IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイビー化粧品の特許一覧

<>
  • 特許-Nrf2活性化剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】Nrf2活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20241029BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241029BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241029BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241029BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
A61K31/4745 ZNA
A23L33/105
A61K8/49
A61P9/10
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P29/00 101
A61P39/06
A61P43/00 111
A61Q19/00
C12Q1/02
C12N15/12
C12Q1/66
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023167752
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036365
【氏名又は名称】株式会社アイビー化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】竹入 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓子
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉秀
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110664815(CN,A)
【文献】国際公開第2007/102467(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/099485(WO,A1)
【文献】PNAS,2023年05月,Vol.120, No.22,e2220148120
【文献】Pharmacogn. J.,2016年,Vol.8, No.5,pp.451-458
【文献】Biocatalysis and Agricultural Biotechnology,2019年,Vol.19,Article 101115
【文献】Journal of Pharmacognosy and Phytochemistry,2021年,Vol.10, No.6,pp.31-36
【文献】International Journal of Research and Review,2019年,Vol.6, Issue 8,pp.517-524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
A23L 33/105
C12Q 1/02
C12N 15/12
C12Q 1/66
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるビスインドール型アルカロイドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分とするNrf2活性化剤(但し、アルツハイマー病、多発性硬化症の予防・治療のためのものを除き、タベルネモンタナ・ディバリカタ(Tabernaemontana divaricata)またはその葉のエタノール抽出物もしくはメタノール抽出物からなるものを除く)。
【化1】
[式中、Rは水酸基またはRと一緒になって-O-を示す。RはRと一緒になって-O-またはRと一緒になって-O-を示す。RはRと一緒になって-O-または水素原子を示す。RとRはいずれも水酸基または一緒になって-O-もしくは結合を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nrf2活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
体内における酸化ストレスに対する防御機構の一つとして、転写因子であるNrf2(NF-E2 related factor 2)が、酸化ストレスを軽減するための遺伝子の発現を増加させるなどすることで細胞を保護する役割を果たしていることが知られている。このため、近年、Nrf2を活性化させることによって酸化ストレスが発症や症状の進行に関与する疾患を予防したり治療したりするための成分の探索が精力的に行われており、例えば特許文献1には、クコの果実(クコシ)の抽出物が、Nrf2活性化作用を有することが記載されている。しかしながら、Nrf2活性化作用を有する成分の探索は、今なお意義深い状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-211107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、酸化ストレスが発症や症状の進行に関与する疾患を予防したり治療したりするためのNrf2活性化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、ビスインドール型アルカロイドの1つとして知られている下記の化学構造式で表されるコノフィリンが、Nrf2活性化作用を有することを見出した。
【0006】
【化1】
【0007】
上記の知見に基づいてなされた本発明のNrf2活性化剤は、請求項1記載の通り、下記の一般式(1)で表されるビスインドール型アルカロイドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分とする(但し、アルツハイマー病、多発性硬化症の予防・治療のためのものを除き、タベルネモンタナ・ディバリカタ(Tabernaemontana divaricata)またはその葉のエタノール抽出物もしくはメタノール抽出物からなるものを除く)。
【0008】
【化2】
【0009】
[式中、Rは水酸基またはRと一緒になって-O-を示す。RはRと一緒になって-O-またはRと一緒になって-O-を示す。RはRと一緒になって-O-または水素原子を示す。RとRはいずれも水酸基または一緒になって-O-もしくは結合を示す。]
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化ストレスが発症や症状の進行に関与する疾患を予防したり治療したりするためのNrf2活性化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例における、コノフィリンのNrf2活性化作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のNrf2活性化剤は、下記の一般式(1)で表されるビスインドール型アルカロイドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分とする。
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、Rは水酸基またはRと一緒になって-O-を示す。RはRと一緒になって-O-またはRと一緒になって-O-を示す。RはRと一緒になって-O-または水素原子を示す。RとRはいずれも水酸基または一緒になって-O-もしくは結合を示す。]
【0015】
上記の一般式(1)で表されるビスインドール型アルカロイドの薬学的に許容される塩としては、無機酸塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、有機酸塩(酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シユウ酸塩など)などが挙げられる。
【0016】
上記の一般式(1)で表されるビスインドール型アルカロイドの具体例としては、コノフィリン(Rが水酸基、RとRが一緒になって-O-、RとRが一緒になって-O-)、コノフィリジン(Rが水酸基、RとRが一緒になって-O-、RとRが一緒になって結合)、コノフォリン(RとRが一緒になって-O-、Rが水素原子、RとRが一緒になって-O-)、コノフィリニン(Rが水酸基、RとRが一緒になって-O-、RとRがいずれも水酸基)などが挙げられる。これらの化合物は、抗腫瘍作用などを有する植物由来のビスインドール型アルカロイドとして公知であり、エルウァタミア・ミクロフィラ(Ervatamia microphylla)やタベルネモンタナ・ディバリカタ(Tabernaemontana divaricata)などのキョウチクトウ科の植物から単離精製することができる(必要であれば例えば特許第4696303号公報を参照のこと)。しかしながら、本発明のNrf2活性化剤の有効成分として用いるこれらの化合物は、単離精製されたものに限定されず、これらの化合物を含む溶媒抽出物などの形態であってもよい。また、これらの化合物は、有機化学的手法で合成されたものであってもよく、不斉炭素の存在に基づく立体異性体(エナンチオ異性体やジアステレオ異性体)やラセミ体であってもよい。また、これらの化合物は、2種類以上の化合物の混合物であってもよく、2種類以上の化合物を含む溶媒抽出物などの形態であってもよい。なお、ここで「溶媒抽出物」とは、抽出溶媒としての水や有機溶媒(メタノールやエタノールやイソプロパノールに例示されるモノアルコールや1,3-ブチレングリコールに例示される多価アルコールなどのアルコール、エーテル、ヘキサン、酢酸エチル、アセトニトリルなど。これらは水を含んでもよい)を用いて例えば上記の植物から抽出されるエキスを意味する。
【0017】
本発明におけるNrf2活性化剤は、各種の製剤形態に製剤化することでそれ自体を医薬品や健康食品などとして服用や摂取することができることに加え、各種の飲食品に配合して摂取することができる。また、本発明におけるNrf2活性化剤は、軟膏、クリーム、ローションといった外用剤の形態で皮膚に塗布することもできる。その服用量や摂取量や塗布量は、適用対象者の年齢や性別や体重、症状の程度などに基づいて適宜決定することができ、適切量を服用や摂取や塗布することにより、そのNrf2活性化作用に基づいて、アルツハイマー病、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、関節リウマチ、光による皮膚の障害や老化など、酸化ストレスが発症や症状の進行に関与する疾患の予防効果や治療効果(美肌効果や美白効果を含む)を期待することができる。
【実施例
【0018】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0019】
実験例1:コノフィリンのNrf2活性化作用
(実験方法)
キョウチクトウ科の植物であるエルウァタミア・ミクロフィラから特許第4696303号公報に記載の方法によって単離精製されたコノフィリン(結晶)のNrf2活性化作用を、Nrf2抗酸化経路のモニタリングシステムとして知られているARE(抗酸化応答エレメント:Antioxidant Response Element)-ルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価した。具体的には、ルシフェラーゼレポーターアッセイ用ベクターであるpNL2.2[NlucP/Hygro]Vector(Promega社)のマルチクローニングサイトに、ARE配列を2回繰り返した配列からなるポリヌクレオチド(TAGCTTGGAAATGACATTGCTAATGGTGACAAAGCAACTTTTAGCTTGGAAATGACATTGCTAATGGTGACAAAGCAACTTT:配列番号1)を組み込んだプラスミドを、Cell Line Nucleofector Kit V(Lonza社)を用いてHaCaT細胞(DKFZ)にエレクトロポレーションによって導入し、24時間後、終濃度600μg/mLのハイグロマイシンを添加して薬剤耐性細胞セレクションを行うことで、ハイグロマイシン耐性能を有するARE-ルシフェラーゼレポーター安定発現HaCaT細胞株を樹立した。96ウェルプレートに、1ウェルあたり約10000個のARE-ルシフェラーゼレポーター安定発現HaCaT細胞株を100μLの培地(10%FBS(Gibco社)と200mmol/L L-グルタミン溶液(×100)(富士フイルム和光純薬社)を添加した高グルコースDMEM (Sigma社)、以下同じ)で播種し、37℃、5%COインキュベーター内で16~24時間培養した。その後、コノフィリンを様々な終濃度になるようにDMSOに溶解して添加した培地(DMSO終濃度0.1%)に交換し、さらに24時間培養した。24時間後、Nano-Glo Luciferase Assay System(Promega社)を用い、プロトコルに従ってルシフェラーゼ活性を測定することで、コノフィリンのNrf2活性化作用を評価した。
【0020】
(実験結果)
コントロールとして終濃度0.1%のDMSOのみを添加した場合のルシフェラーゼ活性を1とした相対値として図1に示す(CNPはコノフィリンを表す)。図1から明らかなように、コノフィリンは、濃度依存的にルシフェラーゼ活性を高めた。コノフィリンを終濃度1μg/mLになるようにDMSOに溶解して添加する際に、あわせてNrf2阻害剤であるML-385(Cayman Chemical社)を終濃度20μMになるようにDMSOに溶解して添加すると(DMSO終濃度0.1%)、ルシフェラーゼ活性は大きく低下した。以上の結果から、コノフィリンのNrf2活性化作用を確認することができた。
【0021】
製剤例1:錠剤
以下の成分組成からなるNrf2活性化作用を有する錠剤を自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
コノフィリン 1
乳糖 80
ステアリン酸マグネシウム 19
【0022】
製剤例2:ビスケット
以下の成分組成からなるNrf2活性化作用を有するビスケットを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
コノフィリン 1
薄力粉 32
全卵 16
バター 16
砂糖 24
水 10
ベーキングパウダー 1
【0023】
製剤例3:ゼリー
以下の成分組成からなるNrf2活性化作用を有するゼリーを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
コノフィリン 0.01
ゲル化剤 1.3
砂糖 20
pH調整剤 2.5
水 76.19
【0024】
製剤例4:軟膏
以下の成分組成からなるNrf2活性化作用を有する軟膏を自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
コノフィリン 5
白色ワセリン 95
【0025】
製剤例5:クリーム
以下の成分組成からなるNrf2活性化作用を有するクリームを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
コノフィリン 5
白色ワセリン 30
セタノール 15
ラウリル硫酸ナトリウム 1
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
水 48.8
【0026】
製剤例6:ローション
以下の成分組成からなるNrf2活性化作用を有するローションを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
コノフィリン 10
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
エタノール 5
パラベン 0.2
水 84.3
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、酸化ストレスが発症や症状の進行に関与する疾患を予防したり治療したりするためのNrf2活性化剤を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。
【要約】      (修正有)
【課題】酸化ストレスが発症や症状の進行に関与する疾患を予防したり治療したりするためのNrf2活性化剤を提供すること。
【解決手段】下記構造式の化合物に例示されるビスインドール型アルカロイドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分とする。

【選択図】図1
図1
【配列表】
0007578315000001.xml