(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】動物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/873 20100101AFI20241029BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20241029BHJP
A01K 67/027 20240101ALI20241029BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12N15/873 Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/0735
A01K67/027
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2022553625
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2020101681
(87)【国際公開番号】W WO2021174742
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】202010151592.2
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010375045.2
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522352650
【氏名又は名称】広州明訊生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MINGCELER BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101 Of Building 3&4,9 Yayingshi Road,Huangpu District Guangzhou,Guangdong 510525,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】呉光明
(72)【発明者】
【氏名】陳捷凱
(72)【発明者】
【氏名】呉凱▲しぃん▼
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159878(JP,A)
【文献】特開2002-325570(JP,A)
【文献】特開2002-320428(JP,A)
【文献】特開平01-300896(JP,A)
【文献】特開2006-296440(JP,A)
【文献】特開2007-181418(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052759(WO,A1)
【文献】Reproduction,2005年07月,vol. 130,53-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒトキメラ胚の製造方法であって、前記方法は
非ヒト四倍体胚と
非ヒト胚性幹細胞を凝集させ新たな再構成胚又はキメラ胚を形成することを含み、前記四倍体胚は2-細胞期にある四倍体胚であり、
前記方法は、四倍体補償法又は四倍体胚相補法を使用し、
前記方法は
(1)
非ヒト動物の2-細胞胚を取得するステップと、
(2)ステップ(1)に記載の2-細胞胚を融合液に入れ、融合させ、四倍体胚を取得するステップと、
(3)ステップ(2)における四倍体胚を培地に入れて培養するステップと、
(4)ステップ(3)における2-細胞期に発育した四倍体胚を
非ヒト胚性幹細胞と凝集させ、キメラ胚を形成するステップと、を含み、
前記方法は、0.27Mのマンニトール、0.2mMのMgSO
4、0.2mMのCaCl
2及び3mg/mLのウシ血清アルブミンを含む電気融合液を使用し、
前記ステップ(3)において、前記四倍体胚を約8~24時間培養し、前記ステップ(3)における培地はKSOM培地である、キメラ胚の製造方法。
【請求項2】
非ヒト動物の製造方法であって、前記方法は
非ヒト四倍体胚と
非ヒト胚性幹細胞を凝集させ新たな再構成胚又はキメラ胚を形成することを含み、前記四倍体胚は2-細胞期にある四倍体胚であり、
前記方法は、四倍体補償法又は四倍体胚相補法を使用し、
前記方法は
(1)
非ヒト動物の2-細胞胚を取得するステップと、
(2)ステップ(1)に記載の2-細胞胚を融合液に入れ、融合させ、四倍体胚を取得するステップと、
(3)ステップ(2)における四倍体胚を培地に入れて培養するステップと、
(4)ステップ(3)における2-細胞期に発育した四倍体胚を
非ヒト胚性幹細胞と凝集させ、キメラ胚を形成するステップと、
(5)前記キメラ胚を動物に注入するステップと、を含み、
前記方法は、0.27Mのマンニトール、0.2mMのMgSO
4、0.2mMのCaCl
2及び3mg/mLのウシ血清アルブミンを含む電気融合液を使用し、
前記ステップ(3)において、前記四倍体胚を約8~24時間培養し、前記ステップ(3)における培地はKSOM培地である、非ヒト動物の製造方法。
【請求項3】
前記動物がブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン及びサルから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記動物がネズミから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記胚性幹細胞が、互いに連結された5’相同性アーム配列、ヒト由来ACE2遺伝子断片、SV40 polyA配列及び3’相同性アームを含むターゲッティングベクターを使用することによって調製され、
前記5’相同性アームが、SEQ ID NO:15で示される配列を含み、前記ACE2遺伝子のCDS領域がSEQ ID NO:12で示される配列を含み、前記SV40 polyAがSEQ ID NO:14で示される配列を含み、前記3’相同性アームがSEQ ID NO:16で示される配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記5’相同性アーム配列、前記ヒト由来ACE2遺伝子断片及び前記SV40 polyA配列が、プライマー組み合わせを使用して前記ターゲッティングベクターに連結されて挿入され、
前記プライマー組み合わせが、
SEQ ID NO:19で示される上流プライマー及びSEQ ID NO:20で示される下流プライマー、
SEQ ID NO:21で示される上流プライマー及びSEQ ID NO:22で示される下流プライマー、
SEQ ID NO:23で示される上流プライマー及びSEQ ID NO:24で示される下流プライマー、及び
SEQ ID NO:25で示される上流プライマー及びSEQ ID NO:26で示される下流プライマー
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ターゲッティングベクターは、動物目的遺伝子プロモーターを利用してヒト目的遺伝子の発現を開始させるように、ヒト由来ACE2遺伝子のCDS配列を動物遺伝子のプロモーター及び5’UTR領域配列に挿入するために用いられ、前記SV40 PolyAが前記CDS領域の下流に配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ターゲッティングベクターは、SEQ ID NO:17に示される配列を有するスクリーニングマーカーPGK-Puroをさらに含み、及び/又は前記ターゲッティングベクターは、SEQ ID NO:18で示される配列を有するFrt部位をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ターゲッティングベクターの各配列断片の連結順序は順に5’相同性アーム配列、ヒト由来ACE2遺伝子断片、SV40 polyA配列、frt配列、PGK-Puro配列、frt配列及び3’相同性アーム配列である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
(1)前記ターゲッティングベクターを製造するステップと、
(2)前記ターゲッティングベクター、及びsgRNAが連結されたベクターを動物由来の
非ヒト胚性幹細胞に導入するステップと、
(3)ステップ(2)において胚性幹細胞を培養して細胞株又は細胞系統を得るステップと、を含み、
前記sgRNAがSEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:2で示される配列を有するsgRNAの群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項2に記載の方法で製造された非ヒト動物。
【請求項12】
請求項2に記載の方法で得られた非ヒト動物又はその子孫
を、
(a)ヒト抗体の製造
に使用し、
(b)薬理学、免疫学、微生物学及び医学研究のモデル
として使用し、
(c)動物実験疾患モデル
を生産及び利用
することによる病原学研究及び/又は新たな診断戦略及び/又は治療戦略の開発
のために使用し、又は
(d)ACE2遺伝子機能、ACE2抗体、ACE2標的に対する薬物のスクリーニング
及びその薬効を検証、評価
若しくは研究
するために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は生物医薬の分野に属し、動物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実験動物疾患モデルはヒト疾患の発生原因、発症メカニズム、予防治療技術及び治療薬物の開発に対して不可欠な研究ツールである。一般的な実験動物は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、サル、ブタ及び魚などを含む。しかしながら、ヒトと動物では遺伝子及びタンパク質配列に依然として多くの差異が存在し、多くのヒトタンパク質は動物の相同タンパク質と結合して生物活性を生成することができず、多くの臨床試験の結果も動物実験の結果と一致しない。
【0003】
遺伝子工学技術の継続的な発展及び成熟に伴い、ヒト細胞又は遺伝子で動物の内因性同類細胞又は遺伝子を代替するか又は置換することにより、ヒトにより近い生物系又は疾患モデルを確立し、ヒト化実験動物モデル(humanized animal model)を確立することは、既に臨床的に新しい治療方法又は手段に重要なツールが提供されている。ここで、遺伝子ヒト化動物モデルは、すなわち遺伝子操作技術を利用して、ヒトの正常又は突然変異遺伝子で動物の同類遺伝子を代替し、動物体内でヒトにより近い正常又は突然変異を確立することができる。ヒト遺伝子断片の存在により、動物体内にヒト機能を含有するタンパク質を発現するか又は部分的に発現することができ、それによりヒトと動物の臨床実験の差異を大幅に減少させ、動物レベルで薬物スクリーニングを行うことに可能性を提供する。
【0004】
2019-nCoVは、SARSコロナウイルスと同様に、アンジオテンシン変換酵素2(Angiotensin-converting enzyme 2、ACE2)をヒトに感染する重要なターゲットとし、ここで、2019-nCoVはヒトに感染する以外に様々な哺乳動物、例えばサル、ブタ、ウサギ、フェレット、オランウータン等に感染することができるが、マウス及びラットを除く。サル、ブタ及びウサギ等は動物モデルとして2019-nCoVを感染させて薬物スクリーニングとして用いられ、その成長周期が長くかつ体型が大きく大量に操作しにくく、大量に操作しやすいマウスモデルは2019-nCoVに感染させにくい。
【0005】
四倍体とは、細胞に含まれる染色体が最小染色体セット数の四倍であり、すなわち細胞に四つの完全な染色体セットを有する生物個体又は細胞である。自然条件下で、哺乳動物の四倍体胚の発生率が非常に低くかつ一般的に単独の個体に正常に発育することができない。
【0006】
一定数量の胚性幹細胞(ES)細胞と四倍体胚をキメラ化し、そのキメラの発育過程において、ES細胞と四倍体胚はランダムに分布せず、すなわちその四倍体胚部分は卵黄嚢内胚葉と胎盤栄養膜細胞(例えば絨毛膜外胚葉、栄養膜細胞など)などの胚体外組織の形成のみに関与し、ES細胞は胚様体、尿膜、羊膜、卵黄嚢中胚葉と絨毛膜中胚葉部分の生成に広く関与し、卵黄嚢内胚葉と胎盤栄養膜細胞系譜の生成に関与せず、すなわち両者の発育能は相補性を有し、このような現象は四倍体相補技術と呼ばれる。
【0007】
この技術によってクローニングされた動物個体は、完全にES細胞から発育されたものであり、ES動物と呼ばれる。細胞核移植方法により製造されたクローン胚を代理母に移植した後に胎児の出生率は1~2%と非常に低く、四倍体補償技術により、すなわちESC細胞系を嚢胚期の四倍体胚ベクターに注射すると、胎児の出生率を20~30%に向上させることができ、動物クローンの効率を顕著に向上させる。近年、国内外の多くの科学者はいずれもこの技術を鋭意研究し、多くの創造的な研究成果を取得した。四倍体補償技術により生成された動物モデルは非常に一般的に応用され、例えば系譜特異的な遺伝子機能の特定、胚体外組織及び胚組織の遺伝子機能の分析、細胞の自発及び非自発的遺伝子機能の識別、メジャーとマイナー欠陥の区別、表現型分析の促進などである。胚キメラの応用は初期胚発育の研究に限定されず、出生後の胎児発育、身体機能の研究にも応用することができる。キメラと分子ツールを組み合わせて使用する場合、このような分子ツールは細胞において時間及び系譜特異的な方式で遺伝活性を修飾することができ、遺伝子機能の正確、詳細かつ大規模な分析に利便性を提供する。条件付きで遺伝子発現を変化させる方式で遺伝活動(Nagy 2000)を変化させたり、遺伝子機能を調節したりすることができる。現在、ES細胞の発育能に対する評価は、主にin vitroでの細胞分化の研究、及び細胞多能性を反映する分子マーカーの転写活性の分析に焦点を当てている。胚キメラの一つの独特な特徴は、外来細胞が胚にキメラ化することができ、細胞が胚の発育過程において分化能を十分に励起することができることである。細胞は全面的な細胞系譜の試験を受け、これは多能性の真の程度をより明らかにすることができる。キメラは、哺乳類動物の多能性を予測するための細胞in vivo評価において最も全面的で最も厳密な重要なツールである。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの実施形態において、本開示は、動物の出生率を向上させることができる製造方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本開示は、動物四倍体補償又は相補方法(tetraploid embryo complementation)を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、四倍体胚と胚性幹細胞を重合させ新たな再構成胚又はキメラ胚を形成することを含み、前記四倍体胚は2-細胞期にある四倍体胚である、動物の製造方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記胚性幹細胞は、継代数がp15世代以内の胚性幹細胞である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記胚性幹細胞は、継代数がp12-p15世代の胚性幹細胞である。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記方法は、四倍体補償法又は四倍体胚相補法(tetraploid embryo complementation)を使用する。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記方法は、(1)動物の2-細胞胚を取得するステップと、(2)ステップ(1)に記載の2-細胞胚を融合液に入れ、融合させ、四倍体胚を取得するステップと、(3)ステップ(2)における四倍体胚を培地に入れて培養するステップと、(4)ステップ(3)における2-細胞期に発育した四倍体胚を胚性幹細胞と重合させ、キメラ胚を形成するステップと、(5)ステップ(4)におけるキメラ胚を偽妊娠した動物子宮に移植し、胚を満期妊娠に発育させることにより、動物を取得するステップと、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)における培養時間は8-24時間である。
【0016】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)における培地はKSOM培地である。
【0017】
いくつかの実施形態において、該レシピエント胚に由来する非ヒト動物はヒト以外の任意の動物であってもよく、例えば、ブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルである。同時に、レシピエントに移植された細胞の元の供給源として用いられる哺乳動物は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物であってもよく、例えば、ブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、サル、マーモセット、ボノボ等である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記動物は非ヒト哺乳動物である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記動物はネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。
【0022】
従来の技術によると、動物を製造するための現在の技術は実際の応用の要件を満たすことが困難である。例えば、マウスの製造において、早期研究によると、マウスの四倍体胚は正常に発育できず、胎盤の栄養膜及び胚外内胚葉しか形成することができず(Tarkowski et al.,1977)、胚性幹細胞は胎児自体全体、及び卵黄嚢の中胚葉、羊膜、尿膜、臍帯等を形成することができるが、栄養膜及び卵黄嚢内胚葉を形成する能力は非常に限られている(Beddington et al.,1989)。四倍体補償技術はこのような完璧な相補関係に基づいて生み出されたものであり、最も極端な場合に、最高品質の純粋系遺伝的背景の胚性幹細胞を使用すると、胎児の出生率が最高で15%に達することができるが、これらのマウスは出生した直後に全て死亡した(Nagy et al.,1990)。
【0023】
その後に、人々は早期継代のF1遺伝的背景の胚性幹細胞を使用して得られたキメラ胚は満期まで発育し成年まで生きることができるが、効率がわずか3.8%であることを判明した(Nagy et al.,1993)。その後に、遺伝子ターゲッティング後のF 1胚性幹細胞は再クローニングされた後に生存率が5-15%に達することができるが、純粋系の胚性幹細胞で製造されたマウスの生存率は依然として0-1.4%に過ぎなかったことが報告された(Eggan et al.,2001)。2006年、Guy S Eakin et al.は胚性幹細胞と二倍体又は四倍体との凝集を利用してマウスを生成する方法を発表した(Eakin and Hadjantonakis,2006)。また、その他の方法文献(Gertsenstein,2015;Kang and Gao,2015;Li et al.,2015;Shinozawa et al.,2006;Tanaka et al.,2009;Wen et al.,2014;Yamaguchi et al.,2018;Zhao et al.,2009;Zhao et al.,2010)が挙げられる。2009年に、Michal J.Boland et al.は四倍体補償技術を利用してマウス誘導多能性幹細胞から生成されたマウスの出生率は0-7%であり、多くは0%であった(Boland et al.,2009)。中でも、Zhou Qiが国際ジャーナルNATUREで発表した出生率もわずか0-3%であった(Zhao et al.,2009)。F1背景の胚性幹細胞は大量の細胞株のスクリーニング、技術改善、及び再クローニングにより、四倍体補償技術によりマウスの生成効率が向上したが、F1は理想的な遺伝的背景ではなく、該技術も依然として実際の応用の要件を満たしにくく、特に純粋系の胚性幹細胞を用いて四倍体補償技術により遺伝子組換えマウスを直接的に製造することは依然として大きな困難に直面する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記動物の製造方法を使用した、遺伝子編集動物の製造方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子的にヒト化された動物である。いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記げっ歯類動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミである。
【0025】
遺伝子編集マウスの取得は、通常、多能性幹細胞の嚢胚注射、受精卵注射直接編集、体細胞核移植、四倍体補償技術等の複数種がある。中でも、多能性幹細胞の嚢胚注射は、生殖細胞系列を介して伝達されたキメラマウスを取得してさらに継代増殖を行ってホモ接合マウスを取得する必要があり、5ヶ月以上の時間を必要とする。受精卵注射は、一般的に遺伝子ノックアウト編集に用いられ、遺伝子編集ポリシーが制限されかつ技術的に操作の難易度が大きく、その後に生まれたマウスを同定する必要があり、必ずしも目的とするマウスを直接的に取得できるわけではない。体細胞核移植と四倍体補償技術は、いずれもホモ接合体である遺伝子編集マウスを直接的に取得することができるが、二種類の方法の生存率がいずれも低く、10%以下であり、一般的に1%程度である。そして、体細胞核の移動操作の難易度が大きく、マイクロインジェクションは胚に与えるダメージが大きく、四倍体補償法は胚に直接的なダメージを与えない。遺伝子編集マウスを直接的に取得することに関して、四倍体補償技術は体細胞核移植操作に対して簡単であり、効率が高く、遺伝子編集動物を取得する時間が短く、かつ多能性幹細胞に遺伝子編集を行うことが比較的に容易である。
【0026】
いくつかの実施形態において、遺伝子マウスの製造方法を提供し、前記方法は、(1)マウスの2-細胞胚を取得するステップと、(2)ステップ(1)に記載の2-細胞胚を融合液に入れ、融合させ、四倍体胚を取得するステップと、(3)ステップ(2)における四倍体胚を培地に入れて培養するステップと、(4)ステップ(3)における2-細胞期に発育した四倍体胚を胚性幹細胞と重合させ、キメラ胚を形成するステップと、(5)ステップ(4)におけるキメラ胚を偽妊娠したマウスの子宮に移植し、胚を満期妊娠に発育させることにより、遺伝子編集マウスを取得するステップと、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記方法は、胚性幹細胞及び四倍体胚を重合させ新たな再構成胚を形成することを含む。ここで、前記胚性幹細胞は一般的な胚性幹細胞であってもよく、遺伝子編集された胚性幹細胞であってもよく、例えばヒト化遺伝子の動物胚性幹細胞等であり、具体的には限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、四倍体胚と胚性幹細胞を重合させ新たな再構成胚又はキメラ胚を形成することを含み、前記四倍体胚は2-細胞期にある四倍体胚である、動物キメラ胚の製造方法を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記方法は四倍体補償法又は四倍体胚相補法を使用する。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記方法は、(1)動物の2-細胞胚を取得するステップと、(2)ステップ(1)に記載の2-細胞胚を融合液に入れ、融合させ、四倍体胚を取得するステップと、(3)ステップ(2)における四倍体胚を培地に入れて培養するステップと、(4)ステップ(3)における2-細胞期に発育した四倍体胚を胚性幹細胞と重合させ、キメラ胚を形成するステップと、を含む。いくつかの実施形態において、ステップ(3)における培養時間は8-24時間である。いくつかの実施形態において、ステップ(3)における培地はKSOM培地である。いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記方法は、2-細胞期に発育した四倍体胚を胚性幹細胞と重合させキメラ胚を得ることを含む。本発明者らはさらに意外に、2-細胞期の四倍体胚と胚性幹細胞との重合を利用し、四倍体補償技術を利用してマウスを製造する効率安定性が低く、純粋系マウスからの胚性幹細胞の効率が低いという問題を大幅に改善し、マウスの出生率を質的に向上させ、正常な胚移植に近づけ、同時に現在の最先端の遺伝子編集方法Cas9の限界性を克服し、幹細胞から胚及び成体ネズミを直接製造して表現型研究を行うことができ、ネズミの繁殖に必要な大量の時間、人力及び物資を節約し、四倍体補償技術で遺伝子組換えマウスを製造するための実用性の問題を徹底的に解決し、商業化のレベルに達することを発見した。
【0032】
いくつかの実施形態において、動物の製造方法において、成分がマンニトール、MgSO4、CaCl2及びウシ血清アルブミンを含む組成物が使用され、前記マンニトール、MgSO4、CaCl2及びウシ血清アルブミンの質量比は9~53:0.015~0.241:0.013~0.23:0.01~5である。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記方法は、成分がマンニトール、MgSO4、CaCl2及びウシ血清アルブミンを含む組成物が使用され、前記マンニトール、MgSO4、CaCl2及びウシ血清アルブミンの質量比は9~53:0.015~0.241:0.013~0.23:0.01~5である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記組成物におけるマンニトール、MgSO4、CaCl2及びウシ血清アルブミンの質量比は18~52:0.018~0.241:0.016~0.23:0.01-4である。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記組成物におけるマンニトール、MgSO4、CaCl2及びウシ血清アルブミンの質量比は27~52:0.018~0.12:0.016~0.1:1~3.5である。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、マンニトール0.05-0.29M、MgSO40.12-2mM、CaCl20.12-2mM、ウシ血清アルブミン0.01-5mg/mLという成分を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、マンニトール0.1-0.28M、MgSO40.15-2mM、CaCl20.15-2mM、ウシ血清アルブミン0.01-4mg/mLという成分を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、マンニトール0.15-0.28M、MgSO40.15-1mM、CaCl20.15-1mM、ウシ血清アルブミン1-3.5mg/mLという成分を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、マンニトール0.18-0.28M、MgSO40.15-0.5mM、CaCl20.15-0.5mM、ウシ血清アルブミン2-3.5mg/mLという成分を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、マンニトール0.2-0.28M、MgSO40.15-0.3mM、CaCl20.15-0.3mM、ウシ血清アルブミン2-3mg/mLという成分を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、マンニトール0.27M、MgSO40.2mM、CaCl20.2mM、ウシ血清アルブミン3mg/mLという成分を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記組成物を母液として、次に所望の濃度の作業液に調製してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記組成物は作業液であってもよく、調製する必要がなく、そのまま使用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、本開示は、遺伝子編集動物胚細胞又は遺伝子編集動物の製造における前記組成物の応用を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記組成物は動物の四倍体胚を製造するために用いられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記方法は、マンニトール、ウシ血清アルブミン、Mg2+及びCa2+を含む融合液が使用され、前記融合液は濃度を向上させたMg2+及びCa2+を有し、又は、前記融合液のMg2+及びCa2+の濃度はそれぞれ0.12-2mM、0.12-2mMである。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記融合液におけるマンニトール、ウシ血清アルブミンの濃度はそれぞれ0.05-0.29M、0.01-5mg/mLである。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記Mg2+及びCa2+はそれぞれMgSO4及びCaCl2に由来する。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記融合液は四倍体胚を製造するために用いられる。
【0050】
現在、四倍体の取得方法は生物法、化学法及び物理法による製造が挙げられる。マイクロマニピュレーションにより、2つの二倍体胚細胞核を1つの1-細胞期胚細胞の細胞質に注射することは操作技術に対する要求が高く、同時にマイクロマニピュレーションは胚に対する損害が大きい。サイトカラシンB又はコルヒチンを使用して卵割球細胞の分裂を抑制して四倍体を製造することは胚の発育に悪影響を与え、胚の発育を遅らせたり妨げたりすることさえある。また、センダイウイルス、ポリエチレングリコール、直流電撃等の方法を採用して細胞を融合させることができ、センダイウイルスは病原性があり、ポリエチレングリコールは毒性が残存するのに対して、電気融合法は短時間で可逆的なエレクトロポレーションが生じるだけで、化学試薬の毒性及びウイルスの病原性を排除し、四倍体胚を製造するための最も一般的で最も効率的な方法である。しかし、従来の四倍体補償技術には、胚の電気融合効率が100%に達せず、マウスを製造する効率安定性が低く、純粋系マウスからの胚性幹細胞に対する効率が低いという問題が存在する。本発明者らは研究過程において、本開示の改善された電気融合液を使用する場合の融合効率が80-90%から100%に向上することができ、大きな実用的意義を有することを意外に発見した。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記方法で製造された動物を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子編集動物から選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物から選択される。いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0053】
いくつかの実施形態において、本開示は、マンニトール、ウシ血清アルブミン、Mg2+及びCa2+を含有する融合液を提供し、前記融合液は濃度を向上させたMg2+及びCa2+を有し、又は、前記融合液のMg2+及びCa2+の濃度はそれぞれ0.12-2mM、0.12-2mMである。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記融合液体におけるマンニトール、ウシ血清アルブミンの濃度はそれぞれ0.05-0.29M、0.01-5mg/mLである。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記Mg2+及びCa2+はそれぞれMgSO4及びCaCl2に由来する。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記動物の製造方法は前記融合液を使用する。
【0057】
いくつかの実施形態において、本開示は、遺伝子編集動物又はその子孫の組織、体液、細胞、細胞核及びそれらの破砕物又は抽出物を提供し、前記動物は上記方法で構築されるものである。いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。
【0058】
ヒト由来ACE2及びネズミ由来ACE2は、遺伝子配列に一定の差異が存在するため、ウイルス感染後、ヒト由来ACE2はネズミ由来ACE2よりもSARS-CoVに対する感受性がより強く、病理学的症状がより明らかであることが文献で報告されている。現在の臨床研究では、より優れた動物モデルが緊急に必要とされている。
【0059】
hACE2遺伝子組換えマウスは2019-nCoVに感染可能で肺組織の典型的な病原性特徴が現れることが確認された(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.02.07.939389v3#disqus_thread)。hACE2遺伝子組換えマウスはhACE2の全身性過剰発現のマウスモデルであり、ACE2時空間的組織発現特徴をシミュレーションすることができない。
【0060】
いくつかの実施形態において、本開示は、マウスACE2部位でヒト化ACE2を発現させる方法で2019-nCoV感受性マウスヒト化ACE2動物モデルを大量に製造することにより、2019-nCoVに対して薬物スクリーニング及び疾患研究等の応用を行う。
【0061】
いくつかの実施形態において、本開示は、特異的なRNA断片配列を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記RNA断片配列は、単離されたRNA断片配列である。
【0063】
いくつかの実施形態において、本開示は、ACE2遺伝子を標的とする特異的sgRNA配列を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記sgRNA配列は、単離されたsgRNA配列である。いくつかの実施形態において、本開示は、ACE2遺伝子を標的とする特異的ターゲティングベクターを提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記ターゲティングベクターは、単離されたターゲティングベクターである。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示は、ACE2遺伝子ヒト化細胞株を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示は、ACE2遺伝子ヒト化細胞株の製造方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、本開示は、ACE2遺伝子ヒト化動物を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態において、本開示は、遺伝子ヒト化動物の製造方法を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本開示は、ACE2遺伝子ヒト化マウス胚性幹細胞モデルを提供する。
【0071】
いくつかの実施形態において、本開示は、SEQ ID NO:19に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:20に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとを含むプライマー組み合わせを提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記プライマー組み合わせは、SEQ ID NO:21に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:22に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとをさらに含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記プライマー組み合わせは、SEQ ID NO:23に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:24に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとをさらに含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記プライマー組み合わせは、SEQ ID NO:25に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:26に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとをさらに含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記プライマー組み合わせの、細胞株又は細胞系又は非ヒト動物の製造における応用を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記細胞は、単離された細胞である。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン又はサルから選択される。いくつかの実施形態において、前記哺乳動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物である。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記プライマー組み合わせの、ターゲッティングベクターの製造における応用を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態において、本開示は、互いに連結された5’相同性アーム配列、ヒト由来ACE2遺伝子断片及びSV40 polyA配列を含むターゲッティングベクターを提供し、前記5’相同性アームは前記対象ゲノム遺伝子座での5’標的配列と相同性を有する5’相同性アームである。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記ターゲッティングベクターは、単離されたターゲッティングベクターである。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記ターゲッティングベクターは、前記プライマー組み合わせを使用することにより、5’相同性アーム配列、ヒト由来ACE2遺伝子断片及びSV40 polyA配列を連結する。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記ターゲッティングベクターは、ヒト由来ACE2遺伝子のCDS配列を動物遺伝子のプロモーター及び5’UTR領域配列に挿入した後、動物目的遺伝子プロモーターを利用してヒト目的遺伝子の発現を起動するために用いられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記5’相同性アーム配列は、SEQ ID NO:15に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記ACE2遺伝子のCDS配列は、SEQ ID NO:12に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記SV40 polyA配列は、SEQ ID NO:14に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記SV40 polyA配列は、前記CDS配列の後に位置する。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記ターゲッティングベクターは、3’相同性アームをさらに含み、前記3’相同性アームは前記対象ゲノム遺伝子座での3’標的配列と相同性を有する3’相同性アームである。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記ターゲッティングベクターは、SEQ ID NO:17に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有するスクリーニングマーカーPGK-Puroをさらに含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記ターゲッティングベクターは、SEQ ID NO:18に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有するFrt配列をさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記ターゲッティングベクターの各配列断片の連結順序は順に5’相同性アーム配列、ヒト由来ACE2遺伝子断片、SV40 polyA配列、frt配列、PGK-Puro配列、frt配列及び3’相同性アーム配列となっている。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記哺乳動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物である。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0100】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記ターゲッティングベクターの遺伝子ヒト化動物モデルの製造における応用を提供する。前記ヒト化ACE2マウスモデルは元のマウスACE2部位が特異的に発現されたhACE2マウスモデルであり、元のmACE2の発現特徴をシミュレーションすることができ、組織特異性を有し、ヒトが2019-nCoVに感染する発症過程をより厳密にシミュレーションすることができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記哺乳動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物である。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0104】
いくつかの実施形態において、本開示は、PCR増幅により得られた産物断片である5’相同性アーム、ヒトACE2 CDS及びSV40 polyAをブリッジPCR法で連続断片5arm-hACE-SV40にPCRするステップを含む、前記ターゲッティングベクターの製造方法を提供する。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記PCRの反応系は、2×Phanta Max Bufferが約25μL、dNTP Mixが約1μL、10μM上流プライマーが約2μL、10μM下流プライマーが約2μL、DNA Polymeraseが約1μL、テンプレートチェーン5’相同性アーム、ヒトACE2 CDS、SV40 polyA断片がそれぞれ約20-200ng、50μLまでH2Oを補足し、PCR増幅反応条件が約62-68℃で開始し、各サイクルが約0.2-0.5℃下げるとされている。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記5’相同性アーム断片を増幅するために用いられるプライマーは、SEQ ID NO:19に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:20に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、前記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記ヒト由来ACE2遺伝子断片を増幅するために用いられるプライマーは、SEQ ID NO:21に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:22に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、前記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記SV40 polyA配列に使用されるプライマーは、SEQ ID NO:23に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:24に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、前記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0112】
いくつかの実施形態において、前記方法は、5arm-hACE-SV40断片に対してAgeI+MluIダブルダイジェスションを行い、3’相同性アーム断片に対してAscI+HindIIIダブルダイジェスションを行った後に、それぞれダイジェスション・ライゲーションの方法により連結することにより、ターゲッティングベクターを得るステップをさらに含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、前記3’相同性アーム断片に使用されるプライマーは、SEQ ID NO:25に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する上流プライマーと、SEQ ID NO:26に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有する下流プライマーとを含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記プライマーは、単離されたプライマーである。
【0115】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記プライマー組み合わせを使用するヒト化動物細胞株の製造方法を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態において、前記方法は前記ターゲッティングベクターを使用することを含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、前記方法はヒト目的遺伝子を動物細胞に導入することにより、目的遺伝子が動物細胞内でヒト目的遺伝子のCDSを発現することを含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記目的遺伝子はACE2である。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はネズミである。
【0120】
いくつかの実施形態において、前記細胞は胚性幹細胞である。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、(1)前記ターゲッティングベクターを製造するステップと、(2)製造されたターゲッティングベクター、及びsgRNAが連結されたベクターを動物由来の胚性幹細胞に導入するステップと、(3)ステップ(2)における胚性幹細胞をクローンに培養すれば得られるステップと、を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記sgRNAは、SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも91%又は少なくとも92%又は少なくとも93%又は少なくとも94%又は少なくとも95%又は少なくとも96%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%、又は100%の同一性を有するsgRNAを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記哺乳動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記げっ歯類動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物である。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記方法で製造されたACE2遺伝子ヒト化動物細胞株又は細胞系を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記細胞はヒト化マウス胚性幹細胞である。
【0127】
いくつかの実施形態において、本開示は、上記プライマー組み合わせを引用することを含む、非ヒト動物の製造方法を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は前記ターゲッティングベクターを使用する。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記細胞を動物体内に注入することを含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記哺乳動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記げっ歯類動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物である。
【0131】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示は、上記方法で製造された非ヒト動物を提供する。
【0133】
いくつかの実施形態において、前記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記動物はブタ、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、ウマ、イヌ、オランウータン、サルから選択される。いくつかの実施形態において、前記哺乳動物はげっ歯類動物である。いくつかの実施形態において、前記げっ歯類動物はネズミである。いくつかの実施形態において、前記動物は成体ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は胎児ネズミから選択される。いくつかの実施形態において、前記動物は遺伝子ヒト化動物である。
【0134】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子はACE2である。
【0135】
いくつかの実施形態において、前記ヒト化マウス胚性幹細胞はヒトACE2遺伝子を含み、該ヒト化マウス胚性幹細胞はマウスモデルに特異的分化又は調製された後にヒトの全長ACE2タンパク質を発現することができ、同時に内因性ACE2タンパク質の発現が減少又は消失する。
【0136】
いくつかの実施形態において、本開示は、ヒト化マウス又はその子孫の組織、体液、細胞、及びそれらの破砕物又は抽出物を提供し、前記ヒト化マウスは上記方法で製造される。
【0137】
いくつかの実施形態において、本開示は、前記製造方法で得られたヒト化動物モデル又はその子孫の、ヒト抗体の製造、又は薬理学、免疫学、微生物学及び医学研究のモデル系における応用、又は動物実験疾患モデルの生産及び利用、病原学研究及び/又は新たな診断戦略及び/又は治療戦略の開発における応用、又はACE2遺伝子機能、ACE2抗体、ACE2標的に対する薬物のスクリーニング、検証、評価または研究、薬効研究の方面における用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【
図2】pX330-sgRNA1の構築配列決定結果図である。
【
図3】pX330-sgRNA2の構築配列決定結果図である。
【
図4】pX330-sgRNA1-3の切断効率の検証結果である。
【
図5】pX330-sgRNA3の構築配列決定結果図である。
【
図6】ヒト化ACE2のターゲッティングスキームの概略図である。
【
図7】ヒト化ACE2のターゲッティングベクターの配列決定結果情報である。
【
図8】比較例1における連結された3つの断片のPCR同定図である。
【
図9】ヒト化ACE2マウス胚性幹細胞遺伝子型のPCR同定結果図である。
【
図10】PGK-Puroを削除した後のヒト化ACE2マウス胚性幹細胞遺伝子型のPCR同定結果図である。
【
図12】例8で形成されたヒト化ACE2遺伝子改造マウスの画像である。
【
図13】qPCRでヒト化ACE2マウスのhACE2の発現を測定した結果、ヒト化ACE2マウス組織がhACE2を特異的に発現し、野生型マウスがhACE2を発現しないことを示す。
【
図14】qPCRでヒト化ACE2マウスのmACE2の発現を測定した結果、hACE2マウスのmACE2の発現が欠失したことを示す。
【
図15】ウェスタンブロッティング実験でhACE2マウス及び野生型ACE2マウスの腸組織におけるhACE2タンパク質の発現を測定した結果、hACE2マウスがタンパク質レベルでhACE2タンパク質を発現したことを示す。
【
図16】例10、試験例1、例11、試験例2でマウスを製造するフローチャートである。
【
図17】例12、試験例3、例13、試験例4でマウスを製造するフローチャートである。
【
図18】例10-13のマウスの出生率を示す結果図である。
【
図19】試験例1-4のマウスの出生率を示す結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0139】
以下、具体的な実施例により本開示の技術的解決手段をさらに説明し、具体的な実施例は本開示の保護範囲を限定するものではない。他の人が本開示の概念に基づいて行ったいくつかの本質的でない修正及び調整は依然として本発明の保護範囲に属する。
【0140】
別途に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術と科学用語の定義は当業者によく知られている定義と同じである。なお、記載された内容と類似するか又は均等である任意の方法及び材料はいずれも本開示の方法に適用することができ、具体的な実施形態において好ましい方法及び材料が説明されている。
【0141】
本明細書で使用された「一」及び「一種」は文法上の不定冠詞の解釈を意味し、「一つ」、「一種」又は「複数」、「複数種」(即ち「少なくとも一つ」、「少なくとも一種」)を意味する。例えば「一要素」は、一種又は複数種の要素を意味する。
【0142】
「CDS」はコード配列(Coding sequence)の略語であり、「コード配列」は遺伝子のポリペプチド産物をコードするための任意のヌクレオチド配列を意味する。逆に、「非コード配列」という用語とは、遺伝子のポリペプチド産物をコードしない任意のヌクレオチド配列を意味する。
【0143】
「断片」という用語とは、参照核酸よりも長さが短く、共通部分に参照核酸と同じヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を意味すると理解されるべきである。適切であれば、本開示に係るこのような核酸断片は、より大きなポリヌクレオチドに含まれてもよく、該断片はより大きなポリヌクレオチドの構成成分である。このような断片は、本開示の核酸の少なくとも6、8、9、10、12、15、18、20、21、22、23、24、25、30、39、40、42、45、48、50、51、54、57、60、63、66、70、75、78、80、90、100、105、120、135、150、200、300、500、720、900、1000又は1500個の連続したヌクレオチド範囲内の長さのオリゴヌクレオチドを含み、又は選択的にこのようなオリゴヌクレオチドで構成される。
【0144】
本明細書において、文脈上別段の要求がない限り、単語「含む」、「含有する」は前記ステップ又は要素又はステップ及び要素の集合を含むと理解されるべきであるが、任意の他のステップ又は要素又はステップ及び要素の集合を排除するものではない。すなわち、開放式限定とされている。
【0145】
「対応する」とは、(a)あるポリヌクレオチドは、参照ヌクレオチド配列の全部又は一部と実質的に同一又は相補的なヌクレオチド配列を有し、又は、あるポリヌクレオチドはペプチド又はタンパク質中のアミノ酸配列と完全に同一のアミノ酸配列をコードすること、又は、(b)あるペプチド又はポリペプチドは、参照ペプチド又はタンパク質中のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有することを意味する。
【0146】
「下流」という用語とは、参照ヌクレオチド配列3’端に位置するヌクレオチド配列を意味する。特に、下流ヌクレオチド配列は、通常、転写開始点の後の配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは転写開始部位の下流に位置する。
【0147】
「上流」という用語とは、参照ヌクレオチド配列5’端に位置するヌクレオチド配列を意味する。特に、上流ヌクレオチドは、通常、コード配列又は転写開始点の5’側に位置する配列に関する。例えば、ほとんどのプロモーターは転写開始部位の上流に位置する。
【0148】
「プロモーター」とは、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を意味する。一般的に、コード配列はプロモータ配列の3’端に位置する。プロモーターは全体的に天然遺伝子に由来するか、又は天然に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成され、又は合成されたDNAセグメントを含むことさえあり得る。当業者に理解されるように、異なるプロモーターは遺伝子が異なる組織又は細胞タイプにおいて、又は発育の異なる段階において、又は異なる環境又は生理的条件に応答して発現するように指導することができる。ほとんどの細胞タイプにおいてほとんどの場合に遺伝子を発現させるプロモーターは、通常「構成型プロモーター」と呼ばれる。特定の細胞タイプにおいて遺伝子を発現させるプロモーターは、通常「細胞特異的プロモーター」又は「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。遺伝子を特定の発育又は細胞分化段階で発現させるプロモーターは、通常「発育特異的プロモーター」又は「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生体分子、化学品、リガンド、光又は類似物に細胞を暴露又はこれらの物質で細胞を処理した後に誘導され遺伝子を発現させるプロモーターは、通常「誘導型プロモーター」又は「調節型プロモーター」と呼ばれる。さらに理解されたいことは、ほとんどの場合、調節配列の正確な限界が完全に限定されていないため、異なる長さのDNAセグメントは同じプロモーター活性を有する可能性がある。
【0149】
「5’UTR」又は「5’非コード配列」又は「5’非翻訳領域(UTR)」という用語とは、コード配列の上流側(5’)に位置するDNA配列を意味する。
【0150】
「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」という用語とは、二本鎖DNA内の特定のヌクレオチド配列に結合して切断する酵素を意味する。
【0151】
「ベクター」という用語とは、それが連結された核酸分子を転移することができる核酸分子を意味する。ベクターの一種のタイプとしては「プラスミド」であり、それは他のDNAセグメントを連結可能な環状の二本鎖DNAループを意味する。別の種類のベクターとしてはウイルスベクターであり、中でも他のDNAセグメントはウイルスゲノム内に連結することができる。いくつかのベクターは、これらのベクターが導入された宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクターである)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)を宿主細胞に導入した後に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、したがって宿主ゲノムと共に複製する。なお、いくつかのベクターはそれらが操作的に連結された遺伝子を発現するように指導することができる。
【0152】
いくつかのベクターは、本開示において「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」という)と呼ばれることは、挿入された核酸配列が宿主に形質転換された後に発現できるように設計されたベクター、プラスミド又はビヒクルを意味する。要するに、組換えDNA技術に使用される発現ベクターは常にプラスミド形式である。本明細書の「プラスミド」と「ベクター」は交換して使用され、プラスミドはベクターが最も一般的に使用される形式であるためである。しかし、本開示は、同等の役割を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠陥型レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの、そのような発現ベクターの他の形式を含むことを意図する。
【0153】
「プラスミド」という用語は染色体外要素を意味し、それらは常に細胞の中心代謝の一部としない遺伝子を持ち、常に環状二本鎖DNA分子の形態をしている。このような要素は任意の由来の自律複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列、線形、環状又はスーパーコイルの、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAであってもよく、中でも多くのヌクレオチド配列は既に独特な構造に連結又は組換えされており、該構造は選択された遺伝子産物に対するプロモーター断片及びDNA配列並びに適切な3’端非翻訳配列を細胞に導入することができる。
【0154】
「ターゲティングベクター」又は「ターゲッティングベクター」は、所望の遺伝的修飾に隣接する、内因性染色体核酸配列に「相同な」配列を含むDNA構築物である。前記フランキング相同配列(「相同性アーム」と呼ばれる)は、前記相同性アームと対応する内因性配列との間に存在する相同性により、前記ターゲッティングベクターが前記ゲノムにおける特定の染色体位置に位置決めされるように指導し、「相同組換え」と呼ばれる過程により前記所望の遺伝的修飾を導入する。「ターゲティングベクター」と「ターゲッティング」は同じ意味で使用される場合がある。ターゲティングベクターを採用して挿入核酸をラット、真核、非ラット真核、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、ヒト、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、マウス又はハムスターの核酸の標的遺伝子座に導入する。前記ターゲティングベクターは前記挿入核酸を含み、さらに5’相同性アーム及び3’相同性アームを含み、前記挿入核酸が側方連結される。前記挿入核酸に側方連結された相同性アームは、ラット、真核、非ラット真核、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、ヒト、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、マウス又はハムスターの核酸の標的遺伝子座内の領域に対応する。説明を容易にするために、標的ゲノム遺伝子座内の対応する相同ゲノム領域は本明細書では「標的部位」と呼ばれる。例えば、ターゲティングベクターは第1の標的部位及び第2の標的部位に相補的な第1の相同性アーム及び第2の相同性アームにより側方連結された第1の挿入核酸を含むことができる。したがって、前記ターゲティングベクターはこれにより細胞のゲノム内の相同性アームと相補標的な部位との間で発生した相同組換えイベントを介して挿入核酸をラット、真核、非ラット真核、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、ヒト、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、マウス又はハムスターの核酸の標的遺伝子座に組み込むことに役立つ。
【0155】
一実施形態において、前記ラット、真核、非ラット真核、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、ヒト、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、マウス又はハムスターの核酸の標的遺伝子座は、5’相同性アームに相補的な第1の核酸配列及び3’相同性アームに相補的な第2の核酸配列を含む。
【0156】
ベクターは、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃又はDNAベクタートランスポーターの使用など、本分野の既知の方法により所望の宿主細胞に導入することができる(例えば、Wu et al.,1992,J.Biol.Chem.267:963-967;Wu及びWu,1988,J.Biol.Chem.263:14621-14624;及びHartmut et al.,1990年3月15日に提出されたカナダ特許出願2,012,311を参照)。
【0157】
「トランスフェクション」という用語とは、細胞が外因性又は異種のRNA又はDNAを取り込むことを意味する。外因性又は異種のRNA又はDNAが既に細胞内に導入され
た場合、該細胞はこのようなRNA又はDNAにより「トランスフェクト」される。トランスフェクトするRNA又はDNAが表現型の変化に影響を与える場合、該細胞は外因性又は異種のRNA又はDNAにより「形質転換」される。形質転換するRNA又はDNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれてもよい(共有結合されてもよい)。
【0158】
「相同性」又は「相同な」という用語は、配列、例えばヌクレオチド又はアミノ酸配列の二本の配列が最適な対照及び比較により、少なくとも約75%のヌクレオチド又はアミノ酸、少なくとも約80%のヌクレオチド又はアミノ酸、少なくとも約90-95%のヌクレオチド又はアミノ酸、例えば97%超のヌクレオチド又はアミノ酸が同一であることを意味する。当業者に理解されるように、最適な遺伝子ターゲティングのために、ターゲティング構築物は内因性DNA配列と相同なアーム(すなわち「相同性アーム」)を含むべきである。したがって、ターゲティング構築物とターゲティングされた内因性配列との間で相同組換えを発生させることができる。
【0159】
本明細書で使用されるように、2つの領域が互いに十分なレベルの配列同一性を有する場合に相同性アームと標的部位(すなわち相同ゲノム領域)は互いに相補的であり、それにより相同組換え反応のための基質として機能する。「相同性」とは、DNA配列が対応する又は「相補的な」配列と同一であるか又は配列同一性を共有することを意味する。所定の標的部位とターゲティングベクター上に見られる対応する相同性アームとの間の配列同一性は、相同組換えの発生を可能にする任意の程度の配列同一性であってもよい。例えば、ターゲティングベクターの相同性アーム(又はその断片)と標的部位(又はその断片)が共有する配列同一性の量は少なくとも51%、53%、57%、60%、65%、70%、75%、80%、83%、85%、87%、89%、91%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性であってもよく、したがって前記配列は相同組換えを経験する。なお、相同性アームと相補的標的部位との間の相補的相同領域は、切断された認識部位での相同組換えを促進するのに十分な任意の長さを有することができる。したがって、相同性アームは細胞のゲノム内の対応する標的部位と相同組換えを行うのに十分な相同性を有する。説明を容易にするために、相同性アームは本明細書において5’相同性アーム及び3’相同性アームとして言及される。該用語はターゲティングベクターにおける相同性アームと挿入核酸との相対位置に関する。
【0160】
いくつかの実施形態において、前記ターゲティングベクターの相同性アームは、対応する標的部位との相同組換えイベントを促進するのに十分な任意の長さを有することができ、例えば少なくとも5-10kb、5-15kb、10-20kb、20-30kb、30-40kb、40-50kb、50-60kb、60-70kb、70-80kb、80-90kb、90-100kb、100-110kb、110-120kb、120-130kb、130-140kb、140-150kb、150-160kb、160-170kb、170-180kb、180-190kb、190-200kbの長さ又はそれ以上の長さを含む。以下にさらに詳細に説明するように、ターゲティングベクターはより大きい長さのターゲティングアームを採用することができる。特定の実施形態において、5’相同性アーム及び3’相同性アームの合計は少なくとも10kbであり、又は5’相同性アーム及び3’相同性アームの合計は少なくとも約16kb-約100kbであり、又は約30kb-約100kbであり、他の実施形態において、前記ACE2の5’相同性アーム及び3’相同性アームの合計のサイズは約10kb-約150kb、約10kb-約100kb、約10kb-約75kb、約20kb-約150kb、約20kb-約100kb、約20kb-約75kb、約30kb-約150kb、約30kb-約100kb、約30kb-約75kb、約40kb-約150kb、約40kb-約100kb、約40kb-約75kb、約50kb-約150kb、約50kb-約100kb、又は約50kb-約75kb、約10kb-約30kb、約20kb-約40kb、約40kb-約60kb、約60kb-約80kb、約80kb-約100kb、約100kb-約120kb又は約120kb-約150kbである。
【0161】
本明細書におけるいくつかの実施例はヒト化遺伝子編集哺乳動物に関し、前記ヒト化遺伝子編集哺乳動物のゲノムはヒトの全長ACE2タンパク質をコードするポリリボ核酸を含む。例えば、前記ポリリボ核酸は、プロモーターポリリボ核酸に操作可能に連結される。いくつかの実施形態において、ヒト化遺伝子編集哺乳動物は、ヒト化遺伝子編集哺乳動物の内因性ACE2タンパク質をコードするポリリボ核酸の全部または一部を発現せず、ヒトACE2タンパク質をコードする前記ポリリボ核酸は、ヒトACE2タンパク質の修飾を含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、前記細胞は多能性細胞、非多能性細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類動物細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、非ヒト多能性細胞、ヒト多能性細胞、げっ歯類動物多能性細胞又は線維芽細胞又は肺細胞である。
【0163】
いくつかの上記方法において、前記細胞は初代細胞又は不死化細胞である。いくつかの上記方法において、前記げっ歯類動物の多能性細胞はマウス又はラット胚性幹(ES)細胞である。
【0164】
いくつかの上記方法において、前記動物細胞又は前記ヒト細胞は、初代細胞又は不死化細胞である。いくつかの上記方法において、前記動物細胞又は前記ヒト細胞は多能性細胞である。いくつかの上記方法において、前記動物の多能性細胞はマウス胚性幹(ES)細胞である。いくつかの上記方法において、前記ヒトの多能性細胞はヒト胚性幹(ES)細胞、ヒト成体幹細胞、発育が制限されたヒト前駆細胞又はヒト人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書におけるいくつかの実施例は、ヒト化遺伝子編集細胞を提供し、特に単離されたヒト及び非ヒト全能性又は多能性幹細胞、特にマウス胚性幹細胞をさらに提供し、それは一種又は複数種のin vitroでの連続的な遺伝子修飾の後に多能性を維持するとともに生殖細胞系列を介して前記標的遺伝子修飾を子孫に伝えることができる。
【0166】
本明細書で使用される「胚性幹細胞」または「ES細胞」という用語は、胚への導入後に胚の任意の組織の発育を促進することができる胚由来の全能性または多能性細胞を含む。本明細書で使用される「多能性細胞」という用語は、分化細胞の2つ以上のタイプに発育する能力を有する未分化細胞を含む。「非多能性細胞」という用語は、多能性細胞ではない細胞を含む。
【0167】
いくつかの上記方法において、前記標的遺伝子編集は、前記対象ゲノム遺伝子座における内因性核酸配列の欠失又は前記対象ゲノム遺伝子座における前記核酸の挿入を同時に含む。
【0168】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子修飾又は遺伝子編集は、細胞(例えば、真核細胞、非ラット真核細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、多能性細胞、非多能性細胞、非ヒト多能性細胞、ヒト多能性細胞、ヒトES細胞、ヒト成体幹細胞、発育が制限されたヒト前駆細胞、ヒトiPS細胞、ヒト細胞、げっ歯類動物細胞、非ラットげっ歯類動物細胞、ラット細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、線維芽細胞又はチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞)に対して独立して実施された2種又は複数種の修飾を含む。第1の修飾は、エレクトロポレーション又は本分野の既知の任意の他の方法により実現することができる。続いて、適切な第2の核酸構築物を使用して、同一の細胞ゲノムに対して第2の修飾を行う。前記第3の修飾は第2のエレクトロポレーション又は本分野の既知の任意の他の方法により実現することができる。様々な実施形態において、同一細胞の第1の遺伝子修飾及び第2の遺伝子修飾の後に、例えば連続エレクトロポレーション又は本分野の既知の任意の他の適切な方法を使用して(連続的に)第3の遺伝子修飾、第4の遺伝子修飾、第5の遺伝子修飾、第6の遺伝子修飾等の連続的な修飾を実現することができる(一つの遺伝子修飾は他の遺伝子修飾に追従する)。
【0169】
いくつかの実施形態において、本開示は、ターゲッティングベクターの相同組換え方法で遺伝子の編集を行い、外因性核酸を内因性ゲノムに挿入する。
【0170】
いくつかの実施形態において、前記挿入核酸は、真核、非ラット真核、哺乳動物、ヒト又は非ヒト哺乳動物の核酸配列について、相同又はオーソロガスのヒト核酸配列を挿入するか、又はそれらで置換することを含む。
【0171】
いくつかの実施形態において、前記所定の挿入されたポリヌクレオチドは、例えば、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、ラット、マウス、ハムスター、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、真核生物、非ラット真核生物、ヒト、農業動物又は家畜動物を含む任意の生物に由来することができる。
【0172】
特定の実施形態において、前記挿入核酸はラット由来の核酸を含むことができ、それはゲノムDNAの断片、CDNA、調節領域又はその任意の部分又は組み合わせを含むことができる。他の実施形態において、前記核酸は真核生物、非ラット真核生物、哺乳動物、ヒト、非ヒト哺乳動物、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類動物(例えば、マーモセット、アカゲザル)、家畜哺乳動物又は農業哺乳動物又は任意の他の目標生体からの核酸を含むことができる。本明細書でより詳細に概説するように、様々な方法及び組成物に採用された核酸の挿入は対象標的遺伝子座の「ヒト化」を引き起こすことができる。
【0173】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子修飾は核酸配列の付加である。いくつかの実施形態において、前記挿入核酸はコード配列における遺伝子修飾を含む。いくつかの実施形態において、前記遺伝子修飾はコード配列の欠失突然変異を含む。いくつかの実施形態において、前記遺伝子修飾は2種類の内因性コード配列の融合を含む。いくつかの実施形態において、前記挿入核酸は、真核、非ラット真核、哺乳動物、ヒト又は非ヒト哺乳動物の核酸配列について、相同又はオーソロガスのヒト核酸配列を挿入するか、又はそれらで置換することを含む。いくつかの実施形態において、前記挿入核酸は、対応するマウスDNA配列を含む内因性マウス遺伝子コード領域に相同又はオーソロガスのヒト核酸配列を挿入するか又はマウスDNA配列を置換することを含む。いくつかの実施形態において、前記挿入核酸は、対応するマウスDNA配列を含む内因性マウス遺伝子コード領域に相同又はオーソロガスのヒト核酸配列を挿入するか又はマウスDNA配列を置換することを含む。いくつかの実施形態において、ターゲッティングベクターを利用し、マウスACE2部位に対して、mACE2に隣接するEXON1 CDS開始ATG部位にhACE2配列を挿入する。
【0174】
いくつかの実施形態において、前記ターゲティングベクターの核酸配列は、ゲノムに組み込む時に哺乳動物、ヒト又は非ヒト哺乳動物のACE2遺伝子座の領域の遺伝子修飾を生成するポリヌクレオチドを含むことができ、ここで、ACE2遺伝子座での遺伝子修飾はACE2活性の減少、ACE2活性の増加又はACE2活性の調整を引き起こす。いくつかの実施形態において、ACE2遺伝子が完全に置換されるように生成する。
【0175】
いくつかの実施形態において、前記挿入核酸は、調節エレメントを含むことができ、例えばプロモータ、エンハンサー又は転写を含む。
【0176】
いくつかの実施形態において、所定の挿入されたポリヌクレオチド及び/又は哺乳動物、ヒト細胞又は非ヒト哺乳動物の遺伝子座の対応する置換領域は、コード領域、イントロン、エクソン、非翻訳領域、調節領域、プロモーター又はエンハンサー又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0177】
本明細書は、1種又は複数種の対象ポリヌクレオチドの標的遺伝子座への標的化組込みを可能にする方法であって、上記で概説したように配列を導入することにより遺伝子編集細胞を生成する方法を提供する。「導入」は、配列が細胞の内部に入るように、配列(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を細胞に提示する。
【0178】
任意の生体由来の任意の細胞は本明細書の提供する方法に用いることができる。特定の実施形態において、前記細胞は、真核生物、非ラット真核生物、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、ヒト、げっ歯類動物、非ラットげっ歯類動物、ラット、マウス又はハムスターに由来する。特定の実施形態において、前記細胞は、真核細胞、非ラット真核細胞、多能性細胞、非多能性細胞、非ヒト多能性細胞、非ヒト哺乳動物細胞、ヒト多能性細胞、ヒトES細胞、ヒト成体幹細胞、発育が制限されたヒト前駆細胞、ヒト人工多能性細胞(iPS)細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、線維芽細胞、げっ歯類動物細胞、非ラットげっ歯類動物細胞、ラット細胞、マウス細胞、マウスES細胞、ハムスター細胞又はCHO細胞である。
【0179】
いくつかの実施形態において、前記方法で採用された細胞はその遺伝子座に安定的に組み込まれたDNA構築物を有する。「安定的に組み込まれる」又は「安定的に導入される」とはポリヌクレオチドを細胞に導入することを意味し、したがってヌクレオチド配列が細胞のゲノムに組み込まれその子孫によって継承され得る。
【0180】
いくつかの実施形態において、細胞に1種又は複数種のポリヌクレオチドは、エレクトロポレーション、細胞質内注射、ウイルス感染、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、トランスフェクション、脂質媒介性トランスフェクション、又はNucleofectionTM媒介を経由して細胞に導入される。
【0181】
いくつかの実施形態において、前記発現構築物は前記導入された核酸と共に導入される。
【0182】
いくつかの実施形態において、前記細胞に前記1種又は複数種のポリヌクレオチドを導入することは一定の時間で複数回実行することができる。いくつかの実施形態において、前記細胞に前記1種又は複数種のポリヌクレオチドを導入することは一定の時間で少なくとも2回実行し、一定の時間で少なくとも3回実行し、一定の時間で少なくとも4回実行し、一定の時間で少なくとも5回実行し、一定の時間で少なくとも6回実行し、一定の時間で少なくとも7回実行し、一定の時間で少なくとも8回実行し、一定の時間で少なくとも9回実行し、一定の時間で少なくとも10回実行し、一定の時間で少なくとも11回実行し、一定の時間で少なくとも12回実行し、一定の時間で少なくとも13回実行し、一定の時間で少なくとも14回実行し、一定の時間で少なくとも15回実行し、一定の時間で少なくとも16回実行し、一定の時間で少なくとも17回実行し、一定の時間で少なくとも18回実行し、一定の時間で少なくとも19回実行し、又は一定の時間で少なくとも20回実行することができる。
【0183】
いくつかの実施形態において、前記ターゲティングベクター(導入核酸を含有する)と発現ベクター(sgRNAを含有する)は同時に細胞に導入される。
【0184】
いくつかの実施形態において、(a)挿入核酸を含むターゲティングベクターで多能性細胞のゲノムを修飾することによりドナー細胞を形成し、前記挿入核酸はヒト核酸配列を含むこと、(b)前記ドナー細胞を宿主胚に導入すること、及び(c)代理母に前記宿主胚を妊娠させ、ここで前記代理母は前記ヒト核酸配列を含む子孫を生成すること、を含むヒト化非ヒト動物を製造するための方法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、前記ドナー細胞は胚盤胞段階又は前桑実胚段階(すなわち、4-細胞段階又は8-細胞段階)にある宿主胚に導入される。さらなる実施形態において、前記遺伝子修飾は生殖細胞系列を介して伝達することができる。
【0185】
いくつかの特定の実施形態では、(a)ACE2遺伝子断片を含むターゲティングベクターとsgRNAが連結された発現ベクターをマウス胚細胞に導入し、遺伝子編集のドナー細胞を形成すること、(b)前記ドナー細胞をマウス胚に導入すること、及び(c)代理母に前記マウス胚を妊娠させ、ここで前記代理母は前記ヒトACE2配列を含む子孫を生成すること、を含むヒト化マウスを製造するための方法を提供する。
【0186】
本明細書において、「四倍体相補技術」は「四倍体胚補償技術」又は「四倍体相補方法」又は「四倍体胚相補方法」と同等であってもよく、それらは一定数量の胚性幹細胞(ES)細胞と四倍体胚をキメラ化することを意味し、そのキメラの発育過程において、ES細胞と四倍体胚はランダムに分布せず、すなわちその四倍体胚部分は卵黄嚢内胚葉及び胎盤栄養膜細胞(例えば絨毛膜外胚葉、栄養膜細胞など)などの胚体外組織の形成のみに関与し、ES細胞は胚様体、尿膜、羊膜、卵黄嚢中胚葉及び絨毛膜中胚葉部分の生成に広く関与し、卵黄嚢内胚葉及び胎盤栄養膜細胞系譜の生成に関与せず、すなわち両者の発育能は相補性を有し、このような現象は四倍体相補技術と呼ばれる。
【0187】
いくつかの場合において、「胚」という用語は、出生前の任意の時点の動物被験者に由来するか、又は出生前の任意の時点の動物被験者の体内の組織及び細胞に由来するものを意味する。
【0188】
いくつかの場合において、「胚」は受精後8週間で胎児になる前に子宮に移植された受精卵母細胞を表すために用いられる。この定義によれば、受精卵母細胞は移植前に通常、前胚(pre-embryo)と呼ばれる。しかしながら、この特許出願を通じて、本発明者らはより広い用語を使用して胚を定義し、それは前胚段階を含む。したがって、それは卵母細胞の受精から桑実胚、胚盤胞の孵化及び移植までの全ての発育段階を含む。
【0189】
胚は略球形であり、ゼラチン様の外殻で囲まれた1つ又は複数の細胞(卵割球)で構成され、細胞のない基質は透明帯と呼ばれる。透明帯は胚が孵化するまで、様々な機能を実行し、透明帯は胚評価の優れたマーカーである。該帯は球状で半透明であり、細胞破片と明確に区別される。
【0190】
哺乳動物の着床前の胚は、直径が約90~120ミクロンで、外表面に明らかに見える糖タンパク質で構成された透明帯がある。受精卵の片側に、1-2個の減数分裂時に形成された極体が見られる。
【0191】
受精後の23-43.5時間の間に卵子が第1回の有糸分裂を経た後に2つの卵割球を有する胚が形成される。2-細胞期の胚の細胞は楕円形に近く、大きさがほぼ等しく、電気ショックの後に2つの卵割球が4倍体細胞に融合することができ、さらに4倍体胚に発育する。受精卵は2つに分けて2つの卵割球すなわち2-細胞期が形成され、さらに、2つの卵割球はさらに2つに分けて4つ、すなわち4-細胞期が形成される。さらに2つに分けて8つ、すなわち8-細胞期が形成され、5回分裂して32個の細胞に分裂した時、すなわち「桑実胚」が形成される。4-細胞期に、4つの卵割球が交差して配列することが見られる。8-細胞期の卵割球は上下二層に配列し、緊密な連結の形成に伴って緻密化が現れ始める。16-細胞期から桑実胚と呼ばれ、内部細胞塊と栄養膜の分化が現れる。受精後72時間に胚が32-細胞期に発育し、卵割球の間に隙間が現れ、増大した後に完全な胞胚腔が形成され、腔の片側に一塊の細胞が集中し、これはすなわち内部細胞塊である。胞胚腔の周りを取り囲む一層の扁平細胞は、栄養膜と呼ばれる。この時、胞胚はこの時点で胚盤胞とも呼ばれる。後期胚盤胞は膨張され透明帯から押し出し、すなわち孵化胚盤胞となる。
【0192】
胚という用語は、受精卵母細胞、受精卵(zygote)、2-細胞、4-細胞、8-細胞、16-細胞、桑実胚、胚盤胞、拡張胚盤胞及び孵化胚盤胞、及びその間の全ての段階(例えば3-細胞又は5-細胞)の各段階を示すために用いられる。
【0193】
本明細書で使用される「キメラ胞胚」又は「キメラ胚」とは、胚性幹細胞を含むキメラ状態の胞胚又は胚を意味する。そのキメラ胞胚又は胚は、インジェクション法により製造される以外に、例えばいわゆる「凝集法」を用いて製造することができ、その「凝集法」において、胚+胚、又は胚+細胞を蓋付きのペトリ皿において互いに密着させることにより、キメラ胞胚を製造する。さらに、本開示におけるレシピエントの胞胚又は胚と移植対象の細胞との間の関係は同種異体関係又は異種異体関係であってもよい。
【0194】
本明細書で使用される用語「投与」又は「移植」は、細胞を所望の部位に少なくとも部分的に位置決めすることにより所望の効果を生成する方法又は経路を意味し、細胞を被験者に配置するとされている。
【0195】
例1 ACE2遺伝子sgRNA1及びpX330-sgRNAプラスミドの構築
標的部位を識別するsgRNA1配列を合成する。
sgRNA1配列(SEQ ID NO:1):5’-tactgctcagtccctcaccgagg-3’
sgRNA部位にBbsI制限部位を導入することによりsgRNAの上流及び下流のアニーリングプライマーを合成して後続のアニーリング実験を行う。sgRNA1を合成する上流及び下流の一本鎖プライマーの配列は以下のとおりである。
上流:5’-caccgcttggcattttcctcggtga-3’(SEQ ID NO:4)
下流:5’-aaactcaccgaggaaaatgccaagc-3’(SEQ ID NO:5)
pX330プラスミドの由来:pX330ベクターマップは、
図1に示すとおりである。当該プラスミド骨格はMiaolingプラスミドプラットフォームに由来し、品番はP0123である。
上記sgRNAアニーリングプライマーをアニーリングした後にそれぞれpX330プラスミド(プラスミドをまずBbsIで線形化する)に連結し、発現ベクターpX330-sgRNA1を取得する。
具体的な連結反応系は表1に示すとおりである。
【表1】
反応条件は以下のとおりである。16℃で30min以上連結させ、30μLのTOP10コンピテント細胞に形質転換し、次に200μLを取ってAmp耐性プレートに塗布し、37℃で少なくとも12時間培養した後に2つのクローンを選択してAmp耐性を含有するLB培地(5mL)に接種し、37℃、250rpmで少なくとも12時間揺れ培養する。
無作為に選択されたクローンは配列決定会社に送られ配列決定検証され、配列決定の結果は
図2に示すとおりであり、連結が正確な発現ベクターpX330-sgRNA1を選択して後続の実験を行う。
【0196】
例2 ACE2遺伝子sgRNA2及びpX330-sgRNA2プラスミドの構築
標的部位を識別するsgRNA2配列を合成する。
sgRNA2-配列(SEQ ID NO:2):5’-cttggcattttcctcggtgaggg-3’
sgRNA部位にBbsI制限部位を導入することによりsgRNAの上流及び下流のアニーリングプライマーを合成して後続のアニーリング実験を行う。sgRNA2を合成する上流及び下流の一本鎖プライマーの配列は以下のとおりである。
上流:5’-caccgtactgctcagtccctcaccg-3’(SEQ ID NO:6)
下流:5’-aaaccggtgagggactgagcagtac-3’(SEQ ID NO:7)
pX330プラスミドの由来:pX330ベクターマップは、
図1に示すとおりである。当該プラスミド骨格はMiaolingプラスミドプラットフォームに由来し、品番はP0123である。
上記sgRNAアニーリングプライマーをアニーリングした後にそれぞれpX330プラスミド(プラスミドをまずBbsIで線形化する)に連結し、発現ベクターpX330-sgRNA2を取得する。
具体的な連結反応系は表2に示すとおりである。
【表2】
反応条件は以下のとおりである。16℃で30min以上連結させ、30μLのTOP10コンピテント細胞に形質転換し、次に200μLを取ってAmp耐性プレートに塗布し、37℃で少なくとも12時間培養した後に2つのクローンを選択してAmp耐性を含有するLB培地(5mL)に接種し、37℃、250rpmで少なくとも12時間揺れ培養する。
無作為に選択されたクローンは配列決定会社に送られ配列決定検証され、配列決定の結果は
図3に示すとおりであり、連結が正確な発現ベクターpX330-sgRNA2を選択して後続の実験を行う。
【0197】
例3 pX330-sgRNAの切断効率の同定
それぞれ2μgの例1、例2で製造されたpX330-sgRNAプラスミドをリポフェクタミン3000(Lipofectamine 3000、invitrogen、品番L3000001)方法でマウス胚性幹細胞にトランスフェクトし、具体的なトランスフェクション操作についてはLipofectamine 3000試薬の操作説明を参照する。トランスフェクションから2日後のマウス胚性幹細胞を採取し、細胞ゲノム抽出キット(Tiangen、DP304-02)でゲノムを抽出する。次にゲノム切断部位の両側にPCRの上流及び下流プライマーを設計して、上流プライマー(5arm-sgF:ggttttgatttggccataaaatgttagc(SEQ ID NO:10))及び下流プライマー(3arm-sgR:attcccaggtccagtttcacctaag(SEQ ID NO:11))は抽出して得られたゲノムに対してPCR反応を行う(Novozan社のPhanta Max Super-FidelityDNA Polymeraseを使用する)。次にT7エンドヌクレアーゼI(T7EI)(Biolabs、M0302L)を利用してpX330-sgRNAの切断効率を検証し、原理としては、T7エンドヌクレアーゼIは不完全なペアDNAを識別して切断することができる。
T7EI実験の具体的な操作ステップは以下のとおりである。
pX330-sgRNA1及びpX330-sgRNA2をそれぞれトランスフェクトした上記細胞からゲノムを抽出し、5arm-sgF+3arm-sgR増幅により得られたPCR産物を回収し(Tiangen、DP214-02)、1μgを取ってアニーリング反応を行い、反応系は以下のとおりである。
【表3】
次にアニーリング生成物に1μLのT7エンドヌクレアーゼIを添加して37℃で30min反応させ、その後にそのままゲル電気泳動による検証を実施する。ゲル電気泳動の結果は
図4に示すとおりである。例1、例2のsgRNA1及びsgRNA2はその切断バンドの輝度が高く(sgRNA1は約376bp及び581bpの二本のバンドに切断することができ、sgRNA2は約371bp及び586bpの二本のバンドに切断することができる)、高い切断効率を有する。
切断効率は主に図により示されるため、例1、2の解決手段の効果を示すために、
図4には同時に別のsgRNA(sgRNA3で表記する)の切断効率が挙げられる。
列挙されたsgRNRA3配列(SEQ ID NO:3):5’-caagtgaactttgataagacagg-3’
sgRNA3を合成する上流及び下流の一本鎖プライマーの配列は以下のとおりである。
上流:5’-caccgcaagtgaactttgataagac-3’(SEQ ID NO:8)
下流:5’-aaacgtcttatcaaagttcacttgc-3’(SEQ ID NO:9)
他のステップは例1と同じである。無作為に選択されたクローンは配列決定会社に送られ配列決定検証され、配列決定の結果は
図5に示すとおりであり、連結が正確な発現ベクターpX330-sgRNA3を選択して後続の実験を行う。
他のsgRNA及びpX330-sgRNAプラスミドの構築は本開示例の重点ではないため、説明及び列挙を省略する。
【0198】
例4 ターゲッティングベクターの設計
ヒトACE2遺伝子(Gene ID:ID:59272)CDSタンパク質コード配列(NCBI登録番号NM_001371415.1 → NP_001358344.1に基づくトランスクリプトであり、そのCDS配列(hACE2-CDS)はSEQ ID NO:12に示すとおりであり、タンパク質配列(hACE2-protein)はSEQ ID NO:13に示すとおりである)をマウスAce2のプロモーター及び5’UTR領域配列に挿入した後、マウスAce2プロモーターを利用してヒトACE2の遺伝子発現を起動する。同時に、挿入されたヒトACE2のCDS配列の後にSV40 polyA配列信号(SV40-polyA配列はSEQ ID NO:14に示すとおりである)の終止信号を加えてヒトACE2mRNAの転写停止を強化する。
配列設計に基づいて、本発明者らは
図6に示すようなターゲッティングスキーム及び5’相同性アーム(5arm)、ヒトACE2遺伝子断片、3’相同性アーム(3arm)を含むベクターをさらに設計した。ここで、5’相同性アームはNCBI登録番号がAC 091606.8である第125683-126652位のヌクレオチド(5’相同性アーム配列はSEQ ID NO:15に示すとおりである)であり、3’相同性アームはNCBI登録番号がAC091606.8の第126796-127766位のヌクレオチド(3’相同性アーム配列はSEQ ID NO:16に示すとおりである)である。同時に、PGK-ピューロマイシン異種遺伝子パッケージもスクリーニングの目的でベクターに挿入され、ピューロマイシン耐性遺伝子(PGK-puro、SEQ ID NO:17)発現カセットの両端に一対の同方向のfrt部位(SEQ ID NO:18)が設計され、したがってFLP組換え酵素を利用して除去することにより、遺伝子組換えによる安全性問題を解決することができる。構築されたベクターは完全な配列検証が行われる。ターゲティングの前に、AgeIにより、前記ベクターは線形化される(ターゲッティングベクターの概略図及びターゲッティングスキームの概略図は
図6に示すとおりである)。
ベクターの構築過程は以下のとおりである。
5’相同性アームのブリッジ断片を増幅するための上流プライマー(5arm-pcrF:tcgcacacattccacatccaccggtccctatggagtggagaagagtctta(SEQ ID NO:19))及びそれとマッチングする下流プライマー(5arm-pcrR:gaaggagccaggaagagcttgacatctttccccgtgcgccaagatcc (SEQ ID NO:20))を設計する。
ヒトACE2 CDSのブリッジ断片を増幅するための上流プライマー(hACE2-F:ggatcttggcgcacggggaaagatgtcaagctcttcctggctccttc(SEQ ID NO:21))及びそれとマッチングする下流プライマー(hACE2-R:cattataagctgcaataaacaagttctaaaaggaggtctgaacatcatc(SEQ ID NO:22))を設計する。
SV40 polyAのブリッジ断片を増幅するための上流プライマー(SV40-F:gatgatgttcagacctccttttagaacttgtttattgcagcttataatg (SEQ ID NO:23))及びそれとマッチングする下流プライマー(SV40-R:AGAGAATAGGAACTTCGCACGCGTtaagatacattgatgagtttggac(SEQ ID NO:24))を設計する。
3’相同性アーム断片を増幅するための上流プライマー(3arm-pcrF:tacgaagttatGtcgacgcGGCGCGCCgaattataatactaacattactg(SEQ ID NO:25))及びそれとマッチングする下流プライマー(3arm-pcrR:tatgaccatgattacgccaagcttaagaccaaactattagagcagttaaaagc(SEQ ID NO:26))を設計する。5’相同性アームと3’相同性アームの増幅テンプレートはC57BL6/Jマウスゲノムであり、ヒトACE2の増幅テンプレートはヒト肺細胞cDNAである。PCR反応系(Novozan社のPhanta Max Super-FidelityDNA Polymeraseを使用する)及び条件は表4に示すとおりである。
【表4】
例えば、PCR増幅により得られた産物断片である5’相同性アーム、ヒトACE2 CDS、SV40 polyAをブリッジPCR(overlap PCR)を使用してTouch down PCR法を組み合わせて連続断片5arm-hACE-SV40にPCRする。またPCR増幅により得られた3’相同性アームを回収した後に相同組換えターゲッティングベクターを構築するために直接的に用いられ、構築過程は以下のとおりである。
1.5arm-hACE-SV40断片についてAgeI+MluIダブルダイジェスションを行う。3’相同性アーム断片についてAscI+HindIIIダブルダイジェスションを行った後にそれぞれダイジェスション・ライゲーションの方法に連結することにより、ターゲッティングベクターを得る。
2.ダイジェスション同定後に得られたポジティブターゲッティングベクターは配列決定同定に送られ、配列決定会社により配列が正確であると検証され(
図7に示す)、それによりヒト化ACE2ターゲッティングベクターの取得に成功した。ターゲッティングベクター配列全体はSEQ ID NO:27に示すとおりである。
【0199】
例5
PCR増幅により得られた産物断片である5’相同性アーム、ヒトACE2 CDS、SV40 polyAをブリッジPCR(overlap PCR)法を使用して連続断片5arm-hACE-SV40にPCRする。PCR反応条件は表5に示すとおりであり、他の条件は例4と同じである。
【表5】
結果は
図8に示すように、3つの断片が連結された断片を増幅することができなかった。
【0200】
例6 ヒト化ACE2マウス胚性幹細胞の取得
そのうちの一つの実施形態において、ヒト化ACE2マウス胚性幹細胞の取得は以下の方法で行うことができる。
(1)C57BL6/Jマウス胚性幹細胞(前記胚性幹細胞は確立された胚性幹細胞系に由来する)を液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、特に継代数がp10以内のマウス胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。
(2)Nucleofector
TM IIs/2bエレクトロポレーター及びMouse ES Cell Nucleofector(登録商標)Kit(Lonza、VPH-1001)マウス胚性幹細胞エレクトロポレーションキットを組み合わせて使用して、A023プログラムを使用して、約2×10
6個の胚性幹細胞がエレクトロポレーションされ、前記エレクトロポレーション過程は3μgの線形化ターゲッティングベクター(例4のターゲッティングベクター)及び1μgのpX330-sgRNA1を含有する100μLのエレクトロポレーションバッファーで行われる。前記トランスフェクトされた細胞は3つの6ウェルプレートのウェルに播種されて培養され、36時間回復させる。回復した後、1μg/mLのピューロマイシン(Merck社)が細胞培地に添加される。
3-4日のスクリーニングを経た後、ガラスニードルを使用してモノクローンを吸引する方式でピューロマイシン耐性マウス胚性幹細胞クローンを選び出して96ウェルプレートで培養する。翌日、モノクローンをトリプシン処理して2つの部分に分け、そのうちの一方の細胞を10μLのNP40溶解バッファーで56℃で60分間単独に溶解し、次に95℃で10分間溶解する。
ここで、他方のマウス胚性幹細胞の培養の具体的なステップは以下のとおりである。一日前に飼育層フィーダー細胞を準備し、必要に応じて異なるウェルプレートに敷き、一晩培養して単層を形成する。ここで、飼育層フィーダー細胞はマイトマイシンC(MMC)法で処理して調製されたマウス胚線維芽細胞である。LIF及び2i(chir 99021及びpD0325901 inhibitor)を含有するmES培地を使用して培養し、毎日新鮮な培地に交換し、細胞の成長状況に応じて培地を適宜増やすことができ、一般的に3日に一世代を継代し、継代時に0.25%トリプシンで消化し、6cmディッシュに30万、6ウェルプレートに各ウェル10万程度の密度で播種する。
mES+LIF+2i培地の構成は以下のとおりである。Knockout DMEM (1×,gibco)+15%FBS(FRONT BIOMEDICAL、0.22μm Milliporeフィルター濾過)+GlutaMAX(100×,gibco)+NEAA(100×,gibco)+P/S(P:50units,S:50mg/ml、Hyclone)+β-mercaptoethanol(gibco、使用濃度0.1mM)+LIF(1000units/ml、Millipore)+CHIR99021(GSK3β阻害剤、使用濃度3μM)+PD0325901(MEK阻害剤、使用濃度1μM)。
NP40溶解液の組成は以下のとおりである。10mL TE(20mM Tris pH8.0、150mM NaCl、2mM EDTA)+0.5%NP40+10μLプロテアーゼK(10mg/mL)。
上記方法におけるpX330-sgRNA1をpX330-sgRNA2又はpX330-sgRNA3に置き換え、他のステップはpX330-sgRNA1と同じである。
pX330-sgRNA1、pX330-sgRNA2及びpX330-sgRNA 3とターゲッティングベクターとの組み合わせによるターゲッティング効果は表6に示すとおりである。
【表6】
【0201】
例7 ヒト化ACE2マウス胚性幹細胞の遺伝子型の同定
例6で最後に得られた細胞溶解物を遺伝子型同定のPCRスクリーニングテンプレートとする。Phanta Max Super-FidelityDNA Polymerase試薬(Novozan社)を使用することにより、メーカーの説明書に基づいてPCRスクリーニングを実施する。PCR分析はマウスAce2部位に挿入された5’相同性アーム及び3’相同性アームを有するHDRを方向性させる。ACE2遺伝子がX染色体に位置し、使用されたマウス胚性幹細胞がXY雄性であるため、バイアレリックジーンターゲティングの発生が存在しない。
方向性挿入プライマーの上流がピューロマイシン耐性内部に位置すると同定され(Puro-F:aacctccccttctacgagc(SEQ ID NO:28))、それとペアリングするプライマーの下流が3’相同性アームの外側に位置する(3arm-outR:tacagccaggatctggatgtcagc(SEQ ID NO:29))。組換えベクターの挿入位置が正確であれば、長さが1504bpであるべきのバンドが現れるはずである。この時に、マウス胚性幹細胞Ace2部位のゲノム配列をSEQ ID NO:30に置換する。
PCR同定の結果は
図9に示すとおりであり、合計14株のクローンを同定した。ここで、*でマークされたものは陽性クローンであり、同時にPCR産物は配列決定の結果に応じて一致する。このPCR結果が陽性であるマウス胚性幹細胞クローンは、成功的に編集されたヒト化マウス胚性幹細胞モデルであるが、PGK-Puroスクリーニングマーカーは依然として保持され、PGK-Puroの両端が一対の同方向のfrt部位を有するため、FLP組換え酵素を利用して除去することにより遺伝子組換えによる安全性問題を解決することができる。
PGK-Puroスクリーニングマーカーの削除方法は以下のとおりである。
上記PCR結果が陽性であるマウス胚性幹細胞を6cmディッシュに培養し続け、Nucleofector
TM IIs/2bエレクトロポレーター及びMouse ES Cell Nucleofector(登録商標)Kit(Lonza、VPH-1001)マウス胚性幹細胞エレクトロポレーションキットを組み合わせて使用して、A023プログラムを使用して、約2×10
6個の胚性幹細胞がエレクトロポレーションされ、前記エレクトロポレーション過程はpPGK-FLPoプラスミド(Addgene、13793)を含有する100μLのエレクトロポレーションバッファーで行われる。前記トランスフェクトされた細胞は6つの6ウェルプレートのウェルに播種され、3日後、ガラスニードルを使用してモノクローンを吸引する方式でマウス胚性幹細胞クローンを選び出して96ウェルプレートで培養する。翌日、モノクローナルを消化継代して二分割し、一部をピューロマイシンによるスクリーニングを行い、一部を正常に培養する。PGK-Puro耐性スクリーニングマーカーを成功的に削除すると、ピューロマイシンによるスクリーニングした後に細胞が不耐性になり死亡する。ピューロマイシン不耐性の対応するクローンは、上流プライマー(hACE2-F:tgatagtggttggcattgt(SEQ ID NO:31))及び下流プライマー(3arm-outR:tacagccaggatctggatgtcagc(SEQ ID NO:29))を使用してゲノム遺伝子型のPCR同定を行うことができる。PGK-Puroスクリーニングマーカーを成功的に削除すると、PCR産物の長さは1532bpであり、PGK-Puroを削除する前のPCR産物の長さは2863bpである。遺伝子型の同定結果は
図9に示すとおりであり、ゲル電気泳動バンドが1500bpにあるものはPGK-puroを成功的に削除した後のクローンであり、バンドが3000bpにあるものは削除前のクローンである。ピューロマイシン不耐性の対応するクローンは、最終的にヒト化ACE2ターゲッティングされたマウス胚性幹細胞に成功的に編集され、すなわちマウス胚性幹細胞は最終的に
図10に示すようなヒト化ACE2遺伝子を取得した。最終的にPGK-puroを削除した後のマウス胚性幹細胞のAce2部位のゲノム配列はSEQ ID NO:32に示される配列に置換された。
【0202】
例8 ヒト化ACE2遺伝子改造マウスの形成
1、7.5単位のPMSGを4-10週齢のB6C3F1のメスマウスに腹腔内注射し、48時間後にhCGを注射して、CD1のオスマウスと一緒にケージに入れ、翌朝、メスマウスの膣栓をチェックして、膣栓のあるメスマウスを選び出し、メスマウスの対応する受精時間を記録する。
2、翌日、妊娠マウスを頸椎脱臼法により安楽死させ、70%のアルコールでマウスの腹部を消毒し、ドレッシング・ピンセット及び眼科用ハサミで腹部の皮膚及び筋肉層を切り、腹腔を開く。ピンセットで一つの子宮角の上部を掴み、ハサミで卵管近くの膜に小さな開口を開け、卵管と卵巣の接続部を切断し、卵管及び付属する子宮を35mmのペトリ皿に移し、ピンセットで卵管采側を固定し、M2培養液(Hogan,B.(1994).Manipulating the mouse embryo:a laboratory manual,2nd edn(Cold Spring Harbor,NY,Cold Spring Harbor Laboratory Press).)を充填したフラッシングニードルで卵管采に軽く挿入し、0.1mLのM2培養液で卵管をフラッシュし、卵移動管でフラッシュされた胚を収集し、M2で3回洗浄し、E1.5のマウス2-細胞胚を収集する。
3、収集されたマウス胚を0.1mMのMgSO
4、0.1mMのCaCl
2及び0.3%ウシ血清アルブミンを含有する0.3Mのマンニトール(Sigma-Aldrich Inc.,St.Louis,MO)に入れ、Cellfusion CF-150/B電気融合装置及び250-um融合タンク(BLS Ltd.,Budapest、Hungary)で60V、50マイクロ秒の直流電融合を行い、4倍体胚を得る。KSOM培地(Summers,M.C.,McGinnis,L.K.,Lawitts,J.A.,Raffin,M.,and Biggers,J.D.(2000).IVF of mouse ova in a simplex optimized medium supplemented with amino acids.Hum Reprod 15,1791-1801.)に入れ、CO
2インキュベーターで24時間培養した後に、酸性タイロード溶液(Sigma-Aldrich、T1788)で透明帯を除去し、胚性幹細胞(例6で得られたヒト化ACE2マウス胚性幹細胞)と凝集させ、マウス胚を形成する(Nagy,A.,Rossant,J.,Nagy,R.,Abramow-Newerly,W.,and Roder,J.C.(1993).Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells.Proc Natl Acad Sci U S A 90,8424-8428.)
4、CO
2インキュベータ内で一晩インキュベートし、E2.5日の偽妊娠マウスの子宮に移植し、17日後に代理マウスを頸椎脱臼法により安楽死させた後に開腹手術を行い、生存及び呼吸している新生マウスを授乳マウスのケージ内に入れ、21日後に離乳し、完全に胚性幹細胞に由来する遺伝子組換えマウス、すなわち、ヒト化ACE2遺伝子改造マウスが得られる(
図12)。
対応する培地組成は、表7に示すとおりである。
【表7】
【0203】
例9 ヒト化ACE2マウス発現の同定
新生ヒト化ACE2マウス及び野生型マウスを解剖し、それぞれ肺、腎臓、腸を取り出し、Trizolで溶解し、次に細胞/組織トータルRNA抽出キット(Novozan、RC101-01)でRNAを抽出し、及びHiScript II Q RT SuperMix for qPCR試薬(Novozan、R222-01)で反転させる。抽出された組織のcDNAについて、hACE2特異的プライマー(hACE2-qF:TGATAGTGGTTGGCATTGT、hACE2-qR:CGATGGAGGCATAAGGATT)及びmACE2特異的プライマー(mACE2-qF:GGTTGGCATCATCATCCT;mACE2-qR:GTCTGAGCATCATCACTGT)を使用してqPCR測定(Novozan、Q321-02)を行ったところ、ヒト化ACE2マウス組織がhACE2を特異的に発現し、野生型マウスがhACE2を発現せず(
図13)、かつhACE2マウスのmACE2発現が欠失した(
図14)。さらに、本発明者らはそれぞれhACE2マウス及び野生型ACE2マウスの腸組織を採取しウエスタン・ブロッティング実験を行い、ヒト特異的ACE2抗体(Abcam、ab 108209)でドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)を行ってhACE2マウスがタンパク質レベルでhACE2タンパク質を発現していることが確認された(
図15)。
【0204】
例10 マウスの製造方法(2-細胞期/Mg
2+
及びCa
2+
濃度を高めた電気融合液群)
本例で使用されたマウス胚性幹細胞は、上記例6、例7で得られたピューロマイシン不耐性のヒト化ACE2ターゲティングされたマウス胚性幹細胞である。具体的な実験では、液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、特に継代数がp15以内の胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。本例では、第12世代の胚性幹細胞を使用した。
1、例10で使用された溶液組成はそれぞれ表8-表10に示すとおりである。
【表8】
【表9】
【表10】
2、マウスの製造
(1)7.5単位のPMSGを4-10週齢のB6C3F1のメスマウスに腹腔内注射し、48時間後にhCGを注射して、CD1のオスマウスと一緒にケージに入れ、翌朝、メスマウスの膣栓をチェックして、膣栓のあるメスマウスを選び出し、メスマウスの対応する受精時間を記録する。
(2)翌日、妊娠マウスを頸椎脱臼法により安楽死させ、70%のアルコールでマウスの腹部を消毒し、ドレッシング・ピンセット及び眼科用ハサミで腹部の皮膚及び筋肉層を切り、腹腔を開く。ピンセットで一つの子宮角の上部を掴み、ハサミで卵管近くの膜に小さな開口を開け、卵管と卵巣の接続部を切断し、卵管及び付属する子宮を35mmのペトリ皿に移し、ピンセットで卵管采側を固定し、M2培養液(Hogan、1994)を充填したフラッシングニードルで卵管采に軽く挿入し、0.1mLのM2培養液で卵管をフラッシュし、卵移動管でフラッシュされた胚を収集し、M2で3回洗浄し、E1.5(受精後1.5日)のマウス2-細胞胚を収集する。
(3)収集されたマウス2-細胞胚を改良された電気融合液(表8に記載された組成)に入れ、Cellfusion CF-150/B電気融合装置及び250-ミクロン電極間隔の融合タンク(BLS Ltd.,Budapest、Hungary)で60ボルト、50マイクロ秒の直流電気融合を行い、それにより四倍体胚が得られ、その後に融合された胚をKSOM培地(Summers et al.,2000)に入れ、CO
2インキュベーターで15時間培養する。その結果、改善された電気融合液の融合効率が100%に達することが示されている。
(4)四倍体胚を2-細胞期に発育させ、酸性タイロード溶液で透明帯を除去し、0.25%トリプシンで消化された後のマウス胚性幹細胞と凝集させ、さらに24時間培養した後にキメラ胚を形成する。
(5)最後に、キメラ胚を妊娠2.5日の偽妊娠マウスの子宮に移し、17日後に満期まで発育した新生マウスが得られる。
四倍体胚は、胎盤等の胚体外組織のみを効果的に形成できるため、四倍体胚と胚性幹細胞とのキメラ胚から得られた新生マウスは完全に胚性幹細胞に由来する。
本例のマウスを製造するフローチャートは
図16に示すとおりである。マウスの出生率の結果は
図18に示すとおりであり、
図18から分かるように、例10の方法で製造されたマウスの生存率は25%(10/40)に達した。
【0205】
試験例1
胚性幹細胞の取得が例10と異なる以外に、他は例10の操作ステップと同様である。
本例において、マウス胚性幹細胞は遺伝子修飾されていない一般的な胚性幹細胞であり、その取得は以下の方法に従って行われる。C57BL6/Jマウス胚性幹細胞を液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、継代数がp12のマウス胚性幹細胞を使用し、6 cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。
マウスを製造するフローチャートは
図16に示すとおりである。マウスの出生率の結果は
図19に示すとおりであり、
図19から分かるように、試験例1の方法で製造されたマウスの生存率は33.3%(48/144)に達した。
【0206】
例11 マウスの製造方法(2-細胞期/従来の融合液群)
本例で使用されたマウス胚性幹細胞は、上記例6、例7で得られたピューロマイシン不耐性のヒト化ACE2ターゲティングされたマウス胚性幹細胞である。具体的な実験では、液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、特に継代数がp15以内の胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。本例では、第12世代の胚性幹細胞を使用した。
ここで、KSOM培地及びM2培養液は例10と同じである。
1.7.5単位のPMSGを4-10週齢のB6C3F1のメスマウスに腹腔内注射し、48時間後にhCGを注射して、CD1のオスマウスと一緒にケージに入れ、翌朝、メスマウスの膣栓をチェックして、膣栓のあるメスマウスを選び出し、メスマウスの対応する受精時間を記録する。
2.翌日、妊娠マウスを頸椎脱臼法により安楽死させ、70%のアルコールでマウスの腹部を消毒し、ドレッシング・ピンセット及び眼科用ハサミで腹部の皮膚及び筋肉層を切り、腹腔を開く。ピンセットで一つの子宮角の上部を掴み、ハサミで卵管近くの膜に小さな開口を開け、卵管と卵巣の接続部を切断し、卵管及び付属する子宮を35mmのペトリ皿に移し、ピンセットで卵管采側を固定し、M2培養液(Hogan、1994)を充填したフラッシングニードルで卵管采に軽く挿入し、0.1mLのM2培養液で卵管をフラッシュし、卵移動管でフラッシュされた胚を収集し、M2で3回洗浄し、E1.5のマウス2-細胞胚を収集する。
3.収集されたマウス2-細胞胚を電気融合液(表11に示される組成)に入れ、Cellfusion CF-150/B電気融合装置及び250-ミクロン電極間隔の融合タンク(BLS Ltd.,Budapest、Hungary)で60ボルト、50マイクロ秒の直流電気融合を行い、それにより四倍体胚が得られ、その後に融合された胚をKSOM培地(Summers et al.,2000)に入れ、CO
2インキュベータで24時間培養する。その結果、融合効率が80-90%であり、電気融合効率が100%に達することができない。
4.四倍体胚を2-細胞期に発育させ、酸性タイロード溶液で透明帯を除去し、0.25%トリプシンで消化された後のマウス胚性幹細胞と凝集させ、さらに24時間培養した後にキメラ胚を形成し、又は胚盤胞期まで48時間培養し、胚性幹細胞をマイクロマニピュレーションにより胚盤胞腔に注入する(Nagy et al.,1993)。
5.最後に、キメラ胚を妊娠2.5日の偽妊娠マウスの子宮に移し、17日後に満期まで発育した新生マウスが得られる。四倍体胚は、胎盤等の胚体外組織のみを効果的に形成できるため、四倍体胚と胚性幹細胞とのキメラ胚から得られた新生マウスは完全に胚性幹細胞に由来する。
【表11】
マウスを製造するフローチャートは
図16に示すとおりである。本実施のマウスの出生率の結果を
図18に示すとおりである。
図18から分かるように、マウスの生存率は14.2%(15/106)であった。
【0207】
試験例2
胚性幹細胞の取得が例11と異なる以外に、他は例11の操作と同様である。
本例において、マウス胚性幹細胞は遺伝子修飾されていない一般的な胚性幹細胞であり、その取得は以下の方法に従って行われる。C57BL6/Jマウス胚性幹細胞を液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、継代数がp12のマウス胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。
マウスを製造するフローチャートは
図16に示すとおりである。マウスの出生率の結果は
図19に示すとおりであり、
図19から分かるように、マウスの生存率は21.1%(32/152)であった。
【0208】
例12 マウスの製造方法(4-細胞期/Mg
2+
及びCa
2+
濃度を高めた電気融合液群)
本例で使用されたマウス胚性幹細胞は、上記例6、例7で得られたピューロマイシン不耐性のヒト化ACE2ターゲティングされたマウス胚性幹細胞である。具体的な実験では、液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、特に継代数がp15以内の胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。本例では、第12世代の胚性幹細胞を使用した。
ここで、KSOM培地及びM2培養液は例10と同じである。
1.7.5単位のPMSGを4-10週齢のB6C3F1のメスマウスに腹腔内注射し、48時間後にhCGを注射して、CD1のオスマウスと一緒にケージに入れ、翌朝、メスマウスの膣栓をチェックして、膣栓のあるメスマウスを選び出し、メスマウスの対応する受精時間を記録する。
2.翌日、妊娠マウスを頸椎脱臼法により安楽死させ、70%のアルコールでマウスの腹部を消毒し、ドレッシング・ピンセット及び眼科用ハサミで腹部の皮膚及び筋肉層を切り、腹腔を開く。ピンセットで一つの子宮角の上部を掴み、ハサミで卵管近くの膜に小さな開口を開け、卵管と卵巣の接続部を切断し、卵管及び付属する子宮を35mmのペトリ皿に移し、ピンセットで卵管采側を固定し、M2培養液(Hogan、1994)を充填したフラッシングニードルで卵管采に軽く挿入し、0.1mLのM2培養液で卵管をフラッシュし、卵移動管でフラッシュされた胚を収集し、M2で3回洗浄し、E1.5のマウス2-細胞胚を収集する。
3.収集されたマウス2-細胞胚を電気融合液(表12に示される組成)に入れ、Cellfusion CF-150/B電気融合装置及び250-ミクロン電極間隔の融合タンク(BLS Ltd.,Budapest、Hungary)で60ボルト、50マイクロ秒の直流電気融合を行い、それにより四倍体胚が得られ、その後に融合された胚をKSOM培地(Summers et al.,2000)に入れ、CO
2インキュベータで24時間培養する。その結果、改善された電気融合液の融合効率が100%に達することが示されている。
4.四倍体胚を4-細胞期に発育させ、酸性タイロード溶液で透明帯を除去し、0.25%トリプシンで消化された後のマウス胚性幹細胞と凝集させ、さらに24時間培養した後にキメラ胚を形成し、又は胚盤胞期まで48時間培養し、胚性幹細胞をマイクロマニピュレーションにより胚盤胞腔に注入する(Nagy et al.,1993)。
5.最後に、キメラ胚を妊娠2.5日の偽妊娠マウスの子宮に移し、17日後に満期まで発育した新生マウスが得られる。四倍体胚は、胎盤等の胚体外組織のみを効果的に形成できるため、四倍体胚と胚性幹細胞とのキメラ胚から得られた新生マウスは完全に胚性幹細胞に由来する。
【表12】
マウスを製造するフローチャートは
図17に示すとおりである。
本実施のマウスの出生率の結果を
図18に示すとおりである。
図18から分かるように、マウスの生存率は2.5%(3/121)であった。
【0209】
試験例3
胚性幹細胞の取得が例12と異なる以外に、他は例12の操作と同様である。
本例において、マウス胚性幹細胞は遺伝子修飾されていない一般的な胚性幹細胞であり、その取得は以下の方法に従って行われる。C57BL6/Jマウス胚性幹細胞を液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、継代数がp12のマウス胚性幹細胞を使用し、6 cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。
マウスを製造するフローチャートは
図17に示すとおりである。マウスの出生率の結果は
図19に示すとおりであり、
図19から分かるように、マウスの生存率は7.5%(9/120)であった。
【0210】
例13 マウスの製造方法(4-細胞期/従来の融合液群)
本例で使用されたマウス胚性幹細胞は、上記例6、例7で得られたピューロマイシン不耐性のヒト化ACE2ターゲティングされたマウス胚性幹細胞である。具体的な実験では、液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、特に継代数がp15以内の胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。本例では、第12世代の胚性幹細胞を使用した。ここで、KSOM培地及びM2培養液は例10と同じである。
1.7.5単位のPMSGを4-10週齢のB6C3F1のメスマウスに腹腔内注射し、48時間後にhCGを注射して、CD1のオスマウスと一緒にケージに入れ、翌朝、メスマウスの膣栓をチェックして、膣栓のあるメスマウスを選び出し、メスマウスの対応する受精時間を記録する。
2.翌日、妊娠マウスを頸椎脱臼法により安楽死させ、70%のアルコールでマウスの腹部を消毒し、ドレッシング・ピンセット及び眼科用ハサミで腹部の皮膚及び筋肉層を切り、腹腔を開く。ピンセットで一つの子宮角の上部を掴み、ハサミで卵管近くの膜に小さな開口を開け、卵管と卵巣の接続部を切断し、卵管及び付属する子宮を35mmのペトリ皿に移し、ピンセットで卵管采側を固定し、M2培養液(Hogan、1994)を充填したフラッシングニードルで卵管采に軽く挿入し、0.1mLのM2培養液で卵管をフラッシュし、卵移動管でフラッシュされた胚を収集し、M2で3回洗浄し、E1.5のマウス2-細胞胚を収集する。
3.収集されたマウス2-細胞胚を電気融合液(表13に示される組成)に入れ、Cellfusion CF-150/B電気融合装置及び250-ミクロン電極間隔の融合タンク(BLS Ltd.,Budapest、Hungary)で60ボルト、50マイクロ秒の直流電気融合を行い、それにより四倍体胚が得られ、その後に融合された胚をKSOM培地(Summers et al.,2000)に入れ、CO
2インキュベータで24時間培養する。電気融合効率は80-90%であった。
4.四倍体胚を4-細胞期に発育させ、酸性タイロード溶液で透明帯を除去し、0.25%トリプシンで消化された後のマウス胚性幹細胞と凝集させ、さらに24時間培養した後にキメラ胚を形成し、又は胚盤胞期まで48時間培養し、胚性幹細胞をマイクロマニピュレーションにより胚盤胞腔に注入する(Nagy et al.,1993)。
5.最後に、キメラ胚を妊娠2.5日の偽妊娠マウスの子宮に移し、17日後に満期まで発育した新生マウスが得られる。四倍体胚は、胎盤等の胚体外組織のみを効果的に形成できるため、四倍体胚と胚性幹細胞とのキメラ胚から得られた新生マウスは完全に胚性幹細胞に由来する。
【表13】
本例5でマウスを製造する過程及び結果は
図17に示すとおりである。
図17から分かるように、マウスの製造効率が非常に低い。さらに、マウスの出生率の結果は
図18に示すとおりである。
図18から分かるように、マウスの生存率はわずか0.3%(1/350)であった。
【0211】
試験例4
胚性幹細胞の取得が例13と異なる以外に、他は例13の操作と同様である。
本例において、マウス胚性幹細胞は遺伝子修飾されていない一般的な胚性幹細胞であり、その取得は以下の方法に従って行われる。C57BL6/Jマウス胚性幹細胞を液体窒素凍結保存セルバンクから蘇生させ、継代数がp12のマウス胚性幹細胞を使用し、6cmのペトリ皿で3日間培養成長させる。
マウスを製造するフローチャートは
図17に示すとおりである。マウスの出生率の結果は
図19に示すとおりであり、
図19から分かるように、マウスの生存率はわずか2.5%(4/163)であった。
【配列表】