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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】金属異物検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20241029BHJP
   G01V 3/10 20060101ALI20241029BHJP
   B65G 11/18 20060101ALI20241029BHJP
   B65G 11/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N27/72
G01V3/10 E
B65G11/18 Z
B65G11/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020195079
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083646
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】515236444
【氏名又は名称】NIP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】隅井 典生
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将嗣
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063229(JP,A)
【文献】特開2020-008336(JP,A)
【文献】特開2014-032023(JP,A)
【文献】特開2009-257989(JP,A)
【文献】特開平06-273535(JP,A)
【文献】特開2002-040153(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
G01V 3/00-3/40
B65G 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を搬送路である傾斜面で前記被検査物自身の質量の重力を利用して搬送する搬送手段と、
前記被検査物中の金属異物である磁性体を磁化又は磁化強化するためのもので、前記搬送路の途中に設けられた磁化手段と、
前記搬送路の途中に設けられ、前記磁化手段の下部側に配置され、通過する前記被検査物中の前記磁性体を検知して検知信号を出力するセンサー手段と、
前記検知信号を取得し前記検知信号を信号処理して前記磁性体の有無を判断し、前記判断の結果を示す出力信号を出力する信号処理部からなる検知手段と
からなる金属異物検知装置において、
前記搬送手段は、
前記傾斜面の上部に位置し、前記被検査物が加速されながら滑走する第1搬送路と、
前記第1搬送路の下部に位置し、前記第1搬送路と連続した前記傾斜面を形成する第2搬送路とからなり、
前記第1搬送路、及び前記第2搬送路は、前記被検査物が前記傾斜面を滑り降下するときの速度を変えるために、摩擦係数が異なるものを前記搬送路に着脱自在で交換できるものであり、
前記第1搬送路は、前記傾斜面の傾斜角度を微調整するための角度微調整手段を備えている
ことを特徴とする金属異物検知装置。
【請求項2】
請求項に記載の金属異物検知装置において、
前記センサー手段を前記被検査物が通過するタイミングを検知するためのもので、前記センサー手段と前記磁化手段の間に前記センサー手段と隣接して設置され、前記被検査物が通過し始めたタイミングと通過し終わったタイミングの両方を検知し前記信号処理部へ送信する検知器
からなることを特徴とする金属異物検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属異物検知装置において、
前記第1搬送路はローラーコンベヤからなる
ことを特徴とする金属異物検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物に混入した金属異物を検知する金属異物検知装置に関するものである。特に、アルミニウム、アルミ蒸着フィルム等の非磁性金属、プラスチック樹脂フィルム等の非金属の包装袋に、充填された被検査物中に混入した金属異物を検知する金属異物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属異物の検出装置は、様々な分野で利用されている。その代表的な例は、商品の製造工程で、商品に混入した金属異物の検出である。具体的には、食品、医薬品等の製造過程において、使用されている搬送機、洗浄機、攪拌機、切断機、練機、蒸し器等の各種容器、刃物、篩等の一部が、摩耗、金属疲労等を受けて、むくれ、破断、剥がれ、削れ、欠け等による金属片が食品等の製品に異物として、混入することがある。
【0003】
これらの異物を検知し、商品から排除することが重要である。商品である被検査物に混入した磁性体金属異物を検知する手段として、電磁波型のセンサーコイル等が利用されている。金属異物は、上述の各種容器、刃物、篩等を構成するオーステナイト系ステンレス鋼であることが多い。オーステナイト系ステンレス鋼は、塑性変形するとマルテンサイト変態を誘発し、弱い磁性を持つ結晶構造に変化する。
【0004】
このため、センサーコイル近傍に磁石ブースターを配置し、その強力な磁力線で金属異物を磁化させるので、高い感度で金属異物の検知を可能としたものである。被検査物が磁石ブースターを通過するとき、磁石ブースターが発生する磁化の働きで、金属異物の磁性が一定の方向に向き磁化される。本発明の出願人等は、この原理を用いた金属異物検知装置を特許文献1、2に記載の発明として提案した。
【0005】
特許文献1、2に記載された装置は、食品等の被検出物中の金属異物を検知するものであり、提案したセンサーコイルを用いて、金属異物である微小な磁性体の検知に成功した。具体的には、特許文献1には、被検出物中に混入した金属異物を検知する金属異物検知方法と金属異物検知装置が開示されている。この発明によると、被検出物中に混入したステンレス等の金属異物を検知するのみならず、導電性の包装材料で包まれた食品、医薬品、工業用材料等の被検出物中に混入した金属異物も検知できる。
【0006】
特許文献1に記載された金属異物検知装置は、コアに導線を巻いた構成の1つのコイルを有した検出部により微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した金属異物からの検出磁界を、コイルの検出電圧、又は検出電流として検出して検出信号を出力するものである。この微小磁界は、コイルに、数百Hzから数十kHzの周波数、又は直流で印加される電圧であって供給される電流が微少で、かつコイルを構成するコアの磁化(B-H)特性の磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものである。
【0007】
金属異物がコイル付近を通過するとき、コイルに鎖交する磁力線の形成が乱れ、信号電圧の振幅、位相、周波数が変化し、これにより、金属異物を検知する。この装置は、1mm以下の金属異物を検知できる優れた感度をもつものである。また、アルミニウム包装内の針等の細長い金属物と、金属粉末からなる酸化防止剤の検知が可能である。
【0008】
特許文献3に開示された金属探知機は、被検出物を搬送する搬送路と、搬送路の途中に設けられ、電流を流して磁界を発生させるためのコイルがコアに巻かれたセンサーコイルと、コアに接触して配置されている磁石からなる。詳しくは、磁石の静磁場とセンサーコイルの交流電流によって、不平等な静磁場を形成させている。被検出物がこの不平等磁場を横切ったとき、金属異物が一時的に磁化されると同時に、磁化された被検出物から発生する磁場が、センサーコイルに鎖交する磁場を乱す。
【0009】
その磁場の乱れをセンサーコイルが検出信号として送出している。特許文献4には、流れている包装袋の中の金属異物を、包装袋を一時蓄積するアキュームの手前に検知する金属異物検知装置が開示されている。金属異物検知装置は、包装袋を細長い中空の管状ガイドの中を通し、管状ガイドの両側に配置したセンサーコイルを用いて、金属異物を検知している。
【0010】
また、包装体に充填された被包装体からなる被検査物をセンサーコイルからなるセンサーで、その中の金属異物を検知するもので、搬送面の傾斜角度が調整自在なローラーコンベヤからなる小型の金属異物検知装置が開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開WO2003/027659号公報
【文献】特開2005-188985号公報
【文献】特開2004-85439号公報
【文献】実用新案登録第3177557号
【文献】特開2018-063229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のこれらの金属探知機、金属異物検知装置等は、ベルトコンベヤで搬送される商品を検査するための装置であったり、手動でセンサーコイルの付近を通過させて商品を検査したりするものが多い。特許文献5に記載された金属異物検知装置は、小規模で多品種のロッドを扱う食品加工現場でも使用できるように、ベルトコンベヤを備えなくても、被検査物を重力で落下させて検知し、卓上でも利用でき小型の金属異物検知装置である。
【0013】
この卓上型金属異物検知装置は、小型の金属異物検知装置の搬送面が全てローラーからなると、ローラーによる振動が発生し、センサーで検知した信号にばらつきが生じる。また、ローラー上を滑走する被検査物が加速しながら滑走するため、被検査物がセンサーコイルを通過する速度が一定にならないという問題点があり、改良の余地がある。
【0014】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、小規模で多品種の医薬品、化粧品、食料品等の被検査物において、これに含まれる金属異物を検知できる小型の金属異物検知装置を提供する。
【0015】
本発明の他の目的は、被検査物がセンサーを通過する速度が一定になる小型の金属異物検知装置を提供する。
本発明の更に他の目的は、被検査物がセンサーを通過するとき、振動を発生しない搬送面を備える小型の金属異物検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の金属異物検知装置は、
被検査物を搬送路である傾斜面で前記被検査物自身の質量の重力を利用して搬送する搬送手段と、
前記被検査物中の金属異物である磁性体を磁化又は磁化強化するためのもので、前記搬送路の途中に設けられた磁化手段と、
前記搬送路の途中に設けられ、前記磁化手段の下部側に配置され、通過する前記被検査物中の前記磁性体を検知して検知信号を出力するセンサー手段と、
前記検知信号を取得し前記検知信号を信号処理して前記磁性体の有無を判断し、前記判断の結果を示す出力信号を出力する信号処理部からなる検知手段と
からなる金属異物検知装置において、
前記搬送手段は、
前記傾斜面の上部に位置し、前記被検査物が加速されながら滑走する第1搬送路と、
前記第1搬送路の下部に位置し、前記第1搬送路と連続した前記傾斜面を形成する第2搬送路とからなり、
前記第1搬送路、及び前記第2搬送路は、前記被検査物が前記傾斜面を滑り降下するときの速度を変えるために、摩擦係数が異なるものを前記搬送路に着脱自在で交換できるものであり、
前記第1搬送路は、前記傾斜面の傾斜角度を微調整するための角度微調整手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明2の金属異物検知装は、発明1において、前記センサー手段を前記被検査物が通過するタイミングを検知するためのもので、前記センサー手段と前記磁化手段の間に前記センサー手段と隣接して設置され、前記被検査物が通過し始めたタイミングと通過し終わったタイミングの両方を検知し前記信号処理部へ送信する検知器からなることを特徴とする。
【0018】
本発明3の金属異物検知装置は、発明1又は2において、前記第1搬送路はローラーコンベヤからなることを特徴とする。
【0021】
上述の検知部の検知原理は、少なくとも1つのセンサーコイルに、電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した被検査物の中の磁性体の金属異物からの検出磁界をセンサーコイルの検出電圧又は検出電流として検出して検知信号を出力するものである。この検知信号を解析して金属異物を特定する。センサーコイルの検出電圧又は検出電流は、微小な値のものであり、外部の磁界又は磁界の乱れの影響を受けやすいので、センサーコイルを含めて、検知部を外部の磁界又は磁界の乱れから磁気シールドする。
【0022】
微少磁界は、センサーコイルに印加される電圧又は供給される電流が微少で、かつセンサーコイルを構成するコアの磁化(B-H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数又は直流であり、金属異物がセンサーコイル付近を通過するとき、センサーコイルに流れる電圧、電流が誘起されるものである。これは、センサーコイルの周波数が変化するとも言うことができる。
センサーコイルの微少磁界は、特許文献1等に示す通り、公知技術であり、詳細については省略する。
【0023】
本発明の出願人は、「金属異物検知方法とその装置」に関する特許出願している(特許文献1)。この発明の内容が全て又はその一部が、本発明にも含まれる。この発明の金属異物検知方法は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて、前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出工程とからなる金属異物検知方法において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力工程と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定するために信号を解析する信号解析工程とからなり、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B-H)特性の内、前記磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、前記電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の金属異物検知装置は、センサーコイルに供給される電流、又は印加される電圧は、上述の周波数に限定されるものではなく、直流電流から数百Hzまでの交流電流を供給する。センサーコイルには、特別に、アクティブに電流供給、電圧印加がされていなくても、増幅器のバイアス電圧を印加しておき、磁性体の金属異物を検知する。被検査体がセンサーコイルを付近を通過すると、被検査体内の磁性体から発生する磁場がセンサーコイルを切りその状態を変化させるので、センサーコイルとその後段の信号処理でこれを検知する。
【0025】
本発明の金属異物検知装置は、非金属物である被検出物内の磁性体を感度よく検知できる。更に、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料で包装された包装袋や容器等を有する被検出物内の磁性体が検知できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明の金属異物検知装置は、滑り台の傾斜角度を調整し、かつ、異なる摩擦係数の搬送面を設置することで、被検査物がセンサーを通過する速度を一定にした。
また、本発明の金属異物検知装置は、センサー付近の搬送面を振動が発生しない搬送面にし、検知感度を向上させた。
【0027】
更に、本発明の金属異物検知装置は、滑り台を調整手段でその傾斜角度を調整できるようになり、被検査物を搬送面の摩擦係数に合わせて、滑り台の傾斜角度を調整できるようになった。
更に、小型のローラーコンベヤを用い小型化が実現でき、卓上でも利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の外観を示す外観図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の正面の概要を示す概念図であり、図1の正面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の平面の概要を示す概念図であり、図1の平面図である。
図4図4は、センサー3のセンサーコイルの構成例を示す図であり、図4(a)はセンサーコイルの正面図、図4(b)は図4(a)の平面図、及び図4(c)は図4(a)のA-A線の切断断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1のローラーコンベヤ23の概要を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態の金属異物検知装置1において、被検査物2が滑り面20を移動するときの移動解析のための概念図である。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態の金属異物検知装置1において、角度微調整手段を備えた金属異物検知装置1の概要を図示している側面図である。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態の金属異物検知装置1において、角度微調整手段を備えた金属異物検知装置1の図7に図示したA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施の形態〕
図1は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の外観を図示している外観図である。図2は、図1の金属異物検知装置1の正面の概要を図示した概念図で、図3は、図1の金属異物検知装置1の平面の概要を図示した概念図である。金属異物検知装置1は、被検査物2の中の金属物(磁性体の異物)を検知又は探知して通知するためのものである。
【0030】
金属異物検知装置1は、特に、包装袋等に充填又は内蔵された被検査体からなる被検査物2に混入した金属異物を検知、又は探知して通知するためのものである。被検査体としては、特に限定されないが、固体、液体、又はゲル状の食品、包装袋に充填された医薬品等を例示できる。包装袋の包装材は、公知のアルミニウム箔、合成樹脂製のフィルム、紙等、及びこれらの素材を組み合わせた積層材からなるものである。
【0031】
〔金属異物検知装置1の構成〕
金属異物検知装置1は、概略すると箱形の本体6と、この一端に、蝶番である連結部材15で連結された滑り台5、滑り台5に固定されたセンサー3と磁化部4等からなる。滑り台5は、連結部材15を中心に揺動自在である。滑り台5には、センサー3等が配置されているので、滑り台5上で被検査物2を、設定された速度の範囲で重力で落下させると被検査物2中の磁性体を検知することができる。
【0032】
金属異物検知装置1は、概略すると、被検査物2中の磁性体を検知するためのセンサー3、被検査物2中の磁性体を磁化する磁化部4、被検査物2を案内し搬送する滑り台5、本体6、滑り台5の傾斜角度を調整する角度調整部材(固定部材)7、被検査物2の通過を検知するための検知器8等からなる。本体6は、箱型の筐体11、筐体11に設置された電源スイッチ12、表示部13、操作スイッチ14、筐体11内に格納された信号処理部16(図2を参照。)等からなる。
【0033】
信号処理部16は、センサー3で検知した信号を信号処理して、金属異物の有無を判断し、その判断結果を出力するための電子回路又は計算機である。筐体11は、電源スイッチ12、表示部13、操作スイッチ14、信号処理部16等を収納するための箱型のケースである。筐体11は、卓上でも利用できるように、小型の構造にしている。検知器8は、その正面に物体が通過したか否かを検知するためのセンサーで、本例では光学式のセンサーを採用している。
【0034】
検知器8は、センサー3に被検査物2が入力されるタイミングを検知することが主な機能であるので、基本的に、センサー3の手前に設置される。本例では、センサー3と磁化手段4の間に、センサー3と隣接して設置されている。これにより、被検査物2が搬送されてセンサー3を通過するタイミングを正確に検知し、信号処理部16へ送信する。検知器8は、被検査物2がその前を通過し始めたタイミングと、通過し終わったタイミングの両方のタイミングを検知し、信号処理部16へ送信する。
【0035】
検知器8で検知した被検査物2の通過を示す信号は、被検査物2の通過信号と言うこともできる。金属異物検知装置1は基本的に電源コンセントに電源ケーブル(図示せず。)で接続されて、電源供給が行われる。電源スイッチ12は、金属異物検知装置1に電源供給を行うために、電源ケーブルを接続と切断するためのスイッチである。電源スイッチ12が接続されると、電源がセンサー5、表示部13、信号処理部16等へ供給されて動作する。
【0036】
表示部13は、金属異物検知装置1の全体の動作状況を表示するため表示器で、例えば、液晶ディスプレイからなる。操作スイッチ14は、センサー5の検知感度を設置するためのものである。滑り台5は、筐体21とその上面に設置した滑り面20等からなる。滑り面20は、複数のローラー25(図5を参照。)を並列に並べた小型のローラーコンベヤ23と、平らな面からなる滑り面22からなる。
【0037】
本例の滑り面20は、その約半分、言い換えるとセンサー5の手前までがローラーコンベヤ23になっている。ローラーコンベヤ23の断面図を図5に図示しており、詳しく後述する。被検査物2の流れ方向に並べられた複数のローラーコンベヤ23は、左右に移動しないようにガイド23aで固定されている。揺動可能な筐体21は、滑り面20、センサー3、磁化部4、検知器8を固定するためのもので、本例では6面体の箱型を成している。筐体21は、本体6の上面に設置され、筐体21の一端(図1で右側)が角度調整部材7によって上下にして設置可能になっている。
【0038】
筐体21の他端(図1で左側)が連結部材15で本体6に連結されている。センサー3と磁化部4は筐体21の側面に支持板34によって固定される。支持板34には、上部のセンサー3と磁化部4の高さを調整するための細長い穴32と穴42を設けている。上部のセンサー3と磁化部4は穴32と穴42の所定の高さにボルト等の固定手段で支持板34に固定される。本実施の形態の例では、磁化部4とセンサー3を、滑り面20上に所定の距離を有して設置している。
【0039】
滑り面20(滑り台5)の上部に磁化部4が位置し、滑り面20(滑り台5)の下部にセンサー3が位置する。言い換えると、滑り面20上にセンサー3の上部側に磁化部4が位置し、滑り面20上に磁化部4の下部側にセンサー3が位置する。磁化部4と滑り面20の間、センサー3と滑り面20の間を被検査物2が通過する。被検査物2は、滑り面20の一方から他方へ滑りながら磁化部4とセンサー3を通過する。滑り面20の両側には、図示していないが、被検査物2が滑り落ちないようにガイドを設けても良い。このようなガイドは、滑り台5の筐体21又は滑り面20の側面に固定される。
【0040】
センサー3は、図2に図示したように、滑り面20の上部に設置されたセンサーコイル31と、滑り面20の上下側に設置されたセンサーコイル31を格納する筐体33からなる。筐体33は、その両端が滑り台5に固定された支持板34に固定される。上下のセンサーコイル31は、同一構造のもので、その周囲の磁界の変化を検知するものである。被検査物2の中の金属物、金属異物等の磁性体金属から発生する磁界がその周囲の磁界を変化させる。言い換えると、センサーコイル31は、その周囲の磁界の乱れの変化を検知するためのもので、磁界の変化に応じた電圧又は電流の検知信号を出力する。
【0041】
本実施の形態においては、本体6の筐体11、滑り台5の筐体21、センサー3の筐体33、ブースター4の筐体43、支持板34等は、防錆等の観点からステンレス鋼から作られている。滑り台5には、被検査物2の搬送方向に沿って、磁化部4、検知器8、センサー3の順に配置される。被検査物2は、固体、出汁等の液体、ペースト等の被検査物が、アルミ包装等で個々に分包されて密封されており、滑り面20のローラーコンベヤ23と滑り面22の上を滑走しながら搬送される。
【0042】
被検査物2が滑り面20上をその上部から下部へ滑走し、磁化部4、検知器8及びセンサー3の順に通過する。センサー3で検出して出力される検知信号は、信号処理部16へ送信されて信号処理される。信号処理部16は、センサー3から受信した検知信号を解析して、被検査物2中に磁性体があるか否かの判定を行なう。信号処理部16は、この判定の結果を通知(電気信号、警告音、表示等)する。被検査物2の中に磁性体が含まれている場合、言い換えると不良品(金属異物)を検知した場合、信号処理部16は、所定の警報手段で警報信号を発する。
【0043】
例えば、この出力信号は、信号処理部16から、表示器13に送信されて表示され、欠品(金属異物)を検出したとき、点灯又は点滅する。又は、出力信号は、信号処理部16から、音声発生手段へ送信され、欠品(金属異物)を検出したとき、ブザーを鳴らす等の警報信号を発する。ブザーを鳴らすためのスピーカ等は図中に図示していないが、筐体11の中等に設置する。
【0044】
信号処理部16は、本例のように、筐体11に内蔵される必要はなく、筐体11から有線通信、又は無線通信により検知信号を受け取り、処理できる環境であれば任意の場所に設置しても良い。この有線通信と無線通信の通信方式は、公知の任意の通信規格を用いることができ、本発明の趣旨ではないので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
〔センサーコイル〕
図2及び図4に図示したように、金属異物検知装置1のセンサー3は、同一構造の2本のセンサーコイル31からなる。センサーコイル31は、滑り面20を挟んで上下に配置されている。対向して配置されている2本のセンサーコイル31の間の空間を、被検査物2が通過する。上下のセンサーコイル31は滑り面20を挟んで上限に対向して配置される。センサーコイル31は、被検査物2の搬送方向に対して直角に、滑り面20に対して平行に配置している。
【0046】
図4は、センサーコイル31の構造を図示したものである。図4(a)はセンサーコイル31の正面図、図4(b)は図4(a)のセンサーコイル31の平面図、及び図4(c)は図4(a)のA-A線の切断断面図である。上下のセンサーコイル31は、図4(a)に示すように細長い形状をし、基本的に同一のものである。この例において、センサーコイル31は断面が四角形の細長い棒状の形をしている。
【0047】
センサーコイル31は、細長い形状をし、断面構造がE字形である導電性材料の鉄心35と、その溝部に沿って巻き付けたコイル36から構成される。鉄心35は、珪素鋼板やアモルファス等の板を積層して構成されている。鉄心35には、フェライトコア、永久磁石等を使っても良い。センサーコイル31に交流電源をかけると、その付近の周囲にセンサーコイル31から交番磁界が発生する。
【0048】
この交番磁界中を、磁性体が通過すると、この交番磁界が磁性体の磁界の影響で乱れ、センサーコイル31へ影響を及ぼし、センサーコイル31を流れる電流等が変化する。本発明のセンサーコイル31は、1mm以上金属異物を検知することができるが、主に、1mm以下の微小な金属を検知するためにも用いられている。図2の側面図には、センサー3の配置例を図示している。
【0049】
センサー3の2本のセンサーコイル31は、E型の鉄心35のコイル36側を互いに対向させて配置される。これは、被検査物2の上部と下部を感度良く検出するために、このような構成にしている。また、2本のセンサーコイル31を備えることで、その間の中空部の中の被検査物2がこの中空部を移動する際に検知し、磁性体を感度良く検出する。被検査物2中の金属異物は、センサーコイルの1本のみで検知が可能である。
【0050】
センサーコイル31は、コイル36の磁化(B-H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用して、金属物の検知を行う。この磁化特性、その利用方法についての技術思想は、特許文献1に詳しく述べているのでその要旨のみの説明に留める。特許文献1に記載された発明の全部又はその一部は、本発明と実質的に同一構造、回路であり、これらが本発明を構成する。
【0051】
ただし、センサーコイル31に印加される電圧、電流、その周波数は、全部又は一部が、本発明の実施の形態で特許文献1と異なる値であっても良い。センサーコイル31には、特別に、電流供給、電圧印加がされていなくても、磁性体の金属異物の検知動作が可能である。例えば、センサーコイル31には、増幅器のバイアス電圧を印加しておく。これにより、増幅器の入力バイアス電流がセンサーコイル31のコイルに流れることになる。
【0052】
周辺磁界の変化に伴って、センサーコイル31を横切る磁束が変化すると、センサーコイル31を流れる電流及び/又は電圧が変化し、出力信号となる。センサーコイル31に数kHzの交流電源をかけると、センサーコイル31に交番磁界が発生する。センサーコイル31の近傍にステンレスの微小破片が接近したとき、静磁界の働きにより、ステンレスの微小破片が磁化し磁極を生じさせる。
【0053】
例えば、オーステナイト系のステンレス鋼(SUS304等)は、破断、潰れ、曲がり、欠け等の塑性変形により、マルテンサイト誘起変態を起こして弱い磁性をもった部分が、静磁界の働きにより磁化し磁極を生じさせる。この磁極の変化が交番磁界へ影響を与え、これを、センサーコイル31を含む検知回路で検知する。特に、被検査物2がセンサーコイル31に接近するほどこの効果が大きく現れるので、センサーコイル31で被検査物2中の微小破片の金属異物を確実に検出することが可能である。
【0054】
被検査物2に異物として混入される磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性体、これらの合金、マルテンサイト系ステンレス鋼等が例示できる。ペアのセンサーコイル31をブリッジ回路の2辺にすると、一定の交流電圧が印加されているとき、センサーコイル31からなるブリッジ回路を流れる電流が変化なく、ブリッジ回路の出力電流が一定である。磁性材料がセンサーコイル31の付近を通過するとき、交番磁界のフォームが乱れ、ブリッジ回路の出力電流が変化する。この出力電流は、後段の信号処理部16で信号処理され被検査物2中の異物として検知される。
【0055】
〔マグネットブースター〕
磁化部4は、図2に図示したように、滑り面20の上部と滑り面20の下側に設置された2本のマグネットブースター41と、2本のマグネットブースター41を格納する2体の筐体43からなる。2体の筐体43はその両側が滑り台5に固定された支持板34に固定される。マグネットブースター41は、被検査物2の中の磁性体を磁化、或いは磁化を強化するためのもので、永久磁石からなる。
【0056】
マグネットブースター41からなる磁化部4の設置位置は、この位置に限定されるものではない。マグネットブースター41は、一つの永久磁石又は2以上の複数の永久磁石から構成されることができるが、本例では、複数の永久磁石から構成される。マグネットブースター41は、被検査物2の搬送方向に対して直角に配置している。言い換えると被検査物2断面方向に、2個の細長いマグネットブースター41を配置している。
【0057】
被検査物2の搬送方向に対して、マグネットブースター41の長手方向の軸線が直角するように配置されている。マグネットブースター41は滑り面20に対して平行に配置されている。2本のマグネットブースター41は複数の磁石要素からなる。上下のマグネットブースター41の磁石要素は対向して上下に配置され、同じ磁極を互いに向けて、言い換えると同じ磁極を被検査物2へ向けて配置される。
【0058】
このように配置すると、被検査物2の金属異物が上下に対抗して配置された磁石要素の同じ磁極の反発する力で磁化される。マグネットブースター41は、本例ではネオジム磁石からできている複数の磁石要素から構成されている。このようにネオジム磁石等の強力な磁石を用いることで、永久磁石の磁界が磁性体に影響を及ぼす範囲を大きく拡大でき、センサー3の検出感度を向上させる。
【0059】
〔滑り台5〕
滑り台5は、その上面が滑り面20になっている。滑り面20は、その一部(上段)は小型のローラーコンベヤ23(図5を参照。)を採用しているので、モータ等の動力源を必要としない。被検査物2を滑り面20の上端部に置くと、被検査物2は自身の重量に働く重力で下降する力が働き、自力で、滑り面20の上を滑走しながら搬送される。ローラーコンベヤ23は全体で一つのローラーコンベヤから構成されても良いが、小型の複数のローラーコンベヤを並べて構成されても良い。図1及び図3に図示した例では、ローラーコンベヤ23は小型のローラーコンベヤを6列(落下方向)に並べて構成されている。
【0060】
図5にはローラーコンベヤ23の断面図の例を図示している。図5に図示したように、ローラーコンベヤ23は、全体を支持するフレーム24、フレーム24に搭載されたローラー25等からなる。フレーム24は、隣接するフレーム24と連結して固定するための連結板(図示せず。)を有することができる。滑り面20を複数のローラーコンベヤ23で構成する場合、連結板、ねじ機構等でフレーム24同士を連結して固定する。
【0061】
ローラー25がフレーム24の底から所定の微小距離を有して支持され、自由自在に回転する。ローラー25は、断面が円の細長い棒状の形状を有し、その長手方向の軸に沿って通し穴が開いている。図5に図示したように、この通し穴25aには軸26が挿入される。軸26はその両端でフレーム24に設けた孔に差し込む。軸26を中心にローラー25が自由自在に回転運動をする。
【0062】
滑り台5は、その一端(図1の中では左側)が本体6に連結される連結部材15を有する。連結部材15は、筐体11の上面に固定された板状部材を有し、滑り台5にノブボルト15a等で着脱自在に固定されたものである。滑り台5は、他端(図1の中では右側)が角度調整部材7によって本体6から所定距離に上に動かして設置できるように調整可能になっている。これにより、滑り台5(滑り面20)の傾斜角度(図2に図示したθ角度)を調整することができる。
【0063】
本例では、図1及び図2に図示したように、角度調整部材7は、細長い板状のステー7aと、段階構造の細長い孔7cを設けている板状のステーホルダー7b等からなる。ステー7aの一端(上部)は滑り台5の筐体21の側面にボルト・ナット機構37で固定される。ステー7aの他端(下部)はボルト・ナット機構38によってステーホルダー7bに固定される。ステーホルダー7bの一端(下部)は本体6の上面にボルト等の固定手段で固定されている。ステーホルダー7bには、滑り台5側から本体6側へまでに段階構造の細長い孔(スリット)7cを設けており、この孔7cにはボルト・ナット機構38のノブボルトの軸部が入り上下にスライス可能になっている。
【0064】
孔7cに段階調整のための凹部が、段階状に傾斜角度を調整するために複数設けられている。本例では、孔7cに段階調整のための凹部が凹部7d、7e、7fと3個が設けられている。ボルト・ナット機構38のノブボルトの軸部が孔7cをスライドして、凹部7d、7e、7fの何れかに位置し、この各位置でボルト・ナット機構38を締めることで、ステー7aとステーホルダー7bを固定する。
【0065】
言い換えると、作業者は、滑り台5の一端(図1図2の滑り台5の右端)を持って上げ、所定の角度の凹部7d、7e、7fにボルト・ナット機構38のノブボルトの軸部を止めて、ノブボルトの頭部を回して締め付ける。ボルト・ナット機構38は、滑り台5の角度を調整するための固定機構であり、同様の機能を実現するものであれば任意の固定機構を採用することができる。図1及び図2には、滑り台5を本体6上に傾斜角度θ(図2を参照。)を有するように設置した場合の設置位置例を図示している。
【0066】
本例では、傾斜角度θを複数段階の調整が可能であり、孔7dの凹部7d、7e、7fの位置で調整できる。本例では、凹部7d、7e、7fの位置は25度、20度、15度の傾斜角度に該当する。傾斜角度は、被検査物2の搬送速度に比例するもので、傾斜角度が大きいほど搬送速度が速くなる。傾斜角度を切り替えることは、搬送速度の切換えとも言える。被検査物2によって、その包装の材質等によって、滑り係数、言い換えると摩擦係数が異なり、搬送速度が異なる。
【0067】
そのため、被検査物2に適当な搬送速度を得るために、傾斜角度を調整する。よって、滑り台5はその傾斜角度(搬送速度)は調整自在に変更することができる。滑り面20のローラー25の材質は合成樹脂、ステンレス鋼板等の非磁性体の素材を使用したものである。本発明の金属異物検知装置1は、卓上でも利用できる小型である。本例で、これに限定されないが、金属異物検知装置1は長さ(機長)666mm、幅280mm、高さ476mm(傾斜角度25°)になっている。
【0068】
センサーコイル31を格納する筐体33から滑り面20までの距離は76mmになっている。この距離は、被検査物2がセンサー3を通過することができる被検査物2の高さ(大きさ)である。よって、センサー3は、有効検知幅が216mm、通過標準高さ(上部のセンサーコイル31と滑り面20との最大距離)76mmである。金属異物検知装置1はこのような寸法にすることで、汎用の机等の台の上に設置することができる小型の装置になる。
【0069】
滑り台5の表面性状と、被検査物2の種類、性状(質量、材質、液体・固体等の状態)で落下速度が変わる。被検査物2はその包装体がアルミ等の金属、紙、ビニール、プラスチック等の合成材料等のように様々な材質でできており、場合によって表面が塗料等で表面処理されている。そのための、その被検査物2の表面の材質、その中身等によって、同じ傾斜角度と滑り面20でも落下速度が異なる。
【0070】
ローラーコンベヤ23のローラー25と滑り面22の材料は、金属、木材、合成樹脂等の任意の材料であることができるが、被検査物2の種類等に応じて適宜選択する。例えば、ローラーコンベヤ23のローラー25はポリアセタール等の樹脂からなり、フレーム24は、ポリスチレン等の樹脂からなる。また、滑り面22は、例えば、ポリエチレンからなる平面板からなる。
【0071】
落下速度は、基本的に、滑り面20と被検査物2の接触する摩擦係数によって異なる。言い換えると、両者の材質、表面層によって異なる。滑り面20は、ローラーの場合、転がり摩擦、波板の場合、滑り摩擦で決定され、落下速度が決まる。金属異物検知装置1は、被検査物2ができるだけ同じ速度で落下する方が望ましく、そのために滑り台5の傾斜角度を調整自在にしている。また、滑り面20は、被検査物2の性状に合わせて交換自在である。
【0072】
上述の通り、滑り台5は、ローラーコンベヤ23を例に説明したが、ローラーコンベヤ23は被検査物2の検知に合致するように、交換可能である。滑り台5は本体6に連結部材15によって着脱自在に固定されているので、この連結部材15を取りはずことで、滑り台5全体を交換可能である。予め被検査物毎に用意された滑り台5の全体を交換するのではなく、滑り台5を上部と下部に2分割して、一方のみを滑り面、又はローラー等と最適な面を選択すると良い。このように、滑り台5の滑り面20を被検査物2の種類、性状に合わせて交換し調整することができる。
【0073】
ローラー25は、合成樹脂、金属等の材料で製造されることが多く、合成樹脂、金属の表面処理等で摩擦係数は異なる。この摩擦係数の違いにより、被検査物2の落下速度を調整することが可能である。上述の例では、滑り面20は小型のローラーコンベヤ23にしているが、ローラー25の大きさが異なるローラーコンベヤ23に交換することができる。また、滑り面20は、ローラー25の摩擦係数が異なるローラーコンベヤ23に交換することができる。
【0074】
更に、滑り面20は平板又は波板からなる滑り面にすることができる。ローラー25を波板からなる滑り面に交換し、平板又は波板をフレーム24に固定することができる。又は、フレーム24とローラーコンベヤ23の全体を平板又は波板に交換することができる。このように、滑り面20は着脱自在であり、被検査物の種類、性状に合わせて適当な滑り面にする。
【0075】
〔滑り台5の傾斜角度〕
図6には、本実施の形態の金属異物検知装置1において、被検査物2が搬送面20を移動するときの移動解析のための概念図を図示している。この概念図を参照しながら、被検査物2が滑り台5(ローラー滑走台)上を滑走するとき、滑り面20の傾斜角度θの調整についての分析を示す。図6には、水平に配置された本体6の上面6a、この上面6aに傾斜角度θで設置された滑り面20、滑り面20を構成する滑り面22と、ローラーコンベヤ23を図示している。以下、滑り面20に沿ってx軸を取り、x軸(滑り面20)と直角にy軸を取り分析を行う。
【0076】
各x、x、xの位置での被検査物2の滑走速度はV、V、Vとする。よって、被検査物2がローラーコンベヤ23上に置かれた位置はV=0、滑り面22への進入する速度がV、センサー3を通過する速度がVとなる。被検査物2が滑り面20のローラーコンベヤ23上に置かれた位置をx、滑り面22の上端位置をx、被検査物2がセンサー3を通過した後の位置をxとする。また、被検査物2がローラーコンベヤ23上を滑走する距離はS、滑り面22上を滑走する距離はSとする。
【0077】
〔被検査物2のローラーコンベヤ23上の滑走〕
被検査物2にとって斜面のx軸を滑走するとき、斜面方向(x軸方向)において、次式が成立する。
mα=mg・sinθ-F ...(1)
ここで、m:被検査物の質量、α:x軸方向加速度、θ:被検査物の搬送面の傾斜角度、g:重力加速度、μ:被検査物の静止摩擦係数、F:逆力。
また、斜面に垂直な方向(y軸方向)において、次式が成立する。
m・β=N-mg・cosθ ...(2)
ここで、β:y軸方向加速度、N:被検査物への垂直抗力。
【0078】
被検知物2が滑らないで静止状態の場合は、加速度であるα=β=0となるので、上記(1)、(2)より次の関係になる。
F=mg・sinθ ...(1’)
N=mg・cosθ ...(2’)
被検知物2が転がり出す(動き出す)条件:
F>μN
∴ mg・sinθ>μ・mg・cosθ
従って、被検査物2は静止位置(x)から次の条件で転がり出す。
tanθ>μ ⇒ θ>tan-1μ
【0079】
〔被検査物2の滑走速度〕
質量mの被検査物2が、x軸方向の移動距離Sの区間を滑ったときの重力がした仕事Wは次のようになる。
=重力の運動方向成分×移動距離S
=mg・sinθ・S ...(3)
【0080】
エネルギー保存の法則により、但し、被検査物2が落下する高さをh(=S・sinθ)、滑り面23の動摩擦をμとすると、次の式が成り立つ。
1/2mV -1/2mV =(重力がした仕事W)+(摩擦力がした仕事W)
=mg・h-μmg・cosθ・S ...(4)
∴1/2mV -1/2mV -mg・h=-μmg・cosθ・S ...(5)
【0081】
滑り面23の終端での被検査物2の速度Vは、次の通りである。
=S・sinαであるから、式(4)から
1/2mV -1/2mV =mg・S・sinθ-μmg・cosθ・S
1/2V -1/2V =g・S・sinθ-μg・cosθ・S
-V =2g・S(sinθ-μcosθ)
=SQRT(V +2g・S(sinθ-μcosθ)) ...(6)
但し、SQRT( )は平方根である。
【0082】
被検査物2は、検査時に人動等で滑り面20(滑り台5)上に載置されるので、V=0であり、滑走速度Vは、次のようになる。
=SQRT(2g・S(sinθ-μcosθ)) ...(7)
【0083】
〔被検査物2の滑り台5上の滑走速度〕
上記したように、被検査物2は、滑り面20のローラーコンベヤ23上の距離Sの区間で加速され滑走速度Vとなり、ローラーがないセンシング領域である滑り面22の入口に落下する。被検査物2は、センサー3(滑り面20の上下位置に配置されたセンサーコイル31)で、金属異物が検知されるが、センサー3(センサーコイル31)の特性から所定の定速度で落下させるのが良い。
【0084】
ローラーコンベヤ23の領域から滑り面22の領域に侵入するときの速度V、滑り面22上の移動距離S、及び、滑り面22の動摩擦係数μのときの速度Vの関係は、上記の式(6)から次のようになる。
=SQRT(V +2g・S(sinθ-μcosθ)) ...(8)
即ち、ローラーコンベヤ23の領域からの侵入速度Vを、センサー3の特性に合致した最適速度にし、そのまま加速させないで、定速(V)で落下させた方が良い。全体としても測定時間も無駄がなくなる。
【0085】
従って、上記定速Vと被検査物2の侵入速度V2は、V=Vとするには、
sinθ-μcosθ=0
とする必要がある。よって、次の式になる。
μ=sinθ/cosθ=tanθ ...(9)
即ち、この式(9)から、滑り面22の動摩擦係数μと被検査物2の搬送台の傾斜角度θを調整して、tanθと一致させると良いことになる。このように、滑り面20の傾斜角度θが決定される。
【0086】
〔第1調整:滑り台5の傾斜角度θ〕
上記したように、被検査物2は、センサー3でセンシングする区間では、誤検知を防ぐためにセンサー3の特性から定速度で移動させる必要がある。被検査物2内の異物である磁性金属を磁化する区間は、磁化に影響がないので、定速である必要がない。一方、被検査物2の種類、材質、滑り表面の状態等によっては、滑り面20上の滑走が円滑に行われない。
【0087】
即ち、理論とは異なり被検査物2の滑走速度は質量によって異なり、又は内部に水を有する袋等は、滑走しにくい。このことは、検査時間の遅延に繋がる。よって、最初に、上記の式(9)から滑り面20の摩擦係数(μ)を考慮して、被検査物2の種類、材質、滑り表面の状態等によって傾斜角度を調節して、許容誤差の定速(V)になるように、滑り面20の傾斜角度θを決定する(第1調整)。
【0088】
〔ローラー滑走台の角度調節機能〕
上記第1調整の手順で設定した傾斜角度θに傾斜した低摩擦(μ)のローラーコンベヤ23の滑走面で、被検査物2を滑走させて加速(α)させて侵入速度(V)となる。この侵入速度(V)で、上記(1)で設定した定速(V)の誤差内であれば、これで滑走面の調整完了である。
【0089】
しかしながら、上記手順(1)で決めた角度θでは、侵入速度(V)が早すぎるか、又は遅い場合は、ローラーコンベヤ23(ローラー25)の種類を交換するか、ローラーコンベヤ23のみを角度調節(微調整機構)する。以上詳記したように、本発明は、検査時間を短縮し、かつ検知精度を高める速度で検知可能な滑り面20(被検査物2の滑走面又は滑走台)である。
【0090】
本発明の金属異物検知装置1は、ローラーコンベヤ23の例として、呼び幅100mm、長さ329.4mmのものを使用する。また、予備として、摩擦係数が異なる複数のローラーコンベヤ23を用意し、商品に合致するように交換する。また、滑り面22は、ローラーコンベヤに交換することが可能である。言い換えると、滑り面22にはローラーにすると、被検査物2の滑走によって振動が発生し、搬送速度が加速化するが、これが許容範囲である場合に利用する。
【0091】
ローラーコンベヤ23は、ローラー面、特にその上部をねじ機構等により上下に調整する角度微調整機能を有する。特に、センサー3を通過する区間で、被検査物2の滑走速度が定速(許容値内)であることが必須の場合に角度微調整機能を利用する。被検査物2の包装の材質、重量等によって、被検査物2が僅かに変化すると摩擦係数が異なるので、角度微調整機能によって、定速になるように調整する。
【0092】
〔信号処理部16の構成例〕
信号処理部16は、増幅/フィルタ回路、波形処理部、ディジタルコンピュータ処理部、信号出力部等から構成される。センサー3のセンサーコイル31は、増幅/フィルタ回路に接続される。センサーコイル31から出力される信号を増幅/フィルタ回路で増幅して、波形処理部へ出力する。波形処理部では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、受信感度の調整を行って、ディジタルコンピュータ処理部へ出力する。
【0093】
このときは、ディジタル信号に変換された信号のしきい値処理をし、受信感度の調整をする。ディジタルコンピュータ処理部は、波形処理部からのディジタル信号を受信して信号処理し、被検査物2中に含まれる磁性体の有無を判定する。ディジタルコンピュータ処理部では、磁性体が検知されたと判断された場合は、信号出力部に出力信号を出力する。センサーコイル31は、増幅/フィルタ回路の電子回路に直接接続している。増幅/フィルタ回路の増幅器を動作させるための直流バイアス回路によるバイアス電圧がセンサーコイル31に印加される。
【0094】
これにより、センサーコイル31が励磁され、また、マグネットブースター41による静磁界の磁束が、センサーコイル31と常時鎖交する。センサーコイル31に印加されたバイアス電圧の変動、外部磁界の乱れ等により微弱な直流変動電流が常にコイルに流れることになる。つまり、商用電源の周波数の交流電流、その倍数周波数の交流電流、外部環境磁界の重畳した周波数の交流電流が微小ながら流れる。
【0095】
このような励磁状態のセンサーコイル31の付近を被検査物2が搬送されると、被検査物2に含まれる磁性金属異物がマグネットブースター41で磁気双極子状(N極とS極の一対の小さな磁石)に磁化される。そして、この磁性金属異物による微小な異物信号をセンサーコイル31が出力する。詳しくは、レンツの法則で説明されるような微弱誘導電圧がセンサーコイルで発生する。その異物信号を増幅/フィルタ回路(ゲイン増幅器)で増幅して、波形処理部、ディジタルコンピュータ処理部へ出力する。
【0096】
増幅/フィルタ回路は、センサーコイル31の出力を数十から数百dB、場合によって千dB以上に増幅する。本例では、120dB程度増幅している。ディジタルコンピュータ処理部は、バス、メモリ、中央処理ユニット(CPU)、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えた電子計算機からなる、信号処理ユニットである。メモリ、CPU、入力インターフェース、出力インターフェースは、バスで互いに接続されて、このバス70を経由したデータの送受信を行う。
【0097】
ディジタルコンピュータ処理部は、メモリに格納されたプログラムを、CPUで実行し、被検査物2の中の金属異物の判定をする。また、ディジタルコンピュータ処理部は、これと同じ機能を有する、アナログ回路又はディジタル回路からなる回路手段で実現することができるが、ここではその詳細な説明は省略する。ディジタルコンピュータ処理部は図示しないがマウス、キーボード、タッチパネル等の入力機器を有することができる。
【0098】
これらの入力機器は、入力インターフェースに接続され、金属異物検知装置1の管理者等が操作して、金属異物検知装置1の初期化、設定のために利用する。計算プログラムは、メモリに格納されている。計算プログラムは、メモリのROM、補助記憶装置等に格納される。ディジタルコンピュータ処理部では、被検出物2中の磁性体(金属異物)の判定が行なわれる。
【0099】
ディジタルコンピュータ処理部、波形処理部からのセンサー3の検知信号を受信し、検知信号を波形分析し、標準データ(比較波形)と比較することで、検知信号が金属構造物を示す検知信号か否かを判定する。被検査物2に含まれる金属構造物は、大きさ、材料が均一のものであり、従って、その検知信号の波形は、金属構造物の種類ごとに基本的に同じパターンである。異物信号波形の基準となる標準データを、センサー3が出力した検知信号と比較して、標準データと検知信号がどの程度似ているかで金属異物を識別する。
【0100】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。本発明の第2の実施形態の金属異物検知装置1は上述の第1の実施形態の金属異物検知装置1と基本構造及び機能が同じであり、ここで、異なる部分を説明する。本発明の第2の実施形態の金属異物検知装置1は角度微調整手段を備え、角度微調整手段を図7及び図8を図面を参照しながら説明する。
【0101】
図7には角度微調整手段を備えた金属異物検知装置1の概要を図示しているが、センサー4、磁化部4、検知器8を図示せず省略している。図8は金属異物検知装置1の側面図で、図7に図示したA矢視図である。角度微調整手段は、角度調整ガイド50、固定ボルト51等からなる。角度調整ガイド50は、ローラーコンベヤ23の両側に1本ずつ設けている。角度調整ガイド50は、長手方向が楔形で、その断面がL字型のガイドである。角度調整ガイド50は、ローラーコンベヤ23の両側に設置され、滑り台5の筐体21に固定される。
【0102】
具体的には、角度調整ガイド50は、そのローラーコンベヤ23の両側のガイド23a(図1を参照。)又はローラーコンベヤ23のフレーム24(図5を参照。)の外側に設置され、L字型部分でローラーコンベヤ23の両側面と底面に接して設置される。固定ボルト51は、角度調整ガイド50に上下に貫通するように設けた穴に設置される。固定ボルト51は角度調整ガイド50を貫通し、滑り台5の筐体21自体に設けたボルト受け、または、滑り台5の筐体21の内外に設置したボルト受け52等にねじ込まれて固定される。
【0103】
滑り面22とローラーコンベヤ23の接している部分に、角度微調整機構のために揺動軸を設ける。これにより、滑り面22とローラーコンベヤ23の接している部分は、ローラーコンベヤ23の傾斜角度に係わらず所定の間隔を保つことが可能になる。また、ローラーコンベヤ23の上部を持ち上げ、角度調整ガイド50の設置することが容易になる。
【0104】
固定ボルト51は、角度調整ガイド50を固定するために必要に応じて設けることができる。この例では、角度調整ガイド50の上部と中間部に各2個を設けている。図8に図示したように、2本の角度調整ガイド50の間は、ローラーコンベヤ23と筐体21の間の部分は、スペースになっているが、2本の角度調整ガイド50は連続し板状の1枚の角度調整ガイド50であることができる。
【0105】
角度調整ガイド50の角度(厚さ)により、ローラーコンベヤ23の傾斜を増減させ、傾斜角度を調整する。また、予め角度の異なる複数の種類の角度調整ガイド50を用意し、被検査物2の種類によって必要に応じて交換し、角度微調整に対応する。
【0106】
上述のように角度調整ガイド50を楔形にしていうが、この機構以外に、ボルトをローラーコンベヤ23のフレーム24等にねじ込み、ボルトの先体を筐体21に接して、ローラーコンベヤを上下動させるねじ機構を角度微機構に採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、製品を包装袋等の包装体に充填して製造する分野、それらを販売する等のサービス分野等の医薬品、化粧品、食料品の製造・サービス分野で金属異物の検知に利用すると良い。
【符号の説明】
【0108】
1…金属異物検知装置
2…被検査物
3…センサー
4…磁化部
5…滑り台
6…本体
7…角度調整部材
7a…(角度調整部材7の)ステー
7b…(角度調整部材7の)ステーホルダー
7d、7e、7f…(ステーホルダー7bの)凹部
8…検知器
11…(本体6の)筐体
12…電源スイッチ
13…表示器
14…操作スイッチ
15…連結部材
16…信号処理部
20…滑り面
21…(滑り台5の)筐体
22…滑り面
23…ローラーコンベヤ
24…フレーム
25…ローラー
26…軸
31…センサーコイル
32…穴(センサー3固定用)
33…(センサー3の)筐体
34…支持板
35…鉄心
36…コイル
37,38…ボルト・ナット機構
41…マグネットブースター
42…穴(磁化部4固定用)
43…(磁化部4の)筐体
50…角度調整ガイド
51…固定ボルト
52…揺動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8