(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241029BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20241029BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20241029BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20241029BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20241029BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241029BHJP
H02J 50/50 20160101ALI20241029BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
H02J50/12
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L53/30
B60M7/00 X
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/50
H02J50/70
(21)【出願番号】P 2020114533
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】長井 千明
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-021886(JP,A)
【文献】特開2011-234496(JP,A)
【文献】特開2014-138509(JP,A)
【文献】特開2010-267917(JP,A)
【文献】特開2016-101079(JP,A)
【文献】特開2011-223703(JP,A)
【文献】特表2002-508916(JP,A)
【文献】特開2010-173503(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038148(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
E02F9/00-9/18
E02F9/24-9/28
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置(100,100b,100d)であって、
車両(20)に電力を供給する送電器(110,110d)であって、道路(RS)の表層を含む第一層(L1)に配置されている送電器と、
前記送電器と電気的に接続されている送電器側コネクタ(120,120b,120d)であって、前記第一層に配置されている送電器側コネクタと、
外部電源(150)からの電力を前記送電器に供給するための電源ケーブル(CB)と、
前記電源ケーブルと電気的に接続されている電源側コネクタ(130,130b,130d)であって、前記道路における前記第一層よりも深い第二層(L2)、または道路外の地中(L3)において、前記送電器側コネクタと電気的に接続可能な位置に配置される電源側コネクタと、を備え、
前記送電器と前記送電器側コネクタとはそれぞれ別体であり、前記送電器側コネクタは、前記送電器から物理的に離れた位置に配置されて
おり、
前記送電器側コネクタは、共振回路を形成するための第一送電器側コイル(122,122d)を備え、
前記電源側コネクタは、前記第一送電器側コイルと磁気結合して共振する共振回路を形成するための電源側コイル(132)を備え、
前記車両は、共振回路を形成するための受電側コイル(212)を備え、
前記送電器は、前記受電側コイルと磁気結合して共振する共振回路を形成するための第二送電器側コイル(112,112d)を備え、
前記第一送電器側コイルの巻き方向(R1)と、前記第二送電器側コイルの巻き方向(R2)とが互いに逆方向であり、
前記第一送電器側コイルと、前記第二送電器側コイルとの間に、電磁波シールドまたは磁気シールドの少なくともいずれかからなるシールド(50)が備えられている、
送電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送電装置であって、
前記電源ケーブルおよび前記電源側コネクタは、前記第二層に配置される水道管またはガス管のうち少なくともいずれかを含む配管(WP,WP2)の直上の領域(AR1,AR2)以外の領域に配置されている、
送電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の送電装置であって、
前記送電器
および前記送電器側コネクタ
は、前記第一層の少なくとも一部とな
り前記道路の表層を含むユニット構造体(ST)であって、前記第二層に着脱可能な予め定められた形状を有するユニット構造体を構成し、
前記送電器側コネクタは、前記ユニット構造体の外縁であって前記電源側コネクタに対応する位置に配置されている、
送電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の送電装置であって、
前記ユニット構造体は、さらに、前記第二層の少なくとも一部と嵌合するための嵌合部(72)であって、前記送電器側コネクタの近傍に配置される嵌合部を備える、
送電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の送電装置であって、
前記ユニット構造体は、前記嵌合部を囲むように配置される弾性部材(73)を備える、
送電装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記ユニット構造体は、プレキャストコンクリートにより構成されている、
送電装置。
【請求項7】
請求項
1から請求項
6までのいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記第一送電器側コイルは、磁性体を含む骨材を有する第一構造体(61)によって前記第二送電器側コイルと対向する位置を覆われ、
前記第二送電器側コイルは、磁性体を含む骨材を有する第二構造体(62)によって前記第二送電器側コイルと対向する位置を覆われている、
送電装置。
【請求項8】
請求項
1から請求項
7までのいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記第一送電器側コイルと、前記第二送電器側コイルとのうち少なくともいずれか一方は、自己共振周波数を形成するための浮遊容量(116d,126d)を有する、
送電装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の送電装置であって、
前記第一送電器側コイルと、前記第二送電器側コイルとのうち少なくともいずれかの導体配線間に、前記第一層が有する材料の誘電正接よりも小さい誘電正接を有する材料(119,129)が充填されている、
送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路内に配置される交流電源からの電力を、地面近傍に配置される送電装置を用いて車両に給電する車両充電システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路の表層は、車両走行に伴って劣化するため、補修されることがある。そのため、送電装置を道路の補修を考慮した適正な配置にしたいといった要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、送電装置(100,100b,100d)が提供される。この送電装置は、車両(20)に電力を供給する送電器(110,110d)であって、道路(RS)の表層を含む第一層(L1)に配置されている送電器と、前記送電器と電気的に接続されている送電器側コネクタ(120,120b,120d)であって、前記第一層に配置されている送電器側コネクタと、外部電源(150)からの電力を前記送電器に供給するための電源ケーブル(CB)と、前記電源ケーブルと電気的に接続されている電源側コネクタ(130,130b,130d)であって、前記道路における前記第一層よりも深い第二層(L2)、または道路外の地中(L3)において、前記送電器側コネクタと電気的に接続可能な位置に配置される電源側コネクタと、を備え、前記送電器と前記送電器側コネクタとはそれぞれ別体であり、前記送電器側コネクタは、前記送電器から物理的に離れた位置に配置されており、前記送電器側コネクタは、共振回路を形成するための第一送電器側コイル(122,122d)を備え、前記電源側コネクタは、前記第一送電器側コイルと磁気結合して共振する共振回路を形成するための電源側コイル(132)を備え、前記車両は、共振回路を形成するための受電側コイル(212)を備え、前記送電器は、前記受電側コイルと磁気結合して共振する共振回路を形成するための第二送電器側コイル(112,112d)を備え、前記第一送電器側コイルの巻き方向(R1)と、前記第二送電器側コイルの巻き方向(R2)とが互いに逆方向であり、前記第一送電器側コイルと、前記第二送電器側コイルとの間に、電磁波シールドまたは磁気シールドの少なくともいずれかからなるシールド(50)が備えられている。
【0007】
この形態の送電装置によれば、送電装置を備える道路等の補修を行う際に電源側コネクタや電源ケーブルの移動や交換を行うことを低減または防止することができる位置に、電源側コネクタや電源ケーブルを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の送電装置の構成を表す説明図。
【
図3】送電装置のコイル部の構成を模式的に表す説明図。
【
図8】第2実施形態の送電装置の構成を表す説明図。
【
図9】第2実施形態でのユニット構造体の構成を表す説明図。
【
図10】第3実施形態の送電装置の構成を表す説明図。
【
図11】第3実施形態での各コイルの構成を表す説明図。
【
図12】第4実施形態での各コイルの構成を表す説明図。
【
図13】各コイルを備える構造体の構成を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1および
図2を用いて本実施形態の送電装置100の構成について説明する。
図1に示すように、送電装置100は、送電器110と、送電器側コネクタ120と、電源側コネクタ130と、外部電源150と電源側コネクタ130とを電気的に接続するための電源ケーブルCBと、送電回路140と、を備えている。送電装置100は、外部電源150からの交流電力を、電源ケーブルCBを介して地中の電源側コネクタ130に供給する。電源側コネクタ130に供給された交流電力は、送電器側コネクタ120によって受電され、送電器110を介して車両20に供給される。本実施形態において、送電装置100は、道路RS上の車両20に非接触で電力を供給する。送電装置100から車両20の受電装置200に電力が伝送される状態において、本実施形態の送電装置100と、受電装置200とは、
図2に示す等価回路で表すことができる。送電装置100は、非接触式に限らず、送電器110が車両20の受電装置200と接触することによって車両20に電力を供給する接触式であってもよい。
【0010】
外部電源150は、例えば、系統電源などの交流電源である。外部電源150は、電源ケーブルCBを介して、交流電流を送電回路140に供給する。送電回路140は、整流回路やインバータ回路を有している。送電回路140は、外部電源150から供給される交流電力を直流電力に変換し、送電器110から車両20の受電装置200へ送電可能な高周波の交流電力に変換して、電源側コネクタ130に供給する。送電回路140は、電源ケーブルCBに接続されており、外部電源150と電源側コネクタ130との間に配置されている。送電回路140は、さらに、周波数成分を除去するためのフィルタ回路を有してよい。
【0011】
電源側コネクタ130および送電器側コネクタ120は、互いの電気的な接続を着脱可能とする接続器として機能する。電源側コネクタ130および送電器側コネクタ120は、本実施形態において、電磁誘導を利用する非接触式の接続器である。電源側コネクタ130および送電器側コネクタ120は、非接触式に限らず、例えば、一方のコネクタを差し込みプラグとし、他方のコネクタをプラグ受けとするいわゆる配線用差込接続器などの接触式の接続器であってもよい。
【0012】
本実施形態において、電源側コネクタ130は、
図2に示すように、電源側コイル部13を備えている。電源側コイル部13は、送電回路140からの交流電力を、電磁誘導を利用して非接触で送電器側コネクタ120に送電するための共振回路である。電源側コイル部13は、電源側コイル132と、共振コンデンサとして機能する電源側コンデンサ136とを含んでいる。電源側コイル132は、第一送電器側コイル122と磁気共鳴するための共振コイルとして機能する。電源側コンデンサ136の電気容量と、電源側コンデンサ136の自己インダクタンスとによって規定される共振周波数を、以下、「電源側共振周波数」とも呼ぶ。送電装置100が接触式である場合には、電源側コイル部13は省略されてよい。
図2では、電源側コンデンサ136は、電源側コイル132に対して直列に接続される例が示されているが、電源側コンデンサ136は、電源側コイル132に対して並列に接続されてもよい。
【0013】
本実施形態において、送電器側コネクタ120は、
図2に示すように、第一送電器側コイル部12を備えている。第一送電器側コイル部12は、電源側コネクタ130からの交流電力を非接触で受電するための共振回路である。第一送電器側コイル部12は、第一送電器側コイル122と、共振コンデンサとして機能する第一送電器側コンデンサ126とを含んでいる。第一送電器側コイル122は、電源側コイル132と磁気共鳴するための共振コイルとして機能する。第一送電器側コンデンサ126の電気容量と、第一送電器側コイル122の自己インダクタンスとによって規定される共振周波数を、以下、「第一共振周波数」とも呼ぶ。第一共振周波数は、電源側コイル部13の電源側共振周波数と同一となるように設定されている。第一送電器側コイル122は、電源側コイル132と磁気結合して電源側コネクタ130から交流電力を受電する。送電器側コネクタ120が接触式である場合には、第一送電器側コイル部12は省略されてよい。
図2では、第一送電器側コンデンサ126は、第一送電器側コイル122に対して直列に接続される例が示されているが、第一送電器側コンデンサ126は、第一送電器側コイル122に対して並列に接続されてもよい。
【0014】
送電器110は、第二送電器側コイル112に誘導された交流電力を車両20の受電器210に送電する。本実施形態において、送電器110は、
図2に示すように、第二送電器側コイル部11を備えている。第二送電器側コイル部11は、電磁誘導を利用して非接触で交流電力を受電器210に送電するための共振回路である。第二送電器側コイル部11は、第二送電器側コイル112と、共振コンデンサとして機能する第二送電器側コンデンサ116とを含んでいる。第二送電器側コイル112は、車両20の受電器210が有する受電側コイル212と磁気共鳴するための共振コイルとして機能する。第二送電器側コンデンサ116の電気容量と、第二送電器側コイル112の自己インダクタンスとによって規定される共振周波数を、以下、「第二共振周波数」とも呼ぶ。第二共振周波数は、後述する車両側コイル部21の車両側共振周波数と同一となるように設定されている。第二送電器側コイル112は、受電側コイル212と磁気結合して受電器210に交流電力を送電する。送電器110が接触式である場合には、第一送電器側コイル部12は省略されてよい。
図2では、第二送電器側コンデンサ116は、第二送電器側コイル112に対して直列に接続される例が示されているが、第二送電器側コンデンサ116は、第二送電器側コイル112に対して並列に接続されてもよい。
【0015】
車両20は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等の駆動モータを搭載する車両で構成される。車両20は、
図1に示すように、受電装置200と、受電装置200と電気的に接続されているバッテリ230とを備えている。受電装置200は、受電器210と、受電器210と電気的に接続されている受電回路220とを含んでいる。
【0016】
受電器210は、送電器110に供給された交流電力を受電側コイル212から受電する。
図2に示すように、本実施形態において、受電器210は、車両側コイル部21を備えている。車両側コイル部21は、送電器110からの交流電力を、電磁誘導を利用して非接触で受電するための共振回路である。車両側コイル部21は、受電側コイル212と、共振コンデンサとして機能する車両側コンデンサ216とを含んでいる。受電側コイル212は、送電器110の第二送電器側コイル112と磁気共鳴するための共振コイルとして機能する。車両側コンデンサ216の電気容量と、受電側コイル212の自己インダクタンスとによって規定される共振周波数を、「車両側共振周波数」とも呼ぶ。受電装置200が接触式である場合には、車両側コイル部21は省略されてよい。
図2では、車両側コンデンサ216は、受電側コイル212に対して直列に接続される例が示されているが、車両側コンデンサ216は、受電側コイル212に対して並列に接続されてもよい。
【0017】
受電回路220は、受電器210から出力される交流電力を直流電力に変換する。受電回路220は、例えば、フィルタ回路と、交流電力を直流電力に変換する整流回路と、バッテリ230の充電に適した直流電力に変換する電力変換回路とを有している。バッテリ230は、車両20の駆動源である駆動モータを駆動するための直流電力を出力する二次電池である。受電回路220から出力される直流電力は、バッテリ230の充電に利用することができる。受電回路220からの直流電力は、図示しない補機バッテリの充電や、駆動モータや補機の駆動に利用されてよい。
【0018】
図1を参照して、送電装置100の各部の配置構成について説明する。送電器110、送電器側コネクタ120、ならびに電源側コネクタ130は、道路RSに埋設されている。送電器110は、道路RSに埋設されるほか、道路RSの表面に露出していてもよい。
【0019】
道路RSは、車両20の走路である。道路RSは、舗装されており、本実施形態において、道路RSの舗装には、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が用いられている。道路RSは、例えば、用いられる材料や機能等によって区分される複数の層を有している。道路RSを構成する複数の層としては、例えば、地表から順に、舗装層、路床層、路体層が含まれる。舗装層には、地表から順に、表層、基層、路盤層が含まれる。路盤層は、さらに、上層路盤層と下層路盤層とに区分されてもよく、路床層は、さらに、構築路床層と原地盤層とに区別されてもよい。表層とは、道路RSの最上部に位置し、例えば、車両20の加重を分散する機能を有する層を意味する。基層とは、路盤層の不陸を整正し、路盤層に対して加重を均等に伝達する機能を有する層を意味する。路盤層とは、表層や基層を支持し、表層や基層からの加重を分散して路床層に伝達する機能を有する層を意味する。路床層とは、路盤層を支持する層を意味し、路体層とは、路床層を支持する層を意味する。道路RSの舗装には、アスファルト舗装のほか、砕石舗装、コンクリート舗装、コンクリートブロック舗装、タイル舗装、土や砂、石、ならびに木材などの種々の自然物を用いた舗装が用いられてよい。道路RSでは、車両の走行のほか、材料等の経年劣化などの要因により、ひび割れや、路面の沈下や穴などの凹部や段差の発生などの劣化が生じ得る。一般に、道路RSの補修頻度は、地表に近い層ほど高くなる。
【0020】
本実施形態において、送電器110および送電器側コネクタ120は、道路RSの第一層L1に配置され、電源側コネクタ130は、道路RSの第二層L2に配置されている。送電器110が配置される層は、車両20の受電器210に送電を行う観点から地表に近い層であるほど好ましい。電源側コネクタ130が配置される層は、補修頻度が低い層であるほど好ましい。「第一層L1」とは、道路RSの表層を含み、道路RSの地表から予め定められた深さまでの層を意味する。第一層L1には、送電器110が地表に露出する場合には、露出した送電器110が含まれる。本実施形態において、第一層L1は、地表から約5cmの深さまでの層であり、道路RSの表層を含んでいる。第一層L1は、地表から送電器側コネクタ120と、電源側コネクタ130との境界位置までの深さで設定されている。第一層L1に設定される深さは、例えば、第二層L2よりも補修頻度の高い層を含む深さとして設定されるなど、道路RSが有する各層の補修頻度の差異が発生する位置を考慮して設定されてよい。第一層L1には、表層のほか、基層や路盤層が含まれてもよい。第一層L1に設定される深さは、例えば、表層、基層、舗装層などの道路RSが有する各層の境界を用いて設定されてもよい。第一層L1には、後述するように、第二層L2に着脱可能な予め定められた形状を有するユニット構造体STが備えられている。
【0021】
「第二層L2」とは、道路RSにおける第一層L1よりも深い層を意味する。本実施形態において、第二層L2は、地表からの深さが5cmよりも深い層であり、基層、路盤層、路床層、ならびに路体層を含んでいる。第一層L1が基層や路盤層を含む場合には、第二層L2には、基層、路盤層が含まれなくともよい。
図1に示すように、第二層L2には、配管WPが埋設されている。配管WPは、第二層L2のうち、例えば、路床層に埋設されている。配管WPとは、水道管またはガス管のうち少なくともいずれかを含む管路を意味する。配管WPには、経時劣化や破損などを理由とする補修や交換が必要となることがある。配管WPには、水道管やガス管のほか、電線や下水道管などの種々の管路が含まれてよく、家庭用の給水装置が含まれてもよい。
【0022】
図1には、配管WPの直上の領域AR1が模式的に示されている。領域AR1は、道路RSの深さ方向において、道路RSの地表から配管WPに至るまでの領域であり、配管WPに対して鉛直方向の上側を含む領域である。領域AR1は、水平方向において、平面視で道路RSに対して配管WPが占有する領域を含む領域である。領域AR1には、例えば、配管WPの補修や交換などの際に掘削される道路RSの領域が含まれていることが好ましい。本実施形態では、
図1に示すように、電源ケーブルCBおよび電源側コネクタ130は、領域AR1以外の領域に配置されている。なお、送電器110は、領域AR1に含まれ、送電器側コネクタ120は、領域AR1以外の領域に配置されている。配管WPの補修を行うにあたり、例えば、第一層L1が後述するユニット構造体STを備えない場合や、いわゆる場所打ち工法により第一層L1が掘削される場合には、送電器110および送電器側コネクタ120は、領域AR1以外の領域に配置されていることが好ましい。
【0023】
送電回路140および外部電源150は、道路RS外に配置されている。より具体的には、送電回路140および外部電源150は、道路RSに近接する側道SS上に配置されている。送電回路140および外部電源150の配置位置は、送電器110に近いほど好ましい。送電回路140および外部電源150は、側道SS上に限らず、例えば、側道SSの地中L3に埋設されていてもよく、道路RS上において、車両20の走行の弊害とならない位置に備えられてもよい。
【0024】
図3および
図4を用いて、各コイル部が有するコイルの詳細な構成について説明する。
図3には、受電側コイル212、電源側コイル132、第一送電器側コイル122、ならびに第二送電器側コイル112の各コイルが模式的に示されている。各コイルは、コイル面を有するループ状のコイルであり、図示しないコアの周囲に配線をループ状に巻かれたコア有り構造のコイルである。「コイル面」とは、ループ状の配線によって囲まれ、ループ状のコイルとして機能する面を意味する。各コイルは、コア有り構造には限定されず、コアレス構造であってもよい。各コイルは、ループ状のコイルに限定されず、ソレノイドコイルであってもよい。
【0025】
第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112とは、一方の端部を互いに電気的に接続し、他方の端部を中継共振用のコンデンサC1を介して接続する、いわゆるショート方式のコイルを有している。コンデンサC1は、中継共振回路としての機能を考慮すれば、
図2に示す回路のように、第一送電器側コイル部12の第一送電器側コンデンサ126と、第二送電器側コイル部11の第二送電器側コンデンサ116とに仮想的に分離して表すことができる。第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112とには、一方の端部が切り離されて開放される、いわゆるオープン方式のコイルが用いられてもよい。
図3では、コンデンサC1は、第一送電器側コイル122および第二送電器側コイル112に対して直列に接続される例を示したが、第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112との互いの両端を電気的に接続し、コンデンサC1を第一送電器側コイル122および第二送電器側コイル112に対して並列に接続してもよい。
【0026】
第二送電器側コイル112と、受電側コイル212とは、電力伝送効率の観点から、互いの軸心が一致する位置関係になることが好ましく、同様に、第一送電器側コイル122と、電源側コイル132とは、互いの軸心が一致する状態になることが好ましい。
図3および
図4では、図示の便宜上、第一送電器側コイル122の軸心と、第二送電器側コイル112の軸心とが一致するように図示されているが、本実施形態では、
図1に示すように、第一送電器側コイル122および電源側コイル132の軸心と、第二送電器側コイル112および受電側コイル212の軸心とは互いに一致していない。なお、第一送電器側コイル122と電源側コイル132との軸心は互いに一致し、第二送電器側コイル112と受電側コイル212との軸心は互いに一致する。
【0027】
図3には、第一送電器側コイル122の巻き方向R1と、第二送電器側コイル112の巻き方向R2とが示されている。本実施形態において、巻き方向R1は右巻きであり、巻き方向R2は左巻きである。すなわち、第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112とは、互いの巻き方向が逆向きになるように配置されている。巻き方向R1が左巻きである場合には、巻き方向R2は右巻きであってよい。なお、受電側コイル212は、巻き方向R2と同じ左巻きで設定されているが、巻き方向R2に対して左右のどちらの巻き方向であってよい。電源側コイル132は、巻き方向R1と同じ右巻きで設定されているが、巻き方向R1に対して、左右どちらの巻き方向であってよい。
【0028】
図3に示すように、本実施形態において、第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112との間には、互いの漏洩電磁界の干渉を抑制するためのシールド50が備えられている。シールド50は、板状、シート状など任意の形状であってよく、ブロックなどの構造物として道路RS内に埋設されてもよい。本実施形態において、シールド50には、例えば、銀、銅、ニッケル、ならびにアルミニウム等を材料とする電磁波シールドが用いられている。シールド50には、電磁波シールドに代えて、または電磁波シールドとともに、例えば、フェライトや軟磁性金属材料、アモルファスやパーマロイなどの透磁率の高い材料を用いた磁気シールドが用いられてよい。第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112とが充分に離れており、双方のコイルが発生する磁束が鎖交しない場合には、シールド50は省略されてもよい。
【0029】
図4に示すように、第一送電器側コイル122は、例えば、アスファルト混合物やコンクリートからなる第一構造体61に備えられている。第一送電器側コイル122は、樹脂モールドされた状態で第一構造体61に組み込まれており、第一構造体61とともに第一層L1に配置される。第一構造体61は、例えば、砂利や砂のほか、フェライトや軟磁性金属材料といった磁性体が骨材(aggregate)として用いられている。磁性体は、骨材として用いるために、例えば、1mmから30mm程度のサイズに加工されていることが好ましい。磁性体としては、酸化鉄、酸化クロム、コバルトのほか種々の非酸化金属磁性体からなる材料が用いられてよい。第一送電器側コイル122は、第二送電器側コイル112と対向するコイル面61Tが第一構造体61によって覆われている。本実施形態では、第二送電器側コイル112と対向するコイル面61Tのほか、さらに、第一送電器側コイル122の内周や外周が第一構造体61によって覆われている。なお、
図4では、シールド50およびコンデンサC1の図示は省略されている。
【0030】
図4に示すように、第二送電器側コイル112は、第一送電器側コイル122と同様に、樹脂モールドされた状態で第二構造体62に組み込まれており、第二構造体62とともに第一層L1に配置される。第二構造体62の材料などの構成は、第一構造体61と同様であるので説明を省略する。第二送電器側コイル112は、第一送電器側コイル122と対向するコイル面62Tと、第二送電器側コイル112の内周や外周が第二構造体62によって覆われている。
【0031】
図5および
図6を用いて、本実施形態の送電装置100を配置する道路RS等の補修方法について説明する。
図5には、道路RSから取り外された状態のユニット構造体STが示されている。
【0032】
図5に示すように、送電器110と送電器側コネクタ120とは、ユニット構造体STを構成している。ユニット構造体STは、第一層L1の少なくとも一部を構成するいわゆるプレキャストコンクリートであり、送電器110と送電器側コネクタ120とを含む状態で予め製造される。送電器側コネクタ120は、ユニット構造体STの外縁に位置し、第二層L2の電源側コネクタ130に対応する位置、すなわちユニット構造体STにおける第二層L2と対向する下面L1Bに配置されている。ユニット構造体STの形状は、送電器側コネクタ120と、電源側コネクタ130との電気的な着脱位置が考慮されるほか、道路RSや配管WPの補修の範囲や頻度を考慮して予め設定されている。本実施形態において、ユニット構造体STは、略直方体の外観形状を有している。ユニット構造体STの幅は、道路RSにおける一車線分であり、深さは、第一層L1の深さに相当する。ユニット構造体STの鉛直方向の高さ、すなわち地表からの深さは、電源側コネクタ130が道路RSの地中に配置される場合には、例えば、送電器側コネクタ120と、電源側コネクタ130との境界位置を用いて設定されることが好ましい。ユニット構造体STの深さは、電源側コネクタ130が道路RS外に配置される場合には、補修頻度の差の境界位置で設定されることが好ましい。ユニット構造体STにおける水平方向の幅は、道路RSに設定される車両用の走行車線ごとのほか、送電器110から送電器側コネクタ120までの幅で設定されてもよく、例えば、道路RSの補修頻度やユニット構造体STの重量を考慮して、走行車線を複数の区分に分割して設定されてもよい。
【0033】
図5には、道路RS等の補修として、道路RSの補修MT1と、配管WPの補修MT2とが模式的に示されている。道路RSの補修MT1は、例えば、ユニット構造体ST、すなわち第一層L1の表層や基層などを修復するための補修を意味する。補修MT1は、取り外された状態のユニット構造体STに対して行われてよく、ユニット構造体STを新しいユニット構造体STと取り替えることによって行われてよく、ユニット構造体STが道路RSに取り付けられた状態で行われてもよい。配管WPの補修MT2は、
図5に示すように、ユニット構造体STを道路RSから取り外した状態において、第二層L2の上面L2Tから領域AR1を掘削し、露出した状態の配管WPに対して行われてよい。
図5に示すように、ユニット構造体STが道路RSから取り外される際、電源側コネクタ130、電源ケーブルCB、送電回路140、ならびに外部電源150は、移動や交換等を必要としない。道路RS等の補修を終えると、ユニット構造体STは、道路RSに取り付けられる。
【0034】
図6には、ユニット構造体STを道路RSに取り付ける際における送電器側コネクタ120の近傍が拡大して示されている。換言すれば、
図6には、第二層L2に対してユニット構造体STが取り付ける際の送電器側コネクタ120と、電源側コネクタ130との接続方法が示されている。
図6に示すように、ユニット構造体STの下面L1Bには、第二層L2側に向かって突出する凸状の送電器側嵌合部72が備えられており、第二層L2の上面L2Tには、送電器側嵌合部72の外形に対応する凹形状を有する電源側嵌合部74が備えられている。送電器側嵌合部72および電源側嵌合部74は、ユニット構造体STを道路RSに取り付ける際の位置合わせに用いられる。本実施形態では、
図6に示すように、送電器側嵌合部72は、送電器側コネクタ120の近傍に備えられ、電源側嵌合部74は、電源側コネクタ130の近傍に備えられている。このように構成することにより、ユニット構造体STを取り付ける際の送電器側コネクタ120と電源側コネクタ130との位置合わせの精度を高くしている。送電器側嵌合部72が凹状であり、電源側嵌合部74が凸状であってもよい。送電器側嵌合部72は、第二層L2に向かうに従って幅が小さくなるテーパ状の断面形状を有している。このように構成することにより、ユニット構造体STを道路RSに取り付ける際の位置合わせが容易にされている。本実施形態では、送電器側嵌合部72と電源側嵌合部74とが嵌合した状態において、送電器側嵌合部72は、電源側コイル132の磁心となる位置に配置される。送電器側嵌合部72または電源側嵌合部74が送電器側コネクタ120の第一送電器側コイル122と、電源側コネクタ130の電源側コイル132との磁路上に配置される場合には、電力伝送効率を向上させる観点から、送電器側嵌合部72または電源側嵌合部74は、フェライトや軟磁性金属材料といった磁性体を骨材として用いるアスファルト混合物やコンクリートで形成されることが好ましい。本実施形態において、送電器側嵌合部72は、1mmから30mm程度のサイズに加工された骨材としてのフェライトを含んでいる。その他の磁性体としては、軟磁性金属材料、酸化鉄、酸化クロム、コバルトのほか種々の非酸化金属磁性体からなる材料が用いられてよい。例えば、第一送電器側コイル122と、電源側コイル132との送電効率が充分に高いような場合や、送電器側嵌合部72または電源側嵌合部74が第一送電器側コイル122と電源側コイル132との磁路上に配置されないような場合では、送電器側嵌合部72または電源側嵌合部74には、骨材としての磁性体を含まなくてもよい。送電器側嵌合部72および電源側嵌合部74は、柱状や錐状などの形状を有していてもよく、一方向に沿って連続する長尺な溝状や凸形状を有していてもよい。
【0035】
図6に示すように、ユニット構造体STの下面L1B、すなわちユニット構造体STを道路RSに取り付ける際にユニット構造体STと第二層L2との間となる位置には、弾性部材73が備えられている。弾性部材73は、送電器側嵌合部72と電源側嵌合部74とが嵌合する領域を囲むように配置される。弾性部材73は、いわゆるシール部材として機能し、送電器側嵌合部72と電源側嵌合部74との嵌合位置に外部からの雨水や外気が侵入することを抑制する。
【0036】
図6に示すように、第一送電器側コイル122および第二送電器側コイル112は、防水や防塵の観点から、第一層L1やユニット構造体STの外表面に露出せず、第一層L1やユニット構造体STに埋設されていることが好ましい。電源側コネクタ130および送電器側コネクタ120が接触式の接続器である場合には、例えば、送電器側コネクタ120がユニット構造体STに埋設されている、もしくは電源側コネクタ130が第二層L2に埋設されているなど、電気的な接続位置が他の部材によって覆われることが好ましく、電気的な接続位置が外部に露出されない構成であることが好ましい。
【0037】
図7を用いて、道路RSへの送電器110の配列方法について説明する。
図7に示すように、本実施形態の送電装置100は、一の送電器側コネクタ120に対し、複数の送電器110を備えている。具体的には、複数の送電器110は、車両20の進行方向となる道路RSの延在方向に沿って配列されている。このように構成された送電装置100であれば、電源ケーブルCBの本数を低減することができる。ユニット構造体STは、これら複数の送電器110で構成されてよい。送電器110の数は、一の送電器側コネクタ120に対して2つであってもよく、3以上の任意の数であってもよい。
【0038】
第二送電器側コイル112に対して受電側コイル212が対向している状態(以下、「対向状態」とも呼ぶ)には、第二送電器側コイル112と受電側コイル212の対向面積が最大となる「正対状態」と、正対状態における第二送電器側コイル112と受電側コイル212の対向面積に比べて、対向面積が減少している「部分重複状態」とがある。対向状態では、第二送電器側コイル112と受電側コイル212との間隔は、一定以上の大きさの結合係数の結合が発生する一定の距離以下の間隔である。第二送電器側コイル112に対して受電側コイル212が対向していない状態(以下、「非対向状態」とも呼ぶ)には、「境界状態」と「分離状態」と「隔離状態」とがある。「正対状態」は、第二送電器側コイル112のコイル面の中心と、受電コイルのコイル面の中心とが一致している状態を意味する。正対状態では、第二送電器側コイル112または受電側コイル212のいずれか一方のコイル面が他方のコイル面に全体的に重なっている。「部分重複状態」は、第二送電器側コイル112のコイル面に対して受電側コイル212のコイル面が相対的にずれており、互いに部分的に重なっている状態である。「境界状態」は、第二送電器側コイル112のコイル面に対して受電側コイル212のコイル面が相対的に重なり無くずれて、第二送電器側コイル112のコイル面の端縁と受電側コイル212のコイル面の端縁とが重なっている状態であり、対向面積が無くなった時点の状態である。「分離状態」は、第二送電器側コイル112のコイル面に対して受電側コイル212のコイル面が相対的に重なり無くずれて、第二送電器側コイル112のコイル面と受電側コイル212のコイル面とが完全に分離された状態である。「隔離状態」は、第二送電器側コイル112と受電側コイル212とが対向状態であっても、結合係数が非常に小さく、電磁気的に結合していないと扱うことが可能な距離以上に隔離された状態である。
図7に示すように、車両20が道路RSを進行方向に沿って進行すると、一の第二送電器側コイル112は、受電側コイル212の通過により、非対向状態、対向状態、非対向状態の順に変化する。
【0039】
本実施形態では、送電装置100は、第二送電器側コンデンサ116の容量を調節することによって、非対向状態における送電器110の入力インピーダンスを、対向状態における送電器110の入力インピーダンスよりも大きくなるように調整している。これにより、対向状態における送電器110の入力インピーダンスに供給される電流に比べて、非対向状態における送電器110の入力インピーダンスに供給される電流を小さくしている。第二送電器側コンデンサ116の容量の調整は、例えば、電気磁気効果等を利用した可変コンデンサを用いることによって実現できる。第二送電器側コンデンサ116は、例えば、第二送電器側コイル112のコアの周囲に巻かれたループ状の配線の内周側で、ループ状の配線に沿ったコイル面に対応するコアの面上に配置される。受電側コイル212が第二送電器側コイル112に対して非対向状態から対向状態に変化した際の、第二送電器側コイル112によって発生する磁束の感度を増加し、磁束の変化に応じて第二送電器側コンデンサ116のキャパシタンスを変化させることができる。また、第二送電器側コンデンサ116の容量の調整は、受電側コイル212と第二送電器側コイル112の対向の状態に応じて第二送電器側コンデンサ116のキャパシタンス及び第二送電器側コイル112のインダクタンスを制御する可変制御回路によって実現されてもよい。これにより、送電器110の入力インピーダンスを、対向状態では小さく設定し、非対向状態では大きくすることができる。これにより、受電側コイル212に対向していない第二送電器側コイル112を有する第二送電器側コンデンサ116の入力インピーダンスを大きくすることにより、受電側コイル212に対向していない第二送電器側コイル112への電力の供給を抑制することができる。このように構成された送電装置100によれば、従来技術の電流制御素子のような大型部品を用いることなく、電力を送電しないコイルでの電力伝送損失、及び、漏洩磁束の低減を図ることができる。また、受電側コイル212に対向している第二送電器側コイル112へのみ自動的に電流が供給されるため、受電側コイル212の位置を判断するための位置センサや、送電コイルへ電力を送電する場合と電力を送電しない場合を切り替える制御を省略することが可能である。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態の送電装置100によれば、互いに電気的に接続される送電器110および送電器側コネクタ120が道路RSの第一層L1に備えられ、送電器側コネクタ120と電気的に接続可能な電源側コネクタ130が第一層L1よりも深い第二層L2に備えられる。第一層L1よりも補修頻度の低い第二層L2に電源側コネクタ130を配置することにより、第一層L1を補修する際に、電源側コネクタ130や電源ケーブルCBの移動や交換が行われることを低減または防止することができる。
【0041】
本実施形態の送電装置100によれば、電源ケーブルCBおよび電源側コネクタ130は、第二層L2に配置される配管WPの直上の領域AR1以外の領域に配置されている。したがって、配管WPの補修を行う際に、電源側コネクタ130や電源ケーブルCBの移動や交換が行われることを低減または防止することができる。
【0042】
本実施形態の送電装置100によれば、送電器110および送電器側コネクタ120は、第二層L2に着脱可能なユニット構造体STを構成している。したがって、ユニット構造体STを道路RSから取り外した状態で、配管WPや第二層L2の補修を行うことができる。配管WPや第二層L2の補修にあたり、送電器側コネクタ120および送電器110への接触を回避し、送電器側コネクタ120および送電器110の破損を低減または防止することができる。また、第二層L2を外部に露出させることにより、配管WPや第二層L2の補修を容易に行うことができる。
【0043】
本実施形態の送電装置100によれば、ユニット構造体STの下面L1Bにおいて、送電器側コネクタ120の近傍には、第二層L2の電源側嵌合部74と嵌合するための送電器側嵌合部72が備えられている。したがって、ユニット構造体STを道路RSに組み付ける際の位置合わせ精度を向上させることができる。送電器側コネクタ120と電源側コネクタ130との位置合わせ精度を向上させることにより、コネクタ間の電力伝送効率が低下することを抑制または防止することができる。
【0044】
本実施形態の送電装置100によれば、ユニット構造体STの下面L1Bには、送電器側嵌合部72と電源側嵌合部74との嵌合する領域を囲むように弾性部材73が配置される。したがって、送電器側コネクタ120と電源側コネクタ130との電気的な接続位置に雨水や外気が侵入することを抑制し、コネクタ間の電力伝送効率が低下することを抑制することができる。
【0045】
本実施形態の送電装置100によれば、送電器側コネクタ120は、共振回路を形成するための第一送電器側コイル122を備えており、電源側コネクタ130は、第一送電器側コイル122と磁気結合して共振する共振回路を形成するための電源側コイル132を備えている。電源側コネクタ130と送電器側コネクタ120との電気的な接続を非接触式にすることにより、電源側コネクタ130と送電器側コネクタ120との着脱を容易にすることができ、補修後の道路RSの復元を容易に行うことができる。道路RSの補修時に、電源側コネクタ130の電気的な接続箇所が外部に露出することを抑制し、電源側コネクタ130が劣化することを抑制または防止することができる。また、例えば、送電器110の第二送電器側コイル112上に受電側コイル212が存在しない状態では、第二送電器側コイル112と、第二送電器側コンデンサ116との共振により、送電回路140の出力側のインピーダンスが略ゼロの状態となることがある。電源側コネクタ130と送電器側コネクタ120との電気的な接続を非接触式にすることにより、第二送電器側コイル112上に受電側コイル212が存在しない状態であっても、電源側コイル132は、第一送電器側コイル122との磁気結合により電圧を上昇させることができ、送電回路140から不要な電流が取り出されることを低減または防止することができる。したがって、送電回路140のインバータ回路の故障や発熱、電源側コイル132での漏洩磁界の発生を低減または防止することができる。
【0046】
本実施形態の送電装置100によれば、送電器110は、受電器210の受電側コイル212と磁気結合して共振する共振回路を形成するための第二送電器側コイル112を備える。送電器110の第二送電器側コイル112と、送電器側コネクタ120の第一送電器側コイル122との二つのコイルを備えることにより、電源側コネクタ130と第一送電器側コイル122、および受電器210と第二送電器側コイル112において、それぞれ軸心の異なる位置で電力の授受を行うことができる。送電器側コネクタ120と送電器110との第一層L1内での配置位置の自由度を向上させることができる。
【0047】
本実施形態の送電装置100によれば、第一送電器側コイル122の巻き方向R1と、第二送電器側コイル112の巻き方向R2とが互いに逆方向として設定される。したがって、各コイルでの漏洩電磁界を低減することにより、鉄筋など、道路RS内において各コイルの近傍に配置される金属製の構造物が加熱されることを抑制または防止することができる。
【0048】
本実施形態の送電装置100によれば、コイルの巻き方向が互いに逆向きの第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112との間に、電磁波シールドまたは磁気シールドの少なくともいずれかからなるシールド50が備えられている。第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112との電磁界の相互作用を低減し、電力伝送効率が低下することを抑制または防止することができる。
【0049】
本実施形態の送電装置100によれば、第一送電器側コイル122は、磁性体を含む骨材を有する第一構造体61によって第二送電器側コイル112と対向する位置を覆われている。第二送電器側コイル112は、磁性体を含む骨材を有する第二構造体62によって第二送電器側コイル112と対向する位置を覆われている。磁性体を道路RSの構造体として用いることにより、道路RSの強度が低減することを抑制するとともに、各コイル間に磁性体を配置することにより、電磁界の相互作用の影響を低減し、電力伝送効率が低下することを抑制または防止することができる。
【0050】
B.第2実施形態:
図8および
図9を参照して、第2実施形態の送電装置100bの構成について説明する。第2実施形態の送電装置100bでは、コネクタの配置位置が異なる。第2実施形態の送電装置100bのその他の構成は、第1実施形態の送電装置100と同様である。
図8および
図9に示すように、道路RSの第二層L2には、配管WPと、さらに配管WP2との二つの配管が配置されている。
図8および
図9には、配管WP2の直上の領域AR2と、配管WP2の補修MT3とが模式的に示されている。
【0051】
電源側コネクタ130bは、
図8に示すように、道路RSに近接する側道SS、すなわち道路RS外の地中L3に埋設されている。電源側コネクタ130bは、ユニット構造体STの側面、すなわち第一層L1の側方に配置され、電源側コネクタ130bのコイル面は、道路RSと側道SSとの境界近傍に配置されている。
【0052】
送電器側コネクタ120bは、ユニット構造体STの外縁において、電源側コネクタ130bに対応する位置に配置されている。より具体的には、送電器側コネクタ120bは、ユニット構造体STの側面、すなわち側道SSと対向する面に配置されている。
【0053】
ユニット構造体STが道路RSに組み付けられると、送電器側コネクタ120bと電源側コネクタ130bとは、互いのコイルの軸心が一致する状態となる。送電器側コネクタ120bの第一送電器側コイル122は、電源側コネクタ130bの電源側コイル132と磁気結合し、電源側コネクタ130からの交流電力を非接触で受電する。
図9に示すように、ユニット構造体STが道路RSから取り外されると、送電器側コネクタ120bと電源側コネクタ130bとが離間して電磁気的に結合していない状態となる。
【0054】
本実施形態の送電装置100bによれば、電源側コネクタ130bは、第一層L1に近接する側道SSの地中L3に埋設されている。例えば、第二層L2に配置される複数の配管WP,WP2に対して補修MT2,MT3を行う場合など、第二層L2の掘削領域が大きい場合であっても、電源側コネクタ130bや電源ケーブルCBの移動や交換が行われることを低減または防止することができる。電源側コネクタ130bを送電回路140や外部電源150に近接する位置に配置することができ、電源ケーブルCBの長さを短縮することができる。
【0055】
C.第3実施形態:
図10および
図11を参照して、第3実施形態の送電装置100cの構成について説明する。第3実施形態の送電装置100cでは、コネクタの配置位置が異なる。より具体的には、電源側コネクタ130cおよび送電器側コネクタ120cは、
図10に示すように、送電器110cと同軸上に配置されている。第3実施形態の送電装置100cのその他の構成は、第1実施形態の送電装置100と同様である。
【0056】
図11に示すように、送電器110cの第二送電器側コイル112cと、送電器側コネクタ120cの第一送電器側コイル122cとは、巻き数が略均一となる一のコイルで形成されている。受電側コイル212、第二送電器側コイル112c、第一送電器側コイル122c、ならびに電源側コイル132の各軸心は互いに一致している。第二送電器側コイル112cと、第一送電器側コイル122cとのコイルの巻き方向は、互いに同一の方向である。第二送電器側コイル112cと、第一送電器側コイル122cとのコイルの巻き方向は、受電側コイル212および電源側コイル132の巻き方向に問わず、右巻きであってもよく、左巻きであってもよい。
【0057】
本実施形態の送電装置100cによれば、第一送電器側コイル122と、第二送電器側コイル112とは、一のコイルで形成されている。したがって、送電器110cと送電器側コネクタ120cとを小型化することができ、ユニット構造体STを小型化することができる。送電器110cから送電器側コネクタ120cまでを構成する部品点数を削減することができる。
【0058】
D.第4実施形態:
図12および
図13を参照して、第4実施形態の送電装置100dの構成について説明する。第4実施形態の送電装置100dでは、送電器側コネクタ120dおよび電源側コネクタ130dは、コンデンサC1に代えて浮遊容量による自己共振現象を利用したコイルを備えている。第4実施形態の送電装置100dのその他の構成は、第1実施形態の送電装置100と同様である。
【0059】
図12に示すように、送電器側コネクタ120dの第一送電器側コイル122dと、送電器110dの第二送電器側コイル112dとは、双方の端部を互いに電気的に接続するショート方式のコイルとして形成されている。第一送電器側コイル122dは、並列に接続される浮遊容量126dを発生させる程度に導体配線間の距離が小さく設定されている。第二送電器側コイル112dも同様に、並列に接続される浮遊容量116dを発生させる程度に導体配線間の距離が小さく設定されている。第一送電器側コイル122dと第二送電器側コイル112dとは、ショート方式のコイルに代えてオープン方式のコイルとして形成され、並列の浮遊容量に代えて、直列に接続される浮遊容量を発生させる程度に互いのコイル面を近接させてもよい。第一送電器側コイル122dと第二送電器側コイル112dとのうちいずれか一方のみのコイルが浮遊容量を有するように構成されてもよい。第一送電器側コイル122dと第二送電器側コイル112dとの間には、シールド50が備えられてもよい。
【0060】
送電器110dの第二送電器側コイル部11dは、第二送電器側コイル112dと、浮遊容量116dとによって規定される自己共振周波数を有する。第二送電器側コイル112dは、受電側コイル212と磁気共鳴するための共振コイルとして機能し、受電側コイル212と磁気結合されることにより、受電器210に交流電力を送電する。送電器側コネクタ120dの第一送電器側コイル部12dは、第一送電器側コイル122dと、浮遊容量126dとによって規定される自己共振周波数を有する。第一送電器側コイル122dは、電源側コイル132と磁気共鳴するための共振コイルとして機能し、電源側コイル132と磁気結合されることにより、電源側コイル132から交流電力を受電する。
【0061】
図13に示すように、第一送電器側コイル122dの導体配線間には樹脂材料129が充填され、第二送電器側コイル112dの導体配線間とには樹脂材料119が充填されている。樹脂材料119,129は、例えば、アスファルトコンクリート、セメントコンクリート、ならびに砕石といったユニット構造体STや第一層L1を構成する材料の誘電正接よりも小さい誘電正接を有する樹脂材料である。樹脂材料119,129としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の熱可塑系の樹脂材料を採用することができる。樹脂材料119,129の誘電正接としては、例えば0.001から0.02程度であることが好ましい。樹脂材料119,129には、ガラスクロスなどの補強材や、フィラーとしての粉末状のセラミックス材料が含まれてよい。樹脂材料119,129に代えて、誘電正接の小さいセラミックス材料が備えられてもよい。
【0062】
本実施形態の送電装置100dによれば、第一送電器側コイル122dは、自己共振周波数を形成するための浮遊容量116dを有し、第二送電器側コイル112dは、自己共振周波数を形成するための浮遊容量116dを有している。したがって、送電器110dと、送電器側コネクタ120dとの間のコンデンサを省略することができ、送電装置100dの部品点数を少なくすることができる。
【0063】
本実施形態の送電装置100dによれば、第一送電器側コイル122dと、第二送電器側コイル112dとの導体配線間に、第一層L1が有する材料の誘電正接よりも小さい誘電正接を有する樹脂材料119,129が充填されている。したがって、各コイルでの誘電損失を低減し、電力伝送効率を高くすることができる。また、各コイルの導体配線間に第一層L1が有する材料が侵入することを抑制または防止することができる。
【0064】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
20…車両、100,100b,100c,100d…送電装置、110,110c,110d…送電器、120,120b,120c,120d…送電器側コネクタ、130,130b,130c,130d…電源側コネクタ、150…外部電源、CB…電源ケーブル、L1…第一層、L2…第二層、L3…地中、RS…道路、SS…側道