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特許7578290光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング機器、及び救助要請検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング機器、及び救助要請検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241029BHJP
   G08B 25/01 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G08B25/01 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021539189
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028327
(87)【国際公開番号】W WO2021029196
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-01-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019148296
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】依田 幸英
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直人
(72)【発明者】
【氏名】青野 義明
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】萩田 裕介
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506496(JP,A)
【文献】特開平11-332838(JP,A)
【文献】特開2009-128984(JP,A)
【文献】特開2017-33108(JP,A)
【文献】特開2007-312309(JP,A)
【文献】特開平1-215166(JP,A)
【文献】特開2011-9942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知部と、
を備え、
前記検知部は、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて音声認識を行い、認識した音声に含まれる音声ワードと、予め記憶している比較用音声ワードと、を比較し、
前記音声ワードが前記比較用音声ワードのいずれかと一致した場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
光ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知部と、
を備え、
前記検知部は、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて音声認識を行い、認識した音声に含まれる音声ワードと、予め記憶している比較用音声ワードと、を比較し、
前記音声ワードが前記比較用音声ワードのいずれかと一致した場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
光ファイバセンシング機器。
【請求項3】
前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生したことを報知先に報知する報知部をさらに備える、
請求項2に記載の光ファイバセンシング機器。
【請求項4】
前記検知部は、前記救助要請が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記救助要請が発生した場所を特定し、
前記報知部は、前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生した場所に応じて前記報知先を決定する、
請求項3に記載の光ファイバセンシング機器。
【請求項5】
前記報知部は、前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、表示部が表示する地図上に、前記救助要請が発生した場所をマッピングして表示する、
請求項4に記載の光ファイバセンシング機器。
【請求項6】
光ファイバセンシングシステムによる救助要請検知方法であって、
光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知ステップと、
を含み、
前記検知ステップでは、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて音声認識を行い、認識した音声に含まれる音声ワードと、予め記憶している比較用音声ワードと、を比較し、
前記音声ワードが前記比較用音声ワードのいずれかと一致した場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
救助要請検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング機器、及び救助要請検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバをセンサとして使用して、災害の発生や、災害による被災状況を検知する技術がある。例えば、特許文献1には、構造物(インフラ)に光ファイバを敷設し、光ファイバを使用して構造物の状態変化をセンシングすることで、災害等の緊急事態が発生した場合に、構造物の状態を遠隔で監視できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-249035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術のように、災害発生時に、構造物の被災状況を検知することも重要であるが、同様に、被災者の状況を検知することも重要である。特に、要救助者が発生した場合は、早急に要救助者を検知し、救助に向かう必要がある。
【0005】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、災害発生時に要救助者を迅速に検知することができる光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング機器、及び救助要請検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様による光ファイバセンシングシステムは、
光ファイバと、
前記光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知部と、
を備える。
【0007】
一態様による光ファイバセンシング機器は、
光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知部と、
を備える。
【0008】
一態様による救助要請検知方法は、
光ファイバセンシングシステムによる救助要請検知方法であって、
光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様によれば、災害発生時に要救助者を迅速に検知できる光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング機器、及び救助要請検知方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの具体的な構成例を示す図である。
図3図2に示される電柱に掲示される張り紙の例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの具体的な構成例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの具体的な構成例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの動作例を示すフロー図である。
図7】実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図8】実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの動作例を示すフロー図である。
図9】実施の形態3に係る検知部が記憶する対応テーブルの例を示す図である。
図10】実施の形態3に係る報知部が報知に用いるGUI画面の例を示す図である。
図11】実施の形態3に係る光ファイバセンシングシステムの動作例を示すフロー図である。
図12】実施の形態に係る光ファイバセンシング機器を実現するコンピュータのハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態1>
まず、図1を参照して、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの構成例について説明する。
【0013】
図1に示されるように、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムは、光ファイバ10及び光ファイバセンシング機器20を備えている。また、光ファイバセンシング機器20は、受信部21及び検知部22を備えている。
【0014】
光ファイバ10は、任意のオブジェクトに敷設され、一端が光ファイバセンシング機器20に接続される。なお、光ファイバ10は、オブジェクトに既に敷設されている既設の光ファイバを利用しても良いし、オブジェクトに新規に敷設しても良い。また、光ファイバ10は、1本でも良いし、複数本でも良い。
【0015】
受信部21は、光ファイバ10にパルス光を入射する。また、受信部21は、パルス光が光ファイバ10を伝送されることに伴い発生した反射光や散乱光を、光ファイバ10を経由して、戻り光(光信号)として受信する。
【0016】
光ファイバ10が敷設されたオブジェクトに振動が発生すると、その振動は、光ファイバ10に伝達され、光ファイバ10を伝送される戻り光の波長が変化する。そのため、光ファイバ10は、オブジェクトに発生した振動を検知可能である。また、光ファイバ10を伝送される戻り光は、オブジェクトに発生した振動に応じて波長が変化することから、オブジェクトに発生した振動に応じた振動パターンを含んでいる。この振動パターンは、振動の強弱、振動位置、振動数の変動の推移等が異なる固有のパターンとなる。
【0017】
そのため、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンの動的変化を分析することにより、戻り光に含まれる振動パターンが、特定の振動パターンであるか否かを判断することが可能となる。
【0018】
そこで本実施の形態1においては、災害発生時等で要救助者又は要救助者に同行する同行者が救助要請をする際に発生する振動の振動パターンを定義することとし、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する。
【0019】
より具体的には、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに、要救助者又は同行者が救助要請をする際に発生する振動の振動パターンが含まれるか否かを判断し、その判断結果に基づいて、救助要請の発生を検知する。
【0020】
ここで、検知部22において、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する方法の例について説明する。
【0021】
(A1)方法A1
まず、方法A1について説明する。
方法A1においては、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに、特定のリズム(拍子)の振動パターンが含まれる場合に、救助要請が発生したと判断する。
【0022】
例えば、特定のリズムの振動は、平常時には発生しない連打音である。又は、特定のリズムの振動は、予め決められたリズムの振動音である。例えば、予め決められたリズムは、三三七拍子、一定時間内に一定回数を叩くリズム等である。
【0023】
また、方法A1においては、検知部22は、パターンマッチングを利用しても良い。
例えば、検知部22は、特定のリズムの振動パターンを、マッチング用パターンとして予め記憶しておく。マッチング用パターンは複数でも良い。検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンを、予め記憶しているマッチング用パターンと比較する。戻り光に含まれる振動パターンが、予め記憶しているマッチング用パターンのいずれかを含む場合、検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンに、特定のリズムの振動パターンが含まれると判断し、救助要請が発生したと判断する。
【0024】
(A2)方法A2
続いて、方法A2について説明する。
方法A2においては、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに、救助を要請する音声(例えば、「助けて」等の音声、「キャー」等の悲鳴音)に相当する振動パターンが含まれる場合に、救助要請が発生したと判断する。
【0025】
受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンには、オブジェクト又はその周辺で発生した音声に起因して発生した振動の振動パターンも含まれる。
そのため、検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンの動的変化を分析することにより、オブジェクト又はその周辺で発生した音声を認識することが可能となる。
【0026】
そこで、例えば、検知部22は、要救助者又は同行者が救助を要請するときに使用する可能性がある音声の音声ワード(例えば、「助けて」、「キャー」等の音声ワード)のリストを予め記憶しておく。音声ワードは複数でも良い。検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンに基づいて音声認識を行い、認識した音声を予め記憶している音声ワードと比較する。認識した音声が、予め記憶している音声ワードのいずれかを含む場合、検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンに、救助を要請する音声に相当する振動パターンが含まれると判断し、救助要請が発生したと判断する。
【0027】
なお、検知部22は、「キャー」等の悲鳴音に相当する振動パターンについては、パターンマッチングを利用して検知しても良い。この場合、検知部22は、悲鳴音の振動パターンをマッチング用パターンとして予め記憶しておき、上述した方法A1と同様の方法で、戻り光に含まれる振動パターンに、悲鳴音に相当する振動パターンが含まれるか否かを判断すれば良い。
【0028】
続いて、本実施の形態1を実現する具体的な構成例について説明する。
(B1)構成B1
まず、図2を参照して、構成B1について説明する。
図2に示されるように、構成B1は、電柱TP1~TP3に既に敷設されている既設の光ファイバを、光ファイバ10として利用する例である。図2の例では、電柱TP1~TP3がオブジェクトになる。以下、どの電柱TP1~TP3であるかを特定しない場合には、電柱TPと称す。
【0029】
また、電柱TP1~TP3の各々には、上述した方法A1を実現するために、災害発生時等に要救助者又は同行者が救助要請をする際に電柱TPを特定のリズムで叩くためのハンマーH等のアイテムを設置しても良い。
【0030】
ただし、要救助者又は同行者が電柱TPを特定のリズムで叩くためには、要救助者又は同行者が特定のリズムを知っている必要がある。
そのため、特定のリズムは、地域単位で住人に周知しておくことが考えられる。
又は、電柱TP1~TP3の各々には、図3に示されるように、特定のリズムを通知するための張り紙を掲示しておくことが考えられる
【0031】
また、電柱TP1~TP3の各々には、上述した方法A2を実現するために、災害発生時等に要救助者又は同行者が救助を要請する音声を入力するためのマイクM等の音声入力部を設置しても良い。
【0032】
また、電柱TP1~TP3の各々には、救助要請を受け付けたことを要救助者又は同行者に通知するための出力部30を設置しても良い。出力部30は、救助要請を受け付けたことを、点灯又は点滅で通知するLED(Light Emitting Diode)ランプ、画面で通知するディスプレイ、音声で通知するスピーカ等で実現すれば良い。
【0033】
なお、構成B1は、電柱TP1~TP3に既に敷設されている既設の光ファイバを、光ファイバ10として利用する例であったが、これには限定されない。光ファイバ10は、別のオブジェクトに既に敷設されている既設の光ファイバを利用しても良い。別のオブジェクトは、例えば、橋梁、トンネル、道路等である。
【0034】
(B2)構成B2
続いて、図4を参照して、構成B2について説明する。
図4に示されるように、構成B2は、光ファイバ10を新規に敷設する例である。図4の例では、オブジェクトOB1,OB2に光ファイバ10を新規に敷設している。以下、どのオブジェクトOB1,OB2であるかを特定しない場合には、オブジェクトOBと称す。
【0035】
また、上述した構成B1と同様に、オブジェクトOB1,OB2の各々には、オブジェクトOBを特定のリズムで叩くためのハンマーHや、救助を要請する音声を入力するためのマイクMや、救助要請を受け付けたことを通知するための出力部30を設置しても良い。なお、要救助者又は同行者が特定のリズムを知るための方法は、上述した構成B1で説明した方法と同様で良い。
【0036】
なお、オブジェクトOB1,OB2は、任意のオブジェクトで良いが、上述のように、災害発生時に要救助者又は同行者が救助要請をする際に利用するものである。そのため、オブジェクトOB1,OB2は、災害発生時に要救助者又は同行者が向かう可能性があるオブジェクトであることが好適であり、例えば、避難マップの表示板、電話ボックス等が好適である。
【0037】
(B3)構成B3
続いて、図5を参照して、構成B3について説明する。
上述した構成B2は、1本の光ファイバ10をオブジェクトOB1,OB2に敷設する例であった。
これに対して、構成B3は、図5に示されるように、1本の光ファイバ10から分岐させた2本の光ファイバ10をそれぞれオブジェクトOB1,OB2に敷設する例である。
なお、構成B3のその他の構成は、上述した構成B2と同様である。
【0038】
続いて、図6を参照して、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの動作例について説明する。
図6に示されるように、受信部21は、光ファイバ10から、振動パターンを含む戻り光を受信する(ステップS11)。
【0039】
続いて、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する(ステップS12)。この検知は、例えば、上述した方法A1,A2のいずれかを利用して、行えば良い。
【0040】
上述したように本実施の形態1によれば、受信部21は、光ファイバ10から、振動パターンを含む戻り光を受信する。検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する。これにより、災害発生時に要救助者を迅速に検知することができる。
【0041】
このとき、検知部22は、戻り光に含まれる振動パターンに、特定のリズムの振動パターンが含まれる場合や、救助を要請する音声に相当する振動パターンが含まれる場合に、救助要請が発生したと判断する。これにより、災害発生時に、要救助者又は同行者は、光ファイバ10や光ファイバ10が敷設されたオブジェクト等を特定のリズムで叩く、救助を要請する音声を発する等の簡単な方法で、救助を要請することができる。
【0042】
<実施の形態2>
続いて、図7を参照して、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの構成例について説明する。
【0043】
図7に示されるように、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムは、上述した実施の形態1の構成と比較して、表示部40が追加されている点と、光ファイバセンシング機器20に報知部23が追加されている点が異なる。
【0044】
報知部23は、検知部22が救助要請が発生したと判断した場合、救助要請が発生したことを報知先に報知する。報知先は、例えば、地方自治体、消防署、救急センター、監視センター等であるが、これには限定されない。また、報知方法は、例えば、報知先のディスプレイやモニター等の表示部40にGUI(Graphical User Interface)画面を表示する方法でも良い。また、報知方法は、報知先の不図示のスピーカからメッセージを音声出力する方法でも良い。
【0045】
続いて、図8を参照して、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの動作例について説明する。
図8に示されるように、まず、図6のステップS11~S12と同様に、受信部21は、光ファイバ10から、振動パターンを含む戻り光を受信し(ステップS21)、続いて、検知部22は、受信部21が受信した戻り光に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する(ステップS22)。
【0046】
検知部22が、ステップS22で救助要請が発生したと判断した場合(ステップS22のYes)、報知部23は、救助要請が発生したことを報知先に報知する(ステップS23)。この報知は、例えば、上述したように、救助要請が発生したことを、画面に表示する方法や音声で出力する方法等で、行えば良い。
【0047】
上述したように本実施の形態2によれば、検知部22が救助要請が発生したと判断した場合、報知部23は、救助要請が発生したことを報知先に報知する。これにより、救助要請が発生したことを、報知先に知らせることができる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0048】
<実施の形態3>
本実施の形態3に係る光ファイバセンシングシステムは、構成自体は上述した実施の形態2の構成と同様であるが、検知部22及び報知部23の機能を拡張している。
【0049】
検知部22は、救助要請が発生したと判断した場合、受信部21が受信した戻り光に基づいて、救助要請が発生した場所を特定する。
例えば、検知部22は、受信部21が光ファイバ10にパルス光を入射した時刻と、該当する振動パターン(例えば、特定のリズムの振動パターンや、救助を要請する音声に相当する振動パターン)を含む戻り光を受信部21が受信した時刻と、の時間差に基づいて、受信部21(光ファイバセンシング機器20)から、救助要請が発生した位置までの光ファイバ10の距離を特定する。
【0050】
また、検知部22は、受信部21からの光ファイバ10の距離と、その距離に相当する場所と、を対応付けた対応テーブルを予め記憶しておく。光ファイバ10が、図2のように、電柱TP1~TP3に敷設されている場合の対応テーブルの例を図9に示す。図9の例では、対応テーブルは、受信部21からの光ファイバ10の距離と、その距離に相当する位置に設置された電柱TPの識別情報と、を対応付けている。例えば、検知部22は、受信部21から、救助要請が発生した位置までの光ファイバ10の距離がxx[m]である場合は、救助要請が発生した場所は、電柱TP1であると判断する。
【0051】
なお、受信部21(光ファイバセンシング機器20)から、救助要請が発生した位置までの光ファイバ10の距離を特定する方法は、上述した方法には限定されない。
例えば、検知部22は、受信部21からの光ファイバ10の距離毎に、その距離で発生した、該当する振動パターンの振動の強度を比較する。そして、検知部22は、振動の強度が最も大きい距離にある位置を、救助要請が発生した位置として特定しても良い。
【0052】
報知部23は、検知部22が救助要請が発生したと判断した場合、救助要請が発生した場所を報知先に報知する。ここで、報知部23は、光ファイバ10が敷設された位置を示す情報と、地図情報と、を対応付けて記憶しても良い。そして、報知部23は、検知部22が救助要請が発生したと判断した場合、表示部40が表示する地図上に、救助要請が発生した場所をマッピングして表示しても良い。図10に、地図上に、救助要請が発生した場所をマッピングして表示するGUI画面の例を示す。図10の例では、地図上に、光ファイバ10が敷設された位置をマッピングして表示すると共に、救助要請が発生した場所Xをマッピングして表示している。なお、複数の場所で救助要請が発生した場合は、地図上に、救助要請が発生した複数の場所をマッピングして表示しても良い。また、図10に示される地図は、必要に応じて、拡大及び縮小することが可能である。
【0053】
続いて、図11を参照して、本実施の形態3に係る光ファイバセンシングシステムの動作例について説明する。
図11に示されるように、まず、図8のステップS21~S22と同様のステップS31~S32が行われる。
【0054】
検知部22は、ステップS32で救助要請が発生したと判断した場合(ステップS32のYes)、続いて、受信部21が受信した戻り光に基づいて、救助要請が発生した場所を特定する(ステップS33)この特定は、例えば、上述した対応テーブルを用いる方法を利用して、行えば良い。
【0055】
続いて、報知部23は、救助要請が発生した場所を報知先に報知する(ステップS34)。この報知は、例えば、上述した図10に示されるGUI画面を利用して、行えば良い。
【0056】
なお、報知部23は、救助要請が発生した場所やタイミングに応じて、報知先を決定しても良い。
例えば、報知部23は、救助要請が発生した場所に近い、又は、その場所を管轄する地方自治体等を報知先に決定しても良い。
また、報知先によっては、救助要請が発生した時点で人手不足になっていることがある。そのため、報知部23は、時間帯毎に、報知先の優先度を予め記憶しておく。例えば、夕方の時間帯に人手が少なくなる報知先がある場合、その報知先は、夕方の時間帯の優先度は低く設定される。そして、報知部23は、救助要請が発生した時点の優先度が最も高い報知先に決定しても良い。
【0057】
上述したように本実施の形態3によれば、検知部22は、救助要請が発生したと判断した場合、戻り光に基づいて、救助要請が発生した場所を特定し、報知部23は、救助要請が発生した場所を報知先に報知する。これにより、救助要請が発生したことだけでなく、救助要請が発生した場所を、報知先に知らせることができる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0058】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態3では、報知部23は、地図上に、救助要請が発生した場所をマッピングして表示している。この表示により、要救助者が存在する位置(分布)を特定できるため、被災状況を特定することも可能となる。なお、被災状況の特定は、検知部22又は報知部23のどちらが行っても良い。
【0059】
また、上述した実施の形態では、光ファイバセンシング機器20に複数の構成要素(受信部21、検知部22、及び報知部23)が設けられているが、これには限定されない。光ファイバセンシング機器20に設けられていた構成要素は、1つの装置に設けることには限定されず、複数の装置に分散して設けられていても良い。
【0060】
<光ファイバセンシング機器のハードウェア構成>
続いて以下では、図12を参照して、光ファイバセンシング機器20を実現するコンピュータ50のハードウェア構成について説明する。
【0061】
図12に示されるように、コンピュータ50は、プロセッサ501、メモリ502、ストレージ503、入出力インタフェース(入出力I/F)504、及び通信インタフェース(通信I/F)505等を備える。プロセッサ501、メモリ502、ストレージ503、入出力インタフェース504、及び通信インタフェース505は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0062】
プロセッサ501は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ502は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ503は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ503は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0063】
ストレージ503は、光ファイバセンシング機器20が備える構成要素(受信部21、検知部22、及び報知部23)の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ501は、これら各プログラムを実行することで、光ファイバセンシング機器20が備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ501は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ502上に読み出してから実行しても良いし、メモリ502上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ502やストレージ503は、光ファイバセンシング機器20が備える構成要素が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0064】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(コンピュータ50を含む)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-ROM)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0065】
入出力インタフェース504は、表示装置5041、入力装置5042、音出力装置5043等と接続される。表示装置5041は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ501により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置5042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置5041及び入力装置5042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置5043は、スピーカのような、プロセッサ501により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0066】
通信インタフェース505は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース505は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0067】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【0068】
また、上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
光ファイバと、
前記光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知部と、
を備える、光ファイバセンシングシステム。
(付記2)
前記検知部は、前記光信号に含まれる振動パターンに特定の拍子の振動パターンが含まれる場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記3)
前記検知部は、前記光信号に含まれる振動パターンに救助を要請する音声に相当する振動パターンが含まれる場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記4)
前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生したことを報知先に報知する報知部をさらに備える、
付記1から3のいずれか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記5)
前記検知部は、前記救助要請が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記救助要請が発生した場所を特定し、
前記報知部は、前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生した場所に応じて前記報知先を決定する、
付記4に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記6)
表示部をさらに備え、
前記報知部は、前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記表示部が表示する地図上に、前記救助要請が発生した場所をマッピングして表示する、
付記5に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記7)
光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知部と、
を備える、光ファイバセンシング機器。
(付記8)
前記検知部は、前記光信号に含まれる振動パターンに特定の拍子の振動パターンが含まれる場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
付記7に記載の光ファイバセンシング機器。
(付記9)
前記検知部は、前記光信号に含まれる振動パターンに救助を要請する音声に相当する振動パターンが含まれる場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
付記7に記載の光ファイバセンシング機器。
(付記10)
前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生したことを報知先に報知する報知部をさらに備える、
付記7から9のいずれか1項に記載の光ファイバセンシング機器。
(付記11)
前記検知部は、前記救助要請が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記救助要請が発生した場所を特定し、
前記報知部は、前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生した場所に応じて前記報知先を決定する、
付記10に記載の光ファイバセンシング機器。
(付記12)
前記報知部は、前記検知部が前記救助要請が発生したと判断した場合、表示部が表示する地図上に、前記救助要請が発生した場所をマッピングして表示する、
付記11に記載の光ファイバセンシング機器。
(付記13)
光ファイバセンシングシステムによる救助要請検知方法であって、
光ファイバから振動パターンを含む光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に含まれる振動パターンに基づいて、救助要請の発生を検知する検知ステップと、
を含む、救助要請検知方法。
(付記14)
前記検知ステップでは、前記光信号に含まれる振動パターンに特定の拍子の振動パターンが含まれる場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
付記13に記載の救助要請検知方法。
(付記15)
前記検知ステップでは、前記光信号に含まれる振動パターンに救助を要請する音声に相当する振動パターンが含まれる場合に、前記救助要請が発生したと判断する、
付記13に記載の救助要請検知方法。
(付記16)
前記検知ステップで前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生したことを報知先に報知する報知ステップをさらに含む、
付記13から15のいずれか1項に記載の救助要請検知方法。
(付記17)
前記検知ステップでは、前記救助要請が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記救助要請が発生した場所を特定し、
前記報知ステップでは、前記検知ステップで前記救助要請が発生したと判断した場合、前記救助要請が発生した場所に応じて前記報知先を決定する、
付記16に記載の救助要請検知方法。
(付記18)
前記報知ステップでは、前記検知ステップで前記救助要請が発生したと判断した場合、表示部が表示する地図上に、前記救助要請が発生した場所をマッピングして表示する、
付記17に記載の救助要請検知方法。
【0069】
この出願は、2019年8月13日に出願された日本出願特願2019-148296を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0070】
10 光ファイバ
20 光ファイバセンシング機器
21 受信部
22 検知部
23 報知部
30 出力部
40 表示部
50 コンピュータ
501 プロセッサ
502 メモリ
503 ストレージ
504 入出力インタフェース
5041 表示装置
5042 入力装置
5043 音出力装置
505 通信インタフェース
TP1~TP3 電柱
OB1,OB2 オブジェクト
H ハンマー
M マイク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12