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特許7578251情報の送信と暗号鍵の配送とのための光通信のための方法、ならびにその方法を実装するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】情報の送信と暗号鍵の配送とのための光通信のための方法、ならびにその方法を実装するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/70 20130101AFI20241029BHJP
   H04L 9/12 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H04B10/70
H04L9/12
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2023527998
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2021061118
(87)【国際公開番号】W WO2022113050
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P.436177
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】523165905
【氏名又は名称】ウニヴェルシテト ヴァルシャフスキ
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET WARSZAWSKI
【住所又は居所原語表記】Krakowskie Przedmiescie 26/28, Warszawa Poland
(73)【特許権者】
【識別番号】523165916
【氏名又は名称】ウニヴェルシテト ミコワヤ コペルニカ
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET MIKOLAJA KOPERNIKA
【住所又は居所原語表記】Gagarina 11, Torun Poland
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】コレンデルスキ ピョートル
(72)【発明者】
【氏名】ラソタ ミコライ
(72)【発明者】
【氏名】ヤフラ ミハル
(72)【発明者】
【氏名】バナシェク コンラド
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111147243(CN,A)
【文献】特開2016-144206(JP,A)
【文献】特表2009-509367(JP,A)
【文献】国際公開第2019/106381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/70
H04L 9/12
H04B 10/11
H04B 10/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機においてレーザー・ビーム強度変調を使用し、受信機において直接検出を使用する、情報ビットの同時送信と暗号鍵ビットの配送とを伴う光通信のための方法であって、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームが、情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に符号化する変調シンボルの共通セットに従って変調され、異なる情報ビットを符号化するシンボルは、光強度と時間遅延とを含むグループから選択される1つのパラメータのみが異なり、異なる暗号鍵ビットを符号化するために使用される前記シンボルは光強度のみが異なることを特徴とする、光通信のための方法。
【請求項2】
前記通信において使用される変調シンボルの前記セットが、振幅ベース「OOK」、「PAM」または時間遅延ベース「PPM」の標準変調フォーマットの修正(拡張)バージョンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光学経路によって振幅変調器に接続された、連続波レーザー、または高い繰り返しレートをもつパルス・レーザーが、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームのソースとして使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
情報ビット・ストリームと暗号鍵ビット・ストリームとを同時に符号化するために、振幅変調器が使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
直接ビーム変調システムをうレーザーが、特定の光搬送波波長のレーザー・ビーム・ソースとして使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
じ波長であるが、異なる光パワーの光ビームを放出する、2つまたはそれ以上のレーザー・ダイオードが、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームのソースとして使用され、2つまたはそれ以上のレーザー・ダイオードによって放出された前記ビームが特定の光搬送波波長の単一の光ビームに組み合わせられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
弁別器に接続された、フォトダイオードまたは光子数検出器を備える受信機が使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
100nWよりも大きいパワーをもつ光信号の場合、光ビームのパワーを測定するために使用されるフォトダイオードを備える受信機が使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
100nWよりも小さいパワーをもつ光信号の場合、シングル・フォトンを測定するために使用される光子数検出器を備える受信機が使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記弁別器が、前記情報ビット・ストリームと前記暗号鍵ビット・ストリームとを同時に復号するために使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
張OOK変調フォーマットにおいて、シングル・フォトン検出を使用する式における前記異なる暗号鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【数1】
が50%よりも高いことを特徴とする、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
張PPM変調フォーマットにおいて、シングル・フォトン検出を使用する式における前記異なる暗号鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【数2】
が50%よりも高いことを特徴とする、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
張OOK変調フォーマットにおいて、フォトダイオード検出を使用する式における前記異なる暗号鍵ビットに対応するパルスのパワーの比率
【数3】
が85%よりも高いことを特徴とする、請求項2から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
張PPM変調フォーマットにおいて、フォトダイオード検出を使用する式における前記異なる暗号鍵ビットに対応するパルスのパワーの比率
【数4】
が85%よりも高いことを特徴とする、請求項2から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
張PAM変調フォーマットにおいて、フォトダイオード検出を使用する式における前記異なる暗号鍵ビットに対応するルス・パワー比率の各々
【数5】
が85%よりも高いことを特徴とする、請求項2から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
特定の光搬送波波長のレーザー・ビームを使用して前記送信機と前記受信機との間に単一の通信チャネルが確立され、前記チャネルが、前記送信機から前記受信機に情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に送信するために使用されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記送信機および前記受信機が1つまたは複数の追加の通信チャネルによって接続されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
送信機と受信機とを備える、強度変調と直接検出とを使用して情報ビットの同時送信と暗号鍵ビットの配送とを実現する、光通信のためのシステムであって、前記送信機が、特定の光搬送波波長の変調されたレーザー・ビームのソースを備え、前記受信機が、弁別器に接続されたフォトダイオードまたは光子数検出器を備え、前記送信機は、変調シンボルの共通セットを使用して、特定の光搬送波波長において情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に送信するように適応され、異なる情報ビットを符号化するために使用されるシンボルは強度と時間遅延とを含むグループから選択される単一のパラメータのみが異なり、一方、異なる暗号鍵ビットを符号化するために使用される前記シンボルは光強度のみが異なることを特徴とする、光通信のためのシステム。
【請求項19】
特定の光搬送波波長の前記変調されたレーザー・ビームの前記ソースが、光学経路によって振幅変調器に接続された、連続波レーザー、または高い繰り返しレートをもつパルス・レーザーであることを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
特定の光搬送波波長の前記変調されたレーザー・ビームの前記ソースが、直接ビーム変調システムを伴うレーザーであることを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
特定の光搬送波波長の前記変調されたレーザー・ビームの前記ソースが、同じ波長であるが、異なるパワーの光ビームを放出するように適応された2つまたはそれ以上のレーザー・ダイオードに基づくことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記受信機が、弁別器に接続された、光ビーム・パワーを測定するためのフォトダイオード、またはシングル・フォトンを測定するための光子数検出器を備えることを特徴とする、請求項18から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記弁別器が、前記情報ビット・ストリームと前記暗号鍵ビット・ストリームとを同時に復号するように適応されたことを特徴とする、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記変調器が、修正(拡張)OOK変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数が、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、シングル・フォトン検出を使用する式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【数6】
が50%よりも高いことを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記変調器が、修正(拡張)PPM変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数が、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、シングル・フォトン検出を使用する式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【数7】
が50%よりも高いことを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記変調器が、修正(拡張)OOK変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数が、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、フォトダイオード検出を使用する式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルスの光パワーの比率
【数8】
が85%よりも高いことを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記変調器が、修正(拡張)PPM変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数が、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、フォトダイオード検出を使用する式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルスの光パワーの比率
【数9】
が85%よりも高いことを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記変調器が、修正(拡張)PAM変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数が、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、フォトダイオード検出を使用する式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルスの光パワーの比率の各々
【数10】
が85%よりも高いことを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の光搬送波波長を使用して実装される、典型的な情報のビット・ストリームの同時送信ならびに暗号鍵(cryptographic key)の量子配送を実行することが可能である、光搬送波の強度変調とそれの直接検出とに基づく、情報の同時送信と暗号鍵の配送とを伴う光通信のための方法に関する。これは、選択された光搬送波波長の光ビームを使用して送信機と受信機との間に単一の通信チャネルが確立されることを意味する。チャネルは、送信機から受信機に情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に送信するために使用されている。本発明はまた、発明的方法を実施する、光搬送波の強度変調とそれの直接検出とに基づく、典型的な情報の同時送信と暗号鍵配送または量子暗号鍵配送とを可能にする光通信システムを含む。光の強度は光子の数と光パワーとに対する厳密に単調な関係にある。
【背景技術】
【0002】
たとえば、モノグラフ[(i)G.C PapenおよびR.E.Blahut、Lightwave communications、Cambridge University Press、2019年、970頁、および(ii)http://akademickaseriawwsi.wwsi.edu.pl/においてオンラインで利用可能なOpen Access出版、WSCS Academic Series「Informatyka i Telekomunikacja」(Computer Science and Telecommunications)の一部として出版された、Bogdan Galwas「Podstawy telekomunikacji optofalowej」、(光波電気通信の基礎)、ISBN978-83-952678-0-2]に記載されている、情報を符号化し、光周波数における電磁波を使用して送信するために、様々な従来技術変調フォーマットが使用される。光信号を変調するための最も簡単な方法は、搬送波が送信される(1のビット値に対応する)か、またはブロックされる(0のビット値に対応する)方法である。したがって、通信のために使用されるアルファベットは、搬送波の振幅が異なる2つのシンボルからなる。この方法は、文献では振幅シフト・キーイングまたはOOK(オンオフ・キーイング)フォーマットと呼ばれる。たとえば、国際特許出願[WO0160104A1]に記載されている発明は実施形態においてOOK変調プロトコルを使用する。
【0003】
PPM(パルス位置変調)は、情報がパルス時間位置において符号化されるタイプの信号変調である。概して、パルスは所定の時間スロット中に送信されるが、コーディングされたビットの値は、時間フレームの開始点に対するパルスの位置に基づいて読み取られる。単一の時間フレーム内の可能なパルス位置の数はPPMオーダーと呼ばれ、PPMオーダーはまた、通信において使用されるシンボル(タイム・スロット)の数を決定する。PPM変調の使用の例示的な実施形態はUK特許文献[GB1278490]に記載されている。
【0004】
最新技術の別個の分野は、量子力学の基本法則によって保証されたセキュリティをもつ機密(暗号化)メッセージを送信するための手順のセットである、量子暗号の方法を含む[N. Gisin、G. Ribordy、W. Tittel、およびH. Zbinden「Quantum Cryptography」Review of Modern Physics 74, 145-195, 2002年, DOI:10.1103/RevModPhys.74.145]。量子暗号の本質的要素は、2つの通信している当事者が、第三者にまったく知られることなしに、後でメッセージを暗号化し、復号するために使用することができるランダムな秘密鍵(たとえば、ビットのシーケンス)を生成することを可能にする、量子鍵配送(Quantum Key Distribution)(QKD)である。
【0005】
実装のしやすさの点で最も有望な技法のうちの1つは、論文[T. IkutaおよびK. Inoue「Intensity modulation and direct detection quantum key distribution based on quantum noise」,New J. Phys.,18 013018,2016年,DOI:10.1088/1367-2630/18/1/013018]において提示された、振幅変調-直接検出に基づく量子鍵配送である。この論文は、レーザー・ビーム振幅変調と直接検出とに基づくQKD方式について説明し、それを情報理論から生じる安全レベルに関してQKD方式を検討している。この方式では、わずかに異なる振幅の2つのレーザー・パルス、符号化鍵ビットが送信機から送られる。パルスの振幅は、次いで受信機において測定されるが、パルスを区別する確率は極めて低く、たいていの場合、測定結果は決定的でない。この論文では、送信デバイスおよび受信デバイスが十分に信頼できると仮定して、2つの一般的な盗聴方法、すなわち、ビームスプリッティング攻撃と、なりすまし(intercept-resend)攻撃に対する方式セキュリティが分析される。この分析は、その方式が、短距離(最高数キロメートル)または中距離(最高数十キロメートル)にわたる安全な暗号鍵配送を可能にすることを証明した。
【0006】
従来技術ソリューションは、単一の光チャネルを介して送信される、異なる搬送波をもつ複数の光信号を使用して従来の通信と量子鍵配送とを並行して実現する試みを開示している。たとえば、論文[M. Peev, A. Poppeら、IEEE Photonics Technology Letters、「Toward the Integration of CV Quantum Key Distribution in Deployed Optical Networks」30,7,650-653,2018年,DOI:10.1109/LPT.2018.2810334]では、(OOK変調信号を使用して)情報を送信するためにいくつかの波長が使用されたが、量子鍵配送のためには別個の波長が使用された。この刊行物では、暗号鍵は1550nmの波長において送信されたが、情報は、特に、1530~1545nm、1530~1535nmおよび/または1552~1561nmの範囲内の、他の波長において送信された。
【0007】
2016年の米国特許文献[US10169613B2]は、明白な(overt)シンボルの標準セットに加えて、秘密の(covert)シンボルが送信される、データ送信技法およびデバイスを記載している。秘密のシンボルによって送信された情報は、送信者を認証するために使用される。本方式によれば、追加の変調によって送信される情報は潜在的な盗聴者に対する検出雑音に似ており、および/または盗聴者の受信機は、秘密のシンボルを検出するためには技術的に不十分であろう。これは、秘密の変調に気づいていない第三者が送信者になりすまそうと試みることを防ぐ。説明した技法は、メッセージの送信者の識別情報を検証するために特に重要である。
【0008】
2016年の欧州特許文献[EP3244566B1]は、レーザー・パルスが鍵を符号化することに加えて、レーザー・パルスが1つの光チャネルにおいて位相基準として送られる、連続量(continuous-variable-based)量子暗号鍵配送(CV-QKD)方式を記載している。鍵コーディング・パルスと基準パルスとは光チャネルを通って交互に伝搬する。その文献は、コヒーレント光通信に基づく、QKDプロトコルを実装するためのシステムと、関連する方法とを開示している。基準パルスのおかげで、提示された方式は、光学経路中の位相ひずみに対する高い許容差を有し、たとえば平均スペクトル線幅をもつダイオード・レーザーなど、位相雑音に対する技術的要件の低減を伴う標準電気通信機器の使用を可能にする。
【0009】
米国出願[US2005/0190921A1]は、2つのエンドポイント(405aおよび405b)に連絡するために2つの通信チャネル(410および415)が必要とされる、標準BB84プロトコルを使用して、暗号化されたデータを送信し、量子暗号鍵配送を実装するための一般的な構成を開示している。暗号化されたデータは公衆ネットワーク(410)を介して送信されるが、量子暗号鍵は、たとえば、前記文献の図4にはっきり開示されているように、光ファイバー(415)、または自由空間オプティクスチャネルを介して送信される。したがって、このソリューションでは、本発明の場合とは異なり、データ送信および鍵配送は、単一チャネルを使用するのではなく2つの異なるチャネルを使用して達成される。データ送信および鍵配送は、単一の光搬送波波長の単一の光ビームを使用しても達成されない。本発明の場合とは異なり、その文献の図3において説明されているように、偏光が異なるシンボルのセットが量子鍵配送のために使用される。その文献において説明されている一般的な送信機は、シングル・フォトンのパルスと同等の、一定のエネルギーをもつ光のパルスを放出する。
【0010】
2020年に公開され、同一発明者が同一出願人名義で出願した中国の文献[CN111147243AおよびCN211352207U]は、光単波長量子および古典同時通信のための方法およびシステムを開示する。両文献は、2つのパラメータすなわち位相及び振幅において異なるシンボルのセットが使用される、コヒーレント変調技術に依存している。両文献とも、シンボルはホモダイン受信機で検出される。文献[CN’243]はは、LLO(local local oscillator:局所局部発振器)に基づく単波長量子・古典通信の方法を開示する。
【0011】
従来技術の問題
従来技術問題は、情報の同時送信と暗号鍵の配送とが、2つの異なる光源の使用を必要とする2つの異なる光(自由空間またはファイバー)チャネルを必要とすることである。別の従来技術問題は、情報と暗号鍵との同時送信が、単一の光(自由空間またはファイバー)チャネルと、それぞれ暗号鍵の送信または情報の送信に専用の、異なる波長の2つの光源とを必要とすることである。従来技術ソリューションでは、暗号鍵(たとえばQKD)を送信するために、通常、別個の専用インフラストラクチャ、たとえば光ファイバーまたは衛星を有することが必要である。
【0012】
振幅変調と直接検出とを使用する単一の光波長における鍵ビットと情報ビットとの送信は、いくつかの独立した要因により従来技術ソリューションでは使用されない、すなわち、
(i)最近まで従来技術において利用可能であった、光子数分解能を用いた測定を可能にするフォトダイオードおよび検出器(たとえば転移端(transition-edge)センサー)の低い量子効率。それらは、それらのために新しいアプリケーションが見つけられ続けるように、過去数年にわたって開発され、改善された。
(ii)2016年以前の、振幅変調と直接検出とを使用した安全な鍵配送のための技法の利用不可能性。ようやくそのような技法の実現可能性が理論的に提案されたのは2016年であった[T.IkutaおよびK.Inoue、DOI:10.1088/1367-2630/18/1/013018、3頁参照]が、この発見によって触発された技術は依然として開発されている。
(iii)シングル・フォトンの位相または偏光を使用した鍵暗号化に基づく量子暗号技法の集中的な開発により、従来技術文献は、それらの利点を強調しながら、当業者を位相または偏光変調を使用したソリューションに導き、したがって、この方向の技術開発が追求される自然な傾向がある。
(iv)商業的に提供される標準光電気通信では、波長が異なる多数のレーザー・ビームが光ファイバー中を伝搬しており(高密度波長分割多重DWDMと呼ばれる)、1Tbps[テラビット毎秒]のオーダーのビットレートを達成することが可能であるが、送信セキュリティの物理レイヤ保証はない。このタイプのソリューションの潜在顧客は、主に、金融機関、軍隊、政府機関または特殊サービスなど、より高いセキュリティ規格を必要とするデータを送信するエンティティであるので、単一の波長における鍵ビットと情報ビットとの送信は電気通信サービス市場ではほとんど関心をもたれない。
【0013】
明細書で使用される従来技術用語の用語集および定義
本明細書で使用される用語は、以下の定義において説明する以下の意味を有する。
【0014】
「情報ビット」という用語は、情報ビットを盗聴することが理論上可能であるので、暗号鍵ビットとして使用することができないデータ・ビットを示す。
【0015】
「暗号鍵ビット」という用語は、本文献においてなされる仮定の下で暗号鍵ビットを盗聴することが不可能であるので、暗号鍵として使用することができるデータ・ビットを示す。
【0016】
「直接検出」という用語は、光電磁波の強度または光子の数を測定する信号測定の方法を示す。
【0017】
「ビーム波長」という用語は、たとえば分光計によって測定されるビームの中心波長を示す。
【0018】
「弁別器」という用語は、エレクトロニクスにおいて使用される一般的な(知られている)デバイスを示し、ほとんどの場合、電圧しきい値、信号形状など、特定の基準に従って入来電気信号を分類する電子システムを示す。開示するソリューションでは、弁別器は、光検出器/シングル・フォトン検出器/シングル・フォトン・カウンタによって生成される電気信号に基づいて情報ビットおよび/または暗号鍵ビットの値を読み取るために、検出器において使用される。
【0019】
「FSO」(自由空間オプティクス)という用語は、2地点間でデータを送信するために自由空間における光放出と受信とを使用するワイヤレス光通信技術を指す。FSOは、(ウォーターベッセルおよび航空機のためになど)実施することが不可能である、(たとえば地理的遠隔地域における)高いコストにより、光ファイバー・ケーブルを使用した物理接続が実行不可能であり、ときに、または、送信者と受信者との間の距離が非常に長く、したがって光ファイバー中の光信号損失が通信を不可能にするときに有用である。
【0020】
「IM/DD」という用語は、強度変調と直接検出とを指し、それは、本明細書で説明するように、OOK、PPM、およびPAMなど、非コヒーレント変調フォーマットの部類を説明する総称である。
【0021】
「通信チャネル」という用語は送信機と受信機との間の論理接続を示す。物理的に、通信チャネルは、光ファイバーまたは自由空間(FSO)を通って伝搬する光ビームを用いて達成される。
【0022】
「OOK」オンオフ・キーイングという用語は、デジタル・データを搬送波の存在または不在として表す振幅シフト・キーイング(ASK、デジタル信号を変化する搬送波振幅として表すタイプのデジタル変調)の最も簡単な変調形態を示す。最も簡単な形態では、特定の時間の間の搬送波の存在は1のビット値を表すが、同じ時間の間の搬送波の不在は0のビット値を表す。
【0023】
「PPM」という用語は、パルス時間位置において情報を符号化する変調フォーマットを指す。
【0024】
「変調シンボルのセット」という用語は、特に、周波数/波長、強度/振幅/パワー(たとえばOOK変調)、時間遅延(たとえばPPM変調)、または偏光が異なる状態(シンボル)を含む、所与の変調フォーマットに一意の電磁界状態(シンボル)のセットである。セット中の各シンボルは、主に一意であるビット・ストリングに割り当てられる。
【0025】
「QKD」という用語は量子(暗号)鍵配送を示す。
【0026】
「光パワー」および「光強度」という用語は、本明細書では、同じパラメータを互換的に示すために使用する。このパラメータは、光波振幅に、または等価的にビーム中の光子の平均個数に直接的に相関させられる。
【0027】
本明細書で定義されていない他の用語は、本開示の、および特許出願明細書のコンテキストの当業者の最良の知識に照らして当業者によって確立され、理解される意味を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
問題に対するソリューション
本明細書で開示する発明は、修正(拡張)振幅変調(OOK、PAM)、またはパルス到達時間に関係する(PPM)フォーマット、すなわち、光搬送波の強度変調および直接検出(IM/DD)を使用するフォーマットに関する。情報の送信のために使用されるシンボルの標準セットは、単一の光搬送波波長を使用して、いくつかのまたはすべてのシンボルが暗号鍵ビットと情報ビットの両方を同時に符号化するように修正(拡張)される。シンボルの数は、情報ビットと暗号鍵ビットとの様々な値の送信を可能にするために増加させられる。暗号鍵の異なるビットを符号化するシンボルは、光ビームのパワー(強度)または等価的に光子の平均個数が異なる。本ソリューションは単一の準単色光ビーム(すなわち特定の中心波長を有するビーム)を使用し、このビームを使用して送信機と受信機との間の単一の通信チャネルが確立されるが、ビームを変調することによって、情報ビットと暗号鍵ビットの両方が符号化される。
【0029】
問題に対するソリューションは、第1の光ビームが、情報ビットを送信するために使用されており、他のビームが、暗号鍵ビットを送信するために使用されている、ビーム・スプリッタまたは光ファイバー・パワー・カプラによって分割されている光ビームをもつレーザーからなるシステムではない。
【0030】
本ソリューションは、たとえば、極めて高い量子効率をもつ高速フォトダイオードの利用可能性が急速に高まったことによって可能になった。
【課題を解決するための手段】
【0031】
送信機においてレーザー・ビーム強度変調を使用し、受信機において直接検出を使用する、情報ビットの同時送信と暗号鍵ビットの配送を伴う光通信のための発明的方法であって、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームが、情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に符号化する変調シンボルの共通セットによって変調され、異なる情報ビットを符号化するために使用されるシンボルは、光強度と時間遅延とを含むグループから選択される単一のパラメータのみが異なり、一方、異なる暗号鍵ビットを符号化するために使用されるシンボルは光強度のみが異なることを特徴とする、光通信のための発明的方法。
【0032】
好ましくは、通信において使用される変調シンボルのセットは、振幅ベースOOKPAMまたは時間遅延ベースPPMという、標準変調フォーマットの修正(拡張)バージョンである。
【0033】
好ましくは、光学経路によって振幅変調器に接続された、好ましくは400~1600nmの範囲内の波長の準単色光を放出する、連続波レーザー、または高い繰り返しレートをもつパルス・レーザーが、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームのソースとして使用される。
【0034】
好ましくは、情報ビット・ストリームと暗号鍵ビット・ストリームとを同時に符号化するために、振幅変調器が使用される。
【0035】
代替的に、好ましくは400~1600nmの範囲内波長の準単色光を放出する、好ましくは、直接ビーム変調システム、特にレーザー・ダイオードの電流変調を伴うレーザーが、特定の光搬送波波長のレーザー・ビーム源として使用される。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態では、好ましくは400~1600nmの範囲内の同じ波長であるが、異なる光パワーの光ビームを放出する、2つまたはそれ以上のレーザー・ダイオードが、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームのソースとして使用され、2つまたはそれ以上のレーザー・ダイオードによって放出されたビームは組み合わせられて特定の光搬送波波長の単一の光ビームになる。
【0037】
好ましくは、弁別器に接続された、フォトダイオードまたは光子数検出器を備える受信機が使用される。
【0038】
好ましくは、100nWよりも大きいパワーをもつ光信号の場合、光ビームのパワーを測定するために使用されるフォトダイオードを備える受信機が使用される。
【0039】
代替的に、好ましくは、100nWよりも小さいパワーをもつ光信号の場合、シングル・フォトンを測定するために使用される光子数検出器を備える受信機が使用される。
【0040】
好ましくは、弁別器は、情報ビット・ストリームと暗号鍵ビット・ストリームとを同時に復号するために使用される。
【0041】
好ましくは、拡張OOK変調フォーマットにおいて、シングル・フォトン検出を使用する方式における暗号鍵の異なるビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【0042】
【数1】
は50%よりも高い。
【0043】
好ましくは、拡張PPM変調フォーマットにおいて、シングル・フォトン検出を使用する方式における暗号鍵の異なるビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【0044】
【数2】
は50%よりも高い。
【0045】
好ましくは、拡張OOK変調フォーマットにおいて、フォトダイオード検出を使用する方式における暗号鍵の異なるビットに対応するパルスのパワーの比率
【0046】
【数3】
は85%よりも高い。
【0047】
好ましくは、拡張PPM変調フォーマットにおいて、フォトダイオード検出を使用する方式における暗号鍵の異なるビットに対応するパルスのパワーの比率
【0048】
【数4】
は85%よりも高い。
【0049】
好ましくは、拡張PAM変調フォーマットにおいて、フォトダイオード検出を使用する方式における暗号鍵の異なるビットに対応するパルス・パワー比率の各々
【0050】
【数5】
は85%よりも高い。
【0051】
好ましくは、本発明による方法では、特定の光搬送波波長のレーザー・ビームを使用して送信機と受信機との間に単一の通信チャネルが確立され、チャネルは、送信機から受信機に情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に送信するために使用される。
【0052】
好ましくは、本発明による方法では、送信機および受信機は1つまたは複数の追加の通信チャネルによって、好ましくは無線チャネルによって接続される。
【0053】
本発明はまた、送信機と受信機とを備える、強度変調と直接検出とを使用して情報ビットの同時送信と暗号鍵ビットの配送とを実現する光通信のためのシステムであって、送信機が、特定の光搬送波波長の変調されたレーザー・ビームのソースを備え、受信機が、弁別器に接続されたフォトダイオードまたは光子数検出器を備え、送信機は、変調シンボルの共通セットを使用して、特定の光搬送波波長において情報ビットと暗号鍵ビットとを同時に送信するように適応され、異なる情報ビットを符号化するために使用されるシンボルは強度と時間遅延とを含むグループから選択される単一のパラメータのみが異なり、一方、異なる鍵ビットを符号化するために使用されるシンボルは光強度のみが異なることを特徴とする、光通信のためのシステムを含む。
【0054】
好ましくは、特定の光搬送波波長の変調されたレーザー・ビームのソースは、光学経路によって振幅変調器に接続された、好ましくは400~1600nmの範囲内の波長の準単色光を放出するように適応された、連続波レーザー、または高い繰り返しレートをもつパルス・レーザーである。
【0055】
代替的に、好ましくは、特定の光搬送波波長の変調されたレーザー・ビームのソースは、好ましくは400~1600nmの範囲内の波長の準単色光を放出するように適応された、直接ビーム変調システム、特にレーザー・ダイオードの電流変調を伴うレーザーである。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態では、特定の光搬送波波長の変調されたレーザー・ビームのソースは、好ましくは400~1600nmの範囲内の同じ波長であるが、異なるパワーの光ビームを放出するように適応された2つまたはそれ以上のレーザー・ダイオードに基づく。
【0057】
好ましくは、受信機は、弁別器に接続された、光ビーム・パワーを測定するためのフォトダイオード、またはシングル・フォトンを測定するための光子数検出器を備える。
【0058】
好ましくは、弁別器は、情報ビット・ストリームと暗号鍵ビット・ストリームとを同時に復号するように適応される。
【0059】
好ましくは、変調器は、修正(拡張)OOK変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数は、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、シングル・フォトン検出を使用する方式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【0060】
【数6】
は50%よりも高い。
【0061】
代替的に、好ましくは、変調器は、修正(拡張)PPM変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数は、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、シングル・フォトン検出を使用する方式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率
【0062】
【数7】
は50%よりも高い。
【0063】
代替的に、好ましくは、変調器は、修正(拡張)OOK変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数は、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、フォトダイオード検出を使用する方式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルスの光パワーの比率
【0064】
【数8】
は85%よりも高い。
【0065】
代替的に、好ましくは、変調器は、修正(拡張)PPM変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数は、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別するシンボルを追加することによって増加し、フォトダイオード検出を使用する方式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルスの光パワーの比率
【0066】
【数9】
は85%よりも高い。
【0067】
代替的に、好ましくは、変調器は、修正(拡張)PAM変調フォーマットを実装するように適応され、シンボルの数は、光強度レベルに基づいて鍵ビットを区別することを可能にするシンボルを追加することによって増加し、フォトダイオード検出を使用する方式における異なる暗号鍵ビットに対応するパルスの光パワーの比率の各々
【0068】
【数10】
は85%よりも高い。
【0069】
本発明の利点
本特許明細書による発明はいくつかの利点を有する。
【0070】
本発明は、光チャネルが盗聴される場合に、暗号鍵の安全な配送を可能にする。暗号鍵の安全な配送は、盗聴者が、許可された受信者よりも高い利用可能な光信号パワーを有する場合でも可能である。したがって、受信された信号パワーの異常な低下によって示された盗聴者の潜在的な存在を、セキュリティ・レベルに影響を及ぼすことなしにパワー低下の極めて広い範囲について無視することができる。
【0071】
情報ビットと暗号鍵ビットとを送信するためにシンボルの共通セットを使用することにより、専用インフラストラクチャ(別個の衛星光リンクまたは光ファイバー・リンク)と専用機器(シングル・フォトンのソース、シングル・フォトンの検出器)またはコヒーレント検出システムとを必要とする量子暗号技法とは対照的に、標準電気通信インフラストラクチャ(光ファイバー、変調器、フォトダイオード)を使用した、送信者と受信者との間の安全な通信が可能になる。
【0072】
さらに、光強度(同等に、光パワーまたは平均光子数)が異なるシンボルを使用して、暗号鍵の異なるビットが符号化されることは、暗号鍵配送のセキュリティを保証するために直接検出ショット・ノイズを使用することを可能にする。
【0073】
添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態において本発明をより詳細に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】修正(拡張)OOK変調フォーマットを使用する、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのための本発明の一実施形態を示す図であって、(a)本発明の実施形態のシステムダイヤグラム、(b)発明的方法において使用されるシンボルのセット、(c)、一点鎖線によって示された決定しきい値とともに、送られたシンボルに応じた特定の数の光子の検出の確率を示す、シングル・フォトン検出器を使用した検出ダイヤグラム、(d)一点鎖線によって示された決定しきい値とともに、送られたシンボルに応じた特定の光電流値を検出する確率を示す、フォトダイオードを使用した検出ダイヤグラムを示す図である。
図2】修正(拡張)PPM変調フォーマットを使用する、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのための本発明の一実施形態であって、(a)本発明の実施形態のシステムダイヤグラム、(b)発明的方法において使用されるシンボルのセット、(c)一点鎖線によって示された決定しきい値とともに、送られたシンボルに応じた光子の特定の数の検出の確率を示す、シングル・フォトン検出器を使用した検出ダイヤグラム、(d)一点鎖線によって示された決定しきい値とともに、送られたシンボルに応じた特定の光電流値を検出する確率を示す、フォトダイオードを使用した検出ダイヤグラムを示す図である。
図3】修正(拡張)PAM-4変調フォーマットを使用する、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのための本発明の一実施形態であって、(a)本発明の実施形態のシステムダイヤグラム、(b)発明的方法において使用されるシンボルのセット、(c)一点鎖線によって示された決定しきい値とともに、送られたシンボルに応じた特定の光電流値を検出する確率を示す、フォトダイオードを使用した検出ダイヤグラムを示す図である。
図4】直接レーザー変調(たとえばレーザー・ダイオードの電流変調)を伴う送信機を使用した、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのための本発明の一実施形態を示す図である。
図5】複数のレーザー・ダイオードを備える送信機を使用する、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのための本発明の一実施形態であって、(a)修正(拡張)OOKまたはPPM変調フォーマットを実装するためのシステム、(b)修正(拡張)PAM-4変調フォーマットを実装するためのシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図は、用語集定義に一致する用語および説明を使用する。
【0076】
以下の実施形態は、本発明を限定するためにではなく、本発明を例示し、本発明の個々の態様を説明するためにのみ提示し、それらは、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲全体に関連付けられるべきでない。
【実施例1】
【0077】
修正(拡張)OOK(オンオフ・キーイング)変調フォーマットを使用した情報の同時送信および暗号鍵の配送
図1(a)に示された以下の例では、送信機が使用され、光源は、(400~1600nmの範囲内の選択された波長をもつ)レーザーであり、レーザーのビームは振幅変調器によって変調される。図1(b)に示された3つの変調シンボルのセットが通信のために使用され、レーザー・パルスは光パワー、したがって平均光子数が異なる。個々のパルスの光パワーをP、P、Pとして示し、関連する平均光子数をN、N、Nとして示した。(ボールドで示された)情報の単一ビットと、(イタリックで示された)暗号鍵の単一ビットとはP、Pの光パワーをもつパルスに割り当てられる。情報ビット値0に関連付けられたパルスの光パワーをPとして示し、情報ビット値1と鍵ビット値0とに関連付けられたパルスの光パワーをPとして示し、情報ビット値1と鍵ビット値1とに関連付けられたパルスの光パワーをPとして示した。パルス中の平均光子数を相応して示した。パルス・パワーは、典型的な情報の異なるビットが、暗号鍵の異なるビットに対応するパルスの場合よりもはるかに高いパワー差をもつパルスに対応するように、すなわちP-P>>P-Pとなるように選択される。特に、修正(拡張)OOKフォーマットでは、パルスがない場合、すなわちP=N=0である場合、情報ビットの値0が符号化される。
【0078】
受信機に到達するビーム・パワーに応じて、2つの検出方式がその中に実装され得る。第1の方式は、光子数分解能(たとえば転移端センサー)をもつ検出器を使用し、第2の方式は、それの光電流が光子束(光ビーム・パワー)に比例するフォトダイオード(たとえばFINISAR XPDV21x0R)を使用する。受信機において光子数測定が実行される方式は図1(c)に示されており、測定のためにフォトダイオードが使用される方式は図1(d)に示されている。シングル・フォトン検出を使用する方式における異なる鍵ビットに対応するパルス中の光子の平均個数の比率N/Nは50%よりも高い(表1参照)。フォトダイオード検出を使用する方式における異なる鍵ビットに対応するパルスのパワー比P/Pは85%よりも高い(表2参照)。
【0079】
光子数測定を使用する方式において、情報ビットおよび暗号鍵ビットの検出は、図1(c)において垂直一点鎖線として提示された、自然数k、k、kによって定義される事前決定された決定しきい値を使用して達成される。図では、例示的な値N=0、N=16およびN=24を使用した。ビット値を読み取るための方式は以下のとおりである。
・測定された光子数nが範囲(0,k]内である場合、情報ビットの値は0であり、鍵ビットの値は定義されない。
・測定された光子数nが範囲(k,k)内である場合、情報ビットの値は1であり、鍵ビットの値は0である。
・測定された光子数nが範囲[k,k]内である場合、情報ビットの値は1であり、鍵ビットの値は定義されない。
・測定された光子数nがkよりも大きい場合、情報ビット値は1であり、鍵ビット値は1である。
【0080】
修正(拡張)OOKフォーマットにおいて、パルスがない、すなわちN=0である場合、情報ビットの値0が符号化されるとすると、しきい値kは0になるように選択され得、これは、0カウントが情報ビット0の検出に対応することを意味する。最適値N、Nおよび決定しきい値k、kは分析的に計算され得る。それらは、受信機における検出雑音および受信された信号の平均パワーなど、いくつかのファクタに依存する。潜在的な盗聴者は、許可された受信者と同程度の信号パワーが利用可能であると仮定し、光子数の検出がショット・ノイズのみの影響を受けると仮定して、解析計算に基づく、提示した伝送方式の最適動作条件を表1に提示した。
【0081】
【表1】
【0082】
フォトダイオードによる光信号パワー測定を使用する方式において、情報ビットおよび暗号鍵ビットの検出は、図1(d)において垂直一点鎖線として提示された、測定された光電流I、I、Iの値によって定義される事前決定された決定しきい値を使用して達成される。ビット値を読み取るための方式は以下のとおりである。
・光電流Iの測定された値が範囲(0,I)内である場合、情報ビットの値は0であり、鍵ビットの値は定義されない。
・光電流Iの測定された値が範囲[I,I)内である場合、情報ビットの値は1であり、鍵ビットの値は0である。
・光電流Iの測定された値が範囲[I,I]内である場合、情報ビットの値は1であり、鍵ビットの値は定義されない。
・光電流Iの測定された値がIよりも大きい場合、情報ビット値は1であり、鍵ビット値は1である。
【0083】
情報の異なるビットに関連付けられた信号の実質的なパワー分離により、しきい値Iの選択はいかなる実際的な技術的困難も提示しない。しきい値Iは、情報ビットの誤検出の確率を最小にするように選択されるべきである。特に、情報ビット0および1に関連付けられた信号の検出に同じノイズが付随する場合、しきい値は、パルスPの測定に関連付けられた光電流の分布平均の1/2として設定され得る(表2参照)。P、Pの最適値および決定しきい値I、I、Iは、受信機における検出ノイズおよび受信された信号の平均パワーなど、いくつかのファクタに依存する。潜在的な盗聴者は、許可された受信者と同程度の信号パワーが利用可能であると仮定し、光電流検出がショット・ノイズのみの影響を受けると仮定して、解析計算に基づく、提示した伝送方式の最適動作条件を表2に提示した。その上、表2では、フォトダイオード量子効率は50%であり、単一のシンボルの測定時間は1ns[ナノ秒]であると仮定している。
【0084】
【表2】
【0085】
信号検出が、ショット・ノイズに加えて、放出されたレーザー・ビームの強度の変動によって引き起こされるノイズまたは熱雑音による影響を受けたときに、最適動作点が変化することが観測された。また、盗聴者によって測定された信号のパワーが、許可された受信者によって測定された信号のパワーよりも低いまたは高いときに、最適動作点が変化することが観測された。
【0086】
弁別器は、情報ビット・ストリームと暗号鍵ビット・ストリームとを同時に復号するように適応される。
【実施例2】
【0087】
4次の修正(拡張)PPM(パルス位置)変調フォーマットを使用する、情報の同時送信および暗号鍵の配送
修正(拡張)PPM変調を使用する、本発明の例示的な実施形態について、図2(a)に示された以下の例において説明する。それは送信機を使用し、システム中の光源は(400~1600nmの範囲から選択された波長をもつ)レーザーであり、レーザーのビームは振幅変調器(たとえばEOSPACE AX-0S5-10-PFU-PFU-UL)によって変調される。通信は8つの変調シンボルのセットを使用し、それらの変調シンボルについて、レーザー・パルスは、光パワー(平均光子数)と、PPMフレームの開始に対して測定されるパルス放出時間(パルス持続期間よりも4倍長い時間間隔)とが異なる。情報の異なるビットは、放出時間が異なるパルスに対応する。暗号鍵の異なるビットは、パワーが異なるシンボルに対応する。情報ビット(ボールド・フォント)はパルスの時間位置に基づいて読み取られるが、暗号鍵ビット(イタリック)はパルス・パワー測定値または同等に平均光子数に基づいて読み取られる。図2(b)は4次の修正(拡張)PPM変調フォーマットのための8つのシンボルのセットを示す。個々のパルスの光パワーをP、Pとして示し、関連する平均光子数をN、Nとして示した。フレームの開始(垂直実線)に対する可能なパルス到達時間はt、t、t、tとして示されている。鍵ビット値0に関連付けられたパルスの光パワーをPとして示し、鍵ビット値1に関連付けられたパルスの光パワーをPとして示した。パルス中の平均光子数を相応して示した。パルス到達時間は以下の表に従って情報ビットに関連付けられる。
【0088】
【表3】
【0089】
光子数測定を使用する方式において、情報ビット検出は、表3に従って光子検出時間を測定することによって実現され、暗号鍵ビットの測定は、図2(c)において垂直一点鎖線として提示された、自然数k、kによって定義される事前決定された決定しきい値を使用して実現される。図では、例示的な値N=16、N=24を使用した。暗号ビット値を読み取るための方式は以下のとおりである。
・測定された光子数nが範囲(0,k]内である場合、鍵ビット値は0である。
・測定された光子数nが範囲[k,k]内である場合、鍵ビットの値は定義されない。
・測定された光子数nがkよりも大きい場合、鍵ビット値は1である。
【0090】
、Nの最適値および決定しきい値k、kは分析的に決定され得る。それらは、受信機における検出ノイズおよび受信された信号の平均パワーなど、いくつかのファクタに依存する。潜在的な盗聴者は、受信機と同程度の信号パワーが利用可能であると仮定し、光子数の検出がショット・ノイズのみの影響を受けると仮定して、解析計算に基づく、伝送方式の最適動作条件を表4に提示した。
【0091】
【表4】
【0092】
フォトダイオード・ベースの光信号パワー測定を使用する方式において、情報ビット検出は、表3に従ってPPM検出フレームにおけるパルス検出時間を測定することによって達成されるが、暗号鍵ビットは、図2(d)において垂直一点鎖線として提示された、測定された光電流値I、Iによって定義される事前決定された決定しきい値を使用して測定される。暗号鍵ビット値を読み取るための方式は以下のとおりである。
・測定された光電流値Iが範囲(0,I)内である場合、鍵ビットの値は0である。
・測定された光電流値Iが範囲[I,I]内である場合、鍵ビット値は定義されない。
・測定された光電流値IがIよりも大きい場合、鍵ビットの値は1である。
【0093】
最適値P、Pおよび決定しきい値I、Iは分析的に決定され得る。それらは、受信機における検出ノイズおよび受信された信号の平均パワーなど、いくつかのファクタに依存する。潜在的な盗聴者は、許可された受信者と同程度の信号パワーが利用可能であると仮定し、光電流検出がショット・ノイズのみの影響を受けると仮定して、解析計算に基づく、伝送方式の最適動作条件を表5に提示した。その上、表5では、フォトダイオード量子効率は50%であり、単一のシンボルの測定時間は1ns[ナノ秒]であると仮定している。
【0094】
【表5】
【0095】
信号検出が、ショット・ノイズに加えて、放出されたレーザー・ビームの強度の変動によって引き起こされるノイズまたは熱雑音による影響を受けたときに、最適動作点が変化することが観測された。また、盗聴者によって測定された信号のパワーが、許可された受信者によって測定された信号のパワーよりも低いまたは高いときに、最適動作点が変化することが観測された。
【実施例3】
【0096】
修正(拡張)PAM-4(パルス振幅変調)フォーマットを使用する、情報の同時送信と暗号鍵の配送
修正(拡張)PAM-4変調を使用する本発明の例示的な実施形態について、図3(a)に示された以下の例において説明する。それは、システム中の光源が(400~1600nmの範囲から選択された波長の)レーザーであり、レーザーのビームが振幅変調器によって変調される、送信機を使用する。図3(b)に示された8つの変調シンボルのセットが通信のために使用され、レーザー・パルスは光パワー、したがって平均光子数が異なる。個々のパルスの光パワーをP、P、P、P、P、P、P、Pとして示した。パルスの光パワーを表6に従って情報ビットと暗号鍵ビットとに関連付けた。
【0097】
【表6】
【0098】
異なる情報ビットが、異なる鍵ビットに対応するパルスの場合よりもはるかに高いパワー差をもつパルスに対応するように、すなわち、P-P>>P-P、P-P>>P-P、P-P>>P-P、およびP-P>>P-Pとなるように、パルス・パワーを選択した。
【0099】
測定のためにフォトダイオード(たとえばFINISAR XPDV21xOR)が使用される検出方式が図3(c)に示されている。情報ビットと暗号鍵ビットとの検出は、図3(c)において垂直一点鎖線として提示された、測定された光電流の値I、I、I、I、I、I、I、I、I、I、I10によって定義される事前決定された決定しきい値を使用して達成される。ビット値を読み取るための方式は以下のとおりである。
・光電流Iの測定された値が範囲(0,I)内である場合、情報ビットの値は00であり、鍵ビットの値は0である。
・光電流Iの測定された値が範囲[I,I]内である場合、情報ビットの値は00であり、鍵ビットの値は定義されない。
・光電流Iの測定された値が範囲(I,I]内である場合、情報ビットの値は00であり、鍵ビットの値は1である。
・光電流Iの測定された値が範囲(I,I)内である場合、情報ビットの値は01であり、鍵ビットの値は0である。
・光電流Iの測定された値が範囲[I,l]内である場合、情報ビットの値は01であり、鍵ビットの値は定義されない。
・光電流Iの測定された値が範囲(I,l]内である場合、情報ビットの値は01であり、鍵ビットの値は1である。
・光電流Iの測定された値が範囲(I,I)内である場合、情報ビットの値は10であり、鍵ビットの値は0である。
・光電流Iの測定された値が範囲[I,I]内である場合、情報ビットの値は10であり、鍵ビットの値は定義されない。
・光電流Iの測定された値が範囲(I,l]内である場合、情報ビットの値は10であり、鍵ビットの値は1である。
・光電流Iの測定された値が範囲(I,I)内である場合、情報ビットの値は11であり、鍵ビットの値は0である。
・光電流Iの測定された値が範囲[I,I10]内である場合、情報ビットの値は11であり、鍵ビットの値は定義されない。
・光電流Iの測定された値がI10よりも大きい場合、情報ビットの値は11であり、鍵ビット値は1である。
【0100】
最適値P、P、P、P、P、P、P、Pおよび決定しきい値I、I、I、I、I、I、I、I、I、I、I10は分析的に決定され得る。それらは、受信機における検出ノイズおよび受信された信号の平均パワーなど、いくつかのファクタに依存する。潜在的な盗聴者は、許可された受信者と同程度の信号パワーが利用可能であると仮定し、光電流測定がショット・ノイズのみの影響を受けると仮定して、例示目的のために選択した1mWの平均レーザー・ビーム・パワー
【0101】
【数11】
についての解析計算に基づく、提示した伝送方式の最適動作条件を表7に提示した。その上、表7では、フォトダイオード量子効率が50%であり、単一のシンボルの測定時間が1ns[ナノ秒]であると仮定している。弁別器は、情報ビット・ストリームと暗号鍵ビット・ストリームとを同時に復号するように適応される。
【0102】
【表7】
【0103】
信号検出が、ショット・ノイズに加えて、放出されたレーザー・ビームの強度の変動によって引き起こされるノイズまたは熱雑音による影響を受けたときに、最適動作点が変化することが観測された。また、盗聴者によって測定された信号のパワーが、許可された受信者によって測定された信号のパワーよりも低いまたは高いときに、最適動作点が変化することが観測された。
【実施例4】
【0104】
電流変調を介した直接変調レーザー・ダイオードを使用する、情報の同時送信および暗号鍵の配送
本発明の例示的な実施形態は、実施例1~実施例3、すなわち図1(a)、図2(a)、図3(a)に提示した本発明のシステムの代替アーキテクチャであり、レーザー・ダイオードによって放出された光を変調するために外部振幅変調器が使用される。一定パワーのレーザー・ビームがそれに結合される振幅変調器は、ここでは直接レーザー変調システムによって置き換えられる。
【0105】
本発明のこの例示的な実施形態は図4に示されており、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのために直接レーザー変調(たとえばレーザー・ダイオード電流変調)送信機が使用される。レーザー変調システムは、情報ビットと暗号鍵ビットとの入来ストリームを、直接レーザー変調のために使用される電気信号に変換するように適応される。レーザー変調システムによって生成された電気信号はレーザー・ダイオードを駆動する。上記で提示した改変(外部振幅変調器がない)以外は、このシステムは、前の実施例において説明したシステムと異ならない。
【0106】
本システムは、修正(拡張)OOK変調フォーマットと、修正(拡張)PPM変調フォーマットと、修正(拡張)PAM-4変調フォーマットとを実装するために使用され得る。
【0107】
発明的システムのアーキテクチャの変更にかかわらず、発明的方法の実装は変わらないままであり、実施例1~実施例3において説明した、本発明を実装するための方法は同等のままである。
【実施例5】
【0108】
複数のレーザー光源を使用する、情報の同時送信および暗号鍵の配送
本発明の例示的な実施形態は、実施例1~実施例3、すなわち図1(a)、図2(a)、図3(a)に提示した本発明のシステムの代替アーキテクチャであり、レーザー・ダイオードによって放出された光を変調するために外部振幅変調器が使用される。単一のレーザー・ダイオードからの一定パワーのレーザー・ビームがそれに結合される振幅変調器は、複数のレーザー・ダイオードからなるサブシステムに置き換えられる。
【0109】
本発明のこの例示的な実施形態は図5に示されており、図5は、複数のレーザー・ダイオードからなる送信機を使用する、情報の同時送信と暗号鍵の配送とのための本発明システムの代替変形態を示し、図5(a)は、修正(拡張)OOKまたはPPM変調フォーマットを実装するためのシステムを示し、図5(b)は、修正(拡張)PAM-4変調フォーマットを実装するためのシステムを示す。
【0110】
この例では、レーザー・ダイオードの各々は、使用される変調シンボルのセットによって決定される一定の強度をもつ光パルスを生成するように適応される。
【0111】
OOK変調フォーマットでは、状態PおよびPに対応するパワーをもつパルスを生成する2つのレーザー・ダイオードが必要とされ、第1のダイオードは、状態Pに対応するパワーをもつパルスを生成し、第2のダイオードは、状態Pに対応するパワーをもつパルスを生成する。
【0112】
PPM変調フォーマットでは、状態PおよびPに対応するパワーをもつパルスを生成する2つのレーザー・ダイオードが必要とされ、第1のダイオードは、状態Pに対応するパワーをもつパルスを生成し、第2のダイオードは、状態Pに対応するパワーをもつパルスを生成する。
【0113】
PAM-4変調フォーマットでは、P、P、P、P、P、P、P、P状態に対応するパワーをもつパルスを生成する8つのレーザー・ダイオードが必要とされる。ここで、第1のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成し、第2のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成し、第3のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成し、第4のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成し、第5のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成し、第6のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成し、第7のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成するが、第8のダイオードは、状態Pに対応するパワーのパルスを生成する。上記で提示された改変(外部振幅変調器がない)以外に、このシステムは、実施例1~実施例3において説明したシステムと異ならない。
【0114】
発明的システムのアーキテクチャの変更にかかわらず、発明的方法の実装は変わらないままであり、実施例1~実施例3において説明した、本発明を実装するための方法は同等のままである。
【0115】
本発明の適用の潜在的領域
本発明は、特に、(既存の光ファイバー・インフラストラクチャを使用する)地上電気通信サービス、または向上したセキュリティをもつ(光衛星通信を使用する)衛星電気通信サービスを提供する事業者の間で、電気通信産業に適用可能である。そのようなサービスは、たとえば、軍隊、政権運営、特殊サービスまたは金融部門のために提供される。本発明は、物理レイヤにおいて暗号鍵配送の機能を与えることをめざしている光通信機器企業のためにも有用であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5