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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】アンカー支持具および基礎の型枠セット
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241029BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/01 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023525177
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2021020714
(87)【国際公開番号】W WO2022254533
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】秋田 早智
(72)【発明者】
【氏名】市川 和希
(72)【発明者】
【氏名】長田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】松原 由幸
(72)【発明者】
【氏名】兼安 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英樹
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199946(JP,A)
【文献】実開昭54-128304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に設けられるアンカーを支持するアンカー支持具であって、
前記基礎の型枠内に配置される前記アンカーを支持する少なくとも1つの支持部を有しかつ前記型枠内において下面が下に向くように配置される支持板と、前記型枠の上端面に載せられかつ前記型枠に対して前記支持板を高さ方向に位置決めするスペーサと、前記支持板を前記型枠に固定する固定治具と、を備え、
前記支持板は、前記支持板の長手方向に直交する幅方向において第1端部と第2端部とを有し、
前記固定治具は、前記スペーサの上に前記支持板の前記第1端部または前記第2端部を載せることによって前記スペーサを介して前記支持板を前記型枠の前記上端面よりも上に配置した状態で前記支持板を支持する、
アンカー支持具。
【請求項2】
前記固定治具は、前記型枠の外側面に沿うように配置されて前記型枠に固定される本体部と、前記本体部から前記支持板の上面に沿うように延びて前記支持板を支持する腕部と、を有する
請求項1に記載のアンカー支持具。
【請求項3】
前記腕部は、前記支持板が締結される締結部を有する
請求項2に記載のアンカー支持具。
【請求項4】
前記固定治具の前記腕部は、前記固定治具の前記本体部の上部に接続される基部と、前記腕部において前記基部反対側にある先端部と、を有し、
前記固定治具の前記本体部が前記型枠の前記外側面に沿うように配置されてかつ前記腕部が前記支持板を支持するときに、前記先端部は、前記支持板において前記型枠側に位置する前記支持板の前記第1端部と前記幅方向において反対側にある前記第2端部に係合するように構成される
請求項2または3に記載のアンカー支持具。
【請求項5】
前記固定治具の前記腕部は、前記固定治具の前記本体部の上部に接続される基部と、前記腕部において前記基部反対側にある先端部と、を有し、
前記固定治具の前記本体部が前記型枠の前記外側面に沿うように配置されてかつ前記腕部が前記支持板を支持するときに、前記先端部は、係合部材によって、前記支持板において前記型枠側に位置する前記支持板の前記第1端部と前記幅方向において反対側にある前記第2端部に留められる
請求項2または3に記載のアンカー支持具。
【請求項6】
前記支持部は、前記アンカーが挿通する少なくとも1つのアンカー孔を有し、
前記支持部において、前記アンカー孔は、前記支持部の基準位置に対して所定位置に配置される
請求項1~5のいずれか一項に記載のアンカー支持具。
【請求項7】
前記支持板は、複数の前記支持部を有し、
前記支持板において前記複数の支持部は、互いに所定距離をあけて配置される
請求項1~6のいずれか一項に記載のアンカー支持具。
【請求項8】
さらに、前記支持板に重ねられる追加支持板を備え、
前記追加支持板は、前記支持板の前記支持部と同じ構造の支持部を有する
請求項1~7のいずれか一項に記載のアンカー支持具。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアンカー支持具を備える、基礎の型枠セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎においてアンカーを支持するアンカー支持具および基礎の型枠セットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎の施工において、アンカーを所定位置に配置する技術が知られている。特許文献1には、基礎の立ち上がり部の型枠にアンカーを支持する基板が設けられる。基板は、立ち上がり部を挟むようにして配置される2個の枠板に渡るように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-90049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立ち上がり部がない建築物の基礎において、アンカーは、基礎の外周面に沿うように配置される。基礎の施工において、アンカーは、型枠に固定される支持板またはポールによって支持される。支持板またはポールは、スペーサを介して型枠に固定される場合もある。しかし、支持板は、支持板の端部が枠板に固定されているだけであるため、アンカーの重さによって支持板が撓み、アンカーの位置精度が低くなる虞がある。そこで、建築物の基礎においてアンカーの位置精度を向上させるアンカー支持具および基礎の型枠セットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)課題を解決するアンカー支持具は、基礎に設けられるアンカーを支持するアンカー支持具であって、前記アンカーを支持する少なくとも1つの支持部を有する支持板と、前記基礎の型枠に対して前記支持板を高さ方向に位置決めするスペーサと、前記支持板を前記型枠に固定する固定治具と、を備え、前記固定治具は、前記スペーサを介して前記支持板を前記型枠の上に配置した状態で前記支持板を支持する。
【0006】
支持板が型枠にビスだけで固定されている場合、支持板にアンカーを取り付けるとアンカーの重みで支持板が撓む虞があり、アンカーの位置精度が低下する。この点、支持板は、固定治具によって支持されて、かつ、型枠に対して固定される。支持板にアンカーを取り付けた場合、アンカーの荷重は固定治具に加わるため、支持板の撓みを抑制できる。このようにして、基礎において、アンカーの位置精度を向上できる。
【0007】
(2)上記(1)に記載のアンカー支持具において、前記固定治具は、前記型枠の外側面に沿うように配置されて前記型枠に固定される本体部と、前記本体部から延びて前記支持板を支持する腕部と、を有する。
【0008】
この構成によれば、型枠に固定される本体部から延びる腕部によって、支持板が支持される。腕部によって、支持板において型枠から離れたところが支持されるため、型枠の内側面に対して直交する方向において支持板の撓みを抑制できる。これによって、アンカーの位置精度を向上できる。
【0009】
(3)上記(2)に記載のアンカー支持具において、前記腕部は、前記支持板が締結される締結部を有する。この構成によれば、支持板が腕部に強固に固定される。これによって、基礎地盤の揺れに起因して、支持板が腕部から外れることが抑制される。
【0010】
(4)上記(2)または(3)に記載のアンカー支持具において、前記腕部は、前記本体部に接続される基部と、前記基部の反対側の先端部と、を有し、前記先端部は、前記支持板において前記型枠に固定される第1端部と反対側の第2端部に係合するように構成される。
【0011】
この構成によれば、支持板を固定治具で支持する場合に、固定治具を支持板に簡単に係合させることができる。これによって、型枠に支持板を配置する作業を効率よく行うことが出来る。
【0012】
(5)上記(2)または(3)に記載のアンカー支持具において、前記腕部は、前記本体部に接続される基部と、前記基部の反対側の先端部と、を有し、前記先端部は、係合部材によって、前記支持板において前記型枠に固定される第1端部と反対側の第2端部に留められる。
【0013】
この構成によれば、支持板を固定治具で支持する場合に、係合部材によって固定治具を支持板に簡単に係合させることができる。これによって、型枠に支持板を配置する作業を効率よく行うことが出来る。
【0014】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のアンカー支持具において、前記支持部は、前記アンカーが挿通する少なくとも1つのアンカー孔を有し、前記支持部において、前記アンカー孔は、前記支持部の基準位置に対して所定位置に配置される。この構成によれば、支持板において所定位置にアンカーを配置できる。このため、基礎地盤に対して支持板を所定位置に配置し、アンカー孔にアンカーを挿し込むだけで、アンカーを基礎地盤に対して所定位置に配置できる。
【0015】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つに記載のアンカー支持具において、前記支持板は、複数の前記支持部を有し、前記支持板において前記複数の支持部は、互いに所定距離をあけて配置される。
この構成によれば、1つの支持板によって基礎地盤に対して複数のアンカーを所定位置に配置できる。
【0016】
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載のアンカー支持具において、さらに、追加支持板を備え、前記追加支持板は、前記支持板の前記支持部と同じ構造の支持部を有する。この構成によれば、必要に応じて、1つの支持板で支持できるアンカーの個数を増加できる。
【0017】
(9)上記課題を解決する基礎の型枠セットは、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載のアンカー支持具を備える。
型枠セットは、上記アンカー支持具を備えるため、支持板の撓みを抑制できる。このようにして、基礎において、アンカーの位置精度を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
上記アンカー支持具および基礎の型枠セットは、築物の基礎においてアンカーの位置精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】基礎の平面図。
図2図1の記載の2-2線に沿う基礎の断面図。
図3】第1工程の基礎の断面図。
図4】第2工程の基礎の断面図。
図5】第3工程の基礎の断面図。
図6】第4工程の基礎の断面図。
図7】第5工程の基礎の断面図。
図8】第6工程の基礎の断面図。
図9】第7工程の基礎の断面図。
図10】支持板の平面図。
図11】支持板の拡大図。
図12】支持板の組み合わせの一例を示す図。
図13】追加支持板の平面図。
図14】追加支持板が取り付けられた支持板の平面図。
図15】固定治具の斜視図。
図16】型枠および第1アンカー支持具の配置を示す図。
図17】型枠に固定された第1アンカー支持具の側面図。
図18】型枠に固定された第1アンカー支持具の平面図。
図19】第2アンカー支持具の一例である第4アンカー支持具の斜視図。
図20】第2アンカー支持具の他の例である第5アンカー支持具の斜視図。
図21】第4アンカー支持具および第5アンカー支持具の配置を示す図。
図22】固定治具の第1変形例の斜視図。
図23】固定治具の第1変形例と支持板との関係を示す図。
図24】クリップの他の例の斜視図。
図25】クリップの他の例の斜視図。
図26】固定治具の第2変形例の斜視図。
図27】固定治具の第2変形例と支持板との関係を示す平面図。
図28図27の28-28線に沿う固定治具の断面図。
図29】固定治具の第3変形例の斜視図。
図30】スペーサの変形例の斜視図。
図31】型枠に取り付けられたスペーサの変形例の図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図21を参照して、建築物の基礎1の施工方法、アンカー支持具20、および、型枠セット15について説明する。本実施形態では、基礎1の施工方法は、ベタ基礎の施工に適用できる。基礎1の施工方法は、立ち上がり部を有しない基礎1(以下、単に「基礎1」という。)の施工に好適である。
【0021】
図1および図2に示されるように、基礎1は、ベース4と、フーチング5とを有する。ベース4の上面は平坦に構成される。幾つかのフーチング5は、ベース4の外周における下部に設けられる。他の幾つかのフーチング5はベース4の中央部の下部に設けられる。基礎1内には、鉄筋6が配置される。基礎1には、アンカー7が立てられる。
【0022】
図3図9を参照して、建築物の基礎1の施工方法について説明する。図3図9は、図1のX-X線に沿う断面における、各工程の図である。
基礎1の施工方法は、少なくとも第1工程~第5工程を含む。本実施形態では、基礎1の施工方法は、さらに、第6工程と、第7工程とを含む。第6工程および第7工程では、ベース4の中央部のフーチング5を形成する。
【0023】
図3に示されるように、第1工程において、基礎1が設けられる基礎地盤2を作る。基礎地盤2は、整地、溝2aおよび孔2bの掘削、および、転圧によって形成される。基礎地盤2は、基礎1の形状にあうように形成される。
【0024】
図4に示されるように、第2工程において、基礎地盤2に鉄筋6を設置する。鉄筋6は、基礎地盤2の溝2aに沿うように配置される。鉄筋6は、基礎1のベース4となる部分にも配置される。隣接する2つの鉄筋6は、結束線で連結される。
【0025】
図5に示されるように、第3工程において、基礎地盤2に設けられる基礎1を作るための型枠10を設置する。第3工程は、第2工程と並行して行われてもよい。本実施形態では、型枠10は、外枠11と、内枠12とを備える。外枠11は、基礎1の外周面を形成するように設置される。内枠12は、外枠11内に設けられる。内枠12は、基礎1の中央部のフーチング5を形成するように設置される。具体的には、基礎地盤2の孔2bの内周に沿うように内枠12が設置される。
【0026】
図6に示されるように、第4工程において、型枠10の内周に沿うように複数のアンカー7を配置する。具体的には、外枠11の内周に沿うように複数のアンカー7を配置する。第4工程は、アンカー支持具20を設置する作業を含む。この作業において、アンカー支持具20の支持部34が型枠10の上端面13よりも高い位置に配置されるように、アンカー支持具20を型枠10に固定する。次いで、アンカー7をアンカー支持具20に吊り下げる。アンカー7は、アンカー支持具20によって支持される。
【0027】
第4工程では、アンカー支持具20として、第1アンカー支持具21、および、第2アンカー支持具22が使用される。一例では、第1アンカー支持具21は、型枠10において2フィート以上の直線部分に沿って配置されるアンカー7を支持する。第2アンカー支持具22は、第1アンカー支持具21が配置できないところのアンカー7を支持する。
【0028】
本実施形態では、アンカー支持具20が設けられた型枠10を「型枠セット15」という。型枠セット15は、型枠10と、1または複数のアンカー支持具20とを含む。型枠10は、枠板によって構成される。枠板は、木製であってもよく、金属製であってもよい。
【0029】
図7に示されるように、第5工程において、コンクリート8を型枠10内に打設する。具体的には、コンクリート8を外枠11と内枠12との間の空間に打設する。第5工程では、コンクリート8の上面が型枠10の上端面13と同じ高さとなるように、コンクリート8を均す。レベリング材を使ってコンクリート8の上面を均してもよい。型枠10に打設されたコンクリート8において、第1アンカー支持具21の支持板30の下の部分については、コテを使ってコンクリート8の上面を均す。型枠10に打設されたコンクリート8において、第2アンカー支持具22の支持板30の下の部分については、コテを使ってコンクリート8の上面を均す。
【0030】
図8に示されるように、第6工程において、内枠12によって形成された基礎孔部1a内の所定位置にアンカー7を配置する。
第6工程は、第3アンカー支持具23を設置する作業を含む。この作業では、第3アンカー支持具23の支持部34が基礎孔部1aの周囲の上面よりも高い位置に配置されるように、第3アンカー支持具23を基礎孔部1aの周囲の部分に設置する。
【0031】
具体的には、基礎孔部1aの周囲の所定位置に基準アンカー9を打ち込み、基準アンカー9を基準にして、第3アンカー支持具23の支持板30を配置する。第6工程において、外枠11の内周に沿うように配置されたアンカー7を基準にして、第3アンカー支持具23の支持板30を配置してもよい(図8の2点鎖線参照)。第3アンカー支持具23の設置後、アンカー7を第3アンカー支持具23に吊り下げる。第3アンカー支持具23によってアンカー7が支持される。
【0032】
図9に示されるように、第7工程において、コンクリート8を基礎孔部1aに打設する。このとき、コンクリート8の上面が基礎孔部1aの周囲の上面と同じ高さとなるように、コンクリート8を均す。
【0033】
<アンカー支持具>
図10図21を参照して、アンカー支持具20について説明する。アンカー支持具20は、基礎1に設けられるアンカー7を支持する。基礎1の施工において、複数種類のアンカー支持具20が使用されてもよい。アンカー7を立てる場所に応じて適切なアンカー支持具20が使用される。本実施形態では、アンカー支持具20は、第1アンカー支持具21(図17参照)、第2アンカー支持具22(図19および図20)、および、第3アンカー支持具23(図8参照)を含む。
【0034】
第1アンカー支持具21は、型枠10において第1アンカー支持具21の支持板30の長さ以上の長さを有する直線部分に、設置される。第2アンカー支持具22は、型枠10において第1アンカー支持具21を設置できない部分に設置される。第3アンカー支持具23は、基礎孔部1aの周囲に設置される。
【0035】
<第1アンカー支持具>
図17に示されるように、第1アンカー支持具21は、支持板30と、スペーサ31と、固定治具33とを備える。支持板30は、複数の支持部34を有する。支持部34は、アンカー7を支持する部分である。支持板30は、鉄板によって構成される。
【0036】
図10に示されるように、支持板30は、支持部34の基準位置40を有する。基準位置40は、支持部34の基準中心点である。支持板30は、複数のビス孔41を有する。複数のビス孔41は、支持板30の長手方向DLに直交する幅方向DWの両端部に設けられる。複数のビス孔41は、支持板30の幅方向DWの両端部それぞれに、支持板30の端縁に沿うように等間隔に配置される。ビス孔41は、基準位置40を基準にして設けられる。支持板30の幅方向DWの両端部それぞれには、同じピッチでビス孔41が設けられる。
【0037】
支持板30は、ビスによって型枠10に仮固定される。ビスは、支持板30のビス孔41を通ってスペーサ31を介して型枠10に打ち込まれる。仮固定は、支持板30が固定治具33で固定される前の段階で、支持板30が型枠10に固定されている状態を示す。仮固定において、支持板30において幅方向DWの一方の第1端部30aは、ビスを介して型枠10に固定される。支持板30において幅方向DWの他方の第2端部30bは、自由端である(図17参照)。
【0038】
図11に示されるように、支持板30は、固定治具33の腕部61が締結される締結部42を有する。締結部42は、ボルトが挿通する締結孔43を有する。本実施形態では、支持板30に4個の締結孔43が設けられる。2個の締結孔43は、支持板30の幅方向DWの一方の第1端部30a付近に設けられる。他の2個の締結孔43は、支持板30の幅方向DWの他方の第2端部30b付近に設けられる。
【0039】
図10に示されるように、支持板30は、追加支持板45を位置決めする第1位置決めマーク46を備えてもよい。第1位置決めマーク46は、2個の支持部34の中間位置を示すように構成される。例えば、第1位置決めマーク46は、2個の支持部34の基準位置40から等距離にある中線LMと、支持板30の幅方向DWにおける端縁との交点に設けられる。
【0040】
支持板30は、開口部47を有してもよい。開口部47は、支持板30の軽量化のために設けられる。開口部47は、支持板30において2個の支持部34の間に設けられる。一例では、開口部47は、2個の支持部34の中間部分を含むように構成される。これによって、支持板30において、2個の支持部34の中間部分に追加支持板45を配置したときに、追加支持板45にアンカー7を挿通できる。
【0041】
支持板30は、所定の長さを有する。例えば、支持板30は、2フィート以上の長さに構成される。第1アンカー支持具21は、長さが異なる複数種類の支持板30を備えてもよい。各種の支持板30には、複数の支持部34が設けられる。各種の支持板30において、支持部34の間の距離は、共通の所定距離DXに設定されている。例えば、所定距離DXは、2フィートである。
【0042】
図12に示されるように、型枠10において、複数種類の支持板30または同種の支持板30は、それぞれの支持部34が重なるように配置される。これによって、連続するように配置された複数の支持板30にわたって、支持部34の間の距離は共通の所定距離DXに設定される。
【0043】
図11に示されるように、支持部34は、アンカー7が挿通する少なくとも1つのアンカー孔49を有する。支持部34において、アンカー孔49は、支持部34の基準位置40に対して所定位置に配置される。一例では、支持部34は、4個のアンカー孔49を有する。4個のアンカー孔49は、基準位置40を中心点とする正方形の各頂点の位置に配置される。
【0044】
支持部34は、覗き孔50を有する。覗き孔50は、アンカー孔49にアンカー7を挿通した状態で、アンカー7を覗き見ることができるように構成される。覗き孔50は、アンカー孔49の近くに配置される。
【0045】
支持部34は、基礎1の基準に対して支持部34を位置決めするためのマーク部51を有する。マーク部51は、支持部34の基準位置40を基準にして設けられる。一例では、マーク部51は、支持板30の端縁の切欠きとして構成される。マーク部51は、溝、凹部または凸部として支持板30に構成されてもよい。
【0046】
基礎1の基準は、基礎地盤2に張られる基準糸(水糸とも呼ばれる。)によって設定される。第1アンカー支持具21の配置のとき、支持板30の支持部34のマーク部51を基準糸に沿うように支持板30の位置が調整される。支持板30を所定位置に配置した後、支持板30は、ビスで型枠10に仮固定される。
【0047】
支持部34は、各種のアンカー支持具20において共通である。具体的には、第1アンカー支持具21、第2アンカー支持具22、および、第3アンカー支持具23は、共通構造の支持部34を有する。
【0048】
図13に示されるように、第1アンカー支持具21は、追加支持板45を備えてもよい。追加支持板45は、支持板30において支持部34を追加する場合に使用される。追加支持板45は、支持板30の支持部34と同じ構造の支持部34を有する。具体的には、追加支持板45は、基準位置40とアンカー孔49との配置関係に関して、支持板30の支持部34と同じ構造の支持部34を有する。
【0049】
追加支持板45は、ビス孔41を有する。ビス孔41のピッチは、支持板30のビス孔41のピッチと等しい。ビス孔41は、支持部34の基準位置40を基準にして設けられる。追加支持板45は、第2位置決めマーク53を備える。第2位置決めマーク53は、支持部34の基準位置40を通って幅方向DWに延びる線と、支持板30の幅方向DWにおける端縁との交点に設けられる。
【0050】
図14に示されるように、追加支持板45を支持板30に設ける場合、追加支持板45の第2位置決めマーク53と、支持板30の第1位置決めマーク46とを合わせるようにして、支持板30に対して追加支持板45が位置決めされる。追加支持板45は、支持板30に対して追加支持板45が位置決めされた後、ビスで型枠10に固定される。このようにして、支持板30の2個の支持部34の中間の位置に、追加の支持部34を設けることができる。
【0051】
図15を参照して、固定治具33を説明する。固定治具33は、支持板30を型枠10に固定する。固定治具33は、スペーサ31を介して支持板30を型枠10の上に配置した状態で、支持板30を支持する(図17参照)。
【0052】
固定治具33は、本体部60と、腕部61と、を有する。本体部60および腕部61は、鉄材によって構成される。本体部60および腕部61は、アルミニウム合金によって構成されてもよい。腕部61は、本体部60に溶接または締結によって固定される。
【0053】
本体部60は、型枠10の外側面11aに沿うように配置されて、型枠10に固定される(図17参照)。本体部60は、型枠10の外側面11aに接触する板部60aと、板部60aを補強する補強部60bとを有する。固定治具33が型枠10に固定された状態で、板部60aは上下方向に延びる。補強部60bは、上下方向に交差する幅方向において、板部60aの両端それぞれに設けられる。補強部60bは、腕部61が突出する方向と反対の方向に突出する。補強部60bは、板部60aの端縁に沿うように上下方向に延びる。板部60aと補強部60bとは一体に構成される。
【0054】
腕部61は、支持板30を支持する。腕部61は、本体部60から延びる。腕部61は、上下方向と直交する方向に本体部60から延びる。腕部61は、本体部60に接続される基部62と、基部62の反対側の先端部63と、を有する。腕部61は、板状に構成される。腕部61は、補強支持部64によって支持されてもよい。補強支持部64は、腕部61の基部62の上面と本体部60の上部とを接続する。本体部60の上部は、本体部60において腕部61が接続されている部分よりも上の部分を示す。
【0055】
腕部61は、支持板30が締結される締結部65を有する。締結部65は、ボルトが挿通する締結孔66を有する。本実施形態では、腕部61に4個の締結孔66が設けられる。2個の締結孔66は、腕部61の基部62付近に設けられる。他の2個の締結孔66は、腕部61の先端部63付近に設けられる。
【0056】
図18に示されるように、腕部61は、支持板30の幅方向DWに沿うように配置される。腕部61の基部62は、支持板30の幅方向DWの一方の第1端部30aを支持する。腕部61の先端部63は、支持板30の幅方向DWの他方の第2端部30bを支持する。腕部61の基部62が支持板30の第1端部30aを支持する構造は、省略されてもよい。
【0057】
図17に示されるように、スペーサ31は、支持板30の端部と型枠10の上端面13との間に配置される。スペーサ31は、基礎1の型枠10に対して支持板30を高さ方向に位置決めする。スペーサ31は、所定の厚さを有する。スペーサ31は、型枠10に上に配置できる大きさに構成される。一例では、スペーサ31の幅は、型枠10の幅に等しい。一例では、スペーサ31は、直方体または立方体に構成される。スペーサ31は、ビスを打ち込むことができる部材によって構成される。一例では、スペーサ31は、木材または樹脂によって構成される。後述の変形例で示されるように、スペーサ31は、板金から構成されてもよい。
【0058】
支持板30の仮固定において、スペーサ31は、型枠10の上端面13に間隔をあけて配置される。スペーサ31は、接着剤で型枠10に固定されてもよい。支持板30は、支持板30の幅方向DWの一方の第1端部30aが複数のスペーサ31の上に載るように、配置される。このようにして、支持板30は、型枠10の上端面13に対して高さ方向に位置決めされる。
【0059】
基礎1の施工方法におけるアンカー7の配置は、次のように行われる。スペーサ31を型枠10の上端面13に配置する。支持板30の第1端部30aが複数のスペーサ31の上に載るように支持板30を配置し、支持板30をビスによって型枠10に仮固定する。
【0060】
図16に示されるように、支持板30を型枠10の内周に沿うように配置する。隣接する支持板30は、支持部34が重なるように配置される。支持板30の配置後、支持板30の幅方向DWの一方の第1端部30aがスペーサ31の上に載せられた状態で、固定治具33によって支持板30を型枠10に固定する。具体的には、固定治具33の本体部60が型枠10の外側面11aに接触させて、かつ、腕部61を支持板30の上面に接触させた状態で、本体部60を型枠10に固定し、さらに、腕部61と支持板30とをボルトによって締結する。第1アンカー支持具21の支持板30は、型枠10の上端面13から所定高さの位置に位置する。アンカー7は、このように固定された支持板30に取り付けられる。
【0061】
<第2アンカー支持具>
図19および図20を参照して、第2アンカー支持具22を説明する。第2アンカー支持具22は、基礎1に設けられるアンカー7を支持する。第2アンカー支持具22は、支持部34と、型枠10に固定される固定部70と、支持部34と固定部70とを連結する連結部71と、を有する。連結部71は、固定部70が水平に配置された状態において、支持部34が固定部70から所定高さの位置に配置されるように、支持部34と固定部70とを連結する。支持部34の下面と固定部70の下面との間の距離は、第1アンカー支持具21のスペーサ31の厚さと等しい。
【0062】
第2アンカー支持具22の固定部70は、型枠10の上端面13に固定される。
第2アンカー支持具22は、型枠10において、第1アンカー支持具21を設置できないところにおいて、アンカー7を配置する場合に使用される。
【0063】
第2アンカー支持具22は、設置される場所に応じた2種類の形態を有する。具体的には、第2アンカー支持具22は、第4アンカー支持具24と、第5アンカー支持具25とを含む。第5アンカー支持具25は、2個の第4アンカー支持具24が連結された構造を有する。
【0064】
図19に示されるように、第4アンカー支持具24は、1個の支持部34を有する支持板30と、型枠10に固定される固定部70と、支持部34と固定部70とを連結する連結部71と、を有する。
【0065】
図21に示されるように、第4アンカー支持具24は、型枠10において直線距離が2フィートよりも短い部分に設置される。2個以上の第4アンカー支持具24が連続するように配置されてもよい。
【0066】
図20に示されるように、第5アンカー支持具25は、2個の支持部34を有する支持板30と、型枠10に固定される固定部70と、支持部34と固定部70とを連結する連結部71と、を有する。
【0067】
図21に示されるように、第5アンカー支持具25は、型枠10において、出隅に設置される。第5アンカー支持具25は、2個の支持部34のうちの1つが出隅の対角の位置に位置するように、型枠10に固定される。
【0068】
基礎1の施工方法におけるアンカー7の配置において、第4アンカー支持具24および第5アンカー支持具25は次のように使用される。第4工程において、第4アンカー支持具24の固定部70を型枠10の上端面13に固定する。これによって、第4アンカー支持具24の支持板30は、型枠10の上端面13から所定高さの位置に固定される。アンカー7は、支持板30に取り付けられる。
【0069】
第5アンカー支持具25の固定部70の半分を型枠10の出隅に配置し、固定部70を型枠10の上端面13に固定する。これによって、第5アンカー支持具25の支持板30は、2個の支持部34の内の一方が出隅の対角に配置された状態で、型枠10の上端面13から所定高さの位置に固定される。アンカー7は、支持板30に取り付けられる。
【0070】
<第3アンカー支持具>
第3アンカー支持具23は、基礎孔部1aに設けられるアンカー7を支持する。
第3アンカー支持具23は、1個または複数の支持部34を有する支持板30と、基準アンカー9と、スペーサ75とを備える。基準アンカー9は、基礎孔部1aを有する基礎1において基礎孔部1aの周囲の部分に設置される。基準アンカー9は、基礎孔部1aに対して所定位置に設置される。スペーサ75は、基礎1において基礎孔部1aの周囲の部分に配置される(図8参照)。スペーサ75は、基準アンカー9が挿通する孔を有してもよい。第3アンカー支持具23のスペーサ75の厚さは、第1アンカー支持具21のスペーサ31の厚さと等しい。支持板30は、スペーサ75の上に載せられた状態で基準アンカー9に係合するように配置される。
【0071】
基礎1の施工方法におけるアンカー7の配置において、第3アンカー支持具23は次のように使用される。第6工程において、基礎孔部1aの周囲の所定位置に基準アンカー9を打ち込む。基準アンカー9に係合するようにスペーサ75を基礎1の上に配置する。基準アンカー9を基準にして、支持板30を配置する。具体的には、基準アンカー9が支持板30の他のアンカー孔49に挿通するように、支持板30を基礎1の上に配置する。他のアンカー孔49は、基礎孔部1aに配置するアンカー7の支持に使われるアンカー孔49以外のアンカー孔49を示す。支持板30は、スペーサ75の上に載せられる。これによって、支持板30は、基礎1の上面から所定高さの位置に配置される(図8参照)。アンカー7は、このように配置された支持板30に取り付けられる。支持板30に取り付けられるアンカー7は、基礎孔部1aに対して所定位置に配置される。
【0072】
本実施形態の作用を説明する。
支持板30は、型枠10の上端面13から所定高さの位置に配置される。支持板30と基礎1の上面との間に空間が確保される。支持板30は、コンクリート8の上面から離れた位置に配置されているため、コンクリート8の均し作業において、コンクリート8の上面の高さと型枠10の上端面13との高さが一致するように、支持板30の下の部分をコテで均すことができる。これによって、アンカー7の付近部分の上面を、平坦で、かつ、精確に所定高さの面に形成しできる。
【0073】
支持板30は、腕部61を有する第1アンカー支持具21によって支持される。これによって、支持板30の撓みが抑制される。このため、支持板30に支持されるアンカー7は、所定位置からずれることが抑制される。
【0074】
本実施形態の第1アンカー支持具21および型枠セット15の効果を説明する。
(1)アンカー支持具20は、支持板30と、基礎1の型枠10に対して支持板30を高さ方向に位置決めするスペーサ31と、支持板30を型枠10に固定する固定治具33と、を備える。固定治具33は、スペーサ31を介して支持板30を型枠10の上に配置した状態で支持板30を支持する。
【0075】
支持板30が型枠10にビスだけで固定されている場合、支持板30にアンカー7を取り付けるとアンカー7の重みで支持板30が撓む虞があり、アンカー7の位置精度が低下する。この点、支持板30は、固定治具33によって支持されて、かつ、型枠10に対して固定される。支持板30にアンカー7を取り付けた場合、アンカー7の荷重は固定治具33に加わるため、支持板30の撓みを抑制できる。このようにして、基礎1において、アンカー7の位置精度を向上できる。
【0076】
(2)固定治具33は、型枠10の外側面11aに沿うように配置されて型枠10に固定される本体部60と、本体部60から延びて支持板30を支持する腕部61と、を有する。
【0077】
この構成によれば、型枠10に固定される本体部60から延びる腕部61によって、支持板30が支持される。腕部61によって、支持板30において型枠10から離れたところが支持されるため、型枠10の内側面11bに対して直交する方向において支持板30の撓みを抑制できる。これによって、アンカー7の位置精度を向上できる。
【0078】
支持板30は、複数の固定治具33によって支持されてもよい。例えば、複数の固定治具33は、支持板30の長手方向DLに間隔をあけて配置される(図16参照)。支持板30は、複数の固定治具33によって支持されるため、長手方向DLに沿う撓みが抑制される。さらに、支持板30は、固定治具33の腕部61によって支持される。このため、支持板30に複数のアンカー7が取り付けられる場合でも、幅方向DWに沿う撓みを抑制できる。
【0079】
(3)固定治具33の腕部61は、支持板30が締結される締結部65を有する。この構成によれば、支持板30が腕部61に強固に固定される。これによって、基礎地盤2の揺れに起因して、支持板30が腕部61から外れることが抑制される。
【0080】
(4)支持板30の支持部34は、アンカー7が挿通する少なくとも1つのアンカー孔49を有する。支持部34において、アンカー孔49は、支持部34の基準位置40に対して所定位置に配置される。この構成によれば、支持板30において所定位置にアンカー7を配置できる。このため、基礎地盤2に対して支持板30を所定位置に配置し、アンカー孔49にアンカー7を挿し込むだけで、アンカー7を基礎地盤2に対して所定位置に配置できる。
【0081】
(5)支持板30は、複数の支持部34を有する。支持板30において複数の支持部34は、互いに所定距離DXをあけて配置される。この構成によれば、1つの支持板30によって基礎地盤2に対して複数のアンカー7を所定位置に配置できる。
【0082】
第1アンカー支持具21は、長さが異なる複数種類の支持板30を備えてもよい。これによって、第1アンカー支持具21を設置できる場所のバリエーションを多くできる。各種の支持板30において、支持部34の間の距離は共通の所定距離DXに設定される。
【0083】
各種の支持板30において、支持板30は、共通構造の支持部34を有する。この構成によって、複数種類の支持板30を組み合わせる場合または複数の同種の支持板30を組み合わせる場合に、隣接する2個の支持板30の支持部34を互いに重ね合わせることによって、連続する複数の支持板30にわたって、支持部34の間の距離を共通の所定距離DXに設定できる。このようにして、アンカー7を所定ピッチで配置できる。支持板30は、アンカー7を所定ピッチで配置できる定規のような機能を有する。このため、このような支持板30を使用することによって、アンカー7を簡単に所定位置に配置できる。
【0084】
(6)アンカー支持具20は、追加支持板45を備えてもよい。追加支持板45は、支持板30の支持部34と同じ構造の支持部34を有する。この構成によれば、必要に応じて、1つの支持板30で支持できるアンカー7の個数を増加できる。
【0085】
(7)第1アンカー支持具21において、支持部34は、基礎1の基準に対して支持部34を位置決めするためのマーク部51を有してもよい。この構成によれば、基礎1の基準にマーク部51を合わせることによって、支持部34を基礎1の基準に対して精確な位置に配置できる。
【0086】
(8)型枠セット15は、アンカー支持具20を備える。型枠セット15は、上記アンカー支持具20を備えるため、支持板30の撓みを抑制できる。このようにして、基礎1において、アンカー7の位置精度を向上できる。
【0087】
本実施形態の第2アンカー支持具22の効果を説明する。
(1)第2アンカー支持具22は、アンカー7を支持する支持部34と、基礎1の型枠10に固定される固定部70と、連結部71と、を備える。連結部71は、固定部70が水平に配置された状態において支持部34が固定部70から所定高さの位置に配置されるように支持部34と固定部70とを連結する。
【0088】
この構成によれば、固定部70が基礎1の型枠10に固定されると、支持部34が型枠10の上端面13よりも高い位置に配置される。これによって、コンクリート8の上面が型枠10の上端面13と同じ高さとなるように、コンクリート8を均すことができる。コンクリート8の上面は、型枠10によって隠れる部分がなく、コンクリート8の上面の全体を目視できるため、コンクリート8を均す作業が行い易い。このため、基礎1の上面を所定の高さで平坦に形成することを簡単に行うことができる。
【0089】
(2)第2アンカー支持具22において、支持部34は、基礎1の基準に対して支持部34を位置決めするためのマーク部51を有する。この構成によれば、基礎1の基準にマーク部51を合わせることによって、支持部34を基礎1の基準に対して精確な位置に配置できる。
【0090】
本実施形態の第3アンカー支持具23の効果を説明する。
第3アンカー支持具23は、支持部34を有する支持板30と、スペーサ75と、を備える。スペーサ75は、基礎1において基礎孔部1aの周囲の部分に配置される。支持板30は、スペーサ75の上に載せられて、基礎孔部1aを渡るように配置される。さらに、支持板30は、基準アンカー9または他のアンカー7によって位置決めされる。他のアンカー7は、基礎孔部1aが設けられた基礎1のアンカー7を示す。この構成によれば、第3アンカー支持具23の支持板30を基礎孔部1aの周囲の上面から所定高さの位置に位置決めできる。これによって、基礎孔部1aに充填されるコンクリート8の上面が基礎孔部1aの周囲の上面と同じ高さとなるように、コンクリート8を均すことができる。
【0091】
本実施形態の建築物の基礎1の施工方法の効果を説明する。
(1)建築物の基礎1の施工方法では、打設のとき、コンクリート8の上面が型枠10の上端面13と同じ高さとなるように、コンクリート8を均す。
【0092】
この構成によれば、型枠10の上端面を基準にしてコンクリート8を均すことができるため、コンクリート8を均す作業が行い易い。このため、基礎1の上面を所定高さで平坦に形成することを簡単に行うことができる。
【0093】
(2)建築物の基礎1の施工方法では、アンカー支持具20の支持部34が型枠10の上端面13よりも高い位置に配置されるように、アンカー支持具20を型枠10に固定する。このように固定されたアンカー支持具20によってアンカー7を支持する。
【0094】
この構成によれば、支持部34が型枠10の上端面13よりも高い位置に配置される。このため、コンクリート8の上面が型枠10の上端面13と同じ高さとなるようにコンクリート8を均す作業を、行い易くできる。
【0095】
(3)建築物の基礎1の施工方法では、スペーサ31を型枠10の上端面13に配置し、支持板30の端部をスペーサ31の上に載せた状態で固定治具33によって支持板30を型枠10に固定する。この構成によれば、支持板30はスペーサ31を介して型枠10に固定されるため、型枠10の上端面13から所定高さの位置に支持板30を簡単に配置できる。
【0096】
(4)建築物の基礎1の施工方法では、第2アンカー支持具22の固定部70を型枠10の上端面13に固定する。この構成によれば、スペーサ31を使わずに、型枠10の上端面13から所定高さの位置に支持部34を簡単に配置できる。
【0097】
(5)建築物の基礎1の施工方法では、コンクリート8を基礎孔部1aに打設し、コンクリート8の上面が基礎孔部1aの周囲の上面と同じ高さとなるように、コンクリート8を均す。
【0098】
この構成によれば、基礎孔部1aに打設されたコンクリート8の上面の位置が基礎孔部1aの周囲の上面よりも低い所定高さの位置になるように、コンクリート8を均すことは難しい。この点、上記構成では、コンクリート8の上面が基礎孔部1aの周囲の上面と同じ高さとなるように、コンクリート8を均す。このため、コンクリート8を均す作業が行い易い。
【0099】
(6)建築物の基礎1の施工方法では、基礎孔部1a内の所定位置にアンカー7を配置する場合において、支持板30が基礎1の上面よりも高い位置に配置されるように、支持板30を配置する。この構成によれば、支持板30が基礎1の上面よりも高い位置に配置される。このため、基礎孔部1aに打設されたコンクリート8の上面を基礎孔部1aの周囲の上面と同じ高さとなるようにコンクリート8を均す作業を、行い易くできる。
【0100】
(7)建築物の基礎1の施工方法では、基礎孔部1a内の所定位置にアンカー7を配置する場合において、基礎孔部1aの周囲の所定位置に基準アンカー9を打ち込み、基準アンカー9を基準にして、支持板30を配置する。この構成によれば、基礎孔部1aに対して支持板30を所定位置に配置できるため、支持板30によって支持されるアンカー7を基礎孔部1aに対して精確な位置に配置できる。
【0101】
(8)建築物の基礎1の施工方法では、外枠11の内周に沿うように配置されたアンカー7を基準にして、支持板30を配置してもよい(図8の2点鎖線参照)。この構成によれば、外枠11に沿うアンカー7に対して支持板30を所定位置に配置できる。これによって、支持板30によって支持されるアンカー7を、外枠11に沿うアンカー7に対して精確な位置に配置できる。
【0102】
<変形例>
上記実施形態は、アンカー支持具20、型枠セット15、および、基礎1の施工方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。アンカー支持具20、型枠セット15、および、基礎1の施工方法は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。変形例において、実施形態と同じ構成については、実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図22および図23を参照して、固定治具33の第1変形例を説明する。
固定治具33Aの腕部61と支持板30との結合構造は、次のように変更され得る。実施形態では、腕部61の締結部65と支持板30の締結部42との締結によって、腕部61に支持板30が固定される。これに対して、この変形例では、固定治具33Aの腕部61の先端部63は、支持板30において型枠10に固定される第1端部30aと反対側の第2端部30bに係合するように構成される。
【0104】
腕部61は、先端部63が基部62よりも低い位置に配置されるように構成される。具体的には、腕部61は、基部62と先端部63との間に段差部80が設けられる。段差部80は、先端部63が基部62よりも低い位置に配置されるように構成される。段差部80は、腕部61の基部62の下面と先端部63の上面との間の距離が支持板30の厚さと等しくなるように、構成される。腕部61に支持板30を取り付けるとき、腕部61の基部62が支持板30の上面に接触するように配置され、かつ、腕部61の先端部63が支持板30の下面に接触するように配置される。支持板30において幅方向DWの一方の第1端部30aは、型枠10に支持され、支持板30において幅方向DWの他方の第2端部30bは、腕部61の先端部63によって下から支持される。腕部61の先端部63から支持板30の第2端部30bがずれないように、腕部61の先端部63に支持板30の第2端部30bをクリップ81によって留めてもよい。
【0105】
腕部61の先端部63に支持板30の第2端部30bを留める構造は、限定されない。
図24に示されるように、ボルト付きのクリップ82によって、腕部61の先端部63に支持板30の第2端部30bを留めてもよい。ボルトの締め付けによって、腕部61の先端部63に支持板30の第2端部30bが強固に固定できる。
【0106】
図25に示されるように、ボルト付きのクリップ82は、ボルトを支持するねじ部83を備えてもよい。ねじ部83は、クリップ本体82aに結合している。ねじ部は、ボルトの締め付け力を持続させる。
【0107】
図26図27、および、図28を参照して、固定治具33の第2変形例を説明する。固定治具33Bの腕部61と支持板30との結合構造は、次のように変更され得る。固定治具33Bの腕部61の構造は、実施形態の腕部61の構造から変更されていない。上記の実施形態では、腕部61の締結部65と支持板30の締結部42との締結によって、腕部61に支持板30が固定される。
【0108】
これに対して、この変形例では、腕部61の締結部65が、支持板30の締結部42以外の部分で締結される。具体的には、固定治具33Bの腕部61の先端部63は、係合部材90によって、支持板30において型枠10に固定される第1端部30aと反対側の第2端部30bに留められる。
【0109】
係合部材90は、ボルト91と、支持板30の開口部47に配置されるスペーサ92と、締結孔93aを有するプレート93とを有する。スペーサ92は凹部92aを有する。固定治具33Bの腕部61に支持板30を固定する場合、腕部61は、支持板30の開口部47に重なるように支持板30の上に配置される。プレート93は、支持板30を介して腕部61の下に配置される。支持板30は、腕部61とプレート93とによって挟まれる。スペーサ92の厚さは、支持板30の厚さと等しい。スペーサ92は、支持板30の開口部47において腕部61とプレート93とによって挟まれている部分に配置される。ボルト91が、腕部61の締結孔66と、プレート93の締結孔93aと、スペーサ92の凹部92aとを挿通した状態で、ボルト91に係合するナットが締められることによって、腕部61に支持板30が固定される(図28参照)。
【0110】
図29を参照して、固定治具33の第3変形例を説明する。
図29に示されるように、固定治具33Cは、先端部63に金具95を有する。金具95によって、腕部61の先端部63に支持板30の第2端部30bが固定される。金具95は、腕部61に回転可能に設けられる。金具95は、本体金具96と、本体金具96を回転させるためのレバー97とを備える。本体金具96は、軸部96aと、軸部96aに直交するフック部96bを有する。フック部96bが支持板30の第2端部30bに引っ掛からないように本体金具96を回転した状態で、本体金具96を支持板30の開口部47に挿通させて、腕部61の下に支持板30を配置する。腕部61の下に支持板30が配置された状態で、金具95を回転させてフック部96bを支持板30の第2端部30bに係合させる。このようにして腕部61の先端部63に支持板30の第2端部30bを固定することができる。
【0111】
この構成によれば、支持板30を固定治具33Cによって支持する場合に、係合部材90によって固定治具33Cを支持板30に簡単に係合させることができる。これによって、型枠10に支持板30を配置する作業を効率よく行うことが出来る。
【0112】
図30および図31を参照して、スペーサ31の変形例を説明する。
図30および図31に示されるように、スペーサ100は、型枠10に着脱可能に構成されてもよい。例えば、スペーサ100は、スペーサ本体101と、スペーサ本体101から延びる2個の脚部102とを備える。2個の脚部102は、スペーサ本体101の下面から下方に延びる。2個の脚部102の間隔は、型枠10の幅と等しい。スペーサ本体101には、ビスが通る挿通孔103が設けられる。このようなスペーサ100は、例えば、板金によって構成される。この構成によれば、スペーサ100が型枠10に着脱可能であり、ビスが通る挿通孔103を有することによってビスの打ち込みによるスペーサ100の変形が小さいため、スペーサ100を繰り返して使用できる。
【符号の説明】
【0113】
DX…距離
1…基礎
7…アンカー
10…型枠
11a…外側面
15…型枠セット
20…アンカー支持具
30…支持板
30a…第1端部
30b…第2端部
31…スペーサ
33…固定治具
33A…固定治具
33B…固定治具
33C…固定治具
34…支持部
40…基準位置
42…締結部
45…追加支持板
49…アンカー孔
60…本体部
61…腕部
62…基部
63…先端部
65…締結部
75…スペーサ
90…係合部材
92…スペーサ
100…スペーサ
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