(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】コンタクトピン及びコンタクトピンユニット
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20241029BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20241029BHJP
H01R 12/58 20110101ALI20241029BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20241029BHJP
G01R 1/06 20060101ALI20241029BHJP
H01R 13/24 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
H01R12/58
G01R1/073 D
G01R1/06 D
H01R13/24
(21)【出願番号】P 2023110163
(22)【出願日】2023-07-04
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392008851
【氏名又は名称】ファインネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匠
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛
(72)【発明者】
【氏名】石黒 慶志
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-138405(JP,A)
【文献】特開2020-165803(JP,A)
【文献】特開2017-146120(JP,A)
【文献】特開2004-138391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
H01R 12/58
H01R 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のバレルと、
前記バレルの一端に設けられ、先端が電極に接触する接触部と、
前記バレルの他端に設けられ、接続基板に設けたスルーホールに圧入されるプレスフィット部とを備え
、
前記バレルは、前記接触部と前記プレスフィット部との少なくとも一方を前記バレルの軸心方向に移動自在に保持しており、
前記バレルの他端から一端に向かう方向に前記接触部を付勢する付勢部材を備え、
前記接触部は、前記バレルにその軸心方向に移動自在に保持され、基端が前記バレル内に収容されるとともに、先端が前記バレルの一端から突出するプランジャであり、
前記付勢部材は、前記プランジャを前記バレルの一端から突出させる方向に付勢し、
前記バレルは、他端に筒状に設けられた軸固定部を有し、
直線的に延びた棒状の軸部と、前記軸部の一端に形成された前記プレスフィット部とを有し、前記軸部が前記軸固定部内に挿入されて固定されたプレスフィットピンを備える
ことを特徴とするコンタクトピン。
【請求項2】
前記軸部は、前記軸固定部にかしめ固定されていることを特徴とする請求項
1に記載のコンタクトピン。
【請求項3】
筒状のバレルと、前記バレルにその軸心方向に移動自在に保持され、基端が前記バレル内に収容されるとともに、電極に接触する先端が前記バレルの一端から突出するプランジャと、前記プランジャを前記バレルの一端から突出させる方向に付勢する付勢部材と、前記バレルの他端に設けられ、接続基板に設けたスルーホールに圧入されるプレスフィット部とを有するコンタクトピンと、
前記コンタクトピンを保持する、前記コンタクトピンが着脱可能なホルダとを備え
、
前記バレルは、一端と他端との間に径方向に突出した第1突出部を有し、
前記ホルダは、
前記バレルの一端が配される第1小孔部と前記第1小孔部よりも前記軸心方向と直交する断面サイズが大きく前記第1突出部を収容する第1大孔部とが繋がって形成され、前記プランジャが孔内から突出する第1貫通孔が形成された第1ホルダ部材と、
前記バレルの他端が配され前記プレスフィット部が孔内から突出する第2貫通孔が形成されるとともに、前記第1突出部の他端側の端面と当接する壁面を有し、前記第1ホルダ部材に対して着脱可能な第2ホルダ部材とを備える
ことを特徴とするコンタクトピンユニット。
【請求項4】
筒状のバレルと、
前記バレルにその軸心方向に移動自在に保持され、基端が前記バレル内に収容されるとともに、電極に接触する先端が前記バレルの一端から突出するプランジャと、
前記プランジャを前記バレルの一端から突出させる方向に付勢する付勢部材と、
前記バレルの他端に筒状に設けられた軸固定部内に挿入されて固定される直線的に延びた棒状の軸部と、前記軸部の一端に形成され、接続基板に設けたスルーホールに圧入されるプレスフィット部とを有するプレスフィットピンと、
を有するコンタクトピンと、
前記コンタクトピンを保持する、前記コンタクトピンが着脱可能なホルダとを備える
ことを特徴とするコンタクトピンユニット。
【請求項5】
前記バレルは、一端と他端との間に径方向に突出した第1突出部を有し、
前記ホルダは、
前記バレルの一端が配される第1小孔部と前記第1小孔部よりも前記軸心方向と直交する断面サイズが大きく前記第1突出部を収容する第1大孔部とが繋がって形成され、前記プランジャが孔内から突出する第1貫通孔が形成された第1ホルダ部材と、
前記バレルの他端が配され前記プレスフィット部が孔内から突出する第2貫通孔が形成されるとともに、前記第1突出部の他端側の端面と当接する壁面を有し、前記第1ホルダ部材に対して着脱可能な第2ホルダ部材と
を備えることを特徴とする請求項
4に記載のコンタクトピンユニット。
【請求項6】
前記バレルの他端と前記第1突出部との間に、前記第1突出部よりも前記軸心方向と直交する断面サイズが小さく前記第2貫通孔に嵌合する第2突出部が形成されていることを特徴とする請求項
3または5に記載のコンタクトピンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトピン、コンタクトピンサブアセンブリ及びコンタクトピンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトピンとして、回路素子を実装した回路基板や半導体集積回路、各種電子機器等の検査対象を検査器等と電気的に接続するコンタクトプローブが知られている。コンタクトプローブは、パッドや半田バンプ等の電極に接触するプランジャと、このプランジャを電極に圧接するように付勢するコイルバネと、プランジャの基端部とコイルバネとを中空な内部に収容するバレルとを有する。コンタクトプローブには、バレルの一端にのみプランジャを設けた片端コンタクトプローブ(例えば特許文献1を参照)と、バレルの両端にプランジャをそれぞれ設けた両端コンタクトプローブ(例えば特許文献2を参照)とに大別できる。
【0003】
片端コンタクトプローブは、他端すなわちプランジャとは反対側の端部にリード線を半田付けして接続し、そのリード線を介して検査器に電気的に接続される。また、片端コンタクトプローブは、プランジャとは反対側の端部を基板のスルーホールに半田付けし、その基板を介して検査器に電気的に接続されるものもある。両端コンタクトプローブは、一端のプランジャが検査対象の電極に圧接され、他端のプランジャが中継基板上の電極に圧接され、接続基板(中継基板)を介して、検査器に電気的に接続される。
【0004】
コンタクトプローブは、プランジャを検査対象の電極に対して接触させた状態と離した状態とで繰り返し遷移するため、例えばプランジャと電極との間で発生したスパーク等によりプランジャが劣化することがある。このようにプランジャが劣化した場合には、接触抵抗が増大して正しく検査を行えなくなるため、コンタクトプローブが交換される。
【0005】
基板に設けたスルーホール内に圧入されるプレスフィット部が軸部の一端に設けられたピン状のプレスフィットピンが知られている(例えば特許文献3を参照)。基板に設けたスルーホールは、その内周面が例えば銅めっきされており、そのスルーホール内にプレスフィット部を圧入することで、プレスフィットピンが基板に固定されるとともに、基板上の配線とプレスフィットピンが電気的に接続される。プレスフィットピンの軸部は、コネクタの端子等として用いられる。このようなプレスフィットピンを用いることで、基板に無半田でコネクタを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-32162号公報
【文献】特開2021-42974号公報
【文献】特開2004-335409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンタクトプローブを交換する場合には、片端コンタクトプローブでは、例えば、劣化したコンタクトプローブを取り外した後に、新たなコンタクトプローブ及び検査器側の基板にリード線をそれぞれ半田付けしたり、新たなコンタクトプローブの他端をスルーホールに半田付けしたりする必要があり、交換作業が煩雑であった。これに対して、両端コンタクトプローブの交換作業は比較的に容易である。しかしながら、両端コンタクトプローブは、接続基板の電極に対してプランジャを接触させることで電気的に接続する構造であるため、プランジャと接続基板の電極との接触面積が十分に確保できず接触抵抗が高い傾向がある他、接続基板の歪みや撓みによってプランジャと接続基板の電極との接触状態が変化してしまい、接触抵抗が安定しないという問題があった。コンタクトプローブ以外のコンタクトピン、例えば電子部品を組み付けてユニット化されたモジュールやICパッケージ等の電気部品を装置に組み付けた際に、その電気部品との電気的な接続に用いられるコンタクトピンについても同様な問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、交換を容易にしながら安定した接触状態が得られるコンタクトピン、コンタクトピンサブアセンブリ及びコンタクトピンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンタクトピンは、筒状のバレルと、バレルの一端に設けられ、先端が電極に接触する接触部と、バレルの他端に設けられ、接続基板に設けたスルーホールに圧入されるプレスフィット部とを備えるものである。
【0010】
本発明のコンタクトピンサブアセンブリは、筒状のバレルと、バレルの一端に設けられ、先端が電極に接触する接触部と、バレルの他端に設けられ、プレスフィット部が形成されたプレスフィットピンの軸部が挿入されて装着される軸装着部とを備えるものである。
【0011】
本発明のコンタクトピンユニットは、筒状のバレルと、バレルにその軸心方向に移動自在に保持され、基端がバレル内に収容されるとともに、電極に接触する先端がバレルの一端から突出するプランジャと、プランジャをバレルの一端から突出させる方向に付勢する付勢部材と、バレルの他端に設けられ、接続基板に設けたスルーホールに圧入されるプレスフィット部とを有するコンタクトピンと、コンタクトピンを保持する、コンタクトピンが着脱可能なホルダとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンタクトピンの接触部とは反対側のバレルの他端にプレスフィット部を設けているので、スルーホールに対するプレスフィット部の挿抜によって電気的な分離、接続を行うことができ、しかも接続基板に撓みや歪みがあってもスルーホールとプレスフィット部との間で安定した接触状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る検査装置の構成を示す説明図である。
【
図2】コンタクトピンユニットの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】コンタクトプローブの構成及び貫通孔の構成を示す断面図である。
【
図4】中継基板とコンタクトピンとの組み付けを示す説明図である。
【
図5】回路基板の電極にコンタクトプローブのプランジャを圧接した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、この例の検査装置10は、検査対象として、例えば半導体素子等が実装された回路基板11を検査する。検査装置10は、コンタクトピンユニット(以下、単にユニットと称する)12、中継基板14、検査器15等で構成される。なお、以下では、
図1に示されるように、ユニット12に対して回路基板11が配される側を下側として上方向及び下方向を定義して説明するが、この上下方向は、ユニット12の使用する姿勢、向きを限定するものではない。したがって、例えば、ユニット12に対して上方や側方、斜め上方あるいは斜め下方に回路基板11を配置して検査してもよい。また、この例では、検査対象を回路基板11としているが、検査対象は、限定されず、半導体集積回路、各種の電子機器、液晶パネル等とすることができる。検査器15に代えて測定器を接続して測定装置等として構成することもできる。
【0015】
ユニット12は、複数(この例では4本)のコンタクトピンとしてのコンタクトプローブ17と、これらのコンタクトプローブ17を保持するホルダ18とを備える。ホルダ18には、複数の保持孔19が形成されており、これらの保持孔19内にコンタクトプローブ17をそれぞれ保持している。ホルダ18は、コンタクトプローブ17の着脱が可能であり、コンタクトプローブ17を交換できるようにされている。ユニット12は、昇降機構(図示省略)により、コンタクトプローブ17の接触部としてのプランジャ21を回路基板11上の電極(パッド)11aに圧接した圧接位置と、この圧接位置から上方に移動しプランジャ21を電極11aから離した退避位置との間で移動される。なお、ホルダ18が保持するコンタクトプローブ17の本数は、4本に限定されず、1本または複数本とすることができる。
【0016】
コンタクトプローブ17は、接続基板としての中継基板14を介して検査器15に電気的に接続される。中継基板14には、スルーホール22が形成されている。スルーホール22は、中継基板14をその厚み方向に貫通するように設けられ、その内周面に例えば銅めっき部22a(
図4参照)がめっきされている。銅めっき部22aは、中継基板14に設けたプリント配線(図示省略)に接続されており、そのプリント配線を介して検査器15に接続されている。スルーホール22(銅めっき部22a)には、コンタクトプローブ17が電気的に接続される。また、コンタクトプローブ17は、検査の際に、プランジャ21を電極11aに圧接することで、電極11aすなわち回路基板11上の回路に電気的に接続される。検査器15は、中継基板14、コンタクトプローブ17、電極11aを介して、回路基板11上の回路に検査用信号を与え、それに応答して当該回路からの出力信号を得ることによって、当該回路を検査する。
【0017】
図2において、ホルダ18は、第1ホルダ部材23と、この第1ホルダ部材23の上に重ねられる第2ホルダ部材24と、これら第1ホルダ部材23及び第2ホルダ部材24を固定する固定部25とから構成される。第1ホルダ部材23及び第2ホルダ部材24は、絶縁性の材料、例えばプラスチック材で形成されており、各コンタクトプローブ17を電気的に絶縁して保持する。
【0018】
第1ホルダ部材23は、コンタクトプローブ17を配列する方向に長いブロック状の部材である。この第1ホルダ部材23は、その長手方向の中央に、下方に膨らんだ中央部26が設けられている。第1ホルダ部材23の上面23a及び中央部26の下面26aは、いずれも平坦面である。第2ホルダ部材24は、第1ホルダ部材23と同様なブロック形状であるが、長手方向の中央の中央部27が上方に膨らんでおり、第2ホルダ部材24の下面24a及び中央部27の上面27aが平坦面である。第1ホルダ部材23の上面23aと第2ホルダ部材24の下面24aとは、形状、サイズが同じである。コンタクトプローブ17を保持する際には、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とは、互いに長手方向を揃えて、上面23aと下面24aとを互いに密着させた状態で固定される。なお、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24との間に間隔を設けた状態で、それらが固定されてコンタクトプローブ17を保持するようにしてもよい。
【0019】
第1ホルダ部材23は、その中央部26に複数の第1貫通孔31が設けられ、第2ホルダ部材24は、その中央部27に複数の第2貫通孔32が設けられている。第1貫通孔31は、中央部26をその厚み方向に、また第2貫通孔32は、中央部27をその厚み方向にそれぞれ貫通している。第1貫通孔31内には、コンタクトプローブ17の一端側(プランジャ21側)が、また第2貫通孔32内にはコンタクトプローブ17の他端側(プランジャ21と反対側)が挿入される。第1貫通孔31と第2貫通孔32とは、互いに対応するもの同士がつながって保持孔19を形成する。
【0020】
固定部25は、この例では2組のボルト25a及びナット25bから構成される。第1ホルダ部材23及び第2ホルダ部材24の長手方向の両端には、それぞれ厚み方向に貫通した通し穴23b、24bが形成されている。固定部25は、各ボルト25aを通し穴23b、24bを通してナット25bをそれぞれ螺合させることで、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを固定する。また、ボルト25aからナット25bを外すことによって、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを分離することができる。第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを分離することにより、保持孔19にコンタクトプローブ17を挿入し、また保持孔19からコンタクトプローブ17を抜くことができる。
【0021】
なお、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを固定する固定部25の構成は、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを分離可能に固定するものであればよく、上記のものに限定されない。例えば、固定部として、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24との一方の側面に突起を、他方に係合爪を設けてもよい。この場合、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24を重ねたときに係合爪が突起に係合することでこれらを固定し、係合爪と突起との係合を解除することで、これらを分離することができる。
【0022】
図3において、コンタクトプローブ17は、コンタクトピンサブアセンブリとしてのサブアセンブリ33にプレスフィットピン34を組み付けて構成される。サブアセンブリ33は、上述のプランジャ21、バレル35及び弾性部材としてのコイルバネ37を有する。プランジャ21、プレスフィットピン34、バレル35及びコイルバネ37は、導電性を有する材料で形成されあるいは表面が導電性を有する材料でめっきされており、プランジャ21とプレスフィットピン34とは、バレル35、コイルバネ37を通して電気的に導通している。例えば、プランジャ21、バレル35、プレスフィットピン34は、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅等の銅合金で作製され、コイルバネ37はピアノ線、ステンレスで作製され、それぞれの表面にAu(金)、Ni(ニッケル)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)等のめっきが施されている。
【0023】
バレル35は、内部が中空の円筒状であり、バレル35をその軸心方向Xに貫通した孔39が形成されている。このバレル35は、一端(
図3において下側)に筒状部35aを、他端に軸装着部としての軸固定部35bをそれぞれ有する。また、バレル35は、筒状部35aと軸固定部35bとの間に、第1突出部としての大径部35cが形成され、大径部35cと軸固定部35bとの間に第2突出部としてのボス35dが形成されている。大径部35cは、筒状部35aよりも外径が大きく、バレル35の径方向に突出している。また、ボス35dは、大径部35cよりも外径が小さく、軸固定部35bよりも外径が大きい。すなわち、ボス35dは、軸心方向と直交する断面サイズが大径部35cのものよりも小さい。
【0024】
プランジャ21は、その先端部21aよりも基端部21bの外径が大きい棒状である。この例におけるプランジャ21は、先端が半球状であるが、電極11aの形状等に応じてニードル形、クラウン形、円錐形等とすることができる。このプランジャ21は、基端部21bが筒状部35a内すなわち孔39内に配され、先端部21aが筒状部35aの先端から突出する。筒状部35aの先端は、内周側に曲げられることによって、先端部21aが挿通する開口の内径が先端部21aの外径と同じまたはそれよりも僅かに大きい程度であって基端部21bよりも小さくされている。これにより、基端部21bを筒状部35aの先端で係止して、プランジャ21がバレル35から抜け落ちることを防止しながら、軸心方向Xに移動自在にしてプランジャ21をバレル35が保持する。この例では、筒状部35aの先端から基端部21bを孔39内に挿入した後、上記のように筒状部35aの先端を曲げているが、筒状部35aの先端を、例えば上記のような形状に予め加工しておき、バレル35の他端側(この例では軸固定部35b側)から孔39内にプランジャ21を挿入してもよい。
【0025】
上記の孔39は、バレル35の一端側よりも他端側の内径が小さくされており、軸心方向Xの中央付近に段差面39aが設けられている。コイルバネ37は、その外径が孔39の他端側の内径よりも大きくされている。このコイルバネ37は、バレル35内(孔39内)で段差面39aとプランジャ21の基端部21bとの間に配され、コイルバネ37の一端がプランジャ21の基端部21bに当接し、他端が段差面39aに係止される。これにより、コイルバネ37は、プランジャ21をバレルの他端から一端に向かう方向すなわち筒状部35aの先端から突出させる向きに付勢する。先端部21aが電極11aに接触していない非接触状態では、プランジャ21は、コイルバネ37の付勢によって、筒状部35aの先端で基端部21bが係止された状態にある。
【0026】
なお、バレル35にプランジャ21を付勢して保持する上記構成は、一例であり、これに限定されない。例えば、筒状部35aの先端の開口内にブッシングをはめ込んで開口径を小さくし、プランジャ21の抜け落ちを防止してもよい。また、この例では、付勢部材としてコイルバネ37をバレル35内に配しているが、例えばプランジャ21の先端部21aに設けたフランジとバレル35との間にコイルバネ37を配した構成でもよい。付勢部材として、コイルバネ37に代えて板バネ等を用いてもよい。この例のバレル35は、円筒状であるが、筒状はこれに限定されず、例えば断面形状が三角形や6角形等の角筒状であってもよい。
【0027】
軸固定部35bには、プレスフィットピン34の軸部34aがかしめ固定される。この軸固定部35bは、筒状に形成され、その他端側の開口から中空な内部(この例では軸固定部35bにおける孔39)内にプレスフィットピン34の軸部34aが挿入された状態でかしめられる。これにより、バレル35にプレスフィットピン34が固定されてバレル35の他端にプレスフィット部34bが設けられるとともに、バレル35とプレスフィットピン34とが電気的に接続される。なお、この例では、孔39は、筒状部35aから軸固定部35bまでを貫通しているが、プランジャ21の基端部21bとコイルバネ37が配される孔から切り離して、プレスフィットピン34の軸部34aが挿入される軸固定部35bにおける孔を設けてもよい。
【0028】
プレスフィットピン34は、軸部34a、プレスフィット部34b及び先端部34cを有する。プレスフィットピン34は、例えばワイヤ材を所定形状にプレス加工した後にめっきを施すことで作製されている。軸部34aは、この例では直線的に延びた棒状(角柱状)であり、その一端にプレスフィット部34bが形成されている。先端部34cは、プレスフィット部34bの軸部34aとは反対側の端部に、短い棒状に形成されている。
【0029】
この例のプレスフィットピン34は、ニードルアイ形のものであって、軸部34aの延びる方向と直交する幅方向について、プレスフィット部34bの中央に孔41が形成され、その孔41の両側のアーム42が幅方向に張り出した形状をしている。これにより、プレスフィット部34bは、その幅よりも内径の小さいスルーホール22に圧入した際に、孔41の幅を狭くするようにアーム42が弾性変形し、その弾性力によってアーム42の表面がスルーホール22の内壁面に密着し、安定的に面接触した状態が維持される。また、このプレスフィット部34bとスルーホール22との接触により、ユニット12に中継基板14が組み付けられた状態になる。
【0030】
なお、上記のように、この例におけるプレスフィット部34bの形状は、ニードルアイ形のものであるが、その形状は限定されず、N形、H形等と称されるような様々な形状とすることができる。また、バレル35とプレスフィットピン34との固定手法は、かしめに限られず、例えば、半田付けや溶接などでもよく、軸固定部35bへの軸部34aの圧入により、バレル35にプレスフィットピン34を固定する構成としてもよい。
【0031】
さらに、この例では、プレスフィットピン34をバレル35に固定することによって、バレル35の他端にプレスフィット部34bを設けているが、プレスフィット部34bを設ける手法は、これに限定されない。例えば、軸部34aを省略したプレスフィット部34bを、バレル35の他端に半田付けや溶接等により固定し、プレスフィット部34bとバレル35とを電気的に接続してもよい。
【0032】
上記のように、第1ホルダ部材23には第1貫通孔31が設けられ、第2ホルダ部材24には第2貫通孔32が設けられている。第1貫通孔31は、バレル35の一端である筒状部35aが配される第1小孔部としての小径孔部31aと、大径部35cが配される第1大孔部としての大径孔部31bとがつながって形成されている。この例では、小径孔部31aの内径は、筒状部35aの外径と同じにされており、筒状部35aが小径孔部31aに嵌合すなわち小径孔部31aの内周面に筒状部35aの外周面が接触した状態で嵌まり込む。これにより、軸心方向Xと直交する方向におけるプランジャ21の位置ズレを防止している。
【0033】
また、小径孔部31aの深さ(軸心方向Xの長さ)は、筒状部35aの高さ(軸心方向Xの長さ)よりも小さくなっており、プランジャ21の先端部21aとともに筒状部35aの先端側の一部とが小径孔部31aから下方に突出して露呈している。なお、プランジャ21の先端部21aだけが小径孔部31aから突出するようにしてもよい。
【0034】
大径孔部31bの内径は、大径部35cの外径と同じであり、小径孔部31aの内径よりも大きい。すなわち、大径孔部31bは、軸心方向と直交する断面サイズが小径孔部31aのものよりも大きい。これにより、小径孔部31aと大径孔部31bとの境界に段差面31cを形成している。また、大径孔部31bの深さは、大径部35cの高さと同じである。これにより、大径部35cは、その全てが大径孔部31b内に収容されるように大径孔部31bに嵌合する。このように大径孔部31bに嵌合した大径部35cは、その下側(バレル35の一端側)の端面が段差面31cに接する。これにより、第1貫通孔31内での下方へのバレル35の移動を規制して抜け落ちを防止する。大径部35cの上側(バレル35の他端側)の端面は、第1ホルダ部材23の上面23aと同じ高さになり、第2ホルダ部材24の下面24aに接することにより、バレル35の上方への移動を規制する。これらにより、コンタクトプローブ17が軸心方向Xの移動を規制して保持孔19内に保持される。
【0035】
第2貫通孔32は、内径が一定な孔として形成されており、その内径は軸部34aが固定された軸固定部35b及びプレスフィット部34bを通すことができる大きさに決められている。この例では、第2貫通孔32の内径は、スルーホール22に圧入していない状態でのプレスフィット部34bの幅よりも少し大きい。バレル35のボス35dは、その外径が第2貫通孔32の内径と同じにしてあり、第2貫通孔32に嵌合する。これにより、プレスフィットピン34が第2貫通孔32の軸心からずれることを抑制している。
【0036】
また、第2貫通孔32の深さは、プレスフィット部34bが第2貫通孔32から上側に突出して露呈するように決められている。すなわち、第2貫通孔32の深さよりも、大径部35cの上側の端面からプレスフィット部34bの根本(軸部34aとの境界)までの長さが大きい。第2貫通孔32から軸固定部35bの一部が突出してもよい。
【0037】
なお、コンタクトプローブ17の軸心方向Xの移動を規制するための構成、プレスフィットピン34のずれを抑制するための構成は、上記のものに限定されない。例えば、大径部35cとボス35dとの外径を同じにしてもよい。また、第1ホルダ部材23、第2ホルダ部材24やそれらに形成される貫通孔等の形状などコンタクトプローブ17を保持するホルダ18の構成は、コンタクトプローブ17の形状等に応じたものにすればよい。
【0038】
ユニット12を検査に供する際には、検査に先立ち、
図4(A)に示すように、ホルダ18から突出して露呈された各プレスフィット部34bを中継基板14に形成された各スルーホール22に位置を合わせ、
図4(B)に示すように、各プレスフィット部34bを対応するスルーホール22にそれぞれ圧入して、中継基板14にユニット12を取り付ける。
【0039】
圧入時には、従来のプレスフィットピンと同様に、プレスフィットピン34の先端部34cをガイドにして先端部34cからスルーホール22内にプレスフィット部34bを挿入する。これにより、各アーム42がスルーホール22の開口の周縁に当接してプレスフィット部34bの幅を小さくするように弾性変形することで、プレスフィット部34bがスルーホール22内に押し込まれる。このようにプレスフィット部34bが押し込まれると、アーム42は、その弾性力によって表面が銅めっき部22aに面接触した状態を維持する。これにより、コンタクトプローブ17が中継基板14を介して検査器15に電気的に接続されるとともに、中継基板14にユニット12が組み付けられた状態になる。
【0040】
プレスフィット部34bは、スルーホール22の銅めっき部22aに対して面接触した状態で密着しており、その接触状態が安定している。このため、プレスフィット部34bとスルーホール22の銅めっき部22aとの接触抵抗が低く、良好な接触になっている。また、中継基板14に歪みや撓みが生じていても、上記のような安定した接触状態になっている。
【0041】
検査時には、検査対象の回路基板11がユニット12の下側に配置された状態で、中継基板14とともにユニット12が退避位置から圧接位置に降下する。これにより、
図5に示すように、各コンタクトプローブ17のプランジャ21が回路基板11上の電極11aにそれぞれ当接し、コイルバネ37の付勢に抗して、バレル35からの先端部21aの突出長が小さくなる方向に移動する。このようにして、コイルバネ37の付勢力でプランジャ21の先端部21aが電極11aに圧接される。
【0042】
上記のようにプランジャ21の先端部21aが電極11aに圧接することにより、コンタクトプローブ17が電極11aに電気的に接続される。コンタクトプローブ17は、プレスフィット部34bを介してスルーホール22に接続されているから、各々の電極11aが検査器15に電気的に接続された状態になる。このように、コンタクトプローブ17で検査器15と回路基板11とが接続された状態で、これらの間で信号の授受が行われて回路基板11に対する検査が行われる。
【0043】
検査の完了後、中継基板14とともにユニット12が圧接位置から退避位置に上昇する。このときにユニット12の上昇とともに、コイルバネ37の付勢によってプランジャ21はその突出長が大きくなる方向に移動し、基端部21bが筒状部35aの先端に係止される。この後、ユニット12の上昇とともにプランジャ21が電極11aから離れて上昇する。退避位置の移動後、新たな回路基板11がセットされて、同様にして検査が行われる。
【0044】
上記のように回路基板11の検査が繰り返されるが、プランジャ21の劣化等の理由でコンタクトプローブ17を交換する場合には、まず各スルーホール22からプレスフィット部34bを抜き取って、中継基板14からユニット12を分離する。この後に、2組のボルト25aとナット25bとを緩めて外してから、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを軸心方向Xに互いに離す。そして、第1ホルダ部材23の第1貫通孔31からあるいは第2ホルダ部材24の第2貫通孔32から交換すべきコンタクトプローブ17を抜き取り新たなコンタクトプローブ17を差し込む。この後に、逆の手順で第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを組み合せて2組のボルト25aとナット25bで固定する。
【0045】
上記のようにして、新たなコンタクトプローブ17に交換してから、各コンタクトプローブ17のプレスフィット部34bをスルーホール22にそれぞれ圧入して、中継基板14をユニット12に組み付ける。このようにコンタクトプローブ17の交換においては、プレスフィット部34bをスルーホール22に対して挿抜するだけ電気的な分離、接続が完了するため、交換作業が容易である。
【0046】
なお、スルーホール22に対しプレスフィット部34bの挿抜を繰り返すことでプレスフィット部34bの弾性力が弱くなるので、例えば、スルーホール22に対するプレスフィット部34bの挿抜の回数が所定回数に達したコンタクトプローブ17については劣化の有無に関わらず新たなものに交換することが好ましい。また、中継基板14からユニット12を取り外すごとに、全てのコンタクトプローブ17を交換してもよい。
【0047】
上記の例では、ホルダ18は、複数のコンタクトプローブ17をライン状に並べて保持しているが、二次元に配列して保持してもよい。また、高さ(ホルダ18との間隔)が異なる複数の中継基板14にそれぞれ設けたスルーホール22に対してプレスフィット部34bが圧入される複数のコンタクトプローブ17をホルダ18に保持してもよい。この場合に、例えば、軸心方向Xの長さが異なるコンタクトプローブ17を用いることによって各プランジャ21の先端の高さを揃えることもでき、また同じ長さのコンタクトプローブ17を用いることで異なる高さにプランジャ21の先端を配することもできる。また、1枚の中継基板14の各スルーホール22に、長さが異なる複数のコンタクトプローブ17のプレスフィット部34bを圧入することによって、異なる高さにプランジャ21の先端を配することもできる。異なる高さにプランジャ21の先端を配する構成は、異なる高さに配置された複数の電極11aに同時にプランジャ21を当接する場合等に利用できる。
【0048】
上記のコンタクトプローブの構成は、一例であり、上記のものに限定されない。例えば、バレルの一端に接触部としてのプローブピンを固定して設け、バレルの他端にプレスフィット部をバレルの軸心方向に移動自在に保持する構成でもよい。このような構成では、例えば、バレル内に他端側の軸装着部にプレスフィットピンの軸部を挿入して、軸心方向Xに移動自在にして保持し、軸部に設けたフランジとバレルとの間に配されるように、軸部にはコイルバネを通しておく。これにより、バレルとともにプローブピンをバレルの他端から一端に向かう方向にコイルバネで付勢する。なお、バレルの一端にプランジャをまた他端にプレスフィット部を、それぞれバレルの軸心方向に移動自在に保持し、それらを軸心方向すなわち互いに離れる方向に付勢してもよい。
【0049】
上記の例では、コンタクトピンをコンタクトプローブとした検査装置を例に説明しているが、本発明のコンタクトピン、コンタクトピンサブアセンブリ及びコンタクトピンユニットは、回路基板、各種電子機器、電子部品を組み付けてユニット化されたモジュール、ICパッケージ等の電気部品を装置に組み付けて使用するための電気的な接続にも利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 検査装置
12 コンタクトピンユニット
14 中継基板
17 コンタクトプローブ
18 ホルダ
21 プランジャ
22 スルーホール
23 第1ホルダ部材
24 第2ホルダ部材
25 固定部
31 第1貫通孔
31a 小径孔部
31b 大径孔部
31c 段差面
32 第2貫通孔
33 サブアセンブリ
34 プレスフィットピン
34a 軸部
34b プレスフィット部
35 バレル
35b 軸固定部
35c 大径部
35d ボス
37 コイルバネ
【要約】
【課題】交換を容易にしながら安定した接触状態が得られるコンタクトピン、コンタクトピンサブアセンブリ及びコンタクトピンユニットを提供する。
【解決手段】コンタクトピンとしてのコンタクトプローブ17は、バレル35の一端にプランジャ21が突出して設けられ、バレル35内に収容されたコイルバネ37によって付勢されている。バレル35に設けた筒状の軸固定部35bに挿入したプレスフィットピン34の軸部34aをかしめ固定することで、バレル35の他端に、プレスフィット部34bが設けられている。コンタクトプローブ17の交換の際には、中継基板に設けたスルーホールにプレスフィット部34bを挿抜することによって、中継基板との電気的な分離、接続を行うとともに、コンタクトプローブ17をホルダに保持したユニットと中継基板とを組み付ける。
【選択図】
図3