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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20241029BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20241029BHJP
   G01S 7/4861 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L31/10 G
H01L31/10 B
G01S7/4861
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020117253
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014734
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義徳
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-016637(JP,A)
【文献】特開2014-081254(JP,A)
【文献】特開2012-068066(JP,A)
【文献】特開平05-129857(JP,A)
【文献】米国特許第09048370(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08-31/119
G01J 1/42-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記電磁波を所定の走査範囲に向けて反射する可動反射部と、
前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードと、
前記アバランシェダイオードを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記動作電圧に対する前記アバランシェダイオードの出力電圧の正規化された差分近似を取得して、前記差分近似から前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定し、
前記差分近似の一次導関数において、前記推定部が前記基準動作電圧として推定する動作電圧に対応する値は正であり、
前記アバランシェダイオードのアノードには、TIA回路が接続されている
センサ装置。
【請求項2】
請求項に記載のセンサ装置において、
前記可動反射部の走査線が、第1方向に蛇行しながら、前記第1方向に交わる第2方向に伸びており、
前記推定部は、前記可動反射部の走査線が、前記可動反射部によって生成される視野の前記第2方向における両外側の少なくとも一方を通過するタイミングで、前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、
センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及びセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR(Light Detection And Ranging)等のセンサ装置が開発されている。センサ装置は、赤外線等の電磁波を受信するアバランシェダイオードを備えている。
【0003】
特許文献1には、アバランシェダイオードの最適増倍率を得るための所定の電圧を設定することについて記載されている。ここでは、温度補償回路がアバランシェダイオードの降伏電圧の温度傾斜に当たる電圧を出力している。これによって、出力電圧の設定と温度補償とが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-303524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アバランシェダイオードを所望の増倍率で動作させるためには、アバランシェダイオードが当該所望の増倍率となる降伏電圧等の基準動作電圧を推定する必要がある。一方、特許文献1に記載されているように、アバランシェダイオードの降伏電圧の温度傾斜を用いて、温度補償を行う場合がある。しかしながら、この場合、アバランシェダイオードの基準動作電圧自体が推定されていない。このため、推定された基準動作電圧自体を用いて、アバランシェダイオードを所望の増倍率で動作させることができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、アバランシェダイオードを所望の増倍率で動作させることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
出射部から出射され、可動反射部によって所定の走査範囲に向けて反射され、前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記動作電圧に対する前記アバランシェダイオードの出力電圧の正規化された差分近似を取得して、前記差分近似から前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、制御装置である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、
電磁波を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記電磁波を所定の走査範囲に向けて反射する可動反射部と、
前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードと、
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備えるセンサ装置である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、
アバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記動作電圧に対する前記アバランシェダイオードの出力電圧の正規化された差分近似を取得して、前記差分近似から前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るセンサ装置を示す図である。
図2】推定部及び設定部の機能ブロック図である。
図3】アバランシェダイオード及び設定部の回路図である。
図4】変数xと、式(1)を簡易に示した式(2)によって示される関数f(x)と、の関係の光電流i依存性の一例を示すグラフである。
図5】変数xと、式(3)によって示される関数g(x)と、の関係の一例を示すグラフである。
図6】降伏電圧VBRに対する動作電圧VAPDの比と、増倍率Mと、の関係の一例を示すグラフである。
図7】アバランシェダイオードのアバランシェに起因したイベントの第1例を説明するためのグラフである。
図8】アバランシェダイオードのアバランシェに起因したイベントの第2例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係るセンサ装置10を示す図である。
【0013】
図1において、第1方向X及び第2方向Yは、互いに交差しており、具体的には直交している。図1において、第1方向Xは水平方向である。第1方向Xを示す矢印の方向である第1方向Xの正方向は、後述する可動反射部120から可動反射部120の走査範囲に向かって見て左方向である。第1方向Xを示す矢印の方向の反対方向である第1方向Xの負方向は、可動反射部120が位置する側から可動反射部120の走査範囲に向かって見て右方向である。第2方向Yは垂直方向である。第2方向Yを示す矢印の方向である第2方向Yの正方向は、上方向である。第2方向Yを示す矢印の方向の反対方向である第2方向Yの負方向は、下方向である。
【0014】
本明細書の説明から明らかなように、第1方向Xは水平方向と異なる方向であってもよく、第2方向Yは垂直方向と異なる方向であってもよい。
【0015】
センサ装置10は、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140及び制御装置20を備えている。制御装置20は、推定部210及び設定部220を有している。図1において、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140及び走査線Lにかけて延びる点線は、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140及び走査線Lに亘って伝搬する電磁波を示している。図1では、可動反射部120から走査線Lに向けて反射された電磁波は、走査線Lが形成される領域のおおよそ中央部に向けて照射されている。
【0016】
出射部110は、一定のタイミングの間隔でパルス状の赤外線等の電磁波を出射する。出射部110は、例えばレーザダイオード(LD)等、電流等の電気を光等の電磁波に変換可能な素子である。出射部110から出射された電磁波は、ビームスプリッタ140を透過して可動反射部120に入射する。
【0017】
可動反射部120は、出射部110から出射された電磁波を所定の走査範囲内に向けて反射する。可動反射部120の走査範囲は、可動反射部120によって反射された電磁波によって照射可能な範囲である。可動反射部120は、例えば、2軸MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。可動反射部120は、第1方向Xに沿って例えば正弦波状に駆動されており、第2方向Yに沿って例えば鋸歯状波状に第1方向Xに沿った正弦波より低い周波数で駆動されている。すなわち、第1方向Xは、可動反射部120の共振駆動の方向であり、第2方向Yは、可動反射部120の線型駆動の方向となっている。これにより、可動反射部120の走査線Lは、第1方向Xに蛇行しながら、第2方向Yに伸びている。
【0018】
出射部110から出射されて可動反射部120によって反射された電磁波の少なくとも一部分は、センサ装置10の外部に存在する物体等の対象物によって反射又は散乱される。この電磁波は、可動反射部120に戻り、可動反射部120による反射と、ビームスプリッタ140による反射と、を順に経て、アバランシェダイオード130によって受信される。アバランシェダイオード130は、APD(アバランシェフォトダイオード)等、光等の電磁波を電流等の電気に変換可能な素子である。
【0019】
制御装置20は、アバランシェダイオード130を制御している。具体的には、制御装置20は、アバランシェダイオード130のAGC(自動利得制御)を行っている。
【0020】
推定部210及び設定部220は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。推定部210及び設定部220は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0021】
推定部210は、アバランシェダイオード130が所定の増倍率となるアバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定する。基準動作電圧は、例えば、アバランシェダイオード130の降伏電圧である。なお、基準動作電圧は、アバランシェダイオード130の降伏電圧より低くてもよい。設定部220は、推定部210によって推定された基準動作電圧を用いてアバランシェダイオード130の増倍率を設定する。推定部210は、アバランシェダイオード130の動作電圧を掃引することで、アバランシェダイオード130の動作電圧に対するアバランシェダイオード130の出力電圧の正規化された差分近似を取得して、当該差分近似からアバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定する。
【0022】
差分近似を用いることで、差分近似を用いない場合と比較して、推定部210は、降伏電圧等の基準動作電圧を高速に推定することができる。また、差分近似を用いることで、差分近似を用いない場合と比較して、アバランシェダイオード130の電圧を高電圧まで上昇させる必要がない。アバランシェダイオード130の動作電圧を掃引する場合において、増倍率が高いほどアバランシェダイオード130には高電流が流れ、アバランシェダイオード130の温度が上昇する。アバランシェダイオード130の温度は、アバランシェダイオード130に電流が流れる時間が長くなるほど上昇する。そしてアバランシェダイオード130の温度が上昇するほど、アバランシェダイオード130の基準動作電圧が高くなる。本実施形態では、基準動作電圧を高速に推定することで、アバランシェダイオード130の基準動作電圧を正確に推定することができる。
【0023】
推定部210は、可動反射部120の走査線Lが、可動反射部120によって生成される視野Fの第2方向Yにおける両外側の少なくとも一方を通過するタイミングで、アバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定するようにすることができる。基準動作電圧の推定には一定の時間を要する。したがって、可動反射部120の走査範囲のうち比較的長期間である上記タイミングを用いることで、可動反射部120の走査範囲のうち他のタイミングを用いるよりも、基準動作電圧の推定が容易となる。しかしながら、推定部210は、上記タイミングと異なるタイミングで、アバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定してもよい。
【0024】
なお、視野Fは、例えば、可動反射部120によって生成されるFOV(Field Of View)である。
【0025】
センサ装置10は、制御装置20がアバランシェダイオード130のAGCを行った後、AGCが行われたアバランシェダイオード130を用いての出射部110の出力電磁波強度の調整と、AGCが行われたアバランシェダイオード130を用いての可動反射部120の振れ角の調整と、の少なくとも一方を行ってもよい。例えば、センサ装置10は、可動反射部120による走査の1フレーム内において、アバランシェダイオード130のAGCと、出射部110の出力電磁波強度の調整と、可動反射部120の振れ角の調整と、を行ってもよい。この例においては、例えば、アバランシェダイオード130のAGCは、可動反射部120によって生成される視野Fの第2方向Yにおける両外側の一方で行ってもよい。また、出射部110の出力電磁波強度の調整は、可動反射部120によって生成される視野Fの第1方向Xにおける両外側の一方で行なってもよい。さらに、可動反射部120の振れ角の調整は、可動反射部120によって生成される視野Fの第1方向Xにおける両外側の他方で行なってもよい。さらに、出射部110の出力電磁波強度の調整後、可動反射部120の振れ角の調整が行われるようにすることができる。この場合、可動反射部120の振れ角の調整後に出射部110の出力電磁波強度の調整が行われる場合と比較して、出射部110の出力電磁波強度が安定した状態で、可動反射部120の振れ角の調整を行うことができる。可動反射部120の振れ角の調整後に出射部110の出力電磁波強度の調整が行われてもよい。
【0026】
推定部210は、基準反射体300によって反射又は散乱された電磁波を用いてアバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定してもよい。この電磁波は、基準反射体300による反射又は散乱によって可動反射部120に向けて戻り、可動反射部120による反射と、ビームスプリッタ140による反射と、を順に経て、アバランシェダイオード130によって受信される。仮に、背景光を用いて基準動作電圧を推定する場合、背景光のみでは基準動作電圧を推定するために十分な量の光が得られないおそれがある。これに対して、基準反射体300によって反射又は散乱された電磁波を用いる場合、背景光を用いる場合と比較して、基準動作電圧を推定するために十分な量の光が得ることができる。なお、推定部210は、背景光を用いて基準動作電圧を推定してもよい。
【0027】
可動反射部120から基準反射体300までの距離は、可動反射部120から上記対象物までの距離より短くなっている。したがって、出射部110からの電磁波の出射から、基準反射体300による電磁波の反射を経て、アバランシェダイオード130による電磁波の受信までの時間は、出射部110からの電磁波の出射から、上記対象物による電磁波の反射を経て、アバランシェダイオード130による電磁波の受信までの時間より短くなる。このため、アバランシェダイオード130において発生する信号の時間差に基づいて、センサ装置10は、アバランシェダイオード130において発生した信号が、基準反射体300に起因する信号であるか、又は上記対象物に起因する信号であるかを区別することができる。
【0028】
基準反射体300は、センサ装置10に設けられていてもよい。すなわち、センサ装置10は、基準反射体300を備えていてもよい。或いは、基準反射体300は、センサ装置10の外部に設けられていてもよい。基準反射体300がセンサ装置10に設けられている場合、基準反射体300は、例えば、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140等センサ装置10を構成する部材を収容する筐体の窓部、すなわち、筐体の内部と外部との間で電磁波が透過する部分に設けることができる。しかしながら、基準反射体300が設けられる場所は、窓部に限定されない。
【0029】
図2は、推定部210及び設定部220の機能ブロック図である。
【0030】
図2に示すように、設定部220には、背景光Pが入力され、電圧Vが与えられている。背景光P及び電圧Vに応じて設定部220から出力電圧Voutが出力されている。推定部210は、設定部220から出力された出力電圧Voutを用いて、アバランシェダイオード130の降伏電圧VBRを推定している。設定部220は、推定部210によって推定された降伏電圧VBRを用いて、アバランシェダイオード130の増倍率を設定している。
【0031】
図3は、アバランシェダイオード130及び設定部220の回路図である。
【0032】
図3に示すように、設定部220は、TIA(transimpedance amplifier)回路となっている。アバランシェダイオード130のカソードには、抵抗値Rlimの抵抗を介して電圧Vが印加されている。アバランシェダイオード130のアノードは、非反転入力端子が接地されたオペアンプUの反転入力端子に接続されている。アバランシェダイオード130には、電流Ioutが流れている。アバランシェダイオード130の動作電圧VAPDは、V-Rlimoutとなる。オペアンプUの反転入力端子と出力端子との間には、抵抗値Rの抵抗が接続されている。オペアンプUの出力端子からは、抵抗値Rの抵抗を介して出力電圧Voutが出力されている。
【0033】
アバランシェダイオード130の出力電圧Voutは、以下の式(1)に示されるようになる。
【数1】
ただし、iは光電流を示す。
【0034】
図4は、変数xと、式(1)を簡易に示した式(2)によって示される関数f(x)と、の関係の光電流i依存性の一例を示すグラフである。図4では、光電流iにつき1.E+00、1.E+01、1.E+02、1.E+03及び1.E+04の関数f(x)が示されている。
【数2】
ただし、x=VAPD/VBRである。
【0035】
図5は、変数xと、式(3)によって示される関数g(x)と、の関係の一例を示すグラフである。
【0036】
光電流iによって変化する関数f(x)を規格化して、前進差分近似することで、以下の式(3)が得られる。
【数3】
【0037】
図5に示す例では、g(x)=1.E+00であり、かつg(x)の一次導関数が正となるxに対応する動作電圧VAPDを降伏電圧VBRとして推定することができる。なお、図5に示す例では、前進差分近似を用いているが、前進差分近似と異なる差分近似、例えば、後進差分近似又は中心差分近似を用いてもよい。
【0038】
図6は、降伏電圧VBRに対する動作電圧VAPDの比と、増倍率Mと、の関係の一例を示すグラフである。この関係は、アバランシェダイオード130の温度によらず一定となっている。
【0039】
図7は、アバランシェダイオード130のアバランシェに起因したイベントの第1例を説明するためのグラフである。図7において、グラフの横軸は時間を示している。また、グラフの縦軸はアバランシェダイオード130に発生する信号の強度を示している。
【0040】
アバランシェに起因したイベントは、アバランシェダイオード130の増倍率が高い、すなわちアバランシェダイオード130の動作電圧が高いとき、出現する。図7に示す例では、DC(直流)成分がほとんど存在しない状況において、4つのアバランシェに起因したイベントが発生している。
【0041】
推定部210は、アバランシェに起因したイベントを監視して降伏電圧等の基準動作電圧を推定してもよい。具体的には、推定部210は、アバランシェに起因したイベントのカウンティングによって基準動作電圧を推定することができる。
【0042】
図8は、アバランシェダイオード130のアバランシェに起因したイベントの第2例を説明するためのグラフである。図8に示す例は、以下の点を除いて、図7に示す例と同様である。
【0043】
図8に示すように、DC成分が存在する状況においても、アバランシェに起因したイベントによるピークが発生する。この場合においても、推定部210は、アバランシェに起因したイベントを監視して基準動作電圧を推定してもよい。アバランシェに起因したイベントと、基準動作電圧と、の間には、相関がある。具体的には、アバランシェに起因したイベントが多くなるほど、基準動作電圧が高くなる。
【0044】
以上、図面を参照して実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0045】
例えば、実施形態では、センサ装置10は、LiDARとなっている。すなわち、アバランシェダイオード130は、出射部110から出射され、可動反射部120によって所定の走査範囲に向けて反射され、走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信している。しかしながら、制御装置20は、LiDAR以外に用いられるアバランシェダイオードを制御してもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 出射部から出射され、可動反射部によって所定の走査範囲に向けて反射され、前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記動作電圧に対する前記アバランシェダイオードの出力電圧の正規化された差分近似を取得して、前記差分近似から前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、制御装置。
2. 1.に記載の制御装置において、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードのアバランシェに起因したイベントを監視して前記基準動作電圧を推定する、制御装置。
3. 1.又は2.に記載の制御装置において、
前記可動反射部の走査線が、第1方向に蛇行しながら、前記第1方向に交わる第2方向に伸びており、
前記推定部は、前記可動反射部の走査線が、前記可動反射部によって生成される視野の前記第2方向における両外側の少なくとも一方を通過するタイミングで、前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、制御装置。
4. 電磁波を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記電磁波を所定の走査範囲に向けて反射する可動反射部と、
前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードと、
1.~3.のいずれか一つに記載の制御装置と、
を備えるセンサ装置。
5. アバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記動作電圧に対する前記アバランシェダイオードの出力電圧の正規化された差分近似を取得して、前記差分近似から前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、制御装置。
【符号の説明】
【0046】
10 センサ装置
20 制御装置
110 出射部
120 可動反射部
130 アバランシェダイオード
140 ビームスプリッタ
210 推定部
220 設定部
300 基準反射体
F 視野
L 走査線
X 第1方向
Y 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8