(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241029BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B62D6/00
A01B69/00 303M
A01B69/00 303Z
(21)【出願番号】P 2021018639
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162518(JP,A)
【文献】特開2018-183130(JP,A)
【文献】特開2021-010370(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054057(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0300052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪を有する走行機体と、
ステアリングハンドルの操作に応じて前記前輪を操舵する操舵機構と、
前記操舵機構を所定の操舵中立位置を基準とした操舵角で操作する自動操舵装置と、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御と、前記自動操舵装置の操舵中立位置を較正するキャリブレーション制御とが実行可能に構成され、
前記キャリブレーション制御の実行を操作する操作具を設け、
前記制御部は、前記操作具によって前記キャリブレーション制御が実行されると、前記自動操舵装置を用いて前記走行機体を左右旋回することによって、前記自動操舵装置の操舵中立位置を算出して記憶するように構成された
作業車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記自動操舵装置によって最大操舵角より小さい操舵角で前記走行機体の左右旋回を行うことによって旋回半径をそれぞれ検出し、検出された左右の旋回半径の差から前記操舵中立位置の較正を行うように構成された
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行機体に関する情報を取得する慣性計測装置を設け、
前記制御部は、前記慣性計測装置によって検出された前記走行機体の傾斜に基づいて、前記キャリブレーション制御により算出された前記操舵中立位置を補正するように構成された
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前輪及び後輪を有する走行機体と、
ステアリングハンドルの操作に応じて前記前輪を操舵する操舵機構と、
前記操舵機構を操作する自動操舵装置と、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、
前記走行機体の車速を検出する車速センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御と、前記走行機体に固定された前記位置情報取得ユニットの基準位置を較正するキャリブレーション制御とが実行可能に構成され、
前記キャリブレーション制御の実行を操作する操作具を設け、
前記
制御部は、前記操作具によって前記キャリブレーション制御が実行されると、前記自動操舵装置を用いて前記走行機体を左右
夫々に旋回することによって検出された
左旋回時及び右旋回時の夫々の旋回
半径の差と
左旋回時及び右旋回時の夫々の旋回速度
の差とから前記基準位置を算出して記憶するように構成された
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪及び後輪を有する走行機体と、ステアリングハンドルの操作に応じて前記前輪を操舵する操舵機構と、前記操舵機構を操作する自動操舵装置と、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御が実行可能に構成された制御部とを備え、前記自動操舵制御の実行中に、設定走行ラインと自動操舵によって走行している前記走行機体の位置との間に偏差が生じている場合に、前記走行機体の走行位置を補正する操作具が設けられた特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の作業車両によれば、自動操舵制御による自動走行の実行中に前記走行機体の走行位置を設定走行ラインに向けて補正できるものであるが、オペレータが設定走行ライン上を走行しているか否かを確認しながら前記操作具を手動で操作する必要があるため、手間と時間が掛かるものであった。また、前記制御部は、前記操舵機構を操作する前記自動操舵装置の操舵中立位置や、位置情報取得ユニットの基準位置の較正を行うことによっても、前記自動操舵制御による自動走行の精度を高く保つことができるが、前記自動操舵装置の操舵中立位置等の算出や較正にも、手間と時間が掛かるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御が実行可能に構成された制御部を備えた作業車両において、前記自動操舵装置を較正するキャリブレーション制御をスムーズ且つ容易に行うことができる作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、前輪及び後輪を有する走行機体と、ステアリングハンドルの操作に応じて前記前輪を操舵する操舵機構と、前記操舵機構を所定の操舵中立位置を基準とした操舵角で操作する自動操舵装置と、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、制御部とを備え、前記制御部は、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御と、前記自動操舵装置の操舵中立位置を較正するキャリブレーション制御とが実行可能に構成され、前記キャリブレーション制御の実行を操作する操作具を設け、前記制御部は、前記操作具によって前記キャリブレーション制御が実行されると、前記自動操舵装置を用いて前記走行機体を左右旋回することによって、前記自動操舵装置の操舵中立位置を算出して記憶するように構成されたことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記制御部は、前記自動操舵装置によって最大操舵角より小さい操舵角で前記走行機体の左右旋回を行うことによって旋回半径をそれぞれ検出し、検出された左右の旋回半径の差から前記操舵中立位置の較正を行うように構成されたことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記走行機体に関する情報を取得する慣性計測装置を設け、前記制御部は、前記慣性計測装置によって検出された前記走行機体の傾斜に基づいて、前記キャリブレーション制御により算出された前記操舵中立位置を補正するように構成されたことを特徴としている。
【0009】
第4に、前輪及び後輪を有する走行機体と、ステアリングハンドルの操作に応じて前記前輪を操舵する操舵機構と、前記操舵機構を操作する自動操舵装置と、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、前記走行機体の車速を検出する車速センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御と、前記走行機体に固定された前記位置情報取得ユニットの基準位置を較正するキャリブレーション制御とが実行可能に構成され、前記キャリブレーション制御の実行を操作する操作具を設け、前記制御部は、前記操作具によって前記キャリブレーション制御が実行されると、前記自動操舵装置を用いて前記走行機体を左右夫々に旋回することによって検出された左旋回時及び右旋回時の夫々の旋回半径の差と左旋回時及び右旋回時の夫々の旋回速度の差とから前記基準位置を算出して記憶するように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
前記制御部によるキャリブレーション制御は、前記自動操舵装置を用いて前記走行機体を左右旋回することによって、前記自動操舵装置の操舵中立位置を算出して記憶するように構成されたことにより、前記自動操舵装置の操舵中立位置の算出を簡易な操作で確実且つ短時間に行うことができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記自動操舵装置によって最大操舵角より小さい操舵角で前記走行機体の左右旋回を行うことによって旋回半径をそれぞれ検出し、検出された左右の旋回半径の差から前記操舵中立位置の較正を行うように構成されたものによれば、前記操舵中立位置の較正を短い時間で精度良く行うことができる。
【0012】
また、前記走行機体に関する情報を取得する慣性計測装置を設け、前記制御部は、前記慣性計測装置によって検出された前記走行機体の傾斜に基づいて、前記走行機体が前記キャリブレーション制御により算出された前記操舵中立位置を補正するように構成されたのによれば、前記キャリブレーション制御を実行した際に前記走行機体が傾斜していた場合であっても、前記操舵中立位置を補正することができるため、前記操舵中立位置の算出の精度と汎用性が向上する。
【0013】
なお、前輪及び後輪を有する走行機体と、ステアリングハンドルの操作に応じて前記前輪を操舵する操舵機構と、前記操舵機構を操作する自動操舵装置と、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、前記走行機体の車速を検出する車速センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記位置情報取得ユニットにより検出された前記走行機体の位置情報に基づいて前記自動操舵装置を操作する自動操舵制御と、前記走行機体に固定された前記位置情報取得ユニットの基準位置を較正するキャリブレーション制御とが実行可能に構成され、前記キャリブレーション制御の実行を操作する操作具を設け、前記制御部は、前記操作具によって前記キャリブレーション制御が実行されると、前記自動操舵装置を用いて前記走行機体を左右夫々に旋回することによって検出された左旋回時及び右旋回時の夫々の旋回半径の差と左旋回時及び右旋回時の夫々の旋回速度の差とから前記基準位置を算出して記憶するように構成されたものによれば、前記位置情報取得ユニットの基準位置の算出を簡易な操作で短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した作業車両を適用したトラクタの全体側面図である。
【
図2】GNSSユニットを示すトラクタの要部後方斜視図である。
【
図6】キャリブレーション制御の処理フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明を適用した作業車両を適用したトラクタの全体側面図であり、
図2は、GNSSユニットを示すトラクタの要部後方斜視図であり、
図3は、操縦部を示した要部斜視図であり、
図4は、操舵角検出装置を示した要部斜視図である。本トラクタは、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持される機体フレーム3と、該機体フレーム3の前側に設置されたエンジン(図示しない)を囲繞するボンネット5と、該ボンネット5の後方に設置されたキャビン4とを備えることにより走行機体6が構成されており、前記走行機体6の後方には、昇降リンク7を介してロータリ耕運装置等の作業機(図示しない)を昇降可能に連結することができる。
【0016】
前記キャビン4は、オペレータが乗込むことによって前記走行機体6の操作を行う操縦部8が設けられ、前記キャビンの上面(天井面)後端側には、測位衛星から前記走行機体6の位置情報を取得する位置情報受信装置であるRTK-GNSS受信装置(以下、GNSSユニット)10が設けられている(
図1及び
図2参照)。
【0017】
前記操縦部8は、オペレータが着座する座席(図示しない)と、前記走行機体6(前輪1)の操向操作するステアリング装置(操舵機構)を操作するステアリングハンドル11と、前記ステアリングハンドル11の左右一方(図示する例では左)側に配置された前後進切換レバー13と、前記ステアリングハンドル11の左右他方(図示する例では右)側に配置されたエンジンコントロールレバー14と、前記エンジンコントロールレバー14の手前側に配置された作業機昇降レバー16と、前記ステアリングハンドル11の前方側に配置されて前記走行機体の各種状態が表示されるフロントパネル17とを備えている(
図3参照)。
【0018】
また、前記ステアリングハンドル11が連結された上下方向のステアリング軸の上端側には、前記ステアリング装置(操舵機構)を介した操向操作を制御可能に構成された操舵ユニット20(自動操舵装置)が着脱可能に設けられている(
図3参照)。前記ステアリング装置と、前記操舵ユニット20の具体的な構成については後述する。
【0019】
上記ステアリング装置は、前記ステアリングハンドル11と、前記ステアリングハンドル11による操向操作によって軸回転するステアリング軸を囲繞するステアリングコラム(図示しない)と、前記ステアリングコラムの下端側に設けられたパワーステアリング装置(図示しない)と、前記ステアリング軸の軸回転を左右方向の操向操作に変換するピットマンアーム(図示しない)等を含む連係機構19と、前記連係機構19の両端と左右の前輪1とを接続するタイロッド21とを有する(
図4参照)。これにより、前記ステアリング装置は、オペレータによる前記ステアリングハンドル11のステアリング(操向)操作、又は詳しくは後述する前記操舵ユニット20の作動に応じて、前記前輪1,1を操向操作するように構成されている。
【0020】
また、前記前輪1,1には、前記タイロッド21とともに、前記前輪1,1に前記エンジンから伝動された動力を伝動するシャフト(駆動軸)が内装されたフロントアクスル22が接続されている(
図4参照)。
【0021】
前記操舵ユニット20は、詳しくは後述する操舵ユニット制御部50と、前記操舵ユニット18の電源のON・OFFを操作する操作スイッチ23と、前記前輪の操舵角を検出する操舵角検出装置24と、前記ステアリング装置(ステアリング軸)を操作するステッピングモータ26と、該ステッピングモータ26による駆動力を前記ステアリング装置に伝動する伝動部27とを有し、前記ステアリング装置20を介して前記走行機体6の操向操作を制御することができるように構成されている(
図3乃至5等参照)。
【0022】
上記操舵角検出装置24は、前記フロントアクスル22を上下方向で挟持するようにして取付けられるアクスル側取付ブラケット31と、前記タイロッド21の上面側に取付け固定されたタイロッド側取付ブラケット32と、前端側が前記アクスル側取付ブラケット31側に左右揺動可能に支持された揺動アーム33と、前記タイロッド側取付ブラケット32と前記揺動アーム33の後端側との間を連結する連結ロッド34と、箱状のケース体に収容されて前記揺動アーム33の左右揺動を検出する操舵角センサ35とを備え、前記タイロッド21側に着脱可能に設けられている(
図4参照)。
【0023】
上記アクスル側取付ブラケット31は、前記フロントアクスル22の上面側に配置されてその上面側に前記操舵角センサ35が取付支持される上側ブラケット31aと、前記フロントアクスル22の下面側に配置されて前記フロントアクスル22の形状に合わせた凹部が形成された下側ブラケット31bと、前記上側ブラケット31aと前記下側ブラケット31bとを連結する上下方向の連結ボルト31cとを有し、該連結ボルト31cは左右方向の前記フロントアクスル22を前後で挟むように複数(図示する例では前後に2本づつ)設けられている。これにより、前記操舵角検出装置24(前記アクスル側取付ブラケット31)は、簡易な構成(方法)で通常のトラクタに後付けすることができる。
【0024】
該構成によれば、前記操舵角センサ35は、前記ステアリングハンドル11や前記操舵ユニット20による操向操作に応じて(左右)揺動操作される前記揺動アーム33の揺動位置を検出することによって、前記前輪1,1の操舵位置(操舵角)を検出することができるように構成されている。
【0025】
ちなみに、前記操舵角センサ35は、図示する例では、前記前輪(フロントアクスル22、タイロッド21)側に設置されているが、前記自動操舵ユニット20内に配置した構成であっても良い。この場合、前記操舵角センサ35は、前記ステアリング軸と一体回転する減速ギヤ(又はこれに噛合うギヤや該ギヤに操作されるアーム)の駆動位置を検出する等することによって、操舵中立位置からの操舵角を検出することができる。
【0026】
上記操舵ユニット制御部50は、前記GNSSユニット10により取得された前記走行機体6の位置情報を利用して、前記ステッピングモータ26の駆動(前記操舵ユニット12)を制御することによって、前記走行機体6を予め設定した走行ライン上に沿って自動走行させる自動操舵制御が実行可能に構成されている。
【0027】
また、上述の前記操舵ユニット20は、前記ステアリング装置を操作するにあたり、前記前輪1,1が直進する左右操舵しない基準(中立)位置である操舵中立位置を設定可能に構成されている。これにより、前記操舵ユニット20は、前記操舵中立位置を基準とした所望の操舵角を前記ステッピングモータ26の駆動によって制御することにより、前記ステアリング装置を介した操向操作(前記自動操舵制御)をより精度良く制御することができる。
【0028】
これに対し、前記操舵ユニット制御部50は、前記操舵中立位置を算出するとともに、設定された操舵中立位置を較正するキャリブレーション制御が実行可能に構成されている。これにより、操舵中立位置の設定精度の悪化によって前記自動操舵制御による自動走行の精度が悪化したり、予期しない経路で走行したりすることを効率的に防止することができる。前記キャリブレーション制御の具体的な制御内容については後述する。
【0029】
前記GNSSユニット10は、前記キャビンの後部側を左右方向に跨ぐように延設されて下方が開放されたコ字状に構成された支持フレーム36と、前記支持フレーム36に左右一対設けられた受信装置(受信アンテナ、GNSSアンテナ)37,37と、前記支持フレーム36の左右中央側に配置されてRTK基地局40からの補正情報を取得する補正信号受信装置38と、前記補正信号受信装置38の下方側に設けられたGNSS制御部30と、前記GNSS制御部30内に配置されて前記走行機体6の左右傾斜等の情報を取得する慣性計測装置51とを備え、前記キャビン4の天板後部側に支持されている(
図1等参照)。
【0030】
上記受信装置37,37は、左右一方側の受信装置37が前記走行機体6の基準となる位置情報を受信するための受信アンテナであり、左右他方側の受信装置37が前記走行機体6の方位情報を取得するための受信アンテナである。また、上記受信装置37,37は、前記支持フレーム36によって前記キャビン4後部上側に配置されたことにより、測位衛星からの位置情報が取得し易くなる。
【0031】
上記補正信号受信装置(無線アンテナ)38は、作業走行する圃場面からある程度離れた場所に設置されたRTK基地局(図示しない)から補正情報(具体的には、RTK基地局の座標データと、前記走行機体6と前記RTK基地局との間の距離データ等)を受信するように構成されている。これにより、前記受信装置21によって取得された前記走行機体6の位置情報を補正することによって、前記走行機体6の位置情報の精度をセンチメートル単位まで向上させることができる。
【0032】
上記RTK基地局40は、RTK基地局の座標データを取得するためのGNSSアンテナ(GNSS受信機)39と、前記RTK基地局40の座標データ(と、前記RTK基地局と前記走行機体との間の距離データ)を前記GNSSユニット10に送信するための無線アンテナ(特定小電力無線機)41と、バッテリ42とを備えている(
図5等参照)。
【0033】
上記GNSS制御部30(GNSSユニット10)は、前記GNSSユニット10によって、前記走行機体6の所定の中心位置(以下、基準位置)の座標データを取得されるように、前記基準位置の位置を設定(調整)可能に構成されている。すなわち、前記GNSSユニット10は、設定された基準位置(走行機体の所定の中心位置)の座標データを取得するように構成されている。
【0034】
また、上記GNSS制御部30は、前記基準位置として設定された箇所が、前記走行機体6の中心からズレてしまった場合、前記キャリブレーション制御によって、前記基準位置を前記走行機体の中心に較正することができるように構成されている。該キャリブレーション制御の具体的な制御内容については後述する。
【0035】
また、上記GNSS制御部30は、コントロールエリアネットワーク(CAN)等を介して前記操舵ユニット制御部50に接続されており、該操舵ユニット制御部50に測位衛星システムから取得された前記走行機体6の位置情報、方位情報等を入力することができるように構成されている(
図5等参照)。
【0036】
ちなみに、上記GNSS制御部30は、無線通信(Bluetooth(登録商標)、wifi等)を介して情報端末であるタブレット端末46に接続できるように構成されており、前記タブレット端末46は、タッチパネル等のモニタからなる表示装置(図示しない)と、前記GNSS制御部30と無線通信するための近距離無線機47とを有している。
【0037】
該タブレット端末46には、ナビゲーションソフトやキャリブレーション実行ソフトがインストールされており、前記操舵ユニット制御部50による前記キャリブレーション制御(や前記自動操舵制御)の実行を補助できるように構成されている。
【0038】
具体的には、該タブレット端末46は、タッチパネル式の表示装置に、キャリブレーション制御の実行を操作する操作ボタン(操作部)を表示し、オペレータによって該操作ボタンが操作された場合に、前記キャリブレーション制御の実行が開始されるように構成されている。なお、前記キャリブレーション制御の実行を開始する操作ボタン(操作具)は、前記操舵ユニット側に設けた構成としても良い。
【0039】
また、該タブレット端末46には、前記トラクタの車種情報や、走行・作業状況に関する情報を各制御部30、50と共有できるように構成されている。該構成によれば、該タブレット端末46を用いて、前記操舵ユニット20(前記操舵ユニット制御部50)に、前記GNSSユニット10が設置されたトラクタの車種情報を登録することで、前記走行機体の全長・幅、旋回半径、重量等の情報を入力することができるため、どの車種に前記GNSSユニット10と前記操舵ユニット20をセットした場合であっても、前記自動操舵制御(キャリブレーション制御)を高精度に実行することができる。
【0040】
ちなみに、該タブレット端末46は、前記自動操舵制御の実行時や、前記キャリブレーション制御の実行時に、前記表示装置へのトラクタが自動操舵によって自動走行する走行ライン(走行経路)を常に表示するモードと、前記走行ラインの表示を行わない節電モードとに切換えることができるように構成しても良い。該構成によれば、前記タブレット端末の電力消費を節約することができるため、前記操舵ユニット10を用いた作業走行をより長時間行うことができる他、前記タブレット端末46用のモバイルバッテリを携帯する必要がなくなる。
【0041】
次に、
図5及び
図6に基づき、前記制御部によるキャリブレーション制御について説明する。
図5は、各制御部のブロック図である。
【0042】
前記GNSS制御部30の入力側には、前記受信装置(GNSSアンテナ、GNSS受信機)37と、前記補正信号受信装置(無線アンテナ、特定小電力無線機)38と、前記走行機体6の左右傾斜等の情報を取得する慣性計測装置(加速度センサ、ジャイロセンサ)51とが接続されており、前記GNSS制御部30の出力側には、7セグメントディスプレイ52と、前記タブレット端末46と通信するための近距離無線機53とが接続されている。
【0043】
前記操舵ユニット制御部50の入力側には、前記操作スイッチ23と、前記操舵角センサ35とが接続されており、前記操舵ユニット制御部50の出力側には、前記ステッピングモータ26と、前記操舵ユニット20の電源の入切状態等を表示するLEDランプ54とが接続されている。また前記操舵ユニット制御部50は、前記GNSS制御部30とCANを介して接続されている。
【0044】
各制御部は、前記タブレット端末46(又は操舵ユニット10側の操作具)によって、キャリブレーション制御の実行が操作された場合、前記走行機体6を(左右旋回走行を含む)所定の走行ラインに沿った自動走行を行うことにより、前記操舵ユニット20の操舵中立位置の較正と、前記GNSSユニット10の基準位置の較正とを自動的且つ短時間に行うことができるように構成されている。詳しくは以下説明する。
【0045】
図6は、キャリブレーション制御の処理フローを示した図である。制御部は、まず、前記タブレット端末46(や、前記操舵ユニット20側の操作具)等を介して、前記GNSSユニット10がセットされたトラクタ(車体)に関する情報(全長、全幅、旋回半径、重量等)や、トラクタの後方にセットされた作業機に関する情報の入力を受付ける条件入力処理(S101)を行う。
【0046】
続いて、前記制御部は、前記タブレット端末46(や前記操舵ユニット20)の前記操作ボタンの入力が検出された場合に、前記条件入力処理によって入力された車体情報等に基づいて、前記操舵ユニット20の操舵中立位置と、前記GNSSユニット10の基準位置の較正を行うための走行ラインを自動設定する走行ライン生成処理(S102)を行う。該走行ライン生成制御では、前記走行機体6の現在位置から所定距離の前進走行と、左右一方側への旋回走行と、左右他方側への旋回走行とを含む走行経路が設定されるように構成されている。
【0047】
このとき、前記走行ライン生成処理(S102)では、前記慣性計測装置51によって前記走行機体の左右方向の傾斜角度に関する情報を自動的に取得し、取得された走行機体の傾きの情報を考慮して走行ラインを生成するように構成されている。該構成によれば、前記走行機体の傾き情報が自動的に取得(入力)されるため、情報の誤入力を防止できるとともに、前記走行機体の傾き情報を走行ラインの生成に考慮することができるため、精度がより向上する。
【0048】
続いて、前記制御部は、前記走行機体6を前記走行ライン生成処理(S102)にて生成された走行ライン上を自動走行させるとともに、前記GNSSユニット10により、前記操舵ユニット20によって走行機体6を左右旋回させた際の、前記走行機体の旋回半径と、旋回完了時の座標データと、旋回走行時の車速(旋回速度)を検出し、記憶する自動走行処理(計測処理)(S103)を行う。
【0049】
このとき、前記制御部は、前記走行機体6が自動走行ライン上の基準位置から旋回した際の旋回半径を、前記GNSSユニット10によって連続して検出される前記走行機体6(基準位置)の測位情報を変位(と時間)から算出するように構成されている。
【0050】
また、前記走行機体6の旋回速度は、前記走行機体側に設けた車速センサによって検出する構成でも良いが、前記GNSSユニット10で検出される前記走行機体6の位置情報を追跡し、旋回開始から終了までの時間を計測することによって検出する構成であっても良い。
【0051】
続いて、前記制御部は、前記自動走行処理(S103)で検出した前記走行機体6の左旋回時の旋回半径と右旋回時の旋回半径の差から、前記操舵ユニット20の旋回中立位置のずれを算出する。この旋回半径のずれに基づいて前記操舵中立位置を較正(算出)し、較正された操舵中立位置を、新たな操舵中立位置として設定(記憶)する操舵位置の設定処理(S104)を行う。
【0052】
最後に、前記制御部は、前記自動走行処理(S103)で検出した前記走行機体6の左旋回時の旋回半径と右旋回時の旋回半径の差と、前記走行機体6を左旋回した際の前記基準位置の旋回速度と右旋回した際の前記基準位置の旋回速度の差から、前記GNSSユニット10の前記基準位置と前記走行機体の中心とのずれを算出する。この、旋回半径の差と旋回速度の差とに基づいて前記基準位置を較正(算出)し、較正された基準位置を、前記GNSSユニット10の新たな基準位置として設定(記憶)する基準位置の設定処理(S105)を行う。
【0053】
なお、前記制御部は、前記走行ライン生成処理(S102)→前記自動走行処理(S103)→前記操舵位置の設定処理(S104)→前記基準位置の設定処理(S105)を繰返すことによって、前記操舵ユニット20の操舵中立位置と、前記GNSSユニット10の前記基準位置の較正をより精度良く行う構成としても良い。
【0054】
上述の構成のキャリブレーション制御によれば、前記操舵ユニット20の操舵中立位置と、前記GNSSユニット10の前記基準位置の較正を行うにあたり、必要な情報入力を自動で行うことができるため、手間とヒューマンエラーによるご入力を減らすことができるとともに、キャリブレーション(較正)に必要な時間も大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 前輪
6 走行機体
10 GNSSユニット(位置情報取得ユニット)
11 ステアリングハンドル
20 操舵ユニット(自動操舵装置)
30 GNSS制御部(制御部)
46 タブレット端末、操作ボタン(操作具)
50 操舵ユニット制御部(制御部)
51 慣性計測装置