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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】穿刺具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20241029BHJP
   A61M 5/34 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61M5/158 500H
A61M5/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024531277
(86)(22)【出願日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2024004193
【審査請求日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023037168
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597175938
【氏名又は名称】フォースエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】今井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智章
(72)【発明者】
【氏名】澤畑 智之
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-522659(JP,A)
【文献】米国特許第03884230(US,A)
【文献】特開2001-070449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 5/178
A61M 5/32
A61M 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針本体部と、
この針本体部の基端部を支持するハブと、
このハブが収容されるケース体と、とを備えた穿刺具であって、
前記ケース体と前記ハブとの間に、前記針本体部の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段が設けられ、
前記ケース体と前記ハブとの間には、前記衝撃吸収手段による穿刺圧の吸収を抑制するロック機構が解除可能に設けられている、
ことを特徴とする穿刺具。
【請求項2】
前記ハブは、前記ケース体に対して回転可能に取り付けられ、
前記ロック機構は、前記ケース体に対して前記ハブを回転させることにより解除可能とされている、
ことを特徴とする請求項記載の穿刺具。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記ケース体に対して取り外し可能に取り付けられ、
このロック機構を前記ケース体から取り外すことにより解除可能とされている、
ことを特徴とする請求項1記載の穿刺具。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記ケース体に対して回動可能に取り付けられ、
このロック機構を前記ケース体に対して回動させることにより解除可能とされている、
ことを特徴とする請求項記載の穿刺具。
【請求項5】
前記衝撃吸収手段は、前記針本体部の穿刺時に潰れる部材にて構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の穿刺具。
【請求項6】
前記衝撃吸収手段は、潰れた際に復元しない部材にて構成されている、
ことを特徴とする請求項記載の穿刺具。
【請求項7】
針本体部と、
この針本体部の基端部を支持するハブと、
このハブが収容されるケース体と、とを備えた穿刺具であって、
前記ケース体と前記ハブとの間に、前記針本体部の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段が設けられ、
前記衝撃吸収手段は、ピストン機構により構成され、
該ピストン機構は、ケース体に設けられるシリンダ部と、針本体部が取り付けられ、ケース体に対して摺動自在に嵌合組み込みされる可動体に設けられ、シリンダ部内を移動するピストン部と、
ピストン部に設けた逆止弁とを備え、
逆止弁は、シリンダ部内のピストン部によって仕切られる先端側スペースの空気の基端側スペースへの移動は規制するが、穿刺圧が所定の圧力に達した場合に基端側スペースの空気の先端側スペースへの移動は許容するよう構成されている、
ことを特徴とする穿刺具。
【請求項8】
針本体部と、
この針本体部の基端部を支持するハブと、
このハブが収容されるケース体と、とを備えた穿刺具であって、
前記ケース体と前記ハブとの間に、前記針本体部の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段が設けられ、
前記衝撃吸収手段はラチェット機構により構成され、
該ラチェット機構は、ハブとケース体との相対移動する摺動部の一方に設けられる歯部と、他方に設けられ、歯部に係止する爪部とを備え、
歯部と爪部との係止は、針本体部の穿刺に伴う穿刺圧を受けたケース体のハブに対する先端側への相対移動が、穿刺圧を受けた爪部が歯部を乗り越える無理越えをすることで許容されるが、基端側への相対移動は乗り越え不可となって規制されるように構成されている、
ことを特徴とする穿刺具。
【請求項9】
歯部はハブ側に形成され、爪部はケース体側に形成されている、
ことを特徴とする請求項記載の穿刺具。
【請求項10】
歯部は、基端側が低く、先端側が高く設定された複数段のものを備え、爪部が歯部を無理越えするときの穿刺圧を先端側が高くなるよう設定されている、
ことを特徴とする請求項記載の穿刺具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管や生体組織への穿刺に用いられる穿刺具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や生体組織への穿刺に用いられる穿刺具としては、羽根部4を折り畳み状態に係合保持することで羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3および針本体部2の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて羽根部4の展開およびこの展開に伴うハブ3および針本体部4の後退を許容する状態と、に切り換える展開・後退規制手段(係合爪部4k)が設けられた羽根付き注射針1が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6275303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載の羽根付き注射針1は、係合爪部4kにより、針本体部2の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて羽根部4の展開およびこの展開に伴うハブ3および針本体部4の後退を許容する状態を切り換えできる構成とされている。このため、注射針穿刺作業者の意に反して使用前に羽根部が展開したり、この展開に伴ってハブおよび針本体部が後退したりして、使用不能状態に陥ることを防止できるよう構成されている。しかしながら、この羽根付き注射針1においては、針本体部2を人体に穿刺する際に羽根部4を展開させなければならず、針本体部2を穿刺する際の刺部位に掛かる穿刺圧を必要以上に高めてしまうおそれがあるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として発明されたものであって、請求項1の発明は、針本体部と、この針本体部の基端部を支持するハブと、このハブが収容されるケース体と、とを備えた穿刺具であって、前記ケース体と前記ハブとの間に、前記針本体部の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段が設けられ、前記ケース体と前記ハブとの間には、前記衝撃吸収手段による穿刺圧の吸収を抑制するロック機構が解除可能に設けられている、ことを特徴とする穿刺具である。
請求項2の発明は、前記ハブは、前記ケース体に対して回転可能に取り付けられ、前記ロック機構は、前記ケース体に対して前記ハブを回転させることにより解除可能とされている、ことを特徴とする請求項記載の穿刺具である。
請求項3の発明は、前記ロック機構は、前記ケース体に対して取り外し可能に取り付けられ、このロック機構を前記ケース体から取り外すことにより解除可能とされている、ことを特徴とする請求項1記載の穿刺具である。
請求項4の発明は、前記ロック機構は、前記ケース体に対して回動可能に取り付けられ、このロック機構を前記ケース体に対して回動させることにより解除可能とされている、ことを特徴とする請求項記載の穿刺具である。
請求項5の発明は、前記衝撃吸収手段は、前記針本体部の穿刺時に潰れる部材にて構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の穿刺具である。
請求項6の発明は、前記衝撃吸収手段は、潰れた際に復元しない部材にて構成されている、ことを特徴とする請求項記載の穿刺具である。
請求項7の発明は、針本体部と、この針本体部の基端部を支持するハブと、このハブが収容されるケース体と、とを備えた穿刺具であって、前記ケース体と前記ハブとの間に、前記針本体部の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段が設けられ、前記衝撃吸収手段は、ピストン機構により構成され、該ピストン機構は、ケース体に設けられるシリンダ部と、針本体部が取り付けられ、ケース体に対して摺動自在に嵌合組み込みされる可動体に設けられ、シリンダ部内を移動するピストン部と、ピストン部に設けた逆止弁とを備え、逆止弁は、シリンダ部内のピストン部によって仕切られる先端側スペースの空気の基端側スペースへの移動は規制するが、穿刺圧が所定の圧力に達した場合に基端側スペースの空気の先端側スペースへの移動は許容するよう構成されている、ことを特徴とする穿刺具である。
請求項8の発明は、針本体部と、この針本体部の基端部を支持するハブと、このハブが収容されるケース体と、とを備えた穿刺具であって、前記ケース体と前記ハブとの間に、前記針本体部の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段が設けられ、前記衝撃吸収手段はラチェット機構により構成され、該ラチェット機構は、ハブとケース体との相対移動する摺動部の一方に設けられる歯部と、他方に設けられ、歯部に係止する爪部とを備え、歯部と爪部との係止は、針本体部の穿刺に伴う穿刺圧を受けたケース体のハブに対する先端側への相対移動が、穿刺圧を受けた爪部が歯部を乗り越える無理越えをすることで許容されるが、基端側への相対移動は乗り越え不可となって規制されるように構成されている、ことを特徴とする穿刺具である。
請求項9の発明は、歯部はハブ側に形成され、爪部はケース体側に形成されている、ことを特徴とする請求項記載の穿刺具である。
請求項10の発明は、歯部は、基端側が低く、先端側が高く設定された複数段のものを備え、爪部が歯部を無理越えするときの穿刺圧を先端側が高くなるよう設定されている、ことを特徴とする請求項記載の穿刺具である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、ケース体を把持して針本体部を刺部位へ穿刺する際に、この針本体部に掛かる穿刺圧が衝撃吸収手段にて吸収されるから、穿刺時に針本体部に掛かる穿刺圧に基づく誤穿刺を防止できる。
しかも、針本体部の穿刺時以外での衝撃吸収手段の誤作用をロック機構にて抑制できるとともに、ロック機構を解除してから針本体部を刺部位へ穿刺することにより、衝撃吸収手段による針本体部の穿刺圧の吸収を確実に作用させることができる。
請求項の発明とすることにより、ケース体に対してハブを回転させることでロック機構が解除され、衝撃吸収手段による穿刺圧の吸収が可能となるため、ロック機構の解除操作を確実かつ容易に行うことができる。
請求項の発明とすることにより、ケース体からロック機構を取り外すことでロック機構が解除され、衝撃吸収手段による穿刺圧の吸収が可能となるため、ロック機構の解除操作を確実かつ容易に行うことができる。
請求項の発明とすることにより、ケース体に対してロック機構を回動させることでロック機構が解除され、衝撃吸収手段による穿刺圧の吸収が可能となるため、ロック機構の解除操作を確実かつ容易に行うことができる。
請求項の発明とすることにより、針本体部を穿刺する際に、この針本体部に掛かる穿刺圧にて衝撃吸収手段が潰れて、この穿刺圧が吸収される。よって、衝撃吸収手段にて穿刺圧を吸収する際における針本体部への反作用を抑制でき、穿刺時に針本体部に掛かる穿刺圧をより適切に吸収できる。
請求項の発明とすることにより、針本体部に掛かる穿刺圧にて衝撃吸収手段が潰れた際に、この衝撃吸収手段が復元しない。このため、この衝撃吸収手段にて穿刺圧を吸収する際の針本体部への反作用を無くすことができ、この衝撃吸収手段による穿刺時に針本体部に掛かる穿刺圧の吸収をより適切に行うことができる。
請求項の発明とすることにより、ケース体を把持して針本体部を刺部位へ穿刺する際に、この針本体部に掛かる穿刺圧が衝撃吸収手段にて吸収されるから、穿刺時に針本体部に掛かる穿刺圧に基づく誤穿刺を防止できる。しかも衝撃吸収手段が、ケース体に設けられるシリンダ部と、針本体部が取り付けられ、ケース体に対して摺動自在に嵌合組み込みされる可動体に設けられ、シリンダ部内を移動するピストン部と、ピストン部に設けた逆止弁とを備えたピストン機構により構成され、そして該逆止弁が、シリンダ部内のピストン部によって仕切られる先端側スペースの空気の基端側スペースへの移動は規制するが、穿刺圧が所定の圧力に達した場合に基端側スペースの空気の先端側スペースへの移動は許容するよう構成されたものとなっている結果、穿刺圧が逆止弁において設定される圧力を越えた場合に逆止弁が開放し、ピストン部が移動することになって穿刺圧を吸収することができ、適正な穿刺圧での穿刺ができることになる。
請求項の発明とすることにより、ケース体を把持して針本体部を刺部位へ穿刺する際に、この針本体部に掛かる穿刺圧が衝撃吸収手段にて吸収されるから、穿刺時に針本体部に掛かる穿刺圧に基づく誤穿刺を防止できる。しかも衝撃吸収手段が、ハブとケース体との相対移動する摺動部の一方に設けられる歯部と、他方に設けられ、歯部に係止する爪部とを備えたラチェット機構により構成され、この場合に歯部と爪部との係止が、針本体部の穿刺に伴う穿刺圧を受けたケース体のハブに対する先端側への相対移動については、穿刺圧を受けた爪部が歯部を乗り越える無理越えをすることで許容されるが、基端側への相対移動については乗り越え不可となって規制されるように構成されたものになる結果、爪部が歯部を無理越えてする際の負荷を穿刺圧が越えた場合に、爪部が無理越えをして穿刺力の吸収が図れることになって、適正な穿刺圧での穿刺ができることになる。
請求項の発明とすることにより、ラチェット機構として、歯部がハブ側に形成され、爪部がケース体側に形成されたものにでき、製造の容易化と共に構造の簡略化が図れることになる。
請求項10の発明とすることにより、ラチェット機構を構成する歯部が、基端側が低く先端側が高い複数段のものを備えたものになる結果、穿刺過程において、穿刺当初の基端側の無理越えでは低い穿刺圧での穿刺抵抗の吸収状態となたものが、その後では高い穿刺圧での穿刺抵抗の吸収ができることになり、穿刺状況に対応した穿刺圧調整ができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る穿刺具の斜視図である。
図2】同上穿刺具の分解斜視図である。
図3】同上穿刺具のロック状態の軸方向断面図である。
図4】同上穿刺具のフリー状態の軸方向断面図である。
図5】第2の実施形態に係る穿刺具の分解斜視図である。
図6】同上穿刺具のロック状態の軸方向断面図である。
図7】同上穿刺具のフリー状態の軸方向断面図である。
図8】第3の実施形態に係る穿刺具のロック状態の斜視図である。
図9】同上穿刺具の分解斜視図である。
図10】同上穿刺具のフリー状態の斜視図である。
図11】第4の実施の形態における穿刺具の斜視図である。
図12】同上穿刺具の分解斜視図である。
図13】(A)(B)は同上穿刺具のロック状態の正面図、断面正面図である。
図14】(A)(B)は同上穿刺具のロック状態の平面図、断面平面図である。
図15】(A)(B)は同上穿刺具のロック解除状態の正面図、断面正面図である。
図16】(A)(B)は同上穿刺具の中間移動状態の正面図、断面正面図である。
図17】(A)(B)は同上穿刺具の最終移動状態の正面図、断面正面図である。
図18】(A)(B)は同上穿刺具の最終移動状態の平面図、断面平面図である。
図19】本発明の第5の実施の形態の穿刺具の斜視図である。
図20】同上穿刺具の分解斜視図である。
図21】(A)(B)は同上穿刺具の平面図、断面正面図である。
図22】(A)(B)(C)は同上穿刺具のロック状態の正面図、断面平面図、断面側面図である。
図23】(A)(B)は同上穿刺具のロック状態の平面図、断面正面図である。
図24】同上穿刺具の保持部材をロック体から解除した状態のロック状態を示す斜視図である。
図25】同上穿刺具のフリー状態のロック体を保持部材で係止した状態の斜視図である。
図26】(A)(B)は同上穿刺具の相対移動過程を示す正面図、断面正面図である。
図27】(A)(B)は同上穿刺具の移動終端過程を示す正面図、断面正面図である。
図28】(A)(B)は同上穿刺具のラチェット機構部の係止状態、無理越え状態を示す断面正面図である。
図29】第6の実施の形態の穿刺具の要部断面正面図である。
図30】(A)(B)は同上穿刺具のラチェット機構の噛合状態を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。1は血管や生体組織への穿刺に用いられる穿刺具であって、穿刺具1は、針本体部2と、この針本体部2の基端部を支持するハブ3と、このハブ3が収容されるケース体4とを備える。ハブ3は、略円柱状のハブ本体3aを有し、このハブ本体3aの先端側の中心部に針本体部2の基端部が挿通される針挿通孔3bが軸方向に沿って貫通して設けられている。また、ハブ本体3aの基端側には、このハブ本体3aより外形寸法が大きい係止段部3cが同心状に設けられている。この係止段部3cの外周面には、周方向に等間隔に離間させて設けられた複数、例えば4つの係止片部3dが設けられている。
【0009】
ハブ本体3aの基端側の外周面には、このハブ本体3aの径方向に突出した潰止め片部3eが設けられている。また、このハブ本体3aには、針挿通孔3bを中心とした位置に、複数、例えば4つの連通孔3fがハブ本体3aの軸方向に沿って穿設されている。これら連通孔3fのそれぞれは、針挿通孔3bから所定距離離れた位置であって、ハブ本体3aの周方向に沿って等間隔に離間させた位置に設けられている。さらに、ハブ3の針挿通孔3bの基端側には、断面円形状の取付凹部3jが同心状に設けられている。取付凹部3jは、針挿通孔3bの内径寸法より大きな内径寸法に形成され、この針挿通孔3bの基端側に同心状に連通した状態で設けられている。また、取付凹部3jは、ハブ3の係止段部3cの基端側からハブ本体3aの中間位置までに亘って同心状に設けられている。要するに、取付凹部3jは、シリンジ(図示せず)の先端側の筒先を挿入させてプランジャを押し、このシリンジ内の薬液を針本体部2へ注入させたり、このプランジャを引いて血液等を人体から採取したりするために用いるものである。
【0010】
ケース体4は、先端側が縮径した略円筒状の本体部4aを有し、この本体部4aの先端側の中心位置には、針本体部2が挿通される針挿通孔4bが設けられている。ここで、本体部4aは、ハブ3のハブ本体3aの外径寸法に略等しい内径寸法を有し、このハブ本体3aが本体部4aの基端側から嵌合される構成となっている。そして、本体部4aの基端側の開口縁には、ハブ3の潰止め片部3eを係止させるための係止凹部4cが設けられ、この係止凹部4cから本体部4aの周方向に向けて本体部4aの基端縁が段状に切削されて摺動凹部4dが設けられている。そして、ケース体4の針挿通孔4bの先端側の開口縁にテーパ面4eが形成され、この針挿通孔4bの基端側の開口縁にもまたテーパ面4fが設けられている。
【0011】
また、ケース体4とハブ3との間には、針本体部2の穿刺時に生じる穿刺圧を吸収する衝撃吸収手段としての円柱状の衝撃吸収体5と、この衝撃吸収体5をケース体4内の所定位置に固定して保持する保持部材6とが取り付けられている。衝撃吸収体5は、ケース体4の本体部4aの内径寸法およびハブ3のハブ本体3aの外径寸法に等しい外径寸法に形成され、軸方向に潰れても復元せず反発しない衝撃吸収材、例えばスポンジ材やウレタン材などにて構成されている。そして、衝撃吸収体5には、この衝撃吸収体5をハブ本体3aの先端側に同心状に設置させた際に、このハブ本体3aの針挿通孔3bに挿通する針挿通孔5aと、このハブ本体3aの各連通孔3fに連通する連通孔5bとが設けられている。
【0012】
保持部材6は、円盤状の本体部6aと、この本体部6aの基端側の側面に突設された複数、例えば4本の細長円柱状の規制片部6bとを有している。本体部6aは、ケース体4の本体部4aの内径寸法に等しい外径寸法に形成され、この本体部6aの中心に、針本体部2の基端が挿通されて固定される針挿通孔6cが軸方向に沿って設けられている。また、各規制片部6bは、本体部6aの基端面から、この本体部6aの軸方向に向けて突出し、衝撃吸収体5の軸方向の長さ寸法に等しい長さ寸法に形成され、この衝撃吸収体5の各連通孔5bの内径寸法に等しい外径寸法に形成されている。そして、各規制片部6bは、図2ないし図4に示すように、保持部材6の基端側に衝撃吸収体5を取り付ける際に、これら各規制片部6bが衝撃吸収体5の連通孔5bのそれぞれに挿通する位置に取り付けられている。
【0013】
よって、針本体部2は、この針本体部2の基端側がケース体4の針挿通孔4b、保持部材6の針挿通孔6c、および衝撃吸収体5の針挿通孔5aの順に挿通され、ハブ3の針挿通孔3bに挿通された状態で、この針本体部2の基端側が保持部材6の針挿通孔6cに固定されている。この状態で、ケース体4には、衝撃吸収体5の先端側から保持部材6の各規制片部6bを衝撃吸収体5の各連通孔5bに挿入させた状態で、保持部材6の本体部6aの先端側を先頭にして、これら保持部材6および衝撃吸収体5の順にケース体5の本体部5a内に収容され、この本体部5aの基端側にハブ3のハブ本体3aの先端側が嵌合されて抜け止め保持されている。このとき、ハブ3の潰止め片部3eがケース体4の係止凹部4cに係止して、このケース体4に対するハブ3の周方向への回転が規制され、これら潰止め片部3aと係止凹部4cとによってロック機構7が構成される。ロック機構7は、ハブ3の潰止め片部3eによるケース体4の係止凹部4cへの係止により、衝撃吸収体5の軸方向への潰れを抑制して、針本体部2の穿刺時に生じる穿刺圧の吸収をロック(規制)する構成となっている。
【0014】
さらに、穿刺具1は、図3に示すように、ハブ3の潰止め片部3eをケース体4の係止凹部4cに係止させてロック機構7を機能させたロック状態(保管状態)Rで、ハブ3の各連通孔3fが衝撃吸収体5の連通孔5bにそれぞれ連通せず、保持部材6の各規制片部6bの先端部がハブ本体3aの先端側の平面に当接し、保持部材6の本体部6aとハブ本体3aとの間での衝撃吸収体5の潰れが防止された状態となる。そして、穿刺具1は、図4に示すように、ハブ3の潰止め片部3eをケース体4の摺動凹部4dに沿って周方向に回動させて、この潰止め片部3eによるケース体4の係止凹部4cへの係止を解除させてロック機構7を解除させたフリー状態(使用状態)Fとすると、ハブ3の各連通孔3fが衝撃吸収体5の連通孔5bにそれぞれ連通し、保持部材6の各規制片部6bがハブ3の連通孔3fに連通した状態となり、針本体部2に掛かる穿刺圧(負荷)に応じて保持部材6の本体部6aとハブ本体3aとの間で衝撃吸収体5が潰れ得る状態となる。
【0015】
次に、本発明の第1実施形態に係る穿刺具1の使用方法について、図1ないし図4を参照して説明する。
【0016】
人体の血管や生体組織等の対象部位に穿刺具1を穿刺する際は、図3に示すロック状態Rから、ハブ3の係止片部3dを把持等して、このハブ3の潰止め片部3eがケース体4の係止凹部4cから摺動凹部4dへ移動するように、このハブ3をケース体4に対して周方向へ回転させて、図4に示すフリー状態Fにする。すると、保持部材6の各規制片部6bがハブ3の連通孔3fに連通した状態となり、この保持部材6の本体部6aとハブ3のハブ本体3aとの間で衝撃吸収体5が潰れ得る状態となる。
【0017】
この状態で、穿刺具1のハブ3の係止片部3dを掴む等して、この穿刺具1の針本体部2の針先を、人体の所定部位へ穿刺していく。このとき、例えば人体の皮膚組織や生体組織等の対象部位の表面に針本体部2の針先が突き刺さる際に、この対象部位の表面から針本体部2に比較的大きな穿刺圧が掛かり、この穿刺圧によって対象部位が圧排(変形)する。このとき、その穿刺圧を受けて、保持部材6の各規制片部6bがハブ3の連通孔3fに挿入し、保持部材6の本体部6aとハブ3のハブ本体3aとの間で衝撃吸収体5が潰れ、この衝撃吸収体5の潰れによって、針本体部2に掛かる穿刺圧が吸収される。
【0018】
叙述の如く構成された本第1実施形態によれば、穿刺具1をロック状態Rからフリー状態Fにした状態で、人体の対象部位(刺部位)に針本体部2の針先を突き刺す際に、この針本体部2に掛かる穿刺圧によって衝撃吸収体5が潰れるため、この針本体部2に掛かる穿刺圧を吸収できる。要するに、穿刺具1の針本体部2を対象部位、例えば皮膚組織に貫通させる際に生じる圧力を留めることができ、衝撃吸収体5にて穿刺圧を吸収する際における針本体部2への反作用を抑制できるから、血管後壁貫通、組織貫通による別組織への穿刺といった誤穿刺を容易かつ適切に防止できる。
【0019】
また、針本体部2に掛かる穿刺圧にて潰れた際に復元しない素材にて衝撃吸収体5を構成している。このため、この衝撃吸収体5にて穿刺圧を吸収する際の針本体部2への反作用を無くすことができ、この衝撃吸収体5による穿刺時に針本体部2に掛かる穿刺圧の吸収をより適切に行うことができる。
【0020】
特に、不妊治療において人体の卵巣から卵子を摘出する際に、穿刺具1を用いることにより、この穿刺具1の針本体部2を卵胞に突き刺す際に生じる穿刺圧を吸収できる。よって、この穿刺圧による針本体部2の先端部の不作為な移動を防止できるから、卵胞を傷つけたり、針本体部2の突き刺し過ぎを防止でき、人体への負担を少なくでき、卵子の摘出を正確に行うことができる。
【0021】
また、ロック状態Rで穿刺具1を保管することにより、針本体部2の穿刺時以外での衝撃吸収体5の誤作用(潰れ)を抑制でき無くすことができる。また同時に、ロック状態Rからフリー状態Fにしてから穿刺具1の針本体部2を対象部位へ穿刺することにより、衝撃吸収体5による針本体部2の穿刺圧の吸収を確実に作用させることができる。
【0022】
さらに、穿刺具1をロック状態Rからフリー状態Fにする際には、この穿刺具1のハブ3の潰止め片部3eがケース体4の係止凹部4cから摺動凹部4dへ移動するように、このハブ3をケース体4に対して回転させることでロック機構7が解除され、衝撃吸収体5による穿刺圧の吸収が可能な状態となる。よって、ケース体4に対してハブ3を回転させるという簡単な動作でロック機構7を解除できるため、穿刺具1のロック状態Rを保持するロック機構7の解除操作を確実かつ容易に行うことができる。
【0023】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る穿刺具1について、図5ないし図7を参照して説明する。この第2実施形態に係る穿刺具1は、衝撃吸収体5をロック状態Rにする構成が第1実施形態に係る穿刺具1と相違している。参照符号は第1実施形態のものとし、特に相違点について以下に説明する。
【0024】
具体的に、穿刺具1は、針本体部2の基端側が保持部材6にて保持されている。保持部材6は、円板状の本体部6aと、この本体部6aの基端側に同心状に取り付けられた細長円筒状の摺動筒部6dとを有している。本体部6aは、摺動筒部6dの外径寸法より大きな外径寸法に形成され、この本体部6aの周面部に一対のリブ6eが設けられている。一対のリブ6eは、本体部6aの軸方向に沿って設けられ、この本体部6aの周方向に向けて180°の間隔を空けて設けられている。
【0025】
そして、保持部材6の本体部6aおよび摺動筒部6dの中心位置には、これら本体部6aおよび摺動筒部6dの軸方向に沿った針挿通孔6fが貫通して設けられている。針挿通孔6fには、この針挿通孔6fの本体部6a側から針本体部2の基端側が圧入されて固定されている。この針本体部2は、この針本体部2の基端側を針挿通孔6fの基端部より内側に収容させて取り付けられている。さらに、保持部材6の針挿通孔6fの基端側には、断面円形状の取付凹部6jが同心状に設けられている。取付凹部6jは、針挿通孔6fの内径寸法より大きな内径寸法に形成され、この針挿通孔6fの基端側に同心状に連通した状態で設けられている。また、取付凹部6jは、摺動筒部6dの基端側からこの摺動筒部6dの中間位置までに亘って同心状に設けられている。要するに、取付凹部6jもまた、シリンジ(図示せず)の先端側の筒先を挿入させてプランジャを押し、このシリンジ内の薬液を針本体部2へ注入させたり、このプランジャを引いて血液等を人体から採取したりするために用いるものである。
【0026】
保持部材6の摺動筒部6dには、円柱状の衝撃吸収体5が取り付けられている。衝撃吸収体5の中心位置には、保持部材6の摺動筒部6dが嵌合される取付孔5cが軸方向に沿って貫通して設けられている。要するに、衝撃吸収体5は、保持部材6の本体部6aの外径寸法に等しい外径寸法であって、摺動筒部6dの長さ寸法より小さな長さ寸法に形成され、この衝撃吸収体5の取付孔5cが保持部材6の摺動筒部6dの外径寸法に等しい内径寸法に形成されている。
【0027】
これら保持部材6および衝撃吸収体5は、ケース体4内に摺動可能に保持されている。ケース体4は、角柱状の本体部4aを有し、この本体部4aは、保持部材6の軸方向に沿った長さ寸法より大きな長さ寸法に形成されている。そして、本体部4aの中心には長手方向に沿った挿通孔4gが貫通して設けられている。挿通孔4gは、保持部材6の本体部6aの外径寸法に等しい内径寸法に形成されている。
【0028】
挿通孔4gの周面部には、この挿通孔4gの長手方向に沿った一対の切り溝4hが形成されている。一対の切り溝4hは、本体部4aの先端側から所定距離基端側にずれた位置から、この本体部4aの基端側までに亘って直線状に設けられている。そして、切り溝4hは、本体部4aの幅方向の両側部に設けられ、この本体部4aの周方向に180°の間隔を空けて設けられている。さらに、ケース体4の本体部4aの上面には、取付溝4jが貫通して設けられている。取付溝4jは、本体部4aの幅方向に沿って設けられ、この本体部4aの上面から挿通孔4gへ貫通し、挿通孔4gの径方向に沿って設けられている。そして、ケース体4の取付溝4jに対向する挿通孔4g内の下面側には、嵌合受部4kが設けられている。嵌合受部4kは、図6および図7に示すように、本体部4aの幅方向、要するに挿通孔4gの径方向に沿って設けられている。
【0029】
そして、ケース体4の取付溝4jには、平板状の係止片8が取り外し可能に挿入されて取り付けられている。係止片7Aは、取付溝4jの幅寸法に等しい厚さ寸法であって、この取付溝4jの長さ寸法に等しい幅寸法に形成されている。さらに、係止片7Aの下端側には凹状に切り欠かれて形成された嵌合凹部8aが設けられている。嵌合凹部8aは、保持部材6の摺動筒部6dの外径寸法に等しい幅寸法に形成されている。要するに、係止片8は、この係止片8の下側をケース体4の取付溝4jに嵌合させて挿入させた状態で、このケース体4の挿通孔4gに挿通させて取り付けられた保持部材6の摺動筒部6dに嵌合凹部8aが嵌合し、かつこの係止片8の下端部をケース体4の嵌合受部4kに嵌合して、保持部材6の基端側への移動を規制し衝撃吸収体5の潰れを防止する構成となっている。
【0030】
さらに、ケース体4の基端側には、ハブ3が取り付けられている。ハブ3は、ケース体4の挿通孔4gの内径寸法に等しい外径寸法のハブ本体3aを有している。ハブ本体3aの基端側には、ケース体4の挿通孔4gの内径寸法より大きな外径寸法に形成された係止段部3dが同心状に設けられている。そして、ハブ3は、ケース体4の基端側から、このケース体4の挿通孔4gにハブ本体3aを嵌合させ、この挿通孔4gの基端側の周縁に係止段部3cを係止させて取り付けられている。
【0031】
よって、針本体部2は、この針本体部2の基端側を保持部材6の針挿通孔6f内に圧入させた状態で、この保持部材6に固定されている。この状態で、ケース体4には、このケース体4の切り溝4hに保持部材6のリブ6eをそれぞれ摺動可能に嵌合させつつ、このケース体4の挿通孔4gの基端側から保持部材6が嵌合されて収容されている。そして、ケース体4の先端側まで保持部材6を嵌合させた状態で、このケース体4の取付溝4jに係止片8が挿入されて、この係止片8の嵌合凹部8aが保持部材6の摺動筒部6dの先端寄りの位置に嵌合されつつ、この係止片8の下端部がケース体4の嵌合受部4kに嵌合されている。
【0032】
この結果、係止片8とケース体4の切り溝4hの先端縁との間に保持部材6が保持され、この保持部材6の基端側への移動が規制されたロック機構7が構成される。ロック機構7は、係止片8の嵌合凹部8aを保持部材6の摺動筒部6dに嵌合させることにより、この保持部材6の基端側への移動、要するに衝撃吸収体5の潰れを抑制して、針本体部2の穿刺時に生じる穿刺圧の吸収をロックする構成となっている。この状態で、ケース体4の挿通孔4gの基端側から衝撃吸収体5の先端側が係止片8に当接するまで衝撃吸収体5が嵌合されている。衝撃吸収体5は、この衝撃吸収体5の取付孔5cに保持部材6の摺動筒部6dを嵌合させた状態とされている。さらに、ケース体4の基端側からハブ3が嵌合され、このハブ3のハブ本体3aがケース体4の挿通孔4gに嵌合され、このハブ3の係止段部3dがケース体4の挿通孔4gの基端側の周縁に係止されている。
【0033】
さらに、穿刺具1は、図6に示すように、係止片8の嵌合凹部8aを保持部材6の摺動筒部6dの先端側に嵌合させつつ、この係止片8の下端部をケース体4の嵌合受部4kに嵌合させてロック機構7を機能させたロック状態Rで、この係止片8とケース体4の切り溝4hの先端縁との間で保持部材6の基端側への移動が規制され、針本体部2を介した先端側からの穿刺圧による衝撃吸収体5の潰れが防止される。そして、穿刺具1は、図7に示すように、ケース体4から係止片8を上方へ移動させて取り外す等してロック機構7を解除させたフリー状態Fとすると、保持部材6がケース体4の切り溝4hに沿って基端側へ移動可能となり、針本体部2に掛かる穿刺圧に応じて保持部材6の本体部6aとハブ3のハブ本体3aとの間で衝撃吸収体5が潰れ得る状態となる。
【0034】
この状態で、穿刺具1のケース体4を掴む等して、この穿刺具1の針本体部2の針先を、人体の所定部位へ穿刺していく。すると、この針本体部2の針先が人体の所定部位に突き刺さる際に生じる穿刺圧によって、保持部材6の本体部6aとハブ3のハブ本体3aとの間で衝撃吸収体5が潰れ、この衝撃吸収体5の潰れによって、針本体部2に掛かる穿刺圧が吸収される。
【0035】
叙述の如く構成された本第2の実施形態によれば、穿刺具1をロック状態Rからフリー状態Fにした状態で、人体の対象部位に針本体部2の針先を突き刺す際に、この針本体部2に掛かる穿刺圧によって衝撃吸収体5が潰れる構成であるため、上記第1実施形態に係る穿刺具1と同様の作用効果を奏することができる。さらに、ケース体4から係止片8を上方へ引き出して取り外すことにより、穿刺具1をロック状態Rからフリー状態Fにできるので、穿刺具1のロック状態Rを保持するロック機構7の解除操作を確実かつ容易に行うことができる。
【0036】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る穿刺具1について、図8ないし図10を参照して説明する。この第3実施形態に係る穿刺具1は、衝撃吸収体5をロック状態Rにする構成が第1実施形態に係る穿刺具1と相違している。参照符号は第1実施形態のものとし、特に相違点について以下に説明する。
【0037】
具体的に、穿刺具1は、針本体部2の基端側が保持部材6にて保持されている。保持部材6は、先端側に向けて縮径した円錐台状に形成されている。そして、保持部材6の基端側にハブ3が取り付けられている。ハブ3は、保持部材6の基端側の外径寸法に等しい外径寸法に形成された円柱状のハブ本体3aと、このハブ本体3aの基端側に同心状に取り付けられた摺動筒部3gとを備えている。そして、保持部材6およびハブ3の中心には針挿通孔6f,3bが軸方向に沿って設けられている。
【0038】
針本体部2は、この針本体部2の基端部をハブ3の基端部より基端側に突出させて取り付けられている。また、ハブ3の摺動筒部3gの外周面の基端寄りの位置には、一対の回動支持部3hが取り付けられている。一対の回動支持部3hは、摺動筒部3gの周方向に向けて等間隔、要するに180°離間させた位置に、この摺動筒部3gの径方向に沿って突出した円柱状に形成されている。さらに、摺動筒部3gの基端側にもまた、断面円形状の取付凹部(図示せず)が同心状に設けられている。そして、この取付凹部もまた、シリンジ(図示せず)の先端側の筒先を挿入させてプランジャを押し、このシリンジ内の薬液を針本体部2へ注入させたり、このプランジャを引いて血液等を人体から採取したりするために用いるものである。また、摺動筒部3gには、円柱状の衝撃吸収体5が取り付けられている。衝撃吸収体5は、ハブ3の摺動筒部3gの先端側から回動支持部3hまでの距離より小さな長さ寸法に形成されている。そして、衝撃吸収体5の中心には、摺動筒部3gの外径寸法に等しい内径寸法に形成された取付孔5cが軸方向に沿って貫通して設けられている。要するに、衝撃吸収体5は、ハブ3の回動支持部3hより先端側の摺動筒部3gに嵌合させて取り付けられている。
【0039】
また、ハブ3の摺動筒部3gは、ケース体4の先端側から嵌合させて取り付けられている。そして、衝撃吸収体5は、ハブ3の本体部3aとケース体4との間に挟持されて取り付けられている。このケース体4は、円柱状に形成された本体部4aと、この本体部4aの先端側に同心状に取り付けられた円筒状の嵌合筒部4mとを有している。嵌合筒部4mは、本体部4aの外径寸法に等しい外径寸法であって、衝撃吸収体5の外径寸法に等しい外径寸法に形成されている。そして、嵌合筒部4mの内部には、ハブ4の摺動筒部3gが嵌合される円筒状の摺動受部4nが同心状に形成されている。摺動受部4nは、嵌合筒部4mの長さ寸法に等しい長さ寸法であって、ハブ3の摺動筒部3gの内径寸法に等しい外径寸法に形成されている。
【0040】
さらに、ケース体4の嵌合筒部4mには、この嵌合筒部4mの先端側の開口縁から基端側に向けて凹状に切り欠かれた一対の摺動溝4pが形成されている。一対の摺動溝4pは、嵌合筒部4mの周方向に沿って、等間隔、要するに180°離間させた位置に設けられている。さらに、嵌合筒部4mの先端側の開口縁には、摺動溝4pの先端部を覆うようにコ字状の一対の係止凹部4rが設けられている。一対の係止凹部4rは、ケース体4の先端側からハブ3を嵌合させた際に、このハブ3の回動支持部3hが挿通可能な形状とされている。また、ケース体4の本体部4aの先端寄りの周面部には、一対の係止片部4sが突出して設けられている。一対の係止片部4sは、摺動溝4pの基端側に所定の間隔を空けて軸方向に沿って並んで設けられている。
【0041】
そして、ケース体4の嵌合筒部4mには、穿刺具1をロック状態にするための操作部材9が取り付けられている。操作部材9は、ケース体4の本体部4aの外径寸法に等しい内径寸法に形成された円弧面状の操作部9aを有している。操作部9aの先端側の両側部には、一対の保持片部9bが設けられている。一対の保持片部9bは、基端側の側面が円弧状に形成されている。また、保持片部9bの先端側には、ハブ3の回動支持部3hに回転可能に嵌合される略C型の回動受部9cが設けられている。一対の回動受部9cは、操作部9の両側に位置し、この操作部9の周方向に沿って等間隔、要するに180°離間させた位置に取り付けられている。また、操作部9の先端側の中央部には、ケース体4の本体部4aの外径寸法に等しい内径寸法に形成された嵌合凹部9dが設けられている。嵌合凹部9dは、一対の回動受部9cを回転中心として操作部材9を先端側に回動させて起立させた場合に、ケース体4の嵌合筒部4mの上側から嵌合する形状とされている。
【0042】
よって、針本体部2は、この針本体部2の基端側を保持部材6の針挿通孔6cおよびハブ3の針挿通孔3bに連続して挿通されて取り付けられている。そして、ハブ3の本体部3aと回動支持部3hとの間の摺動筒部3gに衝撃吸収体5が取り付けられている。この状態で、ハブ3の摺動筒部3gがケース体4の先端側から嵌合筒部4mと摺動受部4nとの間に嵌合されて取り付けられている。このとき、ハブ3の回動支持部3hは、ケース体4の係止凹部4rに嵌合させた状態で、このケース体4の摺動溝4pに沿って基端側へ移動させて取り付けられている。そして、ケース体4には、このケース体4の上側から操作部材9の嵌合凹部9dがケース体4の嵌合筒部4mに嵌合され、この操作部材9の各回動受部9cがハブ3の回動支持部3hに嵌合され、この状態で、操作部材9の操作部9aを各回動受部9cを回転中心として基端側に回動させ、この操作部9aの下面側をケース体4の本体部4aの上側に接触させて取り付けられている。
【0043】
この結果、図8に示すように、ハブ3の本体部3aとケース体4の一対の係止凹部4rとの間に衝撃吸収体5が保持され、この保持がケース体4の一対の係止凹部4rと操作部材9の回動受部9cとの当接、およびこの操作部材9の一対の保持片部9bとケース体4の係止片部4sとの当接によって維持されて、ハブ3の基端側への移動が規制されたロック機構7が構成される。
【0044】
よって、穿刺具1は、操作部材9の操作部9aをケース体4の本体部4aに接触させてロック機構7を機能させたロック状態Rで、この操作部材9の回動受部9cとケース体4の一対の係止凹部4rとが当接するとともに、この操作部材9の一対の保持片部9bとケース体4の係止片部4sとが当接する。その結果、穿刺具1は、ハブ3の基端側への移動が規制され、針本体部2およびハブ3を介した穿刺圧による衝撃吸収体5の潰れが防止された構成とされている。
【0045】
そして、穿刺具1は、図10に示すように、操作部材9の操作部9aを把持等して、この操作部材9の嵌合凹部9dがケース体4の嵌合筒部4mに嵌合する位置まで、この操作部材9を上方へ回動させてロック機構7を解除させたフリー状Fとする。その結果、穿刺具1は、操作部材9の一対の保持片部9bとケース体4の係止片部4sとの当接による、ハブ3の基端側への移動が規制され、このハブ3がケース体4の摺動溝4pに沿って基端側へ移動可能となり、針本体部2に掛かる穿刺圧に応じてハブ3のハブ本体3aとケース体4の係止凹部4rとの間で衝撃吸収体5が潰れ得る状態となる。
【0046】
この状態で、穿刺具1の針本体部2の針先を人体の所定部位へ穿刺すると、この針本体部2の針先に掛かる穿刺圧によってハブ3とケース体4との間で衝撃吸収体5が潰れ、針本体部2に掛かる穿刺圧が吸収される。
【0047】
叙述の如く構成された本第3の実施形態によれば、穿刺具1をロック状態Rからフリー状態Fにした状態で、人体の対象部位に針本体部2の針先を突き刺す際に、この針本体部2に掛かる穿刺圧によって衝撃吸収体5が潰れる構成となっている。このため、上記第1実施形態に係る穿刺具1と同様の作用効果を奏することができる。また、操作部材9を回動させて起立させることにより、穿刺具1をロック状態Rからフリー状態Fにできる。よって、穿刺具1のロック状態Rを保持するロック機構7の解除操作を視覚的に明確に認識でき、このロック機構7の解除操作を確実かつ容易に行うことができる。
【0048】
<第4の実施形態>
図11~18に示す第4の実施の形態では、衝撃吸収手段(穿刺圧軽減手段)として、前記各実施の形態のようにスポンジやウレタン材のように衝撃力(押圧力(穿刺圧))を受けた場合に収縮することで衝撃吸収(穿刺圧吸収)をするゴム質弾性材を用いたものではなくピストン機構のもの、図19~28に示す第5の実施の形態のようにラチェット機構を用いたもの、さらにラチェット機構を利用したものの変形例として図29、30に示す第6の実施の形態のようにすることもでき、以下、これらの実施の形態について説明する。
【0049】
まず第4の実施の形態であるが、本実施の形態の穿刺具1は、前記各実施の形態のものと同様、先端側の針本体部2、基端側のハブ10を用いて構成されるが、さらに後述するようシリンダ部11aが形成されたケース体11、該シリンダ部11a内を移動するピストン部12aが形成された可動体12、そしてピストン部12aに設けられた逆止弁具13を備えたものとして構成されている。
【0050】
前記ケース体11は、シリンダ部11aを形成するべく有底円筒形状をしたケース本体部11bを備えて構成されるが、該ケース本体部11bの基端側に形成される底部11baには、基端側に向けて延出する第一外筒部11bbが形成され、該第一外筒部11bbに、ハブ10が軸心方向(針本体部2の軸心方向)に向けて摺動自在に内嵌組み込みされ、軸心回りの回動はキー嵌合により規制された構成になっている。
またケース本体部11bの開口端縁部11bcには、針本体部2の軸心方向外方に向けて延出する先端側筒体14の基端部14aが無理嵌め状態で嵌入組み込みされているが、この嵌入組み込みは、先端側筒体14のケース体14に対する軸心回りの回動は許容されたものとなっている。
【0051】
一方、可動体12は、前記シリンダ部11aの内周面を針本体部2の軸心方向および軸周り方向に摺動自在に移動するピストン部12aが形成されるが、該ピストン部12aの外周面にはシリンダ部11aの内周面とのあいだの気密性および摺動性を確保するためゴム製のO-リング15が嵌着されており、この様に構成されることで、可動体12は、ケース体11に対して軸心方向に相対移動するよう構成されている。因みに可動体12のケース体11に対する軸心回りの相対回動は、連通管16がケース体11に嵌入取り付け(固定)されているため規制されたものとなっている。
そして可動体12は、前記ピストン部11aから先端側に向けて延出した本体部12bが形成されているが、該本体部12bの先端側半部12baには、針本体部2の基端部2bが嵌入組み込みされている。
【0052】
前記可動体12の本体部12bは、先端側筒体14に形成した孔筒部14bに軸心方向および軸周り方向に摺動自在に嵌入組み込みされているが、該可動体本体部12bの先端部には、本実施の形態では十文字状のロック片部12cが形成されている。
一方、先端側筒体14に形成の筒孔部14bには、前記ロック片部12cに対応した十文字状の溝孔(キー溝)14cが形成されている。
【0053】
そしてこのように構成される先端側筒体14の筒孔部14bに、可動体12の本体部12bが軸心方向摺動自在に嵌入組み込みされるが、この場合に、先端側に形成のロック片部12cが、筒孔部14bの先端から突出し、かつ溝孔14cから軸周り方向に位置ずれしたロック状態Rにセットした状態では、可動体12は、軸心方向の摺動はロック(規制)された状態となっている。
このロック状態Rから、先端側筒体14(ケース体11)をケース体11に対して軸周り方向に相対回動し、溝孔14cとロック片部12cとを対向位置に位置(操作)せしめることで、ロック片部12cが溝孔14cに摺動可能なフリー状態Fとなり、これによって可動体12は、基端側に向けて摺動することができるよう構成されている。
【0054】
前記可動体本体部12bの基端側半部12bbには、ピストン部12a、シリンダ部11a、ケース本体部11bの底部11baを貫通する状態で基端部がハブ10に嵌入組み込みされる連通管16の先端部が嵌入組み込みされており、該連通管16によって可動体12およびハブ10は針本体部2と共に一体化されたものとなっており、これによって可動体12は、連通管16、軸周り方向の回動が規制されたハブ10と共に軸心方向に移動自在に構成されている。そして針本体部2は、先端側筒体14に設けた連通孔14d、連通管16、ハブ10に設けた連通孔10aを介してハブ10に形成の取付け凹孔10bまで連通連結されたものとなっており、該取り付け凹孔10bに取り付けたシリンジ等の薬液注入具(図示せず)と針本体部2とが連通するよう構成されている。
【0055】
前記可動体12に形成されるピストン部12aには、逆止弁13が設けられている。該逆止弁13は、ピストン部12aが該シリンダ部11aを先端側から基端側に移動する過程で、ピストン部12aによって仕切られるシリンダ部11a内において、基端側スペースS1内の空気(流体)を先端側スペースS2に移動させる方向に開き、逆方向の空気の移動を規制する一方向開放弁であって、弁開度圧(弁開度力)が予め設定されたものとなっていて本発明の衝撃吸収手段を構成している。
【0056】
そして穿刺具1を使用する場合に、ロック状態Rとなっている先端側筒体14を、ケース体11に対して軸周り方向に相対回動操作して溝孔14cがロック片部12cと一致したフリー状態Fにした後、針本体部2の針先部2aを患者に穿刺する。そしてこのときの穿刺圧を受けて可動体12は、連通管16、ハブ10と共に基端側に向けて移動しようとする負荷を受けることになり、この負荷が逆止弁13の弁開度圧を越えた場合に、該逆止弁13が開状態となって基端側スペースS1の空気が逆止弁13を経由して先端側スペースS2に流れてシリンダ部12aがピストン筒部11aを基端側に相対移動する、つまりケース体11が針本体部2に対して先端側に相対移動することになり、これによって穿刺圧が過圧状態となって針先部2aが深く体内に侵入してしまうことを回避でき、穿刺時において、穿刺圧が高くなりすぎることが防止でき、好適な穿刺圧での穿刺が実行されたことになる。
【0057】
<第5の実施の形態>
次に図19~28に示す第5の実施の形態について説明する。このものは衝撃吸収機構としてラチェット機構17を採用したものである。穿刺具1としては、針本体部2と、該針本体部2の基部2bが先端部18aに嵌入支持されるハブ18と、該歯部18が嵌入組み込みされるケース体19とを備えて構成される。前記ハブ18は、先端側半部の外周面18bに、ラチェット機構17を構成する歯部17aの一対が、該外周面18bから径方向に突出する状態で針本体部2の軸心を対称線として両側に形成されているが、該歯部17aは、先端側が背高となった直角三角形状の歯17aaの複数が針本体部2の軸心方向に沿って一列状に併設されたものとなっている。
【0058】
そして前記ハブ18は、ケース体19に摺動自在に嵌入組み込みされているが、該ケース体19は、前記ハブ18が嵌入組み込みされる本体部19aと、該本体部19aの先端部に一体的に取り付けられる先端部19bとを備えて構成されている。
前記本体部19aには、ハブ18を摺動自在に嵌入組み込みするための筒状部19cが形成されるが、該筒状部19cの軸心方向中間部には、前記ラチェット機構17の歯部17aに係止する爪部17bが筒状部19cの内周面19caから筒内側に向けて突出していて軸心方向に付勢される状態で揺動自在に形成されている。そして該爪部17bは、前記歯部17aに対し、ケース体19のハブ18に対する先端側への相対移動については、爪部17bが歯17aaの垂直面(またはオーバーハング面)に当接することで頂部を越えることなく係止することで規制されるが、基端側に向けての相対移動は、爪部17bが歯部17aaの傾斜面を移動することで頂部を越える、所謂無理越えをすることで許容されるように構成されている。
【0059】
一方、前記先端部19bには、ハブ18の先端部18aに形成の首部(細径部)18aaに係脱自在に係止するロック体20が径方向移動自在に嵌入するロック溝19dが形成されている。
前記ロック体20は、前記ロック溝19dに径方向抜き差し自在に嵌入するロック片部20aと、該ロック片部20aの径方向一端部から基端側に向けて延出する作動片部20bとを備えたL字形に形成されている。
【0060】
さらにロック片部20aには、前記首部18aaが貫通する貫通孔20cが形成されるが、該貫通孔20cは、作動片部20bがケース体本体部19aの外周面から離間したロック状態Rとしたときに、首部18aaが貫通するが、先端の頭部(太径部)18abは貫通することができない貫通小孔20caと、作動片部20bがケース体本体部19aの外周面に近接対向したフリー状態Fとしたときに、頭部18abまで貫通することができる貫通大孔20cbとが形成されたものとなっている。
そしてハブ18は、ロック体20をロック状態Rにしたときにはハブ18の基端側への移動が規制片21aによって規制されるが、基端側に移動してフリー状態Fにしたときには、規制片21aが基端側に移動することによってハブ18の基端側への移動が許容されるように構成されている。
【0061】
さらにケース体19には、該ケース体19に軸心方向摺動自在に外嵌するリング状の保持部材21が設けられるが、該保持部材21には、ロック体20がロック状態になっているとき、作動片部20bとケース体19の外周面とのあいだの隙間Xに嵌入して作動片部20bをロック状態Rからフリー状態Fに押し込み作動するのを規制する規制片21aが設けられている。
そして作動片部20bは、前記規制片21aによって押し込み作動が規制された状態から、保持部材21を基端側に移動して規制片部21aを隙間Xから抜き出すことで規制が解除されることになり、これによってロック体20の押し込み操作が可能となり、ロック体20をロック状態Rからフリー状態Fに操作できるように構成されている。
このようにロック体20を押し込み操作した場合に、ロック体20の作動片部20bは、ケース体19の外周面に当接または近接対向した状態になっており、該状態の作動片部20bは、基端側に移動した保持部材21を先端側に移動することで規制片21aが作動片部20bに外嵌する状態となり、これによって作動片部20bのロック状態R側への突出移動の規制がなされるように構成されている。
【0062】
そしてこのように構成された穿刺具1についても、ロック体20をフリー状態Fにしてハブ18がケース体19に対して摺動可能になる状態で針本体部2を患者に穿刺することになるが、この場合の穿刺抵抗を針本体部2が受けることでハブ18が基端側に向けて相対移動しようとするが、この穿刺抵抗による負荷が、前記ラチェット機構17の爪部17bが歯部17aを無理越えするときの抵抗力(反発力、を越えた場合に、ハブ18が、爪部17bが歯部17aを越える状態のケース体19に対する相対移動がなされることになって、穿刺圧が過剰な状態での穿刺が回避され、適正な穿刺が実行されることになる。
しかもこのものでは、穿刺作業をしている医師にとっては、爪部17bが歯17aaを無理越えする際に生じる「カチッ」とする変化を把持する指を通して感じ取ることができ、これによって穿刺力が適正状態になったことを感覚的に知ることができることになる。
またラチェット機構としては、ケース体側に歯部を形成し、ハブ側に爪部を形成した前記第5、第6の実施の形態とは逆の構成のものとしても実施することができる。
【0063】
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態のものは、第5の実施の形態のものと同様、衝撃吸収機構としてラチェット機構17を採用しているが、第5の実施の形態で採用するラチェット機構17は、歯部17aを構成する歯17aaが同じ高さのものであるため、どの段階でも爪部17bが歯17aaを無理越えする際に受ける抵抗が同じであるため、同じ穿刺抵抗を吸収するものとなっているが、医師が穿刺状態を診てもう少し大きい穿刺抵抗での穿刺をしたいと判断することがある。
このような場合に対応するため、第6の実施の形態のものは図29、30に示すように、ラチェット機構17として、歯部17aに形成される歯を、先端側の歯17aaに対し、基端側の歯部17abの高さを低くすることで爪部17bが無理越えする際に受ける抵抗を、先端側で大きくしたものであり、このようにすることで、刺殺作業の前半では低い穿刺抵抗、後半では高い穿刺抵抗を受けるものとしての衝撃吸収をすることができ、穿刺状況を判断して穿刺抵抗が弱い状態から強い状態への選択ができることになる。
そしてこのような穿刺抵抗の調整は、二段でなく三段等、必要において適数段のものとすることもでき、さらに連続的に増大するように構成することもできる。
【0064】
<その他>
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 穿刺具
2 針本体部
3 ハブ
4 ケース体
5 衝撃吸収体(衝撃吸収手段)
7 ロック機構
10 ハブ
11 ケース体
11a シリンダ部
12 可動体
12a ピストン部
13 逆止弁
17 ラチェット機構
17a 歯部
17aa 歯)
17b 爪部
18 ハブ
19 ケース体
【要約】
穿刺時に針本体部に掛かる穿刺圧に基づく誤穿刺を防止できる。
針本体部2と、針本体部3の基端部を支持するハブ3と、ハブ3が収容されるケース体4と、とを備えた穿刺具1である。穿刺具1は、ケース体4とハブ3との間に、針本体部3の穿刺時の穿刺圧を吸収する衝撃吸収体4が設けられている。
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