(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】スイッチ装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20241029BHJP
H01H 19/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01H13/14 Z
H01H19/02 B
(21)【出願番号】P 2023122939
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022145348
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 先勝
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055935(JP,A)
【文献】実開昭54-045377(JP,U)
【文献】実開昭59-028932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/00 - 7/16
H01H 13/00 - 13/88
H01H 19/00 - 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、
前記ケース部材に設けられて第1方向側から押圧操作可能なボタンと、
前記ケース部材内の空間内に設けられ、前記ボタンの押圧操作により軸方向に沿って前記ボタンと共に移動する軸と、
を備え、
前記空間内において、前記ケース部材側と前記軸側とのいずれか一方に磁石が固定されるとともに、いずれか他方に磁性体が固定され、
前記磁石と前記磁性体は、第2状態よりも前記ボタンが前記ケース部材から前記第1方向側に突出している第1状態において前記軸方向に沿った磁力により互いに吸引
し、
前記ボタンの押圧操作を繰り返し行うことによって、前記第1状態と、前記第1状態から前記ボタンが押し込まれ、前記磁石と前記磁性体とが互いに離間された前記第2状態とを、交互に切り替える保持機構をさらに備える、
スイッチ装置。
【請求項2】
ケース部材と、
前記ケース部材に設けられて第1方向側から押圧操作可能なボタンと、
前記ケース部材内の空間内に設けられ、前記ボタンの押圧操作により軸方向に沿って前記ボタンと共に移動する軸と、を備え、
前記空間内において、前記ケース部材側と前記軸側とのいずれか一方に磁石が固定されるとともに、いずれか他方に磁性体が固定され、
前記磁石及び前記磁性体のいずれか他方は、前記軸の軸周りのうち偏心した位置に設けられ、
前記磁石と前記磁性体は、第2状態よりも前記ボタンが前記ケース部材から前記第1方向側に突出している第1状態において前記軸方向に沿った磁力により互いに吸引する、
スイッチ装置。
【請求項3】
ケース部材と、
前記ケース部材に設けられて第1方向側から押圧操作可能なボタンと、
前記ケース部材内の空間内に設けられ、前記ボタンの押圧操作により軸方向に沿って前記ボタンと共に移動する軸と、を備え、
前記空間内において、前記ケース部材側と前記軸側とのいずれか一方に磁石が固定されるとともに、いずれか他方に磁性体が固定され、
前記ボタンは、前記軸の軸周りに回転可能とされ、
前記磁石は、前記ボタンの回転トルクに応じて磁石強度が調整され、
前記磁石と前記磁性体は、第2状態よりも前記ボタンが前記ケース部材から前記第1方向側に突出している第1状態において前記軸方向に沿った磁力により互いに吸引する、
スイッチ装置。
【請求項4】
前記磁石及び前記磁性体のいずれか他方は、前記軸の軸周りのうち偏心した位置に設けられている、請求項1
又は3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記磁石及び前記磁性体のいずれか他方は、前記軸の軸周りに複数設けられている、請求項1
~3のいずれか1項に記載に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記磁石及び前記磁性体のいずれか他方は、前記軸の軸周りから離間した位置に設けられている、請求項1
~3のいずれか1項に記載に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記磁石及び前記磁性体は、上面視した場合、いずれも前記ボタンと重なる位置に配置されている、請求項1
~3のいずれか1項に記載に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記磁石と前記磁性体との間に緩衝部材が設けられ、
前記磁石と前記磁性体は、前記第1状態において前記緩衝部材を介して吸引しようとする、
請求項1
~3のいずれか1項に記載に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記ボタンは、前記軸の軸周りに回転可能とされ、
前記磁石は、前記ボタンの回転トルクに応じて磁石強度が調整されている、
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項10】
前記磁石及び前記磁性体のいずれか他方は、前記軸の軸周りのうち偏心した位置に設けられている、請求項9に記載のスイッチ装置。
【請求項11】
前記磁石及び前記磁性体のいずれか一方は、前記軸の軸周りに環状に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載に記載のスイッチ装置。
【請求項12】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のスイッチ装置と、
前記
ボタンへの押圧操作によって電気的に制御される電気回路と、
を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子楽器等の電子機器において、押圧部材の押圧操作によりオンオフが切り替えられるスイッチ装置を備えるものが提案されている。この種のスイッチ装置において、オン状態又はオフ状態のいずれか一方の状態では押圧部材が突出して保持され、オン状態又はオフ状態のいずれか他方の状態では押圧部材が引っ込んで保持される、いわゆるオルタネイト動作を行うものが知られている。例えば特許文献1には、確認ボタン、静止バネ、電磁石、及び永久磁石を有する電源状態確認装置が開示されている。この電源状態確認装置では、オン状態のときに電磁石と永久磁石が磁力により反発して確認ボタンが機器表面から突出した状態で保持され、オフ状態のときに確認ボタンが静止バネに付勢されて機器表面から引っ込んだ状態で保持される。このため、確認ボタンを触るだけで電源のオンオフを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるようなスイッチ装置では、押圧部材の押圧操作に伴い、押圧部材に接続される軸部材のガタつきやオルタネイト動作を行うための機構に設けられるギヤ部材のバックラッシに起因するガタつきが発生することがある。一方で、このようなガタつきを抑制するために軸部材やギヤ部材を所定の方向から加圧すると、加圧による摩擦力により押圧部材が滑らかに移動し難くなり、押圧部材の突出や引っ込みを好適に実現することが難しい。このため、スイッチ装置の動作品質を高めることが困難となる。
【0005】
本発明は、動作品質を高めることが可能なスイッチ装置及びそのようなスイッチ装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスイッチ装置は、ケース部材と、前記ケース部材に設けられて第1方向側から押圧操作可能なボタンと、前記ケース部材内の空間内に設けられ、前記ボタンの押圧操作により軸方向に沿って前記ボタンと共に移動する軸と、を備え、前記空間内において、前記ケース部材側と前記軸側とのいずれか一方に磁石が固定されるとともに、いずれか他方に磁性体が固定され、前記磁石と前記磁性体は、第2状態よりも前記ボタンが前記ケース部材から前記第1方向側に突出している第1状態において前記軸方向に沿った磁力により互いに吸引し、前記ボタンの押圧操作を繰り返し行うことによって、前記第1状態と、前記第1状態から前記ボタンが押し込まれ、前記磁石と前記磁性体とが互いに離間された前記第2状態とを、交互に切り替える保持機構をさらに備える。
【0007】
本発明の電子楽器は、上記のスイッチ装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動作品質を高めることが可能なスイッチ装置及びそのようなスイッチ装置を備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器の全体斜視図である。
【
図2】実施形態に係るボリューム摘みを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】実施形態に係るボリューム摘みを斜め側方から見た斜視図である。
【
図4】実施形態に係るボリューム摘みのオフ状態における縦断面図である。
【
図5】実施形態に係るボリューム摘みのオン状態における縦断面図である。
【
図6】実施形態に係るボリューム摘みを上方から見た図である。
【
図7】実施形態に係るボリューム摘みの押圧部、第1軸部、及びケース部のみを示した斜視図であって、(a)はオフ状態の斜視図であり、(b)はオン状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に示す電子鍵盤楽器(電子楽器等の電子機器)1は、白鍵と黒鍵といった複数の鍵を有する鍵盤部10、及びケース20を備えている。ケース20の内部には、図示しない制御基板等が収納される。なお、以下では、電子鍵盤楽器1の複数の鍵の配列方向を左右方向(
図1の左ケース26側を左方向とする)とし、各鍵の前後方向を前後方向(
図1の操作パネル部6に対して鍵盤部10が設けられている側を前方向とする)とし、電子鍵盤楽器1の上下方向を上下方向(軸方向)(
図1の上ケース22の上面側を上方向(第1方向)とする)として説明する。
【0011】
ケース20は、上方から見て、左右方向を鍵盤全体の長手方向とする横長略矩形状であり、上ケース22、下ケース24、左ケース26、及び右ケース28を有している。少なくとも上ケース22は、例えば白色系又は黄色系で、合成樹脂によって形成されている。例えば白色系には、アイボリー色、ベージュ色、鳥の子色、胡粉色、乳白色、生成り色、スノーホワイト色(青白色)等があり、ケース20は、デザインに応じた色が選択されている。上ケース22の上面は、可視光に対して透過性を有するアクリル樹脂を含む上面パネル20aとされている。
【0012】
上ケース22の上面には、電子鍵盤楽器1の電源をオンオフするための電源ボタン2、液晶表示部4、及び点灯領域やタッチスイッチ等が配置された操作パネル部6が設けられている。また、電源ボタン2と操作パネル部6の間には、楽音のボリュームを制御するためのボリューム摘み(スイッチ装置)30が設けられている。左ケース26の上面には、楽音にピッチベンドを付与して制御するためのピッチベンダー26a、各種設定用の設定ボタン26b等が設けられている。左ケース26の前面には、イヤホンジャック26cが設けられている。電子鍵盤楽器1は、プロセッサを備え、電源がオンされて起動すると、プロセッサは、操作パネル部6を点灯させるよう制御する。
【0013】
ボリューム摘み30は、いわゆるオルタネイト動作が行われる押圧スイッチであり、押圧部(ボタン)31を有している(
図2及び
図3参照)。ボリューム摘み30は、ユーザの押圧部31への押圧操作に応じて、押圧部31の位置状態にしたがって決定される上下のいずれかの方向に押圧部31を移動することが可能である。具体的には、ボリューム摘み30は、初期状態では、押圧部31の上面(以下、「押圧面31a」という。)が上面パネル20aよりも若干下側に位置した状態(
図4に示す状態。以下、「オフ状態(第2状態)」という。)で保持され、押圧面31aを下方に押圧することにより押圧面31aが押し戻されて上面パネル20aより上方に突出した状態(
図5に示す状態。以下、「オン状態(第1状態)」という。)で保持される。電子鍵盤楽器1では、ボリューム摘み30がオン状態のときに押圧部31を摘んで回転させることにより、楽音のボリュームを制御することができる。なお、ここでいう押圧とは、必ずしも下方向へ押すことに限定されず、押圧部31を押すことができる方向であって、ボリューム摘み30の設置向きに応じて横方向等であってもよい。
【0014】
図2~
図5に示すように、ボリューム摘み30は、押圧部31に加えて、押圧部31が収納される収納部(収納部材)32、押圧部31の下側に接続された軸状の第1軸部(軸)33、第1軸部33の下側に接続された軸状の第2軸部34、第1軸部33と第2軸部34とを接続する接続部35、接続部35を上下移動可能に収容するケース部(ケース部材)36、ケース部36を支持する支持プレート37、及びオルタネイト動作を行うための機構(以下、「オルタネイト機構」という。)を構成するギヤやカム、バネ部材等が内蔵された機構部(保持機構)38を有している。ボリューム摘み30は、上ケース22の内部に取り付けられており、図示しない配線を介してケース20内の制御基板と接続されている。
【0015】
押圧部31は、略円柱状をなしており、その外周面を手で摘めるような大きさとされている。押圧部31は、その周方向に回転可能とされている。換言すれば、押圧部31は、第1軸部33の軸周りに回転可能とされている。収納部32は、上方が開口した有底の略円筒状をなしており、押圧部31の外周を囲むように設けられている。収納部32の内側には、押圧部31が収納される収納空間S1が設けられている。収納部32の上方の開口は収納開口部32aとされる。収納開口部32aの開口面は、上面パネル20aと略同一面上に位置するように設けられている(
図4参照)。収納部32の下部には、上下方向に貫通している第1貫通孔32bが設けられており、第1貫通孔32b内には、第1軸部33の一部が収容されている。収納部32は、ケース部36の上側部分にネジ止めにより接続されている。
【0016】
ケース部36は、略円筒状をなしており、その内部に移動空間(空間)S2が設けられている。移動空間S2の左側は開放されており、第1開口部36aとされている。また、移動空間S2の右側部分の一部には開口が設けられており、第2開口部36bとされている。第1軸部33は、軸方向が上下方向と一致するように延びており、その上端部が押圧部31にネジ止めにより接続されている。第1軸部33は、押圧部31の中心位置から下方に延びて第1貫通孔32bを貫通しており、その下側部分が移動空間S2内に露出している。第1軸部33と第1貫通孔32bの間には、第1貫通孔32bに取り付けられて第1軸部33を上下方向に摺動可能に軸受けする略円筒状の第1軸受部材39aが設けられている。第1軸部33は、その下端部側に上方向に延びた欠損部が設けられ、この欠損部によって形成された、前後方向及び左右方向に平坦な第2下面33bを有している。
【0017】
支持プレート37は、前後方向及び左右方向に広がる板状部材とされ、ケース部36の下側部分にネジ止めされて接続されることによりケース部36を支持している。支持プレート37には、上下方向に貫通している円形の貫通孔が設けられるとともに、貫通孔の周縁において上方向に突出した円筒状の突出部37bが設けられている。突出部37bの内壁には、第2貫通孔37aが設けられており、上下方向に延びた第2軸部34が第2貫通孔37a内に挿入されている。第2軸部34は、軸方向が上下方向と一致するように延びており、その下端部がオルタネイト機構と接続されている。第2軸部34は、第2貫通孔37aを貫通しており、その上側部分が移動空間S2内に露出している。第2軸部34と第2貫通孔37aの間には、第2貫通孔37aに取り付けられて第2軸部34を上下方向に摺動可能に軸受けする略円筒状の第2軸受部材39bが設けられている。第2軸受部材39bは、その外周面にネジ溝が設けられており、このネジ溝に螺合されたナット部材Nにより支持プレート37に締結されている。
【0018】
接続部35は、略角柱状をなしており、移動空間S2内に設けられて第1軸部33と第2軸部34とを接続している。具体的には、第1軸部33の下端部が接続部35の上側部分に螺合された第1ネジ41により接続部35に接続されており、第2軸部34の上端部が接続部35の下側部分に螺合された第2ネジ42により接続部35に接続されている。これにより、第1軸部33と第2軸部34が同一軸上に位置するように接続部35を介して上下に接続されている。互いに接続された第1軸部33、第2軸部34、及び接続部35は、押圧部31への押圧操作に応じて、移動空間S2内を上下方向に移動自在である。
【0019】
機構部38は、縦長の略箱型状をなしており、内部に設けられたオルタネイト機構に第2軸部34が接続されることにより、第2軸部34に上下方向へのオルタネイト動作を付与する。このため、接続部35、接続部35を介して第2軸部34と接続された第1軸部33、及び第1軸部33と接続された押圧部31には、第2軸部34を介して上下方向へのオルタネイト動作が付与される。即ち、押圧部31、第1軸部33、第2軸部34、接続部35は、オルタネイト動作において同軸上を共に上下方向に移動する。機構部38の左側には、端子基板38aが設けられている。端子基板38aは、機構部38の左側から突出する複数の端子群38bを介して機構部38と接続されている。
【0020】
ここで、
図3~
図5に示すように、ケース部36の上側部分の左側の位置(換言すればケース部36の上側部分の偏心した位置)であって第1軸部33から離間した位置には、略円柱状の1つの永久磁石(磁石)M1が固定されている。永久磁石M1は、その柱軸方向が左右方向と一致するように縦向きに配置されている。永久磁石M1の下側部分は、移動空間S2内に露出しており、次述する鉄製あるいは鉄を含む板状の磁性体M2の板面と対向している。なお、永久磁石M1の磁石強度は限定されるものではなく、永久磁石M1が生じる磁場によってもたらされる、磁性体M2に対する吸引力に応じて適宜調整することができる。本実施形態では、第1軸部33の軸周りに回転可能とされる押圧部31の回転トルクに応じて永久磁石M1の磁石強度が調整されている。また、変形例として、ケース部36に複数の永久磁石M1が設けられていてもよい。
【0021】
一方、第1軸部33のうち移動空間S2内に位置する部分の軸周りには、強磁性体としての略円板状の磁性体M2が固定されている。第1軸部33の最下面としての第1下面33aと、第1下面33aより少し高い位置の第2下面33bとが設けられ、下から第1下面33aの外縁及び第2下面33bの外縁を見ると、第1軸部33の軸周りと同じ円形になっている。磁性体M2には、その略中央の位置であって、第1軸部33の第1下面33aに対応する位置に上下方向に貫通する孔が設けられている。磁性体M2は、その孔によって第1軸部33の第1下面33aの下側から挿入されており、磁性体M2の上面の一部が第2下面33bに当接するとともに孔を定義している磁性体M2の内壁が、第1軸部33における第1下面33aと第2下面33bとの間の内壁33cに当接している。この状態で、磁性体M2は、上下方向を第1軸部33の第2下面33b及び接続部35の上端部35aで挟まれることによって固定されている。
【0022】
磁性体M2は、押圧部31のオルタネイト動作に伴って、移動空間S2内を接続部35と共に上下方向に移動する。磁性体M2の上面には、永久磁石M1と磁性体M2とが強い力で衝突し合っても永久磁石M1や磁性体M2が損傷しないよう環状の緩衝シート(緩衝部材)50が貼り付けされている。緩衝シート50としては、例えばウレタン製やポリエチレン製の発泡シートが挙げられる。オフ状態では、永久磁石M1と磁性体M2の間は、両者の間に磁力による吸引力が働かないような十分なクリアランスCL1が設けられた状態で離間している(
図4参照)。
【0023】
上述したように、ボリューム摘み30では、永久磁石M1と磁性体M2は、オフ状態よりも押圧部31がケース部36から上方に突出しているオン状態において、上下方向に沿った磁力により互いに吸引する。即ち、オン状態におけるケース部36(
図7においてハッチングを施した部分)と押圧部31との間の距離H1(
図7(b)参照))は、オフ状態におけるケース部36と押圧部31との間の距離H2(
図7(a)参照)より大きく、押圧部31は、オフ状態よりも両距離の差(H1-H2)の分だけケース部36から上方に突出している。
【0024】
また、
図6は、電子鍵盤楽器1の上方から第1軸部33の軸方向に沿ってボリューム摘み30を見た透過図である。
図6に示すように、上面が円形の押圧部31に対して円の中心の位置に重なるように第1軸部33が配置されている。そして、磁性体M2は、押圧部31及び第1軸部33に対して同心円状に位置するように設けられ、磁性体M2の外縁は、押圧部31の外縁の内側であり、かつ第1軸部33の軸周りの外縁の外側に位置している。永久磁石M1は、第1軸部33の軸周りの全周に亘って設けられているわけではなく、上面視において略矩形の形状を有している。
【0025】
磁性体M2は、電子鍵盤楽器1内で移動することなく固定されている永久磁石M1に対して、どのように回転したとしても、上方から見て常に永久磁石M1と重なるように、前後方向及び左右方向に沿った面方向において永久磁石M1よりも大きい面積を有している。永久磁石M1及び磁性体M2は上面視において押圧部31の外縁より内側に設けられているため、永久磁石M1と磁性体M2との間の吸引機構を上面視において押圧部31の外側に設ける必要がなく、ボリューム摘み30をコンパクトな構造にすることができる。
【0026】
次に、
図4及び
図5を参照して、ボリューム摘み30の動作について説明する。ボリューム摘み30では、オルタネイト機構により、オフ状態において、押圧部31が収納開口部32aの開口面よりも下方に押し込まれ、押圧部31と収納開口部32aの開口底面との間にわずかなクリアランスCL2が設けられた状態で押圧部31が保持される(
図4参照)。オフ状態では、接続部35が移動空間S2内の下側部分に位置する。オフ状態において押圧部31をクリアランスCL2の分だけ押圧操作すると、オルタネイト機構により、接続部35が移動空間S2内を上方に移動すると共に押圧部31が上方に押し戻され、オン状態とされる。
【0027】
ボリューム摘み30では、このように押圧部31が上方に押し戻されると(オフ状態からオン状態に移行すると)、接続部35が移動空間S2内を上方に移動するのに伴って永久磁石M1と磁性体M2が互いに近づいて、永久磁石M1と磁性体M2との間に、第1軸部33の軸方向又は第1軸部33の移動方向に沿った磁界の向きが生じる磁力による吸引力が働く。これにより、磁性体M2及び磁性体M2に連なる接続部35、第1軸部33、第2軸部34の上方への移動が加速される。接続部35が移動空間S2内の上側部分に到達すると、磁性体M2が永久磁石M1に吸引されてオン状態とされる。このとき、磁性体M2が緩衝シート50を介しているので、磁性体M2が緩衝シート50を介して永久磁石M1に当接される際の衝撃が軽減される。
【0028】
オン状態では、オルタネイト機構により、押圧面31aが上面パネル20aより上方に突出した状態で保持され(
図5参照)、磁性体M2及び永久磁石M1がお互いを引き付けあい、離れ難くした状態になっている。磁性体M2は第1軸部33の軸周りに環状に設けられており、
図5の状態において、突出した押圧部31へのユーザの回転操作に伴い、磁性体M2が回転する。この場合、磁性体M2の上面側には、永久磁石M1が位置していることで、常に永久磁石M1が磁性体M2を吸引しようとしているので、磁性体M2が永久磁石M1に吸引された状態で永久磁石M1が磁性体M2上(緩衝シート50上)を滑りながら磁性体M2、第1軸部33、及び押圧部31が回転する。
【0029】
また、永久磁石M1は、磁性体M2の全周域に亘って重なるほど大きくないため、磁性体M2及び磁性体M2が固定されている押圧部31は、永久磁石M1によって過度の吸引に晒されているわけではない。このため、オン状態において突出した押圧部31を摘んでガタつきを抑制しながらスムーズに回転させることができ、楽音のボリュームを制御することができる。オン状態では、接続部35が移動空間S2内の上側部分に位置する。オン状態において押圧部31を上面パネル20aからの突出量の分だけ押圧操作すると、接続部35が移動空間S2内を下方へ移動し、押圧部31が収納開口部32aの開口底面と干渉する。そして、オルタネイト機構により、押圧部31が上方にわずかに押し戻され、オフ状態とされる。
【0030】
ボリューム摘み30では、このように上方に突出した押圧部31が押圧操作されると(オン状態からオフ状態に移行すると)、永久磁石M1に吸引された磁性体M2が永久磁石M1から離間し、磁性体M2が接続部35と共に移動空間S2内を下方に移動する。このため、オン状態からの押圧操作に際し、磁力に抗って磁性体M2を永久磁石M1から離間させるための力が必要となり、離間させる瞬間に抵抗が生じる。磁性体M2が永久磁石M1から離間され、接続部35が移動空間S2内の下側部分に到達してわずかに押し戻されると、永久磁石M1と磁性体M2の間に十分なクリアランスCL1が設けられたオフ状態とされる。
【0031】
以上説明したように本実施形態に係るボリューム摘み30は、ケース部36と、ケース部36に設けられて押圧操作可能な押圧部31と、ケース部36内の移動空間S2内に設けられ、押圧部31の押圧操作により上下方向に沿って押圧部31と共に移動する第1軸部33と、を備えている。そして、移動空間S2内において、ケース部36側と第1軸部33側とのいずれか一方に永久磁石M1が固定されるとともに、いずれか他方に磁性体M2が固定され、永久磁石M1と磁性体M2は、オフ状態よりも押圧部31がケース部36から上方側に突出しているオン状態において上下方向に沿った磁力により互いに吸引する。具体的には、第1軸部33が移動することにより、オフ状態において離間し、オフ状態からオン状態への切り替え時並びにオン状態において磁力により磁性体M2を吸引することによって互いに離れ難くなろうとする、あるいは離れ難くなる。
【0032】
上記のような構成とされたボリューム摘み30では、オン状態において第1軸部33に設けられた磁性体M2と、ケース部36に設けられた永久磁石M1とが互いに離れ難くなるよう吸引することにより、第1軸部33のケース部36に対する位置ずれが抑制され、第1軸部33、及び第1軸部33と接続された押圧部31のガタつきが抑制される。このようにオン状態においてのみ永久磁石M1と磁性体M2の間が吸引するため、永久磁石M1及び磁性体M2がボリューム摘み30のオルタネイト動作に影響を及ぼすことがない。また、オフ状態からオン状態に移行する際、第1軸部33について上下方向の位置ずれがある場合でも、磁性体M2が永久磁石M1と互いに吸引されることにより、第1軸部33が上方に十分に移動せずに押圧部31が突出不良となることを防止することができる。このため、押圧部31の突出や引っ込み(押し込み)を好適に実現することができ、ボリューム摘み30の動作品質を高めることができる。
【0033】
さらに、上記のボリューム摘み30では、オン状態から押圧部を押圧した場合、押圧部31及び第1軸部33が下方に移動して磁性体M2が永久磁石M1から離間することにより押圧部31に抵抗が生じる。このため、オルタネイト動作が行われる通常のスイッチ装置に比してオン状態から押圧部31を押圧した際のクリック感を高めることができる。
【0034】
また、ボリューム摘み30では、磁性体M2が第1軸部33の軸周りに環状に設けられている。この構成によれば、オン状態で第1軸部33に接続される押圧部31を回転させた場合、磁性体M2が永久磁石M1に吸引された状態で永久磁石M1が磁性体M2上を滑る。このため、オン状態において、永久磁石M1と磁性体M2との間の吸引が維持されることで押圧部31のガタつきを抑制しながら押圧部31を回転させることができ、ボリューム摘み30の動作品質を一層高めることができる。
【0035】
また、ボリューム摘み30では、永久磁石M1が第1軸部33の軸周りのうち偏心した位置に設けられている。このため、オン状態において、押圧部31の押圧面31aのうち永久磁石M1と上下方向に重なる位置では押圧面31aを押圧した際に抵抗を感じ易く、押圧面31aのうち永久磁石M1と上下方向に重ならない位置では押圧面31aを押圧した際に抵抗を感じ難い。このように、押圧面31aの位置に応じて押圧面31aを押圧した際に感じる抵抗の度合いを変えることができる。
【0036】
また、ボリューム摘み30では、変形例として永久磁石M1が第1軸部33の軸周りに複数設けられてもよい。例えば、複数の永久磁石M1が、ケース部36の上側部分であって第1軸部33の軸周りに所定の間隔を空けて設けられてもよい。この場合、複数の永久磁石M1が磁性体M2の板面上の略全面に亘って吸引されるため、永久磁石M1と磁性体M2の間の吸引力を高めることができる。また、オン状態から押圧面31aを押圧した際に感じる抵抗を、押圧面31aの位置に応じることなく一様とすることができる。
【0037】
また、ボリューム摘み30では、永久磁石M1が第1軸部33の軸周りから離間した位置に設けられている。仮にボリューム摘み30に上記の永久磁石M1及び磁性体M2が設けられていない場合、オン状態で第1軸部33が上方向に突出した長さが長いほど、バックラッシに起因する押圧部31のガタつきが大きくなる。上記のように永久磁石M1を第1軸部33の軸周りからある程度の距離以上離間した位置に設けることにより、永久磁石M1(ケース部36)と磁性体M2(第1軸部33)が吸引することによるガタつきの抑制効果を高めることができる。
【0038】
また、ボリューム摘み30では、永久磁石M1と磁性体M2との間(磁性体M2の上面)に緩衝シート50が設けられ、永久磁石M1と磁性体M2は、オン状態において緩衝シート50を介して吸引する。これにより、オフ状態からオン状態に移行する場合において磁性体M2が永久磁石M1に吸引される際の衝撃を軽減することができ、オン状態からオフ状態に移行する場合において磁性体M2が永久磁石M1から離間する際に生じる抵抗を軽減することができる。
【0039】
また、ボリューム摘み30では、押圧部31は、第1軸部33の軸周りに回転可能とされ、永久磁石M1は、押圧部31の回転トルクに応じて磁石強度が調整される。これにより、オン状態において押圧部31を摘んで回転させる際に受ける感触を適切なものとすることができ、ボリューム摘み30の動作品質を一層高めることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1は、ボリューム摘み30を備えている。このため、ガタつき等が抑制されて動作品質が高められたボリューム摘み30を押圧及び回転させることができる電子鍵盤楽器1を実現することができる。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば上記の実施形態では、ケース部に永久磁石が設けられ、第1軸部に磁性体が設けられた構成を例示したが、ケース部に磁性体が設けられ、第1軸部に永久磁石が設けられた構成であってもよい。また、オフ状態かオン状態への切り替え時並びにオン状態を検知する機構を設け、永久磁石の代わりに、上記切り替え時並びにオン状態に磁力を発生する電磁石が設けられた構成であってもよい。この場合、上記切り替え時並びにオン状態に磁性体及び電磁石は互いに引き付けあうが、オフ状態では、磁力が発生していないので磁性体及び電磁石が互いに引き付けあうことはない。また上記の実施形態では、電子機器として電子鍵盤楽器を例示したが、これに限らずハードウェアスイッチを備えるものであれば、いかなる電子機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 電子鍵盤楽器 2 電源ボタン
4 液晶表示部 6 操作パネル部
10 鍵盤部 20 ケース
20a 上面パネル 22 上ケース
24 下ケース 26 左ケース
26a ピッチベンダー 26b 設定ボタン
26c イヤホンジャック 28 右ケース
30 ボリューム摘み 31 押圧部
31a 押圧面 32 収納部
32a 収納開口部 32b 第1貫通孔
33 第1軸部 33a 第1下面
33b 第2下面 33c 内壁
34 第2軸部 35 接続部
35a 上端部 36 ケース部
37 支持プレート 37a 第2貫通孔
37b 突出部 38 機構部
38a 端子基板 38b 端子群
39a 第1軸受部材 39b 第2軸受部材
41 第1ネジ 42 第2ネジ
50 緩衝シート
CL1,CL2 クリアランス M1 永久磁石
M2 磁性体 N ナット部材
S1 収納空間 S2 移動空間