(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241029BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20241029BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20241029BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20241029BHJP
F24F 140/60 20180101ALN20241029BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/34 B
H02J7/34 D
F24F11/46
F24F110:10
F24F140:60
(21)【出願番号】P 2024539323
(86)(22)【出願日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2023031463
(87)【国際公開番号】W WO2024057932
(87)【国際公開日】2024-03-21
【審査請求日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022145740
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 了輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128604(JP,A)
【文献】特開平11-325545(JP,A)
【文献】特開平6-137651(JP,A)
【文献】特表2018-533711(JP,A)
【文献】特開2017-85852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/131378(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/131379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 7/34
F24F 11/46
F24F 110:10
F24F 140:60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向インバータ、双方向DC-DCコンバータ、および、蓄電池を少なくとも有する複数の逆変換器と、
前記複数の逆変換器の各々の出力がそれぞれ系統連系リレーを介して集電され、商用電力系統に連系される受電点と、
前記複数の逆変換器と前記系統連系リレーとの間にそれぞれ接続され、各々が空調機器を含む複数の負荷と、
前記受電点での電流の向きおよび大きさを検出する電流センサと、
前記蓄電池それぞれの充放電を制御する制御装置と、
を備えた電力システムであって、
前記複数の逆変換器は、それぞれが同一の建築物の異なるフロアに設置され、
前記制御装置は、
前記フロアにそれぞれ設けられた前記空調機器をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、
前記電流センサの測定値に基づいて、所定時間単位で前記商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、前記複数の逆変換器の蓄電池から、重負荷の前記負荷に放電するように制御する、
電力システム。
【請求項2】
双方向インバータ、双方向DC-DCコンバータ、蓄電池、および、系統連系リレーを少なくとも有する複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナの出力が集電されて商用電力系統に連系される受電点と、
前記複数のパワーコンディショナと前記受電点との間にそれぞれ接続され、各々が空調機器を含む複数の負荷と、
前記受電点での電流の向きおよび大きさを検出する電流センサと、
前記蓄電池それぞれの充放電を制御する制御装置と、
を備えた電力システムであって、
前記複数のパワーコンディショナは、それぞれが同一の建築物の異なるフロアに設置され、
前記制御装置は、
前記フロアにそれぞれ設けられた空調機器をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、
前記電流センサの測定値に基づいて、所定時間単位で前記商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、前記複数のパワーコンディショナの蓄電池から、重負荷の前記負荷に放電するように制御する、
電力システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記所定時間単位で前記商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えない範囲において、軽負荷の前記空調機器と同じフロアの蓄電池を充電する、
請求項1または請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記空調機器が設置されているフロアの室温が、冷房時には冷房用上限温度、暖房時には暖房用下限温度に達した時に、運転を開始する、
請求項1
または請求項2に記載の電力システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記運転の開始を行う前に運転していた別フロアの前記空調機器が運転を停止した後の期間中に、前記運転を開始した空調機器と同じフロアに設置されている前記蓄電池を充電するように制御する、
請求項4に記載の電力システム。
【請求項6】
前記蓄電池の電池容量は、4800Ah以下である、
請求項1
または請求項2に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電部と複数の空調機器とを備える電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電システムが記載されている。特許文献1の蓄電システムは、複数の蓄電部、複数の電力変換部を備える。
【0003】
複数の電力変換部は、複数の蓄電部のそれぞれに対応して配置される。複数の電力変換部は、それぞれに接続する蓄電部の直流出力を交流出力に変換して負荷に供給する。また、複数の電力変換部は、電力系統からの交流電力を直流電力に変換して、それぞれが接続する蓄電部を充電する。
【0004】
特許文献1の蓄電システムは、ピークカット優先モードとして、各負荷に対応する蓄電池から各負荷に対して放電を行う。これにより、特許文献1の蓄電システムは、各負荷の消費電力のピークを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の構成では、複数の蓄電池のそれぞれは、各蓄電池と系統との間に接続された負荷にしか放電できず、複数の蓄電池から1つの負荷に対して電力を供給することが出来ない。このため、負荷の消費電力が急増(負荷が重負荷に急変)したときに、蓄電池による電力供給が足りず、電力系統から供給される電力が増加してしまうことがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、負荷の消費電力が急増する場合でも、電力系統からの供給電力の増加を抑制できる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の電力システムは、複数の逆変換器、複数の逆変換器と系統連系リレーとの間にそれぞれ接続され、各々が空調機器を含む複数の負荷、受電点、電流センサ、および、制御装置を備える。複数の逆変換器は、双方向インバータ、双方向DC-DCコンバータ、および、蓄電池を少なくとも有する。受電点は、複数の逆変換器の出力が系統連系リレーを介して集電されて商用電力系統に連系される。
【0009】
電流センサは、受電点での電流の向きおよび大きさを検出する。制御装置は、蓄電池それぞれの充放電を制御する。複数の逆変換器は、それぞれが同一の建築物の異なる複数のフロアに設置される。制御装置は、複数のフロアにそれぞれ設けられた複数の空調機器をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、電流センサの測定値に基づいて、所定時間単位で商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、複数の逆変換器の蓄電池から、重負荷の負荷に放電するように制御する。
【0010】
この発明の電力システムは、複数のパワーコンディショナ、受電点、複数のパワーコンディショナと受電点との間にそれぞれ接続され、各々が空調機器を含む複数の負荷、電流センサ、制御装置を備える。複数のパワーコンディショナは、双方向インバータ、双方向DC-DCコンバータ、蓄電池、および、系統連系リレーを少なくとも有する。受電点は、複数のパワーコンディショナの出力が集電されて商用電力系統に連系される。電流センサは、受電点での電流の向きおよび大きさを検出する。制御装置は、蓄電池それぞれの充放電を制御する。複数のパワーコンディショナは、それぞれが同一の建築物の異なる複数のフロアに設置される。制御装置は、複数のフロアにそれぞれ設けられた空調機器をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、電流センサの測定値に基づいて、所定時間単位で商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、複数のパワーコンディショナの蓄電池から、重負荷の負荷に放電するように制御する。
【0011】
これらの構成では、複数の空調機器の運転が重ならず、重負荷の負荷に対して複数のフロアの蓄電池から電力が供給される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、負荷の消費電力が急増する場合でも、電力系統からの供給電力の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る電力システムの第1状態での電力の流れを示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電力システムの第2状態での電力の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る電力システムの第3状態での電力の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る電力システムの第4状態での電力の流れを示す図である。
【
図6】
図6(A)は、消費電力の時間推移の一例を示し、
図6(B)は、室温の時間推移の一例を示す。
【
図7】
図7は、1日におけるモードの選択の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る電力システムについて、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。なお、本実施形態に示すフロア数、逆変換器の個数、負荷の個数は、一例であり、複数であればこの例に限るものではない。
【0015】
(電力システム10の概略構成)
図1に示すように、電力システム10は、複数の逆変換器31-34、複数の負荷L41-L44、複数の系統連系リレー51-54、制御装置60、商用電力連系ライン500、受電点P500、および、電流センサCTを備える。
【0016】
複数の逆変換器31-34は、逆変換器31、逆変換器32、逆変換器33、および、逆変換器34を備える。複数の負荷L41-L44は、負荷L41、負荷L42、負荷L43、および、負荷L44を備える。負荷L41は空調機器41を備え、負荷L42は空調機器42を備え、負荷L43は空調機器43を備え、負荷L44は空調機器44を備える。複数の系統連系リレー51-54は、系統連系リレー51、系統連系リレー52、系統連系リレー53、および、系統連系リレー54を備える。
【0017】
複数の逆変換器31-34は、受電点P500に接続し、受電点P500において複数の逆変換器31-34の出力が集電され、商用電力連系ライン500を通じて商用電力系統に連系される。
【0018】
系統連系リレー51は、逆変換器31と受電点P500との間に直列接続される。系統連系リレー52は、逆変換器32と受電点P500との間に直列接続される。系統連系リレー53は、逆変換器33と受電点P500との間に直列接続される。系統連系リレー54は、逆変換器34と受電点P500との間に直列接続される。
【0019】
空調機器41は、逆変換器31と系統連系リレー51とを接続するラインに対して接続される。空調機器42は、逆変換器32と系統連系リレー52とを接続するラインに対して接続される。空調機器43は、逆変換器33と系統連系リレー53とを接続するラインに対して接続される。空調機器44は、逆変換器34と系統連系リレー54とを接続するラインに対して接続される。
【0020】
制御装置60は、商用電力連系ライン500に配置された電流センサCTからの出力(受電点P500での電流の向きおよび大きさ)を受け、複数の逆変換器31-34の充放電制御、複数の空調機器41-44の運転制御および複数の系統連系リレー51-54のスイッチ制御を行う。
【0021】
概略的には、制御装置60は、複数の空調機器41-44をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、電流センサCTの測定値に基づいて、所定時間単位で商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、複数の逆変換器31-34の蓄電池315、325、335、345から重負荷の負荷に放電するように制御する。
【0022】
複数の逆変換器31-34、複数の空調機器41-44、複数の系統連系リレー51-54、および、制御装置60は、例えば複数階(図の例であれば、4階建て)を有する建築物に配置される。図の例では、逆変換器31、空調機器41、および、系統連系リレー51は、3階に配置され、逆変換器32、空調機器42、および、系統連系リレー52は、2階に配置される。逆変換器33、空調機器43、および、系統連系リレー53は、1階に配置され、逆変換器34、空調機器44、および、系統連系リレー54は、地下1階に配置される。すなわち、逆変換器、空調機器、系統連系リレーの組は、同じ建築物の異なる階(フロア)にそれぞれ配置される。制御装置60は、いずれの階に配置されていてもよい。
【0023】
上述の場合、空調機器41は、3階に設置された空調機器であり、空調機器42は、2階に設置された空調機器であり、空調機器43は、1階に設置された空調機器であり、空調機器44は、地下1階に設置された空調機器である。
【0024】
蓄電池315、325、335、345の電池容量は、4800Ah以下であることが好ましい。これにより、防火、防爆設備が簡素化でき、設置が容易になる。
【0025】
(複数の逆変換器31-34の構成)
逆変換器31は、双方向インバータ313、双方向DCDCコンバータ314、および、蓄電池315を有する。双方向インバータ313は、双方向DCDCコンバータ314に接続される。双方向DCDCコンバータ314は、蓄電池315に接続される。双方向インバータ313における双方向DCDCコンバータ314への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)が、逆変換器31の上述の出力端である。
【0026】
逆変換器32は、双方向インバータ323、双方向DCDCコンバータ324、および、蓄電池325を有する。双方向インバータ323は、双方向DCDCコンバータ324に接続される。双方向DCDCコンバータ324は、蓄電池325に接続される。双方向インバータ323における双方向DCDCコンバータ324への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)が、逆変換器32の上述の出力端である。
【0027】
逆変換器33は、双方向インバータ333、双方向DCDCコンバータ334、および、蓄電池335を有する。双方向インバータ333は、双方向DCDCコンバータ334に接続される。双方向DCDCコンバータ334は、蓄電池335に接続される。双方向インバータ333における双方向DCDCコンバータ334への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)が、逆変換器33の上述の出力端である。
【0028】
逆変換器34は、双方向インバータ343、双方向DCDCコンバータ344、および、蓄電池345を有する。双方向インバータ343は、双方向DCDCコンバータ344に接続される。双方向DCDCコンバータ344は、蓄電池345に接続される。双方向インバータ343における双方向DCDCコンバータ344への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)が、逆変換器34の上述の出力端である。
【0029】
(制御の一例)
図2は、第1の実施形態に係る電力システムの第1状態での電力の流れを示す図である。
図3は、第1の実施形態に係る電力システムの第2状態での電力の流れを示す図である。
図4は、第1の実施形態に係る電力システムの第3状態での電力の流れを示す図である。
図5は、第1の実施形態に係る電力システムの第4状態での電力の流れを示す図である。なお、
図2、
図3、
図4、
図5は、空調機器のみを図示し、負荷としての図示は省略している。
図6(A)は、消費電力の時間推移の一例を示し、
図6(B)は、室温の時間推移の一例を示す。なお、
図6(A)、
図6(B)は、空調機器による冷房を行う場合を示す。
【0030】
図6(A)において、実線および消費電力Pc41は、空調機器41の消費電力を示し、破線および消費電力Pc42は、空調機器42の消費電力を示し、一点鎖線および消費電力Pc43は、空調機器43の消費電力を示し、二点鎖線および消費電力Pc44は、空調機器44の消費電力を示す。
図6(B)において、実線は、空調機器41が配置されたフロアの室温を示し、破線は、空調機器42が配置されたフロアの室温を示し、一点鎖線は、空調機器43が配置されたフロアの室温を示し、二点鎖線は、空調機器44が配置されたフロアの室温を示す。なお、
図6(B)では、冷房用上限温度THmxと冷房用下限温度THmnとが、全てのフロアで同じ場合を示したが異なっていてもよい。
【0031】
制御装置60は、各フロアにそれぞれ設けられた空調機器41-44を、それぞれの運転時間が重ならないように輪番運転する(
図6(A)参照)。この際、制御装置60は、電流センサCTの測定値に基づいて、所定時間(一例として30分)単位で商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、複数の逆変換器31-34の蓄電池315、325、335、345から重負荷(運転中)の負荷に放電するように、逆変換器31-34を制御する。
【0032】
例えば、
図6(A)に示すように、制御装置60は、空調機器41、空調機器42、空調機器43、空調機器44の順で輪番運転するように制御する。
【0033】
この際、制御装置60は、各空調機器41-44の運転時に、
図2、
図3、
図4、
図5に示すように、複数の蓄電池315、325、335、345からの放電で、負荷の消費電力をアシストする。
【0034】
図2に示すように、制御装置60は、空調機器41を運転するとき(負荷L41が重負荷になるとき)、空調機器42、43、44を停止させる(負荷L42、L43、L44は軽負荷となる)。その上で、制御装置60は、複数の蓄電池315、325、335、345から負荷L41に対して放電(電力供給)するように逆変換器31-34を制御する。
【0035】
制御装置60は、空調機器41が設置されたフロアの室温が冷房用上限温度に達した時に空調機器41の運転を開始する。一方、制御装置60は、空調機器41が設置されたフロアの室温が冷房用下限温度に達した時に空調機器41の運転を停止する。冷房用上限温度は、冷房用設定温度+α1℃に設定され、冷房用下限温度は、冷房用設定温度-β1℃に設定される。α1とβ1は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、α1とβ1とは、冷房温度の変化に対してユーザが許容可能な範囲に基づいて設定される。
【0036】
なお、空調機器41が暖房を行うときには、制御装置60は、空調機器41が設置されたフロアの室温が暖房用下限温度に達した時に運転を開始し、空調機器41が設置されたフロアの室温が暖房用上限温度に達した時に運転を停止する。暖房用上限温度は、暖房用設定温度+α2℃に設定され、暖房用下限温度は、暖房用設定温度-β2℃に設定される。α2とβ2は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、α2とβ2とは、暖房温度の変化に対してユーザが許容可能な範囲に基づいて設定される。
【0037】
この際、制御装置60は、商用電力系統からの供給電力が所定時間単位において所定値を超えないように、負荷L41に対する放電制御を行う。なお、所定時間単位および所定値は、例えば、電力システム10を設置している建築物の電力料金契約等に基づいて設定される。
【0038】
また、この際、制御装置60は、空調機器41と同じフロアの蓄電池315を主として放電するように制御する。具体的には、例えば、制御装置60は、負荷L41の消費電力を、主として蓄電池315の放電電力と商用電力系統からの供給電力とでまかない、商用電力系統からの供給電力が上記所定値を超えないように他の蓄電池325、335、345からの放電電力を負荷L41に供給する。
【0039】
図3に示すように、制御装置60は、空調機器42を運転するとき(負荷L42が重負荷になるとき)、空調機器41、43、44を停止させる(負荷L41、L43、L44は軽負荷となる)。その上で、制御装置60は、複数の蓄電池315、325、335、345から負荷L42に対して放電(電力供給)するように逆変換器31-34を制御する。
【0040】
制御装置60は、空調機器42が設置されたフロアの室温が冷房用上限温度に達した時に空調機器42の運転を開始する。一方、制御装置60は、空調機器42が設置されたフロアの室温が冷房用下限温度に達した時に空調機器42の運転を停止する。なお、空調機器42が暖房を行うときには、制御装置60は、空調機器42が設置されたフロアの室温が暖房用下限温度に達した時に運転を開始し、空調機器42が設置されたフロアの室温が暖房用上限温度に達した時に運転を停止する。
【0041】
この際、制御装置60は、商用電力系統からの供給電力が所定時間単位において所定値を超えないように、負荷L42に対する放電制御を行う。
【0042】
また、この際、制御装置60は、負荷L42と同じフロアの蓄電池325を主として放電するように制御する。具体的には、例えば、制御装置60は、負荷L42の消費電力を、主として蓄電池325の放電電力と商用電力系統からの供給電力とでまかない、商用電力系統からの供給電力が上記所定値を超えないように他の蓄電池315、335、345からの放電電力を負荷L42に供給する。
【0043】
図4に示すように、制御装置60は、空調機器43を運転するとき(負荷L43が重負荷になるとき)、空調機器41、42、44を停止させる(負荷L41、L42、L44は軽負荷となる)。その上で、制御装置60は、複数の蓄電池315、325、335、345から負荷L43に対して放電(電力供給)するように逆変換器31-34を制御する。
【0044】
制御装置60は、空調機器43が設置されたフロアの室温が冷房用上限温度に達した時に空調機器43の運転を開始する。一方、制御装置60は、空調機器43が設置されたフロアの室温が冷房用下限温度に達した時に空調機器43の運転を停止する。なお、空調機器43が暖房を行うときには、制御装置60は、空調機器43が設置されたフロアの室温が暖房用下限温度に達した時に運転を開始し、空調機器43が設置されたフロアの室温が暖房用上限温度に達した時に運転を停止する。
【0045】
この際、制御装置60は、商用電力系統からの供給電力が所定時間単位において所定値を超えないように負荷L43に対する放電制御を行う。
【0046】
また、この際、制御装置60は、負荷L43と同じフロアの蓄電池335を主として放電するように制御する。具体的には、例えば、制御装置60は、負荷L43の消費電力を、主として蓄電池335の放電電力と商用電力系統からの供給電力とでまかない、商用電力系統からの供給電力が上記所定値を超えないように他の蓄電池315、325、345からの放電電力を負荷L43に供給する。
【0047】
図5に示すように、制御装置60は、空調機器44を運転するとき(負荷L44が重負荷になるとき)、空調機器41、42、43を停止させる(負荷L41、L42、L43は軽負荷となる)。その上で、制御装置60は、複数の蓄電池315、325、335、345から負荷L44に対して放電(電力供給)するように逆変換器31-34を制御する。
【0048】
制御装置60は、空調機器44が設置されたフロアの室温が冷房用上限温度に達した時に空調機器44の運転を開始する。一方、制御装置60は、空調機器44が設置されたフロアの室温が冷房用下限温度に達した時に空調機器44の運転を停止する。なお、空調機器44が暖房を行うときには、制御装置60は、空調機器44が設置されたフロアの室温が暖房用下限温度に達した時に運転を開始し、空調機器44が設置されたフロアの室温が暖房用上限温度に達した時に運転を停止する。
【0049】
この際、制御装置60は、商用電力系統からの供給電力が所定時間単位において所定値を超えないように負荷L44に対する放電制御を行う。
【0050】
また、この際、制御装置60は、負荷L44と同じフロアの蓄電池335を主として放電するように制御する。具体的には、例えば、制御装置60は、負荷L44の消費電力を、主として蓄電池345の放電電力と商用電力系統からの供給電力とでまかない、商用電力系統からの供給電力が上記所定値を超えないように他の蓄電池315、325、335からの放電電力を負荷L44に供給する。
【0051】
以上のような制御を行うことで、電力システム10は、複数の空調機器を有するシステムにおいて、負荷の消費電力が急増する場合でも、商用電力系統からの供給電力の増加を抑制できる。
【0052】
また、電力システム10は、複数の空調機器を輪番運転することで、それぞれの空調機器をエネルギー効率の高い重負荷状態での運転する状態と、運転を停止する状態との二値を切り替えるように制御する。これにより、電力システム10は、例えば、高精度に設定温度に追従して制御するよりも、高効率な運転を実現できる。
【0053】
(蓄電池の充電態様)
上述の電力システム10では、負荷が軽負荷のときに、所定時間単位で商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えない範囲において、軽負荷の負荷と同じフロアの蓄電池を充電する。具体的には、例えば、制御装置60は、運転の開始前に運転していた別フロアの空調機器が運転を停止した後の期間中に、運転を開始した空調機器と同じフロアに設置されている蓄電池を充電するように制御する。
【0054】
一例として、
図6(A)の場合、空調機器42と同じフロアの蓄電池325は、空調機器41の運転停止後で負荷L42の運転開始前の期間に充電される。
【0055】
このように、軽負荷のときに充電を行うことで、商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えない範囲において蓄電池を効率的に充電できる。さらに、運転開始直前の空調機器と同じフロアの蓄電池を運転開始の直前に充電することで、この蓄電池からの運転開始時の空調機器への電力供給不足をより確実に抑制できる。
【0056】
さらに、
図7に示すように、蓄電池充電モードと輪番運転モードを設定してもよい。
図7は、1日におけるモードの選択の一例を示す図である。
図7において、tstは始業時間、tedは終業時間である。
【0057】
図7に示すように、電力システム10は、始業時間tst、終業時間tedに基づいて、日中に輪番運転モードを設定する。輪番運転モード時は、電力システム10は、上述の制御を行う。また、電力システム10は、終業時間ted後に蓄電池充電モードを設定する。蓄電池充電モード時は、電力システム10は、商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えない範囲において、複数の蓄電池315、325、335、345を充電する。
【0058】
このような制御を行うことで、電力システム10は、複数の蓄電池315、325、335、345をより確実に充電でき、充電した電力を輪番運転モード時に有効に活用できる。
【0059】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る電力システムについて、図を参照して説明する。
図8は、第2の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
【0060】
図8に示すように、第2の実施形態に係る電力システム10Aは、第1の実施形態に係る電力システム10に対して、複数の逆変換器31-34を複数のパワーコンディショナ31A-34Aに置き換えた点で異なる。電力システム10Aの他の構成は、電力システム10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0061】
電力システム10Aは、パワーコンディショナ31A、パワーコンディショナ32A、パワーコンディショナ33A、および、パワーコンディショナ34Aを備える。
【0062】
複数のパワーコンディショナ31A-34Aは、受電点P500に接続し、受電点P500において複数のパワーコンディショナ31A-34Aの出力が集電され、商用電力連系ライン500を通じて商用電力系統に連系される。
【0063】
負荷L41は、受電点P500とパワーコンディショナ31Aを接続するラインに対して接続され、負荷L42は、受電点P500とパワーコンディショナ32Aを接続するラインに対して接続され、負荷L43は、受電点P500とパワーコンディショナ33Aを接続するラインに対して接続され、負荷L44は、受電点P500とパワーコンディショナ34Aを接続するラインに対して接続される。
【0064】
パワーコンディショナ31Aは、双方向インバータ313、双方向DCDCコンバータ314、蓄電池315、および、系統連系リレー316を有する。双方向インバータ313は、双方向DCDCコンバータ314に接続される。双方向DCDCコンバータ314は、蓄電池315に接続される。双方向インバータ313における双方向DCDCコンバータ314への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)は、系統連系リレー316の一方端子に接続し、系統連系リレー316の他方端子がパワーコンディショナ31Aの上述の出力端となる。
【0065】
パワーコンディショナ32Aは、双方向インバータ323、双方向DCDCコンバータ324、蓄電池325、および、系統連系リレー326を有する。双方向インバータ323は、双方向DCDCコンバータ324に接続される。双方向DCDCコンバータ324は、蓄電池325に接続される。双方向インバータ323における双方向DCDCコンバータ324への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)は、系統連系リレー326の一方端子に接続し、系統連系リレー326の他方端子がパワーコンディショナ32Aの上述の出力端となる。
【0066】
パワーコンディショナ33Aは、双方向インバータ333、双方向DCDCコンバータ334、蓄電池335、および、系統連系リレー336を有する。双方向インバータ333は、双方向DCDCコンバータ334に接続される。双方向DCDCコンバータ334は、蓄電池335に接続される。双方向インバータ333における双方向DCDCコンバータ334への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)は、系統連系リレー336の一方端子に接続し、系統連系リレー336の他方端子がパワーコンディショナ33Aの上述の出力端となる。
【0067】
パワーコンディショナ34Aは、双方向インバータ343、双方向DCDCコンバータ344、蓄電池345、および、系統連系リレー346を有する。双方向インバータ343は、双方向DCDCコンバータ344に接続される。双方向DCDCコンバータ344は、蓄電池345に接続される。双方向インバータ343における双方向DCDCコンバータ344への接続端(直流端)と逆側の端(交流端)は、系統連系リレー346の一方端子に接続し、系統連系リレー346の他方端子がパワーコンディショナ34Aの上述の出力端となる。
【0068】
パワーコンディショナ31Aは、空調機器41と同じフロアに配置され、パワーコンディショナ32Aは、空調機器42と同じフロアに配置され、パワーコンディショナ33Aは、空調機器43と同じフロアに配置され、パワーコンディショナ34Aは、空調機器44と同じフロアに配置される。
【0069】
このように、複数のパワーコンディショナ31A-34Aを用いる電力システム10Aにおいても、電力システム10と同様の制御が可能であり、同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
<1> 双方向インバータ、双方向DC-DCコンバータ、および、蓄電池を少なくとも有する複数の逆変換器と、
前記複数の逆変換器の各々の出力がそれぞれ系統連系リレーを介して集電され、商用電力系統に連系される受電点と、
前記複数の逆変換器と前記系統連系リレーとの間にそれぞれ接続され、各々が空調機器を含む複数の負荷と、
前記受電点での電流の向きおよび大きさを検出する電流センサと、
前記蓄電池それぞれの充放電を制御する制御装置と、
を備えた電力システムであって、
前記複数の逆変換器は、それぞれが同一の建築物の異なるフロアに設置され、
前記制御装置は、
前記フロアにそれぞれ設けられた前記空調機器をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、
前記電流センサの測定値に基づいて、所定時間単位で前記商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、前記複数の逆変換器の蓄電池から、重負荷の前記負荷に放電するように制御する、電力システム。
【0071】
<2> 双方向インバータ、双方向DC-DCコンバータ、蓄電池、および、系統連系リレーを少なくとも有する複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナの出力が集電されて商用電力系統に連系される受電点と、
前記複数のパワーコンディショナと前記受電点との間にそれぞれ接続され、各々が空調機器を含む複数の負荷と、
前記受電点での電流の向きおよび大きさを検出する電流センサと、
前記蓄電池それぞれの充放電を制御する制御装置と、
を備えた電力システムであって、
前記複数のパワーコンディショナは、それぞれが同一の建築物の異なるフロアに設置され、
前記制御装置は、
前記フロアにそれぞれ設けられた空調機器をそれぞれの運転時間が重ならないように輪番運転するとともに、
前記電流センサの測定値に基づいて、所定時間単位で前記商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えないように、前記複数のパワーコンディショナの蓄電池から、重負荷の前記負荷に放電するように制御する、電力システム。
【0072】
<3> 前記制御装置は、前記所定時間単位で前記商用電力系統から調達する電力量が所定値を超えない範囲において、軽負荷の前記空調機器と同じフロアの蓄電池を充電する、<1>または<2>の電力システム。
【0073】
<4>前記制御装置は、前記空調機器が設置されているフロアの室温が、冷房時には冷房用上限温度、暖房時には暖房用下限温度に達した時に、運転を開始する、<1>乃至<3>のいずれかの電力システム。
【0074】
<5>前記制御装置は、前記運転の開始を行う前に運転していた別フロアの前記空調機器が運転を停止した後の期間中に、前記運転を開始した空調機器と同じフロアに設置されている前記蓄電池を充電するように制御する、<4>の電力システム。
【0075】
<6>前記蓄電池の電池容量は、4800Ah以下である、<1>乃至<5>のいずれかの電力システム。
【符号の説明】
【0076】
10、10A:電力システム
31、32、33、34:逆変換器
31A、32A、33A、34A:パワーコンディショナ
41、42、43、44:空調機器
L41、L42、L43、L44:負荷
51、52、53、54、346、316、326、336:系統連系リレー
60:制御装置
313、323、333、343:双方向インバータ
314、324、334、344:双方向DCDCコンバータ
315、325、335、345:蓄電池
500:商用電力連系ライン
CT:電流センサ
P500:受電点