(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】監視カメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20241029BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241029BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20241029BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B17/56 B
G03B15/00 S
G03B15/03 K
G08G1/04 C
(21)【出願番号】P 2019103274
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-05-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾又 章斗
(72)【発明者】
【氏名】田坂 浩一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 康二
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌史
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】芝沼 隆太
【審判官】松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103402050(CN,A)
【文献】特開平10-210331(JP,A)
【文献】特開2012-116315(JP,A)
【文献】特開2008-83634(JP,A)
【文献】特開2003-219230(JP,A)
【文献】特開2015-11129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/00
G03B 17/54
H04N 5/222-5/235
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
F16M 11/00
F16M 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に長い略直方体形状の上部前面にカメラ部
が配置
されるとともに、下部前面に照明部
が配置
されて構成される本体部と、
前記本体部の少なくとも上面から前方に延出して設けられる庇部と、
平行な一対の側板部と、前記一対の側板部のそれぞれの下端同士を連結
する基台部とを有するブラケットと、
前記上部前面および前記下部前面を挟む一対の側面のそれぞれに垂直なチルト回転中心における回転であって、前記側板部と前記本体部との回転を固定するチルト固定部と、を備え
、
前記チルト固定部は、前記チルト回転中心を中心とした前記側板部上で円周方向に穿設され、前記円周方向に沿う長穴で形成される4つの弧状穴と、前記4つの弧状穴により囲まれ前記側板部の前記チルト回転中心に穿設されるチルト軸穴と、前記弧状穴と前記チルト軸穴とに挿通される締結具と、を有し、前記チルト軸穴と前記4つの弧状穴のうち前記チルト軸穴を挟む2つの対向する弧状穴との前記締結具による締結に基づき、前記本体部の下面と前記基台部とが対面した第1の位置、前記本体部の背面と前記基台部とが対面した第2の位置および前記本体部の上面と前記基台部とが対面した第3の位置のいずれでも前記ブラケットを前記本体部に固定
可能である、
監視カメラ。
【請求項2】
前記カメラ部のレンズユニットの光軸と前記照明部から出射される照明の照明光軸とが同一鉛直面に配置される、
請求項1に記載の監視カメラ。
【請求項3】
前記チルト固定部は、前記本体部に固定されて前記締結具が螺合する締結用フレー
ムを有する、
請求項1に記載の監視カメラ。
【請求項4】
前記基台部には、
高速道路におけるガントリー等の棒材に取り付けられた板状の雲台に対し、前記基台部に垂直なパン回転中心における回転であって、前記雲台との相対回転を固定するパン固定部が設けられ、
前記パン固定部は、前記パン回転中心を中心とした前記基台部の円周上に穿設される複数の弧状穴と、前記弧状穴に挿通されて前記雲台に螺着される締結具と、を有する、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の監視カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
高画質のナンバープレートの認識と運転手の撮影を簡易な構成で可能にする車両撮影装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この車両撮影装置は、道路の路側に設置される筐体と、筐体に設置されたレンズを介して道路上の車両の撮影を行うカメラ部と、筐体のレンズより上側に設置され、上側照明範囲を照明する上側照明部と、筐体のレンズより下側に設置され、下側照明範囲を照明する下側照明部とを備える。筐体は、走行レーンの路側のアイランド上に設置される脚部の上に下面が設置(即ち、下支え設置)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両撮影装置は、筐体のレンズより上側に上側照明部が設置されているため、レンズに太陽光が入射しやすく、視認率の低下を招く可能性があった。上側照明部とともにレンズを覆う庇を設ければ、大きな庇が必要となり、装置が大型となる。大きな庇で上側照明部とレンズとをともに覆えば、夜間撮影時に照明光が庇内面に反射してレンズに入りやすくなり、これによっても視認率の低下を招く可能性があった。また、特許文献1の車両撮影装置では、筐体が専用の脚部に設置されるため、脚部の施工費あるいは筐体と脚部とを取り付ける取付金具の購入等、多くの設置工数および設置費用が発生する。特に取付け時に道路閉鎖が必要となる現場では、簡単な設置作業で、画角等を短時間で調整したいという要請がある。
【0005】
また、脚部による下支え設置以外に、ガントリーに下支え設置あるいは背面のポールに背面設置したい要請もあり、このような場合には、調整機構を備えた取付金具を別途、選定して購入する必要があった。更に、ガントリーでの取付けでは、隙間の少ない標識間でも設置できる吊り下げ設置したい要請もある。
【0006】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、視認率の低下を抑制し、設置環境への設置自由度が高く、簡単に設置できる監視カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上下に長い略直方体形状の上部前面にカメラ部が配置されるとともに、下部前面に照明部が配置されて構成される本体部と、前記本体部の少なくとも上面から前方に延出して設けられる庇部と、平行な一対の側板部と、前記一対の側板部のそれぞれの下端同士を連結する基台部とを有するブラケットと、前記上部前面および前記下部前面を挟む一対の側面のそれぞれに垂直なチルト回転中心における回転であって、前記側板部と前記本体部との回転を固定するチルト固定部と、を備え、前記チルト固定部は、前記チルト回転中心を中心とした前記側板部上で円周方向に穿設され、前記円周方向に沿う長穴で形成される4つの弧状穴と、前記4つの弧状穴により囲まれ前記側板部の前記チルト回転中心に穿設されるチルト軸穴と、前記弧状穴と前記チルト軸穴とに挿通される締結具と、を有し、前記チルト軸穴と前記4つの弧状穴のうち前記チルト軸穴を挟む2つの対向する弧状穴との前記締結具による締結に基づき、前記本体部の下面と前記基台部とが対面した第1の位置、前記本体部の背面と前記基台部とが対面した第2の位置および前記本体部の上面と前記基台部とが対面した第3の位置のいずれでも前記ブラケットを前記本体部に固定可能である、監視カメラを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、監視カメラにおいて、視認率の低下を抑制でき、設置環境への設置自由度が高く、簡単に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図8】縦ポールに背面設置された監視カメラの斜視図
【
図9】棒材に吊り下げ設置された監視カメラの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る監視カメラの構成および作用を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る監視カメラ11の正面図である。実施の形態1に係る監視カメラ11は、被写体(例えば車両)の車内の乗員(例えば運転者、あるいは、運転者および同乗者)の顔の撮像に適した第1撮像条件(例えば長い露光時間が設定)で車両を撮像するとともに、車両のナンバープレートの撮像に適した第2撮像条件(例えば短い露光時間が設定)で車両を撮像する。監視カメラ11は、第1撮像条件と第2撮像条件とを時分割に切り替えて撮像可能である。
【0012】
例えば、監視カメラ11は、フレームレートを30fpsとした場合に、奇数番目(例えば第1番目、第3番目、…、第29番目)のフレームでは第1撮像条件下で撮像した車両の撮像画像(つまり、車内の乗員の顔が鮮明に映る画像)を生成できる。また、監視カメラ11は、フレームレートを30fpsとした場合に、偶数番目(例えば第2番目、第4番目、…、第30番目)のフレームでは第2撮像条件下で撮像した車両の撮像画像(つまり、ナンバープレートが鮮明に映る画像)を生成できる。このように、監視カメラ11は、同一の被写体(例えば車両)について、車内の乗員の顔が鮮明に映る画像とナンバープレートが鮮明に映る画像とを略同時に撮像して生成できる。
【0013】
なお、本明細書中において上、下、前、後(背)、左、右の方向は
図1に示した矢印の向きに従うものとする。また、直交矢印の交点部に描かれた中黒点の円は矢印の正面視を示す。実施の形態1に係る監視カメラ11は、本体部13と、庇部15と、ブラケット17と、チルト固定部19とを主要な構成として有する。
【0014】
本体部13は、上下に長い略直方体形状の外形を有する。本体部13は、上部前面にカメラ部21を配置するとともに、下部前面に照明部23を配置する。
【0015】
図2は、
図1に示した監視カメラ11の側面図である。庇部15は、本体部13の少なくとも上面から前方に延出して設けられる。実施の形態1において、庇部15は、ブラケット17の側板部25と平行に垂下する遮光側板27を左右一対の両側に有する。庇部15は、カメラ部21の上面を前後に渡って覆う。庇部15の先端には、カメラ部21の前方に雨垂れを落下させない水切片29が起立して形成される。これにより、本体部13に当たる雨水は、庇部上面を伝って、カメラ部21および照明部23に接触することなく庇部15の先端から落下する。これにより、画角内へ雨垂れが接しなくなり、雨天時の視界確保が良好となる。
【0016】
庇部15は、内側が黒塗装されていてもよい。これにより、夜間撮影時に、照明光が庇内面に反射してカメラ部21に入ること、ヘッドライトによる路面からの反射光31(
図5)がカメラ部21に入ることも抑制でき、監視カメラ11の撮像画像における視認率の低下をより一層抑制できる。
【0017】
ブラケット17は、前面(具体的には上部前面および下部前面)を挟む一対の側面のそれぞれに垂直なチルト回転中心33(
図1参照)を中心に支持される平行な一対の側板部25を有する。ブラケット17は、これらの側板部25のそれぞれの下端同士を連結して側板部25の回転により、本体部13の下面から上面に渡って対面配置が可能となる基台部35を有する。
【0018】
チルト固定部19は、側板部25と本体部13との回転(言い換えると、本体部13に対する側板部25のチルト回転)を固定する。チルト固定部19は、チルト回転中心33を中心とした側板部25の円周上に穿設される複数の弧状穴37と、それぞれの弧状穴37に挿通される締結具と、本体部13に固定されてそれぞれの締結具が螺合する締結用フレーム39(
図1参照)と、を有する。
【0019】
弧状穴37は、円周方向に等間隔で例えば4つ穿設される。従って、それぞれの弧状穴37は、円周方向に90°ごとに配置される。弧状穴37は、挿通される締結具と円周方向の相対移動が可能となるように円周方向に沿う長穴で形成される。
【0020】
締結具は、例えば、それぞれの弧状穴37に外方より挿通されるビスとなる。チルト固定部19では、少なくともチルト軸穴41(
図3参照)に挿通される1本のチルト軸ビス43と、チルト軸穴41を挟む2箇所の弧状穴37に挿通される2本のチルト固定ビス45との合計3本のビスが必要となる。
【0021】
図1に示す締結用フレーム39は、例えば照明部筐体47に固定される。締結用フレーム39の上面には、カメラ部筐体49が固定される。つまり、締結用フレーム39は、照明部23とカメラ部21とを一体に連結する部材となっている。これにより、本体部13が構成される。
【0022】
チルト固定部19は、本体部13の下面に基台部35を対面させる位置でブラケット17を本体部13に固定可能である(
図1,
図6参照)。
【0023】
また、チルト固定部19は、本体部13の背面に基台部35を対面させる位置でブラケット17を本体部13に固定可能である(
図8参照)。
【0024】
また、チルト固定部19は、本体部13の上面に基台部35を対面させる位置でブラケット17を本体部13に固定可能である(
図9参照)。
【0025】
監視カメラ11は、カメラ部21のレンズユニット51の光軸と照明部23から出射される照明の照明光軸とが同一鉛直面に配置される。
【0026】
図3は、
図1に示した監視カメラ11の分解斜視図である。カメラ部21は、カメラ部筐体49を有する。カメラ部筐体49には、カメラ53が収容される。カメラ53は、撮像素子(図示略)を有するカメラ本体55とレンズユニット51とを有する。レンズユニット51とカメラ本体55との間には、フィルタ切替機構57が設けられる。
【0027】
フィルタ切替機構57は、IR(Infrared Ray)カットフィルタ(図示略)と素ガラス(図示略)とを切り替え可能に配置し、IRカットフィルタと素ガラスとを交互に切り替えてレンズユニット51の光軸上に配置する。
【0028】
フィルタ切替機構57は、例えば昼間等に設定される昼モード時、光軸上にIRカットフィルタを配置する。これにより、昼モード時、撮像素子には、IR帯域の成分が遮断されたRGB(Red Green Blue)光が受光されるので、画質の良好な可視光画像が得られる。
【0029】
一方、フィルタ切替機構57は、例えば夜間等に設定される夜モード時、光軸上に素ガラスを配置する。これにより、夜モード時、撮像素子には、IRカットフィルタによってIR帯域の成分が遮断されないで素ガラスを通過した入射光が受光されるので、その受光された入射光に基づいて、一定の明るさを有するIR画像が得られる。
【0030】
カメラ部筐体49は、前後が開口する角筒形状に形成される。カメラ部筐体49は、前開口がカメラフロントカバー59で塞がれ、後開口がカメラリヤカバー61で塞がれる。カメラリヤカバー61は、下面から電源ケーブル63およびLANケーブル65が引き出される。カメラ部筐体49の左右側面には、庇部15を固定する庇部螺着部67が前後に一対ずつ設けられる。庇部螺着部67には、左右両側の庇側面を貫通した庇固定ビス69が螺合する。カメラ部筐体49の左右の底板には、左右へ張り出すフランジ部71が形成される。フランジ部71には、前後一対の筐体固定穴が穿設される。カメラ部筐体49は、フランジ部71の筐体固定穴に挿通されたフランジ固定ビス73が、締結用フレーム39の上面に螺着されることにより、締結用フレーム39に固定される。
【0031】
締結用フレーム39は、アーチ状に折り曲げられ、左右両側の脚板75の下端が脚板固定ビス77により照明部筐体47の側面に螺着される。これにより、上面にカメラ部筐体49を固定した締結用フレーム39が、照明部筐体47に固定される。これにより、一体の本体部13が構成される。
【0032】
締結用フレーム39の左右の脚板75には、チルト軸穴41に挿通される1本のチルト軸ビス43と、チルト軸穴41を挟む2箇所の弧状穴37に挿通される2本のチルト固定ビス45との合計3本のビスが螺合するフレーム側螺着穴79が形成される。締結用フレーム39は、照明部筐体47の両側に間隙81(
図1参照)を有して照明部筐体47に固定される。この間隙81には、チルト軸穴41、弧状穴37に挿通されてフレーム側螺着穴79に螺合したビスの先端が配置される。
【0033】
照明部筐体47は、前後が開口する角筒形状に形成される。照明部筐体47は、前開口が照明フロントカバー83で塞がれ、後開口が照明リヤカバー85で塞がれる。照明フロントカバー83は、四角枠状に形成される。照明フロントカバー83は、四角形の実装基板に複数のIR光源を縦横に配列した光源板87の周囲を照明部筐体47との間で固定する。照明部筐体47には、光源板87の後方に、プロセッサを有するメイン基板89、フィルタ切替機構用の制御回路等を有する光源制御用基板91等が収容される。照明リヤカバー85にはUSB端子等が設けられる。照明リヤカバー85の外側には、更に、USBカバー93が取り付けられる。
【0034】
図4は、基台部35の平面図である。監視カメラ11は、基台部35が、高速道路におけるガントリー等の棒材95(
図6参照)に取り付けられた板状の雲台97に対し、基台部35に垂直なパン回転中心99を中心に支持される。基台部35には、雲台97との相対回転を固定するパン固定部101が設けられる。
【0035】
パン固定部101は、パン回転中心99を中心とした基台部35の円周上に穿設される複数の弧状穴37と、弧状穴37に挿通されて雲台97に螺着される締結具と、を有する。弧状穴37は、円周方向に等間隔で例えば4つ穿設される。従って、それぞれの弧状穴37は、円周方向に角度θ1が90°ごとに配置される。弧状穴37は、挿通される締結具と円周方向の相対移動が可能となるように円周方向に沿う長穴で形成される。長穴は、角度θ2が40°程度となる長さで形成される。なお、弧状穴37は、パン回転中心99を中心とした複数の同心円に設けられても良い。
【0036】
締結具は、それぞれの弧状穴37に挿通される例えばビスとなる。パン固定部101では、少なくともパン回転中心99を挟む2箇所の弧状穴37に挿通される2本のパン固定ビス103が必要となる。本実施の形態では、2つの同心円のそれぞれに4つの弧状穴37が形成されているので、4本のパン固定ビス103が必要となる。
【0037】
雲台97には、これら4本のビスが螺合する螺着部(図示略)が設けられる。なお、パン固定ビス103に、タッピングビスが使用される場合には、雲台97には螺着部が不要となる。
【0038】
次に、監視カメラ11の設置手順の概略を説明する。
【0039】
監視カメラ11を設置するには、道路閉鎖の日程が決められ、作業者、高所作業車の手配がなされる。監視カメラ11は、開梱された後、カメラ部21が設定される。設置作業に先立ち、道路閉鎖が行われる。道路には、赤色灯、コーン等を設置する。同時に、交通整理が行われる。監視カメラ11を持って高所作業車へ乗り込む。監視カメラ11を設置するガントリーの棒材95に雲台97をUバンド金具105で固定する。この雲台97に対して監視カメラ11を設置する。監視カメラ11の設置は、ブラケット17の基台部35に挿通したビスを、先ず、雲台97に仮止めする。監視カメラ11に安全ワイヤーを取り付ける。監視カメラ11の電源・LANケーブルを接続する。USBカバー93を外して、USBをWi-Fi接続する。
【0040】
次いで、画角調整を行う。パン回転中心99を中心に基台部35を旋回させて、設置振り角を概略合わせてパン固定部101を仮固定する。設置伏角を概略合わせてチルト固定部19を仮固定する。
【0041】
次いで、画角調整を行う。画角調整は、PCまたは携帯端末機器(スマホ等)で画角を先ず、WIDE側で確認し、設置振り角(PAN方向)の指示を出す。指示に基づきPAN調整をしてパン固定部101を本固定する。同様に設置伏角(TILT方向)の指示を出す。指示に基づきTILT調整をしてチルト固定部19を本固定する。この際、同時にZOOM調整をして詳細画角の指示を出す。設置伏角、設置振り角の調整が完了し、本固定が完了した後、USBを抜いてUSBカバー93を装着して設置作業を終了する。
【0042】
次に、実施の形態1に係る監視カメラ11の作用を説明する。
【0043】
実施の形態1に係る監視カメラ11は、上下に長い略直方体形状の上部前面にカメラ部21を配置するとともに、下部前面に照明部23を配置する本体部13と、本体部13の少なくとも上面から前方に延出して設けられる庇部15と、上部前面および下部前面を挟む一対の側面のそれぞれに垂直なチルト回転中心33を中心に支持される一対の平行な側板部25と側板部25の下端同士を連結して側板部25の回転により本体部13の下面から上面に渡って対面配置が可能となる基台部35とを有するブラケット17と、側板部25と本体部13との回転を固定するチルト固定部19と、を備える。
【0044】
図5は、庇部15の作用説明図である。実施の形態1に係る監視カメラ11では、本体部13のカメラ部21より下側に照明部23が配置されている。本体部13の少なくとも上面には、前方に延出する庇部15が設けられる。庇部15は、従来の配置と異なり、照明部23を挟むことなく、カメラ部21の直上に近接して被せられる。このため、庇部15は、外乱光である特に西日の影響を、照明部23を挟んで配置する場合に比べ、前方への延出長を小さくしながら低減させることができる。これにより、必要最小限の庇部15の延出長で、視認性の低下を抑制できる。また、庇部15が大きくなることによる装置の大型化も抑制できる。更に、庇部15の延出長を小さくできるので、夜間撮影時に照明光が庇内面に反射してカメラ部21に入ることも抑制でき、これによっても視認率の低下を抑制できる。庇部15は、内側が黒塗装されていてもよい。これにより、夜間撮影時に、路面からの反射光31がカメラ部21に入ることも抑制でき、視認率の低下をより一層抑制できる。
【0045】
また、本体部13は、上部にカメラ部21を配置し、下部に照明部23を配置した上下に長い略直方体形状で形成される。これにより、監視カメラ11は、カメラ部21と照明部23が横並びの構成に比べ、隙間の少ない標識間でも設置が容易となる。監視カメラ11は、本体部13の両側の側面が、一対の平行な側板部25により支持される。本体部13と側板部25とは、側面に垂直なチルト回転中心33を中心に回転自在に支持される。これらの一対の側板部25は、下端同士が基台部35により連結される。つまり、一対の側板部25と基台部35とは、正面視で略U形のブラケット17を形成している。
【0046】
ブラケット17は、基台部35が本体部13の下面から上面に渡って対面配置が可能となるように回転する。この際、ブラケット17は、下面と基台部35の隙間、および上面と基台部35との隙間が最小となるように、チルト回転中心33が、本体部13における側面上下方向の略中央に配置されている。ブラケット17は、側板部25がチルト固定部19により本体部13に固定可能となっている。従って、監視カメラ11は、ブラケット17の基台部35を下面に配置して固定することで下支え設置が可能となり、基台部35を背面に設置して固定することで背面設置が可能となり、基台部35を上面に配置して固定することで吊り下げ設置が可能となる。これにより、脚部による下支え設置のみであった従来の車両撮影装置に比べ、設置範囲を大幅に改善することが可能となる。
【0047】
また、監視カメラ11は、下支え設置、背面設置および吊り下げ設置を実現できる調整可能なブラケット17が予め本体部13に取り付けられているので、調整機構を備えた専用の取付金具を別途、選定、購入する必要がない。これに加え、監視カメラ11は、取付け時、道路閉鎖が必要となる現場においても、ブラケット17を固定部により締結するのみの簡単な設置作業で、画角等を短時間で調整することができる。従って、実施の形態1に係る監視カメラ11によれば、視認率の低下を抑制でき、設置環境への設置自由度が高く、しかも、簡単に設置できる。
【0048】
また、監視カメラ11では、チルト固定部19は、本体部13の下面に基台部35を対面させる位置でブラケット17を本体部13に固定可能である。
【0049】
図6は、棒材95に下支え設置された監視カメラ11の斜視図である。この監視カメラ11において、ブラケット17の一対の側板部25は、チルト固定部19により本体部13に固定されて、基台部35の固定位置が決定する。ブラケット17は、基台部35が下面と対面する位置に固定されることにより、基台部35が下支え設置の固定金具として使用可能となる。基台部35は、簡素な形状の雲台97に固定が可能となる。ガントリーに、比較的大きな標識間スペースが存在する場合には、雲台97をガントリーの水平方向の棒材95に載置固定し、この雲台97の上にブラケット17の基台部35を固定することができる。雲台97は、入手容易な例えば市販品のUバンド金具105を用いて棒材95に固定できる。つまり、下支え設置できる。
【0050】
図7は、設置伏角の例を示す模式図である。この際、ブラケット17は、基台部35が下面から上面に渡る範囲で連続的に回転自在に支持されているので、チルト回転中心回りに正逆回転方向に回転位置を変えることにより伏角の微調整が行える。監視カメラ11は、高さHが路面から5~6mに設置される。被写体(例えば車両107)の高さhfは、路面から1.3m(フロントガラスの中心)として想定する。車両107までの最大水平距離Lmaxは、30m程度に設定される。設置伏角θvは、例えば水平方向に対して7~14°程度の範囲で調整される。
【0051】
また、監視カメラ11において、チルト固定部19は、本体部13の背面に基台部35を対面させる位置でブラケット17を本体部13に固定可能である。
【0052】
図8は、縦ポール109に背面設置された監視カメラ11の斜視図である。この監視カメラ11では、ブラケット17は、基台部35が背面と対面する位置に固定されることにより、基台部35が背面設置の固定部として使用可能となる。基台部35は、簡素な形状の雲台97に固定が可能となる。ガントリーに、縦方向の棒材95が存在する場合あるいは縦ポール109が利用できる場合には、雲台97を棒材95あるいは縦ポール109に沿わして固定し、この雲台97の正面にブラケット17の基台部35を固定することができる。つまり、背面設置できる。この際、ブラケット17は、基台部35が下面から上面に渡る範囲で連続的に回転自在に支持されているので、チルト回転中心回りに正逆回転方向に回転位置を変えることにより伏角の微調整が行える。
【0053】
また、監視カメラ11において、チルト固定部19は、本体部13の上面に基台部35を対面させる位置でブラケット17を本体部13に固定可能である。
【0054】
図9は、棒材95に吊り下げ設置された監視カメラ11の斜視図である。この監視カメラ11では、基台部35が上面と対面する位置に固定されることにより、基台部35が吊り下げ設置の固定部として使用可能となる。基台部35は、簡素な形状の雲台97に固定が可能となる。ガントリーに、標識を取り付けている横方向の棒材95が存在する場合、隙間の少ない標識間であっても、棒材95の下側に、雲台97を固定することにより、雲台97の下面にブラケット17の基台部35を固定することができる。つまり、吊り下げ設置できる。この際、ブラケット17は、基台部35が下面から上面に渡る範囲で連続的に回転自在に支持されているので、チルト回転中心回りに正逆回転方向に回転位置を微調整することにより伏角の微調整が行える。
【0055】
また、監視カメラ11は、カメラ部21のレンズユニット51の光軸と照明部23から出射される照明の照明光軸とが同一鉛直面に配置される。
【0056】
この監視カメラ11では、カメラ部21と照明部23とが、本体部13の上部と下部に縦並びで配置される。この縦並びにおいて、カメラ部21と照明部23とは、レンズユニット51の光軸と照明の照明光軸とが同一鉛直面に配置される。これにより、監視カメラ11は、本体部13が鉛直軸回りで回転固定されれば(パン回転中心99により可能となる)、レンズユニット51の光軸と照明の照明光軸との旋回方向が、同時に位置決め可能となる。
【0057】
なお、カメラ部21と照明部23とが横並びで配置される車両撮影装置においても、車両撮影装置を鉛直軸回りに回転することにより、レンズユニット51の光軸と照明の照明光軸との旋回方向が同時に位置決め可能となるが、回転半径が大きくなるため、設置環境の制約を受けやすくなる。一方で、実施の形態1に係る監視カメラ11では、カメラ部21と照明部23とが縦並びであるので、横並びの車両撮影装置に比べ、設置範囲を大幅に改善することができる。
【0058】
また、レンズユニット51の光軸と照明の照明光軸とが同一鉛直面に配置されているので、カメラ部21と照明部23とが横並びの車両撮影装置に比べ、被写体への光軸合わせをチルト回転角度の調整のみで高精度に行うことができる。なお、横並びの車両撮影装置の場合、本体部13を鉛直軸回りに回転した場合、離間するレンズユニット51の光軸と照明の照明光軸との間に、鉛直方向の回転軸が位置するため、被写体への双方の光軸合わせに微小な誤差が生じる。このため、レンズユニット51の光軸と照明の照明光軸とを高精度に位置あわせしたい場合には、カメラ部21と照明部23のそれぞれをパン回転中心99で旋回して微調整する必要が生じる。
【0059】
また、監視カメラ11では、チルト固定部19が、チルト回転中心33を中心とした側板部25の円周上に穿設される複数の弧状穴37と、弧状穴37に挿通される締結具と、本体部13に固定されて締結具が螺合する締結用フレーム39と、を有する。
【0060】
この監視カメラ11では、チルト固定部19が、弧状穴37と、締結具と、締結用フレーム39とからなる。側板部25には、チルト回転中心33に、チルト軸穴41が穿設される。弧状穴37は、チルト回転中心33を中心とした側板部25の円周上に複数穿設される。
【0061】
締結用フレーム39は、例えば照明部筐体47に固定される。締結用フレーム39の上面には、カメラ部筐体49が固定される。つまり、締結用フレーム39は、照明部23とカメラ部21とを一体に連結する部材となっている。締結用フレーム39は、側板部25と平行となる両側の側面に、それぞれ前後方向に並ぶ3つの螺着部が設けられる。
【0062】
締結用フレーム39は、照明部筐体47の両側に間隙81を有して照明部筐体47に固定される。この間隙81には、チルト軸穴41、弧状穴37に挿通されて螺着部に螺合したビスの先端が配置される。
【0063】
締結用フレーム39(即ち、カメラ部21と照明部23を連結した本体部13)とブラケット17とは、チルト軸穴41を貫通したビスを中心に、チルト回転可能となる。つまり、チルト軸穴41を貫通したビスがチルト回転中心33となる。チルト回転範囲は、ビスが弧状穴37を移動できる円周長に応じる回転角となる。本体部13とブラケット17とは、チルト軸穴41を挟む一対の弧状穴37に挿通された2本のビスが締結用フレーム39の螺着部に螺着されることにより、相対回転が規制されて、チルト回転方向が位置決め固定される。
【0064】
また、監視カメラ11は、基台部35が、高速道路におけるガントリー等の棒材95に取り付けられた板状の雲台97に対し、基台部35に垂直なパン回転中心99を中心に支持され、基台部35には雲台97との相対回転を固定するパン固定部101が設けられ、パン固定部101が、パン回転中心99を中心とした基台部35の円周上に穿設される複数の弧状穴37と、弧状穴37に挿通されて雲台97に螺着される締結具と、を有する。
【0065】
この監視カメラ11では、パン固定部101が、弧状穴37と、締結具とからなる。弧状穴37は、パン回転中心99を中心とした基台部35の円周上に複数穿設される。弧状穴37は、挿通される締結具と円周方向の相対移動が可能となるように円周方向に沿う長穴で形成される。
【0066】
パン固定部101は、パン回転中心99と同軸のパン軸穴を有しない。パン固定部101では、基台部35の弧状穴37を貫通したビスと弧状穴37とが相対移動することにより、ブラケット17の基台部35と雲台97とがパン回転中心99を中心に、パン回転可能となる。
【0067】
図10は、設置振り角の例を示す模式図である。この際、ブラケット17は、基台部35が弧状穴37の範囲で連続的に回転自在となるので、パン回転中心回りに正逆回転方向に回転位置を変えることによりパン回転角(水平面内における設置振り角θh)の微調整が行える。設置振り角θhは、監視カメラ11が道路脇0.5mに設置されることを想定する。監視カメラ11から車両107までの道路幅方向の距離Wは、0~6mに設定される。車両107までの最大水平距離Lmaxは、30m程度に設定される。設置振り角θhは、例えば水平面内において0~13°程度の範囲で調整される。
【0068】
パン回転範囲は、ビスが弧状穴37を移動できる円周長に応じる回転角となる。ブラケット17と雲台97とは、弧状穴37を貫通した4本のビスが雲台97の螺着部に螺着されることにより、相対回転が規制されて、パン回転方向が位置決め固定される。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、視認率の低下を抑制し、設置環境への設置自由度が高く、簡単に設置できる監視カメラとして有用である。
【符号の説明】
【0071】
11 監視カメラ
13 本体部
15 庇部
17 ブラケット
19 チルト固定部
21 カメラ部
23 照明部
25 側板部
33 チルト回転中心
35 基台部
37 弧状穴
39 締結用フレーム
43 チルト軸ビス
45 チルト固定ビス
51 レンズユニット
95 棒材
97 雲台
99 パン回転中心
101 パン固定部
103 パン固定ビス