(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】与信判定システム及び与信判定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20241029BHJP
【FI】
G06Q40/03
(21)【出願番号】P 2020067209
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】500428427
【氏名又は名称】株式会社トワライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100149696
【氏名又は名称】田中 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕文
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054448(JP,A)
【文献】特開2017-182284(JP,A)
【文献】特開2016-184394(JP,A)
【文献】特開2003-108764(JP,A)
【文献】特開2006-313440(JP,A)
【文献】特開2017-208025(JP,A)
【文献】特開2005-196267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上のコンピュータにより構成され、申込者の与信案件に関して与信の判定を行う与信判定システムであって、
前記申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含
む前記与信案件に関する
複数種の情報を、情報種ごとの個別情報としてそれぞれ含む案件情報を取得する取得手段と、
前記取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアから予め決められた算出手法を用いて集計評価スコアを算出するスコア算出手段と、
複数の与信選別条件の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各与信選別条件に関連付けられた個別情報が
該与信選別条件を満たすか否かの適否判定をそれぞれ行う適否判定手段と、
前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たすか否かの判定結果及び前記適否判定の結果に基づいて、前記与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定し、該自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する情報生成手段と、
を備え、
前記スコア算出手段は、前記複数の評価項目の各々について、前記案件情報に含まれる情報種が関連付けられておりかつ関連付けられた情報種の個別情報を用いた個別評価スコアの決定ルールをそれぞれ保持しており、保持されている各評価項目の決定ルールに前記取得された案件情報に含まれる各評価項目に関連付けられた情報種の個別情報を適用することで、前記複数の評価項目の各々について個別評価スコアをそれぞれ決定し、
前記スコア算出手段で保持される前記個別評価スコアの決定ルール及び前記予め決められた算出手法は、算出される集計評価スコアが与信リスクと高い相関を示すように設定されており、
前記複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件及び複数の自動判定除外条件を含み、
前記適否判定手段は、前記複数の与信不可条件
の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各与信不可条件に関連付けられた個別情報が該与信不可条件を満たすか否かの適否判定を行った後、
満たす与信不可条件がない場合に、前記
複数の自動判定除外条件
の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各自動判定除外条件に関連付けられた個別情報が該自動判定除外条件を満たすか否かの適否判定を行い、
前記情報生成手段は、
前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記複数の与信不可条件のうちの所定数が
満たすと前記適否判定手段により判定された場合には、前記与信案件を与信不可と判定し、前記複数の自動判定除外条件のうちの所定数が
満たすと前記適否判定手段により判定された場合には、前記与信案件を自動判定外と判定し、
前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たし、かつ、前記複数の与信不可条件及び前記複数の自動判定除外条件のいずれも
満たさないと前記適否判定手段により判定された場合に、前記与信案件を与信可と判定する、
与信判定システム。
【請求項2】
前記複数の与信選別条件の数は、前記複数の評価項目の数よりも多く、
前記適否判定手段は、前記スコア算出手段により算出された前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合に、前記複数の与信選別条件に関する適否判定を行い、該閾値条件を満たさない場合には、該適否判定を行わず、
前記情報生成手段は、前記閾値条件を満たさない場合には、前記与信案件の与信を不可と自動判定する、
請求項1に記載の与信判定システム。
【請求項3】
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる量的データに対応する定量的項目を少なくとも含み、
前記定量的項目は、前記案件情報に含まれる第一の量的データに対して比例的に前記個別評価スコアが決まる第一の定量的項目、及び前記案件情報に含まれる第二の量的データが取り得るデータ範囲が区分けされた複数区間の各々に対して割り付けられたスコア定数により前記個別評価スコアが決まる第二の定量的項目を含み、
前記第二の定量的項目における前記複数区間には、他の区間とは区間幅が異なる一以上の区間が含まれる、
請求項1又は2に記載の与信判定システム。
【請求項4】
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる質的データに対応するカテゴリ項目を少なくとも含み、
前記スコア算出手段は、前記案件情報に含まれる質的データに対応する前記カテゴリ項目に関して、該質的データが示すカテゴリに割り付けられたスコア定数により前記個別評価スコアを決定する、
請求項3に記載の与信判定システム。
【請求項5】
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる前記申込者に関する与信の現況実績情報を用いて前記個別評価スコアが決定される特定評価項目を含み、
前記取得手段は、他のシステムから提供される、前記申込者に関する与信の現況実績情報を取得可能であり、
前記スコア算出手段は、前記他のシステムに前記申込者に関する与信の現況実績情報が登録されていないことから前記取得手段が該現況実績情報を取得できなかった場合にも、前記特定評価項目については前記決定ルールに初期値を適用することで前記個別評価スコアを決定することにより、前記特定評価項目を含む前記複数の評価項目の各々について前記個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の与信判定システム。
【請求項6】
前記他のシステムは、個人信用情報機関のシステムであり、
前記複数の与信選別条件は、信用情報非照会条件を含み、
前記適否判定手段は、前記個人信用情報機関のシステムに前記申込者に関する与信の現況実績情報が登録されていないことから前記取得手段が該現況実績情報を取得できなかった場合に、前記信用情報非照会条件に合致すると判定し、前記スコア算出手段により算出された前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記信用情報非照会条件に合致する場合には、前記与信案件に関して自動判定外と判定する、
請求項5に記載の与信判定システム。
【請求項7】
申込者の与信案件に関して与信の判定を行う与信判定方法であって、
一以上のコンピュータが、
前記申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含
む前記与信案件に関する
複数種の情報を、情報種ごとの個別情報としてそれぞれ含む案件情報を取得する取得工程と、
前記取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアから予め決められた算出手法を用いて集計評価スコアを算出する算出工程と、
複数の与信選別条件の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各与信選別条件に関連付けられた個別情報が
該与信選別条件を満たすか否かの適否判定をそれぞれ行う適否判定工程と、
前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たすか否かの判定結果及び前記適否判定の結果に基づいて、前記与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定する自動判定工程と、
前記自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する生成工程と、
を実行し、
前記一以上のコンピュータが、前記複数の評価項目の各々について、前記案件情報に含まれる情報種が関連付けられておりかつ関連付けられた情報種の個別情報を用いた個別評価スコアの決定ルールをそれぞれ保持しており、
前記一以上のコンピュータが、前記算出工程において、前記保持されている各評価項目の決定ルールに前記取得された案件情報に含まれる各評価項目に関連付けられた情報種の個別情報を適用することで、前記複数の評価項目の各々について個別評価スコアをそれぞれ決定し、
前記保持される前記個別評価スコアの決定ルール及び前記予め決められた算出手法は、算出される集計評価スコアが与信リスクと高い相関を示すように設定されており、
前記複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件及び複数の自動判定除外条件を含み、
前記一以上のコンピュータが、前記適否判定工程において、前記複数の与信不可条件
の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各与信不可条件に関連付けられた個別情報が該与信不可条件を満たすか否かの適否判定を行った後、
満たす与信不可条件がない場合に、前記
複数の自動判定除外条件
の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各自動判定除外条件に関連付けられた個別情報が該自動判定除外条件を満たすか否かの適否判定を行い、
前記一以上のコンピュータが、前記自動判定工程では、前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記複数の与信不可条件のうちの所定数が
満たすと前記適否判定工程で判定された場合には、前記与信案件を与信不可と判定し、前記複数の自動判定除外条件のうちの所定数が
満たすと前記適否判定工程で判定された場合には、前記与信案件を自動判定外と判定し、
前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たし、かつ、前記複数の与信不可条件及び前記複数の自動判定除外条件のいずれも
満たさないと前記適否判定工程で判定された場合に、前記与信案件を与信可と判定する、
与信判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータにより与信の判定を自動で行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
企業間取引や個人と企業との間の取引等においては、信用の供与、即ち与信が行われている。例えば、金融機関は、融資や保証の供与、クレジットカードの利用可能枠の供与などを行う。一方で、与信には未回収リスクが伴うため、各社は与信の際に未回収リスクを低減させるべく審査を行っている。
このような与信審査は、社内のマニュアルやツール等を用いて、人手によって行われている。そして、半分程度の案件については、画一的に与信の可否を判定することができず、各担当者或いはその上層部の裁量に委ねられている現状がある。
【0003】
そこで、与信処理の迅速化を図りつつ、審査精度の平準化を可能とするサプライヤサポートシステムなるものが提案されている(下記特許文献1)。
このシステムは、提携先ホームページを経由して見込み顧客からの与信申込みを受け付け、この与信申込み内容と申込み先に対する外部信用情報機関のデータを自動検索した結果とに基づいて、スコアリング方式による自動審査を行い、この自動審査の結果を見込み顧客に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金融機関が与信審査を行う場合、収益を確保するべく、できる限り多くの与信案件を実行したいところである。しかしながら、スコアリング方式のみで与信審査を行う場合に、或る程度の件数で与信を実行するためには、閾値を低めに設定しなければならないところ、それでは、未回収リスクが増大する可能性がある。
このように、与信判定は、未回収リスクと背中合わせの関係にあり、上述したとおり、画一的に与信可否を判定できる案件が限られていることなどから、スコアリング方式のみでの与信審査では審査精度の低下の可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、与信判定の平準化及び効率化を実現しつつ与信判定の精度を高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、一以上のコンピュータにより構成され、申込者の与信案件に関して与信の判定を行う与信判定システムに関する。当該一側面に係る与信判定システムは、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。即ち、当該一側面に係る与信判定システムは、申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含む与信案件に関する複数種の情報を、情報種ごとの個別情報としてそれぞれ含む案件情報を取得する取得手段と、その取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアから予め決められた算出手法を用いて集計評価スコアを算出するスコア算出手段と、複数の与信選別条件の各々について、当該取得された案件情報に含まれる各与信選別条件に関連付けられた個別情報が該与信選別条件を満たすか否かの適否判定をそれぞれ行う適否判定手段と、当該集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たすか否かの判定結果及び当該適否判定の結果に基づいて、与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定し、その自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する情報生成手段と、を備え、スコア算出手段は、当該複数の評価項目の各々について、案件情報に含まれる情報種が関連付けられておりかつ関連付けられた情報種の個別情報を用いた個別評価スコアの決定ルールをそれぞれ保持しており、保持されている各評価項目の決定ルールに当該取得された案件情報に含まれる各評価項目に関連付けられた情報種の個別情報を適用することで、当該複数の評価項目の各々について個別評価スコアをそれぞれ決定し、そのスコア算出手段で保持される個別評価スコアの決定ルール及び上記の予め決められた算出手法は、算出される集計評価スコアが与信リスクと高い相関を示すように設定されており、当該複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件及び複数の自動判定除外条件を含み、適否判定手段は、当該複数の与信不可条件の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各与信不可条件に関連付けられた個別情報が該与信不可条件を満たすか否かの適否判定を行った後、満たす与信不可条件がない場合に、当該複数の自動判定除外条件の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各自動判定除外条件に関連付けられた個別情報が該自動判定除外条件を満たすか否かの適否判定を行い、情報生成手段は、当該集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、当該複数の与信不可条件のうちの所定数が満たすと前記適否判定手段により判定された場合には、その与信案件を与信不可と判定し、当該複数の自動判定除外条件のうちの所定数が満たすと前記適否判定手段により判定された場合には、その与信案件を自動判定外と判定し、当該集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たし、かつ、当該複数の与信不可条件及び当該複数の自動判定除外条件のいずれも満たさないと前記適否判定手段により判定された場合に、その与信案件を与信可と判定する。
【0008】
本発明の他の側面は、申込者の与信案件に関して与信の判定を行う与信判定方法に関する。当該他の側面に係る与信判定方法は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。即ち、当該一側面に係る与信判定方法は、一以上のコンピュータが、申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含む与信案件に関する複数種の情報を、情報種ごとの個別情報としてそれぞれ含む案件情報を取得する取得工程と、その取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアから予め決められた算出手法を用いて集計評価スコアを算出する算出工程と、複数の与信選別条件の各々について、当該取得された案件情報に含まれる各与信選別条件に関連付けられた個別情報が該与信選別条件を満たすか否かの適否判定をそれぞれ行う適否判定工程と、当該集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たすか否かの判定結果及び当該適否判定の結果に基づいて、与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定する自動判定工程と、その自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する生成工程と、を実行し、一以上のコンピュータが、当該複数の評価項目の各々について、当該案件情報に含まれる情報種が関連付けられておりかつ関連付けられた情報種の個別情報を用いた個別評価スコアの決定ルールをそれぞれ保持しており、一以上のコンピュータが、算出工程において、当該保持されている各評価項目の決定ルールに当該取得された案件情報に含まれる各評価項目に関連付けられた情報種の個別情報を適用することで、当該複数の評価項目の各々について個別評価スコアをそれぞれ決定し、当該保持される個別評価スコアの決定ルール及び当該予め決められた算出手法は、算出される集計評価スコアが与信リスクと高い相関を示すように設定されており、当該複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件及び複数の自動判定除外条件を含み、一以上のコンピュータが、適否判定工程において、当該複数の与信不可条件の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各与信不可条件に関連付けられた個別情報が該与信不可条件を満たすか否かの適否判定を行った後、満たす与信不可条件がない場合に、当該複数の自動判定除外条件の各々について、前記取得された案件情報に含まれる各自動判定除外条件に関連付けられた個別情報が該自動判定除外条件を満たすか否かの適否判定を行い、一以上のコンピュータが、自動判定工程では、当該集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、当該複数の与信不可条件のうちの所定数が満たすと前記適否判定工程で判定された場合には、その与信案件を与信不可と判定し、当該複数の自動判定除外条件のうちの所定数が満たすと前記適否判定工程で判定された場合には、その与信案件を自動判定外と判定し、当該集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たし、かつ、当該複数の与信不可条件及び当該複数の自動判定除外条件のいずれも満たさないと前記適否判定工程で判定された場合に、その与信案件を与信可と判定する。
【0009】
なお、本発明の別の側面として、例えば、上述の与信判定方法を一以上のコンピュータに実行させるコンピュータプログラムに関するものであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、与信判定の平準化及び効率化を実現しつつ与信判定の精度を高めることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る与信判定システムのハードウェア構成を概念的に示す図である。
【
図2】与信判定サーバのソフトウェア構成を概念的に示す図である。
【
図3】本実施形態における個別評価スコアの決定ルールの一部を表形式で示す図である。
【
図4】本実施形態における与信選別条件の一部を表形式で示す図である。
【
図5】与信判定サーバにおける与信判定処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。以下には、本発明の一実施形態として与信判定システム(以降、本システムと表記する場合がある)が例示される。
【0013】
[概要]
本システムの詳細を説明する前に、本システムの特徴の概要について説明する。
本システムは、1台又は複数台のコンピュータにより構成されており、そのコンピュータがコンピュータプログラムを実行することで、取得手段、スコア算出手段、適否判定手段、及び情報生成手段が本システムにおいて実現される。
本システムを構成するコンピュータは、PC(Personal Computer)のような汎用コンピュータを含んでもよいし、組込みマイコンのような専用コンピュータを含んでもよいし、それら両方を含んでもよい。また、当該コンピュータは、据置型のコンピュータのみであってもよいし、スマートフォン等のような携帯型のコンピュータのみであってもよいし、それら両方であってもよい。
【0014】
取得手段は、申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含む、与信案件に関する案件情報を取得する。
「申込者に関する個人属性情報」は、例えば、性別、年齢、職種、家族構成、住居区分、居住年数、勤続年数等を含む。個人属性情報に含まれる属性種は、このような例に限定されず、他の属性種の情報を含んでもよいし、上述した一部の属性種の情報を含まなくてもよい。
「申込者に関する与信の現況実績情報」は、申込者の与信に関する現在の情報及び過去の実績情報であり、個人信用情報機関から提供される信用情報の一部又は全部を含んでもよいし、与信審査を行う会社内で管理される信用情報の一部又は全部を含んでもよい。「申込者に関する与信の現況実績情報」は、例えば、照会件数、契約件数、融資残高、延滞回数、社内完済件数、他社契約件数等を含む。
個人信用情報機関は、個人の信用情報を蓄積及び管理する機関であり、割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関(Credit Information Center、CICと表記)、株式会社日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)等である。
取得手段により取得される「与信案件に関する案件情報」は、上述した「申込者に関する個人属性情報」及び「申込者に関する与信の現況実績情報」を少なくとも含んでいればよく、他の情報を更に含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば、この案件情報は、返済回数などのように、審査対象となっている与信案件について申込情報を含んでもよい。
【0015】
取得手段による当該案件情報の取得方法については何ら限定されない。例えば、取得手段は、個人信用情報機関のシステムや社内のシステムから通信を介して当該案件情報(例えば、現況実績情報)を取得することができる。また、取得手段は、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のような可搬型記憶媒体から当該案件情報を取得してもよいし、与信の申込者又は与信審査を行う会社の担当者の入力操作により当該案件情報を取得してもよい。
【0016】
スコア算出手段は、取得手段により取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する。
評価項目ごとに、当該案件情報に含まれる情報種が予め関連付けられており、その情報種の情報を用いた個別評価スコアの決定手法が予め決められている。個別評価スコアは、正の値を示してもよいし、負の値を示してもよいし、評価項目に応じて正又は負の値を示してもよい。
複数の個別評価スコアに基づく集計評価スコアの算出手法についても予め決められている。
個別評価スコアの決定手法及び集計評価スコアの算出手法については何ら限定されない。例えば、集計評価スコアは、全ての個別評価スコア(正又は負の値)を加算して算出されてもよいし、更に定数を加算して算出されてもよいし、定数から全ての個別評価スコアを減算して算出されてもよい。また、評価項目の数についても限定されない。
【0017】
適否判定手段は、取得手段により取得された案件情報に基づいて、複数の与信選別条件に関して与信案件の適否判定を行う。
与信選別条件ごとに、当該案件情報に含まれる個別情報が予め関連付けられており、その個別情報を用いてその与信選別条件に合致するか否かが判定される(適否判定)。各与信選別条件の具体的内容及び与信選別条件の数は何ら限定されない。
【0018】
情報生成手段は、スコア算出手段により算出された集計評価スコアに関する判定結果及び適否判定手段による適否判定の結果に基づいて、与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定し、その自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する。情報生成手段は、当該集計評価スコアに関する判定結果又は当該適否判定の結果の一方のみでは、与信可と判定することはない一方で、与信不可と判定する場合はある。
ここで「集計評価スコアに関する判定結果」は、集計評価スコアを用いて二値判定又は三値判定を行った結果である。二値判定が行われる場合には、例えば、集計評価スコアと所定の閾値との比較結果が当該判定結果とされる。三値判定が行われる場合には、例えば、集計評価スコアと二つの閾値との比較結果が当該判定結果とされる。
「自動判定外」とは、与信可でも与信不可でもない判定結果であればよい。
【0019】
情報生成手段により生成された与信判定情報は、表示装置、印刷装置、音声出力装置等のいずれか一つ又は複数から出力可能である。また、与信判定情報は、外部のシステムへ送信されてもよいし、与信の申込者の携帯端末宛てに送信されてもよい。このように、生成された与信判定情報の利用形態は様々なである。
【0020】
以上のように、本システムでは、与信案件の案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目について複数の個別評価スコアがそれぞれ決定され、決定された個別評価スコアに基づいて集計評価スコアが算出され、複数の与信選別条件に関して適否判定が行われる。そして、集計評価スコアに関する判定結果及び適否判定の結果に基づいて、与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つが自動判定され、その自動判定の結果を示す与信判定情報が生成される。
よって、本システムによれば、与信判定の平準化及び効率化を実現することができる。更に、集計評価スコア及び与信選別条件の適否によって与信の可否が自動判定可能である場合には与信可又は与信不可が示され、それ以外の場合には自動判定外が示されるため、与信判定の精度も高めることができる。
【0021】
[与信判定システムの詳細]
以下、上述のような特徴を有する与信判定システム(本システム)1について詳細に説明する。
【0022】
〔ハードウェア構成〕
図1は、本システム1のハードウェア構成を概念的に示す図である。
本システム1は、
図1に示されるとおり、与信判定サーバ10と、通信網2を介して与信判定サーバ10と通信可能な一以上のユーザ端末20を有する。
図1では、一台の与信判定サーバ10と一台のユーザ端末20とが示されているが、本システム1は、複数の与信判定サーバ10と複数のユーザ端末20とを含むこともできる。
通信網2は、携帯電話回線網、Wi-Fi(Wireless Fidelity)回線網、インターネット通信網、専用回線網、LAN(Local Area Network)等の組合せで構成される。但し、通信網2内の通信手法や通信形態は制限されない。
【0023】
与信判定サーバ10及びユーザ端末20は、いわゆるコンピュータ(情報処理装置)であり、例えば、バスで相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)12又は22、メモリ13又は23、入出力インタフェース(I/F)15又は25、通信ユニット14又は24等を有する。
与信判定サーバ10及びユーザ端末20は、汎用コンピュータであってもよいし、専用コンピュータであってもよい。ユーザ端末20は、与信の申込み案件に関して与信審査を行う事業者(本実施形態では金融機関を例示する)の担当者により利用されるコンピュータであり、ノートPCやタブレット等のような携帯型のコンピュータのみであってもよいし、据置型のコンピュータであってもよい。
【0024】
CPU12又は22には、一般的なCPUに加えて、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等も含まれ得る。
メモリ13又は23は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F15又は25は、出力装置、入力装置等のユーザインタフェース装置と接続可能である。
出力装置は、表示装置26や印刷装置等を含み、表示装置26は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU12又は22等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。表示装置及び入力装置は一体化され、タッチパネルのような入出力装置27として実現されてもよい。
なお、
図1では、入出力I/F25に表示装置26及び入出力装置27が接続されており、入出力I/F15には何も接続されていないが、入出力I/F15にもユーザインタフェース装置が接続されていてもよい。
【0025】
通信ユニット14又は24は、他のコンピュータとの通信網2を介した通信や、他の機器との信号のやりとり等を行う。通信ユニット14又は4には、USBメモリ等のような可搬型記憶媒体等も接続され得る。本実施形態では、通信ユニット14は、通信網2を介して、個人信用情報機関のシステムやユーザ端末20のユーザが属する金融機関(以降、自社と表記する)の社内DB(Database)システム等と通信可能である。
与信判定サーバ10及びユーザ端末20は、
図1に図示されていないハードウェア要素を含んでもよく、それらのハードウェア要素の数は、
図1に図示されている例のみに限定されない。与信判定サーバ10及びユーザ端末20のハードウェア構成は制限されない。
また、本実施形態では、与信判定サーバ10が通信可能な外部のシステムとして、社内DBシステムとCICシステムとが例示されるが、与信判定サーバ10は、他の個人信用情報機関のシステムと通信してもよいし、他の外部システムと通信してもよい。
【0026】
〔ソフトウェア構成〕
図2は、与信判定サーバ10のソフトウェア構成を概念的に示す図である。
与信判定サーバ10は、情報格納部30、情報取得部31、スコア算出部32、適否判定部33、与信判定部34、情報生成部35等を有する。これら各構成要素は、例えば、メモリ13に格納されるコンピュータプログラムがCPU12にロードされ実行されることにより実現されるソフトウェア要素である。当該コンピュータプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記憶媒体やネットワーク上の他のコンピュータから通信ユニット14を介してインストールされ、メモリ13に格納されてもよい。
【0027】
情報格納部30は、メモリ13上に展開されており、審査対象となる与信案件(以降、対象与信案件と表記する)に関する案件情報を格納する。情報格納部30に格納される案件情報は、[概要]の項で述べたとおりである。
本実施形態では、対象与信案件の申込情報、対象与信案件の申込者に関してCICシステムから取得される信用情報(以降、CIC信用情報と表記する)、及びその申込者に関して自社の社内DBシステムから取得される信用情報(以降、社内信用情報と表記する)が、対象与信案件に関する案件情報として情報格納部30に格納される。但し、情報格納部30に格納される案件情報は、本実施形態で示す例に限定されない。
【0028】
申込情報には、申込者の、氏名、生年月日、住所、電話番号、性別、年齢、家族構成、職種、及び勤続年数、対象与信案件の与信タイプ(クレジットカード、個品割賦、金融保証等)、申込金額、返済回数、購入数量等が含まれる。このように、本実施形態における申込情報には、申込者の個人属性情報と、対象与信案件に関する詳細情報とが含まれる。但し、申込情報は、このような例に限定されず、更なる情報を含んでいてもよいし、上述の一部の情報を含んでいなくてもよい。
CIC信用情報には、申込者に関して、CIC加盟企業から登録された、クレジットやローンの申込情報、支払状況情報、参考情報等が含まれる。CIC信用情報は、周知の情報を含んでいればよい。
社内信用情報には、申込者に関して自社で契約済みの与信案件に関する申込情報、現在の支払状況や過去の支払実績の情報、支払督促情報等が含まれる。社内信用情報には、自社で契約済みの与信案件に関して自社で取得可能な情報が含まれていればよく、その具体的な内容は制限されない。
【0029】
情報取得部31は、対象与信案件に関する案件情報を取得して、その案件情報を情報格納部30に格納する。情報取得部31は、上述した取得手段の一具体例である。また、情報取得部31による当該案件情報の取得手法については、取得手段について述べたとおりであり、何ら限定されない。
【0030】
本実施形態では、情報取得部31は、対象与信案件に関する上述の申込情報をユーザ端末20から通信により取得し、その申込情報に含まれる申込者識別情報を利用してCICシステム及び社内DBシステムから通信により申込者に関するCIC信用情報及び社内信用情報を取得する。
申込者識別情報は、申込者個人をCICシステム又は社内DBシステムで識別するための情報であり、例えば、申込者の氏名、生年月日、電話番号、及び郵便番号の組み合わせである。但し、CICシステムで利用可能な申込者識別情報と、社内DBシステムで利用可能な申込者識別情報との具体的内容は異なっていてもよい。
このため、情報取得部31は、他のシステム(CICシステムや社内DBシステム等)から提供される、申込者に関する与信の現況実績情報を取得可能である取得手段と換言できる。
【0031】
ここで、システムダウンやネットワーク障害のような何等かの異常により、与信判定サーバ10がCICシステム又は社内DBシステムへアクセスできない場合がある。情報取得部31は、CICシステムへアクセスできない場合、CICシステムエラーと判定し、社内DBシステムへアクセスできない場合、社内DBシステムエラーと判定する。このような場合には、対象与信案件に関する与信判定は実行されず、後述する情報生成部35によりCICシステムエラー又は社内DBシステムエラーを示すエラー情報が生成される。
【0032】
一方で、CICシステムに申込者のCIC信用情報が登録されていない場合や、申込者が自社と初めて取引するため、社内DBシステムに申込者の社内信用情報が登録されていない場合がある。前者の場合、情報取得部31は、CICシステムからCIC非照会情報を取得し、後者の場合には、情報取得部31は、社内DBシステムから社内非照会情報を取得する。CIC非照会情報は、CIC信用情報として当該案件情報に含められ、社内非照会情報は、社内信用情報として当該案件情報に含められて、情報格納部30に格納される。
【0033】
スコア算出部32は、情報格納部30に格納されている案件情報に基づいて、複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する。即ち、スコア算出部32は、上述したスコア算出手段の一具体例である。
スコア算出部32は、評価項目ごとに個別評価スコアの決定ルールをそれぞれ保持しており、各評価項目の決定ルールに、案件情報に含まれるその評価項目に対応する個別情報を適用することで、個別評価スコアをそれぞれ決定する。
【0034】
図3は、本実施形態における個別評価スコアの決定ルールの一部を表形式で示す図である。
図3には、一部の評価項目として、「性別」、「年齢」、「家族構成」、「職種」、「勤続年数」、「返済回数」、「照会件数」、及び「契約件数」が例示されている。
「性別」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、申込者が「男」の場合に「-20」に決定され、申込者が「女」の場合に「0」に決定される。
「年齢」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、申込者の年齢に「-1」が乗算された値に決定される。
「家族構成」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、申込者の家族構成のカテゴリが「1.配偶者有・子無」の場合に「10」に決定され、当該カテゴリが「2.配偶者有・子有」の場合に「12」に決定され、当該カテゴリが「3.独身・子無」の場合に「5」に決定され、当該カテゴリが「4.独身・子有」の場合に「2」に決定され、当該カテゴリが「0.不明」の場合に「-1」に決定される。
「職種」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、職種のカテゴリに応じて「10」、「20」、「-5」などに決定される。
「勤続年数」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、勤続年数のカテゴリが「勤務無し/不明」の場合に「-20」に決定され、当該カテゴリが「1年以下」の場合に「-30」に決定され、当該カテゴリが「1~3年」の場合に「-25」に決定され、当該カテゴリが「3~10年」の場合に「0」に決定され、当該カテゴリが「10年~」の場合に「10」に決定される。
「返済回数」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、返済回数のカテゴリが「クレジットカード申込み」の場合に「0」に決定され、当該カテゴリが「個品割賦の1~3回」の場合に「15」に決定され、当該カテゴリが「個品割賦の4~12回」の場合に「10」に決定され、当該カテゴリが「個品割賦の13~24回」の場合に「5」に決定され、当該カテゴリが「個品割賦の25回~」の場合に「0」に決定される。
「照会件数」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、申込者の照会件数に「-20」が乗算された値に決定される。
「契約件数」の評価項目の決定ルールでは、個別評価スコアは、契約件数のカテゴリが「1件以下」の場合に「-30」に決定され、当該カテゴリが「2~4件」の場合に「-20」に決定され、当該カテゴリが「5~15件」の場合に「-10」に決定され、当該カテゴリが「16件~」の場合に「0」に決定される。
【0035】
スコア算出部32は、「性別」、「年齢」、「家族構成」、「職種」、及び「勤続年数」の各評価項目の決定ルールに、案件情報の申込情報に含まれる申込者の個人属性情報(「性別」、「年齢」、「家族構成」、「職種」、及び「勤続年数」)をそれぞれ適用することで、それら各評価項目についての個別評価スコアをそれぞれ決定する。また、スコア算出部32は、「返済回数」の評価項目の決定ルールに、案件情報の申込情報に含まれる対象与信案件の与信タイプ及び返済回数を適用することで、「返済回数」の評価項目についての個別評価スコアを決定する。
【0036】
また、スコア算出部32は、「照会件数」及び「契約件数」の評価項目の決定ルールに、案件情報のCIC信用情報に含まれる照会件数及び契約件数を適用することで、「照会件数」及び「契約件数」の各評価項目についての個別評価スコアをそれぞれ決定する。
このように当該評価項目には、案件情報のCIC信用情報を用いて個別評価スコアが決定される特定評価項目(
図3の「照会件数」及び「契約件数」の評価項目)が含まれる。また、図示されていないが、当該評価項目には、案件情報の社内信用情報を用いて個別評価スコアが決定される特定評価項目が含まれていてもよい。
【0037】
ここで、当該複数の評価項目は、当該案件情報に含まれる量的データに対応する定量的項目と、当該案件情報に含まれる質的データに対応するカテゴリ項目とを少なくとも含んでいる。
図3の例では、「年齢」、「勤続年数」、「返済回数」、「照会件数」、及び「契約件数」の各評価項目は定量的項目であり、「性別」、「家族構成」、及び「職種」の各評価項目はカテゴリ項目であるといえる。
【0038】
定量的項目は、更に、案件情報に含まれる第一の量的データに対して比例的に個別評価スコアが決まる第一の定量的項目と、案件情報に含まれる第二の量的データが取り得るデータ範囲が区分けされた複数区間の各々に対して割り付けられたスコア定数により個別評価スコアが決まる第二の定量的項目とを含むということもできる。
ここで「量的データ」とは、年数、回数、件数のように、直接、数値で表すことができるデータであり、「質的データ」とは、性別、職種のように、直接、数値で表すことのできないデータを意味する。
【0039】
図3の例では、「年齢」及び「照会件数」の評価項目が第一の定量的項目に相当し、「勤続年数」、「返済回数」及び「契約件数」の評価項目が第二の定量的項目に相当する。
例えば、「年齢」の評価項目(第一の定量的項目)の個別評価スコアは、案件情報に含まれる「年齢」にスコア係数(-1)を乗算することで決定される。一方で、「勤続年数」の評価項目(第二の定量的項目)では、案件情報に含まれる「勤続年数」の取り得るデータ範囲(0又は不明~10年を越える年数)が5つの区間(カテゴリ)に区分けされており、各区間に「-20」、「-30」、「-25」、「0」、及び「10」のスコア定数がそれぞれ割り付けられている。
【0040】
また、評価項目のカテゴリ項目では、複数のカテゴリの各々に対してスコア定数がそれぞれ割り付けられており、スコア算出部32は、案件情報に含まれる質的データに対応するカテゴリ項目に関して、その質的データが示すカテゴリに割り付けられたスコア定数により個別評価スコアを決定する。
スコア算出部32は、このように決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する。[概要]の項で述べたように、集計評価スコアの算出手法は、当該個別評価スコアに基づいていれば、特に限定されない。本実施形態では、スコア算出部32は、全ての個別評価スコアの合計に予め設定されているスコア定数を加算した値を集計評価スコアとして算出する。
【0041】
ここで、上述した各評価項目の決定ルールやスコア定数並びにスコア係数は、個別評価スコアに基づいて算出される集計評価スコアが与信リスクと可能な限り高い相関を示すように設定される。
例えば、各定量的項目については、集計評価スコアが与信リスクと可能な限り高い相関を示すように、第一の定量的項目として決定ルールを設定するか、第二の定量的項目として決定ルールを設定するかが設計される。具体的には、案件情報の量的データに対応して比例的に与信リスクが高まる或いは低下する定量的項目については第一の定量的項目とし、それ以外の定量的項目については第二の定量的項目とされる。また、第二の定量的項目については、集計評価スコアが与信リスクと可能な限り高い相関を示すように、データ範囲の区分けが設計される。
【0042】
本実施形態では、過去の与信案件の実績情報に基づく二カ月延滞の発生率などを用いて、必要となる評価項目及び各評価項目の大まかな決定ルールが設計され、多変量解析を用いて上述のスコア定数又はスコア係数が決定された。具体的には、判別分析により二カ月延滞が生じた与信案件群(ブラックゾーン)と、二カ月延滞が生じることなく返済が完了した与信案件群(ホワイトゾーン)とのそれぞれの集計評価スコアの平均値の差が最も大きくなるように、スコア定数及びスコア係数が算出された。
このように本実施形態では、与信リスクを示す情報として二カ月延滞の発生率を利用して、各評価項目の決定ルールやスコア定数、スコア係数が設定されたが、これらの設定手法は本実施形態の例に限定されない。返済不能の発生率が与信リスクを示す情報として利用されてもよいし、三カ月延滞の発生率が利用されてもよい。
このように、本実施形態によれば、与信リスクと可能な限り高い相関を示すように設定された決定ルールやスコア定数等を利用して個別評価スコアの決定及び集計評価スコアの算出が行われるため、与信判定の精度を向上させることができる。
【0043】
ところで、上述したように、当該案件情報にCIC信用情報としてCIC非照会情報が設定される場合、或いは当該案件情報に社内信用情報として社内非照会情報が設定される場合がある。
このような場合においても、スコア算出部32は、全ての評価項目(上述の特定評価項目を含む)について個別評価スコアを決定し、それら個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する。例えば、スコア算出部32は、案件情報のCIC信用情報及び社内信用情報に対応する評価項目の決定ルールにその情報を適用する場合に、各評価項目に対応する初期値を適用して個別評価スコアを決定する。
図3の例では、「照会件数」の評価項目の決定ルール(「件数」×「-20」)において、照会件数0件を適用して、個別評価スコア「0」が決定される。また、「契約件数」の評価項目において、契約件数0件を適用すると、カテゴリ「1件以下」に該当するため、個別評価スコア「-30」が決定される。
これにより、申込者にとって初めての与信申込み案件であっても、適切に個別評価スコア及び集計評価スコアを算出することができ、ひいては、与信判定を適切に行うことができる。
【0044】
適否判定部33は、情報格納部30に格納されている案件情報に基づいて、複数の与信選別条件に関して対象与信案件の適否判定を行う。即ち、適否判定部33は、上述した適否判定手段の一具体例である。
適否判定部33は、スコア算出部32により算出された集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合に、当該複数の与信選別条件に関する適否判定を行い、その閾値条件を満たさない場合には、その適否判定を行わないようにしてもよい。後者の場合、後述する与信判定部34により対象与信案件が与信不可と自動判定されることになる。
ここで、各与信選別条件の具体的内容及び与信選別条件の数は何ら限定されないが、個別評価スコアの評価項目の数よりも与信選別条件の数のほうが多いことが好ましい。更に言えば、与信選別条件の数は、評価項目の数の2倍以上となっていることがより好ましい。
このようにすれば、集計評価スコアに関する判定だけでなく、多くの与信選別条件で更にフィルタリングされるため、与信判定の精度を高めることができると共に、与信判定処理の負荷を低減し、その速度を早めることができる。これは、与信選別条件の適否判定では、多くの与信選別条件について適否を判定しなければならないところ、集計評価スコアに関する閾値判定で適否判定を行う対象を絞り込むことができるためである。
【0045】
本実施形態では集計評価スコアが所定のスコア閾値を越えることが上述の閾値条件とされる。
このスコア閾値は、過去の与信案件の実績情報に基づく許容可能な与信リスクの程度に応じて適宜決められればよい。例えば、過去の与信案件の実績情報から算出された集計評価スコア群を複数の区間に区切り、集計評価スコアの区間ごとにそれに属する与信案件における損失金額(返済の滞りによる損失)と収益金額(手数料収益)との割合を算出し、この割合の区間ごとの差によって、スコア閾値を決定してもよい。
【0046】
図4は、本実施形態における与信選別条件の一部を表形式で示す図である。
各与信選別条件には、当該案件情報に含まれる個別情報が予め関連付けられており、適否判定部33は、その個別情報を用いてその与信選別条件に合致するか否かを判定する。
図4の例では、番号「1」の与信選別条件には、当該案件情報の社内信用情報における申込者の現在の遅延情報が関連付けられており、番号「2」の与信選別条件には、当該案件情報のCIC信用情報における申込者の直近3か月の支払状況情報が関連付けられており、番号「3」の与信選別条件には、当該案件情報の申込情報における年齢とCIC信用情報における直近1か月の支払状況情報が関連付けられている。
ここで
図4に例示される「直近3か月XXX」、「直近1か月X」及び「直近3か月XOX」において、「X」は入金なし又は一部のみ入金された状態を示し、「O」は正常に入金された状態を示している。
番号「21」の与信選別条件には、当該案件情報の社内信用情報における連帯保証債権の遅延状況情報が関連付けられており、番号「22」の与信選別条件には、当該案件情報のCIC信用情報における参考情報(例えば参考情報が登録されている場合にCIC注意情報有りと判定される)が関連付けられており、番号「23」の与信選別条件には、当該案件情報のCIC信用情報における申込者の直近3か月の支払状況情報が関連付けられている。
番号「24」の与信選別条件には、当該案件情報の申込情報における申込金額が関連付けられており、番号「25」の与信選別条件には、当該案件情報の申込情報における申込者の年齢及び返済回数が関連付けられており、番号「26」の与信選別条件には、当該案件情報の申込情報における購入数量及び購入品情報が関連付けられており、番号「27」の与信選別条件には、当該案件情報のCIC非照会情報が関連付けられている。
【0047】
また、当該複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件と複数の自動判定除外条件とを含んでいる。
図4の例では、番号「1」、「2」及び「3」の与信選別条件が与信不可条件となっており、番号「21」~「27」の与信選別条件が自動判定除外条件となっている。
適否判定部33は、複数の与信不可条件に関する適否判定を行った後、合致する与信不可条件がない場合、即ちいずれの与信不可条件についても満たさない場合に、自動判定除外条件に関する適否判定を行う。
これにより、本実施形態では、当該複数の与信不可条件の一つでも合致する場合には、対象与信案件が与信不可と自動判定されることになる。また、いずれの与信不可条件についても満たさず、かつ当該複数の自動判定除外条件の中の一つでも合致する場合には、対象与信案件が自動判定外と判定されることになる。
【0048】
また、
図4に例示される番号「27」の与信選別条件のように、当該複数の与信選別条件は、個人信用情報機関のシステム(本実施形態ではCICシステム)に申込者に関する与信の現況実績情報(CIC信用情報)が登録されていないことから情報取得部31がその現況実績情報(CIC信用情報)を取得できなかった場合に合致する信用情報非照会条件を含むということができる。そして、この信用情報非照会条件(番号「27」の与信選別条件)は、自動判定除外条件とされている。
このため、適否判定部33は、スコア算出部32により算出された集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、その信用情報非照会条件に合致する場合には、与信案件に関して自動判定外を自動判定するといえる。
個人信用情報機関のシステムに信用情報が登録されていない場合には、自己破産後所定期間が経過した場合が含まれるため、CIC非照会情報が得られている場合には、自動判定外と判定することで、与信判定を人手で慎重に行うことができ、ひいては、与信判定の精度を高めることができる。
【0049】
与信判定部34は、集計評価スコアに関する判定結果及び与信選別条件の適否判定の結果に基づいて、与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定する。即ち、与信判定部34は、上述した情報生成手段の一具体例である。
本実施形態では、与信判定部34は、スコア算出部32により算出された集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たさない場合に、対象与信案件について与信不可と自動判定し、集計評価スコアに関する当該閾値条件を満たし、かつ合致する与信選別条件が一つもない場合に、対象与信案件について与信可と自動判定する。また、与信判定部34は、集計評価スコアに関する当該閾値条件を満たす場合であっても、与信不可条件を一つでも満たす場合には、対象与信案件について与信不可と自動判定する。また、与信判定部34は、集計評価スコアに関する当該閾値条件を満たし、かつ合致する与信不可条件がない場合であっても、自動判定除外条件を一つでも満たす場合には、対象与信案件について自動判定外と判定する。
【0050】
このように本実施形態では、[概要]で述べたとおり、集計評価スコアに関する判定結果又は与信選別条件の適否判定の結果の一方のみでは、与信可と判定することはない一方で、与信不可と判定する場合はある。
即ち、本実施形態によれば、多くの条件をクリアした場合のみ与信可と判定しているため、自動判定による与信判定の精度の低下を防いでいる。
また、集計評価スコアに関する判定結果が良好であっても与信選別条件の自動判定除外条件が一つでも合致する場合には、自動判定外と判定される。これにより、集計評価スコア及び与信選別条件の適否によって与信の可否が自動判定可能である場合には与信可又は与信不可が示され、それ以外の場合には自動判定外が示されるため、無理に自動判定しておらず、与信判定の精度を維持している。
【0051】
情報生成部35は、与信判定部34による自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する。即ち、情報生成部35は、上述した情報生成手段の一具体例である。
生成される与信判定情報は、与信判定部34による自動判定の結果を示していればよく、その具体的内容は何ら制限されない。例えば、与信判定情報は、対象与信案件が識別可能となるようにその案件情報の一部を含んでいてもよい。また、与信判定情報は、自動判定の結果が与信不可又は自動判定外を示す場合には、そのような結果となった原因情報(例えば、合致した与信選別条件の内容や、集計評価スコアが所定のスコア閾値以下であった旨など)を含んでいてもよい。
【0052】
情報生成部35は、生成された与信判定情報をユーザ端末20に送信する。これにより、与信判定情報がユーザ端末20の表示装置26に表示出力されてもよいし、入出力装置27から何等かの形態で出力されてもよい。
【0053】
ユーザ端末20においても、図示していないが、メモリ23に格納されるコンピュータプログラムがCPU22にロードされ実行されることにより、次のような処理を行うソフトウェア構成を有している。
ユーザ端末20は、自社のユーザが操作可能なユーザインタフェース画面を表示装置26に表示させ、そのユーザインタフェース画面に対するユーザ操作に伴い対象与信案件の申込情報を与信判定サーバ10へ送信する。その申込情報は、そのユーザインタフェース画面を介してユーザにより入力されてもよい。
但し、申込情報は、入出力装置27(スキャナ等)により読み取られたデータに基づいてユーザ端末20により生成されてもよい。当該申込情報の生成手法については何ら制限されない。また、申込情報の詳細内容については上述したとおりである。
【0054】
更に、ユーザ端末20は、与信判定サーバ10(情報生成部35)により上述のようにして生成された与信判定情報を受信し、対象与信案件に関する与信判定の結果をユーザに提示する。ユーザ端末20は、与信判定の結果を表示装置26に表示させてもよいし、入出力装置27に他の形態で出力させてもよい。ユーザ端末20は、与信判定の結果と共に、対象与信案件を識別可能な情報や、与信判定の結果が与信不可又は自動判定外であった場合の原因情報などを出力することもできる。ユーザ端末20における与信判定の結果のユーザへの提示形態については何ら制限されない。
【0055】
〔動作例(処理フロー)〕
次に、本システム1の動作例として、与信判定サーバ10における与信判定処理フローについて
図5を用いて説明する。
図5は、与信判定サーバ10における与信判定処理フローを示すフローチャートである。なお、与信判定処理フローの各工程の処理内容は、上述の各ソフトウェア構成により実行される処理内容と同様であるため、適宜説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、まず、与信判定サーバ10は、対象与信案件に関する申込情報をユーザ端末20から通信により取得する(S51)。申込情報は、上述したとおり、氏名、生年月日、電話番号などの申込者の個人属性情報と、与信タイプ(クレジットカード、個品割賦、金融保証等)、申込金額、返済回数などの対象与信案件に関する詳細情報とを含む。
このように本実施形態では、申込情報がユーザ端末20から与信判定サーバ10へ送信されることを契機に、その申込情報で示される与信案件を対象にして与信判定が実行される。但し、
図5に示される与信判定処理の実行契機は、このような例に限定されない。当該与信判定処理は、予め決められたスケジュールでバッチ処理として実行されてもよいし、申込情報の取得とは別にユーザ端末20からの指示の受信を契機に実行されてもよい。このため、バッチ処理として当該与信判定処理が実行される場合には、複数の与信案件の申込情報が一括で或いは順次、与信判定サーバ10へ送られ、所定の契機により、それら複数の申込情報が一括で与信判定されてもよい。
【0057】
与信判定サーバ10は、その申込情報に含まれる申込者識別情報(申込者の氏名、生年月日など)を利用して社内DBシステム及びCICシステムから通信により申込者に関する社内信用情報及びCIC信用情報を取得する(S52)(S53)。
このとき、社内DBシステムに申込者の社内信用情報が登録されていない場合には、与信判定サーバ10は、社内非照会情報を取得し(S52)、CICシステムに申込者のCIC信用情報が登録されていない場合には、CIC非照会情報を取得する(S53)。
与信判定サーバ10は、(S51)で取得された申込情報、(S52)で取得された社内信用情報若しくは社内非照会情報、(S53)で取得されたCIC信用情報若しくはCIC非照会情報を、対象与信案件に関する案件情報として保持する(情報格納部30へ格納する)。
なお、
図5では(S52)と(S53)とが並列に実行される例が示されているが、(S52)と(S53)とは順番に実行されてもよい。
【0058】
与信判定サーバ10は、対象与信案件に関する案件情報を取得すると(S51)(S52)(S53)、その案件情報に基づいて、複数の評価項目の各々について個別評価スコアをそれぞれ決定する(S54)。各評価項目については予め決定ルール、スコア定数、スコア係数などが決められており、各評価項目の個別評価スコアは、その評価項目に対応する案件情報内の個別情報がその評価項目の決定ルールに適用されることでそれぞれ算出される。
【0059】
このとき、(S52)で社内非照会情報が取得されている場合には、与信判定サーバ10は、社内信用情報に対応する評価項目の決定ルールにその評価項目に対応する初期値を適用するなどして、その評価項目の個別評価スコアを算出する(S54)。同様に、(S53)でCIC非照会情報が取得されている場合には、与信判定サーバ10は、CIC信用情報に対応する評価項目の決定ルールにその評価項目に対応する初期値を適用するなどして、その評価項目の個別評価スコアを算出する(S54)。
つまり、与信判定サーバ10は、CIC非照会情報又は社内非照会情報が取得された場合であっても、全ての評価項目について個別評価スコアを決定する。
【0060】
続いて、与信判定サーバ10は、(S54)で決定された全ての個別評価スコアに基づいて、集計評価スコアを算出する(S55)。本実施形態では、全ての個別評価スコアの合計に予め決められたスコア定数が加算されることで、当該集計評価スコアが算出される。
【0061】
与信判定サーバ10は、(S55)で算出された集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たすか否かを判定する(S56)。本実施形態では、集計評価スコアが所定のスコア閾値を越えているか否かが判定される。
集計評価スコアが所定のスコア閾値を超えていない場合(S56;NO)、与信判定サーバ10は、対象与信案件について与信不可と自動判定する(S57)。
【0062】
一方で、集計評価スコアが所定のスコア閾値を超えている場合(S56;YES)、与信判定サーバ10は、更に、当該案件情報に基づいて、複数の与信選別条件に関して対象与信案件の適否判定を行う。
本実施形態では、当該複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件と複数の自動判定除外条件とを含んでおり、まず、与信判定サーバ10は、与信不可条件の適否判定を行う(S58)。例えば、当該複数の与信不可条件には判定順が予め決められており、与信判定サーバ10は、その判定順に沿って与信不可条件を一つずつ適否判定していく。もちろん、複数の与信不可条件が並列に適否判定されてもよい。
【0063】
(S58)における与信不可条件の適否判定によりその与信不可条件に合致すると判定した場合(S59;YES)、与信判定サーバ10は、対象与信案件について与信不可と自動判定する(S57)。
一方で、その与信不可条件に合致しないと判定した場合(S59;NO)、与信判定サーバ10は、全ての与信不可条件の適否判定が完了したか否かを判断し(S60)、未完了である場合(S60;NO)、次の与信不可条件について適否判定を行う(S58)。
【0064】
そして、いずれの与信不可条件も合致せず(S59;NO)、かつ全ての与信不可条件について適否判定が完了した場合に(S60;YES)、与信判定サーバ10は、次に、自動判定除外条件についての適否判定を開始する(S61)。
当該複数の自動判定除外条件においても判定順が予め決められており、与信判定サーバ10は、その判定順に沿って自動判定除外条件を一つずつ適否判定していってもよい。また、複数の自動判定除外条件が並列に適否判定されてもよい。
【0065】
(S61)における自動判定除外条件の適否判定によりその自動判定除外条件に合致すると判定した場合(S62;YES)、与信判定サーバ10は、対象与信案件について自動判定外であると判定する(S63)。
そして、いずれの自動判定除外条件も合致せず(S62;NO)、かつ全ての自動判定除外条件について適否判定が完了した場合に(S64;YES)、与信判定サーバ10は、対象与信案件について与信可と自動判定する(S65)。
【0066】
このように本実施形態では、集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たさない場合(S56;NO)には、即座に、与信不可と自動判定される(S57)。更に、集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合(S56;YES)であっても、与信不可条件の一つでも合致している場合にも(S59;YES)、与信不可と自動判定される(S58)。
一方で、集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たし(S56;YES)、いずれの与信不可条件にも合致しなかった場合(S59;NO)であっても、自動判定除外条件の一つでも合致している場合には(S62;YES)、自動判定外として判定される(S63)。
そして、集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たし(S56;YES)、いずれの与信不可条件にも合致せず(S59;NO)、いずれの自動判定除外条件にも合致しない場合(S62;NO)にのみ、与信可と自動判定される。
【0067】
与信判定サーバ10は、このように判定された結果(S57)、(S63)又は(S65)を少なくとも示す与信判定情報を生成し(S66)、その与信判定情報をユーザ端末20へ送信する。これにより、ユーザ端末20により対象与信案件についての与信判定の結果がユーザに提示される。
【0068】
[変形例]
上述の実施形態は、与信判定システム1の一例である。与信判定システム1は、上述の構成のみに限定されるわけではなく、上述の少なくとも一部の構成を有していれば、部分的に適宜変形されてもよい。
例えば、上述の実施形態に係る本システム1は、与信判定サーバ10とユーザ端末20とを有していが、ユーザ端末20のみで形成されていてもよい。この場合、ユーザ端末20がCICシステムや社内DBシステムへアクセス可能となり、上述の与信判定サーバ10の全てのソフトウェア構成がユーザ端末20上で実現されればよい。また、本システム1が与信判定サーバ10とユーザ端末20とを有する場合であっても、与信判定サーバ10の上述のソフトウェア構成の一部がユーザ端末20上で実現されるようにしてもよい。
【0069】
上述の実施形態では、適否判定部33は、スコア算出部32により算出された集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合に、当該複数の与信選別条件に関する適否判定を行い、その閾値条件を満たさない場合には、その適否判定を行わなかった。
しかしながら、集計評価スコアに関する上述の閾値条件が、与信選別条件の与信不可条件に含められてもよい。この場合には、適否判定部33は、予め決められた判定順で与信不可条件を一つずつ適否判定し、与信不可条件の一つである集計評価スコアに関する当該閾値条件の適否判定を行う際に、個別評価スコアの決定及び集計評価スコアの算出を行う。そして、適否判定部33は、集計評価スコアに関する当該閾値条件(与信不可条件)を満たす場合に、残りの複数の与信選別条件に関する適否判定を行い、その閾値条件を満たさない場合には、残りの複数の与信選別条件に関する適否判定を行わないようにしてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、複数の与信不可条件の中の一つでも合致していれば、与信不可と判定されたが、当該複数の与信不可条件の中の二以上の所定数が合致することを以て、与信不可と判定されるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、いずれの与信不可条件も合致せず、かつ複数の自動判定除外条件の中の一つでも合致していれば、自動判定外と判定されたが、当該複数の自動判定除外条件の中の二以上の所定数が合致することを以て、自動判定外と判定されるようにしてもよい。
更に、当該複数の与信不可条件の中には、その条件一つでも合致していれば与信不可と判定されるものと、二以上の所定数の条件が合致することを以て与信不可と判定されるものとが含められてもよい。同様に、当該複数の自動判定除外条件の中には、その条件一つでも合致していれば自動判定外と判定されるものと、二以上の所定数の条件が合致することを以て自動判定外と判定されるものとが含められてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、集計評価スコアに関する閾値条件では、一つのスコア閾値が用いられていたが、与信タイプ(与信種別)ごとに予め決められた相互に異なる複数のスコア閾値のうち、対象与信案件の与信タイプに対応するスコア閾値が選択して用いられるようにしてもよい。
このようにすれば、与信タイプごとにスコア閾値を変えることができるため、より高精度に与信判定を行うことが可能となる。
【0072】
また、与信タイプがクレジットカードの申込みである対象与信案件において与信可と判定された場合には、集計評価スコアに応じてクレジットカードの与信枠が自動決定されるようにしてもよい。例えば、集計評価スコアのデータ範囲が予め複数の区間に区切られており、区間ごとに与信枠の値が予め設定されていてもよい。具体的には、与信リスクが高い程、低い集計評価スコアが決定されるように設計されている場合には、集計評価スコアが低い程、与信枠が小さくなるように、設定されていればよい。
このようにすれば、与信可の判定と共に、与信枠の設定も自動で行うことができるため、与信判定に関わる業務の効率化を一層進めることができる。
【0073】
上述した実施形態及び変形例の内容は、次のように特定することもできる。
(付記1)
申込者の与信案件に関して与信の判定を行う与信判定システムであって、
前記申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含む、前記与信案件に関する案件情報を取得する取得手段と、
前記取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出するスコア算出手段と、
前記取得された案件情報に基づいて、複数の与信選別条件に関して前記与信案件の適否判定を行う適否判定手段と、
前記集計評価スコアに関する判定結果及び前記適否判定の結果に基づいて、前記与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定し、該自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する情報生成手段と、
を備え、
前記情報生成手段は、前記集計評価スコアに関する判定結果又は前記適否判定の結果の一方のみでは、与信可と判定することはない一方で、与信不可と判定する場合はある、
与信判定システム。
(付記2)
前記複数の与信選別条件の数は、前記複数の評価項目の数よりも多く、
前記適否判定手段は、前記スコア算出手段により算出された前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合に、前記複数の与信選別条件に関する適否判定を行い、該閾値条件を満たさない場合には、該適否判定を行わず、
前記情報生成手段は、前記閾値条件を満たさない場合には、前記与信案件の与信を不可と自動判定する、
付記1に記載の与信判定システム。
(付記3)
前記複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件と複数の自動判定除外条件とを含み、
前記適否判定手段は、前記複数の与信不可条件に関する前記適否判定を行った後、合致する与信不可条件がない場合に、前記自動判定除外条件に関する前記適否判定を行い、
前記情報生成手段は、前記スコア算出手段により算出された前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記複数の与信不可条件の一つ以上が合致する場合には、前記与信案件を与信不可と自動判定し、前記複数の自動判定除外条件の一つ以上が合致する場合には、前記与信案件を自動判定外と判定し、前記集計評価スコアが該閾値条件を満たし、かつ、前記複数の与信不可条件及び前記複数の自動判定除外条件のいずれも合致しない場合に、前記与信案件を与信可と判定する、
付記1又は2に記載の与信判定システム。
(付記4)
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる量的データに対応する定量的項目を少なくとも含み、
前記定量的項目は、前記案件情報に含まれる第一の量的データに対して比例的に前記個別評価スコアが決まる第一の定量的項目、及び前記案件情報に含まれる第二の量的データが取り得るデータ範囲が区分けされた複数区間の各々に対して割り付けられたスコア定数により前記個別評価スコアが決まる第二の定量的項目を含み、
前記第二の定量的項目における前記複数区間には、他の区間とは区間幅が異なる一以上の区間が含まれる、
付記1から3のいずれか一つに記載の与信判定システム。
(付記5)
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる質的データに対応するカテゴリ項目を少なくとも含み、
前記スコア算出手段は、前記案件情報に含まれる質的データに対応する前記カテゴリ項目に関して、該質的データが示すカテゴリに割り付けられたスコア定数により前記個別評価スコアを決定する、
付記4に記載の与信判定システム。
(付記6)
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる前記申込者に関する与信の現況実績情報を用いて前記個別評価スコアが決定される特定評価項目を含み、
前記取得手段は、他のシステムから提供される、前記申込者に関する与信の現況実績情報を取得可能であり、
前記スコア算出手段は、前記他のシステムに前記申込者に関する与信の現況実績情報が登録されていないことから前記取得手段が該現況実績情報を取得できなかった場合にも、前記特定評価項目を含む前記複数の評価項目の各々について前記個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する、
付記1から5のいずれか一つに記載の与信判定システム。
(付記7)
前記他のシステムは、個人信用情報機関のシステムであり、
前記複数の与信選別条件は、前記個人信用情報機関のシステムに前記申込者に関する与信の現況実績情報が登録されていないことから前記取得手段が該現況実績情報を取得できなかった場合に合致する信用情報非照会条件を含み、
前記適否判定手段は、前記スコア算出手段により算出された前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記信用情報非照会条件に合致する場合には、前記与信案件に関して自動判定外を自動判定する、
付記6に記載の与信判定システム。
(付記A)
前記案件情報には、前記与信案件に関する与信種別が更に含まれており、
前記情報生成手段は、与信種別(個別、カード、保証)ごとに予め決められた相互に異なる複数の所定のスコア閾値のうち、前記案件情報に含まれる前記与信種別に対応する所定のスコア閾値を選択し、前記集計評価スコアが該選択された所定のスコア閾値を用い閾値条件を満たすか否かを判定する、
付記1から7のいずれか一つに記載の与信判定システム。
(付記8)
申込者の与信案件に関して与信の判定を行う与信判定方法であって、
一以上のコンピュータが、
前記申込者に関する個人属性情報及び与信の現況実績情報を少なくとも含む、前記与信案件に関する案件情報を取得する取得工程と、
前記取得された案件情報に基づいて、潜在与信リスクに関する複数の評価項目の各々について個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する算出工程と、
前記取得された案件情報に基づいて、複数の与信選別条件に関して前記与信案件の適否判定を行う適否判定工程と、
前記集計評価スコアに関する判定結果及び前記適否判定の結果に基づいて、前記与信案件に関して与信可、与信不可又は自動判定外のいずれか一つを自動判定する自動判定工程と、
前記自動判定の結果を示す与信判定情報を生成する生成工程と、
を実行し、
前記自動判定工程では、前記集計評価スコアに関する判定結果又は前記適否判定の結果の一方のみでは、与信可と判定されることはない一方で、与信不可と判定される場合はある、
与信判定方法。
(付記9)
前記複数の与信選別条件の数は、前記複数の評価項目の数よりも多く、
前記適否判定工程では、前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合に、前記複数の与信選別条件に関する適否判定を行い、該閾値条件を満たさない場合には、該適否判定を行わず、
前記自動判定工程では、前記閾値条件を満たさない場合には、前記与信案件の与信を不可と自動判定する、
付記8に記載の与信判定方法。
(付記10)
前記複数の与信選別条件は、複数の与信不可条件と複数の自動判定除外条件とを含み、
前記適否判定工程では、前記複数の与信不可条件に関する前記適否判定を行った後、合致する与信不可条件がない場合に、前記自動判定除外条件に関する前記適否判定を行い、
前記自動判定工程では、前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記複数の与信不可条件の一つ以上が合致する場合には、前記与信案件を与信不可と自動判定し、前記複数の自動判定除外条件の一つ以上が合致する場合には、前記与信案件を自動判定外と判定し、前記集計評価スコアが該閾値条件を満たし、かつ、前記複数の与信不可条件及び前記複数の自動判定除外条件のいずれも合致しない場合に、前記与信案件を与信可と判定する、
付記8又は9に記載の与信判定方法。
(付記11)
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる量的データに対応する定量的項目を少なくとも含み、
前記定量的項目は、前記案件情報に含まれる第一の量的データに対して比例的に前記個別評価スコアが決まる第一の定量的項目、及び前記案件情報に含まれる第二の量的データが取り得るデータ範囲が区分けされた複数区間の各々に対して割り付けられたスコア定数により前記個別評価スコアが決まる第二の定量的項目を含み、
前記第二の定量的項目における前記複数区間には、他の区間とは区間幅が異なる一以上の区間が含まれる、
付記8から10のいずれか一つに記載の与信判定方法。
(付記12)
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる質的データに対応するカテゴリ項目を少なくとも含み、
前記算出工程では、前記案件情報に含まれる質的データに対応する前記カテゴリ項目に関して、該質的データが示すカテゴリに割り付けられたスコア定数により前記個別評価スコアを決定する、
付記11に記載の与信判定方法。
(付記13)
前記複数の評価項目は、前記案件情報に含まれる前記申込者に関する与信の現況実績情報を用いて前記個別評価スコアが決定される特定評価項目を含み、
前記取得工程では、他のシステムから提供される、前記申込者に関する与信の現況実績情報を取得可能であり、
前記算出工程では、前記他のシステムに前記申込者に関する与信の現況実績情報が登録されていないことから前記取得手段が該現況実績情報を取得できなかった場合にも、前記特定評価項目を含む前記複数の評価項目の各々について前記個別評価スコアを決定し、決定された複数の個別評価スコアに基づいて集計評価スコアを算出する、
付記8から12のいずれか一つに記載の与信判定方法。
(付記14)
前記他のシステムは、個人信用情報機関のシステムであり、
前記複数の与信選別条件は、前記個人信用情報機関のシステムに前記申込者に関する与信の現況実績情報が登録されていないことから前記取得手段が該現況実績情報を取得できなかった場合に合致する信用情報非照会条件を含み、
前記適否判定工程では、前記集計評価スコアが所定のスコア閾値を用いた閾値条件を満たす場合であっても、前記信用情報非照会条件に合致する場合には、前記与信案件に関して自動判定外を自動判定する、
付記13に記載の与信判定方法。
(付記B)
前記案件情報には、前記与信案件に関する与信種別が更に含まれており、
前記自動判定工程では、与信種別(個別、カード、保証)ごとに予め決められた相互に異なる複数の所定のスコア閾値のうち、前記案件情報に含まれる前記与信種別に対応する所定のスコア閾値を選択し、前記集計評価スコアが該選択された所定のスコア閾値を用い閾値条件を満たすか否かを判定する、
付記8から14のいずれか一つに記載の与信判定方法。
【符号の説明】
【0074】
1 与信判定システム(本システム)、2 通信網、10 与信判定サーバ、12 CPU、13 メモリ、14 通信ユニット、15 入出力I/F、20 ユーザ端末、22 CPU、23 メモリ、24 通信ユニット、25 入出力I/F、26 表示装置、27 入出力装置、30 情報格納部、31 情報取得部、32 スコア算出部、33 適否判定部、34 与信判定部、35 情報生成部