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特許7578189特性平準化方法、および、特性平準化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】特性平準化方法、および、特性平準化装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20241029BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20241029BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M10/42 Z
H02J7/04 G
H02J7/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023514336
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2022000361
(87)【国際公開番号】W WO2022219858
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021067277
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳原 明日輝
(72)【発明者】
【氏名】堤 正臣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】竹村 洋
(72)【発明者】
【氏名】川原 史聖
(72)【発明者】
【氏名】深堀 奏子
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-044950(JP,A)
【文献】特開2017-054684(JP,A)
【文献】特開2017-147898(JP,A)
【文献】特開2020-181667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42
H02J 7/04
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中古二次電池にそれぞれ識別情報を付与するステップと、
前記複数の中古二次電池の固有パラメータを計測するステップと、
前記複数の中古二次電池の固有パラメータと、前記中古二次電池の新品時のパラメータとから、前記複数の中古二次電池の劣化度を算出するステップと、
前記複数の中古二次電池の劣化度に適応する目標劣化度を決定するステップと、
前記複数の中古二次電池の劣化度が前記複数の中古二次電池に対して決められた前記目標劣化度になるように、前記複数の中古二次電池に対して固定された特定の周囲温度下であり、前記複数の中古二次電池毎に設定されたエージング電圧及びエージング時間を含むエージング条件を決定するステップと、
前記複数の中古二次電池毎のエージング条件によって、前記複数の中古二次電池をエージングするステップと、
を有する、特性平準化方法。
【請求項2】
前記エージング条件は、単位時間当たりの前記中古二次電池を劣化させる速度である劣化速度を、前記複数の中古二次電池毎に設定する、
請求項1に記載の特性平準化方法。
【請求項3】
前記目標劣化度は、前記複数の中古二次電池における最も劣化状態が進んだ中古二次電池の劣化度に設定する、
請求項1または請求項2に記載の特性平準化方法。
【請求項4】
前記劣化度に応じて、前記複数の中古二次電池を複数のグループに振り分けるステップを有し、
前記目標劣化度は、前記複数のグループ毎に設定する、
請求項1または請求項2に記載の特性平準化方法。
【請求項5】
前記目標劣化度は、前記複数のグループの各グループにおける最も劣化状態が進んだ中古二次電池の劣化度に設定する、
請求項4に記載の特性平準化方法。
【請求項6】
複数の中古二次電池にそれぞれ識別情報を付与する識別番号付与部と、
前記複数の中古二次電池の固有パラメータを計測するパラメータ計測部と、
前記複数の中古二次電池の固有パラメータと、前記中古二次電池の新品時のパラメータとから、前記複数の中古二次電池の劣化度を算出する劣化度算出部と、
前記複数の中古二次電池の劣化度に適応する目標劣化度を決定する目標劣化度決定部と、
前記複数の中古二次電池の劣化度が前記複数の中古二次電池に対して決められた前記目標劣化度になるように、前記複数の中古二次電池に対して固定された特定の周囲温度下であり、前記複数の中古二次電池毎に設定されたエージング電圧及びエージング時間を含むエージング条件を決定するエージング条件決定部と、
前記複数の中古二次電池毎のエージング条件によって、前記複数の中古二次電池をエージングするエージング処理部と、
を備える、特性平準化装置。
【請求項7】
前記複数の中古二次電池の劣化度に応じて、前記複数の中古二次電池を複数のグループに振り分けるグルーピング処理部を備え、
前記目標劣化度決定部は、
前記グループ毎に目標劣化度を決定する、
請求項6に記載の特性平準化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中古二次電池の特性を平準化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中古二次電池が組電池の再構成に適用可能か判定する技術、および、これを用いた組電池の再構成方法が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、中古二次電池の交流内部抵抗値を取得し、閾値と比較し、再構成品への適用を判定する。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、再構成品へ適用できれば、この中古二次電池を、組電池再構成品に用いる。特許文献1に記載の技術は、再構成品へ適用できなければ、この中古二次電池を、組電池再構成品に用いない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-222195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、適用可能と判定された複数の中古二次電池で組電池を再構成しても、この組電池を構成する複数の中古二次電池間で劣化状態がバラツキを有する。この場合、再構成した組電池では、劣化状態が最も進んだ中古二次電池に、組電池の性能が制限されてしまう。
【0007】
具体的には、劣化状態が最も進んだ中古二次電池が他の中古二次電池よりも酷使されてしまう。このため、再構成した組電池では、劣化状態が最も進んだ中古二次電池の劣化がより進行するという問題が生じる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、劣化状態をほぼ同じに揃えた複数の中古二次電池を用いて組電池を再構成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の特性平準化方法は、複数の中古二次電池にそれぞれ識別情報を付与するステップ、複数の中古二次電池の固有パラメータを計測するステップ、複数の中古二次電池の固有パラメータと中古二次電池の新品時のパラメータとから複数の中古二次電池の劣化度を算出するステップ、複数の中古二次電池の劣化度に適応する目標劣化度を決定するステップ、複数の中古二次電池の劣化度を目標劣化度にする複数の中古二次電池毎のエージング条件を決定するステップ、および、複数の中古二次電池毎のエージング条件によって、複数の中古二次電池をエージングするステップ、を有する。
【0010】
この方法では、複数の中古二次電池の劣化度が、目標劣化度に揃う。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、劣化状態をほぼ同じに揃えた複数の中古二次電池を用いて組電池を再構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係る特性平準化装置の構成を示すブロック図である。
図2図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)は、第1の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。
図3図3は、中古二次電池の劣化曲線の一例を示すグラフである。
図4図4は、第1の実施形態に係る特性平準化方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係る特性平準化装置の構成を示すブロック図である。
図6図6(A)、図6(B)、図6(C)は、第2の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る特性平準化方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る中古二次電池の特性平準化技術について、図を参照して説明する。
【0014】
(特性平準化装置10の構成)
図1は、第1の実施形態に係る特性平準化装置の構成を示すブロック図である。図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)は、第1の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。図3は、中古二次電池の劣化曲線の一例を示すグラフである。
【0015】
なお、第1の実施形態では6本の中古二次電池を挿入し、劣化度を揃えて6本の中古二次電池からなる組電池を再構成する態様を示す。挿入する中古二次電池の本数および組電池を構成する中古二次電池の本数はこれに限らない。挿入する中古二次電池の本数と組電池を構成する中古二次電池の本数とが同じであれば、他の本数であってもよい。
【0016】
図1に示すように、特性平準化装置10は、ID付与部11、パラメータ計測部12、劣化度算出部13、目標劣化度決定部14、エージング条件決定部15、および、エージング処理部16を備える。
【0017】
ID付与部11は、挿入された複数の中古二次電池901-906(中古二次電池901、中古二次電池902、中古二次電池903、中古二次電池904、中古二次電池905、中古二次電池906)に対して、固体識別情報であるIDを付与する。
【0018】
例えば、図2(A)に示すように、ID付与部11は、中古二次電池901にID1を付与し、中古二次電池902にID2を付与し、中古二次電池903にID3を付与する。ID付与部11は、中古二次電池904にID4を付与し、中古二次電池905にID5を付与し、中古二次電池906にID6を付与する。
【0019】
例えば、複数の中古二次電池901-906は、ケースに配列して搬送される。そして、ケースにおける複数の中古二次電池901-906の収容部には、それぞれに対応して、ICタグ等のIDを記憶可能な素子が設置されている。これにより、特性平準化装置10は、この後の各機能部の処理において、複数の中古二次電池901-906とID1-ID6を紐付けた状態で搬送可能である。
【0020】
ID付与部11は、ID1-ID6がそれぞれ付与された複数の中古二次電池901-906を、パラメータ計測部12に送出する。ID付与部11が、本発明の「識別番号付与部」に対応する。
【0021】
パラメータ計測部12は、複数の中古二次電池901-906の固有パラメータを計測する。固有パラメータは、例えば、実効容量値、内部抵抗値、定電流での放電あるいは充電させた時の電圧の変化を記した充放電カーブ等である。
【0022】
このような固有パラメータは、例えば、複数の中古二次電池901-906の収容部に電極を配置することによって、計測可能である。なお、固有パラメータは、別途設置された固有パラメータの計測装置によって、計測してもよい。
【0023】
パラメータ計測部12は、固有パラメータを計測した複数の中古二次電池901-906を、劣化度算出部13に送出する。
【0024】
劣化度算出部13は、複数の中古二次電池901-906と同じ型の新品の二次電池の固有パラメータを記憶している。劣化度算出部13は、パラメータ計測部12で計測した複数の中古二次電池901-906の固有パラメータと新品の固有パラメータとを比較し、複数の中古二次電池901-906の劣化度を算出する。劣化度としては、例えば、SOHを用いる。
【0025】
劣化度算出部13は、算出した複数の中古二次電池901-906の劣化度を、ID1-ID6に紐付けして、目標劣化度決定部14に出力する。また、劣化度算出部13は、複数の中古二次電池901-906を、エージング処理部16に送出する。
【0026】
目標劣化度決定部14は、複数の中古二次電池901-906の劣化度に適応する目標劣化度DLを決定する。より具体的には、目標劣化度決定部14は、複数の中古二次電池901-906の劣化度から、最も低い劣化度を検出する。すなわち、目標劣化度決定部14は、劣化状態が最も進んだ中古二次電池の劣化度を検出する。図2(B)、図2(C)に示すように、目標劣化度決定部14は、最も低い劣化度を、目標劣化度DLに決定する。
【0027】
目標劣化度決定部14は、目標劣化度DLをエージング条件決定部15に出力する。また、目標劣化度決定部14は、複数の中古二次電池901-906の劣化度を、ID1-ID6に紐付けして、エージング条件決定部15に出力する。
【0028】
エージング条件決定部15は、複数の中古二次電池901-906の劣化度、目標劣化度DL、および、図3に示すような中古二次電池の劣化曲線を用いて、エージング条件を決定する。より具体的には、エージング条件決定部15は、複数の中古二次電池901-906のそれぞれに対して、劣化度と目標劣化度DLとの差を算出する。エージング条件決定部15は、劣化度と目標劣化度DLとの差と、劣化曲線とを用いて、エージング電圧、エージング温度およびエージング時間を設定する。
【0029】
劣化曲線は、劣化度の時間特性を表すものである。言い換えれば、劣化曲線は、単位時間当たりの中古二次電池の劣化度の変化量(劣化速度)を表すものである。そして、劣化曲線が表すように、劣化速度は、印加電圧(エージング電圧)、周囲温度(エージング温度)によって決まり、劣化量は、印加電圧、周囲温度、エージング時間によって決まる。
【0030】
したがって、エージング条件決定部15は、劣化曲線から劣化速度を算出し、劣化速度に基づいて、所望の劣化度まで進むようにエージング電圧、エージング温度およびエージング時間を決定する。
【0031】
この際、エージング条件決定部15は、エージング電圧、エージング温度およびエージング時間の少なくとも1つを固定して設定する。例えば、エージング条件決定部15は、エージング温度およびエージング時間を複数の中古二次電池901-906に対して固定し、エージング電圧を、複数の中古二次電池901-906のそれぞれで調整して設定する。このように、エージング温度およびエージング時間を固定することによって、1つのエージング炉で、複数の中古二次電池901-906を同じ時間でエージング処理を行えばよい。これにより、エージング処理を容易にできる。
【0032】
エージング条件決定部15は、複数の中古二次電池901-906毎のエージング条件をエージング処理部16に与える。
【0033】
エージング処理部16は、例えば、エージング炉である。エージング処理部16は、エージング条件決定部15から与えられたエージング条件にて、複数の中古二次電池901-906をエージングする。
【0034】
複数の中古二次電池901-906のそれぞれに対して、劣化度と目標劣化度DLに応じてエージング条件が決定されていることにより、エージング処理後の複数の中古二次電池901-906の劣化度は、目標劣化度DLで略同じになる。
【0035】
これにより、特性平準化装置10は、複数の中古二次電池の劣化状態をほぼ同じに揃えて送出できる。したがって、劣化状態をほぼ同じに揃えた複数の中古二次電池を用いて組電池を再構成できる。
【0036】
なお、本実施形態では、目標劣化度DLは、最も低い劣化度に合わせている。しかしながら、目標劣化度DLは、最も低い劣化度より低く設定してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、全ての中古二次電池901-906をエージング処理する態様を示した。しかしながら、目標劣化度DLと同じ劣化度の中古二次電池は、エージング処理しなくてもよい。
【0038】
(特性平準化方法)
図4は、第1の実施形態に係る特性平準化方法を示すフローチャートである。なお、図4の各処理の詳細な内容の説明は、上述の特性平準化装置10の構成の説明において行っており、以下で、追加説明が必要な箇所を除いて、詳細な説明を省略する。
【0039】
特性平準化装置10のID付与部11は、複数の中古二次電池901-906のそれぞれに、ID1-ID6を付与する(S11)。
【0040】
特性平準化装置10のパラメータ計測部12は、複数の中古二次電池901-906の固有パラメータを計測する(S12)。
【0041】
特性平準化装置10の劣化度算出部13は、複数の中古二次電池901-906の固有パラメータから、それぞれの劣化度を算出する(S13)。
【0042】
特性平準化装置10の目標劣化度決定部14は、複数の中古二次電池901-906の劣化度から、目標劣化度DLを決定する(S14)。
【0043】
特性平準化装置10のエージング条件決定部15は、複数の中古二次電池901-906の劣化度、目標劣化度DL、劣化曲線を用いて、複数の中古二次電池901-906毎のエージング条件を決定する(S15)。
【0044】
特性平準化装置10のエージング処理部16は、複数の中古二次電池901-906毎に決定されたエージング条件で、複数の中古二次電池901-906をエージング処理する(S16)。
【0045】
このような方法を用いることによって、複数の中古二次電池の劣化状態をほぼ同じに揃えることができる。したがって、劣化状態をほぼ同じに揃えた複数の中古二次電池を用いて組電池を再構成できる。
【0046】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る中古二次電池の特性平準化技術について、図を参照して説明する。第2の実施形態に係る中古二次電池の特性平準化技術は、第1の実施形態に係る中古二次電池の特性平準化技術に対して、複数の組電池を再構成可能な個数の中古二次電池を処理する点で異なる。例えば、本実施形態の例では-ID6本で1組の組電池を4組再構成可能な本数(24本)の中古二次電池を処理する場合を示す。なお、以下では、第1の実施形態の中古二次電池の特性平滑化技術と同様の処理をする箇所については、説明を簡略化または省略する。
【0047】
(特性平準化装置10Aの構成)
図5は、第2の実施形態に係る特性平準化装置の構成を示すブロック図である。図6(A)、図6(B)、図6(C)、図7図8図9は、第2の実施形態に係る特性平準化の概念を示す図である。
【0048】
図5に示すように、特性平準化装置10Aは、ID付与部11、パラメータ計測部12、劣化度算出部13、目標劣化度決定部14A、エージング条件決定部15A、エージング処理部16、および、グルーピング処理部17を備える。
【0049】
ID付与部11は、複数の中古二次電池901-924にID1-ID24を付与する(図6(A)参照)。パラメータ計測部12は、複数の中古二次電池901-924の固有パラメータを計測する。
【0050】
劣化度算出部13は、複数の中古二次電池901-924の劣化度を算出する(図6(B)参照)。劣化度算出部13は、複数の中古二次電池901-924をグルーピング処理部17に送出するとともに、複数の中古二次電池901-924の劣化度をIDに紐付けして、グルーピング処理部17に出力する。
【0051】
グルーピング処理部17は、劣化度に応じて、複数の中古二次電池901-924を複数のグループGRPA、GRPB、GRPC、GRPDに振り分ける(図6(C)参照)。より具体的には、グルーピング処理部17は、複数の中古二次電池901-924の劣化度を、高い順または低い順に並び替える。グルーピング処理部17は、組電池を再構成する個数毎に、劣化度をグループに振り分ける。
【0052】
例えば、本実施形態では、組電池は6本で再構成されるので、劣化度の高い順(劣化状態が進んでいない順)に、劣化度でいえば6ずつ、中古二次電池であれば6本ずつを、グループに振り分ける。なお、ここでの振り分けは、データ上の処理であり、中古二次電池901-924の配置を移動させる必要はない。
【0053】
図6(B)、図6(C)の場合であれば、グルーピング処理部17は、ID1、ID8、ID11、ID12、ID14、ID17の中古二次電池901、908、911、912、914、917を、最も劣化度が高いグループGRPAに振り分ける。グルーピング処理部17は、ID3、ID4、ID7、ID9、ID15、ID23の中古二次電池903、904、907、909、915、923を、二番目に劣化度が高いグループGRPBに振り分ける。グルーピング処理部17は、ID6、ID18、ID19、ID21、ID22、ID24の中古二次電池906、918、919、921、922、924を、三番目に劣化度が高いグループGRPCに振り分ける。グルーピング処理部17は、ID2、ID5、ID10、ID13、ID16、ID20の中古二次電池902、905、910、913、916、920を、最も劣化度が低いグループGRPDに振り分ける。
【0054】
グルーピング処理部17は、複数の中古二次電池901-924をエージング処理部16に送出する。
【0055】
グルーピング処理部17は、複数の中古二次電池901-924のID1-ID24と複数の中古二次電池901-924の劣化度とを、振り分けたグループGRPA、GRPB、GRPC、GRPDのグループ識別情報に紐付けして、目標劣化度決定部14Aに出力する。
【0056】
目標劣化度決定部14Aは、グループGRPA、GRPB、GRPC、GRPD毎に目標劣化度DLA、DLB、DLC、DLDを決定する。
【0057】
より具体的には、目標劣化度決定部14Aは、グループ内の複数の中古二次電池の劣化度から、最も低い劣化度を検出する。そして、目標劣化度決定部14は、最も低い劣化度を、そのグループの目標劣化度DLに決定する。
【0058】
例えば、図7(A)に示すように、目標劣化度決定部14Aは、ID1、ID8、ID11、ID12、ID14、ID17の中古二次電池901、908、911、912、914、917の各劣化度における最も低い劣化度を検出し、この最低の劣化度をグループGRPAの目標劣化度DLAに決定する。目標劣化度決定部14Aは、ID3、ID4、ID7、ID9、ID15、ID23の中古二次電池903、904、907、909、915、923の各劣化度における最も低い劣化度を検出し、この最低の劣化度をグループGRPBの目標劣化度DLBに決定する。目標劣化度決定部14Aは、ID6、ID18、ID19、ID21、ID22、ID24の中古二次電池906、918、919、921、922、924の各劣化度における最も低い劣化度を検出し、この最低の劣化度をグループGRPCの目標劣化度DLCに決定する。目標劣化度決定部14Aは、ID2、ID5、ID10、ID13、ID16、ID20の中古二次電池902、905、910、913、916、920の各劣化度における最も低い劣化度を検出し、この最低の劣化度をグループGRPDの目標劣化度DLDに決定する。
【0059】
目標劣化度決定部14Aは、複数の中古二次電池901-924のID1-ID24、複数の中古二次電池901-924の劣化度、グループ識別情報(グループGRPA、GRPB、GRPC、GRPD)、および、グループ毎の目標劣化度DLA、DLB、DLC、DLDを、エージング条件決定部15Aに出力する。
【0060】
エージング条件決定部15Aは、複数の中古二次電池901-924のID1-ID24、複数の中古二次電池901-924の劣化度、グループ識別情報(グループGRPA、GRPB、GRPC、GRPD)、および、グループ毎の目標劣化度DLA、DLB、DLC、DLDを用いて、複数の中古二次電池901-924のそれぞれに対するエージング条件を決定する。
【0061】
例えば、グループGRPAに属する複数の中古二次電池901、908、911、912、914、917について、エージング条件決定部15Aは、それぞれの劣化度とグループGRPAの目標劣化度DLAとを用いて、複数の中古二次電池901、908、911、912、914、917のそれぞれのエージング条件を決定する。なお、グループGRPB、GRPC、GRPDについても同様であり、説明は省略する。
【0062】
エージング条件決定部15Aは、複数の中古二次電池901-924のそれぞれに決定されたエージング条件を、ID1-ID24に紐付けして、エージング処理部16に与える。
【0063】
エージング処理部16は、エージング条件決定部15から与えられたエージング条件にて、複数の中古二次電池901-924をエージングする。これにより、図8に示すように、各グループの複数の中古二次電池の劣化度は、そのグループの目標劣化度とほぼ同じになる。例えば、グループGRPAの複数の中古二次電池901、908、911、912、914、917の劣化度は、グループGRPAの目標劣化度DLAとほぼ同じになる。同様に、複数の中古二次電池903、904、907、909、915、923の劣化度は、グループGRPBの目標劣化度DLBとほぼ同じになる。複数の中古二次電池906、918、919、921、922、924の劣化度は、グループGRPCの目標劣化度DLCとほぼ同じになる。複数の中古二次電池902、905、910、913、916、920の劣化度は、グループGRPDの目標劣化度DLDとほぼ同じになる。
【0064】
この後、グループ単位の複数の中古二次電池は、1つの組電池の再構成に用いられる。
【0065】
このような構成および処理によって、特性平準化装置10Aは、複数の組電池に対して、各組電池を再構成する複数の中古二次電池の劣化度を、組毎に劣化状態をほぼ同じに揃えることができる(図9参照)。
【0066】
また、この構成および処理によって、特性平準化装置10Aは、グループ毎に目標劣化度を決定するので、全ての中古二次電池を同じ劣化度にしなくてもよい。例えば、上述の例であれば、特性平準化装置10Aは、グループGRPAの複数の中古二次電池の劣化度を、最も高い劣化度のグループGRPDの目標劣化度に合わせなくてもよい。これにより、特性平準化装置10Aは、中古二次電池を、不必要に過剰に劣化させなくても、組電池の単位で劣化度を揃えて、再構成できる。
【0067】
なお、特性平準化装置10Aは、エージング処理部16の出口に、複数の中古二次電池901-924のグループ情報を表示する表示器を備えてもよい。例えば、特性平準化装置10Aは、複数の中古二次電池901-924が並ぶ画像に、それぞれのグループ識別情報を重畳して表示する。これにより、作業者は、複数の中古二次電池901-924が属するグループを容易に判別できる。
【0068】
また、特性平準化装置10Aは、エージング処理部16の後段に、グループ別搬出機構を備えてもよい。この場合、グループ別搬出機構は、グループ識別情報を参照し、複数の中古二次電池901-924を、グループ毎にピックアップして搬出する。これにより、作業者は、組電池への再構成を容易にできる。さらには、特性平準化装置10Aは、ここに組電池への再構成機構を備えていてもよい。
【0069】
(特性平準化方法)
図10は、第2の実施形態に係る特性平準化方法を示すフローチャートである。なお、図10の各処理の詳細な内容の説明は、上述の特性平準化装置10Aの構成の説明において行っており、以下で、追加説明が必要な箇所を除いて、詳細な説明を省略する。
【0070】
特性平準化装置10AのID付与部11は、複数の中古二次電池901-924のそれぞれに、ID1-ID24を付与する(S11)。
【0071】
特性平準化装置10Aのパラメータ計測部12は、複数の中古二次電池901-924の固有パラメータを計測する(S12)。
【0072】
特性平準化装置10の劣化度算出部13は、複数の中古二次電池901-924の固有パラメータから、それぞれの劣化度を算出する(S13)。
【0073】
特性平準化装置10Aのグルーピング処理部17は、劣化度に応じて、複数の中古二次電池901-924を、複数のグループGRPA、GRPB、GRPC、GRPDに振り分ける(S21)。
【0074】
特性平準化装置10Aの目標劣化度決定部14Aは、複数の中古二次電池901-924に対して、グループGRPA、GRPB、GRPC、GRPD毎に、目標劣化度DLA、DLB、DLC、DLDを決定する(S22)。
【0075】
特性平準化装置10Aのエージング条件決定部15Aは、複数の中古二次電池901-924の劣化度、グループGRPA、GRPB、GRPC、GRPD毎の目標劣化度DLA、DLB、DLC、DLD、劣化曲線を用いて、複数の中古二次電池901-924毎のエージング条件を決定する(S23)。
【0076】
特性平準化装置10Aのエージング処理部16は、複数の中古二次電池901-924毎に決定されたエージング条件で、複数の中古二次電池901-924をエージング処理する(S16)。
【0077】
このような方法を用いることによって、複数の組電池を構成する複数の中古二次電池の劣化状態を、組毎にほぼ同じに揃えることができる。したがって、劣化状態をほぼ同じに揃えた複数の中古二次電池を用いて、複数の組電池を再構成できる。
【符号の説明】
【0078】
10、10A:特性平準化装置
11:ID付与部
12:パラメータ計測部
13:劣化度算出部
14、14A:目標劣化度決定部
15、15A:エージング条件決定部
16:エージング処理部
17:グルーピング処理部
901-924:中古二次電池
DL、DLA、DLB、DLC、DLD:目標劣化度
GRPA、GRPB、GRPC、GRPD:グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10