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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/176 20060101AFI20241029BHJP
   B62L 3/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B60T8/176 Z
B62L3/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020194674
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083309
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中倉 正裕
(72)【発明者】
【氏名】道川 慧太
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127141(JP,A)
【文献】特開2019-077241(JP,A)
【文献】特開2020-001497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/176
B62L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、ブレーキ装置、および、前記ブレーキ装置によるブレーキ力を制御可能に構成され、ABSの機能を有するブレーキ制御装置、を含み、
前記人力駆動車の車重、および、前記人力駆動車の搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ブレーキ力が減少するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御し、
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ力の減少量を変更するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御し、
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが大きくなるにつれて前記減少量が大きくなるように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ブレーキ力が減少および回復を繰り返すように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御し、
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ力の減少および回復の所定時間あたりの繰り返し頻度を変更するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して前記繰り返し頻度を変更するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、ブレーキ装置、および、前記ブレーキ装置によるブレーキ力を制御可能に構成され、ABSの機能を有するブレーキ制御装置、を含み、
前記人力駆動車の車重、および、前記人力駆動車の搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ブレーキ力が減少および回復を繰り返すように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御し、
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ力の減少および回復の所定時間あたりの繰り返し頻度を変更するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御し、
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが大きくなるにつれて前記繰り返し頻度が多くなるように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ブレーキ力が減少するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御し、
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ力の減少量を変更するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して前記減少量を変更するように前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記人力駆動車の車輪の状態および前記ブレーキ装置の操作状態の少なくとも1つに応じて前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記ブレーキ装置は、流体圧力によって前記ブレーキ力を発生させ、
前記ブレーキ制御装置は、前記流体圧力を変更する電動アクチュエータを含み、
前記制御部は、前記電動アクチュエータを制御する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つを検出する検出部の出力に応じて前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つを記憶部から読み出して前記ブレーキ制御装置の前記ABSの作動を制御する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つは外部端末から前記記憶部に入力される、請求項10に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、人力駆動車用のブレーキ制御装置を開示する。特許文献1の人力駆動車用のブレーキ制御装置は、人力駆動車用のブレーキ装置によるブレーキ力を制御可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/155371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、ブレーキ制御装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置である。前記人力駆動車は、ブレーキ装置、および、前記ブレーキ装置によるブレーキ力を制御可能に構成されるブレーキ制御装置、を含む。前記制御装置は、前記人力駆動車の車重、および、前記人力駆動車の搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ制御装置を制御する制御部を備える。
上記第1側面の制御装置によれば、人力駆動車の車重、および、人力駆動車の搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいてブレーキ制御装置を好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記ブレーキ力が減少するように前記ブレーキ制御装置を制御し、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて前記ブレーキ力の減少量を変更するように前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第2側面の制御装置によれば、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいてブレーキ力を好適に減少できる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが第1所定値以上の場合、前記減少量が第1減少量になるように前記ブレーキ制御装置を制御し、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが第1所定値よりも小さい場合、前記減少量が前記第1減少量よりも小さい第2減少量になるように前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第3側面の制御装置によれば、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが第1所定値よりも小さい場合、ブレーキ力の低下を抑制できる。このため、人力駆動車を好適に制動できる。
【0008】
前記第2または第3側面に従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して前記減少量を変更するように前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第4側面の制御装置によれば、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して減少量を好適に変更できる。
【0009】
前記第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記ブレーキ力が減少および回復を繰り返すように前記ブレーキ制御装置を制御し、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに応じて、前記ブレーキ制御装置の制御における前記ブレーキ力の減少および回復の所定時間あたりの繰り返し頻度を変更する。
上記第5側面の制御装置によれば、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに基づいて繰り返し頻度を好適に変更できる。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが第2所定値以上の場合、第1繰り返し頻度で前記ブレーキ力が減少および回復するように前記ブレーキ制御装置を制御し、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つが第2所定値よりも小さい場合、前記第1繰り返し頻度よりも少ない第2繰り返し頻度で前記ブレーキ力が減少および回復するように前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第6側面の制御装置によれば、人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つが第2所定値よりも小さい場合、ブレーキ力の低下を抑制できる。このため、人力駆動車を好適に制動できる。
【0011】
前記第5または第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して前記繰り返し頻度を変更するように前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第7側面の制御装置によれば、人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つに比例して繰り返し頻度を好適に変更できる。
【0012】
前記第2から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車輪の状態および前記ブレーキ装置の操作状態の少なくとも1つに応じて前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第8側面の制御装置によれば、車輪の状態およびブレーキ装置の操作状態の少なくとも1つに応じてブレーキ制御装置を好適に制御できる。
【0013】
前記第1から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記ブレーキ装置は、流体圧力によって前記ブレーキ力を発生させ、前記ブレーキ制御装置は、前記流体圧力を変更する電動アクチュエータを含み、前記制御部は、前記電動アクチュエータを制御する。
上記第9側面の制御装置によれば、電動アクチュエータによって流体圧力を変更することによって、ブレーキ力を好適に変更できる。
【0014】
前記第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つを検出する検出部の出力に応じて前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第10側面の制御装置によれば、検出部によって、現在の人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つを精度よく検出できる。
【0015】
前記第1から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つを記憶部から読み出して前記ブレーキ制御装置を制御する。
上記第11側面の制御装置によれば、記憶部によって記憶される人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つに応じて、ブレーキ制御装置を制御できる。このため、人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つを検出する検出部の出力を用いて人力駆動車の車重および搭乗者の重量を演算する処理を省略できる。また、人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つを検出する検出部を省略できる。
【0016】
前記第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記人力駆動車の車重および前記搭乗者の重量の少なくとも1つは外部端末から前記記憶部に入力される。
上記第12側面の制御装置によれば、外部端末を用いて人力駆動車の車重および搭乗者の重量の少なくとも1つを記憶部に格納できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、ブレーキ制御装置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
図2】ブレーキ装置の構成を示す模式図。
図3図2の人力駆動車用のブレーキ制御装置の構成を示す模式図。
図4】人力駆動車用の制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
図5図4の記憶部に記憶される総重量と減少量との関係を示すマップ。
図6図4の記憶部に記憶される総重量と繰り返し頻度との関係を示すマップ。
図7図4の制御部によって実行され、ブレーキ制御装置を制御する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
図1から図7を参照して、実施形態の人力駆動車用の制御装置60について説明する。制御装置60は、人力駆動車10の任意の場所に設けられる。本実施形態では、制御装置60は、ブレーキ制御装置40の本体40Aに設けられる(図2および図3参照)。図1に示すように、人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪20を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪20の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪20を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0020】
人力駆動車10は、ステム12、ステム12に連結されるハンドルバー14、および、ステム12に連結されるフロントフォーク16、および、フロントフォーク16に連結されるフレーム18を有する。フロントフォーク16は、フレーム18のヘッドチューブに回転可能に取り付けられる。車輪20は、前輪20Aと、後輪20Bとを含む。本実施形態では、人力駆動車10は、フロントフォーク16に取付けられる車輪20(前輪20A)を有する。
【0021】
本明細書において、以下の方向を示す用語「前(フロント)」、「後ろ(リア)」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「横」、「上方」、および、「下方」、並びに任意の他の類似の方向を示す用語は、人力駆動車10の基準位置(例えば、サドルまたはシート上)においてハンドルバー14を向いた搭乗者を基準に決定されるそれらの方向を指す。また、本明細書において、搭乗者は、人力駆動車の運転者、および人力駆動車の運転には関与しない同乗者を含む。人力駆動車が自転車の場合、搭乗者はライダである。人力駆動車が一人乗りの自転車の場合、搭乗者は運転者かつライダである。以下、実施形態において、搭乗者を、ライダとして説明する。
【0022】
人力駆動車10は、ブレーキ装置30、および、ブレーキ制御装置40を含む。ブレーキ装置30は、ブレーキ操作装置32、ブレーキ作動装置34、および、接続部材36を含む。ブレーキ装置30は、車輪20に制動力を付与する。ブレーキ操作装置32は、ブレーキ作動装置34を操作するために、ブレーキ作動装置34に接続される。ブレーキ作動装置34は、前輪20Aに制動力を付与する。ブレーキ装置30は、後輪20Bに制動力を付与するものであってもよい。接続部材36は、ブレーキ制御装置40の本体40A(後述)を介してブレーキ操作装置32とブレーキ作動装置34とを接続する。
【0023】
図2に示すように、ブレーキ操作装置32は、例えば、ハンドルバー14に設けられる。ブレーキ作動装置34は、ディスクブレーキシステムであってもよく、リムブレーキシステムであってもよく、ローラブレーキシステムであってもよい。本実施形態では、ブレーキ装置30はディスクブレーキシステムであり、ブレーキ作動装置34は、ディスクブレーキキャリパである。ブレーキ作動装置34は、車輪20(ここでは前輪20A)に設けられるディスクブレーキロータを制動するように構成される。好ましくは、ブレーキ装置30は、流体圧力によってブレーキ力を発生させる。流体は、例えば作動油である。接続部材36の内部には流体が充填される。接続部材36は、ブレーキホースである。
【0024】
ブレーキ操作装置32は、ブレーキ操作装置32への操作に伴う流体の移動によってブレーキ作動装置34を作動させる。ブレーキ作動装置34は、ブレーキ操作装置32の操作量に応じて作動する。ブレーキ操作装置32の操作量が大きくなるほど、ブレーキ作動装置34によるブレーキ力が大きくなる。
【0025】
図3および図4に示すように、人力駆動車10は、ブレーキ装置30によるブレーキ力を制御可能に構成されるブレーキ制御装置40を含む。ブレーキ制御装置40は、ブレーキ操作装置32の操作量とブレーキ力との関係を変更可能に構成される。ブレーキ制御装置40は、本体40Aを備える。本体40Aは、例えば、フレーム18に設けられる。本実施形態では、本体40Aは、フレーム18の内部に設けられる。本体40Aは、フレーム18の外面に取り付けられてもよい。本体40Aは、ステム12、ハンドルバー14、または、フロントフォーク16に設けられてもよい。
【0026】
図3に示すように、本体40Aは、圧力制御部46と、圧力制御部46を駆動する駆動部48と、を含む。圧力制御部46は、ブレーキ操作装置32とブレーキ作動装置34との間の流体の圧力を制御する。好ましくは、圧力制御部46は、本体40Aの流体室に設けられるバルブ46Aを含む。駆動部48は、電動アクチュエータ48Aを含む。つまり、ブレーキ制御装置40は、電動アクチュエータ48Aを含む。電動アクチュエータ48Aは、バルブ46Aを駆動する。電動アクチュエータ48Aは、例えば、電気モータである。電動アクチュエータ48Aは、ソレノイドであってもよい。電動アクチュエータ48Aは、流体圧力を変更するように構成される。駆動部48は、電動アクチュエータ48Aの回転体の回転運動を直線運動に変換して圧力制御部46に伝える変換機構、および、電動アクチュエータ48Aの回転体の回転運動を変速して変換機構に伝える伝達機構(変速機構)を含む。
【0027】
接続部材36は、第1接続部材36A、および、第2接続部材36Bを含む。本体40Aは、第1接続部材36Aを介してブレーキ操作装置32に接続される第1ポート50と、第2接続部材36Bを介してブレーキ作動装置34に接続される第2ポート52と、を有する。バルブ46Aは、第1ポート50と第2ポート52との間における流体の流通状態を変更する。駆動部48の電動アクチュエータ48Aは、バルブ46Aを駆動するように構成される。駆動部48は、電動アクチュエータ48Aに電力を供給する電源に電気的に接続される。好ましくは、電源は、人力駆動車10の推進をアシストするアシストモータと電気的に接続されるバッテリ(2次電池)22(図1参照)である。バッテリ22とは別に、ブレーキ制御装置40専用の電源を準備してもよい。アシストモータは、クランク軸に設けられてもよく、車輪20に設けられるハブモータであってもよい。
【0028】
図4に示すように、制御装置60は、制御部62を備える。制御部62は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部62は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部62は、全体がブレーキ制御装置40の本体40Aに設けられてもよく、少なくとも一部がブレーキ制御装置40の本体40Aに設けられてもよく、全体がブレーキ制御装置40の外部に設けられていてもよい。制御装置60は、全体がブレーキ制御装置40の本体40Aに設けられてもよく、少なくとも一部がブレーキ制御装置40の本体40Aに設けられてもよく、全体がブレーキ制御装置40の外部に設けられていてもよい。
【0029】
好ましくは、制御装置60は、記憶部64を含む。記憶部64には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部64は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0030】
制御部62は、電動アクチュエータ48Aを制御する。好ましくは、制御部62は、人力駆動車10の車輪20の状態およびブレーキ装置30の操作状態の少なくとも1つに応じてブレーキ制御装置40を制御する。人力駆動車10の車輪20の状態は、例えば、前輪20Aの回転速度と後輪20Bの回転速度との差、および、車体速度と車輪20の回転速度によって算出される車速との差の少なくとも1つを含む。ブレーキ装置30の操作状態は、例えば、ブレーキ操作装置32のレバーの操作量および操作速度の少なくとも1つを含む。ブレーキ作動装置34のディスクブレーキパッドの作動量および作動速度をブレーキ装置30の操作状態(作動状態)とみなしてもよい。好ましくは、制御部62は、人力駆動車10の車輪20の状態およびブレーキ装置30の操作状態の少なくとも1つが、車輪20(ここでは前輪20A)のスリップまたはロックが予測される状態の場合に、電動アクチュエータ48Aを駆動する。ブレーキ制御装置40は、ABS(Anti-lock Braking System)の機能を有する。
【0031】
好ましくは、制御部62は、ブレーキ装置30によるブレーキ力が減少するようにブレーキ制御装置40を制御する。好ましくは、制御部62は、ブレーキ装置30によるブレーキ力が減少および回復を繰り返すようにブレーキ制御装置40を制御する。ABSが作動する場合、電動アクチュエータ48Aがバルブ46Aを移動させる。これに伴って、第1ポート50と第2ポート52との間の流路が遮断されるとともに、圧力制御部46においてバルブ46Aよりも第2ポート52側の流路の容積が増加する。その結果、ブレーキ作動装置34における流体圧が低下することによってブレーキ力が減少し、車輪20(ここでは前輪20A)のスリップまたはロックが抑制される。続いて、第1ポート50と第2ポート52との間の流路を接続するように、電動アクチュエータ48Aがバルブ46Aを移動させる。これに伴って、ブレーキ操作装置32への操作が継続されていればブレーキ作動装置34に再び作動油が供給され、ブレーキ力が回復する。このような減圧機構(ABS機構)としては、種々の構成が考えられる。ブレーキ制御装置40には、任意の減圧機構を採用できる。
【0032】
制御部62は、例えば、作動条件が満たされる場合、電動アクチュエータ48Aを駆動する。作動条件は、例えば、前輪20Aの回転速度と後輪20Bの回転速度との差が所定回転速度以上の場合、車体速度と車輪20の回転速度によって算出される車速と差が所定速度以上の場合、および、ブレーキ操作装置32の所定時間あたりの操作量が所定操作量以上の場合、の少なくとも1つにおいて、満たされる。
【0033】
好ましくは、人力駆動車10は、車輪状態検出部54を備える。作動条件が、前輪20Aの回転速度と後輪20Bの回転速度との差が所定回転速度以上である場合、車輪状態検出部54は、前輪20Aの回転速度を検出する第1車速センサ54Aおよび後輪20Bの回転速度を検出する第2車速センサ54Bを含む。作動条件が、車体速度と車輪20の回転速度によって算出される車速との差が所定速度以上である場合、車輪状態検出部54は、第1車速センサ54Aおよび第2車速センサ54Bの一方と、人力駆動車10の車体速度を検出する車体速度センサ54Cと、を含む。車体速度センサ54Cは、任意の構成を採用できる。車体速度センサ54Cは、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて車体速度を取得するように構成されてもよいし、加速度を積算することによって車体速度を演算するように構成されてもよい。作動条件が、ブレーキ操作装置32の所定時間あたりの操作量が所定操作量以上である場合、車輪状態検出部54は、ブレーキ操作装置32の操作状態を検出する操作状態センサ54Dを含む。
【0034】
制御部62は、人力駆動車10の車重W1、および、人力駆動車10のライダの重量W2の少なくとも1つに基づいてブレーキ制御装置40を制御する。好ましくは、制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つを検出する検出部56の出力に応じてブレーキ制御装置40を制御する。制御部62は、例えば、車重W1および重量W2の両方を含む総重量W3に応じてブレーキ制御装置40を制御する。車重W1は、人力駆動車10単体の重量であってもよいし、人力駆動車10の重量と、ライダを除く人力駆動車10への積載物の重量と、を合わせた重量であってもよい。重量W2は、ライダの体重であってもよいし、ライダの体重と、衣類などライダの身に着けられる物品の重量とを合わせた重量であってもよい。
【0035】
検出部56は、例えば、人力駆動車10がサスペンション装置を含む場合、サスペンション装置の状態量を検出するサスペンション状態センサを含む。サスペンション装置の状態量は、例えば、人力駆動車10が静止している状態におけるサスペンション装置の沈み込み長さである。制御部62は、サスペンション装置の状態量と、記憶部64に予め記憶される重量情報と、に応じて車重W1および重量W2の少なくとも1つを演算する。重量情報は、例えば、サスペンション装置の状態量と車重W1および重量W2の少なくとも1つとの関係を示すマップ、テーブル、および、演算式の少なくとも1つを含む。
【0036】
検出部56は、例えば、人力駆動力検出部および加速度センサを含む。人力駆動力検出部は、人力駆動車10に入力される人力駆動力に応じた信号を出力する。人力駆動力検出部は、ペダルに設けられるパワーメータであってもよく、クランクアームに設けられる歪みセンサであってもよく、クランク軸に設けられるトルクセンサであってもよい。加速度センサは、人力駆動車10の加速度に応じた信号を出力する。制御部62は、人力駆動力と、人力駆動車10の加速度と、記憶部64に予め記憶される重量情報と、に応じて車重W1および重量W2の少なくとも1つを演算する。重量情報は、例えば、人力駆動力と、人力駆動車10の加速度と、車重W1および重量W2の少なくとも1つとの関係を示すマップ、テーブル、および、演算式の少なくとも1つを含む。
【0037】
検出部56は、例えば、操作状態センサ54Dおよび加速度センサを含む。加速度センサは、人力駆動車10の減速度に応じた信号を出力する。制御部62は、ブレーキ操作装置32の操作量と、人力駆動車10の減速度と、記憶部64に予め記憶される重量情報と、に応じて車重W1および重量W2の少なくとも1つを演算する。重量情報は、例えば、ブレーキ操作装置32の操作量と、人力駆動車10の減速度と、車重W1および重量W2の少なくとも1つとの関係を示すマップ、テーブル、および、演算式の少なくとも1つを含む。
【0038】
検出部56は、例えば、荷重センサを含む。荷重センサは、例えば、人力駆動車10のサドルまたは車軸に設けられる。荷重センサは、サドルに設けられる場合、ライダの重量W2に応じた信号を出力する。荷重センサは、車軸に設けられる場合、ライダの重量W2および人力駆動車10のうちの車輪20以外の部分の車重に応じた信号を出力する。制御部62は、荷重センサによって検出された車重に、予め記憶部64に記憶される車輪20の重量を加算して車重W1を演算するようにしてもよい。
【0039】
検出部56は、例えば、歪みセンサを含む。歪みセンサは、例えば、フレーム18に設けられる。歪みセンサは、フレーム18の歪みに応じた信号を出力する。制御部62は、フレーム18の歪み量と、記憶部64に予め記憶される重量情報と、に応じて車重W1および重量W2の少なくとも1つを演算する。重量情報は、例えば、歪み量と車重W1および重量W2の少なくとも1つとの関係を示すマップ、テーブル、および、演算式の少なくとも1つを含む。
【0040】
制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに基づいてブレーキ力の減少量DBを変更するようにブレーキ制御装置40を制御する。好ましくは、制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つが第1所定値WX以上の場合、減少量DBが第1減少量DB1になるようにブレーキ制御装置40を制御する。制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つが第1所定値WXよりも小さい場合、減少量DBが第1減少量DB1よりも小さい第2減少量DB2になるようにブレーキ制御装置40を制御する。例えば、制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに比例してブレーキ制御装置40の制御における減少量DBを変更する。制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つが大きくなるにつれて、減少量DBが大きくなるようにブレーキ制御装置40を制御する。制御部62は、例えば、総重量W3が大きくなるにつれて、減少量DBが大きくなるようにブレーキ制御装置40を制御する。本実施形態では、バルブ46Aの移動量が減少量DBに対応する。
【0041】
図5の実線L11に示されるように、制御部62は、総重量W3が大きくなるにつれて減少量DBが直線的(一次関数的)に大きくなるようにブレーキ制御装置40を制御してもよい。図5の実線L12に示されるように、制御部62は、総重量W3が大きくなるにつれて減少量DBが段階的に大きくなるようにブレーキ制御装置40を制御してもよい。総重量W3に対する減少量DBの変化態様は任意に設定できる。例えば、減少量DBの変化態様は曲線的(二次関数的)であってもよい。
【0042】
好ましくは、制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに応じて、ブレーキ力の減少および回復の所定時間あたりの繰り返し頻度Fを変更するようにブレーキ制御装置40を制御する。制御部62は、例えば、バルブ46Aが第1方向に移動してから第2方向に移動するまでの期間、および、第2方向に移動してから第1方向に移動するまでの期間を短くすることによって、所定時間あたりの繰り返し頻度Fを多くする。第1方向および第2方向の一方は、ブレーキ力の減少と対応するバルブ46Aの移動方向である。
【0043】
制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つが第2所定値WY以上の場合、第1繰り返し頻度F1でブレーキ力が減少および回復するようにブレーキ制御装置40を制御する。制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つが第2所定値WYよりも小さい場合、第1繰り返し頻度F1よりも少ない第2繰り返し頻度F2でブレーキ力が減少および回復するようにブレーキ制御装置40を制御する。これによってそれぞれの場合において、減少量DBを異ならせることができる。
【0044】
制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに比例して繰り返し頻度を変更する。制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つが大きくなるにつれて、繰り返し頻度Fを多くする。制御部62は、例えば、総重量W3が大きくなるにつれて、繰り返し頻度Fを多くする。図6の実線L21に示されるように、制御部62は、例えば、総重量W3が大きくなるにつれて、繰り返し頻度Fを段階的に多くする。
【0045】
図7を参照して、制御部62によるブレーキ制御装置40の制御処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、図7に示す制御処理を開始してステップS11に移行する。制御部62は、予め定める周期で図7に示す制御処理を繰り返す。
【0046】
制御部62は、ステップS11において、作動条件が満たされるか否かを判定する。制御部62は、作動条件が満たされない場合、処理を終了する。制御部62は、作動条件が満たされる場合、ステップS12に移行する。
【0047】
制御部62は、ステップS12において、車重W1および重量W2の少なくとも1つに応じて減少量DBおよび繰り返し頻度Fを設定し、ステップS13に移行する。制御部62は、例えば、図5のマップおよび図6のマップに応じて減少量DBおよび繰り返し頻度Fを設定する。
【0048】
制御部62は、ステップS14において、作動終了条件が満たされるか否かを判定する。制御部62は、例えば、ステップS11において、作動条件が満たされると判定してからの経過期間が所定経過期間以上の場合、作動終了条件が満たされると判定する。制御部62は、例えば、作動条件が満たされなくなった場合、作動終了条件が満たされると判定する。制御部62は、作動終了条件が満たされない場合、ステップS12に移行する。制御部62は、作動終了条件が満たされる場合、処理を終了する。
【0049】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
・制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つを記憶部64から読み出してブレーキ制御装置40を制御してもよい。この場合、好ましくは、車重W1および重量W2の少なくとも1つは外部端末から記憶部64(図4参照)に入力される。外部端末は、例えば、サイクルコンピュータ、スマートフォン、および、パーソナルコンピュータの少なくとも1つを含む。
【0051】
・制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに応じて、減少量DBおよび繰り返し頻度F1の一方のみを変更するようにしてもよい。制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに応じて繰り返し頻度Fのみを変更する場合、減少量DBは、車重W1および重量W2に関わらず、一定値としてもよい。制御部62は、車重W1および重量W2の少なくとも1つに応じて減少量DBのみを変更する場合、繰り返し頻度Fは、車重W1および重量W2に関わらず、一定の繰り返し頻度Fとしてもよい。
【0052】
・ブレーキ制御装置40は、電動アクチュエータ48Aに代えてまたは加えて、ポンプを備えていてもよい。
【0053】
・ブレーキ制御装置40は、前輪20Aにブレーキ力を付与するブレーキ装置30を制御する第1ブレーキ制御装置と、後輪20Bにブレーキ力を付与するブレーキ装置30を制御する第2ブレーキ制御装置とを含んでいてもよい。この場合、制御部62は、第1ブレーキ制御装置による減少量DBおよび繰り返し頻度Fと、第2ブレーキ制御装置による減少量DBおよび繰り返し頻度Fと、を異ならせてもよい。
【0054】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0055】
10…人力駆動車、20…車輪、30…ブレーキ装置、40…ブレーキ制御装置、48A…電動アクチュエータ、56…検出部、60…制御装置、62…制御部、64…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7