(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電力分配方法及びこれを用いるエネルギー貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241029BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20241029BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20241029BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20241029BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/46
H02J7/34 B
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2023527106
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2022011740
(87)【国際公開番号】W WO2023018133
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104286
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンギル・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンチョル・キム
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130375(WO,A1)
【文献】特開2019-030110(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145618(WO,A1)
【文献】特開2014-017982(JP,A)
【文献】特開2017-034738(JP,A)
【文献】特開2010-115048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0226268(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1923958(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
H02J1/00-1/16
H02M3/00-3/44
G05F1/00-1/10
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池ラック及び対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータを含むエネルギー貯蔵システムにおける電力分配方法において、
各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するステップと、
各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定するステップと、
設定された電池ラック別の電力指示に従って各電池ラックに対する充放電制御を行うステップと
を含
み、
前記電池ラック別の電力指示を設定するステップは、
前記エネルギー貯蔵システムが異種の電池ラックを含む場合、前記エネルギー貯蔵システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するステップを含む、電力分配方法。
【請求項2】
前記各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するステップは、
各電池ラックの種類、状態、及び出力限界に関する情報を収集するステップと、
各DC-DCコンバータの限界電力及び状態に関する情報を収集するステップと
を含む、請求項1に記載の電力分配方法。
【請求項3】
前記電池ラック別の電力指示を設定するステップは、
前記エネルギー貯蔵システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、
前記エネルギー貯蔵システムによって要請される
前記電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出するステップを含む、請求項1に記載の電力分配方法。
【請求項4】
前記電池ラック別の電力指示を設定するステップは、
前記エネルギー貯蔵システム
が互いに異なるSOH範囲を有する電池ラックを含む場合、
前記エネルギー貯蔵システムによって要請される
前記電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するステップを含む、請求項1に記載の電力分配方法。
【請求項5】
前記設定された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する場合、
前記電池ラック別の電力指示を再計算するステップをさらに含む、請求項1に記載の電力分配方法。
【請求項6】
前記電池ラック別の電力指示を再計算するステップは、
前記設定された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する電池ラックを除く残りのラックに対して電力指示を再計算するステップを含む、請求項5に記載の電力分配方法。
【請求項7】
エネルギー貯蔵システムであって、
電池ラックの状態を管理する電池状態管理システム(BMS)と、
対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータと、
前記電池状態管理システム及び前記DC-DCコンバータと連動して、各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集し、各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定して各DC-DCコンバータに伝達する電池システムコントローラとを含み、
前記DC-DCコンバータは、前記電池システムコントローラから受信した電池ラック別の電力指示に従って各電池ラックに対する出力制御を行
い、
前記電池システムコントローラは、
前記エネルギー貯蔵システムが異種の電池ラックを含む場合、前記エネルギー貯蔵システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算する、エネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記電池システムコントローラは、
前記電池状態管理システムから複数の電池ラックの種類、状態、及び出力限界に関する情報を収集し、複数のDC-DCコンバータと接続されたスイッチングハブを通じて各DC-DCコンバータの限界電力及び状態に関する情報を収集する、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項9】
前記電池システムコントローラは、
前記エネルギー貯蔵システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、前記エネルギー貯蔵システムによって要請される
前記電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出する、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
前記電池システムコントローラは、
前記エネルギー貯蔵システム
が互いに異なるSOH範囲を有する 電池ラックを含む場合、
前記エネルギー貯蔵システムによって要請される
前記電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算する、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項11】
前記電池システムコントローラは、
前記設定された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する場合、前記電池ラック別の電力指示を再計算する、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項12】
前記電池システムコントローラは、
前記設定された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する電池ラックを除く残りのラックに対して電力指示を再計算する、請求項11に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項13】
複数の電池ラックを管理する電池状態管理システム及び対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータと連動する電池システム制御装置において、
少なくとも一つのプロセッサと、
前記少なくとも一つのプロセッサを通じて実行される少なくとも一つの命令を格納するメモリを含み、
前記少なくとも一つの命令は、
各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するようにする命令と、
各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令と、
設定された電池ラック別の電力指示を各DC-DCコンバータに伝達するようにする命令とを
含
み、
前記電池ラック別の電力指示を設定するようにする命令は、
前記複数の電池ラックが異種の電池ラックを含む場合、システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するようにする命令を含む、電池システム制御装置。
【請求項14】
前記電池ラック別の電力指示を設定するようにする命令は、
前記複数の電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、
システムによって要請される
前記電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出するようにする命令を含む、請求項13に記載の電池システム制御装置。
【請求項15】
前記電池ラック別の電力指示を設定するようにする命令は、
前記複数の電池ラック
が互いに異なるSOH範囲を有する 電池ラックを含む場合、
システムによって要請される
前記電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するようにする命令を含む、請求項13に記載の電池システム制御装置。
【請求項16】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の電力分配方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力分配方法及びこれを用いるエネルギー貯蔵システムに関し、より具体的には、SOC(state of charge)に基づいて電力を分配する方法及びこれを用いるエネルギー貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System;ESS)は、再生可能エネルギー、電力を貯蔵した電池、そして既存の電力系統を連携させるシステムである。近年、スマートグリッド(smart grid)と再生可能エネルギーの普及が広がっており、電力系統の効率化と安定性が重要視されることに伴って、電力供給及び需要の調節、及び電力品質の向上のために、エネルギー貯蔵システムに対する需要がますます増加しつつある。使用の目的によって、エネルギー貯蔵システムは、出力と容量が変わり、大容量エネルギー貯蔵システムを構成するために、複数の電池システムが互いに接続され得る。
【0003】
ESSシステムのうちPV(Photovoltaic;太陽光発電システム)と連携するシステムは、AC-coupledからDC-Coupledシステムへと変化しつつある。DC-Coupled ESSシステムにおいて、PVと電池システムはDC電圧であり、グリッド(Grid;系統)はAC電圧で構成されているから、電力変換装置が必然的に要求される。現在DC-Coupled用の電池に中央DC/DCコンバータが適用されているが、この場合にも電池の個別ラック単位の制御が不可能であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような問題点を解決するための本発明の目的は、異種の電池を含むエネルギー貯蔵システムにおいて、SOCに基づく電力分配方法を提供することにある。
【0005】
上記のような問題点を解決するための本発明の別の目的は、上記電力分配方法を用いるエネルギー貯蔵システムを提供することにある。
【0006】
上記のような問題点を解決するための本発明のまた別の目的は、異種の電池を含むエネルギー貯蔵システムにおいて電力分配方式を決定する電池システム制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一実施例に係る電力分配方法は、複数の電池ラック及び対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータを含むエネルギー貯蔵システムにおける電力分配方法に関し、各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するステップと、各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定するステップと、設定された電池ラック別の電力指示に従って各電池ラックに対する充放電制御を行うステップとを含むことができる。
【0008】
上記各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するステップは、各電池ラックの種類、状態、及び出力限界に関する情報を収集するステップと、各DC-DCコンバータの限界電力及び状態に関する情報を収集するステップとを含むことができる。
【0009】
上記電池ラック別の電力指示を設定するステップは、上記システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、上記システムによって要請される出力電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出するステップを含むことができる。
【0010】
上記電池ラック別の電力指示を設定するステップはまた、上記システムが異種の電池ラックを含むか互いに異なるSOH範囲を有する 電池ラックを含む場合、上記システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するステップを含むことができる。
【0011】
上記電力分配方法は、算出された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する場合、上記電池ラック別の電力指示を再計算するステップをさらに含むことができる。
【0012】
上記電池ラック別の電力指示を再計算するステップは、上記算出された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する電池ラックを除く残りのラックに対して電力指示を再計算するステップを含むことができる。
【0013】
上記別の目的を達成するための本発明の一実施例に係るエネルギー貯蔵システムは、電池ラックの状態を管理する電池状態管理システム(BMS)と、対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータと、上記電池状態管理システム及び上記DC-DCコンバータと連動して、各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集し、各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定して各DC-DCコンバータに伝達する電池システムコントローラとを含み、上記DC-DCコンバータは、上記電池システムコントローラから受信した電池ラック別の電力指示に従って各電池ラックに対する出力制御を行うことができる。
【0014】
このとき、電池システムコントローラは、上記電池状態管理システムから複数の電池ラックの種類、状態、及び出力限界に関する情報を収集し、複数のDC-DCコンバータと接続されたスイッチングハブを通じて各DC-DCコンバータの限界電力及び状態に関する情報を収集することができる。
【0015】
上記電池システムコントローラはまた、上記システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、上記システムによって要請される出力電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出することができる。
【0016】
上記電池システムコントローラは、上記システムが異種の電池ラックを含むか互いに異なるSOH範囲を有する電池ラックを含む場合、上記システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算することができる。
【0017】
一方、上記電池システムコントローラは、上記算出された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する場合、上記電池ラック別の電力指示を再計算することができる。この場合、上記電池システムコントローラは、上記算出された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する電池ラックを除く残りのラックに対して電力指示を再計算することができる。
【0018】
上記また別の目的を達成するための本発明の一実施例に係る電池システム制御装置は、複数の電池ラックを管理する電池状態管理システム及び対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータと連動し、少なくとも一つのプロセッサと、上記少なくとも一つのプロセッサを通じて実行される少なくとも一つの命令を格納するメモリとを含むことができる。ここで、上記少なくとも一つの命令は、各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するようにする命令と、各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令と、設定された電池ラック別の電力指示を各DC-DCコンバータに伝達するようにする命令とを含むことができる。
【0019】
上記電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令は、上記システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、上記システムによって要請される出力電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出するようにする命令を含むことができる。
【0020】
上記電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令はまた、上記システムが異種の電池ラックを含むか互いに異なるSOH範囲を有する 電池ラックを含む場合、上記システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するようにする命令を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のような本発明の実施例によれば、同一のモデル及び同一のSOHを有する電池ラックだけでなく、異種のモデル及び異なるSOHを有する電池ラックを含むエネルギー貯蔵システムにおいても、電池ラック間で類似のSOCを維持しながら安定して電池システム及びエネルギー貯蔵システムを運営することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来のAC-Coupledエネルギー貯蔵システムのブロック図である。
【
図2】本発明の実施例に係るDC-Coupledエネルギー貯蔵システムのブロック図である。
【
図3】本発明の実施例に係る電池状態に基づく電力分配方法の概念を示す。
【
図4b】同一の周辺温度のとき、パワー別の電池の充放電特性を示すグラフである。
【
図4c】同一の電力のとき、周辺温度別の電池の充放電特性を示すグラフである。
【
図5】電池ラックの電力限界を算定する概念を示す。
【
図6】DC-DCコンバータの電力限界を算定する概念を示す。
【
図7a】本発明の実施例によって各ケース別の電力分配方式を決定し、電力指示を生成する方法のフロー図である。
【
図7b】本発明の実施例によって各ケース別の電力分配方式を決定し、電力指示を生成する方法のフロー図である。
【
図8a】本発明に係る電力分配方法の効果を確認するためのシミュレーション条件のうち電池ラックに対するモデリングを示す。
【
図8b】同シミュレーション条件のうち入力パワーパターンを示す。
【
図8c】同シミュレーション条件のうち各電池ラックの初期条件を示す。
【
図9a】従来の電力分配方法を用いたシミュレーション結果を示す。
【
図9b】本発明の実施例に係る電力分配方法に対するシミュレーション結果を示す。
【
図9c】本発明の実施例に係る電力分配方法に対するシミュレーション結果を示す。
【
図10】本発明の実施例に係る電力分配方法の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、種々の変更を加えることができ、様々な実施例を有し得るため、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳しく説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されたい。各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用している。
【0024】
第1、第2、A、Bなどの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用され得るが、構成要素は、これらの用語によって限定されるものではない。上記の用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名されてよく、同様に第2の構成要素も第1の構成要素と命名されてよい。「及び/又は」という用語は、複数の関連して記載された項目の組合わせ又は複数の関連して記載された項目のうちのある項目を含む。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるとか「接続されて」いると言及されたときには、当該他の構成要素に直接的に連結されているか又は接続されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されたい。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるとか「直接接続されて」いると言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないことと理解されたい。
【0026】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されるものであって、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加可能性をあらかじめ排除しないことと理解されたい。
【0027】
別に定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含め、ここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において明白に定義しない限り、理想的であるか過度に形式的な意味としては解釈されない。
【0028】
本明細書において使用される一部の用語を定義すれば、次の通りである。
【0029】
定格容量(Nominal Capacity;Nominal Capa.)は、電池メーカーが開発当初設定した電池の設定容量[Ah]を意味する。
【0030】
SOC(State of Charge;充電率)は、電池の現在充電された状態を割合[%]で表したものであり、SOH(State of Health;電池寿命状態)は、電池の現在の退化状態を割合[%]で表したものである。
【0031】
電池ラック(Rack)は、電池メーカーで設定したパック単位を直列/並列接続した、BMSを通じてモニタリングと制御が可能な最小単一構造のシステムを意味し、複数の電池パックと1つのBPU又は保護装置を含んで構成され得る。
【0032】
電池バンク(Bank)は、複数のラックを並列接続して構成される大きい規模の電池ラックシステムの集合群を意味することができる。電池バンク単位のBMSを通じて、電池ラック単位のラックBMS(RBMS)に対するモニタリングと制御を行うことができる。
【0033】
BSC(Battery System Controller)は、バンク単位の電池システムを含む電池システムに対する最上位の制御を行う装置であって、複数のバンクレベル(Bank Level)構造の電池システムにおいて制御装置として使用されることもできる。
【0034】
出力限界(Power Limit)は、電池メーカーが電池状態に応じてあらかじめ設定した出力限界を示す。ラック出力限界(Rack Power limit)は、ラック単位(Rack Level)で設定された出力限界([kW]単位)を意味し、電池のSOC、温度に基づいて設定され得る。
【0035】
出力限界は、充電であるか放電であるかによって充電出力限界と放電出力限界とに区分され得る。また、電池システムの構造によってラック単位のラック出力限界(Rack Power limit)とバンク単位のバンク出力限界(Bank Power limit)を定義することができる。
【0036】
以下、本発明に係る好ましい実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は、従来のAC-Coupledエネルギー貯蔵システムのブロック図である。
【0038】
エネルギー貯蔵システム(ESS)で電力を貯蔵する役割を果たす電池の最小単位は、通常、電池セル(cell)である。電池セルの直列/並列の組合わせが電池パックをなし、多数の電池パックが電池ラックを構成することができる。すなわち、電池ラックは、電池パックの直列/並列の組合わせであって、電池システムの最小単位になり得る。ここで、電池が使用される装置又はシステムによって、電池パックは電池モジュールと呼ばれることもできる。
【0039】
図1を参照すれば、一つの電池ラックは、複数の電池パックと一つのBPU50又は保護装置を含むことができる。電池ラックは、RBMS(Rack BMS)を通じてモニタリングと制御が可能である。RBMSは、自分が管理する各電池ラックの電流、電圧及び温度をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいて電池のSOC(Status Of Charge)を算出して充放電を制御する役割を果たすことができる。
【0040】
一方、BPU(Battery Protection Unit)50は、電池ラック単位で異常電流と故障電流から電池を保護するための装置である。BPUは、メインコンタクタ(Main Contactor;MC)、ヒューズ、回路遮断器(Circuit Breaker;CB)又は断路器 (Disconnect Switch;DS)などを含むことができる。BPUは、RBMSの制御によってメインコンタクタをオン/オフ制御してラック単位で電池システムを制御することができる。BPUはまた、短絡の発生時にヒューズを用いて短絡電流から電池を保護することができる。このように、従来の電池システムは、BPU、スイッチギヤのような保護装置を通じて制御され得る。
【0041】
一方、多数の電池及び周辺回路、装置などを含んで構成された電池セクションのそれぞれには、電池システムコントローラ(Battery System Controller;BSC)20が設けられ、電圧、電流、温度、遮断器などのような制御の対象をモニタリングして制御することができる。BSCは、複数の電池パックを含むバンク単位の電池システムを含む電池システムの最上位の制御装置であって、複数個のバンクレベル構造の電池システムにおいて制御装置として使用されることもできる。
【0042】
また、電池セクション毎に設けられた電力変換システム(Power Conversion System;PCS)40は、外部から供給される電力と電池セクションから外部へ供給する電力を制御して電池の充放電を制御し、DC/ACインバータを含むことができる。一方、ESSシステムがPV(Photovoltaic、太陽光発電システム)モジュールファーム70と連動する場合、PVインバータを含むことができる。
【0043】
一方、各BPUの出力は、DCバスを通じてPCS40と接続されてよく、PCS40は、グリッド60と接続され得る。また、EMS(Energy Management System)/PMS(Power Management System)30は、ESSシステムを全体的に管理する。
【0044】
図1に示すような従来のAC-Coupledシステムでは、PVにDC/ACインバータに接続されるとともに、電池システムにDC/ACインバータが接続されていて、電池の充放電が非効率的である。また、従来の電池システムには、BPU、スイッチギヤ(Switch gear)のような保護素子を通じて電池システムが制御されるだけで、電池容量、SOH、SOCといった電池システムの個別的な特性を考慮した個別の電力量制御が不可能である。
【0045】
一方、複数の電池ラックを備えたエネルギー貯蔵システムでは、特定のラックの寿命低下によるシステム全体の寿命短縮が発生し得る。すなわち、退化度あるいは不良ラックに依存して残りのラックの特性が悪くなるおそれがある。しかしながら、BPUを用いる従来のエネルギー貯蔵システムの場合、ラック状態に応じた充電/放電電力量の分配が不可能であり、起動前の電池ラック間のSOCばらつきが一定%以内でのみ駆動が可能であり、PCS電圧範囲に適した電池電圧の確保が必要である点など、多くの制約事項が存在していた。
【0046】
図2は、本発明の実施例に係るDC-Coupledエネルギー貯蔵システムのブロック図である。
【0047】
DC-Coupledエネルギー貯蔵システムでは、各電池システムに個別でDC電圧/電流を制御できるDC/DCコンバータ500が必須に要求される。電池システムにDC/DCコンバータが配置されるので、太陽光システムとの連動に使用されていたDC/ACコンバータがそれ以上必要なくなり、効率が増大する。また、各電池システムにDC/DCコンバータを適用して既存の電池システムの保護制御を行うだけでなく、各電池ラック間でSOC、SOH、容量の差が発生しても、個別の電池システムの特性を考慮した電池電力量の制御が可能になる。
【0048】
図2に示すシステムにおいて、各電池ラックは、当該ラックに対するRBMS550、DC-DCコンバータ500を含むことができる。DC-DCコンバータ500は、本体及びDC-DCコントローラを含むことができる。RBMS550及びDC-DCコンバータ500はまた、一つのハードウェア内に含まれて具現化され得る。
【0049】
一つの電池ラックは複数のパックを含むことができ、各パックはパックBMS(PBMS)によって管理され得る。また、電池ラックはRBMS(Rack BMS)550を通じてモニタリングと制御が可能である。RBMSは自分が管理する各電池ラックの電流、電圧及び温度をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいて電池のSOC(State Of Charge)を算出して充放電を制御する役割を果たすことができる。
【0050】
DC-DCコンバータ500は、電池と電力変換システム(Power Conversion System;PCS)との間でDC-DC変換を行う。このために、本発明の実施例に係るDC-DCコンバータは、本発明に係る出力制御を実行するための一つ以上の命令を含むメモリ、及び上記一つ以上の命令を実行するように制御するプロセッサ、入力スイッチングセット、一次側コイル、二次側コイル、出力スイッチングセット、キャパシタなどを含むことができる。
【0051】
DC-DCコントローラは、DC-DCコンバータ本体の出力を制御することができる。
【0052】
また、多数の電池及び周辺回路、装置などを含んで構成された電池セクションのそれぞれには、電池システムコントローラ(Battery System Controller;BSC)200が設けられ、電圧、電流、温度、遮断器などのような制御の対象をモニタリングして制御することができる。BSCは、複数の電池パックを含むバンク単位の電池システムを含む電池システムの最上位の制御装置であって、複数のバンクレベル構造の電池システムにおいて制御装置として使用されることもできる。
【0053】
また、電池セクション毎に設けられた電力変換システム(Power Conversion System;PCS)400は、EMS/PMSから動作命令を受信して外部から供給される電力と電池セクションから外部へ供給する電力を制御し、
図2に示すソーラーインバータ(Solar Inverter)のようなDC/ACインバータを含むことができる。
【0054】
EMS(Energy Management System)/PMS(Power Management System)300は、ESSシステムを全体的に管理する。
【0055】
本発明に係るESSシステムはまた、一つのBSC200と多数のRack TopDC/DCコンバータ間の通信のためにスイッチングハブ250を含むことができる。
【0056】
図2に示すようなエネルギー貯蔵システムによれば、ラック間のばらつきを除去して、SOC平準化(leveling)、SOH平滑化(smoothing)を期待することができる。また、電池ラック別の退化度によって独立したラック管理が可能であり、全体寿命の延長を期待することができる。また、それぞれのラック状態に応じた充電/放電電力量が調整可能(Active Power Control)である。かかるシステムにおいては、起動前のラック間のSOC差に関わらず、駆動又はSOC差を減少させながら運営が可能であるだけでなく、PCS電圧とは独立した電池の運営が可能となる。
【0057】
図3は、本発明の実施例に係る電池状態に基づく電力分配方法の概念を示す。
【0058】
本発明に係る電力分配方法は、電池システムコントローラ(BSC)によって決定される電力分配アルゴリズムによって行われることができ、電池システムコントローラは、RBMS、EMS/PMS、DC-DCコンバータから入力される情報に基づいて本発明に係る電力分配方式を決定することができる。電池システムコントローラは、インターフェースボードの形態に具現化されてよく、多数のラックマウント(rack mounted)DC-DCコンバータと通信することができる。
【0059】
図3を参照すれば、BSCは、EMS/PMSから最終的に要求される電力に関する情報を獲得し、BMSからラック別のSOC、SOH情報、ラック別の出力限界、及びバンク出力限界に関する情報を獲得する。また、複数のDC-DCコンバータと接続されたスイッチングハブ(switching hub)を通じて、各DC-DCコンバータの出力限界及びDC-DCコンバータの状態情報を獲得することができる。ここで、DC/DCコンバータの出力限界(Rack DC/DC Power limit)は、電池基準のBMSではない、単一のラックに設けられたDC/DCコンバータから出力可能な限界値を示す。すなわち、DC/DCコンバータ自体に設定された出力限界を意味し、この値は、DC/DCコントローラに内蔵され得る。また、電池ラックの出力限界([kW]単位)は、電池のSOC、温度に基づいてあらかじめ決定されてRBMSの内部に保存され得る。DC-DCコンバータの状態情報は、DC-DCコンバータの診断(warning/faultなど)及び保護素子の状態(例えば、ON/OFF)情報を含むことができる。
【0060】
電池システコントローラは、これらの情報に基づいて電力分配方式を決定し、電力分配を行うことができる。具体的に、本発明においては、電池状態(例えば、SOC)に基づいて電池ラック別の出力指示(power command)を算出する。
【0061】
本発明に係る電池システムコントローラは、複数の電池ラックを管理する状態管理システム及び対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータと連動することができ、少なくとも一つのプロセッサ、当該プロセッサを通じて実行される少なくとも一つの命令を格納するメモリを含むことができる。このとき、上記少なくとも一つの命令は、各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集するようにする命令と、各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令と、設定された電池ラック別の電力指示を各DC-DCコンバータに伝達するようにする命令とを含むことができる。
【0062】
このとき、電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令は、上記システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、上記システムによって要請される出力電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出するようにする命令を含むことができる。
【0063】
また、電池ラック別の電力指示(power command)を設定するようにする命令は、上記システムが異種の電池ラックを含むか互いに異なるSOH範囲を有する電池パックを含む場合、上記システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算するようにする命令を含むことができる。
【0064】
ここで、プロセッサは、中央処理装置(central processing unit, CPU)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(graphics processing unit, GPU)、又は本発明の実施例に係る方法が行われる専用のプロセッサを意味することができる。メモリ(又は記憶装置)は、揮発性記憶媒体及び非揮発性記憶媒体のうち少なくとも一つから構成され得る。例えば、メモリは、読み出し専用メモリ(read only memory, ROM)及びランダムアクセスメモリ(random access memory, RAM)のうち少なくとも一つから構成され得る。
【0065】
まず、全電池ラックが充電可能な空間の総和=(100-SOCRack#1)+ (100-SOCRack#2)+....+(100-SOCRack#n)と定義されてよく、これを、各ラックの充電電力を計算することに活用することができる。
【0066】
また、全電池ラックのSOCの合計=SOCRack#1+SOCRack#2+....+ SOCRack#nと定義されてよく、これを、各ラックの放電電力を計算することに活用することができる。
【0067】
ESSシステムに使用される電池モデルが同一の場合、化学組成が同一であるので、電池の特性を考慮してBMSを通じたラック単位の電池システムの管理が容易になる。但し、電池セル別の退化度は実際に異なるため、セル毎にSOH差が発生し得る。そのため、ラック単位別にSOHを比較して、全体の電池システムのSOHの平均と各ラックのSOHとを比較し、当該ラックのSOHばらつきを下記のように算出することができる。当該電池ラックのSOHばらつきは、下記数1によってあらかじめ算出されて、BSCに保存、活用され得る。
【数1】
電池モデルが同一であり電池が類似のSOHを有する場合、すなわち、あらかじめ設定されたSOH範囲内に含まれるラックは、下記数2及び数3を通じて各ラック別に電力分配を行うことができる。
【0068】
すなわち、電池モデルが同一であり電池が類似のSOHを有する場合、各ラック別の充電電力は数2のように、放電電力は下記数3のように表すことができる。
【数2】
【数3】
数1、2において、セットポイント(Set Point)は、EMS/PMSのような電池システムの上位コントローラが電池システムに要求する電力指令値又は指示(Command)を意味し、充電時のセットポイントは正の値であり、放電時のセットポイントは負の値である。また、「sum(SOC
online Racks)」とは、充電/放電動作が可能であり、電気回路的に接続されているラックのSOCの総和を意味する。数2において、「No. of online Racks」は、充電/放電動作が可能であり、電気回路的に接続されているラックの個数を意味する。
【0069】
電池モデルが同一であり電池が類似のSOHを有する場合、各ラックでの充電電力は、セットポイント、動作中のラックの個数、動作中のラックのSOCの合計、各ラックのSOCによって決定されることが分かる。
【0070】
また、電池モデルが同一であり電池が類似のSOHを有する場合、各ラックでの放電電力は、セットポイント、動作中のラックのSOCの合計、各ラックのSOCによって決定されることが分かる。
【0071】
一方、電池システムに異種のモデルの電池が混用される場合、化学組成によって電池の特性が異なり、特に動作仕様が異なるため、BMSを通じたラック単位の電池システムの管理が難しいことがある。異種のモデルが使用される場合には、ラック別のSOHが類似しても、各電池の特性及び仕様を考慮してBMSを通じたラック単位の制御が難しくなる。
【0072】
ラック単位別にDC/DCコンバータを運用する場合には、ラック別のSOHを含む各電池の仕様及び特性を反映した電力分配が可能である。本発明においては、異種のモデル及び異なるSOHを有する電池を含むシステムにおいて、下記数4、5に示すように、各ラックのSOH及び定格容量(Nominal Capacity)に基づいてラック別に電力分配を行うことができる。
【数4】
【数5】
すなわち、システムが異種の電池ラックを含むか互いに異なるSOH範囲を有する電池パックを含む場合、システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出することができる。
【0073】
一方、電池状態(例えば、SOC)に基づいて電池ラック別の出力指示(power command)を算出する本発明に係る電力分配方法において、EMS/PMSは、ESSの系統が要求する出力量を基準に電池システムにセットポイント(Set Point)を伝達する。このとき、電池システム稼動中に自己診断によって一部のラックが正常動作しにくい場合、それらのラックは除外され、正常な残りのラックだけで出力対応することができる。また、場合によって、当該ラックの出力限界を超過するセットポイントに対応する場合が存在し得る。
【0074】
したがって、本発明においては、ラック出力限界(Rack Power Limit)を超過するセットポイントを要請されたラックを選別後、残りのラックが出力を補うことができるように出力電力を再計算することができる。
【0075】
同一のモデル及び類似のSOHを有する電池ラックから構成されるシステムにおいて、出力限界を超過するセットポイントを要求されたラックを除き、残りのラックが出力すべき電力は、充電及び放電に対してそれぞれ下記式のように表すことができる。
【0076】
【0077】
【数7】
ここで、sum(correspond to Racks P.L)は、出力限界を超過するセットポイントを要請された電池ラックの出力限界の総和を示す。
【0078】
また、異種のモデル及び異なるSOHを有する電池ラックから構成されるシステムでの各ラックの出力電力は、下記数8及び数9のように表すことができる。
【0079】
【0080】
【数9】
一方、本発明においては、各ラックに対する出力を計算するにおいて、再計算回収を記録することで計算繰り返し回数を制限することができる。本発明において、ラック出力電力に対する再計算回数は、システム内の電池ラックの個数に設定され得る(The Number of Re Calculation limit = The Number of Racks)。
【0081】
また、本発明においては、電池ラックの保護素子の動作有無によって当該電池ラックを除く残りのラックの出力で対応するように制御する。すなわち、保護素子が動作していないと診断される場合、自身の出力限界を減少させ(当該診断発生時の限界電力減少分はあらかじめ設定され得る)、保護素子が動作すると診断される場合には(全体ラック個数-当該ラックの個数)に該当する残りのラックで出力対応することができる。
【0082】
ここで、電池システムの診断は、大きく3つの段階に分けられ得る。具体的に、正常(Normal)は、電池システムが電池使用領域内で使用可能な状態を示し、警告(Warning)は、電池の正常範囲を超過して自己出力制限がなされる状態を示す。また、故障(Fault)は、電池異常あるいは故障が発生した場合であって、保護素子を通じて電池システムが停止した状態を意味することができる。すなわち、保護素子が動作すると診断されるということは、故障(Fault)が発生して当該電池ラックが停止し、残りの電池ラックとの分離がなされた状態を意味することができる。
【0083】
【0084】
図4aを参照すれば、電池は電流が流れない状態、すなわち負荷が接続されていない状態の電圧(OCV;Open Circuit Voltage)を基準に充電時は電圧が上昇し、放電時は電圧が降下する特性を有する。充電/放電の完了後には、IRドロップ(IR-drop)によって再びOCV状態に戻る。
【0085】
図4bは、同一の周辺温度のとき、パワー別の電池の充放電特性を示すグラフである。
【0086】
図4bを参照すれば、電池は充電/放電電力が大きいほど、周辺温度が低いほど、OCVとの差が大きくなる特性を示す。
【0087】
図4cは、同一の電力のとき、周辺温度別の電池の充放電特性を示すグラフである。
【0088】
電池の充電/放電時に周辺温度が高いほど退化は早く進行し、これは電池寿命の短縮に影響する。このような電池の特性を考慮して、各電力及び温度別のサイクル(Cycle)試験を通じてあらかじめ電池の特性を把握することができる。すなわち、寿命に悪影響を及ぼす温度及びパワーを把握して、特定の温度で特定の電力で使用制限数値を判断し、これをデータ化してルックアップテーブル(Look-up Table)の形態で管理し、これをBMSに保存して管理及び使用する。
【0089】
電池の設計時には、設計目標容量、サイクル、残存率などを考慮して、最大パワーを設定する。具体的に、容量測定試験、充電/放電サイクル試験、退化試験などを行って、設計目標値に合致する最大出力パワーを算定後、BMS上に組み込む。
【0090】
図5は、電池ラックの電力限界を算定する概念を示す。
【0091】
図5を参照すれば、電池システムの運用時にRBMSは現在の電池状態(例えば、電圧、電流、温度など)を把握し、これに基づいて現在のパワーを測定、セル特性をテーブル化し、SOCを算出することができる。これを通じて、電圧及びSOC使用領域内で安定した長周期運営のために自体的なラック単位の出力限界(Power Limit)を設定及び実行する。
【0092】
図6は、DC-DCコンバータの電力限界を算定する概念を示す。
【0093】
DC/DCコンバータは、多様な電池モデルの構成による出力で対応できるように設計されているが、DC/DC H/W Specによる出力制限が存在する。DC/DCコンバータのメーカー別に固有の電力制限技法が存在し、電池システムではDC/DCコンバータの出力制限に関連して算出された値を活用することができる。
図6を参照すれば、電池の構成によって電圧の範囲が様々であり、それによるDC/DC自体の出力制限を通じて安定した範囲内に出力が可能である。
【0094】
図7a及び7bは、本発明の実施例によって各ケース別の電力分配方式を決定し、電力指示を生成する方法のフロー図である。
【0095】
図7aを参照すれば、BMSによって各ラックのラック出力限界をチェックし(S701)、各DC-DCコンバータの出力限界をチェックする(S702)。
【0096】
その後、EMS/PMSからセットポイントを受信する場合、BSCは各ラックの状態をチェックしてラック状態に応じて電力分配方式を決定する(S703)。
【0097】
ここで、システムを構成する電池ラックがいずれも同一のモデルであり類似のSOHを有するのか、異種のモデルを含むかそれぞれ異なるSOHを有するのかによって、状況に相応しい電力分配方式が決定される。電池ラックがいずれも同一のモデルであり類似のSOHを有する場合には、数2、3によって定義される電力分配算出式が使用され得る。これに対し、異種のモデルを含むか電池ラックがそれぞれ異なるSOHを有する場合には、数4、5によって定義される電力分配算出式が使用され得る。
【0098】
一方、EMS/PMSから伝達されたセットポイントの値をチェックして(S704)、0の場合は、電池システムは待機状態に進入する(S750)。このとき、待機状態は、充電又は放電が直ちに可能な状態を意味する。
【0099】
セットポイントが0ではなく(S704のYes)、正の値であれば(S710のYes)充電を指示し、セットポイントが負の値であれば(S710のNo)放電を指示する。よって、セットポイントが正の値であれば(S710のYes)、充電ラック電力指示(Chg. Rack power command)を計算する(S720)。
【0100】
充電ラック電力指示が算出されれば、各ラック別に算出された充電ラック電力指示が、ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過するかをチェックする。すなわち、充電ラック電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界のうち最小値を超過するかをチェックする(S721)。算出された充電ラック電力指示がラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過しなければ、電力指示算出過程は終了し、算出された電力指示に従って各ラックの出力が制御され得る。
【0101】
ところが、算出された充電ラック電力指示がラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過すれば、当該ラックの電力指示は電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界のうち最小値に再設定される(S722)。その後、当該ラックを除く残りの正常ラックに対する充電電力指示が再計算される(S723)。再計算の回数が全体ラックの個数を超過するかをチェックして(S724)、これを超過しない範囲でステップS721ないしステップS723が繰り返し行われ得る。
【0102】
電力指示に対する再計算手続きが全部完了すれば、各ラックの出力電力は Min[Initial Set Point/Num. of Racks, Min(Each rack P.L, DC/DC P.L)]と定義され得る(S725)。すなわち、(電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界)のうち小さな値を、(初期セットポイント/ラックの全体個数)とさらに比較して、より小さな値が当該ラックの出力電力に設定され得る。
【0103】
一方、
図7bを参照すれば、S710のステップでセットポイントが負の値であれば(S710のNo)、放電ラック電力指示(Dchg. Rack power command)を計算する(S730)。
【0104】
放電ラック電力指示が算出されれば、各ラック別に算出された放電ラック電力指示がラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過するかをチェックする。すなわち、放電ラック電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界のうち最小値を超過するかをチェックする(S731)。算出された放電ラック電力指示がラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過しなければ、電力指示算出過程は終了し、算出された電力指示に従って各電池ラックの出力が制御され得る。
【0105】
ところが、算出された放電ラック電力指示がラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過すれば、当該ラックの電力指示は電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界のうち最小値に再設定される(S732)。その後、当該ラックを除く残りの正常ラックに対する放電パワー指示が再計算される(S733)。再計算回数が全体ラックの個数を超過するかをチェックして(S734)、これを超過しない範囲でステップS731ないしステップS733が繰り返し行われ得る。
【0106】
電力指示に対する再計算手続きが全部完了すれば、各ラックの出力電力は Min[Initial Set Point/Num. of Racks, Min(Each rack P.L, DC/DC P.L)]と定義され得る(S735)。すなわち、(電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界)のうち小さな値を、(初期セットポイント/ラックの全体個数)と比較して、より小さな値が当該ラックの出力電力に設定され得る。
【0107】
以上、
図7a及び
図7bを通じて説明した電力分配方法は、ESSシステム内の BSCによって行われ得るが、その動作主体がBSCによって限定されるものではない。
【0108】
図8aは、本発明に係る電力分配方法の効果を確認するためのシミュレーション条件のうち電池ラックに対するモデリングを、
図8bは、シミュレーション条件のうち入力パワーパターン、
図8cは、シミュレーション条件のうち各電池パックの初期条件を示す。
【0109】
図8aないし8cのシミュレーション条件を通じて、従来の電池システム(ラック単位)に対してシミュレーション(MATLAB(登録商標)/Simulinkを利用)を通じて、本発明に係る電力分配方法を具現化した。当該実験では、BSCで各電池システムの状態を管理し、分配アルゴリズムによって電力指示(Power Command)を算出するように具現化した。
【0110】
電池は、
図8aに示すような17段ラックを使用し、任意の異種の電池モデルを選定し、実際パターンを用いた充電/放電サイクルで動作するように
図8bのように構成した。
図8aないし8cの条件で、ラック4、7、8は、ラック1、2、3、5、6、9、10と異なるモデルを使用した。
【0111】
図8b及び8cを参照すれば、同一のサイクルを連続3回設定して初期状態設定による充電/放電電力量が異なることを把握しようとし、ラック別に出力限界を設定して、出力限界内の動作有無及び診断条件が発生するかを把握した。また、任意の初期SOC、SOHを設定して、毎サイクルごとにラックの状態及び電力状態を把握しようとした。
【0112】
図9aは、従来の電力分配方法を用いたシミュレーション結果を示す。
【0113】
図9aは、
図8aないし
図8cのシミュレーション条件で、従来の電力分配方法による場合のラック別のSOCシミュレーション結果を示す。従来の方法を使用する場合、毎サイクルでの充電及び放電時の電力が同一であるから、別途のバランシング動作なしにはラック間のSOCばらつきが初期と変わらず維持されることを確認することができる。
【0114】
図9b及び
図9cは、本発明の実施例に係る電力分配方法に対するシミュレーション結果を示す。
【0115】
すなわち、
図9bは、
図8aないし
図8cのシミュレーション条件で本発明の実施例に係る電力分配方法を用いた場合のラック別のSOCシミュレーション結果をグラフの形態で示したものであり、
図9cは、ラック別のSOCシミュレーション結果を数値を含むテーブルの形態で示したものである。
【0116】
図9bを参照すれば、1サイクル動作だけでも、電池の初期状態に応じてパワーが異なって充電されながら、放電後の各電池ラック間のSOCばらつきが減少したことを確認することができる。
【0117】
また、本発明に係る電力分配方法は、ラック別の電池状態を考慮して充電/放電電力量が決定されるので、初充電サイクル時の電力量と次の充電時のラック別のパワーが変わり得る。
図9cに示す数値を通じて確認できるように、1サイクル後、初期SOCばらつきに対して各ラック間のSOCばらつきが減少し始め、その後サイクルが進行するほどSOCばらつきがさらに減少し、それによって動作中に別途のバランシング機能を具現化する必要がないことが確認できる。これは、ラック別の電池モデルによる容量、SOHに応じてラック電力が決定され、それによる動作がなされるからである。よって、本発明によれば、従来の電池システムの問題点であるSOC、SOHばらつきによる電流偏り、容量ばらつきなどを解決することができる。また、ラック単位で互いに電気化学的特性の異なる電池モデルの運営が可能となる。
【0118】
図10は、本発明の実施例に係る電力分配方法の動作フロー図である。
【0119】
図10に示す電力分配方法は、複数の電池ラック及び対応する各電池ラックに接続された複数のDC-DCコンバータを含むエネルギー貯蔵システム、特にBSCによって行われ得る。
【0120】
電池システムコントローラ(BSC)は、RBMS、DC-DCコンバータと連動し、各電池ラックに関する情報及び各DC-DCコンバータに関する情報を収集する(S1010)。
【0121】
電池システムコントローラは、収集した情報を用いて各電池ラックの種類及び状態に応じて電池ラック別の電力指示(power command)を算出及び設定する(S1020)。
【0122】
このとき、上記システム内に含まれた電池ラックがいずれも同種であり類似のSOH範囲内にある場合、上記システムによって要請される出力電力(set point)、動作中のラックのSOCの合計、及び各ラックのSOCに基づいて電池ラック別の充電又は放電電力を算出することができる。
【0123】
一方、上記システムが異種の電池ラックを含むか互いに異なるSOH範囲を有する電池パックを含む場合には、上記システムによって要請される電力(set point)、各電池ラックの定格容量、各電池ラックのSOH、及び各電池ラックのSOCに基づいて電池ラック別の電力指示を計算することができる。
【0124】
その後、算出された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過するかをチェックする(S1030)。電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する場合には、上記電池ラック別の電力指示を再計算する(S1040)。このとき、電池ラック別の電力指示を再計算するステップは、上記算出された電池ラック別の電力指示が当該電池ラックの出力限界又はDC-DCコンバータの出力限界を超過する電池ラックを除く残りのラックに対して電力指示を再計算することができる。
【0125】
電池システムコントローラは、上述した過程によって設定された電池ラック別の電力指示をDC-DCコンバータに伝達し、各DC-DCコンバータは、受信した電力指示に従って各電池ラックに対する出力制御を行うことができる(S1050)。
【0126】
従来のESSシステムでは、EMS/PMSから要求電力をPCSにのみ指令する方式を使用し、電池システムは単にエネルギー貯蔵装置として用いられて、個別電池の特性に関わらずPCS動作によって充電/放電動作を行っていた。これに対し、上述した実施例を通じて説明した本発明においては、電池システムも、EMS/PMSから要求電力を指令として受信し、個別電池ラック間のSOC差を減らすことに焦点を置いたSOC基準の電力分配方法を適用する。
【0127】
本発明の実施例に係る方法の動作は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体にコンピュータで読み取り可能なプログラム又はコードとして具現化することが可能である。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み込まれ得るデータが保存されるすべての種類の記録装置を含む。また、コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、ネットワークで接続されたコンピュータシステムに分散して、分散方式でコンピュータで読み取り可能なプログラム又はコードが保存されて実行され得る。
【0128】
本発明の一部の側面は、装置の文脈で説明されたが、それは、対応する方法による説明も示すことができ、ここで、ブロック又は装置は、方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法の文脈で説明された側面は、対応するブロック又はアイテム又は対応する装置の特徴で示すことができる。方法ステップのいくつか又は全部は、例えばマイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータ又は電子回路のようなハードウェア装置によって(又は用いて)行われ得る。いくつかの実施例において、最も重要な方法ステップの一つ以上は、このような装置によって行われ得る。
【0129】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更できることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0130】
20 電池システムコントローラ(BSC)
40 電力変換システム(PCS)
60 グリッド
70 PVモジュールファーム
200 電池システムコントローラ(BSC)
250 スイッチングハブ
400 電力変換システム(PCS)
500 DC/DCコンバータ