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特許7578423ポリウレタンフォーム用組成物及びポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム用組成物及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20241029BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20241029BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241029BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C08G18/42 008
C08G18/40 018
C08G18/00 H
C08G101:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020108089
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003114
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】和田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔子
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063410(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129850(WO,A1)
【文献】特開2021-107515(JP,A)
【文献】特開2014-237757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するポリマー、ポリイソシアネートおよび発泡剤を含むポリウレタンフォーム用組成物であって、前記水酸基を有するポリマーが、芳香族ポリエステルアルコールを含み、前記芳香族ポリエステルアルコールは、芳香族濃度が25.0~35.0質量%であり、前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含み、下記式(1)から求められる、発泡剤を除く前記組成物中の芳香環成分の割合が43.0質量%以上である、組成物。
【数1】
【請求項2】
前記水酸基を有するポリマーが、官能基数3以上のポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水酸基を有するポリマーが、ポリエステルアルコール及びポリエーテルポリオールを含み、ポリエステルアルコール(A)とポリエーテルアルコール(B)の質量比(A:B)が50:50~90:10である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
イソシアネートインデックスが270以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、さらに、水酸基を有するポリマー以外のイソシアネートと反応する官能基を有する芳香族化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を発泡させてなる、コア密度が20~50kg/mのポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム用組成物に関し、特には、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を発泡剤に用いたポリウレタンフォームの難燃性および寸法安定性を向上させることができるポリウレタンフォーム用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂系フォームの中でも、ポリウレタンフォーム、特に硬質ポリウレタンフォームは、優れた断熱性能を有していることから発泡系断熱材として広く使用されている。ポリウレタンフォームは、通常、ポリオールと、ポリイソシアネートとを、必要に応じて適宜配合される触媒、発泡剤、整泡剤などと一緒に混合して、発泡させることにより製造されている。
【0003】
特開2011-157528号公報(特許文献1)には、平均分子量が100~300であるポリオキシエチレングリコールと、オルトフタル酸(O)とテレフタル酸(P)とのモル比がO/P=20/80~50:50である芳香族ジカルボン酸と、のポリエステルポリオールおよびマンニッヒポリエーテルポリオールを含有するポリオール化合物を含有し、ポリオール化合物の全量を100重量部としたとき、ポリエステルポリオールを40~80重量部、マンニッヒポリエーテルポリオールを20~40重量部とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物が記載され、該ポリオール組成物を用いることで、難燃性および寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができるとしている。
【0004】
特開2011-16854号公報(特許文献2)には、ポリエーテルポリオール(a)50~80質量%とポリエステルポリオール(b)20~50質量%未満とからなり、前記ポリエステルポリオール(b)が、ポリエチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸とを含む芳香族ジカルボン酸とを反応して得られるものであり、その水酸基価が100~450mgKOH/gのポリエステルポリオール(b1)を含むポリオール組成物が記載され、該ポリオール組成物を用いることで、低粘度、難燃性、貯蔵安定性、寸法安定性、かつ低密度の水発泡の硬質ポリウレタンフォームを提供することができるとしている。
【0005】
従来から硬質ポリウレタンフォーム用発泡剤として、HFC-134a、HFC-245fa、HFC-365mfc等のハイドロフルオロカーボン(HFC)系発泡剤が用いられている。しかしながら、このハイドロフルオロカーボン系発泡剤は、オゾン層破壊の少ない又は生じない代替フロンとして認識されているものの、化学的に安定なために地球温暖化係数が高く、HFC系発泡剤の使用が地球温暖化に繋がると懸念されており、モントリオール議定書(キガリ改正)による段階的な削減が進められている
【0006】
一方で、特許文献1及び2に記載されるポリウレタンフォームでは、フロン類に該当しない発泡剤として水が使用されている。この場合、水とポリイソシアネートとの反応で発生する二酸化炭素がウレタンフォームに断熱効果を発現させる。しかしながら、二酸化炭素は、それ自体の熱伝導率がHFC系ガスよりも高く、ポリウレタンフォーム断熱材としての断熱性能がHFC系のものよりも悪くなることが知られている。
【0007】
そこで、近年ではこれらにHFC系発泡剤に替わって、化学的に不安定であるために地球温暖化係数が低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)と呼ばれるハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤が、使用され始めている。
【0008】
特開2019-14839号公報(特許文献3)には、ポリオールの30~60質量%がエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールで構成され、水酸基及びカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸化合物を更に含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成される発泡性組成物が記載され、これにより、良好な施工作業性を有する発泡性組成物と、優れた寸法安定性を有するポリウレタンフォームとを提供することができるとしている。ここで、特許文献3に記載される発泡性組成物には、ハイドロフロオロオレフィン等が非フロン系発泡剤として使用されている。
【0009】
特開2019-14840号公報(特許文献4)には、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)とが重量比においてA:B=70:30~40:60の割合であり且つ該ポリエーテルポリオールの70質量%以上がエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されているポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成され、発泡剤として、少なくともハロゲン化ハイドロオレフィンを用いてなることを特徴とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物が記載され、これにより、良好な吹付け施工作業性を有する発泡性組成物と、優れた寸法安定性を有するポリウレタンフォームとを提供することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-157528号公報
【文献】特開2011-16854号公報
【文献】特開2019-14839号公報
【文献】特開2019-14840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3及び4は、優れた寸法安定性を有するポリウレタンフォームを提供することを目的とするものであるが、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を用いたポリウレタンフォームは、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を用いた場合と比較して、フォームの寸法安定性が悪くなりやすいため、依然として改善の余地がある。特に、ポリウレタンフォームのセルが横伸びした状態になると、セルの横伸びに対して垂直方向の寸法安定性が悪くなりやすい。これは、HFCと比べてHFOの方が、分子構造の分子極性が高い分、ポリウレタン樹脂への溶解性が高くなり、セル中の発泡剤の一部が樹脂に溶け込みやすくなっており、樹脂を軟化させていることが考えられる。
【0012】
発泡剤としてHFOを用いたポリウレタンフォームを使用した断熱パネルやスプレーフォームでは、このような現象の影響を受けて、経時でフォームの収縮が生じやすいことから、変形や接着不良等を引き起こし、製品不良となる問題が多く見られていた。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記の問題を解決し、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いるポリウレタンフォーム用組成物であって、ポリウレタンフォームの難燃性および寸法安定性を向上させることができるポリウレタンフォーム用組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる組成物から形成されるポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、ポリウレタンフォーム用組成物中に含まれる芳香族濃度を高めることで、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、得られるポリウレタンフォームの寸法安定性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、一般的に有機物において、芳香族成分の方が脂肪族成分よりも燃焼時に燃焼表面に炭化層を形成しやすくなることから、芳香族濃度が高い程、難燃性が高くなることが知られている。この知見はポリウレタンフォームにおいても活用されており、ポリウレタンフォームの難燃性を改善する目的で、ポリオールに芳香族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエーテルポリオールを使用することが知られている。かかるポリウレタンフォームは、難燃性を保持しつつ、寸法安定性を改善できることから、建材パネル(連続パネル、注入パネル等)やスプレー断熱材といった硬質ポリウレタンフォームの一般的な断熱材としての用途に好適である。
【0015】
即ち、本発明の組成物は、水酸基を有するポリマー、ポリイソシアネートおよび発泡剤を含むポリウレタンフォーム用組成物であって、前記水酸基を有するポリマーが、芳香族ポリエステルアルコールを含み、前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含み、下記式(1)から求められる、発泡剤を除く前記組成物中の芳香環成分の割合が43.0質量%以上である、組成物である。
【数1】
【0016】
本発明の組成物の好適例においては、前記水酸基を有するポリマーが、官能基数3以上のポリエーテルポリオールを含む。
【0017】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記水酸基を有するポリマーが、ポリエステルアルコール及びポリエーテルポリオールを含み、ポリエステルアルコール(A)とポリエーテルポリオール(B)の質量比(A:B)が50:50~90:10である。
【0018】
本発明の組成物の他の好適例においては、イソシアネートインデックスが270以上である。
【0019】
本発明の組成物の好適例においては、前記組成物が、さらに、水酸基を有するポリマー以外のイソシアネートと反応する官能基を有する芳香族化合物を含む。
【0020】
また、本発明のポリウレタンフォームは、上記の組成物を発泡させてなる、コア密度が20~50kg/mのポリウレタンフォームである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ポリウレタンフォームの難燃性および寸法安定性を向上させることができるポリウレタンフォーム用組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明のポリウレタンフォーム用組成物を詳細に説明する。
【0023】
本発明の組成物は、水酸基を有するポリマー、ポリイソシアネート及び発泡剤を含むポリウレタンフォーム用組成物であり、下記式(1)から求められる、発泡剤を除く該組成物中の芳香環成分の割合が43.0質量%以上である。ポリウレタンフォーム用組成物(ただし、発泡剤を除く)中に含まれる芳香環成分の割合を43.0質量%以上とすることで、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、得られるポリウレタンフォームの寸法安定性を改善することができる。一方、組成物中の芳香環成分の割合が高すぎると、被着体との接着性が低下する場合がある。このため、本発明において、下記式(1)から求められる発泡剤を除く組成物中の芳香環成分の割合は、好ましくは43.0~53.0質量%、より好ましくは43.0~50.0質量%、さらに好ましくは44.0~47.0質量%である。
【0024】
本明細書において、芳香族濃度とは、物質(例えば、水酸基を有するポリマー、ポリイソシアネート、その他の芳香族化合物)の分子中に含まれる芳香環の割合を指す。ここで、芳香環とは、芳香族化合物に含まれているヒュッケル則を満たす環構造を意味し、ベンゼン環の他、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含む複素環(例えば、フラン、ピロール、チオフェン)等の単環構造や、それらの縮合環(例えば、ナフタレン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン)等の多環構造が挙げられる。例えば、芳香族ポリエステルポリオールの原料カルボン酸として使用できるテレフタル酸(C,分子量166)は、芳香環としてベンゼン環(C,分子量76)(なお、芳香環の分子量は、芳香環の置換基を除いた分子量とする)を1つ有することから、その芳香族濃度は、76÷166×100≒45.8質量%となる。
【0025】
本発明では、ポリウレタンフォーム中に含まれる芳香族濃度を算出する指標として、発泡剤を除くポリウレタンフォーム用組成物中の芳香環成分の割合を以下の式(1)により定義した。
【数2】
【0026】
式(1)において、発泡剤を除くポリウレタンフォーム用組成物中に含まれる成分がi種類からなり、各成分の配合質量部をそれぞれx(1)、x(2)、x(3)、・・・、x(i)とし、各成分の芳香族濃度をそれぞれAr(1)、Ar(2)、Ar(3)、・・・、Ar(i)とする。
【0027】
例えば、ポリオールA(芳香族濃度:20質量%) 50配合質量部 + ポリオールB(芳香族濃度:10質量%) 50配合質量部 + ポリイソシアネート(芳香環成分の割合:60質量%) 100配合質量部 を混合してなる組成物中の芳香環成分の割合は、37.5質量%となる。
各成分中に含まれる芳香環の質量部の合計(50×0.2 + 50×0.1 + 100×0.6)÷ 全成分の配合質量部200 × 100% = 組成物中の芳香環成分の割合 37.5質量%
【0028】
本発明の組成物は、水酸基を有するポリマーを含む。ここで、該ポリマーは、ポリオールを含むものであるが、1つの水酸基を有するポリマーを含んでいてもよい。例えば、芳香族ポリエステルポリオールでは、芳香族濃度を高めるために、原料に芳香族モノカルボン酸や芳香族モノアルコールを使用することで、エステル化による結晶化を防止しながら、芳香族濃度の高いポリオールを合成できるが、この際の生成物には1つの水酸基を有するポリマーも含まれ得る。このように1つの水酸基を有するポリマーも含まれ得る点を考慮して、かかるポリマーを芳香族ポリエステルアルコールと称する。本明細書において「芳香族ポリエステルアルコール」とは、少なくとも1つの水酸基を有する芳香族ポリエステルを含んだポリエステルポリオールを指す。
【0029】
本発明の組成物に用いるポリオールは、複数の水酸基を有する化合物であり、その具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられる。また、これらポリオールに1つの水酸基を有するポリマーも含まれ得る場合には、ポリエーテルアルコール、ポリエステルアルコール等と称することができる。
【0030】
本発明の組成物において、水酸基を有するポリマーの量は、求められる性能に対して適宜調整されるが、例えば、該組成物100質量部に対して、15~35質量部である。なお、水酸基を有するポリマーは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオールが代表例として挙げられ、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、その他の活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料に、アルキレンオキサイドを開環付加反応させて製造することができる。
【0032】
ポリオキシアルキレン系ポリオールの出発原料には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、マンノース、ショ糖、フルクトース、デキストロース、ソルビトール等の多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタアミン等の多価アミン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、ハイドロキノン等の多価フェノール、マンニッヒベース(フェノール類、アルデヒド類、アルカノールアミン等を縮合反応させたもの)、それらの変性物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
ポリオキシアルキレン系ポリオールを製造する際に、開環付加反応せしめるアルキレンオキサイドには、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
ポリマーポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリアクリロニトリル微粒子やポリスチレン微粒子等のポリマー微粒子が分散したもの等が挙げられる。本明細書中において、ポリマーポリオールは、ポリエステルポリオールの一種として扱う。
【0035】
マンニッヒポリオールは、フェノール類、アルデヒド類、アルカノールアミン等を縮合反応させ、さらに必要に応じてエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドの開環付加反応を行うことにより、製造することができる。本明細書中において、マンニッヒポリオールは、ポリエステルポリオールの一種として扱う。
【0036】
好適なポリエーテルポリオールの例としては、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加反応させて得られる(ジ)エチレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)グリセリン系ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパン系ポリエーテルポリオール、ペンタエリスリトール系ポリエーテルポリオール、ショ糖系ポリエーテルポリオール、デキストロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール、モノ(ジ、トリ)エタノールアミン系ポリエーテルポリオール、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA系ポリエーテルポリオール等のポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリマー微粒子が分散したポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
ポリエステルポリオールは、ポリエステルの製造条件を調整して製造することができ、例えば、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリエステルが挙げられ、より具体的には、直鎖状のポリエステルポリオールや僅かに分岐したポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールは、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸類と、ジオールと、任意に多価カルボン酸類および/または三官能性以上のポリオールとを使用して、既知の方法で調製することができる。
【0038】
ポリラクトンポリオールは、ラクトンのホモポリマー又はコポリマーであって、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリラクトン等が挙げられる。具体的には、上記ポリオキシアルキレン系ポリオールにおいて説明したような活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトンを開環付加反応させて製造することができる。なお、ポリラクトンポリオールは、分子中に複数のエステル結合を有することから、ポリエステルポリオールの一種である。
【0039】
ポリブタジエンポリオールは、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエン等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物において、水酸基を有するポリマーは、芳香族ポリエステルアルコールを含むことが好ましい。芳香族ポリエステルアルコールを用いることで、断熱材として好適なポリウレタンフォームを得ることができる。また、芳香族濃度の高い芳香族ポリエステルアルコールを用いることで、水酸基を有するポリマー全体の芳香族濃度を高めることができる。
【0041】
本明細書において、芳香族ポリエステルアルコールとは、その合成に使用されるカルボン酸の主成分が芳香族カルボン酸であり、好ましくは原料カルボン酸を占める芳香族カルボン酸の割合が50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%である。ここで、芳香族カルボン酸としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、モノカルボン酸等が挙げられる。
【0042】
芳香族ポリエステルアルコールは、芳香族濃度が20.0~35.0質量%であることが好ましく、25.0~30.0質量%であることが更に好ましい。芳香族濃度の高いポリエステルアルコールを用いることで、水酸基を有するポリマー全体の芳香族濃度を高めることができる。なお、芳香族ポリエステルアルコールの芳香族濃度は、その原材料から求めることができる。芳香族ポリエステルアルコールの芳香族濃度が20.0質量%未満の場合、発泡剤を除く組成物中の芳香環成分の割合を43.0質量%以上に確保することが難しくなり、寸法安定性が悪くなりやすい。一方、芳香族ポリエステルアルコールの芳香族濃度が35.0質量%以上では、室温で液状を維持することが困難になり、配合ポリオールとしての相溶性が悪くなりやすい。
【0043】
芳香族ポリエステルアルコールは、水酸基価が150~500mgKOH/gであることが好ましく、200~350mgKOH/gであることが更に好ましい。芳香族ポリエステルアルコールは、分子量が200~1000g/モルであることが好ましく、250~700g/モルであることが更に好ましい。芳香族ポリエステルアルコールは、官能基数が1~4が好ましく、1.3~2.5が更に好ましい。通常、芳香族濃度を高めるために、原料に芳香族モノカルボン酸や芳香族アルコールを使用することで、エステル化による結晶化を防止しながら、芳香族濃度の高いポリエステルアルコールを合成できる。これに伴い、芳香族ポリエステルアルコール中の平均官能基数が2未満となる場合がある。
【0044】
本明細書において、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 1557-1:2007 プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法-第1部:水酸基価の求め方に基づいて測定した値である。水酸基を有するポリマーの水酸基価とは、全ての水酸基を有するポリマーの混合物で測定した値である。
【0045】
本明細書において、水酸基を有するポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0046】
本明細書において、水酸基を有するポリマーの官能基数(fn)は、水酸基を有するポリマーの持つ水酸基価(OHV)と数平均分子量(Mn)から次の計算式により求められる。
fn=Mn(g/mol)×OHV(mgKOH/g)/56100
【0047】
本発明の組成物において、芳香族ポリエステルアルコールの量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは8~30質量部、更に好ましくは15~25質量部である。なお、芳香族ポリエステルアルコールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明の組成物において、水酸基を有するポリマーは、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、官能基数3以上のポリエーテルポリオールを含むことが更に好ましい。官能基数3以上のポリエーテルポリオールを用いることで、架橋点を増やすことができ、フォームの三次元的な構造を容易に形成することができる。本明細書においては、ポリマーポリオールやマンニッヒポリオールも、ポリエーテルポリオールに含まれる。
【0049】
ポリエーテルポリオールは、水酸基価が300~700mgKOH/gであることが好ましく、350~650mgKOH/gであることが更に好ましい。ポリエーテルポリオールは、分子量が200~1000g/モルであることが好ましく、250~700g/モルであることが更に好ましい。ポリエーテルポリオールは、官能基数が3~4が更に好ましい。
【0050】
本発明の組成物において、ポリエーテルポリオールの量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは2~14質量部、更に好ましくは3~11質量部である。なお、ポリエーテルポリオールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の組成物においては、ポリオール成分(水酸基を有するポリマー、芳香族化合物、添加剤)中で、芳香族濃度が9.0~25.0質量%であることが好ましく、12.0~20.0質量%であることが更に好ましい。芳香族濃度の高い水酸基を有するポリマーを用いることで、ポリオール成分中の芳香族濃度を高めることができる。
【0052】
本発明の組成物において、水酸基を有するポリマーは、ポリエステルアルコール及びポリエーテルポリオールを含み、ポリエステルアルコール(A)とポリエーテルポリオール(B)の質量比(A:B)が50:50~90:10であることが好ましく、芳香族ポリエステルアルコール、特には芳香族濃度が20.0~35.0質量%である芳香族ポリエステルアルコール(A)と官能基数3以上のポリエーテルポリオール(B)の質量比(A:B)が50:50~90:10であることが更に好ましい。ポリエステルアルコールとポリエーテルポリオールの合計に占めるポリエステルアルコールの割合が50質量%よりも少なくないと、芳香族濃度やイソシアヌレート成分が少なくなり、難燃性が悪化するおそれがある。ポリエステルアルコールとポリエーテルポリオールの合計に占めるポリエステルアルコールの割合が90質量%よりも多くなると、水酸基を有するポリマー全体の官能基数が下がることでイソシアネートとの架橋点が少なくなり、寸法安定性が悪くなるおそれがある。
【0053】
本発明の組成物に用いるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが挙げられ、また、これらポリイソシアネートの変性物も含まれる。ポリイソシアネートの変性物としては、例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、ウレア、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、オキサゾリドン等の構造を有するポリイソシアネートが挙げられる。また、上記ポリイソシアネートとして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーを使用してもよい。なお、ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
ポリイソシアネートのうち、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(所謂ポリメリックMDI)であることが更に好ましい。芳香族ポリイソシアネートを用いることで、組成物中の芳香族濃度を高めることができる。
【0056】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基含有率が20~40質量%であることが好ましく、25~35質量%であることが更に好ましい。本明細書において、イソシアネート基含有率は、JIS K 1603に従い求められる。
【0057】
本発明の組成物において、ポリイソシアネートの量は、例えば、イソシアネートインデックスにより示すことができる。本発明の組成物においては、イソシアネートインデックスが高く調整されることが好ましく、具体的にはイソシアネートインデックスが270以上であることが好ましく、300~500であることが更に好ましく、300~400であることが特に好ましい。
【0058】
本明細書において、イソシアネートインデックスとは、水酸基を有するポリマーの他、発泡剤等のイソシアネート基と反応する活性水素の合計に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の比に100を乗じた値である。
【0059】
本発明の組成物は、好適にはイソシアネートインデックスが高く調整されることから、三量化触媒を用いると、イソシアヌレート環構造を多く含むポリウレタンフォームを得ることができる。かかるポリウレタンフォームは樹脂強度が高い。本明細書においては、イソシアネートインデックスが150以上で、三量化触媒を用いた場合のポリウレタンフォームをポリイソシアヌレートフォームと称することもできる。
【0060】
本発明の組成物中の芳香族濃度は、上述のように、水酸基を有するポリマーやポリイソシアネートの種類や量を適宜選択することで、高めることができるが、水酸基を有するポリマー及びイソシアネート以外の芳香族化合物を配合してもよい。
【0061】
本発明の組成物は、水酸基を有するポリマー以外のイソシアネートと反応する官能基を有する芳香族化合物を含むことが好ましい。本明細書においては、水酸基を有するポリマー以外のイソシアネートと反応する官能基を有する芳香族化合物を「芳香族化合物(a)」とも称する。ここで、イソシアネートと反応する官能基としては、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
【0062】
芳香族化合物(a)は、分子量が小さいことが好ましく、その分子量は、好ましくは250g/モル以下である。また、芳香族化合物(a)は、好ましくは芳香族濃度が60.0質量%以上であり、より好ましくは70.0~93.0質量%である。芳香族化合物(a)の具体例としては、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン等が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物において、芳香族化合物(a)の量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、更に好ましくは3~6質量部である。なお、芳香族化合物(a)は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明の組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を含むものであり、ここで、ポリオール成分は、水酸基を有するポリマーと、必要に応じて芳香族化合物(a)とを含み、通常、発泡剤、整泡剤、難燃剤、触媒などの添加剤を含み、また、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートからなるが、発泡剤や難燃剤などの添加剤などを含んでもよい。また、本発明の組成物には、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分とは異なる成分として発泡剤などの添加剤をさらに配合してもよい。
【0065】
本発明の組成物に使用し得る触媒としては、水とイソシアネートとの反応を促進する触媒(泡化触媒)、ポリオールとイソシアネートとの反応を促進する触媒(樹脂化触媒)、イソシアネートの三量化反応(即ち、イソシアヌレート環の形成)を促進する触媒(三量化触媒)等が挙げられる。
【0066】
泡化触媒としては、例えば、ジモルホリン-2,2-ジエチルエーテル、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、等が挙げられる。
【0067】
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン触媒、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン触媒、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛、カルボン酸ビスマス、ジルコニウム錯体などの金属触媒等が挙げられる。これらのアミン触媒およびアルカノールアミン触媒としては、炭酸を付加させて合成したアミン炭酸塩やギ酸、酢酸等のカルボン酸を付加させて合成したアミンカルボン酸塩を使用してもよい。
【0068】
三量化触媒としては、例えば、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩、又はその他オニウム塩等が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物において、触媒の量は、該組成物100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは1.0~4.0質量部である。なお、触媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明の組成物に用いる発泡剤は、一般に、物理的発泡剤と化学的発泡剤に分類される。発泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、物理的発泡剤と化学的発泡剤を併用してもよい。本発明の組成物において、発泡剤の含有量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは2~20質量部、更に好ましくは5~15質量部である。
【0071】
物理的発泡剤の具体例としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)等のフロン類、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素、二酸化炭素等が挙げられる。一方、化学的発泡剤としては、水や、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0072】
本発明の組成物は、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含む。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、フロン類に該当しない物理的発泡剤として好適に使用される発泡剤である。HFOとは、フッ素原子を含有するオレフィン化合物であり、フッ素以外のハロゲン原子(例えば塩素原子)を更に含有するものも含まれる。HFOのうち塩素原子を更に含有するものは、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とも称される。本発明の組成物は、ハイドロクロロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。なお、HFOとHCFOは区別される場合もあるが、本明細書中においては、上述のとおり、HFOには、HCFOが含まれる。
【0073】
ハイドロフルオロオレフィンは、炭素原子の数が2~5個であることが好ましく、また、フッ素原子の数が3~7個であることが好ましい。HFOの分子量は、100~200g/モルであることが好ましい。HFOの具体例としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロブテン等が挙げられる。なお、HFOは、シス体とトランス体のいずれの異性体であってもよい。これらHFOは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
本発明の組成物において、ハイドロフルオロオレフィンの量は、該組成物100質量部に対して、例えば2~20質量部であり、好ましくは5~15質量部である。
【0075】
本発明の組成物は、フォームの外観や強度を改良する観点から、発泡剤として水を含むことが好ましい。本発明の組成物において、水の量は、該組成物100質量部に対して、例えば0.1~2.0質量部であり、好ましくは0.2~1.0質量部ある。
【0076】
本発明の組成物において、整泡剤としては、界面活性剤が好適に使用される。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性といったイオン性の界面活性剤や非イオン性界面活性剤があるが、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。また、具体例としては、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤が好適に挙げられる。本発明の組成物において、整泡剤の量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは1~5質量部である。整泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
本発明の組成物において、難燃剤としては、リン系難燃剤が好適に使用される。具体例としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)等が好適に挙げられる。また、ポリリン酸アンモニウムや赤燐などの固体(粉体)難燃剤なども、必要に応じて使用される。本発明の組成物において、難燃剤の量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは1~10質量部である。難燃剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
本発明の組成物には、その他の成分として、着色剤、充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、防かび剤、抗菌剤、架橋剤、溶媒、減粘剤、減圧剤、分離防止剤等の添加剤を必要に応じて適宜配合してもよい。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0079】
本発明の組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができる。例えば、水酸基を有するポリマー及び発泡剤を含むポリオール成分と、ポリイソシアネートからなるポリイソシアネート成分とを混合することで、本発明の組成物が調製できる。また、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合する際に、発泡剤を配合して、本発明の組成物を調製することも可能である。
【0080】
次に、本発明のポリウレタンフォームを詳細に説明する。
【0081】
本発明のポリウレタンフォームは、上述した本発明のポリウレタンフォーム用組成物を発泡させてなるポリウレタンフォームである。本発明の組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートを含むことから、両者を混合することで、反応が進行し、ポリウレタンフォームを形成することが可能である。なお、ポリウレタンフォーム形成時の温度は20~80℃であることが好ましい。
【0082】
本発明のポリウレタンフォームは、芳香族濃度が高く、寸法安定性に優れる。従来、発泡剤としてHFOを用いたポリウレタンフォームを使用した断熱パネルやスプレーフォームでは、特に冬の低温雰囲気下において、フォームの収縮が生じ、変形や接着不良を起こすことがあったが、本発明のポリウレタンフォームであれば、パネル製品の形状変化による外観不良や嵌合不良、またはスプレーフォーム製品の接着不良を防ぐことができる。これは、気候の変化に対して断熱材製品の品質が安定することにもつながる。このため、本発明のポリウレタンフォームは、建材パネル(連続パネル、注入パネル等)やスプレー断熱材といった硬質ポリウレタンフォームの一般的な断熱材としての用途に好適である。
【0083】
ポリウレタンフォームの発泡方法は、特に限定されず、既知の発泡手段、例えば、ハンドミキシング発泡、簡易発泡、連続発泡法、注入発泡法、フロス注入発泡法、スプレー発泡法等が利用できる。また、ポリウレタンフォームの成形方法も、特に限定されず、既知の成形手段、例えば、モールド成形、スラブ成形、ラミネート成形、現場発泡成形等が利用できる。
【0084】
本発明のポリウレタンフォームは、船舶、車両、プラント類、断熱機器、建築、土木、家具、インテリア等の各種用途に使用できるが、断熱材、具体的には断熱機器、例えば冷蔵倉庫や冷凍倉庫の断熱部材として好適に使用できる。
【0085】
また、本発明のポリウレタンフォームは、面材付きポリウレタンフォームであることが好ましく、金属面材付きポリウレタンフォームであることが更に好ましい。本明細書において、面材付きポリウレタンフォームとは、ポリウレタンフォームの片面又は両面に箔や板等の面材を付した板状の複合材料であり、各種用途の断熱材として使用できる。
【0086】
面材等の被接着体の好適な例としては、金属やその他の無機材料が挙げられ、特に、アルミニウムおよびその合金、ステンレスおよびその合金、鉄およびその合金、銅およびその合金等が挙げられる。また、被接着体の表面には、本発明の組成物が付着する面に所望によりコーティングが施されていてもよい。コーティングとしては、ポリエステル樹脂等の有機高分子コーティング剤等が挙げられる。被接着体の厚みは、0.2~0.6mmであることが好ましい。
【0087】
本発明のポリウレタンフォームは、コア密度が、例えば5~80kg/mであり、20~50kg/mであることが好ましく、25~45kg/mであることが更に好ましい。過去からの知見により、内在する発泡ガスの断熱効果を最大限発揮させ、ポリウレタンフォームの断熱性能を良好なものにするには、ポリウレタンフォームのコア密度が20~50kg/m、特には25~45kg/mであることが適している。HFO系発泡のポリウレタンフォームでも、断熱性能の観点からコア密度20~50kg/m、特には25~45kg/mが適している一方で、フリーフォームや発泡の過程でフォームセルが横伸びした箇所、充填性が不十分であった箇所において、局所的に寸法安定性が悪化する傾向にある。これに対して、本発明のポリウレタンフォームは、コア密度20~50kg/m、特には25~45kg/mである場合であっても、十分な寸法安定性を有する。本明細書において、ポリウレタンフォームのコア密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0088】
本発明のポリウレタンフォームは、アスカーゴム硬度計CS型での硬度が70以上であることが好ましい。本明細書において、硬度は、JIS K 6253に準拠して測定される。
【0089】
本発明のポリウレタンフォームは、測定の中心温度が23℃の場合、熱伝導率が0.0185~0.0280W/m・Kであることが好ましく、0.0190~0.0260W/m・Kであることが更に好ましい。本明細書において、熱伝導率は、JIS A 1412-2:1999に準拠して測定される。
【0090】
本発明のポリウレタンフォームは、断熱性が必要とされる種々の用途に好適に適用できる。特に、本発明のポリウレタンフォームは、マンション等の集合住宅、戸建住宅、学校や商業ビル等の各種施設や、冷凍倉庫、浴槽、工場の配管、自動車および鉄道車両に用いられる建築材や断熱材として有利に利用することができる。
【0091】
また、本発明のポリウレタンフォームは、スプレー方式による現場施工タイプの断熱材および結露防止材、工場ラインでパネルやボード等の建材等を製造する際にも使用することができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、ポリウレタンフォームは、JIS A 9526:2017に規定される建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームである。
【実施例
【0092】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
<原料>
ポリウレタンフォームの製造に用いた材料を以下に示す。
1)ポリエステルアルコールA…芳香族ポリエステルアルコール,官能基数1.3,水酸基価200mgKOH/g,分子量380g/モル,芳香族濃度31質量%
2)ポリエステルアルコールB…芳香族ポリエステルアルコール,官能基数1.5,水酸基価225mgKOH/g,分子量370g/モル,芳香族濃度27質量%
3)ポリエステルアルコールC…芳香族ポリエステルアルコール,官能基数1.7,水酸基価250mgKOH/g,分子量390g/モル,芳香族濃度25質量%
4)ポリエステルアルコールD…芳香族ポリエステルアルコール,官能基数1.8,水酸基価200mgKOH/g,分子量510g/モル,芳香族濃度25質量%
5)ポリエステルアルコールE…芳香族ポリエステルポリオール,官能基数2.0,水酸基価200mgKOH/g,分子量560g/モル,芳香族濃度8質量%
6)ポリエーテルポリオールA…トリメチロールプロパンにプロピレンオキシドを開環付加反応させてなるポリエーテルポリオール,官能基数3.0,水酸基価380mgKOH/g,分子量440g/モル,芳香族濃度0質量%
7)ポリエーテルポリオールB…ペンタエリスリトールにプロピレンオキシドを開環付加反応させてなるポリエーテルポリオール,官能基数4.0,水酸基価410mgKOH/g,分子量550g/モル,芳香族濃度0質量%
8)芳香族化合物A…ジフェニルアミン,芳香族濃度91質量%
9)芳香族化合物B…ジベンジルアミン,芳香族濃度78質量%
10)難燃剤…トリス(クロロプロピル)ホスフェート
11)整泡剤…Evonik社製テゴスタブB8460
12)触媒A…ジモルホリノ-2,2-ジエチルエーテル
13)触媒B…N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン
14)触媒C…4級アンモニウム塩,Evonik社製Ucat-18X
15)触媒D…オクチル酸カリウム/エチレングリコール=70質量%/30質量%
16)触媒E…アセチル酸カリウム/エチレングリコール=25質量%/75質量%
17)HFO…ハネウェル社製Solstice LBA,HCFO-1233zd E,trans-CFCH=CHCl,分子量130g/モル
18)HFC…セントラル硝子社製HFC245fa,HFC-245fa,分子量134g/モル
19)ポリイソシアネートA…ポリメリックMDI,スミジュール 44V20 L,住化コベストロウレタン(株)製、イソシアネート基含有率:31.5質量%、芳香族濃度60重量%
【0094】
ポリエステルアルコールA~Dでは官能基数が2未満である。これは、芳香族濃度を高めるために、原料に芳香族モノカルボン酸や芳香族モノアルコールが含まれている。このため、ポリエステルアルコールA~Dは、芳香族ポリエステルポリオールと1つの水酸基を有する芳香族ポリエステルとのポリマー混合物である。
【0095】
<ポリウレタンフォームの製造例>
表1~2に示す配合処方に従ってポリオール成分を調製した。次いで、ポリオール成分、イソシアネート成分及び物理発泡剤を表1~2に示される量で混合し、ポリウレタンフォーム用組成物を調製した。このときの条件は、室温20℃、液温15℃、撹拌条件5000rpm×5秒であった。次いで、ポリウレタンフォーム用組成物を、縦200mm×横150mm×厚み150mmの箱に流し込み、発泡させて、ポリウレタンフォームを得た。
【0096】
<フリーフォームコア密度の測定>
上記<ポリウレタンフォームの製造例>においてポリウレタンフォームが製造された箱の底面中央位置から50mmの高さにて50mm角のコアフォームを切り出し、該コアフォームの重さと体積から密度を測定した。得られた結果を表1~2に示す。
【0097】
<寸法安定性の評価>
上記<フリーフォームコア密度の測定>において切り出したコアフォームを-30℃にて7日間保存し、寸法安定性を評価した。具体的には、上記<ポリウレタンフォームの製造例>で用いた箱の150mm横方向に対応する方向でのコアフォームの厚み変化率(150mm横方向変化率)(%)と、コアフォームの体積変化率(%)とを測定した。得られた結果を表1~2に示す。なお、表中の値は、コアフォームが収縮した場合の変化率をマイナスの値で示されており、マイナスの値が大きい程、コアフォームの収縮の程度が大きいことを示す。
150mm横方向変化率が5%以下、かつ、コアフォームの体積変化率が10%以下であれば、寸法安定性が良いと判断する。
【0098】
<難燃性の評価>
<難燃性試験用ポリウレタンフォームの製造及び評価>
表1~2の実施例7~9、参考例3、比較例1、比較例3及び比較例6に示す配合処方に従ってポリオール成分を調製した。次いで、ポリオール成分、イソシアネート成分及び物理発泡剤を表1~2に示される量で混合し、ポリウレタンフォーム用組成物を調製した。この条件は、予め70℃に温調した縦200mm×横200mm×厚み50mmの金型の中央に、およそ110~130%パックになる量でポリウレタンフォーム用組成物を流し入れ、70℃×5分間で硬化させ、難燃性試験用ポリウレタンフォームを得た。フォームを脱型し、室温で1日以上静置した後、中央フォームコアから縦99mm×横99mm×厚み25mmの試験体を切り出し、23℃×50%RH雰囲気下で7日間養生した。ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/mにて、5分間加熱したときの最大発熱速度をコーンカロリーメーターC4(東洋精機製)を用いて測定した。得られた結果を表1~2に示す。
最大発熱速度が150未満であれば、難燃性を有するものと判断する。
【0099】
<モールドフォームコア密度の測定>
上記<難燃性試験用ポリウレタンフォームの製造及び評価>において切り出した縦99mm×横99mm×厚み25mmの試験体の重さと体積から密度を測定した。得られた結果を表1~2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
実施例は、物理発泡剤としてHFOを用いて製造されたポリウレタンフォームであるが、表1~2から分るように、同様にHFOを用いた比較例1及び3~6と比較して寸法安定性に優れた結果を示す。また、比較例2は、物理発泡剤としてHFCを用いて製造されたポリウレタンフォームであり、寸法安定性に優れるが、実施例のポリウレタンフォームの中にも、HFCを用いた場合の寸法安定性と同等以上の結果を示すものを確認することができる。