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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/30 20060101AFI20241029BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G02B6/30
G02B6/26 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019143145
(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公開番号】P2021026103
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 哲
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】芝沼 隆太
【審判官】山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139184(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073408(WO,A1)
【文献】特開2007-65490(JP,A)
【文献】特開平10-10363(JP,A)
【文献】特開2018-124307(JP,A)
【文献】特開昭62-297809(JP,A)
【文献】特開2007-34007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0294339(US,A1)
【文献】特開平1-227109(JP,A)
【文献】特開2008-286950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の高屈折率領域と、前記複数の高屈折率領域の屈折率よりも小さな屈折率を有し当該複数の高屈折率領域を覆う低屈折率領域を有する光導波路基板と、
前記光導波路基板を収容する第1収容部を有する第1フェルールと、
複数の第1コアと、前記複数の第1コアの屈折率よりも小さな屈折率を有し当該複数の第1コアを覆う第1クラッドとを有するマルチコア光ファイバを収容する第2収容部を有し、前記第1フェルールに対向する第2フェルールと、
前記第1フェルールに対する前記第2フェルールの位置を決定すると共に、前記第1フェルールと前記第2フェルールが互いに分離可能なように前記第1フェルールと前記第2フェルールとを固定するように構成された第1位置決め機構と、
を備え、
前記光導波路基板は、前記マルチコア光ファイバに対向する第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有し、
前記第1端面における前記複数の高屈折率領域のうちの隣接する高屈折率領域間の間隔は、前記第2端面における前記複数の高屈折率領域のうちの隣接する高屈折率領域間の間隔よりも狭く、
前記複数の高屈折率領域の各々は、前記第1端面と前記第2端面との間において屈曲し、
前記複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、前記複数の第1コアのうち対応する一つと光学的に接続されるように前記第2フェルールが配置され、
前記第1位置決め機構は、
前記第1フェルールに取り付けられると共に、前記第2フェルールを収容するように構成されたスリーブを有し、
前記スリーブには、前記第2フェルールが収容される方向に延びるスリットが形成されており、前記スリーブに前記第2フェルールが収容されていない状態において、前記スリーブの内径は前記第2フェルールの外径よりも小さい、
光コネクタ。
【請求項2】
前記第1フェルールと前記第2フェルールとの間に設けられ、前記複数の高屈折率領域と前記複数の第1コアとの間に空隙を形成するように構成された第1スペーサをさらに備える、請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記第1スペーサは、
第1上側スペーサと、
前記第2収容部を介して前記第1上側スペーサと対向する第1下側スペーサと、
を有する、請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記マルチコア光ファイバの端面と前記光導波路基板の第1端面との間の距離は、前記第1フェルールに対向する前記第2フェルールの端面と前記光導波路基板の第1端面との間の距離よりも大きい、請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項5】
複数の第3収容部を有し、前記第1フェルールに対向する第3フェルールと、
前記第1フェルールに対する前記第3フェルールの位置を決定すると共に、前記第1フェルールと前記第3フェルールが互いに分離可能なように前記第1フェルールと前記第3フェルールとを固定するように構成された第2位置決め機構と、
をさらに備え、
前記複数の第3収容部の各々は、第2コアと当該第2コアを覆う第2クラッドとを有する複数のシングルコア光ファイバのうちの対応する一つを収容するように構成され、
前記複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、前記複数の第2コアのうちの対応する一つと光学的に接続されるように前記第3フェルールが配置され、
前記複数の第2コアの各々は、前記光導波路基板を介して、前記複数の第1コアのうちの対応する一つと光学的に接続される、
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記第1フェルールと前記第3フェルールとの間に設けられ、前記複数の高屈折率領域と前記複数の第2コアとの間に空隙を形成するように構成された第2スペーサをさらに備える、請求項に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記第2位置決め機構は、
前記第1フェルールに設けられた第1ガイド穴と、
前記第3フェルールに設けられた第3ガイド穴と、
前記第1ガイド穴及び前記第3ガイド穴に挿入される第2ガイドピンと、
を有する、請求項又は請求項に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記光導波路基板の第1端面及び第2端面のうち少なくとも一方は、前記光導波路基板の上面に対して傾斜した傾斜面として形成されている、請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバと光導波路とを互いに光学的に接続する技術が知られている。例えば、非特許文献1に開示された平面光波回路(PLC)モジュールによれば、光ファイバのコアとPLCのコア層とが互いに位置合わせされた上で、接着剤によって光ファイバとPLCが互いに固定されている。
【0003】
また、非特許文献2では、複数のシングルモードファイバ(SMF)とマルチコアファイバ(MCF)とを光学的に接続するための空間マルチプレクサとして機能する光導波路が開示されている。非特許文献2に開示された光導波路によれば、SMFと光導波路のコア層とが互いに位置合わせされると共に、MCFと光導波路のコア層が互いに位置合わせされる。その後、SMFが当該光導波路の一方の端面に接着剤により固定されると共に、MCFが当該光導波路の他方の端面に接着剤により固定される。
【0004】
また、非特許文献3によれば、アライメント装置を用いずに複数の光ファイバとPLCが位置合わせされるPLC型ポンプコンバイナが開示されている。当該ポンプコンバイナによれば、PLCを保持するフェルールに設けられたガイド穴と光ファイバを保持するフェルールに設けられたガイド穴のそれぞれにガイドピンが挿入されることで、PLCと光ファイバとが互いに位置合わせされる。その後、PLCのコア層と光ファイバのコア間の空隙を埋めるために、クリップで2つのフェルールを挟み込むことでPLCのコア層の端面と光ファイバのコアの端面とを互いに物理的に接触させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】Takahiro Ono et al.: PLC Products for FTTH System, Furukawa Review No. 26, 2004, pp. 6-11
【文献】Paul Mitchell et al. : “57 Channel (19x3) Spatial Multiplexer Fabricated using Direct Laser Inscription”, OFC 2014 M3K.5
【文献】Koji Seo et al.: Development of High-Power Stable PLC-Type Pump Combiner, Furukawa Review, No. 23 2003, pp. 48-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1や非特許文献2に開示された技術では、アライメント装置を用いて光ファイバと光導波路とを精密に位置合わせする必要があるため、量産性の観点から課題が残る。さらに、光ファイバと光導波路が接着剤によって互いに固定されているため、光導波路と光ファイバを互いに分離できない。このため、光導波路と光ファイバのうち一方が故障した場合では、光導波路と光ファイバを含む光デバイス全体の交換が必要となってしまい、光デバイスの経済性の観点において課題が残る。
【0007】
さらに、非特許文献3に開示された技術では、PLCのコア層の端面と光ファイバのコアの端面とを互いに物理的に接触させるために、PLCの端面と光ファイバの端面とを高い精度で研磨する必要がある。さらに、クリップ等を用いて2つのフェルール間の接触面に強い押圧力を加える必要がある。このように、ポンプコンバイナの量産性の観点において課題が残る。
【0008】
このように、量産性や経済性の観点より、光ファイバと光導波路とが互いに光学的に接続された光結合構造について改善の余地がある。
【0009】
本開示は、量産性及び経済性を向上させることが可能な光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の光コネクタは、
複数の高屈折率領域と、前記複数の高屈折率領域の屈折率よりも小さな屈折率を有し当該複数の高屈折率領域を覆う低屈折率領域を有する光導波路基板と、
前記光導波路基板を収容する第1収容部を有する第1フェルールと、
複数の第1コアと、前記複数の第1コアの屈折率よりも小さな屈折率を有し当該複数の第1コアを覆う第1クラッドとを有するマルチコア光ファイバを収容する第2収容部を有し、前記第1フェルールに対向する第2フェルールと、
前記第1フェルールに対する前記第2フェルールの位置を決定すると共に、前記第1フェルールと前記第2フェルールが互いに分離可能なように前記第1フェルールと前記第2フェルールとを固定するように構成された第1位置決め機構と、
を備える。
前記光導波路基板は、前記マルチコア光ファイバに対向する第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有する。
前記第1端面における前記複数の高屈折率領域のうちの隣接する高屈折率領域間の間隔は、前記第2端面における前記複数の高屈折率領域のうちの隣接する高屈折率領域間の間隔よりも狭い。
前記複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、前記複数の第1コアのうち対応する一つと光学的に接続されるように前記第2フェルールが配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、量産性及び経済性を向上させることが可能な光コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第2フェルールと第3フェルールが第1フェルールに固定される前の状態における第1実施形態に係る光コネクタを示す模式図である。
図2A】Y軸方向正の向きを見た第2フェルールの端面を示す図である。
図2B】Y軸方向負の向きを見た第1フェルールの第1端面を示す図である。
図2C】Y軸方向正の向きを見た第1フェルールの第2端面を示す図である。
図2D】Y軸方向負の向きを見た第3フェルールの端面を示す図である。
図3図1に示すA-A線に沿って切断された光導波路基板を模式的に示す断面図である。
図4】第2フェルールと第3フェルールが第1フェルールに固定された状態における第1実施形態に係る光コネクタを示す模式図である。
図5】第2フェルールと第3フェルールが第1フェルールに固定される前の状態における第1実施形態の変形例に係る光コネクタを示す模式図である。
図6】第2フェルールと第3フェルールが第1フェルールに固定される前の状態における第2実施形態に係る光コネクタを示す模式図である。
図7A】Y軸方向正の向きを見た第1スペーサを示す図である。
図7B】Y軸方向負の向きを見た第1フェルールの第1端面を示す図である。
図7C】Y軸方向正の向きを見た第1フェルールの第2端面を示す図である。
図7D】Y軸方向負の向きを見た第3フェルールの端面を示す図である。
図8】第2フェルールと第3フェルールが第1フェルールに固定された状態における第2実施形態に係る光コネクタを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の実施形態の概要を説明する。
(1)複数の高屈折率領域と、前記複数の高屈折率領域の屈折率よりも小さな屈折率を有し当該複数の高屈折率領域を覆う低屈折率領域を有する光導波路基板と、
前記光導波路基板を収容する第1収容部を有する第1フェルールと、
複数の第1コアと、前記複数の第1コアの屈折率よりも小さな屈折率を有し当該複数の第1コアを覆う第1クラッドとを有するマルチコア光ファイバを収容する第2収容部を有し、前記第1フェルールに対向する第2フェルールと、
前記第1フェルールに対する前記第2フェルールの位置を決定すると共に、前記第1フェルールと前記第2フェルールが互いに分離可能なように前記第1フェルールと前記第2フェルールとを固定するように構成された第1位置決め機構と、
を備え、
前記光導波路基板は、前記マルチコア光ファイバに対向する第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有し、
前記第1端面における前記複数の高屈折率領域のうちの隣接する高屈折率領域間の間隔は、前記第2端面における前記複数の高屈折率領域のうちの隣接する高屈折率領域間の間隔よりも狭く、
前記複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、前記複数の第1コアのうち対応する一つと光学的に接続されるように前記第2フェルールが配置されている、
光コネクタ。
【0014】
上記構成によれば、第1フェルールに対する第2フェルールの位置が第1位置決め機構により決定されている。さらに、第1フェルールと第2フェルールが互いに分離可能なように第1フェルールと第2フェルールとが第1位置決め機構により互いに固定されている。このように、アライメント装置を用いずに光導波路基板の高屈折率領域と第1光ファイバの第1コアとを互いに位置決めすることが可能となるため、光コネクタの量産性を向上させることが可能となる。
【0015】
さらに、接着剤等を用いずに光導波路基板とマルチコア光ファイバとを固定することができると共に、光導波路基板とマルチコア光ファイバとを互いに分離することができる。このように、光コネクタの一部(例えば、光導波路基板)に故障があったとしても、光コネクタ全体を交換する必要がなく、故障した光コネクタの一部のみを交換することが可能となる。このため、光コネクタの経済性を向上させることが可能となる。
【0016】
また、複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、複数の第1コアのうち対応する一つと光学的に接続されているため、光導波路基板とマルチコア光ファイバとを互いに物理的に接触させる必要がない。このため、光導波路基板及びマルチコア光ファイバに強い押圧力を加える必要がないと共に、光導波路基板の端面とマルチコア光ファイバの端面を精密に研磨する必要もない。このように、光コネクタの量産性を向上させることが可能となる。
【0017】
(2)前記第1フェルールと前記第2フェルールとの間に設けられ、前記複数の高屈折率領域と前記複数の第1コアとの間に空隙を形成するように構成された第1スペーサをさらに備える、項目(1)に記載の光コネクタ。
【0018】
上記構成によれば、第1スペーサによって複数の高屈折率領域と複数の第1コアとの間に空隙を形成することができる。このように、第1スペーサによって形成された空隙を介して、前記複数の高屈折率領域の各々を複数の第1コアのうち対応する一つと光学的に接続させることができる。
【0019】
(3)前記第1スペーサは、
第1上側スペーサと、
前記第2収容部を介して前記第1上側スペーサと対向する第1下側スペーサと、
を有する、項目(2)に記載の光コネクタ。
【0020】
上記構成によれば、マルチコア光ファイバが収容される第2収容部を介して第1上側スペーサと第1下側スペーサが互いに対向している。このように、光導波路基板の高屈折率領域とマルチコア光ファイバの第1コアとを互いに平行に配置することができるため、高屈折率領域と第1コアとの間の結合損失を抑制することが可能となる。
【0021】
(4)前記マルチコア光ファイバの端面と前記光導波路基板の第1端面との間の距離は、前記第1フェルールに対向する前記第2フェルールの端面と前記光導波路基板の第1端面との間の距離よりも大きい、項目(1)に記載の光コネクタ。
【0022】
上記構成によれば、スペーサを設けずに、光導波路基板の高屈折率領域とマルチコア光ファイバの第1コアとの間に空隙を形成することができる。このように、光コネクタの部品点数を削減することができる。
【0023】
(5)前記第1位置決め機構は、
前記第1フェルールに設けられた第1ガイド穴と、
前記第2フェルールに設けられた第2ガイド穴と、
前記第1ガイド穴及び前記第2ガイド穴に挿入された第1ガイドピンと、
を有する、項目(1)から項目(4)のうちいずれか一項に記載の光コネクタ。
【0024】
上記構成によれば、第1ガイド穴と第2ガイド穴に挿入された第1ガイドピンによって、第1フェルールに対する第2フェルールの位置を決定することができる。さらに、当該第1ガイドピンによって第1フェルールと第2フェルールが互いに分離可能なように第1フェルールと第2フェルールとを互いに固定することができる。
【0025】
(6)前記第1位置決め機構は、
前記1フェルールに取り付けられると共に、前記第2フェルールを収容するように構成されたスリーブを有し、
前記スリーブの内径は、前記第2フェルールの外径よりも小さい、
項目(1)から項目(4)のうちいずれか一項に記載の光コネクタ。
【0026】
上記構成によれば、第2フェルールがスリーブに収容されることで、第1フェルールに対する第2フェルールの位置を決定することができる。さらに、当該スリーブによって、第1フェルールと第2フェルールが互いに分離可能なように第1フェルールと第2フェルールとを互いに固定することができる。
【0027】
(7)複数の第3収容部を有し、前記第1フェルールに対向する第3フェルールと、
前記第1フェルールに対する前記第3フェルールの位置を決定すると共に、前記第1フェルールと前記第3フェルールが互いに分離可能なように前記第1フェルールと前記第3フェルールとを固定するように構成された第2位置決め機構と、
をさらに備え、
前記複数の第3収容部の各々は、第2コアと当該第2コアを覆う第2クラッドとを有する複数のシングルコア光ファイバのうちの対応する一つを収容するように構成され、
前記複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、前記複数の第2コアのうちの対応する一つと光学的に接続されるように前記第3フェルールが配置され、
前記複数の第2コアの各々は、前記光導波路基板を介して、前記複数の第1コアのうちの対応する一つと光学的に接続される、
項目(1)から項目(6)のうちいずれか一項に記載の光コネクタ。
【0028】
上記構成によれば、複数のシングルコア光ファイバ(SCF)とマルチコア光ファイバ(MCF)を光学的に接続可能な光コネクタを提供することができる。
また、第1フェルールに対する第3フェルールの位置が第2位置決め機構により決定されている。さらに、第1フェルールと第3フェルールが互いに分離可能なように第1フェルールと第3フェルールとが第2位置決め機構により互いに固定されている。このように、アライメント装置を用いずに光導波路基板の高屈折率領域とシングルコア光ファイバの第2コアとを互いに位置決めすることが可能となるため、光コネクタの量産性を向上させることが可能となる。
【0029】
さらに、接着剤等を用いずに光導波路基板とシングルコア光ファイバとを固定することができると共に、光導波路基板とシングルコア光ファイバとを互いに分離することができる。このように、光コネクタの一部(例えば、光導波路基板)に故障があったとしても、光コネクタ全体を交換する必要がなく、故障した光コネクタの一部のみを交換することが可能となる。このため、光コネクタの経済性を向上させることが可能となる。
【0030】
また、前記複数の高屈折率領域の各々が、空隙を介して、複数の第2コアのうち対応する一つと光学的に接続されているため、光導波路基板とシングルコア光ファイバとを互いに物理的に接触させる必要がない。このため、光導波路基板及びシングルコア光ファイバに強い押圧力を加える必要がないと共に、光導波路基板の端面とシングルコア光ファイバの端面を精密に研磨する必要もない。このように、光コネクタの量産性を向上させることが可能となる。
【0031】
(8)前記第1フェルールと前記第3フェルールとの間に設けられ、前記複数の高屈折率領域と前記複数の第2コアとの間に空隙を形成するように構成された第2スペーサをさらに備える、項目(7)に記載の光コネクタ。
【0032】
上記構成によれば、第2スペーサによって複数の高屈折率領域と複数の第2コアとの間に空隙を形成することができる。このように、第2スペーサによって形成された空隙を介して、前記複数の高屈折率領域の各々を複数の第2コアのうち対応する一つと光学的に接続させることができる。
【0033】
(9)前記第2位置決め機構は、
前記第1フェルールに設けられた第1ガイド穴と、
前記第3フェルールに設けられた第3ガイド穴と、
前記第1ガイド穴及び前記第3ガイド穴に挿入される第2ガイドピンと、
を有する、項目(7)又は項目(8)に記載の光コネクタ。
【0034】
上記構成によれば、第1ガイド穴と第3ガイド穴に挿入された第2ガイドピンによって、第1フェルールに対する第3フェルールの位置を決定することができる。さらに、当該第2ガイドピンによって第1フェルールと第3フェルールが互いに分離可能なように第1フェルールと第3フェルールとが互いに固定されうる。
【0035】
(10)前記光導波路基板の第1端面及び第2端面のうち少なくとも一方は、前記光導波路基板の上面に対して傾斜した傾斜面として形成されている、項目(1)から項目(9)のうちいずれか一項に記載の光コネクタ。
【0036】
上記構成によれば、光導波路基板の第1端面及び第2端面のうち少なくとも一方が傾斜面として形成されているため、第1端面及び第2端面のうち少なくとも一方によって生じるフレネル反射損失を抑えることが可能となる。このように、マルチコア光ファイバ(MCF)とシングルコア光ファイバ(SCF)との間の結合損失を抑制することが可能となる。
【0037】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0038】
また、本実施形態の説明では、本実施形態の理解を容易にするために、適宜、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸について言及する。尚、これらの方向は、図1に示す光コネクタ1に設定された相対的な方向である。従って、光コネクタ1の回転に伴いX軸、Y軸、Z軸も回転する。
【0039】
(第1実施形態)
図1から図4を参照して第1実施形態に係る光コネクタ1について以下に説明する。図1は、第2フェルール4と第3フェルール6が第1フェルール3に固定される前の状態における光コネクタ1を示す模式図である。図2Aは、第2フェルール4の、第1フェルール2に対向する端面43を示す図である。図2Bは、第1フェルール3の、第2フェルール4に対向する第1端面35を示す図である。図2Cは、第1フェルール3の、第1端面35とは反対側に位置し、第3フェルール6に対向する第2端面36を示す図である。図2Dは、第3フェルール6の、第1フェルールに対向する端面62を示す図である。図3は、図1に示すA-A線に沿って切断された光導波路基板5を模式的に示す断面図である。図4は、第2フェルール4と第3フェルール6が第1フェルール3に固定された状態における光コネクタ1を示す模式図である。
【0040】
図1に示すように、光コネクタ1は、第1フェルール3と、光導波路基板5と、第2フェルール4と、第1スペーサ47と、第3フェルール6と、第2スペーサ67とを備える。
【0041】
図1図2B及び図2Cに示すように、第1フェルール3は、第1端面35と、第2端面36とを有する。第1フェルール3は、第1収容部38と、一対の第1ガイド穴37とをさらに有する。
【0042】
第1収容部38は、Y軸方向において第1端面35と第2端面36との間を延びる中空の収容部であり、光導波路基板5を収容している。光導波路基板5が第1収容部38に収容されることで、第1フェルール3に対する光導波路基板5の位置決めが完了する。一対の第1ガイド穴37は、Y軸方向において第1端面35と第2端面36との間に延びている。
【0043】
光導波路基板5は、平面光波回路(PLC)であり、Y軸方向に延びる4つのコア層51(高屈折領域の一例)と4つのコア層51を覆うクラッド層52(低屈折領域の一例)とを有する。光導波路基板5は、マルチコア光ファイバ2に対向する第1端面53と、第1端面53とは反対側に位置し、シングルコア光ファイバ7と対向する第2端面54とをさらに有する。各コア層51は、光が伝搬する光路として機能する。各コア層51の屈折率は、クラッド層52の屈折率よりも大きい。各コア層51は、横モードとしてシングルモードのみを許容してもよい。4つのコア層51は、X軸方向に配列されていると共に、第1端面53から第2端面54に向かうに連れて隣接するコア層51間の間隔Dが広がる。
【0044】
図2B及び図2Cに示すように、第1端面53における隣接するコア層51間の間隔D1は、第2端面54における隣接するコア層51間の間隔D2よりも狭くなるように、4つのコア層51が光導波路基板5にある。
【0045】
また、図3に示すように、光導波路基板5の第1端面53は、光導波路基板5の上面58に対して傾斜した面である。同様に、光導波路基板5の第2端面54は、上面58に対して傾斜した面である。例えば、第1端面53及び第2端面54を研磨することで、これらの端面を傾斜面とすることができる。第1端面53と上面58とによって形成される角度θ2は、例えば、82°である。また、第2端面54と上面58とによって形成される角度θ1は、例えば、82°である。
【0046】
このように、第1端面53及び第2端面54が傾斜面であるため、第1端面53及び第2端面54によって生じるフレネル反射損失を抑えることが可能となる。特に、各コア層51の両端面によって生じるフレネル反射損失を抑えることが可能となる。従って、マルチコア光ファイバ2とシングルコア光ファイバ7との間の結合損失を抑制することが可能な光コネクタ1を提供することが可能となる。
【0047】
尚、本実施形態では、第1端面53及び第2端面54の両方が傾斜面であるが、第1端面53と第2端面54のうちのいずれか一方のみが傾斜面であってもよい。また、第1端面53及び第2端面54のうちの少なくとも一方が傾斜面である代わりに、第1端面53及び第2端面54のうちの少なくとも一方がAR(反射防止)コーティングを有してもよい。この場合でも同様に、各コア層51の両端面によって生じるフレネル反射損失を抑えることができる。
【0048】
また、第1コア21の端面に生じるフレネル反射損失を低減するために、第1コア21の端面が傾斜面であってもよいし、第1コア21の端面がARコーティングを有してもよい。
【0049】
図1及び図2Aに示すように、第2フェルール4は、端面43と、端面43とは反対側に位置する端面42とを有する。第2フェルール4は、第2収容部48と、一対の第2ガイド穴46をさらに有する。第1フェルール3と第2フェルール4とは、一対の第1ガイドピン45により位置決めされる。
【0050】
第2収容部48は、Y軸方向において端面43と端面42との間を延びた中空の収容部であって、マルチコア光ファイバ2を収容している。マルチコア光ファイバ2が第2収容部48に収容されることで、第2フェルール4に対するマルチコア光ファイバ2の位置決めが完了する。一対の第2ガイド穴46は、Y軸方向において端面42と端面43との間を延びている。一対の第1ガイドピン45の各々は、一対の第2ガイド穴46のうちの対応する一つに挿入された状態で、接着剤によって第2フェルール4に固定されている。例えば、第1ガイドピン45の径は、第1ガイド穴37の径よりも僅かに(例えば、3μm~5μmの範囲内)小さくてもよい。
【0051】
マルチコア光ファイバ2(MCF)は、Y軸方向に延びる4つの第1コア21、4つの第1コア21を覆う第1クラッド22を有する。各第1コア21は、光が伝搬する光路として機能する。各第1コア21の屈折率は、第1クラッド22の屈折率よりも大きい。各第1コア21は、横モードとしてシングルモードのみを許容してもよい。4つの第1コア21は、X軸方向に配列されている。本実施形態では、マルチコア光ファイバ2の端面23が第2フェルール4の端面43と同一平面となっている。
【0052】
マルチコア光ファイバ2が第2収容部48に挿入された状態で、4つの第1コア21の配列方向が一対の第1ガイドピン45の中心を通る中心線Axに対して平行となるように、マルチコア光ファイバ2の回転位置が調整されてもよい。
【0053】
この場合、図示しないアライメント装置が、カメラ等によって取得された第2フェルール4の端面43を示す画像データに基づいて、第1コア21の配列方向が中心線Axと平行となるように、マルチコア光ファイバ2の回転位置を自動的に調整してもよい。
【0054】
また、各第1コア21の先端にGRINレンズが設けられてもよい。GRINレンズは、コア層51から出力された光を第1コア21に向けて集光することができると共に、第1コア21から出力された発散光を平行光に変換することができる。さらに、各第1コア21の端面に生じるフレネル反射損失を低減するために、各第1コア21の端面が傾斜面であってもよい。
【0055】
図2Aに示すように、第1スペーサ47は、第1上側スペーサ470と、第1下側スペーサ471とを有する。第1上側スペーサ470と第1下側スペーサ471は、第2フェルール4の端面43上に配置されている。第1上側スペーサ470と第1下側スペーサ471は、例えば、樹脂テープであってもよい。
【0056】
第1上側スペーサ470と第1下側スペーサ471の膜厚は、例えば、10μm以下であってもよい。本実施形態では、第1スペーサ47が第1フェルール3と第2フェルール4との間に設けられているため、第1フェルール3と第2フェルール4が互いに固定された状態(図4参照)において、コア層51と第1コア21との間に空隙が形成される。特に、第1フェルール3と第2フェルール4が一対の第1ガイドピン45によって互いに固定された状態において、コア層51と第1コア21との間の空隙は、第1スペーサ47の膜厚によって規定される。
【0057】
また、第1上側スペーサ470は、第2収容部48を介して、第1下側スペーサ471と対向するように配置されている。この点において、第1上側スペーサ470と第1下側スペーサ471は、中心線Axに対して対称に配置されてもよい。
【0058】
このように、第2収容部48を介して第1上側スペーサ470と第1下側スペーサ471が互いに対向しているため、コア層51と第1コア21とを互いに平行に配置することができる。このように、コア層51と第1コア21との間の結合損失を抑制することが可能となる。
【0059】
図1及び図2Dに示すように、第3フェルール6は、端面62と、端面62とは反対側に位置する端面63とを有する。第3フェルール6は、4つの第3収容部68と、一対の第3ガイド穴66をさらに有する。第1フェルール3と第3フェルール4とは、一対の第2ガイドピン65により位置決めされる。
【0060】
各第3収容部68は、Y軸方向において端面62と端面63との間を延びた中空の収容部であって、4つのシングルコア光ファイバ7(SCF)のうちの対応する一つを収容するように構成されている。各シングルコア光ファイバ7が対応する第3収容部68に収容されることで、第3フェルール6に対する各シングルコア光ファイバ7の位置決めが完了する。4つの第3収容部68は、X軸方向に配列されているため、4つのシングルコア光ファイバ7もX軸方向に配列されている。一対の第3ガイド穴66は、Y軸方向において端面62と端面63との間を延びている。一対の第2ガイドピン65の各々は、一対の第3ガイド穴66のうちの対応する一つに挿入された状態で、接着剤によって第3フェルール6に固定されている。例えば、第2ガイドピン65の径は、第1ガイド穴37の径よりも僅かに(例えば、3μm~5μmの範囲内)小さくてもよい。
【0061】
各シングルコア光ファイバ7は、Y軸方向に延びる単一の第2コア71と、第2コア71を覆う第2クラッド72とを有する。第2コア71は、光が伝搬する光路として機能する。第2コア71の屈折率は、第2クラッド72の屈折率よりも大きい。第2コア71は、横モードとしてシングルモードのみを許容してもよい。本実施形態では、シングルコア光ファイバ7の端面73が第3フェルール6の端面62と同一平面となっている。
【0062】
また、第2コア71の先端にGRINレンズが設けられてもよい。GRINレンズは、コア層51から出射された光を第2コア71に向けて集光することができると共に、第2コア71から出射された発散光を平行光に変換することができる。さらに、第2コア71の端面によるフレネル反射損失を低減するために、第2コア71の端面が傾斜面であってもよいし、第2コア71がARコーティングを有してもよい。
【0063】
図2Dに示すように、第2スペーサ67は、第2上側スペーサ670と、第2下側スペーサ671とを有する。第2上側スペーサ670と第2下側スペーサ671は、第3フェルール6の端面62上に配置されている。第2上側スペーサ670と第2下側スペーサ671は、例えば、樹脂テープであってもよい。
【0064】
第2上側スペーサ670と第2下側スペーサ671の膜厚は、例えば、10μm以下であってもよい。本実施形態では、第2スペーサ67が第1フェルール3と第3フェルール6との間に設けられている。このため、第1フェルール3と第3フェルール6が互いに固定された状態(図4参照)において、コア層51と第2コア71との間に空隙が形成される。特に、第1フェルール3と第3フェルール6が一対の第2ガイドピン65によって互いに固定された状態において、コア層51と第1コア21との間の空隙は、第2スペーサ67の膜厚によって規定される。
【0065】
また、第2上側スペーサ670は、4つの第3収容部68を介して、第2下側スペーサ671と対向するように配置されている。この点において、第2上側スペーサ670と第2下側スペーサ671は、第3フェルール6のZ軸方向における中心を通る中心線(図示せず)に対して対称に配置されてもよい。
【0066】
このように、4つの第3収容部68を介して第2上側スペーサ670と第2下側スペーサ671が互いに対向しているため、コア層51と第2コア71とを互いに平行に配置することができるため、コア層51と第2コア71との間の結合損失を抑制することが可能となる。
【0067】
次に、図4に示すように、第2フェルール4が第1フェルール3に固定されると共に、第3フェルール6が第1フェルール3に固定された状態について以下に説明を行う。
【0068】
図4に示すように、一対の第1ガイドピン45の各々が第1フェルール3に設けられた対応する第1ガイド穴37に挿入されることで、第2フェルール4が第1フェルール3に固定されると共に、第1フェルール3に対する第2フェルール4の位置が決定される。このように、光導波路基板5のコア層51に対するマルチコア光ファイバ2の第1コア21の位置が決定される。また、第1ガイド穴37に挿入された第1ガイドピン45は、接着剤等によって第1フェルール3に接着されない。この点において、図示しないクリップ等によって、第1フェルール3と第2フェルール4との間並びに第1フェルール3と第3フェルール6との間に押圧力が付与されてもよい。
【0069】
本実施形態では、一対の第1ガイド穴37と、一対の第2ガイド穴46と、一対の第1ガイドピン45が、第1フェルール3に対する第2フェルール4の位置を決定すると共に、第1フェルール3と第2フェルール4が互いに分離可能なように第1フェルール3と第2フェルール4とを固定する第1位置決め機構として機能する。
【0070】
さらに、第1フェルール3と第2フェルール4との間に第1スペーサ47が設けられているため、4つのコア層51と4つの第1コア21との間に空隙が形成される。このように、4つのコア層51の各々が、第1スペーサ47によって形成された空隙を介して、4つの第1コア21のうちの対応する一つに光学的に接続される。
【0071】
本実施形態によれば、第1フェルール3に対する第2フェルール4の位置が第1ガイド穴37と第1ガイドピン45により決定される。さらに、第1フェルール3と第2フェルール4が互いに分離可能なように第1フェルール3と第2フェルール4とが互いに固定される。このように、アライメント装置等を用いずに光導波路基板5のコア層51とマルチコア光ファイバ2の第1コア21を互いに位置決めすることが可能となるため、光コネクタ1の量産性を向上させることが可能となる。
【0072】
さらに、接着剤等を用いずに光導波路基板5とマルチコア光ファイバ2とを固定することができると共に、光導波路基板5とマルチコア光ファイバ2とを互いに分離することができる。このように、光コネクタ1の一部(例えば、光導波路基板5)に故障があったとしても、光コネクタ1全体を交換する必要がなく、故障した光コネクタ1の一部のみを交換することが可能となる。このため、光コネクタ1の経済性を向上させることが可能となる。
【0073】
また、4つのコア層51の各々が空隙を介して4つの第1コア21のうちの対応する一つに光学的に接続されているため、光導波路基板5とマルチコア光ファイバ2とを互いに物理的に接触させる必要がない。このため、光導波路基板5及びマルチコア光ファイバ2に強い押圧力を加える必要がないと共に、光導波路基板5の第1端面53とマルチコア光ファイバ2の端面23を精密に研磨する必要もない。このように、光コネクタ1の量産性を向上させることが可能となる。
【0074】
また、図4に示すように、一対の第2ガイドピン65の各々が対応する第1ガイド穴37に挿入されることで、第3フェルール6が第1フェルール3に固定されると共に、第1フェルール3に対する第3フェルール6の位置が決定される。このように、光導波路基板5の各コア層51に対する各シングルコア光ファイバ7の第2コア71の位置が決定される。また、第1ガイド穴37に挿入された第2ガイドピン65は、接着剤等によって第1フェルール3に接着されない。
【0075】
本実施形態では、一対の第1ガイド穴37と、一対の第3ガイド穴66と、一対の第2ガイドピン65が、第1フェルール3に対する第3フェルール6の位置を決定すると共に、第1フェルール3と第3フェルール6が互いに分離可能なように第1フェルール3と第3フェルール6とを固定するように構成された第2位置決め機構として機能する。
【0076】
さらに、第1フェルール3と第3フェルール6との間に第2スペーサ67が設けられているため、4つのコア層51と4つの第2コア71との間に空隙が形成される。このように、4つのコア層51の各々が、第2スペーサ67によって形成された空隙を介して、4つの第2コア71のうちの対応する一つに光学的に接続される。
【0077】
本実施形態によれば、第1フェルール3に対する第3フェルール6の位置が第1ガイド穴37と第2ガイドピン65により決定される。さらに、第1フェルール3と第3フェルール6が互いに分離可能なように第1フェルール3と第3フェルール6とが互いに固定される。このように、アライメント装置等を用いずに光導波路基板5のコア層51と各シングルコア光ファイバ7の第2コア71とを互いに位置決めすることが可能となるため、光コネクタ1の量産性を向上させることが可能となる。
【0078】
さらに、接着剤等を用いずに光導波路基板5と各シングルコア光ファイバ7とを固定することができると共に、光導波路基板5と各シングルコア光ファイバ7とを互いに分離することができる。このように、光コネクタ1の一部(例えば、光導波路基板5)に故障があったとしても、光コネクタ1全体を交換する必要がなく、故障した光コネクタ1の一部のみを交換することが可能となる。このため、光コネクタ1の経済性を向上させることが可能となる。
【0079】
また、4つのコア層51の各々が空隙を介して4つの第2コア71のうちの対応する一つに光学的に接続されているため、光導波路基板5と各シングルコア光ファイバ7とを互いに物理的に接触させる必要がない。このため、光導波路基板5及び各シングルコア光ファイバ7に強い押圧力を加える必要がないと共に、光導波路基板5の第2端面54と各シングルコア光ファイバ7の端面73を精密に研磨する必要もない。このように、光コネクタ1の量産性を向上させることが可能となる。
【0080】
また、4つの第2コア71の各々は、光導波路基板5を介して、4つの第1コア21のうちの対応する一つと光学的に接続されるため、各シングルコア光ファイバ7とマルチコア光ファイバ2を光学的に接続可能な光コネクタ1を提供することができる。
【0081】
尚、本実施形態では、4つのシングルコア光ファイバ7と、4つのコア層51と、4つの第1コア21を有するマルチコア光ファイバ2が一例として挙げられているが、これらの個数は特に限定されるものではない。例えば、シングルコア光ファイバ7の個数がN個(N>1)である場合に、コア層51と第1コアの個数もN個となる。
【0082】
また、第1ガイドピン45は、第1フェルール3の第1ガイド穴37に挿入された状態で、接着剤を介して第1フェルール3に固定されていてもよい。第2ガイドピン65も同様に第1ガイド穴37に挿入された状態で、接着剤を介して第1フェルール3に固定されていてもよい。この場合、第2フェルール4が第1フェルール3に位置決め及び固定されるときには、一対の第1ガイドピン45は、一対の第2ガイド穴46の対応する一つに挿入される。また、第3フェルール6が第1フェルール3に位置決め及び固定されるときには、一対の第2ガイドピン65は、一対の第3ガイド穴66の対応する一つに挿入される。
【0083】
また、第1スペーサ47は、第1フェルール3の第1端面35上に配置されてもよい。同様に、第2スペーサ67は、第1フェルールの第2端面36上に配置されてもよい。
【0084】
(変形例)
次に、図5を参照して第1実施形態の変形例に係る光コネクタ1Aについて以下に説明する。尚、以降の説明では、第1実施形態において既に説明された構成要素と同一の参照番号を有する構成要素について繰り返し説明は行わない。図5は、第2フェルール4と第3フェルール6が第1フェルール3に固定される前の状態における光コネクタ1Aを示す模式図である。
【0085】
図5に示すように、光コネクタ1Aは、第2フェルール4及び第3フェルール6の端面にスペーサが設けられていない点で第1実施形態の光コネクタ1と大きく相違する。即ち、変形例に係る光コネクタ1Aによれば、第2フェルール4の端面43上に設けられた第1スペーサ47の代わりに(図1参照)、マルチコア光ファイバ2の端面23の位置が第2フェルール4の端面43の位置から後退している。換言すれば、Y軸方向におけるマルチコア光ファイバ2の端面23と光導波路基板5の第1端面53との間の距離は、Y軸方向における端面43と第1端面53との間の距離よりも大きくなる。このように、第1スペーサ47を設けずに、光導波路基板5のコア層51とマルチコア光ファイバ2の第1コア21との間に空隙を形成することができるため、光コネクタ1Aの部品点数を削減することができる。
【0086】
さらに、第3フェルール6の端面62上に設けられた第2スペーサ67の代わりに(図1参照)、各シングルコア光ファイバ7の端面73の位置が第3フェルール6の端面62の位置から後退している。換言すれば、Y軸方向における各シングルコア光ファイバ7の端面73と光導波路基板5の第2端面54との間の距離は、Y軸方向における端面62と第2端面54との間の距離よりも大きくなる。このように、第2スペーサ67を設けずに、光導波路基板5のコア層51と各シングルコア光ファイバ7の第2コア71との間に空隙を形成することができるため、光コネクタ1Aの部品点数を削減することができる。
【0087】
(第2実施形態)
次に、図6から図8を参照して第2実施形態に係る光コネクタ1Bについて以下に説明する。図6は、第2フェルール4aと第3フェルール6が第1フェルール3に固定される前の状態における光コネクタ1Bを示す模式図である。図7Aは、Y軸方向正の向きを見た第1スペーサ47aを示す図である。図7Bは、Y軸方向負の向きを見た第1フェルール3の第1端面35を示す図である。図7Cは、Y軸方向正の向きを見た第1フェルール3の第2端面36を示す図である。図7Dは、Y軸方向負の向きを見た第3フェルール6の端面62を示す図である。図8は、第2フェルール4aと第3フェルール6が第1フェルール3に固定された状態における光コネクタ1Bを示す模式図である。
【0088】
図6に示すように、光コネクタ1Bは、一対の第1ガイドピン45の代わりにスリーブ8が第1位置決め機構として機能する点で第1実施形態に係る光コネクタ1とは大きく相違する。以下の説明では、光コネクタ1と光コネクタ1Bとの間の相違点について言及する。
【0089】
図6に示すように、光コネクタ1Bは、第1フェルール3と、光導波路基板5と、第2フェルール4aと、第1スペーサ47aと、スリーブ8と、第3フェルール6と、第2スペーサ67とを備える。
【0090】
図6及び図7Aに示すように、第2フェルール4aは、第1フェルール3に対向する端面43aと、端面43aとは反対側に位置する端面42aとを有する。第2フェルール4aは、Y軸方向において端面43aと端面42aとの間を延びる中空の第2収容部48aをさらに有する。第2収容部48aは、マルチコア光ファイバ2を収容するように構成されている。マルチコア光ファイバ2が第2収容部48aに収容されることで、第2フェルール4aに対するマルチコア光ファイバ2の位置決めが完了する。この点において、第2フェルール4aを収容するハウジング(図示せず)と第1フェルール3を収容するアダプタ(図示せず)が互いに係合されることで、マルチコア光ファイバ2の回転位置が決定されてもよい。
【0091】
第1スペーサ47aは、マルチコア光ファイバ2を囲むように第2フェルール4aの端面43a上に配置されている。第1スペーサ47aは、例えば、樹脂テープであってもよい。第1スペーサ47aの膜厚は、例えば、10μm以下であってもよい。本実施形態では、第1スペーサ47aが第1フェルール3と第2フェルール4aとの間に設けられているため、第1フェルール3と第2フェルール4aが互いに固定された状態(図8参照)において、コア層51と第1コア21との間に空隙が形成される。特に、第2フェルール4aがスリーブ8によって第1フェルール3に位置決め及び固定された状態において、コア層51と第1コア21との間の空隙は、第1スペーサ47aの膜厚によって規定される。
【0092】
図6及び図7Bに示すように、第1位置決め機構として機能する円筒状のスリーブ8は、第1フェルール3の第1端面35に取り付けられており、第2フェルール4aを収容するように構成されている。スリーブ8は、割りスリーブとして構成されており、Y軸方向に延びるスリット82がスリーブ8に形成されている。スリーブ8の内径は、第2フェルール4aの外径よりも僅かに小さい。
【0093】
次に、図8に示すように、第2フェルール4aが第1フェルール3に固定されると共に、第3フェルール6が第1フェルール3に固定された状態について以下に説明を行う。
【0094】
図8に示すように、第2フェルール4aがスリーブ8に挿入されることで、第2フェルール4aが第1フェルール3に固定されると共に、第1フェルール3に対する第2フェルール4aの位置が決定される。このように、光導波路基板5のコア層51に対するマルチコア光ファイバ2の第1コア21の位置が決定される。また、第2フェルール4aは、スリーブ8に挿入される一方で、第1フェルール3には接着されない。この点において、図示しないクリップ等によって、第1フェルール3と第2フェルール4aとの間並びに第1フェルール3と第3フェルール6との間に押圧力が付与されてもよい。
【0095】
本実施形態では、スリーブ8が、第1フェルール3に対する第2フェルール4aの位置を決定すると共に、第1フェルール3と第2フェルール4aが互いに分離可能なように第1フェルール3と第2フェルール4aとを固定するように構成された第1位置決め機構として機能する。
【0096】
さらに、第1フェルール3と第2フェルール4aとの間に第1スペーサ47aが設けられているため、4つのコア層51と4つの第1コア21との間に空隙が形成される。このように、4つのコア層51の各々が、第1スペーサ47aによって形成された空隙を介して、4つの第1コア21のうちの対応する一つに光学的に接続される。
【0097】
本実施形態によれば、第1フェルール3に対する第2フェルール4aの位置がスリーブ8により決定される。さらに、第1フェルール3と第2フェルール4aが互いに分離可能なように第1フェルール3と第2フェルール4aとが互いに固定される。このように、アライメント装置等を用いずに光導波路基板5のコア層51とマルチコア光ファイバ2の第1コア21を互いに位置決めすることが可能となるため、光コネクタ1Bの量産性を向上させることが可能となる。
【0098】
さらに、接着剤等を用いずに光導波路基板5とマルチコア光ファイバ2とを固定することができると共に、光導波路基板5とマルチコア光ファイバ2とを互いに分離することができる。このように、光コネクタ1Bの一部(例えば、光導波路基板5)に故障があったとしても、光コネクタ1B全体を交換する必要がなく、故障した光コネクタ1Bの一部のみを交換することが可能となる。このため、光コネクタ1Bの経済性を向上させることが可能となる。
【0099】
また、4つのコア層51の各々が空隙を介して4つの第1コア21のうちの対応する一つに光学的に接続されているため、光導波路基板5とマルチコア光ファイバ2とを互いに物理的に接触させる必要がない。このため、光導波路基板5及びマルチコア光ファイバ2に強い押圧力を加える必要がないと共に、光導波路基板5の第1端面53とマルチコア光ファイバ2の端面23を精密に研磨する必要もない。このように、光コネクタ1の量産性を向上させることが可能となる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態はあくまでも一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解される。このように、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0101】
1:光コネクタ
1A:光コネクタ
1B:光コネクタ
2:マルチコア光ファイバ
3:第1フェルール
4:第2フェルール
4a:第2フェルール
5:光導波路基板
6:第3フェルール
7:シングルコア光ファイバ
8:スリーブ
21:第1コア
22:第1クラッド
37:第1ガイド穴
38:第1収容部
45:第1ガイドピン
46:第2ガイド穴
47:第1スペーサ
47a:第1スペーサ
48:第2収容部
48a:第2収容部
51:コア層
52:クラッド層
65:第2ガイドピン
66:第3ガイド穴
67:第2スペーサ
68:第3収容部
71:第2コア
72:第2クラッド
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8