満であり、前記第二接着層のタックが、10gf以上、400gf以下である、請求項
3に記載の発泡性接着シート。
【請求項5】
前記硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、前記硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有し、前記接着層中の前記常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が、前記接着層中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下である、請求項
1に記載の発泡性接着シート。
【請求項6】
前記接着層中の前記発泡剤の含有量が、前記接着層中の樹脂成分100質量部に対して、13質量部以上30質量部以下である、請求項
1に記載の発泡性接着シート。
【請求項7】
前記発泡剤の最大発泡温度が、175℃以上220℃以下である、請求項
1に記載の発泡性接着シート。
【請求項8】
硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、
前記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、前記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
前記熱硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、前記エポキシ樹脂系接着剤が複数のエポキシ樹脂を含有し、
支持体の一方の面に前記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、前記接着剤組成物の塗膜を前記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、前記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、前記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、前記発泡体層の厚さ方向の長さが前記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、前記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、接着剤組成物。
【請求項9】
前記硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、前記硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有し、前記接着剤組成物中の前記常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が、前記接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下である、請求項
8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記接着剤組成物中の前記発泡剤の含有量が、前記接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、13質量部以上30質量部以下である、請求項
8に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記発泡剤の最大発泡温度が、175℃以上220℃以下である、請求項
8に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物品およびその製造方法、ならびにそれに用いられる発泡性接着シートおよび接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
部材同士を接着する接着剤は、様々な分野で用いられており、その接着方法も、多くの方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1~3には、発泡剤を含有する接着シート(発泡性接着シート)が開示されている。発泡性接着シートの使用方法として、例えば、部材間に発泡性接着シートを配置し、その後、発泡性接着シートを加熱により発泡硬化させることで、部材同士を接着する方法が知られている。
【0004】
このような発泡性接着シートにおいては、発泡硬化後における接着性が良好であることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-53944号公報
【文献】特許第6223477号公報
【文献】特開2019-214729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、接着性に優れる物品、ならびに、接着性を向上させることが可能な物品の製造方法、発泡性接着シートおよび接着剤組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、第一部材と、第二部材と、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材とを有する物品であって、上記接着部材が、少なくとも硬化接着層を有し、上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、物品を提供する。
【0008】
本開示の他の実施形態は、第一部材と、第二部材と、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材とを有する物品であって、上記接着部材が、少なくとも硬化接着層を有し、上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、物品を提供する。
【0009】
本開示の他の実施形態は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートを用いる物品の製造方法であって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、第一部材および第二部材の間に、上記発泡性接着シートを配置する配置工程と、上記発泡性接着シートの上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有し、上記接着工程における発泡硬化条件を、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する、物品の製造方法を提供する。
【0010】
本開示の他の実施形態は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートを用いる物品の製造方法であって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、第一部材および上記第二部材の間に、上記発泡性接着シートを配置する配置工程と、上記発泡性接着シートの上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有し、上記接着工程における発泡硬化条件を、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する、物品の製造方法を提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡性接着シートを上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、発泡性接着シートを提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡性接着シートを上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、発泡性接着シートを提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、支持体の一方の面に上記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、上記接着剤組成物の塗膜を上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、接着剤組成物を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、支持体の一方の面に上記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、上記接着剤組成物の塗膜を上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示においては、接着性に優れる物品、ならびに、接着性を向上させることが可能な物品の製造方法、発泡性接着シートおよび接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示における物品を例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における物品を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における物品を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における物品を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における物品の製造方法を例示する工程図である。
【
図6】本開示における物品の製造方法を例示する工程図である。
【
図7】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図8】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図9】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図10】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図11】発泡性接着シートについてのTMA曲線を例示するグラフである。
【
図12】本開示における発泡性接着シートの発泡硬化後の状態を例示する概略断面図である。
【
図13】本開示における発泡性接着シートの発泡硬化後の状態を例示する概略断面図である。
【
図14】発泡性接着シートの発泡硬化後の接着性の試験方法を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0018】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0019】
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。また、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。また、本明細書における数値範囲は、平均的な値の範囲である。
【0020】
熱膨張性マイクロカプセルにおいては、樹脂からなるシェルの内部に、炭化水素等の熱膨張剤が内包されている。熱膨張性マイクロカプセルにおいては、加熱すると、シェルを構成する樹脂が軟化するとともに、炭化水素等の熱膨張剤の圧力が上昇し、熱膨張性マイクロカプセルが膨張する。膨張によってシェルが薄くなるため、さらに加熱を続けると、熱膨張性マイクロカプセルから熱膨張剤が抜けてしまい、熱膨張性マイクロカプセルが収縮する。本開示の発明者らは、熱膨張性マイクロカプセルから抜けた熱膨張剤(ガス)が、気泡になり、この気泡が集まることで大きな気泡になり得ることを見出した。さらに、本開示の発明者らは、物品の製造時において、第一部材または第二部材に発泡性接着シートを貼付する際に、第一部材または第二部材と発泡性接着シートとの間に気泡が混入する場合があり、この気泡が集まることで大きな気泡になり得ることも見出した。
【0021】
また、熱硬化性の接着剤の場合、接着剤組成物の発泡硬化過程において、熱硬化性の接着剤の樹脂成分が軟化して流動性が高くなる。本開示の発明者らは、層中に気泡がある場合、熱硬化性の接着剤の樹脂成分が軟化して流動性が高くなると、気泡が動きやすくなり、気泡が集まって大きな気泡になり得ることも見出した。
【0022】
このように、本開示の発明者等は、硬化性の接着剤が熱硬化性の接着剤であり、発泡剤が熱膨張性マイクロカプセルである場合において、大きな気泡が発生するおそれがあり、このような大きな気泡が接着性の低下の要因になるという新たな課題を見出した。本開示は、このような新たな課題を解決するものである。
【0023】
以下、本開示における物品、物品の製造方法、発泡性接着シート、および接着剤組成について、詳細に説明する。
【0024】
A.物品
本開示における物品は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0025】
I.物品の第1実施態様
本開示における物品の第1実施態様は、第一部材と、第二部材と、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材とを有する物品であって、上記接着部材が、少なくとも硬化接着層を有し、上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。
【0026】
図1は、本実施態様の物品の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、物品100は、第一部材20aと、第二部材20bと、第一部材20aおよび第二部材20bとの間に配置された接着部材30とを有する。接着部材30は、硬化接着層11を有する。硬化接着層11は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層15であり、内部に気泡31を含む。硬化性の接着剤は、熱硬化性の接着剤であり、発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルである。硬化接着層11を構成する発泡体層15の厚さ方向D1に平行な断面において、気泡31のうち、発泡体層15の厚さ方向D1の長さsが発泡体層15の厚さtに対して所定の範囲である気泡の数は、発泡体層15の厚さ方向d1に垂直な方向d2の所定長さL当たり所定の値以下となっている。
【0027】
接着部材が1つの硬化接着層を有する場合において、硬化接着層が発泡体層である場合に、大きさが発泡体層の厚さ程度であるような、大きな気泡が存在すると、このような気泡が存在する領域では、硬化接着層が第一部材および第二部材に接していない、あるいは、硬化接着層と第一部材との接触面積および硬化接着層と第二部材との接触面積が非常に小さくなる。そのため、上記気泡を起点として、硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0028】
これに対し、本実施態様の物品においては、接着部材が1つの硬化接着層を有する場合において、硬化接着層が発泡体層である場合に、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0029】
図2は、本実施態様の物品の他の例を示す概略断面図である。本実施態様の物品において、
図2に示すように、接着部材30は、第一硬化接着層11aと、第二硬化接着層11bとを有することができる。第一硬化接着層11aおよび第二硬化接着層11bはそれぞれ、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層15a、15bであり、内部に気泡31を含む。第一硬化接着層11aを構成する発泡体層15aの厚さ方向D1の断面において、気泡31のうち、発泡体層15aの厚さ方向D1の長さsが発泡体層15aの厚さt1に対して所定の範囲である気泡の数は、発泡体層15aの厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定長さL当たり所定の値以下となっている。また、第二硬化接着層11bを構成する発泡体層15bの厚さ方向D1の断面において、気泡31のうち、発泡体層15bの厚さ方向D1の長さsが発泡体層15bの厚さt2に対して所定の範囲である気泡の数は、発泡体層15bの厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定長さL当たり所定の値以下となっている。
【0030】
なお、
図2においては、第一硬化接着層11aおよび第二硬化接着層11bの両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層15a、15bであるが、第一硬化接着層11aおよび第二硬化接着層11bのいずれか一方のみが、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であってもよい。
【0031】
接着部材が、第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、大きさが発泡体層の厚さ程度であるような、大きな気泡が存在すると、このような気泡が存在する領域では、第一硬化接着層が第一部材に接していなかったり、第二硬化接着層が第二部材に接していなかったりする、あるいは、第一硬化接着層と第一部材との接触面積が非常に小さくなったり、第二硬化接着層と第二部材との接触面積が非常に小さくなったりする。そのため、上記気泡を起点として、第一硬化接着層や第二硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0032】
これに対し、本実施態様の物品においては、接着部材が第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0033】
なお、接着部材が第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層のいずれか一方が発泡体層である場合にも、同様に、接着不良を抑制し、接着性を向上させることが可能である。
【0034】
図3は、本実施態様の物品の他の例を示す概略断面図である。本実施態様の物品において、
図3に示すように、接着部材30は、第一硬化接着層11aと、基材12と、第二硬化接着層11bとをこの順に有することができる。なお、
図3については、第一硬化接着層11aと第二硬化接着層11bとの間に基材12が配置されていること以外は、上記の
図2と同様である。
【0035】
なお、
図3においては、第一硬化接着層11aおよび第二硬化接着層11bの両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層15a、15bであるが、第一硬化接着層11aおよび第二硬化接着層11bのいずれか一方のみが、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であってもよい。
【0036】
接着部材が、第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、大きさが発泡体層の厚さ程度であるような、大きな気泡が存在すると、このような気泡が存在する領域では、第一硬化接着層が第一部材および基材に接していなかったり、第二硬化接着層が第二部材および基材に接していなかったりする、あるいは、第一硬化接着層と第一部材および基材との接触面積が非常に小さくなったり、第二硬化接着層と第二部材および基材との接触面積が非常に小さくなったりする。そのため、上記気泡を起点として、第一硬化接着層や第二硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0037】
これに対し、本実施態様の物品においては、接着部材が第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0038】
なお、接着部材が第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とを有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層のいずれか一方が発泡体層である場合にも、同様に、接着不良を抑制し、接着性を向上させることが可能である。
【0039】
したがって、本実施態様の物品においては、信頼性、耐久性を向上させることができる。
【0040】
以下、本実施態様の物品の各構成について説明する。
【0041】
1.接着部材
本開示における接着部材は、第一部材および第二部材との間に配置され、少なくとも硬化接着層を有する。また、硬化接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下である。
【0042】
また、接着部材は、少なくとも硬化接着層を有していればよく、例えば、1つの硬化接着層を有していてもよく、第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有していてもよく、第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有していてもよい。
【0043】
接着部材が、第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合、または、第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有する場合、第一硬化接着層および第二硬化接着層の少なくとも一方は、上記発泡体層である。
【0044】
なお、本明細書においては、便宜上、接着部材において、第一部材側に位置する硬化接着層を第一硬化接着層とし、第二部材側に位置する硬化接着層を第二硬化接着層とする。
【0045】
以下、接着部材の各構成について説明する。
【0046】
(1)硬化接着層
本実施態様における硬化接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下である。
【0047】
(a)気泡
本実施態様における硬化接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、内部に気泡を有する。発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数は、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。中でも、上記気泡の数は、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0048】
なお、「発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡」とは、発泡体層の厚さ方向の気泡の長さが、発泡体層の厚さ-6μmの値以上である、気泡をいう。例えば、発泡体層の厚さが200μmである場合、発泡体層の厚さ方向の気泡の長さが、200-6=194(μm)以上である気泡の数が、上記範囲となる。また、例えば、発泡体層の厚さが00μmである場合、発泡体層の厚さ方向の気泡の長さが、300-6=294(μm)以上である気泡の数が、上記範囲となる。
【0049】
ここで、発泡体層の厚さ方向に平行な断面における、発泡体層の厚さ方向の気泡の長さ、および、気泡の数は、例えば、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって得られる画像から求めたり、X線CTスキャンにより得られる断層写真から求めたりすることができる。X線CTスキャンでは、非破壊、非接触で、発泡体層の断面における気泡を観察することができる。そのため、発泡体層の断面を露出させるために物品を切断する際に、気泡が潰れてしまうのを防ぐことができる。よって、発泡体層の厚さ方向の気泡の長さ、および、気泡の数を、正確に求めることができる。中でも、例えば第一部材および第二部材が金属製の部材である場合には、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)観察が好ましい。
【0050】
また、発泡体層の厚さ方向に平行な断面における気泡の数は、無作為に選んだ3箇所の気泡の数の平均値とする。
【0051】
また、発泡体層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察される発泡性接着シートの厚さ方向の断面から測定した値であり、無作為に選んだ10箇所の厚さの平均値とする。なお、各層の厚さの測定方法についても同様とする。
【0052】
また、物品については、発泡体層の厚さ方向は、第一部材または第二部材の平面方向に垂直な方向とする。また、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向は、第一部材または第二部材の平面方向とする。なお、第一部材および第二部材の平面方向は、巨視的に見たときの第一部材および第二部材の平面方向をいう。
【0053】
発泡体層において、発泡体層の厚さ方向の長さが所定の範囲である気泡を抑制する手段としては、例えば、接着剤組成物の組成を調整する方法や、接着剤組成物の発泡硬化条件を調整する方法が挙げられる。
【0054】
接着剤組成物の組成を調整する方法としては、例えば、硬化性の接着剤の樹脂成分の流動性を調整する方法、発泡剤の最大発泡温度を調整する方法、発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率を調整する方法、発泡剤の含有量を調整する方法、発泡剤が熱膨張性マイクロカプセルである場合に、熱膨張性マイクロカプセルの構造を調整する方法が挙げられる。
【0055】
硬化性の接着剤の樹脂成分の流動性を調整する方法としては、例えば、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分の分子量を調整する方法、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分の状態を調整する方法、常温で液体の樹脂成分の含有量を調整する方法が挙げられる。
【0056】
硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分の分子量を調整する方法においては、例えば、硬化性の接着剤として、熱硬化性の接着剤が用いられる。この場合、接着剤組成物の発泡硬化過程において、樹脂成分が軟化して流動性が高くなる。このとき、樹脂成分の分子量が大きい場合には、樹脂成分の分子量が小さい場合と比較して、樹脂成分の流動性が低い。そのため、気泡が大きくなりにくかったり、気泡同士が連結しにくくなったりするので、上記のような大きな気泡の発生が抑制される傾向がある。よって、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分として、高分子量の樹脂成分を含有させることにより、上記のような大きな気泡の発生を抑制できる。
【0057】
上述したように、熱硬化性の接着剤の場合、接着剤組成物の発泡硬化過程では、樹脂成分が軟化して流動性が高くなる。常温で固体の樹脂成分は、常温で液体の樹脂成分と比較して、樹脂成分の流動性が低くなる傾向がある。そのため、気泡が大きくなりにくかったり、気泡同士が連結しにくくなったりするので、上記のような大きな気泡の発生が抑制される傾向がある。よって、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分の状態を調整する方法においては、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分として、常温で固体の樹脂成分が含有されていることにより、上記のような大きな気泡の発生を抑制できる。なお、常温とは23℃をいう。
【0058】
硬化性の接着剤が、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分として、常温で液体の樹脂成分を含有する場合、接着剤組成物の発泡硬化過程において、樹脂成分が軟化したときの樹脂成分の流動性が高くなる傾向がある。一方で、常温で液体の樹脂成分の含有量を比較的少なくすることにより、樹脂成分の流動性を比較的低くすることができる。よって、硬化性の接着剤の主剤である樹脂成分のうち、常温で液体の樹脂成分の含有量を少なくすることにより、上記のような大きな気泡の発生を抑制できる。
【0059】
発泡剤の最大発泡温度を調整する方法においては、発泡剤として、熱膨張性マイクロカプセルが用いられる。熱膨張性マイクロカプセルにおいては、樹脂からなるシェルの内部に、炭化水素等の熱膨張剤が内包されている。ここで、熱膨張性マイクロカプセルにおいては、加熱すると、シェルを構成する樹脂が軟化するとともに、炭化水素等の熱膨張剤の圧力が上昇し、熱膨張性マイクロカプセルが膨張する。膨張によってシェルが薄くなるため、さらに加熱を続けると、熱膨張性マイクロカプセルから熱膨張剤が抜けてしまい、熱膨張性マイクロカプセルが収縮する。そのため、例えば、発泡剤の最大発泡温度が高いと、接着剤組成物の発泡硬化過程において、発泡剤が収縮して、発泡体層(硬化接着層)の厚さが薄くなるのを抑制できる。これにより、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさが相対的に大きくなるのを抑制できる。よって、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさを相対的に小さくすることができるので、上記のような大きな気泡を抑制できる。
【0060】
発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率を調整する方法においては、例えば、発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率が大きいと、発泡体層(硬化接着層)の厚さが厚くなる傾向がある。そのため、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさを相対的に小さくすることができる。よって、上記のような大きな気泡を抑制できる。
【0061】
発泡剤の含有量を調整する方法においては、例えば、発泡剤の含有量が多いと、発泡体層(硬化接着層)の厚さが厚くなる傾向がある。そのため、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさを相対的に小さくすることができる。よって、上記のような大きな気泡を抑制できる。
【0062】
発泡剤が熱膨張性マイクロカプセルである場合に、熱膨張性マイクロカプセルの構造を調整する方法においては、例えば、熱膨張性マイクロカプセルのシェルの厚さが厚いと、ガス透過率が下がり、気泡の大きさが小さくなる傾向がある。また、例えば、熱膨張性マイクロカプセルのシェルを架橋すると、ガス透過率が下がり、気泡の大きさが小さくなる傾向がある。
【0063】
接着剤組成物の発泡硬化条件を調整する方法としては、例えば、発泡剤が熱膨張性マイクロカプセルである場合、加熱温度を調整する方法が挙げられる。例えば、加熱温度を、発泡剤の最大発泡温度に対して所定の範囲内とすることにより、上記のような大きな気泡の発生を抑制できる。また、例えば、加熱温度を、発泡性接着シートの最大変位外挿温度に対して所定の範囲内とすることにより、上記のような大きな気泡の発生を抑制できる。具体的な加熱温度については、後述の「B.物品の製造方法」の項に記載する。
【0064】
(b)硬化接着層の材料
本実施態様における硬化接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する。
【0065】
(i)硬化性の接着剤
本実施態様における硬化接着層に用いられる硬化性の接着剤としては、一般に発泡性接着シートの接着層に使用される硬化性の接着剤を用いることができる。硬化性の接着剤としては、例えば、熱硬化性の接着剤および光硬化性の接着剤等が挙げられる。中でも、熱硬化性の接着剤が好ましい。熱硬化性の接着剤は、例えば金属製の部材のように第一部材や第二部材が透明性を有さない場合でも適用可能である。
【0066】
また、硬化性の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、アルキド樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、熱硬化性ポリイミド樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0067】
中でも、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤であることが好ましい。すなわち、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有することが好ましい。一般に、エポキシ樹脂系接着剤は、機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐薬品性等に優れており、硬化収縮が小さく、幅広い用途に用いることができる。
【0068】
以下、硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合について例を挙げて説明する。
【0069】
(i-1)エポキシ樹脂
本実施態様におけるエポキシ樹脂は、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有し、硬化剤との併用により架橋重合反応を起こして硬化する化合物である。エポキシ樹脂には、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有する単量体も含まれる。
【0070】
エポキシ樹脂としては、一般にエポキシ樹脂系接着剤に使用されるエポキシ樹脂を用いることができる。
【0071】
中でも、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂として、重量平均分子量が900以上10万以下であるエポキシ樹脂を含有することが好ましい。上述したように、接着剤組成物の発泡硬化過程では、エポキシ樹脂が軟化して流動性が高くなる。このとき、エポキシ樹脂の分子量が大きい場合には、エポキシ樹脂の分子量が小さい場合と比較して、エポキシ樹脂の流動性が低い。そのため、気泡が大きくなりにくかったり、気泡同士が連結しにくくなったりするので、大きな気泡の発生が抑制される傾向がある。よって、高分子量のエポキシ樹脂が含有されていることにより、大きな気泡の発生を抑制できる。
【0072】
この場合、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、900以上10万以下であり、1650以上8万以下であってもよく、3800以上6万以下であってもよい。
【0073】
なお、樹脂成分の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算の値である。
【0074】
また、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂として、常温で固体のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。上述したように、接着剤組成物の発泡硬化過程では、エポキシ樹脂が軟化して流動性が高くなる。このとき、常温で固体のエポキシ樹脂は、常温で液体のエポキシ樹脂と比較して、流動性が低くなる傾向がある。そのため、気泡が大きくなりにくかったり、気泡同士が連結しにくくなったりするので、大きな気泡の発生が抑制される傾向がある。よって、常温で固体のエポキシ樹脂が含有されていることにより、大きな気泡の発生を抑制できる。
【0075】
また、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂として、常温で固体のエポキシ樹脂と、常温で液体のエポキシ樹脂とを含有することも好ましい。硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有する場合は、接着剤組成物の発泡硬化過程において、樹脂成分が軟化したときに流動性が高くなりやすい。そのため、気泡同士が連結しやすくなり、気泡が大きくなりやすい。よって、硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有する場合に、本実施態様の物品は有用である。接着部材が第一硬化接着層および第二硬化接着層を有する場合、第一硬化接着層および第二硬化接着層に用いられる接着剤組成物のうち、少なくとも一方が常温で液体のエポキシ樹脂を含有することが好ましく、一方のみが常温で液体のエポキシ樹脂を含有することがより好ましい。上述したように、このような場合に本実施態様の物品は有用である。
【0076】
接着剤組成物中の常温で液体のエポキシ樹脂の含有量は、接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有する場合、接着剤組成物の発泡硬化過程において樹脂成分の流動性が高くなる傾向があるが、常温で液体のエポキシ樹脂の含有量を比較的少なくすることにより、樹脂成分の流動性を比較的低くすることができる。よって、常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が上記範囲であることにより、大きな気泡の発生を抑制できる。一方、接着剤組成物中の常温で液体のエポキシ樹脂の含有量は、例えば、接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。なお、常温で液体のエポキシ樹脂が任意成分である場合、接着剤組成物中の常温で液体のエポキシ樹脂の含有量の下限は、特に限定されない。
【0077】
エポキシ樹脂系接着剤の場合、接着剤組成物中の樹脂成分とは、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂をいう。接着剤組成物中の樹脂成分には、任意成分であるウレタン樹脂等も含まれる。また、硬化剤がフェノール樹脂である場合、接着剤組成物中の樹脂成分には、硬化剤であるフェノール樹脂も含まれる。
【0078】
また、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂として、軟化温度が50℃以上であり、かつ、エポキシ当量が5000g/eq以下である第一エポキシ樹脂と、軟化温度が上記第一エポキシ樹脂より高く、かつ、重量平均分子量が20,000以上である第二エポキシ樹脂とを含有することが好ましい。第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂を組み合せて用いることで、接着剤組成物から構成される接着層の粘着性(タック性)を低下させることができ、滑り性を良好にすることができる。さらには、耐ブロッキング性および発泡硬化後の接着性を良好にすることができる。
【0079】
例えば、発泡硬化後の接着性の向上のみを図る場合、高分子量(高エポキシ当量)のエポキシ樹脂よりも低分子量(低エポキシ当量)のエポキシ樹脂を用いることが有効である。しかし、低分子量(低エポキシ当量)のエポキシ樹脂を用いた場合、ブロッキングが生じやすくなる。
【0080】
これに対して、軟化温度が相対的に低く(結晶性が相対的に高く)、かつ、低分子量(低エポキシ当量)な第一エポキシ樹脂を用いる場合、第一エポキシ樹脂は、軟化温度以上の温度になると、急速に融解して低粘度の液状に変化する。そのため、発泡硬化後の接着性を向上させやすい。一方、第一エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に高いため、結晶性が相対的に低いエポキシ樹脂または結晶性を有しないエポキシ樹脂と比較すると、ブロッキングの発生を抑制できる。しかし、第一エポキシ樹脂のみを用いた場合、ブロッキングの発生抑制効果が不十分である可能性や、接着剤組成物から構成される接着層の粘着性(タック性)が高くなりすぎる可能性がある。そのため、軟化温度が相対的に高く(結晶性が相対的に低く)、かつ、高分子量な第二エポキシ樹脂をさらに用いることにより、ブロッキングの発生抑制効果を向上させることや、接着剤組成物から構成される接着層の粘着性(タック性)を低く抑えることができる。
【0081】
(i-1-1)第一エポキシ樹脂
第一エポキシ樹脂は、軟化温度が50℃以上であり、かつ、エポキシ当量が5000g/eq以下である。第一エポキシ樹脂は、後述する第二エポキシ樹脂と比較して、軟化温度が相対的に低い(結晶性が相対的に高い)。第一エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に高く、分子量が低いことから、発泡硬化後の接着性および耐ブロッキング性を向上させやすい。また、第一エポキシ樹脂は、分子量が低いため、架橋密度を高くでき、機械的強度、耐薬品性、硬化性が良好な接着層が得られる。また、第一エポキシ樹脂は、常温(23℃)で固体のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0082】
第一エポキシ樹脂の軟化温度は、通常、50℃以上であり、55℃以上であってもよく、60℃以上であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂の軟化温度は、例えば150℃以下である。軟化温度は、JIS K7234:1986に準拠し、環球法により測定する。
【0083】
第一エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば5000g/eq以下であり、3000g/eq以下であってもよく、1000g/eq以下であってもよく、600g/eq以下であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば90g/eq以上であり、100g/eq以上であってもよく、110g/eq以上であってもよい。エポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。エポキシ当量は、ISO 3001(Plastics Epoxy compounds-Determination of epoxy equivalent)に対応するJIS K7236:2009に準拠した方法により測定する。
【0084】
第一エポキシ樹脂は、1官能のエポキシ樹脂であってもよく、2官能のエポキシ樹脂であってもよく、3官能のエポキシ樹脂であってもよく、4官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。
【0085】
また、第一エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、後述する第二エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)よりも小さい。第一エポキシ樹脂のMwは、例えば6,000以下であり、4,000以下であってもよく、3,000以下であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂のMwは、例えば400以上である。
【0086】
第一エポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が、例えば0.005Pa・s以上であり、0.015Pa・s以上であってもよく、0.03Pa・s以上であってもよく、0.05Pa・s以上であってもよく、0.1Pa・s以上であってもよい。溶融粘度が低すぎると、良好な発泡性が得られない可能性がある。また、第一エポキシ樹脂の溶融粘度が低すぎると(第一エポキシ樹脂の結晶性が高すぎると)、接着剤組成物から構成される接着層の粘着性(タック性)が高くなる可能性がある。その理由は、第一エポキシ樹脂の溶融粘度が低すぎると(第一エポキシ樹脂の結晶性が高すぎると)、第二エポキシ樹脂またはアクリル樹脂と相溶した際に、その結晶性が大きく低下し、接着層のTgが低下するためであると推測される。一方、第一エポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が、例えば10Pa・s以下であり、5Pa・s以下であってもよく、2Pa・s以下であってもよい。溶融粘度が高すぎると、接着剤組成物から構成される接着層の均一性が低下する可能性がある。溶融粘度は、ISO 2555(Resins in the liquid state or as emulsions or dispersions Determination of Brookfield RV viscosity)に対応するJIS K6862:1984に準拠し、ブルックフィールド形単一円筒回転粘度計、および、溶液を加温するためのサーモセルを用いて測定する。
【0087】
次に、第一エポキシ樹脂の構成について説明する。第一エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族系エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環系エポキシ樹脂が挙げられる。第一エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂やゴム変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。また、他の具体例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリコール型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂が挙げられる。第一エポキシ樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0088】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体の状態、または常温で固体の状態で存在することができる。主鎖のビスフェノール骨格が、例えば2以上10以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、常温で固体である。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、耐熱性向上を図ることができる点で好ましい。
【0089】
特に、第一エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0090】
【0091】
一般式(1)において、R1は、CmH2m(mは1以上3以下である)で表される基であり、R2およびR3は、それぞれ独立に、CpH2p+1(pは1以上3以下である)で表される基であり、nは、0以上10以下である。
【0092】
一般式(1)において、R1におけるmは1であること、すなわち、R1は-CH2-であることが好ましい。同様に、R2およびR3におけるpは1であること、すなわち、R2およびR3は-CH3であることが好ましい。また、一般式(1)のベンゼン環に結合する水素は、他の元素または他の基で置換されていてもよい。
【0093】
(i-1-2)第二エポキシ樹脂
第二エポキシ樹脂は、軟化温度が第一エポキシ樹脂より高く、かつ、重量平均分子量が20,000以上である。第二エポキシ樹脂は、上述した第一エポキシ樹脂と比較して、軟化温度が相対的に高い(結晶性が相対的に低い)。第二エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に低く、分子量が高いことから、耐ブロッキング性を向上させやすい。さらに、第二エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に低く、分子量が高いことから、第一エポキシ樹脂による粘着性(タック性)の増加を抑制できる。また、第二エポキシ樹脂は、常温(23℃)で固体のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0094】
第二エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、第一エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)よりも大きい。第二エポキシ樹脂のMwは、通常、20,000以上であり、30,000以上であってもよく、35,000以上であってもよい。一方、第二エポキシ樹脂のMwは、例えば100,000以下である。
【0095】
第二エポキシ樹脂のエポキシ当量は、第一エポキシ樹脂のエポキシ当量に比べて、大きくてもよく、小さくてもよく、同じであってもよい。第二エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば4000g/eq以上であり、5000g/eq以上であってもよく、6000g/eq以上であってもよい。一方、第二エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば20000g/eq以下である。
【0096】
第二エポキシ樹脂は、1官能のエポキシ樹脂であってもよく、2官能のエポキシ樹脂であってもよく、3官能のエポキシ樹脂であってもよく、4官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。
【0097】
第二エポキシ樹脂の軟化温度は、通常、第一エポキシ樹脂の軟化温度よりも高い。両者の差は、例えば10℃以上であり、20℃以上であってもよく、30℃以上であってもよい。第二エポキシ樹脂の軟化温度は、例えば80℃以上であり、90℃以上であってもよい。一方、第二エポキシ樹脂の軟化温度は、例えば180℃以下である。
【0098】
第二エポキシ樹脂の構成については、上述した第一エポキシ樹脂の構成と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0099】
(i-2)アクリル樹脂
硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、接着剤組成物は、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂をさらに含有していてもよい。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶した樹脂である。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶することから、接着剤組成物から構成される接着層の靭性を向上させやすい。その結果、発泡硬化後の接着性を向上させることができる。さらに、アクリル樹脂が、発泡剤(例えば、シェル部がアクリロニトリルコポリマーの樹脂である発泡剤)の相溶化剤として働き、均一に分散、発泡することで、発泡硬化後の接着性が向上すると考えられる。また、アクリル樹脂による柔軟性が発揮され、発泡硬化後の基材に対する密着性や発泡硬化後の耐割れ性の向上を図ることができる。また、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と相溶することで、接着層表面の硬度を高く保つことができる。一方、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と非相溶であると、接着層表面に柔軟な部位が形成されるため、第一部材や第二部材との界面が滑りにくくなり、作業性が低下することがある。
【0100】
本実施態様におけるアクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶している。ここで、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と相溶していることは、例えば、接着剤組成物から構成される接着層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したときに、ミクロンサイズの島が発生していないことから確認することができる。より具体的には、島の平均粒径が1μm以下であることが好ましい。中でも、島の平均粒径は、0.5μm以下であってもよく、0.3μm以下であってもよい。サンプル数は多いことが好ましく、例えば100以上である。観察するエリア面積は、100μm×100μmの範囲、もしくは、接着層の厚さが100μm以下の場合は、厚さ×100μmの範囲で行う。
【0101】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば50,000以上であり、70,000以上であってもよく、100,000以上であってもよい。第一エポキシ樹脂は結晶性が相対的に高く、加熱時の溶融粘度(もしくは動的粘弾性)が低くなりすぎてしまい、発泡後の硬化時(発泡剤の発泡が終了してから接着剤組成物が硬化するまでの間)に収縮が起きてしまう可能性があるが、ある程度の分子量を有するアクリル樹脂を用いることで、溶融粘度を低くなりすぎることを抑制でき、発泡後の硬化時に収縮が起きにくくなる。一方、アクリル樹脂のMwは、例えば1,500,000以下である。アクリル樹脂の重量平均分子量は、GPC(溶離液:THF、標準物質:PS、試料:20μL、流量:1mL/min、カラム温度:40℃)により測定する。
【0102】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば90℃以上であり、100℃以上であってもよい。一方、アクリル樹脂のTgは、例えば180℃以下である。Tgは、ISO 3146に対応するJIS K7121:2012に準拠し、示差走査熱量計(DSC)により測定する。
【0103】
アクリル樹脂は、発泡開始温度で貯蔵弾性率(E’)が1×106Pa以下であってもよい。発泡開始時におけるE’が低いことで、流動性が向上し、良好な発泡性を得ることができる。一方、発泡開始温度におけるE’は、例えば1×105Pa以上である。なお、発泡開始温度は、発泡剤の種類に応じて異なる温度である。また、発泡剤として、二種以上の発泡剤を用いる場合は、主たる発泡反応の開始温度を発泡開始温度とする。
【0104】
アクリル樹脂は、硬化開始温度で貯蔵弾性率(E’)が1×105Pa以上であってもよい。上述したように、発泡後の硬化時(発泡剤の発泡が終了してから接着剤組成物が硬化するまでの間)に収縮が起きる場合があるが、硬化開始温度におけるE’が大きいことで、収縮を抑えることができ、良好な形状保持性を得ることができる。なお、硬化開始温度は、硬化剤の種類に応じて異なる温度である。また、硬化剤として、二種以上の硬化剤を用いる場合は、主たる硬化反応の開始温度を硬化開始温度とする。
【0105】
また、アクリル樹脂は、0℃以上100℃以下における貯蔵弾性率(E’)の平均値が、1×106Pa以上であってもよい。発泡前におけるE’の平均値が高いことで、良好な非粘着性、耐ブロッキング性を得ることができる。一方、0℃以上100℃以下の貯蔵弾性率(E’)の平均値は、例えば1×108Pa以下である。
【0106】
アクリル樹脂は、極性基を有していてもよい。極性基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基が挙げられる。
【0107】
アクリル樹脂は、アクリル酸エステル単量体の単独重合体であり、上記単独重合体を2種以上含む混合成分であってもよく、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体であり、共重合体を1以上含む成分であってもよい。また、アクリル樹脂は、上記単独重合体と上記共重合体との混合成分であってもよい。アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸の概念も含まれる。具体的には、アクリル樹脂は、メタクリレートの重合体とアクリレートの重合体との混合物であってもよく、アクリレート-アクリレート、メタクリレート-メタクリレート、メタクリレート-アクリレート等のアクリル酸エステル重合体であってもよい。中でも、アクリル樹脂は、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体((メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことが好ましい。
【0108】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、特開2014-065889号公報に記載の単量体成分が挙げられる。上記単量体成分は、上述した極性基を有していてもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルアクリレート-ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。なお、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」も含まれる。
【0109】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体が好ましく、さらにメタクリレート-アクリレート共重合体等のアクリル系ブロック共重合体が好ましい。アクリル系ブロック共重合体を構成する(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジルが挙げられる。これらの「アクリル酸」には、「メタクリル酸」も含まれる。
【0110】
メタクリレート-アクリレート共重合体の具体例としては、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート(MMA-BA-MMA)共重合体等のアクリル系共重合体が挙げられる。MMA-BA-MMA共重合体には、ポリメチルメタクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタクリレート(PMMA-PBA-PMMA)のブロック共重合体も含まれる。
【0111】
アクリル系共重合体は、極性基を有していなくてもよく、また一部に上述した極性基を導入した変性物であってもよい。上記変性物は、エポキシ樹脂と相溶しやすいため、接着性がより向上する。
【0112】
中でも、アクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である第一重合体部分と、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上である第二重合体部分とを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、柔らかいセグメントとなる第一重合体部分と、硬いセグメントとなる第二重合体部分とを有する。
【0113】
上記の効果の発現は、以下のように推定できる。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のような、柔らかいセグメントと、硬いセグメントとを併せ持つアクリル樹脂を用いることで、硬いセグメントが耐熱性に寄与し、柔らかいセグメントが靱性ないし柔軟性に寄与するため、耐熱性、靱性、柔軟性が良好な接着層が得られる。
【0114】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分および第二重合体部分の少なくとも一方は、エポキシ樹脂に対して相溶性を有する。第一重合体部分がエポキシ樹脂に対して相溶性を有する場合には、柔軟性を高めることができる。また、第二重合体部分がエポキシ樹脂に対して相溶性を有する場合には、凝集性や靱性を高めることができる。
【0115】
第一重合体部分または第二重合体部分の一方がエポキシ樹脂に対して相溶性を有しない場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エポキシ樹脂に対して相溶性を有する重合体部分である相溶部位と、エポキシ樹脂に対して相溶性を有しない重合体部分である非相溶部位とを有することになる。この場合、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を添加すると、相溶部位がエポキシ樹脂と相溶し、非相溶部位がエポキシ樹脂と相溶しないため、微細な相分離が起こる。その結果、微細な海島構造が発現する。海島構造としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の種類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分および第二重合体部分の相溶性、極性基導入による変性の有無によって異なり、例えば、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、エポキシ樹脂の硬化物が島であるような海島構造が挙げられる。このような海島構造を有することで、応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、発泡硬化後に優れた接着性が得られる。
【0116】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、中でもブロック共重合体であることが好ましく、特に、相溶部位を重合体ブロックA、非相溶部位を重合体ブロックBとするA-B-Aブロック共重合体であることが好ましい。さらには、第一重合体部分が非相溶部位、第二重合体部分が相溶部位であり、第一重合体部分を重合体ブロックB、第二重合体部分を重合体ブロックAとするA-B-Aブロック共重合体であることが好ましい。アクリル樹脂としてこのようなA-B-Aブロック共重合体を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造の場合には、島部分を小さくすることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造の場合や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、エポキシ樹脂の硬化物が島であるような海島構造の場合には、海部分を小さくすることができる。
【0117】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、第一重合体部分または第二重合体部分の一部に上述の極性基を導入した変性物であってもよい。
【0118】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分のTgは、10℃以下であり、-150℃以上、10℃以下の範囲内、中でも-130℃以上、0℃以下の範囲内、特に-110℃以上、-10℃以下の範囲内とすることができる。
【0119】
なお、第一重合体部分のTgは、「POLYMERHANDBOOK第三版」(John Wiley & Sons,Ink.発行)に記載された各単独重合体のTg(K)を基にして、下記式で計算により求めることができる。
1/Tg(K)=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
Wn:各単量体の質量分率
Tgn:各単量体の単独重合体のTg(K)であり、ポリマーハンドブック(3rd Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,WILEY INTERSCIENCE)中の値など、一般に公開されている掲載値を用いればよい。後述の第二重合体部分のTgも同様である。
【0120】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体であることが好ましい。第一重合体部分を構成する単量体成分および重合体成分は、Tgが所定の範囲である第一重合体部分を得ることができる単量体成分および重合体成分であればよく、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、酢酸ビニル、アセタール、ウレタン等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体、EVA等の共重合体が挙げられる。
【0121】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第二重合体部分のTgは、20℃以上であり、20℃以上、150℃以下の範囲内、中でも30℃以上、150℃以下の範囲内、特に40℃以上、150℃以下の範囲内とすることができる。
【0122】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第二重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体であることが好ましい。第二重合体部分を構成する単量体成分は、Tgが所定の範囲である第二重合体部分を得ることができる単量体成分であればよく、例えばメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、アクリルアミド、スチレン、塩化ビニル、アミド、アクリロニトリル、酢酸セルロース、フェノール、ウレタン、塩化ビニリデン、塩化メチレン、メタクリロニトリル等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体が挙げられる。
【0123】
上記の第一重合体部分および第二重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、上記のMMA-BA-MMA共重合体が挙げられる。
【0124】
(i-3)硬化剤
本実施態様における硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂系接着剤に使用される硬化剤を用いることができる。硬化剤は、常温(23℃)で固体であることが好ましい。常温で固体である硬化剤は、常温で液体である硬化剤と比較して、保存安定性(ポットライフ)を長くすることができる。また、硬化剤は、潜在性硬化剤であってもよい。また、硬化剤は、熱により硬化反応が生じる硬化剤であってもよく、光により硬化反応が生じる硬化剤であってもよい。また、硬化剤を単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0125】
硬化剤の反応開始温度は、例えば110℃以上であり、130℃以上であってもよい。反応開始温度が低すぎると、反応が早期に開始され、樹脂成分の柔軟性や流動性が低い状態で硬化が生じ、均一な硬化が生じにくい可能性がある。一方、硬化剤の反応開始温度は、例えば、200℃以下である。反応開始温度が高すぎると、樹脂成分が劣化する可能性がある。なお、エポキシ樹脂の他に、例えばフェノール樹脂等の耐熱性が高い樹脂を使用する場合には、樹脂成分の劣化が少ないため、硬化剤の反応開始温度は、例えば300℃以下であってもよい。硬化剤の反応開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)により求める。
【0126】
硬化剤の具体例としては、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、チオール系硬化剤が挙げられる。
【0127】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールや、イミダゾール化合物のカルボン酸塩、エポキシ化合物との付加物が挙げられる。また、イミダゾール系硬化剤は、ヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシ基同士の水素結合で結晶化するため、反応開始温度が高くなる傾向がある。
【0128】
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂が挙げられる。さらに、フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。発泡硬化後の基材に対する密着性や発泡硬化後の耐割れ性等の観点から、Tgが110℃以下のフェノール型ノボラック樹脂が特に好ましい。また、フェノール系硬化剤およびイミダゾール系硬化剤を併用してもよい。その場合、イミダゾール系硬化剤を硬化触媒として用いることが好ましい。
【0129】
アミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、ポリアミドアミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等が挙げられる。芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等が挙げられる。また、アミン系硬化剤として、ジシアンジアミド(DICY)等のジシアンジアミド系硬化剤、有機酸ジヒドラジド系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、ケチミン系硬化剤を用いることができる。
【0130】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、脂環族酸無水物(液状酸無水物)、芳香族酸無水物が挙げられる。脂環族酸無水物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等が挙げられる。芳香族酸無水物としては、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等が挙げられる。
【0131】
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ブロックイソシアネートが挙げられる。
【0132】
チオール系硬化剤としては、例えば、エステル結合型チオール化合物、脂肪族エーテル結合型チオール化合物、芳香族エーテル結合型チオール化合物が挙げられる。
【0133】
(ii)発泡剤
本実施態様における硬化接着層に用いられる発泡剤としては、一般に発泡性接着シートの接着層に使用される発泡剤を用いることができる。また、発泡剤は、熱により発泡反応が生じる発泡剤であってもよく、光により発泡反応が生じる発泡剤であってもよい。
【0134】
発泡剤としては、例えば、熱膨張性マイクロカプセルが挙げられる。熱膨張性マイクロカプセルは、炭化水素等の熱膨張剤をコアとし、アクリロニトリルコポリマー等の樹脂をシェルとすることが好ましい。
【0135】
また、発泡剤として、例えば、有機系発泡剤や無機系発泡剤を用いてもよい。有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ発泡剤、トリクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン系発泡剤、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン系発泡剤、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド系発泡剤、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系発泡剤、N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系発泡剤が挙げられる。一方、無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド類が挙げられる。
【0136】
発泡剤の発泡開始温度は、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤の軟化温度以上であり、かつ、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤の硬化反応の活性化温度以下であることが好ましい。発泡剤の発泡開始温度は、例えば、70℃以上であり、100℃以上であってもよい。反応開始温度が低すぎると、発泡が早期に開始され、樹脂成分の柔軟性や流動性が低い状態で発泡が生じ、均一な発泡が生じにくい可能性がある。一方、発泡剤の発泡開始温度は、例えば、210℃以下である。発泡開始温度が高すぎると、樹脂成分が劣化する可能性がある。
【0137】
なお、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤の軟化温度は、JIS K7234:1986に規定される環球式軟化温度試験法を用いて測定する。
【0138】
また、後述するように、発泡剤が熱膨張性マイクロカプセルである場合、発泡剤の最大発泡温度は、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。発泡剤の最大発泡温度は、例えば、140℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましく、175℃以上が特に好ましい。上述したように、発泡剤の最大発泡温度が高いと、接着剤組成物の発泡硬化過程において、発泡剤が収縮して、発泡体層(硬化接着層)の厚さが薄くなるのを抑制できる。これにより、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさが相対的に大きくなるのを抑制できる。よって、発泡剤の最大発泡温度が上記範囲であることにより、大きな気泡を抑制できる。また、最大発泡温度が低すぎると、発泡剤が収縮することによって、硬化接着層の厚さを維持することができず、接着強度が低下する可能性がある。一方、発泡剤の最大発泡温度は、例えば、230℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、210℃以下がさらに好ましい。最大発泡温度が高すぎると、発泡剤の膨張が不十分になり、接着強度が低下する可能性がある。具体的に、発泡剤の最大発泡温度は、140℃以上、230℃以下が好ましく、150℃以上、220℃以下がより好ましく、160℃以上、210℃以下がさらに好ましい。また、発泡剤の最大発泡温度は、175℃以上220℃以下も好ましい。
【0139】
ここで、発泡剤の発泡開始温度および最大発泡温度は、熱機械分析(TMA)により求める。具体的には、熱機械分析(TMA)により、昇温速度20℃/分、負荷力0.06Nにて測定した際に、x軸を温度、y軸を変位量とした場合に、最大変位量を示した温度を最大発泡温度、最大変位量に対して3%変位時の温度を発泡開始温度とする。
【0140】
発泡剤の平均粒径は、例えば、10μm以上であってもよく、13μm以上であってもよく、17μm以上であってもよい。また、発泡剤の平均粒径は、発泡性接着シートの接着層の厚さ以下であることが好ましく、例えば、44μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、24μm以下であってもよい。
【0141】
なお、発泡剤の平均粒径は、レーザー回折散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。また、発泡剤の平均粒径を測定するに際しては、接着剤組成物を溶剤に溶解させて発泡剤を分離する。溶剤としては、接着剤組成物に含まれる発泡剤以外の成分を溶解することが可能な溶剤であれば特に限定されず、硬化性の接着剤の種類等に応じて適宜選択され、例えば、接着剤組成物に使用される溶剤を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。
【0142】
発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率は、例えば1.5倍以上であり、2倍以上であってもよい。一方、発泡剤の最大発泡温度での発泡倍率は、例えば15倍以下であり、10倍以下であってもよい。なお、発泡剤の発泡倍率は、発泡前の発泡剤の直径に対する、発泡後の発泡剤の直径の比である。
【0143】
硬化接着層に用いられる接着剤組成物中の発泡剤の含有量は、後述の発泡性接着シートにおける接着層中の発泡剤の含有量と同様とする。
【0144】
(iii)その他の成分
本実施態様における硬化接着層に用いられる接着剤組成物は、例えば硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、樹脂成分として、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂のみを含有していてもよく、他の樹脂をさらに含有していてもよい。他の樹脂としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。
【0145】
接着剤組成物は、必要に応じて、例えばシランカップリング剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、架橋剤、着色剤等の添加剤を含有していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、二酸化チタン等の無機充填剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0146】
(c)硬化接着層のその他の点
硬化接着層の厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定される。硬化接着層の厚さは、例えば、30μm以上、1000μm以下であり、40μm以上、900μm以下であってもよく、50μm以上、800μm以下であってもよい。硬化接着層が薄すぎると、十分な接着性が得られない可能性がある。また、硬化接着層が厚すぎると、面質が悪化する可能性がある。
【0147】
硬化接着層は、連続層であってもよく、不連続層であってもよい。
【0148】
硬化接着層は、接着剤組成物の発泡硬化物を含有する。接着剤組成物を発泡硬化させる方法としては、例えば、加熱または光照射を挙げることができる。中でも、加熱により接着剤組成物を発泡硬化させることが好ましい。加熱による方法は、例えば金属製の部材のように第一部材および第二部材が透明性を有さない場合でも適用可能である。
【0149】
(d)第一硬化接着層および第二硬化接着層
本実施態様において、接着部材が、第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合、あるいは、第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有する場合、第一硬化接着層および第二硬化接着層の少なくとも一方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有していればよい。例えば、第一硬化接着層および第二硬化接着層のうち、一方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有し、他方が、硬化性の接着剤を含有し、発泡剤を含有しない接着剤組成物の硬化物を含有していてもよく、第一硬化接着層および第二硬化接着層の両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有していてもよい。中でも、第一硬化接着層および第二硬化接着層の両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有していることが好ましい。接着性を高めることができる。また、発泡性接着シートを用いて物品を製造する場合に、発泡性接着シートの挿入性を良くすることができる。
【0150】
(2)基材
本実施態様における接着部材は、第一硬化接着層および第二硬化接着層の間に基材を有していてもよい。第一硬化接着層および第二硬化接着層の間に基材が配置されている場合には、発泡性接着シートを用いて物品を製造する場合に、発泡性接着シートの取扱性および作業性を良くすることができる。一方、第一硬化接着層および第二硬化接着層の間に基材が配置されていない場合には、発泡性接着シートを用いて物品を製造する場合に、発泡性接着シート全体の厚さを薄くすることができ、狭い隙間にも発泡性接着シートを挿入可能である。
【0151】
基材は、絶縁性を有することが好ましい。また、基材は、シート状であることが好ましい。基材は、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。また、基材は、内部に多孔構造を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0152】
基材としては、例えば、樹脂基材、不織布が挙げられる。
【0153】
樹脂基材に含まれる樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンオキシドが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、芳香族ポリエステル等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド、ポリエーテルアミド等が挙げられる。ポリイミド樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。ポリスルホン樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。ポリエーテルケトン樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。また、樹脂として、液晶ポリマー(LCP)を用いてもよい。樹脂のガラス転移温度は、例えば80℃以上であり、140℃以上であってもよく、200℃以上であってもよい。
【0154】
不織布としては、例えば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、液晶ポリマー繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等の繊維を含む不織布が挙げられる。
【0155】
基材は、第一硬化接着層や第二硬化接着層との密着性を高めるため、表面処理が施されていてもよい。
【0156】
基材の厚さは、特に限定されないが、例えば2μm以上200μm以下であり、5μm以上100μm以下であってもよく、9μm以上50μm以下であってもよい。
【0157】
(3)その他の構成
本実施態様における接着部材は、基材および第一硬化接着層の間に第一中間層を有していてもよい。また、本実施態様における接着部材は、基材および第二硬化接着層の間に第二中間層を有していてもよい。第一中間層や第二中間層が配置されていることにより、第一硬化接着層や第二硬化接着層の基材に対する密着性を向上させることができる。さらには、発泡性接着シートを用いて物品を製造する場合、第一中間層や第二中間層が配置されていることで、例えば、発泡性接着シートを折り曲げた際に屈曲部にかかる応力を緩和したり、発泡性接着シートを切断した際に切断部にかかる応力を緩和したりすることができる。その結果、発泡性接着シートの屈曲時や切断時において基材からの第一接着層や第二接着層の浮きや剥がれを抑制できる。
【0158】
例えば、
図4に示す物品100において、接着部材30では、基材12および第一硬化接着層11aの間に第一中間層13aが配置され、基材12および第二硬化接着層11bの間に第二中間層13bが配置されている。なお、
図4においては、接着部材30は、第一中間層13aおよび第二中間層13bの両方を有するが、いずれか一方のみを有していてもよい。
【0159】
接着部材は、第一中間層および第二中間層の少なくとも一方を有していればよく、例えば、基材および第一硬化接着層の間に配置された第一中間層のみを有していてもよく、基材および第二硬化接着層の間に配置された第二中間層のみを有していてもよく、基材および第一硬化接着層の間に配置された第一中間層と、基材および第二硬化接着層の間に配置された第二中間層との両方を有していてもよい。中でも、基材および第一硬化接着層の間に第一中間層が配置され、かつ、基材および第二硬化接着層の間に第二中間層が配置されていることが好ましい。
【0160】
第一中間層および第二中間層に含まれる材料としては、基材と第一硬化接着層や第二硬化接着層との密着性を高めることができ、かつ、応力を緩和することができる材料であれば特に限定されず、基材、第一硬化接着層、および第二硬化接着層の材料等に応じて適宜選択される。例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、それらの少なくとも2種以上を共重合させた重合体、それらの架橋体、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0161】
架橋体は、上記の樹脂を硬化剤により架橋した架橋体である。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤が挙げられる。また、例えば、反応基/NCO当量を1とした場合、樹脂に対してイソシアネート系硬化剤を、0.5質量%以上、20質量%以下の割合で添加することが好ましい。
【0162】
中でも、第一中間層および第二中間層は、架橋された樹脂を含有することが好ましい。なお、架橋された樹脂とは、高温にしても溶融しないものをいう。これにより、高温下での接着力、つまり耐熱性を向上させることができる。
【0163】
第一中間層および第二中間層の厚さは、特に限定されないが、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよい。第一中間層や第二中間層が薄すぎると、発泡性接着シートを用いて物品を製造する場合、発泡性接着シートの屈曲時および切断時の基材からの第一接着層や第二接着層の剥がれを抑制する効果が十分に得られない可能性がある。一方、第一中間層および第二中間層の厚さは、例えば4μm以下であり、3.5μm以下であってもよい。第一中間層および第二中間層自体は、通常、耐熱性が高くないため、第一中間層や第二中間層が厚すぎると、耐熱性(高温下での接着力)が低下する可能性がある。
【0164】
第一中間層および第二中間層は、例えば、樹脂組成物を塗布し、溶剤を除去することで形成することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコートが挙げられる。
【0165】
2.第一部材および第二部材
本実施態様における第一部材および第二部材としては、物品の用途等に応じて適宜選択される。第一部材および第二部材としては、接着および絶縁が必要な部材であることが好ましい。例えば、電気・電子機器の部品が挙げられ、具体的には、回転電機用ステータのステータコアおよびコイル、埋込磁石型モータのコアおよび永久磁石等が挙げられる。
【0166】
3.物品の製造方法
本実施態様の物品の製造方法については、後述の「B.物品の製造方法」の項に記載する。
【0167】
II.物品の第2実施態様
本開示における物品の第2実施態様は、第一部材と、第二部材と、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材とを有する物品であって、上記接着部材が、少なくとも硬化接着層を有し、上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。
【0168】
図1~
図3は、本実施態様の物品の一例を示す概略断面図である。なお、
図1~
図3については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0169】
物品において、第一部材および第二部材が、例えば、電気・電子機器の部品である場合、具体的には、回転電機用ステータのステータコアおよびコイル、あるいは、埋込磁石型モータのコアおよび永久磁石等である場合、第一部材および第二部材間の間隙の距離は、例えば数百μm程度である。この場合、接着部材の厚さは、例えば数百μm程度であり、接着部材の硬化接着層の厚さも、例えば数百μm程度となる。
【0170】
上記のような物品においては、接着部材が1つの硬化接着層を有する場合であって、硬化接着層が発泡体層である場合に、大きさが100μm以上であるような、大きな気泡が存在すると、このような気泡が存在する領域では、硬化接着層が第一部材および第二部材に接していない、あるいは、硬化接着層と第一部材との接触面積および硬化接着層と第二部材との接触面積が非常に小さくなる。そのため、上記気泡を起点として、硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0171】
これに対し、本実施態様の物品においては、接着部材が1つの硬化接着層を有する場合であって、硬化接着層が発泡体層である場合に、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以下である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0172】
また、上記のような物品においては、接着部材が、第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合であって、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、大きさが100μm以上であるような、大きな気泡が存在すると、このような気泡が存在する領域では、第一硬化接着層が第一部材に接していなかったり、第二硬化接着層が第二部材に接していなかったりする、あるいは、第一硬化接着層と第一部材との接触面積が非常に小さくなったり、第二硬化接着層と第二部材との接触面積が非常に小さくなったりする。そのため、上記気泡を起点として、第一硬化接着層や第二硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0173】
これに対し、本実施態様の物品においては、接着部材が第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合であって、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0174】
なお、接着部材が第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有する場合であって、第一硬化接着層および第二硬化接着層のいずれか一方が発泡体層である場合にも、同様に、接着不良を抑制し、接着性を向上させることが可能である。
【0175】
また、上記のような物品においては、接着部材が、第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有する場合であって、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、大きさが発泡体層の厚さ程度であるような、大きな気泡が存在すると、このような気泡が存在する領域では、第一硬化接着層が第一部材および基材に接していなかったり、第二硬化接着層が第二部材および基材に接していなかったりする、あるいは、第一硬化接着層と第一部材および基材との接触面積が非常に小さくなったり、第二硬化接着層と第二部材および基材との接触面積が非常に小さくなったりする。そのため、上記気泡を起点として、第一硬化接着層や第二硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0176】
これに対し、本実施態様の物品においては、接着部材が第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とをこの順に有する場合であって、第一硬化接着層および第二硬化接着層が発泡体層である場合に、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0177】
なお、接着部材が第一硬化接着層と基材と第二硬化接着層とを有する場合において、第一硬化接着層および第二硬化接着層のいずれか一方が発泡体層である場合にも、同様に、接着不良を抑制し、接着性を向上させることが可能である。
【0178】
したがって、本実施態様の物品においては、信頼性、耐久性を向上させることができる。
【0179】
本実施態様の物品において、接着部材、第一部材、および第二部材については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0180】
また、本実施態様の物品の製造方法については、後述の「B.物品の製造方法」の項に記載する。
【0181】
本実施態様における硬化接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、内部に気泡を有する。発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数は、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。中でも、上記気泡の数は、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0182】
また、中でも、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが150μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり、7個未満であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、2個以下であることがさらに好ましく、1個以下であることが特に好ましく、0個であることが最も好ましい。
【0183】
また、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡であって、気泡と、発泡体層および発泡体層に隣接する他の部材の界面との距離が3μm以下である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり、7個未満であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、2個以下であることがさらに好ましく、1個以下であることが特に好ましく、0個であることが最も好ましい。上記のような気泡が存在する領域では、硬化接着層が硬化接着層に隣接する他の部材に接していない、あるいは、硬化接着層と硬化接着層に隣接する他の部材との接触面積が非常に小さくなる。そのため、上記気泡を起点として、硬化接着層の剥がれ、浮き、割れ等の接着不良が生じやすくなると考えられる。
【0184】
なお、気泡と、発泡体層および発泡体層に隣接する他の部材の界面との距離は、例えば
図3に示すような、気泡31の端部から、発泡体層15aおよび発泡体層15aの一方の面に隣接する他の部材(例えば第一部材20a)の界面までの距離u1、ならびに、気泡31の端部から、発泡体層15aおよび発泡体層15aの多方の面に隣接する他の部材(例えば基材12)の界面までの距離u2をいう。
【0185】
B.物品の製造方法
本開示における物品の製造方法は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0186】
I.物品の製造方法の第1実施態様
本開示における物品の製造方法の第1実施態様は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートを用いる物品の製造方法であって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、第一部材および第二部材の間に、上記発泡性接着シートを配置する配置工程と、上記発泡性接着シートの上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有し、上記接着工程における発泡硬化条件を、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する。
【0187】
図5(a)~(b)は、本実施態様の物品の製造方法を例示する工程図である。まず、
図5(a)に示すように、第一部材20aおよび第二部材20bの間に発泡性接着シート10を配置する。発泡性接着シート10は、接着層1を有しており、接着層11は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5である。次に、
図5(b)に示すように、発泡性接着シート10の発泡剤含有接着層5(接着層1)を発泡硬化させて、発泡体層15である硬化接着層11とし、硬化接着層11を有する接着部材30によって第一部材20aおよび第二部材20bを接着する。この際、発泡硬化条件を、例えば
図1に示すように、発泡体層15の厚さ方向D1に平行な断面において、気泡31のうち、発泡体層15の厚さ方向D1の長さsが発泡体層15の厚さtに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層15の厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定長さL当たり所定の値下となるように設定する。これにより、物品100が得られる。
【0188】
図6(a)~(c)は、本実施態様の物品の製造方法を例示する工程図である。まず、
図6(a)に示すように、第二部材20bに発泡性接着シート10を貼り付ける。発泡性接着シート10は、第一接着層1aと第二接着層1bとを有しており、第一接着層1aおよび第二接着層1bはそれぞれ、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5a、5bである。この際、第二部材20bに発泡性接着シート10の第二接着層11bの面を貼り付ける。次に、
図6(b)に示すように、第一部材20aの穴に、発泡性接着シート10が配置された第二部材20bを挿入する。次いで、
図6(c)に示すように、発泡性接着シート10の発泡剤含有接着層5a、5b(第一接着層1a、第二接着層1b)それぞれを発泡硬化させて、発泡体層15a、15bである第一硬化接着層11aおよび第二硬化接着層11bとし、第一硬化接着層11aと第二硬化接着層11bとを有する接着部材30によって第一部材20aおよび第二部材20bを接着する。この際、発泡硬化条件を、例えば
図2に示すように、発泡体層15a、15bの厚さ方向D1に平行な断面のそれぞれにおいて、気泡31のうち、発泡体層15a、15bの厚さ方向D1の長さsが発泡体層15a、15bの厚さt1、t2に対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層15a、15bの厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定長さL当たり所定の値下となるように設定する。これにより、物品100が得られる。
【0189】
なお、
図6(a)~(c)においては、第一接着層1aおよび第二接着層1bの両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5a、5bであるが、第一接着層および第二接着層のいずれか一方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であってもよい。
【0190】
また、
図6(a)~(c)においては、第二部材20bの両側に発泡性接着シート10を貼り付けているが、第二部材の片側に発泡性接着シートを貼り付けてもよい。
【0191】
本実施態様の物品の製造方法においては、上述の物品の第1実施態様の項に記載したように、接着工程における発泡硬化条件を、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において発泡体の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値下となるように設定することにより、接着不良を抑制し、接着性を向上させることができる。したがって、信頼性、耐久性の高い物品を得ることができる。
【0192】
なお、本明細書においては、便宜上、発泡性接着シートにおいて、第一部材側に位置する接着層を第一接着層とし、第二部材側に位置する接着層を第二接着層とする。
【0193】
以下、本実施態様の物品の製造方法に用いられる発泡性接着シートおよび本実施態様の物品の製造方法の各工程について説明する。
【0194】
1.発泡性接着シート
本実施態様における発泡性接着シートは、少なくとも接着層を有し、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層である。
【0195】
発泡性接着シートは、少なくとも接着層を有していればよい。例えば
図7に示すように、発泡性接着シート10は、1つの接着層1を有していてもよい。この場合、接着層1は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5である。また、例えば
図8に示すように、発泡性接着シート10は、第一接着層1aと第二接着層1bとを有していてもよい。この場合、例えば
図8に示すように、第一接着層1aおよび第二接着層1bの両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5a、5bであってもよく、図示しないが、第一接着層および第二接着層のいずれか一方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であってもよい。また、例えば
図9に示すように、発泡性接着シート10は、第一接着層1aと基材12と第二接着層1bとをこの順に有していてもよい。この場合、例えば
図9に示すように、第一接着層1aおよび第二接着層1bの両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5a、5bであってもよく、図示しないが、第一接着層および第二接着層のいずれか一方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であってもよい。
【0196】
以下、発泡性接着シートの各構成について説明する。
【0197】
(1)接着層
本実施態様において、接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層である。
【0198】
(a)接着層の特性
本実施態様における発泡性接着シートが、1つの接着層を有する場合、接着層は、実質的に非粘着性(タックフリー)であることが好ましい。接着層が実質的に非粘着性(タックフリー)であることにより、滑り性および耐ブロッキング性が良好な発泡性接着シートとすることができる。よって、発泡性接着シートの取扱性および作業性を向上させることができる。具体的には、配置工程において、第一部材および第二部材の間の隙間に発泡性接着シートをスムーズに挿入したり、第一部材が穴や溝を有する場合には、第一部材の穴や溝に発泡性接着シートを配置した後の隙間に第二部材をスムーズに挿入したりすることができる。
【0199】
ここで、非粘着性は、主に粘着力が低いという意味で一般に使用されており、本明細書において、「非粘着性である」とは、発泡性接着シートをロール状に巻き取り、その後、抵抗なく容易に巻き出せる状態のことをいう。
【0200】
接着層が実質的に非粘着性である場合、具体的には、接着層のタックは、0gf以上、10gf未満であることが好ましく、5gf以下であってもよく、2gf以下であってもよい。接着層のタックが上記範囲内であることにより、接着層を実質的に非粘着性とすることができ、滑り性および耐ブロッキング性の良好な発泡性接着シートとすることができる。
【0201】
また、本実施態様の発泡性接着シートが、第一接着層と第二接着層とを有する場合、または、第一接着層と基材と第二接着層とをこの順に有する場合、第一接着層および第二接着層の両方が、実質的に非粘着性(タックフリー)であってもよく、あるいは、第一接着層および第二接着層のうち、一方が実質的に非粘着性(タックフリー)であり、他方が粘着性(タック性)を有していてもよい。
【0202】
第一接着層および第二接着層の両方が、実質的に非粘着性(タックフリー)である場合には、発泡性接着シートが1つの接着層を有する場合であって、接着層が非粘着性(タックフリー)である場合と同様の効果を得ることができる。
【0203】
一方、第一接着層および第二接着層のうち、一方が実質的に非粘着性(タックフリー)であり、他方が粘着性(タック性)を有する場合であって、例えば、第一接着層が実質的に非粘着性(タックフリー)であり、第二接着層が粘着性(タック性)を有する場合には、第二部材との密着性が良好な第二接着層とすることができる。具体的には、配置工程において、第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付け、第一部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を挿入する場合、第二接着層が粘着性を有することにより、第二接着層の粘着性を利用して第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けることができ、第二部材に対する第二接着層の密着性を高めることができる。これにより、第一部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を挿入する際に、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制できる。
【0204】
また、上記の場合、第二接着層が粘着性を有することにより、リワーク性が良好な第二接着層とすることができる。そのため、例えば、上述のように第二接着層の粘着性を利用して第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付ける際に、発泡性接着シートの位置ずれを修正することができる。
【0205】
また、上記の場合、第一接着層が非粘着性であることにより、滑り性が良好な第一接着層とすることができる。そのため、例えば、上述のように第一部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を挿入する際に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材をスムーズに挿入することができ、挿入性を向上させることができる。これにより、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制できる。また、第一部材に対して第二部材を動かして第一部材および第二部材の位置合わせを行う際には、第一部材の穴や溝等に第二部材を挿入した状態で第一部材に対して第二部材をスムーズに動かすことができ、位置合わせを容易に行うことができる。
【0206】
また、上記の場合、上述したように、第二接着層が第二部材との密着性に優れており、第一接着層が滑り性に優れていることから、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制できる。そのため、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれによる発泡性接着シートの発泡硬化後の接着性の低下を抑制するとともに、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれによる発泡性接着シートの発泡硬化後の接着強度のばらつきを小さくすることができる。
【0207】
また、上記の場合、第二接着層が粘着性を有することにより、例えば、第二接着層を転写法により形成する場合には、第二接着層の浮きを抑制できる。さらに、後述するように、第二接着層の第一接着層とは反対の面側に第二セパレータが配置されている場合には、第二接着層が粘着性を有することにより、第二セパレータを容易に剥離することができ、作業性を向上させることができる。
【0208】
また、接着層が粘着性を有する場合は、例えば低分子量の樹脂成分が比較的多く含まれるため、接着層の発泡硬化過程において、樹脂成分が軟化したときに流動性が高くなりやすい。そのため、接着層(発泡剤含有接着層)を発泡硬化させて発泡体層としたときに、気泡同士が連結しやすくなり、気泡が大きくなりやすい。よって、第一接着層および第二接着層のうち、一方が実質的に非粘着性(タックフリー)であり、他方が粘着性(タック性)を有する場合に、本実施態様の物品の製造方法は有用である。
【0209】
第一接着層および第二接着層の両方が実質的に非粘着性である場合、具体的には、第一接着層および第二接着層のタックはそれぞれ、0gf以上、10gf未満であることが好ましく、5gf以下であってもよく、2gf以下であってもよい。第一接着層および第二接着層のタックが上記範囲内であることにより、第一接着層および第二接着層を実質的に非粘着性とすることができ、滑り性および耐ブロッキング性の良好な発泡性接着シートとすることができる。
【0210】
また、第一接着層が実質的に非粘着性(タックフリー)であり、第二接着層が粘着性(タック性)を有する場合、具体的には、第一接着層のタックは、0gf以上、10gf未満であり、第二接着層のタックは、10gf以上、400gf以下であることが好ましい。
【0211】
上記の場合、第一接着層のタックは、0gf以上、10gf未満であることが好ましく、5gf以下であってもよく、2gf以下であってもよい。第一接着層のタックが上記範囲内であることにより、第一接着層を実質的に非粘着性とすることができ、滑り性および耐ブロッキング性の良好な発泡性接着シートとすることができる。
【0212】
また、上記の場合、第二接着層のタックは、10gf以上であることが好ましく、30gf以上であってもよく、50gf以上であってもよい。第二接着層のタックが低すぎると、例えば、第二接着層のタックを利用して第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付ける際に、第二接着層および第二部材の密着性が低下する可能性や、第一部材の穴や溝等に発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を挿入する際に、第二接着層および第二部材の密着不良により発泡性接着シートが剥がれたり発泡性接着シートの位置がずれたりすること等によって、発泡硬化後の第一接着層および第二接着層の接着性が低下したり、接着強度にばらつきが生じたりする可能性がある。また、第二接着層のタックは、400gf以下であることが好ましく、300gf以下であってもよく、200gf以下であってもよい。第二接着層のタックが高すぎると、リワーク性が低下し、例えば、第二接着層のタックを利用して第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付ける際に、発泡性接着シートの位置ずれの修正が困難になる可能性がある。
【0213】
ここで、接着層のタックは、プローブタック試験により測定する。具体的には、発泡性接着シートの接着層の面に、直径5mmの円柱形のステンレス製のプローブを、温度25℃の条件で、荷重10.0gf、速度30mm/minで押し付け、1.0秒間保持した後、速度30mm/minで引き剥がし、引き剥がすときの荷重を測定する。この測定を5回行い、平均値をタックとする。プローブタック試験機としては、例えば、RHESCA社製のタッキング試験機「TAC-II」を用いることができる。
【0214】
接着層のタックを制御する手段としては、例えば、接着層の組成を調整する方法が挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する接着層において、常温で固体のエポキシ樹脂を用いたり、常温で固体の硬化剤を用いたりすることにより、接着層の粘着性を低下させることができる。一方、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する接着層において、常温で液体のエポキシ樹脂を用いたり、常温で液体の硬化剤を用いたりすると、接着層の粘着性が高くなる傾向がある。また、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する接着層において、軟化温度の高いエポキシ樹脂を含有させる、あるいは重量平均分子量の大きいエポキシ樹脂を含有させることにより、接着層の粘着性を低下させることができる。例えば、接着層に軟化温度の異なる複数種のエポキシ樹脂を含有させる、すなわち、接着層が、一のエポキシ樹脂と、軟化温度が25℃以上であり、かつ、上記一のエポキシ樹脂の軟化温度よりも10℃以上高い、他のエポキシ樹脂とを含有することにより、接着層の粘着性を低下させることができる。また、例えば、接着層に重量平均分子量の異なる複数種のエポキシ樹脂を含有させる、すなわち、接着層が、一のエポキシ樹脂と、重量平均分子量が370以上であり、かつ、上記一のエポキシ樹脂の重量平均分子量よりも300以上大きい、他のエポキシ樹脂とを含有することにより、接着層の粘着性を低下させることができる。より具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する接着層において、上述したように、エポキシ樹脂として、軟化温度が低く、低分子量の第一エポキシ樹脂と、軟化温度が高く、高分子量の第二エポキシ樹脂とを含有させることにより、接着層の粘着性を低下させることができる。一方、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する接着層において、軟化温度の低いエポキシ樹脂を含有させる、あるいは重量平均分子量の小さいエポキシ樹脂を含有させると、接着層の粘着性が高くなる傾向がある。また、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する接着層において、上述したように、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂を含有させることにより、接着層の粘着性を低下させることができる。また、接着層に粘着付与樹脂(タッキファイヤ)を添加することにより、接着層の粘着性が高くなる傾向がある。なお、常温で液体の硬化剤を用いると、粘着性が高くなる傾向があるものの、保存安定性が低下する可能性があるため、硬化剤以外の成分、例えばエポキシ樹脂等の特性や種類等を調整することで、接着層のタックを調整することが好ましい。
【0215】
ここで、「粘着」とは「接着」に含まれる概念である。粘着は一時的な接着現象の意味として用いられるのに対し、接着は実質的に永久的な接着現象の意味として用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学辞典第5版)。「粘着性」および「粘着力」とは、感圧により接着する性質およびそのときの接着力を指す。
【0216】
なお、本明細書において、「接着層の粘着性」および「接着層の粘着力」とは、特段の事情が無い限り、硬化前の接着層が有する粘着性および粘着力をいう。また、本明細書において、「接着層の接着性」および「接着層の接着力」とは、特段の事情が無い限り、硬化後の接着層が有する接着性および接着力をいう。
【0217】
(b)接着層の材料
本実施態様における接着層は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する。
【0218】
接着層の材料については、上述の「A.物品」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0219】
硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、上述したように、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂として、常温で液体のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有する場合に、本実施態様の物品の製造方法は有用である。本実施態様の発泡性接着シートが第一接着層および第二接着層を有する場合、第一接着層および第二接着層のうち、少なくとも一方が常温で液体のエポキシ樹脂を含有することが好ましく、一方のみが常温で液体のエポキシ樹脂を含有することがより好ましい。上述したように、このような場合に本実施態様の物品の製造方法は有用である。
【0220】
接着層中の常温で液体のエポキシ樹脂の含有量は、上述の物品における硬化接着層に用いられる接着剤組成物中の常温で液体のエポキシ樹脂の含有量と同様である。
【0221】
エポキシ樹脂系接着剤の場合、接着層中の樹脂成分とは、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂をいう。接着層中の樹脂成分には、任意成分であるウレタン樹脂等も含まれる。また、硬化剤がフェノール樹脂である場合、接着層中の樹脂成分には、硬化剤であるフェノール樹脂も含まれる。
【0222】
硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合であって、硬化性の接着剤が、上述したように、軟化温度が50℃以上であり、かつ、エポキシ当量が5000g/eq以下である第一エポキシ樹脂と、軟化温度が上記第一エポキシ樹脂より高く、かつ、重量平均分子量が20,000以上である第二エポキシ樹脂とを含有する場合、第一エポキシ樹脂の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上であり、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、25質量部以上であってもよい。第一エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、発泡硬化後の接着性および耐ブロッキング性が低下する可能性がある。一方、第一エポキシ樹脂の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、90質量部以下であり、80質量部以下であってもよく、70質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよい。第一エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、第二エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の含有量が相対的に少なくなり、非粘着性、耐ブロッキング性、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性をバランスさせることができない可能性がある。
【0223】
また、上記の場合、第二エポキシ樹脂の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、10質量部以上であり、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、25質量部以上であってもよく、30質量部以上であってもよく、35質量部以上であってもよく、40質量部以上であってもよく、45質量部以上であってもよい。第二エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、粘着性が高くなり、耐ブロッキング性が低下する可能性がある。一方、第二エポキシ樹脂の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、90質量部以下であり、85質量部以下であってもよく、80質量部以下であってもよく、75質量部以下であってもよい。第二エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、第一エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の含有量が相対的に少なくなり、非粘着性、耐ブロッキング性、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性をバランスさせることができない可能性がある。
【0224】
第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂の合計に対する、第一エポキシ樹脂の割合は、例えば5質量%以上であり、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂の上記割合は、例えば80質量%以下であり、75質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
【0225】
また、接着層に含まれる全てのエポキシ樹脂に対する、第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂の合計の割合は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0226】
第一接着層が実質的に非粘着性であり、第二接着層が粘着性を有する場合であって、硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、第一接着層は、上述したように、軟化温度が50℃以上であり、かつ、エポキシ当量が5000g/eq以下である第一エポキシ樹脂と、軟化温度が上記第一エポキシ樹脂より高く、かつ、重量平均分子量が20,000以上である第二エポキシ樹脂とを含有することが好ましい。一方、第二接着層においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等の常温で液体エポキシ樹脂、および、軟化点の低いエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いることで、第二接着層のタックを所定の範囲内に調整しやすいからである。
【0227】
硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合であって、接着層が、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂をさらに含有する場合、アクリル樹脂の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上であり、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。アクリル樹脂の含有量が少なすぎると、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。一方、アクリル樹脂の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、60質量部以下であり、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、35質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。アクリル樹脂の含有量が多すぎると、第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂の含有量が相対的に少なくなり、非粘着性、耐ブロッキング性、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性をバランスさせることができない可能性がある。また、アクリル樹脂の含有量が多すぎると、膜強度が低下する可能性がある。
【0228】
また、硬化剤の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上、40質量部以下である。例えば、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤を主成分として用いる場合、硬化剤の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上、15質量部以下であることが好ましい。一方、硬化剤としてフェノール系硬化剤を主成分として用いる場合、硬化剤の含有量は、接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、5質量部以上、40質量部以下であることが好ましい。なお、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤またはフェノール系硬化剤を主成分として用いるとは、硬化剤において、イミダゾール系硬化剤またはフェノール系硬化剤の質量割合が最も多いことをいう。
【0229】
接着層中の発泡剤の含有量は、接着層中の樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上であり、2質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、13質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよい。上述したように、発泡剤の含有量が多いと、発泡硬化後の接着層の厚さ、つまり発泡体層(硬化接着層)の厚さが厚くなる傾向がある。そのため、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさを相対的に小さくすることができる。よって、発泡剤の含有量が上記範囲であることにより、大きな気泡を抑制できる。一方、接着層中の発泡剤の含有量は、接着層中の樹脂成分100質量部に対して、例えば30質量部以下であり、25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。発泡剤の含有量が多すぎると、硬化性の接着剤の含有量が相対的に少なくなるため、発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。
【0230】
第一接着層および第二接着層は、少なくとも一方が発泡剤を含有していればよい。中でも、第一接着層が実質的に非粘着性であり、第二接着層が粘着性を有する場合には、第一接着層が発泡剤を含有することが好ましい。発泡剤が含有されることで、表面粗さが大きく、摩擦係数が小さくなり、滑り性がさらに良好となるからである。特に、第一接着層および第二接着層の両方が、発泡剤を含有することが好ましい。第一接着層および第二接着層の両方が発泡剤を含有することにより、発泡硬化後の第一接着層および第二接着層の接着性を高めることができる。
【0231】
接着層に含まれる樹脂成分に対する、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の合計の割合は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0232】
接着層に含まれる樹脂成分の含有量は、例えば60質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0233】
(c)接着層の構成
接着層は、例えば、1.5倍以上、15倍以下の発泡倍率で発泡可能である。上記発泡倍率は、例えば、3.5倍以上であってもよく、4倍以上であってもよく、4.5倍以上であってもよい。また、上記発泡倍率は、例えば、9倍以下であってもよく、8.5倍以下であってもよく、8倍以下であってもよい。上記発泡倍率が小さすぎても大きすぎても、発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。
【0234】
ここで、発泡倍率は、下記式により求めることができる。
発泡倍率(倍)=発泡硬化後の接着層の厚さ/発泡硬化前の接着層の厚さ
【0235】
接着層の厚さは、特に限定されないが、発泡剤の平均粒径以上であることが好ましく、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。接着層が薄すぎると、基材との密着性および発泡硬化後の接着性を十分に得ることができない可能性がある。一方、接着層の厚さは、例えば200μm以下であり、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。接着層が厚すぎると、面質が悪化する可能性がある。
【0236】
接着層は、連続層であってもよく、不連続層であってもよい。不連続層としては、例えば、ストライプ、ドット等のパターンが挙げられる。また、接着層の表面が、エンボス等の凹凸形状を有していてもよい。
【0237】
接着層は、例えば、上記の硬化性の接着剤および発泡剤等を含む接着剤組成物を塗布し、溶剤を除去することで形成することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコート等が挙げられる。
【0238】
接着剤組成物は、溶媒を含有していてもよく、溶媒を含有していなくてもよい。なお、本明細書における溶媒は、厳密な溶媒(溶質を溶解させる溶媒)のみならず、分散媒も含む広義の意味である。また、接着剤組成物に含まれる溶媒は、接着剤組成物を塗布乾燥して接着層を形成する際に揮発して除去される。
【0239】
接着剤組成物は、上述した各成分を混合し、必要に応じて混練、分散することにより、得ることができる。混合および分散方法としては、一般的な混練分散機、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ペブルミル、トロンミル、ツェグバリ(Szegvari)アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、デスパー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、デスパーザー、ホモジナイザー、超音波分散機が適用できる。
【0240】
(2)基材
本実施態様における発泡性接着シートは、第一接着層と第二接着層との間に基材を有していてもよい。基材については、上述の「A.物品」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0241】
(3)その他の構成
(a)第一中間層および第二中間層
本実施態様における発泡性接着シートは、基材および第一接着層の間に第一中間層を有していてもよい。また、本実施態様における発泡性接着シートは、基材および第二接着層の間に第二中間層を有していてもよい。第一中間層および第二中間層については、上述の「A.物品」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0242】
例えば、
図10に示す発泡性接着シート10においては、基材12および第一接着層1aの間に第一中間層13aが配置され、基材12および第二接着層1bの間に第二中間層13bが配置されている。なお、
図10においては、発泡性接着シート10は、第一中間層13aおよび第二中間層13bの両方を有するが、いずれか一方のみを有していてもよい。
【0243】
(b)セパレータ
本実施態様における発泡性接着シートは、1つの接着層を有する場合、接着層の片面または両面にセパレータを有していてもよい。また、本実施態様における発泡性接着シートは、第一接着層と第二接着層とを有する場合、あるいは、第一接着層と基材と第二接着層とをこの順に有する場合、第一接着層の第二接着層とは反対の面側に第一セパレータを有していてもよく、第二接着層の第一接着層とは反対の面側に第二セパレータを有していてもよい。
【0244】
発泡性接着シートがセパレータを有する場合には、発泡性接着シートを第一部材および第二部材の間に配置する際、発泡性接着シートからセパレータを剥がして用いる。
【0245】
セパレータは、接着層から剥離可能であれば特に限定されず、接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。このようなセパレータとしては、例えば、離型フィルム、剥離紙等を挙げることができる。また、セパレータは、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。
【0246】
単層構造のセパレータとしては、例えば、フッ素樹脂系フィルム等が挙げられる。
【0247】
また、複層構造のセパレータとしては、例えば、基材層の片面または両面に離型層を有する積層体が挙げられる。基材層としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、含浸紙等の紙が挙げられる。離型層の材料としては、離型性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーン化合物、有機化合物変性シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、メラミン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、長鎖アルキル化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
【0248】
第一セパレータおよび第二セパレータは、同じであってもよく、異なっていてもよい。中でも、第一接着層が実質的に非粘着性であり、第二接着層が粘着性を有する場合には、第一セパレータが重剥離性を有し、第二セパレータが軽剥離性を有することが好ましい。例えば、第二部材に発泡性接着シートを配置した後、第一部材の穴に、発泡性接着シートが配置された第二部材を挿入する場合には、第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けて、発泡性接着シートの第一接着層の面を表側にすることで、挿入時の、第二部材および発泡性接着シートの密着性、発泡性接着シートが配置された第二部材の挿入性を向上させることができる。この場合、第一セパレータおよび第二セパレータのうち、第二セパレータから剥離することになるため、第一セパレータが重剥離性を有し、第二セパレータが軽剥離性を有することにより、第二セパレータを第一セパレータよりも剥離しやすくすることができる。
【0249】
なお、軽剥離、重剥離とは、第一接着層や第二接着層から第一セパレータや第二セパレータを剥離するのに要する力の程度をいい、軽剥離は、重剥離よりも、剥離力が小さいことを意味する。
【0250】
(4)発泡性接着シート
本実施態様における発泡性接着シートの厚さは、例えば10μm以上であり、20μm以上であってもよい。一方、発泡性接着シートの厚さは、例えば1000μm以下であり、200μm以下であってもよい。
【0251】
本実施態様における発泡性接着シートは、形状保持性が良好であることが好ましい。形状保持性が良好であることが好ましい。ISO 2493に対応するJIS P8125-2:2017に基づく曲げモーメントは、例えば0.1gf・cm以上であり、1gf・cm以上であってもよい。一方、上記曲げモーメントは、例えば40gf・cm未満であり、30gf・cm未満であってもよい。従来、発泡性接着シートでは、曲げモーメントを高くし、形状保持性および狭い隙間への挿入性を上げる手法が一般的である。これに対し、本開示の発明者らは、形状の工夫によって形状保持性は担保可能であること、および、曲げモーメントが高いことには別の不具合があることから、他の特性を鑑みて、曲げモーメントは上記範囲内であることが好ましいことを見出した。曲げモーメントが上記範囲よりも小さいと、折り返し等の工夫によったとしても形状保持が困難である可能性がある。また、曲げモーメントが上記範囲よりも大きいと、折り曲げ加工後に形状がもとに戻ってしまうため、折り曲げ加工時に加熱したり、折り目にスジを付けたりする必要がある。加熱するとシートライフが低下し、スジをつけるとその部分の絶縁性が低下する可能性がある。加えて、本実施態様における発泡性接着シートにおいては、表面硬度を高くすることで高速挿入しても表面が傷つかない。
【0252】
本実施態様における発泡性接着シートは、発泡硬化後の接着性が高いことが好ましい。ISO 4587:1995に対応するJIS K6850:1999に基づくせん断強度(接着強度)は、23℃において、例えば1.50MPa以上であってもよく、1.80MPa以上であってもよく、2.10MPa以上であってもよい。また、上記せん断強度(接着強度)は、130℃において、例えば0.50MPa以上であってもよく、0.75MPa以上であってもよく、1.00MPa以上であってもよい。例えば、加熱の必要のない高強度のアクリルフォーム粘着テープにおいては、せん断強度(接着強度)が常温で1MPa以上2MPa以下程度であり、200℃では耐熱性がない。そのため、上記せん断強度(接着強度)が23℃で上記範囲であれば、強度面での優位性がある。また、上記せん断強度(接着強度)が130℃で上記範囲であれば、自動車のエンジン回りやそれに近い耐熱性が必要とされる用途への適用が可能になる。
【0253】
本実施態様における発泡性接着シートは、発泡硬化後の電気絶縁性が高いことが好ましい。発泡性接着シートの発泡硬化後において、IEC 60454-2に対応するJIS C2107:2011に基づく絶縁破壊電圧は、例えば3kV以上であることが好ましく、5kV以上であることがより好ましい。上記絶縁破壊電圧が上記範囲であることにより、防錆や銅線まわりへの適用が可能となる。また、発泡性接着シートの発泡硬化後において、熱伝導率が、例えば0.1W/mK以上であることが好ましく、0.15W/mK以上であることがより好ましい。上記熱伝導率が上記範囲であることにより、部品の小型化を図ることができ、また加熱時の硬化反応を促進することができる。
【0254】
本実施態様における発泡性接着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、発泡性接着シートの層構成に応じて適宜選択される。
【0255】
2.配置工程
本実施態様における配置工程においては、第一部材および第二部材の間に、発泡性接着シートを配置する。
【0256】
第一部材および第二部材の間に発泡性接着シートを配置する方法は、第一部材および第二部材の種類等に応じて適宜選択される。
【0257】
例えば、第一部材および第二部材の間に発泡性接着シートを挿入する方法や、第一部材の穴や溝等に発泡性接着シートを配置した後、第一部材の穴や溝等の中の発泡性接着シートを配置した後の隙間に第二部材を挿入する方法等が挙げられる。また、例えば、第一部材が穴や溝を有しており、第一部材の穴や溝に第二部材を配置する場合において、接着により第一部材および第二部材を固定する場合には、発泡性接着シートの第二接着層のタックを利用して第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けた後、第一部材の穴や溝に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を配置する方法や、第一部材の穴や溝に発泡性接着シートを配置し、発泡性接着シートの第二接着層のタックを利用して第一部材の穴や溝に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けた後、発泡性接着シートが貼り付けられた第一部材の穴や溝に、第二部材を配置する方法等が挙げられる。
【0258】
3.接着工程
本実施態様における接着工程においては、発泡性接着シートの発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、第一部材および第二部材を接着する。
【0259】
また、本実施態様における接着工程においては、発泡硬化条件を、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する。中でも、発泡硬化条件を、上記気泡の数が、3個以下となるように設定することが好ましく、2個以下となるように設定することがより好ましく、1個以下となるように設定することがさらに好ましく、0個となるように設定することが特に好ましい。
【0260】
発泡性接着シートを発泡硬化させる方法としては、例えば、加熱または光照射を挙げることができる。中でも、加熱により発泡性接着シートの発泡剤含有接着層を発泡硬化させることが好ましい。加熱による方法は、例えば金属製の部材のように第一部材および第二部材が透明性を有さない場合でも適用可能である。
【0261】
加熱条件は、上記発泡硬化条件となるように設定される。加熱条件は、例えば、接着層に含有される硬化性の接着剤や発泡剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0262】
加熱温度は、例えば、発泡剤の最大発泡温度±40℃以内であることが好ましく、発泡剤の最大発泡温度±30℃以内であることがより好ましく、発泡剤の最大発泡温度±20℃以内であることがさらに好ましい。加熱温度が上記範囲よりも高いと、樹脂成分が硬化していても、発泡剤が収縮することによって、発泡時の接着層の厚さを維持することができず、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさが相対的に大きくなる傾向がある。そのため、接着強度が低下する可能性がある。一方、加熱温度が上記範囲よりも低いと、発泡剤の膨張が不十分になり、接着強度が低下する可能性がある。この場合、硬化接着層と第一部材または第二部材との間で、界面破壊が生じやすくなる可能性がある。
【0263】
なお、接着層が複数の発泡剤を含有する場合には、少なくとも1つの発泡剤について、加熱温度が上記範囲内であればよい。中でも、複数の発泡剤のうち、含有量が多い発泡剤について、加熱温度が上記範囲内であることが好ましい。特に、複数の発泡剤のすべてについて、加熱温度が上記範囲内であることが好ましい。
【0264】
また、加熱温度は、例えば、発泡性接着シートの最大変位外挿温度-7℃以上、発泡性接着シートの最大変位外挿温度+83℃以下であることが好ましく、発泡性接着シートの最大変位外挿温度+15℃以上、発泡性接着シートの最大変位外挿温度+63℃以下であることがより好ましく、発泡性接着シートの最大変位外挿温度+23℃以上、発泡性接着シートの最大変位外挿温度+43℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度が上記範囲よりも高いと、樹脂成分が硬化していても、発泡剤が収縮することによって、発泡時の接着層の厚さを維持することができず、発泡体層(硬化接着層)の厚さに対して気泡の大きさが相対的に大きくなる傾向がある。そのため、接着強度が低下する可能性がある。一方、加熱温度が上記範囲よりも低いと、発泡剤の膨張が不十分になり、接着強度が低下する可能性がある。この場合、硬化接着層と第一部材または第二部材との間で、界面破壊が生じやすくなる可能性がある。
【0265】
図11は、発泡性接着シートについて、熱機械分析(TMA)により、圧縮荷重を加えて、所定の昇温速度で昇温し、変位を測定したときの、温度を横軸、変位量を縦軸としたTMA曲線を例示するグラフである。発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを含有する発泡性接着シートについてのTMA曲線においては、通常、膨張(発泡)に伴うピークを有する。
図11に示すような、発泡性接着シートについてのTMA曲線において、最大変位量を示す温度での接線と、TMA曲線のうち、膨張(発泡)開始に伴い膨張挙動を示す部分の曲線を微分した際の極小温度での接線との交点の温度を、発泡性接着シートの最大変位外挿温度T
max1とする。上記の場合、加熱温度が、最大変位外挿温度T
max1に対して所定の範囲であることが好ましい。
【0266】
ここで、発泡性接着シートについての熱機械分析は、以下の方法により行う。まず、発泡性接着シートをφ4mmの大きさに打ち抜いて、サンプルを作製する。次に、φ5mmのアルミニウム容器に、発泡性接着シートの第二接着層の面が底面側になるように、サンプルを配置する。次いで、サンプルの上に、φ4mmのアルミニウムプレートを配置する。次いで、熱機械分析装置を用いて、25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、荷重10mNの条件にて圧縮モードで測定を行う。熱機械分析装置は、日立ハイテクサイエンス社製の熱機械分析装置TMA7100を使用することができる。
【0267】
なお、上記最大変位量は、発泡性接着シートについてのTMA曲線において、変位量の最大値である。
【0268】
また、上記最大変位外挿温度は、発泡性接着シートについてのTMA曲線において、最大変位量を示す温度での接線と、TMA曲線のうち、膨張(発泡)開始に伴い膨張挙動を示す部分の曲線を微分した際の極小温度での接線との交点とする。
【0269】
具体的には、加熱温度は、130℃以上、200℃以下とすることができる。
【0270】
加熱時間は、例えば、3分間以上、3時間以下とすることができる。
【0271】
II.物品の製造方法の第2実施態様
本開示における物品の製造方法の第2実施態様は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートを用いる物品の製造方法であって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、第一部材および上記第二部材の間に、上記発泡性接着シートを配置する配置工程と、上記発泡性接着シートの上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有し、上記接着工程における発泡硬化条件を、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する。
【0272】
図5(a)~(b)および
図6(a)~(c)は、本実施態様の物品の製造方法を例示する工程図である。なお、
図5(a)~(b)および
図6(a)~(c)については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0273】
本実施態様の物品の製造方法においては、上述の物品の第2実施態様の項に記載したように、接着工程における発泡硬化条件を、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において発泡体の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値下となるように設定することにより、接着不良を抑制し、接着性を向上させることができる。したがって、信頼性、耐久性の高い物品を得ることができる。
【0274】
本実施態様の物品の製造方法に用いられる発泡性接着シート、および本実施態様の物品の製造方法の配置工程については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0275】
また、本実施態様における接着工程においては、発泡硬化条件を、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する。中でも、発泡硬化条件を、上記気泡の数が、3個以下となるように設定することが好ましく、2個以下となるように設定することがより好ましく、1個以下となるように設定することがさらに好ましく、0個となるように設定することが特に好ましい。
【0276】
発泡性接着シートを発泡硬化させる方法、および、加熱条件については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0277】
C.発泡性接着シート
本開示における発泡性接着シートは、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0278】
I.発泡性接着シートの第1実施態様
本開示における発泡性接着シートの第1実施態様は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡性接着シートを上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。
【0279】
図7は、本実施態様の発泡性接着シートの一例を示す概略断面図である。
図7における発泡性接着シート10は、接着層1を有している。接着層1は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5である。発泡剤含有接着層5(接着層1)に含まれる硬化性の接着剤は、熱硬化性の接着剤であり、発泡剤含有接着層5(接着層1)に含まれる発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルである。また、発泡性接着シート10を所定温度で所定時間加熱することにより、発泡剤含有接着層5(接着層1)を発泡硬化させて発泡体層15としたとき、例えば
図12に示すように、発泡体層15の厚さ方向D1に平行な断面において、発泡体層15の厚さ方向D1の長さsが発泡体層15の厚さtに対して所定の範囲である気泡31の数が、発泡体層15の厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定の長さL当たり所定の値以下となる。
【0280】
図8は、本実施態様の発泡性接着シートの他の例を示す概略断面図である。
図9における発泡性接着シート10は、第一接着層1aと、第二接着層1bとを有している。第一接着層1aおよび第二接着層1bは、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5a、5bである。発泡剤含有接着層5a、5b(第一接着層1a、第二接着層1b)に含まれる硬化性の接着剤は、熱硬化性の接着剤であり、発泡剤含有接着層5a、5b(第一接着層1a、第二接着層1b)に含まれる発泡剤は、熱膨張性マイクロカプセルである。発泡性接着シート10を所定温度で所定時間加熱することにより、発泡剤含有接着層5a、5b(第一接着層1a、第二接着層1b)をそれぞれ発泡硬化させて発泡体層15a、15bとしたとき、例えば
図13に示すように、発泡体層15aの厚さ方向D1に平行な断面において、気泡31のうち、発泡体層15aの厚さ方向D1の長さsが発泡体層15aの厚さt1に対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層15aの厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定の長さLたり所定の値以下となる。また、発泡体層15bの厚さ方向D1に平行な断面において、気泡31のうち、発泡体層15bの厚さ方向D1の長さsが発泡体層15bの厚さt2に対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層15bの厚さ方向D1に垂直な方向D2の所定の長さL当たり所定の値以下となる。
【0281】
図9は、本実施態様の発泡性接着シートの他の例を示す概略断面図である。
図9における発泡性接着シート10は、第一接着層1aと、基材12と、第二接着層1bとをこの順に有している。なお、
図9については、第一接着層1aと第二接着層1bとの間に基材12が配置されていること以外は、上記の
図8と同様である。
【0282】
なお、
図8および
図9においては、第一接着層1aおよび第二接着層1bの両方が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層5a、5bであるが、第一接着層および第二接着層のいずれか一方のみが、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であってもよい。
【0283】
本実施態様の発泡性接着シートにおいては、上述の物品の第1実施態様の項に記載したように、接着層が発泡剤含有接着層である場合に、発泡性接着シートを所定温度で所定時間加熱することにより、発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0284】
本実施態様の発泡性接着シートの各構成については、上記の「A.物品」および「B.物品の製造方法」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0285】
本実施態様においては、発泡性接着シートを発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。上記気泡の数は、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0286】
なお、発泡性接着シートを加熱する際には、平滑な表面を有する支持体を用い、支持体の平滑な表面に発泡性接着シートを配置してから、加熱を行う。支持体としては、平滑な表面を有し、耐熱性を有していれば特に限定されず、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0287】
また、発泡性接着シートについては、発泡体層の厚さ方向は、支持体の平面方向に垂直な方向とする。また、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向は、支持体の平面方向とする。
【0288】
本実施態様の発泡性接着シートの用途は、特に限定されない。本実施態様の発泡性接着シートは、例えば、上述の物品の製造に用いることができる。
【0289】
II.発泡性接着シートの第2実施態様
本開示における発泡性接着シートの第2実施態様は、少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡性接着シートを上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。
【0290】
図7~
図9は、本実施態様の発泡性接着シートの一例を示す概略断面図である。なお、
図7~
図9については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0291】
本実施態様の発泡性接着シートにおいては、上述の物品の第2実施態様の項に記載したように、接着層が発泡剤含有接着層である場合に、発泡性接着シートを所定温度で所定時間加熱することにより、発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0292】
本実施態様の発泡性接着シートの各構成については、上記の「A.物品」および「B.物品の製造方法」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0293】
本実施態様においては、発泡性接着シートを発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。上記気泡の数は、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0294】
なお、発泡性接着シートを加熱する際には、支持体の一方の面に発泡性接着シートを配置してから、加熱を行ってもよい。支持体については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0295】
D.接着剤組成物
本開示における接着剤組成物は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0296】
I.接着剤組成物の第1実施態様
本開示における接着剤組成物の第1実施態様は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、支持体の一方の面に上記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、上記接着剤組成物の塗膜を上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。
【0297】
本実施態様の接着剤組成物においては、上述の物品の第1実施態様の項に記載したように、支持体の一方の面に接着剤組成物を所定厚さで塗布し、接着剤組成物の塗膜を所定温度で所定時間加熱することにより、塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さに対して所定の範囲である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0298】
本実施態様の接着剤組成物の各成分については、上記の「A.物品」および「B.物品の製造方法」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0299】
本実施態様においては、支持体の一方の面に接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、接着剤組成物の塗膜を発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。上記気泡の数は、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0300】
なお、支持体の一方の面に接着剤組成物を塗布する際には、平滑な表面を有する支持体を用い、支持体の平滑な表面に接着剤組成物を塗布する。支持体としては、平滑な表面を有し、耐熱性を有していれば特に限定されず、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0301】
また、接着剤組成物については、発泡体層の厚さ方向は、支持体の平面方向に垂直な方向とする。また、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向は、支持体の平面方向とする。
【0302】
II.接着剤組成物の第2実施態様
本開示における接着剤組成物の第2実施態様は、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、支持体の一方の面に上記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、上記接着剤組成物の塗膜を上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。
【0303】
本実施態様の接着剤組成物においては、上述の物品の第2実施態様の項に記載したように、支持体の一方の面に接着剤組成物を所定厚さで塗布し、接着剤組成物の塗膜を所定温度で所定時間加熱することにより、塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向の所定長さ当たり所定の値以下であることにより、接着不良を抑制できる。したがって、接着性を向上させることが可能である。
【0304】
本実施態様の接着剤組成物の各成分については、上記の「A.物品」および「B.物品の製造方法」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0305】
本実施態様においては、支持体の一方の面に接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、接着剤組成物の塗膜を発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である。上記気泡の数は、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0306】
支持体については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0307】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0308】
[実施例1~5および比較例1~2]
下記材料を用いて、下記表1に示す組成の第一接着剤組成物1~7、第二接着剤組成物1~7を調製した。
【0309】
・アクリル樹脂:PMMA-PBuA-PMMA(一部にアクリルアミド基)、Tg:-20℃、120℃、Mw:150,000
・エポキシ樹脂A:ビスフェノールAノボラック型、常温固形、軟化温度:70℃、エポキシ当量:210g/eq、Mw:1300、150℃での溶融粘度:0.5Pa・s
・エポキシ樹脂B:BPAフェノキシ型、常温固形、軟化温度:110℃、エポキシ当量:8000g/eq、Mw:50,000
・エポキシ樹脂C:ビスフェノールA型、常温液状、エポキシ当量:184~194g/eq
・エポキシ樹脂D:ジアミノジフェニルメタン型、高粘稠液体、エポキシ当量:110~130g/eq
・エポキシ樹脂E:シリコーン変性、常温固形、エポキシ当量:1200g/mol
エポキシ樹脂A、B、Eは常温で固体であり、エポキシ樹脂C、Dは常温で液体である。
【0310】
・硬化剤A:フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物 軟化点80℃、水酸基当量104g/mol
・硬化剤B:α-(ヒドロキシ(又はジヒドロキシ)フェニルメチル)-ω-ヒドロポリ[ビフェニル-4,4’-ジイルメチレン(ヒドロキシ(又はジヒドロキシ)フェニレンメチレン)]
・硬化触媒:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、平均粒子径:3μm、融点:230℃、反応開始温度145℃~155℃、活性領域155℃~173℃(四国化成工業社製、2PHZ-PW)
・シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0311】
・発泡剤A:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径10μm~16μm、膨張開始温度123℃~133℃、最大膨張温度168℃~178℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・発泡剤B:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径18μm~24μm、膨張開始温度120℃~130℃、最大膨張温度175℃~190℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・発泡剤C:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径18μm~24μm、膨張開始温度123℃~133℃、最大膨張温度180℃~195℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・溶剤:メチルエチルケトン
【0312】
【0313】
セパレータとして、離型フィルム(PETセパレータ、ニッパ社製、PET50×1-J2、厚さ50μm)を用い、離型フィルムの離型処理面に、第二接着剤組成物を、塗工乾燥後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第二接着層を形成した。
【0314】
基材として、ポリエチレンナフタレート(PENフィルム、東洋紡フィルムソリューション社製、テオネックスQ51、厚さ25μm)を用いた。第一接着剤組成物を、塗工乾燥後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第一接着層を形成した。
【0315】
次に、基材および第一接着層を有する積層体の基材の面に、セパレータおよび第二接着層を有する積層体の第二接着層の面をラミネートした。これにより、第一接着層、基材、第二接着層、およびセパレータがこの順に配置された発泡性接着シートを得た。
【0316】
[評価]
(1)接着性
図14(a)、(b)に示すように、厚さ1.6mm、幅25mm、長さ100mmの金属板41(冷間圧延鋼板SPCC-SD)を2枚用意した。そのうちの1枚の金属板41の一方の先端にスペーサ42を所定の間隔を設けて配置した。スペーサ42の厚さは、約370μm(日東電工社製のカプトンテープP-221を2枚と、寺岡製作所製のフッ素樹脂粘着テープ8410を1枚重ねた厚さ)とした。また、発泡性接着シートを12.5mm×25mmの大きさに切り出した。発泡性接着シートがセパレータを有する場合にはセパレータを剥がした状態とした。次に、スペーサ42の間に発泡性接着シート10を配置し、もう1枚の金属板41を一方の先端が重なるように配置し、クリップにて固定し、試験片を得た。その後、試験片を熱オーブンに入れ、室温から所定温度まで13分で昇温し、20分保持することで、発泡性接着シート10の第一接着層および第二接着層を発泡硬化させた。この際、加熱温度は、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃とした。
【0317】
加熱後の試験片を、JIS K6850:1999に準拠し、引張試験機テンシロンRTF1350(エーアンドデイ社製)にて、せん断強度(接着強度)を測定した。測定条件は、引張速度10mm/min、温度23℃とした。表2および表3には、各加熱温度での接着強度のうち、接着強度が最も高かったときの、加熱温度および接着強度を示す。
【0318】
(2)気泡の観察
ガラス基板上に、1mm程度はみ出すような形で、発泡性接着シートの第一接着層の面を貼り合わせて、試験片を作製した。試験片を熱オーブンに入れ、室温から所定温度まで13分で昇温し、15分保持することで、発泡性接着シート10の第一接着層および第二接着層を発泡硬化させて、第一硬化接着層、基材、および第二硬化接着層をこの順に有する接着シートを得た。この際、加熱温度は、上記接着強度の測定において、各加熱温度での接着強度のうち、接着強度が最も高かったときの加熱温度とした。
【0319】
きれいに断面が観察できるように、ガラス基板端面からはみ出した接着シートの部分を、トリミング刃でガラス基板端部に沿ってカットした。カットした断面を垂直に観察できるよう固定し、光学顕微鏡(キーエンス社製、デジタル顕微鏡VHX-2000)にて、気泡を観察した。そして、各硬化接着層について、4mm角の視野において、長さが硬化接着層(発泡体層)の厚さ-6μmの値以上である気泡の数を数えた。気泡の数は、無作為に選んだ3箇所の気泡の数の平均値とした。
【0320】
【0321】
【0322】
実施例1~5では、発泡性接着シートの第一接着層および第二接着層をそれぞれ発泡硬化させて第一硬化接着層および第二硬化接着層としたとき、第一硬化接着層および第二硬化接着層において、所定長さ当たりの所定の気泡の数が7個未満、特に3個以下であり、接着性が良好であった。これに対し、比較例1~3では、発泡性接着シートの第一接着層および第二接着層をそれぞれ発泡硬化させて第一硬化接着層および第二硬化接着層としたとき、第一硬化接着層および第二硬化接着層において、所定長さ当たりの所定の気泡の数が多く、接着性に劣っていた。
【0323】
本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
[1]第一部材と、第二部材と、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材とを有する物品であって、
上記接着部材が、少なくとも硬化接着層を有し、
上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、物品。
[2]第一部材と、第二部材と、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材とを有する物品であって、
上記接着部材が、少なくとも硬化接着層を有し、
上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層であり、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、物品。
[3]上記接着部材が、第一硬化接着層と第二硬化接着層とを有し、
上記第一硬化接着層および上記第二硬化接着層の少なくとも一方が、上記発泡体層である、[1]または[2]に記載の物品。
[4]上記第一硬化接着層および上記第二硬化接着層が、上記発泡体層である、[3]に記載の物品。
[5]上記硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、上記硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有し、上記接着剤組成物中の上記常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が、上記接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下である、[1]から[4]までのいずれかに記載の物品。
[6]上記接着剤組成物中の上記発泡剤の含有量が、上記接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、13質量部以上30質量部以下である、[1]から[5]までのいずれかに記載の物品。
[7]上記発泡剤の最大発泡温度が、175℃以上220℃以下である、[1]から[6]までのいずれかに記載の物品。
[8]少なくとも接着層を有する発泡性接着シートを用いる物品の製造方法であって、
接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
第一部材および第二部材の間に、上記発泡性接着シートを配置する配置工程と、
上記発泡性接着シートの上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、
を有し、上記接着工程における発泡硬化条件を、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する、物品の製造方法。
[9]少なくとも接着層を有する発泡性接着シートを用いる物品の製造方法であって、
接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
第一部材および上記第二部材の間に、上記発泡性接着シートを配置する配置工程と、
上記発泡性接着シートの上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層とし、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、
を有し、上記接着工程における発泡硬化条件を、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満となるように設定する、物品の製造方法。
[10]上記発泡性接着シートが、第一接着層と第二接着層とを有し、
上記第一接着層および上記第二接着層の少なくとも一方が、上記発泡剤含有接着層である、[8]または[9]に記載の物品の製造方法。
[11]上記接着工程における加熱温度が、上記発泡剤の最大発泡温度±20℃以内である、[8]から[10]までのいずれかに記載の物品の製造方法。
[12]上記硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、上記硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有し、上記接着層中の上記常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が、上記接着層中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下である、[8]から[11]までのいずれかに記載の物品の製造方法。
{13}上記接着層中の上記発泡剤の含有量が、上記接着層中の樹脂成分100質量部に対して、13質量部以上30質量部以下である、[8]から[12]までのいずれかに記載の物品の製造方法。
[14]上記発泡剤の最大発泡温度が、175℃以上220℃以下である、[8]から[13]までのいずれかに記載の物品の製造方法。
[15]少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、
接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
上記発泡性接着シートを上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、発泡性接着シート。
[16]少なくとも接着層を有する発泡性接着シートであって、
接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する発泡剤含有接着層であり、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
上記発泡性接着シートを上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記発泡剤含有接着層を発泡硬化させて発泡体層としたとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、発泡性接着シート。
[17]第一接着層と第二接着層とを有し、
上記第一接着層および上記第二接着層の少なくとも一方が、上記発泡剤含有接着層である、[15]または[16]に記載の発泡性接着シート。
[18]上記第一接着層および上記第二接着層が、上記発泡剤含有接着層である、[17]に記載の発泡性接着シート。
[19]上記第一接着層のタックが、0gf以上、10gf未満であり、上記第二接着層のタックが、10gf以上、400gf以下である、[17]または[18]に記載の発泡性接着シート。
[20]上記硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、上記硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有し、上記接着層中の上記常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が、上記接着層中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下である、[15]から[19]までのいずれかに記載の発泡性接着シート。
[21]上記接着層中の上記発泡剤の含有量が、上記接着層中の樹脂成分100質量部に対して、13質量部以上30質量部以下である、[15]から[20]までのいずれかに記載の発泡性接着シート。
[22]上記発泡剤の最大発泡温度が、175℃以上220℃以下である、[15]から[21]までのいずれかに記載の発泡性接着シート。
[23]硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
支持体の一方の面に上記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、上記接着剤組成物の塗膜を上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、接着剤組成物。
[24]硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物であって、
上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
支持体の一方の面に上記接着剤組成物を45μmの厚さで塗布し、上記接着剤組成物の塗膜を上記発泡剤の最大発泡温度±20℃で15分間加熱することにより、上記塗膜を発泡硬化させて発泡体層を形成したとき、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが100μm以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、接着剤組成物。
[25]上記硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であり、上記硬化性の接着剤が常温で液体のエポキシ樹脂を含有し、上記接着剤組成物中の上記常温で液体のエポキシ樹脂の含有量が、上記接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下である、[23]または[24]に記載の接着剤組成物。
[26]上記接着剤組成物中の上記発泡剤の含有量が、上記接着剤組成物中の樹脂成分100質量部に対して、13質量部以上30質量部以下である、[23]から[25]までのいずれかに記載の接着剤組成物。
[27]上記発泡剤の最大発泡温度が、175℃以上220℃以下である、[23]から[26]までのいずれかに記載の接着剤組成物。
【符号の説明】
【0324】
1 … 接着層
1a … 第一接着層
1b … 第二接着層
5、5a、5b、15、15a、15b … 発泡体層
11 … 硬化接着層
11a … 第一硬化接着層
11b … 第二硬化接着層
12 … 基材
13a … 第一中間層
13b … 第二中間層
10 … 発泡性接着シート
20a … 第一部材
20b … 第二部材
30 … 接着部材
100 … 物品
【要約】 (修正有)
【課題】接着性に優れる物品、ならびに、接着性を向上させることが可能な物品の製造方法、発泡性接着シートおよび接着剤組成物を提供する。
【解決手段】本開示においては、第一部材20aと、第二部材20bと、上記第一部材および上記第二部材との間に配置された接着部材30とを有する物品であって、上記接着部材が、少なくとも硬化接着層11を有し、上記硬化接着層が、硬化性の接着剤および発泡剤を含有する接着剤組成物の発泡硬化物を含有する発泡体層15であり、上記硬化性の接着剤が、熱硬化性の接着剤であり、上記発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡体層の厚さ方向に平行な断面において、上記発泡体層の厚さ方向の長さが上記発泡体層の厚さ-6μmの値以上である気泡の数が、上記発泡体層の厚さ方向に垂直な方向に4mmの長さ当たり7個未満である、物品100を提供する。
【選択図】
図1