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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】空間分析のための方法および関連キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20241029BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20241029BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6876 Z ZNA
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021569054
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020033658
(87)【国際公開番号】W WO2020236846
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】62/850,426
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/850,410
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518386818
【氏名又は名称】エンコディア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チー, マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】ガンダーソン, ケビン エル.
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/089836(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/192633(WO,A1)
【文献】米国特許第09879313(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0148239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子を分析する方法であって、前記高分子がポリペプチド、核酸、炭水化物または脂質を含み、前記方法が、
(a)空間サンプル内の空間位置で核酸記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、
(b1)前記空間サンプル内の空間位置で複数の空間プローブを提供することであって、各空間プローブが核酸空間タグを含む、提供することと、
(b蛍光イメージング、コンビナトリアルハイブリダイゼーションベースのアプローチ、および/またはその場のシーケンシングを使用して、前記空間サンプル内の核酸空間タグをその場で評価し、前記複数の空間プローブの各々について前記空間サンプル内の前記核酸空間タグの空間位置を得ることと、
(b3)前記複数の空間プローブの空間プローブ内の前記核酸空間タグからの情報を前記核酸記録タグに転送することによって、前記核酸記録タグを伸長することであって、前記核酸記録タグが前記空間プローブに近接し、それによって、前記核酸記録タグ内の前記空間プローブの前記空間位置の情報を記録することと、
(c1)核酸プローブタグを含む分子プローブを、前記空間サンプル内の前記高分子または前記高分子に近接する部分に結合することであって、前記分子プローブが、前記高分子に特異的かつ/または選択的に結合することができる標的化部分を含む、結合することと、
(c2)前記分子プローブ内の前記核酸プローブタグからの情報を前記核酸記録タグに転送することによって、前記核酸記録タグを伸長することであって、前記核酸プローブタグおよび前記核酸空間タグからの情報を前記核酸記録タグに転送すると、伸長核酸記録タグが生成される、伸長することと、
(d)前記伸長核酸記録タグの配列を決定することであって、少なくとも前核酸プローブタグの配列および前記核酸空間タグの配列が決定される、決定することと、
(e)ステップ(d)で決定された前記核酸空間タグおよび核酸プローブタグの前記配列からの情報を、ステップ(b)で評価された前記核酸空間タグの前記空間位置の情報関連付けることと、を含、方法。
【請求項2】
ステップ(b2)がステップ(b3)の後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b1)において前記複数の空間プローブが前記空間サンプル内にランダムに分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分子プローブが、検出可能な標識をさらに含み、前記方法が、ステップ(b)で前記空間サンプル内の前記高分子の前記空間位置をその場で評価するために、前記検出可能な標識を評価または観察することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c1)およびステップ(c2)を順次2回以上繰り返すことをさらに含む、請求項1または記載の方法。
【請求項6】
前記空間プローブが、ビーズまたは微粒子を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸空間タグが、前記核酸記録タグまたはその一部に相補的な配列を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b2)を実行することが、前記空間サンプルまたはその一部の画像を取得することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸空間タグが、デコーダーを使用してステップ(b2)で評価され、前記デコーダーが、検出可能な標識および前記核酸空間タグまたはその一部に相補的な配列を含み、前記検出可能な標識が、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、または酵素基質標識を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸空間タグからの情報を前記核酸記録タグに転送することによって前記核酸記録タグを伸長することが、前記空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを前記核酸記録タグに付加することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸記録タグと関連付けられた前記高分子についての高分子分析アッセイを実行することをさらに含み、前記高分子が、前記高分子分析アッセイを実行する前に、固体支持体に直接的または間接的にカップリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子分析アッセイが、
前記高分子を、前記高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、前記結合剤が、前記結合剤に関する識別情報を有する核酸コーディングタグを含む、接触させることと、
前記核酸コーディングタグの情報を前記核酸記録タグに転送することにより、前記高分子と関連付けられた前記核酸記録タグを伸長することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記高分子を、前記高分子に結合することができる追加の結合剤と接触させることであって、前記追加の結合剤が、前記追加の結合剤に関する識別情報を有する核酸コーディングタグを含む、接触させることと、
前記追加の結合剤に関する前記核酸コーディングタグの前記識別情報を前記核酸記録タグに転送することにより、前記高分子と関連付けられた前記核酸記録タグを伸長することと、を1回以上繰り返すことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
高分子を分析する方法であって、前記高分子がポリペプチド、核酸、炭水化物または脂質を含み、前記方法が、
(a)空間サンプル内の空間位置で核酸記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、
(b1)核酸プローブタグを含む分子プローブを、前記空間サンプル内の前記高分子または前記高分子に近接する部分に結合することであって、前記分子プローブが、前記高分子に特異的かつ/または選択的に結合することができる標的化部分を含み、前記分子プローブが、検出可能な標識をさらに含むことと、
(b2)前記空間サンプル内の前記高分子の前記空間位置をその場で評価するために、イメージング方法を使用して前記空間サンプル内の前記検出可能な標識を評価または観察することと、
(b3)前記分子プローブ内の前記核酸プローブタグからの情報を前記核酸記録タグに転送することによって、前記核酸記録タグを伸長することであって、前記核酸プローブタグからの情報を前記核酸記録タグ転送すると、伸長核酸記録タグ生成される、伸長することと、
(c)第2の検出可能な標識を有する第2の分子プローブと結合させて、第2の分子プローブの核酸プローブタグからの情報を、前記高分子と関連付けられた前記伸長核酸記録タグに転送して、前記第2の検出可能な標識を評価または観察することによって、ステップ(b1)から(b3)を繰り返すことと、
(d)前記分子プローブの前記核酸プローブタグおよび前記第2の分子プローブの前記核酸プローブタグからの情報を転送した後に伸長された前記核酸記録タグの配列を決定することであって、少なくとも前記核酸プローブタグの配列決定される、決定することと、
(e)ステップ(d)で決定された前記核酸プローブタグの前記配列からの情報を、ステップ(b2)で評価された前記高分子の前記空間位置の情報関連付けることと、を含、方法。
【請求項15】
ステップ(e)が、少なくとも前記高分子の配列の一部、または前記高分子の同一性を、ステップ(b2)で評価された前記空間位置と関連付けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年5月20日に出願された米国仮特許出願第62/850,410号および2019年5月20日に出願された米国仮特許出願第62/850,426号の優先権を主張し、各々の開示および内容は、すべての目的のためにそれら全体が参照により組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストでの配列表
この特許または出願ファイルには、コンピューターで読み取り可能なASCIIテキスト形式で提出された配列表が含まれている(ファイル名:4614-2001840_20200518_SeqList_ST25.txt、記録:2020年5月18日、サイズ:693バイト)。配列表ファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド)の分析または空間分析のための方法および組成物に関する。いくつかの実施形態において、方法は、高分子または複数の高分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質)を分析するためのものであり、高分子の空間情報、特性、配列、および/または同一性を評価または決定することを含む。いくつかの実施形態において、この分析は、分子認識事象のバーコーディングおよび核酸エンコーディング、および/または検出可能な標識を用いる。また、高分子の分析のために提供された方法を実行するための構成要素を含む組成物、例えば、キットも提供される。
【背景技術】
【0004】
サンプルの特性に関する情報、例えば、サンプル内の複数の高分子の同一性、濃度、および/または空間分布を提供しながら、サンプルから分子を識別および分析するための既存の方法は制限されている。例えば、他のサンプルまたは空間情報を保持しながらタンパク質を識別するための既知のアプローチは、サンプル内の多数の未知のタンパク質を分析するのに適切ではない。いくつかの現在の技法は、一度に少数の標的のみを検出し、サンプル間の標的の相対的特徴を決定する能力を制限する供給源からの追加の生物学的サンプルの使用を必要とする場合がある。さらに、特定の例では、限られた量のサンプルが、分析に利用可能であり得るか、または個々のサンプルが、タンパク質の同一性および/もしくは配列の分析を含むさらなる分析を必要とし得る。場合によっては、多数の細胞に対するイメージングベースのアプローチでは、細胞型または表現型など、サンプルの細胞の特徴に関する情報を提供する能力を欠いている可能性がある。したがって、多重であり、かつ/あるいは空間情報、同一性、および/または高度に並列化され、正確、高感度、および/またはハイスループットであるタンパク質のシーケンシングを提供することができる特徴付けを可能にする、高分子(例えば、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチド)分析に関連する改善された技法に対する当技術分野の必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要は、特許請求される主題の範囲を制限するために使用されることを意図しない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲に開示された態様を含む、発明を実施するための形態から明らかになるであろう。
【0006】
本明細書で提供されるのは、高分子を分析するための方法であり、空間位置で記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、空間サンプル内の高分子の空間位置をその場で評価する(例えば、観察する)ことと、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分にプローブタグを含む分子プローブを結合することと、分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することであって、プローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長することと、少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定することと、伸長記録タグ内のプローブタグの配列を、評価された分子プローブおよび/または空間位置と相関させ、それにより、伸長記録タグまたはその一部の配列からの情報を、観察された高分子の空間位置と関連付けることと、を含む。
【0007】
本明細書で提供されるのは、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を分析する方法であり、(a)記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供するステップと、(b1)空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供するステップと、(b2)空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、空間タグをその場で評価するステップと、(b3)空間プローブ内の空間タグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長するステップと、(c1)プローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合するステップと、(c2)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長するステップであって、空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長するステップと、(d)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定するステップと、(e)ステップ(d)で決定された空間タグの配列をステップ(b2)で評価された空間タグと相関させ、それにより、伸長記録タグまたはその一部の配列からの情報、例えば、ステップ(d)で決定された空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を、ステップ(b2)で評価された空間プローブの空間位置と関連付けるステップと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、この方法は、複数の高分子を分析するためのものである。いくつかの態様において、高分子は、ポリペプチドである。場合によっては、この方法は、高分子分析アッセイまたはポリペプチド分析アッセイを実行することをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、複数の分子プローブおよび複数の空間プローブを空間サンプルに結合させることを含む。いくつかの実施形態において、複数のプローブタグからの情報は、記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、複数の空間タグからの情報は、記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、分子プローブと結合させる、分子プローブと関連付けられたプローブタグからの情報を記録タグに転送する(それにより、記録タグを伸長し、伸長記録タグを生成する)、空間プローブと結合させる、および空間プローブと関連付けられた空間タグからの情報を記録タグに転送する(それにより、記録タグを伸長し、伸長記録タグを生成する)サイクルが実行される。プローブタグおよび/または空間タグは、他の任意選択の核酸成分に加えて、バーコードを含み得る。いくつかの実施形態において、提供されるステップのうちの1つ以上が、1回以上繰り返される。いくつかの態様において、この方法のステップのうちの少なくともいくつかを実行する順序は変更され得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、この方法は、ポリペプチド分析アッセイなどの高分子分析アッセイを実行することをさらに含む。高分子分析アッセイは、高分子を1つ以上の結合剤と接触させること、および結合剤と関連付けられたコーディングタグからの識別情報を記録タグに転送することを含む。いくつかの実施形態において、高分子と結合剤との接触、およびコーディングタグから記録タグへの情報の転送は、2回以上繰り返される。いくつかの実施形態において、プローブタグおよび空間タグから転送された情報を含む高分子および関連付けられた記録タグは、高分子分析アッセイを実行する前に、空間サンプルから放出される。任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、高分子分析アッセイは、高分子を高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、コーディングタグの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグをさらに伸長することの1つ以上のサイクルを含む。いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、1つ以上の空間タグ、1つ以上のプローブタグ、および任意選択的に1つ以上のコーディングタグからの情報を含む。
【0010】
本明細書で提供されるのは、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を分析する方法であり、(a)高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供するステップと、(b)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合するステップと、(c)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成するステップと、(d)検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得するステップと、(e)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定するステップと、(f)ステップ(e)で決定されたプローブタグの配列を分子プローブと相関させ、それにより、ステップ(e)で決定された配列からの情報を、ステップ(d)で決定されたその空間情報と関連付けるステップと、を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、複数の高分子を分析するためのものである。いくつかの態様において、高分子は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、この方法は、各々が検出可能な標識およびプローブタグを含む複数の分子プローブを、空間サンプルに結合することを含む。分子プローブは、空間サンプル内の高分子または空間サンプル内の高分子に近接する部分に結合し得る。いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に結合する、それと会合する、またはそれと複合体を形成する部分に結合する。いくつかの実施形態において、複数のプローブタグからの情報は、記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、分子プローブと結合させる、分子プローブからの情報を記録タグに転送する、および/または検出可能な標識を評価、例えば、観察するサイクルが実行される。いくつかの態様において、提供される方法のうちのいずれかのステップのうちの少なくともいくつかを実行する順序は、変更され得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、高分子と関連付けられていないか、またはそれに付着されていない。いくつかの実施形態において、記録タグは、高分子と関連付けられているか、またはそれに付着されている。
【0011】
いくつかの実施形態において、この方法は、高分子分析アッセイを実行することをさらに含む。場合によっては、高分子分析アッセイは、高分子をコーディングタグと関連付けられた結合剤と接触させることと、コーディングタグからの情報を記録タグに転送し、それにより、記録タグを伸長することとを含む、ポリペプチド分析アッセイである。いくつかの実施形態において、プローブタグから転送された情報を含む高分子および関連付けられた記録タグは、高分子分析アッセイを実行する前に、空間サンプルから放出される。任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、高分子分析アッセイは、高分子を高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、コーディングタグの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグをさらに伸長することの1つ以上のサイクルを含む。
【0012】
本明細書で提供される高分子、例えば、ポリペプチドを分析するための方法のうちのいずれかを実行するためのキットおよび試薬もまた、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、キットは、以下の構成要素のうちの1つ以上を含む:空間プローブ、空間タグ、分子プローブ、プローブタグ、シーケンシングのための試薬、核酸伸長記録タグを実行するための試薬、記録タグを付着または転送するための試薬、結合剤、プローブタグまたは空間タグからの識別情報を記録タグに転送するための試薬、コーディングタグからの識別情報を記録タグに転送するための試薬、および/または固体支持体。
【0013】
添付の図面を参照して、本発明の非限定的な実施形態を例として説明する。図面は模式的であり、正確な縮尺は意図されない。例示目的上、すべての構成要素がすべての図面において標識されるとは限らず、また、当業者が本発明を理解することを可能にするために例示が必要とされない場合は、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されるとも限らない。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
高分子を分析する方法であって、
(a)空間位置で記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、
(b)前記空間サンプル内の前記高分子の前記空間位置をその場で評価することと、
(c1)プローブタグを含む分子プローブを、前記空間サンプル内の前記高分子または前記高分子に近接する部分に結合することと、
(c2)前記分子プローブ内の前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送することによって、前記記録タグを伸長することであって、前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長することと、
(d)少なくとも前記伸長記録タグ内の前記プローブタグの配列を決定することと、
(e)ステップ(d)で決定された前記プローブタグの前記配列を、ステップ(b)で評価された前記分子プローブおよび/または前記空間位置と相関させることと、を含み、
それにより、ステップ(d)で決定された前記伸長記録タグまたはその一部の前記配列からの情報を、ステップ(b)で評価された前記空間位置と関連付ける、方法。
(項目2)
高分子を分析する方法であって、
(a)記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、
(b1)空間タグを含む空間プローブを前記空間サンプルに提供することと、
(b2)前記空間タグをその場で評価して、前記空間サンプル内の前記空間タグの前記空間位置を取得することと、
(b3)前記空間プローブ内の前記空間タグからの情報を前記記録タグに転送することによって、前記記録タグを伸長することと、
(c1)プローブタグを含む分子プローブを、前記空間サンプル内の前記高分子または前記高分子に近接する部分に結合することと、
(c2)前記分子プローブ内の前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送することによって、前記記録タグを伸長することであって、前記空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を前記記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長することと、
(d)少なくとも前記伸長記録タグ内の前記プローブタグおよび空間タグの前記配列を決定することと、
(e)ステップ(d)で決定された前記空間タグの前記配列をステップ(b2)で評価された前記空間タグと相関させることと、を含み、
それにより、前記伸長記録タグまたはその一部の前記配列からの情報、例えば、ステップ(d)で決定された前記空間タグおよび/またはプローブタグからの前記情報を、ステップ(b2)で評価された前記空間プローブの前記空間位置と関連付ける、方法。
(項目3)
前記方法が、前記空間サンプル内の複数の高分子を分析するためのものである、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記高分子が、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記方法が、複数の分子プローブを前記空間サンプルに結合することを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記方法が、複数の空間プローブを前記空間サンプルに提供することを含む、項目2~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
ステップ(c1)およびステップ(c2)を順次2回以上繰り返すことをさらに含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
ステップ(c1)を繰り返す前に、前記空間サンプルから前記分子プローブを除去することをさらに含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記空間プローブが、支持体と、核酸を含む空間タグと、を含む、項目2~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記支持体が、ビーズまたはナノ粒子を含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記ビーズまたはナノ粒子が、直径約50nm~約100μmの間、約50nm~約50μm、約50nm~約10μm、約0.1μm~約100μm、約0.1μm~約50μmの間、約10μm~約50μmの間、約5μm~約10μmの間、約0.5μm~約100μmの間、約0.5μm~約50μmの間、約0.5μm~約10μmの間、約0.5μm~約5μmの間、または約0.5μm~約1μmの間の範囲である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記空間プローブが、バーコード化されたビーズを含む、項目2~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記空間プローブが、前記空間サンプル上にランダムに分散されている、項目6~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記空間タグが、切断可能なリンカーで前記支持体に付着されている、項目9~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記空間タグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記空間タグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、項目2~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記空間タグが、バーコードを含む、項目2~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記空間プローブが、複数のバーコードを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記空間プローブが、同じバーコードの2つ以上のコピーを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記空間タグが、スペーサーを含む、項目2~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記空間タグが、前記記録タグまたはその一部に相補的な配列を含む、項目2~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記空間プローブが、前記空間サンプルと非特異的に会合する、項目2~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記空間プローブが、電荷相互作用、DNAハイブリダイゼーション、および/または可逆的化学カップリングを介して前記空間サンプルと会合する、項目22に記載の方法。
(項目24)
ステップ(b2)を実行することが、前記空間サンプルまたはその一部の画像を取得することを含む、項目2~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記空間サンプルまたはその一部の2つ以上の画像が取得される、項目24に記載の方法。
(項目26)
2つ以上の画像を比較、整列、および/またはオーバーレイすることをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
ステップ(b2)を実行することが、顕微鏡を使用することを含む、項目2~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記顕微鏡が、蛍光顕微鏡である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記空間タグが、デコーダーを使用してステップ(b2)で評価され、前記デコーダーが、検出可能な標識および前記空間タグまたはその一部に相補的な配列を含む、項目2~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
2つ以上のデコーダーを使用して、1つ以上の前記空間タグを検出する、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記検出可能な標識が、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、または酵素基質標識を含む、項目29または項目30に記載の方法。
(項目32)
ステップ(b2)が、ライゲーションによるシーケンシング、単一分子シーケンシング、単一分子蛍光シーケンシング、またはプローブ検出によるシーケンシングを含む、項目2~23に記載の方法。
(項目33)
前記空間タグが、プライマー伸長またはライゲーションによって前記記録タグに転送される、項目2~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記空間タグからの情報を前記記録タグに転送することによって前記記録タグを伸長することが、前記空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを前記記録タグに付加することを含む、項目2~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記分子プローブが、核酸、ポリペプチド、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記分子プローブが、抗体、抗原結合抗体断片、単一ドメイン抗体(sdAb)、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ由来可変ドメイン(vNAR)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、線状抗体、ダイアボディ、アプタマー、ペプチド模倣分子、融合タンパク質、反応性もしくは非反応性小分子、または合成分子を含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記分子プローブが、特異的結合が可能な標的化部分を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記標的化部分が、核酸、炭水化物、脂質、ポリペプチド、ポリペプチドの翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせに結合するように構成される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記標的化部分が、タンパク質特異的標的化部分である、項目37または項目38に記載の方法。
(項目40)
前記標的化部分が、エピトープ特異的標的化部分である、項目37または項目38に記載の方法。
(項目41)
前記標的化部分が、核酸特異的標的化部分である、項目37または項目38に記載の方法。
(項目42)
前記標的化部分が、細胞表面マーカーに結合するように構成される、項目37~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
ステップ(c1)での前記結合が、化学結合、共有結合、および/または可逆的結合を含む、項目1~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記プローブタグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記プローブタグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記プローブタグが、バーコードを含む、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記プローブタグが、スペーサーを含む、項目1~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記プローブタグが、前記記録タグまたはその一部に相補的な配列を含む、項目1~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記プローブタグが、プライマー伸長またはライゲーションによって前記記録タグに転送される、項目1~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記プローブタグからの情報が、前記会合した分子プローブの近くの記録タグに転送される、項目1~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送することによって前記記録タグを伸長することが、前記空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを前記記録タグに付加することを含む、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
ステップ(c2)が、前記プローブタグからの情報を、直接的に、または前記プローブタグのコピーを介して間接的に前記記録タグへ転送することを含む、項目1~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
ステップ(c2)が、1つのプローブタグからの前記情報を、2つ以上の記録タグに転送することを含む、項目1~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記プローブタグが、ステップ(c2)の前に増幅される、項目1~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記増幅が、線形増幅である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記プローブタグの増幅が、RNAポリメラーゼを使用して実行される、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記プローブタグの情報を前記記録タグに転送することが、逆転写を使用して実行される、項目56に記載の方法。
(項目58)
高分子分析アッセイを実行することをさらに含む、項目1~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記高分子分析アッセイが、ポリペプチド分析アッセイである、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記高分子分析アッセイが、その場で実行される、項目58または項目59に記載の方法。
(項目61)
前記高分子分析アッセイを実行する前に、前記記録タグと関連付けられた前記高分子を、前記空間サンプルから放出することをさらに含む、項目58~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記高分子分析アッセイを実行する前に、前記記録タグと関連付けられた前記高分子を収集することをさらに含む、項目58~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記高分子が、前記高分子分析アッセイを実行する前に、固体支持体に直接的または間接的にカップリングされる、項目58~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記高分子分析アッセイが、
前記高分子を、前記高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、前記結合剤が、前記結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
前記コーディングタグの情報を前記記録タグに転送することにより、前記高分子と関連付けられた前記記録タグを伸長することと、を含む、項目58~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記高分子を、前記高分子に結合することができる追加の結合剤と接触させることであって、前記追加の結合剤が、前記追加の結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
前記追加の結合剤に関する前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することにより、前記高分子と関連付けられた前記記録タグを伸長することと、を1回以上繰り返すことをさらに含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することが、プライマー伸長またはライゲーションによるものである、項目58~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することが、DNAポリメラーゼによって媒介される、項目58~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することが、DNAリガーゼによって媒介される、項目58~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記コーディングタグが、スペーサー、結合サイクル特異的配列、固有の分子識別子、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、項目58~68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記コーディングタグが、その3’末端にスペーサーを含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記結合剤および前記コーディングタグが、リンカーによって接合される、項目58~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記高分子が、ポリペプチドまたはタンパク質である、項目58~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記結合剤が、修飾されたアミノペプチダーゼ、修飾されたアミノアシルtRNAシンテターゼ、修飾されたアンチカリン、または抗体もしくはその結合断片である、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記結合剤が、前記ペプチドの単一のアミノ酸残基、ジペプチド、トリペプチド、または翻訳後修飾に結合する、項目58~73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記結合剤が、N末端アミノ酸残基、C末端アミノ酸残基、または内部アミノ酸残基に結合する、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記結合剤が、化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基または化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基に結合する、項目74に記載の方法。
(項目77)
前記結合剤が、前記N末端アミノ酸残基に結合し、前記N末端アミノ酸残基が、前記コーディングタグの前記情報を前記記録タグに転送した後に切断される、項目75または項目76に記載の方法。
(項目78)
前記結合剤が、前記C末端アミノ酸残基に結合し、前記C末端アミノ酸残基が、前記コーディングタグの前記情報を前記記録タグに転送した後に切断される、項目75または項目76に記載の方法。
(項目79)
前記伸長記録タグが、1つ以上のプローブタグ、1つ以上の空間タグ、および任意選択的に1つ以上のコーディングタグからの情報を含む、項目1~78に記載の方法。
(項目80)
前記伸長記録タグが、2つ以上のプローブタグ、2つ以上の空間タグ、および任意選択的に2つ以上のコーディングタグからの情報を含む、項目1~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目81)
前記伸長記録タグが、ステップ(d)の前に増幅される、項目1~80のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
前記伸長記録タグが、ステップ(d)の前に前記空間サンプルから放出される、項目1~80のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記高分子の前記配列の少なくとも一部を決定し、ステップ(b2)で評価されたその空間位置と関連付けることをさらに含む、項目58~82のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
ステップ(d)が、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、パイロシーケンシング、単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、または高度な顕微鏡を使用するDNAの直接イメージングを含む、項目83に記載の方法。
(項目85)
前記空間サンプルが、複数の高分子、例えば、ポリペプチドを含む、項目1~84のいずれか一項に記載の方法。
(項目86)
前記空間サンプルが、固体支持体上に提供される、項目1~85のいずれか一項に記載の方法。
(項目87)
前記空間サンプルが、表面上に堆積された複数の細胞を含む、項目1~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目88)
前記空間サンプルが、組織サンプルを含む、項目1~87のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
前記空間サンプルが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片または細胞スプレッドである、項目1~88のいずれか一項に記載の方法。
(項目90)
前記空間サンプルを、固定剤および/または架橋剤で処理することをさらに含む、項目1~89のいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記空間サンプルを、透過処理剤で処理することをさらに含む、項目1~90のいずれか一項に記載の方法。
(項目92)
前記空間サンプルを、固定、架橋、および/または透過処理試薬で処理することが、ステップ(b1)および/またはステップ(c)の前に実行される、項目90または項目91に記載の方法。
(項目93)
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチド分析アッセイを実行する前に断片化される、項目58~92のいずれか一項に記載の方法。
(項目94)
前記断片化が、前記ポリペプチドをプロテアーゼと接触させることによって実行される、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記プロテアーゼが、トリプシン、LysN、またはLysCである、項目94に記載の方法。
(項目96)
前記固体支持体が、ビーズ、多孔質ビーズ、多孔質マトリックス、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、シグナル変換電子機器を含むバイオチップ、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、回転干渉計ディスク、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ナノ粒子、またはミクロスフェアである、項目63~95のいずれか一項に記載の方法。
(項目97)
前記固体支持体が、ポリスチレンビーズ、ポリアクリレートビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、ポリマービーズ、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、もしくは制御された多孔質ビーズ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記記録タグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、項目1~97のいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
ステップ(a)が、前記空間サンプルに複数の記録タグを提供することを含む、項目1~98のいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記記録タグが、前記空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる、項目1~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記記録タグが、前記高分子に直接的または間接的に関連付けられている、項目1~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記高分子が、前記記録タグに直接的または間接的にカップリングされる、項目1~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記記録タグが、固有の分子識別子(UMI)を含む、項目1~102のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記記録タグが、コンパートメントタグを含む、項目1~103のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記記録タグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、項目1~104のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
前記記録タグが、スペーサーポリマーを含む、項目1~105のいずれか一項に記載の方法。
(項目107)
前記スペーサーが、前記記録タグの3’末端にある、項目106に記載の方法。
(項目108)
ステップ(a)が、ステップ(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、(c2)、(d)、および(e)の前に実行される、
ステップ(b1)が、ステップ(b2)、(d)、および(e)の前に実行される、
ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(d)およびステップ(e)の前に実行される、
ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(b1)、(b2)、および/もしくは(b3)の前もしくは後に実行される、
ステップ(d)が、ステップ(e)の前に実行される、ならびに/または
ステップ(e)が、ステップ(a)(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、(c2)、および(d)の後に実行される、項目2~107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(d)および(e)を実行する前に順次2回以上繰り返される、項目2~108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(b1)、(b2)、および(b3)の前に実行される、項目2~109のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
ステップ(b2)が、ステップ(b1)の後に実行される、項目2~110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
ステップ(b2)が、ステップ(b3)の前または後に実行される、項目2~111のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
ステップ(a)、(c1)、(c2)、(b1)、(b2)、(b3)、(d)、および(e)が、順番に起こる、項目2~112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記分子プローブが、空間プローブを前記空間サンプルに提供する前に除去されるか、または
前記空間プローブが、前記サンプルを分子プローブと結合する前に前記サンプルから除去される、項目2~113のいずれか一項に記載の方法。
(項目115)
前記高分子分析アッセイが、ステップ(d)およびステップ(e)の前に実行される、項目58~114のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
高分子を分析する方法であって、
(a)高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供することと、
(b)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、前記空間サンプル内の前記高分子または前記高分子に近接する部分に結合することと、
(c)前記分子プローブ内の前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することと、
(d)前記検出可能な標識を評価、例えば、観察して、前記分子プローブの空間情報を取得することと、
(e)少なくとも前記伸長記録タグ内の前記プローブタグの前記配列を決定することと、
(f)ステップ(e)で決定された前記プローブタグの前記配列を、前記分子プローブと相関させることと、を含み、
それにより、ステップ(e)で決定された前記配列からの情報を、ステップ(d)で決定されたその空間情報と関連付ける、方法。
(項目117)
前記高分子が、タンパク質である、項目116に記載の方法。
(項目118)
前記高分子が、ポリペプチドまたはペプチドである、項目116に記載の方法。
(項目119)
前記方法が、複数の前記分子プローブを前記空間サンプルに結合することを含む、項目116~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
2つ以上のプローブが、同じ検出可能な標識と関連付けられている、項目119に記載の方法。
(項目121)
前記複数の分子プローブ内の各分子プローブが、固有の検出可能な標識と関連付けられている、項目119に記載の方法。
(項目122)
ステップ(b)およびステップ(c)を順次2回以上繰り返すことをさらに含む、項目116~121のいずれか一項に記載の方法。
(項目123)
ステップ(d)を2回以上繰り返すことをさらに含む、項目122に記載の方法。
(項目124)
ステップ(b)を繰り返す前に、前記空間サンプルから前記分子プローブを除去することをさらに含む、項目122または項目123に記載の方法。
(項目125)
前記検出可能な標識を評価、例えば、観察した後に、前記検出可能な標識を不活性化することをさらに含む、項目112または項目123に記載の方法。
(項目126)
前記分子プローブが、核酸、ポリペプチド、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目116~125のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
前記分子プローブが、抗体、抗原結合抗体断片、単一ドメイン抗体(sdAb)、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ由来可変ドメイン(vNAR)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、線状抗体、ダイアボディ、アプタマー、ペプチド模倣分子、融合タンパク質、反応性もしくは非反応性小分子、または合成分子を含む、項目116~126のいずれか一項に記載の方法。
(項目128)
前記分子プローブが、特異的結合が可能な標的化部分を含む、項目116~127のいずれか一項に記載の方法。
(項目129)
前記標的化部分が、核酸、炭水化物、脂質、ポリペプチド、ポリペプチドの翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせに結合するように構成される、項目128に記載の方法。
(項目130)
標的化部分が、タンパク質特異的標的化部分である、項目128または項目129に記載の方法。
(項目131)
標的化部分が、エピトープ特異的標的化部分である、項目128または項目129に記載の方法。
(項目132)
前記標的化部分が、核酸特異的標的化部分である、項目128または項目129に記載の方法。
(項目133)
標的化部分が、細胞表面マーカーに結合するように構成される、項目128~132のいずれか一項に記載の方法。
(項目134)
ステップ(b)での前記結合が、化学結合、共有結合、および/または可逆的結合を含む、項目128~133のいずれか一項に記載の方法。
(項目135)
前記検出可能な標識が、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、または酵素基質標識を含む、項目116~134のいずれか一項に記載の方法。
(項目136)
前記検出可能な標識を評価、例えば、観察することが、前記空間サンプルまたはその一部のデジタル画像を取得することを含む、項目116~135のいずれか一項に記載の方法。
(項目137)
前記空間サンプルの2つ以上のデジタル画像が取得される、項目136に記載の方法。
(項目138)
前記2つ以上のデジタル画像が、前記複数の分子プローブの組み合わせ空間情報を提供する、項目137に記載の方法。
(項目139)
前記画像のうちの少なくとも2つを比較、整列、および/またはオーバーレイすることをさらに含む、項目137または項目138に記載の方法。
(項目140)
前記検出可能な標識を評価、例えば、観察した後に、前記検出可能な標識を不活性化することをさらに含む、項目116~139のいずれか一項に記載の方法。
(項目141)
前記検出可能な標識を評価、例えば、観察することが、顕微鏡を使用して実行される、項目116~140のいずれか一項に記載の方法。
(項目142)
前記検出可能な標識を評価、例えば、観察することが、蛍光顕微鏡を使用して実行される、項目141に記載の方法。
(項目143)
前記プローブタグからの情報が、プライマー伸長またはライゲーションによって前記記録タグに転送される、項目116~142のいずれか一項に記載の方法。
(項目144)
前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送することが、前記空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを前記記録タグに付加することを含む、項目143に記載の方法。
(項目145)
前記プローブタグからの情報が、前記プローブタグの近くの記録タグに転送される、項目116~144のいずれか一項に記載の方法。
(項目146)
ステップ(c)が、前記プローブタグからの情報を、直接的に、または前記プローブタグのコピーを介して間接的に前記記録タグへ転送することを含む、項目116~145のいずれか一項に記載の方法。
(項目147)
ステップ(c)が、1つのプローブタグからの前記情報を、2つ以上の記録タグに転送することを含む、項目116~146のいずれか一項に記載の方法。
(項目148)
前記プローブタグが、ステップ(c)の前に増幅される、項目116~147のいずれか一項に記載の方法。
(項目149)
前記プローブタグの増幅が、RNAポリメラーゼを使用して実行される、項目148に記載の方法。
(項目150)
前記増幅が、線形増幅である、項目148に記載の方法。
(項目151)
前記プローブタグからの情報を前記記録タグに転送することが、逆転写を使用して実行される、項目149または項目150に記載の方法。
(項目152)
ステップ(a)が、前記空間サンプルに複数の記録タグを提供することを含む、項目116~151のいずれか一項に記載の方法。
(項目153)
前記記録タグが、前記空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる、項目116~152のいずれか一項に記載の方法。
(項目154)
前記記録タグが、前記高分子に直接的または間接的に関連付けられている、項目116~152のいずれか一項に記載の方法。
(項目155)
前記高分子が、前記記録タグに直接的または間接的にカップリングされる、項目116~151および154のいずれか一項に記載の方法。
(項目156)
高分子分析アッセイを実行することをさらに含む、項目116~155のいずれか一項に記載の方法。
(項目157)
前記高分子分析アッセイが、ポリペプチド分析アッセイである、項目156に記載の方法。
(項目158)
前記高分子分析アッセイが、その場で実行される、項目156または項目157に記載の方法。
(項目159)
前記高分子分析アッセイを実行する前に、前記記録タグと関連付けられた前記高分子を、前記空間サンプルから放出することをさらに含む、項目156~158のいずれか一項に記載の方法。
(項目160)
前記高分子分析アッセイを実行する前に、前記記録タグと関連付けられた前記高分子を収集することをさらに含む、項目156~159のいずれか一項に記載の方法。
(項目161)
前記高分子が、前記高分子分析アッセイを実行する前に、固体支持体に直接的または間接的にカップリングされる、項目156~160のいずれか一項に記載の方法。
(項目162)
前記高分子分析アッセイが、
前記高分子を、前記高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、前記結合剤が、前記結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
前記コーディングタグの前記情報を前記記録タグに転送して、前記伸長記録タグを生成することと、を含む、項目156~161のいずれか一項に記載の方法。
(項目163)
前記高分子を、前記高分子に結合することができる追加の結合剤と接触させることであって、前記追加の結合剤が、前記追加の結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
前記追加の結合剤に関する前記コーディングタグの前記識別情報を、前記伸長記録タグに転送することと、を1回以上繰り返すことをさらに含む、項目162に記載の方法。
(項目164)
前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することが、DNAリガーゼによって媒介される、項目162または項目163に記載の方法。
(項目165)
前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することが、DNAポリメラーゼによって媒介される、項目162または項目163に記載の方法。
(項目166)
前記コーディングタグの前記識別情報を前記記録タグに転送することが、化学ライゲーションによって媒介される、項目162または項目163に記載の方法。
(項目167)
前記コーディングタグが、スペーサー、結合サイクル特異的配列、固有の分子識別子、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、項目162~166のいずれか一項に記載の方法。
(項目168)
前記コーディングタグが、その3’末端にスペーサーを含む、項目167に記載の方法。
(項目169)
前記結合剤および前記コーディングタグが、リンカーによって接合される、項目162~168のいずれか一項に記載の方法。
(項目170)
前記結合剤が、ポリペプチドまたはタンパク質である、項目162~169のいずれか一項に記載の方法。
(項目171)
前記結合剤が、修飾されたアミノペプチダーゼ、修飾されたアミノアシルtRNAシンテターゼ、修飾されたアンチカリン、または抗体もしくはその結合断片である、項目170に記載の方法。
(項目172)
前記結合剤が、前記ポリペプチドの単一のアミノ酸残基、ジペプチド、トリペプチド、または翻訳後修飾に結合する、項目162~171のいずれか一項に記載の方法。
(項目173)
前記結合剤が、N末端アミノ酸残基、C末端アミノ酸残基、または内部アミノ酸残基に結合する、項目172に記載の方法。
(項目174)
前記結合剤が、化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基または化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基に結合する、項目172に記載の方法。
(項目175)
前記結合剤が、前記N末端アミノ酸残基に結合し、前記N末端アミノ酸残基が、前記コーディングタグの前記情報を前記記録タグに転送した後に切断される、項目173または項目174に記載の方法。
(項目176)
前記結合剤が、前記C末端アミノ酸残基に結合し、前記C末端アミノ酸残基が、前記コーディングタグの前記情報を前記記録タグに転送した後に切断される、項目173または項目174に記載の方法。
(項目177)
前記伸長記録タグが、1つ以上のプローブタグおよび1つ以上のコーディングタグからの情報を含む、項目162~176のいずれか一項に記載の方法。
(項目178)
前記伸長記録タグが、2つ以上のプローブタグおよび2つ以上のコーディングタグからの情報を含む、項目162~176のいずれか一項に記載の方法。
(項目179)
前記伸長記録タグが、ステップ(e)の前に増幅される、項目116~178のいずれか一項に記載の方法。
(項目180)
ステップ(e)が、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、パイロシーケンシング、単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、または高度な顕微鏡を使用するDNAの直接イメージングを含む、項目116~179のいずれか一項に記載の方法。
(項目181)
前記空間サンプルが、複数の前記高分子、例えば、ポリペプチドを含む、項目116~180のいずれか一項に記載の方法。
(項目182)
前記空間サンプルが、固体支持体上に提供される、項目116~181のいずれか一項に記載の方法。
(項目183)
前記空間サンプルが、表面上に堆積された複数の細胞を含む、項目182に記載の方法。
(項目184)
前記空間サンプルが、組織サンプルを含む、項目116~182のいずれか一項に記載の方法。
(項目185)
前記空間サンプルが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片または細胞スプレッドである、項目116~182のいずれか一項に記載の方法。
(項目186)
前記高分子の前記配列の少なくとも一部を決定し、ステップ(d)で決定されたその空間位置と関連付けることをさらに含む、項目156~185のいずれか一項に記載の方法。
(項目187)
前記空間サンプルを、固定剤、架橋剤、およびまたは透過処理剤で処理することをさらに含む、項目116~185のいずれか一項に記載の方法。
(項目188)
前記空間サンプルの固定、架橋、および/または透過処理が、ステップ(b)の前に実行される、項目187に記載の方法。
(項目189)
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチド分析アッセイを実行する前に断片化される、項目157~188のいずれか一項に記載の方法。
(項目190)
前記断片化が、前記ポリペプチドをプロテアーゼと接触させることによって実行される、項目189に記載の方法。
(項目191)
前記プロテアーゼが、トリプシン、LysN、またはLysCである、項目190に記載の方法。
(項目192)
前記固体支持体が、ビーズ、多孔質ビーズ、多孔質マトリックス、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、シグナル変換電子機器を含むバイオチップ、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、回転干渉計ディスク、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ナノ粒子、またはミクロスフェアである、項目161~191のいずれか一項に記載の方法。
(項目193)
前記固体支持体が、ポリスチレンビーズ、ポリアクリレートビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、ポリマービーズ、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、もしくは制御された多孔質ビーズ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目192に記載の方法。
(項目194)
前記プローブタグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、項目116~193のいずれか一項に記載の方法。
(項目195)
前記プローブタグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、項目116~194のいずれか一項に記載の方法。
(項目196)
前記プローブタグが、バーコードを含む、項目116~195のいずれか一項に記載の方法。
(項目197)
前記プローブタグが、スペーサーを含む、項目116~196のいずれか一項に記載の方法。
(項目198)
前記記録タグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、項目116~197のいずれか一項に記載の方法。
(項目199)
前記記録タグが、固有の分子識別子(UMI)を含む、項目116~198のいずれか一項に記載の方法。
(項目200)
前記記録タグが、コンパートメントタグを含む、項目116~199のいずれか一項に記載の方法。
(項目201)
前記記録タグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、項目116~200のいずれか一項に記載の方法。
(項目202)
前記記録タグが、スペーサーポリマーを含む、項目116~200のいずれか一項に記載の方法。
(項目203)
前記スペーサーが、前記記録タグの3’末端にある、項目202に記載の方法。
(項目204)
ステップ(a)が、ステップ(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)の前に実行される、
ステップ(b)が、ステップ(c)、(d)、(e)、および(f)の前に実行される、
ステップ(c)が、ステップ(d)の前もしくは後に実行される、
ステップ(c)が、ステップ(e)および(f)の前に実行される、
ステップ(d)が、ステップ(e)および(f)の前に実行される、
ステップ(e)が、ステップ(a)(b)、(c)、および(d)の後に実行される、ならびに/または
ステップ(e)が、ステップ(f)の前に実行される、項目116~203のいずれか一項に記載の方法。
(項目205)
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)が、順番に起こるか、または
ステップ(a)、(b)、(d)、(c)、(e)、および(f)が、順番に起こる、項目116~203のいずれか一項に記載の方法。
(項目206)
ステップ(b)、(c)、および(d)が、ステップ(e)および(f)を実行する前に順次2回以上繰り返される、項目205に記載の方法。
(項目207)
ステップ(b)、(d)、および(c)が、ステップ(e)および(f)を実行する前に順次2回以上繰り返される、項目205に記載の方法。
(項目208)
前記高分子分析アッセイが、ステップ(e)およびステップ(f)の前に実行される、項目156~207のいずれか一項に記載の方法。
(項目209)
前記高分子分析アッセイが、ステップ(a)、(b)、(c)、および(d)の後に実行される、項目156~208のいずれか一項に記載の方法。
(項目210)
ステップ(a)の前記高分子に空間タグが提供される、項目1に記載の方法。
(項目211)
前記空間タグが、前記記録タグと直接的または間接的に関連付けられている、項目210に記載の方法。
(項目212)
前記記録タグが、UMIを含む、項目1または項目210~211に記載の方法。
(項目213)
ステップ(b)が、前記空間タグをその場で分析することを含む、項目1および210~212のいずれか一項に記載の方法。
(項目214)
前記空間タグ配列が、顕微鏡ベースの方法を使用して分析される、項目1および210~213のいずれか一項に記載の方法。
(項目215)
前記顕微鏡ベースの方法が、多重化される、項目214に記載の方法。
(項目216)
前記空間タグ配列が、シーケンシングによって分析される、項目1および210~215のいずれか一項に記載の方法。
(項目217)
前記シーケンシングが、ライゲーションによるシーケンシング、単一分子シーケンシング、単一分子蛍光シーケンシング、またはプローブ検出によるシーケンシングを含む、項目216に記載の方法。
(項目218)
ステップ(b)が、
(b1)空間タグを含む空間プローブを前記空間サンプルに提供することと、
(b2)前記空間タグをその場で評価して、前記空間サンプル内の前記空間タグの前記空間位置を取得することと、
(b3)前記空間プローブ内の前記空間タグからの情報を前記記録タグに転送することによって、前記記録タグを伸長することと、を含む、項目1に記載の方法。
(項目219)
ステップ(b)が、
(b1)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、前記空間サンプル内の前記高分子または前記高分子に近接する部分に結合することと、
(b2)前記検出可能な標識を評価、例えば、観察して、前記分子プローブの空間情報を取得することと、を含む、項目1に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】組織切片中のポリペプチドに記録タグを提供するための例示的なワークフロー、ならびに検出可能な標識およびプローブタグと関連付けられた1つ以上の分子プローブを利用する空間分析のためのステップを示す概略図である。
図2】組織切片中のポリペプチドに記録タグを提供するための例示的なワークフロー、ならびに空間タグと関連付けられた空間プローブ(例えば、ビーズ)およびプローブタグと関連付けられた1つ以上の分子プローブを利用する空間分析のためのステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で提供されるのは、高分子または複数の高分子、例えば、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を分析するための方法およびキットである。いくつかの実施形態において、この分析は、分子認識事象のバーコーディングおよび核酸エンコーディング、および/または検出可能な標識を用いる。いくつかの態様において、高分子は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、この方法は、高分子に関する情報(例えば、同一性、特性、空間サンプル内の位置、空間分布、密度、位置)を提供する。場合によっては、空間サンプル内のポリペプチドまたはタンパク質の同一性および/または少なくとも部分配列は、方法を実行することから得られ、空間サンプル内の空間タグに関する空間情報(サンプル内のその位置など)と関連付けられ得る。
【0016】
サンプルの特性に関する情報、例えば、サンプル内の目的の複数の生物学的標的の存在、不在、濃度、および/または空間分布を提供しながら、サンプルから分子を識別および分析するための現在の方法は制限されている。例えば、他のサンプルまたは空間情報を保持しながらタンパク質を識別するための既知のアプローチは、サンプル内の多数の未知のタンパク質を分析するのに適切ではない。いくつかの現在の技法は、一度に少数の標的のみを検出し、複数のサンプルの使用を必要とし、かつ/またはタンパク質の同一性および/もしくは配列の分析を含む、分析のためのさらなるプロセスを必要とする場合がある。したがって、高度に並列化され、正確、高感度、および/またはハイスループットであり、分析および/またはタンパク質のシーケンシングをさらに実行するオプションを伴う、多重高分子(例えば、ポリペプチド)分析および/または特徴付けに関連する改善された技法に対する当技術分野の必要性が残っている。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示は、高分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質)を分析するための方法を部分的に提供し、高分子に関連する空間情報(例えば、分布および/または位置)を取得して、タンパク質およびペプチドの特徴付けおよびシーケンシングへの直接適用を伴う、高度に並列のハイスループットデジタル高分子の特徴付けおよび定量化の方法で使用することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、空間サンプル内の1つ以上のポリペプチドの空間情報(例えば、位置または場所)、および分析されたポリペプチドの同一性または部分配列を提供する。
【0018】
本明細書で提供されるのは、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を分析する方法であり、(a)記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供するステップと、(b1)空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供するステップと、(b2)空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、空間タグをその場で評価するステップと、(b3)空間プローブ内の空間タグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長するステップと、(c1)プローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合するステップと、(c2)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長するステップであって、空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長するステップと、(d)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定するステップと、(e)ステップ(d)で決定された空間タグの配列をステップ(b2)で評価された空間タグと相関させ、それにより、伸長記録タグまたはその一部の配列からの情報、例えば、ステップ(d)で決定された空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を、ステップ(b2)で評価された空間プローブの空間位置と関連付けるステップと、を含む。いくつかの実施形態において、ステップ(a)は、空間サンプルに複数の記録タグを提供することを含む。任意のそのような実施形態のうちのいくつかでは、高分子は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、この方法は、ポリペプチド分析アッセイを実行することをさらに含む。
【0019】
本明細書で提供されるのは、高分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質)を分析するための方法およびキットであり、高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供するステップと、(b)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合するステップと、(c)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成するステップと、(d)検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得するステップと、(e)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定するステップと、(f)ステップ(e)で決定されたプローブタグの配列を分子プローブと相関させ、それにより、ステップ(e)で決定された配列からの情報を、ステップ(d)で決定されたその空間情報と関連付けるステップと、を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、ポリペプチド分析アッセイを実行することを含む。いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、ステップ(e)および(f)の前に実行されない。他の実施形態において、高分子分析アッセイは、ステップ(e)および(f)の前に実行される。
【0020】
本明細書で提供されるのは、高分子を分析するための方法およびキットであり、(a)高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供するステップと、(b)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合するステップと、(c)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成するステップと、(d)検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得するステップと、(e)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定するステップと、(f)ステップ(e)で決定されたプローブタグの配列を分子プローブと相関させ、それにより、ステップ(e)で決定された配列からの情報を、ステップ(d)で決定されたその空間情報と関連付けるステップと、を含む。
【0021】
また、提供された方法のうちのいずれかで使用するためのキットも提供される。いくつかの実施形態において、キットは、以下の構成要素のうちの1つ以上を含む:空間プローブ、空間タグ、分子プローブ、プローブタグ、シーケンシングのための試薬、核酸伸長記録タグを実行するための試薬、記録タグを付着または転送するための試薬、結合剤、プローブタグまたは空間タグからの識別情報を記録タグに転送するための試薬、コーディングタグからの識別情報を記録タグに転送するための試薬、および/または固体支持体。
【0022】
任意のそのような実施形態のうちのいくつかでは、高分子は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、空間サンプルに結合するために複数の分子プローブがこの方法で使用され、空間サンプルと関連付けるために複数の空間プローブが提供される。いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の核酸、ポリペプチド、または他の高分子に結合する。いくつかの実施形態において、分子プローブと結合させ、分子プローブからの情報を記録タグに転送する複数のサイクルが実行される。1つ以上のプローブタグから記録タグへの情報の転送は、任意の好適な転送方法を使用することによって伸長記録タグを形成する。
【0023】
この方法はまた、複数の空間プローブを空間サンプルに提供することを含み得る。いくつかの実施形態において、空間プローブは、複数の空間タグを含み、空間タグは、バーコードを含む。いくつかの実施形態において、(関連付けられたバーコードを有する)空間プローブは、空間サンプル間でランダムに分散される。場合によっては、この方法は、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、空間タグをその場で決定、分析、および/またはシーケンシングすることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、空間プローブと関連付けられたバーコードをその場でデコードするステップを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、空間タグをその場で評価することから得られた空間情報を関連付けて、空間サンプル内の空間タグの空間位置を、伸長記録タグに記録された任意の情報とともに取得することを可能にする。
【0024】
本開示の完全な理解を提供するために、以下の説明には多くの具体的な詳細が記載される。これらの詳細は、例示目的で提供されており、特許請求される主題は、これらの特定の詳細の一部または全部がなくても、特許請求の範囲に従って実施することができる。特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用することができ、構造変更を行うことができることを理解されたい。個々の実施形態のうちの1つ以上で説明される様々な特徴および機能は、それらが説明される特定の実施形態へのそれらの適用可能性に関して限定されないことを理解されたい。代わりに、それらは、そのような実施形態が説明されるかどうか、およびそのような特徴が説明される実施形態の一部として提示されるかどうかにかかわらず、単独で、またはある組み合わせで、本開示の他の実施形態の1つ以上に適用することができる。明確にするために、特許請求される主題に関連する技術分野で既知の技術項目(technical material)は、特許請求される主題が不必要に不明瞭とならない程詳細には説明されない。
【0025】
本出願で言及される特許文書、科学論文およびデータベースを含むすべての出版物は、個々の出版物が参照により個別に組み込まれるのと同じ程度まで、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。出版物または文書の引用は、これらのいずれかが関連する先行技術であることを承認することを意図しておらず、これらの出版物または文書の内容または日付に関するいかなる承認を構成するものではない。
【0026】
すべての見出しは、読者の利便性のために提供されるものであり、特に明記しない限り、見出しに続く本文の意味を限定するために使用されるべきでない。
【0027】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本章に記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開出願、および他の出版物に記載される定義に反するか、さもなければそれと矛盾する場合、本章に記載される定義は、参照により本明細書に組み込まれる定義よりも優先される。
【0028】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別のことを指示する場合を除き、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「ペプチド(a peptide)」への言及は、1つ以上のペプチド、またはペプチドの混合物を包含する。また、本明細書で使用される場合、具体的に述べられているか、または文脈から明らかである場合を除き、「または(or)」という用語は、包括的であると理解され、「または(or)」および「および(and)」の両方を包含する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、当業者に容易に知られている各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を包含(および説明)する。例えば、「約X」について言及する記載は、「X」についての記載を包含する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「高分子」という用語は、より小さなサブユニットから構成される大きな分子を包含する。高分子の例としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、大員環が挙げられるが、これらに限定されない。高分子はまた、一緒に共有結合された2つ以上のタイプの高分子の組み合わせから構成されるキメラ高分子(例えば、核酸に結合されたペプチド)を含む。高分子はまた、2つ以上の高分子の非共有結合性複合体から構成される「高分子集合体」を含み得る。高分子集合体は、同じタイプの高分子(例えば、タンパク質-タンパク質)またはさらに2つの異なるタイプの高分子(例えば、タンパク質-DNA)から構成され得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、ペプチドおよびタンパク質を包含し、ペプチド結合によって接合された2つ以上のアミノ酸の鎖を含む分子を指す。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、2~50個のアミノ酸を含み、例えば、20~30個を超えるアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、二次、三次、またはより高次の構造を含まない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、タンパク質である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、30個以上のアミノ酸を含み、例えば、50個を超えるアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、タンパク質は、一次構造に加えて、二次、三次、またはより高次の構造を含む。ポリペプチドのアミノ酸は、最も典型的にはL-アミノ酸であるが、D-アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。ポリペプチドは、天然に存在するか、合成的に産生されるか、または組換え的に発現され得る。ポリペプチドは、合成的に産生されるか、単離されるか、組換え的に発現されるか、または上記のような方法論の組み合わせによって産生され得る。ポリペプチドはまた、アミノ酸鎖を修飾する追加の基、例えば、翻訳後修飾を介して追加される官能基を含み得る。ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語はまた、天然にまたは介入によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との共役などの他の操作または修飾である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、ペプチドの単量体サブユニットとして機能する、アミン基、カルボン酸基、および各アミノ酸に特異的な側鎖を含む有機化合物を指す。アミノ酸としては、20個の標準的、天然または正準アミノ酸、および非標準的なアミノ酸が挙げられる。標準的な天然アミノ酸としては、アラニン(AまたはAla)、システイン(CまたはCys)、アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、グリシン(GまたはGly)、ヒスチジン(HまたはHis)、イソロイシン(IまたはIle)、リジン(KまたはLys)、ロイシン(LまたはLeu)、メチオニン(MまたはMet)、アスパラギン(NまたはAsn)、プロリン(PまたはPro)、グルタミン(QまたはGln)、アルギニン(RまたはArg)、セリン(SまたはSer)、スレオニン(TまたはThr)、バリン(VまたはVal)、トリプトファン(WまたはTrp)、およびチロシン(YまたはTyr)が挙げられる。アミノ酸は、L-アミノ酸またはD-アミノ酸であり得る。非標準的なアミノ酸は、天然に存在するか、化学的に合成される修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、非標準的タンパク質原性アミノ酸、または非タンパク質原性アミノ酸であり得る。非標準的なアミノ酸の例としては、セレノシステイン、ピロリシン、およびN-ホルミルメチオニン、β-アミノ酸、ホモアミノ酸、プロリンおよびピルビン酸誘導体、3-置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環-置換フェニルアラニンおよびチロシン誘導体、線状コアアミノ酸、N-メチルアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「翻訳後修飾」という用語は、リボソームによるその翻訳が完了した後にペプチドまたはタンパク質上で生じる修飾を指す。翻訳後修飾は、共有結合による化学修飾または酵素修飾であり得る。翻訳後修飾の例としては、アシル化、アセチル化、アルキル化(メチル化を含む)、ビオチン化、ブチリル化、カルバミル化、カルボニル化、脱アミド化、脱イミノ化(deiminiation)、ジフタミド形成、ジスルフィド架橋形成、脱離(eliminylation)、フラビン付着、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、グリピエーション、ヘムC付着、ヒドロキシル化、ヒプシン形成、ヨウ素化、イソプレニル化、脂質化、リポイル化、マロニル化、メチル化、ミリストリル化(myristolylation)、酸化、パルミトイル化、ペグ化、ホスホパンテテイン化、リン酸化、プレニル化、プロピオニル化、レチニリデンシフ塩基形成、S-グルタチオン付加、S-ニトロシル化、S-スルフェニル化、セレン化、スクシニル化、スルフィン化、ユビキチン化、およびC末端アミド化が挙げられるが、これらに限定されない。翻訳後修飾としては、ペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシル末端の修飾が挙げられる。末端アミノ基の修飾としては、デスアミノ、N-低級アルキル、N-ジ-低級アルキル、およびN-アシル修飾が挙げられるが、これらに限定されない。末端カルボキシ基の修飾としては、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾(例えば、低級アルキルはC~Cアルキルである)が挙げられるが、これらに限定されない。翻訳後修飾としては、アミノ末端とカルボキシ末端との間にあるアミノ酸の修飾(例えば、上記のものであるが、これらに限定されない)も挙げられる。翻訳後修飾という用語はまた、1つ以上の検出可能な標識を含むペプチド修飾を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「結合剤」という用語は、分析物、例えば、高分子または高分子の成分もしくは機構に結合する、それと会合する(associates)、それと一体化する、それを認識する、またはそれと組み合わされる(combines with)核酸分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、または小分子を指す。結合剤は、分析物、例えば、高分子または高分子の成分もしくは機構との共有結合性会合または非共有結合性会合を形成し得る。結合剤はまた、核酸分子-ペプチドキメラ結合剤または炭水化物-ペプチドキメラ結合剤などの2タイプ以上の分子から構成されるキメラ結合剤であり得る。結合剤は、天然に存在するか、合成的に産生されるか、または組換え的に発現される分子であり得る。結合剤は、高分子の単一の単量体もしくはサブユニット(例えば、ペプチドの単一アミノ酸)に結合し得るか、または高分子の複数の連結されたサブユニット(例えば、より長いペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質分子のジペプチド、トリペプチド、もしくはより高次のペプチド)に結合し得る。結合剤は、線状分子または三次元構造(立体配座とも呼ばれる)を有する分子に結合し得る。例えば、抗体結合剤は、線状ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に結合するか、または立体配座ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に結合し得る。結合剤は、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質分子のN末端ペプチド、C末端ペプチド、または介在ペプチドに結合し得る。結合剤は、ペプチド分子のN末端アミノ酸、C末端アミノ酸、または介在アミノ酸に結合し得る。結合剤は、例えば、非修飾または非標識アミノ酸よりも、化学的に修飾または標識されたアミノ酸に結合し得る。例えば、結合剤は、例えば、当該部分を持たないアミノ酸よりも、アセチル部分、グアニル部分、ダンシル部分、PTC部分、DNP部分、SNP部分などで修飾されたアミノ酸に結合し得る。結合剤は、ポリペプチド分子の翻訳後修飾に結合し得る。結合剤は、高分子などの分析物の成分または機構への選択的結合を示し得る(例えば、結合剤は、20個の可能な天然アミノ酸残基のうちの1つに選択的に結合し、他の19個の天然アミノ酸残基には非常に低い親和性で結合するか、または全く結合しない可能性がある)。結合剤は、その結合剤が高分子などの分析物の複数の成分または機構に結合することができる場合、低い選択的結合を示し得る(例えば、結合剤は、2つ以上の異なるアミノ酸残基に同様の親和性で結合する可能性がある)。結合剤は、リンカーによって結合剤に接合され得るコーディングタグを含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「フルオロフォア」という用語は、ある波長で電磁エネルギーを吸収し、別の波長でエネルギーを再放出する分子を指す。フルオロフォアは、蛍光色素およびタンパク質を含む分子または分子の一部であり得る。さらに、フルオロフォアは、化学的、遺伝的、または他の方法で別の分子に接続または融合されて、フルオロフォアで「タグ付け」された分子を産生し得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、2つの分子を接合するために使用されるヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、または非ヌクレオチド化学部分のうちの1つ以上を指す。リンカーを使用して、例えば、結合剤をコーディングタグと接合し、記録タグをポリペプチドと接合し、ポリペプチドを固体支持体と接合し、記録タグを固体支持体と接合する。特定の実施形態において、リンカーは、酵素反応または化学反応により、2つの分子を接合する(例えば、クリック化学)。
【0037】
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、本明細書に記載の化合物に接続された任意の分子または部分を指す。「リガンド」は、化合物に付着した1つ以上のリガンドを指す場合がある。いくつかの実施形態において、リガンドは、ペンダント基または結合部位(例えば、結合剤が結合する部位)である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「プロテオーム」という用語は、任意の生物の、特定の時間にゲノム、細胞、組織、または生物によって発現されるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(それらの共役体または複合体を含む)の全セットを含み得る。一態様において、プロテオームは、規定された条件下で、所与の時間に、所与のタイプの細胞または生物において発現されるタンパク質のセットである。プロテオミクスは、プロテオームの研究である。例えば、「細胞プロテオーム」は、ホルモン刺激への曝露など、特定の一連の環境条件下で特定の細胞型において見られるタンパク質の集合を含み得る。生物の完全なプロテオームには、様々な細胞プロテオームのすべてからのタンパク質の完全なセットが含まれ得る。プロテオームには、特定の細胞レベル下の生体系におけるタンパク質の集合も含まれ得る。例えば、ウイルス内のすべてのタンパク質は、ウイルスプロテオームと呼ばれる可能性がある。本明細書で使用される場合、「プロテオーム」という用語は、キノーム;セクレトーム;レセプトーム(例えば、GPCRome);免疫プロテオーム;ニュートリプロテオーム;翻訳後修飾(例えば、リン酸化、ユビキチン化、メチル化、アセチル化、グリコシル化、酸化、脂質化、および/もしくはニトロシル化)によって規定されるプロテオームサブセット、例えば、ホスホプロテオーム(例えば、ホスホチロシン-プロテオーム、チロシン-キノーム、およびチロシン-ホスファトーム)、グリコプロテオームなど;組織もしくは器官、発達段階、または生理学的もしくは病理学的状態に関連するプロテオームサブセット;細胞周期、分化(もしくは脱分化)、細胞死、老化、細胞移動、形質転換、または転移などの細胞プロセスに関連するプロテオームサブセット;あるいはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されないプロテオームのサブセットを含む。本明細書で使用される場合、「プロテオミクス」という用語は、細胞、組織、および体液内のプロテオームの分析、ならびに細胞内および組織内のプロテオームの対応する空間分布を指す。さらに、プロテオミクス研究には、生物学および規定された生物学的または化学的刺激の関数として経時的に継続変化するプロテオームの動的状態が含まれる。
【0039】
遊離アミノ基を有するペプチド鎖の一端の末端アミノ酸は、本明細書では「N末端アミノ酸」(NTAA)と呼ばれる。遊離カルボキシル基を有する鎖のもう一方の末端の末端アミノ酸は、本明細書では「C末端アミノ酸」(CTAA)と呼ばれる。N末端ジアミノ酸は、N末端アミノ酸および最後から2番目のN末端アミノ酸を含み得る。C末端ジアミノ酸は、C末端についても同様に定義されている。ペプチドの長さが「n」個のアミノ酸である場合、ペプチドを構成するアミノ酸には、順に番号を付けることができる。本明細書で使用される場合、NTAAは、n番目のアミノ酸(本明細書では「nNTAA」とも呼ばれる)とみなされる。この命名法を使用すると、次のアミノ酸は、n-1個のアミノ酸、次いでn-2個のアミノ酸というように、ペプチドのN末端からC末端までの長さを下っていく。特定の実施形態において、NTAA、CTAA、またはその両方は、化学部分で官能化され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「核酸バーコード」という用語は、高分子、ポリペプチド、結合剤、結合サイクルからの結合剤のセット、ポリペプチドのサンプル、サンプルのセット、コンパートメント(例えば、液滴、ビーズ、もしく分離された位置)内の高分子(例えば、ポリペプチド)、コンパートメントのセット内の高分子(例えば、ポリペプチド)、高分子(例えば、ポリペプチド)の画分、ポリペプチド画分のセット、空間領域もしくは空間領域のセット、高分子もしくはポリペプチドのライブラリー、分子プローブもしくは分子プローブのセット、または結合剤のライブラリーについての固有の識別子タグまたは起源情報を提供する、約2~約30個の塩基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の塩基)の核酸分子を指す。バーコードは、人工的な配列または天然に存在する配列であり得る。特定の実施形態において、バーコードの集団内の各バーコードは異なる。他の実施形態において、バーコードの集団におけるバーコードの一部分は異なり、例えば、バーコードの集団におけるバーコードの少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%異なる。バーコードの集団は、ランダムに生成されるか、またはランダムではなく生成される可能性がある。特定の実施形態において、バーコードの集団は、エラー訂正バーコードである。バーコードを使用して、多重化されたシーケンシングデータを計算によりデコンボリューションし、個々のポリペプチド、サンプル、ライブラリーなどに由来する配列リードを識別することができる。また、バーコードを使用して、マッピングを強化するために小さなコンパートメントに分配されたポリペプチド集合のデコンボリューションすることもできる。例えば、ペプチドをプロテオームにマッピングし直すのではなく、ペプチドを元のタンパク質分子またはタンパク質複合体にマッピングし直す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ペプチドバーコード」または「アミノ酸バーコード」は、少なくとも、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、75、または100アミノ酸の長さを有することができる、アミノ酸の配列を指す。特定のペプチドバーコードは、異なる長さ、配列、または他の物理的特性(例えば、疎水性)を有することによって、他のペプチドバーコードと区別され得る。ペプチドバーコードは、高分子、ポリペプチド、結合剤、結合サイクルからの結合剤のセット、ポリペプチドのサンプル、サンプルのセット、位置(例えば、空間位置)、コンパートメント(例えば、液滴、ビーズ、もしく分離された位置)内の高分子(例えば、ポリペプチド)、コンパートメントのセット内の高分子(例えば、ポリペプチド)、分子の画分、画分のセット、空間領域もしくは空間領域のセット、高分子もしくはポリペプチドのライブラリー、分子プローブもしくは分子プローブのセット、または結合剤のライブラリーについての固有の識別子タグまたは起源情報を提供することができる。バーコードは、人工的な配列または天然に存在する配列であり得る。特定の実施形態において、バーコードの集団内の各バーコードは異なる。他の実施形態において、バーコードの集団におけるバーコードの一部分は異なり、例えば、バーコードの集団におけるバーコードの少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%異なる。バーコードの集団は、ランダムに生成されるか、またはランダムではなく生成される可能性がある。
【0042】
「サンプルタグ」とも呼ばれる「サンプルバーコード」は、ポリペプチドがどのサンプルに由来するかを識別する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「コーディングタグ」という用語は、その関連する結合剤に関する識別情報を含む、任意の好適な長さを有するポリヌクレオチド、例えば、2~100(2および100を含む)の任意の整数を含む、約2塩基~約100塩基の核酸分子を指す。「コーディングタグ」は、「シーケンシング可能なポリマー」から作製することもできる(例えば、Niu et al.,2013,Nat.Chem.5:282-292、Roy et al.,2015,Nat.Commun.6:7237、Lutz,2015,Macromolecules 48:4759-4767(その各々は参照によりその全体が組み込まれる)を参照)。コーディングタグは、エンコーダー配列を含み得、このエンコーダー配列には、任意選択的に、片側に1つのスペーサーが隣接するか、または両側にスペーサーが隣接する。コーディングタグはまた、任意選択的なUMIおよび/または任意の結合サイクル特異的バーコードで構成され得る。コーディングタグは、一本鎖または二本鎖であり得る。二本鎖コーディングタグは、平滑末端、突出末端、またはその両方を含み得る。コーディングタグは、結合剤に直接付着しているコーディングタグ、結合剤に直接付着しているコーディングタグにハイブリダイズした相補配列(例えば、二本鎖コーディングタグの場合)、または伸長記録タグに存在するコーディングタグ情報を指す場合がある。特定の実施形態において、コーディングタグは、結合サイクル特異的スペーサーもしくはバーコード、固有の分子識別子、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「エンコーダー配列」または「エンコーダーバーコード」という用語は、その関連付けられた結合剤についての識別情報を提供する、約2塩基~約30個の塩基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の塩基)の長さの核酸分子を指す。エンコーダー配列は、その関連付けられた結合剤を固有に識別し得る。特定の実施形態において、エンコーダー配列は、その関連付けられた結合剤について、および結合剤が使用される結合サイクルについての識別情報を提供する。他の実施形態において、エンコーダー配列は、コーディングタグ内の別個の結合サイクル特異的バーコードと組み合わされる。あるいは、エンコーダー配列は、その関連付けられた結合剤を、2つ以上の異なる結合剤のセットのメンバーに属するものとして識別し得る。いくつかの実施形態において、このレベルの識別は、分析の目的には十分である。例えば、アミノ酸に結合する結合剤を伴ういくつかの実施形態において、ペプチドが、特定の位置でアミノ酸残基を明確に識別するのではなく、その位置で2つの可能なアミノ酸のうちの1つを含むことを知ることで十分であり得る。別の例では、タンパク質標的の複数のエピトープを認識し、様々な特異性を有する抗体の混合物を含む、共通のエンコーダー配列が、ポリクローナル抗体に使用されるエンコーダー配列が可能な結合剤のセットを識別する他の実施形態において、順次デコーディングアプローチを使用して、各結合剤の固有の識別をもたらすことができる。これは、結合の繰り返しサイクルで所与の結合剤のエンコーダー配列を変化させることによって達成される(Gunderson et al.,2004、Genome Res.14:870-7を参照)。各結合サイクルからの部分的に識別するコーディングタグ情報は、他のサイクルからのコーディング情報と組み合わされると、結合剤の固有の識別子を産生し、例えば、個々のコーディングタグ(またはエンコーダー配列)ではなく、コーディングタグの特定の組み合わせが、結合剤についての固有の識別情報を提供する。好ましくは、結合剤のライブラリー内のエンコーダー配列は、同じまたは同様の数の塩基を有する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「結合サイクル特異的タグ」、「結合サイクル特異的バーコード」、または「結合サイクル特異的配列」という用語は、特定の結合サイクル内で使用される結合剤のライブラリーを識別するために使用される固有の配列を指す。結合サイクル特異的タグは、約2塩基~約8塩基(例えば、2、3、4、5、6、7、または8塩基)の長さを含み得る。結合サイクル特異的タグは、スペーサー配列の一部、エンコーダー配列の一部、UMIの一部として、またはコーディングタグ内の別個の構成要素として、結合剤のコーディングタグ内に組み込むことができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「スペーサー」(Sp)という用語は、記録タグまたはコーディングタグの末端上に存在する、長さが約1塩基~約20個の塩基(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の塩基)の核酸分子を指す。特定の実施形態において、スペーサー配列は、一端または両端でコーディングタグのエンコーダー配列に隣接する。結合剤のポリペプチドへの結合に続いて、それらの関連するコーディングタグおよび記録タグ上の相補的スペーサー配列間のアニーリングは、それぞれ、プライマー伸長反応または記録タグ、コーディングタグ、またはジタグ構築物へのライゲーションを介した結合情報の伝達を可能にする。Sp’は、Spに相補的なスペーサー配列を指す。好ましくは、結合剤ライブラリー内のスペーサー配列は、同じ数の塩基を有する。共通の(共有または同一の)スペーサーを、結合剤ライブラリーで使用することができる。スペーサー配列は、特定の結合サイクルにおいて使用される結合剤を追跡するために、「サイクル特異的」配列を有し得る。スペーサー配列(Sp)は、すべての結合サイクルにわたって一定であるか、特定のクラスのポリペプチドに特異的であるか、または結合サイクル数に特異的である可能性がある。ポリペプチドクラス特異的スペーサーにより、完了した結合/伸長サイクルからの伸長記録タグに存在する同種結合剤のコーディングタグ情報が、後続の結合サイクルにおける同じクラスのポリペプチドを認識する別の結合剤のコーディングタグに、クラス特異的スペーサーを介してアニーリングすることができる。正確な同種の対の逐次的な結合によってのみ、相互作用するスペーサー要素および効果的なプライマー伸長がもたらされる。スペーサー配列は、記録タグ内の相補的スペーサー配列にアニーリングしてプライマー伸長(ポリメラーゼ伸長とも呼ばれる)反応を開始させるか、またはライゲーション反応用の「副木」を提供するか、または「粘着末端」ライゲーション反応を媒介するのに十分な数の塩基を含み得る。スペーサー配列は、コーディングタグ内のエンコーダー配列よりも少ない数の塩基を含み得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「記録タグ」という用語は、コーディングタグの識別情報が転送され得るか、あるいは記録タグと関連付けられた巨大分子に関する識別情報(例えば、UMI情報)がコーディングタグに転送され得る、部分、例えば、化学カップリング部分、核酸分子、またはシーケンシング可能なポリマー分子を指す(例えば、Niu et al.,2013,Nat.Chem.5:282-292、Roy et al.,2015,Nat.Commun.6:7237、Lutz,2015,Macromolecules 48:4759-4767(その各々は参照によりその全体が組み込まれる)を参照)。識別情報は、サンプル、画分、パーティション、空間位置、相互作用する隣接分子、サイクル数などに関連する情報など、分子を特徴付ける任意の情報を含むことができる。さらに、UMI情報の存在も識別情報として分類することができる。特定の実施形態において、結合剤がポリペプチドに結合した後、結合剤に連結したコーディングタグからの情報を、結合剤がポリペプチドに結合している間に、ポリペプチドと関連付けられた記録タグに転送することができる。他の実施形態において、結合剤がポリペプチドに結合した後、ポリペプチドと関連付けられた記録タグからの情報を、結合剤がポリペプチドに結合している間に、結合剤に連結されたコーディングタグに転送することができる。記録タグは、高分子(例えば、ポリペプチド)に直接連結され得るか、多官能性リンカーを介して高分子(例えば、ポリペプチド)に連結され得るか、または固体支持体上でのその近接性(もしくは共局在化)によって高分子(例えば、ポリペプチド)と会合され得る。記録タグは、その連結が、コーディングタグ情報を記録タグに、またはその逆に転送するために使用される方法と適合性がある限り、その5’末端もしくは3’末端を介して、または内部部位で連結され得る。記録タグは、他の機能的成分、例えば、ユニバーサルプライミング部位、固有の分子識別子、バーコード(例えば、サンプルバーコード、画分バーコード、空間バーコード、コンパートメントタグなど)、コーディングタグのスペーサー配列に相補的であるスペーサー配列、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。記録タグのスペーサー配列は、好ましくは、ポリメラーゼ伸長を使用して、コーディングタグ情報を記録タグに転送する実施形態において、記録タグの3’末端にある。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ伸長」とも呼ばれる「プライマー伸長」という用語は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)によって触媒され、それにより、相補鎖にアニーリングする核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチドプライマー、スペーサー配列)が、相補鎖を鋳型として使用してポリメラーゼによって伸長される反応を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「固有の分子識別子」または「UMI」という用語は、UMIが連結される各ポリペプチドまたは結合剤に固有の識別子タグを提供する、約3~約40個の塩基(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個の塩基)の長さの核酸分子を指す。ポリペプチドUMIを使用して、複数の伸長記録タグからのシーケンシングデータを計算によりデコンボリューションして、個々のポリペプチドに由来する伸長記録タグを識別することができる。ポリペプチドUMIを使用して、NGSリードを固有のUMIに折り畳むことにより、元のポリペプチド分子を正確に計数することができる。結合剤UMIを使用して、特定のポリペプチドに結合する個々の分子結合剤を識別することができる。例えば、UMIを使用して、特定のペプチド分子に対して発生する単一のアミノ酸に特異的な結合剤の個々の結合事象の数を特定することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ユニバーサルプライミング部位」または「ユニバーサルプライマー」または「ユニバーサルプライミング配列」という用語は、ライブラリーの増幅および/またはシーケンシング反応に使用され得る核酸分子を指す。ユニバーサルプライミング部位には、PCR増幅用のプライミング部位(プライマー配列)、いくつかの次世代シーケンシングプラットフォームにおいてブリッジ増幅を可能にするフローセル表面上の相補的オリゴヌクレオチドにアニーリングするフローセルアダプター配列、シーケンシングプライミング部位、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ユニバーサルプライミング部位は、次世代デジタルシーケンシングと組み合わせて一般的に使用されるものを含む、他のタイプの増幅に使用することができる。例えば、伸長記録タグ分子を環状化し、ユニバーサルプライミング部位をローリングサークル増幅に使用して、シーケンシング鋳型として使用することができるDNAナノボールを形成することができる(Drmanac et al.,2009,Science 327:78-81)。あるいは、記録タグ分子を環状化し、ユニバーサルプライミング部位からのポリメラーゼ伸長によって直接シーケンシングすることができる(Korlach et al.,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.105:1176-1181)。「ユニバーサルプライミング部位」または「ユニバーサルプライマー」に関連して使用される場合の「フォワード」という用語は、「5」または「センス」と呼ばれる場合もある。「ユニバーサルプライミング部位」または「ユニバーサルプライマー」に関連して使用される場合の「リバース」という用語は、「3」または「アンチセンス」と呼ばれる場合もある。
【0051】
本明細書で使用される場合、「伸長記録タグ」という用語は、結合剤の高分子(例えば、ポリペプチド)への結合に続いて、少なくとも1つの結合剤のコーディングタグ(またはその相補的配列)の情報が転送された記録タグを指す。コーディングタグの情報は、直接的に(例えば、ライゲーション)または間接的に(例えば、プライマー伸長)記録タグに転送され得る。コーディングタグの情報は、酵素的または化学的に記録タグに転送され得る。伸長記録タグは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200以上のコーディングタグの結合剤情報を含み得る。伸長記録タグの塩基配列は、それらのコーディングタグによって識別される結合剤の結合の時間的および連続的な順序を反映し得るか、コーディングタグによって識別される結合剤の結合の一部の連続的順序を反映し得るか、またはコーディングタグによって識別される結合剤の結合のいかなる順序も反映しない可能性がある。特定の実施形態において、伸長記録タグに存在するコーディングタグ情報は、分析されているポリペプチド配列を、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性で表す。伸長記録タグが分析されているポリペプチド配列を100%の同一性で表さない特定の実施形態において、エラーは、結合剤によるオフターゲットの結合、もしくは結合サイクルの「失敗」(例えば、結合サイクル中に結合剤がポリペプチドに結合できないことが原因で、プライマー伸長反応の失敗が原因で)、またはその両方に起因する可能性がある。
【0052】
本明細書で使用される場合、「伸長コーディングタグ」という用語は、コーディングタグが接合する結合剤の、記録タグが関連付けられたポリペプチドへの結合後に、少なくとも1つの記録タグ(またはその相補的配列)の情報が転送されているコーディングタグを指す。記録タグの情報は、直接的に(例えば、ライゲーション)または間接的に(例えば、プライマー伸長)コーディングタグに転送され得る。記録タグの情報は、酵素的または化学的に転送され得る。特定の実施形態において、伸長コーディングタグは、1つの結合事象を反映する1つの記録タグの情報を含む。本明細書で使用される場合、「ジタグ」または「ジタグ構築物」または「ジタグ分子」という用語は、コーディングタグが接合する結合剤の、記録タグが関連付けられたポリペプチドへの結合後に、少なくとも1つの記録タグ(またはその相補的配列)および少なくとも1つのコーディングタグ(またはその相補配列)の情報が転送されている核酸分子を指す。記録タグおよびコーディングタグの情報は、間接的に(例えば、プライマー伸長)ジタグに転送され得る。記録タグの情報は、酵素的または化学的に転送され得る。特定の実施形態において、ジタグは、記録タグのUMI、記録タグのコンパートメントタグ、記録タグのユニバーサルプライミング部位、コーディングタグのUMI、コーディングタグのエンコーダー配列、結合サイクル特異的バーコード、コーディングタグのユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」、「固体表面」、または「固体基質」、または「シーケンシング基質」、または「基質」という用語は、共有結合性の相互作用および非共有結合性の相互作用、またはそれらの任意の組み合わせを含む、当技術分野で既知の任意の手段によって、直接的または間接的にポリペプチドを関連付けることができる、多孔質材料および非多孔質材料を含めた任意の固体材料を指す。固体支持体は、二次元(例えば、平面)または三次元(例えば、ゲルマトリックスまたはビーズ)であり得る。固体支持体は、ビーズ、マイクロビーズ、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、フローセル、シグナル変換電子機器を含めたバイオチップ、チャネル、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、スピン干渉ディスク(spinning interferometry disc)、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ポリマーマトリックス、ナノ粒子、またはミクロスフェアを含むが、これらに限定されない任意の支持体表面であり得る。固体支持体の材料としては、アクリルアミド、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、金、石英、ポリスチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、官能化シラン、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、ポリアミノ酸、デキストラン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。固体支持体はさらに、薄膜、膜、ボトル、皿、繊維、織繊維、チューブなどの成形ポリマー、粒子、ビーズ、ミクロスフェア、微粒子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、固体表面がビーズである場合、ビーズは、セラミックビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリマービーズ、メチルスチレンビーズ、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、または制御多孔質ビーズを含むことができるが、これらに限定されない。ビーズは、球形であっても不規則な形状であってもよい。ビーズまたは支持体は、多孔質であり得る。ビーズのサイズは、ナノメートル、例えば100nm~数ミリメートル、例えば1mmまでの範囲であり得る。特定の実施形態において、ビーズのサイズは、約0.2ミクロン~約200ミクロン、または約0.5ミクロン~約5ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態において、ビーズは、直径約1、1.5、2、2.5、2.8、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、15、または20μmであり得る。特定の実施形態において、「ビーズ」固体支持体は、個々のビーズまたは複数のビーズを指す場合がある。いくつかの実施形態において、固体表面はナノ粒子である。特定の実施形態において、ナノ粒子のサイズは、直径が約1nm~約500nm、例えば、直径が約1nm~約20nmの間、約1nm~約50nmの間、約1nm~約100nmの間、約10nm~約50nmの間、約10nm~約100nmの間、約10nm~約200nmの間、約50nm~約100nmの間、約50nm~約150の間、約50nm~約200nmの間、約100nm~約200nmの間、または約200nm~約500nmの間の範囲である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、直径が約10nm、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約300nm、または約500nmであり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、直径が約200nm未満である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」という用語は、3’-5’ホスホジエステル結合によって連結されたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド、およびポリヌクレオチド類似体を指す。核酸分子としては、DNA、RNA、およびcDNAが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド類似体は、天然ポリヌクレオチドに見られる標準的なホスホジエステル結合以外の骨格、および、任意選択的に、リボースまたはデオキシリボース以外の修飾された糖部分を有し得る。ポリヌクレオチド類似体は、ワトソンクリック塩基対形成による、標準的なポリヌクレオチド塩基への水素結合が可能な塩基を含み、類似体骨格は、オリゴヌクレオチド類似体分子と標準的なポリヌクレオチドの塩基との間の配列特異的な様式でのそのような水素結合を可能にする方式で塩基を提示する。ポリヌクレオチド類似体の例としては、異種核酸(XNA)、架橋核酸(BNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、γPNA、モルフォリノポリヌクレオチド、ロックされた核酸(LNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-O-メチルポリヌクレオチド、2’-O-アルキルリボシル置換ポリヌクレオチド、ホスホロチオエートポリヌクレオチド、およびボロノホスフェートポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド類似体は、例えば、7-デアザプリン類似体、8-ハロプリン類似体、5-ハロピリミジン類似体、またはヒポキサンチン、ニトロアゾール、イソカルボスチリル類似体、アゾールカルボキサミド、および芳香族トリアゾール類似体、または親和性結合のためのビオチン部分などの追加の官能基(functionality)を有する塩基類似体を含む任意の塩基と対になることができるユニバーサル塩基類似体を含む、プリンまたはピリミジン類似体を有し得る。いくつかの実施形態において、核酸分子またはオリゴヌクレオチドは、修飾されたオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、核酸分子またはオリゴヌクレオチドは、偽相補的塩基を有するDNA、保護された塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、もしくはモルフォリノDNA、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、核酸分子またはオリゴヌクレオチドは、骨格修飾、糖修飾、または核酸塩基修飾される。いくつかの実施形態において、核酸分子またはオリゴヌクレオチドは、Allocなどの核酸塩基保護基、チランなどの求電子性保護基、アセチル保護基、ニトロベンジル保護基、スルホネート保護基、または従来の塩基不安定性保護基を有する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「核酸シーケンシング」は、核酸分子または核酸分子のサンプル中のヌクレオチドの順序の決定を意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「次世代シーケンシング」は、数百万~数十億の分子の並行したシーケンシングを可能にするハイスループットシーケンシング方法を指す。次世代シーケンシング方法の例としては、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、およびパイロシーケンシングが挙げられる。プライマーを固体基質に付着させ、相補配列を核酸分子に付着させることにより、プライマーを介して核酸分子を固体基質にハイブリダイズさせることができ、次いで、ポリメラーゼを使用して増幅することにより、固体基質上の別個の領域に複数のコピーを生成することができる(これらのグループ分けは、ポリメラーゼコロニーまたはポロニーと呼ばれる場合もある)。その結果、シーケンシングプロセス中に、特定の位置のヌクレオチドを複数回(例えば、数百回または数千回)シーケンシングすることができる。このカバレッジの深度は「ディープシーケンシング」と呼ばれる。ハイスループット核酸シーケンシング技術の例としては、Service(Science 311:1544-1546,2006)によってレビューされるように、Illumina、BGI、Qiagen、Thermo-Fisher、およびRocheによって提供されるプラットフォームを含み、パラレルビーズアレイ、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、キャピラリー電気泳動、電子マイクロチップ、「バイオチップ」、マイクロアレイ、並列マイクロチップ、および単一分子アレイなどの形式が挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「単一分子シーケンシング」または「第3世代シーケンシング」は、単一分子シーケンシング機器からの読み取りがDNAの単一分子のシーケンシングによって生成される次世代シーケンシング方法を指す。段階的アプローチでのシーケンシングのために多数のDNA分子を並行してクローン化するために増幅に依存する次世代シーケンシング方法とは異なり、単一分子シーケンシングはDNAの単一分子にインターロゲートし(interrogates)、増幅や同期を必要としない。単一分子シーケンシングには、各塩基の取り込み後にシーケンシング反応を一時停止する必要がある方法(「ウォッシュアンドスキャン」サイクル)と、読み取りステップ間で停止する必要がない方法が含まれる。単一分子シーケンシング方法の例としては、単一分子リアルタイムシーケンシング(Pacific Biosciences)、ナノポアベースのシーケンシング(Oxford Nanopore)、デュープレックスインタラプテッドナノポアシーケンシング、および高度な顕微鏡を使用するDNAの直接イメージングが挙げられる。
【0058】
本明細書で使用される場合、高分子を「分析する」とは、高分子の成分の全部または一部分を識別、定量化、特徴付け、区別すること、またはそれらの組み合わせを意味する。例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の分析には、ペプチドのアミノ酸配列(連続または非連続)の全部または一部分を決定することが含まれる。高分子の分析には、高分子の成分の部分的な識別も含まれる。例えば、高分子タンパク質配列中のアミノ酸の部分的な識別は、可能なアミノ酸のサブセットに属するものとしてタンパク質中のアミノ酸を識別することができる。分析は通常、n番目のNTAAの分析から始まり、ペプチドの次のアミノ酸(すなわち、n-1、n-2、n-3など)に進む。これは、n番目のNTAAを切断し、それによってペプチドの(n-1)番目のアミノ酸をN末端アミノ酸(本明細書では「(n-1)番目のNTAA」と呼ぶ)に変換することによって達成される。ペプチドの分析には、ペプチドの翻訳後修飾の存在および頻度決定も含まれ得る。これには、ペプチドの翻訳後修飾の順序に関する情報が含まれても、含まれなくてもよい。ペプチドの分析には、ペプチド中のエピトープの存在および頻度の決定も含まれ得る。これには、ペプチド内のエピトープの順序または位置に関する情報が含まれても、含まれなくてもよい。ペプチドの分析は、異なるタイプの分析の組み合わせ、例えば、エピトープ情報、アミノ酸配列情報、翻訳後修飾情報、またはそれらの任意の組み合わせの取得を含み得る。
【0059】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「からなる(consisting of)」、ならびに/または態様および実施形態「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含することが理解される。
【0060】
本開示を通じて、本発明の様々な態様が、範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲、およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示するとみなすべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、およびその範囲内の個々の数(例えば、1、2、3、4、5、および6)を具体的に開示するとみなすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0061】
本発明の他の目的、利点および特徴は、添付の図面と結び付けられた以下の明細書から明らかになるであろう。
【0062】
I.高分子を分析する方法
本明細書で提供されるのは、高分子を分析する方法であり、空間位置で記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、空間サンプル内の高分子の空間位置をその場で評価することと、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分にプローブタグを含む分子プローブを結合することと、分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することであって、プローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長することと、少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定することと、決定されたプローブタグの配列をその場で評価された分子プローブおよび/または空間位置と相関させることと、を含む。場合によっては、この方法は、決定されたプローブタグの配列を分子プローブと相関させることを含む(例えば、結合した分子プローブに関する同一性または結合情報/特性)。この方法を使用して、決定された伸長記録タグまたはその一部の配列からの情報を、その場で評価された空間位置と関連付けることができる。いくつかの態様において、空間サンプル内の高分子の空間位置をその場で評価することは、イメージングベースのアプローチ、例えば、蛍光イメージング、コンビナトリアルハイブリダイゼーションベースのアプローチ、および/またはその場のNGSシーケンシングを使用して実行される。
【0063】
いくつかの実施形態において、記録タグは、空間情報を含み得る。例えば、記録タグは、空間タグを含み得る。空間情報を提供する記録タグは、UMIの形式であり得る。いくつかの態様において、この方法は、記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供する第1のステップを含み、記録タグは、空間タグなどの空間情報を含む。空間タグは、記録タグに直接的または間接的に関連付けられ得るか、または接合され得る。この方法はまた、空間タグをその場で分析または評価することを含み得る。空間タグの分析または評価は、顕微鏡ベースの方法を使用して実行することができる。場合によっては、空間タグの分析または評価には、シーケンシング、例えば、ライゲーションによるシーケンシング、単一分子シーケンシング、単一分子蛍光シーケンシング、またはプローブ検出によるシーケンシングが含まれる。
【0064】
一般に、提供される方法は、空間タグをその場でデコーディングすることによって、または例えば、検出可能な標識を評価、例えば、観察して、高分子の位置もしくは高分子に近接する部分の空間情報を取得することを含む。空間情報は、サンプルに空間タグを提供する形態であり得、空間タグは、高分子と関連付けられた記録タグなどの高分子に転送される。いくつかの態様において、空間タグのデコーディングは、空間タグを記録タグに転送する前または後に実行することができる。いくつかの特定の場合では、空間タグのデコーディングは、空間サンプル内の高分子の空間位置をその場で評価することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、空間サンプル内の高分子の空間位置を評価することは、空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供し、空間タグをその場で評価して、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得することによって実行される。セクションIIに記載されるように、分子プローブ上の検出可能な標識を観察することによって、または空間プローブの空間タグをその場で評価することによって、両方の方法で、サンプル内の高分子の空間位置を(例えば、イメージングによって)観察する方法が可能になる。
【0066】
いくつかの実施形態において、空間サンプル内の高分子の空間位置をその場で評価することは、セクションIIIに記載されるように、検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合し、検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得することによって実行される。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示は、空間情報および1つ以上の分子プローブからの情報を含む、複数の情報源を記録タグに取り込むための記録方法を提供する。本発明の方法はまた、複数のペプチド(2つ以上のペプチド)の同時の検出、分析、および/またはシーケンシング、例えば、多重化を可能にする。同時にとは、本明細書で使用される場合、同じアッセイにおける複数のペプチドの検出、定量化、またはシーケンシングを指す。評価される複数のペプチドは、同じサンプル、例えば、生物学的サンプル、または異なるサンプルに存在し得る。評価される複数のペプチドは、異なるペプチド、または異なるサンプル内の同じペプチドであり得る。複数は、10個以上のペプチド、50個以上のペプチド、100個以上のペプチド、500個以上のペプチド、1000個以上のペプチド、10,000個以上のペプチド、100,000個以上のペプチド、または1,000,000個以上のペプチドである。いくつかの態様において、提供される方法は、空間情報を評価または決定した後のサンプル(またはその一部)の放出および処理を可能にし、さらに放出後にサンプルに対して他のステップを実行することを可能にする。
【0068】
II.空間プローブを使用して高分子を分析する
本明細書で提供されるのは、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を分析する方法であり、(a)記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供するステップと、(b1)空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供するステップと、(b2)空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、空間タグをその場で評価するステップと、(b3)空間プローブ内の空間タグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長するステップと、(c1)プローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合するステップと、(c2)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長するステップであって、空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長するステップと、(d)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定するステップと、(e)空間タグまたはその部分の配列、例えば、ステップ(d)で決定された空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を、ステップ(b2)で評価された空間タグと相関させ、それにより、ステップ(d)で決定された伸長記録タグの配列からの情報を、ステップ(b2)で評価された空間プローブの空間位置と関連付けるステップと、を含む。いくつかの実施形態において、高分子は、ポリペプチドである。いくつかの態様において、空間サンプル内の複数の高分子には、ステップ(a)において記録タグが提供される。いくつかの実施形態において、記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられ得るか、または付着され得る。いくつかの他の実施形態において、記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられていないか、または付着されていないが、空間サンプルに適用されるマトリックス、足場、または物質内の所定の位置に保持されている。
【0069】
いくつかの実施形態において、この方法は、少なくとも、伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定することを含む。いくつかの態様において、一連のプローブタグ(例えば、バーコード)および一連のプローブタグ(例えば、バーコード)の配列を使用して、伸長記録タグに含まれる情報を、関連付けられた高分子の空間位置と関連付ける。いくつかの実施形態において、分子プローブの標的および分子プローブによって結合される高分子の他の特徴を含む分子プローブの情報は、その場で評価される空間タグの空間位置と関連付けることができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、2つ以上の分子プローブによって順次結合され、任意の後続のプローブの結合前に、以前のプローブを除去する。
【0070】
提供されている方法のステップのうちのいくつかは、逆にするか、または様々な順序で実行することができる。例えば、ステップ(b2)は、ステップ(b3)の前または後に実行することができる。いくつかの実施形態において、ステップのうちの1つ以上を繰り返すことができる。好ましい実施形態において、分子プローブの結合および分子プローブと関連付けられたプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することは、空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供する前に実行される。例えば、ステップ(c1)および(c2)は、ステップ(d)および(e)を実行する前に、順番に2回以上繰り返すことができる。一例では、ステップ(a)、(c1)、(c2)、(b1)、(b2)、(b3)、(d)、および(e)は、順番に起こる。この方法は、空間プローブを空間サンプルに提供する前に、任意の空間プローブを除去すること、またはサンプルを分子プローブと結合する前に、サンプルから任意の空間プローブを除去することを含み得る。いくつかの実施形態において、この方法は、ステップ(c1)を繰り返す前に、空間サンプルから分子プローブを除去することを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(a)は、ステップ(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、(c2)、(d)、および(e)の前に実行される。場合によっては、ステップ(b1)は、ステップ(b2)、(d)、および(e)の前に実行される。いくつかの例では、ステップ(c1)および(c2)は、ステップ(d)およびステップ(e)の前に実行される。いくつかの態様において、ステップ(c1)および(c2)は、ステップ(b1)、(b2)、および/または(b3)の前または後に実行される。場合によっては、ステップ(d)は、ステップ(e)の前に実行される。いくつかの実施形態において、ステップ(b2)は、ステップ(a)、(b1)、(b3)、(c1)、および/または(c2)の後に実行される。いくつかの実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(a)(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、(c2)、および(d)の後に実行される。いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、実行されない。いくつかの実施形態において、この方法は、ステップ(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、および(c2)の後に高分子分析アッセイを実行することを含む。いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、ステップ(d)および(e)の前に実行される。
【0071】
いくつかの実施形態において、分析される伸長記録タグは、記録タグに順次転送される複数のプローブタグからの情報を含む。いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、少なくとも1つのプローブタグおよび空間タグからの情報を含む。いくつかのさらなる実施形態において、伸長記録タグは、少なくとも1つのプローブタグ、少なくとも1つの空間タグ、および少なくとも1つのコーディングタグから転送された情報を含む。
【0072】
提供される実施形態のうちのいくつかにおいて、分子プローブの空間サンプルへの結合、およびプローブタグから記録タグへの情報の転送は、1回以上繰り返すことができる。いくつかの態様において、任意の以前の分子プローブは、プローブタグからの情報を記録タグに転送した後、サンプルを任意の後続の分子プローブと結合する前に除去され得る。提供される方法のいくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に結合するか、または空間サンプル内の高分子に近接する部分に結合することによって、空間サンプルに結合する。いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に結合する、それと会合する、またはそれと複合体を形成する部分に結合する。いくつかの実施形態において、複数の分子プローブが、空間サンプルに適用される。いくつかの実施形態において、分子プローブは、選択的および/または特異的結合が可能である。いくつかの実施形態において、分子プローブは、他の高分子との複合体中の高分子に結合する。例えば、分子プローブは、ポリペプチドとの複合体中の核酸に結合することができ、ポリペプチドは、記録タグと関連付けられている。いくつかの特定の実施形態において、分子プローブは、記録タグが関連付けられるポリペプチドに結合する。
【0073】
いくつかの態様において、分子プローブは、任意のシーケンシング可能な分子を含み得るプローブタグを含む。いくつかの例では、プローブタグは、バーコードを含む。プローブタグの情報は、任意の好適な方法で記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、1つのプローブタグからの情報は、2つ以上の記録タグに転送され得る。いくつかの実施形態において、2つ以上のプローブタグからの情報は、1つの記録タグに転送され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、複数の空間プローブが、空間サンプルに適用される。いくつかの態様において、空間プローブは、切断可能なリンカーを介して支持体(例えば、ビーズ)に付着された空間タグを含む。いくつかの実施形態において、空間プローブは、選択的および/または特異的結合を示さない。例えば、複数の空間プローブは、空間タグを記録タグに転送するために、空間サンプル上にランダムに分散される。いくつかの実施形態において、空間プローブは、電荷相互作用、DNAハイブリダイゼーション、または可逆的化学カップリングなどの接着力を介して非特異的にサンプルと会合する。いくつかの実施形態において、空間サンプルに分散または適用された空間プローブは、限定された空間または領域に密に詰め込まれている。いくつかの例では、空間プローブは、固定化されたビーズのアレイとして提供される。例えば、空間タグは、空間タグ(またはその一部)に含まれる記録タグに相補的な配列のハイブリダイゼーションを介して記録タグと会合する。空間プローブは、任意のシーケンシング可能な分子を含み得る空間タグを含む。いくつかの例では、空間タグは、バーコードを含む。空間タグの情報は、任意の好適な方法で記録タグに転送される。
【0075】
いくつかの実施形態において、空間サンプルは、生物学的サンプルを含む。例えば、空間サンプルは、対象から得られた高分子、細胞、および/または組織を含み得る。いくつかの例では、空間サンプルは、無傷の組織または液体サンプルなどのサンプルに由来する。例えば、液体サンプルは、方法を実行する前に表面上に広げて堆積させることができる。いくつかの例では、空間サンプルは、分子プローブまたは空間プローブが空間サンプルに結合する前に、例えば、サンプルを透過処理、固定、および/または架橋試薬で処理することによって処理される。
【0076】
いくつかの実施形態において、プローブタグおよび空間タグからの情報を含む伸長記録タグを生成した後、複数の高分子を含むサンプルを処理して、高分子の放出を可能にすることができる。任意選択的に、空間サンプルまたはその任意の部分は、少なくとも1つのプローブタグおよび空間タグからの情報を記録タグに転送した後、固体支持体から除去することができる。したがって、本開示の方法は、固体支持体を洗浄して、高分子、細胞、組織、または他の材料を空間サンプルから除去するステップを含むことができる。空間サンプルまたはその任意の部分の除去は、任意の好適な技法を使用して実行することができ、サンプルに依存するであろう。場合によっては、固体支持体は、界面活性剤、洗剤、酵素(例えば、プロテアーゼおよびコラゲナーゼ)、切断試薬などの様々な添加剤を含む水で洗浄して、標本の除去を容易にすることができる。いくつかの実施形態において、固体支持体は、プロテイナーゼ酵素を含む溶液で処理される。いくつかの実施形態において、高分子は、標本が固体支持体から除去されている間または除去された後に放出される。固体支持体からのサンプルの放出は、トリプシン消化、掻き取り、化学的解離などを含むがこれらに限定されない物理的または化学的処理によって実行され得る。いくつかの実施形態において、プローブタグおよび空間タグからの(ならびに任意選択的にコーディングタグからの)情報を含む伸長記録タグを生成した後、伸長記録タグは、空間サンプルから放出される。いくつかの実施形態において、プローブタグおよび空間タグからの(ならびに任意選択的にコーディングタグからの)情報を含む伸長記録タグを生成した後、伸長記録タグが増幅される。いくつかの実施形態において、伸長記録タグに付着した放出された高分子を、高分子分析アッセイで使用することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、この方法は、高分子分析アッセイを実行することをさらに含む。いくつかの実施形態において、高分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)分析アッセイは、その場で実行される。いくつかの他の実施形態において、高分子分析アッセイは、関連付けられた記録タグを有する高分子が空間サンプルから放出された後に実行される。いくつかの例では、高分子分析アッセイは、ポリペプチド分析アッセイを含む。任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、高分子分析アッセイは、高分子を高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、コーディングタグの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することの1つ以上のサイクルを含む。結合剤からの識別情報は、ポリペプチドと関連付けられた記録タグに転送され、これはまた、プローブタグおよび空間タグから転送された情報を含む。したがって、いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、1つ以上のプローブタグ、1つ以上の空間タグ、1つ以上のコーディングタグ、および任意選択的に、任意の他の核酸成分からの情報を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、高分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)の少なくとも一部の配列を決定することを含む。場合によっては、この分析方法は、国際特許公開第2017/192633号に記載される方法のうちのいずれかを実行することを含み得る。場合によっては、ポリペプチドの配列は、ポリペプチド配列またはその一部、例えば、記録タグ(またはそれに付着された任意の追加のバーコードもしくはタグ)上の伸長核酸を表す、伸長核酸配列の構築によって分析される。いくつかの実施形態において、この方法は、高分子の配列の少なくとも一部または高分子の同一性を決定することと、ステップ(b2)で評価された空間位置と関連付けることと、をさらに含む。
【0079】
ポリペプチドを分析するための例示的なワークフローは、以下を含み得る:組織切片の空間サンプルが、固体支持体上に提供される。空間サンプルの高分子(例えば、タンパク質)が、記録タグで標識される。記録タグは、後の増幅に有用なユニバーサルプライミング部位を含み得る。各々がプローブタグを含む複数の分子プローブが、空間サンプルに適用され、サンプルに結合する。プローブタグからの情報は、ライゲーションまたは伸長などの好適な方法によって、タンパク質に付着した記録タグに転送される。プローブタグから情報を転送した後、分子プローブを除去、放出、または洗浄することができる。任意選択的に、追加ラウンドの分子プローブとの結合およびプローブタグから記録タグへの情報の転送を実行することができる。光切断可能なリンカーを介してビーズに付着された複数のプローブタグ(バーコードを含む)を有するビーズを各々が含む複数の空間プローブは、空間サンプル上にランダムに分配される。空間プローブ(例えば、ビーズ)上の空間タグは、サンプル内の空間タグの空間位置の情報を提供するためにその場で決定される。バーコードは、空間プローブの他の構成要素(例えば、ビーズ)から切断され、組織切片に拡散し、タンパク質に付着した記録タグ上で相補的DNAとハイブリダイズする。組織切片をポリメラーゼ伸長混合物に曝露して、鋳型として機能するハイブリダイズしたバーコードからDNA記録タグにバーコード情報を転送する。プローブタグおよび空間タグからの情報を伸長記録タグに転送した後、ポリペプチドおよび付着した記録タグが、空間サンプルから放出される。任意選択的ステップでは、ポリペプチドを消化し、ポリペプチド分析アッセイを任意選択的に実行することができ、ポリペプチドおよび関連付けられた記録タグ(空間タグおよびプローブタグからの情報を含む)を、適切な分子内間隔で、単一分子シーケンシング基質(例えば、ビーズ)上にランダムに固定化することができる。伸長記録タグと関連付けられたポリペプチドに対してポリペプチド分析アッセイを実行する場合、コーディングタグからのさらなる識別情報が、伸長記録タグに転送される。伸長記録タグの配列の少なくとも一部(そこに空間タグおよびプローブタグからの情報が含まれている)が決定される。このワークフローを使用して、伸長記録タグと関連付けられたポリペプチドに関する情報は、それが発生した空間サンプル内のポリペプチドの空間位置と関連付けられる。
【0080】
本明細書に記載の方法は、空間サンプル(例えば、生物学的標本)の画像を取得する1つ以上のステップを含むことができる。いくつかの実施形態において、空間サンプルまたはその一部の2つ以上の画像が取得される。場合によっては、この方法は、2つ以上の画像を比較、整列、および/またはオーバーレイすることを含む。イメージングは、固体支持体と接触している空間サンプルで実行することができる。当技術分野で知られている検出デバイスを使用して、画像を取得することができる。例としては、光、明視野、暗視野、位相差、蛍光、反射、干渉、または共焦点イメージング用に構成された顕微鏡が挙げられる。生物学的標本をイメージングの前に染色して、異なる領域または細胞間のコントラストを提供することができる。いくつかの実施形態において、複数の染色を使用して、標本の異なる側面(例えば、組織の異なる領域、異なる細胞、特定の細胞内成分など)をイメージングすることができる。他の実施形態において、生物学的標本は、染色せずにイメージングすることができる。いくつかの実施形態において、この方法は、空間サンプルから得られた2つ以上の画像をオーバーレイして、合成画像を生成することを含む。
【0081】
光、明視野、暗視野、位相差、蛍光、反射、干渉、および/または共焦点イメージング用に構成された顕微鏡を含む検出システムを、方法の1つ以上のステップと組み合わせて使用することができる。検出システムとしては、電子スピン共鳴(ESR)検出システム、電荷結合素子(CCD)検出システム(例えば、放射性同位元素用)、蛍光検出システム、電気検出システム、写真フィルム検出システム、化学発光検出システム、酵素検出システム、原子力顕微鏡(AFM)検出システム(マイクロビーズの検出用)、走査型トンネル顕微鏡(STM)検出システム(マイクロビーズの検出用)、光学検出システム、近接場検出システム、または全内部反射(TIR)検出システムを挙げることができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、この方法は、サンプルの画像内の位置を空間タグと相関させることを含む。画像で識別可能な生物学的標本を含む空間サンプルの他の特性を取得することができる。例えば、細胞形状、細胞サイズ、組織形状、染色パターン、特定のタンパク質の存在(例えば、免疫組織化学的染色によって検出される)、または病理学もしくは研究応用で日常的に評価される他の特性を含む、様々な形態学的特性のうちのいずれかを取得することができる。したがって、目視観察によって決定された組織またはその成分の生物学的状態を取得することもできる。
【0083】
A.サンプル
一態様において、本開示は、サンプルからの高分子の分析に関する。高分子は、より小さなサブユニットから構成される大きな分子であり得る。特定の実施形態において、高分子は、タンパク質、タンパク質複合体、ポリペプチド、ペプチド、核酸分子、炭水化物、脂質、大員環、またはキメラ高分子である。いくつかの実施形態において、高分子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである。
【0084】
いくつかの実施形態において、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)は、生物学的サンプルであるサンプルから取得される。いくつかの実施形態において、サンプルは、哺乳動物またはヒトの細胞、酵母細胞、および/または細菌細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、サンプルは、多細胞生物から得られたサンプルに由来する細胞を含む。例えば、サンプルは、個体から単離され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、単一の細胞型または複数の細胞型を含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、例えば、穿刺、または他の収集もしくはサンプリング手順によって、哺乳類生物またはヒトから取得され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、2つ以上の細胞を含む。
【0085】
サンプルは、解剖学的特徴、形態学的特徴、細胞特徴、および/または細胞内特徴の空間配置および/または位置に関する情報が望まれ得る空間サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、当技術分野で知られている方法によってさらに処理される。例えば、サンプルは、細胞材料を(例えば、遠心分離、濾過などによって)除去する、取り除く、または単離するために処理される。空間サンプルは、サンプルの構成要素、部分、または領域が空間的に参照され得るように配置された(例えば、スライド上の組織切片などの平面形式で配置された)生物学的サンプルを指し得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、全細胞および/または生細胞および/または細胞破片を含み得る。いくつかの例では、好適な供給源またはサンプルとしては、事実上すべての生物の生物学的サンプル、例えば、生検サンプル、細胞培養物、細胞(初代細胞および培養細胞株の両方)、細胞小器官または小胞を含むサンプル、組織および組織抽出物を挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、好適な供給源またはサンプルとしては、生検;糞便物質;体液(血液、全血、血清、血漿、尿、リンパ液、胆汁、房水、母乳、耳垢(耳垢(earwax))、乳び、粥状液、内リンパ、外リンパ、滲出液、脳髄液、間質液、水性もしくは硝子体液、初乳、痰、羊水、唾液、肛門および膣の分泌物、胃酸、胃液、リンパ液、粘液(鼻汁および痰を含む)、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、唾液、皮脂(皮膚の油)、痰(sputum)、滑液、汗および精液、漏出液、嘔吐物およびそれらの1つ以上の混合物、滲出液(例えば、膿瘍から得られた流体または感染症もしくは炎症の任意の他の部位)あるいは好ましくはマイクロバイオーム含有サンプルを含む哺乳動物由来のサンプル、および特に好ましくはマイクロバイオーム含有サンプルを含むヒト由来のサンプルを用いて、事実上すべての生物の関節から得られた流体(正常な関節またはリウマチ性関節炎、骨関節炎、痛風、もしくは化膿性関節炎などの疾患に罹患した関節);環境サンプル(空気、農業、水、および土壌サンプル);微生物バイオフィルムおよび/または微生物群、ならびに細菌胞子由来のサンプルを含む微生物サンプル;組織切片を含む組織サンプル、細胞外液を含む研究サンプル、細胞培養物からの細胞外上清、細菌内の封入体、ミトコンドリアおよび細胞ペリプラズムを含む細胞成分を挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、体液を含むか、または体液に由来し、体液は、哺乳動物またはヒトから得られる。いくつかの実施形態において、サンプルは、体液、または体液からの細胞培養物を含む。提供される実施形態のうちのいずれかのいくつかにおいて、流体サンプルなどのサンプルは、表面上に堆積され得る。例えば、液体サンプルを処理して、スライドなどの固体表面上に広がる細胞を調製することができる。いくつかの実施形態において、サンプルまたはその一部(サンプルから得られた分析物または細胞など)は、ポリマー樹脂中に堆積され得る。場合によっては、ポリマー樹脂は、ヒドロゲルを形成する天然または合成ポリマーを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、サンプルは、組織サンプルである。組織は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかで使用するための任意の便利なまたは所望の方法で調製することができる。新鮮な、凍結した、固定された、または固定されていない組織を使用することができる。組織は、本明細書に記載される方法または当技術分野で知られている方法を使用して調製、固定、または包埋することができる(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb prot4991、Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36、Fischer et al.,CSH Protoc.(2008)pdb.prot4988)。組織は、生物から新たに切除することができるか、または例えば凍結、パラフィンなどの材料への包埋(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋サンプル)、ホルマリン固定、浸潤、脱水などによって以前に保存されている可能性がある。いくつかの例では、マトリックス形成材料を使用して、組織サンプルなどの生物学的サンプルをカプセル化することができる。場合によっては、サンプルは、パラフィンブロックに包埋される。例えば、空間サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片であってもよい。任意選択的に、組織切片は、例えば、核酸、細胞、ウイルス、ビーズなどを固体支持体に付着させることに関して本明細書に例示される技法および組成物を使用して、固体支持体に付着され得る(Ramos-Vera et al.,J Vet Diagn Invest.(2008)20(4):393-413)。さらなる任意選択として、組織が固体支持体と接触しているときに、組織を透過処理し、組織の細胞を溶解することができる。標準的な条件および試薬は、任意の好適な洗剤、Triton X-100、エトキシル化ノニルフェノール(Tergitol型NP-40)、Tween 20、サポニン、ジギトニン、またはアセトン(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36)とのインキュベーションを含む組織透過処理に使用され得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、サンプルは、実質的に平面である、すなわち、二次元である「平面サンプル」である。いくつかの実施形態において、サンプルは、基質に堆積されるか、または固体表面上に堆積される。いくつかの実施形態において、サンプルは、三次元サンプルである。いくつかの例では、材料または基質(例えば、ガラス、金属、セラミック、有機ポリマー表面もしくはゲル)は、細胞、またはタンパク質、核酸、脂質、オリゴ/多糖類、生体分子複合体、細胞小器官、細胞外小胞、細胞破片もしくは排泄物などの、細胞に由来する生体分子の任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、平面細胞サンプルは、例えば、細胞またはその一部を平面上に沈着させることによって、例えば、遠心分離によって、細胞を含む三次元物体を切片に切断し、切片を平面に載置することによって作製することができ、すなわち、組織切片を産生する。いくつかの実施形態において、サンプルは、組織切片であり、対象から得られ、固定され、切片化され(例えば、凍結切片化され)、平面表面、例えば、顕微鏡スライド上に載置された組織の小片を指す。
【0089】
いくつかの実施形態において、空間サンプル(例えば、標本または組織サンプル)は、サンプルを伸長するために処理される。いくつかの態様において、空間サンプルは、化学プロセスを使用して等方的に保存および伸長される。例えば、組織サンプルを処理して、空間サンプル内の生体分子にアンカーを付着させ、ポリマー合成をその場で実行し、機械的均質化を実行し、標本伸長を実行することができる(例えば、Zhao et al.,Nature Biotechnology(2017)35(8):757-764、Chang et al.,Nature Methods(2017)14:593-599、Chang et al.,Nature Methods(2016)13(8):679-84、Tillberg et al.,Nature Biotechnology(2016)34:987-992、Chen et al.,Science(2015)347(6221):543-548、Asano et al.,Current Protocols in Cell Biology(2018)80(1):e56、Wassie et al.,Nature Methods(2018)16(1):33-41、Boyden et al.,Mater.Horiz.,(2019)6,11-13、Alon et al.,FEBS J.2019 Apr;286(8):1482-1494.Karagiannis et al.,Current Opinion in Neurobiology(2018)50:56-63、Gao et al.,BMC Biology(2017)15(1):50を参照)。
【0090】
いくつかの実施形態において、この方法は、単一の細胞型または複数の細胞型から高分子(例えば、ポリペプチドおよびタンパク質)を取得および調製することを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞の集団を含む。いくつかの実施形態において、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)は、細胞もしくは細胞内成分、細胞外小胞、細胞小器官、またはそれらの組織化された副成分に由来する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、分子の1つ以上のパッケージングからのものである(例えば、単一細胞の別個の成分、または細胞小器官もしくは小胞などの細胞の集団から単離された別個の成分)。高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)は、細胞小器官、例えば、ミトコンドリア、核、または細胞小胞に由来し得る。一実施形態において、1つ以上の特定のタイプの単一細胞またはそのサブタイプを単離することができる。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、細胞小器官(例えば、核、ゴルジ装置、リボソーム、ミトコンドリア、小胞体、葉緑体、細胞膜、小胞など)を含み得るが、これらに限定されない。
【0091】
1.固定および透過処理
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、1つ以上の固定(例えば、架橋)および/または透過処理ステップをさらに含む。特定の実施形態において、分析のための高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を含むサンプルは、固定および/または透過処理され得る。例えば、穴または開口部は、細胞の膜および/または任意の細胞内成分に形成され得る。細胞、細胞内構造および成分、または生体分子は、ホルマリン、メタノール、エタノール、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、メタノール:酢酸、グルタルアルデヒド、二官能性架橋剤、例えば、ビス(スクシンイミジル)スベレート、ビス(スクシンイミジル)ポリエチレングリコールなどを含むが、これらに限定されない任意の数の試薬を使用して固定することができる。
【0092】
いくつかの例では、本明細書で提供されるタンパク質を処理し、タンパク質を分析する方法は、方法の任意のステップでサンプルを固定することを含み得る。場合によっては、サンプルの固定は、サンプルを透過処理する前に実行される(例えば、細胞または他の膜を透過処理する)。いくつかの例では、サンプルの固定は、サンプルを透過処理した後に実行される。いくつかの実施形態において、サンプルは、空間サンプル内のタンパク質に記録タグを提供する前に、固定または架橋される。いくつかの実施形態において、サンプルは、空間サンプルを1つ以上の分子プローブと結合する前に透過処理される。
【0093】
いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞および細胞内成分が固定化されるか、または所定の位置に保持されるように、固定または架橋され得る。いくつかの実施形態において、サンプル内の高分子(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、脂質)は、含まれる分子が細胞または細胞内成分内に固定化されるように固定または架橋され得る。いくつかの実施形態において、サンプル(例えば、細胞および細胞内成分)は、サンプル内の分子の空間位置が維持されるように固定される。
【0094】
場合によっては、サンプルは、固定されて組織内または細胞構造内のタンパク質を架橋し、脂質膜を安定化させることができる。いくつかの例では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のホルムアルデヒドを使用して、サンプルを固定する。固定の標準的な方法は既知であり、1×PBS中の0.5~5%ホルムアルデヒドと10~30分間インキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、メタノールまたはエタノール中でのインキュベーションによって固定される。いくつかの実施形態において、固定後、サンプルは透過処理され、酵素およびDNAタグ(例えば、記録タグ、プローブタグ、空間タグもしくはそれらのコピー、バーコード、または他の核酸)による構造成分の内部へのアクセスを可能にするように処理される。
【0095】
いくつかの実施形態において、1つ以上の洗浄ステップは、固定および/または透過処理の前および/または後に実行される。市販の固定および透過処理キットを使用して、サンプルを調製することができる。いくつかの実施形態において、サンプルの固定または架橋を逆転させることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、サンプルの固定または架橋の逆転は、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)および関連付けられた記録タグを空間サンプルから単離する前に実行される。いくつかの実施形態において、サンプルの固定または架橋の逆転は、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)および関連付けられた記録タグを空間サンプルから単離した後に実行される。例えば、架橋は、架橋されたサンプルを高塩(およそ200mMのNaCl)中、65℃で約4時間以上インキュベートすることによって逆転させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、組織サンプルは、空間サンプルから高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド)を放出、捕捉、または処理する前に、サンプルから包埋材料を除去する(例えば、パラフィンもしくはホルマリンを除去する)ように処理される。これは、サンプルを適切な溶媒と接触させること(例えば、キシレンおよびエタノール洗浄)によって達成され得る。処理は、組織サンプルを本明細書に記載の固体支持体と接触させる前に起こり得るか、または処理は、組織サンプルが固体支持体上にある間に起こり得る。
【0098】
2.記録タグを提供する
本明細書で提供される方法は、記録タグを有する1つ以上の高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を含む空間サンプルを提供することを含む。いくつかの実施形態において、空間サンプルには、複数の記録タグが提供される。いくつかの態様において、空間サンプル内の複数の高分子には、記録タグが提供される。記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられ得るか、または付着され得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、任意の好適な手段を使用して高分子に付着される。いくつかの実施形態において、高分子は、1つ以上の記録タグと関連付けられ得る。いくつかの態様において、記録タグは、プローブタグ、空間タグからの情報、および任意選択的に1つ以上のコーディングタグの識別情報を転送することができる、任意の好適なシーケンシング可能な部分であり得る。記録タグは、分子プローブまたは空間プローブからの情報などの情報を転送または記録できる部分として機能する。
【0099】
いくつかの他の実施形態において、記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられていないか、または付着されていないが、空間サンプルに適用されるマトリックス内の所定の位置に保持されている。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、マトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)、足場、または記録タグを含む他の物質に曝露される。例えば、Gao et al.,BMC Biology(2017)15:50)を参照されたい。例えば、マトリックスは、ヒドロゲルポリマー鎖を含み得る。いくつかの実施形態において、空間サンプル(例えば、生体組織または標本)は、化学的に固定され、生体分子がヒドロゲルポリマー鎖につながれるように高分子に結合する化合物で処理される。例えば、間隔が狭く、密に架橋された、高電荷のモノマーで作製されたヒドロゲルは、空間サンプル内の細胞または組織全体に均一に重合され、空間サンプル内の高分子と生体分子の間および周囲に挿入される。場合によっては、包埋された空間サンプルは、構造分子の変性および/または消化を伴う機械的均質化ステップにさらされる可能性がある。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、標本-ヒドロゲル複合材料を含む。
【0100】
提供される方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のプローブタグ、空間タグ、および/またはコーディングタグからの情報が、記録タグに転送される。記録タグは、他の核酸成分を含み得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、固有の分子識別子、コンパートメントタグ、パーティションバーコード、サンプルバーコード、画分バーコード、プローブタグから転送された情報、空間タグから転送された情報、スペーサー配列、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、結合剤識別子(例えば、コーディングタグから)、サイクル識別子(例えば、コーディングタグから)などの高分子分析アッセイからの情報を含む他の情報をさらに含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの記録タグは、高分子(例えば、ポリペプチド)と直接的または間接的に関連付けられるか、または共局在化する。特定の実施形態において、単一の記録タグは、好ましくは、N末端またはC末端アミノ酸への付着を介して、ポリペプチドに付着される。別の実施形態において、複数の記録タグは、ポリペプチドに、例えば、リジン残基またはペプチド骨格に付着される。いくつかの実施形態において、複数の記録タグで標識されたポリペプチドは、より小さなペプチドに断片化または消化され、各ペプチドは、平均して1つの記録タグで標識される。
【0102】
いくつかの実施形態において、記録タグを備えた高分子の密度または数は、制御または滴定される。他の実施形態において、空間サンプルに適用される記録タグを含むマトリックスまたは物質は、記録タグの所望の密度について滴定される。例えば、高分子の空間位置を評価するために使用される方法に対応するために、空間サンプルの中または上に記録タグを適切に配置することが望ましい場合がある。場合によっては、空間サンプル内の高分子と関連付けられた記録タグの量または密度が、サンプルの表面上またはサンプルの体積内で滴定される。
【0103】
いくつかの例では、サンプル内の記録タグの所望の間隔、密度、および/または量は、希釈された、または制御された数の記録タグを提供することによって滴定され得る。いくつかの例では、記録タグを提供する、関連付ける、および/または付着させときに、競合または「ダミー」競合分子をスパイクすることによって、記録タグの所望の間隔、密度、および/または量を達成することができる。場合によっては、「ダミー」競合分子は、サンプル内の高分子に関連付けられている、または付着されている記録タグと同じように反応するが、競合分子は、記録タグとして機能しない。いくつかの特定の例では、所望の密度が、サンプル内の付着に利用可能な1,000部位当たり1つの機能的記録タグである場合、1,000の「ダミー」競合分子ごとに1つの機能的記録タグにおけるスパイクを使用して、所望の間隔を達成する。いくつかの例では、機能的記録タグの比率は、競合分子の反応速度と比較した機能的記録タグの反応速度に基づいて調整される。
【0104】
記録タグは、DNA、RNA、もしくはPNA、γPNA、GNA、BNA、XNA、TNAを含むポリヌクレオチド類似体、他のポリヌクレオチド類似体、またはそれらの組み合わせを含み得る。記録タグは一本鎖、または部分的または完全に二本鎖であり得る。記録タグは、平滑末端または突出末端を有する場合がある。記録タグは、少なくとも、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、75、または100アミノ酸の長さを有することができるアミノ酸の配列を含み得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、ペプチドまたはアミノ酸の配列を含み得る。場合によっては、記録タグは、アミノ酸の配列(例えば、ペプチドバーコード)を付着または付加することを可能にする部分である。
【0105】
特定の実施形態において、サンプル内の高分子のすべてのまたは実質的な量(例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)は、記録タグで標識される。他の実施形態において、サンプル内の高分子のサブセットは、記録タグで標識される。特定の実施形態において、サンプルからの高分子のサブセットは、記録タグでの標的化(分析物特異的)標識を受ける。例えば、タンパク質の標的化記録タグ標識は、標的タンパク質特異的結合剤(例えば、抗体、アプタマーなど)を使用して達成され得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、その場で空間サンプル内の高分子に付着される。いくつかの実施形態において、記録タグは、固体支持体上にサンプルを提供する前に高分子に付着される。いくつかの実施形態において、記録タグは、固体支持体上にサンプルを提供した後、高分子に付着される。
【0106】
いくつかの実施形態において、記録タグはまた、バーコードを識別するサンプルを含むことができる。サンプルバーコードは、単一の反応容器内のサンプルのセットの多重分析に有用であるか、または単一の固体基質もしくは固体基質の集合(例えば、平面スライド、単一のチューブもしくは容器に含まれるビーズの集団など)に固定化される。例えば、多くの異なるサンプルからの高分子を、サンプル固有のバーコードが付いた記録タグで標識し、次いで、すべてのサンプルを一緒にプールした後、固体支持体への固定化、結合剤の周期的結合、および記録タグ分析を行うことができる。あるいは、DNAコードライブラリーの作成後までサンプルを分離しておき、サンプルバーコードをDNAコードライブラリーのPCR増幅中に付着させ、次いで、ともに混合した後、シーケンシングを行うこともできる。このアプローチは、異なる豊度クラス(abundance classes)の分析物(例えば、タンパク質)をアッセイする際に役立ち得る。
【0107】
特定の実施形態において、記録タグは、固有の分子識別子(UMI)が関連付けられた各高分子(例えば、ポリペプチド)に固有の識別子タグを提供する、任意選択的なUMIを含む。UMIは、約3~約40個の塩基、約3~約30個の塩基、約3~約20個の塩基、または約3~約10個の塩基、または約3~約8個の塩基であり得る。いくつかの実施形態において、UMIは、約3の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、16個の塩基、17個の塩基、18個の塩基、19個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、30個の塩基、35個の塩基、または40個の塩基の長さである。UMIを使用して、複数の伸長記録タグからのシーケンシングデータをデコンボリューションして、個々の高分子からの配列リードを識別することができる。いくつかの実施形態において、高分子のライブラリー内で、各高分子は、単一の記録タグと関連付けられ、各記録タグは、固有のUMIを含む。他の実施形態において、記録タグの複数のコピーは、単一の高分子と関連付けられ、記録タグの各コピーは、同じUMIを含む。いくつかの実施形態において、UMIは、配列分析中にこれらの成分を区別することを容易にするために、結合剤のコーディングタグ内のスペーサーまたはエンコーダー配列とは異なる塩基配列を有する。いくつかの実施形態において、UMIは、位置識別子としての機能を提供し得、また、高分子分析アッセイにおいて情報を提供し得る。例えば、UMIを使用して、同一系統であり、したがって同じ初期分子に由来する分子を識別することができる。いくつかの態様において、この情報を使用して、増幅の変動を補正する、ならびにシーケンシングエラーを検出および補正することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、記録タグは、空間情報を含み得る。例えば、記録タグは、場合によっては、空間タグとして機能し得るUMIを含み得る。
【0109】
特定の実施形態において、記録タグは、ユニバーサルプライミング部位、例えば、フォワードまたは5’ユニバーサルプライミング部位を含む。ユニバーサルプライミング部位は、ライブラリー増幅反応のプライミングおよび/またはシーケンシングに使用することができる核酸配列である。ユニバーサルプライミング部位には、PCR増幅用のプライミング部位、フローセル表面上の相補的オリゴヌクレオチドにアニーリングするフローセルアダプター配列(例えば、Illuminaの次世代シーケンシング)、シーケンシングプライミング部位、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ユニバーサルプライミング部位は、約10塩基~約60塩基であり得る。いくつかの実施形態において、ユニバーサルプライミング部位は、Illumina P5プライマー(5’-AATGATACGGCGACCACCGA-3’-配列番号1)またはIllumina P7プライマー(5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT-3’-配列番号2)を含む。
【0110】
記録タグは、標的高分子、例えば、標的タンパク質上に存在する同族の反応性部分に対する反応性部分を含み得る(例えば、クリック化学標識、光親和性標識)。例えば、記録タグは、アルキン誘導体化タンパク質と相互作用するためのアジド部分を含み得るか、または記録タグは、天然タンパク質などと相互作用するためのベンゾフェノンを含み得る。標的タンパク質特異的結合剤による標的タンパク質の結合時に、記録タグおよび標的タンパク質は、それらの対応する反応性を介してカップリングされる。標的タンパク質を記録タグで標識した後、標的タンパク質特異的結合剤を、標的タンパク質特異的結合剤に連結されたDNA捕捉プローブの消化によって除去してもよい。例えば、DNA捕捉プローブは、ウラシル塩基を含むように設計され得、次に、ウラシル特異的切除試薬(例えば、USER(商標))による消化の標的とされる。標的タンパク質特異的結合剤は、標的タンパク質から解離され得る。いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーション以外の他のタイプの連結を使用して、記録タグを高分子に連結することができる。好適なリンカーは、内部位置における3’末端などの記録タグの様々な位置に、または記録タグの5’末端に付着したリンカー内に付着させることができる。
【0111】
B.分子プローブ
本明細書で提供される方法は、1つ以上の分子プローブの空間サンプルへの結合を含む。いくつかの実施形態において、分子プローブは、プローブタグを含む。1つ以上の高分子を含む空間サンプルに1つ以上の記録タグを提供した後、この方法は、1つ以上の分子プローブを空間サンプルに適用および結合することを含む。いくつかの実施形態において、空間サンプルを1つ以上の分子プローブと結合する前に、空間サンプルをブロッキング剤で処理する。分子プローブは、空間サンプル内の高分子または空間サンプル内の高分子に近接する部分に結合し得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、2つ以上の分子プローブが、空間サンプルに適用される。複数の分子プローブが使用される場合には、同じ同一性の分子プローブが、同じプローブタグと関連付けられ得る。1つ以上の分子プローブを順次適用することができるか、または複数の分子プローブを同時に適用することができる。場合によっては、この方法は、2つ以上のプローブタグを記録タグに連続的に転送することからの組み合わせ情報をデコーディングすることを含み得る。いくつかの実施形態において、複数の高分子および関連付けられた伸長記録タグは、プローブタグから転送された同じバーコードを含み得る。
【0113】
分子プローブは、空間サンプルを結合するのに適した任意の組成物から構成され得る。いくつかの例では、分子プローブは、空間サンプルに結合する、それと会合する、それと一体化する、それを認識する、またはそれと組み合わされる核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、または小分子を含む。分子プローブは、空間サンプルまたは空間サンプルの成分と共有結合性会合または非共有結合性会合を形成し得る。いくつかの態様において、分子プローブは、空間サンプルまたは空間サンプルの成分と可逆的会合を形成し得る。分子プローブは、核酸分子-ペプチドキメラ分子プローブまたは炭水化物-ペプチドキメラ分子プローブなどの2つ以上のタイプの分子から構成されるキメラ分子であり得る。分子プローブは、天然に存在するか、合成的に産生されるか、または組換え的に発現される分子であり得る。分子プローブは、線状分子または三次元構造(立体配座とも呼ばれる)を有する分子に結合し得る。
【0114】
いくつかの例では、分子プローブは、抗体、抗原結合抗体断片、単一ドメイン抗体(sdAb)、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ由来可変ドメイン(vNAR)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、線状抗体、ダイアボディ、アプタマー、ペプチド模倣分子、融合タンパク質、反応性もしくは非反応性小分子、または合成分子を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、分子プローブは、マイクロタンパク質(システインノットタンパク質、ノッチン)、DARPin;テトラネクチン(Tetranectin);アフィボディ(Affibody);アフィマー(Affimer)、トランスボディ(Transbody);アンチカリン(Anticalin);AdNectin;アフィリン(Affilin);マイクロボディ(Microbody);ペプチドアプタマー;アルターラーゼ;プラスチック抗体;フィロマー(phylomer);ストラドボディ(stradobody);マキシボディ(maxibody);エビボディ(evibody);フィノマー(fynomer)、アルマジロ反復タンパク質、クニッツドメイン、アビマー(avimer)、アトリマー(atrimer)、プロボディ(probody)、イムノボディ、トリオマブ(triomab)、トロイボディ(troybody);ペプボディ(pepbody);ワクチボディ(vaccibody)、UniBody;DuoBody、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ペプチド模倣分子、または合成分子を含む(例えば、Nelson,MAbs(2010)2(1):77-78、Goltsev et al.,Cell.2018 Aug 9;174(4):968-981を参照、または米国特許第5,475,096号、同第5,831,012号、同第6,818,418号、同第7,166,697号、同第7,250,297号、同第7,417,130号、同第7,838,629号、米国特許公開第2004/0209243号、および/または2010/0239633号に記載されるとおり)。
【0116】
いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプルに化学的に結合する、共有結合する、および/または可逆的に結合することができる。いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に結合する、それと会合する、またはそれと複合体を形成する部分に結合する。いくつかの例では、分子プローブは、高分子(例えば、標的高分子)、高分子に近接する部分、または空間サンプル内の高分子に会合または結合する部分に結合する。いくつかの実施形態において、分子プローブは、高分子に近接する部分に結合し、その結果、プローブタグからの情報の転送を記録タグに転送することができ、分子プローブとの会合を可能にする。例えば、高分子と高分子に近接する部分との間の距離は、約10nm~100nm、約10nm~500nm、約10nm~1,000nm、約10nm~5,000nm、約100nm~300nm、約100nm~600nm、約100nm~1,000nm、約100nm~5,000nm、約300nm~600nm、約300nm~1,000nm、または300nm~5,000nmである。場合によっては、分子プローブが高分子に結合している場所に関係なく、記録タグがプローブタグに近接していると、プローブタグから記録タグへの情報の転送が起こり得る。いくつかの実施形態において、分子プローブは、様々な長さであり得るリンカーを介してプローブタグに付着される。場合によっては、分子プローブとプローブタグとの間のリンカーの長さは、分子プローブに近接する部分と分子プローブとの間の距離を増加させることができ、分子プローブへの会合を可能にする。いくつかの実施形態において、高分子への部分の近接性は、プローブタグを付着させるために分子プローブにおいて使用される任意のリンカーの長さに依存し得る。
【0117】
いくつかの例において、標的化部分は、核酸、炭水化物、脂質、ポリペプチド、ポリペプチドの翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない高分子に結合するように構成される。いくつかの実施形態において、標的化部分は、タンパク質特異的標的化部分、エピトープ特異的標的化部分、または核酸特異的標的化部分である。場合によっては、分子プローブは、細胞表面マーカーに結合するように構成されている。いくつかの実施形態において、標的化部分は、ポリペプチドまたはアミノ酸の翻訳後修飾(PTM)に結合する。PTMの例としては、リン酸化、ユビキチン化、メチル化、アセチル化、グリコシル化、酸化、脂質化、ニトロシル化、SUMO化、ユビキチン化などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態において、分子プローブは、特異的または部分的に特異的な結合が可能な標的化部分を含む。いくつかの実施形態において、分子プローブは、特異的および/または選択的結合が可能な標的化部分を含む。構造特異的結合剤の例としては、タンパク質標的に結合し得るタンパク質特異的分子を挙げることができる。好適なタンパク質特異的分子の例としては、抗体および抗体断片、核酸(例えば、タンパク質標的を認識するアプタマー)、またはタンパク質基質を挙げることができる。いくつかの実施形態において、標的化部分の標的は、抗原を含み得、分子プローブは、抗体を含み得る。好適な抗体は、それらが標的抗原に特異的に結合する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、または抗体断片を含み得る。いくつかの実施形態において、分子プローブは、特定の標的核酸配列などの核酸に特異的に結合するように構成された部分または核酸成分を含む。
【0119】
本明細書で提供される分子プローブは、任意選択的に、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、および当技術分野で知られている様々な酵素基質標識を含むがこれらに限定されない、好適な検出可能な標識を含み得る。いくつかの実施形態において、検出可能な標識からのシグナルは、二次プローブを一次分子プローブに結合することによって増幅することができる。例えば、二次プローブは、蛍光標識され得るか、または次にシグナルを増幅することができる酵素に共役され得る。いくつかの実施形態において、検出可能な標識または二次プローブは、顕微鏡検査またはイメージャを使用することによって視覚的に検出可能である。いくつかの実施形態において、方法の1つ以上のステップは、分子プローブの適用を含む、自動化システムなどのシステムを使用して実行することができる。いくつかの実施形態において、細胞分析のためのマイクロ流体システムを使用することができ、これは、提供された方法のための試薬を送達および適用する。いくつかの態様において、方法の1つ以上のステップを実行するためのシステムは、多重であり得る。例えば、多重化された組織処理プラットフォームを利用することができる。いくつかの実施形態において、マイクロ流体フローセルは、分子プローブの空間サンプルへの結合のために使用され得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、分子プローブと関連付けられた任意選択的な検出可能な標識のシグナル強度、シグナル波長、シグナル位置、シグナル周波数、またはシグナルシフトが観察される。いくつかの実施形態において、検出可能な標識の観察は、プローブタグからの情報を記録タグに転送する前に実行され得る。場合によっては、検出可能な標識の観察は、プローブタグからの情報を記録タグに転送した後に実行され得る。いくつかの実施形態において、シグナルの1つ以上の前述の特性を観察、測定、および記録することができる。
【0121】
本明細書で提供される方法において、分子プローブは、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)と関連付けられた記録タグに転送される情報を含むプローブタグを含む。本明細書で提供される方法において、分子プローブは、空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる記録タグに転送される情報を含むプローブタグを含む。いくつかの実施形態において、複数のプローブタグからの情報は、複数の記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、1つのプローブタグからの情報は、2つ以上の記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、複数のプローブタグからの情報は、記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、プローブタグは、バーコードを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグから記録タグに転送された情報は、プローブタグと呼ばれることもある。いくつかの態様において、伸長記録タグは、プローブタグ配列を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、分子プローブの使用は、ダイナミックレンジをサブサンプリングおよび/または調節するために有用な調整を含み得る。場合によっては、サンプルに提供される分子プローブの濃度を調節および調整することができる。例えば、単一分子の検出のために、提供される分子プローブの濃度を低減することができる。いくつかの実施形態において、サンプルには、複数の分子プローブが提供され、いくつかの分子プローブは、プローブタグで標識され、いくつかは、プローブタグで標識されていない(例えば、「ダミー分子プローブ」)。場合によっては、サンプルには、プローブタグで標識されていない少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の分子プローブを含む、複数の分子プローブ(例えば、「ダミー分子プローブ」)が提供される。いくつかの態様において、サンプルには、複数の分子プローブが提供され、同じ分子プローブのうちの2つ以上が、異なるプローブタグと関連付けられている。
【0123】
空間サンプルの複数の高分子は、プローブタグで標識され得るか、または同じバーコードを含むプローブタグから転送された情報を含むことができる。いくつかの実施形態において、分子プローブと関連付けられたプローブタグに近接する複数の記録タグは、プローブタグから情報を転送することによって伸長することができる。記録タグがプローブタグに近接している限り、記録タグは、分子プローブによって結合される部分に付着しているか、または関連付けられる必要はない。例えば、記録タグと、プローブタグを含む分子プローブによって結合される部分または高分子との間の距離は、約10nm~100nm、約10nm~500nm、約10nm~1,000nm、約10nm~5,000nm、約100nm~300nm、約100nm~600nm、約100nm~1,000nm、約100nm~5,000nm、約300nm~600nm、約300nm~1,000nm、または300nm~5,000nmである。いくつかの例では、細胞内の複数の高分子は、プローブタグで標識され得るか、または同じバーコードを含むプローブタグから転送された情報を含み得る。いくつかの例では、細胞小器官内の複数の高分子は、プローブタグで標識され得るか、または同じバーコードを含むプローブタグから転送された情報を含み得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、プローブタグは、記録タグに転送されるバーコードを含む核酸またはアミノ酸タグである。場合によっては、記録タグは、高分子と関連付けられているか、空間サンプルに適用されたマトリックスまたは物質に懸濁されている可能性がある。いくつかの実施形態において、プローブタグ情報は、空間サンプル内の高分子と関連付けられた記録タグ上でその場で配列を生成することによって記録タグに転送され、それにより伸長記録タグを生成する。プローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、プローブタグを含む。いくつかの例では、この方法は、プローブタグからのバーコード配列を含む記録タグ上にその場で配列を生成することを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、記録タグに物理的に転送される。場合によっては、分子プローブと関連付けられたプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することは、ライゲーションまたはポリメラーゼ伸長などの任意の好適な化学的/酵素的反応を使用して実行される。例えば、ライゲーション(例えば、酵素的または化学的ライゲーション、スプリントライゲーション、粘着末端ライゲーション、ssDNAライゲーションなどの一本鎖(ss)ライゲーション、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、ポリメラーゼ媒介反応(例えば、一本鎖核酸もしくは二本鎖核酸のプライマー伸長)、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、プローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することができる。
【0125】
特定の実施形態において、プローブタグは、固有の分子識別子(UMI)が関連付けられた各高分子(例えば、ポリペプチド)に固有の識別子タグを提供する、任意選択的なUMIを含む。UMIは、約3~約40個の塩基、約3~約30個の塩基、約3~約20個の塩基、または約3~約10個の塩基、または約3~約8個の塩基であり得る。いくつかの実施形態において、UMIは、約3の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、16個の塩基、17個の塩基、18個の塩基、19個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、30個の塩基、35個の塩基、または40個の塩基の長さである。
【0126】
プローブタグは、任意の好適なタグであり得る。いくつかの例では、プローブタグは、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、またはγPNA分子を含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、核酸である。いくつかの実施形態において、プローブタグは、約3~約40個の塩基(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個の塩基)の長さの核酸分子を含む。プローブタグは、バーコード配列を含み得、この配列には、任意選択的に、片側に1つのスペーサーが隣接するか、または両側にスペーサーが隣接する。プローブタグは、一本鎖または二本鎖であり得る。二本鎖プローブタグは、平滑末端、突出末端、またはその両方を含み得る。プローブタグは、分子プローブに直接付着されているプローブタグ、プローブ剤に直接付着されているプローブタグの相補的配列、または伸長記録タグに存在するプローブタグ情報を指し得る。
【0127】
特定の実施形態において、プローブタグは、バーコードを含む。バーコードは、約3個~約30個の塩基、約3個~約25個の塩基、約3個~約20個の塩基、約3個~約10個の塩基、約3個~約10個の塩基、約3個~約8個の塩基の長さの核酸分子である。いくつかの実施形態において、バーコードは、約3個の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、または30個の塩基の長さである。一実施形態において、バーコードは、複数のサンプルまたはライブラリーの多重シーケンシングを可能にする。バーコードを使用して、多重化された配列データをデコンボリューションし、個々のサンプルまたはライブラリーからの配列リードを識別することができる。いくつかの実施形態において、プローブタグは、複数のバーコードを含む。例えば、プローブタグは、各々がバーコードである、2つ以上のタグの文字列で構成され得る。いくつかの態様において、バーコードの連結された文字列は、標識または識別するためのバーコードの多様性を増大させることができる。例えば、10個の異なるタグ(例えば、バーコード)が使用され、バーコードとして3個のタグの文字列にランダムに連結された場合、連結されたバーコードは、組み合わせて配置された10個のタグを使用することにより、10=1000の可能な配列を持つことになる。いくつかの実施形態において、組み合わせて使用される一連のプローブタグを使用して、1つ以上の分子プローブに関する情報を提供することができる。例えば、記録タグは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のプローブタグからの一連の情報を含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、プローブタグは、スペーサーを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグ上のスペーサーは、記録タグによって構成される配列にハイブリダイズするように構成される。場合によっては、プローブタグは、5’端にスペーサーを含む。場合によっては、プローブタグは、3’端にスペーサーを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、ユニバーサルプライミング部位を含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、他の核酸成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、ユニバーサルプライミング部位をさらに含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、プローブタグは、少なくとも、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、75、または100アミノ酸の長さを有し得るアミノ酸の配列を含む、ペプチドまたはアミノ酸バーコードを含む。他のペプチドバーコードと区別できる特定のペプチドバーコードは、異なる物理的特性(アミノ酸配列、配列長、電荷、サイズ、分子量、疎水性、逆相分離、親和性、または他の分離可能な特性)を有し得る。例えば、国際特許公開第2016/145416号および同第2018/078167号を参照されたい。プローブタグは、1つの分子プローブまたは複数の分子プローブと関連付けられたバーコードを含み得る。分子プローブは、任意の酵素的または化学的付着手段を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を使用して、ペプチドバーコードと関連付けられ得るか、またはそれに付着され得る。プローブタグのペプチドバーコードの情報は、任意の酵素的または化学的付着手段を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を使用して、記録タグに転送することができる。例えば、Miyamoto et al.,PLoS One.(2019)14(4):e0215993、Wroblewska et al.,Cell.(2018)175(4):1141-1155.e16を参照されたい。いくつかの実施形態において、2つの異なるポリペプチドの付着を可能にする典型的には柔軟なアミノ酸配列で作製されたリンカーを使用することができる。例えば、線状連結ペプチドは、2~25アミノ酸、2~15アミノ酸からなるか、またはより長いリンカーを使用することができる。
【0130】
プローブタグからの情報は、任意の適切な方法で記録タグに転送することができる。いくつかの実施形態において、この方法は、分子プローブと関連付けられた1つ以上のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することを含む。例えば、プローブタグからの情報は、伸長またはライゲーションによって記録タグに転送され得る。いくつかの実施形態において、プローブタグから記録タグへの情報の転送は、空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを記録タグに付加することを含む。場合によっては、分子プローブと関連付けられたプローブタグは、伸長の鋳型として機能する。特定の実施形態において、プローブタグの情報は、プライマー伸長を介して記録タグに転送される(例えば、Chan et al.,Curr Opin Chem Biol.(2015)26:55-61を参照)。記録タグの末端上のスペーサー配列は、プローブタグの反対側の相補的なスペーサー配列とアニーリングし、ポリメラーゼ(例えば、鎖置換ポリメラーゼ)は、アニーリングされたプローブタグを鋳型として使用して、記録タグ配列を伸長する。
【0131】
いくつかの実施形態において、プローブタグからの情報は、プローブタグに近接する任意の記録タグに転送することができる。記録タグが情報転送のためにプローブタグに近接している限り、記録タグは、分子プローブによって(直接的または間接的に)結合された部分に付着されたり、関連付けられたりする必要はない。プローブタグ情報を記録タグに転送することを可能にする距離は、プローブタグおよび記録タグが到達し得る距離に依存し得る。例えば、分子プローブは、標的核酸に結合する核酸であり得、標的核酸は、ポリメラーゼに結合される。この例では、ポリメラーゼは、記録タグに付着されており、記録タグは、標的核酸に付着されたプローブタグの近くにある。別の例では、空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる記録タグは、空間サンプル内のポリペプチドに結合している分子プローブに付着されたプローブタグに近接していてもよい。
【0132】
プローブタグから記録タグへの情報の転送は、分子プローブと関連付けられたプローブタグから直接行うことも、プローブタグのコピーを介して間接的に行うこともできる。いくつかの実施形態において、分子プローブと関連付けられたプローブタグは、プローブタグの情報を記録タグに転送する前に、1回以上コピーされる。例えば、分子プローブと関連付けられたプローブタグは、プローブタグの情報を記録タグに転送する前に増幅され得る。場合によっては、プローブタグの増幅は、線形増幅である。いくつかの態様において、プローブタグの増幅は、RNAポリメラーゼを使用して実行される。プローブタグのコピーがRNAを含む場合、プローブタグの記録タグへの転送は、逆転写を使用して実行され得る。一例では、分子プローブは、細胞表面マーカーに結合することができ、記録タグは、細胞内にある。この場合、細胞の外側に結合した分子プローブに付着したプローブタグのコピーが作製され、次いで、プローブタグのコピーが細胞内に拡散し、プローブタグのコピーから細胞内の記録タグへの情報の転送が起こり得る。
【0133】
C.空間プローブ
本明細書で提供される方法は、1つ以上の空間プローブの空間サンプルへの結合を含む。いくつかの実施形態において、空間プローブは、空間タグを含む。場合によっては、空間タグは、バーコードおよび任意選択的にスペーサーおよび/またはユニバーサルプライミング部位を含む1つ以上の核酸成分を含み得る。1つ以上の高分子を含む空間サンプルに1つ以上の記録タグを提供した後、この方法は、1つ以上の空間プローブを空間サンプルに提供することを含む。いくつかの例では、この方法は、複数の空間プローブを空間サンプルに提供することを含む。いくつかの実施形態において、空間プローブからの情報が記録タグに転送され、それにより、伸長記録タグが生成される。いくつかの実施形態において、この方法は、(b1)空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供するステップと、(b2)空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、その場で空間タグを決定するステップと、(b3)空間プローブと関連付けられた空間タグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長するステップと、を実行することを含む。いくつかの実施形態において、空間タグからの情報(例えば、バーコード)は、空間プローブに近接する任意の記録タグに転送することができる。
【0134】
空間プローブを伴う例示的なステップは、空間タグを含む空間プローブを複数のポリペプチドに提供することと、光切断可能な、化学的、または酵素的リンカーを介してDNAバーコードをビーズに付着させ、バーコードの除去およびその後の組織切片への拡散転送を可能にすることと、電荷相互作用、DNAハイブリダイゼーション、または可逆的化学カップリングなどの接着力を介して組織表面に非特異的に付着または会合する可能性のある空間サンプルにバーコードビーズを提供することと、組織に付着したバーコード化DNAビーズをデコーディングまたはシーケンシングすることと、切断可能なリンカーの酵素的、化学的、または光切断によってDNAバーコードを放出することと、バーコードが組織スライスに浸透し、高分子、例えば、組織スライス内のタンパク質に付着したDNA記録タグにアニーリングできるようにすることと、反応(例えば、ポリメラーゼ伸長)を実行して、バーコードを空間サンプル内の高分子上の記録タグに転送することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、バーコード化されたビーズは、本明細書に記載されているものを含む、任意の好適な形式で提供され得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、空間プローブは、核酸、支持体、ポリペプチド、小分子、および/または化学部分を含む。いくつかの実施形態において、空間プローブは、支持体、例えば、固体支持体、および核酸を含む空間タグを含む。いくつかの好ましい実施形態において、空間プローブは、複数の核酸に付着した支持体(例えば、空間タグ)を含む。例えば、支持体は、ビーズまたは微粒子である。多孔性または非固体ビーズを含むがこれらに限定されない、任意の好適なビーズ材料およびサイズを使用して、サンプル内のポリペプチドにバーコードを送達することができる。いくつかの実施形態において、空間プローブは、バーコード化されたビーズを含む。いくつかの例では、ビーズは、ビーズへのバーコードのより高い負荷に対応するために多孔性である。場合によっては、空間プローブは、同じバーコードの2つ以上のコピーを含む。いくつかの実施形態において、ビーズは、ポリスチレンビーズ、ポリアクリレートビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、ポリマービーズ、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、もしくは制御された多孔質ビーズ、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0136】
いくつかの実施形態において、空間プローブからの空間タグによって標識された空間サンプルは、空間プローブのサイズによって決定される。例えば、領域内の単一の分子または複数の分子は、空間プローブからの空間タグで標識され得る。いくつかの態様において、空間プローブのサイズは、好ましい解像度に基づいて選択および調整され得る。パッキング、安定性、階層化などを含む空間プローブの他の特性も考慮され得る。いくつかの実施形態において、空間プローブのサイズまたはタイプは、プローブを光学的に分解する能力、例えば、画像解像度またはセンサー解像度に基づいて選択される。いくつかの例では、空間プローブ(例えば、ビーズまたはナノ粒子)は、直径約50nm~約10μmの間、約50nm~約1μmの間、約50nm~約100nmの間、約100nm~約1μmの間、約100nm~約10μmの間、約0.1μm~約100μmの間、約0.1μm~約50μmの間、約10μm~約50μmの間、約5μm~約10μmの間、約0.5μm~約100μmの間、約0.5μm~約50μmの間、約0.5μm~約10μmの間、約0.5μm~約5μmの間、または約0.5μm~約1μmの間の範囲である。いくつかの例では、ビーズは、直径が約50nm~約10μmである。
【0137】
いくつかの実施形態において、プローブは、切断可能なリンカーで支持体に付着された1つ以上の空間タグを含む。いくつかの実施形態において、DNAバーコードは、光切断可能な、化学的、または酵素的リンカーを介してビーズに付着され、これにより、バーコードの除去およびその後の組織切片への拡散転送が可能になる。DNAバーコードは、切断可能なリンカーの酵素的、化学的、または光切断によって放出される場合がある。様々な方法を使用して、バーコード化されたビーズを生成し、サンプルに適用することができ、Klein et al.,Lab Chip(2017)17(15):2540-2541に記載されているスプリット・プール合成戦略、Rodriques et al.,Science(2019)363(6434):1463-1467に記載されている、表面をDNAでバーコード化されたビーズで覆うこと、またはVickovic et al.(2019)Nat Methods 16(10):987-990に記載されている、空間的にバーコード化されたビーズアレイの使用を含む。例えば、空間的に索引付けされたビーズの使用は、平面上のビーズの分布および空間位置と相関するバーコード位置を含み得る。いくつかの態様において、各ビーズは、DNAバーコードの単一の集団を有する。DNAバーコードは、任意の好適な方法を使用してビーズに付着される。場合によっては、空間タグ(例えば、バーコード)がビーズから切断され、ポリペプチドに転送される。いくつかの実施形態において、ビーズからのバーコードの切断は、長波長UVへの曝露などによる光切断を介する。切断されたバーコードは、空間サンプルの組織切片に拡散し、記録タグにハイブリダイズする。放出されたバーコードは、ライゲーションまたは伸長を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を使用して、記録タグに転送することができる。例えば、ライゲーション(例えば、酵素的または化学的ライゲーション、スプリントライゲーション、粘着末端ライゲーション、ssDNAライゲーションなどの一本鎖(ss)ライゲーション、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、ポリメラーゼ媒介反応(例えば、一本鎖核酸もしくは二本鎖核酸のプライマー伸長)、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、空間タグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することができる。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼ伸長混合物を空間サンプルに添加して、ハイブリダイズしたバーコードからのバーコード情報をDNA記録タグに転送する。
【0138】
いくつかの実施形態において、空間タグは、空間サンプルにおいてその場で、または空間サンプル内の高分子と会合した後に評価される。例えば、ランダムに分散されたバーコードは、空間サンプルに提供され、バーコードは、その場でデコードまたは評価される。いくつかの実施形態において、バーコードは、記録タグに転送する前または後に、その場でデコードまたは評価することができる。いくつかの実施形態において、バーコードは、空間サンプルが固定化されている表面に転送するための空間位置および場所に配置された後、その場でデコードまたは評価することができる。例えば、空間タグのバーコードは、空間プローブに付着されている間、または記録タグに転送された後にデコードまたは評価することができる。いくつかの実施形態において、バーコードは、その場でデコードまたは評価される前には知られていない。いくつかの態様において、空間タグの評価は、さらなる高分子分析のためにサンプルの高分子を放出する前である。
【0139】
一例では、バーコードビーズは、バーコードをポリペプチドに転送する前に空間的に索引付けされるアレイを形成する(例えば、Rodriques et al.,Science(2019)363(6434):1463-1467を参照)。場合によっては、この方法は、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、その場で空間タグを決定することを含む。いくつかの実施形態において、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、その場で空間タグを決定することは、空間タグが支持体に付着されている間に実行される。いくつかの実施形態において、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するためにその場で空間タグを決定することは、空間タグが支持体から放出または切断された後に実行される。
【0140】
いくつかの他の実施形態において、空間サンプルは、表面に載置された細胞組織内の分子の空間位置を反映するバーコードで標識され、その後、組織スライス内のタンパク質分析物の空間分布は、配列分析後に後で再構築することができ、ほとんどが空間トランスクリプトミクスのために行われる(例えば、Stahl et al.2016 Science 353(6294):78-82、Crosetto et al.Nat Rev Genet.2015 Jan;16(1):57-66)。別の実施形態において、細胞小器官および細胞/細胞内コンパートメント内の分子を標識することができる(Christoforou et al.,2016,Nat.Commun.7:8992、Lundberg et al.,(2019)Nat Rev Mol Cell Biol 20(5):285-302、その全体が参照により組み込まれる)。近位タンパク質に付着する細胞内バーコードを提供するために、いくつかのアプローチを使用することができる。空間細胞標識のいくつかの方法は、Marx,2015,Nat Methods 12:815-819によるレビューに記載されており、その全体が参照により組み込まれる。
【0141】
一実施形態において、空間サンプル内の高分子(例えば、ポリペプチド)には、空間タグの少なくとも一部またはその一部に相補的であるヌクレオチドの配列を含む、記録タグが提供される。いくつかの実施形態において、空間タグは、バーコードおよび記録タグに相補的なヌクレオチドの配列を含む。いくつかの実施形態において、記録タグおよび空間タグによって共有される相補的配列は、バーコードを空間タグから記録タグに転送するのに有用である。場合によっては、相補配列により、空間タグからのバーコードと記録タグとを関連付けることができる。空間タグを提供し、ポリペプチドに付着した記録タグに転送するためのいくつかの実施形態において、ビーズ上のバーコードには、上流のスペーサー配列およびポリペプチドに付着した記録タグの少なくとも一部に相補的な下流のプライマー伸長配列が隣接する。
【0142】
空間タグは、任意の好適なタグであり得る。いくつかの例では、空間タグは、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、またはγPNA分子を含む。いくつかの実施形態において、空間タグは、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、空間タグは、核酸である。いくつかの実施形態において、空間タグは、約3~約40個の塩基(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個の塩基)の長さの核酸分子を含む。空間タグは、バーコード配列を含み得、この配列には、任意選択的に、片側に1つのスペーサーが隣接するか、または両側にスペーサーが隣接する。空間タグは、一本鎖または二本鎖であり得る。二本鎖空間タグは、平滑末端、突出末端、またはその両方を含み得る。空間タグは、空間プローブ(例えば、ビーズ)と関連付けられた空間タグ、空間プローブ(例えば、ビーズ)と関連付けられたに直接付着された空間タグへの相補的配列、または伸長記録タグに存在する空間タグ情報を指し得る。
【0143】
特定の実施形態において、空間タグは、バーコードを含む。例えば、Weinstein et al.,Cell.2019 Jun 27;178(1):229-241を参照されたい。バーコードは、約3個~約30個の塩基、約3個~約25個の塩基、約3個~約20個の塩基、約3個~約10個の塩基、約3個~約10個の塩基、約3個~約8個の塩基の長さの核酸分子である。いくつかの実施形態において、バーコードは、約3個の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、または30個の塩基の長さである。一実施形態において、バーコードは、複数のサンプルまたはライブラリーの多重シーケンシングを可能にする。バーコードを使用して、多重化された配列データをデコンボリューションし、個々のサンプルまたはライブラリーからの配列リードを識別することができる。いくつかの実施形態において、空間タグは、複数のバーコードを含む。例えば、空間タグは、各々がバーコードである、2つ以上のタグの文字列で構成され得る。いくつかの態様において、バーコードの連結された文字列は、標識または識別するためのバーコードの多様性を増大させることができる。いくつかの実施形態において、組み合わせて使用される一連の空間タグを使用して、1つ以上の分子プローブに関する情報を提供することができる。
【0144】
特定の実施形態において、空間タグは、固有の分子識別子(UMI)が関連付けられた各高分子(例えば、ポリペプチド)に固有の識別子タグを提供する、任意選択的なUMIを含む。UMIは、約3~約40個の塩基、約3~約30個の塩基、約3~約20個の塩基、または約3~約10個の塩基、または約3~約8個の塩基であり得る。いくつかの実施形態において、UMIは、約3の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、16個の塩基、17個の塩基、18個の塩基、19個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、30個の塩基、35個の塩基、または40個の塩基の長さである。
【0145】
いくつかの実施形態において、空間タグは、スペーサーを含む。いくつかの実施形態において、空間タグ上のスペーサーは、記録タグによって構成される配列にハイブリダイズするように構成される。場合によっては、空間タグは、5’端にスペーサーを含む。場合によっては、空間タグは、3’端にスペーサーを含む。いくつかの実施形態において、空間タグは、ユニバーサルプライミング部位を含む。いくつかの実施形態において、空間タグは、他の核酸成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、空間タグは、ユニバーサルプライミング部位をさらに含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、空間タグ(例えば、バーコード)は、様々な方法を使用して、固体基質からサンプルに転送される。例えば、バーコードは、微粒子(例えば、ビーズ)からサンプル内の高分子に転送される。いくつかの例では、表面上の組織サンプルは、バーコードが付着された複数のビーズに曝露され、バーコードが高分子(例えば、ポリペプチド)に転写される。各ビーズには、同じ配列の複数のバーコードが含まれている場合がある。いくつかの例では、バーコードビーズからのバーコードは、空間サンプルの高分子にランダムに付着されている。いくつかの実施形態において、ビーズは、バーコード化されたビーズを組織切片表面上にコーティングされたヒドロゲルに埋め込むことによって、空間サンプルに送達される。いくつかの実施形態において、毛細管ギャップフローセルを使用して、バーコード化されたビーズを空間サンプルに送達または分配することができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、空間タグは、少なくとも、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、75、または100アミノ酸の長さを有し得るアミノ酸の配列を含む、ペプチドまたはアミノ酸バーコードを含む。他のペプチドバーコードと区別できる特定のペプチドバーコードは、異なる物理的特性(アミノ酸配列、配列長、電荷、サイズ、分子量、疎水性、逆相分離、親和性、または他の分離可能な特性)を有し得る。例えば、国際特許公開第2016/145416号および同第2018/078167号を参照されたい。空間プローブは、任意の酵素的または化学的付着手段を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を使用して、ペプチドバーコードと関連付けられ得るか、またはそれに付着され得る。空間タグのペプチドバーコードの情報は、任意の酵素的または化学的付着手段を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を使用して、記録タグに転送することができる。例えば、Miyamoto et al.,PLoS One.(2019)14(4):e0215993、Wroblewska et al.,Cell.(2018)175(4):1141-1155.e16を参照されたい。いくつかの実施形態において、2つの異なるポリペプチドの付着を可能にする典型的には柔軟なアミノ酸配列で作製されたリンカーを使用することができる。例えば、線状連結ペプチドは、2~25アミノ酸、2~15アミノ酸からなるか、またはより長いリンカーを使用することができる。
【0148】
他の実施形態において、この方法は、バーコードがその場で評価、決定、検出、および/または分析されるステップを含む。場合によっては、バーコードが空間サンプルにランダムに転送された後、バーコードがその場で分析、デコード、および/またはシーケンシングされる。例えば、空間プローブ(例えば、ビーズ)に付着された空間タグは、サンプル内の空間タグの空間位置の情報を提供するためにその場で決定される。この場合、空間タグは、ビーズから放出される前に評価される。他の例では、バーコードがビーズから放出された後にバーコードを決定することができる。バーコードが記録タグに付着される前に、組織サンプル上のバーコードビーズの空間デコーディングを実行することができる。組み立てられたバーコードビーズは、蛍光イメージングおよびコンビナトリアルハイブリダイゼーションベースのアプローチまたはその場のNGSシーケンシングを使用して、その場で空間的にデコードされ得る(例えば、Gunderson et al.,Genome Res(2004)14(5):870-877、Lee et al.,Nat Protoc.(2015)10(3):442-458,Rodriques et al.,Science(2019)363(6434):1463-1467)、Goltsev et al.,Cell.2018 Aug 9;174(4):968-981、米国特許出願公開第2014/0066318号を参照)。いくつかの実施形態において、バーコード化されたビーズのデコーディングは、本明細書に記載されるように、空間サンプル内の位置の情報を含む配列を生成するために実行される。
【0149】
ビーズからポリペプチドへのバーコードの転送は、ライゲーションまたは伸長を含む酵素的手段による転送などの任意の好適な方法を利用することができる。場合によっては、空間からの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することは、ライゲーションまたはポリメラーゼ伸長などの任意の好適な化学的/酵素的反応を使用して実行される。例えば、ライゲーション(例えば、酵素的または化学的ライゲーション、スプリントライゲーション、粘着末端ライゲーション、ssDNAライゲーションなどの一本鎖(ss)ライゲーション、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、ポリメラーゼ媒介反応(例えば、一本鎖核酸もしくは二本鎖核酸のプライマー伸長)、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態において、ビーズは、バーコードを記録タグに転送した後に放出される。
【0150】
いくつかの実施形態において、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するための空間タグを決定することは、その場で実行される。例えば、空間タグをその場で決定することは、顕微鏡ベースの方法を使用して実行される。場合によっては、空間タグをその場で決定することは、蛍光ベースの方法を使用して実行される。場合によっては、空間タグをその場で決定することは、多重顕微鏡および/または蛍光ベースの方法を使用して実行される。いくつかの実施形態において、空間タグをその場で決定することにより、視覚シグナルが生成される。いくつかの実施形態において、方法は、タンパク質のその場でのシーケンシングまたは標識を含む。いくつかの例では、空間タグをその場で決定することは、空間タグの位置情報(例えば、空間サンプルを参照する空間位置情報)を提供する。単一分子のデコーディングのために、プールされた蛍光標識されたデコーディングオリゴヌクレオチドのいくつかのラウンドのハイブリダイゼーションを使用することができる(例えば、Gunderson et al.,Genome Res(2004)14(5):870-877を参照)。いくつかの実施形態において、空間タグをその場で決定することは、1つ以上のデコーダーを使用することを含み、デコーダーは、1つ以上の検出可能な標識および空間タグまたはその一部に相補的な配列を含む。いくつかの例では、検出可能な標識は、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、または酵素基質標識を含む。例えば、2つ以上のデコーダーを使用して、空間タグのうちの1つ以上を検出する。
【0151】
いくつかの実施形態において、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために空間タグをその場で決定することは、チェーンターミネーションシーケンシング(サンガーシーケンシング);合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、およびパイロシーケンシングなどの次世代シーケンシング方法;ならびに単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、デュプレックスインタラプテッドシーケンシング、および高度な顕微鏡を使用したDNAの直接イメージングなどの第3世代シーケンシング方法を含むが、これらに限定されない。
【0152】
任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、この方法は、当技術分野で知られ、本明細書に記載されるような任意の顕微鏡法の使用を含む。例えば、蛍光標識されたデコーディングオリゴヌクレオチドをイメージングすることができる。複数の画像が取得される場合がある。いくつかの実施形態において、この方法は、空間タグの空間位置を空間タグのバーコード配列と相関させることを含む。
【0153】
III.検出可能な標識を有する分子プローブを使用した高分子を分析する
本明細書で提供されるのは、高分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を分析するための方法であり、(a)高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供することと、(b)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合することと、(c)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することと、(d)検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得することと、(e)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定することと、(f)ステップ(e)で決定されたプローブタグの配列を分子プローブと相関させ、それにより、ステップ(e)で決定された配列からの情報を、ステップ(d)で決定されたその空間情報と関連付けることと、を含む。
【0154】
本明細書で提供されるのは、高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供することと、例えば、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合することにより、検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを空間サンプルに結合すること、分子プローブ内で関連付けられたプローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することと、分子プローブの空間情報を取得するために、検出可能な標識を評価、例えば、観察することを含む、高分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を分析するための方法である。分子プローブをサンプルに結合することと、プローブタグからの情報を転送することと、例えば、検出可能な標識を評価、例えば、観察することを含むステップを、1回以上繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、この方法は、1つ以上のプローブタグを含む伸長記録タグの配列を決定することをさらに含む。いくつかの態様において、一連のプローブタグ(例えば、バーコード)の配列は、サンプルに結合された分子プローブと相関している。いくつかの実施形態において、分子プローブの標的および分子プローブによって結合された高分子の他の特性を含む分子プローブの情報は、分子プローブと関連付けられた検出可能な標識の評価、例えば、観察からの空間情報と関連付けることができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、2つ以上の分子プローブによって順次結合される。場合によっては、分子プローブが除去されるか、または検出可能な標識が観察された後に、検出可能な標識が不活性化される。
【0155】
いくつかの実施形態において、高分子は、ポリペプチドである。いくつかの例では、高分子分析アッセイは、ポリペプチド分析アッセイを含む。
【0156】
提供されている方法のステップのうちのいくつかは、逆にするか、または様々な順序で実行することができる。いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、実行されない。いくつかの例では、ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)が、順番に起こる。他の例では、ステップ(a)、(b)、(d)、(c)、(e)、および(f)が、順番に起こる。いくつかの例では、ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)が、順番に起こる。いくつかの例では、ステップ(a)、(b)、(d)、(c)、(e)、および(f)が、順番に起こる。場合によっては、方法の1つ以上のステップが繰り返される。いくつかの実施形態において、ステップ(d)は、2回以上繰り返される。場合によっては、この方法は、ステップ(b)およびステップ(c)を順次2回以上繰り返すことを含む。いくつかの例では、この方法は、ステップ(b)を繰り返す前に、空間サンプルから分子プローブを除去することを含む。場合によっては、検出可能な標識の評価、例えば、観察は、2つ以上の分子プローブの結合を伴う方法について繰り返される。いくつかの実施形態において、ステップ(b)、(c)、および(d)は、ステップ(e)および(f)を実行する前に、順次2回以上繰り返される。場合によっては、ステップ(b)、(c)、および(d)は、高分子分析アッセイを実行する前に、順次2回以上繰り返される。いくつかの実施形態において、ステップ(b)、(d)、および(c)は、ステップ(e)および(f)を実行する前に、順次2回以上繰り返される。場合によっては、ステップ(b)、(d)、および(c)は、高分子分析アッセイを実行する前に、順次2回以上繰り返される。高分子分析アッセイを実行することを含む方法では、アッセイは、ステップ(a)、(b)、(c)、および(d)の後に実行することができる。高分子分析アッセイを実行することを含む方法では、アッセイは、ステップ(e)および(f)の前に実行することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、分析される伸長記録タグは、記録タグに順次転送される複数のプローブタグからの情報を含む。いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、1つ以上のプローブタグおよび1つ以上のコーディングタグからの情報を含む。場合によっては、伸長記録タグは、2つ以上のプローブタグおよび2つ以上のコーディングタグからの情報を含む。いくつかの実施形態において、記録タグ(例えば、伸長記録タグ)は、高分子に直接的または間接的に付着されている。いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、高分子に付着されていない。
【0158】
提供される方法のいくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に結合することによって、空間サンプルに結合する。提供される方法のいくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に近接する部分に結合することによって、空間サンプルに結合する。いくつかの実施形態において、複数の分子プローブが、空間サンプルに適用される。いくつかの実施形態において、分子プローブは、選択的および/または特異的結合が可能である。いくつかの実施形態において、分子プローブは、他の高分子との複合体中の高分子に結合する。例えば、分子プローブは、目的のポリペプチドとの複合体中の核酸に結合し得る。いくつかの特定の実施形態において、分子プローブは、記録タグが関連付けられる、または付着されるポリペプチドに結合する。いくつかの特定の実施形態において、分子プローブは高分子に結合し、その結合は、分子プローブ内のプローブタグを、空間サンプルに適用された記録タグに近接させる。
【0159】
分子プローブは、任意のシーケンシング可能な分子を含み得るプローブタグを含む。いくつかの例では、プローブタグは、バーコードを含む。プローブタグの情報は、任意の好適な方法で記録タグに転送される。いくつかの態様において、1つ以上のプローブタグから特定の記録タグに転送された情報は、1つ以上の分子プローブからの情報を、分子プローブおよび結合位置の空間情報にリンクさせる。いくつかの実施形態において、1つのプローブタグからの情報は、2つ以上の記録タグに転送され得る。いくつかの実施形態において、2つ以上のプローブタグからの情報は、1つの記録タグに転送され得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、空間サンプルは、生物学的サンプルを含む。例えば、空間サンプルは、対象から得られた高分子、細胞、および/または組織を含み得る。いくつかの例では、空間サンプルは、無傷の組織または液体サンプルなどのサンプルに由来する。例えば、液体サンプルは、方法を実行する前に表面上に広げて堆積させることができる。いくつかの例では、空間サンプルは、分子プローブが空間サンプルに結合する前に、例えば、サンプルを透過処理、固定、および/または架橋試薬で処理することによって処理される。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、記録タグを含むマトリックスまたは他の物質に曝露される。例えば、マトリックスは、ヒドロゲルポリマー鎖を含み得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、この方法は、高分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)分析アッセイをその場でさらに実行することを含む。いくつかの他の実施形態において、高分子分析アッセイは、高分子が空間サンプルから放出された後に実行される。高分子分析アッセイをさらに実行することを含むいくつかの実施形態において、高分子は、1つ以上の記録タグに付着されるか、または関連付けられる。任意のそのような実施形態のうちのいくつかにおいて、高分子分析アッセイは、高分子を高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、コーディングタグの情報を記録タグに転送して、記録タグを伸長することの1つ以上のサイクルを含む。結合剤からの識別情報は、ポリペプチドと関連付けられた記録タグに転送され、これはまた、プローブタグから転送された情報を含む。したがって、いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、1つ以上のプローブタグおよび任意選択的に、1つ以上のコーディングタグからの情報を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、高分子の配列または高分子の同一性の少なくとも一部を決定し、ステップ(d)で決定された分子プローブの空間位置と関連付けることをさらに含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、高分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)の少なくとも一部の配列を決定することを含む。場合によっては、この分析方法は、国際特許公開第2017/192633号に記載される方法のうちのいずれかを実行することを含み得る。場合によっては、ポリペプチドの配列は、ポリペプチド配列またはその一部、例えば、記録タグ(またはそれに付着された任意の追加のバーコードもしくはタグ)上の伸長核酸を表す、伸長核酸配列の構築によって分析される。
【0163】
ポリペプチドを分析するための例示的なワークフローは、以下を含み得る:空間サンプルが、固体支持体上に提供される。空間サンプルのポリペプチドは、記録タグで標識されているか、または空間サンプルは、記録タグを含むマトリックスに曝露されている。記録タグは、後の増幅に有用なユニバーサルプライミング部位を含み得る。各々が検出可能な標識およびプローブタグを含む複数の分子プローブが、空間サンプルに適用され、サンプルに結合する。プローブタグからの情報は、ライゲーションまたは伸長などの好適な方法によって記録タグに転送される。プローブタグから情報を転送した後、分子プローブを除去、放出、または洗浄することができる。任意選択的に、追加ラウンドの分子プローブとの結合およびプローブタグから記録タグへの情報の転送を実行することができる。分子プローブの検出可能な標識は、例えば、イメージングを使用することによって評価および/または観察される。分子プローブとの結合の複数のサイクルが実行されるいくつかの実施形態において、検出可能な標識の観察は、複数のイメージングステップを含み得る。検出可能な標識を評価または観察した後、記録タグを放出し、分析のために、例えば、シーケンシングのために収集することができる。高分子分析アッセイがさらに実行される場合、プローブタグからの情報の転送後、記録タグに付着したポリペプチドが使用され、空間サンプルから放出される。任意選択的なステップでは、ポリペプチドは、消化される。ポリペプチド分析アッセイを実行する前に、ポリペプチドおよび関連付けられた記録タグ(プローブタグからの情報を含む)を、適切な分子内間隔で単一分子シーケンシング基質(例えば、ビーズ)にランダムに固定化することができる。ポリペプチド分析アッセイを、記録タグと関連付けられたポリペプチドに対して実行し、それにより、伸長記録タグに情報をさらに追加する。(プローブタグからの情報を含む)伸長記録タグの配列の少なくとも一部が決定される。伸長記録タグから決定されたプローブタグからの情報の配列を、同じプローブタグと関連付けられた分子プローブと相関させ、それにより、伸長記録タグから決定された配列からの情報を、分子プローブと関連付けられた検出可能な標識を評価、例えば、観察することから決定されるその空間情報と関連付ける。分子プローブによって結合されたサンプルに関する任意の情報を、組織/細胞の表現型、状態、および特定のマーカーの有無を含む空間情報と相関させることもできる。このワークフローを使用して、伸長記録タグの情報は、分子プローブの空間位置と関連付けられる。
【0164】
A.サンプル
一態様において、本開示は、サンプルからの高分子の分析に関する。高分子は、より小さなサブユニットから構成される大きな分子であり得る。特定の実施形態において、高分子は、タンパク質、タンパク質複合体、ポリペプチド、ペプチド、核酸分子、炭水化物、脂質、大員環、またはキメラ高分子である。いくつかの実施形態において、高分子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである。
【0165】
いくつかの実施形態において、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)は、生物学的サンプルであるサンプルから取得される。いくつかの実施形態において、サンプルは、哺乳動物またはヒトの細胞、酵母細胞、および/または細菌細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、サンプルは、多細胞生物から得られたサンプルに由来する細胞を含む。例えば、サンプルは、個体から単離され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、単一の細胞型または複数の細胞型を含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、例えば、穿刺、または他の収集もしくはサンプリング手順によって、哺乳類生物またはヒトから取得され得る。サンプルは、解剖学的特徴、形態学的特徴、細胞特徴、および/または細胞内特徴の空間配置および/または位置に関する情報が望まれ得る空間サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、当技術分野で知られている方法によってさらに処理される。例えば、サンプルは、細胞材料を(例えば、遠心分離、濾過などによって)除去する、取り除く、または単離するために処理される。空間サンプルは、サンプルの構成要素、部分、または領域が空間的に参照され得るように配置された(例えば、スライド上の組織切片などの平面形式で配置された)生物学的サンプルを指し得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、2つ以上の細胞を含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、全細胞および/または生細胞および/または細胞破片を含み得る。いくつかの例では、好適な供給源またはサンプルとしては、事実上すべての生物の生物学的サンプル、例えば、生検サンプル、細胞培養物、細胞(初代細胞および培養細胞株の両方)、細胞小器官または小胞を含むサンプル、組織および組織抽出物を挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、好適な供給源またはサンプルとしては、生検;糞便物質;体液(血液、全血、血清、血漿、尿、リンパ液、胆汁、房水、母乳、耳垢(耳垢(earwax))、乳び、粥状液、内リンパ、外リンパ、滲出液、脳髄液、間質液、水性もしくは硝子体液、初乳、痰、羊水、唾液、肛門および膣の分泌物、胃酸、胃液、リンパ液、粘液(鼻汁および痰を含む)、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、唾液、皮脂(皮膚の油)、痰(sputum)、滑液、汗および精液、漏出液、嘔吐物およびそれらの1つ以上の混合物、滲出液(例えば、膿瘍から得られた流体または感染症もしくは炎症の任意の他の部位)あるいは好ましくはマイクロバイオーム含有サンプルを含む哺乳動物由来のサンプル、および特に好ましくはマイクロバイオーム含有サンプルを含むヒト由来のサンプルを用いて、事実上すべての生物の関節から得られた流体(正常な関節またはリウマチ性関節炎、骨関節炎、痛風、もしくは化膿性関節炎などの疾患に罹患した関節);環境サンプル(空気、農業、水、および土壌サンプル);微生物バイオフィルムおよび/または微生物群、ならびに細菌胞子由来のサンプルを含む微生物サンプル;組織切片を含む組織サンプル、細胞外液を含む研究サンプル、細胞培養物からの細胞外上清、細菌内の封入体、ミトコンドリアおよび細胞ペリプラズムを含む細胞成分を挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、体液を含むか、または体液に由来し、体液は、哺乳動物またはヒトから得られる。いくつかの実施形態において、サンプルは、体液、または体液からの細胞培養物を含む。提供される実施形態のうちのいずれかのいくつかにおいて、流体サンプルなどのサンプルは、表面上に堆積され得る。例えば、液体サンプルを処理して、スライドなどの固体表面上に広がる細胞を調製することができる。いくつかの実施形態において、サンプルまたはその一部(サンプルから得られた分析物または細胞など)は、ポリマー樹脂中に堆積され得る。場合によっては、ポリマー樹脂は、ヒドロゲルを形成する天然または合成ポリマーを含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、サンプルは、組織サンプルである。組織は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかで使用するための任意の便利なまたは所望の方法で調製することができる。新鮮な、凍結した、固定された、または固定されていない組織を使用することができる。組織は、本明細書に記載される方法または当技術分野で知られている方法を使用して調製、固定、または包埋することができる(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb prot4991、Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36、Fischer et al.,CSH Protoc.(2008)pdb.prot4988)。組織は、生物から新たに切除することができるか、または例えば凍結、パラフィンなどの材料への包埋(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋サンプル)、ホルマリン固定、浸潤、脱水などによって以前に保存されている可能性がある。いくつかの例では、マトリックス形成材料を使用して、組織サンプルなどの生物学的サンプルをカプセル化することができる。場合によっては、サンプルは、パラフィンブロックに包埋される。例えば、空間サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片であってもよい。任意選択的に、組織切片は、例えば、核酸、細胞、ウイルス、ビーズなどを固体支持体に付着させることに関して本明細書に例示される技法および組成物を使用して、固体支持体に付着され得る(Ramos-Vera et al.,J Vet Diagn Invest.(2008)20(4):393-413)。さらなる任意選択として、組織が固体支持体と接触しているときに、組織を透過処理し、組織の細胞を溶解することができる。標準的な条件および試薬は、任意の好適な洗剤、Triton X-100、エトキシル化ノニルフェノール(Tergitol型NP-40)、Tween 20、サポニン、ジギトニン、またはアセトン(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36)とのインキュベーションを含む組織透過処理に使用され得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、サンプルは、実質的に平面である、すなわち、二次元である「平面サンプル」である。いくつかの実施形態において、サンプルは、基板に堆積されるか、または固体表面上に堆積される。いくつかの実施形態において、サンプルは、三次元サンプルである。いくつかの例では、材料または基質(例えば、ガラス、金属、セラミック、有機ポリマー表面もしくはゲル)は、細胞、またはタンパク質、核酸、脂質、オリゴ/多糖類、生体分子複合体、細胞小器官、細胞外小胞(エクソソーム、微小胞)、細胞破片もしくは排泄物などの、細胞に由来する生体分子の任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、平面細胞サンプルは、例えば、細胞またはその一部を平面上に沈着させることによって、例えば、遠心分離によって、細胞を含む三次元物体を切片に切断し、切片を平面に載置することによって作製することができ、すなわち、組織切片を産生する。いくつかの実施形態において、サンプルは、組織切片であり、対象から得られ、固定され、切片化され(例えば、凍結切片化され)、平面表面、例えば、顕微鏡スライド上に載置された組織の小片を指す。
【0169】
いくつかの実施形態において、空間サンプル(例えば、標本または組織サンプル)は、サンプルを伸長するために処理される。いくつかの態様において、空間サンプルは、化学プロセスを使用して等方的に保存および伸長される。例えば、組織サンプルを処理して、空間サンプル内の生体分子にアンカーを付着させ、ポリマー合成をその場で実行し、機械的均質化を実行し、標本伸長を実行することができる(例えば、Zhao et al.,Nature Biotechnology(2017)35(8):757-764、Chang et al.,Nature Methods(2017)14:593-599、Chang et al.,Nature Methods(2016)13(8):679-84、Tillberg et al.,Nature Biotechnology(2016)34:987-992、Chen et al.,Science(2015)347(6221):543-548、Asano et al.,Current Protocols in Cell Biology(2018)80(1):e56、Wassie et al.,Nature Methods(2018)16(1):33-41、Boyden et al.,Mater.Horiz.,(2019)6,11-13、Alon et al.,FEBS J.2019 Apr;286(8):1482-1494.Karagiannis et al.,Current Opinion in Neurobiology(2018)50:56-63、Gao et al.,BMC Biology(2017)15:50を参照)。
【0170】
いくつかの実施形態において、この方法は、単一の細胞型または複数の細胞型から高分子(例えば、ポリペプチドおよびタンパク質)を取得および調製することを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞の集団を含む。いくつかの実施形態において、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)は、細胞もしくは細胞内成分、細胞外小胞、細胞小器官、またはそれらの組織化された副成分に由来する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、分子の1つ以上のパッケージングからのものである(例えば、単一細胞の別個の成分、または細胞小器官もしくは小胞などの細胞の集団から単離された別個の成分)。高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)は、細胞小器官、例えば、ミトコンドリア、核、または細胞小胞に由来し得る。一実施形態において、1つ以上の特定のタイプの単一細胞またはそのサブタイプを単離することができる。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、細胞小器官(例えば、核、ゴルジ装置、リボソーム、ミトコンドリア、小胞体、葉緑体、細胞膜、小胞など)を含み得るが、これらに限定されない。
【0171】
1.固定および透過処理
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、1つ以上の固定(例えば、架橋)および/または透過処理ステップをさらに含む。特定の実施形態において、分析のための高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を含むサンプルは、固定および/または透過処理され得る。いくつかの実施形態において、空間サンプルに記録タグを提供する前に、空間サンプルの固定、架橋、および/または透過処理が実行される。いくつかの実施形態において、空間サンプルの固定、架橋、および/または透過処理は、分子プローブを空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合する前に実行される。例えば、穴または開口部は、細胞の膜および/または任意の細胞内成分に形成され得る。細胞、細胞内構造および成分、または生体分子は、ホルマリン、メタノール、エタノール、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、メタノール:酢酸、グルタルアルデヒド、二官能性架橋剤、例えば、ビス(スクシンイミジル)スベレート、ビス(スクシンイミジル)ポリエチレングリコールなどを含むが、これらに限定されない任意の数の試薬を使用して固定することができる。
【0172】
いくつかの例では、本明細書で提供されるタンパク質を処理し、タンパク質を分析する方法は、分析方法の任意のステップでサンプルを固定することを含み得る。場合によっては、サンプルの固定は、サンプルを透過処理する前に実行される(例えば、細胞または他の膜を透過処理する)。いくつかの例では、サンプルの固定は、サンプルを透過処理した後に実行される。いくつかの実施形態において、サンプルは、空間サンプル内のタンパク質に記録タグを提供する前に、固定または架橋される。いくつかの実施形態において、サンプルは、空間サンプルを1つ以上の分子プローブと結合する前に透過処理される。
【0173】
いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞および細胞内成分が固定化されるか、または所定の位置に保持されるように、固定または架橋され得る。いくつかの実施形態において、サンプル内の高分子(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、脂質)は、含まれる分子が細胞または細胞内成分内に固定化されるように固定または架橋され得る。いくつかの実施形態において、サンプル(例えば、細胞および細胞内成分)は、サンプル内の分子の空間位置が維持されるように固定される。
【0174】
場合によっては、サンプルは、固定されて組織内または細胞構造内のタンパク質を架橋し、脂質膜を安定化させることができる。いくつかの例では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のホルムアルデヒドを使用して、サンプルを固定する。固定の標準的な方法は既知であり、1×PBS中の0.5~5%ホルムアルデヒドと10~30分間インキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、メタノールまたはエタノール中でのインキュベーションによって固定される。いくつかの実施形態において、固定後、サンプルは透過処理され、酵素およびDNAタグ(例えば、記録タグ、プローブタグもしくはそれらのコピー、バーコード、または他の核酸)による構造成分の内部へのアクセスを可能にするように処理される。
【0175】
いくつかの実施形態において、1つ以上の洗浄ステップは、固定および/または透過処理の前および/または後に実行される。市販の固定および透過処理キットを使用して、サンプルを調製することができる。いくつかの実施形態において、サンプルの固定または架橋を逆転させることができる。
【0176】
いくつかの実施形態において、サンプルの固定または架橋の逆転は、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)および関連付けられた記録タグを空間サンプルから単離する前に実行される。いくつかの実施形態において、サンプルの固定または架橋の逆転は、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)および関連付けられた記録タグを空間サンプルから単離した後に実行される。例えば、架橋は、架橋されたサンプルを高塩(およそ200mMのNaCl)中、65℃で約4時間以上インキュベートすることによって逆転させることができる。
【0177】
いくつかの実施形態において、組織サンプルは、空間サンプルから高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド)を放出、捕捉、または処理する前に、サンプルから包埋材料を除去する(例えば、パラフィンもしくはホルマリンを除去する)ように処理される。これは、サンプルを適切な溶媒と接触させること(例えば、キシレンおよびエタノール洗浄)によって達成され得る。処理は、組織サンプルを本明細書に記載の固体支持体と接触させる前に起こり得るか、または処理は、組織サンプルが固体支持体上にある間に起こり得る。
【0178】
2.記録タグを提供する
本明細書で提供される方法は、記録タグを有する1つ以上の高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を含む空間サンプルを提供することを含む。いくつかの実施形態において、空間サンプルには、複数の記録タグが提供される。いくつかの態様において、空間サンプル内の複数の高分子には、記録タグが提供される。記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられ得るか、または付着され得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、任意の好適な手段を使用して高分子に付着される。いくつかの実施形態において、高分子は、1つ以上の記録タグと関連付けられ得る。いくつかの態様において、記録タグは、プローブタグ、および任意選択的に1つ以上のコーディングタグの情報からの情報を転送することができる、任意の好適なシーケンシング可能な部分であり得る。記録タグは、分子プローブに関する情報などの情報を転送または記録できる部分として機能する。
【0179】
いくつかの他の実施形態において、記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられていないか、または付着されていないが、空間サンプルに適用されるマトリックス、足場、または物質内の所定の位置に保持されている。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、マトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)、足場、または記録タグを含む他の物質に曝露される。例えば、Gao et al.,BMC Biology(2017)15:50)を参照されたい。例えば、マトリックスは、ヒドロゲルポリマー鎖を含み得る。いくつかの実施形態において、空間サンプル(例えば、生体組織または標本)は、化学的に固定され、生体分子がヒドロゲルポリマー鎖につながれるように高分子に結合する化合物で処理される。例えば、間隔が狭く、密に架橋された、高電荷のモノマーで作製されたヒドロゲルは、空間サンプル内の細胞または組織全体に均一に重合され、空間サンプル内の高分子と生体分子の間および周囲に挿入される。場合によっては、包埋された空間サンプルは、構造分子の変性および/または消化を伴う機械的均質化ステップにさらされる可能性がある。いくつかの実施形態において、空間サンプルは、標本-ヒドロゲル複合材料を含む。
【0180】
提供される方法のいくつかの実施形態において、プローブタグからの情報が記録タグに転送される。記録タグは、他の核酸成分を含み得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、固有の分子識別子、コンパートメントタグ、パーティションバーコード、サンプルバーコード、画分バーコード、プローブタグから転送された情報、スペーサー配列、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0181】
高分子分析アッセイを含む方法の実施形態において、少なくとも1つの記録タグが、高分子(例えば、ポリペプチド)と直接的または間接的に関連付けられるか、または共局在化される。特定の実施形態において、単一の記録タグは、好ましくは、N末端またはC末端アミノ酸への付着を介して、ポリペプチドに付着される。別の実施形態において、複数の記録タグは、ポリペプチドに、例えば、リジン残基またはペプチド骨格に付着される。いくつかの実施形態において、複数の記録タグで標識されたポリペプチドは、より小さなペプチドに断片化または消化され、各ペプチドは、平均して1つの記録タグで標識される。
【0182】
いくつかの実施形態において、記録タグを備えた高分子の密度または数は、制御または滴定される。他の実施形態において、空間サンプルに適用される記録タグを含むマトリックスまたは物質は、記録タグの所望の密度について滴定される。例えば、高分子の空間位置を評価するために使用される方法に対応するために、空間サンプルの中または上に記録タグを適切に配置することが望ましい場合がある。場合によっては、空間サンプル内の高分子と関連付けられた記録タグの量または密度が、サンプルの表面上またはサンプルの体積内で滴定される。
【0183】
いくつかの例では、サンプル内の記録タグの所望の間隔、密度、および/または量は、希釈された、または制御された数の記録タグを提供することによって滴定され得る。いくつかの例では、記録タグを提供する、関連付ける、および/または付着させときに、競合または「ダミー」競合分子をスパイクすることによって、記録タグの所望の間隔、密度、および/または量を達成することができる。場合によっては、「ダミー」競合分子は、サンプル内の高分子に関連付けられている、または付着されている記録タグと同じように反応するが、競合分子は、記録タグとして機能しない。いくつかの特定の例では、所望の密度が、サンプル内の付着に利用可能な1,000部位当たり1つの機能的記録タグである場合、1,000の「ダミー」競合分子ごとに1つの機能的記録タグにおけるスパイクを使用して、所望の間隔を達成する。いくつかの例では、機能的記録タグの比率は、競合分子の反応速度と比較した機能的記録タグの反応速度に基づいて調整される。
【0184】
記録タグは、DNA、RNA、もしくはPNA、γPNA、GNA、BNA、XNA、TNAを含むポリヌクレオチド類似体、他のポリヌクレオチド類似体、またはそれらの組み合わせを含み得る。記録タグは一本鎖、または部分的または完全に二本鎖であり得る。記録タグは、平滑末端または突出末端を有する場合がある。いくつかの実施形態において、記録タグは、ペプチドまたはアミノ酸の配列を含み得る。場合によっては、記録タグは、アミノ酸の配列(例えば、ペプチドバーコード)を付着または付加することを可能にする部分である。
【0185】
特定の実施形態において、サンプル内の高分子のすべてのまたは実質的な量(例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)は、記録タグで標識される。他の実施形態において、サンプル内の高分子のサブセットは、記録タグで標識される。特定の実施形態において、サンプルからの高分子のサブセットは、記録タグでの標的化(分析物特異的)標識を受ける。例えば、タンパク質の標的化記録タグ標識は、標的タンパク質特異的結合剤(例えば、抗体、アプタマーなど)を使用して達成され得る。いくつかの実施形態において、記録タグは、その場で空間サンプル内の高分子に付着される。いくつかの実施形態において、記録タグは、固体支持体上にサンプルを提供する前に高分子に付着される。いくつかの実施形態において、記録タグは、固体支持体上にサンプルを提供した後、高分子に付着される。いくつかの他の実施形態において、記録タグは、空間サンプル内の高分子または他の部分に直接的または間接的に関連付けられていないか、または付着されていないが、空間サンプルに適用されるマトリックス、足場、または物質内に提供されている。
【0186】
いくつかの実施形態において、記録タグはまた、バーコードを識別するサンプルを含むことができる。サンプルバーコードは、単一の反応容器内のサンプルのセットの多重分析に有用であるか、または単一の固体基質もしくは固体基質の集合(例えば、平面スライド、単一のチューブもしくは容器に含まれるビーズの集団など)に固定化される。例えば、多くの異なるサンプルからの高分子を、サンプル固有のバーコードが付いた記録タグで標識し、次いで、すべてのサンプルを一緒にプールした後、固体支持体への固定化、結合剤の周期的結合、および記録タグ分析を行うことができる。あるいは、DNAコードライブラリーの作成後までサンプルを分離しておき、サンプルバーコードをDNAコードライブラリーのPCR増幅中に付着させ、次いで、ともに混合した後、シーケンシングを行うこともできる。このアプローチは、異なる豊度クラス(abundance classes)の分析物(例えば、タンパク質)をアッセイする際に役立ち得る。
【0187】
特定の実施形態において、記録タグは、固有の分子識別子(UMI)が関連付けられた各高分子(例えば、ポリペプチド)に固有の識別子タグを提供する、任意選択的なUMIを含む。UMIは、約3~約40個の塩基、約3~約30個の塩基、約3~約20個の塩基、または約3~約10個の塩基、または約3~約8個の塩基であり得る。いくつかの実施形態において、UMIは、約3の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、16個の塩基、17個の塩基、18個の塩基、19個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、30個の塩基、35個の塩基、または40個の塩基の長さである。UMIを使用して、複数の伸長記録タグからのシーケンシングデータをデコンボリューションして、個々の高分子からの配列リードを識別することができる。いくつかの実施形態において、高分子のライブラリー内で、各高分子は、単一の記録タグと関連付けられ、各記録タグは、固有のUMIを含む。他の実施形態において、記録タグの複数のコピーは、単一の高分子と関連付けられ、記録タグの各コピーは、同じUMIを含む。いくつかの実施形態において、UMIは、配列分析中にこれらの成分を区別することを容易にするために、結合剤のコーディングタグ内のスペーサーまたはエンコーダー配列とは異なる塩基配列を有する。いくつかの実施形態において、UMIは、位置識別子としての機能を提供し得、また、高分子分析アッセイにおいて情報を提供し得る。例えば、UMIを使用して、同一系統であり、したがって同じ初期分子に由来する分子を識別することができる。いくつかの態様において、この情報を使用して、増幅の変動を補正する、ならびにシーケンシングエラーを検出および補正することができる。
【0188】
特定の実施形態において、記録タグは、ユニバーサルプライミング部位、例えば、フォワードまたは5’ユニバーサルプライミング部位を含む。ユニバーサルプライミング部位は、ライブラリー増幅反応のプライミングおよび/またはシーケンシングに使用することができる核酸配列である。ユニバーサルプライミング部位には、PCR増幅用のプライミング部位、フローセル表面上の相補的オリゴヌクレオチドにアニーリングするフローセルアダプター配列(例えば、Illuminaの次世代シーケンシング)、シーケンシングプライミング部位、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ユニバーサルプライミング部位は、約10塩基~約60塩基であり得る。いくつかの実施形態において、ユニバーサルプライミング部位は、Illumina P5プライマー(5’-AATGATACGGCGACCACCGA-3’-配列番号1)またはIllumina P7プライマー(5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT-3’-配列番号2)を含む。
【0189】
記録タグは、標的高分子、例えば、標的タンパク質上に存在する同族の反応性部分に対する反応性部分を含み得る(例えば、クリック化学標識、光親和性標識)。例えば、記録タグは、アルキン誘導体化タンパク質と相互作用するためのアジド部分を含み得るか、または記録タグは、天然タンパク質などと相互作用するためのベンゾフェノンを含み得る。標的タンパク質特異的結合剤による標的タンパク質の結合時に、記録タグおよび標的タンパク質は、それらの対応する反応性を介してカップリングされる。標的タンパク質を記録タグで標識した後、標的タンパク質特異的結合剤を、標的タンパク質特異的結合剤に連結されたDNA捕捉プローブの消化によって除去してもよい。例えば、DNA捕捉プローブは、ウラシル塩基を含むように設計され得、次に、ウラシル特異的切除試薬(例えば、USER(商標))による消化の標的とされる。標的タンパク質特異的結合剤は、標的タンパク質から解離され得る。いくつかの実施形態において、ハイブリダイゼーション以外の他のタイプの連結を使用して、記録タグを高分子に連結することができる。好適なリンカーは、内部位置における3’末端などの記録タグの様々な位置に、または記録タグの5’末端に付着したリンカー内に付着させることができる。
【0190】
B.分子プローブ
本明細書で提供される方法は、1つ以上の分子プローブの空間サンプルへの結合を含む。いくつかの実施形態において、分子プローブは、検出可能な標識およびプローブタグを含む。1つ以上の高分子を含む空間サンプルに1つ以上の記録タグを提供した後、この方法は、1つ以上の分子プローブを空間サンプルに適用および結合することを含む。空間サンプルは、上記のように説明され、任意選択的に処理されるような、目的の任意のサンプルを含み得る。いくつかの実施形態において、空間サンプルを1つ以上の分子プローブと結合する前に、空間サンプルをブロッキング剤で処理する。
【0191】
いくつかの実施形態において、2つ以上の分子プローブが、空間サンプルに適用される。複数の分子プローブが使用される場合には、同じ同一性の分子プローブが、同じプローブタグと関連付けられる。いくつかの実施形態において、複数の分子プローブ内の各分子プローブは、固有の検出可能な標識と関連付けられる。いくつかの実施形態において、2つ以上のプローブが、同じ検出可能な標識と関連付けられる。1つ以上の分子プローブを順次適用することができるか、または複数の分子プローブを同時に適用することができる。場合によっては、異なる同一性の分子プローブが、同じプローブタグと関連付けられる。場合によっては、異なる同一性の分子プローブが、同じ検出可能な標識と関連付けられる。いくつかの態様において、異なる同一性の分子プローブは、利用可能な検出可能な標識の数が限られているため、同じ検出可能な標識と関連付けられ得る。場合によっては、この方法は、2つ以上のプローブタグを記録タグに連続的に転送することからの組み合わせ情報をデコーディングすることを含み得る。いくつかの特定の実施形態において、サンプルには、複数の分子プローブが提供され、いくつかの分子プローブは、検出可能な標識と関連付けられ、いくつかは検出可能な標識と関連付けられていない(例えば、「ダミー分子プローブ」)。
【0192】
分子プローブは、空間サンプルを結合するのに適した任意の組成物から構成され得る。いくつかの例では、分子プローブは、空間サンプルに結合する、それと会合する、それと一体化する、それを認識する、またはそれと組み合わされる核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、または小分子を含む。分子プローブは、空間サンプルまたは空間サンプルの成分と共有結合性会合または非共有結合性会合を形成し得る。いくつかの態様において、分子プローブは、空間サンプルまたは空間サンプルの成分と可逆的会合を形成し得る。分子プローブは、核酸分子-ペプチドキメラ分子プローブまたは炭水化物-ペプチドキメラ分子プローブなどの2つ以上のタイプの分子から構成されるキメラ分子であり得る。分子プローブは、天然に存在するか、合成的に産生されるか、または組換え的に発現される分子であり得る。分子プローブは、線状分子または三次元構造(立体配座とも呼ばれる)を有する分子に結合し得る。
【0193】
いくつかの例では、分子プローブは、抗体、抗原結合抗体断片、単一ドメイン抗体(sdAb)、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ由来可変ドメイン(vNAR)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、線状抗体、ダイアボディ、アプタマー、ペプチド模倣分子、融合タンパク質、反応性もしくは非反応性小分子、または合成分子を含む。
【0194】
いくつかの実施形態において、分子プローブは、マイクロタンパク質(システインノットタンパク質、ノッチン)、DARPin;テトラネクチン(Tetranectin);アフィボディ(Affibody);アフィマー(Affimer)、トランスボディ(Transbody);アンチカリン(Anticalin);AdNectin;アフィリン(Affilin);マイクロボディ(Microbody);ペプチドアプタマー;アルターラーゼ;プラスチック抗体;フィロマー(phylomer);ストラドボディ(stradobody);マキシボディ(maxibody);エビボディ(evibody);フィノマー(fynomer)、アルマジロ反復タンパク質、クニッツドメイン、アビマー(avimer)、アトリマー(atrimer)、プロボディ(probody)、イムノボディ、トリオマブ(triomab)、トロイボディ(troybody);ペプボディ(pepbody);ワクチボディ(vaccibody)、UniBody;DuoBody、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ペプチド模倣分子、または合成分子を含む(例えば、Nelson,MAbs(2010)2(1):77-78、Goltsev et al.,Cell.2018 Aug 9;174(4):968-981を参照、または米国特許第5,475,096号、同第5,831,012号、同第6,818,418号、同第7,166,697号、同第7,250,297号、同第7,417,130号、同第7,838,629号、米国特許公開第2004/0209243号、および/または同第2010/0239633号に記載されるとおり)。
【0195】
いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプルに化学的に結合する、共有結合する、および/または可逆的に結合することができる。いくつかの実施形態において、分子プローブは、空間サンプル内の高分子に結合する、それと会合する、またはそれと複合体を形成する部分に結合する。いくつかの例では、分子プローブは、高分子(例えば、標的高分子)、高分子に近接する部分、または空間サンプル内の高分子に会合または結合する部分に結合する。いくつかの実施形態において、分子プローブは、高分子に近接する部分に結合し、その結果、プローブタグからの情報の転送を記録タグに転送することができ、分子プローブとの会合を可能にする。例えば、高分子と高分子に近接する部分との間の距離は、約10nm~100nm、約10nm~500nm、約10nm~1,000nm、約10nm~5,000nm、約100nm~300nm、約100nm~600nm、約100nm~1,000nm、約100nm~5,000nm、約300nm~600nm、約300nm~1,000nm、または300nm~5,000nmである。場合によっては、分子プローブが高分子に結合している場所に関係なく、記録タグがプローブタグに近接していると、プローブタグから記録タグへの情報の転送が起こり得る。いくつかの実施形態において、分子プローブは、様々な長さであり得るリンカーを介してプローブタグに付着される。場合によっては、分子プローブとプローブタグとの間のリンカーの長さは、分子プローブに近接する部分と分子プローブとの間の距離を増加させることができ、分子プローブへの会合を可能にする。いくつかの実施形態において、高分子への部分の近接性は、プローブタグを付着させるために分子プローブにおいて使用される任意のリンカーの長さに依存し得る。
【0196】
いくつかの例において、標的化部分は、核酸、炭水化物、脂質、ポリペプチド、ポリペプチドの翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない高分子に結合するように構成される。いくつかの実施形態において、標的化部分は、タンパク質特異的標的化部分、エピトープ特異的標的化部分、または核酸特異的標的化部分である。場合によっては、分子プローブは、細胞表面マーカーに結合するように構成されている。いくつかの実施形態において、標的化部分は、ポリペプチドまたはアミノ酸の翻訳後修飾(PTM)に結合する。PTMの例としては、リン酸化、ユビキチン化、メチル化、アセチル化、グリコシル化、酸化、脂質化、ニトロシル化、SUMO化、ユビキチン化などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
いくつかの実施形態において、分子プローブは、特異的および/または選択的結合が可能な標的化部分を含む。いくつかの実施形態において、分子プローブは、特異的または部分的に特異的な結合が可能な標的化部分を含む。構造特異的結合剤の例としては、タンパク質標的に結合し得るタンパク質特異的分子を挙げることができる。好適なタンパク質特異的分子の例としては、抗体および抗体断片、核酸(例えば、タンパク質標的を認識するアプタマー)、またはタンパク質基質を挙げることができる。いくつかの実施形態において、標的化部分の標的は、抗原を含み得、分子プローブは、抗体を含み得る。好適な抗体は、それらが標的抗原に特異的に結合する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、または抗体断片を含み得る。いくつかの実施形態において、分子プローブは、特定の標的核酸配列などの核酸に特異的に結合するように構成された部分または核酸成分を含む。
【0198】
本明細書で提供される分子プローブは、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、および当技術分野で知られている様々な酵素基質標識を含むがこれらに限定されない、任意の好適な検出可能な標識を含み得る。いくつかの実施形態において、検出可能な標識からのシグナルは、二次プローブを一次分子プローブに結合することによって増幅することができる。例えば、二次プローブは、蛍光標識され得るか、または次にシグナルを増幅することができる酵素に共役され得る。
【0199】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識または二次プローブは、顕微鏡検査またはイメージャを使用することによって視覚的に検出可能である。特定の場合において、使用されるフルオロフォアは、クマリン、シアニン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンザゾール、ボラポリアザインダセン、およびまたはフルオレセイン、ローダミンおよびロドールを含むキサンテンであり得る。多重化の実施形態において、フルオロフォアは、それらが互いに区別可能である、すなわち、独立して検出可能であるように選択され得、これは、標識が混合されている場合でさえ、標識が独立して検出および測定され得ることを意味する。言い換えれば、各標識に存在する標識の量(例えば、蛍光の量)は、標識が同じ場所にある場合(例えば、同じチューブ内または切片の同じ領域内)であっても、別々に決定可能である。目的の特定の蛍光色素としては、キサンテン色素、例えば、フルオレセインおよびローダミン色素、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6-カルボキシフルオレセイン(一般にFAMおよびFの略語で知られている)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROXまたはR)、5-カルボキシローダミン-6G(R6GまたはG)、6-カルボキシローダミン-6G(R6GまたはG)、およびローダミン110;シアニン色素、例えば、Cy3、Cy5、およびCy7色素;クマリン、例えば、ウンベリフェロン;ベンズイミド染料、例えば、ヘキスト33258;フェナントリジン染料、例えば、テキサスレッド;エチジウム染料;アクリジン染料;カルバゾール染料;フェノキサジン染料;ポルフィリン染料;ポリメチン染料、例えば、BODIPY染料およびキノリン染料が挙げられる。対象用途で一般的に使用される目的の特定のフルオロフォアとしては、ピレン、クマリン、ジエチルアミノクマリン、FAM、フルオレセインクロロトリアジニル、フルオレセイン、R110、エオシン、JOE、R6G、テトラメチルローダミン、TAMRA、リサミン、ナフトフルオレセイン、テキサスレッド、Cy3、およびCy5などが挙げられる。
【0200】
いくつかの実施形態において、本方法は、分子プローブの空間サンプルへの結合および分子プローブの検出可能な標識の評価、例えば、観察の1つ以上のサイクルを含む。いくつかの実施形態において、分子プローブの結合および検出可能な標識の評価、例えば、観察の1つ以上のサイクルは、自動化されたシステムなどのシステムを使用して実行され得る。いくつかの実施形態において、細胞分析のためのマイクロ流体システムを使用することができ、これは、提供された方法のための試薬を送達および適用する。いくつかの態様において、方法の1つ以上のステップを実行するためのシステムは、多重であり得る。例えば、多重化された組織処理プラットフォームを利用することができる。いくつかの実施形態において、マイクロ流体フローセルは、分子プローブの空間サンプルへの結合および/または検出可能な標識の観察のために使用され得る(例えば、GE ResearchからのCell DIVE(商標))。
【0201】
いくつかの実施形態において、この方法は、提供された分子プローブの検出可能な標識のいくつかを評価、例えば、観察することを含み得る。いくつかの特定の場合において、空間サンプルには、検出可能なシグナルで標識されていない1つ以上の分子プローブが提供される。場合によっては、この方法では、空間サンプルと接触しているすべての分子プローブを検出する必要はない。例えば、分子プローブのプローブタグは、当該分子プローブと関連付けられた任意の検出可能な標識を観察することなく、記録タグに転送することができる。
【0202】
いくつかの実施形態において、分子プローブと関連付けられた検出可能な標識のシグナル強度、シグナル波長、シグナル位置、シグナル周波数、またはシグナルシフトが観察される。いくつかの実施形態において、検出可能な標識の観察は、プローブタグからの情報を記録タグに転送する前に実行され得る。場合によっては、検出可能な標識の観察は、プローブタグからの情報を記録タグに転送した後に実行され得る。いくつかの実施形態において、シグナルの1つ以上の前述の特性を観察、測定、および記録することができる。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、フルオロフォアを含み得、蛍光波長または蛍光強度は、蛍光検出システムを使用して決定され得る。
【0203】
検出可能な標識からのシグナルは、検出システムを使用して検出することができる。例としては、光、明視野、暗視野、位相差、蛍光、反射、干渉、および/または共焦点イメージング用に構成された顕微鏡が挙げられる。検出システムとしては、電子スピン共鳴(ESR)検出システム、電荷結合素子(CCD)検出システム(例えば、放射性同位元素用)、蛍光検出システム、電気検出システム、写真フィルム検出システム、化学発光検出システム、酵素検出システム、原子力顕微鏡(AFM)検出システム(マイクロビーズの検出用)、走査型トンネル顕微鏡(STM)検出システム(マイクロビーズの検出用)、光学検出システム、近接場検出システム、または全内部反射(TIR)検出システムを挙げることができる。
【0204】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識を評価、例えば、観察することは、空間サンプルの画像を捕捉することを含み得る。いくつかの例では、検出可能な標識を評価、例えば、観察することは、空間サンプルまたはその一部のデジタル画像を取得することを含む。いくつかの実施形態において、イメージングデバイスに接続された顕微鏡は、本明細書に開示された方法に従って、検出システムとして使用され得る。いくつかの実施形態において、検出可能な標識(例えば、フルオロフォア)が励起され得、得られたシグナル(例えば、蛍光シグナル)は、デジタルシグナル(例えば、デジタル化された画像)の形態で観察および記録され得る。適切な蛍光フィルターを使用してサンプルに結合している異なる検出可能な標識(例えば、複数の分子プローブ上に存在する場合)について、同じ手順を繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、この方法は、すべての画像をオーバーレイして、すべての分子プローブのサンプルへの結合のパターンを示す画像を生成することを含む。
【0205】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、この方法は、空間サンプルの少なくとも1つの画像を取得するステップを含む。場合によっては、空間サンプルの2つ以上のデジタル画像が取得される。例えば、2つ以上のデジタル画像は、複数の分子プローブの組み合わせ空間情報を提供し得る。いくつかの実施形態において、この方法はまた、画像の少なくとも2つを比較、整列、および/またはオーバーレイすることを含み得る。評価、例えば、観察は、固体支持体と接触している空間サンプルに対して実行され得る。画像は、サンプルの検出可能な標識および/または空間情報の画像を含み得る。当技術分野で知られている、上記のような検出デバイスを使用して、画像を取得することができる。生物学的標本を含む空間サンプルは、イメージングの前に染色して、様々な領域または細胞を視覚化することを含め、形態学的または解剖学的情報を提供することができる。いくつかの実施形態において、複数の染色を使用して、標本の異なる態様(例えば、組織の異なる領域、異なる細胞、特定の細胞内成分など)をイメージングすることができる。他の実施形態において、生物学的標本を含む空間サンプルは、染色せずにイメージングすることができる。場合によっては、画像の特徴を利用することによって、異なる画像を相互に登録することができる(画像および/またはサンプルの歪みまたは反りの補正を含む)。例えば、基準登録マーカーをこの目的のために導入することができるか、または画像全体で検出可能な他のタイプのマーカーを使用することができる。
【0206】
いくつかの例では、提供された方法を他の方法とともに使用して、空間サンプルの特徴、例えば、空間サンプルの光学画像および/または組織学的染色の画像を識別することができる。いくつかの例では、サンプルは、上記の方法を実行する前または後に、細胞学的染色を使用して染色することができる。これらの実施形態において、染色は、例えば、ファロイジン、ガドジアミド、アクリジンオレンジ、ビスマルクブラウン、バルミン、クーマシーブルー、ブレシルバイオレット、ブリストルバイオレット、DAPI、ヘマトキシリン、エオシン、臭化エチジウム、酸性フクシン、ヘマトキシリン、ヘキスト染色、ヨウ素、マラカイトグリーン、メチルグリーン、メチレンブルー、ニュートラルレッド、ナイルブルー、ナイルレッド、四酸化オスミウム(正式名称:四酸化オスミウム)、ローダミン、サフラニン、リンタングステン酸、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、モリブデン酸アンモニウム、ヨウ化カドミウム、カルボヒドラジド、塩化第二鉄、ヘキサミン、三塩化インジウム、硝酸ランタン、酢酸鉛、クエン酸鉛、硝酸鉛(II)、周期的酸、ホスホモリブデン酸、フェリシアン化カリウム、フェロシアニドカリウム、ルテニウムレッド、硝酸銀、タンパク質酸銀、クロロ金酸ナトリウム、硝酸タリウム、チオセミカルバジド、酢酸ウラニル、硝酸ウラニル、硫酸バナジル、またはそれらの任意の誘導体であり得る。染色は、タンパク質またはタンパク質のクラス、リン脂質、DNA(例えば、dsDNA、ssDNA)、RNA、細胞小器官(例えば、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、核エンベロープなど)、細胞のコンパートメント(例えば、細胞質ゾル、核画分など)の目的の任意の特徴に特異的であり得る。染色は、細胞内または細胞外構造のコントラストまたはイメージングを強化することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色され得る。他のタイプの情報を組み合わせることにより、タンパク質情報を解釈するためのより豊富な空間コンテキストが有用であり得る。
【0207】
いくつかの実施形態において、この方法は、サンプルの画像内の位置を、分子プローブと関連付けられたプローブタグと相関させることを含む。したがって、画像内で識別可能な生物学的標本を含む空間サンプルの特性は、空間サンプルの同じ場所に結合された分子プローブと相関させることができる。例えば、細胞形状、細胞サイズ、組織形状、染色パターン、特定のタンパク質の存在(例えば、免疫組織化学的染色によって検出される)、または病理学もしくは研究応用で日常的に評価される他の特性を含む、様々な形態学的特性のうちのいずれかを、そのような相関で使用することができる。したがって、視覚的観察によって決定される組織またはその成分の生物学的状態は、分子プローブおよび高分子分析アッセイからの高分子の情報と相関させることができる。
【0208】
いくつかの実施形態において、この方法は、標識の検出の評価または観察が実行された後に、検出可能な標識を不活性化することを含む。例えば、各画像取得ラウンド後の蛍光色素の化学的不活性化を実行することができる。いくつかの実施形態において、分子プローブは、検出可能な標識の検出が実行された後に除去される。一例では、この方法は、分子プローブの空間サンプルへの結合、検出可能な標識の観察、および分子プローブを除去するための洗浄のサイクルを含む。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、新しい分子プローブをサンプルに結合する前に不活性化される。いくつかの例では、サンプルを不活化溶液で処理して、検出可能な標識を不活化する。例えば、サンプルは、染料を不活性化するためにアルカリ酸化化学で処理され得る。例えば、Gerdes et al.,Proc Natl Acad Sci USA.(2013)110(29):11982-11987を参照されたい。
【0209】
C.プローブタグ情報の転送
本明細書で提供される方法において、分子プローブは、記録タグに転送される情報を含むプローブタグを含む。いくつかの実施形態において、複数のプローブタグからの情報は、複数の記録タグに転送される。複数のプローブタグから記録タグへの情報の転送を伴ういくつかの実施形態において、各プローブタグからの情報は、記録タグに順次転送される。いくつかの実施形態において、1つのプローブタグからの情報は、2つ以上の記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、複数のプローブタグからの情報は、記録タグに転送される。いくつかの実施形態において、プローブタグは、少なくとも1つのバーコードを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグから伸長記録タグに転送された情報は、プローブタグと呼ばれることもある。いくつかの態様において、伸長記録タグは、プローブタグ配列を含む。場合によっては、転送されたプローブタグ配列は、分子プローブに関連付けられたまたは付着したプローブタグ配列に相補的であり得る。
【0210】
いくつかの実施形態において、分子プローブの使用は、ダイナミックレンジをサブサンプリングおよび/または調節するために有用な調整を含み得る。場合によっては、サンプルに提供される分子プローブの濃度を調節および調整することができる。例えば、単一分子の検出のために、提供される分子プローブの濃度を低減することができる。いくつかの実施形態において、サンプルには、複数の分子プローブが提供され、いくつかの分子プローブは、プローブタグで標識され、いくつかは、プローブタグで標識されていない(例えば、「ダミー分子プローブ」)。場合によっては、サンプルには、プローブタグで標識されていない少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の分子プローブを含む、複数の分子プローブ(例えば、「ダミー分子プローブ」)が提供される。いくつかの態様において、サンプルには、複数の分子プローブが提供され、同じ分子プローブのうちの2つ以上が、異なるプローブタグと関連付けられている。
【0211】
空間サンプルの複数の高分子は、プローブタグで標識され得るか、または同じバーコードを含むプローブタグから転送された情報を含むことができる。いくつかの実施形態において、分子プローブと関連付けられたプローブタグに近接する複数の記録タグは、プローブタグから情報を転送することによって伸長することができる。記録タグがプローブタグに近接している限り、記録タグは、分子プローブによって結合される部分に付着しているか、または関連付けられる必要はない。いくつかの実施形態において、プローブタグの情報は、近接している記録タグに転送され得、プローブタグは、分子プローブによって結合された部分と間接的に関連付けられている。例えば、記録タグと、プローブタグを含む分子プローブによって結合される部分または高分子との間の距離は、約10nm~100nm、約10nm~500nm、約10nm~1,000nm、約10nm~5,000nm、約100nm~300nm、約100nm~600nm、約100nm~1,000nm、約100nm~5,000nm、約300nm~600nm、約300nm~1,000nm、または300nm~5,000nmである。いくつかの例では、細胞内の複数の高分子は、プローブタグで標識され得るか、または同じバーコードを含むプローブタグから転送された情報を含み得る。いくつかの例では、細胞小器官内の複数の高分子は、プローブタグで標識され得るか、または同じバーコードを含むプローブタグから転送された情報を含み得る。
【0212】
いくつかの実施形態において、プローブタグは、空間サンプル内の高分子と関連付けられた記録タグに転送されるバーコードを含む核酸タグである。いくつかの実施形態において、プローブタグ情報は、空間サンプル内の高分子と関連付けられた記録タグ上でその場で配列を生成することによって記録タグに転送される。プローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、いくつかの実施形態において、記録タグは、プローブタグを含む。いくつかの例では、この方法は、プローブタグからのバーコード配列を含む記録タグ上にその場で配列を生成することを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、記録タグに物理的に転送される。場合によっては、プローブタグは、ライゲーション、またはポリメラーゼ、またはプライマー伸長などの化学的/酵素的反応を使用して生成されるか、または記録タグに付着される。
【0213】
特定の実施形態において、プローブタグは、固有の分子識別子(UMI)が関連付けられた各高分子(例えば、ポリペプチド)に固有の識別子タグを提供する、任意選択的なUMIを含む。UMIは、約3~約40個の塩基、約3~約30個の塩基、約3~約20個の塩基、または約3~約10個の塩基、または約3~約8個の塩基であり得る。いくつかの実施形態において、UMIは、約3の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、16個の塩基、17個の塩基、18個の塩基、19個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、30個の塩基、35個の塩基、または40個の塩基の長さである。
【0214】
プローブタグは、任意の好適なタグであり得る。いくつかの例では、プローブタグは、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、またはγPNA分子を含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、核酸である。いくつかの実施形態において、プローブタグは、約3~約40個の塩基(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個の塩基)の長さの核酸分子を含む。プローブタグは、バーコード配列を含み得、この配列には、任意選択的に、片側に1つのスペーサーが隣接するか、または両側にスペーサーが隣接する。プローブタグは、一本鎖または二本鎖であり得る。二本鎖プローブタグは、平滑末端、突出末端、またはその両方を含み得る。プローブタグは、分子プローブに直接付着されているプローブタグ、プローブ剤に直接付着されているプローブタグの相補的配列、または伸長記録タグに存在するプローブタグ情報を指し得る。
【0215】
特定の実施形態において、プローブタグは、バーコードを含む。バーコードは、約3個~約30個の塩基、約3個~約25個の塩基、約3個~約20個の塩基、約3個~約10個の塩基、約3個~約10個の塩基、約3個~約8個の塩基の長さの核酸分子である。いくつかの実施形態において、バーコードは、約3個の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、または30個の塩基の長さである。一実施形態において、バーコードは、複数のサンプルまたはライブラリーの多重シーケンシングを可能にする。バーコードを使用して、多重化された配列データをデコンボリューションし、個々のサンプルまたはライブラリーからの配列リードを識別することができる。いくつかの実施形態において、プローブタグは、複数のバーコードを含む。例えば、プローブタグは、各々がバーコードである、2つ以上のタグの文字列で構成され得る。いくつかの態様において、バーコードの連結された文字列は、標識または識別するためのバーコードの多様性を増大させることができる。例えば、10個の異なるタグ(例えば、バーコード)が使用され、バーコードとして3個のタグの文字列にランダムに連結された場合、連結されたバーコードは、組み合わせて配置された10個のタグを使用することにより、10=1000の可能な配列を持つことになる。いくつかの実施形態において、組み合わせて使用される一連のプローブタグを使用して、1つ以上の分子プローブに関する情報を提供することができる。例えば、記録タグは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のプローブタグからの一連の情報を含み得る。
【0216】
いくつかの実施形態において、プローブタグは、少なくとも、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、75、または100アミノ酸の長さを有し得るアミノ酸の配列を含む、ペプチドまたはアミノ酸バーコードを含む。他のペプチドバーコードと区別できる特定のペプチドバーコードは、異なる物理的特性(アミノ酸配列、配列長、電荷、サイズ、分子量、疎水性、逆相分離、親和性、または他の分離可能な特性)を有し得る。例えば、国際特許公開第2016/145416号および同第2018/078167号を参照されたい。プローブタグは、1つ以上の分子プローブと関連付けられたバーコードを含み得る。分子プローブは、任意の酵素的または化学的付着手段を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を使用して、ペプチドバーコードと関連付けられ得るか、またはそれに付着され得る。プローブタグのペプチドバーコードの情報は、任意の酵素的または化学的付着手段を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を使用して、記録タグに転送することができる。例えば、Miyamoto et al.,PLoS One.(2019)14(4):e0215993、Wroblewska et al.,Cell.(2018)175(4):1141-1155.e16を参照されたい。いくつかの実施形態において、2つの異なるポリペプチドの付着を可能にする典型的には柔軟なアミノ酸配列で作製されたリンカーを使用することができる。例えば、線状連結ペプチドは、2~25アミノ酸、2~15アミノ酸からなるか、またはより長いリンカーを使用することができる。
【0217】
いくつかの実施形態において、プローブタグは、スペーサーを含む。いくつかの実施形態において、プローブタグ上のスペーサーは、記録タグによって構成される配列にハイブリダイズするように構成される。いくつかの実施形態において、プローブタグは、ユニバーサルプライミング部位を含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、他の核酸成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、プローブタグは、ユニバーサルプライミング部位をさらに含む。
【0218】
プローブタグからの情報は、任意の好適な方法で記録タグに転送することができる。例えば、プローブタグからの情報は、伸長またはライゲーションによって記録タグに転送され得る。場合によっては、ライゲーション(例えば、酵素的または化学的ライゲーション、スプリントライゲーション、粘着末端ライゲーション、ssDNAライゲーションなどの一本鎖(ss)ライゲーション、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、ポリメラーゼ媒介反応(例えば、一本鎖核酸もしくは二本鎖核酸のプライマー伸長)、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、プローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することができる。いくつかの実施形態において、プローブタグからの情報を記録タグに転送することは、空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを記録タグに付加することを含む。場合によっては、分子プローブ内のプローブタグは、伸長の鋳型として機能する。特定の実施形態において、プローブタグの情報は、プライマー伸長を介して記録タグに転送される(Chan et al.,Curr Opin Chem Biol.(2015)26:55-61)。記録タグの3’末端のスペーサー配列は、プローブタグの3’末端の相補的スペーサー配列とアニーリングし、ポリメラーゼ(例えば、鎖置換ポリメラーゼ)は、アニーリングされたプローブタグを鋳型として使用して、記録タグ配列を伸長する。
【0219】
いくつかの実施形態において、プローブタグからの情報は、プローブタグに近接する任意の記録タグに転送することができる。分子プローブによって結合された空間サンプル内の位置と、プローブタグ情報を記録タグに転送することを可能にする記録タグとの間の距離は、プローブタグおよび記録タグが到達し得る距離に依存し得る。例えば、分子プローブは、標的核酸に結合する核酸であり得、標的核酸は、ポリメラーゼに結合される。この例では、ポリメラーゼは、記録タグに付着されており、記録タグは、標的核酸に付着されたプローブタグの近くにある。別の例では、空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる記録タグは、空間サンプル内のポリペプチドに結合している分子プローブに付着されたプローブタグに近接していてもよい。
【0220】
プローブタグから記録タグへの情報の転送は、分子プローブ内のプローブタグから直接行うことも、プローブタグのコピーを介して間接的に行うこともできる。いくつかの実施形態において、分子プローブ内のプローブタグは、プローブタグの情報を記録タグに転送する前に、1回以上コピーされる。例えば、分子プローブ内のプローブタグは、プローブタグの情報を記録タグに転送する前に増幅され得る。場合によっては、プローブタグの増幅は、線形増幅である。いくつかの態様において、プローブタグの増幅は、RNAポリメラーゼを使用して実行される。プローブタグのコピーがRNAを含む場合、プローブタグの記録タグへの転送は、逆転写を使用して実行され得る。一例では、分子プローブは、細胞表面マーカーに結合することができ、細胞内のポリペプチドは、記録タグと関連付けられる。この場合、細胞の外側に結合した分子プローブに付着したプローブタグのコピーが作製され、プローブタグのコピーが細胞内に拡散し、プローブタグのコピーから細胞内の高分子に付着された記録タグへの情報の転送が起こり得る。
【0221】
プローブタグから記録タグへの情報の転送に続いて、1つ以上のプローブタグからの情報を含む記録タグと関連付けられた高分子が、高分子分析アッセイで使用される。いくつかの態様において、高分子分析アッセイは、ポリペプチド分析アッセイである。いくつかの実施形態において、プローブタグは、空間サンプル内のタンパク質の空間位置に関する情報を提供または導出するために使用され得るバーコードを含む。バーコードは、組織切片からの複数のサンプルまたはライブラリーの多重シーケンシングを可能にし得る。
【0222】
任意選択的に、空間サンプルまたはその任意の部分は、1つ以上のプローブタグからの情報を記録タグに転送した後、および検出可能な標識の1つ以上の画像が得られた後に、固体支持体から除去することができる。したがって、本開示の方法は、固体支持体を洗浄して、高分子、細胞、組織、または他の材料を空間サンプルから除去するステップを含むことができる。空間サンプルまたはその任意の部分の除去は、任意の好適な技法を使用して実行することができ、サンプルに依存するであろう。場合によっては、固体支持体は、界面活性剤、洗剤、酵素(例えば、プロテアーゼおよびコラゲナーゼ)、切断試薬などの様々な添加剤を含む水で洗浄して、標本の除去を容易にすることができる。いくつかの実施形態において、固体支持体は、プロテイナーゼ酵素を含む溶液で処理される。いくつかの実施形態において、高分子は、標本が固体支持体から除去されている間または除去された後に放出される。いくつかの実施形態において、この方法は、空間サンプルから伸長記録タグを放出および/または収集することを含む。いくつかの実施形態において、放出および/または収集された伸長記録タグは、少なくとも1つのプローブタグを含む。
【0223】
IV.高分子分析アッセイ
提供される方法において、1つ以上のプローブタグおよび空間タグから転送された情報を含む記録タグと関連付けられた高分子(例えば、ポリペプチド)は、高分子分析アッセイにおいて任意選択的に使用される。いくつかの実施形態において、関連付けられたおよび/または付着された記録タグ(1つ以上のプローブタグおよび空間タグから転送された情報を含む)を有する高分子は、ポリペプチド分析アッセイに供される。いくつかの例では、高分子分析アッセイは、空間サンプルから放出された高分子に対して実行される。好ましい実施形態において、伸長記録タグが付着された高分子は、高分子分析アッセイを実行する前にサンプルから放出される。高分子分析アッセイは、配列の少なくとも一部を識別または決定するため、または高分子を評価するために実行される。いくつかの態様において、提供される方法は、高分子分析アッセイを実行することから得られる情報とともに空間情報を提供する。
【0224】
例示的な調製方法では、パラフィン分析において組織サンプルを固定および包埋することによって空間分析のためにサンプルを調製し(例えば、FFPE(ホルマリン固定、パラフィン包埋サンプル)、続いて包埋組織サンプルを切片化する。次いで、平面切片をスライドに付着させることができるか、またはスライド上に提供することができる。サンプル調製中に、空間サンプル内の高分子には記録タグが提供される。空間サンプルには、各々がプローブタグおよび任意選択的に検出可能な標識を含む、複数の分子プローブが提供される。分子プローブは空間サンプルに結合し、分子プローブと関連付けられたプローブタグからの情報は、サンプル内の高分子と関連付けられた記録タグに転送される。サンプル内の高分子の空間位置の評価は、1)図1A~Dに示されるように、分子プローブの空間情報を取得するために検出可能な標識を1回以上観察することを含む、分子プローブの検出可能な標識を評価すること、または2)図2A~2Fに示されるように、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得するために、その場で空間サンプルに提供される空間タグを評価することを含み得る。関連付けられた記録タグ(1つ以上のプローブタグから転送された情報を含む)を持つ高分子は、高分子分析アッセイに供される。
【0225】
いくつかの実施形態において、高分子分析アッセイは、複数の結合剤および酵素的に媒介される順次情報転送を使用する次世代タンパク質アッセイ(NGPA)である。場合によっては、分析アッセイは、2つ以上の同族の結合剤(例えば、抗体)によって同時に結合される固定化されたタンパク質分子に対して実行される。複数の同族の抗体結合事象の後、プライマー伸長およびDNAニッキングの組み合わせステップを使用して、結合した抗体のコーディングタグからの情報を記録タグに転送する。場合によっては、タンパク質上の多価エピトープに対するポリクローナル抗体(またはモノクローナル抗体の混合集団)をアッセイに使用することができる。例えば、国際特許公開第2017/192633号を参照されたい。いくつかの特定の実施形態において、ポリペプチド分析アッセイを実行して、(例えば、プローブタグおよび/または空間タグからの)ペプチドバーコードをアッセイすることができる。
【0226】
いくつかの実施形態において、高分子はポリペプチドであり、ポリペプチド分析アッセイが実行される。高分子分析アッセイは、高分子を高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、コーディングタグの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグ(プローブタグ情報を含む)を生成することと、を含み得る。高分子と高分子に結合することができる結合剤との接触(結合剤は、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む)、およびコーディングタグの情報を記録タグに転送して、記録タグを伸長することは、1回以上繰り返され得る。いくつかの実施形態において、分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することは、分子プローブの空間情報を取得するために、検出可能な標識を評価、例えば、観察する前または後に実行することができる。場合によっては、ポリペプチド分析アッセイは、空間サンプルからポリペプチドを放出することなく、その場でポリペプチドに対して実行される。場合によっては、ポリペプチド分析アッセイは、空間サンプルから放出されたポリペプチドに対して実行される。場合によっては、ポリペプチド分析アッセイは、空間サンプルからポリペプチドを放出することなく、その場でポリペプチドに対して実行される。いくつかの実施形態において、配列(もしくはその配列の一部)および/またはタンパク質の同一性は、ポリペプチド分析アッセイを使用して決定される。いくつかの実施形態において、空間サンプルからのタンパク質は、例えば、1つ以上の酵素および/または試薬で処理またはさらに処理することができる。
【0227】
いくつかの例では、ポリペプチド分析アッセイは、好適な技法または手順を使用して、ポリペプチドの少なくとも部分的な配列または同一性を評価することを含む。例えば、ポリペプチドの少なくとも部分的な配列は、N末端アミノ酸分析またはC末端アミノ酸分析によって評価することができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの少なくとも部分的な配列は、ProteoCodeアッセイを使用して評価することができる。いくつかの例では、ポリペプチドの少なくとも部分的な配列は、米国仮特許出願第62/330,841号、同第62/339,071号、同第62/376,886号、同第62/579,844号、同第62/582,312号、同第62/583,448号、同第62/579,870号、同第62/579,840号、および同第62/582,916号、ならびに国際特許公開第2017/192633号、同第2019/089836号、および同第2019/089851号において開示および/または請求されている技法または手順によって評価することができる。
【0228】
ペプチドまたはポリペプチドを分析する方法に関する実施形態において、この方法は、一般に、ペプチドの末端アミノ酸(例えば、NTAA)への結合剤の接触および結合、ならびにペプチドと関連付けられた記録タグへの結合剤のコーディングタグ情報の転送を含み、それにより、一次伸長記録タグを生成する。結合剤によって結合される末端アミノ酸は、化学的に標識された、または修飾された末端アミノ酸であり得る。いくつかの実施形態において、末端アミノ酸(例えば、NTAA)は脱離される。脱離される末端アミノ酸は、化学的に標識された、または修飾された末端アミノ酸であり得る。酵素または化学試薬と接触させることによるNTAAの除去は、ペプチドの最後から2番目のアミノ酸を末端アミノ酸に変換する。ポリペプチド分析は、追加の結合剤を末端アミノ酸に結合すること、追加の結合剤からの情報を伸長核酸に転送し、それにより2つ以上のコーディングタグからの情報を含むより高次の伸長記録タグを生成すること、および末端アミノ酸を周期的に脱離することの1つ以上のサイクルを含み得る。追加の結合、転送、標識、および除去は、上記のように最大n個のアミノ酸で起こり、集合的にペプチドを表すn次伸長核酸を生成する。いくつかの実施形態において、記載された例示的なアプローチにおけるNTAAを含むステップは、代わりに、C末端アミノ酸(CTAA)を用いて実行され得る。
【0229】
いくつかの実施形態において、分解によるペプチドまたはポリペプチドシーケンシングアッセイのプロセスにおけるステップの順序は、逆にするか、または様々な順序で実行することができる。例えば、いくつかの実施形態において、末端アミノ酸標識は、ポリペプチドを結合剤に結合する前および/または後に実施することができる。
【0230】
いくつかの実施形態において、方法は、任意選択的に、タンパク質(例えば、ポリペプチド)分析アッセイを実行する前に、関連付けられた伸長記録タグ(プローブタグおよび/または空間タグからの情報を含む)を有するタンパク質を収集することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、任意選択的に、空間サンプルからタンパク質を放出することを含む。ポリペプチド分析アッセイは、さらに情報をそれに転送することによって、伸長記録タグを利用することができる。
【0231】
いくつかの実施形態において、この方法は、空間サンプルから得られたタンパク質を断片化することを含む。いくつかの実施形態において、断片化は、ポリペプチド分析アッセイの前に実行される。いくつかの例では、タンパク質はタンパク質分解消化物に由来するか、またはプロテアーゼで処理された。場合によっては、プロテアーゼは、トリプシン、LysN、またはLysCである。いくつかの実施形態において、タンパク質は、無傷のままである。いくつかの実施形態において、タンパク質分析アッセイは、無傷の空間サンプルに対して実行される。いくつかの実施形態において、タンパク質分析アッセイは、標的タンパク質(またはその一部)に対する結合剤を含む。
【0232】
いくつかの実施形態において、空間サンプルから放出された高分子(例えば、ポリペプチド)は、ポリペプチド分析アッセイを実行する前に、固体支持体の表面に接合される。固体支持体は、ビーズ、マイクロビーズ、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、PTFE膜、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フローセル、フロースルーチップ、シグナル変換電子機器を含めたバイオチップ、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、スピン干渉ディスク、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ナノ粒子、またはミクロスフェアを含むが、これらに限定されない任意の支持体表面であり得る。固体支持体の材料としては、アクリルアミド、アガロース、セルロース、デキストラン、ニトロセルロース、ガラス、金、石英、ポリスチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)、テフロン(登録商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、シリカ、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、官能化シラン、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、ポリアミノ酸、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、固体支持体は、ビーズ、例えば、ポリスチレンビーズ、ポリマービーズ、ポリアクリレートビーズ、アガロースビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、シリカベースのビーズ、もしくは制御された多孔質ビーズ、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0233】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」、「固体表面」、または「固体基質」、または「シーケンシング基質」、または「基質」という用語は、共有結合性の相互作用および非共有結合性の相互作用、またはそれらの任意の組み合わせを含む、当技術分野で既知の任意の手段によって、直接的または間接的に高分子、例えば、ポリペプチドを関連付けることができる、多孔質材料および非多孔質材料を含めた任意の固体材料を指す。固体支持体は、二次元(例えば、平面)または三次元(例えば、ゲルマトリックスまたはビーズ)であり得る。固体支持体は、ビーズ、マイクロビーズ、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、PTFE膜、PTFE膜、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、フローセル、シグナル変換電子機器を含めたバイオチップ、チャネル、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、スピン干渉ディスク、ポリマーマトリックス、ナノ粒子、またはミクロスフェアを含むが、これらに限定されない任意の支持体表面であり得る。固体支持体の材料としては、アクリルアミド、アガロース、セルロース、デキストラン、ニトロセルロース、ガラス、金、石英、ポリスチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)、テフロン(登録商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、官能化シラン、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、ポリアミノ酸、デキストラン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。固体支持体はさらに、薄膜、膜、ボトル、皿、繊維、織繊維、チューブなどの成形ポリマー、粒子、ビーズ、ミクロスフェア、微粒子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。例えば、固体表面がビーズである場合、ビーズは、セラミックビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリマービーズ、ポリアクリレートビーズ、メチルスチレンビーズ、アガロースビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、または制御多孔質ビーズ、シリカベースのビーズ、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。ビーズは、球形であっても不規則な形状であってもよい。ビーズまたは支持体は、多孔質であり得る。ビーズのサイズは、ナノメートル、例えば100nm~数ミリメートル、例えば1mmまでの範囲であり得る。特定の実施形態において、ビーズのサイズは、約0.2ミクロン~約200ミクロン、または約0.5ミクロン~約5ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態において、ビーズは、直径約1、1.5、2、2.5、2.8、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、15、または20μmであり得る。特定の実施形態において、「ビーズ」固体支持体は、個々のビーズまたは複数のビーズを指す場合がある。いくつかの実施形態において、固体表面はナノ粒子である。特定の実施形態において、ナノ粒子のサイズは、直径が約1nm~約500nm、例えば、直径が約1nm~約20nmの間、約1nm~約50nmの間、約1nm~約100nmの間、約10nm~約50nmの間、約10nm~約100nmの間、約10nm~約200nmの間、約50nm~約100nmの間、約50nm~約150の間、約50nm~約200nmの間、約100nm~約200nmの間、または約200nm~約500nmの間の範囲である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、直径が約10nm、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約300nm、または約500nmであり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、直径が約200nm未満である。
【0234】
ポリペプチドを固体支持体に付着させるために、様々な反応を使用することができる。ポリペプチドは、固体支持体に直接的または間接的に付着させることができる。場合によっては、ポリペプチドは、核酸を介して固体支持体に付着される。例示的な反応としては、アジドおよびアルキンの銅触媒反応によるトリアゾールの形成(ヒュスゲン1,3-双極環化付加)、歪み促進型アジドアルキン付加環化(SPAAC)、ジエンおよびジエノフィルの反応(ディールス・アルダー)、歪み促進型アルキン-ニトロン付加環化、歪みアルケンとアジド、テトラジン、またはテトラゾールとの反応、アルケンおよびアジド[3+2]環化付加、アルケンおよびテトラジン逆電子要求ディールス・アルダー(IEDDA)反応(例えば、m-テトラジン(mTet)もしくはフェニルテトラジン(pTet)およびトランス-シクロオクテン(TCO);またはpTetおよびアルケン)、アルケンおよびテトラゾール光反応、シュタウディンガー反応、アジドおよびホスフィンのシュタウディンガーライゲーション、ならびに求電子性原子上の求核攻撃による脱離基の置換などの様々な置換反応が挙げられる(Horisawa 2014,Knall,Hollauf et al.2014)。例示的な置換反応には、アミンと、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、エポキシドなどとの反応が含まれる。
【0235】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド分析アッセイの前に、複数のタンパク質が固体支持体に付着される。複数のタンパク質が同じ固体支持体上に固定化されている特定の実施形態において、タンパク質を評価するために使用される分析方法に対応するために、タンパク質を適切に離間させることができる。例えば、タンパク質を評価およびシーケンシングするための核酸ベースの方法が実行されることを可能にするために最適にタンパク質を離間させることが有利である可能性がある。いくつかの実施形態において、タンパク質を評価およびシーケンシングするための方法は、タンパク質に結合する結合剤を含み、結合剤は、タンパク質に付着した核酸に転送される情報を有するコードタグ(例えば、記録タグ)を含む。場合によっては、1つのタンパク質に結合した結合剤のコーディングタグからの情報転送が、隣接するタンパク質に到達することがある。
【0236】
いくつかの実施形態において、固体支持体の表面は、不動態化(ブロック)されている。「不動態化された」表面とは、材料の外層で処理された表面を指す。表面を不動態化する方法には、ポリエチレングリコール(PEG)(Pan et al.,2015,Phys.Biol.12:045006)、ポリシロキサン(例えば、Pluronic F-127)、スターポリマー(例えば、スターPEG)(Groll et al.,2010,Methods Enzymol.472:1-18)、疎水性ジクロロジメチルシラン(DDS)+自己組織化Tween-20(Hua et al.,2014,Nat.Methods 11:1233-1236)、ダイヤモンド様炭素(DLC)、DLC+PEG(Stavis et al.,2011,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108:983-988)、および両性イオン部分(例えば、米国特許出願公開第2006/0183863号)が含まれる。共有結合性表面修飾に加えて、Tween-20のような界面活性剤、溶液中のポリシロキサン(Pluronicシリーズ)、ポリビニルアルコール(PVA)、ならびにBSAおよびカゼインのようなタンパク質を含む、多くの不動態化剤も同様に使用することができる。あるいは、分析物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド)の密度は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを固体基質に固定化するときに、競合物質または「ダミー」反応性分子をスパイクすることによって、固体基質の表面上またはその体積内で滴定することができる。
【0237】
固体支持体上のタンパク質間隔を制御するために、タンパク質を付着させるための官能性カップリング基(例えば、TCOまたはカルボキシル基(COOH))の密度を、基質表面上で滴定することができる。いくつかの実施形態において、複数のポリペプチドは、隣接したタンパク質が、約50nm~約500nm、または約50nm~約400nm、または約50nm~約300nm、または約50nm~約200nm、または約50nm~約100nmの距離で離間するように、固体支持体の表面上または体積内(例えば、多孔質支持体)で離間される。いくつかの実施形態において、複数のポリペプチドは、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも200nm、少なくとも250nm、少なくとも300nm、少なくとも350nm、少なくとも400nm、少なくとも450nm、または少なくとも500nmの平均距離で、固体支持体の表面上で離間される。いくつかの実施形態において、複数のポリペプチドは、少なくとも50nmの平均距離で、固体支持体の表面上で離間される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、経験的に、分子間事象と分子内事象(例えば、情報の転送)との相対頻度が、<1:10、<1:100、<1:1,000、または<1:10,000であるように、固体支持体の表面上または体積内で離間される。
【0238】
いくつかの実施形態において、複数のタンパク質は、約50~100nm、約50~250nm、約50~500nm、約50~750nm、約50~1,000nm、約50~1,500nm、約50~2,000nm、約100~250nm、約100~500nm、約200~500nm、約300~500nm、約100~1000nm、約500~600nm、約500~700nm、約500~800nm、約500~900nm、約500~1000nm、約500~2,000nm、約500~5,000nm、約1000~5,000nm、または約3,000~5,000nmの範囲の2つの隣接したタンパク質間の平均距離で離間された固体支持体上でカップリングされる。
【0239】
いくつかの実施形態において、固体支持体上のポリペプチドの適切な間隔は、基質表面上の利用可能な付着分子の比率を滴定することによって達成される。いくつかの例では、基質表面(例えば、ビーズ表面)は、活性化剤(例えば、活性化剤はEDCおよびスルホ-NHSである)で処理されるカルボキシル基(COOH)で官能化される。いくつかの例では、基質表面(例えば、ビーズ表面)は、NHS部分を含む。いくつかの実施形態において、mPEG-NH2およびNH2-PEG-mTetの混合物が、活性化されたビーズに添加される(式中、nは、1~100などの任意の数値である)。mPEG-NH(カップリングには利用不可)とNH2-PEG24-mTet(カップリングに利用可能)との間の比率を滴定して、ポリペプチドを基質表面上に付着させるために利用可能な官能性部分の適切な密度を生成する。特定の実施形態において、固体表面上のカップリング部分(例えば、NH-PEG-mTet)間の平均間隔は、少なくとも50nm、少なくとも100nm、少なくとも250nm、または少なくとも500nmである。いくつかの特定の実施形態において、NH-PEG-mTet対mPEG-NH2の比は、約1:1000以上、約1:10,000以上、約1:100,000以上、または約1:1,000,000以上である。いくつかのさらなる実施形態において、記録タグは、NH2-PEG-mTetに付着する。いくつかの実施形態において、固体支持体上のポリペプチドの間隔は、固体支持体上の利用可能なCOOHまたは他の官能基の濃度および/または数を制御することによって達成される。
【0240】
A.コーディングタグ情報の記録タグへの周期的な転送
いくつかの実施形態において、ポリペプチド分析アッセイは、高分子、例えば、ポリペプチドと関連付けられた伸長記録タグ(プローブタグおよび/または空間タグから転送された情報を含む)を利用するアッセイを実行することを含む。ポリペプチドと関連付けられた記録タグは、1つ以上のコーディングタグからの識別情報を記録タグに転送し、それにより伸長記録タグをさらに伸長することを含むポリペプチド分析アッセイで使用される。いくつかの実施形態において、空間タグは、スペーサーポリマーを含む。特定の実施形態において、記録タグは、その末端、例えば3’末端にスペーサーを含む。本明細書で使用される場合、記録タグとの関連におけるスペーサー配列への言及は、その同族結合剤と関連付けられたスペーサー配列と同一のスペーサー配列、またはその同族結合剤と関連付けられたスペーサー配列に相補的なスペーサー配列を含む。記録タグ上の末端、例えば3’スペーサーは、(例えば、プライマー伸長または粘着末端ライゲーションのための相補的スペーサー配列のアニーリングにより)最初の結合サイクル中に同族結合剤の識別情報をそのコーディングタグから記録タグに転送することを可能にする。一実施形態において、スペーサー配列は、約1~20個の塩基の長さ、約2~12個の塩基の長さ、または5~10個の塩基の長さである。スペーサーの長さは、コーディングタグ情報を記録タグに転送するためのプライマー伸長反応の温度および反応条件などの要因に応じて変化し得る。
【0241】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドのライブラリーと関連付けられた記録タグは、共通のスペーサー配列を共有する。他の実施形態において、ポリペプチドのライブラリーと関連付けられた記録タグは、それらの同族の結合剤の結合サイクル特異的スペーサー配列に相補的な結合サイクル特異的スペーサー配列を有する。
【0242】
いくつかの態様において、記録タグ内のスペーサー配列は、記録タグ内の他の領域に対して最小限の相補性を有するように設計され、同様に、コーディングタグ内のスペーサー配列は、コーディングタグ内の他の領域に対して最小限の相補性を有する必要がある。言い換えれば、記録タグおよびコーディングタグのスペーサー配列は、記録タグまたはコーディングタグに存在する、固有分子識別子、バーコード(例えば、コンパートメント、パーティション、サンプル、空間位置)、ユニバーサルプライマー配列、エンコーダー配列、サイクル特異的配列などのコンポーネントに対して最小限の配列相補性を有する必要がある。
【0243】
いくつかの実施形態において、記録タグは、5’から3’方向、すなわち、ユニバーサルフォワード(または5’)プライミング配列、プローブタグから転送された情報、およびスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態において、記録タグは、5’から3’方向、すなわち、ユニバーサルフォワード(または5’)プライミング配列、プローブタグから転送された情報、任意選択的に他のバーコード(例えば、サンプルバーコード、パーティションバーコード、コンパートメントバーコード、または任意のそれらの組み合わせ)、およびスペーサー配列を含む。いくつかの他の実施形態において、記録タグは、5’から3’方向、すなわち、ユニバーサルフォワード(または5’)プライミング配列、プローブタグから転送された情報、任意選択的に他のバーコード(例えば、サンプルバーコード、パーティションバーコード、コンパートメントバーコード、または任意のそれらの組み合わせ)、任意選択的なUMI、およびスペーサー配列を含む。
【0244】
結合剤と関連付けられたコーディングタグは、その関連付けられた結合剤に関する識別情報を含む、任意の好適な長さを有するポリヌクレオチド、例えば、2~100(2および100を含む)の任意の整数を含む、約2塩基~約100塩基の核酸分子であるか、またはそれを含む。「コーディングタグ」は、「シーケンシング可能なポリマー」から作製することもできる(例えば、Niu et al.,2013,Nat.Chem.5:282-292、Roy et al.,2015,Nat.Commun.6:7237、Lutz,2015,Macromolecules 48:4759-4767(その各々は参照によりその全体が組み込まれる)を参照)。コーディングタグは、エンコーダー配列または識別情報を有する配列を含み得、これには、任意選択的に片側に1つのスペーサーが隣接するか、または任意選択的に両側にスペーサーが隣接する。コーディングタグはまた、任意選択的なUMIおよび/または任意の結合サイクル特異的バーコードで構成され得る。コーディングタグは、一本鎖または二本鎖であり得る。二本鎖コーディングタグは、平滑末端、突出末端、またはその両方を含み得る。コーディングタグは、結合剤に直接付着しているコーディングタグ、結合剤に直接付着しているコーディングタグにハイブリダイズした相補配列(例えば、二本鎖コーディングタグの場合)、または記録タグ上の伸長核酸に存在するコーディングタグ情報を指す場合がある。特定の実施形態において、コーディングタグは、結合サイクル特異的スペーサーまたはバーコード、固有の分子識別子、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。
【0245】
いくつかの実施形態において、コーディングタグからの識別情報は、結合剤によって結合されたペプチドまたはポリペプチド上の1つ以上のアミノ酸の同一性に関する情報を含む。
【0246】
いくつかの例では、1つ以上の結合剤からの情報を含む最終伸長記録タグ(付着した任意の追加のタグを含む)には、任意選択的に、ユニバーサルプライミング部位が隣接し、下流増幅および/またはDNAシーケンシングを促進する。フォワードユニバーサルプライミング部位(例えば、IlluminaのP5-S1配列)は、元の記録タグ設計の一部であり得、リバースユニバーサルプライミング部位(例えば、IlluminaのP7-S2’配列)は、核酸の伸長における最終ステップとして追加することができる。いくつかの実施形態において、フォワードおよびリバースプライミング部位の追加は、結合剤とは独立して行うことができる。
【0247】
本明細書に記載の方法では、結合剤が高分子、例えば、タンパク質またはペプチドに結合すると、その連結されたコーディングタグの識別情報が、ペプチドと関連付けられた記録タグ(例えば、記録タグ)に転送され、それにより、伸長記録タグが生成される。分析のためのタンパク質またはペプチドと関連付けられた核酸は、記録タグおよび1つ以上のプローブタグからの情報を含むことができる。いくつかの実施形態において、記録タグは、バーコードおよび/または他の核酸成分をさらに含む。特定の実施形態において、結合剤のコーディングタグからの識別情報は、記録タグに転送されるか、またはそれに付着された任意の既存のバーコード(または他の核酸成分)に追加される。識別情報の転送は、伸長またはライゲーションを使用して実行することができる。いくつかの実施形態において、スペーサーが記録タグの末端に付加され、スペーサーは、識別情報の転送を容易にするために、コーディングタグ上の配列とハイブリダイズすることができる配列を含む。
【0248】
特定の結合剤と関連付けられたコーディングタグ情報は、様々な方法を使用して記録タグに転送され得る。特定の実施形態において、コーディングタグの情報は、プライマー伸長を介して記録タグに転送される(例えば、Chan et al.(2015)Curr Opin Chem Biol 26:55-61を参照)。記録タグの3’末端のスペーサー配列または伸長記録タグは、コーディングタグの3’末端の相補的スペーサー配列とアニーリングし、ポリメラーゼ(例えば、鎖置換ポリメラーゼ)は、鋳型としてのアニーリングされたコーディングタグを使用して、記録タグ配列を伸長する。いくつかの実施形態において、コーディングタグエンコーダー配列および5’スペーサーに相補的なオリゴヌクレオチドをコーディングタグに事前にアニーリングして、伸長記録タグに存在する内部エンコーダーおよびスペーサー配列へのコーディングタグのハイブリダイゼーションを防ぐことができる。依然として一本鎖の状態であるコーディングタグ上の3’末端スペーサーは、好ましくは、記録タグ上の末端3’スペーサーに結合する。他の実施形態において、発生期の記録タグを一本鎖結合タンパク質でコーティングして、内部部位へのコーディングタグのアニーリングを防ぐことができる。あるいは、発生期の記録タグをRecA(またはuvsXなどの関連する相同体)でコーティングして、完全に二本鎖のコーディングタグへの3’末端の侵入を促進することもできる(Bell et al.,2012,Nature 491:274-278)。この構成は、二本鎖コーディングタグが内部記録タグ要素と相互作用するのを防ぐが、伸長記録タグのRecAコーティングされた3’テールによる鎖侵入の影響を受けやすくなる(Bell et al.,2015,Elife 4:e08646)。一本鎖結合タンパク質の存在は、鎖置換反応を促進する可能性がある。
【0249】
伸長核酸(例えば、記録タグ)は、任意の核酸分子またはシーケンシング可能なポリマー分子であり(例えば、Niu et al.,2013,Nat.Chem.5:282-292、Roy et al.,2015,Nat.Commun.6:7237、Lutz,2015,Macromolecules 48:4759-4767を参照、各々が参照によりその全体が組み込まれる)、それが関連付けられた高分子、例えば、ポリペプチドの識別情報および/または分子プローブからの情報を含む。特定の実施形態において、結合剤がポリペプチドに結合した後、結合剤に連結したコーディングタグからの情報を、結合剤がポリペプチドに結合している間に、ポリペプチドと関連付けられた核酸に転送することができる。
【0250】
コーディングタグからの識別情報を有する高分子、例えば、ペプチドと関連付けられた伸長核酸は、実行される各結合サイクルを表す結合剤のコーディングタグからの情報を含み得る。しかしながら、場合によっては、伸長核酸はまた、例えば、結合剤がポリペプチドに結合することができない場合、コーディングタグが欠落しているか、損傷しているか、または欠陥があるために、プライマー伸長反応が失敗したために、「欠落した」結合サイクルを経験する場合がある。結合事象が発生した場合でも、例えば、コーディングタグが損傷しているか、または欠陥があるため、プライマー伸長反応においてエラーが発生したため、コーディングタグからの情報の転送が不完全であり得るか、または100%未満の精度であり得る)。したがって、伸長核酸は、その関連付けられたポリペプチドで発生した結合事象の100%、または最大95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、65%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、もしくはその任意の部分範囲を表し得る。さらに、伸長核酸に存在するコーディングタグ情報は、対応するコーディングタグに対して少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有し得る。
【0251】
特定の実施形態において、伸長記録タグは、複数の連続する結合事象を表す複数のコーディングタグからの情報を含み得る。これらの実施形態において、固定化ペプチドと関連付けられた単一の連結された伸長記録タグは、単一のポリペプチドを表すことができる。本明細書で言及されるように、固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグへのコーディングタグ情報の転送はまた、複数の連続する結合事象を伴う方法において起こるような、伸長記録タグへの転送を含む。
【0252】
特定の実施形態において、結合事象情報は、コーディングタグから固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグに周期的に転送される。交差反応性結合事象は、2つ以上の独立した結合事象を識別する少なくとも2つの異なるコーディングタグが同じクラスの結合剤(特定のタンパク質と同族)にマッピングされることを要求することにより、シーケンシング後に情報から(informatically)除外することができる。コーディングタグは、1つ以上のスペーサー配列に加えて、任意選択的なUMI配列を含み得る。ユニバーサルプライミング配列はまた、増幅およびNGSシーケンシングのために固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグ上の伸長核酸に含まれ得る。
【0253】
記載される任意の結合剤は、結合剤に関する識別情報を含むコーディングタグを含む。コーディングタグは、約3塩基~約100塩基の核酸分子であり、その関連付けられた結合剤に固有の識別情報を提供する。コーディングタグは、約3~約90塩基、約3~約80塩基、約3~約70塩基、約3~約60塩基、約3塩基~約50塩基、約3塩基~約40塩基、約3塩基~約30塩基、約3塩基~約20塩基、約3塩基~約10塩基、または約3塩基~約8塩基を含み得る。いくつかの実施形態において、コーディングタグは、約3個の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、16個の塩基、17個の塩基、18個の塩基、19個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、30個の塩基、35個の塩基、40個の塩基、55個の塩基、60個の塩基、65個の塩基、70個の塩基、75個の塩基、80個の塩基、85個の塩基、90個の塩基、95個の塩基、または100個の塩基の長さである。コーディングタグは、DNA、RNA、ポリヌクレオチド類似体、またはそれらの組み合わせで構成され得る。ポリヌクレオチド類似体としては、PNA、γPNA、BNA、GNA、TNA、LNA、モルフォリノポリヌクレオチド、2’-O-メチルポリヌクレオチド、アルキルリボシル置換ポリヌクレオチド、ホスホロチオエートポリヌクレオチド、および7-デアザプリン類似体が挙げられる。
【0254】
特定の結合剤と関連付けられたコーディングタグ情報は、様々な方法を使用して転送され得る。特定の実施形態において、コーディングタグの情報は、プライマー伸長を介して固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグに転送される(Chan,McGregor et al.2015)。記録タグの3’末端のスペーサー配列は、コーディングタグの3’末端の相補的スペーサー配列とアニーリングし、ポリメラーゼ(例えば、鎖置換ポリメラーゼ)は、アニーリングされたコーディングタグを鋳型として使用して、記録タグ上の核酸配列を伸長する。いくつかの実施形態において、コーディングタグエンコーダー配列および5’スペーサーに相補的なオリゴヌクレオチドをコーディングタグに事前にアニーリングして、伸長核酸に存在する内部エンコーダーおよびスペーサー配列へのコーディングタグのハイブリダイゼーションを防ぐことができる。依然として一本鎖の状態であるコーディングタグ上の3’末端スペーサーは、好ましくは、記録タグ(または任意のバーコードもしくは関連付けられた他の核酸成分)上の末端3’スペーサーに結合する。他の実施形態において、固定化されたペプチドと関連付けられた発生期の記録タグを一本鎖結合タンパク質でコーティングして、内部部位へのコーディングタグのアニーリングを防ぐことができる。
【0255】
前述の実施形態のうちのいずれにおいても、(例えば、コーディングタグから記録タグへの)識別情報の転送は、ライゲーション(例えば、酵素的または化学的ライゲーション、スプリントライゲーション、粘着末端ライゲーション、ssDNAライゲーションなどの一本鎖(ss)ライゲーション、またはそれらの任意の組み合わせ)、ポリメラーゼ媒介反応(例えば、一本鎖核酸または二本鎖核酸のプライマー伸長)、またはそれらの任意の組み合わせによって達成され得る。
【0256】
いくつかの実施形態において、プライマー伸長のために使用されるDNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有し、3’-5エキソヌクレアーゼ活性が制限されたか、または欠如する。このようなポリメラーゼの多くの例のいくつかには、クレノウエキソ-(DNA Pol1のクレノウ断片)、T4 DNAポリメラーゼエキソ-、T7 DNAポリメラーゼエキソ(Sequenase 2.0)、Pfuエキソ-、Ventエキソ-、Deep Ventエキソ-、Bst DNAポリメラーゼラーゼ断片エキソ-、Bca Pol、9°N Pol、およびPhi29 Polエキソ-が含まれる。好ましい実施形態において、DNAポリメラーゼは、室温および45℃までで活性である。別の実施形態において、好熱性ポリメラーゼの「ウォームスタート」バージョンは、ポリメラーゼが活性化され、約40℃~50℃で使用されるように採用される。例示的なウォームスタートポリメラーゼは、Bst 2.0 Warm Start DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)である。
【0257】
鎖置換複製に有用な添加剤としては、E.coliのSSBタンパク質、ファージT4遺伝子32産物、ファージT7遺伝子2.5タンパク質、ファージPf3 SSB、複製タンパク質A RPA32およびRPA14サブユニット(Wold,Annu.Rev.Biochem.(1997)66:61-92)などの細菌、ウイルス、または真核生物由来の多数の一本鎖DNA結合タンパク質(SSBタンパク質)のうちのいずれか;アデノウイルスDNA結合タンパク質、単純ヘルペスタンパク質ICP8、BMRF1ポリメラーゼアクセサリーサブユニット、ヘルペスウイルスUL29 SSB様タンパク質などの他のDNA結合タンパク質;ファージT7ヘリカーゼ/プリマーゼ、ファージT4遺伝子41ヘリカーゼ、E.coli Repヘリカーゼ、E.coli recBCDヘリカーゼ、recA、E.coli、および真核生物トポイソメラーゼ(Annu Rev Biochem.(2001)70:369-413)などの、DNA複製に関与することが知られている多くの複製複合体タンパク質のうちのいずれかが挙げられる。
【0258】
再コーディング(recoding)タグの末端スペーサー配列が伸長自己伸長をプライミングする場合などのミスプライミングまたは自己プライミング事象は、一本鎖結合タンパク質(T4遺伝子32、E.coli SSBなど)、DMSO(1~10%)、ホルムアミド(1~10%)、BSA(10~100ug/ml)、TMACl(1~5mM)、硫酸アンモニウム(10~50mM)、ベタイン(1~3M)、グリセロール(5~40%)、またはエチレングリコール(5~40%)をプライマー伸長反応に含めることによって最小限に抑えることができる。
【0259】
クレノウエキソ-、T7 DNAポリメラーゼエキソ-(Sequenase 2.0)などのほとんどのタイプAポリメラーゼは、3’エキソヌクレアーゼ活性(内因性または操作による除去)を欠いており、Taqポリメラーゼは、ヌクレオチド、好ましくはアデノシン塩基(配列との関連に応じて、程度は低いがG塩基)の、二重増幅産物の3’平滑末端への非鋳型的付加を触媒する。Taqポリメラーゼの場合、3’ピリミジン(C>T)は非鋳型的アデノシン付加を最小限に抑えるが、3’プリンヌクレオチド(G>A)は鋳型化されていないアデノシンの付加を優先する。いくつかの実施形態において、プライマー伸長のためにTaqポリメラーゼを使用して、結合剤から遠位のスペーサー配列と、隣接するバーコード配列(例えば、エンコーダー配列またはサイクル特異的配列)との間のコーディングタグにおけるチミジン塩基の配置は、記録タグのスペーサー配列の3’末端に鋳型化されていないアデノシンヌクレオチドが散発的に含まれることに対応する。このようにして、固定化されたペプチドと関連付けられた伸長記録タグ(鋳型化されていないアデノシン塩基の有無にかかわらず)は、コーディングタグにアニーリングし、プライマー伸長を受けることができる。
【0260】
あるいは、鋳型化されていない塩基の添加は、特にO-ヘリックス領域において、鋳型化されていない末端トランスフェラーゼ活性が1つ以上の点突然変異によって大幅に減少した突然変異体ポリメラーゼ(中温性または好熱性)を使用することによって減らすことができる(米国特許第7,501,237号を参照)(Yang et al.,Nucleic Acids Res.(2002)30(19):4314-4320)。3’エキソヌクレアーゼ欠損であり、鎖置換能を有するPfuエキソ-も、鋳型化されていない末端トランスフェラーゼ活性を持たない。
【0261】
別の実施形態において、ポリメラーゼ伸長緩衝液は、pH値6~9のTris-アセテート、Tris-HCl、HEPESなどの40~120mMの緩衝剤から構成される。
【0262】
いくつかの実施形態において、溶液中のコーディングタグ標識結合剤と固定化タンパク質の核酸との非特異的相互作用を最小化するために、(例えば、記録タグ上の)核酸含有スペーサー配列に相補的な競合(ブロッキングとも呼ばれる)オリゴヌクレオチドを結合反応に加えて、非特異的な相互作用を最小限に抑えることができる。いくつかの実施形態において、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、コーディングタグまたは結合剤に付着したその一部に相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、ブロッキングオリゴヌクレオチドは比較的短い。過剰な競合オリゴヌクレオチドは、プライマー伸長の前に結合反応から洗い流され、これにより、特にわずかに高い温度(例えば、30~50℃)に曝露された場合に、アニーリングされた競合オリゴヌクレオチドが記録タグ上の核酸から効果的に解離される。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、プライマー伸長を防ぐために、その3’末端にターミネーターヌクレオチドを含み得る。
【0263】
特定の実施形態において、記録タグ上のスペーサー配列の、コーディングタグ上の相補的スペーサー配列へのアニーリングは、プライマー伸長反応条件下で準安定である(すなわち、アニーリングTmは、反応温度に類似する)。これにより、コーディングタグのスペーサー配列は、記録タグ(またはその伸長)のスペーサー配列にアニーリングされた任意のブロッキングオリゴヌクレオチドを置換することができる。
【0264】
伸長記録タグの末端スペーサー配列と伸長記録タグの内部領域との自己アニーリングによって開始される自己プライミング/ミスプライミング事象は、記録/伸長記録タグに偽相補的塩基を含めることによって最小限に抑えることができる(Lahoud,Timoshchuk et al.2008)、(Hoshika,Chen et al.2010)。偽相補的塩基は、化学修飾の存在により、互いに二重鎖を形成するためのハイブリダイゼーション親和性が大幅に低下することを示す。しかしながら、多くの偽相補的修飾塩基は、天然のDNAまたはRNA配列と強い塩基対を形成する可能性がある。特定の実施形態において、コーディングタグスペーサー配列は、複数のAおよびT塩基から構成され、市販の偽相補的塩基である2-アミノアデニンおよび2-チオチミンは、ホスホルアミダイトオリゴヌクレオチド合成を利用して記録タグに組み込まれる。追加の偽相補的塩基は、偽相補的ヌクレオチドを反応に加えることによって、プライマー伸長中に伸長記録タグに組み込むことができる(Gamper,Arar et al.2006)。
【0265】
特定の結合剤と関連付けられたコーディングタグ情報は、ライゲーションを介して固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグ上の核酸に転送され得る。ライゲーションは、平滑末端ライゲーションまたは粘着末端ライゲーションである可能性がある。ライゲーションは、酵素的ライゲーション反応である可能性がある。リガーゼの例としては、CV DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、T3 DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、E.coli DNAリガーゼ、9°N DNAリガーゼ、Electroligase(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、米国特許公開第2014/0378315を参照)。あるいは、ライゲーションは、化学ライゲーション反応であり得る。国際特許公開第2017/192633号において例証されるように、スペーサーのないライゲーションは、「記録ヘルパー」配列とコーディングタグ上のアームとのハイブリダイゼーションを使用することによって達成される。アニーリングされた補体配列は、標準的な化学ライゲーションまたは「クリック化学」を使用して化学的にライゲーションされる(Gunderson et al.,Genome Res(1998)8(11):1142-1153、Peng et al.,European J Org Chem(2010)(22):4194-4197、El-Sagheeret al.,Proc Natl Acad Sci U S A(2011)108(28):11338-11343、El-Sagheer et al.,Org Biomol Chem(2011)9(1):232-235、Sharma et al.,Anal Chem(2012)84(14):6104-6109、Roloff et al.,Bioorg Med Chem(2013)21(12):3458-3464、Litovchick et al.,Artif DNA PNA XNA(2014)5(1):e27896、Roloff et al.,Methods Mol Biol(2014)1050:131-141)。
【0266】
別の実施形態において、PNAの転送は、公開された技術を使用する化学ライゲーションで達成することができる。PNAの構造は、5’N末端アミン基および非反応性3’C末端アミドを有するようなものである。PNAの化学ライゲーションでは、化学的に活性になるように末端を修飾する必要がある。これは典型的に、5’N末端をシステイニル部分で誘導体化し、3’C末端をチオエステル部分で誘導体化することによって行われる。そのような修飾されたPNAは、標準の天然化学ライゲーション条件を使用して簡単にカップリングする(Roloff et al.,(2013)Bioorgan.Med.Chem.21:3458-3464)。
【0267】
いくつかの実施形態において、コーディングタグ情報は、トポイソメラーゼを使用して転送することができる。トポイソメラーゼを使用して使用して、記録タグ上のトポ荷電3’リン酸塩をコーディングタグの5’末端またはその補体にライゲーションすることができる(Shuman et al.,1994,J.Biol.Chem.269:32678-32684)。
【0268】
コーディングタグは、関連付けられた結合剤に関する識別情報を提供するエンコーダー配列を含む。エンコーダー配列は、約3塩基~約30塩基、約3塩基~約20塩基、約3塩基~約10塩基、または約3塩基~約8塩基である。いくつかの実施形態において、エンコーダー配列は、約3個の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、20個の塩基、25個の塩基、または30個の塩基の長さである。エンコーダー配列の長さによって、生成できる固有のエンコーダー配列の数が決定される。短いエンコーディング配列は、少数の固有のエンコーディング配列を生成し、これは少数の結合剤を使用する場合に役立つことがある。特定の実施形態において、50以上の固有のエンコーダー配列のセットが、結合剤ライブラリーに使用される。
【0269】
いくつかの実施形態において、結合剤のライブラリー内の各固有の結合剤は、固有のエンコーダー配列を有する。例えば、20個の標準的なアミノ酸に結合する20個の結合剤のライブラリーに対して、20個の固有のエンコーダー配列を使用することができる。追加のコーディングタグ配列を使用して、修飾アミノ酸(例えば、翻訳後修飾アミノ酸)を識別することができる。別の例では、20個の標準的なアミノ酸および10個の翻訳後修飾アミノ酸(例えば、リン酸化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、メチル化アミノ酸)に結合する30個の結合剤のライブラリーに30個の固有のエンコーダー配列を使用することができる。他の実施形態において、2つ以上の異なる結合剤が、同じエンコーダー配列を共有し得る。例えば、各々が異なる標準的なアミノ酸に結合する2つの結合剤は、同じエンコーダー配列を共有し得る。
【0270】
特定の実施形態において、コーディングタグは、一端または両端にスペーサー配列をさらに含む。スペーサー配列は、約1塩基~約20塩基、約1塩基~約10塩基、約5塩基~約9塩基、または約4塩基~約8塩基である。いくつかの実施形態において、スペーサーは、約1個の塩基、2個の塩基、3個の塩基、4個の塩基、5個の塩基、6個の塩基、7個の塩基、8個の塩基、9個の塩基、10個の塩基、11個の塩基、12個の塩基、13個の塩基、14個の塩基、15個の塩基、または20個の塩基の長さである。いくつかの実施形態において、コーディングタグ内のスペーサーは、エンコーダー配列よりも短く、例えば、エンコーダー配列より少なくとも1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、20塩基、または25塩基短い。他の実施形態において、コーディングタグ内のスペーサーは、エンコーダー配列と同じ長さである。特定の実施形態において、スペーサーは結合剤特異的であり、その結果、前の結合サイクルからのスペーサーは、現在の結合サイクルにおいて適切な結合剤からのスペーサーとのみ相互作用する。例は、両方の抗体がポリペプチドに順次結合する場合にのみ情報転送を可能にするスペーサー配列を含む、同族抗体の対である。スペーサー配列は、プライマー伸長反応のプライマーアニーリング部位、またはライゲーション反応のスプリントもしくは粘着末端として使用され得る。コーディングタグ上の5’スペーサーは、任意選択的に、記録タグ上の3’スペーサーに対する偽相補的塩基を含み、Tを増加させる(Lehoud et al.,2008,Nucleic Acids Res.36:3409-3419)。他の実施形態において、結合剤のライブラリー内のコーディングタグは、結合サイクル特異的スペーサー配列を有しない。
【0271】
一例では、各々が異なる標的に結合する2つ以上の結合剤は、関連付けられたコーディングタグを有し、同じスペーサーを共有する。場合によっては、2つ以上の結合剤と関連付けられたコーディングタグは、同じ配列またはその一部を有するコーディングタグを共有する。
【0272】
いくつかの実施形態において、結合剤のコレクション内のコーディングタグは、アッセイで使用される共通のスペーサー配列を共有する(例えば、複数の結合サイクル法で使用される結合剤のライブラリー全体は、それらのコーディングタグに共通のスペーサーを有する)。別の実施形態において、コーディングタグは、特定の結合サイクルを識別する結合サイクルタグから構成される。他の実施形態において、結合剤のライブラリー内のコーディングタグは、結合サイクル特異的スペーサー配列を有する。いくつかの実施形態において、コーディングタグは、1つの結合サイクル特異的スペーサー配列を含む。例えば、第1の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル1」特異的スペーサー配列を含み、第2の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル2」特異的スペーサー配列を含むなど、最大「n」個の結合サイクルである。さらなる実施形態において、第1の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル1」特異的スペーサー配列および「サイクル2」特異的スペーサー配列を含み、第2の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル2」特異的スペーサー配列および「サイクル3」特異的スペーサー配列など、最大「n」個の結合サイクルを含む。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、プライマー伸長反応または粘着末端ライゲーション反応を開始するために、記録タグまたは伸長記録タグ内の相補的スペーサー配列にアニーリングするのに十分な数の塩基を含む。
【0273】
いくつかの実施形態において、交互のサイクルで結合するために使用される結合剤と関連付けられたコーディングタグは、異なる結合サイクル特異的スペーサー配列を含む。例えば、第1の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル1」特異的スペーサー配列を含み、第2の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル2」特異的スペーサー配列を含み、第3の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグもまた、「サイクル1」特異的スペーサー配列を含み、第4の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル2」特異的スペーサー配列を含む。このように、サイクル特異的スペーサーは、すべてのサイクルに必要なわけではない。
【0274】
記録タグの集団がポリペプチドと関連付けられている場合、サイクル特異的スペーサー配列を使用して、コーディングタグの情報を単一の記録タグに連結することもできる。第1の結合サイクルは、コーディングタグからの情報をランダムに選択された記録タグに転送し、後続の結合サイクルは、サイクル依存のスペーサー配列を使用して伸長記録タグのみをプライミングすることができる。より具体的には、第1の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル1」特異的スペーサー配列および「サイクル2」特異的スペーサー配列を含み、第2の結合サイクルで使用される結合剤のコーディングタグは、「サイクル2」特異的スペーサー配列および「サイクル3」特異的スペーサー配列など、最大「n」個の結合サイクルを含む。第1の結合サイクルからの結合剤のコーディングタグは、相補的なサイクル1特異的スペーサー配列を介して記録タグにアニーリングすることができる。コーディングタグ情報を記録タグに転送すると、サイクル2特異的スペーサー配列は、結合サイクル1の終わりに伸長記録タグの3’末端に位置付けられる。第2の結合サイクルからの結合剤のコーディングタグは、相補的なサイクル2特異的スペーサー配列を介して伸長記録タグにアニーリングすることができる。コーディングタグ情報が伸長記録タグに転送されると、サイクル3特異的スペーサー配列は、「n」個の結合サイクルを通して、結合サイクル2の終わりに伸長記録タグの3’末端に位置付けられる。この実施形態は、複数の結合サイクル間の特定の結合サイクルにおける結合情報の転送が、前の結合サイクルを経験した(伸長された)記録タグ上でのみ発生することを提供する。しかしながら、時として結合剤が同族のポリペプチドに結合できない場合がある。「追跡」ステップとして各結合サイクルの後に結合サイクル特異的スペーサーを含むオリゴヌクレオチドを使用して、結合サイクルが失敗した場合でも結合サイクルを同期させ続けることができる。例えば、同族の結合剤が結合サイクル1中にポリペプチドに結合できない場合、サイクル1特異的スペーサー、サイクル2特異的スペーサーの両方、および「ヌル」エンコーダー配列を含むオリゴヌクレオチドを使用して、結合サイクル1の後に追跡ステップを追加する。「ヌル」エンコーダー配列は、エンコーダー配列、または好ましくは「ヌル」結合サイクルを明確に識別する特定のバーコードがないことであり得る。「ヌル」オリゴヌクレオチドは、サイクル1特異的スペーサーを介して記録タグにアニーリングすることができ、サイクル2特異的スペーサーは、記録タグに移される。したがって、結合サイクル2からの結合剤は、結合サイクル1事象の失敗にもかかわらず、サイクル2特異的スペーサーを介して伸長記録タグにアニーリングすることができる。「ヌル」オリゴヌクレオチドは、結合サイクル1を、伸長記録タグ内の結合事象の失敗としてマークする。
【0275】
一実施形態において、結合サイクル特異的エンコーダー配列が、タグのコーディングに使用される。結合サイクル特異的エンコーダー配列は、完全に固有の分析物(例えば、NTAA)結合サイクルエンコーダーバーコードを使用するか、サイクル特異的バーコードに接合された分析物(例えば、NTAA)エンコーダー配列を組み合わせて使用することによって達成され得る。組み合わせアプローチを使用する利点は、設計する必要のある合計バーコードが少なくなることである。10サイクルにわたって使用される20個の分析物結合剤のセットの場合、20個の分析物エンコーダー配列バーコードおよび10個の結合サイクル特異的バーコードのみを設計する必要がある。対照的に、結合サイクルが結合剤エンコーダー配列に直接埋め込まれている場合は、合計200の独立したエンコーダーバーコードを設計する必要があり得る。結合サイクル情報をエンコーダー配列に直接埋め込むことの利点は、エラー訂正バーコードを用いるときに、コーディングタグの全長を最小限に抑えることができることである。エラー耐性のあるバーコードを使用すると、エラーが発生しやすいが、分析の速度が速く、コストが低く、かつ/または機器のポータブル性が高いなどの他の利点を有するシーケンシングプラットフォームおよびアプローチを使用して、高精度のバーコードを識別することができる。
【0276】
いくつかの実施形態において、コーディングタグは、結合剤に近位の第2の(3’)スペーサー配列内に切断可能またはニッキング可能なDNA鎖を含む。例えば、3’スペーサーは、ウラシル特異的切除試薬(USER)によってニックを入れることができる1つ以上のウラシル塩基を有し得る。USERは、ウラシルの位置に単一のヌクレオチドギャップを生成する。別の例では、3’スペーサーは、二本鎖の一本鎖のみを加水分解するニッキングエンドヌクレアーゼの認識配列を含み得る。好ましくは、3’スペーサー配列を切断またはニッキングするために使用される酵素は、1つのDNA鎖(コーディングタグの3’スペーサー)にのみ作用し、その結果、(伸長された)記録タグに属する二重鎖内の他の鎖は無傷のままである。これらの実施形態は、プライマー伸長が起こった後に(伸長された)記録タグからの結合剤の非変性除去を可能にし、後続の結合サイクルで使用可能な伸長記録タグ上に一本鎖DNAスペーサー配列を残すため、それらの天然立体配座のタンパク質を分析するアッセイにおいて特に有用である。
【0277】
コーディングタグは、パリンドローム配列を含むように設計することもできる。回文配列をコーディングタグに含めることにより、コーディングタグ情報が転送されるときに、発生期の成長中の伸長記録タグを折り畳むことができる。伸長記録タグは、よりコンパクトな構造に折り畳まれ、望ましくない分子間結合およびプライマー伸長事象を効果的に減少させる。
【0278】
いくつかの実施形態において、コーディングタグは、同じ分析物を認識する結合剤で以前に伸長された記録タグ上でのみ伸長をプライミングすることができる、分析物特異的スペーサーを含む。伸長記録タグは、分析物特異的スペーサーおよびエンコーダー配列を含むコーディングタグを使用して、一連の結合事象から構築することができる。一実施形態において、第1の結合事象は、次の結合サイクルで使用するために、一般的な3’スペーサープライマー配列および5’末端における分析物特異的スペーサー配列で構成されるコーディングタグを有する結合剤を用い、次いで、その後の結合サイクルでは、エンコードされた分析物特異的3’スペーサー配列を持つ結合剤を使用する。この設計により、増幅可能なライブラリー要素は、正しい一連の同族の結合事象からのみ作成される。オフターゲットおよび交差反応性の結合相互作用は、増幅不可能な伸長記録タグにつながるであろう。一例では、特定のポリペプチド分析物への同族の結合剤の対が、分析物を識別するために2つの結合サイクルで使用される。第1の同族の結合剤は、記録タグのジェネリックスペーサー配列の伸長をプライミングするためのジェネリックスペーサー3’配列および5’末端においてエンコードされた分析物特異的スペーサーで構成されるコーディングタグを含み、これは次の結合サイクルで使用される。同族の結合剤の対が一致する場合、第2の結合剤の3’分析物特異的スペーサーは、第1の結合剤の5’分析物特異的スペーサーと一致する。このように、結合剤の同族対の正しい結合のみが、増幅可能な伸長記録タグをもたらすであろう。交差反応性結合剤は、記録タグの伸長をプライミングすることができず、増幅可能な伸長記録タグ産生物は生成されない。このアプローチは、本明細書に開示される方法の特異性を大いに高める。同じ原理を、3サイクルの結合が用いられるトリプレット結合剤セットに適用することができる。第1の結合サイクルでは、記録タグ上の一般的な3’Sp配列が、結合剤コーディングタグ上の一般的なスペーサーと相互作用する。プライマー伸長は、分析物特異的5’スペーサーを含むコーディングタグ情報を記録タグに転送する。その後の結合サイクルでは、結合剤のコーディングタグに分析物特異的スペーサーを用いる。
【0279】
特定の実施形態において、コーディングタグは、コーディングタグが連結されている結合剤の固有の分子識別子をさらに含み得る。結合剤のUMIは、読み出しをシーケンシングするために伸長コーディングタグまたはジタグ分子を利用する実施形態において有用であり得、これは、エンコーダー配列と組み合わせて、結合剤の同一性およびポリペプチドの固有の結合事象の数に関する情報を提供する。
【0280】
コーディングタグは、3’スペーサー配列の3’末端に組み込まれたターミネーターヌクレオチドを含み得る。結合剤がポリペプチドに結合し、それらの対応するコーディングタグおよび記録タグが相補的スペーサー配列を介してアニーリングした後、プライマー伸長がコーディングタグからの情報を記録タグに転送するか、または記録タグからの情報をコーディングタグに転送することが可能である。コーディングタグの3’末端にターミネーターヌクレオチドを付加すると、コーディングタグへの記録タグ情報の転送が防がれる。伸長コーディングタグの生成を伴う本明細書に記載の実施形態において、記録タグへのコーディングタグ情報の転送を防ぐために、記録タグの3’末端にターミネーターヌクレオチドを含めることが好ましい場合があることが理解される。
【0281】
コーディングタグは、一本鎖分子、二本鎖分子、または部分的に二本鎖であり得る。コーディングタグは、平滑末端、突出末端、または各々の1つを含み得る。いくつかの実施形態において、コーディングタグは、部分的に二本鎖であり、これは、成長する伸長記録タグ内の内部エンコーダーおよびスペーサー配列へのコーディングタグのアニーリングを防ぐ。いくつかの実施形態において、コーディングタグは、ヘアピンを含み得る。特定の実施形態において、ヘアピンは、相互に相補的な核酸領域を含み、核酸鎖を介して接続される。いくつかの実施形態において、核酸ヘアピンはまた、二本鎖ステムセグメントから延びる3’および/または5’一本鎖領域をさらに含み得る。いくつかの例では、ヘアピンは、一本鎖の核酸を含む。
【0282】
コーディングタグは、共有結合性および非共有結合性相互作用を含む、当技術分野で知られている任意の手段によって、直接的または間接的に結合剤に接合される。いくつかの実施形態において、コーディングタグは、酵素的または化学的に結合剤に接合され得る。いくつかの実施形態において、コーディングタグは、ライゲーションを介して結合剤に接合され得る。他の実施形態において、コーディングタグは、親和性結合対(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン)を介して結合剤に接合される。
【0283】
いくつかの実施形態において、結合剤は、SpyCatcher-SpyTag相互作用を介してコーディングタグに接合される。SpyTagペプチドは、自発的なイソペプチド連結を介してSpyCatcherタンパク質に対する不可逆的な共有結合を形成し、それにより、力および過酷な条件に抵抗するペプチド相互作用をもたらす遺伝的にエンコードされた方法を提供する(Zakeri et al.,2012,Proc.Natl.Acad.Sci.109:E690-697、Li et al.,2014,J.Mol.Biol.426:309-317)。結合剤は、SpyCatcherタンパク質を含む融合タンパク質として発現され得る。いくつかの実施形態において、SpyCatcherタンパク質は、結合剤のN末端またはC末端に付加される。SpyTagペプチドは、標準的な共役化学(Bioconjugate Techniques,G.T.Hermanson,Academic Press(2013))を使用してコーディングタグにカップリングされ得る。
【0284】
他の実施形態において、結合剤は、SnoopTag-SnoopCatcherペプチド-タンパク質相互作用を介してコーディングタグに接合される。SnoopTagペプチドは、SnoopCatcherタンパク質とイソペプチド結合を形成する(Veggiani et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2016,113:1202-1207)。結合剤は、SnoopCatcherタンパク質を含む融合タンパク質として発現され得る。いくつかの実施形態において、SnoopCatcherタンパク質は、結合剤のN末端またはC末端に付加される。SnoopTagペプチドは、標準的な共役化学を使用してコーディングタグにカップリングされ得る。
【0285】
さらに他の実施形態において、結合剤は、HaloTag(登録商標)タンパク質融合タグおよびその化学的リガンドを介してコーディングタグに接合される。HaloTagは、合成リガンド(HaloTagリガンド)に共有結合するように設計された修飾ハロアルカンデハロゲナーゼです(Los et al.,2008,ACS Chem.Biol.3:373-382)。合成リガンドは、様々な有用な分子に付着したクロロアルカンリンカーを含む。HaloTagとクロロアルカンリンカーとの間に共有結合が形成され、これは非常に特異的であり、生理学的条件下で急速に発生し、本質的に不可逆的である。
【0286】
特定の実施形態において、記録タグ上の核酸の集合をポリペプチドごとに用いて、コーディングタグ情報転送の全体的な堅牢性および効率を改善することができる。単一の核酸ではなく、所与のポリペプチドと関連付けられた核酸の集合を使用することにより、ライブラリー構築の効率を改善することができる。
【0287】
いくつかの実施形態において、この方法は、識別情報をコーディングタグから記録タグに転送した後、結合剤を除去することを含む。変性タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの分析を伴う実施形態において、結合した結合剤およびアニーリングされたコーディングタグは、高度に変性する条件(例えば、0.1~0.2N NaOH、6M尿素、2.4Mグアニジニウムイソチオシアネート、95%ホルムアミドなど)を使用することによって、識別情報の転送(例えば、プライマー伸長)後に除去することができる。
【0288】
a.結合剤
特定の実施形態において、本開示で提供される高分子、例えば、タンパク質(例えば、ポリペプチド)分析アッセイのための方法は、ポリペプチドを複数の結合剤と接触させ、結合剤の連続的な結合により、核酸ベースのコーディングタグの形態における履歴的な結合情報を、ポリペプチドと関連付けられた少なくとも1つの核酸(例えば、記録タグ)に転送する、複数の結合サイクルを含む。このようにして、複数の結合事象に関する情報を含むこれまでの記録が核酸形式で生成される。
【0289】
本明細書に記載の方法は、高分子、例えば、ポリペプチドに結合することができる結合剤を使用する。結合剤は、ポリペプチドの成分または特徴に結合することができる任意の分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子など)であり得る。結合剤は、天然に存在するか、合成的に産生されるか、または組換え的に発現される分子であり得る。結合剤は、ポリペプチドの単一の単量体またはサブユニット(例えば、単一アミノ酸)に結合し得るか、またはポリペプチドの複数の連結されたサブユニット(例えば、より長いポリペプチド分子のジペプチド、トリペプチド、またはより高次のペプチド)に結合し得る。
【0290】
特定の実施形態において、結合剤は、共有結合するように設計され得る。共有結合は、条件付きであるか、または正しい部分に結合すると有利になるように設計され得る。例えば、NTAAおよびその同族のNTAA特異的結合剤は各々、NTAA特異的結合剤が同族のNTAAに結合されると、カップリング反応が実行されて、2つの間の共有結合を作成するように、反応性基で修飾され得る。同族の反応性基を欠く他の場所への結合剤の非特異的結合は、共有結合をもたらさないであろう。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、結合剤への共有結合を形成することができるリガンドを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、結合剤に共有結合することができるリガンド基を含む、官能化されたNTAAを含む。結合剤とその標的との間の共有結合により、より厳密な洗浄を使用して、非特異的に結合している結合剤を除去することが可能になり、したがって、アッセイの特異性が高まる。
【0291】
いくつかの実施形態において、結合剤は、未修飾または天然のアミノ酸に結合する。いくつかの例では、結合剤は、未修飾または天然のジペプチド(2つのアミノ酸の配列)、トリペプチド(3つのアミノ酸の配列)、またはペプチド分子のより高次のペプチドに結合する。結合剤は、天然または未修飾のNTAAに対する高い親和性、天然または未修飾のNTAAに対する高い特異性、あるいはその両方のために設計され得る。いくつかの実施形態において、結合剤は、ファージディスプレイを使用する有望な親和性足場の指向性進化を通じて開発することができる。
【0292】
特定の実施形態において、結合剤は、選択的結合剤であり得る。いくつかの実施形態において、結合剤は、ポリペプチドの単一のアミノ酸残基、ジペプチド、トリペプチド、または翻訳後修飾に結合する。いくつかの例では、結合剤は、N末端アミノ酸残基、C末端アミノ酸残基、または内部アミノ酸残基に結合するように構成される。結合剤は、N末端またはC末端のジアミノ酸部分に結合し得る。本明細書で使用される場合、選択的結合は、異なるリガンド(例えば、アミノ酸またはアミノ酸のクラス)への結合と比較して、特定のリガンド(例えば、アミノ酸またはアミノ酸のクラス)に優先的に結合する結合剤の能力を指す。選択性は一般に、結合剤との複合体におけるあるリガンドの別のリガンドによる置換の反応の平衡定数と呼ばれる。典型的には、そのような選択性は、リガンドの空間幾何学、および/あるいはリガンドが、例えば、水素結合もしくはファンデルワールス力(非共有結合性相互作用)によって、または結合剤への可逆的もしくは不可逆的な共有結合によって結合剤に結合する方法および程度と関連付けられる。選択性は絶対的ではなく相対的である可能性があり、リガンド濃度を含む異なる要因が同じものに影響を与える可能性があることも理解する必要がある。したがって、一例では、結合剤は、20個の標準的なアミノ酸のうちの1つに選択的に結合する。非選択的結合の例では、結合剤は、20個の標準的なアミノ酸のうちの2つ以上に結合し得る。いくつかの例では、結合剤は、N末端アミノ酸残基、C末端アミノ酸残基、または内部アミノ酸残基に結合する。
【0293】
いくつかの実施形態において、結合剤は、部分的に特異的または選択的である。いくつかの態様において、結合剤は、1つ以上のアミノ酸に優先的に結合する。例えば、結合剤は、他のアミノ酸よりもアミノ酸A、C、およびGに優先的に結合し得る。いくつかの他の例では、結合剤は、複数のアミノ酸に選択的または特異的に結合し得る。いくつかの態様において、結合剤はまた、末端アミノ酸からの第2、第3、第4、第5などの位置にある1つ以上のアミノ酸を優先し得る。場合によっては、結合剤は、特定の末端アミノ酸および1つ以上の最後から2番目のアミノ酸に優先的に結合する。場合によっては、結合剤は、1つ以上の特定の末端アミノ酸および最後から2番目の1つのアミノ酸に優先的に結合する。例えば、結合剤は、AA、AC、およびAGに優先的に結合することができるか、または結合剤は、AA、CA、およびGAに優先的に結合することができる。いくつかの特定の例では、異なる特異性を有する結合剤が、同じコーディングタグを共有することができる。
【0294】
本明細書に開示される方法の実施において、高分子、例えば、ポリペプチドの特徴または成分に選択的に結合する結合剤の能力は、そのコーディングタグ情報の、ポリペプチドと関連付けられた記録タグへの転送、記録タグ情報の、コーディングタグへの転送、またはコーディングタグ情報および記録タグ情報の、ジタグ分子への転送を可能にするためにのみ十分である必要がある。したがって、選択的には、ポリペプチドが曝露される他の結合剤に対してのみ必要である。結合剤の選択性は、特定のアミノ酸に対して絶対的である必要はないが、非極性もしくは非極性側鎖を有する、あるいは電気的に(正にまたは負に)帯電した側鎖を有する、あるいは芳香族側鎖、またはいくつかの特定のクラスもしくはサイズの側鎖などを有するアミノ酸などのアミノ酸のクラスに対して選択的であり得ることも理解されるべきである。
【0295】
特定の実施形態において、結合剤は、目的の高分子、例えば、ポリペプチドに対して高い親和性および高い選択性を有する。特に、低いオフレートでの高い結合親和性は、コーディングタグと記録タグとの間の情報転送に効果的である。特定の実施形態において、結合剤は、500nM未満、200nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、0.5nM未満、または0.1nM未満のKdを有する。特定の実施形態において、結合剤は、そのKdの10倍超、100倍超、または1000倍超の濃度でポリペプチドに添加されて、結合を完了まで駆動する。単一のタンパク質分子への抗体の結合速度論の詳細な議論は、Chang et al.(Chang,Rissin et al.2012)に記載されている。
【0296】
いくつかの実施形態において、結合剤は、化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基または化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基に結合する。ペプチドの小さなN末端アミノ酸(NTAA)に対する結合剤の親和性を高めるために、NTAAをジニトロフェノール(DNP)などの「免疫原性」ハプテンで修飾することができる。これは、サンガーの試薬であるジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を使用したサイクルシーケンシングアプローチで実装することができ、これは、DNP基をNTAAのアミン基に付着させる。市販の抗DNP抗体は、低nM範囲(約8nM、LO-DNP-2)の親和性を有し(Bilgicer,Thomas et al.2009)、したがって、(DNFBを介して)DNPで修飾された多数のNTAAに対して高親和性NTAA結合剤を操作し、同時に特定のNTAAに対して良好な結合選択性を達成することが可能であるのは当然のことである。別の例では、NTAAは、4-スルホニル-2-ニトロフルオロベンゼン(SNFB)を使用して、スルホニルニトロフェノール(SNP)で修飾され得る。同様の親和性の増強は、アセチル基またはアミジニル(グアニジニル)基などの代替のNTAA修飾剤でも達成され得る。
【0297】
特定の実施形態において、結合剤は、NTAA、CTAA、介在アミノ酸、ジペプチド(2つのアミノ酸の配列)、トリペプチド(3つのアミノ酸の配列)、またはペプチド分子のより高次のペプチドに結合し得る。いくつかの実施形態において、結合剤のライブラリー中の各結合剤は、特定のアミノ酸、例えば、20個の標準的な天然に存在するアミノ酸のうちの1つに選択的に結合する。標準的な天然アミノ酸としては、アラニン(AまたはAla)、システイン(CまたはCys)、アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、グリシン(GまたはGly)、ヒスチジン(HまたはHis)、イソロイシン(IまたはIle)、リジン(KまたはLys)、ロイシン(LまたはLeu)、メチオニン(MまたはMet)、アスパラギン(NまたはAsn)、プロリン(PまたはPro)、グルタミン(QまたはGln)、アルギニン(RまたはArg)、セリン(SまたはSer)、スレオニン(TまたはThr)、バリン(VまたはVal)、トリプトファン(WまたはTrp)、およびチロシン(YまたはTyr)が挙げられる。
【0298】
特定の実施形態において、結合剤は、アミノ酸の翻訳後修飾に結合し得る。いくつかの実施形態において、ペプチドは、1つ以上の翻訳後修飾を含み、これは、同じであっても異なっていてもよい。ペプチドのNTAA、CTAA、介在アミノ酸、またはそれらの組み合わせは、翻訳後修飾され得る。アミノ酸に対する翻訳後修飾の例としては、アシル化、アセチル化、アルキル化(メチル化を含む)、ビオチン化、ブチリル化、カルバミル化、カルボニル化、脱アミド化、脱イミノ化(deiminiation)、ジフタミド形成、ジスルフィド架橋形成、脱離(eliminylation)、フラビン付着、ホルミル化、γカルボキシル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、グリピエーション、ヘムC付着、ヒドロキシル化、ヒプシン形成、ヨウ素化、イソプレニル化、脂質化、リポイル化、マロニル化、メチル化、ミリストリル化(myristolylation)、酸化、パルミトイル化、ペグ化、ホスホパンテテイン化、リン酸化、プレニル化、プロピオニル化、レチニリデンシフ塩基形成、S-グルタチオン付加、S-ニトロシル化、S-スルフェニル化、セレン化、スクシニル化、スルフィン化、ユビキチン化、およびC末端アミド化が挙げられるが、これらに限定されない(Seo and Lee,2004,J.Biochem.Mol.Biol.37:35-44も参照)。
【0299】
特定の実施形態において、レクチンは、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのグリコシル化状態を検出するための結合剤として使用される。レクチンは、遊離炭水化物または糖タンパク質のグリカンエピトープを選択的に認識することができる、炭水化物結合タンパク質である。様々なグリコシル化状態を認識するレクチン(例えば、コアフコース、シアル酸、N-アセチル-D-ラクトサミン、マンノース、N-アセチル-グルコサミン)の一覧には、A、AAA、AAL、ABA、ACA、ACG、ACL、AOL、ASA、BanLec、BC2L-A、BC2LCN、BPA、BPL、Calsepa、CGL2、CNL、Con、ConA、DBA、Discoidin、DSA、ECA、EEL、F17AG、Gal1、Gal1-S、Gal2、Gal3、Gal3C-S、Gal7-S、Gal9、GNA、GRFT、GS-I、GS-II、GSL-I、GSL-II、HHL、HIHA、HPA、I、II、Jacalin、LBA、LCA、LEA、LEL、Lentil、Lotus、LSL-N、LTL、MAA、MAH、MAL_I、Malectin、MOA、MPA、MPL、NPA、Orysata、PA-IIL、PA-IL、PALa、PHA-E、PHA-L、PHA-P、PHAE、PHAL、PNA、PPL、PSA、PSL1a、PTL、PTL-I、PWM、RCA120、RS-Fuc、SAMB、SBA、SJA、SNA、SNA-I、SNA-II、SSA、STL、TJA-I、TJA-II、TxLCI、UDA、UEA-I、UEA-II、VFA、VVA、WFA、WGAが含まれる(Zhang et al.,2016,MABS 8:524-535を参照)。
【0300】
いくつかの実施形態において、結合剤は、天然または非修飾または非標識の末端アミノ酸に結合し得る。いくつかの例では、結合剤は、化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基または化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基に結合する。特定の実施形態において、結合剤は、修飾または標識された末端アミノ酸(例えば、官能化または修飾されたNTAA)に結合し得る。修飾または標識されたNTAAは、PITC、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(サンガー試薬、DNFB)、ダンシルクロリド(DNS-Cl、もしくは1-ジメチルアミノナフタレン-5-スルホニルクロリド)、4-スルホニル-2-ニトロフルオロベンゼン(SNFB)、N-アセチル-イサト酸無水物、イサト酸無水物、2-ピリジンカルボキサルデヒド、2-ホルミルフェニルボロン酸、2-アセチルフェニルボロン酸、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、無水コハク酸、4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン、ペンタフルオロフェニルイソチオシアネート、4-(トリフルオロメトキシ)-フェニルイソチオシアネート、4-(トリフルオロメチル)-フェニルイソチオシアネート、3-(カルボキシリン酸)-フェニルイソチオシアネート、3-(トリフルオロメチル)-フェニルイソチオシアネート、1-ナフチルイソチオシアネート、N-ニトロイミダゾール-1-カルボキシ、N,N,A≦-ビス(ピバロイル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン、N,N,A≦-ビス(ベンジルオキシカルボニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン、アセチル化試薬、グアニジニル化試薬、チオアシル化試薬、チオアセチル化試薬、またはチオベンジル化試薬、または二複素環メタニミン試薬で官能化されたものであり得る。いくつかの例では、結合剤は、試薬と接触させることによって、または国際特許公開第2019/089846号に記載されている方法を使用することによって標識されたアミノ酸に結合する。場合によっては、結合剤は、アミン修飾試薬によって標識されたアミノ酸に結合する。
【0301】
特定の実施形態において、結合剤は、アプタマー(例えば、ペプチドアプタマー、DNAアプタマー、またはRNAアプタマー)、抗体、アンチカリン、ATP依存性Clpプロテアーゼアダプタータンパク質(ClpS)、抗体結合断片、抗体模倣物、ペプチド、ペプチド模倣物、タンパク質、あるいはポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、γPNA、架橋核酸(BNA)、ゼノ核酸(XNA)、グリセロール核酸(GNA)、もしくはトレオース核酸(TNA)、またはそのバリアント)であり得る。
【0302】
本明細書で使用される場合、抗体および抗体(複数)という用語は、無傷の抗体分子、例えば限定されないが、免疫グロブリンA、免疫グロブリンG、免疫グロブリンD、免疫グロブリンE、および免疫グロブリンMだけでなく、少なくとも1つのエピトープに免疫特異的に結合する抗体分子の任意の免疫反応性成分を含むように、広い意味で使用される。抗体は、天然に存在し得るか、合成的に産生され得るか、または組換え的に発現され得る。抗体は、融合タンパク質であり得る。抗体は、抗体模倣物であり得る。抗体の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、一本鎖抗体断片(scFv)、ミニ抗体、ダイアボディ、架橋抗体断片、Affibody(商標)、ナノボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig分子、アルファボディ、アフィマー、アフィチン、サイクロチド、分子などが挙げられるが、これらに限定されない。抗体工学またはタンパク質工学技法を使用して誘導された免疫反応性産物もまた、明示的に抗体という用語の意味の範囲内にある。関連するプロトコルを含む、抗体および/またはタンパク質工学の詳細な説明は、とりわけ、J.Maynard and G.Georgiou,2000,Ann.Rev.Biomed.Eng.2:339-76、Antibody Engineering,R.Kontermann and S.Dubel,eds.,Springer Lab Manual,Springer Verlag(2001)、米国特許第5,831,012号、およびS.Paul,Antibody Engineering Protocols,Humana Press(1995)において見出すことができる。
【0303】
抗体と同様に、高分子、例えば、ペプチドまたはポリペプチドを特異的に認識する核酸およびペプチドアプタマーは、既知の方法を使用して産生することができる。アプタマーは、非常に特異的で立体配座依存的な方法で、典型的には非常に高い親和性で標的分子に結合するが、必要に応じて、結合親和性の低いアプタマーを選択することもできる。アプタマーは、メチル基またはヒドロキシル基の有無などの非常に小さな構造の違いに基づいて標的を区別することが示されており、特定のアプタマーは、D-エナンチオマーとL-エナンチオマーとを区別することができる。薬物、金属イオン、および有機色素、ペプチド、ビオチン、およびタンパク質(ストレプトアビジン、VEGF、およびウイルスタンパク質を含むが、これらに限定されない)を含む、小分子標的に結合するアプタマーが得られている。アプタマーは、ビオチン化、フルオレセイン標識後、ならびにガラス表面およびミクロスフェアに付着したときに、機能的活性を保持することが示されている。(Jayasena,1999,Clin Chem 45:1628-50、Kusser2000,J.Biotechnol.74:27-39、Colas,2000,Curr Opin Chem Biol 4:54-9を参照)。アルギニンおよびAMPに特異的に結合するアプタマーも同様に記載されている(Patel and Suri,2000,J.Biotech.74:39-60を参照)。特定のアミノ酸に結合するオリゴヌクレオチドアプタマーは、Gold et al.(1995,Ann.Rev.Biochem.64:763-97)に開示されている。アミノ酸に結合するRNAアプタマーも記載されている(Ames and Breaker,2011,RNA Biol.8;82-89、Mannironi et al.,2000,RNA 6:520-27、Famulok,1994,J.Am.Chem.Soc.116:1698-1706)。
【0304】
結合剤は、遺伝子工学によって天然に存在するか、または合成的に産生されたタンパク質を修飾して、1つ以上の突然変異をアミノ酸配列に導入し、ポリペプチドの特定の成分または特徴に結合する操作されたタンパク質を産生することによって作製することができる(例えば、NTAA、CTAA、または翻訳後修飾されたアミノ酸もしくはペプチド)。例えば、エキソペプチダーゼ(例えば、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ)、エキソプロテアーゼ、突然変異型エキソプロテアーゼ、突然変異型アンチカリン、突然変異型ClpS、抗体、またはtRNAシンテターゼを修飾して、特定のNTAAに選択的に結合する結合剤を作成することができる。別の例では、カルボキシペプチダーゼを修飾して、特定のCTAAに選択的に結合する結合剤を作成することができる。結合剤はまた、修飾されたNTAAまたは修飾されたCTAA、例えば、翻訳後修飾を有するもの(例えば、リン酸化NTAAもしくはリン酸化CTAA)または標識(例えば、PTC、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(サンガー試薬、DNFBを使用)、塩化ダンシルク(DNS-Cl、もしくは1-ジメチルアミノナフタレン-5-スルホニルクロリドを使用)、またはチオアシル化試薬、チオアセチル化試薬、アセチル化試薬、アミド化(グアニジニル化)試薬、またはチオベンジル化試薬を使用する)で修飾されたものに特異的に結合するように設計または修飾され、利用され得る。タンパク質の定向進化の戦略は、当技術分野で知られており(例えば、Yuan et al.,2005,Microbiol.Mol.Biol.Rev.69:373-392によってレビューされる)、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、CISディスプレイ、CADディスプレイ、エマルジョン、細胞表面ディスプレイ法、酵母表面ディスプレイ、細菌表面ディスプレイなどが含まれる。
【0305】
いくつかの実施形態において、官能化されたNTAAに選択的に結合する結合剤を利用することができる。例えば、NTAAをフェニルイソチオシアネート(PITC)と反応させて、フェニルチオカルバモイル-NTAA誘導体を形成することができる。このようにして、結合剤は、フェニルチオカルバモイル部分のフェニル基とNTAAのα炭素R基の両方に選択的に結合するように作られ得る。この方法でPITCを使用すると、以下で説明されるように、エドマン分解によるNTAAのその後の脱離が可能になる。別の実施形態において、NTAAをサンガー試薬(DNFB)と反応させて、DNP標識NTAAを生成することができる。任意選択的に、DNFBは、DNFBが非常に溶解性である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド([emim][Tf2N])などのイオン性液体とともに使用される。このようにして、結合剤は、DNPとNTAA上のR基との組み合わせを選択的に結合するように操作することができる。DNP部分の追加は、結合剤とNTAAとの相互作用のためのより大きな「ハンドル」を提供し、より高い親和性の相互作用をもたらすはずである。さらに別の実施形態において、結合剤は、ペプチドのアミノペプチダーゼ分解の周期的制御を提供する、DNPで標識されたNTAAを認識するように操作されたアミノペプチダーゼであり得る。DNPで標識されたNTAAが脱離されると、新たに曝露されたNTAAに結合して脱離するために、DNFB誘導体化の別のサイクルが実行される。好ましい特定の実施形態において、アミノペプチダーゼは、亜鉛によって活性化されるアミノペプチダーゼなどの単量体メタロプロテアーゼである(Calcagno and Klein 2016)。別の例では、結合剤は、例えば、4-スルホニル-2-ニトロフルオロベンゼン(SNFB)を使用することによって、スルホニルニトロフェノール(SNP)で修飾されたNTAAに選択的に結合し得る。
【0306】
NTAAを官能化するために使用できる他の試薬としては、トリフルオロエチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、およびジメチルアミノアゾベンゼンイソチオシアネート、または国際特許出願第PCT/US2018/58575号に記載されている試薬が挙げられる。
【0307】
結合剤は、修飾されたNTAAに対する高い親和性、修飾されたNTAAに対する高い特異性、またはその両方のために操作され得る。いくつかの実施形態において、結合剤は、ファージディスプレイを使用する有望な親和性足場の指向性進化を通じて開発することができる。
【0308】
別の例では、高度に選択的に操作されたClpSもまた、文献に記載されている。Emiliらは、アスパラギン酸、アルギニン、トリプトファン、およびロイシン残基のNTAAに選択的に結合する能力を持つ4つの異なるバリアントをもたらす、ファージディスプレイを介したE.coli ClpSタンパク質の定向進化について説明している(米国特許第9,566,335号、その全体が参照により組み込まれる)。一実施形態において、結合剤の結合部分は、天然のN末端タンパク質の認識および結合に関与するアダプタータンパク質の進化的に保存されたClpSファミリーのメンバーまたはそのバリアントを含む。例えば、Schuenemann et al.,(2009)EMBO Reports 10(5);Roman-Hernandez et al.,(2009)PNAS 106(22):8888-93、Guo et al.,(2002)JBC 277(48):46753-62、Wang et al.,(2008)Molecular Cell 32:406-414を参照されたい。いくつかの実施形態において、Schuenemannらで識別されたClpS疎水性結合ポケットに対応するアミノ酸残基は、所望の選択性を有する結合部分を生成するために修飾される。
【0309】
一実施形態において、結合部分は、UBRボックス認識配列ファミリーのメンバー、またはUBRボックス認識配列ファミリーのバリアントを含む。UBR認識ボックスは、Tasaki et al.,(2009),JBC 284(3):1884-95に記載されている。例えば、結合部分は、UBR1、UBR2、またはそれらの突然変異体、バリアント、または相同体を含み得る。
【0310】
特定の実施形態において、結合剤は、結合部分に加えて、蛍光標識などの1つ以上の検出可能な標識をさらに含む。いくつかの実施形態において、結合剤は、コーディングタグなどのポリヌクレオチドを含まない。任意選択的に、結合剤は、合成抗体または天然抗体を含む。いくつかの実施形態において、結合剤は、アプタマーを含む。一実施形態において、結合剤は、E.Coli ClpS結合ポリペプチドのバリアントなどのアダプタータンパク質のClpSファミリーの修飾されたメンバーなどのポリペプチド、および検出可能な標識を含む。一実施形態において、検出可能な標識は、光学的に検出可能である。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、蛍光部分、色分けされたナノ粒子、量子ドット、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態において、標識は、FluoSphere(商標)、ナイルレッド、フルオレセイン、ローダミンなどのコア色素、TAMRAなどの誘導体化ローダミン色素、蛍光体、ポリメタジン色素、蛍光ホスホルアミダイト、TEXAS RED、緑色蛍光タンパク質、アクリジン、シアニン、シアニン5色素、シアニン3色素、5-(2’-アミノエチル)-アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、BODIPY、120 ALEXA、または前述のうちのいずれかの誘導体または修飾を含む、ポリスチレン色素を含む。一実施形態において、検出可能な標識は、高いシグナル対雑音比で、固有かつ容易に検出可能な波長で大量のシグナル(光子など)を産生しながら、光退色に対して耐性がある。
【0311】
特定の実施形態において、アンチカリンは、標識されたNTAA(例えば、PTC、修飾PTC、Cbz、DNP、SNP、アセチル、グアニジニル、二複素環メタニミンなど)に対する高い親和性および高い特異性の両方のために操作される。特定の種類のアンチカリン足場は、βバレル構造により、単一アミノ酸を結合するのに適した形状を有する。N末端アミノ酸(修飾の有無にかかわらず)は、この「βバレル」バケットに収まり、認識される可能性がある。操作された新規結合活性を有する高親和性アンチカリンが記載されている(Skerra,2008,FEBS J.275:2677-2683によるレビュー)。例えば、フルオレセインおよびジゴキシゲニンへの高親和性結合(低nM)を持つアンチカリンが設計されている(Gebauer and Skerra 2012)。新しい結合機能のための代替足場のエンジニアリングもまた、Bantaら(2013,Annu.Rev.Biomed.Eng.15:93-113)によってレビューされている。
【0312】
所与の一価結合剤の機能的親和性(結合活性)は、一価結合剤の二価またはより高次の多量体を使用することにより、少なくとも1桁増加し得る(Vauquelin and Charlton 2013)。結合活性とは、複数の同時の非共有結合相互作用の累積強度を指す。個々の結合相互作用は、容易に解離され得る。しかしながら、複数の結合相互作用が同時に存在する場合、単一の結合相互作用の一時的な解離により、結合タンパク質が拡散しなくなり、結合相互作用が回復する可能性がある。結合剤の結合活性を増加させるための代替方法は、結合剤に付着したコーディングタグおよびポリペプチドと関連付けられた記録タグに相補的配列を含めることである。
【0313】
いくつかの実施形態において、修飾されたC末端アミノ酸(CTAA)に選択的に結合する結合剤を利用することができる。カルボキシペプチダーゼは、遊離カルボキシル基を含む末端アミノ酸を切断/脱離するプロテアーゼである。多くのカルボキシペプチダーゼは、アミノ酸の優先性を示し、例えば、カルボキシペプチダーゼBは、アルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸で優先的に切断する。カルボキシペプチダーゼを修飾して、特定のアミノ酸に選択的に結合する結合剤を作成することができる。いくつかの実施形態において、カルボキシペプチダーゼは、CTAAの修飾部分およびα炭素R基の両方に選択的に結合するように操作され得る。したがって、操作されたカルボキシペプチダーゼは、C末端標識の文脈で標準的なアミノ酸を表す20の異なるCTAAを特異的に認識することができる。ペプチドのC末端からの段階的分解の制御は、標識の存在下でのみ活性(例えば、結合活性または触媒活性)である操作されたカルボキシペプチダーゼを使用することによって達成される。一例では、CTAAは、パラニトロアニリドまたは7-アミノ-4-メチルクマリニル基によって修飾され得る。
【0314】
本明細書に記載される方法で使用するための結合剤を生成するために操作され得る他の潜在的足場としては、アンチカリン、アミノ酸tRNAシンテターゼ(aaRS)、ClpS、アフィリン(登録商標)、アドネクチン(商標)、T細胞受容体、ジンクフィンガータンパク質、チオレドキシン、GST A1-1、DARPin、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アビマー、クニッツドメインペプチド、モノボディ、シングルドメイン抗体、EETI-II、HPSTI、イントラボディ、リポカリン、PHD-フィンガー、V(NAR)LDTI、エビボディ、Ig(NAR)、ノッティン、マキシボディ、ネオカルジノスタチン、pVIII、テンダミスタット、VLR、タンパク質A足場、MTI-II、エコチン、GCN4、Im9、クニッツドメイン、マイクロボディ、PBP、トランスボディ、テトラネクチン、WWドメイン、CBM4-2、DX-88、GFP、iMab、Ldl受容体ドメインA、Min-23、PDZドメイン、鳥類膵臓ポリペプチド、カリブドトキシン/10Fn3、ドメイン抗体(Dab)、a2p8アンキリンリピート、昆虫防御Aペプチド、設計されたARタンパク質、C型レクチンドメイン、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、Src相同性ドメイン3(SH3)、またはSrc相同性ドメイン2(SH2)が挙げられる。
【0315】
本明細書に記載されるように、結合剤は、翻訳後修飾されたアミノ酸に結合し得る。したがって、特定の実施形態において、と関連付けられた伸長核酸は、ポリペプチドのアミノ酸配列および翻訳後修飾に関連するコーディングタグ情報を含む。いくつかの実施形態において、内部の翻訳後修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、グリコシル化、スクシニル化、ユビキチン化、S-ニトロシル化、メチル化、N-アセチル化、脂質化など)の検出は、末端アミノ酸(例えば、NTAAまたはCTAA)の検出および脱離の前に達成される。一例では、ペプチドは、PTM修飾のために結合剤と接触され、関連付けられたコーディングタグ情報は、固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグに転送される。アミノ酸修飾に関連するコーディングタグ情報の検出および転送が完了すると、N末端またはC末端分解法を使用して一次アミノ酸配列のコーディングタグ情報を検出および転送する前に、PTM修飾基を除去することができる。したがって、結果として得られる伸長核酸は、一次アミノ酸配列情報とともに、ペプチド配列における翻訳後修飾の存在を示すが、順番ではない。
【0316】
いくつかの実施形態において、内部の翻訳後修飾アミノ酸の検出は、一次アミノ酸配列の検出と同時に行われ得る。一例では、NTAA(またはCTAA)を、単独で、または結合剤のライブラリー(例えば、20個の標準アミノ酸および選択された翻訳後修飾アミノ酸のための結合剤から構成されるライブラリー)の一部として、翻訳後修飾アミノ酸に特異的な結合剤と接触させる。末端アミノ酸の脱離および結合剤(または結合剤のライブラリー)との接触の連続サイクルが続く。したがって、固定化されたペプチドと関連付けられた記録タグ上の結果として得られる伸長核酸は、一次アミノ酸配列の文脈で、翻訳後修飾の存在および順序を示す。
【0317】
特定の実施形態において、高分子、例えば、ポリペプチドはまた、非同族の結合剤と接触させられる。本明細書で使用される場合、非同族の結合剤は、考慮されている特定のポリペプチドとは異なるポリペプチドの特徴または成分に対して選択的である結合剤を指す。例えば、nNTAAがフェニルアラニンであり、ペプチドがそれぞれフェニルアラニン、チロシン、およびアスパラギンに選択的な3つの結合剤と接触する場合、フェニルアラニンに選択的な結合剤は、n番目のNTAA(すなわち、フェニルアラニン)に選択的に結合することができる第1の結合剤になるが、他の2つの結合剤は、(それらがフェニルアラニン以外のNTAAに選択的であるため)そのペプチドの非同族の結合剤になる。しかしながら、チロシンおよびアスパラギン結合剤は、サンプル内の他のペプチドの同族の結合剤であり得る。次いで、nNTAA(フェニルアラニン)がペプチドから切断され、それにより、ペプチドのn-1アミノ酸が、n-1 NTAA(例えば、チロシン)に変換され、次いで、ペプチドが同じ3つの結合剤と接触された場合、チロシンに選択的な結合剤は、n-1 NTAA(すなわち、チロシン)に選択的に結合することができる第2の結合剤となるが、他の2つの結合剤は、(それらがチロシン以外のNTAAに選択的であるため)非同族の結合剤となる。
【0318】
したがって、薬剤が結合剤であるか、または非同族の結合剤であるかは、結合に現在利用可能な特定のポリペプチドの特徴または成分の性質に依存することを理解されたい。また、複数のポリペプチドが多重化反応で分析される場合、あるポリペプチドの結合剤は、別のポリペプチドの非同族の結合剤である可能性があり、逆もまた同様である。したがって、結合剤に関する以下の説明は、本明細書に記載の任意のタイプの結合剤(すなわち、同族および非同族の両方の結合剤)に適用可能であることを理解されたい。
【0319】
特定の実施形態において、溶液中の結合剤の濃度は、アッセイのバックグラウンドおよび/または偽陽性の結果を低減するように制御される。
【0320】
いくつかの実施形態において、結合剤の濃度は、任意の好適な濃度、例えば、約0.0001nM、約0.001nM、約0.01nM、約0.1nM、約1nM、約2nM、約5nM、約10nM、約20nM、約50nM、約100nM、約200nM、約500nM、または約1000nMであり得る。他の実施形態において、アッセイで使用される可溶性共役体の濃度は、約0.0001nM~約0.001nMの間、約0.001nM~約0.01nMの間、約0.01nM~約0.1nMの間、約0.1nM~約1nMの間、約1nM~約2nMの間、約2nM~約5nMの間、約5nM~約10nMの間、約10nM~約20nMの間、約20nM~約50nMの間、約50nM~約100nMの間、約100nM~約200nMの間、約200nM~約500nMの間、約500nM~約1000nMの間、または約1000nM超である。
【0321】
いくつかの実施形態において、可溶性結合剤分子と固定化されたポリペプチド、例えば、ポリペプチドとの比率は、任意の好適な範囲、例えば、約0.00001:1、約0.0001:1、約0.001:1、約0.01:1、約0.1:1、約1:1、約2:1、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、約50:1、約55:1、約60:1、約65:1、約70:1、約75:1、約80:1、約85:1、約90:1、約95:1、約100:1、約10:1、約10:1、約10:1、もしくはそれ以上、または上記の比率の間の任意の比率であり得る。可溶性結合剤分子と固定化されたポリペプチドおよび/または核酸とのより高い比率を使用して、結合および/またはコーディングタグ情報の転送を完了させることができる。これは、サンプル中の少量のポリペプチドを検出および/または分析するのに特に有用である可能性がある。
【0322】
b.アミノ酸切断
N末端分解によるアプローチを使用してペプチドまたはポリペプチドを分析する方法に関する実施形態において、第1の結合剤をn個のアミノ酸のペプチドのnNTAAに接触させて結合し、第1の結合剤のコーディングタグ情報をペプチドと関連付けられた記録タグに転送し、それにより、一次伸長核酸を(例えば、記録タグ上に)生成し、nNTAAは、本明細書に記載されるように脱離される。酵素または化学試薬と接触させることによるn個の標識されたNTAAの除去は、ペプチドのn-1個のアミノ酸をN末端アミノ酸に変換し、これは本明細書ではn-1 NTAAと呼ばれる。第2の結合剤をペプチドと接触させ、n-1 NTAAに結合し、第2の結合剤のコーディングタグ情報を一次伸長核酸に転送し、それにより、(例えば、ペプチドを表す連結されたn次伸長核酸を生成するために)二次伸長核酸を生成する。n-1個の標識されたNTAAの脱離は、ペプチドのn-2個のアミノ酸をN末端アミノ酸に変換し、これは本明細書ではn-2 NTAAと呼ばれる。追加の結合、転送、標識、および除去は、上記のように最大n個のアミノ酸で起こり、集合的にペプチドを表すn次伸長核酸またはn個の別個の伸長核酸を生成する。本明細書で使用される場合、結合剤、コーディングタグ、または伸長核酸に関して使用される場合のn「次(order)」は、結合剤およびその関連付けられたコーディングタグが使用されるn回目の結合サイクル、または伸長核酸が(例えば、記録タグ上で)作成されるn回目の結合サイクルを指す。いくつかの実施形態において、記載された例示的なアプローチにおけるNTAAを含むステップは、代わりに、C末端アミノ酸(CTAA)を用いて実行され得る。
【0323】
いくつかの実施形態において、第1の結合剤および第2の結合剤のポリペプチドへの接触および任意選択的に、任意のさらなる結合剤(例えば、第3の結合剤、第4の結合剤、第5の結合剤など)の接触が同時に行われる。例えば、第1の結合剤および第2の結合剤、および任意選択的に、任意のさらに高次の結合剤を一緒にプールして、例えば、結合剤のライブラリーを形成することができる。別の例では、第1の結合剤および第2の結合剤、ならびに任意選択的に、任意のさらに高次の結合剤が、一緒にプールされるのではなく、ポリペプチドに同時に添加される。一実施形態において、結合剤のライブラリーは、20個の標準的な天然に存在するアミノ酸に選択的に結合する少なくとも20個の結合剤を含む。いくつかの実施形態において、結合剤のライブラリーは、修飾されたアミノ酸に選択的に結合する結合剤を含み得る。
【0324】
他の実施形態において、第1の結合剤および第2の結合剤、および任意選択的に、任意のさらに高次の結合剤を、各々、別個の結合サイクルでポリペプチドと接触させ、連続した順序で加える。特定の実施形態において、複数の結合剤は、同時に並行して使用される。この並行アプローチは、時間を節約し、(結合剤が競合しているために)同族結合剤によって結合される部位に、同族ではない結合剤が非特異的に結合するのを減らす。
【0325】
ペプチドの分析に関連する特定の実施形態において、結合剤による末端アミノ酸(N末端またはC末端)の結合およびコーディングタグ情報の記録タグへの転送、記録タグ情報のコーディングタグへの転送、記録タグ情報およびコーディングタグ情報のジタグ構築物への転送に続いて、末端アミノ酸をペプチドから除去または切断して、新しい末端アミノ酸を曝露する。いくつかの実施形態において、末端アミノ酸は、NTAAである。他の実施形態において、末端アミノ酸は、CTAAである。末端アミノ酸の切断は、化学的切断および酵素的切断を含む、任意の数の既知の技法によって達成することができる。いくつかの実施形態において、末端アミノ酸の切断は、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、ジペプチジルアミノペプチダーゼまたはそれらのバリアント、突然変異体、もしくは修飾タンパク質;加水分解酵素またはそのバリアント、突然変異体、もしくは修飾タンパク質;軽度のエドマン分解試薬;エドマナーゼ酵素;無水TFA、塩基;あるいはそれらの任意の組み合わせを使用する。いくつかの実施形態において、軽度のエドマン分解は、ジクロロ酸もしくはモノクロロ酸を使用するか、軽度のエドマン分解は、TFA、TCA、もしくはDCAを使用するか、または軽度のエドマン分解は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、もしくは酢酸トリエチルアンモニウム(EtNHOAc)を使用する。いくつかの実施形態において、PITCで誘導体化された、または他の標識されたN末端アミノ酸の除去を触媒する操作された酵素、またはそれを促進する試薬が使用される。いくつかの態様において、1つ以上の化学的処理を使用して、ポリペプチドの末端アミノ酸を官能化および/または脱離する。いくつかの実施形態において、末端アミノ酸は、国際特許公開第2019/089846号または国際特許出願第PCT/US20/29969号に記載されている方法のうちのいずれかを使用して除去または除去される。
【0326】
NTAAの酵素的切断は、アミノペプチダーゼまたは他のペプチダーゼによって達成され得る。アミノペプチダーゼは、単量体および多量体酵素として天然に存在し、金属またはATP依存性である可能性がある。天然のアミノペプチダーゼは、特異性が非常に限られており、一般的にN末端アミノ酸を進行的に切断し、次々とアミノ酸を切断する。本明細書に記載される方法では、アミノペプチダーゼ(例えば、金属酵素アミノペプチダーゼ)は、N末端標識で修飾された場合にのみNTAAへの特異的結合または触媒活性を有するように操作することができる。例えば、アミノペプチダーゼは、PTC、修飾PTC、Cbz、DNP、SNP、アセチル、グアニジニル、二複素環式メタンイミンなどの基によって修飾されている場合にのみN末端アミノ酸を切断するように操作することができる。このようにして、アミノペプチダーゼは、N末端から一度に単一のアミノ酸のみを切断し、分解サイクルの制御を可能にする。いくつかの実施形態において、修飾されたアミノペプチダーゼは、N末端標識に対して選択的である一方で、アミノ酸残基の同一性に関して非選択的である。他の実施形態において、修飾されたアミノペプチダーゼは、アミノ酸残基の同一性およびN末端標識の両方に対して選択的である。標識された(ビオチン化された)NTAAの個々のグループまたは小グループに結合して切断する操作されたアミノペプチダーゼ突然変異体が記載されている(PCT公開第2010/065322号を参照)。場合によっては、官能化されたNTAAを脱離するための試薬は、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、もしくはジペプチジルペプチダーゼ、ジペプチジルアミノペプチダーゼ、またはそのバリアント、突然変異体、もしくは修飾タンパク質である。
【0327】
標識された(ビオチン化された)NTAAの個々のグループまたは小グループに結合して切断する操作されたアミノペプチダーゼ突然変異体が記載されている(PCT公開第2010/065322号を参照、その全体が参照により組み込まれる)。アミノペプチダーゼは、タンパク質またはペプチドのN末端からアミノ酸を切断する酵素である。天然のアミノペプチダーゼは、特異性が非常に限られており、一般的にN末端アミノ酸を進行的に脱離し、次々とアミノ酸を切断する(Kishor et al.,2015,Anal.Biochem.488:6-8)。しかしながら、残基特異的アミノペプチダーゼが識別されている(Eriquez et al.,J.Clin.Microbiol.1980,12:667-71、Wilce et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:3472-3477、Liao et al.,2004,Prot.Sci.13:1802-10)。アミノペプチダーゼは、特定の部分(例えば、PTC、DNP、SNPなど)で標識された標準的なアミノ酸を表す20の異なるNTAAに特異的に結合するように操作することができる。ペプチドのN末端からの段階的分解の制御は、標識の存在下でのみ活性(例えば、結合活性または触媒活性)である操作されたアミノペプチダーゼを使用することによって達成される。別の例では、Havranakら(米国特許公開第2014/0273004号)は、アミノアシルtRNAシンテターゼ(aaRS)を特定のNTAA結合剤として操作することについて説明している。aaRSのアミノ酸結合ポケットは、同族のアミノ酸に結合する固有の能力を有しているが、一般的に低い結合親和性および特異性を示す。さらに、これらの天然アミノ酸結合剤は、N末端標識を認識しない。aaRS足場の定向進化を使用して、N末端標識の文脈でN末端アミノ酸を認識する、より高い親和性、より高い特異性の結合剤を生成することができる。
【0328】
特定の実施形態において、アミノペプチダーゼは、非特異的であるように操作され得、その結果、ある特定のアミノ酸を別のアミノ酸よりも選択的に認識するのではなく、標識されたN末端を単に認識する。さらに別の実施形態において、環状切断は、操作されたアシルペプチド加水分解酵素(APH)を使用してアセチル化NTAAを切断することによって達成される。さらに別の実施形態において、NTAAのアミド化(グアニジニル化)を用いて、NaOHを使用して標識されたNTAAの穏やかな切断を可能にする(Hamada,(2016)Bioorg Med Chem Lett 26(7):1690-1695)。
【0329】
CTAA結合剤に関する実施形態については、ペプチドからCTAAを切断する方法もまた、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第6,046,053号は、ペプチドまたはタンパク質をアルキル酸無水物と反応させて、カルボキシ末端をオキサゾロンに変換し、酸およびアルコールまたはエステルとの反応によってC末端アミノ酸を遊離させる方法を開示している。CTAAの酵素的切断は、カルボキシペプチダーゼによって達成することもできる。いくつかのカルボキシペプチダーゼは、アミノ酸の優先性を示し、例えば、カルボキシペプチダーゼBは、アルギニンやリジンなどの塩基性アミノ酸で優先的に切断する。上記のように、カルボキシペプチダーゼはまた、アミノペプチダーゼと同じ方法で修飾されて、C末端標識を有するCTAAに特異的に結合するカルボキシペプチダーゼを操作することができる。このように、カルボキシペプチダーゼは、C末端から一度に単一のアミノ酸のみを切断し、分解サイクルの制御を可能にする。いくつかの実施形態において、修飾されたカルボキシペプチダーゼは、C末端標識に対して選択的である一方で、アミノ酸残基の同一性に関して非選択的である。他の実施形態において、修飾されたカルボキシペプチダーゼは、アミノ酸残基の同一性およびC末端標識の両方に対して選択的である。
【0330】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドを、NTAAを脱離させるために1つ以上の追加の酵素(例えば、存在する場合、N末端プロリンを除去するためのプロリンアミノペプチダーゼ)と接触させる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドを処理するための酵素は、ポリペプチドからアミノ酸を除去/除去するための化学的または酵素的方法と組み合わせて使用することができる。場合によっては、酵素をカクテルとして提供することができる。
【0331】
B.処理および分析
いくつかの実施形態において、提供された方法を実行することから生成された伸長記録タグは、少なくとも1つのプローブタグおよび空間タグから転送された情報を含む。いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、1つ以上のコーディングタグからの識別情報をさらに含み得る。場合によっては、伸長記録タグは、2つ以上のプローブタグおよび2つ以上のコーディングタグからの情報を含む。いくつかの実施形態において、伸長記録タグ(またはその一部)は、少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定する前に増幅される。いくつかの実施形態において、伸長記録タグ(またはその一部)は、少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定する前に放出される。
【0332】
任意選択的に、高分子、例えば、ポリペプチドが空間タグおよびプローブタグで標識された後、空間サンプルを固体支持体から除去することができる。したがって、本開示の方法は、空間サンプルから核酸、高分子、細胞、組織、または他の材料を除去するステップを含むことができる。サンプルまたはその部分の除去は、任意の好適な技法を使用して実行することができ、組織サンプルに依存するであろう。場合によっては、固体支持体は、界面活性剤、洗剤、酵素(例えば、プロテアーゼおよびコラゲナーゼ)、切断試薬などの様々な添加剤を含む水で洗浄して、標本の除去を容易にすることができる。いくつかの実施形態において、固体支持体は、プロテイナーゼ酵素を含む溶液で処理される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、標本が固体支持体から除去されている間または除去された後に放出される。いくつかの実施形態において、この方法は、空間サンプルから伸長記録タグを放出および/または収集することを含む。いくつかの実施形態において、放出および/または収集された伸長記録タグは、少なくとも1つのプローブタグおよび少なくとも1つの空間タグを含む。
【0333】
本明細書に記載の方法によって生成される最終的な伸長核酸(例えば、伸長記録タグ上)の長さは、コーディングタグ(例えば、バーコード配列、エンコーダー配列およびスペーサー)の長さ、空間タグの長さ、プローブタグの長さ、任意の他の核酸の長さ(例えば、記録タグ上、任意選択的に任意の固有の分子識別子、スペーサー、ユニバーサルプライミング部位、バーコード、またはそれらの組み合わせを含む)、実行された転送サイクルの数、および各結合サイクルからのコーディングタグが同じ伸長核酸に転送されるか、または複数の伸長核酸に転送されるかを含む、複数の要因に依存する。
【0334】
いくつかの実施形態において、伸長記録タグは、5’から3’方向、すなわち、ユニバーサルフォワード(または5’)プライミング配列、プローブタグまたは空間タグから転送された情報、およびスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態において、記録タグは、5’から3’方向、すなわち、ユニバーサルフォワード(または5’)プライミング配列、プローブタグおよび空間タグから転送された情報、任意選択的に他のバーコード(例えば、サンプルバーコード、パーティションバーコード、コンパートメントバーコード、または任意のそれらの組み合わせ)、およびスペーサー配列を含む。いくつかの他の実施形態において、記録タグは、5’から3’方向、すなわち、ユニバーサルフォワード(または5’)プライミング配列、プローブタグおよび空間タグから転送された情報、任意選択的に他のバーコード(例えば、サンプルバーコード、パーティションバーコード、コンパートメントバーコード、または任意のそれらの組み合わせ)、任意選択的なUMI、およびスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のコーディングタグから転送された情報も含まれる。
【0335】
最終タグ情報の、プローブタグ、空間タグ、および/またはコーディングタグからの伸長記録タグへの転送後、ライゲーション、プライマー伸長、または当技術分野で既知の他の方法を介してユニバーサルリバースプライミング部位を付加することにより、タグをキャップすることができる。いくつかの実施形態において、(例えば、記録タグ上の)核酸内のユニバーサルフォワードプライミング部位は、最終的な伸長核酸に付加されるユニバーサルリバースプライミング部位と適合性がある。いくつかの実施形態において、ユニバーサルリバースプライミング部位は、Illumina P7プライマー(5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT-3’-配列番号2)またはIllumina P5プライマー(5’-AATGATACGGCGACCACCGA-3’-配列番号1)である。コーディングタグからの識別情報が転送される核酸の鎖センスに応じて、センスまたはアンチセンスP7を付加することができる。伸長核酸ライブラリーは、固体支持体(例えば、ビーズ)から直接切断または増幅することができ、従来の次世代シーケンシングアッセイおよびプロトコルで使用することができる。
【0336】
いくつかの実施形態において、プライマー伸長反応は、(例えば、記録タグ上で伸長された)一本鎖伸長核酸のライブラリー上で実行され、その相補鎖をコピーする。いくつかの実施形態において、ペプチドシーケンシングアッセイ(例えば、ProteoCodeアッセイ)は、周期的進行におけるいくつかの化学的および酵素的ステップを含む。場合によっては、単一分子アッセイの1つの利点は、様々な周期的な化学的/酵素的ステップにおける非効率性に対する堅牢性である。いくつかの実施形態において、コーディングタグ配列に存在するサイクル特異的バーコードの使用は、アッセイに利点を与える。
【0337】
伸長核酸(例えば、伸長記録タグ)は、様々な核酸シーケンシング方法を使用して処理および分析することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のプローブタグ、空間タグ、および任意の他の核酸成分からの情報を含む伸長記録タグが、処理および分析される。いくつかの実施形態において、伸長記録タグ(1つ以上のプローブタグからの情報を含む)の集合を連結することができる。いくつかの実施形態において、伸長記録タグ(1つ以上のプローブタグおよび任意の他の核酸成分からの情報を含む)は、配列を決定する前に増幅することができる。
【0338】
いくつかの実施形態において、記録タグまたは伸長記録タグは、1つ以上のプローブタグおよび空間タグからの情報を含む。いくつかの実施形態において、含まれる1つ以上のプローブタグおよび空間タグ(例えば、バーコード)が、分析および/またはシーケンシングされる。いくつかの実施形態において、この方法は、記録タグに転送された高分子分析アッセイの結合剤に関する識別情報を分析することを含む。
【0339】
シーケンシング方法の例としては、チェーンターミネーションシーケンシング(サンガーシーケンシング);合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、およびパイロシーケンシングなどの次世代シーケンシング方法;ならびに単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、デュプレックスインタラプテッドシーケンシング、および高度な顕微鏡を使用したDNAの直接イメージングなどの第3世代シーケンシング方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0340】
本発明で使用するのに好適なシーケンシング方法としては、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、合成技術(例えば、HiSeq(商標)およびSolexa(商標)、Illumina)によるシーケンシング、SMRT(商標)(単一分子リアルタイム)技術(Pacific Biosciences)、真の単一分子シーケンシング(例えば、HeliScope(商標)、Helicos Biosciences)、大規模並列次世代シーケンシング(例えば、SOLiD(商標)、Applied Biosciences、SolexaおよびHiSeq(商標)、Illumina)、超並列半導体シーケンシング(例えば、Ion Torrent)、パイロシーケンシング技術(例えば、GS FLXおよびGS Junior Systems、Roche/454)、ナノポア配列(例えば、Oxford Nanopore Technologies)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0341】
核酸のライブラリー(例えば、伸長核酸)は、様々な方法で増幅され得る。核酸のライブラリー(例えば、1つ以上のプローブタグからの情報を含む記録タグ)は、例えば、PCRまたはエマルジョンPCRを介して、指数関数的増幅を受ける。エマルジョンPCRは、より均一な増幅をもたらすことが知られている(Hori,Fukano et al.,Biochem Biophys Res Commun(2007)352(2):323-328)。あるいは、核酸(例えば、伸長核酸)のライブラリーは、例えば、T7 RNAポリメラーゼを使用する鋳型DNAのインビトロ転写を介して、線形増幅を受けることができる。核酸(例えば、伸長核酸)のライブラリーは、そこに含まれるユニバーサルフォワードプライミング部位およびユニバーサルリバースプライミング部位と適合性のあるプライマーを使用して増幅させることができる。核酸のライブラリー(例えば、記録タグ)を、テールドプライマーを使用して増幅させて、伸長核酸の5’末端、3’末端、またはその両端のいずれかに配列を付加することもできる。伸長核酸の末端に付加することができる配列には、ライブラリー特異的索引配列が含まれ、1回のシーケンシング実行での複数のライブラリー、アダプター配列、リードプライマー配列、または他の配列を多重化して、伸長核酸のライブラリーをシーケンシングプラットフォームと適合性のあるものにすることができる。次世代シーケンシングのための調製におけるライブラリー増幅の例は、以下のとおりである。約1mgのビーズ(約10ng)、200μMのdNTP、1μMの各フォワードおよびリバース増幅プライマー、0.5μl(1U)のPhusion Hot Start酵素(New England Biolabs)から溶出された伸長核酸ライブラリーを使用して、20μlのPCR反応容量を設定し、98℃で30秒間、続いて98℃で10秒間、60℃で30秒間、72℃で30秒間、72℃で7分間を20サイクルのサイクル条件に供し、次いで4℃で保持する。
【0342】
特定の実施形態において、増幅前、増幅中、または増幅後のいずれかで、核酸(例えば、伸長核酸)のライブラリーは、標的濃縮を受けることができる。いくつかの実施形態において、標的濃縮を使用して、シーケンシングの前に、伸長核酸のライブラリーから目的の高分子(例えば、ポリペプチド)を表す伸長核酸を選択的に捕捉または増幅させることができる。いくつかの態様において、標的タンパク質に対して高度に特異的な結合剤を産生する際の費用が高く、かつ困難であるために、タンパク質シーケンシングのための標的濃縮は難解である。場合によっては、抗体は非特異的であり、何千ものタンパク質にまたがって生産を拡大することが難しいことで有名である。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、タンパク質コードを核酸コードに変換することによってこの問題を回避し、核酸コードは、次に、DNAライブラリーに利用可能な広範囲の標的DNA濃縮戦略を利用することができる。場合によっては、対応する伸長核酸を濃縮することによって、目的のペプチドをサンプル内で濃縮することができる。標的濃縮の方法は、当技術分野で知られており、ハイブリッド捕捉アッセイ、TruSeqカスタムアンプリコン(Illumina)などのPCRベースのアッセイ、パドロックプローブ(分子反転プローブとも呼ばれる)などが含まれる(Mamanova et al.,(2010)Nature Methods 7:111-118、Bodi et al.,J.Biomol.Tech.(2013)24:73-86、Ballester et al.,(2016)Expert Review of Molecular Diagnostics 357-372、Mertes et al.,(2011)Brief Funct.Genomics 10:374-386、Nilsson et al.,(1994)Science 265:2085-8を参照、これらの各々は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)。
【0343】
一実施形態において、核酸(例えば、伸長核酸)のライブラリーは、ハイブリッド捕捉ベースのアッセイを介して濃縮される。ハイブリッド捕捉ベースのアッセイでは、伸長核酸のライブラリーは、親和性タグ(例えば、ビオチン)で標識された標的特異的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。標的特異的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズした伸長核酸を、親和性リガンド(例えば、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ)を使用して、親和性タグを介して「プルダウン」し、バックグラウンド(非特異的)伸長核酸を洗い流す。次いで、濃縮された伸長核酸(例えば、伸長核酸)が、陽性濃縮(例えば、ビーズから溶出される)のために得られる。いくつかの実施形態において、目的のペプチドの対応する伸長核酸ライブラリー表現に相補的なオリゴヌクレオチドを、ハイブリッド捕捉アッセイにおいて使用することができる。いくつかの実施形態において、同じまたは異なるbaitセットを用いて、連続的なラウンドまたは濃縮を実施することもできる。
【0344】
その断片(例えば、ペプチド)を表す伸長核酸のライブラリー内のポリペプチドの全長を濃縮するために、タンパク質の核酸表現全体にわたって「タイル状」のbaitオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0345】
別の実施形態において、プライマー伸長およびライゲーションベースの媒介増幅濃縮(AmpliSeq、PCR、TruSeq TSCAなど)を使用して、ポリペプチドのサブセットを表すライブラリー要素の濃縮画分を選択およびモジュール化することができる。競合するオリゴヌクレオチドを使用して、プライマーの伸長、ライゲーション、または増幅の程度を調整することもできる。最も単純な実施において、これは、ユニバーサルプライマーテールを含む標的特異的プライマーと5’ユニバーサルプライマーテールを欠く競合プライマーとの混合物を有することによって達成することができる。最初のプライマー伸長後、5’ユニバーサルプライマー配列を持つプライマーのみを増幅することができる。ユニバーサルプライマー配列がある場合とない場合のプライマーの比率は、増幅される標的の割合を制御する。他の実施形態において、ハイブリダイズするが非伸長性であるプライマーを含めることを使用して、プライマー伸長、ライゲーション、または増幅を受けるライブラリー要素の割合を調節することができる。
【0346】
標的濃縮法を負の選択モードで使用して、シーケンシングの前にライブラリーから伸長核酸を選択的に除去することもできる。除去することができる望ましくない伸長核酸の例は、例えば、タンパク質、アルブミン、免疫グロブリンなどのために、過剰に豊富なポリペプチド種を表すものである。
【0347】
標的にハイブリダイズするがビオチン部分を欠く競合オリゴヌクレオチドbaitをハイブリッド捕捉ステップで使用して、濃縮された特定の遺伝子座の画分を調節することもできる。競合オリゴヌクレオチドbaitは、濃縮中にプルダウンされたターゲットの割合を効果的に調節する標準的なビオチン化baitと、ターゲットへのハイブリダイゼーションをめぐって競合する。タンパク質発現の10桁のダイナミックレンジは、特にアルブミンなどの過剰に豊富な種の場合、この競合抑制アプローチを使用して数桁圧縮することができる。したがって、標準的なハイブリッド捕捉と比較して、特定の遺伝子座に対して捕捉されたライブラリー要素の割合は、100%~0%の濃縮に下方調整することができる。
【0348】
さらに、ライブラリー正準化技法を使用して、伸長核酸ライブラリーから過剰に豊富な種を除去することができる。このアプローチは、トリプシン、LysC、GluCなどの部位特異的プロテアーゼ消化によって生成されたペプチドに由来する定義された長さのライブラリーに最適である。一例では、正準化は、二本鎖ライブラリーを変性させ、ライブラリー要素を再アニーリングさせることによって達成することができる。二分子ハイブリダイゼーション速度論の二次速度定数により、豊富なライブラリー要素は、豊富でない要素よりも迅速に再アニーリングする(Bochman,Paeschke et al.2012)。ssDNAライブラリー要素は、ヒドロキシアパタイトカラムでのクロマトグラフィー(VanderNoot,et al.,2012,Biotechniques 53:373-380)、またはdsDNAライブラリー要素を破壊するタラバガニ(Shagin et al.,(2002)Genome Res.12:1935-42)からの二重特異性ヌクレアーゼ(DSN)によるライブラリーの処理などの当技術分野で既知の方法を使用して、豊富なdsDNAライブラリー要素から分離することができる。
【0349】
固体支持体に付着する前のポリペプチドおよび/または結果として得られる伸長核酸ライブラリーの画分化、濃縮、および減算法の任意の組み合わせにより、シーケンシングリードを節約し、豊富でない種の測定を改善することができる。
【0350】
いくつかの実施形態において、核酸(例えば、伸長核酸)のライブラリーは、ライゲーションまたは末端相補的PCRによって連結されて、それぞれ複数の異なる伸長レコーダータグ、伸長コーディングタグ、またはジタグを含む長いDNA分子を作成する(Du et al.,(2003)BioTechniques 35:66-72、Muecke et al.,(2008)Structure 16:837-841、米国特許第5,834,252号、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる)。この実施形態は、DNAの長い鎖がナノポアシーケンシングデバイスによって分析されるナノポアシーケンシングにとって好ましい。
【0351】
いくつかの実施形態において、直接的な単一分子分析は、核酸(例えば、伸長核酸)に対して実行される(例えば、Harris et al.,(2008)Science 320:106-109を参照)。核酸(例えば、伸長核酸)は、フローセルまたはフローセル表面への負荷に適合性のあるビーズ(任意選択的に、マイクロセルパターン化される)などの固体支持体上で直接分析することができ、フローセルまたはビーズは、単一分子シーケンサーまたは単一分子デコーディング機器と統合され得る。単一分子デコーディングの場合、デコーディングオリゴヌクレオチドのプールされた蛍光標識された数ラウンドのハイブリダイゼーション(Gunderson et al.,(2004)Genome Res.14:970-7)を使用して、(例えば、記録タグ上の)伸長核酸内のコーディングタグの同一性および順序の両方を確認することができる。いくつかの実施形態において、結合剤は、上記のようにサイクル特異的コーディングタグで標識することができる(Gunderson et al.,(2004)Genome Res.14:970-7も参照)。
【0352】
核酸ライブラリーの(例えば、伸長核酸の)シーケンシングに続いて、結果として得られる配列は、UMIによって折り畳まれた後、それらの対応するポリペプチドと関連付けられ、プロテオーム全体に整列される。結果として得られる配列はまた、それらのコンパートメントタグによって折り畳まれ、それらの対応するコンパートメントプロテオームと関連付けられることができ、これは、特定の実施形態において、単一または非常に限られた数のタンパク質分子のみを含む。タンパク質の識別および定量化はいずれも、このデジタルペプチド情報から簡単に導き出すことができる。
【0353】
本明細書に開示される方法は、複数の高分子の同時(多重化)の検出、定量化、および/またはシーケンシングを含む分析に使用することができる。本明細書で使用される多重化は、同じアッセイにおける複数の高分子(例えば、ポリペプチド)の分析を指す。複数の高分子は、同じサンプルまたは異なるサンプルに由来し得る。複数の高分子は、同じ対象または異なる対象に由来し得る。分析される複数の高分子は、異なる高分子、または異なるサンプルに由来する同じ高分子であり得る。複数の高分子は、2個以上の高分子、5個以上の高分子、10個以上の高分子、50個以上の高分子、100個以上の高分子、500個以上の高分子、1000個以上の高分子、5,000個以上の高分子、10,000個以上の高分子、50,000個以上の高分子、100,000個以上の高分子、500,000個以上の高分子、または1,000,000個以上の高分子を含む。
【0354】
V.配列の相関
本発明の方法は、空間サンプル内の1つ以上の高分子または関連付けられた部分の空間情報を評価することを含む、任意の好適な目的のために使用することができる。いくつかの実施形態において、提供される方法を使用して、空間サンプル内の1つ以上のポリペプチドの空間情報を評価することができる。さらに他の実施形態において、本方法を使用して、空間情報または空間サンプル内の複数の高分子の起源を評価することができる。いくつかの実施形態において、同じ領域からの複数の高分子、例えば、ポリペプチドの同一性または少なくとも部分的な配列が決定される。
【0355】
いくつかの態様において、プローブタグおよび/または空間タグから記録タグに転送された情報を、伸長記録タグからの情報のうちのいずれかをプローブタグの空間位置にリンクさせる。場合によっては、相関には、記録タグと関連付けられた空間タグ配列を空間タグ位置と比較することが含まれる。いくつかの実施形態において、それにより提供される方法は、記録タグ(例えば、伸長記録タグ)を分析することによって決定された配列からの情報を、空間タグをその場で決定することからの空間情報と関連付けて、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得することを可能にする。
【0356】
いくつかの態様において、プローブタグから記録タグに転送された情報を、プローブタグの配列を介して、分子プローブからの情報を高分子分析アッセイからの情報にリンクさせる。例えば、伸長記録タグに含まれるプローブタグの配列を決定し、分子プローブに相関させる。場合によっては、相関には、伸長記録タグ内のプローブタグ配列を特定の分子プローブと関連付けられたプローブタグと比較して、分子プローブまたはそれが関連付けられている検出可能な標識の同一性を決定することが含まれる。いくつかの実施形態において、それにより提供される方法は、記録タグ(例えば、伸長記録タグ)を分析することによって決定される配列からの情報を、分子プローブの検出可能な標識を評価、例えば、観察することによって決定される空間情報と関連付けることを可能にする。
【0357】
いくつかの実施形態において、分子プローブの標的の特徴を含む、分子プローブからのさらなる情報を、伸長記録タグ上の情報と関連付けることができる。例えば、分子プローブによって結合されたサンプルに関する任意の情報を、組織/細胞の表現型、状態、および特定のマーカーの有無を含む空間情報と相関させることもできる。
【0358】
いくつかの実施形態において、空間サンプルに関する任意の追加情報はまた、任意選択的な高分子分析アッセイからの情報と相関し得る。例えば、任意の追加の染色またはイメージングからの任意の組織学的、細胞的、形態学的、または解剖学的情報が得られた場合、この情報を、伸長記録タグを分析することによって決定された配列に接続することもできる。例えば、他の情報は、画像を登録および整列するために使用できる基準マーカーなどの他の画像情報とともに空間情報を登録する手段を使用することによって、または固有の情報を利用することによって、例えば、空間データセットにおいて、および組織学的、細胞的、または他の情報において高分子を検出し、2つを相関させることによって組み合わせることができる。
【0359】
いくつかの実施形態において、この方法は、プローブタグおよび/または空間から転送された情報を含む伸長記録タグの配列を、決定された空間タグの空間位置の情報と相関させることをさらに含む。いくつかのさらなる実施形態において、提供される方法は、ポリペプチドの配列または部分配列、および空間サンプル内のポリペプチドの空間位置の決定を可能にする。いくつかの実施形態において、提供される方法は、高分子、例えば、ポリペプチドの同一性、および空間サンプルにおけるその空間位置の決定を可能にする。いくつかの実施形態において、提供される方法は、空間サンプル内の高分子の位置、空間サンプル内の高分子の解剖学的、形態学的、細胞または細胞内起源、1つ以上の分子プローブの結合からの情報、および任意選択的に高分子(例えば、ポリペプチド)の配列の少なくとも一部の決定を可能にする。
【0360】
場合によっては、提供された方法からの情報(空間情報、プローブタグ情報、ポリペプチド配列情報、記録タグ上の任意の他の情報など)は、ソフトウェアツールを使用して保存、分析、および/または決定することができる。場合によっては、提供された方法の相関および関連付けステップは、空間サンプルの空間位置にある各高分子が分子プローブと相関していることをある程度の可能性で決定するためのソフトウェアツールを含み得る。ソフトウェアは、各分子プローブおよび/または結合剤の結合特性に関する情報を利用することができる。ソフトウェアはまた、各分子プローブが結合しなかったいくつかまたはすべての空間位置のリストを利用し、結合がないことに関するこの情報を使用して、その位置に存在する高分子に関する情報を決定することができる。いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、データベースを含み得る。データベースには、サンプルが取得された種の既知のタンパク質の配列が含まれている場合もあれば、関連する種(例えば、相同体)が含まれている場合もある。場合によっては、サンプルの種が不明な場合は、一部またはすべてのタンパク質配列のデータベースを使用することができる。データベースはまた、任意の既知のタンパク質バリアントおよびその突然変異体タンパク質の配列を含み得る。
【0361】
いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、機械学習、深層学習、統計的学習、教師あり学習、教師なし学習、クラスタリング、期待値最大化、最尤推定、ベイズ推定、線形回帰、ロジスティック回帰、バイナリ分類、多項分類、または他のパターン認識アルゴリズムなどの1つ以上のアルゴリズムを含み得る。例えば、ソフトウェアは、1つ以上のアルゴリズムを実行して、(i)使用される各分子プローブの結合特性、(ii)高分子(例えば、タンパク質)のデータベースからの情報、(iii)プローブタグ、空間タグ、および/もしくは高分子/ポリペプチド分析アッセイ中に転送される情報を含む、記録タグからの情報、(iv)高分子/ポリペプチド分析アッセイで使用される各結合剤の結合特性、(v)空間タグをその場で評価することからの情報、ならびに/または(vi)空間位置のリストに関する情報を分析し、各記録タグと関連付けられた各空間位置および/またはその情報についての信頼度(例えば、信頼水準および/または信頼区間)に対して予想される同一性を生成する、または割り当てる。いくつかの態様において、ソフトウェアは、提供される方法の相関および関連付けステップからの情報を実行および使用する。
【0362】
いくつかの例では、提供された方法を他の方法とともに使用して、空間サンプルの特徴、例えば、空間サンプルの光学画像および/または組織学的染色の画像を識別することができる。いくつかの例では、サンプルは、上記の方法を実行する前または後に、細胞学的染色を使用して染色することができる。これらの実施形態において、染色は、例えば、ファロイジン、ガドジアミド、アクリジンオレンジ、ビスマルクブラウン、バルミン、クーマシーブルー、ブレシルバイオレット、ブリストルバイオレット、DAPI、ヘマトキシリン、エオシン、臭化エチジウム、酸性フクシン、ヘマトキシリン、ヘキスト染色、ヨウ素、マラカイトグリーン、メチルグリーン、メチレンブルー、ニュートラルレッド、ナイルブルー、ナイルレッド、四酸化オスミウム(正式名称:四酸化オスミウム)、ローダミン、サフラニン、リンタングステン酸、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、モリブデン酸アンモニウム、ヨウ化カドミウム、カルボヒドラジド、塩化第二鉄、ヘキサミン、三塩化インジウム、硝酸ランタン、酢酸鉛、クエン酸鉛、硝酸鉛(II)、周期的酸、ホスホモリブデン酸、フェリシアン化カリウム、フェロシアニドカリウム、ルテニウムレッド、硝酸銀、タンパク質酸銀、クロロ金酸ナトリウム、硝酸タリウム、チオセミカルバジド、酢酸ウラニル、硝酸ウラニル、硫酸バナジル、またはそれらの任意の誘導体であり得る。染色は、タンパク質またはタンパク質のクラス、リン脂質、DNA(例えば、dsDNA、ssDNA)、RNA、細胞小器官(例えば、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、核エンベロープなど)、細胞のコンパートメント(例えば、細胞質ゾル、核画分など)の目的の任意の特徴に特異的であり得る。染色は、細胞内または細胞外構造のコントラストまたはイメージングを強化することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色され得る。他のタイプの情報を組み合わせることにより、タンパク質情報を解釈するためのより豊富な空間コンテキストが有用であり得る。
【0363】
VI.キットおよび製造品
本明細書で提供されるのは、空間情報、分子プローブの結合からの情報、および任意選択的にサンプル内の高分子の配列または同一性を含む、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を調製および分析するための構成要素を含むキットおよび製造品である。いくつかの例では、情報は、タンパク質およびタンパク質の配列または同一性に関する空間情報を含む。キットおよび製造品は、セクションI~IVに記載される方法で使用される試薬および成分のうちのいずれか1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、任意選択的に使用説明書を含む。いくつかの実施形態において、キットは、以下の構成要素のうちの1つ以上を含む:空間プローブ、空間タグ、分子プローブ、プローブタグ、シーケンシングのための試薬、記録タグ、記録タグを付着させるための試薬、プローブタグからの情報を記録タグに転送するための試薬、空間タグからの情報を記録タグに転送するための試薬、結合剤、コーディングタグからの識別情報を記録タグに転送するための試薬、シーケンシング試薬、および/または高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド)を分析するための方法に記載される固体支持体、酵素、緩衝液、サンプル処理試薬(固定および透過処理試薬および緩衝液。
【0364】
いくつかの実施形態において、キットはまた、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を処理するための他の成分、およびポリペプチド分析のための他の試薬を含む、それらの分析を含む。一態様において、本明細書で提供されるのは、反応混合物を調製するために使用される成分である。好ましい実施形態において、反応混合物は、溶液である。好ましい実施形態において、反応混合物は、以下のうちの1つ以上を含む:プローブタグ(および任意の検出可能な標識)を含む分子プローブ、記録タグ、固体支持体、関連付けられたコーディングタグを有する結合剤、タグを高分子に付着させるための1つ以上の試薬、プローブタグからの情報を記録タグに転送するための試薬、酵素、緩衝液、サンプル処理試薬(固定および透過処理試薬および緩衝液)。
【0365】
別の態様において、本明細書に開示されるのは、ポリペプチドを分析するためのキットであり、結合剤のライブラリー(各結合剤は、結合部分を含む)および結合部分に関する識別情報を含むコーディングタグ(結合部分は、断片の1つ以上のN末端、内部、もしくはC末端アミノ酸に結合することができるか、または官能化試薬によって修飾された1つ以上のN末端、内部、もしくはC末端アミノ酸に結合することができる)を含む。
【0366】
いくつかの実施形態において、キットおよび製造品は、セクションII.BおよびIII.Bに記載されている分子プローブと、任意選択的に、セクションII.Cに記載されている空間プローブとを含む。分子プローブは、分子プローブのライブラリーとして提供され得る。空間プローブはまた、複数の空間プローブとして提供され得る。分子プローブおよび/または空間プローブは、組み合わされ得るか、またはプローブの個々もしくはサブセットを含む別個の容器で提供され得る。いくつかの実施形態において、分子プローブの各々は、プローブタグと関連付けられる。任意選択的に、分子プローブの各々またはいくつかは、検出可能な標識と関連付けられ得る。また、プローブタグおよび空間タグからの識別情報を記録タグに転送するための試薬も含まれている。
【0367】
いくつかの実施形態において、キットおよび製造品は、複数のバーコードをさらに含む。バーコードは、コンパートメントバーコード、パーティションバーコード、サンプルバーコード、画分バーコード、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。場合によっては、バーコードは、固有の分子識別子(UMI)を含む。いくつかの例では、バーコードは、ペプチド、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、バーコードは、サンプル内の高分子、例えば、タンパク質に付着するように、または高分子、例えば、タンパク質と関連付けられた核酸成分に付着するように構成される。いくつかの例では、バーコードを付着させるための追加のリンカーが、キットで提供され得る。
【0368】
いくつかの実施形態において、キットは、高分子、例えば、タンパク質を処理するための試薬をさらに含む。高分子、例えば、タンパク質の画分化、濃縮、および減算法の任意の組み合わせを実行することができる。例えば、試薬を使用して、高分子、例えば、タンパク質を断片化または消化することができる。場合によっては、キットは、高分子、例えば、タンパク質を画分化、単離、減算、濃縮するための試薬および成分を含む。いくつかの例では、キットは、トリプシン、LysN、またはLysCなどのプロテアーゼをさらに含む。
【0369】
いくつかの実施形態において、キットはまた、所望の反応のいずれかが起こるのに必要な1つ以上の緩衝液または反応流体を含む。洗浄緩衝液、反応緩衝液、および結合緩衝液、溶出緩衝液などを含む緩衝液は、当業者に知られている。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載の他の試薬に付随する緩衝液および他の成分をさらに含む。試薬、緩衝液、および他の成分は、バイアル(密封されたバイアルなど)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、柔軟な包装(例えば、密封されたマイラー(Mylar)またはビニール袋)などで提供され得る。キットの構成要素はいずれも滅菌および/または密封することができる。
【0370】
いくつかの実施形態において、キットは、核酸シーケンシング分析のための1つ以上の試薬を含む。いくつかの例では、配列分析用の試薬は、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、単一分子シーケンシング、単一分子蛍光シーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、パイロシーケンシング、単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、もしくは高度な顕微鏡を使用するDNAの直接イメージング、またはそれらの任意の組み合わせにおいて使用するためのものである。
【0371】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、本明細書に記載の方法および使用に関する説明書をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、指示は、高分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)を分析する方法に向けられている。本明細書に記載のキットはまた、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射器、および本明細書に記載の任意の方法を実行するための説明書を伴う添付文書を含む、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料を含み得る。
【0372】
上述のキット構成要素のうちのいずれか、および任意の分子、分子複合体または共役体、試薬(例えば、化学的もしくは生物学的試薬)、薬剤、構造(例えば、支持体、表面、粒子、もしくはビーズ)、反応中間体、反応産生物、結合複合体、または例示的なキットおよび方法で開示および/または使用される任意の他の製造品は、キットを形成するために別個にまたは任意の好適な組み合わせで提供され得る。
【0373】
VII.例示的な実施形態
提供される実施形態の中には、以下のものがある。
1.高分子を分析する方法であって、
(a)記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、
(b1)空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供することと、
(b2)空間タグをその場で評価して、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得することと、
(b3)空間プローブ内の空間タグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長することと、
(c1)プローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合することと、
(c2)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長することであって、空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長することと、
(d)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグおよび空間タグの配列を決定することと、
(e)ステップ(d)で決定された空間タグの配列をステップ(b2)で評価された空間タグと相関させることと、を含み、
それにより、伸長記録タグまたはその一部の配列からの情報、例えば、ステップ(d)で決定された空間タグおよび/またはプローブタグからの情報を、ステップ(b2)で評価された空間プローブの空間位置と関連付ける、方法。
2.方法が、空間サンプル内の複数の高分子を分析するためのものである、実施形態1に記載の方法。
3.高分子が、タンパク質である、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
4.高分子が、ポリペプチドまたはペプチドである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.方法が、複数の分子プローブを空間サンプルに結合することを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.方法が、複数の空間プローブを空間サンプルに提供することを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.ステップ(c1)およびステップ(c2)を順次2回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.ステップ(c1)を繰り返す前に、空間サンプルから分子プローブを除去することをさらに含む、実施形態6に記載の方法。
9.空間プローブが、支持体と、核酸を含む空間タグと、を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.支持体が、ビーズまたはナノ粒子を含む、実施形態9に記載の方法。
11.ビーズまたはナノ粒子が、直径約0.1μm~約100μmの間、約0.1μm~約50μmの間、約10μm~約50μmの間、約5μm~約10μmの間、約0.5μm~約100μmの間、約0.5μm~約50μmの間、約0.5μm~約10μmの間、約0.5μm~約5μm、または約0.5μm~約1μmの間の範囲である、実施形態10に記載の方法。
12.空間プローブが、バーコード化されたビーズを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.空間プローブが、空間サンプル上にランダムに分散されている、実施形態6~12のいずれか1つに記載の方法。
14.空間タグが、切断可能なリンカーで支持体に付着されている、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法。
15.空間タグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.空間タグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.空間タグが、バーコードを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.空間プローブが、複数のバーコードを含む、実施形態17に記載の方法。
19.空間プローブが、同じバーコードの2つ以上のコピーを含む、実施形態18に記載の方法。
20.空間タグが、スペーサーを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.空間タグが、記録タグまたはその一部に相補的な配列を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.空間プローブが、空間サンプルと非特異的に会合する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.空間プローブが、電荷相互作用、DNAハイブリダイゼーション、および/または可逆的化学カップリングを介して空間サンプルと会合する、実施形態22に記載の方法。
24.ステップ(b2)を実行することが、空間サンプルまたはその一部の画像を取得することを含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.空間サンプルまたはその一部の2つ以上の画像が取得される、実施形態24に記載の方法。
26.2つ以上の画像を比較、整列、および/またはオーバーレイすることをさらに含む、実施形態25に記載の方法。
27.ステップ(b2)を実行することが、顕微鏡を使用することを含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
28.顕微鏡が、蛍光顕微鏡である、実施形態27に記載の方法。
29.空間タグが、デコーダーを使用してステップ(b2)で評価され、デコーダーが、検出可能な標識および空間タグまたはその一部に相補的な配列を含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.2つ以上のデコーダーを使用して、1つ以上の空間タグを検出する、実施形態29に記載の方法。
31.検出可能な標識が、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、または酵素基質標識を含む、実施形態29または実施形態30に記載の方法。
32.ステップ(b2)が、ライゲーションによるシーケンシング、単一分子シーケンシング、単一分子蛍光シーケンシング、またはプローブ検出によるシーケンシングを含む、実施形態1~23に記載の方法。
33.空間タグが、プライマー伸長またはライゲーションによって記録タグに転送される、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
34.空間タグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することが、空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを記録タグに付加することを含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
35.分子プローブが、核酸、ポリペプチド、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
36.分子プローブが、抗体、抗原結合抗体断片、単一ドメイン抗体(sdAb)、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ由来可変ドメイン(vNAR)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、線状抗体、ダイアボディ、アプタマー、ペプチド模倣分子、融合タンパク質、反応性もしくは非反応性小分子、または合成分子を含む、実施形態35に記載の方法。
37.分子プローブが、特異的結合が可能な標的化部分を含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
38.標的化部分が、核酸、炭水化物、脂質、ポリペプチド、ポリペプチドの翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせに結合するように構成される、実施形態37に記載の方法。
39.標的化部分が、タンパク質特異的標的化部分である、実施形態37または実施形態38に記載の方法。
40.標的化部分が、エピトープ特異的標的化部分である、実施形態37または実施形態38に記載の方法。
41.標的化部分が、核酸特異的標的化部分である、実施形態37または実施形態38に記載の方法。
42.標的化部分が、細胞表面マーカーに結合するように構成される、実施形態37~41のいずれか1つに記載の方法。
43.ステップ(c1)での結合が、化学結合、共有結合、および/または可逆的結合を含む、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
44.プローブタグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
45.プローブタグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
46.プローブタグが、バーコードを含む、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
47.プローブタグが、スペーサーを含む、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
48.プローブタグが、記録タグまたはその一部に相補的な配列を含む、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
49.プローブタグが、プライマー伸長またはライゲーションによって記録タグに転送される、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
50.プローブタグからの情報が、会合した分子プローブの近くの記録タグに転送される、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
51.プローブタグからの情報を記録タグに転送することによって記録タグを伸長することが、空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを記録タグに付加することを含む、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
52.ステップ(c2)が、プローブタグからの情報を、直接的に、またはプローブタグのコピーを介して間接的に記録タグへ転送することを含む、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
53.ステップ(c2)が、1つのプローブタグからの情報を、2つ以上の記録タグに転送することを含む、実施形態1~52のいずれか1つに記載の方法。
54.プローブタグが、ステップ(c2)の前に増幅される、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
55.増幅が、線形増幅である、実施形態54に記載の方法。
56.プローブタグの増幅が、RNAポリメラーゼを使用して実行される、実施形態55に記載の方法。
57.プローブタグの情報を記録タグに転送することが、逆転写を使用して実行される、実施形態56に記載の方法。
58.高分子分析アッセイを実行することをさらに含む、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法。
59.高分子分析アッセイが、ポリペプチド分析アッセイである、実施形態58に記載の方法。
60.高分子分析アッセイが、その場で実行される、実施形態58または実施形態59に記載の方法。
61.高分子分析アッセイを実行する前に、記録タグと関連付けられた高分子を、空間サンプルから放出することをさらに含む、実施形態58~60のいずれか1つに記載の方法。
62.高分子分析アッセイを実行する前に、記録タグと関連付けられた高分子を収集することをさらに含む、実施形態58~61のいずれか1つに記載の方法。
63.高分子が、高分子分析アッセイを実行する前に、固体支持体に直接的または間接的にカップリングされる、実施形態58~62のいずれか1つに記載の方法。
64.高分子分析アッセイが、
高分子を、高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
コーディングタグの情報を記録タグに転送することにより、高分子と関連付けられた記録タグを伸長することと、を含む、実施形態58~63のいずれか1つに記載の方法。
65.
高分子を、高分子に結合することができる追加の結合剤と接触させることであって、追加の結合剤が、追加の結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
追加の結合剤に関するコーディングタグの識別情報を記録タグに転送することにより、高分子と関連付けられた記録タグを伸長することと、を1回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態64に記載の方法。
66.コーディングタグの識別情報を記録タグに転送することが、プライマー伸長またはライゲーションによるものである、実施形態58~65のいずれか1つに記載の方法。
67.コーディングタグの識別情報を記録タグに転送することが、DNAポリメラーゼによって媒介される、実施形態58~65のいずれか1つに記載の方法。
68.コーディングタグの識別情報を記録タグに転送することが、DNAリガーゼによって媒介される、実施形態58~65のいずれか1つに記載の方法。
69.コーディングタグが、スペーサー、結合サイクル特異的配列、固有の分子識別子、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、実施形態58~68のいずれか1つに記載の方法。
70.コーディングタグが、その3’末端にスペーサーを含む、実施形態69に記載の方法。
71.結合剤およびコーディングタグが、リンカーによって接合される、実施形態58~70のいずれか1つに記載の方法。
72.結合剤が、ポリペプチドまたはタンパク質である、実施形態58~71のいずれか1つに記載の方法。
73.結合剤が、修飾されたアミノペプチダーゼ、修飾されたアミノアシルtRNAシンテターゼ、修飾されたアンチカリン、または抗体もしくはその結合断片である、実施形態72に記載の方法。
74.結合剤が、ペプチドの単一のアミノ酸残基、ジペプチド、トリペプチド、または翻訳後修飾に結合する、実施形態58~73のいずれか1つに記載の方法。
75.結合剤が、N末端アミノ酸残基、C末端アミノ酸残基、または内部アミノ酸残基に結合する、実施形態74に記載の方法。
76.結合剤が、化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基または化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基に結合する、実施形態74に記載の方法。
77.結合剤が、N末端アミノ酸残基に結合し、N末端アミノ酸残基が、コーディングタグの情報を記録タグに転送した後に切断される、実施形態75または実施形態76に記載の方法。
78.結合剤が、C末端アミノ酸残基に結合し、C末端アミノ酸残基が、コーディングタグの情報を記録タグに転送した後に切断される、実施形態75または実施形態76に記載の方法。
79.伸長記録タグが、1つ以上のプローブタグ、1つ以上の空間タグ、および任意選択的に1つ以上のコーディングタグからの情報を含む、実施形態1~78に記載の方法。
80.伸長記録タグが、2つ以上のプローブタグ、2つ以上の空間タグ、および任意選択的に2つ以上のコーディングタグからの情報を含む、実施形態1~79のいずれか1つに記載の方法。
81.伸長記録タグが、ステップ(d)の前に増幅される、実施形態1~80のいずれか1つに記載の方法。
82.伸長記録タグが、ステップ(d)の前に空間サンプルから放出される、実施形態1~80のいずれか1つに記載の方法。
83.高分子の配列の少なくとも一部を決定し、ステップ(b2)で評価されたその空間位置と関連付けることをさらに含む、実施形態58~82のいずれか1つに記載の方法。
84.ステップ(d)が、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、パイロシーケンシング、単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、または高度な顕微鏡を使用するDNAの直接イメージングを含む、実施形態83に記載の方法。
85.空間サンプルが、複数の高分子、例えばポリペプチドを含む、実施形態1~84のいずれか1つに記載の方法。
86.空間サンプルが、固体支持体上に提供される、実施形態1~85のいずれか1つに記載の方法。
87.空間サンプルが、表面上に堆積された複数の細胞を含む、実施形態1~86のいずれか1つに記載の方法。
88.空間サンプルが、組織サンプルを含む、実施形態1~87のいずれか1つに記載の方法。
89.空間サンプルが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片または細胞スプレッドである、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法。
90.空間サンプルを、固定剤および/または架橋剤で処理することをさらに含む、実施形態1~89のいずれか1つに記載の方法。
91.空間サンプルを、透過処理剤で処理することをさらに含む、実施形態1~90のいずれか1つに記載の方法。
92.空間サンプルを、固定、架橋、および/または透過処理試薬で処理することが、ステップ(b1)および/またはステップ(c)の前に実行される、実施形態90または実施形態91に記載の方法。
93.ポリペプチドが、ポリペプチド分析アッセイを実行する前に断片化される、実施形態58~92のいずれか1つに記載の方法。
94.断片化が、ポリペプチドをプロテアーゼと接触させることによって実行される、実施形態93に記載の方法。
95.プロテアーゼが、トリプシン、LysN、またはLysCである、実施形態94に記載の方法。
96.固体支持体が、ビーズ、多孔質ビーズ、多孔質マトリックス、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、シグナル変換電子機器を含むバイオチップ、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、回転干渉計ディスク、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ナノ粒子、またはミクロスフェアである、実施形態63~95のいずれか1つに記載の方法。
97.固体支持体が、ポリスチレンビーズ、ポリアクリレートビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、ポリマービーズ、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、もしくは制御された多孔質ビーズ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態96に記載の方法。
98.記録タグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~97のいずれか1つに記載の方法。
99.ステップ(a)が、空間サンプルに複数の記録タグを提供することを含む、実施形態1~98のいずれか1つに記載の方法。
100.記録タグが、空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる、実施形態1~99のいずれか1つに記載の方法。
101.記録タグが、高分子に直接的または間接的に関連付けられている、実施形態1~99のいずれか1つに記載の方法。
102.高分子が、記録タグに直接的または間接的にカップリングされる、実施形態1~99のいずれか1つに記載の方法。
103.記録タグ、空間タグ、および/またはプローブタグが、固有の分子識別子(UMI)を含む、実施形態1~102のいずれか1つに記載の方法。
104.記録タグが、コンパートメントタグを含む、実施形態1~103のいずれか1つに記載の方法。
105.記録タグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、実施形態1~104のいずれか1つに記載の方法。
106.記録タグが、スペーサーポリマーを含む、実施形態1~105のいずれか1つに記載の方法。
107.スペーサーが、記録タグの3’末端にある、実施形態106に記載の方法。
108.
ステップ(a)が、ステップ(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、(c2)、(d)、および(e)の前に実行される、
ステップ(b1)が、ステップ(b2)、(d)、および(e)の前に実行される、
ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(d)およびステップ(e)の前に実行される、
ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(b1)、(b2)、および/もしくは(b3)の前もしくは後に実行される、
ステップ(d)が、ステップ(e)の前に実行される、ならびに/または
ステップ(e)が、ステップ(a)(b1)、(b2)、(b3)、(c1)、(c2)、および(d)の後に実行される、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法。
109.ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(d)および(e)を実行する前に順次2回以上繰り返される、実施形態1~108のいずれか1つに記載の方法。
110.ステップ(c1)および(c2)が、ステップ(b1)、(b2)、および(b3)の前に実行される、実施形態1~109のいずれか1つに記載の方法。
111.ステップ(b2)が、ステップ(b1)の後に実行される、実施形態1~110のいずれか1つに記載の方法。
112.ステップ(b2)が、ステップ(b3)の前または後に実行される、実施形態1~111のいずれか1つに記載の方法。
113.
ステップ(a)、(c1)、(c2)、(b1)、(b2)、(b3)、(d)、および(e)が、順番に起こる、実施形態1~112のいずれか1つに記載の方法。
114.
分子プローブが、空間プローブを空間サンプルに提供する前に除去されるか、または
空間プローブが、サンプルを分子プローブと結合する前にサンプルから除去される、実施形態1~113のいずれか1つに記載の方法。
115.高分子分析アッセイが、ステップ(d)およびステップ(e)の前に実行される、実施形態58~114のいずれか1つに記載の方法。
116.高分子を分析する方法であって、
(a)高分子を含む空間サンプルに記録タグを提供することと、
(b)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合することと、
(c)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することと、
(d)検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得することと、
(e)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定することと、
(f)ステップ(e)で決定されたプローブタグの配列を、分子プローブと相関させることと、を含み、
それにより、ステップ(e)で決定された配列からの情報を、ステップ(d)で決定されたその空間情報と関連付ける、方法。
117.高分子が、タンパク質である、実施形態116に記載の方法。
118.高分子が、ポリペプチドまたはペプチドである、実施形態116に記載の方法。
119.方法が、複数の分子プローブを空間サンプルに結合することを含む、実施形態116~118のいずれか1つに記載の方法。
120.2つ以上のプローブが、同じ検出可能な標識と関連付けられている、実施形態119に記載の方法。
121.複数の分子プローブ内の各分子プローブが、固有の検出可能な標識と関連付けられている、実施形態119に記載の方法。
122.ステップ(b)およびステップ(c)を順次2回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態116~121のいずれか1つに記載の方法。
123.ステップ(d)を2回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態122に記載の方法。
124.ステップ(b)を繰り返す前に、空間サンプルから分子プローブを除去することをさらに含む、実施形態122または実施形態123に記載の方法。
125.検出可能な標識を評価、例えば、観察した後に、検出可能な標識を不活性化することをさらに含む、実施形態112または実施形態123に記載の方法。
126.分子プローブが、核酸、ポリペプチド、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態116~125のいずれか1つに記載の方法。
127.分子プローブが、抗体、抗原結合抗体断片、単一ドメイン抗体(sdAb)、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ由来可変ドメイン(vNAR)、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、線状抗体、ダイアボディ、アプタマー、ペプチド模倣分子、融合タンパク質、反応性もしくは非反応性小分子、または合成分子を含む、実施形態116~126のいずれか1つに記載の方法。
128.分子プローブが、特異的結合が可能な標的化部分を含む、実施形態116~127のいずれか1つに記載の方法。
129.標的化部分が、核酸、炭水化物、脂質、ポリペプチド、ポリペプチドの翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせに結合するように構成される、実施形態128に記載の方法。
130.標的化部分が、タンパク質特異的標的化部分である、実施形態128または実施形態129に記載の方法。
131.標的化部分が、エピトープ特異的標的化部分である、実施形態128または実施形態129に記載の方法。
132.標的化部分が、核酸特異的標的化部分である、実施形態128または実施形態129に記載の方法。
133.標的化部分が、細胞表面マーカーに結合するように構成される、実施形態128~132のいずれか1つに記載の方法。
134.ステップ(b)での結合が、化学結合、共有結合、および/または可逆的結合を含む、実施形態128~133のいずれか1つに記載の方法。
135.検出可能な標識が、放射性同位元素、蛍光標識、比色標識、または酵素基質標識を含む、実施形態116~134のいずれか1つに記載の方法。
136.検出可能な標識を評価、例えば、観察することが、空間サンプルまたはその一部のデジタル画像を取得することを含む、実施形態116~135のいずれか1つに記載の方法。
137.空間サンプルの2つ以上のデジタル画像が取得される、実施形態136に記載の方法。
138.2つ以上のデジタル画像が、複数の分子プローブの組み合わせ空間情報を提供する、実施形態137に記載の方法。
139.画像のうちの少なくとも2つを比較、整列、および/またはオーバーレイすることをさらに含む、実施形態137または実施形態138に記載の方法。
140.検出可能な標識を評価、例えば、観察した後に、検出可能な標識を不活性化することをさらに含む、実施形態116~139のいずれか1つに記載の方法。
141.検出可能な標識を評価、例えば、観察することが、顕微鏡を使用して実行される、実施形態116~140のいずれか1つに記載の方法。
142.検出可能な標識を評価、例えば、観察することが、蛍光顕微鏡を使用して実行される、実施形態141に記載の方法。
143.プローブタグからの情報が、プライマー伸長またはライゲーションによって記録タグに転送される、実施形態116~142のいずれか1つに記載の方法。
144.プローブタグからの情報を記録タグに転送することが、空間サンプルをポリメラーゼおよびヌクレオチド混合物と接触させ、それにより、1つ以上のヌクレオチドを記録タグに付加することを含む、実施形態143に記載の方法。
145.プローブタグからの情報が、プローブタグの近くの記録タグに転送される、実施形態116~144のいずれか1つに記載の方法。
146.ステップ(c)が、プローブタグからの情報を、直接的に、またはプローブタグのコピーを介して間接的に記録タグへ転送することを含む、実施形態116~145のいずれか1つに記載の方法。
147.ステップ(c)が、1つのプローブタグからの情報を、2つ以上の記録タグに転送することを含む、実施形態116~146のいずれか1つに記載の方法。
148.プローブタグが、ステップ(c)の前に増幅される、実施形態116~147のいずれか1つに記載の方法。
149.プローブタグの増幅が、RNAポリメラーゼを使用して実行される、実施形態148に記載の方法。
150.増幅が、線形増幅である、実施形態148に記載の方法。
151.プローブタグからの情報を記録タグに転送することが、逆転写を使用して実行される、実施形態149または実施形態150に記載の方法。
152.ステップ(a)が、空間サンプルに複数の記録タグを提供することを含む、実施形態116~151のいずれか1つに記載の方法。
153.記録タグが、空間サンプルに適用されるマトリックスに含まれる、実施形態116~152のいずれか1つに記載の方法。
154.記録タグが、高分子に直接的または間接的に関連付けられている、実施形態116~152のいずれか1つに記載の方法。
155.高分子が、記録タグに直接的または間接的にカップリングされる、実施形態116~151および154のいずれか1つに記載の方法。
156.高分子分析アッセイを実行することをさらに含む、実施形態116~155のいずれか1つに記載の方法。
157.高分子分析アッセイが、ポリペプチド分析アッセイである、実施形態156に記載の方法。
158.高分子分析アッセイが、その場で実行される、実施形態156または実施形態157に記載の方法。
159.高分子分析アッセイを実行する前に、記録タグと関連付けられた高分子を、空間サンプルから放出することをさらに含む、実施形態156~158のいずれか1つに記載の方法。
160.高分子分析アッセイを実行する前に、記録タグと関連付けられた高分子を収集することをさらに含む、実施形態156~159のいずれか1つに記載の方法。
161.高分子が、高分子分析アッセイを実行する前に、固体支持体に直接的または間接的にカップリングされる、実施形態156~160のいずれか1つに記載の方法。
162.高分子分析アッセイが、
高分子を、高分子に結合することができる結合剤と接触させることであって、結合剤が、結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
コーディングタグの情報を記録タグに転送して、伸長記録タグを生成することと、を含む、実施形態156~161のいずれか1つに記載の方法。
163.
高分子を、高分子に結合することができる追加の結合剤と接触させることであって、追加の結合剤が、追加の結合剤に関する識別情報を有するコーディングタグを含む、接触させることと、
追加の結合剤に関するコーディングタグの識別情報を、伸長記録タグに転送することと、を1回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態162に記載の方法。
164.コーディングタグの識別情報を記録タグに転送することが、DNAリガーゼによって媒介される、実施形態162または実施形態163に記載の方法。
165.コーディングタグの識別情報を記録タグに転送することが、DNAポリメラーゼによって媒介される、実施形態162または実施形態163に記載の方法。
166.コーディングタグの識別情報を記録タグに転送することが、化学ライゲーションによって媒介される、実施形態162または実施形態163に記載の方法。
167.コーディングタグが、スペーサー、結合サイクル特異的配列、固有の分子識別子、ユニバーサルプライミング部位、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、実施形態162~166のいずれか1つに記載の方法。
168.コーディングタグが、その3’末端にスペーサーを含む、実施形態167に記載の方法。
169.結合剤およびコーディングタグが、リンカーによって接合される、実施形態162~168のいずれか1つに記載の方法。
170.結合剤が、ポリペプチドまたはタンパク質である、実施形態162~169のいずれか1つに記載の方法。
171.結合剤が、修飾されたアミノペプチダーゼ、修飾されたアミノアシルtRNAシンテターゼ、修飾されたアンチカリン、または抗体もしくはその結合断片である、実施形態170に記載の方法。
172.結合剤が、ポリペプチドの単一のアミノ酸残基、ジペプチド、トリペプチド、または翻訳後修飾に結合する、実施形態162~171のいずれか1つに記載の方法。
173.結合剤が、N末端アミノ酸残基、C末端アミノ酸残基、または内部アミノ酸残基に結合する、実施形態172に記載の方法。
174.結合剤が、化学的に修飾されたN末端アミノ酸残基または化学的に修飾されたC末端アミノ酸残基に結合する、実施形態172に記載の方法。
175.結合剤が、N末端アミノ酸残基に結合し、N末端アミノ酸残基が、コーディングタグの情報を記録タグに転送した後に切断される、実施形態173または実施形態174に記載の方法。
176.結合剤が、C末端アミノ酸残基に結合し、C末端アミノ酸残基が、コーディングタグの情報を記録タグに転送した後に切断される、実施形態173または実施形態174に記載の方法。
177.伸長記録タグが、1つ以上のプローブタグおよび1つ以上のコーディングタグからの情報を含む、実施形態162~176のいずれか1つに記載の方法。
178.伸長記録タグが、2つ以上のプローブタグおよび2つ以上のコーディングタグからの情報を含む、実施形態162~176のいずれか1つに記載の方法。
179.伸長記録タグが、ステップ(e)の前に増幅される、実施形態116~178のいずれか1つに記載の方法。
180.ステップ(e)が、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、パイロシーケンシング、単一分子リアルタイムシーケンシング、ナノポアベースのシーケンシング、または高度な顕微鏡を使用するDNAの直接イメージングを含む、実施形態116~179のいずれか1つに記載の方法。
181.空間サンプルが、複数の高分子、例えば、ポリペプチドを含む、実施形態116~180のいずれか1つに記載の方法。
182.空間サンプルが、固体支持体上に提供される、実施形態116~181のいずれか1つに記載の方法。
183.空間サンプルが、表面上に堆積された複数の細胞を含む、実施形態182に記載の方法。
184.空間サンプルが、組織サンプルを含む、実施形態116~182のいずれか1つに記載の方法。
185.空間サンプルが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片または細胞スプレッドである、実施形態116~182のいずれか1つに記載の方法。
186.高分子の配列の少なくとも一部を決定し、ステップ(d)で評価されたその空間位置と関連付けることをさらに含む、実施形態156~185のいずれか1つに記載の方法。
187.空間サンプルを、固定剤および/または架橋剤で処理することをさらに含む、実施形態116~185のいずれか1つに記載の方法。
188.空間サンプルの固定、架橋、および/または透過処理が、ステップ(b)の前に実行される、実施形態187に記載の方法。
189.ポリペプチドが、ポリペプチド分析アッセイを実行する前に断片化される、実施形態157~188のいずれか1つに記載の方法。
190.断片化が、ポリペプチドをプロテアーゼと接触させることによって実行される、実施形態189に記載の方法。
191.プロテアーゼが、トリプシン、LysN、またはLysCである、実施形態190に記載の方法。
192.固体支持体が、ビーズ、多孔質ビーズ、多孔質マトリックス、アレイ、ガラス表面、シリコン表面、プラスチック表面、フィルター、膜、ナイロン、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、シグナル変換電子機器を含むバイオチップ、マイクロタイターウェル、ELISAプレート、回転干渉計ディスク、ニトロセルロース膜、ニトロセルロースベースのポリマー表面、ナノ粒子、またはミクロスフェアである、実施形態161~191のいずれか1つに記載の方法。
193.固体支持体が、ポリスチレンビーズ、ポリアクリレートビーズ、セルロースビーズ、デキストランビーズ、ポリマービーズ、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔質ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、もしくは制御された多孔質ビーズ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態192に記載の方法。
194.プローブタグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態116~193のいずれか1つに記載の方法。
195.プローブタグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、実施形態116~194のいずれか1つに記載の方法。
196.プローブタグが、バーコードを含む、実施形態116~195のいずれか1つに記載の方法。
197.プローブタグが、スペーサーを含む、実施形態116~196のいずれか1つに記載の方法。
198.記録タグが、DNA分子、偽相補的塩基を有するDNA、RNA分子、BNA分子、XNA分子、LNA分子、PNA分子、γPNA分子、非核酸シーケンシング可能なポリマー、例えば、多糖類、ポリペプチド、ペプチド、もしくはポリアミド、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態116~197のいずれか1つに記載の方法。
199.記録タグおよび/またはプローブタグが、固有の分子識別子(UMI)を含む、実施形態116~198のいずれか1つに記載の方法。
200.記録タグが、コンパートメントタグを含む、実施形態116~199のいずれか1つに記載の方法。
201.記録タグが、ユニバーサルプライミング部位を含む、実施形態116~200のいずれか1つに記載の方法。
202.記録タグが、スペーサーポリマーを含む、実施形態116~200のいずれか1つに記載の方法。
203.スペーサーが、記録タグの3’末端にある、実施形態202に記載の方法。
204.
ステップ(a)が、ステップ(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)の前に実行される、
ステップ(b)が、ステップ(c)、(d)、(e)、および(f)の前に実行される、
ステップ(c)が、ステップ(d)の前もしくは後に実行される、
ステップ(c)が、ステップ(e)および(f)の前に実行される、
ステップ(d)が、ステップ(e)および(f)の前に実行される、
ステップ(e)が、ステップ(a)(b)、(c)、および(d)の後に実行される、ならびに/または
ステップ(e)が、ステップ(f)の前に実行される、実施形態116~203のいずれか1つに記載の方法。
205.
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)が、順番に起こるか、または
ステップ(a)、(b)、(d)、(c)、(e)、および(f)が、順番に起こる、実施形態116~203のいずれか1つに記載の方法。
206.ステップ(b)、(c)、および(d)が、ステップ(e)および(f)を実行する前に順次2回以上繰り返される、実施形態205に記載の方法。
207.ステップ(b)、(d)、および(c)が、ステップ(e)および(f)を実行する前に順次2回以上繰り返される、実施形態205に記載の方法。
208.高分子分析アッセイが、ステップ(e)およびステップ(f)の前に実行される、実施形態156~207のいずれか1つに記載の方法。
209.高分子分析アッセイが、ステップ(a)、(b)、(c)、および(d)の後に実行される、実施形態156~208のいずれか1つに記載の方法。
210.高分子を分析する方法であって、
(a)記録タグと関連付けられた高分子を含む空間サンプルを提供することと、
(b)空間サンプル内の高分子の空間位置をその場で評価することと、
(c1)プローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合することと、
(c2)分子プローブ内のプローブタグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長することであって、プローブタグからの情報を記録タグに転送すると、伸長記録タグが生成される、伸長することと、
(d)少なくとも伸長記録タグ内のプローブタグの配列を決定することと、
(e)ステップ(d)で決定されたプローブタグの配列を、ステップ(b)で評価された分子プローブおよび/または空間位置と相関させることと、を含み、
それにより、ステップ(d)で決定された伸長記録タグまたはその一部の配列からの情報を、ステップ(b)で評価された空間位置と関連付ける、方法。
211.ステップ(a)の高分子に、記録タグに直接的または間接的に関連付けられた空間タグが提供される、実施形態210に記載の方法。
212.記録タグが、UMIを含む、実施形態211に記載の方法。
213.ステップ(b)が、空間タグをその場で分析することを含む、実施形態210~212のいずれか1つに記載の方法。
214.空間タグ配列が、顕微鏡ベースの方法を使用して分析される、実施形態213に記載の方法。
215.顕微鏡ベースの方法が、多重化される、実施形態214に記載の方法。
216.空間タグ配列が、シーケンシングによって分析される、実施形態211~215のいずれか1つに記載の方法。
217.シーケンシングが、ライゲーションによるシーケンシング、単一分子シーケンシング、単一分子蛍光シーケンシング、またはプローブ検出によるシーケンシングを含む、実施形態216に記載の方法。
218.ステップ(b)が、
(b1)空間タグを含む空間プローブを空間サンプルに提供することと、
(b2)空間タグをその場で評価して、空間サンプル内の空間タグの空間位置を取得することと、
(b3)空間プローブ内の空間タグからの情報を記録タグに転送することによって、記録タグを伸長することと、を含む、実施形態210に記載の方法。
219.ステップ(b)が、
(b1)検出可能な標識およびプローブタグを含む分子プローブを、空間サンプル内の高分子または高分子に近接する部分に結合することと、
(b2)検出可能な標識を評価、例えば、観察して、分子プローブの空間情報を取得することと、を含む、実施形態210に記載の方法。
【実施例
【0374】
以下の実施例は、本明細書において提供される方法、組成物、および使用を説明するために提供されるが、これらを限定するものではない。
【0375】
実施例1-空間サンプル内のタンパク質の例示的な評価
この実施例は、組織切片中のポリペプチドに記録タグを提供するための例示的なワークフロー、およびサンプル内の複数のタンパク質の空間位置を評価することを含む、空間分析のための他の調製ステップを説明する。その場で空間位置を評価するための2つの例示的な方法が記載されている。分子プローブを空間サンプルに結合し、分子プローブのプローブタグからの情報を記録タグに転送するための例示的な手順も記載されている。
【0376】
A1.バーコードビーズを使用した空間位置の評価
サンプル内のタンパク質の空間位置を評価する1つの方法は、図2A~2Fに一般的に示されるように、空間サンプルにバーコードビーズを提供し、バーコードビーズをその場でデコーディングすることによる。スライド上に載置された組織切片の表面に空間プローブとして使用されるDNAバーコードビーズをオーバーレイして組み立てることにより、載置された組織切片(新鮮な凍結またはパラフィン包埋された)に空間タグが導入される(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb prot4991、Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36、Fischer et al.,CSH Protoc.(2008)pdb.prot4988)。新鮮な凍結組織の凍結切片(厚さ10μm)をスライド表面に移し、約20分間4%ホルムアルデヒドで固定する。バーコードビーズオーバーレイの前に、組織切片スライドを強制窒素空気で乾燥させる。ビーズをスライドとインキュベートし、ビーズをスピンダウンしてスライド表面に単層を形成することにより、バーコード化されたビーズを組織切片と接触させる。組織表面は、電荷相互作用、DNAハイブリダイゼーション、または可逆的化学カップリングなどの接着力によって組織表面に非特異的に付着したビーズで覆われている(図2B)。別の実施形態において、ビーズは、組織切片表面上にコーティングされたヒドロゲルに埋め込まれている。一実施形態において、ビーズは、ビーズへのバーコードのより高い負荷に対応するために多孔性である(多孔性5umビーズは、>1010DNAバーコード、例えば、Daisogel SP-2000-5多孔性シリカビーズで負荷され得る)。DNAバーコード(例えば、空間タグ)は、光切断可能なリンカーを介してビーズに付着され、バーコードの組織切片への容易な除去およびその後の拡散転送を可能にする。組織に付着したバーコード化DNAビーズをデコーディングまたはシーケンシングした後(図2C)、DNAバーコードは、切断可能なリンカーの酵素的、化学的、または光切断によって放出される。これらのバーコードは組織スライスに浸透し、組織スライス内のタンパク質に付着したDNAスタブ(例えば、記録タグ)にアニーリングする(図2D)。ポリメラーゼ伸長ステップを使用して、タンパク質のDNA記録タグにバーコードを書き込み、伸長記録タグを生成する。さらなる詳細は以下のように提供される。
【0377】
組織切片の透過処理
新鮮な凍結サンプルの場合、タンパク質分子の化学的活性化の前に0.1%~1% TX-100インキュベーションなどの標準的な方法を使用して、組織切片を透過処理した(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb prot4991、Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36、Fischer et al.,CSH Protoc.(2008)pdb.prot4988)。FFPE組織切片の場合、包埋された培地を除去し(例えば、パラフィンの場合は脱ろう)、標準的な方法を使用して切片を透過処理する(Ramos-Vera et al.,J Vet Diagn Invest.(2008)20(4):393-413)。組織透過処理の標準条件には、0.1%~1% TX-100またはNP-40における0.1~1%での10~30分間のインキュベーションが含まれる。Tween 20、サポニン、ジギトニンは、0.2%~0.5%で10~30分間使用することもできる(Fischer et al.,CSH Protoc(2008)pdb top36)。アセトン固定は、組織の透過処理をもたらす別の方法である。
【0378】
化学的活性化およびDNAタグ付け
組織切片の透過処理およびタンパク質変性の後、好ましい実施形態において、タンパク質は、メチルテトラジン-スルホ-NHSエステル(Click Chemistry Tools)などのアミン二官能性バイオコンジュゲーション試薬とのインキュベーションによって化学的に活性化され、他の二官能性アミン反応性バイオコンジュゲーション試薬を用いることもできる(Hermanson,Bioconjugate Techniques,(2013)Academic Press)。DNAタグ付けの密度は、mPEG-NHSエステルなどの非活性化アミン修飾試薬で滴定することによって制御することができる。代表的な活性化条件には、スライドを1mM NHS-mTetとともにPBS緩衝液(pH7.4)中で30分間インキュベートして、リジン上のε-アミンを標識することが含まれる。5mMエタノールアミンで補足されたPBS中で10分間、3回洗浄し、各々が反応をクエンチする。活性化および洗浄後、トランス-シクロオクテン(TCO)、ノルボルネン、またはビニルボロン酸などのiEDDAカップリング標識を含む一般的なDNAタグ(記録タグに適したアーキテクチャを含む)を組織切片とインキュベートして、活性化されたタンパク質分子上のmTet部分に対するDNAタグを「クリック」する(Knall et al.,Tetrahedron Lett(2014)55(34):4763-4766)。代表的なカップリング条件には、スライドを1mMのTCO-DNAスタブとPBS緩衝液(pH7.4)中で1時間インキュベートすることが含まれる。
【0379】
組織切片上のDNAバーコード化されたビーズ分布
好ましい実施形態において、DNAバーコード化されたビーズは、スプリット・プール合成戦略によって生成される(Klein et al.,Lab Chip(2017)17(15):2540-2541、Rodriques et al.,Science(2019)363(6434):1463-1467)。各ビーズは、DNAバーコードの単一集団を有する。一実施形態において、ビーズは、直径0.5~10umであり、タンパク質に付着したDNAタグ配列に相補的な上流スペーサー配列および下流プライマー伸長配列が隣接するDNAバーコードを含む。好ましい実施形態において、DNAバーコードは、PCリンカー(PCリンカー-CEホスホルアミダイト、Glenn Research)などの光切断可能なリンカーでビーズに付着される。別の実施形態において、組織切片スライドは、TecanのTe-Flowシステムなどの毛細管ギャップフローセル(約50umギャップ)で組み立てられる(Gunderson,Methods Mol Biol(2009)529:197-213)。これにより、スライド表面でソリューションを簡単に交換するための形式が提供される。
【0380】
一実施形態において、DNAバーコードビーズは、毛細管ギャップフローセルシステムを使用して、組織切片の表面全体に分配される。DNAバーコードビーズには、タンパク質のDNAタグに相補的な配列が含まれている。これにより、DNAタグが露出した組織切片の表面にバーコードビーズの「粘着性」が生まれる。別の実施形態において、ビーズは、直径が0.5~10umであり、それらの表面にDNAバーコードおよび遊離アミンの両方を含む。ほとんどの組織はわずかに負に帯電しているため、これらの遊離アミン基は、組織表面への接着を強化する(これは、IHCの正に帯電したスライドに組織スライスを載置するモードである)。バーコードビーズは、グルタルアルデヒドによる標準的な固定化学を使用して、組織に共有結合的に架橋することができる。
【0381】
組織切片上に組み立てられたバーコードビーズの空間デコーディング
組み立てられたバーコードビーズは、蛍光イメージングおよびコンビナトリアルハイブリダイゼーションベースのアプローチまたはその場のNGSシーケンシングを使用して、その場で空間的にデコードされる(Gunderson et al.,Genome Res(2004)14(5):870-877、Lee et al.,Nat Protoc.(2015)10(3):442-458 Rodriques et al.,Science(2019)363(6434):1463-1467)。
【0382】
DNAバーコードをビーズからDNAタグ付きタンパク質に転送する
組織切片の表面にバーコードビーズを組み立てた後、バーコードはビーズから(長波長UV曝露、例えば、365nm UVを介して)光切断される。光切断は一般に70~90%の効率しかなく、UV強度および曝露時間(3~100mW/cm2、340~365nmで1~60分間)によって調整することができるため、連結の大部分は切断されるが、すべてではない(Bai et al.,Proc Natl Acad Sci USA 100(2):409-413)。切断されたバーコードは組織切片に拡散し、以前にタンパク質に付着したDNAタグ(例えば、記録タグ)上の補体とハイブリダイズする。約30分間のインキュベーション後、組織切片をポリメラーゼ伸長混合物に曝露して、ハイブリダイズしたバーコードからのバーコード情報をタンパク質DNA記録タグに転送する。
【0383】
A2.分子プローブの標識を検出することによる空間位置の評価
サンプル内のタンパク質の空間位置を評価する別の方法は、図1A~1Dに一般的に示されているように、分子プローブと関連付けられた検出可能な標識を観察することによって実行される。
【0384】
サンプル内のタンパク質には、最初にDNA記録タグが提供される(図1A)。複数の分子プローブが空間サンプルに提供され、各分子プローブは、観察され得る検出可能なシグナルまたは標識(例えば、蛍光)と関連付けられている。分子プローブと関連付けられたプローブタグからの情報を記録タグに転送する前または後のいずれかで(この例のセクションBに記載されるように)、イメージングステップを実行して、検出可能な標識を観察する(図1B)。サンプルを分子プローブと接触させ、検出可能な標識を観察する複数のラウンドを実行することができる。場合によっては、シグナルが検出された後、分子プローブの別のサイクルが提供される前に、1回以上の洗浄が実行される。検出可能な標識のこの評価は、空間サンプルに結合した分子プローブの各セットに対して実行される。観察された各分子プローブの位置が記録され、記録タグに転送されたプローブタグ情報と相関させるために後のステップで使用される。プローブタグバーコード、分子プローブ結合特性、および/または各分子プローブと関連付けられた検出可能な標識の既知のデータベースまたは記録を使用することができる。
【0385】
B.プローブタグからの情報転送
この例のセクションA1に記載されるように、またはこの例のセクションA2に記載されるように、空間サンプルが空間タグで標識された後、空間サンプルを、各分子プローブがプローブタグと関連付けられている複数ラウンドの分子プローブと接触させる。分子プローブは、サンプル内のタンパク質に結合し、分子プローブのプローブタグからの情報を伸長により記録タグに転送することによって、タンパク質と関連付けられた記録タグを伸長するための反応が実行される。プローブタグから記録タグへの情報の転送は、記録タグ上に追加の配列を生成し(図1Cおよび2E)、伸長記録タグを生成する。アッセイの伸長記録タグは、この段階で次世代シーケンシング(NGS)によって分析されるために放出および/または増幅される(図1Dおよび2F)。あるいは、記録タグが付着したタンパク質が組織から放出され、さらなる高分子分析アッセイで使用される。
【0386】
C.組織切片からのタンパク質の採取
タンパク質(またはその一部)の配列を取得するためのさらなる分析アッセイでタンパク質を使用するには、組織切片をチューブにこすり落とし、標準的なトリプシン消化を使用して、バーコード標識ペプチドを抽出する。トリプシン消化は、スライドをPBS中の0.1%トリプシン中、37℃で12時間インキュベートすることによって達成され、5mMのエタノールアミンで補足された1×PBSで3回洗浄した。場合によっては、ペプチド-DNAキメラをシーケンシングビーズに直接ライゲーションし、さらなるタンパク質分析アッセイ(例えば、ProteoCodeシーケンシングアッセイ)で使用することができる。記載されるように転送されたプローブタグおよび任意選択的な空間タグは、ペプチドに付着した記録タグの一部として含まれ、これはProteoCodeアッセイでの使用に好適である(例えば、国際特許公開第2017/192633号を参照)。
【0387】
本開示は、例えば、本発明の様々な態様を説明するために提供される特定の開示された実施形態に範囲を限定することを意図するものではない。記載される組成物および方法に対する様々な変更が、本明細書の説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内であることが意図される。これらおよび他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を持つ均等物の全範囲とともに、すべての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
配列表
【表1】
図1
図2
【配列表】
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