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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】熱式センサチップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/18 20060101AFI20241029BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N27/18
G01N25/18 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021039588
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139287
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 隆
(72)【発明者】
【氏名】桃谷 幸志
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190878(JP,A)
【文献】特開平11-211689(JP,A)
【文献】特開2006-194853(JP,A)
【文献】特開2016-138797(JP,A)
【文献】特表2014-531327(JP,A)
【文献】特開平08-292202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/363589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するキャビティが形成されている基板と、
前記開口を覆うように、前記基板の表面に配置されているメンブレンと、
前記メンブレンの上又は内部に設けられたヒータと、を備え、
前記ヒータは、導電部材からなるメッシュ状の配線であることを特徴とする熱式センサチップ。
【請求項2】
前記ヒータは、前記配線の間に複数の第1ホールが規則的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱式センサチップ。
【請求項3】
前記複数の第1ホールは、千鳥配置又はハニカム配置で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱式センサチップ。
【請求項4】
前記メンブレンは、前記ヒータを包み込む絶縁材料であり、前記基板の表面の上面視において前記ヒータと前記第1ホールを共有することを特徴とする請求項2又は3に記載の熱式センサチップ。
【請求項5】
前記基板は、シリコン系の材料であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の熱式センサチップ。
【請求項6】
前記基板は、表面の面方位が(100)の矩形の単結晶シリコンであり、各辺の軸方位が<110>であることを特徴とする請求項5に記載の熱式センサチップ。
【請求項7】
前記第1ホールは、前記単結晶シリコンの各辺に沿った軸方向に見て、隣接する他の第1ホールと重複していることを特徴とする請求項6に記載の熱式センサチップ。
【請求項8】
前記ヒータは、一対の金属端子が設けられており、
前記配線は、前記一対の金属端子の間に、並列接続及び直列接続されている複数の導電路を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱式センサチップ。
【請求項9】
前記キャビティは、底部を有する凹部であり、前記開口から前記底部に向けてテーパ角度を有する側面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱式センサチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式センサチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの種類や濃度を判別する様々なガスセンサが考案されている。このようなセンサの一つに、気体の熱伝導率の温度特性の相違に着目した熱式ガスセンサが知られている(特許文献1参照)。熱式ガスセンサは、高温に加熱された白金等の抵抗体からなるセンサチップに検知対象であるガスが触れると、ガス固有の熱伝導率によりガスへの放熱の状態が変わり、センサチップの温度が変化する。この温度変化に伴いセンサチップを構成する抵抗体の抵抗値も変化する。抵抗値の変化は、ガスの濃度(湿度)やガス種によって異なるため、抵抗値の変化量をブリッジ回路によって電圧として取り出すことで、ガス濃度やガス種を判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5055349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の熱式ガスセンサは、抵抗体の熱をできるだけ検知対象であるガスに放熱させることが検出感度の向上のために重要である。例えば、特許文献1の熱式ガスセンサでは、発熱体を蛇行させることでガスへの放熱性を向上している。
【0005】
しかしながら、発熱体を蛇行させることで、発熱体の全長が長くなり抵抗値も大きくなる。その結果、発熱体の発熱温度が高くなりづらく、検出感度の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスへの放熱性が良好な新たな構成の熱式センサチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、開口を有するキャビティが形成されている基板と、開口を覆うように、基板の表面に配置されているメンブレンと、メンブレンの上又は内部に設けられたヒータと、を備える熱式センサチップである。ヒータは、導電部材からなるメッシュ状の配線である。
【0008】
この態様によると、配線がメッシュ状であるため、蛇行したヒータと比較して抵抗の低いヒータを実現でき、発熱温度を大きくしたり、消費電力を抑えたりすることができる。また、ヒータの抵抗の増加を抑制しつつヒータの面積を大きくできるため、検知対象であるガスへの放熱性を高めることができる。
【0009】
ここで、基板は、例えば、単結晶シリコンやセラミックスといった温度による形状の変化が小さい材料が好ましい。また、基板は、半導体プロセスによる高精度な加工が容易な材料であってもよい。例えば、キャビティを半導体プロセスのエッチングで形成する場合、単結晶シリコンを用いることでキャビティの形状の制御が容易となる。また、キャビティとは、基板の内部に形成されているものであり、少なくとも基板の一方の表面に開口を有していることが好ましい。なお、キャビティは、基板を貫通するように基板の両方の表
面に開口を有していてもよい。また、メンブレンとは、ヒータの一部又は全部を内包できる構成であればよく、材料は特に限定されないが、ヒータを流れる電流を考慮すれば、半導体プロセスで形成可能な絶縁性の薄膜が好ましい。また、メンブレンの内部に設けられているヒータは、その全体が完全に包み込まれていなくてもよく、一部が外部に露出したり、他の部品と接合したりしていてもよい。また、ヒータは、抵抗体となり得る材料であればよく、例えば、白金といった金属や多結晶シリコンといったセラミックスであってもよい。
【0010】
ヒータは、配線の間に複数の第1ホールが規則的に形成されていてもよい。複数の第1ホールは、例えば、千鳥配置やハニカム配置といった規則的な配置で形成されていてもよい。これにより、ヒータの熱を均等にガスへ放熱できる。
【0011】
メンブレンは、ヒータを包み込む絶縁材料であり、基板表面の上面視においてヒータと第1ホールを共有していてもよい。これにより、メンブレンに包まれたヒータの表面だけでなく、第1ホールの内壁からも放熱できる。
【0012】
基板は、シリコン系の材料であってもよい。シリコン系の材料とは、例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコンである。
【0013】
基板は、表面の面方位が(100)の矩形の単結晶シリコンであり、各辺の軸方位が<110>であってもよい。これにより、シリコンの結晶異方性エッチングを用いた基板表面から所定形状のキャビティを精度良く形成できる。そのため、キャビティを通過するガスに対する放熱性が安定し、チップの個体差による検出感度のバラツキを抑えられる。
【0014】
第1ホールは、単結晶シリコンの各辺に沿った軸方向に見て、隣接する他の第1ホールと重複していてもよい。これにより、第1ホールから所定のエッチング液(水酸化カリウム(KOH)や4メチル水酸化アンモニウム(TMAH))を基板表面に浸液させることで、簡易にキャビティを形成できる。また、基板上にメンブレンやヒータを形成してからでもキャビティを形成できるので、熱式センサチップの製造プロセスの各工程の自由度が増す。
【0015】
ヒータは、一対の金属端子が設けられており、配線は、一対の金属端子の間に、並列接続及び直列接続されている複数の導電路を有してもよい。これにより、一対の金属端子間の抵抗を下げられる。ここで、金属端子は、例えば、金、白金、銀等の元素を含む金属又は合金が用いられる。
【0016】
キャビティは、底部を有する凹部であり、開口から底部に向けてテーパ角度を有する側面が形成されていてもよい。これにより、キャビティが基板の表裏を貫通していないため、基板を含む熱式センサチップ全体の剛性が増す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスへの放熱性が良好な新たな構成の熱式センサチップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例に係る熱式センサチップの上面図である。
図2図1に示す熱式センサチップのA-A断面図である。
図3図3(a)は、実施例に係る複数の第1ホールの配置を説明するための図、図3(b)は、変形例に係る複数の第1ホールの配置を説明するための図である。
図4図4(a)~図4(c)は、実施例に係る熱式センサチップの製造工程を説明するための図である。
図5図5(a)~図5(c)は、実施例に係る熱式センサチップの製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[適用例]
本適用例においては、気体への放熱によりヒータの到達温度若しくはヒータの消費電力が変化することで、気体の熱伝導率に応じた出力が得られる熱伝導式センサについて説明する。本適用例に係る熱伝導式センサが備える熱式センサチップ1は、図1図2に示すように、熱式センサチップ1の単結晶シリコンの基板3の中央部に、キャビティ2形成されており、その上を覆うように、メッシュ状のヒータ5が配置されている構造である。
【0020】
本適用例に係る熱式センサチップ1は、薄膜から構成されるメンブレン4に設けられたメッシュ状のヒータ5を発熱させ、その発熱挙動から気体の熱伝導率を検知することができる。熱伝導率は気体の種類、濃度によって異なるため、熱式センサチップ1は、気体判別や濃度検知に応用できる。検知の際に重要な点は、ヒータ5の熱を、検知対象であるガス側にできるだけ放熱させることである。仮に、基板3側に熱が逃げると、ガスの熱伝導率の違いで検知信号の変化が小さくなってしまったり(感度低下)、消費電力効率が悪くなったりする。
【0021】
そこで、より効率的にガスへの放熱を促すため、熱式センサチップ1ではメッシュ状のヒータを採用している。加えて、メッシュ状のヒータに形成されている第1ホール6をエッチング液の供給経路とすることで、チップの小型化、プロセスの簡素化(すなわち低コスト化)に寄与する。
【0022】
また、ヒータ5がメッシュ状であり、配線の間にホールがあることにより、ヒータ5とガスとの接触面積を大きくすることができる。これにより、ヒータ5の熱がより効率的にガスに放熱されることになり、ガスの熱伝導率の検知感度が向上する。また、ヒータ5の熱がガスへ効率的に伝わるということで、熱が基板3へ逃げる量が軽減され、ヒータ5の消費電力効率が改善する。
【0023】
[実施例]
以下、本発明の実施例に係る熱式センサチップについて、図面を用いて詳細に説明する。以下の実施形態においては、本発明を熱式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサに適用した例について説明する。なお、標準的な熱伝導式センサは、熱式センサチップ以外に、流路を構成する筐体や、熱式センサチップの駆動や出力信号の処理を行う回路(例えばブリッジ回路)を備えているが、筐体や回路の構成については、本発明の熱式センサチップの構成や用途、目的に応じて適宜選択すればよい。また、本発明に係る熱式センサチップは、以下の構成には限定されない。
【0024】
<熱式センサチップ>
図1は、実施例に係る熱式センサチップの上面図である。図2は、図1に示す熱式センサチップのA-A断面図である。熱式センサチップ1は、例えば、ガスメータや燃焼機器、自動車等の内燃機関、燃料電池、その他医療等の産業機器、組込機器に組み込まれ、流路を通過する流体の種類や濃度を測定するためのガスセンサに適用できる。
【0025】
熱式センサチップ1は、開口2aを有するキャビティ2が内部に形成されている基板3と、開口2aを覆うように、基板3の表面に配置されているメンブレン4と、メンブレン4の上又は内部に設けられたヒータ5と、を備える。ヒータ5は、導電部材からなるメッシュ状の配線である。導電部材としては、白金やポリシリコン、単結晶シリコンが挙げら
れる。
【0026】
図1図2に示すように、ヒータ5は、配線がメッシュ状であるため、蛇行したヒータと比較して抵抗の低いヒータを実現でき、消費電力を抑えられる。また、ヒータの抵抗の増加を抑制しつつヒータの面積を大きくできるため、検知対象であるガスへの放熱性を高めることができる。
【0027】
基板3は、半導体プロセスによる加工が可能なシリコン系の材料、例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコンが用いられる。本実施例における基板3は、表面3aの面方位が(100)の矩形の単結晶シリコンであり、各辺3b,3cの軸方位が<110>となるように直方体の各面が構成されている。単結晶シリコンは、温度による形状の変化が比較的小さい材料であり、半導体プロセスによる高精度な加工も容易な材料である。また、キャビティ2を半導体プロセスのエッチングで形成する場合、単結晶シリコンを用いることでキャビティの形状の制御が容易となる。例えば、後述する製造方法で用いられるシリコンの結晶異方性エッチングにより、基板表面から所定形状のキャビティを精度良く形成できる。
【0028】
メンブレン4は、ヒータ5の一部又は全部を内包できる構成であればよく、材料は特に限定されないが、ヒータ5を流れる電流を考慮すれば、半導体プロセスで形成可能な絶縁性の薄膜が好ましい。本実施例ではヒータ5の材料としてポリシリコンが用いられている。また、本実施例に係るヒータ5は、メンブレン4の内部に全体が完全に包み込まれているが、一部が外部に露出したり、他の部品と接合したりしていてもよい。このメンブレン4は、キャビティ2とともに、中空構造の薄膜を形成している。
【0029】
また、図1図2に示すように、本実施例に係るヒータ5は、第1ホール6が各配線5a同士の間に規則的に形成されている。本実施例に係る複数の第1ホール6は、開口部の形状が菱形(矩形)のものが規則的に千鳥配置されている。これにより、ヒータ5の熱を均等にガスへ放熱できる。なお、第1ホール6の開口部の配置は、これに限られず、ハニカム構造等であってもよい。
【0030】
また、ヒータ5は、一対の金属端子8が設けられており、配線5aは、一対の金属端子8の間に、並列接続及び直列接続されている複数の導電路を構成している。これにより、一対の金属端子間の抵抗を下げられる。ここで、金属端子8としては、例えば、金が用いられる。
【0031】
メンブレン4は、基板表面の上面視において第1ホール6と重なる位置に第2ホール7が形成されている。これにより、メンブレン4に包まれたヒータ5の表面だけでなく、第1ホール6の内壁6aからも放熱できる。なお、本実施例に係る第2ホール7は、内壁7aがメンブレン4の一部で構成されており、配線5aが露出していないが、放熱性を考慮して配線5aが内壁7aから露出するように第2ホール7を形成してもよい。すなわち、第1ホール6と第2ホール7とは略重なった状態であり、完全に一致する必要はない。本実施例において、第1ホール6と第2ホール7の上記のような関係について、メンブレン4とヒータ5とが第1ホール6を共有していると称する。
【0032】
キャビティ2は、底部2b底部を有する凹部であり、開口2aから底部2bに向けてテーパ角度を有する側面2cが形成されている。なお、側面2cは、単結晶シリコンの(111)面に相当する。本実施例に係るキャビティ2は、基板3の表裏を貫通していないため、基板3を含む熱式センサチップ1全体の剛性が増す。また、キャビティ2の内部を通過するガスの流入口又は流出口となる開口12,13が、メンブレン4に設けられている。
【0033】
<第1ホール6および第2ホール7の配置>
本実施例では、単結晶シリコンを用いた結晶異方性エッチングにより、個々の第1ホール6および第2ホール7の大きさより格段に大きなキャビティ2を形成できる。第1ホール6と第2ホール7とは完全に一致する必要はないが,結晶異方性エッチングの際のエッチング液を浸入させる用途として用いられる場合、これらのホールに違いはなく、メンブレン4とヒータ5とは第1ホール6を共有している。このため,以後,使い分けが必要な場合を除き,第1ホール6と第2ホール7とは区別せずに第1ホール6にて代表して説明を行う。図3(a)は、実施例に係る複数の第1ホールの配置を説明するための図、図3(b)は、変形例に係る複数の第1ホールの配置を説明するための図である。
【0034】
図3(a)に示すように、第1ホール6’は、単結晶シリコンの一辺に沿ったX軸方向<110>に見て、隣接する他の第1ホール6”と領域RXが重複している。同様に第1ホール6’は、単結晶シリコンの一辺に沿ったY軸方向<110>に見て、隣接する他の第1ホール6”と領域RYが重複している。このような関係は、他の隣接する第1ホール6同士でも同様である。つまり、少なくともヒータ5のメッシュ状の領域においては、基板3のX軸方向<110>に見た場合に第1ホール6が存在しない領域がなく、同様に、基板3のY軸方向<110>に見た場合に第1ホール6が存在しない領域がない。その結果、各第1ホール6から基板3の表面に供給したエッチング液によって、所定形状の大きな一つのキャビティ2を形成できる。そのため、キャビティ2を通過するガスに対する放熱性が安定し、チップの個体差による検出感度のバラツキを抑えられる。なお,領域RXおよび領域RYの重複がない場合でも,基板3のX軸方向<110>およびY軸方向<110>にごくわずかサイドエッチングが進むため,エッチングの時間を長くすることで隣接する他のホールと繋がることは可能である。だが,領域RXおよび領域RYの重複させることで過度なエッチング時間もなくなり,簡易で質の高いエッチングを実現できる。
【0035】
また、図3(b)に示す短冊状の第1ホール9が規則的に複数形成された基板3であっても、図3(a)の第1ホール6と同様に、所定形状の大きな一つのキャビティ2を形成できる。
【0036】
<製造方法>
次に、熱式センサチップ1の製造方法について説明する。図4(a)~図4(c)は、実施例に係る熱式センサチップの製造工程の前半を説明するための図である。図5(a)~図5(c)は、実施例に係る熱式センサチップの製造工程の後半を説明するための図である。
【0037】
はじめに、表面3aの面方位が(100)の単結晶シリコンの基板3を準備する。基板3は、上面視において矩形であり、直交する二辺の一方のX軸方位及び、他方のY軸方位が<110>である(図4(a)参照)。次に、基板3の表面3a及び裏面3dに保護膜10a、10bを形成する(図4(b)参照)。保護膜10a、10bは、例えば、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)である。保護膜10aはメンブレン4を構成する膜の一部となる。
【0038】
次に、保護膜10aの上にヒータとなる導電部材膜11を成膜し、メッシュ状の所定のパターンを形成する(図4(c)参照)。本実施例では、多結晶シリコンを低圧化学気相堆積法(LPCVD)によって成膜する。次に、導電部材膜11の全体を窒化シリコン等の保護膜10cで覆い、保護膜10cの一部を開口し、その部分に金等の金属膜により金属端子8を設ける(図5(a)参照)。
【0039】
次に、ヒータ5の第1ホール6に対応する部分に充填されている保護膜10a,10c
を除去し、第2ホール7を形成する(図5(b)参照。)。その後、第1ホール6(第2ホール7)から所定のエッチング液(水酸化カリウム(KOH)や4メチル水酸化アンモニウム(TMAH))を基板表面に供給することで、簡易にキャビティ2を形成できる(図5(c)参照)。また、基板上にメンブレン4やヒータ5を形成してからでもキャビティ2を形成できるので、熱式センサチップ1の製造プロセスの各工程の自由度が増す。
【0040】
以上、図面を参照しながら、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明した。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を上述の実施形態に限定する趣旨のものではなく、実施形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0041】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<付記1>
開口(2a)を有するキャビティ(2)が形成されている基板(3)と、
前記開口(2a)を覆うように、前記基板(3)の表面(3a)に配置されているメンブレン(4)と、
前記メンブレン(4)の上又は内部に設けられたヒータ(5)と、を備え、
前記ヒータ(5)は、導電部材からなるメッシュ状の配線であることを特徴とする熱式センサチップ(1)。
【符号の説明】
【0042】
1 熱式センサチップ
2 キャビティ
2a 開口
3 基板
4 メンブレン
5 ヒータ
6 第1ホール
7 第2ホール
8 金属端子
図1
図2
図3
図4
図5