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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ガス吹き込みプラグ
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/072 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
C21C7/072 P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022130615
(22)【出願日】2022-08-18
(65)【公開番号】P2024027652
(43)【公開日】2024-03-01
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】吉金 仁基
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝文
(72)【発明者】
【氏名】松尾 一寛
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】実開平08-000049(JP,U)
【文献】特開平07-198267(JP,A)
【文献】特開2009-046756(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03517634(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/072
C21C 5/48
B22D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属にガスを吹き込むガス吹き込みプラグであって、
軸方向に延びる多孔質体と、
前記多孔質体の外周に配される不定形耐火物と、
前記多孔質体に接続されるガス管を備え、
前記軸方向において、前記多孔質体を通過して前記ガスを吹き込む先端部の側を第一側とし、前記先端部の反対側であって基端部の側を第二側とし、
前記ガス管は、前記基端部又は該基端部に隣接する前記多孔質体の外周に接続され、
前記多孔質体は、外周に棚部と消失材を備え、
前記棚部は、
前記軸方向において前記第二側に偏った位置にあり、
前記多孔質体の外周が突出して形成され、
前記多孔質体の前記軸方向に延びる中心軸と交差する方向に形成され、前記第一側に面する棚面を備え、
前記消失材は、
前記溶融金属の熱によって消失する可燃性物質からなり、
前記多孔質体の外周に沿って、前記棚面から前記第一側に向かう所定範囲に形成されるガス吹き込みプラグ。
【請求項2】
前記多孔質体は、前記先端部と前記棚部との間で、外周面が前記軸方向において屈折する境界線である屈折線を備え、
前記軸方向において、
前記屈折線よりも前記第一側であって、前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面は第一断面であり、
前記屈折線よりも前記第二側であって、前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面は第二断面であり、
前記第一断面と前記第二断面とは異なる形状である請求項1に記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項3】
前記多孔質体は、前記屈折線と交差するように、前記中心軸に垂直な方向に切断するときの断面が第三断面であり、
前記第一断面は、円形状または楕円形状であり、前記第二断面は多角形状であり、前記第三断面は前記第二断面の形状に対して隅がラウンドする形状であり、
前記第三断面は、前記第一断面及び前記第二断面とは異なる形状である請求項2に記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項4】
溶融金属にガスを吹き込むガス吹き込みプラグであって、
軸方向に延びる多孔質体と、
前記多孔質体の外周に配される不定形耐火物と、
前記多孔質体に接続されるガス管を備え、
前記軸方向において、前記多孔質体を通過して前記ガスを吹き込む先端部の側を第一側とし、前記先端部の反対側であって基端部の側を第二側とし、
前記ガス管は、前記基端部又は該基端部に隣接する前記多孔質体の外周に接続され、
前記多孔質体は、棚部と、凹部と、消失材を備え、
前記棚部は、
前記軸方向において前記第二側に偏った位置にあり、
前記多孔質体の外周が突出して形成され、
前記多孔質体の前記軸方向に延びる中心軸と交差する方向に形成され、前記第一側に面する棚面を備え、
前記凹部は、
前記棚面と、
前記軸方向において、前記棚面よりも前記第一側にあって前記第二側に面する庇部と、
前記中心軸に対する径方向の内側に凹んだ前記多孔質体の外周によって形成され、
前記消失材は、
前記溶融金属の熱によって消失する可燃性物質からなり、
前記凹部において、前記多孔質体の外周に沿って前記棚面から前記庇部に至る範囲に形成されるガス吹き込みプラグ。
【請求項5】
前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面は、
前記凹部と、前記軸方向において前記庇部よりも前記第一側の部分とは、異なる形状であるか、又は相似形状である請求項に記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項6】
二つの前記多孔質体である、第一多孔質体と第二多孔質体を備え、
前記棚部は、前記第一多孔質体に形成され、
前記第二多孔質体は、前記軸方向に沿って前記棚部の前記第二側に接続され、
前記ガス管は、前記第二多孔質体の前記基端部又は該基端部に隣接する該第二多孔質体の外周に接続され、
前記第一多孔質体の気孔率は、前記第二多孔質体よりも小さい請求項1から5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項7】
前記消失材は、外周の少なくとも一部が、前記軸方向に沿う方向において鋸刃状に形成される請求項1から5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項8】
前記消失材は、前記棚面から前記第一側に向かって、径方向の厚みが徐々に小さくなるよう形成される請求項1から5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項9】
前記消失材は、前記棚面から前記第一側に向かって、径方向の厚みが均一に形成される請求項1から5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項10】
前記消失材は、
前記棚面の全面を覆う第一部分と、
前記第一部分に連続して形成され、前記棚面から前記第一側へ向かって前記多孔質体の外周に沿う第二部分を備え、
前記第二部分は、前記棚部よりも径方向の内側に凹んで形成される請求項1から5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項11】
前記消失材は、径方向の厚みの少なくとも一部が0.1mmから3mmまでの範囲で形成される請求項1から5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項12】
前記消失材は、
前記凹部における径方向の深さに対して、少なくとも一部が1/15から3/10までの厚みである請求項4又は5に記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項13】
溶融金属にガスを吹き込むガス吹き込みプラグであって、
軸方向に延びる多孔質体と、
前記多孔質体の外周に配される不定形耐火物と、
前記多孔質体に接続されるガス管を備え、
前記軸方向において、前記多孔質体を通過して前記ガスを吹き込む先端部の側を第一側とし、前記先端部の反対側であって基端部の側を第二側とし、
前記ガス管は、前記基端部、又は該基端部に隣接する前記多孔質体の外周に接続され、
前記多孔質体は、外周に棚部と、凹部を備え、
前記棚部は、
前記軸方向において前記第二側に偏った位置にあり、
前記多孔質体の外周が突出して形成され、
前記多孔質体の前記軸方向に延びる中心軸と交差する方向に形成され、前記第一側に面する棚面を備え、
前記凹部は、
前記多孔質体の外周から、前記中心軸に交差する方向に凹み、
前記軸方向において、前記棚面と、前記棚面よりも前記第一側にあって前記第二側に面する庇部との間に形成されるガス吹き込みプラグ。
【請求項14】
前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面は、
前記凹部と、前記軸方向において前記庇部よりも前記第一側の部分とは、異なる形状であるか、又は相似形状である請求項13に記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項15】
二つの前記多孔質体である、第一多孔質体と第二多孔質体を備え、
前記棚部は、前記第一多孔質体に形成され、
前記第二多孔質体は、前記軸方向に沿って、前記棚部の前記第二側に接続され、
前記ガス管は、前記第二多孔質体の前記基端部、又は該基端部に隣接する該第二多孔質体の外周に接続され、
前記第一多孔質体の気孔率は、前記第二多孔質体よりも小さい請求項13又は14に記載のガス吹き込みプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用限界を目視可能なガス吹き込むプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、取鍋等の溶融金属容器の底部や側部の壁面に取り付けられ、所定のガス吹き込むプラグに関し、使用限界を目視可能な構成が提案されている。例えば、特許文献1によれば、取鍋等の溶融金属容器の底部や側部の壁面に取着して所定のガスを吹き込む耐火性のポーラスプラグの内部に、溶融金属容器が空状態下でポーラスプラグの溶損状況を検知可能に識別容易な矩形状、円形状、模様状等の幅がほぼ0.5~10mm、深さがほぼ5~50mmの空間部を設けるとともに、空間部を設けた断面部の中央部に所定の大きさのガスプール部を設けたことを特徴とするガス吹込用ポーラスプラグが記載されている。
【0003】
これによれば、たとえば、溶融金属容器の底部に上記のポーラスプラグを取着し、アルゴンガス等の不活性ガスを吹き込んで溶融金属を吹錬して所要の回数使用した結果、ポーラスプラグの上部の円錐状部が溶損し、下部の四角錐状部が表われた。その際、四角環状の空間部が表われ、空容器の未だ赤熱状態で、空間部のへこんだ部分が肉眼観察で影のように黒枠状となって見え、溶損が通気性耐火物の下部の四角錐状部に到達したことが明瞭に判別できたものである。従って、ポーラスプラグの溶損量の判断を誤まることなく、使用限界を肉眼で確認でき、ポーラスプラグの交換や溶融金属容器等の補修の時期を正確に判断できるものである、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平3-43221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例では以下の課題がある。特許文献1に記載の通気性耐火物は、先端部から空間部に至るまで、連続的な円錐台形状、或いは角錐台形状である。特に、通気性耐火物は、先端部と空間部との間に段部があると、ガス供給側からのガスによる圧力によって、段部から先端部の間が吹き飛んでしまうという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、従来の課題を解決するもので、使用限界を目視可能であって、且つ使用限界前に吹き飛ぶことが抑制されるガス吹き込みプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係るガス吹き込みプラグは、溶融金属にガスを吹き込み、軸方向に延びる多孔質体と、前記多孔質体の外周に配される不定形耐火物と、前記多孔質体に接続されるガス管を備え、前記軸方向において、前記多孔質体を通過して前記ガスを吹き込む先端部の側を第一側とし、前記先端部の反対側であって基端部の側を第二側とし、前記ガス管は、前記基端部又は該基端部に隣接する前記多孔質体の外周に接続され、前記多孔質体は、外周に棚部を備え、前記棚部は、前記多孔質体の前記軸方向に延びる中心軸と交差する方向であって、前記第一側に面する棚面が形成され、前記軸方向において前記第二側に偏った位置に形成される。
【0008】
これによれば、棚部は、多孔質体の第二側に偏った位置の外周に形成されるので、多孔質体がガス管から送られたガスによって第一側に向かう圧力を受けて移動しようとすると、不定形耐火物によってせき止められる。よって、多孔質体が第一側へ吹き飛ぶことが抑制される。また、多孔質体が溶損して棚部に達すると、形状の変化を目視確認できるので、多孔質体が終端部まで溶損する前に使用限界を確認することができる。
【0009】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面が、前記先端部に隣接する第一断面と、前記棚部に対して前記第一側に隣接する第二断面とは、異なる形状でもよい。
【0010】
この場合、ガス吹き込みプラグは、第一断面と第二断面とが異なる形状なので、多孔質体の第二断面が現れると使用限界に近づいたことを確認することができる。
【0011】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面が、さらに前記先端部と前記棚部との間に、前記第一断面と前記第二断面とは異なる形状である第三断面を有してもよい。
【0012】
この場合、ガス吹き込みプラグは、第一断面と第二断面との間に、異なる形状である第三断面を備えるので、多孔質体が溶損する進行具合を断面形状の変化で確認することができる。
【0013】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記棚面の前記第一側に消失材を備えてもよい。この場合、ガス吹き込みプラグは、棚部の第一側に消失材を備えるので、容器から溶融金属を取り出すときに、消失材が消失して空隙ができ、空隙に地金が貯留する。貯留した地金は、酸素洗浄時の高温下で白熱して発光する。よって、地金の発光を認識することで、第一多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0014】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記多孔質体が外周から内側へ凹んで形成される凹部を備え、前記凹部は、前記軸方向において前記第二側へ偏った位置であって、前記第一側から前記第二側へ至る所定の領域に形成され、前記棚部は、前記凹部の一部であって、該凹部の前記第二側の端部に形成されてもよい。
【0015】
この場合、ガス吹き込みプラグは、一部に棚部を形成する凹部を備えるので、多孔質体が第一側に向かう圧力を受けて移動しようとすると、凹部に充填された不定形耐火物によってせき止められる。よって、多孔質体が第一側へ吹き飛ぶことが抑制される。また、多孔質体の溶損が進んで先端部が凹部に達すると、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0016】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記凹部の内側であって、前記第一側から前記第二側に至る領域に消失材を備えてもよい。
【0017】
この場合、ガス吹き込みプラグは、凹部の内側に消失材を備えるので、取鍋等から溶融金属が取り出され、ガス吹き込みプラグが酸素洗浄されるときに、消失材が消失してできた空隙に貯留された地金が発光する。よって、凹部における地金の発光を認識することで、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0018】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記多孔質体の前記中心軸に垂直な断面が、前記凹部と、前記凹部に対して前記第一側に隣接する部分とは、異なる形状であるか、又は相似形状でもよい。
【0019】
この場合、ガス吹き込みプラグは、断面が変化することによって多孔質体の溶損が凹部にまで達したことを認識できるので、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0020】
また、前記ガス吹き込みプラグは、二つの前記多孔質体である、第一多孔質体と第二多孔質体を備え、前記第一多孔質体と前記第二多孔質体は、前記軸方向に沿って接続され、前記第一多孔質体は前記第二多孔質体に対して前記第一側にあり、前記ガス管は、前記第二多孔質体の前記基端部又は該基端部に隣接する該第二多孔質体の外周に接続され、前記第一多孔質体の気孔率は、前記第二多孔質体よりも小さく、前記棚部は、前記第一多孔質体に形成されてもよい。
【0021】
この場合、ガス吹き込みプラグは、多孔質体が第一多孔質体と第二多孔質体を備え、棚部は気孔率が小さい第一多孔質体に形成される。よって、ガス管から送られたガスを多孔質体へ効率よく流通させ、溶融金属中に効率よく吹き込むことができる。また、棚部は気孔率が小さい第一多孔質体に形成されるので、気孔率が大きい第二多孔質体にまで溶損が達する前に使用限界を確認することができる。
【0022】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記消失材が前記多孔質体の外周に沿って備えられ、該消失材の外周の少なくとも一部が、前記軸方向に沿う方向において鋸刃状に形成されてもよい。
【0023】
この場合、ガス吹き込みプラグは、消失材が鋸刃状に形成されるので、消失材が消失して形成される空隙も鋸刃状に形成される。空隙に流入して貯留された地金が容器の傾転時に流出しようとすると、鋸刃形状によって抵抗が発生し、地金は流出が抑制される。よって、空隙に貯留する地金の発光を認識することで、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0024】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記消失材が前記多孔質体の外周に沿って備えられ、前記棚面から前記第一側に向かって、径方向の厚みが徐々に小さくなるよう形成されてもよい。
【0025】
この場合、ガス吹き込みプラグは、消失材が消失すると、多孔質体と不定形耐火物との間に空隙ができる。空隙は、径方向において第二側よりも第一側の厚みが小さくなる。地金が空隙に流入して貯留されたとき、地金が容器の傾転時に第一側へ向かって流出しようとすると、第一側である出口が第二側に比べて狭いため抵抗が発生し、地金の流出が抑制される。よって、空隙に貯留する地金の発光を認識することで、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0026】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記消失材が前記多孔質体の外周に沿って備えられ、前記棚面から前記第一側に向かって、径方向の厚みが均一に形成されてもよい。
【0027】
この場合、ガス吹き込みプラグは、消失材が消失すると、多孔質体と不定形耐火物との間に空隙ができる。空隙は、径方向に均一の厚みであり、地金が流入して貯留される。貯留された地金が流出しようとすると、径方向に一定の厚みで形成される流路を通る必要があるので、抵抗が発生し、流出が抑制される。よって、地金の発光を認識することで、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0028】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記消失材が、前記棚面の全面を覆う第一部分と、前記第一部分に連続して形成され、前記棚面から前記第一側へ向かって前記多孔質体の外周に沿う第二部分を備え、前記第二部分は、前記棚部よりも径方向の内側に凹んで形成されてもよい。
【0029】
この場合、ガス吹き込みプラグは、消失材が消失すると、多孔質体と不定形耐火物との間に空隙ができる。空隙は、棚面の全面を覆う第一部分に相当する部分と、多孔質体の外周に沿って棚部よりも径方向の内側に凹んで形成される第二部分に相当する部分に形成される。容器の傾転時に、第一部分に相当する部分に貯留された地金が第一側へ流出しようとすると、第二部分に相当する部分を通るため抵抗が生じて、地金は第一側への流出が抑制される。よって、ガス吹き込みプラグ1は、空隙に貯留する地金の発光を認識することで、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0030】
また、前記ガス吹き込みプラグは、前記消失材の径方向の厚みの少なくとも一部が0.1mmから3mmまでの範囲で形成されてもよい。この場合、消失材の厚みが0.1mmから3mmまでの範囲なので、消失材が消失後に流入して貯留される地金が薄くなり凝固しやすい。よって、ガス吹き込みプラグは、傾転しても地金の流出が抑制されるので、地金の発光を認識することで、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0031】
また、前記ガス吹き込みプラグの前記消失材は、前記凹部における径方向の深さに対して、少なくとも一部が1/15から3/10までの厚みでもよい。この場合、消失材は凹部の深さに対して厚みが薄いので、消失材が消失後に流入して貯留される地金が薄くなり凝固しやすい。よって、ガス吹き込みプラグは、傾転しても地金の流出が抑制されるので、地金の発光を認識することで、多孔質体が使用限界に近づいたことを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第一実施形態と第二実施形態のガス吹き込みプラグ1a、1bを示す断面図であり、(a)はガス管8が基端部12に接続される例を示す全体図を示し、(b)はガス管8が多孔質体2の外周に接続される例の部分説明図である。
図2】第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aの多孔質体2aを示す斜視図である。
図3】ガス吹き込みプラグ1aにおける図1のそれぞれの断面図であり、(a)は断面I-Iを示し、(b)は断面II-IIを示し、(c)は断面III-IIIを示す。
図4】第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bの多孔質体2bを示す斜視図である。
図5】ガス吹き込みプラグ1bにおける図1のそれぞれの断面図であり、(a)は断面I-Iを示し、(b)は断面III-IIIを示す。
図6図1におけるA部詳細図であり、消失材6aを示す。
図7図1におけるA部詳細図であり、消失材6bを示す。
図8図1におけるA部詳細図であり、消失材6cを示す。
図9図1におけるA部詳細図であり、消失材6dを示す。
図10】本発明の第三実施形態と第四実施形態のガス吹き込みプラグ1c、1dを示す断面図である。
図11】第三実施形態のガス吹き込みプラグ1cの多孔質体2cを示す斜視図である。
図12】ガス吹き込みプラグ1cにおける図10のそれぞれの断面図であり、(a)は断面IV-IVを示し、(b)は断面V-Vを示し、(c)は断面VI-VIを示す。
図13】第四実施形態のガス吹き込みプラグ1dの多孔質体2dを示す斜視図である。
図14】ガス吹き込みプラグ1dにおける図10のそれぞれの断面図であり、(a)は断面IV-IVを示し、(b)は断面V-Vを示し、(c)は断面VI-VIを示す。
図15図10におけるB部詳細図であり、消失材6aを示す。
図16図10におけるB部詳細図であり、消失材6bを示す。
図17図10におけるB部詳細図であり、消失材6cを示す。
図18図10におけるB部詳細図であり、消失材6dを示す。
図19】本発明のガス吹き込みプラグ1において、多孔質体2が単独の場合を示す断面図である。
図20】本発明のガス吹き込みプラグ1において、多孔質体2が溶損した状態を示す断面図である。
図21】本発明のガス吹き込みプラグ1において、多孔質体2が溶損し、消失材6が消失して地金が流入し、発光する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明を具現化したガス吹き込みプラグ1を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0034】
<全実施形態に共通の構成>
本発明の態様に係るガス吹き込みプラグ1において、全実施形態に共通の構成を説明する。本発明に係るガス吹き込みプラグ1は、精錬プロセスにおいて、溶融金属の攪拌、或いは成分調整の目的でガスを吹き込むために、取鍋等の底部又は側面に設置される。例として図1及び図10に示すように、溶融金属にガスを吹き込むガス吹き込みプラグ1は、軸方向に延びる多孔質体2と、多孔質体2の外周に配される不定形耐火物9と、多孔質体2に接続されるガス管8を備える。ガス吹き込みプラグ1は、鉄皮10によって外殻が形成されて覆われる。
【0035】
軸方向において、多孔質体2を通過してガスを吹き込む先端部11の側を第一側とし、先端部11の反対側であって基端部12の側を第二側とする。ガス管8は、基端部12又は基端部12に隣接する多孔質体2の外周に接続される。図1(a)は、ガス管8が基端部12に接続される例を示し、図1(b)は、ガス管8が基端部12に隣接する多孔質体2の外周に接続される例を示す。多孔質体2は、外周に棚部5が形成される。棚部5は、軸方向において第二側に偏った位置に形成される。棚部5には、多孔質体2の軸方向に延びる中心軸Cと交差する方向であって、第一側に面する棚面15が形成される。
【0036】
また、多孔質体2は、棚面15の第一側に消失材6を備える。消失材6の具体的な構成は後述する。消失材6は、例としてロックウール等の可燃性物質を使用する。なお、可燃物質であれば他の材料でもよい。
【0037】
図20に示すように、多孔質体2はガス吹き込みプラグ1を使用するにつれて溶損し、先端部11の位置は第一側から第二側へ向かって変化する。消失材6は、溶融金属の熱によって消失し、消失材6があった部分に空隙が生じる。図21に示すように、多孔質体2が溶損し、先端部11の位置が消失材6による空隙の位置に達すると、空隙に地金が侵入して貯留する。溶融金属排出後も貯留した地金は酸素洗浄時の高温下で白熱し、周辺の多孔質体2或いは不定形耐火物9よりも明るく発光する。なお、先端部11の位置が移動するのは、使用によって多孔質体2が溶損する場合に加え、溶融金属を排出後に行う酸素洗浄によって実質的に多孔質体2が部分的に削られる場合がある。
【0038】
また、図1及び図10等に示すように、ガス吹き込みプラグ1は、例として二つの多孔質体2である、第一多孔質体3と第二多孔質体4を備える。第一多孔質体3と第二多孔質体4は、軸方向に沿って接続され、第一多孔質体3は第二多孔質体4に対して第一側にある。ガス管8は、第二多孔質体4の基端部12又は基端部12に隣接する第二多孔質体4の外周に接続される。第一多孔質体3の気孔率は、第二多孔質体4よりも小さく、棚部5は、第一多孔質体3に形成される。例として、第一多孔質体3は円錐台状の基材が使用され、第二多孔質体4は四角錐台状の基材が使用される。なお、第一多孔質体3は角錐台状の基材を使用してもよいし、第二多孔質体4は円錐台状の基材を使用してもよい。
【0039】
なお、図19に示す以外は、多孔質体2は第一多孔質体3と第二多孔質体4を備える例について説明しているが、図19に示すように多孔質体2は一つでもよい。
【0040】
<各実施形態に共通の構成による効果>
以上説明した各実施形態に共通の構成によれば、以下の効果を奏する。図1及び図10に示すように、棚部5は、多孔質体2の第二側に偏った位置の外周に形成されるので、多孔質体2がガス管8から送られるガスによって第一側に向かう圧力を受けて移動しようとすると、不定形耐火物9によってせき止められる。よって、多孔質体2が第一側へ吹き飛ぶことが抑制される。また、多孔質体2が溶損して棚部5に達すると目視確認できるので、多孔質体2が終端部まで溶損する前に使用限界を確認することができる。
【0041】
ガス吹き込みプラグ1は、溶融金属との接触、或いは溶融金属を排出後に行う酸素洗浄により損傷するため、適切な時期に交換を行う。図20に示すように、使用していくと先端部11の側から多孔質体2の溶損が進み、先端部11の位置が第二側へ移動する。多孔質体2は、ガス管8から送られるガスによって第一側へ押し上げる圧力を受ける。従来は、多孔質体2の溶損が進むと重量が減少するため、第一側へ吹き飛ばされやすくなる。本発明に係るガス吹き込みプラグ1は、従来の課題を解決するものである。
【0042】
また、ガス吹き込みプラグ1は、棚面15の第一側に消失材6を備えるので、取鍋等の容器から溶融金属を取り出すときに、消失材6が消失してできた空隙に地金の一部が貯留する。貯留した地金は、酸素洗浄時の高温下で白熱して発光する。よって、ガス吹き込みプラグ1は、地金の発光を認識することで、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0043】
また、ガス吹き込みプラグ1は、多孔質体2が第一多孔質体3と第二多孔質体4を備え、棚部5は気孔率が小さい第一多孔質体3に形成される。よって、ガス管8から送られたガスを多孔質体2へ効率よく流通させ、溶融金属中に効率よく吹き込むことができる。また、棚部5は気孔率が小さい第一多孔質体3に形成されるので、気孔率が大きい第二多孔質体4にまで溶損が達する前に使用限界を確認することができる。
【0044】
<<各実施形態の構成>>
次に、本発明の態様に係るガス吹き込みプラグ1の各実施形態に固有の構成を説明する。なお、すでに説明した共通の構成及び効果は説明を省略する。実施形態は、第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aから第五実施形態のガス吹き込みプラグ1eまでの五形態について説明する。このうち、第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aと第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bからなる第一グループと、第三実施形態のガス吹き込みプラグ1cと第四実施形態のガス吹き込みプラグ1dからなる第二グループに分類できる。第五実施形態のガス吹き込みプラグ1eは、第一グループと第二グループの双方に共通する変形例である。
【0045】
<第一グループの構成>
図1から図9までが第一グループを示す。第一グループのガス吹き込みプラグ1は、後述する第二グループのガス吹き込みプラグ1とは異なり、凹部7の形態をなさない状態で棚部5が形成される。消失材6は、棚部5の第一側であって、図6等に示すように領域Sの範囲内に取り付けられる。領域Sは、屈折線13よりも第一側に形成される多孔質体2の外周面を、屈折線13から棚部5に向かって延長させた仮想線と、屈折線13から棚部5までに形成される多孔質体2の外周と、棚面15によって囲われた領域である。屈折線13は、多孔質体2の外周面が軸方向において屈折する境界線を示す。
【0046】
図1図2、及び図4に示すように、第一グループにおける多孔質体2の外周は、先端部11と基端部12との間の屈折線13において、第一側と第二側との形態が異なる。例として、多孔質体2の基材は円錐台形状である。先端部11から基端部12に向かって外径寸法が増加し、屈折線13から棚部5までの第二側は、外形寸法が一定である。第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aと第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bにおいて、それぞれの屈折線13から棚部5までの第二側の外形形状は後述する。
【0047】
棚部5の外周は、先端部11から屈折線13までの傾斜線の延長線上に形成される。棚面15は、屈折線13から棚部5までの間で外径が広がった領域に形成される。例として、棚部5は、多孔質体2に使用する円錐台形状の基材に対し、屈折線13から棚部5までの外周を削り取って形成される。よって、棚部5の外周は、屈折線13と先端部11との間の多孔質体2の外周と同様の傾斜角度である。
【0048】
<第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aの構成>
図2及び図3を参照して、本発明の態様に係る第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aを説明する。図3(a)と図3(c)に示すように、ガス吹き込みプラグ1aは、多孔質体2aである第一多孔質体3aの中心軸Cに垂直な断面が、先端部11に隣接する第一断面21と、棚部5aに対して第一側に隣接する第二断面22とで異なる形状である。
【0049】
また、図3(b)に示すように、多孔質体2aである第一多孔質体3aの中心軸Cに垂直な断面は、さらに先端部11と棚部5aとの間に第一断面21と第二断面22とは、異なる形状である第三断面23を有する。
【0050】
図2に示すように、第一多孔質体3aの外周は、屈折線13から棚部5aに至るまで中心軸Cに平行な四つの平面によって形成される。図3(c)に示すように、棚部5aの第一側に隣接する部分の第二断面22は例として正方形である。なお、第二断面22は多角形状、又はその他の形状でもよい。屈折線13よりも第一側であって、先端部11に隣接する第一断面21は円形状である。なお、第一断面21は楕円でもよい。さらに、屈折線13と交差するように中心軸Cの垂直方向に切断したときの第三断面23は、正方形に対して四隅がラウンドする形状である。なお、第一多孔質体3aの外周は、屈折線13から棚部5aに至るまでは、少なくとも一つの平面が含まれればよい。平面が含まれることにより、第二断面22と第三断面23との形状は異なる。
【0051】
<第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aの構成による効果>
以上説明した第一実施形態のガス吹き込みプラグ1aによれば、以下の効果を奏する。図3に示すように、ガス吹き込みプラグ1aは、第一断面21と第二断面22とが異なる形状なので、多孔質体2aである第一多孔質体3aの第二断面22が現れると使用限界に近づいたことを確認することができる。
【0052】
また、図3に示すように、ガス吹き込みプラグ1aは、第一断面21と第二断面22との間に、異なる形状である第三断面23を備えるので、多孔質体2aである第一多孔質体3aが溶損する進行具合を断面形状の変化で確認することができる。
【0053】
<第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bの構成>
次に、図4及び図5を参照して、第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bを説明する。ガス吹き込みプラグ1bは、ガス吹き込みプラグ1aに対して、第一多孔質体3bの屈折線13と棚部5bとの間の外周形状が異なる。第一多孔質体3bは、屈折線13と棚部5bとの間の外周形状が、中心軸Cを中心とする円筒面によって形成される。
【0054】
棚部5bの外周形状は、ガス吹き込みプラグ1aと同様である。棚面15は、屈折線13から棚部5bまでの間で外径が広がった領域に形成され、中心軸Cの周りに径方向に均等な範囲でリング状に形成される。
【0055】
<第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bの構成による効果>
以上説明した第二実施形態のガス吹き込みプラグ1bによれば、以下の効果を奏する。ガス吹き込みプラグ1bの棚面15は、中心軸Cの周りに径方向に均等な範囲でリング状に形成される。よって、第一多孔質体3bが第一側に向かう圧力を受けて移動しようとすると、周方向において不定形耐火物9によって均等にせき止められ、第一側へ吹き飛ぶことがより抑制される。
【0056】
<第二グループの構成>
次に、本発明の態様に係るガス吹き込みプラグ1の第二グループを説明する。図10から図18までが第二グループのガス吹き込みプラグ1を示す。第二グループのガス吹き込みプラグ1に共通の構成を説明する。第二グループのガス吹き込みプラグ1は、図10等に示すように、多孔質体2が、外周から内側へ凹んで形成される凹部7を備える。凹部7は、軸方向において第二側へ偏った位置であって、第一側から第二側へ至る所定の領域に形成される。棚部5は、凹部7の一部であって、凹部7の第二側の端部に形成される。凹部7は、第一側に屈折線13が第一側の境界線となって庇部14が形成され、第二側に棚面15が形成される。凹部7は、庇部14と、棚面15と、径方向の内側に凹んだ多孔質体2の外周によって形成される。
【0057】
また、図10等に示すように、ガス吹き込みプラグ1は、凹部7の内側であって、第一側から第二側に至る領域に消失材6を備える。
【0058】
また、図12及び図14に示すように、多孔質体2の中心軸Cに垂直な断面は、凹部7と、凹部7に対して第一側に隣接する部分とは、異なる形状であるか、又は相似形状である。
【0059】
また、すでに説明したように、第二グループのガス吹き込みプラグ1は、例として二つの多孔質体2である、第一多孔質体3と第二多孔質体4を備える。棚部5を含めた凹部7は、第一多孔質体3の第二側に偏って形成される。
【0060】
<第二グループの構成による効果>
以上説明した第二グループのガス吹き込みプラグ1に共通の構成によれば、以下の効果を奏する。図10に示すように、ガス吹き込みプラグ1は、一部に棚部5を形成する凹部7を備えるので、多孔質体2が第一側に向かう圧力を受けて移動しようとすると、凹部7に充填された不定形耐火物9によってせき止められる。よって、多孔質体2が第一側へ吹き飛ぶことが抑制される。また、多孔質体2の溶損が進んで先端部11が凹部7に達すると、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0061】
また、図10等に示すように、ガス吹き込みプラグ1は、凹部7の内側に消失材6を備えるので、取鍋等から溶融金属を取り出すとき、或いは酸素洗浄を行ったときに、消失材6が消失してできた空隙に地金の一部が貯留して発光する。よって、凹部7における地金の発光を認識することで、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0062】
また、図12及び図14に示すように、ガス吹き込みプラグ1は、凹部7と、凹部7に対して第一側に隣接する部分とは異なる断面形状であるか、又は相似形状である。ガス吹き込みプラグ1は、断面が変化することによって多孔質体2の溶損が凹部7にまで達したことを認識できるので、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0063】
<第三実施形態のガス吹き込みプラグ1cの構成>
次に、図11及び図12を参照して、本発明の態様に係る第三実施形態のガス吹き込みプラグ1cを説明する。図11に示すように、ガス吹き込みプラグ1cの第一多孔質体3cは、凹部7cの内側が中心軸Cに平行な四つの平面によって形成される。図12(a)及び図12(c)に示すように、第一多孔質体3cの中心軸Cに垂直な断面は、先端部11に隣接する第一断面21と、棚部5cに対して第一側に隣接する第二断面22とは、異なる形状である。すなわち、第一断面21は円形であり、第二断面22は正方形である。
【0064】
また、図12(b)及び図12(c)に示すように、第一多孔質体3cの中心軸Cに垂直な断面は、凹部7cの第二断面22と、凹部7cに対して第一側に隣接する部分である第三断面23とは、異なる形状である。すなわち、第三断面23は円形であり、第二断面22は正方形である。消失材6は、凹部7cの内側を形成する中心軸Cに平行な四つの平面周りに備えられる。なお、第二断面22は正方形に限らず、多角形でもよいし、円形以外の他の形状でもよい。或いは、第二断面22が円形であり、第三断面23が円形以外の他の形状でもよい。
【0065】
<第三実施形態のガス吹き込みプラグ1cの構成による効果>
以上説明した第三実施形態のガス吹き込みプラグ1cによれば、以下の効果を奏する。すでに説明した共通の効果に加え、ガス吹き込みプラグ1cは、第二断面22と第三断面23とが異なる形状なので、第一多孔質体3cが使用限界に近づいたことを断面形状の変化で確認できる。
【0066】
<第四実施形態のガス吹き込みプラグ1dの構成>
次に、図13及び図14を参照して、本発明の態様に係る第四実施形態のガス吹き込みプラグ1dを説明する。図13に示すように、ガス吹き込みプラグ1dは、凹部7dの内側が中心軸Cを中心とする円筒形状、又は円錐台形状に形成される。図14(a)及び図14(c)に示すように、第一多孔質体3dの中心軸Cに垂直な断面は、先端部11に隣接する第一断面21と、棚部5dに対して第一側に隣接する第二断面22とは、同一形状であって相似形状である。すなわち、第一断面21と第二断面22は円形である。
【0067】
また、図14(b)及び図14(c)に示すように、第一多孔質体3dの中心軸Cに垂直な断面は、凹部7dの第二断面22と、凹部7dに対して第一側に隣接する部分である第三断面23とは、相似形状である。すなわち、第二断面22と第三断面23は円形であり、第二断面22は第三断面23よりも径が小さい。消失材6は、凹部7dの円筒面又は円錐台面の周りに備えられる。なお、第一断面21、第二断面22、及び第三断面23は、円形に限らず楕円形、或いは多角形を含む他の形状でもよい。
【0068】
<第四実施形態のガス吹き込みプラグ1dの構成による効果>
以上説明した第四実施形態のガス吹き込みプラグ1dによれば、以下の効果を奏する。すでに説明した共通の効果に加え、ガス吹き込みプラグ1dは、第二断面22と第三断面23とが相似形状なので、第一多孔質体3dの外径が急激に変化することで、溶損が凹部7dに達したことを確認できる。よって、第一多孔質体3dが使用限界に近づいたことを断面形状の大きさの変化で確認できる。また、凹部7dの内側は円筒面或いは円錐台面なので、第一多孔質体3dは、円錐台形状の基材から容易に凹部7dを加工ができる。
【0069】
<消失材6の各形態の説明>
次に、消失材6について説明する。ガス吹き込みプラグ1は、棚部5の第一側に消失材6を備える。図6から図9までは、第一グループのガス吹き込みプラグ1における消失材6を示した図であり、図15から図18までは、第二グループのガス吹き込みプラグ1における消失材6を示した図である。以下、消失材6の各形態について説明する。
【0070】
<消失材6aの構成と効果>
図6及び図15を参照して、消失材6aについて説明する。消失材6aは、第一多孔質体3の外周に沿って備えられ、消失材6aの外周の少なくとも一部が、軸方向に沿う方向において鋸刃状に形成される。図6に示すように、第一グループのガス吹き込みプラグ1は、領域Sの範囲内において、消失材6aが棚面15から屈折線13の途中まで鋸刃状の断面形状に形成される。また、図15に示すように、第二グループのガス吹き込みプラグ1は、凹部7の範囲内において、消失材6aが棚面15から庇部14までの間で鋸刃状の断面形状に形成される。
【0071】
すでに説明したように、消失材6aは溶融金属の熱によって消失し、第一多孔質体3と不定形耐火物9との間に空隙ができる。消失材6aは鋸刃状に形成されるので、消失材6aが消失して形成される空隙も断面形状が鋸刃状に形成される。ガス吹き込みプラグ1は、使用によって第一多孔質体3が溶損して先端部11が消失材6aによる空隙の位置に達すると、溶融金属が地金となって空隙に流入して貯留される。容器を傾転した際に地金が第一側へ向かって流出しようとすると、鋸刃形状によって抵抗が発生するので地金の流出が抑制される。よって、ガス吹き込みプラグ1は、地金の発光を認識することで、第一多孔質体3が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0072】
<消失材6bの構成と効果>
次に、図7及び図16を参照して、消失材6bについて説明する。消失材6bは、第一多孔質体3の外周に沿って備えられ、棚面15から第一側に向かって、径方向の厚みが徐々に小さくなるよう形成される。図7に示すように、第一グループのガス吹き込みプラグ1の消失材6bの外周は、領域Sの範囲内であって、棚面15において棚部5の外周よりも内側に凹んだ位置から屈折線13に向かって延びる線によって形成される。また、図16に示すように、第二グループのガス吹き込みプラグ1の消失材6bは、凹部7の内側であって、棚面15から庇部14に向かって径方向の厚みが徐々に小さくなるよう形成される。
【0073】
この場合、消失材6bが消失すると、第一多孔質体3と不定形耐火物9との間に空隙ができる。空隙は、径方向において第二側よりも第一側の厚みが小さくなる。地金が空隙に流入して貯留されたとき、容器を傾転した際に第一側へ向かって流出しようとすると、第一側である出口が第二側に比べて狭いため抵抗が発生して地金の流出が抑制される。よって、ガス吹き込みプラグ1は、地金の発光を認識することで、第一多孔質体3が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0074】
<消失材6cの構成と効果>
次に、図8及び図17を参照して、消失材6cについて説明する。消失材6cは、第一多孔質体3の外周に沿って備えられ、棚面15から第一側に向かって、径方向の厚みが均一に形成される。図8に示すように、第一グループのガス吹き込みプラグ1は、消失材6cが領域Sにおいて棚面15から屈折線13の途中まで径方向の厚みが均一に形成される。また、図17に示すように、第二グループのガス吹き込みプラグ1は、消失材6cが凹部7の内側であって、棚面15から庇部14に向かって径方向の厚みが均一に形成される。
【0075】
この場合、消失材6cが消失すると、第一多孔質体3と不定形耐火物9との間に空隙ができる。空隙は、棚面15から第一側に向かって、径方向に均一の厚みである。地金が
空隙に流入して貯留され、貯留された地金が第一側へ向かって流出しようとすると、径方向に一定の厚みで形成される流路を通る必要があるので抵抗が発生し、流出が抑制される。特に、消失材6cの径方向の厚みが薄いと、地金流出のための流路が狭いため流出が抑制される。よって、ガス吹き込みプラグ1は、地金の発光を認識することで、第一多孔質体3が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0076】
<消失材6dの構成と効果>
次に、図9及び図18を参照して、消失材6dについて説明する。消失材6dは、棚面15の全面を覆う第一部分16aと、第一部分16aに連続して形成され、さらに棚面15から第一側へ向かって第一多孔質体3の外周に沿う第二部分16bを備える。第二部分16bは、棚部5よりも径方向の内側に凹んで形成される。
【0077】
図9に示すように、第一グループのガス吹き込みプラグ1は、消失材6dの第一部分16aが棚面15の全面を覆う。さらに、第一部分16aに連続し、消失材6dの第二部分16bが、領域Sの範囲内で第一多孔質体3の外周に沿って棚部5よりも径方向の内側に凹んで形成される。また、図18に示すように、第二グループのガス吹き込みプラグ1は、消失材6dの第一部分16aが棚面15の全面を覆う。さらに、第一部分16aに連続し、消失材6dの第二部分16bが、凹部7の内部において第一多孔質体3の外周に沿って棚部5よりも径方向の内側に凹んで形成される。
【0078】
消失材6dは、第一部分16aと第二部分16bを含めて、同一材料によって一体で形成してもよいし、第一部分16aと第二部分16bとを異なる材質で形成してもよい。例として、第一部分16aは鋼材を使用し、第二部分16bはセラミックシートを使用してもよい。
【0079】
この場合、消失材6dが消失すると、第一多孔質体3と不定形耐火物9との間に空隙ができる。空隙は、棚面15の全面を覆う第一部分16aに相当する部分と、第一多孔質体3の外周に沿って棚部5よりも径方向の内側に凹む第二部分16bに相当する部分に形成される。地金が空隙に流入すると、断面形状でL字状になって貯留される。第一部分16aに相当する部分に貯留された地金は、容器の傾転時に第一側へ流出しようとすると第二部分16bに相当する部分の空隙を通る必要がある。第二部分16bに相当する部分の空隙は狭いため、抵抗が生じて地金は第一側への流出が抑制される。よって、ガス吹き込みプラグ1は、地金の発光を認識することで、第一多孔質体3が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0080】
<消失材6の径方向における厚みと効果>
次に、消失材6の径方向における厚みを説明する。ここで説明する消失材6の厚みは、図6から図9、及び図15から図18までの例において適用可能である。消失材6は、径方向の厚みの少なくとも一部が0.1mmから3mmまでの範囲で形成されてもよい。この場合、消失材6の厚みの少なくとも一部が0.1mmから3mmまでの範囲なので、消失材6が消失後に流入して貯留される地金が薄くなり、多孔質体2からの冷却効果によって凝固しやすい。よって、ガス吹き込みプラグ1は、傾転しても地金の流出が抑制されるので、地金の発光を認識することで、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0081】
なお、消失材6は径方向の厚みが3mmを超えると、多孔質体2からの冷却効果が低減するため、地金の一部が液体状態のままとなる。よって、厚みは3mm以下が好ましい。また、多孔質体2の表面は、「ヘアークラック」と呼ばれるヒビが発生する場合がある。多孔質体2の耐用に影響するような内部まで進展している「キレツ(不良)」とは区別される。ヘアークラックは0.1mm程度のため、消失材6の径方向の厚みは、ヘアークラックと区別できるように0.1mm以上であることが望ましい。
【0082】
また、消失材6の径方向における厚みは、少なくとも一部が、凹部7における径方向の深さに対して、1/150から3/10までの厚みでもよい。この場合、消失材6は凹部7の深さに対して厚みが薄いので、消失材6が消失後に流入して貯留される地金が薄くなり凝固しやすい。よって、ガス吹き込みプラグ1は、傾転しても地金の流出が抑制されるので、地金の発光を認識することで、多孔質体2が使用限界に近づいたことを確認できる。
【0083】
凹部7は、径方向の深さが10mmから15mmまでの深さで形成される。上述したように、消失材6の径方向の厚みは、少なくとも一部が0.1mm以上で3mm以下の範囲であることが望ましい。すると、消失材6の径方向の厚みは、凹部7の深さに換算すると、1/150から3/10までの範囲である。
【0084】
なお、消失材6の径方向の厚みは、製造上のばらつきを考慮して、1mmから3mmの間で形成される場合がある。この場合、消失材6の径方向の厚みは、凹部7の深さに換算すると、1/15から1/3までの間である。さらに、消失材6の径方向の厚みを1mmと想定すると、凹部7の深さに対して1/15から1/10までの範囲である。
【符号の説明】
【0085】
1、1a、1b、1c、1d、1e ガス吹き込みプラグ
2、2a、2b、2c、2d 多孔質体
3、3a、3b、3c、3d 第一多孔質体
4 第二多孔質体
5、5a、5b、5c、5d 棚部
6、6a、6b、6c、6d 消失材
7、7c、7d 凹部
8 ガス管
9 不定形耐火物
11 先端部
12 基端部
15 棚面
16a 第一部分
16b 第二部分
21 第一断面
22 第二断面
23 第三断面
C 中心軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21