(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】地震用途のための変圧器コイルブロック設計
(51)【国際特許分類】
H01F 27/06 20060101AFI20241029BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20241029BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01F27/06
H01F27/30 160
H01F30/10 H
H01F30/10 T
(21)【出願番号】P 2022525471
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2020080601
(87)【国際公開番号】W WO2021084112
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-27
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ-メルカート,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】スン,ボリスーチンジュン
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121758(JP,A)
【文献】特開2018-078194(JP,A)
【文献】特開平06-020852(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017381(WO,A1)
【文献】実開昭62-199919(JP,U)
【文献】特開昭60-065505(JP,A)
【文献】特開2018-110176(JP,A)
【文献】特開2017-135300(JP,A)
【文献】実開昭54-084521(JP,U)
【文献】実開昭59-006822(JP,U)
【文献】特開平05-335157(JP,A)
【文献】実開昭58-072825(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/06
H01F 27/30
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気変圧器(100)内の少なくとも1つのコイル巻線(102,103)を支持するためのコイルブロック(200)であって、前記少なくとも1つのコイル巻線(102,103)が、重力方向に沿って配置された長手方向軸(L)を中心に同心円状に配置され、前記コイルブロック(200)が、
前記少なくとも1つのコイル巻線(102,103)に接触するための少なくとも1つの支持面(211,212)と第1のクランプ面(213)とを有する第1の要素(210)と、
締結手段(222)と前記第1のクランプ面(213)に接触するための第2のクランプ面(223)とを有する第2の要素(220)と
を備え、
前記締結手段(222)が、前記少なくとも1つのコイル巻線(102,103)の前記長手方向軸(L)に平行な軸を中心とする前記コイルブロック(200)の回転を制限し、
前記締結手段(222)が、第1の締結具と第2の締結具とを備え、
前記第2の要素(220)には、クランプバー(221)が設けられ、
前記第1のクランプ面(213)が、前記第2の要素(220)
の前記クランプバー(221)を受け入れるように構成される凹部であり、前記凹部が、前記第1の要素(210)に対する前記第2の要素(220)の回転が制限されるように、前記長手方向軸(L)に垂直な径方向に延在
し、前記凹部は、前記クランプバー(221)と嵌合し、前記第1の要素(210)と前記第2の要素(220)との間の摺動運動を可能にする、コイルブロック(200)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持面(211,212)が、前記少なくとも1つのコイル巻線(102,103)を前記長手方向軸(L)に垂直な径方向に制限するように構成されるコイル凹部を備える、請求項1に記載のコイルブロック(200)。
【請求項3】
前記コイル凹部が、前記少なくとも1つのコイル巻線(102、103)の端部の輪郭に対応する輪郭を有する、請求項2に記載のコイルブロック(200)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの支持面(211,212)が、1次コイル巻線(102)に接触するための1次支持面(211)と、2次コイル巻線(103)に接触するための2次支持面(212)とを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のコイルブロック(200)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持面(211,212)と前記少なくとも1つのコイル巻線(102,103)との間に配置される少なくとも1つの支持パッド(230)をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のコイルブロック(200)。
【請求項6】
前記締結手段(222)が、前記少なくとも1つのコイル巻線(102,103)にクランプ力を加えるように構成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のコイルブロック(200)。
【請求項7】
前記第1の要素(210)が、高分子の電気絶縁性材料を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のコイルブロック(200)。
【請求項8】
前記第1の要素(210)が、電界の勾配を低減するように構成される複数の外周輪郭(214)をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載のコイルブロック(200)。
【請求項9】
少なくとも1つの1次コイル巻線(102)と、
少なくとも1つの2次コイル巻線(103)と、
請求項1から8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコイルブロック(200)と
を備える電気変圧器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示の実施形態は、一般に、特に地震条件下で、変圧器内のコイル巻線を支持するための、特に、振動負荷を受けるコイル巻線の支持を提供するためのコイルブロックに関する。本開示のさらなる実施形態は、一般に、本開示による少なくとも1つのコイルブロックを有する電気変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
高圧変圧器は、典型的には、コイルブロックによって支持される多数のコイル巻線を含む。高圧変圧器の典型的なコイルブロックは、コイルブロックの機械的支持並びに周囲の構成要素からのコイルブロックの電気的絶縁を提供する。
図1に例示的に示すように、典型的な高圧変圧器構成は、少なくとも1つの1次コイル巻線及び少なくとも1つの2次コイル巻線を備える。少なくとも1つの1次コイル巻線及び少なくとも1つの2次コイル巻線の長手方向軸は、垂直に配置されている。1次コイル巻線及び2次コイル巻線は、コイル巻線の下端と下部支持構造との間、及びコイル巻線の上端と上部支持構造との間に設けられたコイルブロックによって支持されている。上部コイルブロック及び下部コイルブロックは、上部支持構造及び下部支持構造に対するコイル巻線の垂直運動を防止するのに十分な剛性を1次コイル巻線及び2次コイル巻線に提供する。
【0003】
変圧器コイルブロックは、変圧器のコイル巻線を機械的に支持する必要がある。しかしながら、現在の技術水準によるブロックを使用する場合、特定の負荷条件には問題がある。例えば、変圧器の地震荷重は、コイル巻線、コイルブロック、又は変圧器の他の構成要素を損傷する可能性がある破壊振動を誘発する可能性がある。変圧器、特にコイル巻線及びコイルブロックは、システム構成要素の残留加速度ピークを最小にし、したがって変圧器の様々なボルト締め及び溶接接続を介して伝達される応力及び力を最小にするように、例えば33Hzを超える最小共振周波数を有するように設計されることが一般的に推奨される。しかしながら、これらの設計上の考慮事項が考慮されていても、振動負荷、特に地震誘起振動は、コイルブロックとコイル巻線との間の支持接触が失われるようにコイルブロックを移動又は回転させ、振動負荷が破壊的であり得るようにコイル巻線の共振周波数を変更し得る。
【0004】
1つの解決策は、中国実用新案第205487731号公報に開示されているコイルブロックなど、より限定的な締結装置を提供することである。そこでは、一対の真鍮ねじ付きインサートが樹脂コイルブロック内に鋳造され、2つのブラインドねじ穴が設けられ、コイルブロックの回転を防止するために2つの締結具を用いてブロックを支持構造に締結することができる。この手法の欠点は、そのようなブロックに地震荷重が負荷される場合に明らかである。例えば、鋳造樹脂ブロック内の真鍮インサートの鋳造は、鋭い角に応力集中装置を導入し、これは大きな振動負荷を伴う早期疲労破壊を引き起こす。絶縁樹脂の鋭い角もまた、集中した電界を発生させる可能性がある。さらに、ねじ穴の位置は固定されているため、支持構造は、コイルブロックを変圧器に組み付けるときに公差及び位置ずれを考慮することができるように、スロット又は拡大された取り付け穴を必要とする。取り付け穴が大きくなると、大きな振動負荷の下でコイルブロックが移動又は回転する可能性がある。
【0005】
上述の技術的問題を考慮して、従来技術における問題の少なくともいくつかを克服することが望ましい。特に、地震荷重を受けたときに改善された機械的性能を有する電気変圧器用コイルブロックを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本開示の一態様は、電気変圧器内の少なくとも1つのコイル巻線を支持するためのコイルブロックを提供する。コイルブロックは、少なくとも1つのコイル巻線に接触するための少なくとも1つの支持面と第1のクランプ面とを有する第1の要素と、締結手段と第1のクランプ面に接触するための第2のクランプ面とを有する第2の要素とを備え、締結手段は、少なくとも1つのコイル巻線の長手方向軸に平行な軸を中心とするコイルブロックの回転を制限する。
【0007】
本開示のさらなる態様は、少なくとも1つの1次コイル巻線と、少なくとも1つの2次コイル巻線と、上記態様による少なくとも1つのコイルブロックとを備える電気変圧器を提供する。
【0008】
本開示に記載された実施形態は、地震荷重を受けたときにコイルブロックが改善された機械的性能を有することを可能にする。特に、本開示に記載された実施形態は、コイルブロックが地震荷重下で移動又は回転するのを防止することを可能にし、その結果、変圧器のコイル巻線は適切に支持されたままになる。
【0009】
本明細書に記載の実施形態と組み合わせることができるさらなる利点、特徴、態様、及び詳細は、従属請求項、請求項の組み合わせ、説明、及び図面から明らかである。
【0010】
図面の簡単な説明
詳細は、図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態による変圧器の概略側面図である。
【
図2】本開示の実施形態によるコイルブロックの斜視図である。
【
図3A】本開示の実施形態によるコイルブロックの概略断面図である。
【
図3B】本開示の実施形態によるコイルブロックの概略断面図である。
【
図4A】本開示の実施形態によるコイルブロックの概略断面図である。
【
図4B】本開示の実施形態によるコイルブロックの概略断面図である。
【
図4C】本開示の実施形態によるコイルブロックの概略断面図である。
【
図4D】本開示の実施形態によるコイルブロックの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態
ここで、様々な実施形態を詳細に参照し、その1つ又は複数の例を各図に示す。各例は、説明のために提供され、限定を意味するものではない。例えば、一実施形態の一部として図示又は説明される特徴は、さらに別の実施形態をもたらすために、任意の他の実施形態に対して、又はそれと併せて使用することができる。本開示は、そのような修正及び変形を含むことが意図されている。
【0013】
図面の以下の説明において、同じ参照番号は、同じ又は類似の構成要素を指す。一般に、個々の実施形態に関する相違点のみを説明する。特に明記しない限り、一実施形態における部分又は態様の説明は、別の実施形態における対応する部分又は態様にも適用することができる。
【0014】
図1は、本開示の態様による変圧器の概略側面図を示す。変圧器100は、三相変圧器として例示されているが、本開示はこれに限定されない。変圧器100は、中電圧又は高電圧動作用に構成されてもよい。本開示の文脈において、中電圧は、少なくとも1kVから52kVまでの電圧を指し、高電圧は、少なくとも52kVの電圧を指す。変圧器100は、配電用途、例えば配電変電所で使用され得る。
【0015】
例示的な三相変圧器100の各相は、1次コイル巻線102及び2次コイル巻線103を含む。例示的に示すように、1次コイル巻線102及び2次コイル巻線103は、長手方向軸Lを有し、長手方向軸Lを中心に同心円状に配置される。1次コイル巻線102及び2次コイル巻線103には、配電網に接続するための少なくとも1つの1次端子106及び少なくとも1つの2次端子107がそれぞれ設けられている。1次コイル巻線102及び2次コイル巻線103には、少なくとも一層の絶縁層がさらに設けられていてもよい。変圧器100は、2次コイル巻線103内に配置された少なくとも1つのコア要素101をさらに含む。例示的な三相変圧器100では、コアアセンブリは、3つのコア要素101を含むE字形部分と、E字形部分に組み付けられたヨーク部分とを含むことができる。
【0016】
変圧器100は、変圧器100の構成要素を支持するように構成された支持梁をさらに含む。変圧器100は、少なくとも上部支持梁104及び少なくとも下部支持梁105を含む。上部及び下部支持梁104,105は、コアアセンブリ、少なくとも1つの1次コイル巻線102、及び少なくとも1つの2次コイル巻線103を支持するように配置される。上部及び下部支持梁104,105は、コアアセンブリ並びに1次コイル巻線102及び2次コイル巻線103の質量、並びに変圧器構成要素をクランプするクランプ力に耐えるように寸法決めされ配置された1つ又は複数の梁状要素を含むことができる。例えば、上部及び下部支持梁104,105は各々、コアアセンブリのヨーク部分がその間にクランプされる2つの要素を含むことができる。
【0017】
上部及び下部支持梁104,105と、少なくとも1つの1次コイル巻線102及び少なくとも1つの2次コイル巻線103との間には、コイルブロック200が配置されている。コイルブロック200は、上部支持梁104と下部支持梁105との間で少なくとも1つの1次コイル巻線102及び少なくとも1つの2次コイル巻線103を支持及びクランプするように構成される。特に、1次及び2次コイル巻線102,103と上部支持梁104との間の上側に複数のコイルブロック200が配置され、1次及び2次コイル巻線102,103と下部支持梁105との間の下側に複数のコイルブロック200が配置されている。典型的には、上側及び下側に配置されるコイルブロック200は同一である。
【0018】
本開示の一態様によれば、電気変圧器100が提供され、電気変圧器100は、本明細書に記載の実施形態による少なくとも1つの1次コイル巻線102、少なくとも1つの2次コイル巻線103、及び少なくとも1つのコイルブロック200を備える。
【0019】
図2は、本開示の実施形態によるコイルブロック200の斜視図を示す。斜視図は、変圧器100の上側に配置されたコイルブロック200に対応する向きのコイルブロック200を示す。
図3A及び
図3Bでさらなる参照が行われ、コイルブロック200の断面図が示されている。
図3AはA-A断面の断面図であり、
図3BはB-B断面の断面図である。
【0020】
本開示の一態様によれば、電気変圧器100内の少なくとも1つのコイル巻線102,103を支持するためのコイルブロック200が提供される。コイルブロック200は、少なくとも1つのコイル巻線102,103に接触するための少なくとも1つの支持面211,212と第1のクランプ面213とを有する第1の要素210と、締結手段222と第1のクランプ面213に接触するための第2のクランプ面223とを有する第2の要素210とを含み、締結手段222は、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向軸Lに平行な軸を中心とするコイルブロックの回転を制限する。
【0021】
第1の要素210及び第2の要素220は、コイル巻線102,103を支持してクランプするためのクランプ力を提供するように構成されている。特に、第2の要素220は支持構造に締結され、例えば、上部又は下部支持梁104,105に締結され、第1の要素210にクランプ荷重を加える。クランプ荷重は実質的に、コイル巻線102,103の長手方向軸Lに対応する方向にある。コイルブロック200には、コイルブロックの回転が制限されるように、第2の要素220を支持構造に締結するように配置された締結手段222がさらに設けられている。コイルブロック200が回転するのを防止することにより、振動負荷を受ける変圧器は、コイルブロック200を回転させず、及び/又は少なくとも1つのコイル巻線102,103がもはやコイルブロック200によって支持されない位置に移動しない。したがって、コイルブロック200は、振動負荷、特に地震荷重を受けたときの変圧器の機械的性能を改善し、それによって振動負荷下でのコイル巻線102,103の損傷を防止する。
【0022】
第1の要素210には第1のクランプ面213が設けられ、第2の要素220には第1のクランプ面213と接触する第2のクランプ面223が設けられる。第2の要素220は、第1の要素210と第2の要素220とが互いに対して移動しないように、第1及び第2のクランプ面213,223を介して第1の要素210にクランプ荷重を加えるように構成されている。さらに、締結手段222により、第2の要素220は、任意の方向への移動及び回転が制限され、特に、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向軸Lに沿った回転が制限される。したがって、第2の要素220によって第1の要素210に加えられるクランプ荷重は、第1の要素210の移動及び回転を制限する役割も果たす。
【0023】
第1のクランプ面213と第2のクランプ面223とは、互いの回転及び移動を防止するように互いに接触してもよい。例えば、第1及び第2のクランプ面213,223は、摩擦によってそれらの間の回転及び移動を防止する平坦面であってもよい。この場合、第2の要素220が第1の要素210に付与するクランプ荷重は、コイル巻線102,103をクランプするためだけでなく、第1のクランプ面213と第2のクランプ面223との間の摩擦荷重を大きくするためにも設けられる。そのような構成は、変圧器100の組み立て中に第1及び第2の要素210,220の相対位置を調整して不規則性及び公差を考慮するための最大の柔軟性を可能にする。あるいは、第1及び第2のクランプ面213,223は、例えば接着剤を用いて、それらの間の移動及び回転を制限するために互いに接合されてもよい。接合は、コイルブロック200が単一のアセンブリとして製造されるように変圧器100の組み立て前に、又は第1及び第2の要素210,220の相対位置が適合するように調整され得るように変圧器100の組み立て中に、行われてもよい。
【0024】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1のクランプ面213は、第1の要素210に対する第2の要素220の回転が制限されるように、第2の要素220を受け入れるように構成された凹部を含んでもよい。図に例示されるようなコイルブロック200において、第1の要素210には、第1の要素210に対する第2の要素220の回転が制限されるように、第2の要素220が配置される溝が設けられている。これは、いくつかの理由から、第1及び第2のクランプ面213,223にとって好ましい実施形態である。第1のクランプ面213と第2のクランプ面223との間に摩擦が与えられる場合、より高いクランプ荷重が第2の要素220によって第1の要素210に加えられ、第1のクランプ面213と第2のクランプ面223との間の移動及び回転が確実に制限される。クランプ荷重が高いほど、コイル巻線102,103にかかる負荷が大きくなる。第1及び第2の要素210,220が接合されている場合、接合されたアセンブリは、接合されていないアセンブリと比較して可撓性が低く、調整不能である。
【0025】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、凹部は、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向軸Lに垂直な径方向に延在する。径方向に延在する凹部は、少なくとも1つのコイル巻線102,103に対する第1の要素210の径方向位置が変圧器100の組み立て中に調整され得るように、第1の要素210と第2の要素220との間の相対移動を可能にする。さらに、少なくとも1つのコイル巻線102,103の熱膨張は、少なくとも1つのコイル巻線102,103を径方向に膨張させ、これは、第1の要素210と第2の要素220との間の径方向摺動運動によって説明され得る。
【0026】
第1のクランプ面213に設けられた凹部は、開口端を有する溝であるように例示されており、第1の要素210と第2の要素220との間に大きな相対運動を提供する。しかしながら、凹部は、代わりに、第1の要素210と第2の要素220との間の径方向摺動運動が制限又は完全に防止されるように、閉じた端部を有する溝であってもよい。特に、凹部は、径方向内側の端部で閉じられ、径方向外側の端部で開いている溝であってもよく、それにより、第1の要素210には径方向内側の方向に大きな相対的摺動運動がもたらされるが、径方向外側の方向の摺動は防止される。
【0027】
第1の要素210は、少なくとも1つのコイル巻線102,103を支持及びクランプするために設けられている。
図2、
図3A及び
図3Bに示す例示的なコイルブロック200では、第1の要素210は、2つのコイル巻線102,103を支持するための2つの支持面211,212を有するものとして示されている。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、少なくとも1つの支持面211,212は、1次コイル巻線102に接触するための1次支持面211と、2次コイル巻線103に接触するための2次支持面212とを含むことができる。しかしながら、本開示はこれに限定されず、第1の要素210には、任意の数のコイル巻線を支持するための任意の数の支持面が設けられてもよい。
【0028】
第1の要素210は、十分な機械的強度を提供し、かつ電気的に絶縁性である任意の適切な材料から製造され得る。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の要素210は、高分子の電気絶縁性材料を含む。特に、第1の要素210は、エポキシ樹脂材料を含み得る。高分子材料、特にエポキシ樹脂材料は、1つ又は複数のコイル巻線を支持及びクランプするのに必要な機械的強度を提供するだけでなく、コイル巻線を変圧器の支持構造から電気的に絶縁する。
【0029】
コイルブロック200の電気的絶縁性能は、コイルブロック200の周りの電界の分布を改善する特徴を第1の要素210に与えることによってさらに改善され得る。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の要素210は、電界の勾配を低減するように構成された複数の外周輪郭214をさらに含む。複数の外周輪郭214は、
図2に例示するように、第1の要素210の外周に設けられた複数の溝である。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、複数の外周輪郭214は、複数の三角形の屋根突出部、複数の丸みを帯びた突出部、又は突出部と溝との組み合わせを含むことができる。このような外周輪郭は、高濃度の電界の領域が低減又は排除されるように、コイルブロック200に沿って電界が傾斜する機構を提供する。
【0030】
図に示す例示的な実施形態では、第2の要素220は、実質的に長方形のバーの形態のクランプバー221を含むが、本開示はこれに限定されない。第1の要素210と第2の要素220との間の回転を制限する働きをする任意の形状を有するクランプバー221が使用され得る。例えば、クランプバー221は、第1の要素210に設けられた対応する丸い溝を有する丸いバー、又は第1の要素210に設けられた対応する形状の凹部に嵌合する任意の他の形状を含み得る。クランプバー221は、典型的には金属製である。特に、クランプバー221は、第2の要素220が変圧器110で発生する磁束の影響を受けないように、非磁性金属で作られてもよい。
【0031】
第2の要素220には、コイルブロック200の回転を制限するように第2の要素220を変圧器100の支持構造に締結するように機能する締結手段222が設けられている。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、締結手段222は、第1の締結具及び第2の締結具を含む。図に例示的に示されるように、第1の締結具及び第2の締結具は、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向軸Lに垂直な径方向に間隔を置いて配置されたねじ部材を含んでもよい。特に、第1の締結具及び第2の締結具は、クランプバー221に溶接されたねじ付きスタッドであってもよい。ねじ付きナット224は、第2の要素220が支持構造、特に上部又は下部支持梁104,105に締結され得るように、第1及び第2の締結具に設けられてもよい。ねじ部材ごとに2つのねじ付きナット224を、上部又は下部支持梁104,105の両側に設けることができるが、第1の要素210と第2の要素220との間にクランプ力を提供するために、1つのねじ付きナット224のみは必須である。ねじ付きナット224の調整は、第1の要素210と第2の要素220との間に加えられるクランプ荷重を増加又は減少させるように働き、したがって、コイルブロック200によって少なくとも1つのコイル巻線102,103に加えられるクランプ荷重を増加又は減少させるように働く。
【0032】
しかしながら、本開示は、2つのねじ付き締結具を備える締結手段222に限定されない。本明細書の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、締結手段222は、1つのねじ付き締結具及び少なくとも1つのピンを含むことができる。ねじ付き締結具には、第1の要素210と第2の要素220との間に加えられる荷重を増減するように調整可能なねじ付きナット224が設けられてもよく、少なくとも1つのピンは、コイルブロック200の回転を防止するために、上部又は下部支持梁104,105の対応する穴と係合するように設けられてもよい。あるいは、締結手段222は、上部又は下部支持梁104,105と第2の要素220との間に挿入されたウェッジ又はシムを含む、ねじ部材ではないクランプ荷重を加えるための他の手段を含むことができる。
【0033】
特に地震条件下で変圧器100に加えられ得る振動負荷は、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向軸Lに平行な垂直方向だけでなく、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向軸Lに垂直な径方向にも加えられ得る。コイルブロック200には、コイルブロック200が少なくとも1つのコイル巻線102,103との支持及び接触を維持するように、少なくとも1つのコイル巻線102,103の径方向移動をさらに制限するための追加の機構を設けてもよい。次に
図4A~
図4Dを参照すると、少なくとも1つのコイル巻線102,103とコイルブロック200との間の径方向移動を制限するための様々な手段が示されている。
図4A~
図4Dは、断面A-Aを通るコイルブロック200の断面図を示す。
【0034】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、少なくとも1つの支持面211,212は、少なくとも1つのコイル巻線を径方向に制限するように構成されたコイル凹部を備える。コイル凹部は、少なくとも1つのコイル巻線102,103を取り囲む少なくとも1つの支持面211,212の両側に設けられた突出部215によって形成されてもよい。少なくとも1つの支持面211,212にコイル凹部を設けることにより、コイルブロック200に対する少なくとも1つのコイル巻線102,103の径方向移動が制限又は防止される。径方向に振動成分を有する振動負荷の下では、コイル凹部は、コイルブロック200が少なくとも1つのコイル巻線102,103をもはや支持又はクランプしない位置に少なくとも1つのコイル巻線102,103が移動するのを防止し、それによって、変圧器100が振動負荷を受けるときの少なくとも1つのコイル巻線102,103の損傷をさらに低減する。
【0035】
図4Aに例示するコイル凹部は、コイル凹部が長方形の輪郭を有するように、突出部215及び支持面211,212によって提供される。突出部215と少なくとも1つのコイル巻線102,103との間の距離に応じて、例えば、少なくとも1つのコイル巻線102,103の熱膨張を考慮するために、いくらかの径方向移動が可能になり得る。
【0036】
あるいは、少なくとも1つのコイル巻線102,103の形状にコイル凹部の形状を合わせることにより、少なくとも1つのコイル巻線102,103の支持をさらに向上させてもよい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、コイル凹部は、少なくとも1つのコイル巻線102,103の端部の輪郭に対応する輪郭を有する。コイル凹部と少なくとも1つのコイル巻線102,103の端部の輪郭を一致させることにより、コイル巻線のより分散した支持が可能になり、第1の要素210に加えられる集中応力が低減される。
【0037】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、コイルブロック200は、少なくとも1つの支持面211,212と少なくとも1つのコイル巻線102,103との間に配置された少なくとも1つの支持パッド230をさらに含むことができる。支持パッド230は、
図4Cでは、平坦な支持面211,212の間に配置されているものとして例示されており、
図4Dでは、突出部215によって設けられたコイル凹部に配置されているものとしてさらに例示されている。支持パッド230は、少なくとも1つのコイル巻線102,102の輪郭に適合するように弾性変形するコンプライアント材料から製造されてもよい。例えば、支持パッド230は、ゴム又はシリコーンから製造されてもよい。
【0038】
支持パッド230は、径方向成分を有する振動負荷が吸収されるように、少なくとも1つの支持面211,212と少なくとも1つのコイル巻線102,103との間の摩擦を改善するために設けられてもよい。支持パッド230の材料は、少なくとも1つのコイル巻線102,103が振動する共振周波数を最適化するように選択されてもよい。支持パッド230は、例えば接着剤を使用して、少なくとも1つの支持面211,212に接着されてもよい。さらに、支持パッド230の弾性特性により、少なくとも1つのコイル巻線102,103の長手方向Lの製造公差を吸収することができる。
【0039】
以下の項目は、さらなる実施形態を指す。
1.電気変圧器(100)内の少なくとも1つのコイル巻線を支持するためのコイルブロックであって、コイルブロックは、
少なくとも1つのコイル巻線に接触するための少なくとも1つの支持面と第1のクランプ面とを有する第1の要素と、
締結手段と第1のクランプ面に接触するための第2のクランプ面とを有する第2の要素と
を備え、
締結手段は、少なくとも1つのコイル巻線の長手方向軸に平行な軸を中心とするコイルブロックの回転を制限する。
【0040】
2.第1のクランプ面は、第1の要素に対する第2の要素の回転が制限されるように、第2の要素を受け入れるように構成される凹部である、項目1に記載のコイルブロック。
【0041】
3.凹部は、長手方向軸に垂直な径方向に延在する、項目2に記載のコイルブロック。
4.少なくとも1つの支持面は、少なくとも1つのコイル巻線を長手方向軸に垂直な径方向に制限するように構成されるコイル凹部を備える、項目1から3のいずれかに記載のコイルブロック。
【0042】
5.コイル凹部は、少なくとも1つのコイル巻線の端部の輪郭に対応する輪郭を有する、項目4に記載のコイルブロック。
【0043】
6.少なくとも1つの支持面は、1次コイル巻線に接触するための1次支持面と、2次コイル巻線に接触するための2次支持面とを含む、項目1から5のいずれかに記載のコイルブロック。
【0044】
7.少なくとも1つの支持面と少なくとも1つのコイル巻線との間に配置される少なくとも1つの支持パッドをさらに備える、項目1から6のいずれかに記載のコイルブロック。
【0045】
8.締結手段は、第1の締結具と第2の締結具とを備える、項目1から7のいずれか1項に記載のコイルブロック。
【0046】
9.締結手段は、第1の締結具と第1のピンとを備える、項目1から7のいずれか1項に記載のコイルブロック。
【0047】
10.締結手段は、少なくとも1つのコイル巻線にクランプ力を加えるように構成される、項目1から9のいずれか1項に記載のコイルブロック。
【0048】
11.第1の要素は、高分子の電気絶縁性材料、特にエポキシ樹脂材料を備える、項目1から10のいずれか1項に記載のコイルブロック。
【0049】
12.第1の要素は、電界の勾配を低減するように構成される複数の外周輪郭をさらに備える、項目1から11のいずれか1項に記載のコイルブロック。
【0050】
13.
少なくとも1つの1次コイル巻線と、
少なくとも1つの2次コイル巻線と、
項目1から12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコイルブロックと
を備える電気変圧器。
【0051】
上記は本開示の態様及び実施形態を対象としているが、その基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の及びさらなる実施形態を考案することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。