(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】フィラメント3次元結合体の製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 3/033 20120101AFI20241029BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20241029BHJP
D04H 3/02 20060101ALI20241029BHJP
D04H 3/07 20120101ALI20241029BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20241029BHJP
A47C 27/12 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
D04H3/033
D01D5/08 A
D04H3/02
D04H3/07
D04H3/16
A47C27/12 F
(21)【出願番号】P 2023173551
(22)【出願日】2023-10-05
【審査請求日】2024-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌和
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-175809(JP,A)
【文献】特開2023-025440(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035736(WO,A1)
【文献】国際公開第2024/071296(WO,A1)
【文献】特開2018-028161(JP,A)
【文献】特開2012-127046(JP,A)
【文献】特開平01-207462(JP,A)
【文献】特開平08-099093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
D01D1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本のフィラメントが3次元に結合した結合体の製造装置であって、
多数本の直線状の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群を供給する溶融フィラメント供給部と、
前記溶融フィラメント群の供給方向に対して垂直な第1方向に離隔対向し、前記溶融フィラメント群の前記第1方向の両端部を受け止めて、対向する相手方向に案内する傾斜面を有する一対の案内部材と、
前記案内部材の傾斜面に冷却水を供給する冷却水供給部と、
を備え、
前記一対の案内部材が前記傾斜面の表面に
、水との接触角が90°未満である親水性層を有
し、
前記親水性層が、マイクロクラッククロム層、またはニッケルのマトリックスの中にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を含む複合メッキ層であって、前記PTFE粒子の表面を親水化した複合メッキ層であることを特徴とするフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項2】
前記一対の案内部材が、前記傾斜面を有する傾斜部と、前記傾斜部の前記溶融フィラメント群の供給方向下流端に接続し、前記溶融フィラメント群の供給方向と平行で供給方向下流側に延在する平行部とを有し、
前記平行部の対向する側面も表面に
前記親水性層を有している
請求項
1記載のフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項3】
多数本のフィラメントが3次元に結合した結合体の製造装置であって、
多数本の直線状の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群を供給する溶融フィラメント供給部と、
前記溶融フィラメント群の供給方向に対して垂直な第1方向に離隔対向し、前記溶融フィラメント群の前記第1方向の両端部を受け止めて、対向する相手方向に案内する傾斜面を有する一対の案内部材と、
前記案内部材の傾斜面に冷却水を供給する冷却水供給部と、
を備え、
前記一対の案内部材の前記傾斜面に、前記第1方向に対して垂直な第2方向と交差する方向に多数の溝が形成され、
前記一対の案内部材が前記傾斜面の表面に
、水との接触角が90°未満である親水性層を有することを特徴とするフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項4】
前記多数の溝が所定間隔で平行に延在している請求項
3記載のフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項5】
前記多数の溝の延在方向に対して垂直な断面形状が、三角形状、四角形状、円弧状のいずれかである請求項
3又は4記載のフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項6】
前記多数の溝の前記第2方向との交差角度が90°である請求項
3又は4記載のフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項7】
前記多数の溝が、
前記第2方向との交差角度が30°以上60°以下である第1溝群と、
前記第2方向との交差角度が120°以上150°以下である第2溝群と、
を有している請求項
3又は4記載のフィラメント3次元結合体の製造装置。
【請求項8】
前記第1溝群の溝が所定間隔で平行に延在し、前記第2溝群の溝も所定間隔で平行に延在している請求項
7記載のフィラメント3次元結合体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスや枕などのクッション素材として使用できるフィラメント3次元結合体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リサイクルに手間がかかる金属スプリングやウレタンフォームの欠点を克服するクッション素材として、熱可塑性エラストマーからなるフィラメントを3次元的に融着結合させて得られるフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)が注目されている。このクッション素材は、リサイクルが容易な上、蒸れにくく水洗いができる利点がある。
【0003】
フィラメント3次元結合体の製造方法として、例えば特許文献1には、鉛直方向下向きに流れ落ちる多数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群(溶融状態の熱可塑性樹脂の線状集合体)を冷却水中に落下させ、水の浮力によって溶融フィラメントループを形成させると同時に、ループ形成時の撓みによって溶融フィラメント同士を接触させ、その接触点を融着結合させてフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)を製造する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、フィラメント3次元結合体の厚みを一定にするために、溶融フィラメント群の厚み方向両端部から溶融フィラメント群の厚み方向中央部に向かって傾斜する一対のシュート(案内部材)を設けるとともに、シュート表面の全面に冷却水を行き渡らせるために、シュート表面を晒しなどの透水シートで覆い、その透水シートに冷却水を供給することによって、シュート表面の全面に冷却水層を形成することも記載されている。冷却水を行き渡らせることにより、シュート表面への溶融フィラメントの付着を防止する効果が得られる。
【0005】
しかしながら、シュート表面を透水シートで覆う手法においては、透水シートにしわが発生したり、異物(サビ等)が付着する不具合や、長期間の製造により透水シートが摩耗し、破れるなどの不具合が生じる欠点があった。その欠点を克服する方法として、特許文献2には、シュート表面をサンドブラストによって粗面化することによって、透水シートを用いることなく、シュート表面に冷却水層を形成することが記載されている。
【0006】
図10(a)は、シュート(案内部材)531の表面531aを、サンドブラスト処理によって粗面化した場合の状態を示す概念図である。本図に示すように、表面531aの表面には凹凸が形成されている。
図10(b)は、シュート531の表面531aに供給される冷却水が、当該凹凸によって滞留または減速され、冷却水膜Wが形成されている様子を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-218116号公報
【文献】国際公開第2012/35736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、サンドブラスト処理では凹部の深さや広さをシュート表面の全てのエリアで一定とすることは難しく、凹部の傾斜角が小さいので、冷却水を滞留または減速させる能力が低く、冷却水が少ない場合、均一な冷却水の薄膜を形成するのが難しかった。局所的であっても、凹部が浅いエリア(相対的に凸部となるエリア)では冷却水を滞留または減速させる能力が低下するので、シュート表面に冷却水を供給しても、水の表面張力で冷却水膜が形成されないまま流れ落ちることがある。その結果、冷却水膜が形成されていないシュート表面に溶融フィラメントが一時的に付着して、シュート表面を移動するスピードが不規則になることでフィラメント3次元結合体が不均一になるといった課題があった。
【0009】
なお、シュート表面に確実に冷却水膜を形成するために、冷却水の供給量を多くすると、溶融フィラメントが冷えて、溶融フィラメント同士の融着点における接着強度が低下するという問題が生じる。また、凹部が浅いエリアにおいて冷却水を滞留または減速させるために、シュート表面を全体的に粗くすると、溶融フィラメントがシュート表面で滑りにくくなるので、溶融フィラメントが一時的に付着しやすくなるといった二律背反の課題がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、溶融フィラメント同士の融着点における接着強度が低下することなく、より均一なフィラメント3次元結合体を形成することが可能となるフィラメント3次元結合体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るフィラメント3次元結合体の製造装置は、多数本のフィラメントが3次元に結合した結合体の製造装置であって、多数本の直線状の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群を供給する溶融フィラメント供給部と、前記溶融フィラメント群の供給方向に対して垂直な第1方向に離隔対向し、前記溶融フィラメント群の前記第1方向の両端部を受け止めて、対向する相手方向に案内する傾斜面を有する一対の案内部材と、前記案内部材の傾斜面に冷却水を供給する冷却水供給部とを備え、前記一対の案内部材が前記傾斜面の表面に親水性層を有することを特徴とする。
【0012】
なお、本明細書において「親水性」とは、水との接触角が90°未満であることをいうものとする。「親水性層」とは、後述する水膜保持性の評価方法において水膜保持性がある層とする。
【0013】
前記構成の製造装置において、前記親水性層が、クロム(Cr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)の群から選ばれた少なくとも1種の金属からなるメッキ層であるのが好ましい。
【0014】
また前記構成の製造装置において、前記一対の案内部材が、前記傾斜面を有する傾斜部と、前記傾斜部の前記溶融フィラメント群の供給方向下流端に接続し、前記溶融フィラメント群の供給方向と平行で供給方向下流側に延在する平行部とを有し、前記平行部の対向する側面も表面に親水性層を有している構成としてもよい。
【0015】
また前記構成の製造装置において、前記一対の案内部材の前記傾斜面に、前記第1方向に対して垂直な第2方向と交差する方向に多数の溝が形成されている構成としてもよい。
【0016】
前記多数の溝は所定間隔で平行に延在しているのが好ましい。
【0017】
また前記多数の溝の延在方向に対して垂直な断面形状は、三角形状、四角形状、円弧状のいずれかであるのが好ましい。
【0018】
また前記多数の溝の前記第2方向との交差角度は90°であってもよい。
【0019】
また前記多数の溝が、前記第2方向との交差角度が30°以上60°以下である第1溝群と、前記第2方向との交差角度が120°以上150°以下である第2溝群とを有していてもよい。
【0020】
前記第1溝群の溝は所定間隔で平行に延在し、前記第2溝群の溝も所定間隔で平行に延在しているのが好ましい。
【0021】
なお、本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置によれば、溶融フィラメント同士の融着点における接着強度が低下することなく、より均一なフィラメント3次元結合体を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置の概念図である。
【
図2】
図1に示す製造装置のA-A’線断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るノズル部の底面図である。
【
図4】第1実施形態に係るシュートの斜視図である。
【
図5】
図4のシュートの左右方向に垂直な断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るシュートの斜視図である。
【
図7】
図6のシュートの前後方向に垂直な断面図である。
【
図8】第3実施形態に係るシュートの斜視図である。
【
図9】
図8のシュートの前後方向に垂直な断面図である。
【
図10】表面を粗面化した従来のシュートの概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、以下の説明において「前後方向」が「第1方向」、「左右方向」が「第2方向」、上から下に向かう方向が溶融フィラメント群の「供給方向」に相当する。また以下の各実施形態では同一または対応する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。
【0025】
(第1実施形態)
まず本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置1の概念図である。また
図2は、
図1に示す製造装置1のA-A’線断面図である。
【0026】
フィラメント3次元結合体の製造装置1は、直径が0.5mm~3mmの多数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFを鉛直方向下方へ排出する溶融フィラメント供給部10と、溶融フィラメント群MFの前後方向両端部を受け止めて、溶融フィラメント群MFの前後方向中央方向に案内する、換言すると溶融フィラメント群MFの前後方向の厚みを薄くする方向に寄せる一対のシュート(案内部材)5a,5bと、シュート5a,5bの上部に冷却水を各々供給する冷却水供給部4a,4bと、溶融フィラメント群MFを3次元的に絡め合わせると同時に、接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部20とを備える。
【0027】
(溶融フィラメント供給部)
溶融フィラメント供給部10は、加圧溶融部(押出機)11とフィラメント排出部(ダイ)12を備える。加圧溶融部11は、シリンダー11aと、シリンダー11a内に回転可能に格納されたスクリュー14と、スクリュー14を駆動するスクリューモーター15と、シリンダー11aを加熱するヒーター16と、シリンダー11a内に熱可塑性樹脂を投入するための材料投入部(ホッパー)13と、不図示の複数の温度センサを備える。材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂はヒーター16によって加熱溶融されながらスクリュー14で前方に搬送される。
【0028】
シリンダー11aの前方端部には、熱可塑性樹脂をフィラメント排出部12に向けて排出するためのシリンダー排出口11bが形成されている。ヒーター16の加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部10に設けた温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0029】
フィラメント排出部12は、ノズル部17、ダイヒーター18、および図示しない複数の温度センサを備える。フィラメント排出部12の内部にはシリンダー排出口11bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル部17に導く導流路12aが形成されている。
【0030】
ノズル部17は、多数のノズル孔17a(
図3に図示)が形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路12aの最下流部にあたるフィラメント排出部12の下部に設けられている。なお、ノズル部17に形成される多数のノズル孔17aについては、後ほど
図3を用いて説明する。
【0031】
ダイヒーター18は、左右方向に複数個(
図2に示す例では18a~18fの6個)が設けられており、フィラメント排出部12の導流路12aを加熱する。ダイヒーター18の加熱温度は、例えばフィラメント排出部12に設けた不図示の温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0032】
フィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0033】
材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー11a内で加熱溶融され、スクリュー14により押し出されるようにして、溶融熱可塑性樹脂としてシリンダー排出口11bからフィラメント排出部12の導流路12aに供給される。その後、ノズル部17の多数のノズル孔17aのそれぞれから下方に向けて溶融フィラメントが排出され、溶融フィラメント群MFが形成される。
【0034】
(融着結合形成部)
融着結合形成部20は、水の浮力によって溶融フィラメントのループを形成させると同時に、ループ形成時の撓みによって溶融フィラメント同士を接触させ、その接触点を融着結合させた後冷却固化して3次元結合体を形成させる。融着結合形成部20は、冷却水槽23、一対のコンベア24a、24b、複数の搬送ローラ25a~25hを有する。冷却水槽23は、冷却水を溜めておくための水槽である。冷却水槽23の内部に、一対のコンベア24a、24bと、複数の搬送ローラ25a~25hが配設されている。一対のコンベア24a、24bおよび複数の搬送ローラ25a~25hは、不図示の駆動モーターにより駆動される。
【0035】
(ノズル部)
図3は、ノズル部17の底面図である。ノズル部17には、溶融フィラメント群MFを排出する多数のノズル孔17aが形成されている。本実施形態の例においては、ノズル孔17aの断面形状は内径1mmの円形とし、隣接するノズル孔17a間の距離(ピッチ)は10mmとしている。但し、製造しようとするフィラメント3次元結合体の仕様等に基づき、ノズル孔17aの形状、内径、隣合うノズル孔17aの間隔、および、各ノズル孔17aの配置パターン等を適宜調整することができる。
【0036】
(シュート)
図4は、
図1に示す一対のシュート5a,5bの概略的な斜視図である。
図5は、一対のシュート5a,5bの左右方向に垂直な断面図である。以下のシュート5a,5bに関する説明においては、シュート5aおよびシュート5bの一方について説明し、他方については説明を省略することがある。
【0037】
一対のシュート5a,5bは、溶融フィラメント供給部10から供給される溶融フィラメント群MFの前後方向両端部を受け止めて、溶融フィラメント群MFの前後方向中央方向に案内し、溶融フィラメント群MFの前後方向の厚みを薄くする方向に寄せ、溶融フィラメント群MFの前後方向の厚み、ひいてはフィラメント3次元結合体の前後方向の厚みを調整する。
【0038】
一対のシュート5a,5bは、前後方向(第1方向)に所定距離を隔てて離隔対向して配置されている。具体的には、一対のシュート5a,5bは、前後方向および左右方向を含む仮想平面VP(
図5に図示)に対して面対称に配置されている。一対のシュート5a,5bは、溶融フィラメント群MFの供給方向下流側に向かうにしたがって対向する相手側シュートに向かう傾斜部51a,51bと、傾斜部51a,51bの下流端に接続し、溶融フィラメント群MFの供給方向と平行で供給方向下流側に延在する平行部52a,52bとを有する。傾斜部51a,51bと平行部52a,52bとは一体に形成されている。傾斜部51a,51bと平行部52a,52bの材質は、所定の耐熱性と防錆性、加工性などを備える限りにおいて特に限定はなく、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはポリカーボネートなどの耐熱性の樹脂などが挙げられる。これらの中でもステンレス鋼や銅などの金属材料が好適に使用される。
【0039】
傾斜部51a,51bは、溶融フィラメント群MFの前後方向両端部を受け止めて、溶融フィラメント群MFの前後方向中央方向に案内する。平行部52a,52bは、溶融フィラメント群MFの前後方向の厚み、ひいてはフィラメント3次元結合体の前後方向の厚みを調整する。傾斜部51a,51bの上面が傾斜面53a,53bを構成する。
【0040】
図5に示すように、一対のシュート5a,5bは、傾斜面53a,53bおよび平行部52a,52bの対向する内側面の表面に連続した親水性層HLを有する。親水性層HLの水との好ましい接触角は30°以下であり、より好ましくは10°以下である。なお、本発明では、親水性層HLは、少なくとも傾斜面53a,53bに形成されていればよく、平行部52a,52bの対向内側面まで形成されている必要はないが、より均一なフィラメント3次元結合体TDFを形成する観点からは、少なくとも冷却水槽23の貯留水の水面から露出している上側部(
図1及び
図2に示す製造装置では平行部の途中部)までは親水性層HLが形成されているのが望ましい。
【0041】
ノズル部17から排出された、多数本の直線状の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFの前後方向両端部は、一対のシュート5a,5bの傾斜面53a,53bで受け止められ、溶融フィラメント群MFの前後方向中央方向に案内される。このとき、一対のシュート5a,5bの傾斜面53a,53bの表面には親水性層HLが形成されているので、後述する冷却水供給部4a,4bから供給される冷却水は、傾斜面53a,53bの全体をムラ無く流れ、傾斜面53a,53bの表面には冷却水膜が安定的に形成される。これにより、一対のシュート5a,5bに受け止められた溶融フィラメント群MFは、円滑に前後方向中央方向に案内されて、厚み(前後方向寸法)が整えられるとともに、均一なフィラメント3次元結合体の前駆体が形成される。
【0042】
傾斜面53a,53bに設ける親水性層HLとしては、クロム(Cr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)の群から選ばれた少なくとも1種の金属のメッキ層が挙げられる。これらの中でも、クロム(Cr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)の群から選ばれた少なくとも1種の金属メッキ層が好ましい。
【0043】
メッキの方法に特に限定はなく、溶融メッキ法、電気メッキ法、浸透メッキ法、溶射法、化学メッキ法などいずれの方法であってもよい。これらのメッキ法による親水性層HLの厚さに特に限定はないが、通常、0.1μm~300μmの範囲が好ましい。
【0044】
また本発明の親水性層HLは、メッキ層中に親水性微粒子を分散させた複合メッキ層であってもよい。親水性微粒子としては、例えば、ナトリウム処理により親水化させたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、親水性シリカ、ナノダイヤモンド、SiC(炭化ケイ素)、BN(窒化ホウ素)の粒子に界面活性剤を被覆したもの等が挙げられる。
【0045】
(親水性樹脂層)
本発明における親水性層を構成する材料は、金属メッキ材料の他、耐熱性を有していれば樹脂材料や無機材料であってもよい。親水性の樹脂材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、多糖類、及びゼラチンなどが挙げられる。多糖類ないしゼラチンはその誘導体であってもよく、その例は特に限定されないが、例えば、任意の置換基を導入した化合物が挙げられる。なかでも親水性を付与する観点から置換基としては、カルボキシル基、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基、ヒドロキシル基、アミノ基などが好ましい。親水性の無機材料としては、例えばガラスが挙げられる。ガラス材料は板状のガラスを傾斜面53a,53bに設けてもよいし、ガラスコーティング剤を用いて傾斜面53a,53bの樹脂や金属表面に被覆してもよい。
【0046】
使用する親水性樹脂の分子量は特に限定はないが、一般に、重量平均分子量で1.0×104~1.0×107が好ましく、1.0×104~5.0×106がより好ましい。この分子量を前記下限値以上とすることで、はじきなどによる欠陥を低減でき、性能を安定させることができ好ましい。一方、前記上限値以下とすることで、調液時に溶媒に溶解しやすくなり、製造適性が向上させることができ好ましい。
【0047】
(冷却水供給部)
また、冷却水供給部4a,4bは、シュート5a,5bの傾斜面に、満遍なく継続的に冷却水を供給する。冷却水供給部4a,4bは、シュート5a,5bの上端の上方に、シュート5a,5bの前後方向(第2方向)の略全域にわたって設けられている。なお、冷却水供給部4a,4bによってシュート5a,5bに供給される冷却水としては、例えば、製造装置1の外部から供給される水が用いられてもよいし、あるいは冷却水槽23内の冷却水の一部が用いられてもよい。
【0048】
(フィラメント3次元結合体の形成)
ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFは、シュート5a,5bによって厚み(前後方向寸法)が整えられた後、冷却水槽23内の冷却水の浮力作用によって撓み、その中の各溶融フィラメントはランダムなループを形成する。ランダムなループは隣接するランダムなループと3次元的に溶融状態で絡み合い、接触点が融着結合して3次元的なフィラメントの結合体が形成される。
【0049】
その後、一対のコンベア24a、24bと複数の搬送ローラ25a~25hによって、冷却水槽23内の冷却水で冷却されながら搬送されることによって、当該結合体はフィラメント3次元結合体TDFとして冷却水槽21外へ排出される。このようにして、フィラメント3次元結合体TDFが製造される。
【0050】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る製造装置ついて説明する。なお、第2実施形態に係る製造装置は、一対のシュートの形態を除き、第1実施形態の製造装置と基本的に同じ構成である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0051】
図6は,第2実施形態に使用する一対のシュート6a,6bの斜視図である。
図6に示す一対のシュート6a,6bは、傾斜部61a,61bの傾斜面63a,63bに多数の溝GLが、所定間隔で平行に、左右方向(第2方向)に対して垂直方向(θa=90°)に形成されている。そして、多数の溝GLは、傾斜面63a,63bの下端から平行部62a,62bの互いに向かい合う面にも連続して形成されている。なお、多数の溝GLは、少なくとも傾斜面63a,63bに形成されていればよく、平行部62a,62bの向かい合う面にまで形成されている必要はないが、より均一なフィラメント3次元結合体TDFを形成する観点からは、少なくとも冷却水槽23の貯留水の水面から露出している上側部(
図1及び
図2に示す製造装置では平行部の途中部)までは多数の溝GLが形成されているのが望ましい。
【0052】
図7は、傾斜面63a,63bに対して垂直で左右方向に平行な傾斜部61a,61bの部分断面図である。傾斜面63a,63bの表面には多数の溝GLの内周面を含めて親水性層HLが設けられている。親水性層HLの材質および形成方法は第1実施形態で例示したものがここでも例示される。
【0053】
冷却水供給部4a,4bからシュート5a,5bの傾斜部61a,61bの傾斜面63a,63bに供給された冷却水は、傾斜面63a,63bの上面に形成されている多数の溝GLの中にその一部が入り込む。多数の溝GLの中に入り込んだ冷却水は流速が著しく遅くなってトラップ(滞留または減速)水となる。冷却水供給部4a,4bからさらに冷却水が供給され、傾斜面を流れ落ちる冷却水は、多数の溝GLの中のトラップ水との表面張力によって引き止められて隣り合う2つの溝GLの間に膜を形成し、それらが繋がって傾斜面の全体により均一な冷却水の薄膜が形成される。これにより一対のシュート6a,6bに受け止められた溶融フィラメント群MFは、一層円滑に前後方向中央方向に案内されて、厚み(前後方向寸法)が整えられるとともに、均一なフィラメント3次元結合体TDFが形成される。
【0054】
なお、製造装置1の稼働直後は溝GLの中の気泡が抜けていないことがあるので、製造装置1の稼働前に、シュート6a,6bの傾斜面63a,63bに向けて水蒸気を供給して、多数の溝GLの中から気泡を追い出すようにしてもよい。
【0055】
溝GLの大きさや形状などに特に限定はなく、シュート6a,6bの傾斜面63a,63bに均一な冷却水の薄膜が形成されるよう適宜決定すればよい。一般に、溝GLの幅(左右方向の長さ)は0.1mm~1.0mmの範囲が好ましい。溝GLの深さは0.1mm~3mmの範囲が好ましい。隣合う溝GLの間隔は1mm~7mmの範囲が好ましい。また、溝GL、の断面(溝GLが延びる方向と直交する平面で切断した場合の断面)の形状に限定はなく、四角形の他、三角形などの多角形や円弧状であってもよい。但し四角形において、上側の辺は溝GLの開口面である。本実施形態では、全ての溝GLにおいて、断面の大きさ及び形状は同一である。
【0056】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態に係る製造装置ついて説明する。なお、第3実施形態に係る製造装置は、シュートに形成された溝の形態を除き、基本的に第2実施形態の製造装置と同じ構成である。以下の説明では、第2実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第2実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0057】
図8は,第3実施形態に係る一対のシュート7a,7bの斜視図である。
図8に示す一対のシュート7a,7bは、傾斜部71a,71bの傾斜面73a,73bおよび平行部72a,72bの向かい合う面に、互いに交差する第1溝群G1と第2溝群G2とを有する。第1溝群G1は、所定間隔で互いに平行で、左右方向(第2方向)に対して所定角度θ1で交差する多数の第1溝GL1から構成される。第2溝群G2は、所定間隔で互いに平行で、左右方向(第2方向)に対して所定角度θ2で交差する多数の第2溝GL2から構成される。左右方向に対する第1溝群G1の交差角度θ1は30°~60°の範囲であり、第2溝群G2の交差角度θ2は120°~150°の範囲であるのが好ましい。
【0058】
第1溝群G1および第2溝群G2は、傾斜面73a,73bの下端から平行部72a,72bの互いに向かい合う面にも連続して形成されている。なお、第1溝群G1および第2溝群G2は、少なくとも傾斜面73a,73bに形成されていればよく、平行部72a,72bの向かい合う面にまで形成されている必要はないが、より均一なフィラメント3次元結合体TDFを形成する観点からは、少なくとも冷却水槽23の貯留水の水面から露出している上側部(
図1及び
図2に示す製造装置では平行部の途中部)までは第1溝群G1および第2溝群G2が形成されているのが望ましい。
【0059】
図9は、傾斜面73a,73bに対して垂直で左右方向に平行な傾斜部71a,71bの部分断面図である。傾斜面73a,73bの表面には第1溝群G1および第2溝群G2の溝GL1,GL2の内周面を含めて親水性層HLが設けられている。親水性層HLの材質および形成方法は第1実施形態で例示したものがここでも例示される。
【0060】
第1溝群G1および第2溝群G2を構成する各溝GL1,GL2の大きさや形状については、第2実施形態で例示したものがここでも例示される。
【0061】
このような構成のシュート7a,7bによれば、第2実施形態のシュート6a,6bと同様に、シュート7a,7bの傾斜面73a,73bに供給された冷却水の一部が第1溝群G1および第2溝群G2の溝GL1,GL2の中に確実にトラップ(滞留または減速)され、さらに供給された冷却水が、第1溝群G1および第2溝群G2の溝GL1,GL2の中のトラップ水との表面張力によって引き止められて隣り合う2つの溝の間に膜が形成され、それらが繋がって傾斜面73a,73bの全体により均一な冷却水の薄膜が形成される。加えて、本実施形態のシュート7a,7bでは、溶融フィラメントの滑り落下をよくするためにシュート7a,7bの傾斜面73a,73bの角度を鉛直方向に大きくした場合でも、第1溝群G1および第2溝群G2の溝GL1,GL2の中の冷却水が滞留しあるいは急速な流下が抑えられて傾斜面73a,73bに均一な冷却水の薄膜が形成・維持される。これにより、溶融フィラメント群MFの傾斜面73a,73bへの付着が抑制されて、シュート7a,7bに受け止められた溶融フィラメント群MFは、円滑に前後方向中央方向に案内されて、厚み(前後方向寸法)が整えられるとともに、均一なフィラメント3次元結合体TDFが形成される。
【0062】
(その他の変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0063】
例えば、以上説明した実施形態では、シュートの傾斜部および平行部はいずれも平板状であったが、左右方向から見て、シュートの傾斜部および平行部は上または下方向に凸となった円弧状であってもよい。また傾斜部と平行部との接続部分が円弧状であっても構わない。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組合せてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0066】
実施例1
酸化クロム(CrO3)を含むマイクロクラック浴(HEEF浴)中で、鉛合金(PbO2)を陽極に配置し、ステンレス鋼(SUS304)製のシュート(溝なし)を陰極に配置し、ステンレス製のシュートの表面にマイクロクラッククロムメッキ処理を施し、ステンレス製シュートの表面に層厚250μmの親水性メッキ層(マイクロクラッククロム層)を形成した。
作製したシュートについて、下記の水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0067】
実施例2
シュートの材質をアルミニウム(Al)にした以外は実施例1と同様にしてシュートを作製し、作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
シュートの材質を銅(Cu)にした以外は実施例1と同様にしてシュートを作製し、作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
シュートの材質をポリカーボネートにした以外は実施例1と同様にしてシュートを作製し、作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0070】
実施例5
無電解ニッケル-リンメッキ浴中に、質量平均粒子径が0.5μmのPTFE粒子(ポリテトラフルオロエチレン粒子)を分散させたPTFE複合メッキ浴(HEEF浴)中にステンレス鋼(SUS304)製のシュートを入れることにより、シュートの表面に層厚30μmのメッキ層(ニッケルのマトリックスの中にPTFEを含む複合層)を設けた。
生成したニッケルPTFE複合メッキ層の成分は、ニッケル84w%、リン8w%、PTFE8Wt%であった。
得られたシュートを、金属ナトリウム1質量%を液体アンモニアに溶解した溶液中に浸漬することにより、PTFE粒子の表面を親水化し、シュートの表面に親水性メッキ層を設けた。
作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0071】
比較例1
シュートの表面に親水性メッキ層を設けなかった以外は実施例1と同様にしてシュートを作製し、作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0072】
比較例2
シュートの表面に親水性メッキ層を設けなかった以外は実施例2と同様にしてシュートを作製し、作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0073】
比較例3
シュートの表面に親水性メッキ層を設けなかった以外は実施例3と同様にしてシュートを作製し、作製したシュートの水膜保持性の評価およびシュートへの溶融フィラメントの融着観察を行った。評価および観察の結果を表1に示す。
【0074】
(水膜保持性の評価)
・シュートから、一辺が2cmの正方形状の試験片を切り出す。
・切り出した試験片を水中に5分間浸漬する。
・浸漬後、温度25℃、湿度70%、風速1m/秒以下の環境下で、試験片を水平方向から角度20度~30度の範囲内に傾斜させ、その傾斜角を保持した状態で上昇速度5mm/秒~10mm/秒の範囲内で鉛直方向上方に移動させて、水中から大気中に静かに取り出す。
・大気中に取り出して10秒後に、試験片の上面の水膜状態を目視で観察し、水膜保持性を下記基準で評価する。
水膜保持性あり:試験片上面の水膜の被覆割合が80%以上
水膜保持性なし:試験片上面の水膜の被覆割合が80%未満
【0075】
(シュートへの溶融フィラメントの融着観察)
実施例および比較例で作成したシュートを
図1に示す製造装置に取り付けてフィラメント3次元結合体を作製し、溶融フィラメントがシュートに融着するかどうかを目視により観察した。
【0076】
【0077】
表1から明らかなように、傾斜面を含む表面に親水性層が設けられた実施例1~5のシュートでは、表面の80%以上が水膜によって覆われた。また、実際の製造装置に使用したとき、実施例1~4のシュートでは溶融フィラメントの傾斜面への付着は見られなかった。また実施例5のシュートでは溶融フィラメントの傾斜面の付着が僅かに見られたものの実使用には問題の無いものであった。
【0078】
これに対して、表面に親水性層を有しない比較例1~3のシュートは水膜保持性に乏しかった。また比較例1~3のシュートを実際の製造装置に使用したとき、シュートの傾斜面への溶融フィラメントの付着が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置によれば、溶融フィラメント同士の融着点における接着強度が低下することなく、より均一なフィラメント3次元結合体を形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0080】
1 製造装置
4a,4b 冷却水供給部
5a,5b シュート(案内部材)
6a,6b シュート(案内部材)
7a,7b シュート(案内部材)
10 溶融フィラメント供給部
51a,51b 傾斜部
52a,52b 平行部
53a,53b 傾斜面
61a,61b 傾斜部
62a,62b 平行部
63a,63b 傾斜面
71a,71b 傾斜部
72a,72b 平行部
73a,73b 傾斜面
GL,GL1,GL2 溝
G1 第1溝群
G2 第2溝群
HL 親水性層
MF 溶融フィラメント群
TDF フィラメント3次元結合体
【要約】
【課題】溶融フィラメント同士の融着点における接着強度が低下することなく、より均一なフィラメント3次元結合体を形成できるフィラメント3次元結合体の製造装置を提供する。
【解決手段】フィラメント3次元結合体の製造装置は、多数本のフィラメントが3次元に結合した結合体の製造装置であって、多数本の直線状の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群を供給する溶融フィラメント供給部と、前記溶融フィラメント群の供給方向に対して垂直な第1方向に離隔対向し、前記溶融フィラメント群の前記第1方向の両端部を受け止めて、対向する相手方向に案内する傾斜面53a,53bを有する一対の案内部材5a,5bと、前記傾斜面53a,53bに冷却水を供給する冷却水供給部とを備え、前記一対の案内部材5a,5bが前記傾斜面53a,53bの表面に親水性層HLを有する。
【選択図】
図5