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7578265高周波誘導加熱装置と、それによって半田付けを行う回路基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱装置と、それによって半田付けを行う回路基板
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/04 20060101AFI20241029BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241029BHJP
   B23K 1/002 20060101ALI20241029BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B23K3/04 Y
H05K3/34 507D
B23K1/002
H05B6/10 331
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020166729
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059164
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518360139
【氏名又は名称】株式会社スフィンクス・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】臼田 武史
(72)【発明者】
【氏名】熊田 泉実
(72)【発明者】
【氏名】高柳 毅
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059046(JP,A)
【文献】特開2014-120649(JP,A)
【文献】特開2016-097427(JP,A)
【文献】特開2015-166098(JP,A)
【文献】特開2010-142848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-3/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板のスルーホールに、部品面側から半田面側に貫通した電子部品の端子を、このスルーホール内、前記回路基板の部品面側において、前記スルーホールに電気的に導通接続された部品面側パッド、および前記回路基板の半田面側において、前記スルーホールに電気的に導通接続された半田面側パッドに、半田付けをする高周波誘導加熱ヘッドと、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を供給する半田供給手段と、を備え、
前記高周波誘導加熱ヘッドは、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分を、所定間隔をおいて、両側から挟んだ状態で配置される磁気ギャップを有するコア体と、前記コア体に磁束を供給するコイルと、このコイルへの通電制御を行う制御手段と、を有し、
前記制御手段には、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記回路基板の半田面側パッド部分の温度を検出する第2の温度検出手段と、を接続し、
前記制御手段は、前記コイルへの通電後、前記第1の温度検出手段による端子部の検出温度が、半田溶融温度よりも高くなったことを検出すると、前記半田供給手段により、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を所定量供給する構成とするとともに、前記半田供給手段による半田供給開始後、前記第2の温度検出手段による半田面側パッド部分の検出温度が、下降傾向を示した後に、上昇に転じたことを検出すると、前記コイルへの通電を停止、または前記コイルへの供給電力量を低下させる構成としたことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段にタイマを接続し、前記第2の温度検出手段による半田面側パッド部の検出温度が、下降傾向を示した後に、上昇に転じ、この上昇傾向が所定時間以上経過したことを検出すると、前記コイルへの通電を停止、または前記コイルへの供給電力量を低下させる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記コイルへの通電後、前記第1の温度検出手段による端子部分の検出温度が、半田溶融温度よりも高くなったことを検出すると、前記半田供給手段により、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を供給するとともに、前記コイルへの供給電力量を高める構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項4】
第1の温度検出手段と第2の温度検出手段のうち、少なくとも第2の温度検出手段を、放射温度計によって構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項5】
前記第1の温度検出手段は、回路基板の半田面側に突出する端子の先端部分の温度を検出する構成とし、前記半田供給手段は、前記第1の温度検出手段による温度検出部分よりも半田面側パッド側の端子部分に半田を供給する構成としたことを特徴とする請求項4に記載の高周波誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱装置と、それによって半田付けを行う回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波誘導加熱装置は、例えば、特許文献1に示すように回路基板のパッド部分に、電子部品を、半田付けするものとして活用されている。
すなわち、この種、高周波誘導加熱装置は、電子部品の端子を、回路基板のパッド部に、半田付けする高周波誘導加熱ヘッドと、前記パッド部に、半田を供給する、半田供給手段と、を備えた構成となっている。
また、前記高周波誘導加熱ヘッドは、磁気ギャップを有するコア体と、前記コア体に磁束を供給するコイルと、このコイルへの通電制御を行う制御手段と、を有する構成となっていた。
この高周波誘導加熱装置を用いて、電子部品の端子を回路基板のパッド部に、半田付けする場合、先ず、高周波誘導加熱ヘッドの磁気ギャップを、パッド部に移動させて、このパッド部、および、電子部品の端子を、半田の溶融温度以上に加熱し、次に、前記磁気ギャップに、半田供給手段から、半田を供給し、半田を半溶融化させ、その後、半溶融状態の半田を、前記パッド部、端子部に押圧し、この状態で、前記パッド部、端子部、半田を加熱し、半田を溶融させ、半田付けを完了させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-120649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術においては、回路基板のパッド部に、電子部品の端子をはんだ付けしているが、回路基板のスルーホールを貫通した電子部品の端子を、このスルーホール内、および、前記スルーホールの半田面側パッド、および部品側パッドに、半田付けする点については、何ら、考慮されていない。
すなわち、回路基板のスルーホールを貫通した電子部品の端子を、このスルーホール内、および、前記半田面側パッド、部品面側パッド部に、半田付けする場合には、半田を溶融させ、スルーホール内を流動させなくてはならないのであるが、上記先行文献では、この点が全く考慮されておらず、結論として、スルーホールを有する回路基板への半田付けを、適切に行う事は出来ない。
そこで、本発明は、スルーホールを有する回路基板への半田付けが適切に行えるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、この目的を達成するために本発明の高周波誘導加熱装置は、回路基板のスルーホールに、部品面側から半田面側に貫通した電子部品の端子を、このスルーホール内、前記回路基板の部品面側において、前記スルーホールに電気的に導通接続された部品面側パッド、および前記回路基板の半田面側において、前記スルーホールに電気的に導通接続された半田面側パッドに、半田付けをする高周波誘導加熱ヘッドと、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を供給する半田供給手段と、を備え、前記高周波誘導加熱ヘッドは、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分を、所定間隔をおいて、両側から挟んだ状態で配置される磁気ギャップを有するコア体と、前記コア体に磁束を供給するコイルと、このコイルへの通電制御を行う制御手段と、を有し、前記制御手段には、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記回路基板の半田面側パッド部分の温度を検出する第2の温度検出手段と、を接続し、前記制御手段は、前記コイルへの通電後、前記第1の温度検出手段による端子部の検出温度が、半田溶融温度よりも高くなったことを検出すると、前記半田供給装置により、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を所定量供給する構成とするとともに、前記半田供給装置による半田供給開始後、前記第2の温度検出手段による半田面側パッド部分の検出温度が、下降傾向を示した後に、上昇に転じたことを検出すると、前記コイルへの通電を停止、または前記コイルへの供給電力量を低下させる構成とした。
【0006】
また、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記制御手段にタイマを接続し、前記第2の温度検出手段による半田面側パッド部の検出温度が、下降傾向を示した後に、上昇に転じ、この上昇傾向が所定時間以上経過したことを検出すると、前記コイルへの通電を停止、または前記コイルへの供給電力量を低下させる構成とした。
さらに、本発明の高周波誘導加熱装置の制御手段は、前記コイルへの通電後、前記第1の温度検出手段による端子部分の検出温度が、半田溶融温度よりも高くなったことを検出すると、前記半田供給装置により、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を供給するとともに、前記コイルへの供給電力量を高める構成とした。
また、本発明の高周波誘導加熱装置は、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段のうち、少なくとも第2の温度検出手段を、放射温度計によって構成した。
さらに、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記第1の温度検出手段は、回路基板の半田面側に突出する端子の先端部分の温度を検出する構成とし、前記半田供給装置は、前記第1の温度検出手段による温度検出部分よりも半田面側パッド側の端子部分に半田を供給する構成とした。
【0007】
また、本発明の高周波誘導加熱装置によって電子部品の端子が半田付けされる回路基板は、その半田面と部品面間を貫通したスルーホールと、前記回路基板の半田面側において、前記スルーホールに電気的に導通接続された半田面側パッド、および前記回路基板の部品面側において、前記スルーホールに電気的に導通接続された部品側パッドとを備え、前記半田面側パッド、および部品側パッドで、前記高周波誘導加熱装置のコア体の磁気ギャップ方向とは直交する部分に、ビアホールエリアを設け、このビアホールエリアには、回路基板の部品面、半田面間を貫通し、半田面側パッド、および部品側パッドに熱伝導的に接続されたビアホールを設けた。
また、本発明の回路基板は、前記半田面側パッド、および部品面側パッドであって、前記スルーホールの外側で、磁気ギャップ方向の延長線上部分に、非ビアホールエリアを設けた。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明に係る高周波誘導加熱装置は、回路基板のスルーホールを、部品面側から半田面側に貫通した電子部品の端子を、このスルーホール内、部品面側パッド、および半田面側パッドに、半田付けをする高周波誘導加熱ヘッドと、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を供給する半田供給手段と、を備え、前記高周波誘導加熱ヘッドは、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分を、所定間隔をおいて、両側から挟んだ状態で配置される磁気ギャップを有するコア体と、前記コア体に磁束を供給するコイルと、このコイルへの通電制御を行う制御手段と、を有し、前記制御手段には、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記回路基板の半田面側パッド部分の温度を検出する、放射温度計によって構成された第2の温度検出手段と、を接続し、前記制御手段は、前記コイルへの通電後、前記第1の温度検出手段による端子部の検出温度が、半田溶融温度よりも高くなったことを検出すると、前記半田供給装置により、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を所定量供給する構成とするとともに、前記半田供給装置による半田供給開始後、前記第2の温度検出手段による半田面側パッド部分の検出温度が、下降傾向を示した後に、上昇に転じたことを検出すると、前記コイルへの通電を停止、または前記コイルへの供給電力量を低下させる構成としたので、スルーホールを有する回路基板への半田付けが適切に行えるようになる。
【0009】
すなわち、本発明においては、回路基板の半田面側に突出した端子部分の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記回路基板の半田面側パッド部分の温度を検出する、放射温度計によって構成された第2の温度検出手段と、を設けるとともに、これら第1、第2の温度検出手段に接続した制御手段は、前記コイルへの通電後、前記第1の温度検出手段による端子部の検出温度が、半田溶融温度よりも高くなったことを検出すると、前記半田供給装置により、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に、半田を所定量供給する構成とし、また、前記半田供給装置による半田供給開始後、前記第2の温度検出手段による半田面側パッド部分の検出温度が、下降傾向を示した後に、上昇に転じたことを検出すると、前記コイルへの通電を停止、または前記コイルへの供給電力量を低下させる構成としたので、スルーホールを有する回路基板への半田付けが適切に行えるようになる。
【0010】
つまり、前記回路基板の半田面側に突出した端子部分に供給された半田が溶融し、その後、スルーホール内を半田が下降している状態を、前記第2の温度検出手段により、半田面側パッド部の検出温度が、下降傾向を示すことで検出し、また、半田が、回路基板の部品面側にまで到達したことを、前記第2の温度検出手段により、半田面側パッド部の検出温度が上昇に転じたことで検出し、これにより、前記コイルへの通電を停止、または低下させる構成としたものであるので、スルーホールを有する回路基板への半田付けが適切に行えるようになるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる高周波誘導加熱の斜視図である。
図2】同、高周波誘導加熱装置の正面図である。
図3】同、高周波誘導加熱装置の側面図である。
図4】同、高周波誘導加熱装置の側面図である。
図5】同、高周波誘導加熱装置の一部を取り除いた斜視図である。
図6】同、高周波誘導加熱装置の分解斜視図である。
図7】同、高周波誘導加熱装置の分解斜視図である。
図8】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッド部分の拡大斜視図である。
図9】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッド部分の拡大分解斜視図である。
図10】同、高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッド部分の拡大分解斜視図である。
図11】同高周波誘導加熱装置の正面図である。
図12】同、高周波誘導加熱装置の側面図である。
図13】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図14】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図15】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図16】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図17】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図18】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図19】同、高周波誘導加熱装置の拡大斜視図である。
図20】同、高周波誘導加熱装置の制御ブロック図である。
図21】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図22】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図23】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図24】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図25】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図26】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図27】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図28】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明する図である。
図29】同、高周波誘導加熱装置の動作を説明するフロチャートである。
図30】同、高周波誘導加熱装置で半田付けする回路基板の他の実施形態を示す一部平面図である。
図31図30のA―A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
本実施形態では、先ずは、高周波誘導加熱ヘッド1の構成について図1図10を用いて説明し、他の部分の構成については、図11図29を用いて説明する。
図1図4において、本実施形態の高周波誘導加熱ヘッド1は、箱状の本体ケース2を備えている。
本体ケース2の上面2a、下面2b、4枚の外周面2cの、合計六面は、何れも樹脂で形成され、この本体ケース2の上面2aには、IH出力接続コネクター2Aと、2個の冷却水接続コネクター3が設けられている。
また、本体ケース2の下方には、コア体4と、このコア体4に磁束を供給するコイル5が配置されている。
本体ケース2の内部には、図5図7に示すようにコンデンサ6が配置され、このコンデンサ6の両側には、それぞれ、コンデンサ6側から外方に向けて、電気水路接続体7、8が設けられている。
これらの電気水路接続体7、8はいずれも銅材によって形成され、当接する物品との電気的な導通が図れる構成となっている。
先ず、電気水路接続体8は、全体的な形状としてはビル状で、その内部には、上下方向に延びる水路(図示せず)が形成され、この水路の上端には、電気水路接続体8の上面において、冷却水接続コネクター3が結合されている。
また、電気水路接続体8内の水路の下端は、図7に示すように、電気水路接続体8の下部で、コンデンサ6側において水路結合部9となっている。
次に、電気水路接続体7は、全体的な形状としては板状であるが、下部の基台部10の内部には、電気水路接続体8側への横方向から、その後、下方へと延びる水路(図示せず)が形成されている。
そして、電気水路接続体7の水路で、電気水路接続体8側への端部は、図6に示すように水路結合部11となっている。
また、電気水路接続体7の水路で、下端側への端部は、図7に示すように水路結合部12となっている。
以上のような構成で、図6図7に示す金属製のねじ13、14を用いて、左右の電気水路接続体7、8ともコンデンサ6の固定部にねじ止めすると、図5に示すように、コンデンサ6の両側に、それぞれ、電気水路接続体7、8が一体化された構成となる。
また、この一体化作業により、左右の電気水路接続体7、8とも、それぞれ、冷却水接続コネクター3、電気水路接続体8内の水路、その水路結合部9、電気水路接続体7の水路結合部11、電気水路接続体7の水路、水路結合部12への連続した水路が形成される。
前記コンデンサ6、電気水路接続体7、8の一体化物は、本体ケース2内において、図5の様に下面2b上に保持された状態となっており、冷却水接続コネクター3は、本体ケース2の上面2aの貫通孔A上に引き出された状態となっている。
また、二つの電気水路接続体7の基台部10の下面は、本体ケース2の下面2bの貫通孔B部に位置し、それによって、基台部10の下面の水路結合部12は、貫通孔Bを介して本体ケース2外に臨んだ状態となっている。
そして、二つの基台部10の下面に、図6図7のねじ16で、コア体4と、コイル5が図5の様に結合されている。
【0013】
具体的に説明すると、先ず、コイル5は、内部に水路が形成された銅パイプによってU字状に形成され、その一端側と、他端は、それぞれ、銅材製の前、後のコイルベース17、18に結合されている。
前、後のコイルベース17、18は、それぞれの上辺に、ねじ16を貫通させる貫通孔が形成された水平方向のフランジ17a、18aが形成され、このフランジ17a、18aの貫通孔に、下方からねじ16を貫通させ、このねじ16を、電気水路接続体7の基台部10の下面のねじ穴に螺合させることで、前、後のコイルベース17、18は、電気水路接続体7の基台部10に結合される。
また、コイルベース17、18には、それぞれ、上下方向への水路(図示せず)が形成され、コイルベース17の水路の下端には、コイル5の一端側の水路結合部(図示せず)が連結され、コイルベース18の水路の下端には、コイル5の他端側の水路結合部(図示せず)が連結されている。
また、コイルベース17の水路の上端のフランジ17aには、図6のごとく水路結合部19が形成され、コイルベース18の水路の上端のフランジ18aには、図6のごとく水路結合部20が形成されている。
このため、二つの基台部10の下面に、図6図7の金属製のねじ16で、コイルベース17、18を固定すると、二つの基台部10の下面の水路結合部12に、コイルベース17、18の水路結合部19、20が、それぞれ、別々にゴムパッキン15を介して連結されることになる。
なお、水路結合部9、11間にも、例えば、図7に示すようなゴムパッキン15が介在され、水漏れを防ぐ構造となっている。
以上の構成とすることで、一方の冷却水接続コネクター3から、例えば、25℃の冷却水を流し込むと、その冷却水は、一方の電気水路接続体8内の水路、水路結合部9、一方の電気水路接続体7の水路結合部11、一方の電気水路接続体7内の水路、水路結合部12、コイルベース17の水路結合部19、コイルベース17の水路、コイル5の一端側の水路結合部、コイル5の水路、コイル5の他端側の水路結合部、コイルベース18の水路、コイルベース18の水路結合部20、他方の電気水路接続体7の水路結合部12、他方の電気水路接続体7の水路、他方の電気水路接続体8内の水路、他方の冷却水接続コネクター3へと流れて、そのご、本体ケース2外の冷却部で冷却され、再び、上記一方の冷却水接続コネクター3へと循環される。
なお、コイルベース17、18間は、樹脂製の絶縁板21を介して重ね合わせ、しかも、これら両者を結合するねじ22は樹脂製で、絶縁性であるので、コイルベース17、18間における短絡的な電気的導通は起きない。
また、図5に示す、IH出力接続コネクター2Aの一端子と、一方の電気水路接続体8の端子部23は配線(図面の煩雑化を避けるために図示せず)で接続され、また、IH出力接続コネクター2Aの他端子と、他方の電気水路接続体8の端子部24は配線(図面の煩雑化を避けるために図示せず)で接続されている。
また、コンデンサ6と電気水路接続体7、8も上記金属製のねじ13、14による一体化で、電気的に接続された状態となっている。
さらに、コンデンサ6、電気水路接続体7、8、コイルベース17、18、コイル5も、電気的に接続された状態となっている。
つまり、IH出力接続コネクター2Aからの電源供給を行うと、コンデンサ6とコイル5による共振が発生し、この共振電流が、コイル5に供給され、磁束が発生する状態となる。
【0014】
次に、この磁束による加熱を行うコア体4について説明する。
コア体4は、図8図10に示すように、Cの字状の第1のサブコア体25と、逆Cの字状の第2のサブコア体26の、それぞれの一端側(上端側)を重ね合わせ、前記サブコア体25、26の他端側(下端側)間に、隙間による磁気ギャップ27を形成した構成としている。
つまり、前記コア体4は、Cの字状のサブコア体25と、逆Cの字状のサブコア体26の、それぞれの一端側(上端側)を重ね合わせることで、正面視の状態で、リング状で、リングの一部に、前記磁気ギャップ27を形成する隙間が形成された構成としている。
そして、リング状のコア体4の内部空間に、コイル5が直線状に貫通した状態となっており、これにより、コイル5で発生した磁束が、コア体4、磁気ギャップ27に流れる構成となっている。
また、前記サブコア体25、26の一端側における重合部には、サブコア体25、26を貫通する貫通孔28を設け、この貫通孔28に貫通軸としてねじ29を貫通させ、このねじ29を開閉軸として、前記磁気ギャップ27の大きさを可変する構成としている。
また、前記コア体4は、正面視の状態で、外径寸法よりも、表裏方向の板厚寸法が小さい板状とし、この板状のコア体4の表面と、裏面には、それぞれ保護板30、31を配置している。
保護板30は、Cの字状の第1のサブ保護板32と、逆Cの字状の第2のサブ保護板33の一端側(上部側)を重ね合わせるとともに、これらサブ保護板32、33の重合部には、サブ保護板32、33を貫通す貫通孔34を設け、この貫通孔34には、前記貫通軸としてねじ29が貫通する。
また、保護板31は、Cの字状の第1のサブ保護板35と、逆Cの字状の第2のサブ保護板36の一端側(上部側)を重ね合わせるとともに、これらサブ保護板35、36の重合部には、サブ保護板35、36を貫通す貫通孔37を設け、この貫通孔37には、前記貫通軸としてねじ29が貫通する。
つまり、貫通軸としてねじ29は、サブ保護板32、33の貫通孔34、次に、サブコア体25、26の貫通孔28、その後、サブ保護板35、36の貫通孔37を貫通し、U字状の熱伝導部材38のねじ穴39にねじ込まれることになる。
そして、この構成により、コア体4は、表面も裏面も、熱伝導が可能な状態で、保護板30、31で覆われた状態となっている。
また、サブ保護板32、33の上部には、サブコア体25、26の上面を覆う様に、後方への折り曲部40が形成され、そこにねじ穴41を形成している。
さらに、サブ保護板35、36の上部には、サブ保護板32、33上部の後方への折り曲げ部を覆う様に、前方への折り曲部42が形成され、そこに貫通孔43を形成している。
また、サブ保護板35、36の上部には外方への取り付け部44を設け、そこに貫通孔45を設けている。
貫通孔43は前後方向への長孔、貫通孔45は外周方向への長孔となっている。
このような構成で、保護板31、コア体4、保護板30を重ね、熱伝導部材38に保持、固定するのであるが、その方法は、一例として、先ず、保護板31、コア体4、保護板30を重ね、貫通孔34、貫通孔28、貫通孔37に棒状の治具(図示せず)を貫通させて、軸合わせをする。
次に、保護板31の上方からねじ46を、貫通孔43を介して保護板30のねじ穴41に螺合させ、これによって、コア体4を前後から、保護板30、31で挟んだ状態とする。
そして、この様に仮のユニット化されたコア体4、保護板30、31から上記棒状の治具を抜き取り、次に、図9の熱伝導部材38の保持部38aに配置し、保護板31、コア体4、保護板30の貫通孔34、貫通孔28、貫通孔37にねじ29を貫通させ、このねじ29を熱伝導部材38のねじ穴39にねじ込む。
また、ねじ47は保護板31の貫通孔45を貫通させ、熱伝導部材38のねじ穴48にねじ込む。
この状態で、磁気ギャップ27の大きさを調整し、最終的に、上記ねじ29、47を強く締め付け、これによって保護板31、コア体4、保護板30の熱伝導部材38への保持、固定が完了する。
以上の構成とすれば、熱伝導部材38に、保護板31のコア体4とは反対側の面が当接され、熱伝導部材38と保護板31間の熱伝導が行いやすい状態となる。
つまり、コイルベース18が、コイル5を冷却する冷却水で冷却されると、その低温は、銅材製の熱伝導部材38、銅材製の保護板31を介して、フェライト材よりなるコア体4の冷却にも活用されることになり、本実施形態では、連続24時間の稼働をさせても、コア体4の温度を100℃程度に抑制できることとなった。
【0015】
本実施形態の高周波誘導加熱ヘッドは、磁気ギャップ27部分において、回路基板のパッドに、電子部品の端子部を半田付けするものであり、このような、半田付け作業が24時間連続で行えるという事は、生産性を飛躍的に高めることが出来るものとなる。
また、本実施形態では、保護板30、31は、前記コア体4よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体4よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成した。
具体的には、コア体4はフェライト材により形成し、前記保護板30、31は銅材、あるいはアルミニウム材により形成した。
コア体4を構成するフェライト材の比透磁率が50~5000であるのに対して、保護板30、31を銅材やアルミニウム材で構成した場合は、その比透磁率は略1であるので、コア体4を流れる磁束は、専らコア体4内を流れ、保護板30、31へと漏洩することは少ない。
しかしながら、本実施形態では、コイル5に100A程度の大きな電流を流すので、漏れ磁束が磁気ギャップ27を流れる磁束量に比較して十分に少なくても、コア体4近傍の構成体を十分に加熱、高温化させてしまうこともある。
これに対して本実施形態では、コア体4から漏れ出した磁束は、前記コア体4よりも比透磁率が低い保護板30、31を通過し、また、この保護板30、31は、前記コア体4よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成したものであるので、前記磁束の通過により、渦電流が流れ、この渦電流で、前記保護板30、31を通過する磁束とは反対方向の磁束を発生させ、その結果として、前記コア体4から保護板30、31を介して漏れ出す磁束量が減少し、これによって、近傍の他の構成体を不用意に加熱することが無くなる。
実験によれば、磁気ギャップ27から4mm離れた位置における不用意な加熱を20%減少、8mm離れた位置における不用意な加熱を40%減少させることが出来た。
これにより、本来は加熱するものではない物品が、コア体4からの磁束で不用意に加熱され、それが劣化することが無くなる。
また、磁気ギャップ27近傍で、本来は加熱する予定の無い物品が、磁束によって不用意に加熱されないので、加熱作業の自由度が向上し、生産性も高まる。
また、漏れ磁束が減少するという事は、磁気ギャップ27の磁束が増加するという事でもあり、加熱効率を高めることもできる。
なお、保護板30、31を銅材で形成した場合、その電気抵抗値は、1.68×10-8Ωm、また、保護板30、31をアルミニウム材で形成した場合、その電気抵抗値は、2.83×10-8Ωmで、フェライト材が略絶縁性であるのに対して、極めての電気抵抗値が小さいものである。
また、前記コア体4の外形と、前記保護板30、31の外形を、略同一として、このコア体4の正面と、裏面を保護板30、31で覆ったので、コア体4に、直接的に、他の物品が衝突するのを保護板30、31で保護することが出来、この結果として、コア体4の損傷を抑制することが出来る。
つまり、コア体4は、フェライトで構成されるので、他の物品の衝突や、コア体4自身の落下により損傷を受けやすいものであるが、前記コア体4の外形と、前記保護板30、31の外形を、略同一として、このコア体4の正面と、裏面を保護板30、31で覆えば、コア体4に、直接的に、他の物品が衝突するのを保護板30、31で保護することが出来、この結果として、コア体4の損傷を抑制することが出来るのである。
また、前記保護板31を銅材で形成した場合の熱伝導は、403W/m・K、アルミニウム材により形成した場合の熱伝導は、236W/m・Kと熱伝導度の良いものであるので、上記コイル5を冷却水で冷却すると、保護板31を介してコア体4を十分に冷却することが出来るが、コア体4と前記保護板31間には、例えばシリコーン系グリス等の熱伝導性グリスを介在させると、さらに冷却効果を高めることができる。
なお、上記実施形態では、コア体4を水冷する例を示したが、コア体4を空冷する構成としても良い。
例えば、熱伝導部材38、保護板30、31に空冷用の送風を行っても良い。
また、そのために熱伝導部材38、保護板30、31に放熱フィンを設けても良い。
【0016】
以上の説明は、高周波誘導加熱ヘッド1を構成するコア体4、コイル5などを中心に説明を行ったが、本実施形態の高周波誘導加熱装置は、前記高周波誘導加熱ヘッド1以外に、図11図29に示す半田供給装置の一例としての、糸半田供給装置49、および、温度測定手段の一例として放射温度計50、51を備えている。
なお、図11図29は、図1図10に示したものと同一のものであるが、糸半田供給装置49、放射温度計50、51を中心に説明するので、図面の煩雑化を避けるため、図1図10で説明した一部の符号は、あえて、付与していない。
先ず、本実施形態の高周波誘導加熱装置は、図11図20に示すように、高周波誘導加熱ヘッド1以外に、半田供給装置の一例としての、糸半田供給装置49、温度測定手段の一例として放射温度計50、51を設けている。
図15に示す回路基板52は、例えば搬送手段の一例として用いたXYΘテーブル(図示せず)によって高周波誘導加熱ヘッド1部分に、搬送される。
回路基板52は、図17図18図21に示すように、この回路基板52を貫通したスルーホール52a(内面には導電膜が存在している)と、前記回路基板52の半田面側(本実施形態では、図17図18図21の上面側)において、前記スルーホール52aに電気的に導通された半田面側パッド53a、前記回路基板52の部品面側(本実施形態では、図17図18図21の下面側)において、前記スルーホール52aに電気的に導通された部品面側パッド53bと、を備えている。
また、回路基板52の部品面側には、トランスなどの電子部品(図示せず)が実装され、その端子54が、スルーホール52aを部品面側(下面側)から半田面側(上面側)へと貫通し、回路基板52の半田面側(上面側)に突出されている。
この端子54は、図21に示すように、高周波誘導加熱ヘッド1の磁気ギャップ27間に移動され、この状態で、半田面側パッド53a、部品側パッド53b、スルーホール52a部分に、半田付けされる。
つまり、回路基板52の半田面側(上面側)に突出されている端子54部分は、サブコア体25、26によって形成される磁気ギャップ27部分において、これらのサブコア体25、26とは、所定間隔を置いて、左右に挟まれた状態となる。
その状態で、スルーホール52aの上方に突出した端子54の上端部分の温度を測定するのが、図11図20に示す放射温度計50である。
この放射温度計50は本発明における第1の温度検出手段に該当する。
また、半田面側パッド53a部分、および、この半田面側パッド53aに近接する端子54の温度を測定するのが放射温度計51である。
この放射温度計51は本発明における第2の温度検出手段に該当する。
また、これらの放射温度計50、51は図20のごとく制御手段の一例としての制御部55に接続されている。
制御部55にはタイマ56、メモリ57(図29のプログラム等を内蔵)、電源部58も接続され、電源部58にコイル5とコンデンサ6が接続された状態となっている。
なお、糸半田供給装置49は、図15に示すように、保持手段59によって、熱伝導部材38に保持させており、図21図24に示すように、磁気ギャップ27部に位置する端子54部分に、糸半田供給装置49から適切に糸半田49aが供給されるようにしている。
ここで、スルーホール52aを半田面側に突出した端子54への糸半田供給装置49からの糸半田49a供給位置と、放射温度計50による温度検出位置の関係について説明すると、糸半田供給装置49は、放射温度計50による温度検出部分よりも半田面側パッド53a側の端子54部分に、糸半田49a供給する構成としている。
つまり、放射温度計50は溶融する糸半田49a部分の影響を受けずに、端子54部分の温度を検出するようにしている。
一方、放射温度計51は半田面側パッド53a部分、および、この半田面側パッド53aに近接する端子54の温度を測定するように設定しているので、糸半田49a溶融状態に影響を受ける状態で、温度を検出するようになっている。
【0017】
この状態は、下記にて詳細に説明する。
なお、放射温度計50、51は、他の保持手段によって、本体ケース2に保持させているが、図面の煩雑化を避けるために、その保持手段は図示していない。
以上の構成において、XYΘテーブル(図示せず)によって回路基板52が搬送され、図17図21のように、その端子54が磁気ギャップ27部分に配置されると、予備加熱として、コイル5への電源供給が開始され(図29のS1)、放射温度計50、51による温度測定も開始される(図29のS2)。
なお、図29に示したフロー図では放射温度計50を放射温度計1、放射温度計51を放射温度計2と表示してある。
また、端子をピンと表示してある。
この予備加熱(図27の期間A)では、例えば105A、130Wで、加熱が行われる。
放射温度計50は、図17図19に示すように、スルーホール52aを、回路基板52の半田面側に突出した端子54の上端部分の温度を測定している。
また、放射温度計51は、図17図19に示すように、半田面側パッド53a部分、半田面側パッド53a部分近傍の端子54部分の温度を測定している。
まず、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、糸半田49aを十分に溶融させることが出来る半田溶融温度(例えば300℃)を超えているか、否かの判定が行われる(図29のS3)。
なお、今回使用する糸半田49aの溶融温度は図27の様に約220℃のものを使用している。
したがって、上記半田溶融温度(例えば300℃)であれば、糸半田49aを十分に溶融することが出来る。
放射温度計50で検出した端子54の上端部分の温度が300℃を超えていなければ、次に、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a、その近傍の端子54部分の温度)が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(図29のS4)。
放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a、その近傍の端子54部分の温度)が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ(図29のS3)に戻って予備加熱が継続される。
図27の(期間A)は、この予熱状態における放射温度計50で検出した端子54の上端部分の温度(E線)と、この予熱状態における放射温度計51で検出した半田面側パッド53a、その近傍の端子54部分の温度(F線)を示している。
これらの(E線)と(F線)から理解されるように、予備加熱(図27の期間A)において、時間経過とともに、徐々に温度上昇が起きるが、端子54は磁気ギャップ27間で加熱されるので、半田面側パッド53a、その近傍の端子54部分よりも温度上昇スピードが速くなっている。
なお、(図29のS4)において、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていれば、コイル5への電源供給を停止させる(図29のS5)。
また、(図29のS3)において、端子54の上端部分の温度が、糸はんだ49aを十分に溶融させることが出来る300℃を超えると、次に、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(図29のS6)。
図29のS6)において、端子54の上端部分の温度が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていると、コイル5への電源供給を停止させる(図29のS7)。
図29のS6)において、端子54の上端部分の温度が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、次に、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(図29のS8)。
図29のS8)において、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていれば、コイル5への電源供給を停止させる(図29のS9)。
図29のS8)において、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、図21から図22の様に、糸半田供給装置49による糸半田49aの供給を開始し(図27の期間B)、また、本加熱として、コイル5への出力を150A、270Wへと変更(出力アップ)する(図29のS10)。
すなわち、糸半田供給装置49から糸はんだ49aを、端子54の磁気ギャップ27部分に、予め設定した量だけ供給する。
端子54部に供給された糸半田49aは、端子54の熱で溶融し、図23の様に、半田面側パッド53a部分で球状となり、次に、図24のようにスルーホール52a内へと流動、流入することになる。
なお、図22は、図27の(期間Bポイント)、図23図27の(本加熱期間Caの図23ポイント時の状態)、図24は(本加熱期間Cbの図24ポイント時の状態)を示している。
つまり、図22は、糸半田供給装置49からの糸はんだ49a供給開始時点を示し、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)は310℃に到達しているが、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は200℃となっている。
また、参考までに、部品面側パッド53bの検出温度(他の温度検出手段を使用し、参考までに測定)は150℃となっている。
端子54の上端部分の温度が310℃に到達しているのは、端子54が磁気ギャップ27間で集中的に加熱されているからで、それに比べ、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の検出温度が200℃と低いのは、磁気ギャップ27部に比べると磁束密度が低いからである。
さらに、部品面側パッド53bでは、磁気ギャップ27部に比べるとさらに、磁束密度が低く、主として、スルーホール52aを通じての熱伝導で温度上昇が起きているからである。
また、図23は、糸半田供給装置49からの糸はんだ49a供給が開始され、本加熱状態となっており、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)は310℃を維持し、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は155℃となっている。
また、部品面側パッド53bの検出温度は160℃となっている。
端子54の上端部分の温度が310℃で維持されているのは、本加熱状態であるからで、それに比べ、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分は155℃まで低下している。
これは半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度を検出する温度検出手段として、放射温度計51を用いたからである。
つまり、図23の様に、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分で半田が溶融状態になると、溶融した半田により、温度検出部分からの温度放射状態が低下すること、および、溶融した半田が半田面側パッド53aに触れることで、回路基板52側へと熱伝導が起こることが理由で、結論として、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は、図27のF線のように徐々に低下することになる。
また、部品面側パッド53bの検出温度が160℃と僅かながら上昇しているのは、スルーホール52aを通じての熱伝導が進んだからである。
また、図24は、糸半田供給装置49からの糸はんだ49a供給、および本加熱状態が継続されている状態で、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)は310℃を維持し、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は95℃となっている。
また、部品面側パッド53bの検出温度は180℃となっている。
端子54の上端部分の温度が310℃で維持されているのは、本加熱状態であるからで、それに比べ、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分は95℃まで低下している。
【0018】
これは、上述のごとく、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度を検出する温度検出手段として、放射温度計51を用いたからである。
つまり、図24の様に、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分で半田が溶融し、スルーホール52a内に流入する状態になると、溶融した半田により、温度検出部分からの温度放射状態が低下すること、および、溶融した半田が半田面側パッド53aに触れ、スルーホール52a内に流入し、回路基板52側へと熱伝導が進むことが理由で、結論として、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は、図27のF線のように徐々に低下することになる。
また、部品面側パッド53bの検出温度が180℃と僅かながら上昇しているのは、スルーホール52aを通じての熱伝導が進んだからである。
このような本加熱状態でも、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が継続的に行われている(図29のS11)。
図29のS11)において、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていれば、コイル5への電源供給を停止させる(図29のS12)。
図29のS11)において、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、本加熱が継続され、また、糸半田供給装置49による糸半田49aの供給も、予め定めた量だけが継続的に供給される。
これにより、溶融した糸はんだ49aは、図25のように、部品側パッド53b部分にまで到達する。
また、この図25に示す状態では、糸半田49aの供給も終了している。
図25の状態は、図27図28の(期間Dの図25ポイント時の状態)を示している。
図25は、糸半田供給装置49からの糸半田49a供給が終了しているが、本加熱状態が継続されている状態で、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)は320℃、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は90℃となっている。
また、部品面側パッド53bの検出温度は220℃となっている。
この図25の各部検出温度については、下記にて詳細に説明する。
図27で注目すべきは、糸半田49aの供給を開始(図27の期間B)から、(本加熱期間Ca、Cb)の間、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)は300℃以上となっているのに対して、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)が、200℃程度から徐々に低下していることである。
放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)が300℃以上となっているのは、サブコア体25、26による高周波誘導加熱が継続的に行われているからである。
サブコア体25、26による高周波誘導加熱が継続的に行われていれば、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)も徐々に上昇するようにも考えられるが、実際には、放射温度計51による検出温度は、図27のF線のように徐々に低下する。
これは半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度を検出する温度検出手段として、放射温度計51を用いたからである。
つまり、図23図24の様に、半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分で溶融状態になると、溶融した半田により、温度検出部分からの温度放射状態が低下すること、および、溶融した半田が半田面側パッド53aに触れ、スルーホール52a内に流入することで、回路基板52側へと熱伝導が起こることの理由で、結論として、本加熱状態が継続されていても、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は、図27のF線のように徐々に低下することになる。
しかしながら、図27図28の(期間D)になると、下降していた放射温度計51による検出温度が上昇に転じることになる。
この状態を、図27図28の(期間D)における図25ポイント部分を示す、図25を用いて説明する。
この図25では、糸半田49aの供給も終了、端子54に供給された半田は、半田面側パッド53aからスルーホール52a内を通り、部品面側パッド53bにも到達した状態となっている。
部品面側パッド53bは、端子54、スルーホール52a、半田を介した熱伝導により、温度上昇が続き、この図25の状態では糸半田49aの溶融温度よりも高い220℃となっている。
つまり、放射温度計51による検出温度は、図23図24の状態では、半田面側パッド53a、スルーホール52a、部品面側パッド53bによる吸熱状態により、徐々に低下していくが、図25の状態では、部品面側パッド53bですら220℃となっているので、上記吸熱状態が起きず、その結果として、放射温度計51による検出温度が上昇へと転じることになる。
本実施形態では、放射温度計51による検出温度が上昇に転じ、0、3秒後(タイマ56で設定)には、「半田が部品面側パッド53bにも到達し、半田面側パッド53a、部品面側パッド53bに、フィレットが形成された」と判定する(図29のS13)。
なお、(図29のS13)において、上記放射温度計51による検出温度の上昇が検出されない状態では、再び(図29のS11)に戻り、本加熱が継続される。
次に、(図29のS13)で、上記放射温度計51による検出温度の上昇が検出されると、次に、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(図29のS14)。
図29のS14)において、端子54の上端部分の温度が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていると、コイル5への電源供給を停止させる(図29のS15)。
また、(図29のS14)において、端子54の上端部分の温度が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、タイマ56で設定した仕上げ時間だけ、コイル5への電源供給を継続し、仕上げ時間が経過すると、コイル5への出力を停止する(図29のS16、S17)。
図26図27図28の期間Dの図26ポイントの状態である。
つまり、半田付けが完了し、コイル5への出力が停止された状態で、放射温度計50による検出温度(端子54の上端部分の温度)は330℃、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)は100℃、また、部品面側パッド53bの検出温度は230℃となっている。
そして、このような制御を行う事で、図26のように、半田面側パッド53a、部品面側パッド53bの両方に、適切なフィレットが形成されることになる。
つまり、スルーホール52aを有する回路基板52に対して電子部品の端子54を適切に半田付けすることが出来るのである。
なお、上記実施形態では、回路基板52の半田面側パッド53aを上面、部品面側パッド53bを下面として平面状態に配置し、半田付けを行ったが、半田面側パッド53aを下面、部品面側パッド53bを上面として平面状態に配置しても半田付けを行う事も出来る。
つまり、端子54で溶融した半田は、その濡れ状態、スルーホール52a部分の毛細管現象によって、半田面側パッド53a、スルーホール52a、部品面側パッド53bへと進行するので、半田面側パッド53aを下面、部品面側パッド53bを上面としても半田付けを行う事も出来る。
また、回路基板52を立てた状態でも、半田面側パッド53a、横向きのスルーホール52a、部品面側パッド53bへと溶融した半田が進行するので、この場合でも、適切な半田付けを行う事も出来る。
なお、上記実施の形態では、放射温度計51による検出温度(半田面側パッド53a部分、その近傍の端子54部分の温度)が下降傾向を示した後に、上昇に転じたことを検出すると、制御部55によって、前記コイル5への通電を停止したが、この場合に、前記コイル5への供給電力量を低下させる構成としても良い。
【0019】
(実施の形態2)
図30図31図30のA-A染断面図)は、上記(実施の形態1)で説明した高周波誘導加熱装置で半田付けをする回路基板60を示すものである。
この回路基板60は、半田面側パッドとなる表面側パッド61aと、部品側パッドとなる裏面側パッド61bを備えている。
また、回路基板60を貫通したスルーホール62を有し、このスルーホール62と表面側パッド61aと、裏面側パッド61bは電気的に接続されている。
また、この回路基板60の裏面側に実装される電子部品63の端子64は、スルーホール62を、裏面側パッド61b側から表面側パッド61a方向に貫通している。
そして、高周波誘導加熱装置のコア体4によって半田付けが行われる。
具体的には、コア体4の左右のサブコア体25、26間の磁気ギャップ27において、端子64がコア体4の左右のサブコア体25、26によって挟まれた状態となる。
この回路基板60の特徴は、大きな電流を流す電子部品63等が実装されるので、表面側パッド61a、裏面側パッド61bが、例えば、電子部品63の外径よりも大きいという事である。
この様に大きな表面側パッド61a、裏面側パッド61bが存在する回路基板60に対し、高周波誘導加熱装置によって電子部品63の端子64を半田付けする場合には、スルーホール62内、裏面側パッド61bの温度上昇が緩慢となり、その結果として、半田品質が低下したり、半田時間が長くなったりする。
すなわち、高周波誘導加熱装置のコア体4によって電子部品63の端子64を加熱しても、表面側パッド61a、裏面側パッド61bが大きいと、スルーホール62内、裏面側パッド61bの温度上昇が緩慢となってしまうのである。
そこで、本実施形態では、前記表面側パッド部61a、および裏面側パッド部61bで、前記高周波誘導加熱装置のコア体4の磁気ギャップ27方向とは直交する部分に、ビアホールエリア65を設け、このビアホールエリア65には、回路基板60の表裏面間を貫通し、表面側パッド部61a、および裏面側パッド部61bに熱伝導的に接続された複数のビアホール66を設けた。
また、表面側パッド部61a、および裏面側パッド部61bであって、前記スルーホール62の外側で、磁気ギャップ27方向の延長線上部分には、非ビアホールエリア67を設けた。
以上の構成とすると、スルーホール62内、このスルーホール62近傍の表面側パッド部61a、裏面側パッド部61bの温度上昇を促進することが出来るので、半田品質が低下したり、半田時間が長くなったりするのを防止できる。
【0020】
すなわち、高周波誘導加熱装置の磁気ギャップ27部分においては、端子64を通過する磁束以外に、コア体4のサブコア体25、表面側パッド部61a、回路基板60内、サブコア体26、次の瞬間には、サブコア体26、表面側パッド部61a、回路基板60内、サブコア体25へと磁束が流れ、このように、スルーホール62の両側において磁束が通過する表面側パッド部61a部分に、渦電流が流れる。
この時、スルーホール62の両側の一方では、表面側パッド部61aの上側から下側に磁束が通過し、他方では、逆に、表面側パッド部61aの下側から上側に磁束が通過し、それぞれの磁束通過部において、前記磁束通過による渦電流が発生する。
その結果、図30に示すように、磁気ギャップ27方向とは直交する部分のビアホールエリア65部においては、スルーホール62の両側において、同じ向きの渦電流68が流れることになる。
また、65aはビアホールエリア65において、電流密度が高いエリアを示しており、このエリア65aにビアホール66を設けた。
その結果、表面側パッド部61aのビアホールエリア65は他の場所よりも高い温度上昇が起きる。
そこで、本実施形態では、このビアホールエリア65に、回路基板60の表裏面間を貫通し、表面側パッド部61a、および裏面側パッド部61bに熱伝導的に接続された複数のビアホール66を設けた。
この結果、表面側パッド部61aのビアホールエリア65部分の発熱を、図31の矢印のごとく、ビアホール66を介して裏面側パッド部61bに伝達し、これによって、スルーホール62近傍の裏面側パッド部61b、スルーホール62内の温度を高め、これによって、スルーホール62内、このスルーホール62近傍の表面側パッド部61a、裏面側パッド部61bの温度上昇を促進することが出来、半田品質が低下したり、半田時間が長くなったりするのを防止できるのである。
また、表面側パッド部61aのビアホールエリア65部分の熱を、ビアホール66を介して裏面側パッド部61bに伝達することで、表面側パッド部61aのビアホールエリア65部分の異常高温化が避けられ、回路基板60の損傷も防止できる。
さらに、表面側パッド部61a、および裏面側パッド部61bであって、前記スルーホール62の外側で、磁気ギャップ27方向の延長線上部分に、非ビアホールエリア67を設けたので、コストダウンが図れるだけでなく、表面側パッド部61a、および裏面側パッド部61bの熱的負荷を不用意に大きくすることなく、上記スルーホール62近傍の表面側パッド部61a、裏面側パッド部61bの温度上昇を促進することが出来る。
なお、図31において、69は表面側パッド部61a、裏面側パッド部61bに設けたレジスト膜である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る高周波誘導加熱装置は、スルーホールを有する回路基板への半田付けが適切に行えるようになる。
【符号の説明】
【0022】
1 高周波誘導加熱ヘッド
2 本体ケース
2a 上面
2b 下面
2c 外周面
2A IH出力接続コネクター
3 冷却水接続コネクター
4 コア体
5 コイル
6 コンデンサ
7 電気水路接続体
8 電気水路接続体
9 水路結合部
10 基台部
11 水路結合部
12 水路結合部
13 ねじ
14 ねじ
15 ゴムパッキン
16 ねじ
17 コイルベース
18 コイルベース
19 水路結合部
20 水路結合部
21 絶縁板
22 ねじ
23 端子部
24 端子部
25 サブコア体
26 サブコア体
27 磁気ギャップ
28 貫通孔
29 ねじ
30 保護板
31 保護板
32 サブ保護板
33 サブ保護板
34 貫通孔
35 サブ保護板
36 サブ保護板
37 貫通孔
38 熱伝導部材
39 ねじ穴
40 折り曲部
41 ねじ穴
42 折り曲部
43 貫通孔
44 取り付け部
45 貫通孔
46 ねじ
47 ねじ
48 ねじ穴
49 糸半田供給装置
50 放射温度計(放射温度計1,第1の温度検出手段)
51 放射温度計(放射温度計2,第2の温度検出手段)
52 回路基板
52a スルーホール
53a 半田面側パッド
53b 部品面側パッド
54 端子(ピン)
55 制御部
56 タイマ
57 メモリ
58 電源部
59 保持手段
60 回路基板
61a 表面側パッド(半田面側パッド)
61b 裏面側パッド(部品面側パッド)
62 スルーホール
63 電子部品
64 端子
65 ビアホールエリア
65a エリア
66 ビアホール
67 非ビアホールエリア
68 渦電流
69 レジスト膜
図1
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