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特許7578334連続型結晶転移及びイオン交換装置、並びにプロセス
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  • 特許-連続型結晶転移及びイオン交換装置、並びにプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】連続型結晶転移及びイオン交換装置、並びにプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/02 20060101AFI20241029BHJP
   B01J 47/00 20170101ALI20241029BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20241029BHJP
【FI】
C01B39/02
B01J47/00
C02F1/42 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023535887
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 CN2021091321
(87)【国際公開番号】W WO2022121223
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】202011431659.4
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523214915
【氏名又は名称】蘇州立昂新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 強
(72)【発明者】
【氏名】袁 永恒
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204324905(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104760970(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101890332(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104477937(CN,A)
【文献】国際公開第2000/053530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/02
B01J 47/00
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続型結晶転移及びイオン交換装置であって、
カオリン含有する分子篩原料から結晶転移プロセスにより、カオリンゼオライト分子篩に転移させるために、
直列接続されたM+N個の反応槽を含み、後の反応槽の供給口と前の反応槽の吐出口とが反応溶液循環配管を介して連通しており、M+N番目の反応槽の吐出口と1番目の反応槽の供給口とが反応溶液循環配管を介して連通しており、M個以下の反応槽は結晶転移プロセス、N個以下の反応槽はイオン交換プロセスに用いられ、
反応槽ごとに4つの溶液入口配管、3つの溶液出口配管及び1つの反応溶液循環配管が配置されており、4つの溶液入口配管は、それぞれ、脱イオン水入口配管、新しいアルカリ溶液入口配管、新しいイオン交換液入口配管、及びpH調整液入口配管であり、3つの溶液出口配管は、それぞれ、廃水出口配管、廃アルカリ溶液出口配管、及び廃イオン交換液出口配管であり、
反応槽に連通している配管はバルブによって開閉制御される、ことを特徴とする連続型結晶転移及びイオン交換装置。
【請求項2】
m個は結晶転移を行う分子篩原料を収容するための結晶転移プロセス用反応槽であり、N-n個は、結晶転移を経たイオン交換対象の中間生成物を収容するためのイオン交換プロセス移行反応槽であり、n個はイオン交換を行う中間生成物を収容するためのイオン交換プロセス用反応槽であり、M-m個は結晶転移対象の分子篩原料を収容するための結晶転移プロセス移行反応槽である、ことを特徴とする請求項1に記載の連続型結晶転移及びイオン交換装置。
【請求項3】
連続型結晶転移及びイオン交換プロセスであって、
請求項2に記載の連続型結晶転移及びイオン交換装置に基づいており、
1回のサイクルにおいて、m個の結晶転移プロセス用反応槽のうちの1番目の反応槽に新しいアルカリ溶液を導入し、1番目の結晶転移プロセス用反応槽から流出した反応溶液を一次アルカリ溶液として2番目の結晶転移プロセス用反応槽に導入し、2番目の結晶転移プロセス用反応槽から流出した反応溶液を二次アルカリ溶液として3番目の結晶転移プロセス用反応槽に導入し、これによって類推して、m番目の結晶転移プロセス用反応槽から流出した反応溶液を廃アルカリ溶液として排出し、所定時間後、1番目の結晶転移プロセス用反応槽内の分子篩の結晶転移が最初に完了すると、1番目の結晶転移プロセス用反応槽の新しいアルカリ溶液入口配管及び反応溶液循環配管を閉じて、当該反応槽をイオン交換プロセス移行反応槽にし、次のサイクルを開始させる前に、残りの洗浄済みのイオン交換プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つをイオン交換プロセスサイクルの末尾に順次接続し、接続したイオン交換プロセス移行反応槽のうちの1つを最後のイオン交換プロセス用反応槽とし、今回のサイクルにおける2番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、新しいサイクルを開始させ、新しいサイクルを開始させる前に、イオン交換プロセスサイクルの末尾に接続するためにイオン交換プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つの洗浄作業を完了することを確保する工程と、
m個の結晶転移プロセス用反応槽のうちの1番目の反応槽に新しいアルカリ溶液を導入すると同時に、n個のイオン交換プロセス用反応槽のうちの1番目の反応槽に新しいイオン交換液を導入し、1番目のイオン交換プロセス用反応槽から流出した反応溶液を一次イオン交換液として2番目のイオン交換プロセス用反応槽に導入し、2番目のイオン交換プロセス用反応槽から流出した反応溶液を二次イオン交換液として3番目のイオン交換プロセス用反応槽に導入し、これによって類推して、n番目のイオン交換プロセス用反応槽から流出した反応溶液を廃イオン交換液として排出し、所定時間後、1番目のイオン交換プロセス用反応槽内の分子篩のイオン交換が最初に完了すると、1番目のイオン交換プロセス用反応槽の新しいイオン交換液入口配管及び反応溶液循環配管を閉じて、当該反応槽を結晶転移プロセス移行反応槽にし、次のサイクルを開始させる前に、分子篩原料を交換した結晶転移プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つを結晶転移プロセスサイクルの末尾に順次接続し、接続した結晶転移プロセス移行反応槽のうちの1つを最後の結晶転移プロセス用反応槽とし、今回のサイクルにおける2番目のイオン交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽とし、新しいサイクルを開始させ、新しいサイクルを開始させる前に、結晶転移プロセスサイクルの末尾に接続するために、結晶転移プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽への分子篩原料交換作業を完了することを確保する工程と、
サイクルを通じて連続結晶転移及びイオン交換を行う工程と、を含む、ことを特徴とする連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【請求項4】
1回目のサイクルが終了した後、バルブによって液体流れの流動方向を切り替え、2番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、2番目のイオン交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽とし、2回目のサイクルを開始させ、2回目のサイクルが終了した後、3番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、3番目のイオン交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽とし、3回目のサイクルを開始させ、これによって類推して、各々のサイクルにおいて、連続的な動的切り替えを行い、結晶転移プロセス用反応槽の数及びイオン交換プロセス用反応槽の数を一定に維持する、ことを特徴とする請求項3に記載の連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【請求項5】
前記新しいアルカリ溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【請求項6】
前記新しいイオン交換液はイオン交換プロセスによって得られた分子篩製品中の目的イオンに対応する溶液である、ことを特徴とする請求項3に記載の連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【請求項7】
結晶転移及びイオン交換反応において、プロセスの流れに従って、対応する量のpH調整液を対応する反応槽に加え、各反応槽のpH値を安定化させる、ことを特徴とする請求項3に記載の連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【請求項8】
前記pH調整液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【請求項9】
すべての反応槽は、温度が一定に制御された空間内に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載の連続型結晶転移及びイオン交換プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子篩製造の技術分野に関し、具体的には、連続型結晶転移及びイオン交換装置、並びにプロセスである。
【背景技術】
【0002】
分子篩はもともと天然鉱物で発見され、当時は流体の乾燥や浄化に使われていた。科学技術の発展に伴い、分子篩は多くの業界に広く使用されており、分子篩は、特に現在の石油化学工業とガス分離の業界に主に使われていた。天然鉱物の不足と種類の制限のため、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルカリ又は粘土類鉱物を原料として、各種タイプの分子篩を人工的に合成し、大規模な工業的生産及び応用を遂げた。人工的に合成された分子篩は、サイズが1~10μmの粉体であることが多い。この微細な分子篩結晶は、良好な吸着特性、触媒特性や熱安定特性などを持っているが、使用中に粉塵空間を形成し、環境を汚染し、取り扱いも不便であり、分子篩粉末に一定量のバインダを添加し、分子篩を所望の寸法と形状、一定の機械的強度を持つ集合体にしなければならない。粘土と分子篩粉体を接着して成形するのは最も一般的に使用される方法であり、粘土は一般的にカオリン(カオリンを原料としてゼオライト分子篩を合成する主な根拠はこれらの構造組成の類似性である)、アタパルジャイト、ベントナイト、モンモリロナイトなどの1つ又はいくつかを選択し、その使用量は一般的に総量の2~20wt%であり、成形後の分子篩の特性は添加されたバインダの種類と比率によって異なる。バインダの役割は主に粉体粒子表面の凹凸を被覆して可塑性を高めることであり、また、希釈と潤滑作用、内部摩擦を減少させる作用がある。しかし、ゼオライト分子篩の焙焼成形過程において、バインダは一般的に吸着活性がない又は吸着活性が非常に低い物質になるため、バインダの添加は分子篩の吸着特性、触媒特性や熱安定性特性などを低下させる。そのため、カオリンをバインダとして分子篩を成形した後、対応する結晶転移処理により、バインダのない全ゼオライト分子篩を生成するのが現在主流の手段である。関連文献によると、Breckらは1974年にカオリンを焙焼や熱活性化した後、アルカリ溶液中で水熱処理することによりゼオライト分子篩を生成した。
【0003】
Si/Al比が1.0~1.1のX型ゼオライト分子篩は、低Si/Al X型ゼオライト分子篩(LSX)と呼ばれる。Li+の半径が最小で電荷密度が最大であるため、LiXゼオライト分子篩は、Na+、Ca2+、Mg2+などのイオンのゼオライト分子篩に比べて、酸素富化特性がよく、窒素ガスに対する吸着容量が通常のX型ゼオライト分子篩よりも50%以上高く、一方、Li-LSXゼオライト分子篩は、通常のX型ゼオライト分子篩よりも窒素ガスの吸着容量が大きく、窒素と酸素の分離能力が大きいため、ガス分離において優位性を示し、これにより、圧力スイング吸着分離(PSA)や真空圧力スイング吸着分離(VSA)などの分離プロセスなどの産業に広く利用されている。実験により、Li-LSX型ゼオライト分子篩中のLi交換度が70%より大きい場合にのみ、その窒素吸着容量が急速に増加することが証明された。そのため、リチウム塩の価格が上昇し続け、LSXゼオライト分子篩骨格中の個々の位置でナトリウムイオンの交換が難しい状況下で、いかにして低い生産コストと合理的なプロセス条件で高いイオン交換度を得るかが当分野の研究焦点の1つになった。
【0004】
Na-LSX型ゼオライト分子篩を原料としてLi-LSX型ゼオライト分子篩を製造する過程において、一般的な方法は水溶液交換と溶融交換であり、その他に非水溶液交換と蒸気交換などの方法がある。水溶液交換法は高い交換度を達成できるが、複数回又は連続的な交換が必要であり、交換条件が温和(温度は室温から100℃、時間は数十分から数時間)で工業化が容易であることから、大規模な生産に最も広く用いられている。しかし、複数回の交換を行うと、1回から2回の交換を経た後、後続の交換の交換度の向上が遅くなり、交換効率が低下し、一方、連続交換では、大量の交換溶液を必要とし、無駄が深刻である。
【0005】
中国では、崔邑誠らが水溶液多回交換法(非特許文献1)によりリチウムイオンの交換度を98%以上にし、郭岱石ら(非特許文献2)も約96%の交換度を得た。国外でも、この方法を用いてさまざまな交換度を有するLi-LSXゼオライト分子篩(特許文献1,1964;特許文献2,1995;特許文献3,1999及び特許文献4,1999)を得たことが報告されている。しかし、リチウム塩の節約及び生産プロセスの簡素化などの重要な部分において、上記の研究はいずれも突破されていない。米国特許特許文献5(2000)は非均一吸着プロセスを提案してプロセスコストを下げたが、この方法は吸着剤の特性低下を招くため、その応用範囲が制限されてしまう。
【0006】
溶融塩交換法は溶媒効果による妨害を排除でき、カチオン交換のための溶融塩溶液としてアルカリ金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩などのイオン化特性の高い溶融塩を用いることができるが、溶融塩溶液を形成する温度はゼオライト構造の破壊温度以下でなければならず、また、溶融塩溶液中でカチオン交換反応があるほか、一部の塩類がゼオライトケージ内に内包されており(内包度はアニオンの大きさと交換温度に依存する)、特殊な特性を有するゼオライトが形成される可能性がある。米国特許特許文献4(1999)はこの方法により交換度が97%に達するLi-LSX型ゼオライト分子篩を取得したと報告したが、この方法の欠点、例えば高温が溶媒に与える影響などはすべてよく解決されておらず、しかも交換条件が厳しく、交換が不均一であるため、応用も報告も少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】USP3140933
【文献】USP5464467
【文献】USP5932509
【文献】USP5916836
【文献】USP6053966
【非特許文献】
【0008】
【文献】化学学報,2003,61(3):350-353
【文献】イオン交換と吸着,2002,18(6):516-521
【0009】
従来技術の上記の問題点を解決するために、本発明を完成させたに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術に存在する上記の欠点に対して、交換度が高く、プロセスがシンプルで、コストが低いなどの利点を有する、ゼオライト分子篩製品を製造するための連続型結晶転移及びイオン交換装置、並びにプロセスを提案している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、直列接続されたM+N個の反応槽を含み、後の反応槽の供給口と前の反応槽の吐出口とが反応溶液循環配管を介して連通しており、M+N番目の反応槽の吐出口と1番目の反応槽の供給口とが反応溶液循環配管を介して連通しており、M個以下の反応槽は結晶転移プロセス、N個以下の反応槽はイオン交換プロセスに用いられ、
反応槽ごとに4つの溶液入口配管、3つの溶液出口配管及び1つの反応溶液循環配管が配置されており、4つの溶液入口配管は、それぞれ、脱イオン水入口配管、新しいアルカリ溶液入口配管、新しいイオン交換液入口配管、及びpH調整液入口配管であり、3つの溶液出口配管は、それぞれ、廃水出口配管、廃アルカリ溶液出口配管、及び廃イオン交換液出口配管であり、
反応槽に連通している配管はバルブによって開閉制御される、連続型結晶転移及びイオン交換装置に関する。
【0012】
いくつかの技術形態では、m個は、結晶転移を行う分子篩原料を収容するための結晶転移プロセス用反応槽であり、N-n個は、結晶転移を経たイオン交換対象の中間生成物を収容するためのイオン交換プロセス移行反応槽であり、n個は、イオン交換を行う中間生成物を収容するためのイオン交換プロセス用反応槽であり、M-m個は、結晶転移対象の分子篩原料を収容するための結晶転移プロセス移行反応槽であり、
mはM以下、nはN以下である。
【0013】
本発明は、上記連続型結晶転移及びイオン交換装置に基づいており、
1回のサイクルにおいて、m個の結晶転移プロセス用反応槽のうちの1番目の反応槽に新しいアルカリ溶液を導入し、1番目の結晶転移プロセス用反応槽から流出した反応溶液を一次アルカリ溶液として2番目の結晶転移プロセス用反応槽に導入し、2番目の結晶転移プロセス用反応槽から流出した反応溶液を二次アルカリ溶液として3番目の結晶転移プロセス用反応槽に導入し、これによって類推して、m番目の結晶転移プロセス用反応槽から流出した反応溶液を廃アルカリ溶液として排出し、所定時間後、1番目の結晶転移プロセス用反応槽内の分子篩の結晶転移が最初に完了すると、1番目の結晶転移プロセス用反応槽の新しいアルカリ溶液入口配管及び反応溶液循環配管を閉じて、当該反応槽をイオン交換プロセス移行反応槽にし、次のサイクルを開始させる前に、残りの洗浄済みのイオン交換プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つをイオン交換プロセスサイクルの末尾に順次接続し、接続したイオン交換プロセス移行反応槽のうちの1つを最後のイオン交換プロセス用反応槽とし、今回のサイクルにおける2番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、新しいサイクルを開始させ、新しいサイクルを開始させる前に、イオン交換プロセスサイクルの末尾に接続するためにイオン交換プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つの洗浄作業を完了することを確保する工程と、
m個の結晶転移プロセス用反応槽のうちの1番目の反応槽に新しいアルカリ溶液を導入すると同時に、n個のイオン交換プロセス用反応槽のうちの1番目の反応槽に新しいイオン交換液を導入し、1番目のイオン交換プロセス用反応槽から流出した反応溶液を一次イオン交換液として2番目のイオン交換プロセス用反応槽に導入し、2番目のイオン交換プロセス用反応槽から流出した反応溶液を二次イオン交換液として3番目のイオン交換プロセス用反応槽に導入し、これによって類推して、n番目のイオン交換プロセス用反応槽から流出した反応溶液を廃イオン交換液として排出し、所定時間後、1番目のイオン交換プロセス用反応槽内の分子篩のイオン交換が最初に完了すると、1番目のイオン交換プロセス用反応槽の新しいイオン交換液入口配管及び反応溶液循環配管を閉じて、当該反応槽を結晶転移プロセス移行反応槽にし、次のサイクルを開始させる前に、分子篩原料を交換した結晶転移プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つを結晶転移プロセスサイクルの末尾に順次接続し、接続した結晶転移プロセス移行反応槽のうちの1つを最後の結晶転移プロセス用反応槽とし、今回のサイクルにおける2番目のイオン交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽とし、新しいサイクルを開始させ、新しいサイクルを開始させる前に、結晶転移プロセスサイクルの末尾に接続するために、結晶転移プロセス移行反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽への分子篩原料交換作業を完了することを確保する工程と、
サイクルを通じて連続結晶転移及びイオン交換を行う工程と、を含む、連続型結晶転移及びイオン交換プロセスに関する。
【0014】
分子篩原料交換作業は、まず、脱イオン水でゼオライト分子篩製品を洗浄し、次に、原料を取り出し、最後に、新しい分子篩原料を充填することである。
1回目のサイクルが終了した後、バルブによって液体流れの流動方向を切り替え、2番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、2番目のイオン交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽とし、2回目のサイクルを開始させ、2回目のサイクルが終了した後、3番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、3番目のイオン交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽とし、3回目のサイクルを開始させ、これによって類推して、各々のサイクルにおいて、連続的な動的切り替えを行い、結晶転移プロセス用反応槽の数及びイオン交換プロセス用反応槽の数を一定に維持する。
【0015】
各サイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽は新しいアルカリ溶液が導入される反応槽であり、各サイクルにおける1番目のイオン交換プロセス用反応槽は新しいイオン交換液が導入される反応槽である。新しいアルカリ溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1種を含み、好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。新しいイオン交換液は、イオン交換プロセスによって得られる分子篩製品中の目的イオンに対応する溶液であり、
カルシウム型分子篩の場合、新しいイオン交換液は塩化カルシウム溶液であってもよく、
リチウム型分子篩の場合、新しいイオン交換液は硫酸リチウム溶液、塩化リチウム及び硝酸リチウム溶液のうちの少なくとも1種であってもよいが、好ましくは硫酸リチウム溶液である。硫酸リチウムを採用することは以下の利点がある。塩化リチウムは塩素イオンの存在のため、設備に対して腐食性があり、設備の材質に対する要求がとても高い。塩素イオンの存在により、廃液処理が面倒で環境に優しくない。硝酸イオンの存在により、廃水中の総窒素の汚染指標を増加させ、現在の総窒素の排出制限は非常に厳格である。硫酸イオンは塩素イオンに比べて大きく、洗浄が容易であり、特殊吸着剤として使用した場合にはサルフェートによる二次汚染がなく、サルフェートによる環境への影響が少ないため廃液処理量を低減することができる。
【0016】
上記結晶転移及びイオン交換反応において、プロセスの流れに従って、対応する量のpH調整液を対応する反応槽に加え、各反応槽のpH値を安定化させる。pH調整液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1種を含み、リチウム型分子篩の場合は、水酸化リチウムが好ましい。
好ましくは、すべての反応槽は、温度が一定に制御された空間内に配置される。
【0017】
分子篩原料とは、低ケイ素ナトリウム型分子篩、低ケイ素ナトリウムカリウム型分子篩、4A分子篩、及び5A分子篩であり、分子篩原料には、カオリン及び/又は洋坩土バインダが含有されている。中間生成物は、結晶転移プロセスにより処理された全ゼオライト分子篩である。
【発明の効果】
【0018】
技術的効果は以下のとおりである。
従来技術と比べて、本発明は下記技術的効果がある。
1)結晶転移プロセスとイオン交換プロセスの原理は基本的に一致しているので、結晶転移プロセスとイオン交換プロセスを組み合わせて、結晶転移とイオン交換を連続的に行うことにより、全ゼオライト分子篩の一体化製造プロセスの方法と装置が実現される。単一タイプの分子篩(例えば、リチウム型分子篩)の製造にも、カチオン混合型分子篩の製造にも使用され得る。
2)リチウム型分子篩を例にすると、イオン交換の過程で、イオン交換液が分子篩に入った後、その濃度がすぐに小さくなるが、反応槽から流出した溶液にはかなりの割合のリチウムが含まれており、反応した溶液を直接廃液として排出するのではなく、交換が不十分な次の反応槽に再び導入して交換反応を行うことで、反応液の利用率を高める。最後の反応槽では交換の効果がなくなるか、出口溶液がリチウムを含有しなくなるまでこれを繰り返す。新しいイオン交換液を連続的に導入することで、リチウムイオンを十分に利用し、イオン交換の変換率を高める。以上の原理と同様に、結晶転移プロセスにおいて、複数の反応槽を用いることにより、アルカリ溶液中の有効成分を十分に利用することができ、原料の利用効率と生産効率を向上させることができる。
3)移行反応槽が設けられることによって、結晶転移プロセスとイオン交換プロセスとのサイクルの連続性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1のサイクルプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。実施例では、具体的な条件が明示されていない実験方法は、通常の方法及び条件に従って行われる。
実施例1
【0021】
図1に示すように、本実施例は、直列接続されたM+N個の反応槽を含み、後の反応槽の供給口と前の反応槽の吐出口とが反応溶液循環配管を介して連通しており、M+N番目の反応槽の吐出口と1番目の反応槽の供給口とが反応溶液循環配管を介して連通している。
【0022】
反応槽ごとに4つの溶液入口配管、3つの溶液出口配管及び1つの反応溶液循環配管が配置されており、4つの溶液入口配管は、それぞれ、脱イオン水入口配管、新しいアルカリ溶液入口配管、新しいリチウム溶液入口配管、及びpH調整液入口配管であり、3つの溶液出口配管は、それぞれ、廃水出口配管、廃アルカリ溶液出口配管、及び廃リチウム溶液出口配管である。
【0023】
すべての反応槽は、温度が一定に制御された空間内に配置される。
【0024】
本実施例では、図1を例にして説明し、番号Z1~Zmの反応槽は結晶転移プロセス用反応槽、Zm+1~ZMの反応槽は結晶転移プロセス移行反応槽、番号L1~Lnの反応槽はリチウム交換プロセス用反応槽、Ln+1~LNの反応槽はリチウム交換プロセス移行反応槽である。本実施例はリチウム型分子篩の製造に用いられる。
【0025】
1回のサイクルにおいて、番号Z1の反応槽に新しいアルカリ溶液を導入して結晶転移反応を行い、Z1反応槽から流出した反応溶液を一次アルカリ溶液としてZ2反応槽に導入し、結晶転移反応を持続し、Z2反応槽から流出した反応溶液を二次アルカリ溶液としてZ3反応槽に導入し、結晶転移反応を持続し、これによって類推して、Zm-1反応槽から流出した反応溶液をm-1次アルカリ溶液としてZm反応槽に導入し、結晶転移反応を持続し、Zm反応槽から流出した反応溶液を廃液として廃アルカリ溶液出口配管を介して排出した。Z1反応槽内の結晶転移反応が十分に行われた後、Z1反応槽を脱イオン水で洗浄して、新しいリチウム交換プロセス移行反応槽とした。次のサイクルにおいて、脱イオン水で洗浄したZm+1反応槽を結晶転移プロセスサイクルの末尾に接続し、最後の結晶転移プロセス用反応槽とし、
リチウム交換プロセス用反応槽の場合、本回のサイクルにおいて、番号L1の反応槽に新しいリチウム溶液を導入してリチウム交換反応を行い、L1反応槽から流出した反応溶液を一次リチウム溶液としてL2反応槽に導入し、リチウム交換反応を持続し、L2反応槽から流出した反応溶液を二次リチウム溶液としてL3反応槽に導入し、リチウム交換反応を持続し、これによって類推して、Ln-1反応槽から流出した反応溶液をn-1次リチウム溶液としてLn反応槽に導入し、リチウム交換反応を持続し、Ln反応槽から流出した反応溶液を廃液として廃リチウム溶液出口配管を介して排出し、L1反応槽内のリチウム交換反応が十分に行われた後、L1反応槽を脱イオン水で洗浄し、材料を取り出して、新しい分子篩原料を充填し、このL1反応槽を新しい結晶転移プロセス移行反応槽とした。次のサイクルにおいて、分子篩原料を交換して昇温したLn+1反応槽をリチウム交換プロセスサイクルの末尾に接続し、当該反応槽を最後のリチウム交換プロセス用反応槽とした。
【0026】
1回目のサイクルが終了した後、バルブによって液体流れの流動方向を切り替え、2番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、2番目のリチウム交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のリチウム交換プロセス用反応槽とし、2回目のサイクルを開始させ、2回目のサイクルが終了した後、3番目の結晶転移プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽とし、3番目のリチウム交換プロセス用反応槽を次のサイクルにおける1番目のリチウム交換プロセス用反応槽とし、3回目のサイクルを開始させ、これによって類推して、各々のサイクルにおいて、連続的な動的切り替えを行い、結晶転移プロセス用反応槽の数及びリチウム交換プロセス用反応槽の数を一定に保持する。
【0027】
各サイクルにおける1番目の結晶転移プロセス用反応槽は、新しいアルカリ溶液が導入される反応槽であり、各サイクルにおける1番目のリチウム交換プロセス用反応槽は、新しいリチウム溶液が導入される反応槽である。新しいアルカリ溶液は、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。新しいリチウム溶液は、好ましくは硫酸リチウムである。
【0028】
上記結晶転移及びリチウム交換反応において、プロセスの流れに従って、対応する量のpH調整液を向対応する反応槽に加え、各反応槽のpH値を安定化させる。pH調整液は、好ましくは水酸化リチウムである。
【0029】
本実施例では、M=8、N=9である。結晶転移プロセス用反応槽は5個、リチウム交換プロセス用反応槽は6個、結晶転移プロセス移行反応槽は3個、リチウム交換プロセス移行反応槽は3個である。分子篩原料は低ケイ素ナトリウムカリウム型分子篩NaK-LsXであり、各反応槽の吐出口での流量は9L/minに設定され、1回のサイクルの時間は8時間であり、リチウム交換度は98%~98.5%である。
【0030】
なお、以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を何ら制限するものではなく、本発明の技術の主旨に基づいて以上の実施例についてなされるすべての簡単な変更、等同変化や修飾は、本発明の技術形態の範囲に属する。
図1