(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】時計仕掛けのための、2段増速器配置およびギアトレイン
(51)【国際特許分類】
G04B 13/02 20060101AFI20241029BHJP
G04B 19/02 20060101ALI20241029BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
G04B19/02 A
F16H1/28
(21)【出願番号】P 2021553769
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 HU2020000007
(87)【国際公開番号】W WO2020201783
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-01
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】521404761
【氏名又は名称】マフォーム ケーエフティー.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】チレ,ゲーザ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/031594(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065018(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
F16H 1/28
F16H 1/32
F16H 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2段増速器配置であって、前記2段増速器配置は、第1のピッチ面(100A)と
、第2のピッチ面(100B)と、第3のピッチ面(100a)と、第4のピッチ面(100b)と、を有する力伝達部材を含み、ここで、第1段では、前記第3のピッチ面(100a)が前記第1のピッチ面(100A)に沿って回り、そして、第2段では、前記第4のピッチ面(100b)が前記第2のピッチ面(100B)に沿って回り、それによって、前記第1のピッチ面(100A)と前記第3のピッチ面(100a)は共通の第1の線分(102A)を有し、そして、前記第2のピッチ面(100B)と前記第4のピッチ面(100b)は共通の第2の線分(102B)を有し、ここで、両段は、前記線分(102A、102B)に対して離間された、少なくとも1つのそれぞれの歯接触領域を有し、前記線分(102A、102B)に沿って、第1段と第2段の前記力伝達部材が係合され、そして、第1と第2のピッチ面(100A、100B)は、第1と第2の線分(102A、102B)で固定された相対位置を有し、そして、第3と第4のピッチ面(100a、100b)も、前記第1と第2の線分(102A、102B)で固定された相対位置を有し、
前記2段増速器配置は、前記第2の線分(102B)に対して垂直の平面(104)の直交の座標系を考慮し、ここで、前記直交の座標系の原点(T1)は前記第2の線分(102B)の前記平面(104)への投影であり、
そして、前記座標系のY軸が、前記平面(104)への前記第1の線分(102A)の点(D)の投影点(T0)の方向を指しているとみなし、下記公式1は、前記第1の線分(102A)の各点(D)に対して定義された座標系における配置に対して常に充足され
る、ことを特徴とする、2段増速器配置。
【数1】
式中、
dは、前記原点(T1)からの前記投影点(T0)の距離であり、
xとyは、前記第1のピッチ面(100A)と前記第3のピッチ面(100a)の任意の歯接触領域内の任意の歯接触点(P)の前記平面(104)に投影される通りの、投影点(K)の座標であり、そして、
x’とy’は、前記第2のピッチ面(100B)と前記第4のピッチ面(100b)の任意の歯接触領域内の任意の歯接触点(P’)の前記平面(104)に投影される通りの、投影点(K’)の座標である
。
【請求項2】
前記2段増速器配置が、下記公式2も充足する、ことを特徴とする、請求項1に記載の2段増速器配置。
【数2】
【請求項3】
前記力伝達部材の少なくとも1つは、ギア部
材であり、他の力伝達部材は、ギア部材および/またはチェーン伝達部
材である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の2段増速器配置。
【請求項4】
時計仕掛
けのための、請求項1に係る2段増速器配置を有するギアトレインであって、前記ギアトレインは、ベースリング(10)と、前記ベースリング(10)の内部で周回する時間指示手段(12)と、前記時間指示手段(12)の内部で周回する分指示手段(14)と、を含み、
前記ベースリング(10)は、内歯ギア装置を備える少なくとも1つのギアから成り、
前記時間指示手段(12)は、前記時間指示手段(12)の中心点と交差する共通軸(13)を有する、内歯時間ホイール(28)と、外歯ギア装置および内歯ギア装置の両方を備えるトランスミッションギア(22、34)とを含み、
前記分指示手段(14)は、前記分指示手段(14)の中心点と交差する共通軸(15)を有する、外歯ギア装置を備える分ホイールと外歯ギア装置を備える追加ギアとを含み、
前記分ホイール(26)と前記時間ホイール(28)の歯は、互いにかみ合い、
前記トランスミッションギア(22、34)の前記外歯ギア装置の歯は、前記ベースリング(10)のギアを係合させ、前記ベースリング(10)の前記内歯ギア装置の歯は、前記追加ギアを係合させ、そして、
前記ギアトレインは、以下の公式を充足し、ここで、
【数3】
前記第1のピッチ面(100A)は、前記トランスミッションギア(22、34)の前記内歯ギア装置のピッチ面であり、
前記第2のピッチ面(100B)は、前記
内歯時間ホイール(28)のピッチ面であり、
前記第3のピッチ面(100a)は、前記追加ギアのピッチ面であり、そして、
前記第4のピッチ面(100b)は、前記分ホイール(26)のピッチ面である、ことを特徴とする、ギアトレイン。
【請求項5】
前記ベースリング(10)は内歯ギア装置を配するギアとして調節ギア(24)を含み、前記追加ギアは駆動ギア(20)であり、そして、前記トランスミッションギアは駆動側トランスミッションギア(22)であり、ここで、前記駆動側トランスミッションギア(22)の内歯ギア装置の歯は、前記駆動ギア(20)を係合させ、そして、前記駆動側トランスミッションギア(22)の外歯ギア装置の歯は、前記調節ギア(24)を係合させる、ことを特徴とする、請求項4に記載のギアトレイン。
【請求項6】
前記ベースリング(10)は内歯ギア装置を配するギアとしてベースギア(36)を含み、前記追加ギアは被駆動ギア(32)であり、そして、前記トランスミッションギアは被駆動側トランスミッションギア(34)であり、前記被駆動側トランスミッションギア(34)の内歯ギア装置の歯は、前記被駆動ギア(32)を係合させ、前記被駆動側トランスミッションギア(34)の外歯ギア装置の歯は、前記ベースギア(36)を係合させる、ことを特徴とする、請求項4に記載のギアトレイン。
【請求項7】
前記ベースリング(10)は、内歯ギア装置を配するギアとして、前記ベースリングの中心点と交差する共通の第1軸(11)を含む、調節ギア(24)とベースギア(36)とを含み、
駆動側トランスミッションギア(22)、前記
内歯時間ホイール(28)、および被駆動側トランスミッションギア(34)は、全て、前記時間指示手段(12)の中心点と交差する共通の第2軸(13)を有し、前記時間指示手段(12)の中で一体化されており、
駆動ギア(20)、前記分ホイール(26)、支持部(30)、および被駆動ギア(32)は、全て、前記分指示手段(14)の中心点と交差する共通の第3軸(15)を有し、前記分指示手段(14)の中で一体化されており、
前記駆動側トランスミッションギア(22)の前記内歯ギア装置の歯は、前記駆動ギア(20)を係合させ、前記駆動側トランスミッションギア(22)の外歯ギア装置の歯は、前記調節ギア(24)を係合させ、
前記分ホイール(26)と前記
内歯時間ホイール(28)の歯は、互いにかみ合い、
前記被駆動側トランスミッションギア(34)の前記内歯ギア装置の歯は、前記被駆動ギア(32)を係合させ、前記被駆動側トランスミッションギア(34)の外歯ギア装置の歯は、前記ベースギア(36)を係合させる、ことを特徴とする、請求項4に記載のギアトレイン。
【請求項8】
タイマー機
構が、分ホイール(26)または追加ギアに接続される、ことを特徴とする、請求項4-7のいずれか1項に記載のギアトレイン。
【請求項9】
前記ベースリング(10)および/または前記時間指示手段(12)および/または前記分指示手段(14)のギアの歯プロファイルは、修正されたサイクロイドクロックギアの歯プロファイルとして形作られる、ことを特徴とする、請求項4-8のいずれか1項に記載のギアトレイン。
【請求項10】
前記
第1軸(11)および/または前記
第2軸(13)および/または前記
第3軸(15)は、可逆的な一方向の回転機構を含む、ことを特徴とする、請求項7に記載のギアトレイン。
【請求項11】
前記
可逆的な一方向の回転機構は、可逆的なラチェット機構として実装される、ことを特徴とする、請求項10に記載のギアトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、腕時計のための、時計仕掛け(時計または機械的運動)のための、2段増速器配置およびギアトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な減速器配置および/または増速器配置(ギアボックス配置と共に減速器配置と増速器配置)が、先行技術において既知である。
【0003】
特許文献1と特許文献2の文書は、減速器を開示する。該文書に既定される技術的ソリューションは、低効率かつ不利な動作条件でのみ増速に適しており、その理由は、増速に必要な、2つのギア段に適用されるギア装置間の関係が考慮されていないからである。このことは、結果的に、ギアボックス中に、増速動作を妨げる、またはそれを不可能にする内部の力を形成することになる。当該文書に係る2段減速器(または同様に配置された減速器)に対して逆駆動を適用する場合、つまりそれらを増速器として適用する場合、内歯ギアは互いに対して動く必要があり、その結果、プラネタリーギアの駆動よりはむしろ、プラネットギア(planet gear)の2つの相互に係合された段で歯のせん断が発生する。この現象は主に幾何学的な理由によって引き起こされるが、歯と歯の間の摩擦に関しては、一般的なウォームギアを逆駆動できない(つまり、増速器配置に適用できない)という事実と本質的に類似している。
【0004】
円形の経路を適用することよって実装された増速器配置は、特許文献3に開示されている。本文書は、増速器配置の第1段と第2段で適用可能な歯の寸法とサイズとの関係を開示しておらず、したがって、増速器配置を本文書の開示に基づいて提供することはできない。
【0005】
非特許文献1は、2段駆動を開示し、ここで、修正された歯プロファイルを有するサイクロイド歯が、運動誤差を低下させるために、そして高い減速比を有するコンパクトな配置を提供するために、適用される。適用される歯の修正は、逆駆動、つまり増速を可能にすることを目的としておらず、減速動作を支援することを目的としている。
【0006】
C.Jaliu等による3つの記事(非特許文献2、非特許文献3、および非特許文献4)において、増速器として使用される減速器配置が開示されている。どの文書も、ギア駆動の両段で適用される歯の間の関係についての教示を含んでおらず、駆動の内部効率と適用可能なギア比との間の関係のみが定義されている。
【0007】
先行技術は減速が可能なコンパクトな2段プラネタリーギアボックスを含むが、これらのソリューションは一般に、プラネットギアを動かすことを特徴としている。そのような技術的ソリューションは、例えば特許文献4に開示されている。これらのソリューションは増速には適用できない、というのは、これらのソリューションでは、ほぼ同じ歯数を有するリングギアを互いに対して回転させる必要があり、また、異なる直径を有するギアとそれらの共通軸で発生する力は、結果的に、既知の歯のタイプや一般的に使用される材料で相殺するのが困難な荷重となるからである。これらの技術的ソリューションの欠点は、それらを時計または腕時計のギアトレインで増速のために適用できないことである。
【0008】
同様の配置を伴う2段プラネタリーギア駆動装置は、特許文献5に開示されており、ここで、風力タービンのために意図された、高精度かつ高耐荷重能力を必要とするシャフトを含む2段増速器プラネタリーギアボックスが適用さている。本文書は、軸方向の力を低減するために、-複雑な製造技術を必要とする-、ねじ、ヘリカルギア、またはヘリングボーンギア(herringbone gear)を適用する可能性について記載している。そのような配置の欠点は、2つのリングギアの1つを駆動すると、結果的にプラネットギアの歯とシャフトに大きな負荷がかかり、したがって、プラネットギアの直径をリングギアの直径の半分未満に保つ必要があることであり、そしてまた、1を超えるプラネットギアを適用することが必要となる。当該ソリューションは、時計や腕時計の動作に適用可能な小型化された変異形を提供するのには適していない。
【0009】
従来技術はまた、半径方向の小さな力を生成するように適合された(いわゆる直線的な歯を備える)スパーギア、例えば小さな圧力角で生成されたインボリュートギア装置、およびサイクロイドギアを含む。特許文献6の文書はまた、半径方向の小さな力を発生させるために適合された歯プロファイルを開示する。そのようなプロファイルの欠点は、2段増速器プラネタリーギアボックスに適用される時の、歯の直径とギアの直径との差異、および当該配置の特性が、考慮されていないことである。そのような配置は、したがって、製造誤差に対する感度が高くなり、結果的に、プラネットギアを駆動する即時的な力を変動させるかもしれない。そのような変動は、一方で、腕時計の運動の耐久性を低下させ、他方で、タイミングに合わせた脱進機構はトルク変動に敏感であり、そのことで時計が不正確になる可能性があるため、機械式腕時計の運動への適用には適さない配置をもたらす。
【0010】
機械的な時計および腕時計では、増速器ギアを適用することが必要である。時間の表示に加えて、時計はまた、追加的な機能性を有しているかもしれず、その実装は本分野では「複雑事象」と呼ばれる。複雑事象によって実装される追加的な機能は、例えば、日付の表示、または特別な針配置、高速ストップウォッチ機能、またはその他の興味深い機能性であり得る。これらの特別な技術的ソリューションにもかかわらず、ほとんどの時計および腕時計のドライブトレインは、数百年間変わらないままであった;ばね、ウェイト、またはその他の速度の遅いアクチュエータの遅い動きは、脱進機構用に高速化され、外部サイクロイドギアで構成される通常6-10段のギアトランスミッションによって、機構の正確な動作を提供する。既知の機構では、1:100、あるいは1;10000までもの増速比が生じ得る。当該複雑事象は、しばしば、時計に複雑な外観をもたらし、それによって時間を読み取ることが困難になり、そして、追加的なコンポーネントが故障モードの数を増加させる。従来のタイプとは異なる時計のギアトレインもより複雑で、そのため、より多くの故障モードを有するか、あるいは、より高価な技術を適用して製造しなくてはならない。
【0011】
特別なプラネタリーの動きを含む腕時計の指示機構が、特許文献7に開示されている。開示されているソリューションの欠点は、それが小さな増速比しか提供できないこと、および、その時計への適用が(それ自体で動作することもできる)完全な腕時計の運動を必要とし、それによって時計または腕時計の機構を大きく複雑化し、それによって製造コストを上げ、そして故障モードの数を増加させることである。別の特別な腕時計の運動は、特許文献8に開示されている。この運動では、当該運動に関するギアトレインの大部分は、針(ポインタ)によって構成され、ここで、タイミングに関与しているてん輪も回転する。この配置の難点は、それが提供する時間表示のための機構が、従来の腕時計の運動よりも多くのコンポーネントを有し、そして複雑性を増すことである。
【0012】
さらなる特別な腕時計の運動は、特許文献9に開示されている。この運動では、ギアトレインのコンポーネントのいくつかを腕時計の外側端部に隠すことができ、したがって、腕時計の中間部は空のままで、そしてさらに見通すことができる。このソリューションの難点も、従来の腕時計の運動に対して複雑性が増すことである。
【0013】
特許文献10は、特別なプラネタリーの動きを含むさらなる腕時計用の、ダイヤルモジュールを開示する。本文書に記載される技術的ソリューションの欠点は、増速ができないこと、および、その動作に対して、完全な、自己充足型の腕時計の運動が必要とされることであり、したがって、従来の時計に対して時計の複雑性が増し、そしてまた、故障モードの数を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】US2012/0065018A1
【文献】US2014/0018203A1
【文献】US2010/0048342A1
【文献】US2017/0045118A1
【文献】EP2,236,823A1
【文献】US4,651,588
【文献】WO00/31594
【文献】EP2990880B1
【文献】US2,852,908
【文献】US2012/0287762A1
【非特許文献】
【0015】
【文献】”Design of a two-stage cycloidal gear reducer with tooth modifications”(Mechanism and Machine Theory 79 (2014) 184-197),Jyh-Jone Lee et al
【文献】”Dynamic Features of Speed Increasers from Mechatronic Wind and Hydro Systems. Part I: Structure Kinematics”, Ceccarelli M. (eds) Proceedings of EUCOMES 08. Springer, Dordrecht, 351-359 (2009)
【文献】”Dynamic Features of Speed Increasers from Mechatronic Wind and Hydro Systems. Part II: Dynamic Aspects”, Ceccarelli M. (eds) Proceedings of EUCOMES 08. Springer, Dordrecht, 361-368 (2009)
【文献】”Features of a Cycloid Speed Increaser with Double Satellite Gear for Small Mechatronic Wind and Hydro Systems”, Renewable Energy and Power Quality. 1. 795-802 (2009)
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、高い増速比を提供することができ、かつ単純な構成を有する、2段増速器配置(ギアボックス配置)を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、コンパクトなサイズを有する時計仕掛け用のギアトレインを提供することであり、該ギアトレインは腕時計にも適用することができ、ここで、ギアトレイは時計の針に一体化されている。
【0018】
本発明に係る目的は、請求項1に係る2段増速器配置と請求項4に係るギアトレインとを提供することによって達成されている。本発明の好ましい実施形態は、従属クレーム中に定義されている。
【0019】
本発明に係る2段増速器配置の利点は、それによって高い増速比を提供することが可能であり、精密機構用途にすら適用することができることである。
【0020】
ギアボックス配置に関する関係が充足される場合、ギアボックス配置は増速器として適用することができるが、当該関係を充足する減速器ギアボックス配置は、増速器ギアボックスとして使用することができ、つまり、それらの歯のスタックは安全に防がれ、そして増速器としてのそれらの動作を妨害したり妨げたりするような力は発生しないことが、認められる。
【0021】
本発明に係るギアボックス配置のさらなる利点は、それが単純な構成を有することであり、そして、本発明に係るギアボックス配置に関する関係が充足されれば、当該ギアボックス配置は製造誤差に対する感度が抑えられる。当該関係は製造が簡単なギアを適用することによって充足され得、したがって、この要件は、製造が困難なギアの適用を含まない。それどころか、本発明に係る、当該関係を充足するギアボックス配置は、単純で、容易に製造可能な形状を有する歯を伴うギアを使用することによって、実装することができる。
【0022】
本発明に係るギアトレインの利点は、当該ギアトレインが時計または腕時計の針に一体化されることであり、ここで、時間は、(従来の時計の針の代わりに)ギアの位置によって示されている。このおかげで、時計はより少数のコンポーネントで実装することができ、それによって、故障の機会が減り、同時に時計の外観がはるかに特別なものとなる。しかし、特別な時計の外観は、時間の読み取りを困難にするものではなく、その理由は、時間が、従来の時計に類似の方法でギアトレインのギアによって示されるからである。
【0023】
ギアトレインに配置されている複数のギアを有することによって、ギアトレインは、摩擦や製造誤差による影響に対する感度が抑えられる。これにより、好ましくは、精度と信頼性が主な関心事である時計または腕時計における、ギアトレインの利用可能性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、以下の図面を参照して、例示によって下記に説明される。
【
図1】本発明に係る2段増速器配置の段の各々に使用される歯の間の関係を説明する。
【
図2A】本発明に係る2段増速器配置のピッチ面の好ましい構成を示す。
【
図2B】本発明に係る2段増速器配置のピッチ面の別の好ましい構成を示す。
【
図3】ギアラックと(スパー)ピニオンギアとを含む、本発明に係る2段増速器配置の好ましい実装を示す。
【
図4】スパイラルベベルギアを含む、本発明に係る2段増速器配置の好ましい実装を示す。
【
図5】スパーギアを含む、本発明に係る2段増速器配置の好ましい実装の上面図を示す。
【
図6A】小型サイズの歯を適用した場合の、
図5に係る好ましい配置におけるピッチ面に関係する主要な力の状態を示す。
【
図6B】通常サイズの歯を適用した場合の、
図5に係る好ましい配置におけるピッチ面に関係する主要な力の状態を示す。
【
図6C】大型サイズの歯を適用した場合の、
図5に係る好ましい配置におけるピッチ面に関係する主要な力の状態を示す。
【
図7】サイクロイド歯を含む
図5に係るギアボックス配置のための、本発明に係る2段増速器配置の段の各々で使用される歯の間の関係の適用を説明する。
【
図8】シフトされたインボリュート歯を含む
図5に係るギアボックス配置のための、本発明に係る2段増速器配置の段の各々で使用される歯の間の関係の適用を説明する。
【
図9A】12:00の時間の、本発明に係るギアトレインの好ましい実施形態の上面図を示す。
【
図9B】10:10の時間の、
図9Aに係る好ましいギアトレインの上面図である。
【
図10】他の時間事例の、
図9Aに係る好ましいギアトレインの上面図である。
【
図11】本発明に係るギアトレインのさらに好ましい実施形態の等尺分解図である。
【
図12A】本発明に係るギアトレインの別の好ましい実施形態の等尺分解図である。
【
図12B】本発明に係るギアトレインのさらに好ましい実施形態の等尺分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に係る2段増速器配置(
ギアボックス配置)の段の各々で使用される歯の間の関係を説明する。増速器配置は、第1のピッチ面(100A)、第2のピッチ面(100B)、第3のピッチ面(100a)、および第4のピッチ面(100b)を含む、力伝達部材を含む。第一段において、第3のピッチ面(100a)は第1のピッチ面(100A)に沿って回り、他方、第二段において、第4のピッチ面(100b)は第2のピッチ面(100B)に沿って回る。好ましくは、力伝達部材の少なくとも1つは、ギアホイール、ベベルギア、ヘリカルギア、スパイラルギア、またはハイポイドギアであり、他の力伝達部材は、ギア部材および/またはチェーン伝達部材、好ましくはチェーンまたはスプロケットホイールである。単純化のために、以下、「歯」という用語は、チェーン伝達部材の相互接続されたチェーン部分、並びにギア部材の歯を指すために使用される。
【0026】
歯は、ピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、(100b)に対して固定の位置、またはチェーン伝達部材およびスプロケットの場合には非固定の位置のいずれかで、配置される。歯は、好ましくは互いに異なっており、または互いに同一であり、または互いに部分的に同一であり、歯の形状が回転を妨げない限りで任意の形状を有している。
【0027】
回転動作により、第一段において、第1のピッチ面(100A)と第3のピッチ面(100a)は第1の線分(102A)を有し、好ましくは唯一の第1の線分(102A)を継続的に有し、第二段において、第2のピッチ面(100B)と第4のピッチ面(100b)は第2の線分(102B)を有し、好ましくは唯一の第2の線分(102B)を継続的に有し、線分(102A)と(102B)に沿って、回転動作の間に、それぞれ、第3のピッチ面(100a)は第1のピッチ面(100A)に触れ、そして第4のピッチ面(100b)は第2のピッチ面(100B)に触れる。両段は、少なくとも1つのそれぞれの歯接触領域を有し、該歯接触領域は線分(102A)、(102B)に対して離間されて配置され、線分(102A)、(102B)に沿って第1段と第2段の力転送部材が係合される。ギアボックス配置の両段において、回転が生じる時は常に、第1のピッチ面(100A)と第3のピッチ面(100a)の接触領域、およびさらに、第2のピッチ面(100B)と第4のピッチ面(100b)の接触領域で、少なくとも1つのそれぞれの接触している歯のペアが存在し、該ペアの、一方の歯は、第1のピッチ面(100A)または第2のピッチ面(100B)にそれぞれ対応し、もう一方の歯は、第3のピッチ面(100a)または第4のピッチ面(100b)にそれぞれ対応し、ここで、これらの歯のペアの相互接触の領域は、歯接触領域であり、該歯接触領域に沿って、それぞれの段の歯は、摺動によって、または回転によって、または例えばチェーンの場合には歯の表面上の回転によって、互いに接触する。
【0028】
第1と第2の線分(102A)と(102B)の、第1と第2のピッチ面(100A)と(100B)の相対位置は、固定されており、ここで、第1と第2の線分(102A)と(102B)における、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の相対位置も、固定されており、この時、固定されているとは、第1と第2の線分(102A)と(102B)で、第1と第2のピッチ面(100A)と(100B)の相対位置、並びに、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の相対位置は変わらない、つまり、それらは互いに対してシフトしていないことを意味する。好ましくは、第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)に対応する歯の相対位置、または、第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)に対応する歯の相対位置も変わらない。
【0029】
(線分(102B)に対して垂直である)平面(104)への第2の線分(102B)の投影は、平面(104)に対応する直交座標系で、平面(104)の原点(T1)である。座標系のY軸は、平面(104)への第1の線分(102A)の点(D)の投影点(T0)の方向を指し示し、ここで、平面(104)への第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)の幾何中心点(C)の投影は、点(Q)である。
【0030】
第1の線分(102A)の各点(D)に対して定義された座標系では、本発明に係る2段増速器配置は、常に、下記公式1を充足し、:
【0031】
【数1】
該公式は、充足された場合には、ギアボックス配置の速度増加を確実に可能にし、式中、
dは、原点(T1)からの投影点(T0)の距離であり、
xとyは、第1のピッチ面(100A)と第3のピッチ面(100a)との間の歯接触領域内の任意の歯接触点(P)の、平面(104)への投影点(点K)の座標であり、そして、
x’とy’は、第2のピッチ面(100B)と第4のピッチ面(100b)との間の歯接触領域内の任意の歯接触点(P’)の、平面(104)への投影点(点K’)の座標である。
【0032】
公式1は、2段ギアボックス配置で相互に係合した歯のペアの歯の係合点が、歯の対向面に位置するという幾何学的考察に基づく。公式1によって表わされる非自明な関係(non-trivial relationship)-本分野ではこれまで適用されていない-は、ギアボックス配置における即時的な回転動作を目的とする場合に、2つの対向面の圧力点の位置が互いに依存するという事実に光を当て、そしてまた、より高いギア比の2段プラネタリーギアボックスの大部分が逆方向に駆動できないのは何故なのか、つまり、それらを増速器として適用できないのは何故なのかを指摘する。
【0033】
現在のエンジニアリングの実践によると、各ギアは別々の寸法とされる。選択された寸法は、直接係合していないギアの寸法に影響しないか、あるいは影響しても単に非常に間接的であるかのいずれかである。本発明の技術分野では、2段ギアボックス配置は一般に、増速のために設計されてはおらず、そのため、異なる段で使用される相互係合歯の形状の直接的影響は、そのようなギアボックスを増速器配置用に設計することに関して未だ調査されていない。2段ギアボックス配置の段の1つで使用される係合歯のペアの寸法が、他の段に適用可能な相互係合歯のペアの寸法に直接影響することは、当業者にとって予期せぬことである。さらに、本発明に係るギアボックス配置が、数百倍の速増用に適用することができることは、当業者にとって驚くべきことである。本発明に係るギアトレイン(ドライブトレイン、またはギアホイール配置としても知られる)は、これまでは時計や腕時計用に適用されてこなかった、というのは、このタイプのドライブトレインは減速器として一般に知られていたため、そして増速器配置として使用される既知の例では、増速比が1:30を下回っていたためである。本発明に係るギアボックス配置とギアトレインの適用は、以前を上回る増速能力とより安全な動作特性が少数の部品を使用してコンパクトなフォームファクターで実現され得ることで、時計や腕時計の場合に特に好ましい。
【0034】
2段のプラネタリーギアボックスの通常動作中、2段の歯の上で係合している点は歯の同じ側にあるが、そこから、逆駆動の場合に係合している点が歯の反対側にあるということにはならない。例えば、一定の接触ラインが、例えば同一の歯を有するギアボックス配置の2段ギアボックス配置に存在する場合、逆駆動の場合には、2本の接触ラインの1本のみが逆になり、即時的な回転動作の反対側にシフトされる。上の考察により、逆駆動の可能性は普通に検討することができない。公式1はその問題を解決するための、容易にテスト可能な公式を与える。
【0035】
公式1に係る関係は、加法、減法、および乗法の操作のみを含むため、公式の計算上の要求は低く、そのため、あらゆる2段ギアボックス配置の充足を容易に検証することができる。
【0036】
公式1のd、x、y、x’、およびy’の量は、好ましくはミリメートルで指定される。
【0037】
公式1を充足するギアボックス配置と比較して、摩擦による負の影響に対する感度が低い、より効率的でよりロバスト性の高い配置が、該配置が下の公式2で表わされる関係をも充足する場合に取得することができ、
【0038】
【数2】
式中、変数は公式1に含まれる変数と同一であり、好ましくは、さらにミリメートルで指定される。係合している全ての歯について常に公式2に係る関係を充足する2段増速器配置はまた、公式1に係る関係を自動的に充足する。公式1に加えて公式2を充足することはまた、結果的により効率的な動作に帰着する。
【0039】
増速は、ギアボックス配置の2つの別の方法で実装することができる:第1の場合、第1のピッチ面(100A)の歯と第2のピッチ面(100B)の歯は、それら自体のそれぞれの表面に沿って、互いに対して動いており、他方、第2の場合、第3のピッチ面(100a)の歯と第4のピッチ面(100b)の歯は、それら自体のそれぞれの表面に沿って、互いに対して動いている。両方の場合、歯の動きによって、第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)は、第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)に対して、共同で動かされる。ギアボックス配置によって実行された増速(加速)の係数は、以下の公式3によって取得され:
【0040】
【数3】
式中、
accは加速係数であり、そして、
||T0||と||Q||は、それぞれ、点(T0)と点(Q)の、ユークリッドノルム(Euclydean norm)を意味し、平面(104)の原点(T1)からの、点(T0)と点(Q)の距離に対応する。
【0041】
増速動作は、異なる表面または開放面ですらあり得る、様々な凸状ピッチ面と凹状ピッチ面との間で達成することができる。
図2Aと
図2Bは、湾曲した断面と直線的な断面とを有するピッチ面を含む平面に配置される、本発明に係る増速器配置のそれぞれの好ましい実施形態を説明する。
図3は、ギアラックとピニオンギアとから成る好ましいギアボックス配置を示し、
図4は、スパイラルベベルギアを有する、本発明に係る2段増速器ギアボックス配置の好ましい実施形態を示す。もちろん、
図2Aと
図2B、および
図3-4に示されるものに加えて、さらに好ましい構成を、例えば図に描写されるギアボックス配置の特定の部分を組み合わせることによって実現することもできる。
【0042】
公式1を適用することによって、またはよりロバスト性の高い操作のために公式2を適用することによって、ギアボックス配置が増速器配置として操作するのに適しているか否かを、あらゆる2段ギアボックス配置に対して判定することができる。公式1に係る関係が2段ギアボックス配置に対して常に充足されていない場合には、その特定のギアボックス配置は増速器配置として操作することができない。しかし、精査中のギアボックス配置に対して、公式1に係る関係は充足されるが、公式2に係る条件が充足されない場合には、問題のギアボックス配置は増速器として操作することはできるが、より効率的なギア構成/ギアプロファイルを有するギアボックス配置が実現できる。
【0043】
2段ギアボックス配置の段の1つが 明確に決定された歯構成を有する場合、公式1または公式2を適用することによって、そのような係合点をもう一方の段で決定することができ、その点に対して、公式1または公式2に係る関係が充足される。例えば、そのような2段ギアボックス配置では、両段は、予め(完全に異なるようにも)決定されている歯構成を含み、公式1または公式2に係る関係が充足されるそれらの係合点と歯接触領域とを決定することができ、そしてそれによって、係合点または歯接触領域に対応する相互係合歯を適応することによって操作することができるような、かつ、公式1または公式2が、係合点と歯接触領域の相互係合歯の全ての操作段で充足されるような、増速器ギアボックス配置を取得する。
【0044】
公式1または公式2を適用することによって、2段増速器配置の歯の各々の動作面の最大エリアを、増速器配置のあらゆる状態で決定することができる。増速器配置では、ピッチ面は円形であり、そして動作面はピッチ面に沿って同一の構成を有しており、適用可能な動作面の寸法はギアボックス配置の任意の状態から決定することができ、そして、適用可能な歯のタイプも決定することができる。
【0045】
図2Aは、平面図で、(スパー)ギアコンポーネントを含む本発明に係る2段増速器配置の好ましい実施形態のピッチ面を示す。図に係るギアボックス配置はまた、ベベルギアコンポーネントを適用することによって実装することもでき、その場合、
図2Aは、本質的にギアボックス配置のピッチ面の断面を示す。(
図1に関して議論される通り、)第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)は、湾曲された断面と直線的な断面とを含み、該湾曲された断面と直線的な断面とは、それぞれ、第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)を回転のために受けるように適合されている。図に係る好ましい実施形態では、第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)は、上面図で見られるような円形の形状を有している。ピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、(100b)は、例えば、公式1または公式2に係る関係を充足する相互係合歯を有する、任意のいずれかの構成を有する平面(スパー)ギアまたはベベルギアに対応することができる。
図1に関して開示される特徴と代替案は、ピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、および(100b)に対して適用可能である。
【0046】
図2Aに係るギアボックス配置は、時間を表示することができ、それによって、腕時計の運動としても使用することができる。図に係る構成では、第1と第2のピッチ面(100A)、(100B)、および対応する歯が、互いに対して静止状態である場合、あるいは第1の相対位置にある場合、そして、モーター、ばね、または他の駆動機構の影響下にある場合、第3のピッチ面(100a)はそれに対応する歯と共に、第4のピッチ面(100b)に対して回転させられ、それによって、第4のピッチ面(100b)に対応する歯は、第4のピッチ面(100b)に沿って動かなくなり、その後、ピッチ面(100a)と(100b)は、ピッチ面(100A)と(100B)に沿って共に循環的に回ることになるだろう。ピッチ面(100a)と(100b)が互いに同じタイミングで動く場合、つまり、例えば、ピッチ面(100a)と(100b)の単位時間(例えば1秒)における角変位が常に同一である場合、ピッチ面(100a)と(100b)は、同じ速度でピッチ面(100A)と(100B)の同じ部分に沿って回転し、それによって、完全回転の期間は一定となる。回転を任意の点で開始する場合、ピッチ面(100a)と(100b)は、完全回転の時間が経過するとその開始点に戻り、これによって、
図2Aに係るギアボックス配置が片手用の時計または腕時計の用途に適したものとなり、ここで、針は例えば1日の完全回転を、または別の実施形態では1日の半分(12時間)を完了する。
【0047】
図2Aに係るギアボックス配置の特性は、針の回転速度が、異なる曲率を有する断面に沿って異なる。円運動はより大きな湾曲部分に沿ってより速く、したがって、図に係るギアボックス配置を含む時計のダイヤルの時間マーキングは、より小さな曲率を有する部分に沿ってよりも、より大きな曲率に沿ってまたは直線的断面に沿って、より広く離間されている。
【0048】
腕時計の運動にギアボックス配置を適用するために、つまり、タイミング機能を実装するために、ギアボックス配置のコンポーネントの迅速な動きが必要である。適切に選択された歯数を有するギアを適用することによって、
図1または
図2Aに係る好ましいギアボックス配置において、300-400倍の加速すらも達成することができる。この増速動作のおかげで、ピッチ面(100a)と(100b)の遅い相対運動を、時計の運動におけるタイミングを提供するのに必要とされる、てん輪または他のタイマー機構の迅速な動きに対応するように、加速させることができる。
【0049】
図2Aに係る好ましいギアボックス配置において、第1のピッチ面(100A)に対応する歯が、チェーン上に、または類似の方法で配置される場合、つまり、歯が、ピッチ面(100A)に沿って動くことが可能である場合、そしてピッチ面(100a)と(100b)、およびそれらに対応する歯が、互いに対して静止状態である場合、そしてまたピッチ面(100A)と(100B)が、互いに対して静止状態であり、ここで、ピッチ面(100B)に対応する歯は、ピッチ面(100B)に沿って動かされない場合、ピッチ面(100A)に沿った歯の変位は、結果として、ピッチ面(100A)と(100B)それぞれの内部のピッチ面(100a)と(100b)の集合的な円形の回転をもたらす。歯がピッチ面(100A)に沿って同じタイミングで動く場合、ピッチ面(100a)と(100b)の円形の回転の動きは、時間計測に使用することができる。
【0050】
図2Bは、上面図で、本発明に係る2段増速器配置の別の好ましい実施形態のピッチ面を示す。もちろん、また、このギアボックス配置は、ベベルギア部材を使用することによって実装することができ、この場合、
図2Bはピッチ面の断面に相当する。
図2Bに係る好ましいギアボックス配置は、第4のピッチ面(100b)が第2のピッチ面(100B)の(内部に沿ってではなく、むしろ)外部に沿って回る点で、
図2Aに係るギアボックス配置と異なる。その他の場合、
図1と
図2Aに関して記述される特徴と代替案は、
図2Bに係るギアボックス配置にもあてはまり、したがって、このギアボックス配置は、腕時計の運動に適用されるのにも適している。
【0051】
図3は、本発明に係る2段増速器配置のピッチ面の、ギアラックと(スパー)ピニオンギアを適用する、好ましい実施形態を示す。
図3に係る好ましいギアボックス配置において、第1と第2のピッチ面(100A)と(100B)は、直線的ギアラックに相当し、ピニオンギアのピッチ面(100a)と(100b)は、ギアラックのピッチ面(100A)と(100B)に沿って回るように適合されている。
図3では、視野から遮られるギアラックとギアホイールのそれらの端部は、点線で示される。
図1に関して記載される特徴と代替案は、
図3に係る2段増速器ギアボックス配置にもあてまる。
【0052】
図4は、スパイラルベベルギアを使用する、本発明に係る2段増速器配置のピッチ面の好ましい具現化を示す。
図4はまた、平面(104)への投影を含む、
図1に含まれる参照を含む。
【0053】
図5は、スパー(平面)ギアを含む、本発明に係る2段増速器配置の好ましい実施形態の上面図を示す。スパーギアの場合には、第1の線分(102A)と第2の線分(102B)が、ギアの平面に対して垂直であり、したがって、平面(104)を、ギアの平面に一致するように選択することができ、このことは、投影を、
図1の参照をギアの平面上にも適用することによって示され得る。
図5では、第2のピッチ面(100B)を有する内歯ギアは、第1のピッチ面(100A)を有する内歯ギアの下に配置され、第4のピッチ面(100b)を有する外部ギアは、第3のピッチ面(100a)を有する外部ギアの下に配置されている。視界から遮られているギアの部分は、図では点線で示される。
図5のギアは、サイクロイドプロファイルのスパーギア
(直線的
な歯を有する)である。
【0054】
図5に係るギアボックス配置では、第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)の共通の
幾何学的中心点(
C)
の投影点(Q)は、第1と第2のピッチ面(100A)と(100B)の共通の中心点の周りを周回する。第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)に対応する歯が互いに対して動き、そして第1のピッチ面(100A)に対応する歯が第2のピッチ面(100B)の歯に対して動かない場合、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の回転速度(ωQ)は、以下の公式4を適用することによって決定することができる。
【0055】
【数4】
式中、
ωabは、ピッチ面(100a)と(100b)に対応する歯の相対回転の速度であり、
rAは第1のピッチ面(100A)の半径であり、
rBは第2のピッチ面(100B)の半径であり、
raは第3のピッチ面(100a)の半径であり、そして、
rbは第4のピッチ面(100b)の半径である。
【0056】
第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)に対応する歯が互いに静止状態で(固定されており)、そして、第1のピッチ面(100A)に対応する歯を、第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)の軸の共通の中心点の周りで回転させることができる場合、ギアボックス配置の増速(加速)の係数と同一である第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の回転速度(ωQ)は、公式5によって決定することができる。
【0057】
【数5】
式中、
ωAは、第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)の軸の共通の中心点の周りの第1のピッチ面(100A)の回転の速度であり、他の変数は公式4に含まれるものと同一である。
【0058】
第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)に対応する歯が互いに静止状態で(固定されており)、そして、第2のピッチ面(100B)に対応する歯を、第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)の軸の共通の中心点の周りで回転させることができる場合、ギアボックス配置の増速(加速)の係数と同一である第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の回転速度(ωQ)は、公式6によって決定することができる。
【0059】
【数6】
式中、
ωBは、第1のピッチ面(100A)と第2のピッチ面(100B)の軸の共通の中心点の周りの第1のピッチ面(100B)の回転の速度であり、他の変数は公式4と公式5に含まれるものと同一である。
【0060】
図5に係る好ましいギアボックス配置では、つまり、スパーギアの平面構成が適用される時は、歯の動作面の可能な寸法は、公式1と公式2によって取得することができる。
図5に係る好ましいギアボックス配置では、第1と第3のピッチ面(100A)と(100a)に対応する歯は、毎時間事例で、歯接触領域に沿って相互に係合することができ、該歯接触領域の
図1に係る歯接触点(P)は、平面(104)へのそれぞれの投影をそれぞれの点(K)で有し、ここで、点(K)は、第1のピッチ面(100A)と第3のピッチ面(100a)の接触線分(E)に沿って配置される。図に係る好ましいギアボックス配置の接触線分(E)の形状は、経時的に変化しない。
【0061】
第2と第4のピッチ面(100B)と(100b)に対応する歯は、常に、歯接触領域に沿って相互に係合することができ、該歯接触領域の
図1に係る歯接触点(P’)は、平面(104)へのそれぞれの投影をそれぞれの点(K’)で有し、ここで、点(K’)は、第2のピッチ面(100B)と第4のピッチ面(100b)の接触線分(E)に沿って配置される。図に係る好ましいギアボックス配置では、接触線分(E’)の形状は、ちょうど接触線分(E)と(E’)の相対位置のように、経時的に変化しない。
【0062】
接触線分(E)が既知である場合、単一の作動歯のプロファイルを明白に決定することができ、そして、既知の接触線分(E’)に対する単一の作動歯のプロファイルもまた明白に決定することができる。接触線(E)と(E’)とに関係する特徴は、適用されている歯の動作面がピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、および(100b)の各々に沿って同一である場合、そして、ピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、および(100b)が円形の形状を有している場合に、全ての同様のギアボックス配置に存在する。例えば、適用される歯の動作面が円弧であり、そして全てのギアホイールが楕円の形状を有している場合には、接触線分(E)と(E’)の形状は、経時的に変化するだろう。
【0063】
図6A-
図6Cは、
図5に係る好ましい2段増速器配置の主な内力の状態の例を示し、歯は、ピッチ面に対して異なるサイズを有する。
図6Aに係る例では、ピッチ円の半径と比較して、ギアボックス配置の歯のサイズは無視できる程度であり、
図6Bに係る例では、ピッチ面に対応する歯は平均的サイズを有しており、その一方で
図6Cに係る例では、大型サイズの歯(例えば完全なサイクロイド弧)が含まれている。
図6A-
図6Cの参照は、
図1で使用される参照と同一であり、一方でさらに、-適用されるスパーギアのために-、平面(104)も(スパー)ギアの平面に配置され、ここで、第1と第2の線分(102A)と(102B)の平面(104)への投影は、単一の点(それぞれ原点(T1)と点(T0))であり、そして、ここで、歯接触領域の平面(104)への投影はまた、点(K)と点(K’)などの、それぞれの単一の点である。
【0064】
図6A-
図6Cでは、第2のピッチ面(100B)に対応する歯は固定されており、同時に第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)は共にそれらの共通の中心点(Q)の周りを周回し、同時に共通軸の第1と第2のピッチ面(100A)と(100B)の内部を周回する。周回中、第3のピッチ面(100a)に対応する歯は、常に、第1のピッチ面(100A)の歯と相互に係合しており、ここで、係合歯の歯接触点(P)の投影は、図の点(K)と一致している。同様に、第4のピッチ面(100b)の歯は、常に、第2のピッチ面(100B)の歯と相互に係合しており、ここで、係合歯の歯接触点(P’)の投影は、図の点(K’)と一致している。歯の持続的係合は、ベアリング、または他の既知の技術的ソリューションまたは拘束によって確実に行われる。第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の共通の中心点(Q)は、例えばベアリングまたは他の拘束の適用によって、
図6A-
図6Cにマークされている方向(R)にのみ動くことができる。
【0065】
第1のピッチ面(100A)は、ばねまたは他の駆動機構によって、反時計回り(正)の方向に回転させられ、その結果、点(K)の歯は方向(F)に変位する。第3のピッチ面(100a)と第4のピッチ面(100b)は、点(K’)の周りを回転「しようとする」が、第2のピッチ面(100B)に対応する歯が固定されており、したがって、それらは静止位置に留まる。単純化のために、点(K)と点(K’)に位置する、歯のスリップによる影響と、歯のプロファイルの共通の接線による影響とは無視される。
【0066】
図6Aに係る例では、小型サイズの歯により、力状態は第1級レバー(first class lever)に類似しており、ここで、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)は、方向(F)に作用する力によって、点(K’)の周りを回転させられる。図に係るギアボックス配置は安全に操作することができるが、小型サイズの歯はより大きなものよりも製造するのが困難であり、その一方で、より小さな歯はより大きな歯と比較して脆弱である。さらに、小型サイズの歯では、製造誤差、公差、不純物、または表層欠陥が、加えられる力に大きく影響し得る。
【0067】
図6Bでは、点(T0)から最も遠くに位置する点(K)と点(K’)のみが示されるが、例えば
図6Aに示される他の点(K)と点(K’)も存在するかもしれない。しかし、最も大きな回転効果が、点(T0)から最も遠くに位置する点(K)と点(K’)に作用する力によって加えられる。通常サイズの歯の場合には、また、公式1と公式2から取得された最大サイズを有する歯を含むギアボックス配置を、安全に、そして安定して操作することができるが、より大きな歯はまた、小型サイズのギアに比べて製造するのに簡易的であり、そして時折発生する製造誤差と公差の影響も小さくなる。
【0068】
また、
図6Cでは、点(T0)から最も遠くに位置する点(K)と点(K’)のみが示される。より大きなサイズの歯によって、これらの点は、
図6Aと
図6Bに示される点よりも、点(T0)からさらに遠くに位置する。もちろん、
図6Aと
図6Bの点(K)と点(K’)に対応する位置で、さらなる点(K)と点(K’)が存在してもよい。完全なサイクロイド弧のプロファイルを有する歯などの大型サイズの歯では、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)が点(K’)の回りを方向(F)に回転する場合、そのような回転は本質的に、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の動きに対向するが、ある場合には、中心点(Q)の方向(R)への変位を妨げることができることが確認され得る。そのような場合とは、例えば、汚れがホイール間に進入する時、または製造誤差によって最も大きな力が最も遠い点(K)と点(K’)で生じる時であり得る。全ての影響を考慮しても、第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の中心点(Q)の方向(R)への変位が、大型サイズの歯の場合にも生じ得るが、ギアボックス配置は、小型サイズの歯が適用される場合に、より効率的にかつより確実に動作する。
【0069】
図7は、ギアボックス配置がサイクロイドプロファイルを有する歯を含む、
図5に係る、好ましいギアボックス配置のための、本発明に係る2段増速器配置の段の各々で使用される歯の間の関係の適用を説明する。
図7で使用される参照は
図5に使用されるものと同じであり、点(K)は、点(T0)から最も遠くに位置する歯接触点(P)の投影を示し、ここで、符号’+’は、さらなる歯接触点(P)の投影が、接触線分(E)に沿って潜在的に生じることを示す。サイクロイドプロファイルを有する歯の場合には、ピッチ面(100a)と(100A)に対応する接触線分(E)が、ピッチ面(100a)の半径より大きく、ピッチ面(100A)の半径より小さい半径を有する円形の線の一部を形成する。一般的なサイクロイドプロファイルを有する歯については、接触線分(E)に対応する円の半径はおよそ、
【0070】
【数7】
であり、式中、rAはピッチ面(100A)の半径であり、そして、raはピッチ面(100a)の半径である。
【0071】
サイクロイドプロファイルを有する歯の場合には、ピッチ面(100B)と(100b)に対応する接触線分(E’)が、ピッチ面(100b)の半径より大きく、ピッチ面(100B)の半径より小さい半径を有する円形の線の一部を形成する。一般的なサイクロイドプロファイルを有する歯については、接触線分(E’)に対応する円の半径はおよそ、
【0072】
【数8】
であり、式中、rBはピッチ面(100B)の半径であり、そして、rbはピッチ面(100b)の半径である。
【0073】
図7では、接触線分(E)が示され、これは、接触線分(E’)が既知である場合、そしてピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、および(100b)に対応する歯が全てサイクロイドプロファイルを有する場合に、公式1と公式2に係る関係が充足されることに関する。シングル斜線領域I.は、公式1に係る関係が充足されているエリアを示し、一方、ダブル斜線領域II.は、-その全体が領域I内に位置し-、公式2に係る関係もまた充足されているエリアを示す。
【0074】
増速に使用することができないギアボックス配置、つまり、公式1に係る関係が充足されていないギアボックス配置は、減速器ギアボックスとしてうまく操作することができるかもしないが、逆駆動における増速には、完全に不適切であるか、あるいは適用できても有効性は非常に低く、その理由は、例えば、逆駆動では、歯の係合が回転を妨げるからである。-増速には適用可能でない-、これらのギアボックス配置では、接触線分(E)の少なくとも一部は、公式1に係る領域I.の外部に来る。
【0075】
ギアボックス配置の接触線分(E)の全体が、公式1に係る領域I.の内側に来る場合、そしてせいぜいその小さな部分が領域IIの内側に来る程度である場合、その特定のギアボックス配置(例えば逆駆動の減速器ギアボックス配置)は、増速に適している;しかし、より効率的な動作を達成するためには、例えばギアの歯の形状または寸法を変更する必要がある。
【0076】
ギアボックス配置の接触線分(E)の全体が、公式2に係る領域IIの内側に来る場合、その特定のギアボックス配置は増速に適しており、ここで、増速器として操作されているギアボックス配置の操作は、公式1に係る関係のみが充足されるギアボックス配置と比較して、効率的であり、そして摩擦や製造誤差の負の影響に対する感度が低い。
【0077】
スパーギアを含む、
図5に係る例示的なギアボックス配置のピッチ面(100A)、(100B)、(100a)、(100b)の寸法は、以下の通りである:
第1のピッチ面(100A)の直径は52mmである、
第2のピッチ面(100B)の直径は46mmである、
第3のピッチ面(100a)の直径は28mmである、そして、
第4のピッチ面(100b)の直径は22mmである。
【0078】
スパーギアを適用することによって、第1のピッチ面(100A)と第3のピッチ面(100a)の第1の線分(102A)の投影、および第2のピッチ面(100B)と第4のピッチ面(100b)の第2の線分(102B)の投影は、それぞれ、線分(102A)に対して垂直である平面(104)上の単一の点であり、ここで、平面(104)はまた、ギアホイールの平面と一致するように描くこともできる。第1の線分(102A)の投影は点(T0)であり、そして、第2の線分(102B)の投影は原点(T1)であり、点(T0)と原点(T1)は、互いからの距離(d)に位置し、距離(d)は、第1と第2のピッチ面(100A)と(100B)の半径の差、または第3と第4のピッチ面(100a)と(100b)の半径の差、と等しく、つまり、上の既定値を使用すると、d=3mmである。
【0079】
以下では、2つの実施例が、上の幾何学的パラメータと異なる歯プロファイルを有するギアボックス配置について示される。
【0080】
実施例1(サイクロイド歯プロファイル)
【0081】
第2と第4のピッチ面(100B)と(100b)に対応する歯が、サイクロイドプロファイルと1mmのモジュールとを有する場合、公式1に係る関係を適用することによって、1mmのモジュールのサイクロイドプロファイルの歯は、第1と第3のピッチ面(100A)と(100a)に対応することも可能になる。公式2に係る関係を適用することによって、サイクロイドプロファイルと最大0.5mmのモジュールとを有する歯は、第1と第3のピッチ面(100A)と(100a)に対応することが可能になる。第2と第4のピッチ面(100B)と(100b)に対応するサイクロイドプロファイルの歯のモジュールを小さくすることによって、公式1に係る関係とさらに公式2に係る関係とを適用することによって、第1と第3のピッチ面(100A)と(100a)に対応する歯のモジュールを大きくすることができる。
【0082】
実施例2(インボリュート歯プロファイル)
【0083】
第2と第4のピッチ面(100B)と(100b)に対応する歯が1mmのモジュールと、インボリュート歯プロファイル、つまりプロファイルシフトまたは他の変更を伴わない歯とを有する場合、公式2に係る関係を適用すると、接触線分(E)を含み得るエリアが存在せず、したがって、インボリュートプロファイルの歯を含むギアボックスの配置で、増速器として効率的に操作でき、摩擦の影響に対する感度が低いものは存在しないことが、示される。このことは、公式1に係る関係を充足するがそれほど効率的でないギアボックス配置が存在する可能性を排除するものではない。インボリュート歯の場合には、様々な点(K’)が原点(T1)の両側に位置することができるため、公式2を適用して取得された領域IIは交差エリアを有しておらず、一方で、公式1を適用して決定された領域Iの交差エリアは、本質的に、点(T0)の周りの点のようなものであり、したがって、点(K)の位置は製造誤差に対して非常に感度が高くなるだろう。したがって、公式1に係る関係に適合する、それほど効率的でないギアボックス配置は存在し得るが、しかし、公式2に係る関係を充足する、基本的インボリュート歯を使用するソリューションは、存在しない。
【0084】
図8は、
図5に係る好ましいギアボックス配置のための、本発明に係る2段増速器配置の段の各々で使用される歯の間の関係の適用を説明し、ここで、ギアボックス配置は、接触線分(E)に沿って(つまりピッチ面(100B)と(100b)に沿って)、シフトされたプロファイルのインボリュート歯を有し、該シフトされたプロファイルのインボリュート歯は、公式2に係る関係を充足することができる。より安全な操作を提供し、かつ公式2に係る関係を充足する構成を提供するためには、第2のピッチ面(100B)の外側にプロファイルのシフトを適用することによって、接触線分(E’)をシフトさせなければならない。
図8は、ちょうど
図7のように、シフトされたプロファイルを有するギアボックス配置に対して、公式1と公式2に係る関係がどのように充足されたているを提示し、シングル斜線の領域Iは公式1に係る関係が充足されているエリアであり、そして、ダブル斜線の領域IIは公式2に係る関係が充足されているエリアである。領域IIは、その全体が領域I内に位置する。
【0085】
実施例1と実施例2と同一の寸法を有するギアボックス配置では、基本的インボリュート歯のプロファイルを有する接触線分(E’)が、プロファイルのシフトによって第2のピッチ面(100B)の外側に来る場合、-第2と第4のピッチ面(100B)と(100b)に対応する歯のモジュールとは無関係に-第1と第3のピッチ面(100A)と(100a)に対応する基本的インボリュート歯の最大モジュールは1mmであり得、このモジュール値は、このプロファイルに対してプロファイルシフトを適用することによって、より大きくすることができる。したがって、インボリュート歯プロファイルのギアボックス配置を適用することによって、公式2に係る公式を充足するように構成された増速器配置も可能である。
【0086】
本発明に係るギアトレインの相互に係合されたコンポーネントは、公式1に係る関係を充足し、そして好ましくは公式2をも充足する。本発明に係るギアトレインは、例えば腕時計における、時計仕掛けのために適用される。
【0087】
図9Aは、本発明に係るドライブトレインの好ましい実施形態の上面図を示す。図では、ギアトレインによって示される時間は12:00時である。本発明に係るギアトレインは、ベースリング(10)と、ベースリング(10)内部の回転運動に対して適合された時間指示手段(12)と、時間指示手段(12)の内部の回転運動に対して適合された分指示手段(14)と、を含む。時間指示手段(12)と分指示手段(14)は、時計または腕時計によって表示される時間の指示を提供する。
【0088】
ベースリング(10)は少なくとも1つの内歯ギアを含み、時間指示手段(12)と分指示手段(14)は、各々、少なくとも1つのそれぞれのギアをさらに含み;分指示手段(14)のギアは、好ましくは時間指示手段(12)のギアの内側で周回し、そして、時間指示手段(12)のギアはベースリング(10)のギアの内側で周回する。
【0089】
ベースリング(10)のギアは、それらの中心点と交差する共通の第1の軸(11)を有する。時間指示手段(12)は、内部時間ホイール(28)
(図11を参照)とデュアルギア化トランスミッションギア(22)および/または(34)
(図11を参照)とを含み、該内部時間ホイール(28)とデュアルギア化トランスミッションギア(22)および/または(34)は、時間指示手段(12)の中心点と交差する共通の第2の軸(13)を有する。分指示手段(14)は、外部分ホイール(26)
(図11を参照)と、そして追加ギアとして、分指示手段(14)の中心点と交差する共通の第3の軸(15)を有する駆動ギア(20)および/または被駆動ギア(32)
(図11を参照)と、を含む。
【0090】
ベースリング(10)が複数のギアを含む場合、ベースリング(10)のギアは、好ましくは時間指示手段(12)のギアに共に連結され、より好ましくは時間ホイール(28)の外側端部によって共に連結される。時間指示手段(12)のギアの係合は、好ましくは分ホイール(26)の支持部(30)の外側端部によって確実に行われ、あるいは、適切に設計された歯の場合には、時間指示手段(12)のギアは放射状の衝突部によって共に保持される。好ましい実施形態では、分指示手段(14)のギアは、共通の第3の軸(15)に配置された連結部材によって共に連結され、別の実施形態では、例えば、好ましくは同じタイミングで外部で駆動されるギアトレインで、分ホイール(26)、駆動ギア(20)、および被駆動ギア(32)が、単一の一体化ピースとして実装されるか、あるいは、さらに好ましい実施形態では、分指示手段(14)のギアは、(歯が適切に設計されていると仮定した場合の)放射状の衝突部によって共に保持される。
【0091】
図9Aに係るギアトレインは、公式1を充足し、式中、
-第1のピッチ面(100A)は、トランスミッションギア(22)および/または(34)の内側のピッチ面であり、
-第2のピッチ面(100B)は、時間ホイール(28)のピッチ面であり、
-第3のピッチ面(100a)は、追加ギアのピッチ面、すなわち駆動ギア(20)および/または被駆動ギア(32)のピッチ面であり、
-第4のピッチ面(100b)は、分ホイール(26)のピッチ面である。
【0092】
好ましくは、
図9Aに係るギアトレインはまた、公式2に係る関係を充足し、それによって、ギアトレインは、摩擦と製造誤差に対して感度が低い、効率的な動作が可能になる。
【0093】
ベースリング(10)のギア、時間指示手段(12)、および/または分指示手段(14)は、好ましくは、例えば、いわゆる修正サイクロイドクロックギア歯プロファイル(corrected cycloidal clock gear tooth profile)、いわゆる直角ギアプロファイル(normal tooth profile)、「古典的」サイクロイド歯プロファイル、などのサイクロイドベースの歯プロファイル、を有し、あるいは、他の偽サイクロイド歯プロファイルも適用することができる。サイクロイドギアまたは偽サイクロイドギアは、半径方向の力を最小化し、そして、それらの即時的な効率性は他の既知のギアタイプの効率性と比較して、より小さな程度にまで変動する。
【0094】
図9Bは、別の時間事例、つまり10:10の、
図9Aに係るドライブトレインを示す。時間指示手段(12)と分指示手段(14)は、ベースリング(10)に対して回転するように適合され、時間指示手段(12)は、第1の接点(16)でベースリング(10)に触れ、読み取り時の時間事例に対応する時間の値を示し、一方で、分指示手段(14)は、第2の接点(17)で時間指示手段(12)に触れ、そして、それによって、読み取り時の時間事例に対応する分の値を定義する。
図9Bでは、従来の時計の場合には、短針(18)が時間指示手段(12)の軸(13)から延在して第1の接点(16)を指し、一方で、長針(19)が時間指示手段(12)の軸(13)から延在して第2の接点(17)を指す。示された時間を読み取ることは、仮想的短針(18)が、ベースリング(10)の軸(11)と時間指示手段(12)の軸(13)とを繋ぐ直線と一致し、そして、仮想的長針(19)が、時間指示手段(12)の軸(13)と分指示手段(14)の軸(15)とを繋ぐ直線と一致することによって、より容易になる。この構成によって、本発明の即時の読み取りが可能になり、したがって、特別な外観が、複雑な学
習または読み込み工程を包含することはない。
【0095】
図10は、さらなる時間事例での、
図9Aと
図9Bに係るギアトレインの好ましい実施形態を示す。適切に選択されたギア比のおかげで、示される時間は、
図9Bに示される短針(18)と長針(19)をマーキングすることすらなく、瞬間的に読み取ることができる。
【0096】
図11は、本発明に係るギアトレインのさらに好ましい実施形態の等尺分解図を示す。ギアトレインは、追加ギアとして、駆動ギア(20)と被駆動ギア(32)とを含み、そしてトランスミッションギアとして、駆動側トランスミッションギア(22)と被駆動側トランスミッションギア(34)を含み、そしてまた、調節ギア(24)、分ホイール(26)、時間ホイール(28)、分ホイール(26)の支持部(30)、およびベースギア(36)を含む。
【0097】
ベースリング(10)は、ベースリング(10)の中心点と交差する共通の第1の軸(11)を有する、調節ギア(24)とベースギア(36)とを含む。第1の軸(11)は、好ましくはまた、時間ホイール(28)の外部リングの中心点と交差し、したがって、調節ギア(24)とベースリング(10)のベースギア(36)との連結は、時間ホイール(28)の外側端部によって提供される。時間指示手段(12)のギア接続された部分の中心点と交差する共通の第2の軸(13)と時間ホイール(28)とを含む駆動側トランスミッションギア(22)、および被駆動側トランスミッションギア(34)は、時間指示手段(12)に一体化される。分指示手段(14)のギアと時間指示手段(12)のギアとの係合は、
図9Aに関して示されるように、つまり、かみあった状態の歯に生じる放射状の衝突部、またはギアの構成、例えば分ホイール(26)の支持部(30)の外側端部、によって、提供される。分指示手段(14)の中心点と交差する共通の第3の軸(15)、分ホイール(26)、分ホイール(26)の支持部(30)を含む駆動ギア(20)、および被駆動ギア(32)は、分指示手段(14)に一体化される。
【0098】
公式1に係る関係は、
図11に係るギアトレインに対して2つの場合で充足される。
第1の場合、
-第1のピッチ面(100A)は、駆動側トランスミッションギア(22)の内面のピッチ面であり、
-第2のピッチ面(100B)は、時間ホイール(28)のピッチ面であり、
-第3のピッチ面(100a)は、駆動ギア(20)のピッチ面であり、
-第4のピッチ面(100b)は、分ホイール(26)のピッチ面であり、
一方で、第2の場合、
-第1のピッチ面(100A)は、被駆動側トランスミッションギア(34)の内側のピッチ面であり、
-第2のピッチ面(100B)は、時間ホイール(28)のピッチ面であり、
-第3のピッチ面(100a)は、被駆動ギア(32)のピッチ面であり、
-第4のピッチ面(100b)は、分ホイール(26)のピッチ面である。
【0099】
駆動側トランスミッションギア(22)は、内歯ギア装置によって駆動ギア(20)に係合され、駆動側トランスミッションギア(22)と駆動ギア(20)との接線の線分の垂直的な投影は、点(38)であり、駆動側トランスミッションギア(22)は、外歯ギア装置によって調節ギア(24)に係合され、その接線の線分の垂直的な投影は、点(40)である。被駆動側トランスミッションギア(34)は、内歯ギア装置によって被駆動ギア(32)に係合され、その接線の線分の垂直的な投影は、点(44)であり、当該トランスミッションギア(34)は、外歯ギア装置によってベースギア(36)に係合され、その接線の線分の垂直的な投影は、点(46)である。分ホイール(26)と時間ホイール(28)もまた、それらのギアの歯が係合するように配置され、分ホイール(26)と時間ホイール(28)との接線の線分の垂直的な投影は、点(42)である。継続的な歯の係合は、かみ合っているギアの歯によって維持される。
【0100】
上に記載される2つの場合には、ギアトレインについて、好ましくは、公式2に係る関係も充足される。
【0101】
図11に係る好ましい実施形態では、分ホイール(26)と時間ホイール(28)は、上に記載される場合の両方で、公式1または公式2に係る関係を充足しなければならない。
【0102】
図11に係るギアトレインの好ましい実施形態では、駆動側と被駆動側とは区別される。駆動側は、駆動ギア(20)、駆動側トランスミッションギア(22)、調節ギア(24)、分ホイール(26)、および時間ホイール(28)を含み、一方で、被駆動側は、分ホイール(26)の支持部(30)、被駆動ギア(32)、被駆動側トランスミッションギア(34)、およびベースギア(36)を含む、
【0103】
一般的に、駆動側トランスミッションギア(22)は、時間ホイール(28)のギア接続された部分に対する、負の方向(時計回りの方向)への回転から、解除可能な方法で遮断されており、当該回転は、正の方向(反時計回りの方向)になることが可能である。調節ギア(24)は、可逆的なまたは切り替え可能な方法で、ベースギア(36)に対して回転することができる。時間ホイール(28)は、調節ギア(24)が駆動側トランスミッションギア(22)と持続的係合状態になるように、調節ギア(24)の第1の軸(11)の周りで回転するように適合される。時間ホイール(28)は、それらの共通の第1の軸(11)の周りをベースギア(36)内で回転するように適合され、それによって、ベースギア(36)は、被駆動側トランスミッションギア(34)と持続的係合状態になる。モーター、ウェイト、ばね、または他の原動機手段の影響下では、駆動ギア(20)と分ホイール(26)は、それらの共通軸(15)の周りを負の方向に、互い対して回転する。駆動ギア(20)は、駆動側トランスミッションギア(22)と持続的係合状態にあり、分ホイール(26)は、時間ホイール(28)のギア接続された内側部分と持続的係合状態にある。分ホイール(26)は、共通軸(15)に、被駆動ギア(32)と分ホイール(26)の支持部(30)と共に接続されている。分ホイール(26)と被駆動ギア(32)は、回転中、互いに対して固定されており、分ホイール(26)の支持部(30)に対する当該回転は、タイマー機構、好ましくは脱進機構によって、同じタイミングで遮断される。分ホイール(26)と被駆動ギア(32)は、好ましくは力解除リンクによって、タイマー機構に固定されており、当該力解除リンクは、大きな力がかかると解除され、タイマー機構に対する分ホイール(26)と被駆動ギア(32)の回転が可能になる。そのような大きな力は、一般に、時間が調節されている時にだけ、時計内に生じ得る。分ホイール(26)の支持部(30)と、時間ホイール(28)のギア接続された部分は、共通軸(13)上に配置されており、それによって、分ホイール(26)は時間ホイール(28)のギア接続された部分と持続的係合状態にあり、そして、被駆動ギア(32)は被駆動側トランスミッションギア(34)と持続的係合状態になる。
【0104】
運動動作中、駆動側トランスミッションギア(22)は、好ましくは直接的または間接的に解除可能な部材によって、時間ホイール(28)のギア接続された部分に対する負の方向への回転から、遮断される。駆動ギア(20)は、好ましくはアクチュエータ、ばね、モーター、または他の原動機手段の影響下で、分ホイール(26)に対して負の方向に回転する。駆動ギア(20)と分ホイール(26)の相対回転により、駆動ギア(20)と分ホイール(26)は、駆動側トランスミッションギア(22)の内側で、および時間ホイール(28)の内側で、回る。増速器に特徴的な方法では、分ホイール(26)のピッチ面は、それが時間ホイール(28)のピッチ面に沿って回る時に、トランスミッションギア(20)のピッチ面が駆動側トランスミッションギア(22)の内歯ギア装置のピッチ面に沿って回る時より、短い距離をカバーし、それによって、分ホイール(26)と駆動ギア(20)の変位が引き起こされる。それらの共通軸(15)により、この変位によって、分指示手段(14)のコンポーネントは、時間ホイール(28)のギア接続された部分の軸(13)のまわりを回転する。分ホイール(26)の支持部(30)に対する、あるいは駆動ギア(20)に対する、あるいは別のコンポーネントに対する、(回転動作によって引き起こされた)分ホイールの回転は、タイマー機構、好ましくは脱進機構によって、タイミング合わせが行われる。分ホイール(26)の回転は被駆動ギア(32)の回転にロックされるが、それらのピッチ面は異なり、したがって、時間ホイール(28)内側の分ホイール(26)の回転によって、-被駆動ギア(32)の回転を介して-、被駆動側トランスミッションギア(34)が、時間ホイール(28)のギア接続された部分に対して回転し、それによって、被駆動側トランスミッションギア(34)はベースギア(36)の内側で回る。被駆動側トランスミッションギア(34)は、(それとの共通軸(13)上に配置された)時間ホイール(28)、さらに、駆動ギア(20)、駆動側トランスミッションギア(22)、分ホイール(26)、分ホイール(26)の支持部(30)、被駆動ギア(32)を回転させ、そして被駆動側トランスミッションギア(34)は、ベースギア(36)の軸(11)の周りでそれらと接触している。ギアトレインの調節ギア(24)もわずかに回転するが、この変位は重要ではなく、他方では、それを、可逆的な一方向の回転機構を含むことによって、より好ましくはギアトレインの可逆的なラチェット機構を含むことによって、除去することができる。可逆的な一方向の回転機構は、好ましくは、第1の軸(11)、第2の軸(13)、および/または第3の軸(15)に連結されて配置される。
【0105】
時計の運動が巻き上げられると、調節ギア(24)は、外部の影響、すなわちスイングウェイト(swinging weight)または他の影響下で、直接的に、または普通のギア駆動を介して、正の方向に回転させられ、調整ギア(24)の回転によって、次に、駆動側トランスミッションギア(22)が時間ホイール(28)に対して、正の方向に回転する。運動の通常動作中の動きにより、その後、分ホイール(26)と被駆動ギア(32)は、これらのコンポーネントの通常の動きによって、時間ホイール(28)のギア接続された部分の軸(13)の周りを回「ろうとし」、当該動きは、タイマー機構、好ましくは、分ホイール(26)の支持部(30)に、分ホイール(26)に、または別のギアに、連結された脱進機構によって、同じタイミングで、遮断される。調節ギア(24)の小さな変位によって、駆動ギア(20)は、分ホイール(26)に対して正の方向に回転する。分ホイール(26)に対する駆動ギア(20)の正の方向への回転変位が、通常動作中の通常の変位に対するその負の方向への回転変位よりも大きい場合、駆動ギア(20)と分ホイール(26)との間に配置されたばねまたは他の原動機手段は、通常動作中の動きに対して逆に駆動され、なぜなら、タイミングによって、通常動作中の動きよりも速い動きを作り出すことができないからである。ばねまたは原動機手段の逆方向駆動に対する抵抗は、タイマー機構に連結された力解除ロックを解除しないように、選択されなければならない。
【0106】
時間をセットする時、普通のスイッチ、トグルスイッチ、または他の調節機構は、調節ギア(24)の位置をベースギア(36)に対してロックし、そしてまた、それによって、駆動側トランスミッションギア(22)は、時間ホイール(28)のギア接続された部分に対して何れの方向にも回転することができるようになる。また、直接的または間接的な外部影響下で時間がセットされている時、時間ホイール(28)は、ベースギア(36)と調節ギア(24)に対して回転させられ、それによって、トランスミッションギア(22)と(34)は、ベースギア(36)と調節ギア(24)の内側で回る。トランスミッションギア(22)と(34)の内部の歯は、通常動作中と同じ方法で、時間ホイール(28)の歯に対して回転し、それによって、分指示手段(14)に一体化されたギアは、時間ホイール(28)のギア接続された部分の軸(13)の周りを回転する。調節中(つまり時間のセット中)、駆動側ギア間の相互作用は、被駆動側ギア間の相互作用と同一であるため、ここで、駆動ギア(20)と分ホイール(26)は互いに対して動かない。時間をセットする時、脱進機構がさらされる内部の力は、通常動作中または巻上げ中よりもはるかに大きくなる可能性があり、それによって、タイマー機構に連結された力解除ロックを解除する可能性がある。巻き上げと運動の通常動作の間は、力解除ロックは解除されず、ロックは、解除に必要なものより小さな力が存在する時には、その解除状態からそのロック状態に戻る。力解除ロックは、好ましくは、例えば、最も一般的な腕時計の運動における時間調節のために適用される摩擦シャフトによって、実装することができる。
【0107】
本明細書中、上に提示されたスパーギアに加えて、
図11に係るギアトレインもまた、他の自明の技術的ソリューション、例えばベベルギア、ハイポイドギア、または例えばチェーン伝達部材、並びに、
図4に類似の構成などの、非円形のピッチ面を適用することによって、実現することができる。チェーン伝達部材を適用する場合には、ギアトレインに含まれる支持部は、チェーンガイド部材を適用することによって実現することができる。
【0108】
ギアトレインは、好ましくは、さらなる針(ポインタ)、例えば秒針、あるいは太陽または月の状態を示すポインタを含むことができ、それらは、ギアトレイン中に異なる増速比の実装を必要とする。
【0109】
図12Aは、本発明に係るギアトレインの別の好ましい実施形態を示し、当該実施形態は、
図11に係る好ましいギアトレインの駆動側コンポーネント、つまり、駆動ギア(20)、駆動側トランスミッションギア(22)、分ホイール(26)、および時間ホイール(28)、を含む。
図11に関して記載される実施形態と同一の方法で、この実施形態も、時間をそれ自体で表示することができる。示される時間は、分ホイール(26)と時間ホイール(28)の位置を読む取ることによって読むことができる。
図11に示される、対応するコンポーネントに関して記載される特徴と代替案も、
図12Aに係る実施形態にあてはまる。
【0110】
図12Bは、本発明に係るギアトレインのさらなる好ましい実施形態を示し、当該実施形態は、
図11に係る好ましい実施形態の被駆動側コンポーネント、つまり、分ホイール(26)の支持部(30)、被駆動ギア(32)、被駆動側トランスミッションギア(34)、並びに、分ホイール(26)と時間ホイール(28)、を含む。
図12Aに関して記載される実施形態では、このギアトレインも、時間をそれ自体で表示することができ;表示された時間は、分ホイール(26)と時間ホイール(28)の位置を読む取ることによって読むことができる。
図11に示される、対応するコンポーネントに関して記載される特徴と代替案も、
図12Bに係る実施形態にあてはまる。
【0111】
本発明の産業用の利用可能性の方法は、上に記載された技術的ソリューションの特性に従う。上から確認できるように、本発明は、その目的を、先行技術と比較して非常に有用な方法で達成する。本発明は、もちろん上に詳細に記載される好ましい実施形態に限定されず、例えば、本明細書中、上に記載される実施形態を組組み合わせ、そして可能性としてそれらに追加的な特徴を提供することによって、特許請求の範囲によって決定される保護の範囲内で、さらなる変形、変更、および発展が可能である。
【0112】
凡例
10 ベースリング
11 第1の軸
12 時間指示手段
13 第2の軸
14 分指示手段
15 第3の軸
16 第1の接点
17 第2の接点
18 短針
19 長針
20 駆動ギア
22 駆動側トランスミッションギア
24 調節ギア
26 分ホイール
28 時間ホイール
30 支持部
32 被駆動ギア
34 被駆動側トランスミッションギア
36 ベースギア
38 点
40 点
42 点
44 点
46 点
100A 第1のピッチ面
100B 第2のピッチ面
100a 第3のピッチ面
100b 第4のピッチ面
102A 第1の線分
102B 第2の線分
104 平面
T0 点
T1 原点
D 点
C 中心点
Q 中心点
K、K’ 投影点
P、P’ 歯接触点
E、E’ 接触線分
F 方向
R 方向
I. エリア(公式1に係る)
II. エリア(公式2に係る)