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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022148017
(22)【出願日】2022-09-16
(65)【公開番号】P2024043044
(43)【公開日】2024-03-29
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521534356
【氏名又は名称】Agri Blue株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】梶山 博司
(72)【発明者】
【氏名】梶山 美也
(72)【発明者】
【氏名】梶山 凛
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-078367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成のための主光とは異なる光であって光合成を促進させるための光であり、光強度が周期的に変動する光である追加シグナル光を照射制御可能であり、
光強度の時間変化、波長範囲、照射期間及び照射時間帯からなる群から選択された少なくとも1種のパラメータを変更することで、前記追加シグナル光の発光条件を変更可能に構成され
前記光強度の時間変化のパラメータには、前記追加シグナル光のパルスの形状が台形となるよう、前記追加シグナル光の周期、上昇時間における波形の勾配、維持時間、及び、下降時間における波形の勾配が含まれ、
前記追加シグナル光の照射制御は追加光制御部を用いて行われ、
前記追加光制御部は、前記追加シグナル光の周期、前記上昇時間における波形の勾配、前記維持時間、及び、前記下降時間における波形の勾配を変化させることが可能である植物栽培装置。
【請求項2】
栽培される植物の栽培計画に適した前記追加シグナル光の前記発光条件を設定可能である、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
光合成のための主光とは異なる光であって光合成を促進させるための光であり、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する光である追加緩和光を照射制御可能である、請求項1又は請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
光強度の時間変化、波長範囲、照射期間及び照射時間帯からなる群から選択された少なくとも1種のパラメータを変更することで、前記追加緩和光の発光条件を変更可能である、請求項3に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
栽培される植物の栽培計画に適した前記追加緩和光の前記発光条件を設定可能である、請求項4に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、植物の生育と有用成分生産を促進させる植物栽培システム、植物栽培装置、及び植物栽培支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の生育は気象条件によって大きく変動する。圃場栽培やハウス栽培では日照量が少なくなると、光合成に必要な光エネルギーが不足して、植物の生育速度が低下する。一方、人工光を使用する植物工場では、十分な光エネルギーを照射するための照明機器やランニングコストが大きく、採算性の面での改善が望まれている。さらに、農作物の付加価値を上げるためには、収量とともに、代謝によって生産されるビタミンやポリフェノールなどの有用成分生産の促進が求められている。そのため、生産者に負担をかけることなく、低コストで、農作物の露地栽培、ハウス栽培、植物工場の収量と有用成分生産を制御できる照明技術が望まれている。また、生育速度を促進できる照明技術が望まれている。後掲の特許文献1には、植物の栽培環境を再現するために環境制御処理部を制御する植物栽培システムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6018765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、栽培ユニット内では、植物の栽培に適するように栽培ユニット内の環境を調整する制御情報プログラムと、そのプログラムを生成する情報処理部が用意されている。この方法では、植物の種別ごとの栽培計画に基づいて栽培環境が整えられる。この方法は、あらかじめ決められた栽培計画を達成できるように栽培環境を制御している。この方法で制御できるのは、植物ごとの収穫時期と収穫量であり、この方法では、植物に含まれている代謝物質生産を制御することはできない。
【0005】
本発明は、効果的に植物栽培を促進できる植物栽培システム、植物栽培装置、及び植物栽培支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を有する植物栽培装置を提供する。
【0007】
光合成のための主光とは異なる光であって光合成を促進させるための光であり、光強度が周期的に変動する光である追加シグナル光を照射制御可能であり、
光強度の時間変化、波長範囲、照射期間及び照射時間帯からなる群から選択された少なくとも1種のパラメータを変更することで、前記追加シグナル光の発光条件を変更可能に構成され
前記光強度の時間変化のパラメータには、前記追加シグナル光のパルスの形状が台形となるよう、前記追加シグナル光の周期、上昇時間における波形の勾配、維持時間、及び、下降時間における波形の勾配が含まれ、
前記追加シグナル光の照射制御は追加光制御部を用いて行われ、
前記追加光制御部は、前記追加シグナル光の周期、前記上昇時間における波形の勾配、前記維持時間、及び、前記下降時間における波形の勾配を変化させることが可能である植物栽培装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効果的に植物栽培を促進できる植物栽培システム、植物栽培装置、及び植物栽培支援システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】追加シグナル光の光強度波形のパラメータを示す説明図である。
図2】追加緩和光強度の時間変化を示す説明図である。
図3】追加光による生育や有用物質生産の促進効果を示す概念図である。
図4】追加シグナル光制御システムから追加シグナル光照射システムへの情報伝達と追加シグナル光照射までの流れを示す説明図である。
図5】栽培サイトが1箇所の場合の追加シグナル光制御システムから追加シグナル光照射システムへの情報伝達フローを示す概念図である。
図6】栽培サイトがM箇所の場合の追加シグナル光制御システムから追加シグナル光照射システムへの情報伝達フローを示す概念図である。
図7】植物栽培装置を示す概念図である。
図8】植物栽培システムや植物栽培装置を利用した植物栽培支援システムの概要を示す説明図。
図9図8の植物栽培支援システムのハードウエア構成を概略的に示すブロック図である。
図10】追加光制御部の変形例を示す概念図である。
図11】追加光制御部の他の変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
<植物栽培方法>
<<本実施形態における植物栽培システムの概要>>
植物は、光合成によって生命維持と成長に必要な糖質を自己生産している。光合成では、原料である水(H20)と二酸化炭素(CO2)から糖質であるグルコース(C6H12O6)が生産される。生産のための反応が進行するには、光エネルギーが不可欠である。
【0012】
本実施形態は、太陽光(自然光)やLEDなどの人工光により植物が生育されている環境で、光強度が周期的に変化する光を追加して照射する植物栽培システムを提供する。追加する光が植物のDNAの生存能力を刺激することで、光合成を間接的に促進させることができる。追加する光は、以下では「追加光」ともいう。追加光については後述する。
【0013】
<<主光による光合成>>
植物は、光合成と呼吸を同時に行っている。光合成は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。呼吸は、酸素を吸収して二酸化炭素を放出する。光合成における二酸化炭素吸収速度(単位:μmolCO2 m-2s-1)は光強度に依存するが、呼吸における二酸化炭素放出量は光強度には依存しない。
【0014】
光合成における光強度は、単位面積当たり、1秒あたりに、葉面に照射される光の個数で定義する。これを、光合成有効量子束密度(Photosynthesis Photon Flux Density、以後、PPFDと略す)と呼ぶ。PPFDの単位はμmol m-2s-1である。
【0015】
本実施形態では、太陽光(自然光)や、人工的な補光を、光合成のための「主光」と称する。この主光は、光合成を直接的に起こしたり、増大させたりするための光である。主光は、太陽光やLED等から発せられる光で、光合成を主に担う光である。
【0016】
<<追加光による光合成促進>>
本実施形態では、主光とは異なる補助的な光を人工的に作成し、植物に照射する。この補助的な光を「追加光」とする。この追加光の照射は、詳細は後述するが、所定の時期や期間に行われる。追加光は、光合成を間接的に促進させるための光である。
【0017】
例えば、本実施形態の植物栽培システムは、太陽光や人工光を光合成のための主光(メイン光)として照射する過程で、播種から収穫までの任意の栽培期間に、追加光を照射する。追加光は、光強度が周期的に変動する光(追加シグナル光)、及び、光強度が緩やかに変化する光(追加緩和光)である。追加シグナル光のみを追加光として照射する場合もある。
【0018】
図1に示す本実施形態においては、追加シグナル光に係るパルスの形状が台形である。追加シグナル光の周期(基本周期)がTであり、一つのパルスの上昇時間がΔT1、ピーク時間がΔT2、下降時間がΔT3である。これらのうちΔT1及びΔT3の光強度は、時間とともに変化する。これらのΔT1及びΔT3における時間変化の勾配は、図1に示すΔT1とΔT3とで同じであっても、異なっていてもよい。さらに、ΔT1やΔT3における勾配を、ΔT1やΔT3の途中で変化させてもよい。これらのΔT1やΔT3における勾配を途中で異ならせる形態としては、ΔT1やΔT3における波形を、例えば、曲線状(弓形状、円弧状、波状など)や、ステップ状(段差状、階段状など)等とすることを例示できる。
【0019】
本実施形態ではこれに加え、追加シグナル光に、追加シグナル光(図1)よりも更に光強度が緩やかに変化する光(追加緩和光)が、所望の光合成促進効果に応じて合成される。追加緩和光は、図2に示すように、正弦波状の波形を有しており、基本周期は1ms以上である。追加シグナル光の周期は8μs<T<200μsであり、追加緩和光の基本周期は、追加シグナル光の周期Tの125~2倍以上である。
【0020】
このように、追加シグナル光に追加緩和光を組み合わせて得られた追加光を植物に照射することにより、追加シグナル光を単独で照射した場合に比べて、より一層、植物が感じる光ストレスを緩和できる。すなわち、本実施形態の追加光は、追加シグナル光と追加緩和光とを組み合わせて、追加光による光ストレスの軽減効果を、可及的に向上させることが可能な光である。追加緩和光の照射は、必ずしも追加シグナル光と同時に行う必要はない。追加シグナル光の後(直後から例えば十数時間程度後の間)に追加緩和光の照射を行っても、植物栽培の促進効果が得られる。これらのことは、本出願人による特願2021-207333号及び特願2022-085570号の明細書や図面にも記載されている。
【0021】
追加シグナル光とは、点灯と消灯を任意の周期で繰り返す光である。追加緩和光とは、強度がほぼ一定の光である。本実施形態において、追加緩和光には、60Hz程度の周波数のリップルがわずかに含まれていることもある。
【0022】
本実施形態の追加シグナル光は、先行技術のパルス光に比べれば、植物に対する光ストレスを緩和できると考えられる。しかし、本実施形態の追加シグナル光のみだけではなく、更に他の態様の光(ここでは追加緩和光)を加えることで、追加光が植物に与える光ストレスを、より効果的に軽減できる。
【0023】
追加シグナル光による光ストレスを可能な限り緩和するためには、追加緩和光のPPFDは、追加シグナル光と同程度以上であることが望ましい。追加シグナル光と追加緩和光の波長域(波長帯)は、同じであっても、異なっていてもよい。いずれの場合も、光合成促進効果がある。ただし、追加シグナル光の波長帯と、追加緩和光の波長帯とは、互いに共通する部分(重なり部分)があること(少なくとも一部の波長帯が共通すること)が望ましい。
【0024】
植物は、光強度の時間的変化に敏感である。したがって、追加シグナル光と追加緩和光が同時に植物に照射されると、植物は、追加シグナル光による光合成を優先的に検知する。このような植物の反応を、植物の光検知におけるカクテルパーティー効果と定義する。
主光と追加シグナル光が同時に照射されている場合でも、カクテルパーティー効果は現れる。
【0025】
主光による光合成よりも弱い光合成が周期的に起きると、植物は光合成の飢餓状態であると認識し、DNAは光アンテナの葉緑素合成の指令を出す。その結果、光合成のための光利用効率が向上し、太陽光や人工光による主光のPPFDが一定であっても、光合成速度は増える。光合成速度の増加は、追加シグナル光のみを照射した場合でも観察される。
【0026】
光合成の促進効果と、より安定した生育促進効果は、追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光を重ね合わせることで得られる。追加シグナル光はDNAにトリガー信号を与える光なので、PPFDに制約はない。一方、追加緩和光のPPFDは、追加シグナル光と同等以上であることが望ましい。
【0027】
<<追加光による有用物質生産促進>>
図3は、追加光のバイオマスや有用物質生産(代謝物質)の促進効果を示している。図中の上段における右側に示すように、太陽光などの主光に加えて追加光が植物(図3では葉の図により示す)照射され、光合成が促進される(図3中に丸数字の1を付して示す)。増産されたグルコースは、分配比率コントロールの下、生命維持のための基礎代謝で使用された転流経路(丸数字の2を付して示す)、及び、二次代謝経路(丸数字の3を付して示す)に流れる。グルコースは、それぞれの経路で、バイオマスと有用物質に変換される。追加光は、以上の3項目(光合成、転流、二次代謝)を促進させる効果がある。
【0028】
このように、追加シグナル光には、光合成促進効果のほかに、グルコースの転流経路と二次代謝経路への分配比率を制御する効果がある。
【0029】
追加シグナル光は、1日における24時間のうちの任意の時間帯に照射してもよく、予め決められた所定の時間帯に照射してもよい。追加シグナル光の波長は、可視光のみでなく、紫外線光から赤外線までの任意の波長帯でよい。この波長帯において、光合成促進効果が得られる。一般的に、波長が短くなるとバイオマス増加効果が高くなり、波長が長くなると二次代謝促進効果が高くなる。特に、波長が600nmよりも長い光には、顕著な二次代謝促進効果がある。
【0030】
<植物栽培システムの構成>
本実施形態の植物栽培システムは、前述した植物栽培方法を採用して植物栽培を促進する。本実施形態の植物栽培システムは、図4及び図5に示すように、追加シグナル光制御システム30と、追加シグナル光照射システム40とを備えている。追加シグナル光制御システム30と、追加シグナル光照射システム40は、図7に示すように、追加シグナル光制御部52を構成する。追加シグナル光制御部52は、追加光制御部60及び照射光制御部16に含まれる。
【0031】
図7に示すように、照射光制御部16には、追加緩和光制御システム54や追加緩和光照射システム56も含まれている。追加緩和光制御システム54と、追加緩和光照射システム56は、追加緩和光制御部58を構成する。追加緩和光制御部58は、追加シグナル光制御部52とともに追加光制御部60を構成する。追加光制御部60は、主光制御部28(後述する)とともに、照射光制御部16を構成する。
【0032】
ここで、図7は、本実施形態に係る植物栽培システムを適用した植物栽培装置10を示している。植物栽培装置10の全体を、「植物栽培システム」として捉えることも可能である。植物栽培装置10の詳細については後述する。また、照射光制御部16を、「植物栽培システム」として捉えることも可能である。さらに、追加光制御部60を、「植物栽培システム」として捉えることも可能である。
【0033】
前述の追加シグナル光制御システム30は、追加シグナル光照射システム40に対して、追加シグナル光の発光条件に係る各種のパラメータ値の情報を出力する。追加シグナル光照射システム40は、追加シグナル光制御システム30から出力された各種のパラメータ値の情報を受信し、パラメータ値に応じて、図7に示す光照射部14の追加シグナル光光源24を駆動する。追加シグナル光光源24は、LED等の光源を備えており、光源から栽培床12に対して、追加シグナル光を照射する。
【0034】
追加緩和光制御システム54は、追加緩和光照射システム56に対して、追加緩和光の発光条件に係るパラメータ値の情報(複数種類であってもよい)を出力する。追加緩和光照射システム56は、追加緩和光制御システム54から出力されたパラメータ値の情報を受信し、パラメータ値に応じて、図7に示す光照射部14の追加緩和光光源26を駆動する。追加緩和光光源26は、LED等の光源を備えており、光源から栽培床12に対して、追加緩和光を照射する。各種のパラメータは、栽培される植物の栽培計画に最も適した発光条件として決定されたものである。
【0035】
図7に示すように、照射光制御部16は、主光制御部28(後述する)と照射光制御部16とを包含する概念である。照射光制御部16は、1台のコンピュータ機器で構成されていてもよい。コンピュータ機器としては、パーソナルコンピュータ(PC)や、照射光制御部16として特化した機能を有する専用の制御機器などを例示できる。本実施形態における「コンピュータ機器」は、図示は省略するが、CPU、各種の記憶部(記録部)、及び入出力部等を備えている。
【0036】
主光制御部28(後述する)と追加光制御部60は、互いに分離された個別のコンピュータ機器により構成されていてもよい。また、照射光制御部16の追加シグナル光制御システム30と、追加シグナル光照射システム40も、互いに分離された個別のコンピュータ機器により構成されていてもよい。
【0037】
さらに、追加シグナル光制御部52と、追加緩和光制御部58とを一体のコンピュータ機器により構成してもよく、または、個別のコンピュータ機器により構成してもよい。
【0038】
また、追加緩和光制御部58における追加緩和光制御システム54と追加緩和光照射システム56とを一体のコンピュータ機器により構成してもよく、または、個別のコンピュータ機器により構成されていてもよい。
【0039】
これらのように、照射光制御部16、追加光制御部60、追加シグナル光制御部52、追加緩和光制御部58、追加シグナル光制御システム30、追加シグナル光照射システム40、追加緩和光制御システム54、及び追加緩和光照射システム56は、任意の組み合わせで一体化また分離することが可能である。
【0040】
また、追加シグナル光照射システム40や追加緩和光照射システム56を、コンピュータ(CPU等)を含まない電子回路機器(または電気回路機器)として構成してもよい。
【0041】
追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40、及び/または、追加緩和光制御システム54と追加緩和光照射システム56を、互いに個別のコンピュータ機器により構成した場合には、追加シグナル光照射システム40や追加緩和光制御システム54を、追加シグナル光制御システム30や追加緩和光制御システム54と異なる施設や遠隔地に設置して、追加シグナル光光源24や追加緩和光光源26を駆動することが可能である。
【0042】
さらに、追加シグナル光照射システム40と追加シグナル光光源24、及び/または、追加緩和光照射システム56と追加緩和光光源26を、互いに異なる施設や遠隔地に設置して、追加シグナル光光源24や追加緩和光光源26を駆動することも可能である。
【0043】
ここで、追加シグナル光照射システム40と、追加緩和光照射システム56は、例えば、「追加シグナル光照射部40」や、「追加緩和光照射部56」などと言い換えることも可能である。さらに、追加シグナル光照射システム40に追加シグナル光光源24を含めたり、追加緩和光照射システム56に追加緩和光光源26を含めたりすることも可能である。
【0044】
上述の栽培床12や、照射光制御部16、及び光照射部14は、植物栽培装置10を構成している。植物栽培装置10の詳細については後述する。また、以下の説明においては、植物を栽培する場所を「栽培サイト」と称する。
【0045】
<パラメータの伝達>
図4に、追加シグナル光のパラメータを追加シグナル光照射システム40が受信して、追加シグナル光が植物に照射されるまでのフローを示す。追加シグナル光制御システム30は、シグナル光のパラメータ(以下では「光パラメータ」または「追加シグナル光パラメータ」と称する場合がある)を送信する機能を有している。光パラメータには、図1に示したような周期T、上昇時間ΔT1、維持時間ΔT2、下降時間ΔT3が含まれる。
【0046】
各種の光パラメータの情報は、追加シグナル光制御システム30に備えられた記憶部(記録部)に記憶(記録)されている。照射光制御部16や、追加光制御部60に記憶部を備え、この記憶部に各種の光パラメータを記憶し、追加シグナル光制御システム30に送信するようにしてもよい。各種の光パラメータの情報は、何れも複数種類ずつ記憶されており、追加シグナル光が照射される植物の種類や生育状況(生育日数)等の生育条件(栽培計画)に応じて、操作者(生産者)により選択される。植物の生育日数や成長度合い等に応じて、自動的に、各種の光パラメータの値が選択されるようにすることも可能である。
【0047】
追加シグナル光照射システム40は、シグナル光のパラメータを受信する機能と、光パラメータ(追加シグナル光パラメータ)と同一の波形の電気信号を発生させる機能などを有する。追加シグナル光照射システム40において、生成された電気信号により、LEDなどの発光素子(光源)は、追加シグナル光制御システム30が指定した波形で発光をする。このようにして生成したシグナル光が植物に照射される。
【0048】
「追加シグナル光制御システム」と「追加シグナル光照射システム」は、それぞれ「追加シグナル光制御ユニット」と「追加シグナル光照射ユニット」と言い換えることも可能である。
【0049】
<<栽培サイトが1箇所の場合>>
図5に、栽培サイトが1つの場合を例とし、追加シグナル光制御システム30から追加シグナル光照射システム40への情報伝達フローを示す。栽培サイトが1つであって、且つ、使用される(または設置される)「追加シグナル光制御ユニット」と「追加シグナル光照射ユニット」も1つである場合、「追加シグナル光制御システム」と「追加シグナル光照射システム」は、それぞれ「追加シグナル光制御ユニット」と「追加シグナル光照射ユニット」と同じ意味のものになる。
【0050】
使用される(または設置される)「追加シグナル光制御ユニット」と「追加シグナル光照射ユニット」が複数である場合、「追加シグナル光制御システム」と「追加シグナル光照射システム」は、複数の「追加シグナル光制御ユニット」や、複数の「追加シグナル光照射ユニット」を包含する意味のものとなる。
【0051】
栽培サイトにおける追加シグナル光照明(追加シグナル光の照射による照明)では、照明の開始時刻と終了時刻を指定しなければならない。そのために、別のパラメータとして、T4とT5(時刻パラメータ、追加シグナル光時刻パラメータ)、T6(追加緩和光点灯パラメータ)を導入する。T4は追加シグナル光の点灯時刻であり、T5が追加シグナル光の消灯時刻であり、T6は追加緩和光の点灯または消灯を指定する。これらのパラメータも、栽培計画に適したものであり、前述の記憶部に記憶される。追加緩和光に係るパラメータは、追加緩和光制御システム54に記憶されていてもよい。
【0052】
T4とT5についても、光の波形に係るパラメータ(光パラメータ)と同様に、追加シグナル光制御システム30に記憶される。操作者がT4とT5の数値を直接入力してもよく、又は、あらかじめ設けられている選択メニューから操作者が時間を選択して入力するようにしてもよい。
【0053】
T4とT5は、例えば、午前0時を起点に、1日の24時間内でのそれぞれの時刻を1時間単位で指定する。例えば、午前2時に点灯、午後4時に消灯する場合には、T4とT5には、それぞれ「2」と「16」を入力する。T4とT5をゼロと入力すると、照射時間はゼロとなるよう演算処理の内容を決めておく。
【0054】
T6についても、光の波形に係るパラメータ(光パラメータ)と同様に、追加緩和光制御システム54に記憶される。追加緩和光を1日の24時間内のうち全く点灯させない場合にはT6に0を入力する。追加緩和光を追加シグナル光と同じ時間帯に点灯させるにはT6に1を入力する。追加緩和光に係るパラメータは、「光パラメータ」に含まれる。追加緩和光に係るパラメータを「追加緩和光パラメータ」等と称して、「追加シグナル光パラメータ」と区別することが可能である。
【0055】
また、追加シグナル光パラメータや、追加緩和光パラメータとして、上述した以外のパラメータ(例えば、それぞれの光の強度に関するパラメータや、波形の勾配に関するパラメータ等)を設けることが可能である。そして、追加シグナル光の発光条件は、光強度、光強度の時間変化、波長範囲、照射期間(照射の開始と停止の指示でもよい)、照射時間帯(照射の開始と停止でもよい)等により定まるため、これらを追加シグナル光のパラメータとして採用することが可能である。また、追加緩和光についても、光強度、光強度の時間変化、照射期間(照射の開始と停止の指示でもよい)、照射時間帯(照射の開始と停止でもよい)等を定めることが可能である。
【0056】
栽培サイトには、N台(N個)の追加シグナル光照射ユニット40-1~40-Nが設置されている。ここでのNは自然数(1以上の整数)である。それぞれの追加シグナル光照射ユニット40-1~40-Nは、追加シグナル光制御ユニット30-1~30-Nが指定する光パラメータを受信する。N=1の場合は、追加シグナル光照射ユニット及び追加シグナル光照射ユニットの数は、それぞれ1台(個)となる。
【0057】
追加シグナル光制御システム30は、1号からN号までの独立した制御ユニットで構成されていて、追加シグナル光照射システム40も1号からとN号までの独立した照射ユニットで構成されている。N台の追加シグナル光制御ユニット30-1~30-Nが追加シグナル光制御システム30を構成し、同じくN台の追加シグナル光照射ユニット40-1~40-Nが追加シグナル光制御システム30を構成する。
【0058】
以下では、上述のように、追加シグナル光制御システム30におけるN個の制御ユニットについて枝番を含む符号30-1~30-Nを付し、追加シグナル光照射システム40におけるN個の照射ユニットについて同じく枝番を含む符号40-1~40-Nを付す場合がある。また、符号30-1~30-Nを30-1~Nのように記載し、符号40-1~40-Nを40-1~Nのように記載する場合がある。
【0059】
それぞれの追加シグナル光照射ユニット40-1~Nには可変抵抗器(図示略)が接続されていて、この可変抵抗器を用いてLEDなどの発光素子に流れる電流値を制御できる。これにより、植物の葉面に照射される光のPPFDの調整が可能である。可変抵抗器は、追加シグナル光照射ユニット40-1~Nのそれぞれに備えられていてもよい。1つの可変抵抗器により複数の追加シグナル光照射ユニット40-1~Nの電流値を調節できるようになっていてもよい。
【0060】
可変抵抗器に係る抵抗値の調整は、操作者が追加シグナル光制御ユニット30-1~Nを操作することにより行うことができる。また、栽培サイトにおいて、生産者(操作者)が、それぞれの追加シグナル光光源24に対応する可変抵抗値を調整することもできる。
【0061】
このように、栽培サイトにおいて生産者が追加シグナル光の強度を調整できるようにすることで、以下のような利点がある。
(1)栽培現場ごとに栽培品種、栽培方法(植え付け間隔、葉の茂り方、重なり方など)により、波長ごとの最適なPPFD値で追加シグナル光を照射することができる。図7に示すような植物栽培装置10では、主光光源20、追加シグナル光光源24、追加緩和光光源26の設置位置(間隔、高さなどを含む)が、生産者により栽培現場の状況に応じて調整される。そして、追加シグナル光の強度を調整できるようにすることで、より最適な条件で植物の栽培を促進することが可能となる。
(2)照射波長域によって最適なPPFD値が異なるが、生産者により追加シグナル光の強度を調整できるようにすることで、より最適な条件で植物の栽培を促進することが可能となる。
【0062】
本実施形態では、同一番号(同一の枝番)の追加シグナル光制御ユニット30-1~Nと追加シグナル光照射ユニット40-1~Nの間だけで、情報伝達(パラメータ送信)が行われる。例えば、追加シグナル光制御ユニット30-1は、追加シグナル光照射ユニット40-1に対してのみ情報伝達を行う。追加シグナル光制御ユニット30-Nは、追加シグナル光照射ユニット40-Nに対してのみ情報伝達を行う。それぞれの追加シグナル光照射ユニット40には、異なる波長域(発光波長領域)の発光素子があらかじめ接続されている。すべての追加シグナル光照射ユニット40-1~Nに対応する光源の発光波長領域が異なっていてもよく、一部の光源の発光波長領域が異なっていてもよい。
【0063】
追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40の間(追加シグナル光制御ユニット30-1~Nと、対応する追加シグナル光照射ユニット40-1~Nの間)の情報伝達は、有線、または、無線のいずれかで行うことが可能である。有線通信と無線通信を併用することも可能である。また、例えば、一部の追加シグナル光制御ユニットと、対応する追加シグナル光照射ユニットの組の情報伝達には有線通信を採用し、他の組については無線通信を採用する、といったことも可能である。
【0064】
追加緩和光制御システム54及び追加緩和光照射システム56についても、同様に、1対1のユニット化された構成(追加緩和光制御ユニット54-1~Nと追加緩和光照射ユニット56-1~Nの構成)が採用されている。このため、詳細な図示や説明は省略するが、追加緩和光制御システム(追加緩和光制御ユニット)54から追加緩和光照射システム(追加緩和光照射ユニット)56へ、前述したパラメータT6(追加緩和光パラメータ)の情報が伝達される。
【0065】
なお、例えば、1つの追加シグナル光制御ユニット30-1が複数の追加シグナル光照射ユニット40-1~Nに情報を伝達したり、1つの追加緩和光制御ユニット54-1が複数の追加緩和光照射ユニット56-1~Nに情報を伝達したりすることも可能である。
【0066】
<<栽培サイトが複数箇所(M個)の場合>>
図6に、栽培サイトが複数箇所(M個)ある場合の、追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40のシステム構成を示す。ここでのMは自然数(1以上の整数)である。図6の例の追加シグナル光制御システム30においては、単一栽培サイト用の追加シグナル光制御システム30-1~30-Mが独立してM個集積されている(設けられている)。同様に、追加シグナル光照射システム40は、単一栽培サイト用の追加シグナル光照射システム40-1~30-Mが独立してM個集積されている(設けられている)。
【0067】
以下では、符号30-1~30-Mを30-1~Mのように記載し、符号40-1~40-Mを40-1~Mのように記載する場合がある。
【0068】
同一番号(同一の枝番)の追加シグナル光制御システム30-1~Mと追加シグナル光照射システム40-1~Mの間だけで、情報伝達(パラメータ送信)が行われる。各組の追加シグナル光制御システム30-1~Mと追加シグナル光照射システム40-1~Mの間の情報伝達は、前述したように、有線、無線のいずれか、あるいは両方で(適宜併用して)行われる。追加シグナル光制御システム30-1~Mと追加シグナル光照射システム40-1~Mの各々においては、図5に示す栽培サイトが1箇所の場合と同様に、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nと追加シグナル光照射ユニット40-1~Nの組が備えられている。
【0069】
追加緩和光の照射に関しても、各栽培サイトで、前述したような追加緩和光の制御を行うことが可能である。
【0070】
<<個々の組の追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40の基本構成>>
図7に、個々の組の追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40の基本構成を示す。図7には、1組(1号)の追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40が示されているが、個々の追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40に関しては、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nは1号からN号までの独立したユニットを備えており、追加シグナル光照射システム40-1~Nも1号からN号までの独立したユニットを備えている。
【0071】
また、栽培サイトが複数の場合に関しては、追加シグナル光制御システム30は1号からM号までの独立したシステムであり、追加シグナル光照射システム40も1号からM号までの独立したシステムである。したがって、栽培サイトが複数の場合(図6)、i番目の栽培サイトの追加シグナル光制御システム(または制御ユニット)の数をp(i)とすると、追加シグナル光制御システム30に含まれる制御ユニットの数Pは、P=p(1)+p(2)+・・・・+p(M-1)+p(M)となる。
【0072】
栽培サイトが複数の場合、追加シグナル光制御システム(ユニット)30と追加シグナル光照射システム(ユニット)40の数も、基本的には、栽培サイトが1箇所の場合に比べて増える。しかし、例えば、1箇所の栽培サイトにおいて4個ずつの追加シグナル光制御システム(ユニット)30-1~4と追加シグナル光照射システム(ユニット)40-1~4を使用し、3箇所の栽培サイトの個々において、1個ずつの追加シグナル光制御システム(ユニット)30-1と追加シグナル光照射システム(ユニット)40-1のみを使用する、といったこともあり得る。
【0073】
栽培サイトが1箇所の場合、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nと追加シグナル光照射ユニット40は1対1に対応していて、例えば、図5中の追加シグナル光制御システム30-1(1号制御ユニット)は、追加シグナル光照射ユニット40-1(1号照射システム)に信号を送出できる。同じように、2号制御ユニットは2号照射ユニットに信号を送出でき、N号制御ユニットはN号照射ユニットに信号を送出できる。
【0074】
1号からN号までの追加シグナル光制御ユニット30-1~Nに共通しているのは、図1で示したようにT、ΔT1、ΔT2、ΔT3の追加シグナル光のパラメータである。
【0075】
1号からN号までの追加シグナル光制御ユニット30-1~Nでは、上述の光パラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3)以外に、照明する時間帯のパラメータを設定する。照明する時間帯は、1日を24時間で表して、点灯開始時刻をT4、消灯時刻をT5で指定する。1日のうち全く照明しない場合には、T4とT5を同じ値にする。
【0076】
追加シグナル光照射ユニット40-1~Nは、光源が接続されていて、追加シグナル光制御システム30からの信号(パラメータの値を示す)を受け取ると、指定されたT、ΔT1、ΔT2、ΔT3のパラメータのシグナル光を照射する。1号からN号までの追加シグナル光照射ユニット40-1~Nには、あらかじめ設定された収穫量と有用物質生産に近づけるために最適な発光波長の光源が接続されている。
【0077】
個々の追加シグナル光制御ユニット30-1~Nは、常に一定の光パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3の値を出力するものであってもよく、光パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3の値を変化させるものであってもよい。
【0078】
光パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3を変化させるものである場合には、個々の追加シグナル光制御ユニット30-1~Nにインストールされたソフトウェアにしたがって、光パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3を変化させるようにすることが可能である。
【0079】
個々の追加シグナル光制御ユニット30-1~Nが送信する光パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3は、互いに同じ値であってもよい。また、時刻に係るパラメータ(時刻パラメータ)T4、T5も、互いに同じ値であってもよい。しかし、これに限られず、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nの一部またはすべてが送信する光パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3が異なっていてもよい。また、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nの一部またはすべてが送信する時刻パラメータT4、T5が異なっていてもよい。
【0080】
さらに、個々の追加シグナル光制御ユニット30-1~Nを統括する制御システム(統括制御システム、統括制御部)を、例えば追加シグナル光制御部52に備え、この統括制御システムが、インストールされたソフトウェアにしたがって、個別の追加シグナル光制御ユニット30-1~Nを制御するようにしてもよい。また、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nの機能を1台の制御ユニットに集約し、1台の制御ユニットがすべての追加シグナル光照射ユニット40-1~Nに信号を伝達してもよい。この場合は、1対複数の信号伝達が行われることとなる。
【0081】
栽培サイトが複数箇所の場合は、複数の追加シグナル光制御システム30-1~Mと追加シグナル光照射システム40-1~Mが組み合わされ、個々の組について、栽培サイトが1箇所の場合と同様に情報伝達を行うことが可能である。
【0082】
本実施形態による植物栽培システムは、すべての種類の植物の光合成に有効である。したがって、葉菜類、花き、果樹、海草、藻類、及び、微細藻類の生育促進に応用できる。さらに、圃場、ハウス、植物工場、陸上養殖、水面、水中、及び、中山間地での植物栽培に効果がある。
【0083】
<植物栽培装置10>
図7は、本実施形態の植物栽培システムを含んで構成された植物栽培装置10の概略構成を示している。図7に示す植物栽培装置10は、栽培サイトが1つの場合を示している。栽培サイトが複数の場合は、植物栽培装置10を複数配置することが可能である。また、1つの植物栽培装置10に複数の栽培サイトを形成することも可能である。また、1つの栽培サイトに複数の植物栽培装置10を設置することも可能である。
【0084】
植物栽培装置10は、水耕又は土耕用の栽培床12と、栽培床12に向けて光を照射する光照射部14と、光照射部14を点灯駆動する照射光制御部16とを備えている。照射光制御部16は、主光制御システム(主光制御部)28、追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40を備えている。植物栽培装置10は、栽培床12を覆って栽培室を形成する保護部材18を有している。保護部材18を省略することも可能である。
【0085】
光照射部14は、主光の照射を行う主光光源20と、追加光の照射を行う追加光光源22とを有する。主光光源20と追加光光源22は、照射光制御部16の制御(ここでは電流制御)により個々に駆動制御される。図7では、主光光源20と追加光光源22とが、左右に並んで示されているが、主光光源20の光と追加光光源22の光は、図示を省略する拡散板(拡散レンズであってもよい)を介し、同様の経路で栽培床12に向けて照射される。追加光光源22の光は、図示を省略する光ファイバーを介し、栽培床12に向けて照射してもよい。光ファイバーは、端面発光または側面発光のものを適宜用いることができる。
【0086】
主光光源20は、主光制御部28により制御されて所定の時間内で連続点灯し、主光(「連続照射光」ともいう)を連続して出射する。主光光源20には、例えば、LED、蛍光灯、プラズマランプ、水銀灯、白熱電球、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、又は、無電極ランプ等の人工光源が用いられる。
【0087】
他の主光として、太陽光を使用することも可能である。太陽光を使用する場合、主光光源20を使用しないことや、主光光源20を省略することが可能である。太陽光と主光光源20の光とを併用することも可能である。この場合、太陽光と主光光源20の光を、時間帯等の条件に応じて使い分けてもよい。さらに、太陽光と主光光源20の光を、同時に出射する場合があってもよい。
【0088】
図示は省略するが、主光制御部28は、主光制御システムと主光照射システムを含んでいる。主光制御システムは、主光照射システムに、主光を照射するためのパラメータを伝達する。主光を照射するためのパラメータには、主光の強度、点灯開始時刻、消灯時刻等のパラメータを含んでいる。
【0089】
追加光光源22は、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26とを有する。追加シグナル光光源24は追加シグナル光を照射し、追加緩和光光源26は追加緩和光(図2)を照射する。追加シグナル光と追加緩和光は追加光を構成する。
【0090】
図7では、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26とが、左右に並んで示されているが、追加シグナル光と追加緩和光は、図示を省略する拡散板(拡散レンズであってもよい)を介し、同様の経路で栽培床12に向けて照射される。追加光光源22は、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26とを集積し、一体化したものであってもよい。
【0091】
光照射部14は、保護部材18の天井面や側壁の上方、又は栽培床12に設置された柱の上方等に設置される。光照射部14は、照射光制御部16からの指令に応じて、栽培床12を照明する。
【0092】
光照射部14は、主光光源20、及び、追加光光源22を、それぞれ複数を備えたものとすることが可能である。この場合、複数の主光光源20、及び、複数の追加光光源22を、異なる位置で、かつ、照射角度を異ならせて配置することが可能である。例えば、複数の主光光源20、及び、複数の追加光光源22を、交互に配置するといったことも可能である。また、複数の主光光源20と単数の追加光光源22(又は単数の主光光源20と複数の追加光光源22)を備えるといったことも可能である。栽培床12に複数の方向から光が照射されるように、追加光光源22を設置することも可能である。このようにすると、より安定した生育促進効果が得られる。
【0093】
このように、複数の主光光源20、及び/又は、複数の追加光光源22を備えることにより、より緻密な光照射を行うことが可能となる。そして、複数の光源の配置や照射角度を異ならせることにより、栽培床12の植物に均一に光照射でき、場所による成長ムラを抑制できる。
【0094】
照射光制御部16は、本実施形態の植物栽培方法に基づいて、光照射部14を点灯駆動する。照射光制御部16は、主光光源20のみを点灯駆動することや、追加光光源22のみを点灯駆動すること、及び、主光光源20と追加光光源22の両方を同時に点灯駆動することが可能である。
【0095】
主光光源20、追加シグナル光光源24、及び追加緩和光光源26に係る制御上の単位(最小の一纏まりの制御対象)は、1個の光源素子(LED素子など)であっても、複数個の光源素子が実装された1個の基板等であっても、または、複数個の基板等であってもよい。本実施形態の追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40に係る台数(個数)Nの値は、追加シグナル光光源24に係る制御上の単位の個数に対応するものとすることができる。
【0096】
光照射部14が複数の主光光源20、及び/又は、複数の追加光光源22を備える場合には、照射光制御部16は、同種の光源を同期させて点灯させることが可能である。また、栽培床12を複数のブロック(試験区)に分ける場合には、照射光制御部16は、それぞれのブロックで、主光光源20及び追加光光源22を個別に制御することが可能である。
【0097】
照射光制御部16は、ブロック単位で、主光光源20及び追加光光源22を同期させてもよく、複数ブロック又は全ブロックの主光光源20及び追加光光源22を同期させてもよい。
【0098】
このような植物栽培装置10は、一般家庭で手軽に家屋内にて栽培するための小型栽培キット、農業用ハウス、建造された栽培室を有する植物工場等の大型のもの等に広く適用することが可能である。
【0099】
ここで、農業用ハウスとは、透光性を有するフィルムがハウス全面に展張された農業用ビニールハウスのほか、ガラス窓の内側の全面にフィルムが伸ばし拡げられた農業用ガラスハウスとすることもできる。農業用ガラスハウスにおいては、ハウス内の栽培空間における水分を含んだ空気が、フィルムを透過して、ガラス窓とガラス窓の骨組み部分との隙間を通じてハウス外に出る。そのため、農業用ガラスハウスにおいても、ハウス内が高温多湿になることを抑制できる。なお、上記した「透光性」とは、昼間に植物を育てるのに必要な光を通すことを意味する。
【0100】
追加光の光源(ここでは追加光光源22)を、農業用ハウス内に設置した場合、追加光の一部は、ガラス板、樹脂板、樹脂製フィルムなどにより反射及び拡散(反射拡散)がされるので、追加光の照射効率があがるという利点がある。小型栽培キットや植物工場などでも、同様の照射効率向上の効果は得られる。
【0101】
また、追加光(追加シグナル光、及び/又は、追加緩和光)の有効な照射方向についても考えることができる。追加光を、主光と同じ方向から照射した場合も、主光と異なる方向から照射した場合も、いずれも生育促進効果は得られる。さらに、主光が十分に届いていない場所(例えば、日陰に位置する葉の表裏の葉面や、日の当たる場所にある葉の裏面など)に追加光を照射すれば、より大きな生育促進効果が得られる。
【0102】
具体的には、例えば葡萄のように、枝が水平方向に伸びている植物に対して、地面から上方向(斜め上方向を含む)に追加光を照射する。この場合、日陰にある葉の裏面(地面の側の面)に当たる光が増加する。そして、追加光を照射しない場合に比べて、盛んに光合成が行われ、葡萄の甘みが増す。このように、追加光の照射方向を、植物の栽培が行われている環境や、植物の特性等に応じ設定することで、植物の成長をより一層効果的に促進できる。
【0103】
本実施形態では、追加シグナル光は必須であるが、緩やかに変化する追加緩和光を重畳してもよい。また、追加緩和光を、追加シグナル光を照射した後に照射してもよい。追加光のみを照射した場合に比べて、植物に与えられる刺激が少ない。追加緩和光を照射することの有効性は、前述した本出願人による特願2021-207333号及び特願2022-085570号に係る明細書や図面にも記載されている。本実施形態に係る発明は、特願2021-207333号及び特願2022-085570号に開示された発明を含んで構成されている。そして、本実施形態の植物栽培システムや植物栽培装置10は、生育と二次代謝の個別制御が可能である。生育と二次代謝の個別制御は、追加シグナル光や追加緩和光の波長や光強度の時間変化、照射時間帯を変化させることにより可能である。
【0104】
また、図7は、1組の追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40と、1つの栽培サイトを示している。そして、図7に示す植物栽培装置10を複数備えることで、複数の栽培サイトにおいて、追加シグナル光と追加緩和光を組み合わせた照明を行うことが可能である。
【0105】
さらに、これに限定されず、図7に示す植物栽培装置10が、複数組の追加シグナル光制御システム30及び追加シグナル光照射システム40と、複数区画の栽培サイトを備えているものとしてもよい。
【0106】
<<「植物栽培装置」の範囲>>
本実施形態において植物栽培装置10は、栽培床12、光照射部14、照射光制御部16、保護部材18、主光光源20、追加光光源22、追加シグナル光光源24、追加緩和光光源26、追加シグナル光制御システム30、追加シグナル光照射システム40、追加シグナル光制御部52、追加緩和光制御部58等を構成要素としている。しかし、これらの構成要素のうちの一部を「植物栽培装置」と捉えることも可能である。例えば、追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40の個々について「植物栽培装置」とすることも可能である。
【0107】
また、追加シグナル光照射システム40と追加シグナル光光源24との組み合わせを「植物栽培装置」とすることも可能である。また、追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40とを有する追加シグナル光制御部52と、追加シグナル光光源24との組み合わせを「植物栽培装置」とすることも可能である。また、これらに追加緩和光の照射に係る構成を含めて「植物栽培装置」とすることも可能である。
【0108】
さらに、追加緩和光制御部58を含む照射光制御部16を「植物栽培装置」とすることも可能である。また、照射光制御部16と追加光光源22の組み合わせを「植物栽培装置」とすることも可能である。
【0109】
また、他の発明として、追加緩和光制御部58を「植物栽培装置」とすることや、追加緩和光制御部58と追加緩和光光源26との組み合わせを「植物栽培装置」とすることも可能である。
【0110】
これらの何れの場合についても、製造された「植物栽培装置」を流通ルートにおいて取り扱うことが可能である。また、図7の植物栽培装置10を「植物栽培システム」とした場合には、上述の各形態の「植物栽培装置」が「植物栽培システム」に備えられているものとすることも可能である。
【0111】
<植物栽培システム及び植物栽培装置10のメリット>
以上説明した植物栽培システム、または、植物栽培装置10によれば、追加シグナル光や追加緩和光の照射により、主光により光合成を行う植物の生育を促進することができる。さらに、追加シグナル光や追加緩和光のパラメータを変更することにより、植物の生育と二次代謝の個別制御が可能となる。
【0112】
また、主光とは異なる追加光、及び、追加緩和光を照射するための追加光制御部が備えられ、追加光制御部が追加光の発光条件を制御することから、栽培対象の生育に適した発光条件で、追加光を照射することが可能である。
【0113】
<植物栽培システムの応用>
本実施形態に係る植物栽培システムは、例えば、図8に示すようなIoT(モノのインターネット)とAI(人工知能)を利用した農業に適用することが可能である。図8に示すのは、これまでに説明した植物栽培システムや、図7に示すような植物栽培装置10を利用した植物栽培支援システムの一例である。
【0114】
図8に示す植物栽培装置10は、これまでに説明した植物栽培システムを利用したものであり、主光、追加シグナル光、及び追加緩和光を組み合わせて、植物栽培を促進する。植物栽培装置10は、栽培現場に設置される。
【0115】
図8では、栽培サイトが1つのみ示されているが、複数箇所に植物栽培装置10を設置してもよい。そして、栽培サイトを複数箇所に設置する場合、栽培サイトの配置は、同じ敷地内に限らず、異なる敷地(他地区、他県、他国の敷地など)に設置されていてもよい。図8の右下には、複数国に栽培サイトを設置した場合の一例が示されている。
【0116】
図8の上段に示すように、植物栽培装置10は、公衆回線を介してクラウド(IoTクラウド82)に、通信可能に接続されている。また、植物栽培装置10は、クラウドを介して運用管理センター84と通信可能に接続されている。クラウド上には、管理サーバ86が設置され、管理サーバ86においては、栽培対象となる植物の生育データや環境データが、データベース88に記憶(記録)されている。
【0117】
管理サーバ86には、農家に備えられたコンピュータ機器(生産者端末90)が、公衆回線を介してクラウドに接続されている。管理サーバ86から農家の生産者端末90に対しては、植物栽培装置10における植物の生育状況のモニタリング結果が送信される。植物の生育状況のモニタリングには、図示は省略するが、例えば、監視カメラや、温度センサー、及び湿度センサー等といった一般的な監視機器を用いることが可能である。農家の作業者(生産者)は、生産者端末90の表示画面を視認しながら、植物栽培装置10における植物の生育状況を確認する。
【0118】
植物栽培装置10において使用される各種のパラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6等)は、生産者端末90からクラウドを経由して植物栽培装置10に送信してもよく、または、運用管理センター84から植物栽培装置10に送信してもよい。さらに、管理サーバ86において、各種のパラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6等)を自動的に判定して植物栽培装置10に送信してもよい。
【0119】
このようなサービスは、例えば、管理サーバ86の運営管理者がサービスの利用者に一定額の課金を行うことにより、提供される。なお、課金のためのシステム(課金システム)としては、公知の種々の課金システムを適用することが可能である。
【0120】
図9は、図8に示す植物栽培支援システムに係るハードウエア構成を概略的に示している。植物栽培支援システムには、植物栽培装置10と、植物栽培装置10における植物の生育状況を検出する検出部92とが備えられている。さらに、植物栽培支援システムには、検出部92の検出結果に基づき、植物の生育状況を示す情報を、ユーザー(生産者)のコンピュータ機器(生産者端末90など)に送信する生育情報送信部(管理サーバ86など)と、を備えている。
【0121】
検出部92としては、前述した監視カメラや、温度センサー、及び湿度センサー等といった監視機器のうちの1つ、または複数が用いられる。検出部92は、例えば、植物栽培装置10の保護部材18(図7)内に設置される。
【0122】
<その他>
なお、本実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0123】
例えば、図7の例では、追加シグナル光制御システム30と追加シグナル光照射システム40が、追加シグナル光制御部52に包含され、追加緩和光制御システム54と追加緩和光照射システム56が、追加緩和光制御部58に包含されている。しかし、このような構成に限定されず、例えば図10に示すように、追加光制御部62に、追加シグナル光制御システム30と追加緩和光制御システム54とを包含する追加光制御システム64を構築し、追加シグナル光照射システム40と追加緩和光照射システム56とを包含する追加光照射システム66を構築してもよい。
【0124】
例えば、追加シグナル光制御ユニット30-1~Nの個々に、追加緩和光制御システム54(追加緩和光制御ユニット54-1~N)を組み込んだコンピュータ機器を用いたような場合は、図10のように図示することが可能である。
【0125】
また、1台のコンピュータ機器に追加シグナル光制御ユニット30-1~Nの機能や、追加緩和光制御システム54(追加緩和光制御ユニット54-1~N)の機能を持たせた場合(複数チャンネル化したような場合)などにも、図10のように図示することが可能である。
【0126】
これらのことは、図10における追加光照射システム66の追加シグナル光照射システム40と追加緩和光照射システム56についても同様である。
【0127】
また、図11に示すように、追加光制御部72の追加光制御システム74が、追加シグナル光を制御する機能と追加緩和光を制御する機能の両方を備え、追加シグナル光照射システム40と追加緩和光照射システム56にパラメータを伝達するようにしてもよい。
【0128】
ここで、図10及び図11に係る説明において、図7の例と同様の部分については同一符号を付し、適宜説明を省略した。また、図11に係る説明において、図10の例と同様の部分については同一符号を付し、適宜説明を省略した。
【実施例
【0129】
以下、実施例によって本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0130】
<実施例1>
実施例1では、追加光(追加シグナル光、追加緩和光)を、1箇所の栽培サイト内で照射するために、図11に例示したタイプの追加光制御部72を備えた植物栽培システムを構築した。追加光制御部72は、追加光制御システム74と追加光照射システム66を備える。追加光制御システム74と追加光照射システム66は、無線通信機器を経由して情報伝達を行った。追加光照射システム66が受信した情報のうち、追加シグナル光に関する情報は追加シグナル光照射システム40に振り分けられ、追加緩和光に関する情報は追加緩和光照射システム56に振り分けられる。追加シグナル光の1号照射ユニットと2号照射ユニットには、発光波長帯がそれぞれ400nmから480nmと620nmから710nmの発光素子を接続した。追加緩和光照射システム56には、1号照射ユニット56-1と2号照射ユニット56-2を設置した。追加緩和光の1号照射ユニット56-1と2号照射ユニット56-2には、発光波長帯がそれぞれ400nmから480nmと600nmから710nmの発光素子を接続した。
【0131】
表1に、各パラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6)を示す。追加光制御システム74は、表1の光パラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6)を、追加シグナル光照射システム40と追加緩和光照射システム56にそれぞれの信号を配信する。1号追加シグナル光照射ユニット40-1と2号照射ユニット40-2は、T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5で指定されている光パラメータのシグナル光を発光した。1号緩和光照射ユニット56-1と2号緩和光照射ユニット56-2は、T6で指定される追加緩和光を発光した。
【0132】
ここで、T、ΔT1ΔT2及び、ΔT3は図1について説明したのと同様の意味である。
【表1】
【0133】
本実施例1によれば、栽培サイトにおける生育と有用成分生産の両方を促進できる追加シグナル光と追加緩和光を照射することが可能である。
【0134】
<実施例2>
実施例2では、複数の栽培サイトで追加光の照射を行った。実施例2では、追加光を、第1号栽培サイトから第4号栽培サイトまでの4箇所の栽培サイト内で照射するために、追加シグナル光制御システム30-1~4と追加シグナル光照射システム40-1~4で構成された植物栽培システムを構築した。実施例2では、図11に例示したタイプの追加光制御部72を備えた植物栽培システムを構築した。
【0135】
追加シグナル光制御システム30-1~4と追加シグナル光照射システム40-1~4は、無線通信機器を経由して情報伝達を行った。追加光照射システムが受信した情報のうち、追加シグナル光に関する情報は追加シグナル光照射ユニット40-1~4に振り分けられ、追加緩和光に関する情報は追加緩和光照射ユニット56-1~4に振り分けられる。追加シグナル光照射システム40の第1号から第4号追加シグナル光照射システム40-1~4には、発光波長帯がそれぞれ400nmから430nm、460nmから500nm、530nmから600nm、630nmから700nmの発光素子が接続されている。追加緩和光の第1号から第4号追加緩和光照射ユニット56-1~4には、発光波長帯がそれぞれ400nmから430nm、460nmから500nm、530nmから600nm、630nmから700nmの発光素子が接続されている。
【0136】
表1に、追加シグナル光制御システム30の第1号から第4号までの栽培サイトに対する追加シグナル光制御システム30-1~4に係る光パラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6)を示す。追加シグナル光照射システム40は、表1の光パラメータ(T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6)を受信し、追加シグナル光照射システム40と追加緩和光照射システム56にそれぞれの信号を配信した。1号追加シグナル光照射ユニット40-1と2号追加シグナル光照射ユニット40-2は、T、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5で指定されている光パラメータのシグナル光を発光した。1号緩和光照射ユニット56-1と2号緩和光照射ユニット56-2は、T6で指定される追加緩和光を発光した。
表2に、追加シグナル光制御システム30の、第1号から第4号までの栽培サイトに対する追加シグナル光制御システム30-1~4に係る光パラメータを示す。第1号から第4号までの栽培サイト内の追加シグナル光照射システム40-1~4と追加緩和光照射システム56-1~4は、表2で指定されたパラメータ(光パラメータ)を受信し、同じく表2で指定されている光パラメータの追加シグナル光と追加緩和光を発光した。
【0137】
ここで、T、ΔT1ΔT2及び、ΔT3は図1について説明したのと同様の意味である。
【0138】
【表2】
【0139】
本実施例2によれば、複数の栽培サイトにおける生育と有用成分生産の両方を促進できる追加シグナル光を照射することが可能である。
【0140】
<実施形態及び実施例から抽出可能な発明>
(1)植物の光合成に必要な光を照射する植物栽培システム(植物栽培装置10に採用された植物栽培システムなど)であって、
光合成を担っている主光とは異なる追加光(追加シグナル光、追加緩和光など)を照射するための追加光制御部(追加光制御部60、62、72など)を備え、
前記追加光制御部が、
光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光の発光条件(パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6など)を制御する植物栽培システム。
(2)前記追加光制御部には、
植物の生育と有用物質生産のそれぞれの促進に効果がある複数の前記発光条件があらかじめ記録されており、
前記追加光制御部は、
栽培計画に最も適した前記発光条件に基づき追加光を出力する追加光光源(追加シグナル光光源24、追加緩和光光源26など)を駆動する、上記(1)に記載の植物栽培システム。
(3)前記追加シグナル光の前記発光条件が、光強度、光強度の時間変化、波長範囲、照射期間、照射時間帯の少なくとも1つである上記(2)に記載の植物栽培システム。
(4)前記追加光制御部は、
追加光の照射のための追加光照射システム(追加シグナル光照射システム40など)と、
前記追加光照射システムに前記発光条件を伝達する追加光制御システム(追加シグナル光制御システム30など)と、を備え、
前記追加光照射システムと前記追加光制御システムは有線または無線で通信可能に接続されていている、上記(1)~(3)の何れか一項に記載の植物栽培システム。
(5)植物の光合成に必要な光を照射する植物栽培装置(植物栽培装置10など)であって、
光合成を担っている主光とは異なる追加光(追加シグナル光、追加緩和光など)を照射するための追加光制御部(追加光制御部60、62、72など)を備え、
前記追加光制御部が、
光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光の発光条件(パラメータT、ΔT1、ΔT2、ΔT3、T4、T5、T6など)を制御する植物栽培装置。
(6)上記(1)に記載の植物栽培システム又は上記(5)に記載の植物栽培装置(植物栽培装置10など)と、
前記植物の生育状況を検出する検出部(検出部92など)と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記植物の生育状況を示す情報を、ユーザーのコンピュータ機器(生産者端末90など)に送信する生育情報送信部(管理サーバ86など)と、を備えた植物栽培支援システム。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本願発明の植物栽培システムは、露地栽培、ハウス栽培、植物工場栽培、水面および水中における植物栽培に有効である。光合成を行っているあらゆる植物に対して成長促進効果があるので、レタスや、紫蘇、バジル等の葉物、イチゴ等の果樹類、稲や小麦等の穀物、ワカメ等の海藻類、ヒトエグサやユーグレナ等の緑藻類、等の生産効率向上や生産コスト低減に利用できる。
【符号の説明】
【0142】
10 :植物栽培装置
12 :栽培床
14 :光照射部
16 :照射光制御部
18 :保護部材
20 :主光光源
22 :追加光光源
24 :追加シグナル光光源
26 :追加緩和光光源
30 :追加シグナル光制御システム
30-1~N:追加シグナル光制御ユニット
30-1~M:追加シグナル光制御システム
40 :追加シグナル光照射システム
40-1~N:追加シグナル光制御ユニット
40-1~M:追加シグナル光制御システム
52 :追加シグナル光制御部
58 :追加緩和光制御部
60、62、72 :追加光制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11