(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/00 20060101AFI20241029BHJP
B23D 17/08 20060101ALI20241029BHJP
B23D 15/00 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
B23K20/00 330Z
B23D17/08
B23D15/00 A
(21)【出願番号】P 2023195679
(22)【出願日】2023-11-17
【審査請求日】2023-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398039439
【氏名又は名称】有限会社村吉ガス圧接工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】村吉 政勇
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特許第7398034(JP,B1)
【文献】特開2017-094349(JP,A)
【文献】特開2021-045760(JP,A)
【文献】特開2011-177780(JP,A)
【文献】特開2012-110936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
B23D 17/08
B23D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、前記キャップ体の天部が前記被圧接材の先端面に接するように、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な開閉部が形成してある
ガス圧接用還元材。
【請求項2】
前記胴部は、前記天部の周方向に設けられた前記胴部を形成する所要数の側板を有し、該側板のうち所定の側板が他の側板とは独立して変形可能である
請求項1記載のガス圧接用還元材。
【請求項3】
前記胴部は、同一平面上においてシートで十字形状に形成された4つの胴脚部が略同じ長さで同方向に曲げられ、前記天部の周方向に形成された前記胴脚部のうち所定の胴脚部が変形可能である
請求項1記載のガス圧接用還元材。
【請求項4】
前記胴部は、前記天部の周方向に切り込み部によって分けて設けられた前記胴部を形成する所要数の胴脚部を備えており、該胴脚部が変形可能である
請求項1記載のガス圧接用還元材。
【請求項5】
被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体は、前記被圧接材の先端面と接する天部と、該天部の周方向に設けられた所要数の胴脚部とを有し、少なくとも隣り合う一組の前記胴脚部の間隔が前記被圧接材の径と略同じ、若しくは、前記被圧接材の径よりも大きく形成してある
ガス圧接用還元材。
【請求項6】
被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部は、その形状が変形することにより、前記キャップ体の天部が前記被圧接材の先端面に接するように、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能に形成してある
ガス圧接用還元材。
【請求項7】
被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、前記キャップ体の天部が前記被圧接材の先端面に接するように、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部が形成してある
ガス圧接用還元材。
【請求項8】
被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、切り離しが可能な脆弱線が
設けてあり、
前記脆弱線から切り離すことで、前記キャップ体の天部が前記被圧接材の先端面に接するように、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成
することができる
ガス圧接用還元材。
【請求項9】
前記胴部の所定の箇所に、表裏方向へ貫通した穴が形成してある
請求項1、2、3、4、5、6、7、又は8記載のガス圧接用還元材。
【請求項10】
前記胴部の所定の箇所に、内部方向へ突出した掛かり部が形成してある
請求項1、2、3、4、5、6、7、又は8記載のガス圧接用還元材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法に関するものである。詳しくは、ガス圧接用還元材を被圧接材の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での被圧接材の先端部への装着を可能にするものに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋等の鋼材の圧接は、鉛直方向又は水平方向に配した二本の鋼材を、中心軸を共通にして先端面同士を当接させた後、可動側の鋼材に所定の圧力を加えて上限の圧力になったところで当接部分の周りを可燃ガスを燃料とする炎で加熱し、加熱部の温度が塑性変形する温度になると、圧接部が太く変形し、いわゆるコブが形成されて完了する。
【0003】
また、鋼材の圧接においては、多くの場合、より強固な圧接を行うために、ガス圧接用の還元材が使用されている。ガス圧接用の還元材は、二本の鋼材を対向させてガス圧接する際に、接合する端面間に挟み込んで、又は端面の近傍に配して使用されるもので、例えば特許文献1に示すような「ガス圧接用環体を内蔵した環体保持部材」がある。
【0004】
この環体保持部材は、端面と略同形状で、鋼材と略同材料で形成されてガス抜き部を有する環体と、底面側に環体が収納される環体設置空間を有する突出部及びそれに連結し鋼材の外形に接触して取付けるための凸部とを有する合成樹脂製の保持容器と、保持容器の環体設置空間に冠着し環体の回転を止める合成樹脂製の蓋体とを備える。
【0005】
従来の環体保持部材は、この構成を有することで、保持容器内に蓋体で環体の回転を止めることにより、ガス抜き部の位置を所定の位置に確実に設定して、環体の鋼材の端部へのセット作業を極めて簡単かつ安全に行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この環体保持部材は、保持容器が合成樹脂製の薄いシートで形成されており、全体が軽量であるため、屋外で作業をするとき等、突発的な強い風で鋼材の先端部から外れて飛ばされてしまうことがある。或いは、作業者が鋼材の当接部の周りで作業する際に、過って環体保持部材に手袋を引っ掛ける等して外してしまうこともある。
【0008】
具体的には、従来、環体保持部材を使用して鋼材の圧接を行う際には、まず固定側の鋼材と可動側の鋼材の先端面の隙間の間隔を、環体保持部材の保持容器が通るように、その高さと略同等の間隔に設定している。環体保持部材をセットする際には、各鋼材の先端面の隙間から環体保持部材を入れて、固定側の鋼材の先端部に装着し、この環体保持部材の円形の天部を挟むために、圧接機の油圧シリンダーによって可動側の鋼材の先端面を固定側の鋼材の先端面に接近させている。
【0009】
しかし、このタイミングで風が強く吹いたり、或いは作業者が触れてしまい、環体保持部材が鋼材の先端部から外れて、まだ充分に狭くなっていない隙間を通り抜け、落ちたり飛んでしまうことがある。この場合、環体保持部材が隙間を通り抜けた後も、可動側の鋼材は固定側の鋼材方向へ動いてしまうので、鋼材を止める操作をしたとしても、多くの場合、その先端面が固定側の鋼材の先端面に当たって先端面間に隙間がない状態となる。
【0010】
そして、環体保持部材を改めて固定側の鋼材の先端部に装着するためには、可動側の鋼材を固定側の鋼材の先端面に当たっている位置から、再度当初の位置まで戻して、各鋼材の先端面の隙間に環体保持部材が通るようにし、その位置で鋼材を一旦止める作業をしなくてはならない。この各鋼材の先端面の隙間を確保する作業は、非常に手間のかかる面倒な作業であり、特に隙間が大きくて、作業負担が大きくなる場合は尚更である。
【0011】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、ガス圧接用還元材(環体保持部材に相当)を被圧接材(鋼材に相当)の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での被圧接材の先端部への装着を可能にしたガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔1〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な開閉部が形成してあるガス圧接用還元材である。
【0013】
本発明のガス圧接用還元材は、キャップ体を備えており、キャップ体は鋼材等の被圧接材の先端部に外嵌めが可能である。キャップ体の胴部には、ガス圧接用還元材を被圧接材に側面から嵌め込むための開閉部が形成されている。
【0014】
ガス圧接用還元材は、開閉部を備えることにより、開閉部を開けて、キャップ体を被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部を設けることができ、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態で、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、嵌め込みを容易に行うことができる。また、嵌め込みの後で開閉部を閉じた場合には、被圧接材への固定を行うことができる。
【0015】
〔2〕本発明のガス圧接用還元材は、前記胴部は、天部の周方向に設けられた前記胴部を形成する所要数の側板を有し、該側板のうち所定の側板が他の側板とは独立して変形可能である構成とすることができる。
【0016】
この場合は、胴部を形成する所要数の側板のうち、所定の独立して変形可能な側板を手前か横に変形させて開けた状態として、被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部をキャップ体に設けることができる。これにより、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態で、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めすることができる。
【0017】
また、所定の側板を被圧接材に押し付けて奥側に変形させることにより、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めすることができる。なお、嵌め込みの後で側板を閉じた場合には、被圧接材への固定を行うことができる。
【0018】
〔3〕本発明のガス圧接用還元材は、前記胴部は、同一平面上においてシートで十字形状に形成された4つの胴脚部が略同じ長さで同方向に曲げられ、天部の周方向に形成された前記胴脚部のうち所定の胴脚部が変形可能である構成とすることができる。
【0019】
この場合は、同一平面上においてシートで十字形状に形成された、胴部を形成する4つの胴脚部のうち、所定の変形可能な胴脚部を手前か横に変形させて開けた状態として、被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部をキャップ体に設けることができる。これにより、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態で、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めすることができる。
【0020】
また、所定の胴脚部を被圧接材に押し付けて奥側に変形させることにより、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めすることができる。なお、嵌め込みの後で胴脚部を閉じた場合には、被圧接材への固定を行うことができる。
【0021】
〔4〕本発明のガス圧接用還元材は、前記胴部は、天部の周方向に切り込み部によって分けて設けられた前記胴部を形成する所要数の胴脚部を備えており、該胴脚部が変形可能である構成とすることができる。
【0022】
この場合は、天部の周方向に切り込み部によって分けて設けられた、胴部を形成する所要数の胴脚部を手前か奥に開いて変形させて開けた状態として、被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部をキャップ体に設けることができる。これにより、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態で、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めすることができる。
【0023】
また、所定の胴脚部を被圧接材に押し付けて奥側に変形させることにより、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めすることができる。なお、嵌め込みの後で胴脚部を閉じた場合には、被圧接材への固定を行うことができる。
【0024】
〔5〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体は、天部と、該天部の周方向に設けられた所要数の胴脚部とを有し、少なくとも隣り合う一組の前記胴脚部の間隔が前記被圧接材の径と略同じ、若しくは、前記被圧接材の径よりも大きく形成してあるガス圧接用還元材である。
【0025】
本発明のガス圧接用還元材は、キャップ体を備えており、キャップ体は、被圧接材の先端部に外嵌めが可能である。キャップ体の天部と、天部の周方向に設けられた所要数の胴脚部は、少なくとも隣り合う一組の胴脚部の間隔が被圧接材の径と略同じ、若しくは、被圧接材の径よりも大きく形成してあるので、この胴脚部の間は、被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部となっている。
【0026】
これにより、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態で、被圧接材の先端部へ嵌込口部を合わせて、横嵌めを行うことができる。なお、嵌込口部は、ガス圧接用還元材の装着時や装着後に開いたり閉じたりする操作をする必要がないので、作業の面倒ところが軽減され、作業を簡単に行うことができる。
【0027】
〔6〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部は、その形状が変形することにより、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能に形成してあるガス圧接用還元材である。
【0028】
本発明のガス圧接用還元材は、キャップ体を備えており、キャップ体は、被圧接材の先端部に外嵌めが可能である。すなわち、キャップ体の胴部は、その形状が変形するので、胴部を変形させながら天部を被圧接材の先端面の隙間に差し入れて嵌め込むことで、被圧接材に側面から嵌め込み可能である。
【0029】
嵌め込み時に胴部の変形させた部分は、嵌め込み後に元の形に戻して先端面を胴部で囲むようにして固定することもできるし、変形させたまま隙間に折り込むようにしてもよい。この場合、折り込んだ部分を還元材として利用することができて好ましい。
【0030】
〔7〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部が形成してあるガス圧接用還元材である。
【0031】
キャップ体は、被圧接材の先端部に外嵌め可能である。キャップ体は、寸法を適宜設定しておくことにより、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0032】
また、キャップ体の胴部には、被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部が形成してあるので、被圧接材の先端部の隙間が狭い場合でも、ガス圧接用還元材を被圧接材に側面から嵌め込んで装着することができる。なお、被圧接材の先端部の隙間が広い場合にも、被圧接材の先端部に装着して還元材としての使用が可能である。
【0033】
ガス圧接用還元材は、嵌込口部が、キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で切り縁が設けられ、切り縁に続けて胴部の残りの厚み部分に、天部に対して所定の角度で、又は所定の形状で裾端部まで切り縁が設けられて形成してある構成とすることもできる。
【0034】
この場合は、ガス圧接用還元材は、各被圧接材の圧接側の先端面(圧接面)が、少なくともキャップ体の天部の厚みと同等程度に開いていれば、天部の厚み部分を各被圧接材の先端面の隙間に差し入れて、切り縁により形成され、天部に沿う部分から裾端部へ続く嵌込口部を被圧接材の先端部の側面に嵌め込むようにすれば、被圧接材の先端部に装着することができる。このとき、キャップ体全体の厚みより大幅に薄いキャップ体の天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材の装着が可能になる。
【0035】
〔8〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、切り離しが可能な脆弱線が、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成可能に設けてあるガス圧接用還元材である。
【0036】
キャップ体は、被圧接材の圧接側の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体は、寸法を適宜設定しておけば、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0037】
また、キャップ体の胴部には、切り離しが可能な脆弱線が、被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成可能に設けてあるので、脆弱線で切り離して、不要部分を取り除けば、嵌込口部を形成することができる。これにより、ガス圧接用還元材は、当初の形態とは異なり、胴部に嵌込口部を有するので、上記〔7〕のガス圧接用還元材と同等の作用効果を奏することができる。
【0038】
ガス圧接用還元材は、脆弱線が、キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で、かつそれに続けて胴部の残りの厚み部分に、天部に対して所定の角度、又は所定の形状で裾端部まで設けてある構成とすることもできる。
【0039】
この場合は、脆弱線は、キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ被圧接材に嵌め込み可能な幅で、かつそれに続けて胴部の残りの厚み部分に、天部に対して所定の角度、又は所定の形状で裾端部まで切り欠いた嵌込口部を形成可能に設けてある。
【0040】
これにより、脆弱線の天部に沿う所定の厚みの部分と、胴部の残りの厚みの部分を切り離して、不要部分を取り除けば、天部に沿う部分から胴部の裾端部にかけて、嵌込口部を形成することができる。これにより、ガス圧接用還元材は、当初の形態とは異なり、胴部に嵌込口部を有するので、上記〔7〕のガス圧接用還元材と同等の作用効果を奏することができる。
【0041】
ガス圧接用還元材は、前記脆弱線が、前記キャップ体の天部に対して略平行に所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で、かつその中間部に繋がり、裾端部までを切り離して、前記胴部を開閉することができる開閉口部を形成可能な略T字状に設けてある構成とすることもできる。
【0042】
この場合は、脆弱線は、キャップ体の天部に対して略平行に所定の厚みで周方向へ被圧接材に嵌め込み可能な幅で、かつその中間部に繋がり、裾端部までを切り離して、胴部を開閉することができる開閉口部を形成可能な略T字状に設けてある。
【0043】
これにより、ガス圧接用還元材は、脆弱線の天部に対して平行な所定の厚みの部分と、その中間部に繋がり、裾端部までを切り離すことができる部分を切り離して、形成された二枚の開閉片を外側又は内側へ開くことにより、当初の形態とは異なり、天部に沿う部分から胴部の裾端部にかけて開閉口部を形成することができる。
【0044】
このガス圧接用還元材を使用したガス圧接工法では、開閉片を開き、キャップ体に開閉口部を形成する。そして、天部の厚み部分を被圧接材の先端面の隙間に差し入れる。これに伴い、天部に沿う部分から裾端部へ続く開閉口部を固定側の被圧接材の先端部の側面に嵌め込むことができるので、天部を被圧接材の先端部に落とし込めば、装着することができる。
【0045】
ガス圧接用還元材は、被圧接材の先端部に外嵌め可能な第2のキャップ体を備えており、該第2のキャップ体は、その胴部で前記嵌込口部の少なくとも一部を閉塞する状態で前記キャップ体に重ねられている構成とすることもできる。
【0046】
この場合は、ガス圧接用還元材が、被圧接材の先端部に外嵌め可能な第2のキャップ体を備えており、第2のキャップ体は、その胴部で前記嵌込口部の少なくとも一部を閉塞する状態でキャップ体に重ねられている構造である。
【0047】
まず、ガス圧接用還元材は、被圧接材の先端面同士がキャップ体の高さより狭い場合は、二重構造のままでは使用しない。各被圧接材の先端面でガス圧接用還元材のキャップ体の天部を挟む前、つまり間隔が広く開いているときに、ガス圧接用還元材を被圧接材の先端に被せる際は、二重構造のままで被せることができる。これにより、ガス圧接用還元材は、キャップ体の天部を挟む前に多少の風が吹いたりしても、第2のキャップ体の深い胴部の作用で、被圧接材の先端部から外れにくい。
【0048】
そして、各被圧接材の先端面でガス圧接用還元材のキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材が外れなかった場合は、挟まれている二重構造のガス圧接用還元材のままで、還元材として使用することができる。なお、ガス圧接用還元材は、キャップ体の天部も二重となるので、還元材としての効果に好影響が期待できる。
【0049】
また、各被圧接材の先端面でガス圧接用還元材のキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材が外れてしまった場合は、外れたガス圧接用還元材の第2のキャップ体からキャップ体に嵌込口部を有するガス圧接用還元材を取り外し、このガス圧接用還元材のみを還元材として使用する。その際の作用は、上記〔7〕のガス圧接用還元材と同様であるので、ここではそれを援用し、説明を省略する。
【0050】
なお、第2のキャップ体は、キャップ体に嵌込口部を有するガス圧接用還元材を外した後も、単体のガス圧接用還元材として使用することができるので、例えば通常の有底筒状(姿勢的には有天筒状)のガス圧接用還元材として、或いはこの二重構造のガス圧接用還元材の部品として再利用することもできる。
【0051】
ガス圧接用還元材は、前記キャップ体の前記天部に設けられ、前記天部を構成する材料よりも高温で溶融する樹脂製、金属製、若しくはグラファイト製のリング体を備える構成とすることもできる。
【0052】
この場合は、キャップ体の天部に設けられ、天部を構成する材料よりも高温で溶融する樹脂製、金属製、若しくはグラファイト製のリング体を備えるので、圧接作業においては、ガスの炎で加熱されることによって、まず、キャップ体の天部が溶融して燃焼する。
【0053】
そして、まだ溶融していないリング体の内側の、被圧接材の先端面で挟まれた僅かな隙間の中で、天部がごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化する。そして、体積が急激に増えることによって、リング体の内側の隙間にあったエアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接面の酸化が抑制される。
【0054】
また、リング体が溶融しないうちは、リング体の内側の隙間へのエアの浸入が遮断されることとも相俟って、隙間内での酸化が抑制され、被圧接材の圧接側の先端面に酸化被膜が生じることを抑制できる。
【0055】
このように、ガス圧接用還元材によれば、被圧接材のガス圧接を行う際に、アセチレンガスより火力が劣る天然ガス、プロパンガス、又は水素ガス等を使用する場合、充分な火力が得られるように初期加熱の段階から標準炎で加熱しても、圧接部に酸化被膜や金属残渣物等の残留物が生じることを抑制できるので、強度が充分な圧接を行うことが可能になる。
【0056】
〔9〕本発明のガス圧接用還元材は、前記胴部の所定の箇所に、表裏方向へ貫通した穴が形成してある構成とすることもできる。
【0057】
この場合は、胴部の所定の箇所に、表裏方向へ貫通した穴を形成することにより、その分だけキャップ体が加熱された際の溶け垂れ、及び溶け垂れの焦げ付きによる汚れの発生をより少なくすることができるので、圧接部の仕上げ(クリーニング)などの後処理も容易にできる。
【0058】
〔10〕本発明のガス圧接用還元材は、前記胴部の所定の箇所に、内部方向へ突出した掛かり部が形成してある構成とすることもできる。
【0059】
この場合は、胴部の所定の箇所に、内部方向へ突出した掛かり部が形成されることにより、被圧接材に装着した際に、ガス圧接用還元材の被圧接材に対する固定力が強くなるので、ズレが生じにくくなり、装着後に風で位置がずれたり飛ばされてしまう不都合を軽減することができる。
【0060】
〔11〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能なキャップ体の胴部を加工して、前記キャップ体に前記被圧接材の側面から嵌め込み可能な開閉部、又は嵌込口部を形成する加工用工具であって、受具を有する台部材と、該台部材に対し、一端部がバネで前記台部材方向へ閉じるように付勢して揺動可能に取り付けられたシーソー部材と、該シーソー部材に設けてあり、前記開閉部、又は前記嵌込口部を、前記キャップ体に切れ目を入れて、又は切断して形成する所定形状の切断刃と、前記受具に設けられた、前記切断刃が収まる刃溝とを備える加工用工具である。
【0061】
本発明の加工用工具は、切断刃が設けてあるシーソー部材の一端部を開き、キャップ体の胴部を、キャップ体の内部に挿入した台部材の受具と、胴部の外にあるシーソー部材の一端部を、バネの付勢力を利用して閉じる。これにより、切断刃でキャップ体の胴部に切れ目を入れて、又は切断して開閉部、又は嵌込口部が形成され、切断刃が刃溝に収まる。
【0062】
また、胴部の切断が充分でない場合は、台部材の受具とシーソー部材の一端部を、相互に近付く方向へ押さえると、切断刃はより確実に胴部に切れ目を入れて、又は切断し、刃溝に収まる。これにより、キャップ体の胴部に所定の切れ目や嵌込口部が設けてあるガス圧接用還元材を作製することができる。
【0063】
〔12〕上記の目的を達成するために、本発明は、その先端面が、他方の被圧接材の先端面と所定の隙間を隔てて対面配置された一方の被圧接材に、前記隙間よりも大きな高さを有するキャップ体を、前記一方の被圧接材の側面から嵌め込むことにより、前記一方の被圧接材の先端部に外嵌めして装着する工程と、前記キャップ体を装着した状態で、前記一方の被圧接材と前記他方の被圧接材の先端面を突き合わせて加熱する工程とを備えるガス圧接工法である。
【0064】
本発明のガス圧接工法によれば、他方の被圧接材の先端面と所定の隙間を隔てて対面配置された一方の被圧接材に、隙間よりも大きな高さを有するキャップ体を、一方の被圧接材の側面から嵌め込むので、隙間がキャップ体の高さより狭くても、一方の被圧接材の先端部に外嵌めして装着することができる。
【0065】
これにより、例えば各被圧接材の先端面の隙間にガス圧接用還元材を改めて装着(再装着)する際にも、各被圧接材の先端面の隙間を大きく広げて煩雑な調整する必要はなく、隙間が狭い状態での被圧接材の側面からのガス圧接用還元材の装着が可能になり、作業の煩雑さを大きく軽減することができるので、結果的にガス圧接作業を容易に行うことができる。
【0066】
そして、一方の被圧接材と他方の被圧接材の先端面を突き合わせて加熱することにより、先端面に酸化被膜が生じることを抑止しながら、圧接を強固に行うことができる。すなわち、キャップ体の天部が、各被圧接材の先端面で挟まれた僅かな隙間の中で、ごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化し体積が急激に増えることによって、エアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接面の酸化が抑制される。
【0067】
ガス圧接工法は、前記キャップ体を、前記一方の被圧接材の側面から嵌め込み可能とすべく、前記装着する工程に先立って、前記キャップ体の胴部に、嵌込口部を形成する工程を備えるようにしてもよい。
【0068】
この場合は、キャップ体を、一方の被圧接材の側面から嵌め込み可能とすべく、装着する工程に先立って、キャップ体の胴部に、嵌込口部を形成するので、圧接作業を行う際、予め被圧接材の形態に合わせた嵌込口部を備えたキャップ体を有するガス圧接用還元材の準備が可能となるので、圧接作業を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明は、ガス圧接用還元材を被圧接材の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での、被圧接材の先端部への装着を可能にしたガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明に係るガス圧接用還元材のAタイプの実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明に係るガス圧接用還元材のBタイプの実施形態を示す説明図である。
【
図3】本発明に係るガス圧接用還元材のCタイプの実施形態を示す説明図である。
【
図4】ガス圧接用還元材のAタイプの実施形態の1つの装着方法を示す説明図である。
【
図5】ガス圧接用還元材のBタイプの実施形態の1つの装着方法を示す説明図である。
【
図6】ガス圧接用還元材のCタイプの実施形態の1つの装着方法を示す説明図である。
【
図7】ガス圧接用還元材のAタイプの他の実施形態を示す説明図である。
【
図8】ガス圧接用還元材のAタイプの更に他の実施形態を示す説明図である。
【
図9】ガス圧接用還元材のAタイプの更に他の実施形態を示す説明図である。
【
図10】ガス圧接用還元材のBタイプの他の実施形態を示す説明図である。
【
図11】本発明に係るガス圧接用還元材のDタイプの実施形態を示す説明図である。
【
図12】本発明に係るガス圧接用還元材のEタイプの実施形態を示す説明図である。
【
図13】本発明に係るガス圧接用還元材のFタイプの実施形態を示す説明図である。
【
図14】ガス圧接用還元材のDタイプの実施形態の一つの装着方法を示す説明図である。
【
図15】ガス圧接用還元材のEタイプの実施形態の一つの装着方法を示す説明図である。
【
図16】ガス圧接用還元材のFタイプの実施形態の装着方法を示す説明図である。
【
図17】ガス圧接用還元材の変形例を示す説明図であり、(a)はガス圧接用還元材の斜視図、(b)はガス圧接用還元材のA-A断面図である。
【
図18】本発明の加工用工具の実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【
図19】加工用工具の使用方法を示し、(a)は断面説明図、(b)はキャップ体における切断線を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
まず、
図1乃至
図10を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下のガス圧接用還元材の説明では、三つのタイプ(A、B、C)に分けて説明する。Aタイプは、略有底箱状としたもの、Bタイプは、有底筒状で胴部を切り込みによって周方向へ切り分けたもの、Cタイプは。天部の周方向に複数の胴脚を設けたものである。
【0072】
(Aタイプ)
図1(a)に示すガス圧接用還元材A1は、キャップ体4aを有している。キャップ体4aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体4aは、天部に正方形の天板41を有しており、天板41の4辺には、胴部40を構成する、それぞれ同じ大きさの長方形状の側板が接続されている。
【0073】
側板のうち、天板41の3辺に取り付けられている側板42は、辺部で互いにつながって周方向に一体化してある。また、天板41の他の1辺に取り付けられている側板42aは、取り付け辺(符号省略)を中心に変形して揺動が可能である。なお、各側板42、42aの裾端部は、所定幅で略直角に曲げられてフランジ部420となっている。
【0074】
ガス圧接用還元材A1は、側板42aが揺動することにより胴部40の一部の開閉が可能であり、側板42aが外側に広がっても、或いは内側に入っても被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部(符号省略)を形成することができる。
【0075】
図1(b)に示すガス圧接用還元材A2は、キャップ体4bを有している。キャップ体4bは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体4bは、二枚の同じ大きさの長方形状のシートを長さ方向の中央部で重ねて、同一平面上において十字形状に一体化し、更に同方向に同じ長さで直角に曲げて、四角形の天板43の周方向に設けられた4つの胴脚部44から成る胴部45を有する形状に形成している。
【0076】
胴部45を形成する各胴脚部44は変形して揺動が可能である。各胴脚部44を外側又は内側に揺動させて、キャップ体4bの周方向の四方に被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部を設けることができる。なお、各胴脚部44の裾端部は、所定幅で略直角に曲げられてフランジ部440となっている。
【0077】
(作用)
ここで、
図1(b)及び
図4を参照して、Aタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材A2を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0078】
ガス圧接用還元材A2のキャップ体4bは、鋼材等の被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体4bは、熱可塑性樹脂製であり、所定の保形性及び変形性(可撓性等)を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0079】
なお、キャップ体は、グラファイト等、他の素材で形成することもできる(以下のガス圧接用還元材A2、A3、A4、A5、ガス圧接用還元材B1、B2、B3、ガス圧接用還元材C1、C2、ガス圧接用還元材D1、D2、ガス圧接用還元材E1、E2、及びガス圧接用還元材Fも同様である。)。
【0080】
また、被圧接材91(及び後述92)は、異形鉄筋、丸鋼等の鋼材からなり、例えば鉄筋コンクリート用棒鋼(JISG3112)で規定されている異形棒鋼(SD295A,SD295B,SD345,SD390,SD490)、丸鋼(SR235,SR295)、或いは高強度鉄筋(USD385A,USD385B,USD980)の他、耐久性や耐食性を高めたステンレス鉄筋(SUS316,SUS304等)の採用も可能である。
【0081】
被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、まず、固定側の被圧接材91を固定クランプ(図示省略)により垂直に立てた状態で所定の高さで保持する。また、可動側の被圧接材92を可動クランプ(図示省略)により垂直に立てた状態で保持する。被圧接材91、92は中心線が同一直線上にあるように調整されており、被圧接材91、92の圧接面910、920は、適宜間隔に設定されている。なお、被圧接材91、92は水平方向に保持して圧接作業を行ってもよい。
【0082】
ガス圧接用還元材A2のキャップ体4bでは、装着時、被圧接材91に近い胴脚部44を内側(外側の場合もある)に動かして嵌込口部を開くようにする。そして、被圧接材91、92の圧接面910、920が、少なくともキャップ体4bの天板43の厚みと同等程度に開いていれば、固定側の被圧接材91の先端部に装着が可能である。
【0083】
すなわち、まず、天板43の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間900に水平に差し入れる。なお、天板43を水平方向でなく、傾斜させて傾斜方向に差し入れてもよい。これに伴い、嵌込口部が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天板43を圧接面910に合わせれば、被圧接材91の先端部に装着することができる(
図4参照)。
【0084】
ガス圧接用還元材A2が上記のように装着された状態で、被圧接材92が下降して、キャップ体4bの天板43が圧接面910、920で挟まれる。そして、各被圧接材91、92と共にガスの炎で加熱されることにより、圧接面910、920に酸化被膜が生じることを抑止しながら、圧接を強固に行うことができる。
【0085】
つまり、熱可塑性樹脂製のキャップ体4bの天板43が、各被圧接材91、92の圧接面910、920で挟まれた僅かな隙間の中で、ごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化して体積が急激に増えることによって、エアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接面の酸化が抑制される。
【0086】
また、ガス圧接用還元材A2によれば、例えば各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材A2が外れた場合には、ガス圧接用還元材A2を改めて装着する必要があるが、その際にも、被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を大きく広げて煩雑な調整をする必要はない(
図4参照)。
【0087】
仮に、キャップ体に嵌込口部が設けられていないガス圧接用還元材の場合、ガス圧接用還元材を隙間に入れるためには、
図4に示す圧接面910よりも、h分だけ高く調整しなければならない(後述する
図14(b)参考)。この被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を確保する作業は、非常に手間のかかる面倒な作業であり、特に作業負担が大きくなる。
【0088】
これに対して、ガス圧接用還元材A2では、キャップ体4b全体の厚みより大幅に薄いキャップ体4bの天板43の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、上記のようにガス圧接用還元材A2の装着が可能になる。
【0089】
これにより、作業の煩雑さを大きく軽減することができるので、結果的にガス圧接作業を容易に行うことができる。なお、ガス圧接用還元材A2は、被圧接材91に装着した際に、両側の側板42により被圧接材91を挟むため、ガス圧接用還元材A2が外れないようにする保持力に優れる。
【0090】
なお、ガス圧接用還元材A1の場合は、側板42aを手前か奥に開いて嵌込口部を形成して横嵌めするか、或いは側板42aの部分を鉄筋に押し付けることで、側板42aが奥側に押されて、嵌込口部が形成されて、横方向から嵌め込むことができる。
【0091】
(Bタイプ)
図2(a)に示すガス圧接用還元材B1は、キャップ体5aを有している。キャップ体5aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体5aは、円形の天板51を有しており、天板51の周囲には、全周にわたり略円筒形状の胴部50が同じ高さに設けられている。
【0092】
また、胴部50には、全周にわたり所定の幅を開け、元端部を一部残して縦方向に切り目500を入れて、所要数の胴脚部52が形成されている。各胴脚部52の先端部には、フランジ部520が設けてある。これにより、各胴脚部52は、それぞれ独立して変形が可能である。
【0093】
(作用)
ここで、
図2(a)及び
図5を参照して、Bタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材B1を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0094】
ガス圧接用還元材B1のキャップ体5aは、鋼材等の被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体5aは、熱可塑性樹脂製であり、所定の保形性及び変形性を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0095】
ガス圧接用還元材B1のキャップ体5aでは、装着時、被圧接材91に近い胴脚部52を被圧接材91に押し当てて内側に変形させて嵌込口部を開くようにする(なお、胴脚部52は手作業で行ってもよい)。そして、被圧接材91、92の圧接面910、920が、少なくともキャップ体5aの天板51の厚みよりやや大きい程度に開いていれば、固定側の被圧接材91の先端部に装着が可能である。
【0096】
そして、天板51の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間900に水平に差し入れる。これに伴い、嵌込口部が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天板51を圧接面910に合わせれば、被圧接材91の先端部に装着することができる(
図5参照)。
【0097】
ガス圧接用還元材B1が上記のように装着された状態で、被圧接材92が下降して、キャップ体5aの天板51が圧接面910、920で挟まれる。そして、各被圧接材91、92と共にガスの炎で加熱されることにより、圧接面910、920に酸化被膜が生じることを抑止しながら、上記ガス圧接用還元材A2を使用した場合と同様に、各被圧接材91、92の圧接を強固に行うことができる。
【0098】
また、ガス圧接用還元材B1によれば、例えば各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材B1が外れた場合には、ガス圧接用還元材B1を改めて装着する必要があるが、その際にも、被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を大きく広げて煩雑な調整をする必要はない(
図5参照)。これにより、その場合の作業負担が軽減され、結果的にガス圧接作業を容易に行うことができる。
【0099】
図2(b)に示すガス圧接用還元材B2は、キャップ体5bを有している。キャップ体5bは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体5bは、円形の天板51を有しており、天板51の周囲には、全周にわたり略円筒形状の胴部53が同じ高さに設けられている。
【0100】
また、胴部53には、周方向の一箇所に、元端部を一部残して縦方向に切り目500を入れて、胴脚部54が2つに分けられて設けてある。実質的に全周にわたる胴脚部54の先端部には、フランジ部540が設けてある。これにより、各胴脚部54の切り目500を挟む部分は、それぞれ独立して変形が可能である。
【0101】
ガス圧接用還元材B2は、被圧接材91に装着する場合に、上記ガス圧接用還元材B1のように、胴脚部52を内側に変形させるのではなく、胴脚部54の切り目500両側を開いて外側に変形させて、天板51を隙間900に差し入れるようにする。
【0102】
また、他の方法としては、切れ目500の部分から強引に横嵌めする(例えば、切れ目500を境にした2つの面を前後方向に変形させて、その間隙(前後に変形したことによる間隙)から鉄筋に押し込む)ようにする。この点以外は、ガス圧接用還元材B2もガス圧接用還元材B1と略同様に使用することができるので、ここでは作用の説明を省略する。
【0103】
(Cタイプ)
図3(a)に示すガス圧接用還元材C1は、キャップ体6aを有している。キャップ体6aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体6aは、円形の天板61を備えている。天板61の外周部には、裾部62が同幅で全周にわたり設けられている。裾部62には、周方向に3本の胴脚部64が設けてある。
【0104】
各胴脚部64のうち、隣り合う相対向する一組の胴脚部64は、天板61の略直径線上に、かつ天板61と直角に設けられている。そして、残りの1本の胴脚部64は他の相対向する胴脚部64の周方向の中間部に平行に設けてある。なお、各胴脚部64の先端部は、フランジ部640となっている。
【0105】
なお、相対向する胴脚部64、64の間隔は、被圧接材91の径と略同じ、若しくは、被圧接材91の径よりも大きく形成してある。これにより、胴脚部64、64の間の正面側には、嵌込口部65が形成されている。
【0106】
(作用)
ここで、
図3(a)及び
図6を参照して、Cタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材C1を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0107】
ガス圧接用還元材C1のキャップ体6aは、鋼材等の被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体6aは、熱可塑性樹脂製であり、所定の保形性及び変形性を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0108】
そして、被圧接材91、92の圧接面910、920が、少なくともキャップ体5aの天板51の厚みよりやや大きい程度に開いていれば、固定側の被圧接材91の先端部に装着が可能である。ガス圧接用還元材C1のキャップ体6aは、装着時、相対向する胴脚部64、64の間の嵌込口部65を被圧接材91の先端部に合わせ、天板61の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間900に水平に差し入れる。
【0109】
これに伴い、嵌込口部65が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天板61を圧接面910に合わせれば、被圧接材91の先端部に装着することができる(
図6参照)また、ガス圧接用還元材C1が上記のように装着された状態で、被圧接材92が下降して、キャップ体6aの天板61が圧接面910、920で挟まれる。
【0110】
そして、各被圧接材91、92と共にガスの炎で加熱されることにより、圧接面910、920に酸化被膜が生じることを抑止しながら、上記ガス圧接用還元材A2を使用した場合と同様に、各被圧接材91、92の圧接を強固に行うことができる。
【0111】
また、ガス圧接用還元材C1によれば、例えば各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材C1が外れた場合には、ガス圧接用還元材C1を改めて装着する必要があるが、その際にも、被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を大きく広げて煩雑な調整をする必要はない(
図6参照)。これにより、その場合の作業負担が軽減され、結果的にガス圧接作業を容易に行うことができる。
【0112】
図3(b)に示すガス圧接用還元材C2は、キャップ体6bを有している。キャップ体6bは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体6bは、円形の天板61を備えている。天板61の外周部には、裾部62が同幅で全周にわたり設けられている。裾部62には、3本の胴脚部63が天板61の周方向に等間隔で設けてある。各胴脚部63は、天板61と直角に設けられている。なお、各胴脚部63の先端部は、フランジ部630となっている。
【0113】
各胴脚部63の相互の周方向の間隔は、被圧接材91の径よりやや狭くなっているので、被圧接材91の先端部に装着する際には、胴脚部63のいずれかを変形させる必要がある。詳しくは、左右側の胴脚部63を後方へ曲げて圧接面910、920間に敷き込んだり、そのまま水平方向へ嵌込口部65程度に拡げるようにしてもよい。
【0114】
また、作業者が胴脚部63を手前か奥に開いて嵌込口部を形成し、または、水平方向に押し広げて嵌込口部を形成し、横嵌めしてもよいし、作業者が胴脚部63同士の間隙を鉄筋に押し付けて胴脚分63を水平方向に押し広げて横嵌めすることもできる。この点を除き、ガス圧接用還元材C2もガス圧接用還元材C1と略同様に使用することができるので、ここでは作用の説明を省略する。
【0115】
(Aタイプの他の例)
図7に示すガス圧接用還元材A3は、キャップ体4cを有している。キャップ体4cは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体4cは、天部に正方形の天板46を有しており、天板46の4辺には、胴部40を構成する、それぞれ同じ大きさの長方形状の側板が接続されている。
【0116】
側板のうち、天板46の3辺に取り付けられている側板47は、辺部で互いにつながって周方向に一体化してある。また、天板46の他の1辺に取り付けられている側板47aは、取り付け辺(符号省略)を中心に変形して揺動が可能である。なお、各側板47、47aの裾端部は、所定幅で略直角に曲げられてフランジ部470となっている。
【0117】
また、
図7において左右側の二枚の側板47のうち側板47a寄りには、直角三角形の直角な2辺に切り込みを入れ、それぞれの先端を結ぶ折り目を付けて形成した掛かり部471が、等間隔で三箇所に設けてある。これにより、掛かり部471を内方へ折り曲げて突出されることにより、装着時、内部にある被圧接材91の表面に掛かって、ずれないように固定できる。
【0118】
また、左右側の二枚の側板47のうち側板47a側の端辺部には、全長にわたり押さえ板472が設けてある。更に、側板47aの中央部には、表裏を貫通して円形の抜き穴48が設けてある。
【0119】
そして、ガス圧接用還元材A3は、側板47aが揺動することにより胴部40の一部の開閉が可能であり、側板47aを内側に入れて被圧接材に側面から嵌め込むための嵌込口部(符号省略)を形成することができる。
【0120】
なお、側板47aは、両側の押さえ板472によって、外に動くのを止めるようになっている。また、ガス圧接用還元材A3が、被圧接材91に装着後の作用については、上記ガス圧接用還元材A1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0121】
図8に示すガス圧接用還元材A4は、キャップ体4dを有し、キャップ体4dが天板46、側板47、47aを有して有底箱状に形成されている点は、上記ガス圧接用還元材A3と同様である。なお、ガス圧接用還元材A4では、3つの側板47に、それぞれ四箇所に折り目が略円形に設けられた、略三角形状の円方向に連接された掛かり部473が設けられている。
【0122】
なお、側板47aは、両側の押さえ板472によって、外に動くのを止めるようになっている。また、ガス圧接用還元材A4は、被圧接材91に装着後の作用については、上記ガス圧接用還元材A1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0123】
図9に示すガス圧接用還元材A5は、キャップ体4eを有し、キャップ体4eが天板46、側板47、47aを有して有底箱状に形成されている点は、上記ガス圧接用還元材A3と同様である。なお、ガス圧接用還元材A5では、左右2つの側板47に、それぞれ中央部の一箇所に折り目が略円形に設けられた、略三角形状の円方向に連接された掛かり部49が設けられている。
【0124】
なお、側板47aは、前後二箇所に設けられ、それぞれの側板47aの中央部に貫通した抜き穴48が設けられている。各側板47aは、両側の押さえ板472によって、外に動くのを止めるようになっている。また、ガス圧接用還元材A5が、被圧接材91に装着後の作用については、上記ガス圧接用還元材A1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0125】
(Bタイプの他の例)
図10に示すガス圧接用還元材B3は、キャップ体5cを有している。キャップ体5cは、可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体5cは、円形の天板51を有しており、天板51の周囲には、全周にわたり略円筒形状の胴部57が同じ高さに設けられている。
【0126】
また、胴部57には、全周にわたり所定の幅を開け、元端部を一部残して縦方向に切り目500を入れて、四箇所に胴脚部55が形成されている。各胴脚部55の中央部には、それぞれ一箇所に折り目が略円形に設けられた、略三角形状の円方向に連接された掛かり部56が設けられている。また、各胴脚部55の先端部には、フランジ部550が設けてある。これにより、各胴脚部55は、それぞれ独立して変形が可能である。
【0127】
なお、胴脚部55は、周方向に四箇所に設けてあるので、二箇所を変形させて被圧接材91に嵌合して装着するようにする。更に、ガス圧接用還元材B3を被圧接材91に装着したときには、掛かり部56を内側に突出させておくことにより、ガス圧接用還元材B3のズレを抑止できる点は、上記ガス圧接用還元材A3、A4、A5と同様である。また、ガス圧接用還元材B3は、被圧接材91に装着後の作用については、上記ガス圧接用還元材B1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0128】
また、本発明のガス圧接用還元材は、図示は省略するが、被圧接材91の先端部に外嵌め可能なキャップ体を備えており、キャップ体の胴部は、その形状が変形することにより、被圧接材に側面から嵌め込み可能に形成してある構造も採用できる。
【0129】
このガス圧接用還元材は、キャップ体の胴部は、例えば極めて軟らかく、充分な強度を有する素材で形成されており、容易に変形するので、胴部を変形させながら天部を被圧接材91、92の先端面910、920の隙間900に差し入れて嵌め込むことで、被圧接材91、92に側面から嵌め込み可能である。
【0130】
また、嵌め込み時に胴部の変形させた部分は、嵌め込み後に元の形に戻して先端面を胴部で囲むようにして固定することもできるし、変形させたまま隙間に折り込むようにしてもよい。この場合、折り込んだ部分を還元材として利用することができて好ましい。
【0131】
次に、
図11乃至
図19を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下のガス圧接用還元材の説明では、更に三つのタイプ(D、E、F)に分けて説明する。Dタイプは、嵌込口部を予め設けたもの、Eタイプは脆弱線を設けて嵌込口部と開閉口部が形成できるようにしたもの、Fタイプは嵌込口部を予め設けたものと有底筒状のキャップ体を重ねたものである。
【0132】
(Dタイプ)
図11(a)に示すガス圧接用還元材D1は、キャップ体1aを有している。キャップ体1aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体1aの胴部10(筒の部分)は、やや裾広がりの円筒形状のものをベースとして加工したものであり、
図11(a)で上端部は円形の天板11で塞がれている。
【0133】
また、胴部10には、天板11に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、後述する被圧接材91(
図14乃至
図16参照)に嵌め込み可能な幅で切り縁120が設けられている。切り縁120と天板11で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部121となっている。
【0134】
そして、切り縁120の両端部に続けて胴部10の残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板11に対して略直角方向に切り縁122、123が設けられて、切り縁がコ字状の嵌込口部12が形成してある。キャップ体1aの裾部には、全長にわたりやや径大のフランジ部13が設けてある。
【0135】
なお、ガス圧接用還元材D1の平面視における切り縁122と切り縁123の中心角(嵌込口部12の開口角)は、本実施の形態では150°としているが、これに限定するものではない。中心角は、少なくとも嵌込口部12の切り縁部分を被圧接材91に嵌め入れることができればよく、嵌め入れた後でその状態を維持できるように、180°より小さい角度であるのが望ましい(
図11(b)参照)。
【0136】
図11(c)に示すガス圧接用還元材D2は、キャップ体1cを有している。キャップ体1cは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体1cの胴部10cは、やや裾広がりの円筒形状のものをベースとして加工したものであり、
図11(c)で上端部は円形の天板11で塞がれている。
【0137】
また、胴部10cには、天板11に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、後述する被圧接材91に嵌め込み可能な幅で切り縁124が設けられている。切り縁124と天板11で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部125となっている。
【0138】
そして、切り縁124の両端部に続けて胴部10cの残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板11に対して、左右対称形の略S字状の切り縁126、127が設けられて、嵌込口部12cが形成してある。キャップ体1cの裾部には、全長に亘りやや径大のフランジ部13が設けてある。なお、略S字状の切り縁126、127は、何れも裾部に近い側が嵌込口部12cを狭める方向に突出して保持部128、129が形成されている構造である。
【0139】
(作用)
ここで、
図11(a)及び
図14を参照して、Dタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材D1を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0140】
ガス圧接用還元材D1のキャップ体1aは、被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体1aは、熱可塑性樹脂製であり、所定の保形性及び変形性を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0141】
被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、まず、固定側の被圧接材91を固定クランプ(図示省略)により垂直に立てた状態で所定の高さで保持する。また、可動側の被圧接材92を可動クランプ(図示省略)により垂直に立てた状態で保持する。なお、被圧接材91、92は中心線が同一直線上にあるように調整されており、被圧接材91、92の圧接面910、920は、適宜間隔に設定されている。なお、被圧接材91、92は水平方向に保持して圧接作業をしてもよい。
【0142】
ガス圧接用還元材D1のキャップ体1aは、胴部10に天板11に沿う部分から裾端部まで、切り縁で嵌込口部12が形成してあるので、被圧接材91、92の圧接面910、920が、少なくともキャップ体1aの天部の厚みと同等程度に開いていれば、固定側の被圧接材91の先端部に装着が可能である。
【0143】
すなわち、まず、天部の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間に水平に差し入れる。なお、天部を水平方向でなく、傾斜させて、或いは傾斜方向に差し入れてもよい。これに伴い、天部に沿う部分から裾端部へ続く嵌込口部12が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天部を圧接面910に落とし込めば、被圧接材91の先端部に装着することができる(
図14(a)参照)。なお、この落とし込みによる装着は、圧接面910が嵌込口部12の上方(嵌込口部12より天部寄り、或いは天部)に位置するだけではなく、嵌込口部12より下方に位置して行われてもよい。
【0144】
ガス圧接用還元材D1が上記のように装着された状態で、被圧接材92が下降して、キャップ体1aの天板11が圧接面910、920で挟まれる。そして、各被圧接材91、92と共にガスの炎で加熱されることにより、圧接面910、920に酸化被膜が生じることを抑止しながら、圧接を強固に行うことができる。
【0145】
つまり、熱可塑性樹脂製のキャップ体の天部が、各被圧接材の先端面で挟まれた僅かな隙間の中で、ごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化し体積が急激に増えることによって、エアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接面の酸化が抑制される。
【0146】
また、ガス圧接用還元材D1によれば、例えば各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材D1が外れた場合には、ガス圧接用還元材D1を改めて装着する必要があるが、その際にも、被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を大きく広げて煩雑な調整をする必要はない(
図14(a)参照)。
【0147】
仮に、
図14(b)に示すガス圧接用還元材Dのように、キャップ体に嵌込口部が設けられていない場合、ガス圧接用還元材Dを隙間に入れるためには、
図14(a)に示す圧接面910よりも、少なくとも高さh分だけ高く調整しなければならない。この被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を確保する作業は、非常に手間のかかる面倒な作業であり、特に作業負担が大きくなる、隙間が大きな場合は尚更である。
【0148】
これに対して、ガス圧接用還元材D1では、キャップ体1a全体の厚みより大幅に薄いキャップ体1aの天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、上記のようにガス圧接用還元材D1の装着が可能になる。これにより、作業の煩雑さを大きく軽減することができるので、結果的に、ガス圧接作業を容易に行うことができる。
【0149】
なお、ガス圧接用還元材D2は、被圧接材91に装着した際に、保持部128、129により、やや回り込むように被圧接材91を掴むため、ガス圧接用還元材D2が外れないようにする保持力に優れる。それ以外は、上記ガス圧接用還元材D1の作用と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0150】
(Eタイプ)
図12(a)に示すガス圧接用還元材E1は、キャップ体2aを有している。キャップ体2aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体2aの胴部20aは、やや裾広がりの円筒形状であり、
図12(a)で上端部は円形の天板21で塞がれている。
【0151】
胴部20aには、破ることで切り離しが可能な脆弱線22aが設けてある。脆弱線22aは、天板21に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、被圧接材91に嵌め込み可能な幅のミシン目220を有している。ミシン目220と天板21で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も後述する切離片200の切り離し後、被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部221となる。
【0152】
そして、ミシン目220の両端部に続けて胴部20aの残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板21に対して略直角方向に裾端部まで、ミシン目222、223がコ字状に形成してある。ミシン目220の両端角部には、切り離す際に切りすぎないように止めるための円形の孔229が設けられている。なお、孔229は、四角形等、他の形状でもよい。
【0153】
また、キャップ体2aの裾部には、全周にわたりやや径大のフランジ部23aが設けてある。なお、ミシン目220、222、223で切ることにより、切離片200を切り離して、上記ガス圧接用還元材D1の嵌込口部12と同様の嵌込口部を形成することができる。
【0154】
図12(b)に示すガス圧接用還元材E2は、キャップ体2bを有している。キャップ体2bは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体2bの胴部20bは、やや裾広がりの円筒形状であり、
図12(b)で上端部は円形の天板21で塞がれている。
【0155】
胴部20bには、破ることで切り離しが可能な脆弱線22bが設けてある。脆弱線22bは、天板21に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、被圧接材91に嵌め込み可能な幅でミシン目224を有し、ミシン目224の中間部に続けて胴部20bの残りの厚み(高さ)部分に、天板21に対して略直角方向に裾端部までミシン目225が設けられて、略T字状に形成してある。
【0156】
そして、ミシン目224、225で切り離すと、開閉片226、227を形成することができ、ミシン目224と天板21で形成される厚み部分は部分円筒形状である。この部分は、被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部228となる。
【0157】
また、キャップ体2bの裾部には、全周にわたりやや径大のフランジ部23bが設けてある。なお、ミシン目224、225で切ることにより、開閉片226、227を開閉動可能にして、開けることで開閉口部(図示省略)を形成することができる。
【0158】
なお、本実施の形態では、脆弱線としてミシン目を採用したが、これに限定するものではなく、例えば短いスリットを断続的な線状に設けた構造、或いはシートの厚さをごく薄くして線状に設けた構造等、手で容易に破ることができるものであればよい。
【0159】
(作用)
ここで、
図12(a)及び
図15を参照して、Eタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材E1を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0160】
ガス圧接用還元材E1のキャップ体2aは、被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体2aは、熱可塑性樹脂製であり、所定の保形性及び変形性を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0161】
被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、固定側の被圧接材91と可動側の被圧接材92を、上記ガス圧接用還元材D1を使用した圧接作業の場合と同様にセットする。そして、例えば、改めてガス圧接用還元材E1の装着の必要が生じたときには、キャップ体2aをミシン目220、222、223で切ることにより、不要部分である切離片200を切り離して、嵌込口部24(
図15参照)を有するガス圧接用還元材E11を作製することができる。
【0162】
キャップ体2aに嵌込口部24を形成した後のガス圧接用還元材E11の使用方法及び作用は、上記ガス圧接用還元材D1と同様である。なお、ガス圧接用還元材E1も、各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材E1が外れた場合には、ガス圧接用還元材E1を改めて装着する必要がある。
【0163】
その際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体2a全体の厚みより大幅に薄いキャップ体2aの天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材E1の装着が可能になる点は、上記ガス圧接用還元材D1と同様である。
【0164】
なお、ガス圧接用還元材E2の場合は、被圧接材91、92のセット後、例えば、改めてガス圧接用還元材E2の装着の必要が生じたときには、キャップ体2bをミシン目224、225で切ることにより、開閉片226、227を内外に変形させて開閉可能な状態とすることができる。これにより、開閉片226、227を開くことで開閉口部(図示省略)が形成可能なガス圧接用還元材(図示省略)を作製することができる。
【0165】
このガス圧接用還元材E2を使用したガス圧接工法では、開閉片226、227を開き、キャップ体2bに開閉口部を形成する。そして、天部の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間に差し入れる。これに伴い、天部に沿う部分から裾端部へ続く開閉口部が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天部を圧接面910に落とし込めば、被圧接材91の先端部に装着することができる。
【0166】
なお、ガス圧接用還元材E2も、各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材E2が外れた場合には、ガス圧接用還元材E2を改めて装着する必要がある。その際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体2b全体の厚みより大幅に薄いキャップ体2bの天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材E2の装着が可能になる点は、上記ガス圧接用還元材D1と同様である。
【0167】
(Fタイプ)
図13に示すガス圧接用還元材Fは、上記ガス圧接用還元材D1と同様の構造(キャップ体に嵌込口部が設けてある)を有するガス圧接用還元材F11と、有底円筒形状で、上記ガス圧接用還元材E1と略同様の形状で脆弱線22aが設けられていない構造の第2のキャップ体を有するガス圧接用還元材F12を組み合わせて構成されている。なお、ガス圧接用還元材F11とガス圧接用還元材F12のそれぞれの構造の説明は、ここでは省略する。
【0168】
ガス圧接用還元材Fは、本実施の形態ではガス圧接用還元材F12にガス圧接用還元材F11を被せて二重構造としたものである。ガス圧接用還元材F11は、ガス圧接用還元材F12と同じ形状のものを加工したもので、ポリスチレン樹脂製のシートの可撓性を以てややきつく被せられている。
【0169】
なお、二重構造のガス圧接用還元材Fでは、上記とは逆にガス圧接用還元材F12をガス圧接用還元材F11に被せて組み合わせることもできる。ガス圧接用還元材F12をガス圧接用還元材F11に被せた場合は、ガス圧接用還元材F11がガス圧接用還元材F12に内蔵された形となるので、意図しない接触等によるガス圧接用還元材F11の脱落が起こりにくい利点がある。
【0170】
(作用)
ここで、
図13及び
図16を参照して、Fタイプである上記ガス圧接用還元材Fを使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0171】
ガス圧接用還元材Fは、嵌込口部を有するガス圧接用還元材F11が、有底筒状体であるガス圧接用還元材F12の外側に重ねてある構造である。
【0172】
まず、各被圧接材91、92の圧接面910、920でガス圧接用還元材Fのキャップ体の天部を挟む前、つまり間隔が広く開いているときに、ガス圧接用還元材Fを固定側の被圧接材91の先端部に被せる際は、二重構造のままで被せるようにする。これにより、ガス圧接用還元材Fは、キャップ体の天部を挟む前に多少の風が吹いたりしても、有底筒状体のガス圧接用還元材F12の深い胴部の作用で、被圧接材91の先端部から外れにくい。
【0173】
そして、各被圧接材91、92の圧接面910、920でガス圧接用還元材Fのキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材Fが外れなかった場合は、挟まれている二重構造のガス圧接用還元材Fのままで、還元材として使用する。なお、ガス圧接用還元材Fは、キャップ体の天部も二重であるので、還元材としての効果に好影響が期待できる。
【0174】
また、各被圧接材91、92の圧接面910、920でガス圧接用還元材Fのキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材Fが外れてしまった場合は、外れた状態で、ガス圧接用還元材F12からキャップ体に嵌込口部24を有するガス圧接用還元材F11を取り外し、このガス圧接用還元材F11のみを還元材として使用する。
【0175】
なお、ガス圧接用還元材F11を使用する際の作用は、ガス圧接用還元材D1と同様であり、ガス圧接用還元材F11を改めて装着する際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体全体の厚みより大幅に薄いキャップ体の天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材F11の装着が可能になる。
【0176】
ガス圧接用還元材F11は、被圧接材91、92を圧接する際に、圧接面910、920に酸化被膜が生じることをより確実に抑止するために、エア遮断リング及び還元シートと組み合わせることができる。
図17に示すガス圧接用還元材E3は、Eタイプの実施形態の一つである。
【0177】
ガス圧接用還元材E3は、キャップ体3を有している。キャップ体3は、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体3の胴部30は、やや裾広がりの円筒形状であり、上端部は円形の天板31で塞がれている。
【0178】
胴部30には、周方向に所定の間隔で外方向に膨出させた縦補強部32が設けてある。また、胴部30には、破ることで切り離しが可能な脆弱線35が設けてある。脆弱線35は、天板31に沿って所定の厚みとなるように周方向へ設けられ被圧接材91に嵌め込み可能な幅のミシン目350を有している。
【0179】
ミシン目350と天板31で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も切離片300の切り離し後、被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部351となる。なお、ガス圧接用還元材E3は、縦補強部32により強度があって、被圧接材91に対する掴まりが良い。
【0180】
そして、ミシン目350の両端部に続けて胴部30の残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板31に対して略直角方向に裾端部までミシン目352、353がコ字状に形成してある。また、キャップ体3の裾部には、全周にわたりやや径大のフランジ部36が設けてある。なお、ミシン目352、353で切ることにより、切離片300を切り離して、上記ガス圧接用還元材D1の嵌込口部12と同様の嵌込口部を形成することができる。
【0181】
また、天板31の内面(下面)には、熱硬化性樹脂であるポリイミド樹脂製のエア遮断リング33が配置され、天板31の内面との間でエア遮断リング33を挟んで、エア遮断リング33よりやや径大な、ポリスチレン樹脂製の円形の還元シート34が中央部で天板31に溶着されている。還元シート34は、エア遮断リング33の外形にほぼ沿うように熱変形させてあり、内面と協働してエア遮断リング33を封入している(
図17拡大図参照)。
【0182】
ガス圧接用還元材E3を使用して被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、固定側の被圧接材91と可動側の被圧接材92を、ガス圧接用還元材D1を使用した圧接作業の場合と同様にセットする。そして、例えば、改めてガス圧接用還元材E3の装着の必要が生じたときには、キャップ体3をミシン目350、352、353で切ることにより、不要部分である切離片300を切り離して、嵌込口部(図示省略)を有するガス圧接用還元材(図示省略)を作製することができる。
【0183】
キャップ体3に嵌込口部を形成した後のガス圧接用還元材の使用方法及び作用は、上記ガス圧接用還元材D1と同様であるが、エア遮断リング33と還元シート34が加わることで、それによる作用が生じる点が異なる。
【0184】
この場合は、圧接作業においては、ガス圧接用還元材E3が被圧接材91、92と共に、ガスの炎で加熱されることによって、まず、還元シート34及び天板31が溶融して燃焼する。そして、熱硬化性樹脂製で、まだ溶融していないエア遮断リング33の内側の、被圧接材91、92の圧接面910、920で挟まれた僅かな隙間の中で、還元シート34がごく短時間で溶融し、燃焼する。
【0185】
更に、燃焼によって気化し体積が急激に増えることによって、エア遮断リング33の内側の隙間にあったエアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接面の酸化が抑制される。
【0186】
また、エア遮断リング33が溶融しないうちは、エア遮断リング33の内側の隙間へのエアの浸入が遮断されることとも相俟って、隙間内での酸化が抑制され、圧接側の先端面に酸化被膜が生じることを抑制できる。
【0187】
このように、ガス圧接用還元材E3によれば、ガス圧接を行う際に、アセチレンガスより火力が劣る天然ガス、プロパンガス、又は水素ガス等を使用する場合、充分な火力が得られるように初期加熱の段階から標準炎で加熱しても、圧接面910、920に酸化被膜や金属残渣物等の残留物が生じることを抑制できるので、強度が充分な圧接を行うことが可能になる。
【0188】
なお、ガス圧接用還元材E3も、各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材E3が外れた場合には、ガス圧接用還元材E3を改めて装着する必要がある。その際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体3全体の厚みより大幅に薄いキャップ体3の天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材E3の装着が可能になる。
【0189】
また、
図17に記載した、ガス圧接用還元材がエア遮断リングや還元シートを備える構成は、上記ガス圧接用還元材A1、A2、A3、A4、A5、ガス圧接用還元材B1、B2、B3、ガス圧接用還元材C1、C2、ガス圧接用還元材D1、D2、ガス圧接用還元材E1、E2、及びガス圧接用還元材Fに対しても同様に行うことができる。
【0190】
図18(a)、
図18(b)を参照する。
加工用工具8は、嵌込口部が設けられていないキャップ体Gに嵌込口部を形成するための工具である。加工用工具8は、台部材80を有している。台部材80の一方の面(
図18で上面)の幅方向両側には、支持部材81が設けられている。台部材80の先端部には、受脚82が設けてあり、支持部材81から受脚82に掛け渡して、受具83が先方向へやや下り傾斜して設けてある。
【0191】
支持部材81には、シーソー部材84が支点部840を介し矢印方向に揺動可能に置かれている。シーソー部材84の先部材841(
図18(b)で左側)は、幅方向で台部材80側へ湾曲した形状を有している。先部材841の台部材80側の凹面842には、湾曲形状に沿って平面視コ字状の切断刃843が取り付けてある。また、シーソー部材84は、
図18に示すように支点部840を境にやや上に反った形状に形成してあり、先端には押さえ片844が設けられ、基部側は操作部845となっている。
【0192】
シーソー部材84は、C型の板バネ85を介し、シーソー部材84の先部と台部材80の受具83を両端部で挟むようにして互いに密着する方向へ付勢されている。そして、常態ではシーソー部材84は閉じて、切断刃843が受具83に設けられた刃溝830に収まっている。なお、切断刃は、コ字状に限定せず、例えばU字状に形成し、嵌込口部をU字状とすることもできる。
【0193】
シーソー部材84は、操作部845を押し戻し操作することにより、矢印方向に揺動させることができる。なお、シーソー部材84を閉じたときの台具83の先端と切断刃843との距離は、上記嵌合部121の厚み方向の高さと合わせてある。
【0194】
図19(a)、
図19(b)を参照して、加工用工具8の使用方法を説明する。
なお、ここで加工する対象となるキャップ体Gは、開口部100の周りにフランジ部が設けられていないタイプである。
【0195】
まず、操作部845を押して、切断刃843があるシーソー部材84の先部材841を開き、台部材80の先部をキャップ体Gの開口部100から挿入する。このとき、台部材80の先部とシーソー部材84の先部材841の間にキャップ体Gの胴部101が入るようにする。
【0196】
そして、台部材80の先端を天板102に当てて、操作部845を緩め、板バネ85を常態に戻すと、先部材841が閉じる。これにより、押さえ片844がキャップ体Gの天板102に当たって天板102を挟み、切断刃843の位置を決めると同時に切断刃843がキャップ体Gの胴部101をコ字状に切断して、刃溝830に収まる(
図18(b)、
図19(a)、及び
図19(b)の点線で表した形状を参照)。
【0197】
なお、シーソー部材84の一端部は台部材80側へ略樋状に湾曲した形状を有しており、台部材80側の受具83は、シーソー部材84の湾曲面に略沿うように湾曲しており、シーソー部材84に設けてある切断刃843は、加工対象となるキャップ体Gの胴部101の曲面に略沿う湾曲した刃先を有する。
【0198】
これにより、切断刃843の刃先が、略全長にわたり、切断方向に動く前からキャップ体Gの胴部101の曲面の近くにあるので、切断が終了するまでの切断刃843の動きが少なくて済む。これに伴い、切断の際の切断刃843によるキャップ体Gの変形が少なく抑えられるので、キャップ体Gが歪に切断されてしまうことも抑止できる。
【0199】
また、板バネ85の付勢力だけでは切断刃843で胴部101が充分に切断できなかった場合は、台部材80の先部とシーソー部材84の先部材841をキャップ体Gの内外側から手で挟むようにすると、キャップ体Gの胴部101を確実に押し切ることができる。
【0200】
なお、加工用工具8は、フランジ部が形成してあるキャップ体を加工することもでき、その場合はフランジ部が邪魔にならないように適宜変形させた状態で切断すれば、上記ガス圧接用還元材D1と略同様のガス圧接用還元材を形成することができる。
【0201】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0202】
A1 ガス圧接用還元材
4a キャップ体
40 胴部
41 天板
42 側板
42a 側板
420 フランジ部
91、92 被圧接材
910、920 先端面
900 隙間
A2 ガス圧接用還元材
4b キャップ体
43 天板
44 胴脚部
440 フランジ部
45 胴部
A3 ガス圧接用還元材
4c キャップ体
40 胴部
46 天板
47 側板
47a 側板
470 フランジ部
471 掛かり部
472 押さえ板
48 抜き穴
A4 ガス圧接用還元材
4d キャップ体
473 掛かり部
A5 ガス圧接用還元材
4e キャップ体
47 側板
48 抜き穴
49 掛かり部
B1 ガス圧接用還元材
5a キャップ体
50 胴部
51 天板
500 切り目
52 胴脚部
520 フランジ部
B2 ガス圧接用還元材
5b キャップ体
51 天板
53 胴部
500 切り目
54 胴脚部
540 フランジ部
B3 ガス圧接用還元材
5c キャップ体
51 天板
55 胴脚部
550 フランジ部
56 掛かり部
57 胴部
C1 ガス圧接用還元材
6a キャップ体
61 天板
62 裾部
64 胴脚部
640 フランジ部
65 嵌込口部
C2 ガス圧接用還元材
6b キャップ体
61 天板
62 裾部
63 胴脚部
630 フランジ部
D1 ガス圧接用還元材
1a キャップ体
10 胴部
11 天板
12 嵌込口部
120 切り縁
121 嵌合部
122、123 切り縁
13 フランジ部
D2 ガス圧接用還元材
1c キャップ体
10c 胴部
12c 嵌込口部
124 切り縁
125 嵌合部
126、127 切り縁
128、129 保持部
E1 ガス圧接用還元材
2a キャップ体
20a 胴部
21 天板
22a 脆弱線
220 ミシン目
221 嵌合部
222、223 ミシン目
229 孔
200 切離片
23a フランジ部
E2 ガス圧接用還元材
2b キャップ体
20b 胴部
22b 脆弱線
224、225 ミシン目
226、227 開閉片
228 嵌合部
23b フランジ部
F ガス圧接用還元材
F11 ガス圧接用還元材
F12 ガス圧接用還元材
G ガス圧接用還元材
3 キャップ体
30 胴部
31 天板
32 縦補強部
33 エア遮断リング
34 還元シート
35 脆弱線
350 ミシン目
351 嵌合部
352、353 ミシン目
300 切離片
36 フランジ部
8 加工用工具
80 台部材
81 支持部材
82 受脚
83 受具
830 刃溝
84 シーソー部材
840 支点部
841 先部材
842 凹面
843 切断刃
844 押さえ片
845 操作部
85 板バネ
【要約】
【課題】ガス圧接用還元材を固定側の鋼材等の被圧接材の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での被圧接材の先端部への装着を可能にしたガス圧接用還元材を提供する。
【解決手段】
ガス圧接用還元材D1は、熱可塑性樹脂製で、被圧接材の圧接側の先端部に対し外嵌め可能なキャップ体1aを備えており、キャップ体1aの胴部10には、キャップ体1aの天板11に沿って所定の厚みで周方向へ被圧接材に嵌め込み可能な幅で切り縁120が設けられ、切り縁120に続けて胴部10の残りの厚み部分に、天板11に対して略直角に裾端部まで切り縁122、123が設けられて、嵌込口部12が形成してある。
【選択図】
図11