(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】医薬品情報の暗記を促すカードセット
(51)【国際特許分類】
A63F 1/02 20060101AFI20241029BHJP
G09B 1/32 20060101ALI20241029BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20241029BHJP
G09B 19/22 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A63F1/02 B
G09B1/32
G09B19/00 Z
G09B19/22
(21)【出願番号】P 2024098357
(22)【出願日】2024-05-31
【審査請求日】2024-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524230206
【氏名又は名称】中野 晴十記
(72)【発明者】
【氏名】中野 晴十記
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027428(JP,A)
【文献】特開2010-187948(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166633(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111530060(CN,A)
【文献】特開2015-121749(JP,A)
【文献】医薬販売学科,“生薬カードゲーム”,中央情報経理専門学校 新着情報,日本,中央情報経理専門学校,2022年10月18日,pp.1-3,インターネット<URL: https://www.chuo.ac.jp/cia/%E7%94%9F%E8%96%AC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0/>,[2024年8月30日検索]
【文献】“[就実大学薬学部]化学構造、カードゲームで暗記‐1年次後期の授業に導入”,薬事日報社ウェブサイト,日本,株式会社薬事日報社,2017年10月24日,pp.1-3,インターネット<URL: https://www.yakuji.co.jp/entry61331.html>,[2024年8月30日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56,17/00-19/26
A63F 1/00- 1/18
B42D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記カードセットは、医薬品の効能効果や関係性を表すための分類により色分けされた複数の医薬品カードと、医薬品カードによる遊戯を行う場合に遊戯内容に影響を与える複数のイベントカードにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のカードセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを利用した遊戯を通して医薬品の特徴を学習するためのカードセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品の成分名には、基本的に医薬品一般的名称が明示されているが、医薬品一般的名称の製品名である先発医薬品名または後発医薬品名は複数存在する事があり、それらの名称と製品外観の意匠や、医薬品の効能効果を理解しておく事は、医師や薬剤師といった医療従事者にとってインシデントやアクシデントの予防対策として極めて重要な事項である。
【0003】
このような問題に対して、医療現場では各医療従事者の自己研鑽に頼っているところが大きく、各自が医薬品の特徴について調べて十分に理解したうえで記憶しておく必要がある。
【0004】
従来、下記非特許文献1にあるように、医薬品名や効能効果をまとめた書籍において語呂合わせ等で記憶をする方法が知られている。この書籍では、医薬品一般的名称に対応する先発医薬品名等を把握する事ができるが、製品外観の意匠や各診療ガイドラインに対応した使用方法に関して理解するには、必ずしも十分ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】笠原英城著、「早おぼえ!医薬品名596」じほう出版、2007年2月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記したような問題を鑑みてなされたもので、単なる医薬品名称の一対一対応型の暗記にとどまらず、遊戯者に対して製品外観の意匠との関連や医薬品同士の関係性、また各診療ガイドラインに準じた使用方法について理解を深める事により、実際の医療現場でも役に立つ医薬品に関する知識が習得可能なカードセットと遊戯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカードには、医薬品一般的名称の記載があり、上記医薬品一般的名称に対応した先発医薬品名または後発医薬品名を記入する為の空欄部分、各製品外観の意匠を把握する為の製品形状の輪郭を模した図柄部分で構成されている。また効能効果や医薬品の特徴による分類や、医薬品同士の関係性により色分けがされたカードセットである。
【0008】
さらに本発明のカードセットには、各診療ガイドラインに対応した疾病の治療方針を遊戯のルールとして取り込むためのイベントカードを含める。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカードセットにおいては、先発医薬品名や後発医薬品名を記入する為の空欄部分、各製品の意匠を把握する為の製品形状の輪郭を模した図柄部分で構成されていることから、医薬品一般的名称に対して複数存在する先発医薬品や後発医薬品といった製品に対応する事が可能である。
【0010】
このように本発明のカードセットによれば、記載された医薬品一般的名称に対応する効能効果や特徴が一目でわかるだけでなく、遊戯者が実際の医療現場で採用されている任意の先発医薬品名や後発医薬品名を空欄部分に記入し、さらに製品外観の輪郭を模した図柄部分に、上記意匠を想起する色付けや錠剤の刻印の記入を行う事で、触覚と視覚を利用した暗記効果が期待される独自のカードを作る事が可能である。
【0011】
また医薬品の効能効果や特徴における分類によりカードの色分けがされている事から、医薬品同士の関係性も同時に把握する事が可能となっている。
【0012】
これら医薬品カードと、各疾病における診療ガイドラインに則った治療方針を遊戯のルールとして取り込む為のイベントカードを備える場合、これらを合わせて繰り返し遊戯を行う事によって、実際の医療現場でも役に立つ医薬品に関する知識を学習する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医薬品カードの代表例を示す模式図。
【
図2】同実施形態におけるイベントカードの代表例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るカードセットを、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例である医薬品カードを示す模式図である。この図に示されるように本実施例の医薬品カードには、医薬品に関する様々な情報が集約されておりカードセット単体でも遊具として成立するが、
図2に示されるようなイベントカードと合わせて使用する事で、各疾病に対する診療ガイドラインに則した医薬品の使用方法を反映した遊具として使用する事が可能である。
【0016】
図1に示すように、医薬品カードには、符号2・8に「医薬品の分類表示領域」、符号3・9に「製品の意匠を模した図柄領域」、符号4・10に「先発医薬品名または後発医薬品名記入領域」、符号5・11に「医薬品一般的名称表示領域」、符号6に「医薬品に関する情報表示領域(例:劇薬)」、符号7に「医薬品の効能効果表示領域」が含まれている。
【0017】
カードセットに含まれる医薬品カードの種類は特に限定されないが、同じ効能効果を持つ医薬品でまとめる事や、疾病に対する各診療ガイドラインなどに掲載されている代表的な医薬品から選択する事で、カードの種類を適宜増減して最適な枚数を決定する。
【0018】
図1に示すように、医薬品カード実施例Aの1にある「遊戯ルール上必要な数字領域」は、カードセットで行う遊戯内容によって使用される補足的なものである。
【0019】
図1に示すように、符号2・8にある「医薬品の分類表示領域」は、医薬品の効能効果による中分類に使用される。実施例Aにおいては、ステロイド外用薬におけるランク(強さ)による分類(ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィーク)がされている。実施例Bにおいては、抗アレルギー薬である抗ヒスタミン薬の世代ごとに分類がされている。
【0020】
図1に示すように、符号3・9にある「製品の意匠を模した図柄領域」には、遊戯者が記憶したい符号5・11にある「医薬品一般的名称表示領域」に記載された医薬品一般的名称に対応した製品の意匠に合わせた色付けができる。また錠剤を模した図柄部分には、刻印を書き込む事ができる。
【0021】
図1に示すように、符号4・10にある「先発医薬品名または後発医薬品名記入領域」には、遊戯者が記憶したい符号5・11にある「医薬品一般的名称表示領域」に記載された医薬品一般的名称に対応した製品の先発医薬品名や後発医薬品名を記入する事ができる。
【0022】
図1に示すように、符号5・11にある「医薬品一般的名称表示領域」には、厚生労働省が定める医薬品一般的名称(JAN:Japanese Accepted Names for Pharmaceuticals)を使用しているが、世界保健機構が定める国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)を使用してもよい。
【0023】
図1に示すように、符号6にある「医薬品に関する情報表示領域(例:劇薬)」には、医薬品に関する様々な特徴を表示する事ができる。実施例では、劇薬を表示する劇の文字が記載されているが、医薬品における規制区分で使用される毒薬や麻薬、覚せい剤、向精神薬といったものでもよい。また保存方法や妊婦や授乳婦に対する危険度、運転の可否、高齢者に対する注意事項、警告や禁忌、薬物動態といった表示が記載されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、符号7にある「医薬品の効能効果表示領域」には、大分類としての医薬品の効能効果が記載されている。この領域には医薬品の添付文書に記載されている適応症が記載されてもよい。
【0025】
図2は、医薬品のカードセットを利用した遊戯を行う場合に、疾病に対する各治療ガイドライン等に則った治療方針などをルールに取り込む為のイベントカードの実施形態の模式図である。
【0026】
図2に示される、符号14・15における「イベントカード効果タイトル表示領域」には、実施例ではステップダウン、副作用の他に、重症、細菌感染、乳幼児、痔などが挙げられるが、特にこれらのみに限定されるものではない。
【0027】
図2に示される、符号12・17における「イベントカード効果説明文表示領域」には、実際の治療方針に則した使用方法を想起させる効果が記載されている。例えば、符号12「ステップダウン」においては、ステロイド外用薬をランクの強いものから弱いものへと徐々にランクを下げていくステップダウン療法を連想させるものである。
【0028】
図2に示される、符号13・16における「イベントカード効果図柄表示領域」に記載される図柄は、絵や写真または記号、および属性は特に限定されない。
【0029】
以上のように、
図1~
図2を用いて医薬品カードセットに含まれる複数の医薬品カードとイベントカードについて説明をおこなったが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、医薬品の種類に関して外用薬や内服薬にとどまらず、注射薬や貼付薬、水剤、散剤といった様々な剤形において構成する事が可能である。
【0030】
カードセットとして用いられる医薬品カードの枚数は、複数であれば特に限定されないが、医薬品の分類や各疾病の治療ガイドラインなどを参考にカードセットの枚数を決定することができる。同様に、イベントカードの枚数も特に限定されることはない。
【0031】
カードに用いられる素材は、特に限定はされず、従来公知のトランプ、種々のカードゲームで使用されるカードと同じ材料や構造を採用することができる。例えば、先発医薬品名または後発医薬品名記入領域や製品の意匠を模した図柄領域に記入した情報や色付けを修正することが可能である、プラスチックや特殊なコーティングが表面になされた紙などが好ましいものとして例示される。またこれらのカードの形状や大きさは同じであってもよいが、異なる形状や大きさでもよい。
【実施例】
【0032】
次に、上記したカードセットを用いた遊戯方法の一例について説明する。
【0033】
本実施例では、実際に30枚の医薬品カードと6枚のイベントカードを作成した。医薬品カードに含まれる事項は、上記したように、「遊戯ルール上必要な数字」、「医薬品の分類表示領域」、「製品の意匠を模した図柄領域」、「先発医薬品名または後発医薬品名記入領域」、「医薬品一般的名称表示領域」、「医薬品に関する情報表示領域」、「医薬品の効能効果表示領域」で構成されている。またイベントカードにおいては、「効果説明文表示領域」、「効果図柄表示領域」、「効果タイトル表示領域」で構成されている。
【0034】
本実施例のカードセットの主な目的は、遊戯を通してステロイド外用薬の医薬品一般的名称から、ランク(強さ)を理解することである。これら医薬品の特徴を理解することは、医療従事者だけでなく一般の使用者においても医薬品の適正な使用を促す契機となる。
【0035】
医薬品として使用されるステロイド外用薬には、症状や塗布部位に適したランクがあり、症状や塗布部位に適していないランクのステロイド外用薬の使用を続けると、副作用や症状の改善に影響を与える可能性がある。
【0036】
本実施例の医薬品カードは、日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を参考として、ストロンゲスト(最も強い)、ベリーストロング(とても強い)、ストロング(強い)、ミディアム(普通)、ウィーク(弱い)の5段階にステロイド外用薬を分類して色分けがされている。
【0037】
本実施例のイベントカードは、ステップダウン療法、細菌感染、乳幼児、副作用、重症、痔といった、実際にステロイド外用薬を使用する場合に考慮すべき事項を、イベントとして用いる事で遊戯内容に深みを持たせている。
【0038】
本実施例の医薬品カード、
図1、Aの4にある「先発医薬品名または後発医薬品名記入領域」には、遊戯者が記憶したい製品名を記入し、同様に
図1、Aの符号3にある「製品の意匠を模した図柄領域」の白いチューブを模した図柄部分には、カラーペンなどで色付けをする事により、上記製品を想起しやすくなる効果がある。
【0039】
本実施例のカードセットを用いた基本的な遊戯の進め方として、まず医薬品カード30枚をよくシャッフルして、各遊戯者に同じ枚数を配布する。イベントカードについては、各遊戯者に1枚ずつ配布する。
【0040】
各遊戯参加者は、ランクが弱い分類のステロイド外用薬カードから順番に、ランクが強いカードへ向かって場にカードを出していきます。これを順番に繰り返して、手札を最も早く無くした遊戯者の勝利となります。
【0041】
イベントカードは各遊戯者が、自分の手番であれば好きなタイミングで使用する事が出来ます。
【0042】
まだ遊戯に慣れていない初期の段階では、
図1、Aに示される符号1「遊戯ルール上必要な数字」を利用する事で、数字が大きなものから小さなものに向かって手札を出してもかまいません。
【0043】
以上、実施形態を示して説明したように、本発明に係る医薬品のカードセットを用いることにより、遊戯を通して医薬品一般的名称と先発医薬品名または後発医薬品名と上記製品の意匠と医薬品同士の関係性も同時に把握する事が可能となっている。これら医薬品カードセットと、各診療ガイドラインに則った治療方針をルールに取り込むことで、実際の医療現場でも役に立つ知識を併せて理解する効果がある。
【0044】
また、本発明に係る医薬品カードセットは、同じ職場で働くもの同士で対話を行いながら遊戯をすることで、実際の現場で起こりやすいインシデントやアクシデントを防止する一助となる事が期待できる。また、医薬品について専門的な知識を持つ医療従事者と一般的な者が遊戯を行う場合であっても、医薬品の知識を自然と学習する効果が期待できる。
【0045】
なお、本実施例で説明したステロイド外用薬のカードセットは一例にすぎず、これ以外にも、多くの医薬品分類や疾患などを対象とすることで、これらのカードセットと同様に学習することが可能である。また、遊戯ルールに関しても上記したものは一例にすぎず、トランプにおけるポーカーや七並べのような様々な遊戯を行う事が可能である。
【0046】
なお、添付した図面を参照しながら本発明の一実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは言うまでもなく、特許請求の範囲に記載された内容から、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の範疇に属するものと理解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本考案によるカードセットは、遊戯を通して医療従事者が楽しみながら実際の医療現場で役に立つ知識を理解し暗記する事を目的とした教育的要素を兼ね備えた遊具である。また本考案によるカードセットは、医療従事者のみならず、医薬品を実際に使用している患者または家族等の医薬品に関する理解を助ける事を目的とした教材にもなり得る。
【符号の説明】
【0048】
A・・・医薬品カード(例:外用薬)
B・・・医薬品カード(例:内服薬)
C・・・イベントカード(例:治療方法)
D・・・イベントカード(例:副作用)
1・・・遊戯ルール上必要な数字
2、8・・・医薬品の分類表示領域
3、9・・・製品の意匠を模した図柄領域
4、10・・・先発医薬品名または後発医薬品名記入領域
5、11・・・医薬品一般的名称表示領域
6・・・医薬品に関する情報表示領域(例:劇薬)
7・・・医薬品の効能効果表示領域
12、17・・・イベントカード効果説明文表示領域
13、16・・・イベントカード効果図柄表示領域
14、15・・・イベントカード効果タイトル表示領域
【要約】
【課題】カードセットによる遊戯を通して、医薬品一般的名称に対応した製品名である先発医薬品名または後発医薬品名と、上記の製品外観の意匠を覚えやすくするとともに、医薬品の効能効果や特徴を直感的に想起する事ができるカードセットを提供する。
【解決手段】カードに印刷された医薬品一般的名称に相当する、先発医薬品名または後発医薬品名を遊戯者自らが、
図1における符号4,10の空欄部に書き込みを行い、また上記の製品外観輪郭を模した図柄に色付けする事で医薬品の名称と意匠を把握する。さらに上記カードを使用した遊戯を繰り返し行うことで、医薬品の効能効果や特徴を理解すること。
【選択図】
図1