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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】補助具
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20241029BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20241029BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61H1/02 G
A61H3/00 B
A61F5/01 Z
A61F5/02 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024537103
(86)(22)【出願日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2024016836
【審査請求日】2024-06-18
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/017636
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524231605
【氏名又は名称】株式会社龍癒庵
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 陽海
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/125802(WO,A1)
【文献】特開2007-247110(JP,A)
【文献】実開昭56-124470(JP,U)
【文献】中国実用新案第205948329(CN,U)
【文献】特開昭53-13582(JP,A)
【文献】特開2003-144467(JP,A)
【文献】特開2022-48462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/00
A61F 5/01
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の関節の動きを補助するための補助具であって、
関節の上方又は下方に位置し、関節の屈曲方向側に面する身体の一部分に当接する身体支持部と、
上記身体支持部に一体に形成され、上記の身体の一部分とは異なる他の身体部分に当接する他所支持部と、
上記身体支持部及び上記他所支持部には、それぞれに設けられた保持部材を介して設けられた付勢部材とを具備し、
上記付勢部材は、上記身体支持部に付勢力を付与する第1付勢部と上記他所支持部に付勢力を付与する第2付勢部とからなり、
上記付勢部材は、Sバネであり、
補助具がエプロン形状であり、
上記身体支持部における上記保持部材は、利用者の身体の胸部前面から腹部前面にかけて当接する部位に設けられており、上記他所支持部における上記保持部材は、利用者の腰部側面から大腿部側面にかけて当接する部位に設けられており、
これらの上記保持部材の全体に亘って上記付勢部材が設けられていることを特徴とする補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常使用するものに適用可能であり、利用者に装着時から負荷をかけることなく筋力補助機能を発揮するように構成された補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腰痛又は膝痛等の関節の痛みで悩んでいる人は多く、痛みの解消のためのグッズも多数提案されている。これらのグッズとしては、利用者が動作を行う際に関節周りの筋肉に必要以上の負荷をかけることにより痛みが出ることに着目して、利用者の動作を補助するグッズも種々提案されている。中でも、関節が2つの身体部位(例えば、上半身と下半身、大腿部と下腿部)とを連結していることに着目し、これらの2つの身体部位に固定され、身体の動きに伴って両者に付勢する構造のグッズが提案されている。
例えば、特許文献1には、他人の介助なく立上る際に筋力補助する用途に適し、構造が簡易で小型化・軽量化に適した立ち上がり補助具が提案されている。具体的には、立ち上がり補助具として、大腿部着装部材と、下腿部着装部材と、両者の基端とを回動自在に軸着する枢軸ピンと、枢軸ピンに軸支されたトルク調節ギアと、内端を枢軸ピンに固定し、外端をトルク調節ギア板面に掛止した渦巻バネと、トルク調節摘を備えそれを回転してトルク調節ギアを回転駆動するトルク調節ギア駆動機構と、枢軸ピンの先端に設けた非円柱形状のストッパ凸部及び下腿部着装部材下面のストッパ凸部と嵌合可能な枢軸ピンストッパ凹部とを備え、枢軸ピンが軸方向に移動することでストッパ凸部が枢軸ピンストッパ凹部に嵌脱自在に構成されている補助具が提案されている。
また、特許文献2には、歩行中に膝関節に加わる体重を簡単な構成で軽減する膝装具が提案されている。具体的には、膝装具として、上部支持体と上部ステイと第1のベルトと下部支持体と下部ステイと第2のベルトと弾性体と緩衝材とを備える。弾性体は、膝関節の側部に配置され、後方で折り返された湾曲部を有し、上部ステイの下端および下部ステイの上端を連結する。緩衝材は、膝関節の前方寄りに配置され、上部ステイおよび下部ステイが直線状に並ぶ状態で弾性体の端部の間に挟まれている、膝装具が提案されている。
また、特許文献3には、大腿と下腿に装着することにより、歩行時痛を軽減せしめる補助具が提案されており、具体的には、コルセットにバネ収納穴をもうけ、コルセット、バネ、ゴムテープの三者の連係により、歩行時に膝関節内部にかかる圧力を軽減せしめる補助具が提案されている。
また、特許文献4には、身体支持エプロンが提案されている。特許文献4に提案されている身体支持エプロンは、シートの上部および下部が角度位置に向かって屈曲することを可能にするバネ要素を組み込んだ可撓性材料のシートを含み、一方、前記部分をほぼ真っ直ぐな形状に戻すように作用する。バネ要素は、フック端部を有する弾性コイルばねによって相互接続された直線端部を有する。各バネ要素はパッド層で覆われ、スリーブに受け入れられます。ウエストバンドはシートの中央に固定されており、2つのセクションがバネに隣接するシートの対向する縁から延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5801859号公報
【文献】特許5822268号公報
【文献】実案3138802号公報
【文献】WO2008/125802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1~3の提案にかかる装置等は、特別に装着する必要のあるものであり、通常使用する作業着やサポーターのように手軽に装着できるものではなかった。そのため利用者において使用が億劫になり、使用しなくなるという問題があった。また、補助機能の点においても、使用当初から一定以上の付勢力がかかっているため、あたかも筋トレをしているかのように利用者に負荷をかけるものであり、利用者の筋力補助の点から不十分なものであった。また、特許文献4の提案にかかる身体支持エプロンは、通常使用するエプロンからなるので手軽に装着できるものではある。しかし、バネ要素が十分には作用せず、補助機能が不十分であった。
要するに、通常使用する作業着やサポーターに適用可能であり、利用者に装着時から負荷をかけることなく、十分に利用者の補助を行うことができる、筋力補助機能を発揮するように構成された補助具の開発が要望されているのが現状である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、通常使用するものに適用可能であり、利用者に装着時から負荷をかけることなく筋力補助機能を発揮するように構成された補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解消すべく鋭意検討した。その結果、特許文献4のエプロンは、身体の両側部にバネが設置されており、身体に接している布材にかかる利用者の力を、当該布材を介してバネに伝達して、バネの付勢力を、再度布材を介して利用者に付与するものである。このように、布材を介して利用者の身体の力とバネの付勢力とを利用する点が、補助機能が不十分となることの理由であることを、本発明者は見出した。その点を更に検討した結果、弾性部材を設ける位置を工夫することで上記の問題を解消しうることを知見し、かかる知見に基づいて鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、以下の各発明を提供するものである。
利用者の関節の動きを補助するための補助具であって、
関節の上方又は下方に位置し、関節の屈曲方向側に面する身体の一部分に当接する身体支持部と、
上記身体支持部に一体に形成され、上記の身体の一部分とは異なる他の身体部分に当接する他所支持部と、
上記身体支持部及び上記他所支持部には、それぞれに設けられた保持部材を介して設けられた付勢部材とを具備し、
上記付勢部材は、上記身体支持部に付勢力を付与する第1付勢部と上記他所支持部に付勢力を付与する第2付勢部とからなる
補助具。
2.上記付勢部材は、Sバネであることを特徴とする1記載の補助具。
3,補助具がエプロン形状であり、
上記身体支持部は、利用者の身体の胸部前面から腹部前面にかけて当接する部位であり、上記他所支持部は、利用者の腰部側面から大腿部側面にかけて当接する部位であり、
これらの全体に亘って上記付勢部材が設けられていることを特徴とする2記載の補助具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の補助具は、通常使用する作業着やサポーターに適用可能であり、利用者に装着時から負荷をかけることなく筋力補助機能を発揮するように構成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、本発明の補助具の一実施形態を示す一部透視平面図であり、(b)は、用いられている付勢部材の拡大図である。
図2図2は、図1に示す補助具の使用態様(通常時)を示す正面図である。
図3図3は、図1に示す補助具の使用態様(通常時)を示す側面図である。
図4図4は、図1に示す補助具の使用態様を示す概要図(屈曲時)を示す側面図である。
図5図5は、参考例としての補助具の一実施形態を示す一部透視平面図である。
図6図6は、図5に示す補助具の使用態様(通常時)を示す概要図である。
図7図7は、図5に示す補助具の使用態様を示す概要図(屈曲時)を示す概要図である。
図8図8は、参考例の補助具の他の実施態様を示す、利用者が装着した状態における側面状態を一部透視して示す概要図である。
図9図9は、図8に示す補助具の使用態様図である。
図10図10は、参考例の補助具の他の実施態様を示す、利用者が装着した状態における側面状態を一部透視して示す概要図である。
図11図11は、図9に示す補助具の使用態様図である。
図12図12は、図5に示す補助具の変形例を示す図5のb-b断面相当図である。
図13図13は、参考例の補助具の一実施形態を示す概要図である。
図14図14は、図13に示す補助具の使用形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図15図15は、参考例の補助具の一実施形態を示す概要図である。
図16図16は、図15に示す補助具の使用形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【符号の説明】
【0009】
1 補助具、10 本体、20 身体支持部、30 他所支持部、40 保持部、50 付勢部材、51 第1付勢部、53 第2付勢部、55 支点部
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面(図1~4)を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。なお、図1~11においては、図がわかりにくくなるので、本来透視していることを示すべく点線で表される付勢部材を実線で示す。
本実施形態の補助具501は、図1(a)等に示すように、利用者の関節の動きを補助するための補助具である。補助具501は、身体支持部520と他所支持部530を備えた本体510により構成されている。身体支持部520は、関節の上方又は下方に位置し、関節の屈曲方向側に面する身体の一部分に当接する。他所支持部530は、身体支持部520に一体に形成され、上記の身体の一部分とは異なる他の身体部分に当接する。身体支持部520及び他所支持部530には、それぞれに設けられた保持部材としての保持部540を介して設けられた付勢部材550を具備し、付勢部材550は、身体支持部520に付勢力を付与する第1付勢部551と他所支持部530に付勢力を付与する第2付勢部553とからなる。
【0011】
〔本体〕
本実施形態の補助具501における本体510は、通常身体に装着して用いられるものとするのが好ましく、本実施形態においては胸当てエプロン形状とされている。
本体510は、上半身に当接する身体支持部520と、下半身側に位置する他所支持部530とが、腰関節(本明細書においては腰椎の付け根の部分近傍を意味する)近傍に位置する中間部513を境に構成されている。中間部513には、エプロンを身体に密着させるための腰紐515が設けられている。また、身体支持部20の上端には首に掛けるための首紐517が設けられており、下端には腿に本体510(他所支持部530)を密着させる腿ストラップ519が設けられている。本体510の形態は台形状であり、左右両側縁が内方に向けて円弧状(図1においては、図示の都合上直線状に示している)となるように湾曲されている(すなわち、上端の幅が狭く、下端の幅が広くなるようになっており、円弧の中心点付近に腰紐515が設けられている)。なお、円弧形状に制限されるものではなく、身体支持部520の幅よりも他所支持部530の幅の方が広くなるように構成されていればよい。以下本明細書において「円弧状であるため」という趣旨の記載については、「身体支持部520の幅よりも他所支持部530の幅の方が広くなるように構成されているため」の意味で用いる。
そして、保持部540は、身体支持部520と他所支持部530とを通して、すなわち、本体510の左右両側縁部全長に亘って設けられており、円筒状の形状である。
〔身体支持部及び他所支持部〕
身体支持部520は、図2及び3等に示すように、使用時に利用者の上半身(腸骨よりも上方で且つ胸に至る部位)に密着する部分であり、他所支持部530は使用時に利用者の下半身(腸骨よりも下方で且つ大腿部に至る部位)に密着する部分である。身体支持部520は利用者が身体を曲げるときに屈曲する側である前身頃(胸側)に位置する。一方、他所支持部530は、前身頃(腿の前(胸部)側)に位置すると共にその両側部は利用者の体側部から後身頃に位置する(図2等参照)。
【0012】
〔保持部〕
保持部540は、円筒状で且つ直線状に形成されている。本実施形態においては、上述のように本体510が湾曲した台形状であるので、本体510の左右両側縁に設けられた保持部540は円弧状に設けられている。このように保持部540が設けられていることにより、利用者が深くしゃがみ込む等して膝が開いた場合にも大腿部がエプロンから外れず、補助具による補助機能が十分に発揮される。これは、補助具501を利用者が装着した場合に、保持部540の位置が、利用者の下半身側においては身体の側部から後身頃側に傾斜するように設けられ、上半身側においては身体の前身頃に位置するように設けられるため、後述する付勢部材の効果が十二分に発揮される点で重要である。したがって、本体510が上述のような形状を有することで、付勢部材が収容される保持部540の位置が、利用者の体側部から胸側にかけて位置することとなり、付勢部材による効果が十二分に発揮される。
保持部の内径などは、付勢部材を収容できるサイズであれば特に制限されないが、付勢部材を落下しないように保持するために、保持部の上下開口部分などにボタン式の封止部を設ける事ができる(図示せず)。
〔形成材料〕
本体510の各部の形成材料は、本実施形態においては布であるが、エプロンの材料として用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、綿、麻、化繊等からなる布の他、プラスチックフィルム等を用いる事ができる。
【0013】
<付勢部材>
付勢部材550は、図1(b)等に示すようにSバネである。このSバネをその保持部540中に、Sバネの長手方向が本体510の側縁に沿うように配されている。上述のように、身体支持部520に位置する第1付勢部551と他所支持部530に位置する第2付勢部553とからなる。利用者によって支点の位置は異なるが、通常は腸骨の上側に位置する部位が支点となる。これにより、第1付勢部551と第2付勢部553とにそれぞれ異なる方向の付勢力を付与して、図4の矢印方向への力を利用者の身体に付与することができる。
〔形状〕
本実施形態の付勢部材550の形状は、Sバネ形状である。ここでSバネ形状とは、線状の部材を、S字を描くように互い違いに折り曲げて、全体として板バネのように薄く細長く、所定の幅を有するように見える形状としたものである。全体の形状としては特に角度が設けられておらず直線状である。本実施形態においてSバネが特に好ましい理由としては、Sバネは図1(b)に示す、矢印a,b,c、dのいずれに方向にも屈曲可能であり、本実施形態にように、上半身側においては身体の前面に位置し、下半身側においては身体の側面から背面側に位置する様に設置しても、柔軟に形状を変化させて敷設(着用)することが可能であり、身体に過度な負担をかけることなく使用することができる。このようにSバネを、折曲点を設けることなく用いることで、利用者が関節を曲げるときに余計な負荷がかかることがなく、通常の身体の動きでは利用者に付勢部材による負荷があまりかからずに、利用者が前にかがむ際には付勢力を付与して利用者に急激な姿勢の変化による関節等の損傷を防止すると共にかがんだ姿勢から戻る際には付勢力により利用者の負担を軽減することができる。特に本実施形態のように腰の補助具においては、Sバネを用いることで、かがんだ姿勢から戻る際の初動の力を軽減することができ利用者の負担を大幅に軽減できる。また、本実施形態のようなエプロンの形態において、付勢部材550がSバネであることで保持部の湾曲形状にも容易に沿うことができ、付勢部材550の敷設が簡易で、見た目を損なうことがないので意匠的な効果も高い。
また、第1付勢部551,第2付勢部553は、それぞれ身体支持部520及び他所支持部530のほぼ全長に亘って存在する長さをもっている。このような長さを有することで利用者の身体全体に付勢力を伝えて、より的確に補助を行うことができる。
〔形成材料〕
本実施形態の付勢部材550の形成材料は、通常この種のバネ材に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、ステンレス、鉄、銅、チタン、インコネルなどの金属類、プラスチック類等を挙げることができる。
【0014】
<使用態様及び作用効果>
図2~4を参照して、本実施形態の補助具1の使用態様について説明する。なお、図4においては、腕及び保持部内を透視して示す。なお、図3及び4においては、図面作成の便宜上、見がたさを考慮して付勢部材を薄い色の直線で示す。
まず、図2及び3に示すように、利用者Aが通常のエプロンと同様に補助具1を装着する。
利用者Aは通常の作業と同様に伸展、屈曲、側屈、旋回等の種々の動作を行うが、図4に示すように、利用者Aがかがむ(屈曲)することにより付勢部材550も屈曲して付勢部材550の付勢力が第1付勢部551と第2付勢部553とを介して身体支持部520及び他所支持部530に伸展方向(図4の矢印方向)への力が付勢されて結果利用者Aに伸展方向(図4の矢印方向)への力がかかる。人が関節を痛める原因としては、屈んだ状態から伸展する場合に過度の力が関節周囲の筋肉又は関節そのものにかかることにある。本実施形態の補助具501を用いることで、伸展方向へ力を付加する際に、補助具による付勢力が利用者Aの身体にかかるので、関節周りの筋肉が過度の力を入れることがなく、筋肉又は関節への負担が軽減される。その結果、利用者の怪我の危険度を軽減することができる。特に本実施形態の補助具501においては、Sバネからなる付勢部材550の第1付勢部材551が利用者の胸等上半身の前面に保持部540を介して当接し、第2付勢部材553が利用者の大腿部の側面から後側に保持部540を介して当接する。このように構成されているので、身体の前面のみに付勢部材がある場合のように身体に過度の負荷をかけることなく、付勢部材により利用者の身体の折り曲げや伸ばしの負担を軽減することができる。
【0015】
<参考実施形態>
参考例としての補助具1は、図5及び6に示すように、腰の関節の動きを補助するための腰部の補助具である。具体的には、本実施形態の補助具1は、身体の一部分に当接する身体支持部20と、上記の身体の一部分とは異なる他の身体部分側又は身体以外の部位に当接する他所支持部30とを有する本体10を有する。本体10は、本実施形態においてはエプロンとなされている。その左右両側には円筒状の保持部材としての保持部40が形成されている。この保持部40の内部には、付勢部材50が配されている。これにより、付勢部材50が、身体支持部10及び他所支持部30の両方を連通して設けられている。付勢部材50は、上記身体支持部に付勢力を付与する第1付勢部51と上記他所支持部に付勢力を付与する第2付勢部53と該第1及び第2付勢部間に位置する支点部55とからなる巻バネであり、身体支持部20及び他所支持部30は、可撓性材料としての布により形成されている。
以下、詳細に説明する。
【0016】
<本体>
本実施形態の補助具1における本体10は、通常身体に装着して用いられるものとするのが好ましく、本実施形態においては胸当てエプロン形状とされている。
本体10は、上半身に当接する身体支持部20と、下半身側に位置する他所支持部30とが、腰関節(本明細書においては腰椎の付け根の部分近傍を意味する)近傍に位置する中間部13を境に構成されている。中間部13には、エプロンを身体に密着させるための腰紐15が設けられている。また、身体支持部20の上端には首に掛けるための首紐17が設けられている。なお、エプロンの形態は図1に示す実施形態と同様に、いわゆるH型又はたすき型等種々形態とする事が可能である。
そして、保持部40は、図1に示す実施形態と同様に、身体支持部20と他所支持部30とを通して、すなわち、本体10の左右両側縁部全長に亘って設けられており、円筒状の形状である。
〔身体支持部及び他所支持部〕
身体支持部20は使用時に利用者の上半身(腰関節よりも上方で且つ胸に至る部位)に密着する部分であり、他所支持部30は使用時に利用者の下半身(腰関節よりも下方で且つ大腿部に至る部位)に密着する部分である。両者ともに利用者が身体を曲げるときに屈曲する側である前身頃に位置する。本実施形態においては、身体支持部20及び他所支持部30は、全体(すなわち本体10)で台形状となされている。しかし、この形態に何ら制限されるものではなく、図1に示す実施形態と同様に、全体が長方形状でも良いし、胸に当接する部分のみ幅を狭くする事もできる。
【0017】
〔保持部〕
保持部40は、円筒状で且つ直線状に形成されている。本実施形態においては、上述のように本体10が台形状であるので、本体10の左右両側縁に設けられた保持部40は直線状に設けられている。本体10が台形であり、その両側部に保持部40が位置することにより、利用者が深くしゃがみ込む等した際に膝が開く場合があるが、その際に支えとなる大腿部がエプロンから外れず、補助具による補助機能が十分に発揮される。これは、補助具1を利用者が装着した場合に、保持部40の位置が利用者の身体の後身頃側から前身頃側に傾斜するように保持部を設けることが、後述する付勢部材の効果を発揮するために重要となるためである。したがって、保持部40は、本体の形状がどのような形状であれ、使用時に下側から上側が前身頃側に位置するように設けられているのが好ましいが、本実施形態のように、本体10の両側縁部に保持部40が位置するのが利用者の身体に付勢部材の力をスムーズに伝達して、利用者の負担を軽減する観点から好ましい。
保持部の内径などは、付勢部材を収容できるサイズであれば特に制限されないが、付勢部材を落下しないように保持するために、ボタン式の保持部材を設ける事ができる(図示せず)。
〔形成材料〕
本体10の各部の形成材料は、本実施形態においては布であるが、エプロンの材料として用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、綿、麻、化繊等からなる布の他、プラスチックフィルム等を用いる事ができる。
【0018】
<付勢部材>
付勢部材50は、上述のように、第1付勢部51,第2付勢部53と支点部55とからなる巻バネである。支点部55は中間部13に位置するように、付勢部材50は配されている。これにより、第1付勢部51と第2付勢部53とにそれぞれ異なる方向の付勢力を付与して、図6の矢印方向への力を利用者の身体に付与することができる。
〔形状〕
本実施形態の付勢部材50の形状は、角度が設けられておらず(すなわち180度)、直線状であってもよいが、本実施形態においては、図6に示すように、支点部55を頂点(折曲点)として、第1付勢部51と第2付勢部53とに角度がつくように折り曲げられている。この角度は、付勢部材50を形成する棒状の部材を巻回して形成された円形の支点部55を中心とした角度(図1に示すθ)において鈍角であるのが好ましく、170~179度程度とするのが好ましい。このように折り曲げられた形状となっていることにより、利用者が関節を曲げるときに余計な負荷がかかることがなく、通常の身体の動きでは利用者に付勢部材による負荷がかからずに、利用者がかがむ等作業を行う際には付勢力を付与して利用者の補助を行うことができる。特に本実施形態のように腰の補助具及び後述する膝の補助具においては鈍角であるのが好ましい。折り曲げられておらず直線状である場合には腰などの関節部分を折り曲げる動作を行う際に付勢部材を折り曲げるための初動の力を掛ける必要が生じて余計に関節部分に負担を掛ける可能性があるが、予め折り曲げられていることでこの初動の力を軽減することができ余計な負担をかけずに済む。また、本実施形態のようなエプロンの形態において、付勢部材50にあまりに角度がついていると、保持部40内への付勢部材50の敷設が困難となる、エプロンの形状がいびつになる等の問題が生じるが、上記の範囲内の角度であればそのような問題が生じない。すなわち意匠的な効果も損なうことがないという効果が得られる。
また、第1付勢部51,第2付勢部53は、それぞれ身体支持部20及び他所支持部30のほぼ全長に亘って存在する長さをもっている。このような長さを有することで利用者の身体全体に付勢力を伝えて、より的確に補助を行うことができる。
〔形成材料〕
本実施形態の付勢部材50の形成材料は、通常この種のバネ材に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、鉄などの金属類、プラスチック類等を挙げる事ができる。
【0019】
<使用態様及び作用効果>
図7を参照して、本実施形態の補助具1の使用態様について説明する。なお、図7においては、腕及び保持部内を透視して示す。
まず、図7(a)に示すように、利用者Aが通常のエプロンと同様に補助具1を装着する。
利用者Aは通常の作業と同様に伸展、屈曲、側屈、旋回等の種々の動作を行うが、図3(b)に示すように、利用者Aがかがむ(屈曲)することにより付勢部材50も屈曲して付勢部材50の付勢力が第1付勢部51と第2付勢部53とを介して身体支持部20及び他所支持部30に伸展方向への力が付勢されて結果利用者Aに伸展方向(図3の矢印方向)への力がかかる。人が関節を痛める原因としては、屈んだ状態から伸展する場合に過度の力が関節周囲の筋肉又は関節そのものにかかることにある。本実施形態の補助具1を用いることで、伸展方向へ力を付加する際に、補助具による付勢力が利用者Aの身体にかかるので、関節周りの筋肉が過度の力を入れることがなく、筋肉又は関節への負担が軽減される。その結果、利用者の怪我の危険度を軽減することができる。
【0020】
以下、他の実施形態について説明する。以下の説明においては、上述した参考実施形態と異なる部分を中心に説明する。したがって、特に説明しない部分については、上述の実施形態における説明が適宜適用される。
<第2の参考実施形態>
図8に示す形態の補助具101は、図5~7に示す第1の実施形態の補助具と同じエプロンタイプであるが、他所支持部130に下方付勢部材150’が設置されている点で異なる。下方付勢部材150’は、付勢部材150とは逆向きに設けられている。すなわち、付勢部材150は、前身頃側に屈曲されることを想定して、前身頃側に鈍角を形成するように設置されているが、下方付勢部材150’は、図9に示すように、使用時において、その第2付勢部153’の下端が地面又は床面に設置して膝の屈曲と同調して屈曲するように、膝の後ろ側に向けて鈍角を形成するように屈曲されている。なお、下方付勢部材150’は、支点部155’が膝の外側に位置するように設置され、第1付勢部151’が保持部140内において、図示しない保持部材を介して保持されている。また、直線状部153’はどこにも固定されていない例を示したが、これに制限されず、靴又は靴下等に第2付勢部153’を固定する治具を設定して、第2付勢部153’を固定しても良い。
これにより、図9に示すように、腰をかがめるときに同時に行うことが多い膝を曲げる動作により膝関節及びその周囲の筋肉に過度の負荷がかかるのを防止して、膝を曲げた状態から伸ばす動作を軽快に行うことが可能となる。
【0021】
<第3の参考実施形態>
本形態の補助具201は、膝のサポータータイプの補助具である。具体的には、図10に示すように、大腿部に当接する身体支持部としての上ハーフ220と、ふくらはぎに当接する他所支持部としての下ハーフ230と、両者の間で且つ装着時に膝関節に位置する中間部213と、使用時に利用者の足の軸方向に沿って設けられた保持部240とにより、本体210が構成されている。図6においては、上ハーフ220と下ハーフ230とはそれぞれ前側(使用時に利用者の身体の前面側に位置する側)の部分が着脱自在のベルト式の部材からなり、後ろ側(大腿部の裏側及びふくらはぎ側)が全面に当接可能な伸縮性のある布材により形成されている。しかし、この構成に制限されるものではなく、全体を円筒状の布材で構成する等本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々形態とすることが可能である。
そして、保持部240内に付勢部材250が、その支点部255が中間部213に位置するように設けられている。付勢部材250は、図面上は直線的に記載してあるが、上述の実施形態と同様に膝関節が屈曲する方向に向けて鈍角に折り曲げられている。
本実施形態の補助具201は、図11に示すように、膝を折り曲げた際に付勢部材250も折り曲げられ、その付勢力により膝を伸ばすときの利用者の膝関節及びその周囲の筋肉への過度の負担を軽減して、関節及びその周囲の筋肉が損傷するのを効果的に防止できる。
上記付勢部材において、上記支点部を頂点として第1付勢部と第2付勢部との間に鋭角の角度がつくように折り曲げられることもできる。このように鋭角に上記角度を設定する場合には、足首の補助具として適している。また、足首の補助具とするときにおける上記鋭角は、90度よりも小さな角度であればよいが、60~80度とするのが好ましい。
【0022】
<第4の参考実施形態>
図12に示す第4の形態は、図5の補助具の変形例であり、図1に示す形態と異なる点は、第1付勢部51及び第2付勢部53は、それぞれ身体支持部20及び他所支持部30の中間部までの長さ(25cm程度の長さ)とされている点である。この長さでは補助具の全長に亘って十分な付勢力を付与する事ができないが、その点を解消するために本実施形態においては、保持部40内に25~30cmの長さのプラスチック製のパイプからなる付勢補助部材41,43を、保持部40の両端側に設置している。この付勢補助部材41,43の中央側内に第1付勢部51及び第2付勢部53の先端を挿入して設けている。これにより、第1付勢部51及び第2付勢部53による付勢力が付勢補助部材41,43を介して身体支持部及び他所支持部の全長に亘って付与され、上述した図1~3に示す実施形態と同様に十分な付勢力を付与することができる。
また、図13及び図14に示すような参考例、図15図16に示すような参考例も挙げられる。これらはいずれも弾性部材としてSバネを用いた例である。よって、上述の本発明の補助具と同様に形成できる部分については説明を割愛する。
図13に示す形態の補助具501aは、チュニック型のエプロンタイプであり、図14に示すように、付勢部材が前身頃においては上半身部分に、後身頃においては腰部から下方に、それぞれ位置するように、保持部が設けられている。
このように付勢部材が設けられていることにより、利用者に過度の負担をかけることなく、前後両方から付勢力を付与するので利用者に良好な補助を提供できるが、上述の図1に示す例よりは身体の前側に対する負担が大きく、一つの付勢部材の付勢力を十分に活用しきれない。
図15に示す形態の補助具501bは、ベストタイプであり、図16に示すように、付勢部材が前身頃及び後身頃の両方において上半身部分に位置するように、保持部が設けられている。
このように設けられていることにより、手軽に着用して、利用者に適度な付勢力を付与する事ができるが、特に腰部の補助に関しては、上述の図1に示す例のように身体の上半身と下半身とにそれぞれ付勢力を働かせる事ができないため十分な付勢力を付与できず、また、前身頃及び後身頃それぞれに付勢力を働かせるため、身体の負担は図1の例よりは大きくなる。
【0023】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
たとえば、本発明の補助具は、上述のような利用者の身体に装着されるものではなく、機械器具又は家具等の物品に設置して、利用者の身体活動の補助に用いることもできる。具体的には、椅子の肘掛けを補助具とすることで、利用者が椅子に腰掛けた状態から立ち上がる際の補助に用いることもできる。このように、本発明の補助具は利用者の身体に装着される態様のみにて提供されるものではない。また、肘、肩等あらゆる関節の補助具として適用可能である。
また、上述の実施形態では、身体支持部と他所支持部とがいずれも可撓性材料により形成された例をもって説明したが、これに制限されず、可撓性のない、硬い素材(たとえばプラスチック)を用いて形成することもできる。身体支持部と他所支持部とは、一体になっておらず、別体に形成されていても良い。
第1付勢部及び第2付勢部は身体支持部及び他所支持部のほぼ全長に渡って設けられていますが、必ずしも全長に亘って設けられていなくてもよい。


【要約】
【課題】通常使用するものに適用可能であり、利用者に装着時から負荷をかけることなく筋力補助機能を発揮するように構成された補助具を提供すること。
【解決手段】関節の動きを補助するための補助具であって、身体の一部分に当接する身体支持部と、上記の身体の一部分とは異なる他の身体部分又は身体以外の部位に当接する他所支持部と、少なくとも上記身体支持部に保持部材を介して設けられた付勢部材とを具備し、上記付勢部材は、上記身体支持部に付勢力を付与する第1付勢部と上記他所支持部に付勢力を付与する第2付勢部と該第1及び第2付勢部間に位置する支点部とからなる巻バネ又は板バネであり、上記身体支持部及び上記他所支持部の少なくともいずれか一方は、可撓性材料により形成されている補助具。
【選択図】図1

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図2
図3
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図16