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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】サクション基礎
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021032785
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133860
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】東谷 修
(72)【発明者】
【氏名】岡村 武俊
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023838(JP,A)
【文献】特開2005-023730(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143966(WO,A2)
【文献】特開2019-203314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁と、
前記天井壁から下方に延びる側周壁と、
前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において前記天井壁、前記側周壁及び前記地盤によって区画される上部空間を第1空間と第2空間とに仕切る隔壁とを備え、
前記第2空間は、前記側周壁に沿って形成され、
前記第2空間には、前記第2空間に充填材を充填する充填管が接続されると共に、前記第2空間に前記充填材が充填されるときに前記第2空間から水を排出する排水部が設けられ
前記排水部は、前記隔壁に形成され、前記第2空間から前記第1空間へ水を排出する排水孔であるサクション基礎。
【請求項2】
天井壁と、
前記天井壁から下方に延びる側周壁と、
前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において前記天井壁、前記側周壁及び前記地盤によって区画される上部空間を第1空間と第2空間とに仕切る隔壁とを備え、
前記第2空間は、前記側周壁に沿って形成され、
前記第2空間には、前記第2空間に硬化する材料で構成された充填材を充填する充填管が接続されると共に、前記第2空間に前記充填材が充填されるときに前記第2空間から水を排出する排水部が設けられ、
前記隔壁は、前記天井壁と間隔を空けた状態で前記側周壁から前記上部空間の内方に延びる上壁と、前記上壁から下方へ延びる縦壁とを有し
前記縦壁の先端部が前記地盤に貫入されて、
前記第2空間は、前記隔壁、前記側周壁及び前記地盤によって区画されているサクション基礎。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサクション基礎において、
前記第2空間は、前記側周壁の周方向の全周に亘って形成されているサクション基礎。
【請求項4】
請求項3に記載のサクション基礎において、
前記隔壁は、前記第2空間を前記周方向に並ぶ複数の分割空間に仕切る仕切壁を有するサクション基礎。
【請求項5】
請求項4に記載のサクション基礎において、
前記排水部は、複数の前記分割空間のそれぞれに設けられているサクション基礎。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のサクション基礎において、
前記第2空間は、前記側周壁の周方向に間隔を空けて複数形成されているサクション基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、サクション基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中の地盤に設置されるサクション基礎が知られている。例えば、特許文献1には、頂版部とスカート部とを備え、スカート部を水底地盤に貫入させるサクション基礎が開示されている。このサクション基礎が地盤に貫入された状態において、サクション基礎の内部には、地盤と頂版部とスカート部とで区画された領域が形成される。この領域は、充填領域と注水領域とに壁によって仕切られている。充填領域は、スカート部に沿って、サクション基礎の内部の周縁部に形成されている。充填領域には、サクション基礎の地盤への貫入後にグラウト等の充填材が充填される。これにより、硬化後の充填剤が地盤と接触することになり、サクション基礎の安定性が向上する。注水領域には、サクション基礎を撤去する際に注水される。これにより、サクション基礎が無振動・無騒音で撤去され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-203314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような充填領域を備えたサクション基礎においては、充填剤を充填する前の充填領域には水が充満している。充填領域に充填剤を充填するためには、充填領域から水が排出される必要がある。特許文献1に係るサクション基礎においては、充填領域への充填剤の注入圧力によって、充填領域の水が地盤へ滲み出していく。
【0005】
しかしながら、充填領域を区画する地盤は、スカート部が貫入されている。この部分に水が滲み出すと、サクション基礎の支持力が低下し、サクション基礎の安定性が低下する虞がある。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サクション基礎の安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されたサクション基礎は、天井壁と、前記天井壁から下方に延びる側周壁と、前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において前記天井壁、前記側周壁及び前記地盤とによって区画される上部空間を第1空間と第2空間とに仕切る隔壁とを備え、前記第2空間は、前記側周壁に沿って形成され、前記第2空間には、前記第2空間に充填材を充填する充填管が接続されると共に、前記第2空間に前記充填材が充填されるときに前記第2空間から水を排出する排水部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
前記サクション基礎によれば、サクション基礎の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、地盤に設置されたサクション基礎の模式図である。
図2図2は、上部空間を中心とする、サクション基礎の模式的な拡大図である。
図3図3は、サクション基礎の底面図である。
図4図4は、側周壁への隔壁の取付を示す部分拡大図である。
図5図5は、サクション基礎を沈設する前の状態を示す説明図である。
図6図6は、サクション基礎が地盤に貫入された後の状態を示す説明図である。
図7図7は、貫入後のサクション基礎に充填材を充填している状態を示す模式的な拡大図である。
図8図8は、充填材を充填完了後のサクション基礎の模式的な拡大図である。
図9図9は、撤去時のサクション基礎の模式的な拡大図である。
図10図10は、変形例1に係るサクション基礎の底面図である。
図11図11は、変形例2に係るサクション基礎の底面図である。
図12図12は、変形例3に係るサクション基礎の模式的な拡大図である。
図13図13は、変形例4に係るサクション基礎の模式的な拡大図である。
図14図14は、変形例5に係るサクション基礎の模式的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、地盤Gに設置されたサクション基礎100の模式図である。図2は、上部空間Sを中心とする、サクション基礎100の模式的な拡大図である。図3は、サクション基礎100の底面図である。尚、図1,2では、サクション基礎100の一部が、図3のA-A線における断面図で描かれている。また、図2では、充填材5の図示が省略されている。
【0012】
サクション基礎100は、水上又は水中に構造体を設置するための基礎であり、水中の地盤Gに沈設される。図1の例では、サクション基礎100は、風車60を洋上に設置するための基礎である。サクション基礎100は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る隔壁13とを備えている。天井壁11、側周壁12及び隔壁13は、鋼板で形成されている。
【0013】
天井壁11と側周壁12とは、基礎本体10を形成している。基礎本体10は、天井が閉塞され且つ底が開放された容器状に形成されている。天井壁11は、略円盤状に形成されている。側周壁12は、軸心Xの方向に延びる略円筒状に形成され、天井壁11の周縁に接続されている。以下、「周方向」とは、特に断りが無い限り、側周壁12の周方向を意味する。この例では、側周壁12は軸心Xを中心とする略円筒状に形成されているので、「周方向」は、軸心Xを中心とする周方向を意味する。
【0014】
天井壁11には、支柱6が設けられている。支柱6は、天井壁11の中心に配置され、天井壁11から鉛直方向の上方に延びている。支柱6の上端は、基礎本体10が地盤Gに沈設された状態において、水面よりも上方に位置している。支柱6に、風車60が設置されている。
【0015】
基礎本体10は、側周壁12が地盤Gに貫入されることによって、地盤Gに設置、即ち、沈設される。地盤Gに設置されたサクション基礎100においては、側周壁12に摩擦力が作用する。これにより、サクション基礎100は、地盤Gに強固に固定されている。それに加えて、サクション基礎100に外力が作用した場合には、基礎本体10の内部に負圧が発生し、引き抜き抵抗が増加する。これにより、サクション基礎100の安定性が確保される。
【0016】
基礎本体10が地盤Gに設置された状態において、基礎本体10の内部には地盤Gを構成する土粒子が充填されている。ここで、基礎本体10の内部は、土粒子で完全に満たされておらず、基礎本体10の内部には、天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって上部空間Sが区画されている。
【0017】
隔壁13は、側周壁12から上部空間Sの内方へ延びている。さらに、隔壁13の先端部は、下方へ向かって延び、地盤Gに貫入されている。第2空間S2は、隔壁13、側周壁12及び地盤Gによって区画されている。つまり、第2空間S2は、上部空間Sの周端部において、側周壁12に沿って形成される。
【0018】
より詳しくは、隔壁13は、図2,3に示すように、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びる上壁14と、上壁14から下方へ延びる縦壁15とを有している。上壁14は、軸心Xを中心とする半径方向内側へ延びると共に、周方向へ(即ち、側周壁12の内周面に沿って略円環状又は略円弧状に)延びている。上壁14は、天井壁11と略平行となっている。縦壁15は、上壁14のうち軸心Xを中心とする半径方向内側の端縁から下方に延びている。縦壁15は、軸心Xを中心とする略円筒状に形成されている。縦壁15の下端部が地盤Gに貫入される。隔壁13(具体的には、上壁14及び縦壁15)は、周方向の全周に亘って形成されている。
【0019】
隔壁13は、側周壁12にボルト17を介して取り付けられている。図4は、側周壁12への隔壁13の取付を示す部分拡大図である。具体的には、上壁14には、隔壁13を側周壁12に取り付けるためのフランジ16が設けられている。フランジ16は、側周壁12の内周面に沿った形状をしており、例えば、側周壁12の内周面に対応する円筒状に形成されている。フランジ16は、周方向の複数個所において側周壁12にボルト締結される。
【0020】
さらに、側周壁12の内周面のうち第2空間S2を区画する部分、即ち、隔壁13の縦壁15と対向する部分には、離型剤が塗布されている。これにより、サクション基礎100の撤去後に、充填材5を側周壁12の内周面から剥離させやすくなる。
【0021】
このような隔壁13によって区画される第2空間S2は、図1,2に示すように、天井壁11から離れて形成される。また、第2空間S2は、側周壁12に沿って周方向の全周に亘って形成されている。この例では、第2空間S2は、平面視で略円環状に形成される。
【0022】
第2空間S2には、第2空間S2に充填材5を充填する充填管21が接続されると共に、第2空間S2に充填材5が充填されるときに第2空間S2から水を排出する排水部3が設けられている。
【0023】
側周壁12には、図2,3に示すように、第2空間S2と連通する連通孔22が形成されている。充填管21は、連通孔22に接続されている。つまり、充填管21は、連通孔22を介して第2空間S2と連通している。充填管21の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ23が設けられている(図1参照)。バルブ23は、充填管21の開通及び遮断を切り替える。第2空間S2へは、充填管21を介して充填材5が充填される。
【0024】
排水部3は、第2空間S2に接続され、第2空間S2から上部空間Sの外部に水を排出する排水管31を含む。排水管31は、複数設けられている。複数の排水管31は、側周壁12の周方向の互いに異なる位置において第2空間S2に接続されている。この例では、図3に示すように、8本の排水管31が設けられている。
【0025】
隔壁13には、図3に示すように、周方向の互いに異なる位置に排水孔32が貫通形成されている。複数の排水孔32は、上壁14に形成されている。複数の排水孔32は、周方向に等間隔に配置されている。複数の排水孔32は、縦壁15よりも側周壁12の近くに配置され、より詳しくは側周壁12に隣接する位置に配置されている。各排水孔32には、排水管31が接続されている。排水管31は、排水孔32を介して第2空間S2と連通している。排水管31は、側周壁12を貫通して、側周壁12の外部へ延びている。排水管31の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ33が設けられている(図1参照)。バルブ33は、排水管31の開通及び遮断を切り替える。第2空間S2への充填材5の充填時に、第2空間S2の水が排水管31を介して排出される。
【0026】
基礎本体10には、給排水管41が設けられている。この例では、給排水管41は、2本設けられている。2本の給排水管41は、天井壁11の異なる位置において第1空間S1に接続されている。天井壁11には、図2,3に示すように、2つの貫通孔42が貫通形成されている。各貫通孔42には、給排水管41が接続されている。すなわち、給排水管41は、貫通孔42を介して第1空間S1に連通している。給排水管41の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ43が設けられている(図1参照)。バルブ43は、給排水管41の開通及び遮断を切り替える。
【0027】
給排水管41には、図示省略の排水ポンプ及び給水ポンプが切替可能に接続される。サクション基礎100を沈設する際には、排水ポンプが給排水管41に接続される。排水ポンプの作動により、基礎本体10の内部の水が給排水管41を介して基礎本体10の外部に排出される。これにより、基礎本体10の地盤Gへの貫入が促進される。サクション基礎100を撤去する際には、給水ポンプが給排水管41に接続される。給水ポンプの作動により、基礎本体10の内部へ給排水管41を介して水が供給される。これにより、基礎本体10の地盤Gからの浮上が促進される。
【0028】
風車60は、サクション基礎100に設置される構造体の一例である。風車60は、タワー61と、タワー61に設けられたロータ62とを有している。タワー61は、基礎本体10の支柱6に設置されている。ロータ62は、タワー61の先端部に回転自在に設けられている。
【0029】
続いて、サクション基礎100の設置方法について説明する。図5は、サクション基礎100を沈設する前の状態を示す説明図である。図6は、サクション基礎100が地盤Gに貫入された後の状態を示す説明図である。図7は、貫入後のサクション基礎100に充填材5を充填している状態を示す模式的な拡大図である。図8は、充填材5を充填完了後のサクション基礎100の模式的な拡大図である。
【0030】
まず、図5に示すように、風車60が設置されていない状態の基礎本体10が設置現場まで曳航される。その後、基礎本体10の地盤Gへの沈設が開始される。詳しくは、基礎本体10は、自重又はバラスト荷重によって海底に沈んでいく。側周壁12の下端部は、基礎本体10の自重又はバラスト荷重によって地盤Gに或る程度貫入する。このとき、バルブ23及びバルブ33は、閉じている。給排水管41には、排水ポンプが接続される。
【0031】
作業者が排水ポンプを作動させることによって、基礎本体10の内側の水が排出される。これにより、基礎本体10にサクション荷重が作用し、側周壁12は、地盤Gにさらに貫入していく。図6に示すように、少なくとも隔壁13が地盤Gに貫入するまで基礎本体10が地盤Gに貫入されると、排水ポンプによる排水が停止される。
【0032】
基礎本体10の貫入が完了した状態では、基礎本体10の下部は地盤Gを構成する土粒子で満たされる。基礎本体10の内部の地盤Gの上方には、天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画された上部空間Sが形成されている。上部空間Sは、水で満たされている。上部空間Sは、隔壁13によって第1空間S1と第2空間S2とに仕切られている。第2空間S2は、側周壁12の内周面に沿って、上部空間Sの周端部に形成されている。
【0033】
この状態から、第2空間S2に充填材5が充填される。まず、作業者によってバルブ23及びバルブ33が開かれる。それから、図7に示すように、充填管21を介して充填材5が第2空間S2へ充填されていく。連通孔22から第2空間S2へ流入した充填材5は、第2空間S2を周方向へ流れ、第2空間S2内に拡がっていく。第2空間S2の水は、排水管31を介して第2空間S2の外部、より詳しくは、上部空間Sの外部へ排出される。充填材5の比重は第2空間S2の水(この例では、海水)よりも大きいので、第2空間S2では、下部に充填材5が沈殿し、上部に水が滞留する。排水管31が接続される排水孔32は、上壁14に形成されている。そのため、充填材5が排水孔32を塞いでしまうことが防止され、第2空間S2の水は排水孔32から円滑に排出されていく。こうして、第2空間S2においては、水と充填材5とが円滑に置き換わっていく。
【0034】
第2空間S2が充填材5で満たされた後も充填材5の充填が継続されると、図8に示すように、余剰の充填材5は排水管31を介して第2空間S2から排出される。そのため、作業者は、排水管31を介して充填材5が漏れ出てくることをもって、第2空間S2が充填材5で満たされたことを知ることができる。
【0035】
第2空間S2への充填材5の充填が完了すると、充填管21を介した充填材5の充填を停止する。その後、バルブ23及びバルブ33が閉じられる。
【0036】
充填材5が硬化すると、基礎本体10の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。これにより、サクション基礎100の安定性が向上する。
【0037】
尚、第2空間S2への充填材5の充填を停止した後に、第1空間S1の水を排水ポンプによって給排水管41を介して再び排水してもよい。これにより、基礎本体10が地盤Gへさらに押し付けられ、第2空間S2に残留する水が排水管31を介して排出され得る。その結果、サクション基礎10の安定性がさらに向上する。
【0038】
次に、基礎本体10に風車60が設置される。詳しくは、支柱6に風車60が設置される。これにより、サクション基礎100は、図1に示すように設置され、サクション基礎100の設置が完了する。
【0039】
サクション基礎100には、供用期間が設定されている。供用期間の経過後には、サクション基礎100は撤去される。図9は、撤去時のサクション基礎100の模式的な拡大図である。
【0040】
サクション基礎100が撤去される際には、第1空間S1に注水が行われる。詳しくは、まず、風車60が基礎本体10から取り外される。その後、給排水管41に給水ポンプが接続される。作業者が給水ポンプを作動させることによって、図9に示すように、給排水管41を介して上部空間S、具体的には、第1空間S1に給水が行われる。給水の圧力によって基礎本体10に地盤Gから浮上する方向への力が作用する。これにより、サクション基礎100が無振動・無騒音で撤去され得る。
【0041】
撤去後の基礎本体10においては、側周壁12及び隔壁13によって区画される凹部に充填材5が付着した状態となっている。充填管21及び排水管31等を除去した後に、隔壁13を側周壁12から除去することによって、充填材5を基礎本体10から容易に除去することができる。
【0042】
詳しくは、この例では、隔壁13は、図4に示すように、側周壁12にボルト締結されている。ボルト17を取り外すことによって、隔壁13を側周壁12から取り外すことができる。それに加えて、側周壁12のうち充填材5が接触している部分には、離型剤が塗布されている。そのため、充填材5は、隔壁13と共に側周壁12から容易に分離され得る。あるいは、充填材5が側周壁12に付着して残留する場合であっても、充填材5に衝撃等を加えることによって、充填材5を側周壁12から容易に剥離させることができる。これにより、基礎本体10から隔壁13及び充填材5が除去された状態となる。この基礎本体10に再び隔壁13を取り付けることによって、基礎本体10を再利用することができる。
【0043】
尚、基礎本体10からの隔壁13及び充填材5の取り外しは、地盤Gからの基礎本体10の浮上時に行ってもよい。例えば、充填材5と地盤Gとが固着している場合には、基礎本体10を地盤Gから浮上させる前に、基礎本体10から隔壁13を取り外してもよい。尚、ボルト17は、側周壁12の外方から着脱可能に構成されている。ボルト17を側周壁12の外方から取り外すことによって、基礎本体10と隔壁13及び充填材5とが分離可能となる。この状態で、第1空間S1へ給排水管41を介して給水が行われることによって、基礎本体10が地盤Gから浮上していく一方、隔壁13及び充填材5は地盤G上に残留する。
【0044】
このようなサクション基礎100によれば、第2空間S2には充填材5を充填するための充填管21と充填材5の充填時に第2空間S2から排水するための排水管31とが接続されているので、第2空間S2へ充填材5を充填しつつ第2空間S2から排水することができる。その結果、第2空間S2への充填材5の円滑な充填を実現することができる。それに加えて、第2空間S2の水を地盤G中ではなく、第2空間S2の外部に排出することによって、地盤Gのうち側周壁12を支持する部分に水が滲み出すことを防止することができる。これにより、サクション基礎100の支持力が低下を防止することができ、結果として、サクション基礎100の安定性の低下を防止することができる。
【0045】
さらに、排水管31は、第2空間S2の水を、上部空間Sの外部、即ち、基礎本体10の外部に排出することによって、サクション基礎100の支持力の低下をより一層防止することができる。詳しくは、第1空間S1は、第2空間S2の外部の空間であるので、第2空間S2の水を第1空間S1に排出することもできる。その場合、第1空間S1の水を第1空間S1の外部、即ち、基礎本体10の外部へ排出しない限り、第1空間S1の水は、地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分へ滲み出すことになる。地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分は、側周壁12が貫入している部分から離れているため、側周壁12の支持力に与える影響は大きいわけではない。しかしながら、この部分に水が滲み出すと、側周壁12の支持力に多少なりとも影響を与え得る。第2空間S2の水を第1空間S1ではなく、基礎本体10の外部に排出することによって、地盤Gへの水の滲み出しを防止することができ、側周壁12の支持力に与える影響をできる限り低減することができる。
【0046】
また、第2空間S2は、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びる隔壁13によって区画されているので、サクション基礎100を撤去した後に、基礎本体10から充填材5を容易に除去することができ、基礎本体10の再利用が容易になる。例えば、天井壁11の周端部において壁を垂下させて、天井壁11及び側周壁12によって区画されるコーナー部に第2空間S2を区画することも考えられる。ただし、その場合には、充填材5が天井壁11と側周壁12との両方に密着することになる。一方、隔壁13を天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びるように形成することによって、第2空間S2へ充填された充填材5は、側周壁12及び隔壁13に密着し、天井壁11には付着しない。充填材5が側周壁12に密着して天井壁11に密着していない場合に比べると、充填材5が天井壁11及び側周壁12に密着している場合には基礎本体10への充填材5の取付強度がより強い。そのため、前述のような隔壁13を形成し、充填材5が天井壁11に付着しないようにすることによって、充填材5を隔壁13と共に、基礎本体10から容易に除去することができる。
【0047】
以上のように、サクション基礎100は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る隔壁13とを備え、第2空間S2は、側周壁12に沿って形成され、第2空間S2には、第2空間S2に充填材5を充填する充填管21が接続されると共に、第2空間S2に充填材5が充填されるときに第2空間S2から水を排出する排水部3が設けられている。
【0048】
この構成によれば、上部空間Sにおいて側周壁12に沿って第2空間S2が形成され、第2空間S2に充填材5が充填されるので、サクション基礎100の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。これにより、サクション基礎100の安定性が向上する。ここで、第2空間S2には、充填管21を介して第2空間S2へ充填材5を充填する際に第2空間S2の水を排出するための排水部3が設けられている。第2空間S2へ充填材5を充填しつつ、第2空間S2の水を排水部3を介して排出することができるため、第2空間S2へ充填材5を円滑に充填することができる。それに加えて、地盤Gのうち第2空間S2を区画する部分に、第2空間S2の水が滲み出すことが防止される。これにより、地盤Gによる側周壁12の支持力の低下が防止される。その結果、サクション基礎100の安定性を向上させることができる。
【0049】
また、サクション基礎100は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る隔壁13とを備え、第2空間S2には、充填材5が充填され、隔壁13は、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方に延びると共に、先端部が地盤Gに貫入されて、第2空間S2は、側周壁12に沿って形成され、隔壁13、側周壁12及び地盤Gによって区画されている。すなわち、サクション基礎は、天井壁と、前記天井壁から下方に延びる側周壁と、前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において前記天井壁、前記側周壁及び前記地盤によって区画される上部空間を第1空間と第2空間とに仕切る隔壁とを備え、前記第2空間には、充填材が充填され、前記隔壁は、前記天井壁と間隔を空けた状態で前記側周壁から前記上部空間の内方に延びると共に、先端部が前記地盤に貫入されて、前記第2空間は、前記側周壁に沿って形成され、前記隔壁、前記側周壁及び前記地盤によって区画されている。
【0050】
この構成によれば、上部空間Sにおいて側周壁12に沿って第2空間S2が形成され、第2空間S2に充填材5が充填されるので、サクション基礎100の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。これにより、サクション基礎100の安定性が向上する。隔壁13は、天井壁11から間隔を空けた状態で設けられる。そのため、サクション基礎100の撤去後に充填材5を隔壁13と共に、側周壁12から容易に除去することができる。その結果、サクション基礎100の再利用が容易になる。
【0051】
また、排水部3は、第2空間S2に接続され、第2空間S2から上部空間Sの外部に水を排出する排水管31である。
【0052】
この構成によれば、第2空間S2の水は、上部空間Sの外部に排出される。第2空間S2から水を排出する構成としては、第2空間S2の水を上部空間S内、例えば、第1空間S1に排出する構成も考え得る。その場合、第2空間S2から排出される水は、上部空間Sのうち第2空間S2以外の部分に排出されることになる。第2空間S2は、上部空間Sのうち側周壁12に沿って形成されているので、第2空間S2から地盤Gに水が滲み出すと、側周壁12の支持力に大きな影響を与え得る。それに比べると、地盤Gのうち第2空間S2を除く上部空間Sを区画する部分に水が滲み出す場合には、側周壁12の支持力に与える影響は小さい。しかしながら、地盤Gに滲み出す水は、側周壁12の支持力に多少なりとも影響を与え得る。それに対し、第2空間S2の水を排水管31によって上部空間Sの外部に排出することによって、地盤Gへの水の滲み出しを低減し、側周壁12の支持力に与える影響をできる限り低減することができる。
【0053】
さらに、隔壁13は、側周壁12から上部空間Sの内方に延びると共に、先端部が地盤Gに貫入されて、第2空間S2は、側周壁12、隔壁13及び地盤Gによって区画されている。
【0054】
この構成によれば、第2空間S2は、側周壁12、隔壁13及び地盤Gによって区画される。第2空間S2の水が第2空間S2から排出されることによって、側周壁12のうち第2空間S2を区画する部分を支持する地盤Gへの水の滲み出しを低減することができる。
【0055】
隔壁13は、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びる上壁14と、上壁14から下方へ延びる縦壁15とを有している。
【0056】
この構成によれば、第2空間S2は、天井壁11から間隔を空けた状態で形成される。そのため、サクション基礎100の撤去後に充填材5を隔壁13と共に、側周壁12から容易に除去することができる。その結果、サクション基礎100の再利用が容易になる。
【0057】
第2空間S2は、側周壁12の周方向の全周に亘って形成されている。
【0058】
この構成によれば、充填材5が側周壁12の周方向の全周に亘って設けられる。そのため、サクション基礎100の荷重が周方向の全周に分散されて地盤Gへ作用する。その結果、サクション基礎100の安定性が向上する。また、第2空間S2が側周壁12の周方向の全周に亘って形成されているため、側周壁12のうち地盤Gから露出し且つ地盤Gに接近している部分は、第2空間S2を区画しており、第1空間S1と接していない。そのため、第2空間S2の水が第1空間S1に排出される構成であっても、第1空間S1から地盤Gに滲み出した水が、地盤Gのうち側周壁12を支持する部分に与える影響は小さい。
【0059】
〈変形例1〉
変形例1に係るサクション基礎200について説明する。図10は、変形例1に係るサクション基礎200の底面図である。サクション基礎200は、第2空間S2が周方向において複数の空間に仕切られている点で、サクション基礎100と異なる。それ以外のサクション基礎200の構成は、サクション基礎100と同様である。サクション基礎200の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0060】
サクション基礎200は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る隔壁213とを備えている。
【0061】
隔壁213は、側周壁12から上部空間Sの内方へ延びている。さらに、隔壁213の先端部は、下方へ向かって延び、地盤Gに貫入されている。詳しくは、隔壁213は、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びる上壁14と、上壁14から下方へ延びる縦壁15と、第2空間S2を周方向に並ぶ複数の分割空間s21に仕切る仕切壁218とを有している。隔壁213は、3つの仕切壁218を有している。
【0062】
上壁14は、軸心Xを中心とする半径方向内側へ延びると共に、周方向へ略円環状に延びている。上壁14は、天井壁11と略平行となっている。縦壁15は、上壁14のうち軸心Xを中心とする半径方向内側の端縁から下方に延びている。縦壁15は、軸心Xを中心とする略円筒状に形成されている。側周壁12、上壁14及び縦壁15によって下方に開口する凹部が形成される。この凹部は周方向に略円環状に形成されている。
【0063】
側周壁12、上壁14及び縦壁15によって区画される凹部において、仕切壁218は、周方向に等間隔に配置されている。隔壁213は、上壁14から下方へ延び且つ側周壁12から縦壁15へ延びる。側周壁12、上壁14及び縦壁15によって区画される凹部は、3つの仕切壁218によって3つの等容積の空間に分割される。側周壁12、縦壁15及び仕切壁218が地盤Gに貫入されることによって、3つの分割空間s21を含む第2空間S2が形成される。つまり、サクション基礎200においては、3つの略円弧状で且つ等容積の分割空間s21が形成される。各分割空間s21は、側周壁12、上壁14、縦壁15、仕切壁218及び地盤Gによって区画される。3つの分割空間s21は、仕切壁218を介して隣接している。
【0064】
各分割空間s21には、1つの充填管21と3つの排水管31とが接続されている。詳しくは、分割空間s21における周方向の両端部に2つの排水管31が接続され、分割空間s21における周方向の中央に1つの排水管31が接続されている。分割空間s21における2つの排水管31の間に充填管21が接続されている。
【0065】
各分割空間s21には、充填管21を介して充填材5が充填される。分割空間s21の水は、排水管31を介して分割空間s21の外部、より詳しくは、上部空間Sの外部へ排出される。このような水と充填材5との置き換わりが各分割空間s21で行われる。
【0066】
このように、第2空間S2は、側周壁12に沿った周方向において複数に分割されていてもよい。
【0067】
〈変形例2〉
変形例2に係るサクション基礎300について説明する。図11は、変形例2に係るサクション基礎300の底面図である。サクション基礎300は、周方向の複数個所に第2空間S2が形成されている点で、サクション基礎100と異なる。それ以外のサクション基礎300の構成は、サクション基礎100と同様である。サクション基礎300の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0068】
サクション基礎300は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る複数の隔壁313とを備えている。サクション基礎300は、3つの隔壁313を備えている。3つの隔壁313は、周方向に等間隔で配置されている。
【0069】
隔壁313は、側周壁12から上部空間Sの内方へ延びている。さらに、隔壁313の先端部は、下方へ向かって延び、地盤Gに貫入されている。詳しくは、隔壁313は、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びる上壁314と、側周壁12と対向する位置において上壁314から下方へ延びる第1縦壁315と、上壁314から下方へ延び且つ側周壁12から第1縦壁315へ延びる2つの第2縦壁319とを有している。
【0070】
上壁314は、軸心Xを中心とする半径方向内側へ延びると共に、周方向へ略円弧状に延びている。上壁314は、天井壁11と略平行となっている。第1縦壁315は、上壁314のうち軸心Xを中心とする半径方向内側の端縁から下方に延びている。第2縦壁319は、上壁314のうち周方向の両端縁のそれぞれから下方に延びている。
【0071】
側周壁12及び各隔壁313によって下方に開口する凹部が形成される。この凹部は、平面視で周方向に延びる略円弧状に形成されている。この凹部は、側周壁12、第1縦壁315及び第2縦壁319が地盤Gに貫入されることによって第2空間S2となる。つまり、サクション基礎300においては、3つの略円弧状で且つ等容積の第2空間S2が形成される。3つの第2空間S2は、周方向に等間隔を空けて配置されている。
【0072】
各第2空間S2には、1つの充填管21と2つの排水管31とが接続されている。詳しくは、第2空間S2における周方向の両端部に2つの排水管31が接続されている。第2空間S2における周方向の中央に充填管21が接続されている。
【0073】
各第2空間S2には、充填管21を介して充填材5が充填される。第2空間S2の水は、排水管31を介して第2空間S2の外部、より詳しくは、上部空間Sの外部へ排出される。このような水と充填材5との置き換わりが各第2空間S2で行われる。
【0074】
このように、第2空間S2は、側周壁12に沿って全周に設けられていなくてもよい。
【0075】
〈変形例3〉
変形例3に係るサクション基礎400について説明する。図12は、変形例3に係るサクション基礎400の模式的な拡大図である。サクション基礎400は、排水部403の構成がサクション基礎100と異なる。それ以外のサクション基礎400の構成は、サクション基礎100と同様である。サクション基礎400の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0076】
サクション基礎400は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る複数の隔壁13とを備えている。
【0077】
サクション基礎400の第2空間S2には、第2空間S2に充填材5が充填されるときに第2空間S2から水を排出する排水部403が設けられている。排水部403は、隔壁13に形成され、第2空間S2から第1空間S1へ水を排出する排水孔32である。つまり、排水部403は、排水部3のような排水管31を含んでいない。
【0078】
隔壁13には、周方向の互いに異なる位置に排水孔32が貫通形成されている。複数の排水孔32は、上壁14に形成されている。複数の排水孔32は、周方向に等間隔に配置されている。複数の排水孔32は、縦壁15よりも側周壁12の近くに配置され、より詳しくは側周壁12に隣接する位置に配置されている。サクション基礎400の排水孔32の配置は、サクション基礎100の排水孔32の配置と同様である(図3参照)。
【0079】
第2空間S2は、排水孔32を介して第1空間S1と連通している。すなわち、排水部403は、第2空間S2の水を上部空間Sの外部ではなく、上部空間Sの内部である第1空間S1に排出する。
【0080】
第2空間S2には、充填管21を介して充填材5が充填される。第2空間S2の水は、排水孔32を介して第2空間S2の外部、より詳しくは、第1空間S1へ排出される。
【0081】
このとき、給排水管41のバルブ43は開いている。第2空間S2から第1空間S1へ排出された水は、給排水管41を介して上部空間Sの外部へ排出され得る。これにより、地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分への水の滲み出しを低減することができる。このとき、給排水管41に接続された排水ポンプを作動させてもよい。
【0082】
第2空間S2への充填材5の充填量が第2空間S2の容積を少し超えたところで、第2空間S2への充填材5の充填が停止される。第2空間S2の大体の容積は既知である。その結果、図12に示すように、第2空間S2から排水孔32を介して第1空間S1へ充填材5が少し漏れ出たところで、充填材5の充填が停止される。
【0083】
尚、第2空間S2から第1空間S1へ排出された水は、給排水管41を介して排出されずに、地盤Gに滲み出してもよい。第2空間S2から第1空間S1に排出された水は、地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分へ滲み出し得る。第2空間S2は、側周壁12に沿って周方向の全周に亘って形成されているので、地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分は、側周壁12と接していない。そのため、地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分に水が滲み出したとしても、側周壁12の支持力に与える影響は小さい。その結果、地盤Gへの水の滲み出しに起因する、側周壁12の支持力の低下を抑制することができる。
【0084】
尚、第2空間S2が側周壁12に沿って周方向の全周に亘って形成されていなくても、第2空間S2の水を第1空間S1に排出することによって側周壁12の支持力の低下を抑制することができる。詳しくは、第1空間S1に排出された水は、地盤Gのうち第1空間S1を区画し且つ側周壁12と接する部分へ滲み出す可能性がある。しかし、第1空間S1に排出された水は、第1空間S1内に分散し、地盤Gのうち第1空間S1を区画する部分に広く滲み出すので、地盤Gのうち第1空間S1を区画し且つ側周壁12と接する部分への水の滲み出しは少ない。また、地盤Gのうち第2空間S2を区画する部分への滲み出しが防止されるので、少なくともその分だけでも、地盤Gのうち側周壁12が貫入された部分への水の滲み出しが抑制される。それらの結果、地盤Gへの水の滲み出しに起因する、側周壁12の支持力の低下を抑制することができる。
【0085】
〈変形例4〉
変形例4に係るサクション基礎500について説明する。図13は、変形例4に係るサクション基礎500の模式的な拡大図である。サクション基礎500は、隔壁13に補強壁519が設けられている点でサクション基礎100と異なる。それ以外のサクション基礎500の構成は、サクション基礎100と同様である。サクション基礎500の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0086】
サクション基礎500は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る複数の隔壁13と、天井壁11と隔壁13とを連結する補強壁519とを備えている。サクション基礎500には、複数の補強壁519が設けられている。
【0087】
隔壁13は、側周壁12から上部空間Sの内方へ延びている。さらに、隔壁13の先端部は、下方へ向かって延び、地盤Gに貫入されている。詳しくは、隔壁13は、天井壁11と間隔を空けた状態で側周壁12から上部空間Sの内方へ延びる上壁14と、上壁14から下方へ延びる縦壁15とを有している。
【0088】
複数の補強壁519は、周方向に等間隔を空けて配置されている。各補強壁519は、隔壁13から天井壁11へ延びている。各補強壁519は、上壁14のうち軸心Xを中心とする半径方向内側の端縁から上方へ天井壁11まで延びている。隔壁13は、補強壁519を介して部分的に天井壁11と連結されている。補強壁519によって、隔壁13の強度が向上する。
【0089】
補強壁519は、天井壁11にボルト締結によって取り付けられている。補強壁519は、上壁14に溶接又はボルト締結によって取り付けられている。尚、補強壁519は、上壁14ではなく、縦壁15に取り付けられていてもよい。
【0090】
〈変形例5〉
変形例5に係るサクション基礎600について説明する。図14は、変形例5に係るサクション基礎600の模式的な拡大図である。サクション基礎600は、隔壁613が天井壁11から延びている点、及び、排水部603の構成がサクション基礎100と異なる。それ以外のサクション基礎600の構成は、サクション基礎100と同様である。サクション基礎600の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0091】
サクション基礎600は、天井壁11と、天井壁11から下方に延びる側周壁12と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において天井壁11、側周壁12及び地盤Gによって区画される上部空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに仕切る複数の隔壁613とを備えている。
【0092】
隔壁613は、天井壁11から上部空間Sの内方へ、具体的には、下方へ延びている。隔壁613は、周方向の全周に亘って形成されている。隔壁613は、軸心Xを中心とする略円筒状に形成されている。隔壁613の下端部が地盤Gに貫入される。
【0093】
上部空間Sは、軸心Xを中心とする略円柱状の第1空間S1と軸心Xを中心とする略円筒状の第2空間S2とに隔壁613によって仕切られる。第1空間S1は、天井壁11、隔壁613及び地盤Gによって区画される。第1空間S1は、側周壁12と接していない。第2空間S2は、天井壁11、側周壁12、隔壁613及び地盤Gによって区画される。第2空間S2は、天井壁11と接している。
【0094】
排水部603は、第2空間S2に接続され、第2空間S2から上部空間Sの外部に水を排出する排水管631を含む。排水管631は、複数設けられている。複数の排水管631は、側周壁12の周方向の互いに異なる位置において第2空間S2に接続されている。側周壁12には、第2空間S2と第2空間S2の外部とを連通させる排水孔32が貫通形成される。排水管631は、排水孔32に接続されている。
【0095】
尚、第2空間S2が天井壁11と接しているので、連通孔22及び排水孔32の少なくとも一方は、天井壁11に貫通形成されていてもよい。
【0096】
第2空間S2には、充填管21を介して充填材5が充填される。第2空間S2の水は、排水管631を介して第2空間S2の外部、より詳しくは、上部空間Sの外部へ排出される。
【0097】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0098】
基礎本体10の形状は、略円筒状に限られるものではない。基礎本体10は、天井壁及び側周壁を有し且つ底が開放された形状であれば、任意の形状に形成することができる。例えば、基礎本体10は、断面が略四角形や略五角形等の角筒状に形成されていてもよい。また、基礎本体10は、天井壁が湾曲したドーム状に形成されていてもよい。
【0099】
また、上部空間Sは、複数の分割空間に仕切られていてもよい。例えば、基礎本体10は、軸心Xから側周壁12まで半径方向へ延びる複数の仕切壁を有し、上部空間Sは、複数の仕切壁によって平面視略扇形の複数の分割空間に仕切られていてもよい。それを前提に、上部空間Sの各分割空間が隔壁13によって第1空間S1と第2空間S2とに仕切られていてもよい。
【0100】
基礎本体10には、支柱6が設けられていなくてもよい。
【0101】
さらに、サクション基礎100に設置される構造体は、風車60に限られるものではない。構造体は、風況観測塔又はケーソン等であってもよい。
【0102】
隔壁13,13,313(以下、「隔壁13等」という)の構成は、前述の構成に限定されない。例えば、上壁14は、天井壁11と平行ではなく、天井壁11に対して傾斜していてもよい。また、上壁14と縦壁15とは明確に分離できる構成に限定されず、上壁14及び縦壁15は、それぞれ湾曲し、互いが連続的に接続されていてもよい。例えば、隔壁13は、側周壁12から軸心Xの方へ延びた後、下方へ向かって湾曲するように延びていてもよい。
【0103】
隔壁13等は、天井壁11と間隔を空けて設けられていなくてもよい。例えば、隔壁13等は、天井壁11から下方へ延びていてもよい。ただし、基礎本体10から隔壁13等を容易に除去する観点からは、隔壁13等は、天井壁11と間隔を空けて設けられていることが好ましい。
【0104】
充填管21及び排水管31等の個数は、前述の構成の個数に限定されない。例えば、サクション基礎100において、第2空間S2には、複数の充填管21が接続されていてもよい。サクション基礎200において、仕切壁218には、隣り合う第2空間S2を互いに連通させる連通孔が形成され、1つだけの充填管21が何れか1つの第2空間S2に接続されていてもよい。充填管21から1つの第2空間S2へ充填された充填材5は、連通孔を介して別の第2空間S2へ流入する。
【0105】
基礎本体10への隔壁13等の取付は、ボルト締結に限定されない。基礎本体10への隔壁13等の取付は、例えば、溶接であってもよい。ただし、基礎本体10からの隔壁13等の除去の観点からは、ボルト締結による取付が好ましい。
【0106】
排水孔32は、第2空間S2と連通する限り、上壁14以外の部分に形成されていてもよい。例えば、排水孔32は、縦壁15又は側周壁12に形成されていてもよい。
【0107】
また、サクション基礎100の撤去後に、隔壁13等及び充填材5を基礎本体10から容易に除去する観点からは、第2空間S2に設けられた排水部(排水管31及び排水孔32等)は必須ではない。
【0108】
さらに、サクション基礎100の構成及び変形例1~5の構成は、適宜組み合わせて採用することができる。
【符号の説明】
【0109】
100,200,300,400,500 サクション基礎
10 基礎本体
11 天井壁
12 側周壁
13,213,313 隔壁
14,314 上壁
15 縦壁
218 仕切壁
315 第1縦壁
319 第2縦壁
21 充填管
3,403,603 排水部
31,631 排水管
32 排水孔
5 充填材
S 上部空間
S1 第1空間
S2 第2空間
s21 分割空間
G 地盤
図1
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