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特許7578397毛髪を成形および処置する光ベースシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】毛髪を成形および処置する光ベースシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 1/00 20060101AFI20241029BHJP
   A45D 1/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241029BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A45D1/00 Z
A45D1/00 502Z
A45D1/06 Z
A61K8/49
A61K8/67
A61Q5/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019570383
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018039134
(87)【国際公開番号】W WO2018237346
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】62/523,734
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/558,016
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/523,994
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】オーステン ウィリアム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】レッドモンド ロバート
(72)【発明者】
【氏名】マッコーマック マイケル
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-501166(JP,A)
【文献】特開2017-080425(JP,A)
【文献】特表2017-503776(JP,A)
【文献】特開2012-210474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D1/00
A61K8/49
A61K8/67
A61Q5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容処置を実施する方法であって、
(a)外因性繊維を光増感剤に加えるステップと、
(b)対象のケラチン繊維に、前記ケラチン繊維が前記ケラチン繊維の第1の物理的状態にある間に、前記光増感剤を適用するステップと、
(c)前記美容処置を実施するため、前記ケラチン繊維および前記光増感剤を、前記外因性繊維とともに、前記ケラチン繊維に光架橋または光活性化を引き起こすために選択された電磁放射に供して、前記ケラチン繊維を前記第1の物理的状態とは異なる前記ケラチン繊維の第2の物理的状態に移行させるステップであって、前記第1および第2の物理的状態は、質量、長さ、密度、厚さ、体積、引張強度、色、および空間的配向からなる群から選ばれるステップと、を含み、
前記ケラチン繊維が、前記対象の毛束もしくは爪の中、または前記対象のまつげ内に位置し、
前記電磁放射が、60~120ジュール/cmのパワー出力で適用され、
前記光架橋または光活性化は、前記電磁放射によって、熱を使用せずに、または摂氏15度未満の温度上昇で引き起こされ、かつ
前記光架橋または光活性化は、前記ケラチン繊維と前記外因性繊維間または個々の前記ケラチン繊維の2つの異なる部分間に、共有結合の形成を引き起こす、
方法。
【請求項2】
前記電磁放射が、400~700nmの波長で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光増感剤が、ローズベンガル、リボフラビン、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)が、美容デバイスの支援によって、前記ケラチン繊維に物理的な力を供して、前記ケラチン繊維を前記第2の物理的状態に配置するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記美容デバイスが、カーリングアイロン、ヘアストレートナー、ブロードライヤー、およびヘアブラシのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記外因性繊維は、前記対象の前記毛束を厚くするまたは長さを増やすために用いられることが可能なヘアエクステンションとして構成された繊維状タンパク質であり、
前記繊維状タンパク質、前記光増感剤、および前記毛束を、前記繊維状タンパク質と前記毛束の中の前記ケラチン繊維との間で光架橋を起こして、前記毛束を厚くするまたは長さを増やす、電磁放射に供する、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維状タンパク質が、ケラチン、コラーゲン、合成繊維、人工毛髪、毛髪、およびそれらの混合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維状タンパク質が、前記ヘアエクステンションの中に位置している、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘアエクステンションが、前記対象の前記毛束に光架橋される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ケラチン繊維の前記第2の物理的状態が、前記ケラチン繊維の前記第1の物理的状態よりも大きい平均直径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ケラチン繊維の前記第2の物理的状態が、前記ケラチン繊維の前記第1の物理的状態より大きい質量を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記毛束の中の前記ケラチン繊維の前記第2の物理的状態が、前記第1の物理的状態とは異なる色を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の物理的状態が、波状または巻き毛構成を含み、前記第2の物理的状態が、直線状構成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の物理的状態が、直線状構成を含み、前記第2の物理的状態が、波状または巻き毛構成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップ()が、前記外因性繊維としての繊維状タンパク質を含む前記光増感剤を、前記対象のケラチン繊維としての前記爪に適用するステップを含み、ステップ()が、前記繊維状タンパク質、前記光増感剤、および前記爪を前記電磁放射に供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維状タンパク質が、ケラチン、コラーゲン、またはそれらの混合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ケラチン繊維の前記第2の物理的状態が、前記ケラチン繊維の前記第1の物理的状態より大きい質量を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ケラチン繊維の前記第2の物理的状態が、前記ケラチン繊維の前記第1の物理的状態より大きい密度を有する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年6月22日に出願された米国仮特許出願第62/523,734号、2017年6月23日に出願された米国仮特許出願第62/523,994号、および2017年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/558,016号に基づいており、その利益を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
美容および化粧品の分野では、消費者は毛髪をスタイリングするためのより効率的な製品およびより効果的なツールを常に求めている。そのような製品は、消費者がストレートまたは巻き毛などのスタイルをより簡単に達成できるようにし得る一方で、ボリューム、弾力性、および/または維持性の改善も提供する。
【0003】
現在、多くの毛髪を成形するツールおよび製品が市場に出回っており、これらは一般に一時的な成形方法と恒久的な成形方法とで区別される。これらの方法はそれぞれ、毛髪内に存在する分子間相互作用を乱し、再組織することに依存している。例えば、毛髪は通常、コイルドコイル二次構造で構成されたα-ケラチン繊維などの繊維状タンパク質を含む。アミノ酸側鎖間の分子間相互作用(すなわち、水素結合、クーロン相互作用など)および繊維間の共有ジスルフィド結合は、毛髪に存在するタンパク質の二次構造を規定する。毛髪の高分子構造の変化(すなわち、巻き毛からストレート)は、これらの安定化力を乱すことで達成することができる。
【0004】
一時的な成形方法は通常、熱を加えることで毛髪に存在する安定化力を乱す。熱は、しばしば、繊維状タンパク質間の分子間相互作用を乱すのに十分な温度で、ブロードライヤーまたはフラットアイロンなどの装置を通して加えられる。十分な温度は、通常、華氏200~500度の範囲である。一時的な成形方法の間、熱を毛髪に加えながら、同時に毛髪を所望の形状に伸張またはカールさせる。次に、熱を除去し、毛髪を所望の形状で冷却して、繊維状タンパク質間で分子間相互作用を再形成させることができ、これにより、新しい形状を保持する。一時的な成形方法はまた、ワックス、ジェル、またはポマードなどの毛髪固定ポリマーを毛髪に塗布することを含んでもよい。一時的な成形方法の欠点は、風、湿度、または水との接触などの外力にさらされると、毛髪が元の形状に戻ることである。さらに、高温で加熱すると、毛髪に損傷を与える可能性がある。
【0005】
いわゆる「恒久的な」成形方法は通常、化学反応を使用して毛髪に存在する安定化力を乱す。特に、恒久的な成形方法では、強力な還元剤を使用して、例えばα-ケラチン繊維に存在する強力なジスルフィド結合を破壊し、続いて中和ステップ(すなわち、過酸化水素の適用)によって、所望の形状のジスルフィド結合を再形成する。処置は通常、NaOHなどのアルカリ性水酸化物を含む高pH溶液を毛髪に適用して、ジスルフィド結合の減少を誘発することを含む。他の強力な還元剤には、ホルムアルデヒド、グリコール酸、およびチオグリコール酸が含まれる。恒久的な成形方法の欠点は、手順が、時間を要し、苛性化学物質への暴露のために毛髪に損傷を与える可能性があることである。さらに、消費者が、例えば、巻き毛からストレートの毛髪に戻すことを望む場合、手順を繰り返さなければならないか、毛髪を成長させて処置された毛髪に取って代わらなければならない。還元剤への過剰暴露は、毛髪の健全性をさらに悪化させる。
【0006】
したがって、毛髪を成形する、または、身体の他の部分に審美的処置を提供して、個人に新しい、しかしフレキシブルな制御を提供するための、新しいシステムおよび方法を提供することが望ましい。さらに、熱または潜在的に有害な化学物質なしで毛髪を成形かつ処置するための新しいシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様によれば、美容処置を実施するための方法が提供される。方法は、対象のケラチン繊維に、ケラチン繊維が第1の物理的状態にある間に光増感剤を適用するステップと、ケラチン繊維および光増感剤を、ケラチン繊維に光架橋または光活性化を起こすために選択された電磁放射に供して、ケラチン繊維を第1の物理的状態とは異なる第2の物理的状態に移行させるステップと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様によれば、ケラチン繊維を処置および成形するための光ベースシステムが提供される。光ベースシステムは、容器を含む流体供給システムを含む。容器は、光増感剤を収容するように構成されている。容器はさらに、流体出口と流体連通しており、流体出口は、ケラチン繊維を含む目標領域に光増感剤を分配するように構成されている。光ベースシステムは、1つ以上の光源を備えて構成された活性化システムを含む。光源は、目標領域に電磁放射を適用するように構成されている。光ベースシステムは、メモリを有し、活性化システムと電気通信するように構成された、プロセッサをさらに含む。プロセッサは、ケラチン繊維が第1の物理的状態から第2の物理的状態に移行するように、ケラチン繊維に光架橋を起こすために選択された目標領域に電磁放射を適用するストアプログラムを実行するように構成される。
【0009】
本開示の別の態様によれば、美容処置を実施する方法が提供される。この方法は、第1の物理的状態の対象内のケラチン繊維に光増感剤を適用するステップを含む。この方法は、ケラチン繊維に光架橋を起こしてケラチン繊維を第1の物理的状態とは異なる第2の物理的状態に移行させるように選択された電磁放射にケラチン繊維および光増感剤を供するステップをさらに含む。
【0010】
本発明の前述および他の態様および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。説明では、本明細書の一部を形成し、本発明の好ましい実施形態を例示として示す添付図面を参照する。そのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲および本明細書を参照する。
【0011】
以下、本発明を添付の図面を参照して説明するが、類似の参照番号は類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法のステップを示すフローチャートである。
図2】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された光ベースシステムのブロック図である。
図3】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された例示的な美容デバイスである。
図4】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された例示的な美容デバイスである。
図5】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された例示的な美容デバイスである。
図6】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された例示的な美容デバイスである。
図7】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された例示的な美容デバイスである。
図8】本開示の一態様による、美容処置を実施するための方法を実施するように構成された例示的な美容デバイスである。
図9】本開示の一態様による、美容処置を実施する前の対象の毛髪の画像の非限定的な実施例である。
図10】美容処置後の図9の対象の毛髪、および複数回洗浄への曝露後の美容処置の保持の非限定的な実施例を示す一連の画像である。
図11】本開示の一態様による、美容処置を実施する前の対象の毛髪の画像の非限定的な実施例である。
図12】美容処置後の図11の対象の毛髪の画像である。
図13】対象の毛髪、および複数回洗浄への暴露後の美容処置の保持の非限定的な実施例を示す一連の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、対象のケラチン繊維を処置または成形するなどの美容処置を実施するための方法、システム、およびキットが記載される。例示的なケラチン繊維は、例えば、対象の毛髪または爪に見られるケラチン繊維であり得る。一般に、本明細書に記載の方法は、ケラチン繊維が第1の物理的状態にある間に、対象のケラチン繊維に光増感剤を適用するか、そうでなければ投与するステップと、ケラチン繊維を適切な波長、エネルギー、および持続時間の電磁放射に供して、ケラチン繊維を第1の物理的状態とは異なる第2の物理的状態に移行させるステップと、を含む。本明細書で使用される場合、「物理的状態」という用語は、対象内のケラチン繊維の測定可能な特性を指す場合がある。ケラチン繊維の例示的な物理的状態には、対象の毛髪または爪の質量、長さ、密度、厚さ、空間的配向、体積、引張強度、および/または色が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「成形」という用語は、ケラチン繊維に美容処置を実施して、例えば、対象の毛髪または爪の物理的外観を変化させることを指し得る。ケラチン繊維の成形は、対象の関心領域のケラチン繊維に光増感剤を適用するか、さもなければ投与することと、適切な波長、エネルギー、および持続時間の電磁放射をケラチン繊維に照射して、ケラチン繊維に光架橋を起こすことと、を含むことができ、これにより、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変形させる。本開示のいくつかの態様では、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に物理的に変形させるのを支援するために、美容デバイス(例えば、ブラシ、ヘアドライヤー、カーリングアイロン、矯正アイロン、ネイル塗布器)が使用される。本開示の一態様では、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変えることは、ケラチン繊維の空間的配向を変えることと、ケラチン繊維が第2の物理的状態にある間に光架橋し、第2の物理的状態の空間的配向を一定期間保持することと、を含む。ケラチン繊維の空間的配向を変えることは、対象の毛髪をストレートから巻き毛に、巻き毛からストレートに、そしてそれらの間の空間的配向を変化させることを含んでもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「保持する」という用語は、一般に、ケラチン繊維の第2の物理的状態(例えば、巻き毛またはストレート)を一定期間維持することを指す。そのような一定期間は、ケラチン繊維が異なる物理的状態に配置されるまで、少なくとも数時間または無期限に伸びるなど、毛髪の用途に適した期間であってもよい。例えば、一定期間は、多数回洗浄に基づいて測定されてもよく、ケラチン繊維の第2の物理的状態は、水または石鹸水に浸漬かつ攪拌(例えば、擦り洗浄)された後、実質的に保持されてもよい。本開示のいくつかの態様では、ケラチン繊維の少なくとも一部分は、第2の物理的状態の少なくとも10%が多数回洗浄後に保持される一定期間にわたって第2の物理的状態を保持することができ、または第2の物理的状態の少なくとも20%、または第2の物理的状態の少なくとも30%、または第2の物理的状態の少なくとも40%、または第2の物理的状態の少なくとも50%、または第2の物理的状態の少なくとも60%、または第2の物理的状態の少なくとも70%、または第2の物理的状態の少なくとも80%、または第2の物理的状態の少なくとも90%、または第2の物理的状態の少なくとも95%、またはそれ以上が、1回の洗浄、または2回の洗浄、または3回の洗浄、または4回の洗浄、または5回の洗浄、または6回の洗浄、または7回の洗浄、または8回の洗浄、または9回の洗浄、または10回の洗浄、またはそれ以上などの多数回洗浄に暴露した後に保持されている。
【0016】
1つの非限定的な例示的な実施例として、多数回洗浄後の第2の物理的状態(例えば、巻き毛またはストレートの毛髪)の空間的配向の相対的保持は、以下の手順を使用して監視され得る。最初に、第2の物理的状態の毛束を関心領域から抽出することができる。次に、毛束の一端をある場所に固定し、毛束を実質的に直線状になるまで伸張することができる。静止状態と伸張状態との間の長さの変位が記録される。次に、毛束を水または石鹸水で洗浄し、乾燥させ、測定を繰り返す。次に、洗浄前の変位測定値を洗浄後の変位測定値と比較することにより、第2の物理的状態の相対的保持を記録することができる。
【0017】
本開示のいくつかの態様では、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変えることは、対象の毛髪または爪の質量、長さ、密度、厚さ、体積、引張強度、および/または色を増加させることを含んでもよい。いくつかの形態では、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変える前に、外因性繊維(例えば、繊維状タンパク質または合成繊維)を関心領域に追加してもよい。例えば、電磁放射を目標領域に適用する前に、外因性繊維を光増感剤溶液と目標領域のケラチン繊維に加えることができる。代替的または追加的に、外因性繊維は、固体、例えば粉末として、またはヘアエクステンションの形態で適用されてもよい。次に、電磁放射を目標領域に適用して、ケラチン繊維が第1の物理的状態から第2の物理的状態に変形されるように、関心領域における繊維状タンパク質とケラチン繊維との間で光架橋を起こすことができる。ケラチン繊維の第2の物理的状態は、ケラチン繊維の第1の物理的状態よりも大きい質量、平均直径、体積、密度、引張強度、または長さを有することができる。他の態様では、ケラチン繊維の第2の物理的状態は、第1の物理的状態の色とは異なる色を含んでもよい。
【0018】
適切な外因性線維状タンパク質は、ケラチン、コラーゲン、合成繊維、人工毛髪、毛髪、それらの誘導体および混合物を含むことができる。非限定的な一実施例では、合成繊維は、塩化ビニル、モダクリル、塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン、それらの誘導体および混合物を含む。外因性繊維状タンパク質または合成繊維は、粉末またはヘアエクステンションの形態であってもよい。美容処置の例示的な使用には、繊維状タンパク質を対象の爪に光架橋させて爪の密度を高めることを含んでもよい。同様に、繊維状タンパク質を対象の毛髪に光架橋させて、薄化領域を厚くし、または、長さを増やす(すなわち、ヘアエクステンションを取り付ける)ことができる。従前のヘアエクステンション方法では、ケラチンベースの接着剤、熱、または超音波を使用してエクステンションを実施する必要がある。これらの従前の方法では、さらに長時間(すなわち、3~4時間)および広範なメンテナンスが必要である。従前の方法とは異なり、本開示は、熱または潜在的に有害な化学物質を追加することなく実施される、より安全でより速い適用時間を提供する。例えば、繊維状タンパク質は、約30分、または15分、または10分、または5分、または2分、または1分未満の適用時間で目標領域のケラチン繊維に光架橋されてもよい。本開示のいくつかの態様では、外因性繊維は、生体適合性緩衝液または溶液に0.01%(w/w)、または0.05%(w/w)、または0.1%(w/w)、または0.5%(w/w)、または1%(w/w)、または2%(w/w)、または3%(w/w)、または4%(w/w)、または5%(w/w)、または6%(w/w)、または7%(w/w)、または8%(w/w)、または9%(w/w)、または10%(w/w)、またはそれ以上の外因性繊維対溶液の濃度で懸濁または溶解することができる。
【0019】
繊維状タンパク質は、ブロンド、ブルネット、ブラウン、ブラック、レッド、グレー、プラチナなどの色を含んでもよい。繊維状タンパク質は、目標領域のケラチン繊維に光架橋して、目標領域の色を変えることができる。
【0020】
本開示のいくつかの態様では、ケラチン繊維が第1の物理的状態にある間に関心領域からケラチン繊維を外植し、測定を実施し、ケラチン繊維が第2の物理的状態にある間に関心領域からケラチン繊維を外植し、測定を実施し、第1の物理的状態と第2の物理的状態との間の測定値の変化を監視することで、第1の物理的状態に対する第2の物理的状態の保持を測定することができる。本開示のいくつかの態様では、ケラチン繊維の少なくとも一部分は、第2の物理的状態の少なくとも10%が第1の物理的状態に関連して保持される一定期間にわたって第2の物理的状態を保持することができ、または第2の物理的状態の少なくとも20%、または第2の物理的状態の少なくとも30%、または第2の物理的状態の少なくとも40%、または第2の物理的状態の少なくとも50%、または第2の物理的状態の少なくとも60%、または第2の物理的状態の少なくとも70%、または第2の物理的状態の少なくとも80%、または第2の物理的状態の少なくとも90%、または第2の物理的状態の少なくとも95%、またはそれ以上が、一定期間、例えば1日、または1週間、または2週間、または3週間、または4週間、または1か月、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または7か月、または8か月、または9か月、または10か月、または11か月、または1年、またはそれ以上、第1の物理的状態に関連して保持されている。第1の物理的状態から第2の物理的状態への物理的状態の変化を監視するための適切な測定は、ケラチン繊維の重量測定、体積変位測定、比色測定、長さ測定、および/または引張強度測定を含む。
【0021】
代替的または追加的に、ケラチン繊維の物理的状態はまた、疾患の識別可能な状態、または疾患を示す化学種の濃度に関連する場合がある。例えば、爪の疾患(例えば、爪甲症)は、感染または炎症の兆候に基づいて特定することができる。例示的な物理的状態には、爪の変色(例えば、黄変、褐変、および赤み)、爪の形状および模様(爪のクラビングの程度、匙状爪、乾癬によるくぼみ、ボー線条)、ならびに爪の順応性(鉄濃度、葉酸、タンパク質、ビタミンC欠乏に関連する分裂および綻びによって測定される脆性)も含まれ得るが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、美容上の処置を実施して治療的変化を誘発することに関する場合がある。本開示のいくつかの態様では、処置有効量または薬学的に適切な用量の光増感剤が、関心領域のケラチン繊維に適用され、かつ、ケラチン繊維に適切な波長、持続時間、強度の電磁放射を照射して、研究者、獣医、医師、または他の臨床医が探している対象、組織、または細胞の生物学的または医学的反応を引き出す。本開示のいくつかの態様では、生物学的または医学的反応は、光増感剤を光活性化することにより引き出される。本開示のいくつかの態様では、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変えることは、疾患の識別可能な状態の程度または強度あるいは疾患を示す化学種の濃度を下げること、例えば、対象の爪の中の真菌の量を減らすこと、または対象の毛髪のシラミの量を減らすことを含んでもよい。本明細書で使用される「対象」という用語は、人間の対象、およびイヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタなどの家畜の大小動物を含む他の動物対象の両方を指す場合がある。
【0023】
本明細書で使用される場合、「光活性化」は、電磁放射の形態のエネルギーが光増感剤などの化合物によって吸収されるプロセスを説明するために使用される。電磁放射は、可視範囲または電磁スペクトルの一部分、あるいはスペクトルの紫外および赤外領域の波長を有するエネルギー、例えば光を含むことができる。化学エネルギーは、一重項酸素、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、光増感剤の励起状態、光増感剤フリーラジカル、または基質フリーラジカル種などの反応種の形態をとることができる。本明細書に記載される光活性化プロセスは、吸収されたエネルギーの熱エネルギーへの実質的な伝達を伴う場合がある。好ましくは、光活性化は、摂氏15度未満の温度上昇、または摂氏10度未満の上昇、または摂氏3度未満の上昇、または摂氏2度未満の上昇、あるいは、例えば、照射中に目標領域を見る画像サーマルカメラによって測定された摂氏1度未満の温度上昇で発生する。カメラは、元の色素沈着の領域、例えばケラチン繊維を含む目標領域、または色素が拡散する目標領域にすぐ隣接する領域に焦点を合わせることができる。
【0024】
本開示のいくつかの態様では、「光増感剤」という用語は、光活性化などのプロセスによって電磁放射を吸収して、ケラチン繊維と別の高分子間または個々のケラチン繊維の2つの異なる部分間の共有結合の形成を起こす化学部分を含む。
【0025】
ここで特に図1を参照すると、美容処置100を実施する例示的な方法が示されている。この方法は、対象のケラチン繊維に光増感剤102を適用するか、そうでなければ投与するステップを含む。光増感剤102は、例えば、スプレーボトルを使用して、手動で適用されてもよい。代替的または追加的に、光増感剤102は、例えば、ポンプ、ノズル、流体供給タンク、ならびに流量および分配速度を調節する制御ユニットを使用する流体分配システムを使用して適用102されてもよい。光増感剤102は、生体適合性緩衝液または溶液、例えば生理食塩水に溶解し、0.1mM~10mM、または0.5mM~5mM、または1mM~3mMの濃度で使用することができる。あるいは、光増感剤102は、ヒドロゲルまたはシリコーンゲルなどのゲル内に溶解または懸濁されてもよい。ケラチン繊維は、対象の外面または内面に適用されてもよい。ケラチン繊維の少なくとも一部分を覆うのに十分な量の光増感剤102を適用してもよい。例えば、少なくとも10μLの光増感剤102溶液、または50μL、100μL、250μL、500μL、または1ml以上を目標領域に適用することができる。いくつかの態様では、光増感剤102は、生体適合性緩衝液または溶液に0.01%(w/w)、または0.05%(w/w)、または0.1%(w/w)、または0.5%(w/w)、または1%(w/w)、または2%(w/w)、または3%(w/w)、または4%(w/w)、または5%(w/w)、または6%(w/w)、または7%(w/w)、または8%(w/w)、または9%(w/w)、または10%(w/w)、またはそれ以上の光増感剤102対溶液の濃度で溶解することができる。
【0026】
次に、電磁放射は、ケラチン繊維および光増感剤に適用104されてもよい。電磁放射は、適切な波長、エネルギー、および持続時間で適用104されてもよく、光増感剤にケラチン繊維に光架橋を起こし、それによりケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変形させる。本開示のいくつかの態様では、電磁放射は、治療上有効量、または薬学的に適切な用量で適用104されてもよく、関心領域の疾患または状態を処置する生物学的または医学的反応を引き出し、それによってケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変形させる。いくつかの態様では、美容デバイスを使用して、力または/およびまたは温度の変化などを適用することにより、ケラチン繊維206を第1の物理的状態から第2の物理的状態に成形するのを支援することができる。これは、例えば、ケラチン繊維への電磁放射の適用前または適用中に、ブラシまたはカーリングアイロンを使用して毛髪を成形することを含んでもよい。電磁放射は、ケラチン繊維上で光架橋を起こすため、または光活性化を誘発して疾患または状態を処置するためなど、反応を引き出すために選択された持続時間108の間適用され得る。例えば、照射の持続時間は約1秒~30分であり得る。他の態様では、照射の持続時間は、約1秒~30秒、または30秒~2分、または2分~5分、または5分を超える範囲である。光の波長は、光増感剤の吸収に対応し、かつ光増感剤と接触したケラチン繊維の領域に到達するように、例えば、光増感剤が存在する領域に浸透するように選択できる。光源は、2000J/cm未満、または50~200J/cmの放射エネルギーで電磁放射を適用するように構成できる。いくつかの態様では、光源は、60~120J/cm、または80~100J/cmの放射エネルギーで電磁放射を適用するように構成されてもよい。光増感剤の光活性化を達成するために必要な電磁放射は、約350nm~約800nm、または約400~700nmの波長を有することができ、可視、赤外または近紫外スペクトル内であってもよい。エネルギーは、約0.1~5W/cm、または約0.5~2W/cmの放射照度で送達できる。
【0027】
いくつかの態様では、第2の物理的状態は、一時的な変形、半恒久的な変形、または恒久的な変形の範囲に調整可能であってもよい。毛髪の文脈において、変形が一時的であるか恒久的であるかを判断することは、水を使用した多数回洗浄などの水分にさらされた後の毛髪の変化に対する抵抗として測定することができる。一時的な変形は、1回の洗浄にさらされた後、第2の物理的状態から第1の物理的状態に戻るケラチン繊維として定義できる。恒久的な変形は、10回の洗浄にさらされた後、第2の物理的状態から第1の物理的状態に戻らないケラチン繊維として定義できる。半恒久的な変形は、これらの境界内に収まる。変形の状態は、例えば、目標領域に適用される電磁放射の波長、エネルギー、または持続時間を変更することによって調整することができる。あるいは、目標領域の光増感剤の濃度を変化させることにより、変形の状態を調整することができる。いくつかの態様では、光ベースシステム100は、ケラチン繊維の第2の物理的状態が少なくとも1回の洗浄、少なくとも2回の洗浄、少なくとも3回の洗浄、少なくとも4回の洗浄、少なくとも5回の洗浄、少なくとも6回の洗浄、少なくとも7回の洗浄、少なくとも8回の洗浄、少なくとも9回の洗浄、または少なくとも10回の洗浄に耐性があるように、ケラチン繊維の光架橋を起こすことができる。
【0028】
1つの非限定的な実施例の方法では、光増感剤を含むゲルを対象のまぶたに適用または投与することができる。次に、マスカラブラシなどの美容デバイスを使用して、対象のまつげをゲルにブラシでかけ、対象のまつげ内に位置するケラチン繊維を光増感剤と接触させることができる。あるいは、ゲルは、光増感剤なしで適用または投与されてもよく、光増感剤は、上記の方法のいずれかによって対象のまつげに手動で適用されてもよい。対象のまつげは、ゲルに密着するように構成されていてもよく、ケラチン繊維を光増感剤と接触させる前に、さらなる処置のためにまつげを引き離してもよい。次に、光源が対象のまつげに電磁放射を適用してケラチン繊維に光架橋を起こし、それによりケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変形させることができる。処置中に保護カバーを使用して、電磁放射が目に入らないようにすることができる。別の非限定的な実施例では、美容デバイスを使用して、光増感剤を含むゲルを対象のまつげにブラシで塗る。対象のまつげは、処置前に対象のまぶたに密着させても、引き離されてもよい。適切なゲルには、ヒドロゲル、シリコーンゲルなどが含まれる。いくつかの態様では、ゲルは、ケラチン繊維への電磁放射の送達を支援するための光導波路として機能することができる。例えば、シリコーンゲルは、電磁放射を反射し、電磁放射をケラチン繊維に導く反射ベースを含んでもよい。
【0029】
適切な光増感剤には、ローズベンガル(RB)などのフルオレセイン(例えば、4,5,6,7-テトラクロロ-2´、4´、5´、7´-テトラヨードフルオレセインまたはその誘導体)、リボフラビン(例えば、7,8-ジメチル-10-[(2S、3S、4R)-2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル]ベンゾ[g]プテリジン-2,4-ジオンまたはその誘導体)、リボフラビン-S-リン酸(R-5-P)、メチレンブルー(MB)、ならびにN-ヒドロキシピリジン-2-(1H)-チオン(N-HTP)、それらの誘導体および混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
流体供給システム104で使用することができる感光性化合物の他の実施例には、例えば、フォトフリン(登録商標)、合成ジポルフィリンおよびジクロリン、金属置換基を伴うかまたは伴わないフタロシアニン、様々な置換基を伴うかまたは伴わないクロロアルミニウムフタロシアニン、O-置換テトラフェニルポルフィリン、3,1-メソテトラキス(o-プロピオンアミドフェニル)ポルフィリン、ヴェルディン、プルプリン、オクタエチルプルプリンのスズおよび亜鉛誘導体、エチオプルプリン、ハイドロポルフィリン、テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリンシリーズのバクテリオクロリン(例えば、プロトポルフィリンIからプロトポルフィリンIX、コプロポルフィリン、ウロポルフィリン、メソポルフィリン、ヘマトポルフィリンおよびサフィリン)、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-1-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-1-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、メタテトラヒドロキシフェニルクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ベンゾポルフィリン一酸誘導体、ベンゾポルフィリンのテトラシアノエチレン付加物、ベンゾポルフィリンのアセチレンジカルボン酸ジメチル付加物、ディールス・アドラー付加体、ベンゾポルフィリンの一酸環「a」誘導体、スルホン化アルミニウムPC、スルホン化AlPc、ジスルホン化、テトラスルホン化誘導体、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン、金属置換基を伴うかまたは伴わない、および様々な置換基を伴うかまたは伴わないナフタロシアニン、クロロフィル、バクテリオクロロフィルA、アントラセンジオン、アントラピラゾール、アミノアントラキノン、フェノキサジン染料、チアジン、メチレンブルー、フェノチアジン誘導体、カルコゲナピリリウム色素、カチオン性セレナおよびテルラピリリウム誘導体、環置換カチオン性PC、フェオフォルバイド誘導体、天然に存在するポルフィリン、ヘマトポルフィリン、ALA誘発プロトポルフィリンIX、内因性代謝前駆体、5-アミノレブリン酸、ベンゾナフトポルフィラジン、カチオン性イミニウム塩、テトラサイクリン、ルテチウムテキサフィリン、テキサフィリン、錫エチオプルプリン、ポルフィセン、ベンゾフェノチアジニウム、キサンテン、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン、シアニン、メロシアニン540、セレン置換シアニン、フラビン、リボフラビン、プロフラビン、キノン、アントラキノン、ベンゾキノン、ナフタルジイミド、ナフタルイミド、ビクトリアブルー、トルイジンブルー、ジアントロキノン(例えばヒペリシン)、フラーレン、ローダミンおよびその感光性誘導体のような、様々な感光性色素および生体分子が含まれる。
【0031】
適切な繊維状タンパク質は、ケラチン、コラーゲン、合成繊維、人工毛髪、毛髪などを含むことができる。非限定的な一実施例では、合成繊維は、塩化ビニル、モダクリル、塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン、およびそれらの混合物を含む。治療剤は、目標領域に適用する前に繊維状タンパク質に結合されてもよい。治療剤は、小分子薬、核酸構築物(すなわち、siRNA、アプタマー、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチドなど)、および抗体構築物を含んでもよい。非限定的な一実施例では、治療効果を提供するために、抗真菌薬を繊維状タンパク質に結合させることができる。例示的な抗真菌薬では、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、テルビナフィン、アモロルフィンなどを含む。
【0032】
光ベースシステム
【0033】
ここで特に図2を参照すると、本明細書で提示される方法を実施し得る光ベースシステム200の実施例が示されている。一般に、光ベースシステム200は、様々な構成要素と電気通信するように構成されたプロセッサ202を含む。プロセッサ202は、流体供給システム204(任意で)および光活性化システム206のポンプまたは他の構成要素と通信してもよい。任意の流体供給システム204および光活性化システム206またはその構成要素は、有線、無線であろうと両方の組み合わせであろうと、任意の適切なネットワーク接続によってプロセッサ202に接続されてもよい。プロセッサ202は、市販のオペレーティングシステム上で実施される市販のプログラム可能なマシンを含む。すなわち、プロセッサ202は、プログラム可能な命令を保存したメモリ208を備えて構成される。プロセッサ202は、流体供給システム204および光活性化システム206と通信し、メモリ208に保存されたプログラム可能な命令に基づいてデータを処理し、命令を生成することができる。プロセッサ202は、入力パラメータが光ベースシステム200に入力されることを可能にするユーザインターフェース210に結合されてもよい。ユーザインターフェース210は、スイッチもしくはボタン、またはスイッチもしくはボタンの集合であってもよい。また、ユーザインターフェース210は、ディスプレイまたはタッチスクリーンなどの他のインターフェース構成要素を含んでもよい。そのために、ユーザインターフェース210は結果を表示してもよい。
【0034】
流体供給システム204は、流体出口214と流体連通する容器212を含むことができる。流体供給システム204は、光増感剤を含む流体を、流体出口214を通して対象の目標領域に向けて分配するように構成される。例えば、目標領域は、毛束または爪など、対象のケラチン繊維215を含むことができる。一態様では、任意の流体供給システム204は、プロセッサ202からの命令に応じて機能し、流体を流体出口212から対象の目標領域に分配する。プロセッサ202は、流体供給システム204内のポンプまたはバルブと通信することにより、流体の流量を調整することができる。いくつかの態様では、流体出口212は、円錐霧、フラットファン、または定常流などのスプレーパターンに流体を分配するためにノズルに結合される。あるいは、流体供給システム104の代わりに、ユーザは、スプレーボトル、シリンジ、または加圧容器などの手動分配システムを使用することができる。
【0035】
光活性化システム206は、プロセッサ202からの命令に応じて機能し、対象の目標領域に電磁放射を適用するように構成された光源216を作動させる。適切な光源216には、市販のレーザ、ランプ、発光ダイオード、または他の電磁放射源が含まれる。光放射は、単色レーザビーム、例えばアルゴンレーザビームまたはダイオード励起固体レーザビームの形態で供給することができる。光はまた、光ファイバデバイスを介して非外面組織に供給することができ、例えば、光は、小さなゲージの皮下注射針または関節鏡に通した光ファイバによって送達できる。光はまた、光ファイバまたはカニューレを挿入した導波管を使用した経皮的器具によって伝達することができる。
【0036】
いくつかの態様では、光ベースシステム100は、美容デバイス118を含む。美容デバイス118は、ケラチン繊維に力を適用するなどして、ケラチン繊維を第1の物理的状態から第2の物理的状態に変えるのを支援するように構成される。美容デバイス118は、ケラチン繊維内の非共有相互作用を乱すことを支援する加熱要素120、または非共有相互作用の再形成を支援する冷却要素122を含むことができる。例えば、ケラチン繊維が対象の毛束の中に位置している場合、美容デバイス118は、カーリングアイロン、ヘアストレートナー、ブロードライヤー、マスカラブラシ、ヘアブラシなどを含んでもよい。ケラチン繊維が対象の爪内に位置している場合、美容デバイス118は、マニキュアブラシ、スポンジ塗布器などを含んでもよい。
【0037】
一態様では、光ベースシステム100は、水分および複数回洗浄に耐性のある特定の物理的外観を保持するために対象の毛髪を成形するのに有用であり得る。例えば、光ベースシステム100を使用して、対象の毛髪内に位置しているケラチン繊維を変えて、第1の物理的状態、例えばストレートの毛髪から、第2の物理的状態、例えば巻き毛の毛髪に、またはその逆に変化させることができる。上述のように、美容デバイス118は、光架橋前に毛髪を成形するのを支援するために使用することができる。
【0038】
光架橋には、毛髪を成形する従来の方法に比べていくつかの利点がある。第1に、本明細書に記載の方法は、熱を使用せずに、または熱による毛髪の損傷を避けるために十分に低い温度で実施することができる。第2に、非共有相互作用が乱れること、および再形成することに依存する従来の毛髪の成形方法とは異なり、本開示は、ケラチン繊維間およびケラチン繊維内で強力な共有結合を形成し、毛髪の保持および外力に対する耐性を改善する。
【0039】
美容デバイス
【0040】
ケラチン繊維の成形または処置を支援するために、光ベースシステム100とともに様々な美容デバイス118を使用することができる。本開示のいくつかの態様では、美容デバイス118は、本明細書に記載の方法を実施するように構成されてもよい。以下に、様々なデバイスについて説明する。
【0041】
図3を参照すると、本明細書に提示される方法を実施するように構成され得る美容デバイス300の実施例が示されている。一般に、美容デバイス300は、ヒンジ306から延びる第1のハンドル302および第2のハンドル304を含む。第1のハンドル302は、第1のハンドル302の第1の内面310に取り付けられた第1の伝導性要素308を含む。第2のハンドル304は、第2のハンドル304の第2の内面314に取り付けられた第2の伝導性要素312を含む。少なくとも1つの加熱要素は、第1の伝導性要素308および第2の伝導性要素312と接触して置かれてもよい。美容デバイス300は、流体供給システム204と流体連通して置かれた少なくとも1つの流体分配ポート316を含むことができる。本開示のいくつかの態様では、流体供給システム204は、美容デバイス300内に構成することができる。例えば、流体供給システム204は、第1のハンドル302または第2のハンドル304内に構成されてもよい。あるいは、流体供給システム204は、美容デバイス300の外部に構成されてもよく、導管には、流体供給システム204と流体連通する分配ポート316を置いてもよい。分配ポート316は、光増感剤を目標領域に分配するように構成されてもよい。一態様では、目標領域は、第1の伝導性要素308と第2の伝導性要素312との間に位置している。
【0042】
美容デバイス300は、活性化システム106に対して構成された少なくとも1つの光分配ポート318を含む。活性化システム106の光源116は、少なくとも1つの光分配ポート318内に構成されて、目標領域に電磁放射を適用することができる。プロセッサ202は、第1の伝導性要素308および第2の伝導性要素312の温度を制御するために、少なくとも1つの加熱要素と電気通信するように置かれてもよい。本開示のいくつかの態様では、プロセッサ202は、美容デバイス300内に構成される。
【0043】
図4を参照すると、本明細書に提示される方法を実施するように構成され得る美容デバイス400の実施例が示されている。美容デバイス400は、外面と中空中心とを有する熱伝導体402を含む。熱伝導体402は、熱伝導体402を加熱するために中空中心内に配設された少なくとも1つの加熱要素を含むことができる。ハンドル404は、熱伝導体に対して構成され、ハンドル404は、実質的に熱を伝導しない材料で構成される。美容デバイス400は、熱伝導体402に旋回可能に接続されたクランプ部材406をさらに含む。クランプ部材406は、開位置と閉位置との間を移動することができ、クランプ部材は、クランプ部材406が閉位置にあるときに熱伝導体402の外面上に載るように構成される。美容デバイスは、流体供給システム204と流体連通して置かれた少なくとも1つの流体分配ポート408を含むことができる。例えば、流体供給システム204は、ハンドル404内に構成されてもよい。あるいは、流体供給システム204は、美容デバイス400の外部に構成されてもよく、導管は、流体供給システム204の流体出口214と流体連通する分配ポート416を置いてもよい。分配ポート416は、光増感剤を目標領域に分配するように構成されてもよい。一態様では、目標領域は、熱伝導体402とクランプ部材406との間に位置している。
【0044】
美容デバイス400は、活性化システム206に対して構成された少なくとも1つの光分配ポート410を含む。活性化システム206の光源216は、少なくとも1つの光分配ポート410内に構成されて、目標領域に電磁放射を適用することができる。プロセッサ202は、熱伝導体402の温度を制御するために、少なくとも1つの加熱要素と電気通信するように置かれてもよい。本開示のいくつかの態様では、プロセッサ202は、美容デバイス400内に構成される。
【0045】
図5を参照すると、本明細書に記載の方法を実施するように構成され得る美容デバイス500の実施例が示されている。美容デバイス500は、気流軸を画定するために入口504から出口506まで延びる細長いハウジング502を含む。美容デバイス500は、細長いハウジング502内に位置するファンを含み、ファンは、入口504を通じて細長いハウジング502に空気を引き込み、出口506を通じて空気を目標領域に押しやるように構成される。いくつかの態様では、目標領域は気流軸に沿って画定される。細長いハウジング502は、ハウジング内に配設された少なくとも1つの加熱要素を備えて構成される。美容デバイス500は、美容デバイスに構成された少なくとも1つの流体分配ポート508を含み、流体供給システム204と流体連通するように置かれた少なくとも1つの流体分配ポート508を含む。例えば、流体供給システム204は、細長いハウジング502に構成されたハンドル510内に構成されてもよい。あるいは、流体供給システム204は、美容デバイス500の外部に構成されてもよく、導管は、流体供給システム204の流体出口214と流体連通する分配ポート508を置いてもよい。分配ポート506は、光増感剤を目標領域に分配するように構成されてもよい。
【0046】
美容デバイス500は、活性化システム206に対して構成された少なくとも1つの光分配ポート512を含む。活性化システム206の光源216は、少なくとも1つの光分配ポート512に対して構成されて、目標領域に電磁放射を適用することができる。プロセッサ202は、目標領域に送達される空気の温度を制御するために、少なくとも1つの加熱要素と電気通信するように置かれてもよい。本開示のいくつかの態様では、プロセッサ202は、美容デバイス500内に構成される。
【0047】
図6を参照すると、本明細書に記載の方法を実施するように構成され得る美容デバイス600の実施例が示されている。美容デバイス600は、第1の端部604から第2の端部606まで延びるハンドル602を含む。ハンドル602は、ハンドル602から、例えば、ハンドル602の外面から垂直に延びる少なくとも1つのフィラメント608を含む。少なくとも1つのフィラメント608は、活性化システム206の光源216に対して構成され、目標領域に電磁放射を適用する。例えば、少なくとも1つのフィラメント608は、電磁放射を目標領域に伝達し得る光ファイバまたは光ケーブルを含むことができる。他の態様では、フィラメントは、電磁放射を目標領域に伝達する光透過性材料を含んでもよい。活性化システム106は、ハンドル602内に位置する中空チャンバ内に構成されてもよい。本開示のいくつかの態様では、少なくとも1つのフィラメント608は、ゲルの形態であり得る光増感剤102でコーティングされてもよい。次に、光増感剤102は、少なくとも1つのフィラメント608を通して目標領域に移すことができる。美容デバイス600は、美容デバイス600(例えば、少なくとも1つのフィラメント608内)に構成された少なくとも1つの流体分配ポートを含むことができ、流体供給システム104と流体連通するように置かれた少なくとも1つの流体分配ポートを含む。例えば、流体供給システム104は、ハンドル602内に構成されてもよい。あるいは、流体供給システム104は、美容デバイス600の外部に構成されてもよく、導管は、流体供給システム104の流体出口214と流体連通する分配ポートを置いてもよい。分配ポートは、光増感剤102を目標領域に分配するように構成されてもよい。
【0048】
一態様では、目標領域は、少なくとも1つのフィラメント604からの距離であってもよく、この距離は、1cm、2cm、3cm、4cm、または5cm未満である。一態様では、活性化システム106は、ハンドルの中空中心内に構成されてもよい。
【0049】
図7を参照すると、美容デバイス700の実施例が示されている。美容デバイス700は、第1の端部704から第2の端部706まで延びるハンドル702を含む。第2の端部706は、多孔質媒体708に対して構成される。多孔質媒体は、水または水ベースの溶液などの、流体を吸収する材料で構成されている。例えば、多孔質媒体708は、セルロース木材繊維または発泡プラスチックポリマーを含むことができる。第2の端部706はさらに、活性化システム206に対して構成された少なくとも1つの光分配ポート512で構成される。活性化システム206の光源216は、少なくとも1つの光分配ポート512に対して構成されて、目標領域に電磁放射を適用することができる。多孔質媒体708を使用して、光増感剤溶液を吸収し、対象の爪などの目標領域のケラチン繊維に適用することができる。
【0050】
図8を参照すると、美容デバイス800の実施例が示されている。美容デバイス800は、塗布器802と、光増感剤102を受容するように構成された収容器804とを含む。光増感剤102は、生理食塩水などの液体溶液に溶解することができる。あるいは、光増感剤102は、ヒドロゲルまたはシリコーンゲルなどのゲル内に溶解または懸濁されてもよい。塗布器802は、塗布器ヘッド808とハンドル810との間に延びるステム806を含む。ハンドル810は、例えば、ねじ山によって収容器804の上面に取り外し可能に結合されるように構成され、ステム806は、塗布器ヘッド808を光増感剤102と接触させるために、収容器804内に配設されるように構成される。少なくとも1つのフィラメント810は、塗布器ヘッド808の外面から延びるように構成される。少なくとも1つのフィラメント810は、活性化システム206の光源216に対して構成され、目標領域に電磁放射を適用する。例えば、少なくとも1つのフィラメント810は、電磁放射を目標領域に伝達する光ファイバまたは光ケーブルを含む。他の態様では、フィラメント810は、電磁放射を目標領域に伝達する光透過性材料を含んでもよい。
【0051】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、生体実験室への応用、生体に対する生体外および生体内ケラチン繊維治療を含む、様々な応用での使用に適している。この方法は、目標領域内のケラチン繊維が、光架橋または光活性化によって誘発される第1の物理的状態から第2の物理的状態に変える美容処置および応用に特に有用である。
【実施例
【0052】
以下の実施例は、システムを使用または実施する方法を詳細に説明し、当業者がその原理をより容易に理解できるようにするものである。以下の実施例は説明のために提示されており、決して限定することを意図したものではない。
【0053】
実施例1:
実施例1では、光増感剤を使用して、対象の毛束の引張強度を増加させた。この実施例では、0.1%ローズベンガル溶液を毛束に塗布し、毛髪に緑色の光を照射した。単一負荷の毛髪を、洗浄せずに複数回洗浄した後、破断荷重(ニュートン)を測定した。洗浄手順には、毛髪のシャンプー、水での洗浄、毛髪のコンディショニング、および水での洗浄が含まれている。結果を以下に要約する。
【表1】
【0054】
実施例2:
実施例2では、光増感剤と外因性繊維を含む溶液を使用して、対象の毛髪に美容処置を行った。図9は、美容処置前の対象の毛髪の画像を示す。この実施例では、4%(w/w)ケラチンと0.1%(w/w)ローズベンガルの濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を対象の毛髪に塗布し、毛髪は、熱または他の化学薬品を加えることなく、元の形状から巻き毛状態に物理的に変化した。次に、ある持続期間の間、毛髪に電磁放射を照射した。図10は、処置1010の後、1回の洗浄1020の後、2回の洗浄1030の後、3回の洗浄1040の後、および4回の洗浄1050の後の対象の毛髪を示す一連の画像を示す。洗浄手順には、毛髪のシャンプーおよび水での洗浄が含まれている。
【0055】
実施例3:
実施例3では、光増感剤と外因性繊維を含む溶液を使用して、対象の毛髪に美容処置を行った。図11は、美容処置前の対象の毛髪の画像を示す。この実施例では、8%(w/w)ケラチンと0.1%(w/w)ローズベンガルの濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を対象の毛髪に塗布し、毛髪は、熱または他の化学薬品を加えることなく、元の形状から巻き毛状態に物理的に変化した。次に、ある持続期間の間、毛髪に電磁放射を照射した。図12は、処置後の対象の毛髪の画像を示し、図13は、1回の洗浄1310の後、2回の洗浄1320の後、3回の洗浄1330の後、4回の洗浄1340の後、5回の洗浄1350の後、6回の洗浄1360の後、および8回の洗浄1370の後の対象の毛髪を示す一連の画像を示す。洗浄手順には、毛髪のシャンプーおよび水での洗浄が含まれている。
【0056】
本発明を1つ以上の好ましい実施形態に関して説明してきたが、明示的に述べられたもの以外の多くの同等物、代替物、変形物、および修正物が可能であり、本発明の範囲内であることを理解されたい。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13