(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置、クレセント錠用の誤解錠防止装置
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20241029BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20241029BHJP
E05B 17/20 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
E05B65/08 R
E05C3/04 H
E05B17/20 D
(21)【出願番号】P 2024075506
(22)【出願日】2024-05-07
【審査請求日】2024-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501433619
【氏名又は名称】中西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】村松 道浩
(72)【発明者】
【氏名】川井 征彦
(72)【発明者】
【氏名】矢田 和希
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-349105(JP,A)
【文献】特開2023-45032(JP,A)
【文献】特開2002-364218(JP,A)
【文献】特開2004-116028(JP,A)
【文献】実開昭52-133796(JP,U)
【文献】実開昭57-27057(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一建具の取り付け面にクレセント錠を取り付け、第二建具に錠受けを設け、前記クレセント錠の錠操作レバーの第一位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けに係止して施錠状態となり、前記クレセント錠の錠操作レバーの第二位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けとの係止を解除して解錠状態となるクレセント錠において、以下のように構成したこと
を特徴とする誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置。
(1) 前記錠操作レバーは、前記取り付け面に垂直な錠回転軸回りに回転して、第一位置および第二位置をとるように形成された。
(2) 前記誤解錠防止装置は前記取り付け面に取り付けられ、前記取り付け面に対して略平行で、かつ前記錠回転軸に対して略直角なストッパー回転軸と、前記ストッパー回転軸回りに回転可能なストップアームを備えた。
(3) 前記ストッパー回転軸は、前記錠回転軸方向視で、前記錠操作レバーの回転面外に位置する様に配置された。
(4) 前記ストップアームは、
前記誤解錠防止装置を作動した場合に、前記錠回転軸方向視で、前記錠回転軸の回転面内で前記錠操作レバーに沿った位置に配置された。
(5) 前記ストップアームは、
前記誤解錠防止装置を使用しない場合に、前記錠回転軸視で前記ストップアームの回転面外の位置に配置された。
(6) 前記ストッパー回転軸にはストップアームの可動を制御するクラッチ機構が設けられ、前記クラッチ機構は、ストッパー回転軸の軸方向に移動して、前記ストップアームの作動位置から解錠位置への移動を制限および制限解除をさせる機能を備えた。
【請求項2】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1に記載の誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置。
(1) ストップアームは、取付座を挟んで、第1ストップアーム片と第2ストップアーム片とからなり、
(2) 前記第1ストップアーム片の軸受け開口と取付座の軸受け開口と第2ストップアーム片の軸受け凹部を連通させて、筒状の押し釦軸を挿入して、ストッパー回転軸を構成し、
(3) 前記押し釦軸に外周歯を形成して、取付座の軸受け開口と第2ストップアームの軸受け凹部に、前記外周歯とかみ合う内周歯を形成し、前記押し釦軸を前記第1ストップアーム片側に付勢する反発ばねを備えた。
(4) 前記ストップアームは、前記押し釦軸の外周歯と内周歯のかみ合いが維持され、前記押し釦軸を操作しない限り回転不可能な構造とし、かつ前記押し釦軸は押圧することにより、前記外周歯と取付座に形成した内周歯のかみ合いを解除可能な構造とした。
【請求項3】
第一建具の取り付け面にクレセント錠を取り付け、第二建具
に錠受けを設け、前記クレセント錠の錠操作レバーの第一位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けに係止して施錠状態となり、前記クレセント錠の錠操作レバーの第二位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けとの係止を解除して
解錠状態となるクレセント錠に適用する誤開錠防止
をする装置において、以下のように構成したこと
を特徴とする誤解錠防止装置。
(1) 前記錠操作レバーは、前記取り付け面に垂直な錠回転軸回りに回転して、第一位置および第二位置をとるように形成された。
(2) 前記誤解錠防止装置は、前記取り付け面に固定する取付板を設け、前記取付板に、前記取付
け面に対して略平行で、かつ前記錠回転軸に対して略直角なストッパー回転軸と、前記ストッパー回転軸回りに回転可能なストップアームを備えた。
(3) 前記ストッパー回転軸は、前記錠回転軸方向視で、前記錠操作レバーの回転面外に位置に配置された。
(4) 前記ストップアームは、
前記誤解錠防止装置を作動した場合に、前記錠回転軸方向視で、前記錠回転軸の回転面内で前記錠操作レバーに沿った位置に配置された。
(5) 前記ストップアームは、
前記誤解錠防止装置を使用しない場合に、前記錠回転軸視で前記ストップアームの回転面外の位置に配置された。
(6) 前記ストッパー回転軸にはストップアームの可動を制御するクラッチ機構が設けられ、前記クラッチ機構は、ストッパー回転軸の軸方向に移動して、前記ストップアームの作動位置から解錠位置への移動を制限および制限解除をさせる機能を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引き戸などの建具の縦取り付け面に取り付け、開閉可能な引き戸を閉鎖状態で施錠できるクレセント錠で、施錠中に誤って解錠して引き戸を開けることを防止する誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置およびこのクレセント錠装置に使用する誤解錠防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミサッシなどの引き戸(建具)を施錠する際に、一方の引き戸の縦端面(取り付け面)にクレセント錠を設け、他方の引き戸に錠受けを設けて、クレセント錠と錠受けを係止する装置が使われている。クレセント錠は、縦端面に垂直の錠回転軸回りに180°回転する錠操作レバーを設け、錠操作レバーにより錠受けと係止する施錠位置と、係止を解除する解錠位置を操作していた。
この構造で、施錠状態を維持するために、錠回転軸付近にスライド式誤解錠防止装置を設けていた(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-45215号公報
【文献】特開2015-31114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年高層住宅に使用されている施錠状態のクレセント錠を誤解錠し、窓と手すりを乗り越えて転落する事故が何件か発生した。また、以前から、高層住宅のベランダに出る、引き戸(引違障子)に取付けられた、施錠状態のクレセント錠を、幼児が誤って解錠し、ベランダに出て、階下に転落する事故も発生しており、このような事故を防止する装置の要望が出ている。
これは、スライド式誤解錠防止装置が、スライドする操作のみであっために、幼児でも容易に施錠解錠操作ができ、かつ錠操作レバーを回転することで、解錠が可能となったと推定され、このスライド式誤解錠防止装置の構造が問題となっていた。このようなスライド式誤解錠防止装置に代わり、あるいはスライド式誤解錠防止装置に加えて、簡易な構造でクレセント錠の施錠状態を維持できる施錠維持装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、ストッパー回転軸回りに回転するストップアームとストッパー回転軸にストップアームのロック機構を組み込み、ストッパー回転軸を軸方向に往復移動させることで作動するロック装置を備えて誤解錠防止装置を構成したので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置の発明は、第一建具の取り付け面にクレセント錠を取り付け、第二建具に錠受けを設け、前記クレセント錠の錠操作レバーの第一位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けに係止して施錠状態となり、前記クレセント錠の錠操作レバーの第二位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けとの係止を解除して解錠状態となるクレセント錠において、以下のように構成したことを特徴とする誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置である。
(1) 前記錠操作レバーは、前記取り付け面に垂直な錠回転軸回りに回転して、第一位置および第二位置をとるように形成された。
(2) 前記誤解錠防止装置は前記取り付け面に取り付けられ、前記取り付け面に対して略平行で、かつ前記錠回転軸に対して略直角なストッパー回転軸と、前記ストッパー回転軸回りに回転可能なストップアームを備えた。
(3) 前記ストッパー回転軸は、前記錠回転軸方向視で、前記錠操作レバーの回転面外に位置する様に配置された。
(4) 前記ストップアームは、前記誤解錠防止装置を作動した場合に、前記錠回転軸方向視で、前記錠回転軸の回転面内で前記錠操作レバーに沿った位置に配置された。
(5) 前記ストップアームは、前記誤解錠防止装置を使用しない場合に、前記錠回転軸視で前記ストップアームの回転面外の位置に配置された。
(6) 前記ストッパー回転軸にはストップアームの可動を制御するクラッチ機構が設けられ、前記クラッチ機構は、ストッパー回転軸の軸方向に移動して、前記ストップアームの作動位置から解錠位置への移動を制限および制限解除をさせる機能を備えた。
【0007】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とする誤解錠防止装置を備えたクレセント錠装置である。
(1) ストップアームは、取付座を挟んで、第1ストップアーム片と第2ストップアーム片とからなり、
(2) 前記第1ストップアーム片の軸受け開口と取付座の軸受け開口と第2ストップアーム片の軸受け凹部を連通させて、筒状の押し釦軸を挿入して、ストッパー回転軸を構成し、
(3) 前記押し釦軸に外周歯を形成して、取付座の軸受け開口と第2ストップアームの軸受け凹部に、前記外周歯とかみ合う内周歯を形成し、前記押し釦軸を前記第1ストップアーム片側に付勢する反発ばねを備えた。
(4) 前記ストップアームは、前記押し釦軸の外周歯と内周歯のかみ合いが維持され、前記押し釦軸を操作しない限り回転不可能な構造とし、かつ前記押し釦軸は押圧することにより、前記外周歯と取付座に形成した内周歯のかみ合いを解除可能な構造とした。
【0008】
また、誤解錠防止装置の発明は、第一建具の取り付け面にクレセント錠を取り付け、第二建具に錠受けを設け、前記クレセント錠の錠操作レバーの第一位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けに係止して施錠状態となり、前記クレセント錠の錠操作レバーの第二位置で、前記錠操作レバーの係止部が前記錠受けとの係止を解除して解錠状態となるクレセント錠に適用する誤開錠防止をする装置において、以下のように構成したことを特徴とする誤解錠防止装置である。
(1) 前記錠操作レバーは、前記取り付け面に垂直な錠回転軸回りに回転して、第一位置および第二位置をとるように形成された。
(2) 前記誤解錠防止装置は、前記取り付け面に固定する取付板を設け、前記取付板に、前記取付け面に対して略平行で、かつ前記錠回転軸に対して略直角なストッパー回転軸と、前記ストッパー回転軸回りに回転可能なストップアームを備えた。
(3) 前記ストッパー回転軸は、前記錠回転軸方向視で、前記錠操作レバーの回転面外に位置に配置された。
(4) 前記ストップアームは、前記誤解錠防止装置を作動した場合に、前記錠回転軸方向視で、前記錠回転軸の回転面内で前記錠操作レバーに沿った位置に配置された。
(5) 前記ストップアームは、前記誤解錠防止装置を使用しない場合に、前記錠回転軸視で前記ストップアームの回転面外の位置に配置された。
(6) 前記ストッパー回転軸にはストップアームの可動を制御するクラッチ機構が設けられ、前記クラッチ機構は、ストッパー回転軸の軸方向に移動して、前記ストップアームの作動位置から解錠位置への移動を制限および制限解除をさせる機能を備えた。
【発明の効果】
【0009】
この発明のクレセント錠装置における誤解錠防止装置は、ストップアームを有し、ストップアームは取り付け面に略平行なストッパー回転軸回りに回転でき、第一位置で、ストップアームにクレセント錠の錠操作レバーを係止して施錠を維持し、第二位置でその係止を解除して錠操作レバーの回転を許容させて、施錠を解除できるので、施錠、解錠の操作が容易にできる。また、ストップアームのストッパー回転軸を錠操作レバーの回転面の外に配置させ、かつ作動位置のストップアームを、クレセント錠の錠操作レバーの回転面の内に配置させたので、簡単な構造で誤解錠防止装置を構成できる。
さらに、ストップアームのストッパー回転軸を取付板に設けたので、取付板を既存のクレセント錠の取付面に後付けて、誤解錠防止装置を容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明を適用したクレセント錠付きの引き戸の全体を概略的に示した平面図を表し、(b)は誤解錠防止装置付きクレセント錠の作動前の正面図、(c)は同じく作動後の正面図、(d)は誤解錠防止装置付きクレセント錠の作動後の側面図を表す
【
図2】(a)は作動前の誤解錠防止装置付きクレセント錠の拡大正面図、(b)は作動後の誤解錠防止装置付きクレセント錠の側面図、を表す。
【
図3】誤解錠防止装置の回転軸回りの断面図で、(a)はストップアームのロック時、(b)はロック解除時を表す。
【
図4】(a)は誤解錠防止装置の取付座の正面図、(b)はA-A断面図、(c)はB-B断面図、を表す。
【
図5】押し釦軸で、(A-1)はAタイプの正面図、(A-2)はC-C断面図、(A-3)はD-D端面図、(A-4)はAタイプの背面図、(B-1)はBタイプの正面図、(B-2)はE-E断面図、(B-3)はBタイプの背面図を表す。
【
図6】Aタイプの誤解錠防止装置で、(A-1)は取付座で押し釦軸の180°回転状態、(A-2)は同じく90°回転状態、(A-3)は同じく原位置・ロック状態、(A-4)は押し釦軸の正面図、(A-5)はF-F断面図、(A-6)は押し釦軸の背面図、を表す。
【
図7】Bタイプの誤解錠防止装置で、(B-1)は取付座で押し釦軸の180°回転状態、(B-2)は同じく90°回転状態、(B-3)は同じく原位置・ロック状態、(B-4)は押し釦軸の正面図、(B-5)はG-G断面図、(B-6)は押し釦軸の背面図、を表す。
【
図8】(A-1)はAタイプの誤解錠防止装置でロック時の縦断面図、(A-2)は同じくロック解除時の縦断面図、(B-1)はBタイプの誤解錠防止装置でロック時の縦断面図、(B-2)は同じくロック解除時の縦断面図、を表す。
【
図9】Cタイプの誤解錠防止装置で、(C-1)は取付座の正面図、(C-2)はH-H断面図、(C-3)は取付座の背面図、(C-4)は押し釦軸の正面図、(C-5)はI-I断面図、(C-6)は押し釦軸の背面図、を表す。
【
図10】Dタイプの誤解錠防止装置で、(D-1)は取付座の正面図、(D-2)はJ-J断面図、(D-3)は取付座の背面図、(D-4)は押し釦軸の正面図、(D-5)は押し釦軸の側面図、(D-6)はK-K断面図、(D-7)は押し釦軸の背面図、を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.クレセント錠10および錠受け8の構造
【0012】
(1) 第一引き戸(第一建具)1と第二引き戸(第二建具)3が設置された建造物の開口部で、第一引き戸1と第二引き戸3とからなり、閉鎖された状態で、第一引き戸1の縦端面2(開口部の中央側に位置する)にクレセント錠10が固定されている。第二引き戸3で、クレセント錠10に対応した位置に錠受け8が固定されている(
図1(a))。この場合には、第一引き戸1、第二引き戸3のいずれも開閉する両引き開きとなる。
なお、第一引き戸1または第二引引き戸3の一方が動かない壁(建具)となっている、いわゆる片引き引き戸の状態の場合にも適用できる。
【0013】
(2) クレセント錠10は、第一引き戸1の縦端面2に固定する盤状のクレセント台座12に、縦端面2に略垂直な錠回転軸13が設けられ、錠回転軸13に錠操作レバー14の基端部15aが取り付けられている。錠操作レバー14に、錠操作レバー14とともに回転する部分円状の施錠円盤16が設けられている。
【0014】
(3) クレセント錠10は、錠操作レバー14が上向きの状態で施錠円盤16が第二引き戸3側に位置して、施錠円盤16が第二引き戸3の錠受け8と係止をして、施錠状態となる(
図1(b))、
図2(a))。したがって、この状態で、第一引き戸1と第二引き戸3は開閉することができない。
逆に、クレセント錠10は、
図2(a)矢視17方向(時計回り)に錠操作レバー14を回転させれば施錠円盤16が錠受け8と係止が解除され、解錠状態となり、第一引き戸1と第二引き戸3は開閉ができる状態となる(図示していない)。
この時の施錠・開錠の動きの中で、錠操作レバー14の動く範囲(とりわけ錠操作レバー14の先端15bの動く範囲)を、錠回転軸13方向視で、錠操作レバーの回転面18とする。
【0015】
2.誤解錠防止装置20
【0016】
(1) 誤解錠防止装置20は、クレセント錠10のクレセント台座12と縦端面2との間に挟むことができる取付板22に取付座23を突設し、取付座23に、縦端面2と略平行なストッパー回転軸27(押し釦軸40)を設け、ストッパー回転軸27にストップアーム30の基端部を回転自在に取り付けて構成する(
図1、
図2)。ストップアーム30は、下記のように、ストッパー回転軸27に垂直な方向に分けられた第一ストップアーム片31aと第二ストップアーム片31bとで構成される。、
【0017】
(2) 取付座23は先端が略半円形で、ある程度の厚さを持った板形状であり、取付板22に固定される座本体23aに垂直に突設される。取付座23を挟んで第一ストップアーム片31aの基端部と第二ストップアーム片31bの基端部が取り付けられる。
第一ストップアーム片31aと第二ストップアーム片31bは基端部以外の位置では密着一体となってストップアーム30を構成している。換言すれば、ストップアーム30の基端部は、取付座23を挿入できる切欠きが形成されている構造である。
【0018】
(3) 第一ストップアーム片31aの基端部、取付座23に共通する円形の軸受け開口24、32が貫通形成され、第二ストップアーム片31bの基端部にはこの軸受け開口24、32に連通する軸受け凹部34が形成されている。軸受け開口24、32および軸受け凹部34は、一端が塞がれた筒状の押し釦軸40(ストッパー回転軸27)の摺動部が滑合状態で軸方向・回転方向に滑らかに摺動する様に滑合嵌合で挿入され、押し釦軸40がストッパー回転軸27を構成する。
したがって、第一ストップアーム片31aは軸受け開口32が貫通しているが、第二ストップアーム片31bの基端部は軸受け開口が貫通せずに軸受け凹部34となっている。
また、この構造により、ストップアーム30は、押し釦軸40(ストッパー回転軸27)回りに180°回転できる構造となっている。
【0019】
(4) 取付座23の
軸受け開口24には、厚さ方向で中央部付近に厚さLで、切欠きを設け、内周歯25を形成してある(
図4)。内周歯25は取付座23先端側の3枚(1組)と取付板23側の3枚(1組)が軸受け開口24の中心を通る水平線26で線対称に形成され、合計6枚の形成されている。一側の3枚(1組)の内周歯25の取り付け角度をWとする(
図4)。Wは、材料や大きさや必要な強度などによるが、70°~90°程度が望ましい。
【0020】
(5) 押し釦軸40の本体41は先端部(第一ストップアーム片31aの基端部)側が塞がった筒状で、先端部の外周には、直径方向の位置に係止突起43が形成されている。第一ストップアーム31aの軸受け開口32は、取付座23側に係止突起43を含む外径に対応した大径部が形成され、段差部33を経て、押し釦軸40の本体41の外径に対応した細径部となる形状で、段差部33に係止突起43が係止できるようになっている。
ここで、係止突起43は2箇所でなく3箇所でも4箇所でも良いし、帽子の鍔様の円盤状でも良い。
また、押し釦軸40の基端側(第二ストップアーム片31bの基端部側)に、取付座23の1組3枚の内周歯と対応した3枚の外周歯44が形成されている。
【0021】
(6) 第二ストップアーム片31bの基端側の軸受け凹部34にも、取付座23と同一形状の内周歯が形成されている((図示していない)。
【0022】
(7) 押し釦軸40内に、軸を一致させた反発ばね48を内装した状態で、押し釦軸40を第一ストップアーム31aの基端部の
軸受け開口32、取付座23の
軸受け開口24、第二ストップアーム31bの
軸受け凹部34に挿入する。この状態で、反発ばね48の一端48aは押し釦軸40の本体41内に止められ、反発ばね48の他端48bは第二ストップアーム片31bの
軸受け凹部34の底に止められる(
図3(a))。
この状態で、押し釦軸40は反発ばね48により押圧され、係止突起43が第一ストップアーム片31aの段差部33に押圧係止して、それ以上の突出が規制されている。また、この状態で押し釦軸40の先端は
第一ストップアーム片31aの軸受け開口32の開口縁32aから突出している(
図3(a))。また、取付座23の内周歯25と押し釦軸40の外周歯44が嵌合している。
【0023】
(8) 以上のようにして、誤解錠防止装置20を構成する(
図1、
図2、
図3)。
ここで、取付座23(取付板22)の軸受
け開口24に臨む内周歯25と、ストップアーム30の軸受
け開口及び軸受
け凹部34に臨む内周歯35で構成するハウジングに、組み込んだ押し釦軸40の外周歯44とでロック機構(クラッチ機構)を構成する。
【0024】
3.誤解錠防止装置20の使用
【0025】
(1) クレセント錠10のクレセント台座12と第一引き戸1の縦端面2の固定(ビス)を緩めて、クレセント台座12と縦端面2との間に誤解錠防止装置20の取付板22を一体に固定して、クレセント錠10に誤解錠防止装置20を配置する。この際、クレセント錠10のクレセント台座12を縦端面2からいったん取り外してから、クレセント台座12と誤解錠防止装置20の取付板22とを縦端面2に固定することもできる。この場合には、取付板22をクレセント台座12のビス孔の位置に合わせて、取付板22に開口を形成しておく。
また、クレセント錠10のクレセント台座12を緩めたり、取り外すことなく、クレセント台座12をそのままに、誤解錠防止装置20の取付板22を縦端面2に直接固定することもできる。この場合には、取付板22の形状をクレセント台座12の平面形状に合わせて、切り欠き部などを形成してある(図示していない)。
【0026】
(2) 第一引き戸1の縦端面2に誤解錠防止装置20を配置した状態で、誤解錠防止装置20の押し釦軸40は、クレセント錠10の錠操作レバー14の回転面18の外に位置させてある。また、後に述べるように、誤解錠防止装置20を作動した際に、ストップアーム30は回転面18の内にあり、かつストップアーム30が施錠状態の錠操作レバー14に沿って配置されるような位置に、誤解錠防止装置20は配置される。
【0027】
(3) 誤解錠防止装置20を使用しない場合には、ストップアーム30は、クレセント錠10の錠操作レバー14の回転面18の外にある(
図2(a)、
図1(b))。この状態で、押し釦軸40の外周歯44が取付座23の内周歯25と嵌合した状態となっているので、押し釦軸40を操作しない限りストップアーム30を移動できない。また、この状態で、クレセント錠10側の操作で、錠操作レバー14を自由に回転できるので、クレセント錠の施錠、解除を選択できる。
【0028】
(4) 誤解錠防止装置20を使用する場合には、以下のように操作をする。
押し釦軸40の反押し釦側に形成された外周歯は、取付座23の内周歯25と第二ストップアーム片31bの軸受け凹部
34に形成された内周歯35の両方に噛み合っているので、ストップアーム30は回転できない。
そこでまず、押し釦軸40を
図2、
図3の矢示45方向(第二ストップアーム片31b側)に反発ばね48に抗して、押すと(
図3(b))、押し釦軸40の外周歯44は取付座23の内周歯25のかみ合いから脱し、押し釦軸40の外周歯44の全長が第二ストップアーム片31bの軸受
け凹部34に形成された内周歯35に没し、ストップアーム30を回転させることができる。
したがって、押し釦軸40を押した状態でストップアーム30を僅かに回転すれば、押し釦軸40を押した状態を維持している必要はない。
ストップアーム30をストップアーム30Aの位置から180度回転すると、ストップアーム30はストップアーム30Bの位置になり(
図2(a)(b)、30B)、押し釦軸40の外周歯44と取付座23の内周歯25の位置が合って、反発ばね48の反発付勢により、押し釦軸40の外周歯44と取付座23の内周歯25がかみ合った状態が維持される。この状態で、ストップアーム30のみを回転させることはできない。
また、ストップアーム30は、ストップアーム30Bの位置では、クレセント錠10の錠操作レバー14の回転面18の内にあり、かつ錠操作レバー14に近接した位置で、錠操作レバー14に沿って配置されるので(
図2(a))、錠操作レバー14のみを回転させることはできない。
したがって、幼児が誤って、錠操作レバー14を操作してクレセント錠10と錠受け8の施錠を解除するおそれはない。また、幼児は、以下のような、押し釦軸40を押しながら錠操作レバー14を操作する複雑な操作をすることもできない。
【0029】
(5) 誤解錠防止装置20の作動を解除する場合は、上記(4)と同様に、押し釦軸40を矢示45方向にわずかに押して、押し釦軸40の外周歯44と取付座23の内周歯25のかみ合いを外せば、ストップアーム30は押し釦軸40と一体に回転できる。
【0030】
4.誤解錠防止装置20の他の構成
【0031】
(1) 前記実施形態で、押し釦軸40で、外周歯44を3枚(1組)設けたが、取付座23の軸受け開口24の内周歯25と同じに3歯を2組形成することもできる(
図5(B-1)~(B-3))。
【0032】
(2) また、前記実施形態において、施錠状態で、ストップアーム30から押し釦軸40の先端は僅かに突出させたが(
図3(a))、第1ストップアーム片31aの外端面と押し釦軸40の先端面の位置は同一であっても、凹んでいてもいずれとすることもできる。
【0033】
(3) また、前記実施形態において、押し釦軸40の操作を軸方向の押圧で施錠と開錠を操作する構造としたが、引き込み、回転、スライド、折り曲げなど他の構造とすることもできる(図示していない)。
また、第1ストップアーム31aの外端面と押し釦軸40の先端(押し込み部)が同一であった場合、押し釦軸40の押し込み部に、レンチ用の六角穴付き、ドライバー用のプラスねじ付き、マイナスねじ付き、あるいは、コインで操作する溝を形成して構成することもできる(図示していない)。この場合、操作する際に六角レンチやドライバー等を使用する。
【0034】
(4) また、前記実施形態で、ストップアーム30の回転構造などは任意である。押し釦軸40、取付座23、ストップアーム30の材質によって、ストップアーム30の回転が滑らかで無い場合も考えられるので、回転を更に滑らかにするために、押し釦軸40と、取付座23の軸受け部の一部の長さで、360度ガイドすることもできる(
図8~
図10)。もちろん他の構成は前記各実施形態と同様である。
また、ここで、押し釦軸40の外周歯
44と取付座23の内周歯25の1組が3枚歯としてあるが、外周歯
44と内周歯25のかみ合わせ、およびかみ合わせの解除が滑らかで、強度が十分維持できれば、1組2枚歯でも、1枚歯とすることもできる(図示していない)。
【0035】
(5) ストップアーム30の回転角度と停止位置でのストップアーム30のロックについて前記各実施形態では、
図1(b)~(d)、
図4の様に、ストップアーム30の停止位置と回転角度が、原位置から誤解錠防止位置まで180 度回転してロック状態になる実施形態
を記載しているが、特に、
図4では取付座23の内周歯25が、180度対向2箇所で押し釦軸40の外周歯44が
図5(A-1)~(A-4)の様に1箇所であっても、
図5(B-1)~(B-3)の様に2 箇所であっても、原位置と180度回転の2箇所で押し釦軸40の外周歯44と、取付座23の内周歯25と、ストップアーム30の内周歯35が嵌合しロックする(クラッチが噛み合う)ことが可能となる。
また、押し釦軸40の外周歯44が1組の場合で、取付座23の内周歯25の位置0度と90度の2箇所にすれば、原位置から誤解錠防止位置までの回転角度と、ロック状態の停止位置は、90度回転し、原位置と90度回転した誤解錠防止位置でロック状態にすることもできる。
また、ストップアーム30の回転角度とロック状態で停止する位置が、ストップアーム30の原位置(0度)、90度、および、誤解錠防止位置(180度)の3箇所でロック状態で停止する場合を、
図6の押し釦軸40の外周歯44が1組及び2組で取付座23の内周歯25を原位置の0度と90度停止と、誤解錠防止位置の180度の3箇所でロック状態で停止することも可能である。
また、押し釦軸40の外周歯44を1組で記載したが、2組の場合でも、
図7に示すように取付座23の内周歯25の整形数と、位置とを変えれば、180度回転3箇所のロック状態での停止が可能となる。
【0036】
5.誤解錠防止装置付きのクレセント錠
【0037】
(1) 前記実施形態では、誤解錠防止装置20は、予め施工されているクレセント錠10に追加して(改修などの際に)誤解錠防止装置20を設置する例について説明した。しかし、クレセント錠10と誤解錠防止装置20とを一体に縦端面2(取付面)に固定することもできる(図示していない)。すなわち、クレセント台座12と取付板22とを共通とすることもできる(図示していない)。
あるいは、取付板22を省略して、取付座23(ストップアーム30、押し釦軸40)を直接に縦端面2(取付面)に固定することもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0038】
1 第一引き戸(第一建具)
2 第一引き戸の縦端面(取付面)
3 第二引き戸
8 錠受け(第二引き戸)
10 クレセント錠(第一引き戸)
12 クレセント台座(クレセント錠)
13 錠回転軸(クレセント錠)
14 錠操作レバー(クレセント錠)
15a 錠操作レバーの基端部
15b 錠操作レバーの先端部
16 施錠円盤(クレセント錠)
17 矢示(時計方向)
18 錠操作レバーの回転面
20 誤解錠防止装置
22 取付板(誤解錠防止装置)
23 取付座
24 軸受け開口(取付座)
25 内周歯(取付座の軸受け開口)
27 ストッパー回転軸
30 ストップアーム
31a 第一ストップアーム片
31b 第二ストップアーム片
32 軸受け開口(第一ストップアーム片)
33 段差部
34 軸受け凹部(第二ストップアーム片)
35 内周歯(第二ストップアーム片の軸受け凹部)
40 押し釦軸(ストッパー回転軸27)
41 本体(押し釦軸)
43 係止突起(押し釦軸)
44 外周歯(押し釦軸)
48 反発ばね
【要約】
【課題】
引き戸1、2などに取り付け施錠するクレセント錠10に配置して、その誤動作による解錠を防止する誤解錠防止装置で、確実な作動を簡易な構造で実現する。
【解決手段】
クレセント錠10は錠操作レバー14を回転面18で回転してその施錠解錠をする(a、b)。本装置20は、錠操作レバー14の近傍で回転面18の外に、押し釦軸40を設け、押し釦軸40にストップアーム30を回転自在に取り付けてある。本装置20は施錠状態でストップアーム30が回転面18の内に位置して錠操作レバー14の回転を阻止して解錠を規制できる((c)(d)30B)。押し釦軸40を押しながらストップアーム30の操作をすると解錠状態となり((b)(d)30A)、ストップアーム30を回転面18の外に位置させれば、クレセント錠10を自由に施錠解錠できる。
【選択図】
図1