(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】グランドピアノのダンパー機構
(51)【国際特許分類】
G10C 3/26 20190101AFI20241029BHJP
G10C 3/12 20060101ALI20241029BHJP
G10C 1/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G10C3/26 200
G10C3/12 150
G10C1/04
(21)【出願番号】P 2024138529
(22)【出願日】2024-08-20
【審査請求日】2024-08-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713008371
【氏名又は名称】星 雅人
(72)【発明者】
【氏名】星 雅人
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-133091(JP,U)
【文献】登録実用新案第3128574(JP,U)
【文献】特許第7511736(JP,B1)
【文献】特開平6-118943(JP,A)
【文献】特開平10-301562(JP,A)
【文献】特開2002-196748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 1/04,3/12-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤筬に揺動可能に支持された均一な材質からなる鍵盤と、打鍵による鍵盤後端部の上昇により押し上げられるダンパーレバーと、該ダンパーレバーと連結したダンパーが打鍵・静鍵に伴い、弦と離間・当接動作を行うグランドピアノであって、前記鍵盤後端部上面と前記ダンパーレバー先端部下面の間に圧縮コイルバネを備え、前記ダンパーレバーの奥側上面と前記ダンパーレバーが支持された奥框下面の間に圧縮コイルバネを備えることを特徴とするグランドピアノ。
【請求項2】
前記鍵盤後端部の下側と前記鍵盤筬との間に圧縮コイルバネを備えることを特徴とする請求項1に記載のグランドピアノ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドピアノのダンパーと連結したダンパーレバーの周辺機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍵盤機能とダンパー機能を含むアクション機構の断面図構造を
図4に示す。
図4において、鍵盤筬1の上面には、先端部に鉛3が埋設された鍵盤2が支持部5により揺動可能に支持され、鍵盤2の押鍵により鍵盤奥部10とその上面の緩衝材のフェルト11が上昇し、ダンパーレバー12の下部と当接して押し上げることにより、ダンパーレバー12とダンパーロッド14を介して連結され弦9の振動を抑制しているダンパー13を上昇させる。演奏効果をより豊かに表現するためには、図示せぬ右側ペダルを踏みこみ、弦9の振動を解放し自由振動を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-196748
【文献】実開昭58-91789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の鍵盤2では、鍵盤の打鍵力を軽減するために、先端部に加工が容易な鉛3が埋め込まれているのだが、鉛3はその重量により鍵盤2の押下げ時には機能するが押下げ状態からの復帰時には機能しないため、演奏者のタッチによる微妙な鍵盤の上下運動を効果的に伝えることが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のグランドピアノのダンパー機構は、鍵盤筬に揺動可能に支持された均一な材質からなる鍵盤と、打鍵による鍵盤後端部の上昇により押し上げられるダンパーレバーと、該ダンパーレバーと連結したダンパーが打鍵・静鍵に伴い、弦と離間・当接動作を行うグランドピアノであって、前記鍵盤後端部上面と前記ダンパーレバー先端部下面の間に圧縮コイルバネを備えている。また、前記ダンパーレバーの奥側上面と前記ダンパーレバーが支持された奥框下面の間に圧縮コイルバネを備えている。さらに、前記鍵盤後端部の下側と前記鍵盤筬との間に圧縮コイルバネを備えている。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、鍵盤後端部上面とダンパーレバー先端部下面の間に設けられた圧縮コイルバネの作用により、鉛等が埋め込まれない鍵盤であっても、打鍵解放後の鍵盤の静鍵時への戻りがスムースに行われ、連続打鍵時のレスポンスが早くなる。そのため、演奏者のタッチによる微妙な鍵盤の上下運動を効果的に伝えることが可能になる。また、ダンパーレバー奥側上面と奥框下面の間にもコイルバネを設ければ、上記レスポンスもさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における一部断面構造である。
【
図2】本発明の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における要部拡大図である。
【
図3】本発明の鍵盤を含むグランドピアノの打鍵時における要部拡大図である。
【
図4】従来の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における一部断面構造である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における一部断面構造であり、
図2は
図1の要部拡大図である。
図1及び
図2に示すように、均一な木からなる鍵盤2の鍵盤奥部10は、後述する圧縮コイルバネ4をダンパーレバー12との間に所望の状態で配設できるように上部が一部切り欠かれた形状となっている。この鍵盤奥部10上には、ダンパーレバー12の先端部12aに一端部が固定された圧縮コイルバネ4の他端部が当接するフェルト16が緩衝材として設けられている。ダンパーレバー12はその後端部が支点として回動するように奥框8に支持されている。また、ダンパーレバー12の略中央部には、奥框8に一端部が固定された圧縮コイルバネ6の他端部が当接している。さらに、ダンパーレバー12の先端部12a側にはダンパーワイヤー14を介してダンパー13が取り付けられている。ダンパー13には静鍵時に弦9と当接するダンパーパッド15が設けられている。また、鍵盤奥部10の下側と鍵盤筬1との間には圧縮コイルバネ7が設けられており、静鍵時には圧縮されている状態であり、押鍵時には前記圧縮コイルバネ4及び前記圧縮コイルバネ6を圧縮する力を低減させる作用を果たしている。なお、鍵盤2は均一な木製であり、鉛等の錘を内部に埋設されていないものとする。
【0009】
図3は本発明の鍵盤を含むグランドピアノの打鍵時における要部拡大図である。
図3において、
図1及び
図2と同じ構成要件については同番号を付し詳細な説明は省略する。
図3に示すように、鍵盤2を打鍵すると、鍵盤2の支持部5を支点として時計回りに回動することにより、鍵盤奥部10が上方に押し上げられるとともに、圧縮コイルバネ4が圧縮され、ダンパーレバー12が反時計周りに回動する。そして、ダンパーレバー12にダンパーワイヤー14を介して取り付けられたダンパー13が上昇し、ダンパーパッド15が弦9から離間する。この状態で、図示せぬピアノアクション機構のハンマーが弦9を打弦する。この時、ダンパーレバー12の回動により圧縮コイルバネ6も同時に圧縮されるため、この2つの圧縮コイルバネの反発力が鍵盤2の押鍵時に蓄積されている。この状態から押鍵を解除すると、2つの圧縮コイルバネの反発力により、速やかに静鍵状態に復帰する。この復帰時間が、従来のダンパー機構と比べて極めて短くなるので、演奏者にとっては従来よりレスポンス良く連続打鍵操作ができるとともに、ピチカート奏法も極めて楽になる。なお、前記復帰時間については、3つの圧縮コイルバネ4、圧縮コイルバネ6及び圧縮コイルバネ7をその形状やばね定数等を適宜選択することにより調整可能である。また、鍵盤やダンパーレバーに鉛等の錘も使用しないため、鍵盤自体の製作が簡単であり、鉛使用時の健康不安もなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、演奏者の連続打鍵時のレスポンスを向上させたグランドピアノ用のダンパー機構として有用である。
【符号の説明】
【0011】
1・・・鍵盤筬、2・・・鍵盤、3・・・鉛、4・・・圧縮コイルバネ、5・・・支持部、6・・・圧縮コイルバネ、7・・・圧縮コイルバネ、8・・・奥框、9・・・弦、10・・・鍵盤奥部、11・・・フェルト、12・・・ダンパーレバー、13・・・ダンパー、14・・・ダンパーワイヤー、15・・・ダンパーパッド、16・・・フェルト
【要約】
【課題】従来の鍵盤では、鍵盤の打鍵力を軽減するために、先端部に加工が容易な鉛が埋め込まれており、鉛はその重量により鍵盤の押下げ時には機能するが押下げ状態からの復帰時には機能しないため、演奏者のタッチによる微妙な鍵盤の上下運動を効果的に伝えることが難しかった。
【解決手段】鍵盤筬に揺動可能に支持された均一な材質からなる鍵盤と、打鍵による鍵盤後端部の上昇により押し上げられるダンパーレバーと、該ダンパーレバーと連結したダンパーが打鍵・静鍵に伴い、弦と離間・当接動作を行うグランドピアノであって、前記鍵盤後端部上面と前記ダンパーレバー先端部下面の間に圧縮コイルバネを備えている。また、前記ダンパーレバーの奥側上面と前記ダンパーレバーが支持された奥框下面の間に圧縮コイルバネを備えている。さらに、前記鍵盤後端部の下側と前記鍵盤筬との間に圧縮コイルバネを備えている。
【選択図】
図1