(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ファンデルワールスコンデンサおよびこれを用いた量子ビット
(51)【国際特許分類】
H01G 4/008 20060101AFI20241029BHJP
H10N 60/12 20230101ALI20241029BHJP
H01G 4/08 20060101ALI20241029BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241029BHJP
H01G 4/00 20060101ALI20241029BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01G4/008
H10N60/12 A
H01G4/08 Z
H01G4/30 544
H01G4/30 541
H01G4/00 B
H01G4/33 102
(21)【出願番号】P 2023557749
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022019199
(87)【国際公開番号】W WO2022197482
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-15
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520435267
【氏名又は名称】レイセオン ビービーエヌ テクノロジーズ コープ
【氏名又は名称原語表記】RAYTHEON BBN TECHNOLOGIES CORP.
【住所又は居所原語表記】10 Moulton Street Cambridge Massachusetts 02138 US
(73)【特許権者】
【識別番号】523357430
【氏名又は名称】コロンビア ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウェア,マシュー エリオット
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラン,アニヤリー テックビルエイル
(72)【発明者】
【氏名】リベイル,ギルハム ジェーン アントニー
(72)【発明者】
【氏名】オーキ,トーマス アキラ
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,ジェイムズ カーティス
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ゴヴィア,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】フォン,キン チュン
(72)【発明者】
【氏名】アントニー,アビナンダン
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/160187(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/122667(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/008
H10N 60/12
H01G 4/08
H01G 4/30
H01G 4/00
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、
前記第1の導電層上の絶縁層と、
前記絶縁層上の第2の導電層と、を含み、
前記第1の導電層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、
前記絶縁層は、第2のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、
前記第2の導電層は、第3のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成される、
コンデンサ。
【請求項2】
前記第1の導電層下の絶縁下層と、
前記第2の導電層上の絶縁上層と、をさらに含み、
前記絶縁下層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、
前記絶縁上層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成される、
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1の導電層と前記絶縁層との間の第1のグラフェン層と、
前記絶縁層と前記第2の導電層との間の第2のグラフェン層をさらに含む、
請求項1~2のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記第1の導電層が超電導層であり、前記第2の導電層が超電導層である、
請求項1~3のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記第1のファンデルワールス材料が、NbSe
2、MoTe
2、WTe
2、TaS
2、BSCCO、グラフェン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、
請求項1~4のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記第3のファンデルワールス材料は、前記第1のファンデルワールス材料と同じ材料である、
請求項1~5のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記第2のファンデルワールス材料が、BN、WSe
2、MoS
2、MoSe
2、WS
2、MoTe
2、PtS
2、PtSe
2、PtTe
2、HfS
2、HfSe
2、ReS
2、ReSe
2、SnS
3、SnSe
2、ZrS
2、ZrSe
2、シリセン、ゲルマネン、黒リン、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択される材料である、
請求項1~6のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記第1の導電層と接触する第1の電極と、
前記第2の導電層と接触する第2の電極をさらに含む、
請求項1~7のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記第1の電極が超伝導材料から構成される、請求項8に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記第1の電極が、アルミニウム、ニオブ、窒化ニオブ、窒化チタンニオブ、窒化チタン、およびモリブデンレニウムからなる群から選択される材料から構成される、
請求項9に記載のコンデンサ。
【請求項11】
請求項1に記載のコンデンサと、
前記コンデンサに接続されたジョセフソン接合を含む、
量子ビット。
【請求項12】
前記第1の導電層下の絶縁下層と、
前記第2の導電層上の絶縁上層と、をさらに含み、
前記絶縁下層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、
前記絶縁上層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成される、
請求項11に記載の量子ビット。
【請求項13】
前記第1の導電層と前記絶縁層との間の第1のグラフェン層と、
前記絶縁層と前記第2の導電層との間の第2のグラフェン層をさらに含む、
請求項11~12のいずれかに記載の量子ビット。
【請求項14】
前記第1の導電層が超電導層であり、前記第2の導電層が超電導層である、
請求項11~12のいずれかに記載の量子ビット。
【請求項15】
前記第1のファンデルワールス材料が、NbSe
2、MoTe
2、WTe
2、TaS
2、BSCCO、グラフェン、および、それらの組み合わせからなる群から選択される材料である、
請求項11~12のいずれかに記載の量子ビット。
【請求項16】
前記第3のファンデルワールス材料は、前記第1のファンデルワールス材料と同じ材料である、
請求項11~12のいずれかに記載の量子ビット。
【請求項17】
前記第2のファンデルワールス材料は、BN、WSe
2、MoS
2、MoSe
2、WS
2、MoTe
2、PtS
2、PtSe
2、PtTe
2、HfS
2、HfSe
2、Res
2、Rese
2、SnS
3、SnSe
2、ZrS
2、ZrSe
2、シリセン、ゲルマネン、黒リン、および、それらの組み合わせからなる群から選択される材料である、
請求項11~12のいずれかに記載の量子ビット。
【請求項18】
前記第1の導電層と接触する第1の電極と、
前記第2の導電層と接触する第2の電極をさらに含む、
請求項11~12のいずれかに記載の量子ビット。
【請求項19】
前記第1の電極が超伝導材料から構成される、請求項18に記載の量子ビット。
【請求項20】
前記第1の電極が、アルミニウム、ニオブ、窒化ニオブ、窒化チタンニオブ、窒化チタン、およびモリブデンレニウムからなる群から選択される材料から構成される、請求項19に記載の量子ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府のライセンス権
本発明は米国政府支援により成された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本開示による実施形態の1つ以上の態様はコンデンサに関し、より具体的には、量子ビット(キュービット)で使用するためのコンデンサに関する。
【背景技術】
【0003】
伝送線路シャントプラズマ発振量子ビット (トランズモン量子ビット)は、1つまたは2つのヤコブセン接合(Jacobsen junctions)と、1つまたは両方のヤコブセン接合(Jacobsen junctions)に並列に接続されたコンデンサを使用して製造できる。このようなシステムでは、コンデンサの損失が比較的低い場合、性能が向上する可能性がある。しかし、電気力線が(i)基板と空気の界面、(ii) 金属と空気の界面、または(iii)基板と金属の界面を通過するコンデンサ設計は、インターフェイスにおける欠陥または不純物により大きな損失を示す可能性がある。
【0004】
本開示の態様が関連するのは、この一般的な技術環境に関してである。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態によれば、第1の導電層と、前記第1の導電層上の絶縁層と、前記絶縁層上の第2の導電層を含み、前記第1の導電層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、前記絶縁層は、第2のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、前記第2の導電層は、第3のファンデルワールス材料の1つ以上の層で構成される、コンデンサが提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記コンデンサはさらに、前記第1の導電層下の絶縁下層と、前記第2の導電層上の絶縁上層を含み、前記絶縁下層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、前記絶縁上層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記コンデンサはさらに、前記第1の導電層と前記絶縁層との間にある第1のグラフェン層と、前記絶縁層と前記第2の導電層との間にある第2のグラフェン層を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記第1の導電層は超電導層であり、前記第2の導電層は超電導層である。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記第1のファンデルワールス材料は、NbSe2、MoTe2、WTe2、TaS2、BSCCO、グラフェン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記第3のファンデルワールス材料は、前記第1のファンデルワールス材料と同じ材料である。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2のファンデルワールス材料は、BN、WSe2、MoS2、MoSe2、WS2、MoTe2、PtS2、PtSe2、PtTe2、HfS2、HfSe2 、Res2、Rese2、SnS3、SnSe2、ZrS2、ZrSe2、シリセン、ゲルマネン、黒リン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記コンデンサは、さらに、前記第1の導電層と接触する第1の電極と、前記第2の導電層と接触する第2の電極とを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記第1の電極は超伝導材料から構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記第1の電極は、アルミニウム、ニオブ、窒化ニオブ、窒化チタンニオブ、窒化チタン、およびモリブデンレニウムからなる群から選択される材料から構成される。
【0015】
本開示の一実施形態によれば、請求項1に記載のコンデンサと、前記コンデンサに接続されたジョセフソン接合とを含む量子ビットが提供される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記量子ビットはさらに、前記第1の導電層下の絶縁下層と、前記第2の導電層上の絶縁上層を含み、前記絶縁下層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成され、前記絶縁上層は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記量子ビットはさらに、前記第1の導電層と前記絶縁層との間にある第1のグラフェン層と、前記絶縁層と前記第2の導電層との間にある第2のグラフェン層を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記第1の導電層は超電導層であり、前記第2の導電層は超電導層である。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のファンデルワールス材料は、NbSe2、MoTe2、WTe2、TaS2、BSCCO、グラフェン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記第3のファンデルワールス材料は、前記第1のファンデルワールス材料と同じ材料である。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2のファンデルワールス材料は、BN、WSe2、MoS2、MoSe2、WS2、MoTe2、PtS2、PtSe2、PtTe2、HfS2、HfSe2、ReS2、ReSe2、SnS3、SnSe2、ZrS2、ZrSe2、シリセン、ゲルマネン、黒リン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記量子ビットは、さらに、前記第1の導電層と接触する第1の電極と、前記第2の導電層と接触する第2の電極とを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記第1の電極は超伝導材料から構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記第1の電極は、アルミニウム、ニオブ、窒化ニオブ、窒化チタンニオブ、窒化チタン、およびモリブデンレニウムからなる群から選択される材料から構成される。
【0025】
特徴、態様、および実施形態は、添付の図面と併せて説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の実施形態による、量子ビットの概略図である。
【
図2】本開示の実施形態による、コンデンサの概略図である。
【
図3】本開示の実施形態による、コンデンサの概略図である。
【
図4A】本開示の実施形態による、テストクーポンの概略図である。
【
図4B】本開示の実施形態による、テストクーポンの概略図である。
【
図4C】本開示の実施形態による、テストクーポンの概略図である。
【
図4D】本開示の実施形態による、テストクーポンの概略図である。
【
図5】本開示の実施形態による、量子ビットの概略図である。
【
図6】本開示の実施形態による、コンデンサの概略図である。
【
図7A】本開示の実施形態による量子ビット回路の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面に関連して以下に述べる詳細な説明は、本開示に従って提供されるファンデルワールスコンデンサおよび前記コンデンサで構築された量子ビットの例示的な実施形態の説明を意図しており、そこで、いくつかの実施形態を構築または利用することができる唯一の形態を表すことを意図していない。この説明では、図示された実施形態に関連して本開示の特徴を説明する。しかし、同じまたは同等の機能および構造が、本開示の範囲内に包含されることも意図される種々の実施形態によって達成され得ることは理解されるべきである。本明細書の他の箇所で示されるように、同様の要素番号は、同様の要素または特徴を示すことを意図している。
【0028】
図1は、いくつかの実施形態における量子ビットまたは「キュービット」を示す。量子ビットは、エネルギー差によって分離された2つの量子力学的状態によって特徴付けられ得る。ジョセフソン接合105は、第1の金属(例えば超伝導金属)パッド110と第2の金属(例えば超伝導金属)パッド115との間に接続される。動作中、第1の金属パッド110および第2の金属パッド115は、ジョセフソン接合105と並列に接続されたコンデンサを形成する。前記構造は、基板120上に製造され得る。第1の金属パッド110上の第1の電荷と第2の金属パッド115上の第2の電荷との間の例示的な電気力線125が示されている。これらの力線は、1つ以上の点で、(i)基板と空気の界面、(ii)金属と空気の界面、および(iii)基板と金属の界面を横切ることができる。これらの界面では、不純物やその他の欠陥により、量子ビットのエネルギー差と同様のエネルギー差を持つ2準位系が生じる可能性がある。これらの2準位系は量子ビットと相互作用する可能性があり、その結果、損失やパフォーマンスの低下が発生する。
【0029】
いくつかの実施形態では、コンデンサは、代わりに、
図2に示されるように、ファンデルワールス材料の積層として形成される。前記コンデンサは、基板210上の第1の導電層205、第1の導電層205上の絶縁層215、および絶縁層215上の第2の導電層220を含む。第1の導電層205は、第1のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成されてもよく、絶縁層215は、第2のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成されてもよく、第2の導電層220は、第3のファンデルワールス材料の1つ以上の層から構成されてもよい。第3のファンデルワールス材料は、第1のファンデルワールス材料と同じ材料であってもよい。例示的な電気力線225が示されている。フリンジ電界(図示せず)を除いて、電界の各線は、(i)第2の導電層220と絶縁層215との間の第1の界面、および(ii)第1の導電層205と絶縁層215との間の第2の界面を通過して、第2の導電層220から第1の導電層205まで直接延在する。これらの界面は、
図1の実施形態の基板と空気との界面、金属と空気との界面、および基板と金属との界面よりも著しく清浄であり得る。
図2の実施形態には、他の界面(例えば、空気と基板との界面)が存在するが、これらの界面と相互作用するのはフリンジ電界のみであり得るため、これらの界面へのコンデンサの結合は比較的弱い可能性がある。さらに、
図2の実施形態のコンデンサは、
図1の構造よりも著しく小さい(例えば、最大で1000分の1まで小さくなる)場合がある。
【0030】
第1の導電層205および第2の導電層220は、超電導層であってもよく、例えば、十分に低い温度、電流密度、および磁場では、第1の導電層205および第2の導電層220のそれぞれが超電導状態にあってもよい。
【0031】
図3は、いくつかの実施形態におけるコンデンサを示す。
図2の実施形態と同様に、前記コンデンサは、第1の導電層305、第1の導電層305上の絶縁層310、および絶縁層310上の第2の導電層315を含む。
図3の実施形態のコンデンサは、さらに、基板(図示せず)と第1の導電層305との間の絶縁下層320と、第2の導電層315上の絶縁上層325とを含む。前記基板は、高純度シリコン(例えば、フローゾーンシリコン(flow-zone silicon))のウェーハであってもよい。
図3の実施形態では、コンデンサは、さらに、第1の電極330および第2の電極335を含み、これらのそれぞれは、超伝導(例えば、アルミニウム)電極であり得る。本明細書で使用する場合、材料または構造は、十分に低い温度、電流密度、および磁場で超伝導状態になるか、または超伝導状態に遷移する場合「超伝導」であると言える。本明細書で使用される場合、この用語(「超伝導」)は、超伝導状態にない場合の構造または材料にも適用される。このように、アルミニウムまたはアルミニウム電極は、室温であっても(超伝導状態でなくても)「超伝導」と呼ばれることがある。
【0032】
いくつかの実施形態では、コンデンサは、さらに、第1の導電層305と絶縁層310との間のグラフェン下層340と、絶縁層310と第2の導電層315との間のグラフェン上層345とを含む。グラフェン下層340およびグラフェン上層345は、それぞれ第1の導電層305および第2の導電層315に近接する結果として、超伝導層であり得る。いくつかの実施形態では、グラフェン下層340およびグラフェン上層345が存在しない。
【0033】
図2の実施形態に示されるように、(i)第1の導電層305、絶縁層310、および第2の導電層315のそれぞれは、ファンデルワールス材料から構成され得る。例えば、第1の導電層305および第2の導電層315のそれぞれは、セレン化ニオブ(NbSe
2)、テルル化モリブデン(MoTe
2)、テルル化タングステン(WTe
2)、硫化タンタル(TaS
2)、ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物(BSCCO)、これらの材料の組み合わせ(例えば、合金)、またはグラフェンのさまざまな厚さとねじれ角の1つから構成されてもよい。絶縁層310は、窒化ホウ素(BN)、セレン化タングステン(WSe
2)、硫化モリブデン(MoS
2)、MoSe
2、WS
2、MoTe
2、PtS
2、PtSe
2、PtTe
2、HfS
2、HfSe
2、ReS
2、ReSe
2、SnS
3、SnSe
2、ZrS
2、ZrSe
2、シリセン、ゲルマネン、または黒リンから構成されてもよい。他の実施形態では、他の適切な導電性(例えば、超電導性)または絶縁性の材料をそれぞれ使用してもよい。いくつかの実施形態では、絶縁層310は100未満の単分子層を含み、この層が薄いとコンデンサの単位面積あたりの静電容量が高くなる可能性がある。いくつかの実施形態では、絶縁層310は、10未満(例えば、1または2程度)の単分子層を含み、その厚さは、トンネル効果が無視できるか、許容できるほど小さい最小の厚さになるように選択してもよい。いくつかの実施形態では、絶縁下層320および絶縁上層325は、さらに、ファンデルワールス材料(例えば、BN、WSe2、MoSe2、またはMoS2)から構成されてもよい。
【0034】
図4A~4Dは、導電層と接触する電極を製造するプロセスの一部を示す。
図4A~4Dは、説明を簡単にするために、最初は基板410上にセレン化ニオブ405の層のみを含むテストクーポン上のセレン化ニオブ405の層上に、電極415を形成するプロセスを示す。いくつかの実施形態では、類似のプロセスを使用して、コンデンサ(例えば、
図3のコンデンサまたは
図6のコンデンサ(以下に詳述))の第1の導電層305および第2の導電層315と接触する電極を形成し得る。セレン化ニオブ405(例えば、二セレン化ニオブ、NbSe2)の層が(例えば、
図4Aに示されるように、基板410上に)堆積される。次に、電極を形成するために、テストクーポンを蒸発室に移動する。テストクーポンを移動するプロセス中に大気中の酸素にさらされた結果、セレン化ニオブ405の層の外面は(
図4Bに示されるように)酸化され得る(例えば、
図4B~4Dに点描面として示される酸化物被覆412で覆われる)。次に、
図4Cに示すように、セレン化ニオブ405の層の一部を除去するためにイオンミリングを使用してもよく、酸化されていないセレン化ニオブ405を露出させ、
図4Dに示すように、露出した酸化されていないセレン化ニオブ405上に電極415を形成し得る。
図4Dは、酸化物の層の下にあり、電極415と接触している酸化されていないセレン化ニオブを示す切り欠き図である。
【0035】
図5は、(i)ループに接続された2つのジョセフソン接合510を含む超伝導量子干渉計(SQUID)505、および(ii)SQUID505と並列に接続されるコンデンサ515(例えば、
図3のコンデンサまたは
図6のコンデンサ(以下に詳述))を含む、周波数可変トランズモン量子ビットを示す。いくつかの実施形態では、固定周波数トランズモン量子ビット(SQUID505の代わりに、コンデンサ515と並列に接続された単一のジョセフソン接合510を有する)を類似の方法で構築し得る。
【0036】
図6は、いくつかの実施形態におけるコンデンサ515の概略図である。コンデンサ515は、(
図3の実施形態のコンデンサと同様に)第1の導電層305、第1の導電層305上の絶縁層310、および絶縁層310上の第2の導電層315を含む。前記コンデンサはさらに、第1の導電層305および第2の導電層315にそれぞれ接触する第1の電極330および第2の電極335を含む。
図6の実施形態のコンデンサは、
図3の実施形態のコンデンサについて示される絶縁下層320、絶縁上層325、グラフェン下層340、およびグラフェン上層345が欠けている。
【0037】
図7Aは、本明細書に記載の実施形態によるコンデンサを含む量子ビットの一実施形態における実施化の写真である。
図7Bは、
図7Aの(「7B」と表示された)一部の拡大図である。前記回路は、シリコン(例えば、フロートゾーンシリコン)基板またはウェーハ上に製造し得る。
図7Aは、
図7Bに示されている、量子ビットへの3つの外部接続を示している。第1のワイヤボンドパッド705は、量子ビットに隣接する点で接地される。第1のワイヤボンドパッド705を通して供給されるバイアス電流は、量子ビットに磁場を生成し、量子ビットのSQUIDループの臨界電流を制御し、量子ビットの周波数を制御するために使用され得る。第2のワイヤボンドパッド710は、SQUIDに容量結合され得る。量子ビットの状態を制御するために(例えば、ブロッホ球における量子ビットの状態を回転させるために)、第2のワイヤボンドパッド710を介して量子ビットに制御パルスを送信し得る。
図7Aに示される第3の接続はマイクロ波共振器715であり、量子ビットを読み出すために使用し得る。マイクロ波共振器715と、第1のワイヤボンドパッド705および第2のワイヤボンドパッド710への接続とは、それぞれコプレーナマイクロ波導波管として構築され得る。
【0038】
図7Bは、上述のように、
図7Aの量子ビットの拡大図を示す。コンデンサ730は、第1の導電層305(例えば、二セレン化ニオブの層)、絶縁層310(例えば、窒化ホウ素(例えば、六方晶窒化ホウ素)の層)、および第2の導電層315(例えば、二セレン化ニオブの層)を含む。コンデンサのキャパシタンスは、第1の導電層305、絶縁層310、および第2の導電層315のそれぞれが存在する、オーバーラップ735の領域によって主に決定される。コンデンサはSQUID505に接続され、その磁場は、導電性セグメント740(コプレーナマイクロ波導波管を介して第1のワイヤボンドパッド705に接続され得る)を流れる電流を調節することによって制御され得る。
【0039】
図7Aおよび
図7Bのコンデンサ730は、次のように製造し得る。第1の導電層305は、適切な接着剥離ツールを使用して二セレン化ニオブバルク結晶 から剥離され、ベアシリコン基板に移されてもよい。次いで、絶縁層310を窒化ホウ素バルク結晶から剥離し、第1の導電層305と部分的に重なり合う(そして第1の導電層305の一部を露出させたままにする)位置に配置し、その後、第2の導電層315を二セレン化ニオブバルク結晶から剥離し、第2の導電層315の一部が、絶縁層310が第1の導電層305と重なる領域と重なるように、基板上に配置し得る。次いで、電極(例えば、アルミニウム電極)を製造して、第1の導電層305(例えば、第1の導電層305の露出部分)および第2の導電層315に接触させ得る。
【0040】
電極の製造は、(i)ウェーハ上にフォトレジストの層を形成することと、(ii)(例えば電子ビームリソグラフィを使用して)フォトレジストをパターニングし、金属(例えば、アルミニウム)が堆積する領域のフォトレジストを除去することと、(iii)ウェーハ上に金属(例えば、アルミニウム)の層を堆積することと、(iv)リフトオフプロセスを使用して、フォトレジストおよびフォトレジスト上の金属層の一部を除去すること、を含み得る。外部接続を形成する導体(例えば、第1のワイヤボンドパッド705、第2のワイヤボンドパッド710、それらに接続されたコプレーナ導波路、およびマイクロ波共振器715)は、同時に形成され得る。剥離された層の形状は予測できない場合があるため(例えば、剥離操作ごとに異なる場合がある)、形成される金属(例えば、アルミニウム)層の形状は、第1の導電層305、絶縁層310、および第2の導電層315が基板上に配置された後に設計してもよい。SQUID505は、コンデンサの前または後に製造され得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、何かの「一部」は、その物の「少なくとも一部」を意味し、したがって、その物のすべてまたはすべてよりも少ないことを意味し得る。このように、その物の「一部」には、その物全体が特別なケースとして含まれ、つまり、その物全体がその物の一部の例となる。本明細書で使用される「または」という用語は包括的であるため、例えば、「AまたはB」は、(i)A、(ii)B、ならびに、(iii)AおよびBのいずれか1つを意味する。
【0042】
ある層が2つの層の「間」にあると言及されるとき、それは2つの層の間の唯一の層であり得るか、または1つ以上の介在層も存在し得ることが理解される。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述する目的のみであり、発明概念を制限するように意図するものではない。本明細書で使用される用語「実質的に」、「約」、および同様の用語は、程度の用語としてではなく近似の用語として使用され、当業者によって認識される測定値または計算値の固有の偏差を考慮することを意図している。
【0043】
本明細書で使用される用語「主要素」は、組成物または製品中の他の単一要素の量より多い量で組成物、ポリマーまたは製品中に存在する要素を指す。対照的に、「主成分」という用語は、組成物、ポリマー、または製品の少なくとも50重量%以上を構成する成分を指す。本明細書で使用される用語「大部分」は、複数の品目に適用される場合、複数の品目の少なくとも半分を意味する。本明細書で使用される場合、ある物質で「作られている」または「で構成されている」と記載されている任意の構造または層は、(i)いくつかの実施形態では、その物質を主成分として含むこと、または(ii)いくつかの実施形態では、その物質を主要素として含むこと、と理解される。要素または層が、別の要素または層に対して、その「上(on)」にある、「接続されている」、「結合されている」、または「隣接している」と記載されている場合、他の要素または層に、直接、接している、接続されている、結合されている、または隣接している可能性があること、または1つ以上の介在する要素または層が存在し得ることを理解されたい。対照的に、要素または層が、別の要素または層に「直接接している(directly on)」、「直接接続されている」、「直接結合されている」、または「すぐ隣接している」と記載されている場合、介在する要素または層は存在しない。
【0044】
要素が別の要素に「直接接続されている」または「直接結合されている」と記載されている場合、介在する要素は存在しないことが理解される。本明細書で使用される「一般的に接続される」とは、介在要素の存在が回路の動作を定性的に変化させる介在要素を含む、任意の介在要素を含み得る電気経路によって接続されることを意味する。本明細書で使用される場合、「接続される」は、(i)「直接接続される」こと、または(ii)介在する要素と接続され、その介在する要素は定性的に回路の動作に影響を与えない要素(例えば、低い値の抵抗またはインダクタ、または短距離伝送路)であること、を意味する。
【0045】
ファンデルワールスコンデンサおよび前記コンデンサで構築された量子ビットの限定された実施形態が、本明細書において具体的に説明および図示されてきたが、当業者には多くの修正および変形が明らかであろう。したがって、本開示の原理に従って使用されるファンデルワールスコンデンサおよび前記コンデンサで構築された量子ビットは、本明細書で具体的に説明されたもの以外に具現化され得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態の特徴は、以下の特許請求の範囲およびその均等物でも定義される。