(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20241029BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20241029BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W40/02
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021018763
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼人
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-151014(JP,A)
【文献】特開2017-021735(JP,A)
【文献】特開2017-041038(JP,A)
【文献】特開2019-120963(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0079094(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0143969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/09
B60W 40/02
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用アクチュエータを有する自車両の外界を検出する外界検出部と、
交差点を介して非優先道路から優先道路に進入した車両の走行履歴情報に含まれる、前記優先道路に進入する直前の
前記優先道路に最も近い停止位置の情報を取得する情報取得部と、
前記自車両が前記交差点を介して前記優先道路に進入するときに、前記外界検出部により前記交差点に設置された道路反射鏡が検出されると、前記情報取得部により取得された情報に含まれる前記停止位置よりも手前の目標位置で前記自車両が一時停止するまたは減速するように、前記走行用アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記自車両が前記交差点を介して前記優先道路に進入するときであるか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部は、前記外界検出部により一時停止を表す標識または標示が検出されると、前記自車両が前記交差点を介して前記優先道路に進入するときであると判定し、
前記アクチュエータ制御部は、前記判定部により前記自車両が前記交差点を介して前記優先道路に進入するときであると判定されると、前記目標位置で前記自車両が一時停止するまたは減速するように、前記走行用アクチュエータを制御することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記アクチュエータ制御部は、前記外界検出部により路面に標示された停止線が検出されると、前記自車両が前記停止線で一時停止し、その後、前記目標位置でさらに一時停止するまたは減速するように前記走行用アクチュエータを制御することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記目標位置の情報を地図情報とともに記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手動運転車両により取得された走行履歴情報に基づいて、自動運転車両の走行動作を制御するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置における走行履歴情報には、手動運転車両の速度や一時停止位置の情報が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手動運転車両が交差点を介して優先道路に進入する直前に、交差点に設置されたカーブミラーの手前で一時停止するような状況において、カーブミラーに他車両が映っている場合と映っていない場合とで、手動運転車両の一時停止位置が異なることがある。このため、上記特許文献1記載の装置のように、単に走行履歴情報に基づいて車両の走行動作を制御するようにしたのでは、走行動作を適切に制御することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車両制御装置は、走行用アクチュエータを有する自車両の外界を検出する外界検出部と、交差点を介して非優先道路から優先道路に進入した車両の走行履歴情報に含まれる、優先道路に進入する直前の優先道路に最も近い停止位置の情報を取得する情報取得部と、自車両が前記交差点を介して優先道路に進入するときに、外界検出部により交差点に設置された道路反射鏡が検出されると、情報取得部により取得された情報に含まれる停止位置よりも手前の目標位置で自車両が一時停止するまたは減速するように、走行用アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優先道路に進入する自車両の動作を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置を有する車両制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図。
【
図2】
図1の行動計画生成部による行動計画が生成される走行シーンの一例を示す図。
【
図3A】本発明の実施形態に係る車両制御装置により想定される走行シーンの一例を示す図。
【
図3B】本発明の実施形態に係る車両制御装置による動作の一例を、
図3Aと同一の走行シーンを前提として示す図。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両制御装置の要部構成を示すブロック図。
【
図5】
図4のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図5を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両制御装置は、自動運転機能を有する車両、すなわち自動運転車両に適用することができる。なお、本実施形態に係る車両制御装置が適用される車両を、他車両と区別して自車両と呼ぶことがある。自車両は、内燃機関(エンジン)を走行駆動源として有するエンジン車両、走行モータを走行駆動源として有する電気自動車、エンジンと走行モータとを走行駆動源として有するハイブリッド車両のいずれであってもよい。自車両は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
まず、自動運転に係る概略構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置を有する車両制御システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御システム100は、コントローラ10と、コントローラ10にそれぞれ通信可能に接続された外部センサ群1と、内部センサ群2と、入出力装置3と、測位ユニット4と、地図データベース5と、ナビゲーション装置6と、通信ユニット7と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
【0010】
外部センサ群1は、自車両の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサ(外部センサ)の総称である。例えば外部センサ群1には、自車両の全方位の照射光に対する散乱光を測定して自車両から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで自車両の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、自車両に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
【0011】
内部センサ群2は、自車両の走行状態を検出する複数のセンサ(内部センサ)の総称である。例えば内部センサ群2には、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、走行駆動源の回転数を検出する回転数センサ、自車両の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群2に含まれる。
【0012】
入出力装置3は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置3には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供するディスプレイ、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。
【0013】
測位ユニット(GNSSユニット)4は、測位衛星から送信された測位用の信号を受信する測位センサを有する。測位衛星は、GPS衛星や準天頂衛星などの人工衛星である。測位ユニット4は、測位センサが受信した測位情報を利用して、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0014】
地図データベース5は、ナビゲーション装置6に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクや半導体素子により構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース5に記憶される地図情報は、コントローラ10の記憶部12に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
【0015】
ナビゲーション装置6は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置3を介して行われる。目標経路は、測位ユニット4により測定された自車両の現在位置と、地図データベース5に記憶された地図情報とに基づいて演算される。外部センサ群1の検出値を用いて自車両の現在位置を測定することもでき、この現在位置と記憶部12に記憶される高精度な地図情報とに基づいて目標経路を演算するようにしてもよい。
【0016】
通信ユニット7は、インターネット網や携帯電話網倒に代表される無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報、走行履歴情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。走行履歴情報を取得するだけでなく、通信ユニット7を介して自車両の走行履歴情報をサーバに送信するようにしてもよい。ネットワークには、公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。取得した地図情報は、地図データベース5や記憶部12に出力され、地図情報が更新される。
【0017】
アクチュエータACは、自車両101の走行を制御するための走行用アクチュエータである。走行駆動源がエンジンである場合、アクチュエータACには、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータが含まれる。走行駆動源が走行モータである場合、走行モータがアクチュエータACに含まれる。自車両の制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータと転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータもアクチュエータACに含まれる。
【0018】
コントローラ10は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。より具体的には、コントローラ10は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部11と、ROM,RAM等の記憶部12と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。なお、エンジン制御用ECU、走行モータ制御用ECU、制動装置用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、
図1では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ10が示される。
【0019】
記憶部12には、高精度の詳細な道路地図情報が記憶される。道路地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、道路の勾配の情報、交差点や分岐点の位置情報、車線数の情報、車線の幅員および車線毎の位置情報(車線の中央位置や車線位置の境界線の情報)、地図上の目印としてのランドマーク(信号機、標識、建物等)の位置情報、路面の凹凸などの路面プロファイルの情報が含まれる。記憶部12に記憶される地図情報には、通信ユニット7を介して取得した自車両の外部から取得した地図情報、例えばクラウドサーバを介して取得した地図(クラウド地図と呼ぶ)の情報と、外部センサ群1による検出値を用いて自車両自体で作成される地図、例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いてマッピングにより生成される点群データからなる地図(環境地図と呼ぶ)の情報とが含まれる。
【0020】
記憶部12には、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報についての情報も記憶される。さらに記憶部12には、内部センサ群2により得られた自車両の走行履歴情報および通信ユニット7を介して取得された他車両の走行履歴情報が記憶される。走行履歴情報は、手動運転で走行中の車両(自車両および他車両)が過去にいかなる態様で道路を走行したかを表す情報であり、車速、加減速の程度、加減速の開始位置および終了位置、一時停止位置などの情報が、走行履歴情報として道路の位置情報に対応付けて記憶される。換言すると、記憶部12に記憶される高精度の地図情報(例えば環境地図の情報)には、走行履歴情報が含まれる。具体的には、路面上に標示された停止線と異なる位置で車両が一時停止したとき、その一時停止の情報が地図情報に付加されて記憶される。なお、走行履歴情報は、行動計画生成部15で行動計画を生成するときに用いられる。
【0021】
演算部11は、機能的構成として、自車位置認識部13と、外界認識部14と、行動計画生成部15と、走行制御部16とを有する。
【0022】
自車位置認識部13は、測位ユニット4で得られた自車両の位置情報および地図データベース5の地図情報に基づいて、地図上の自車両の位置(自車位置)を認識する。なお、地図データベース5の地図情報には、例えば自車両のナビゲーション装置6に用いられる地図情報だけでなく、SDカードに記憶されたSD地図等、各種の地図情報が含まれる。記憶部12に記憶された地図情報と、外部センサ群1が検出した自車両の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット7を介して通信することにより、自車位置を認識することもできる。
【0023】
外界認識部14は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群1からの信号に基づいて自車両の周囲の外部状況を認識する。例えば自車両の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、自車両の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の区画線や停止線等の標示、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
【0024】
行動計画生成部15は、例えばナビゲーション装置6で演算された目標経路と、自車位置認識部13で認識された自車位置と、外界認識部14で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの自車両の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部15は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部15は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。行動計画生成部15は、先行車両を追い越すための追い越し走行、走行車線を変更する車線変更走行、先行車両に追従する追従走行、走行車線を逸脱しないように車線を維持するレーンキープ走行、減速走行または加速走行等に対応した種々の行動計画を生成する。行動計画生成部15は、目標軌道を生成する際に、まず走行態様を決定し、走行態様に基づいて目標軌道を生成する。
【0025】
行動計画生成部15は、記憶部12に記憶された走行履歴情報を考慮して行動計画を生成する。
図2は、行動計画が生成される走行シーンの一例を示す図である。
図2には、非優先道路LN1を走行中の自車両101が、丁字路の交差点200に進入して優先道路LN2に右折または左折で合流する例が示される。この場合、自車両101は交差点の手前で一時停止する必要がある。行動計画生成部15は、この場合の一時停止の位置、すなわち仮想停止線201の位置を、走行履歴情報に基づいて決定し、仮想停止線201の直前の停止位置P1で自車両101が一時停止するように行動計画を生成する。すなわち、予め記憶部12には、丁字路の手前における車両の一時停止の態様と一時停止後の走行の態様とが記憶されており、この走行履歴情報に基づいて、行動計画生成部15は行動計画を生成する。
【0026】
走行制御部16は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部15で生成された目標軌道に沿って自車両が走行するように各アクチュエータACを制御する。より具体的には、走行制御部16は、自動運転モードにおいて道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮して、行動計画生成部15で算出された単位時間毎の目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群2により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。すなわち、自車両が目標車速および目標加速度で走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部16は、内部センサ群2により取得されたドライバからの走行指令(ステアリング操作等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
【0027】
本実施形態に係る車両制御装置は、交差点に自車両が進入するような所定の走行シーンにおける自車両の走行動作を制御するものである。
図3Aは、本実施形態に係る車両制御装置により想定される走行シーンの一例を示す図であり、
図2と同様、丁字路の交差点200における走行シーンを示す。
図3Aに示すように、非優先道路LN1には、交差点200の手前に一時停止の標識202が設けられるとともに、路面には停止線203が標示される。交差点200には、非優先道路LN1を走行中のドライバが、優先道路LN2を走行する他車両や歩行者等の存在を確認することを目的として、カーブミラー(道路反射鏡)205が設置される。
【0028】
自車両101のドライバは、非優先道路LN1を手動運転で走行しているとき、停止線203で自車両101を一時停止させた後、仮想停止線201(
図3Aでは201Aで示す)で再び一時停止する。その後、カーブミラー205を目視して左右の安全を確認した後、自車両101を左折または右折して優先道路LN2に進入する。この手動運転時の走行履歴情報は、
図1の記憶部12に記憶され、行動計画生成部15が行動計画を生成するときに用いられる。記憶部12には、自車両101の走行履歴情報だけでなく、同一地点を走行した他車両の走行履歴情報を記憶してもよい。この場合、行動計画生成部15は、複数の走行履歴情報を考慮して行動計画を生成する。
【0029】
ところで、ドライバが非優先道路LN1を手動運転で走行し、停止線203で一時停止後に交差点200に進入するとき、カーブミラー205に他車両が映っていなければ、例えば
図3Aに示すように、優先道路LN2に近い位置(第1停止位置P1と呼ぶ)で一時停止して左右の安全を確認する。一方、カーブミラー205に他車両が映っていると、
図3Bに示すように、第1停止位置P1よりも優先道路LN2から離れた位置(第2停止位置P2と呼ぶ)で一時停止して左右の安全を確認する。この場合の仮想停止線201を201Bで表す。
【0030】
すなわち、カーブミラー205に他車両が映っているときと映っていないときとで、手動運転時の車両の仮想停止線201の位置が異なる(201A,201B)。このため、カーブミラー205に他車両が映っていない場合の走行履歴情報(第1停止位置P1)に基づいて自動運転時の仮想停止線201Aが設定されると、自動運転時の一時停止位置が優先道路LN2に接近しすぎるおそれがある。すなわち、カーブミラー205に他車両が映っているとき、自車両101は、
図3Bの第2停止位置P2に対応する仮想停止線201Bで一時停止すべきであるにも拘わらず、
図3Aの仮想停止線201Aで一時停止すると、自車両101が交差点200に過剰に進入することになる。このような交差点200への自車両101の過剰な進入を抑えるため、本実施形態は、以下のように車両制御装置を構成する。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係る車両制御装置50の要部構成を示すブロック図である。この車両制御装置50は、自動運転モードでの自車両101の走行動作を制御するものであり、
図1の車両制御システム100の一部を構成する。
図4に示すように、車両制御装置50は、コントローラ10と、カメラ1aと、アクチュエータACとを有する。
【0032】
カメラ1aは、CCDやCMOS等の撮像素子(イメージセンサ)を有する単眼カメラであり、
図2の外部センサ群1の一部を構成する。カメラ1aはステレオカメラであってもよい。カメラ1aは、例えば自車両101の前部の所定位置に取り付けられ、自車両101の前方空間を連続的に撮像し、対象物の画像(カメラ画像)を取得する。
【0033】
コントローラ10は、演算部11(
図1)が担う機能的構成として、判定部141と、情報取得部142と、停止線設定部151と、走行制御部16とを有する。判定部141と情報取得部142とは、例えば
図1の外界認識部14により構成され、停止線設定部151は、例えば
図1の行動計画生成部15により構成される。
【0034】
図4の記憶部12には、予め各交差点200の位置に対応する仮想停止線201の位置情報が記憶される。この仮想停止線201は、カーブミラー205に他車両が映っていないときの走行履歴情報(
図3Aの第1停止位置P1)から得られる仮想停止線201Aである。仮に、複数の走行履歴情報から異なる位置の仮想停止線201A,201B(
図3A,
図3B)の位置情報が得られる場合、記憶部12には、優先道路LN2に近い方に位置する仮想停止線201Aが記憶される。
【0035】
判定部141は、自動運転で走行中の自車両101の走行シーンが、
図3Aに示すように、非優先道路LN1を交差点200に向けて走行する所定の走行シーンであるか否かを判定する。具体的には、カメラ1aにより取得されたカメラ画像に基づいて自車両101の前方に交差点200が存在するか否かを判定するとともに、カメラ画像にカーブミラー205の画像が含まれているか否か、および一時停止の標識202の画像が含まれているか否かを判定する。そして、自車両101の前方に交差点200が存在し、かつ、カーブミラー205の画像が含まれ、かつ、一時停止の標識202の画像が含まれると判定すると、判定部141は、所定の走行シーンであると判定する。なお、自車両101の前方における交差点200の有無の判定を、カメラ画像以外を用いて行うようにしてもよい。例えば、地図データベース5の地図情報を用いて、この判定を行うようにしてもよい。
【0036】
ここで、交差点とは、十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路の交わる部分をいう。例えば複数の道路が斜めに交差する場合も交差点に含まれる。なお、自車位置認識部13(
図1)により認識された地図上の自車位置に基づいて、判定部141が、自車両101の前方に交差点200が存在するか否かを判定するようにしてもよい。
【0037】
情報取得部142は、交差点200の位置に対応する走行履歴情報、より詳しくは、予め記憶部12に記憶された走行履歴情報に含まれる仮想停止線201A(
図3A)の位置情報を取得する。
【0038】
停止線設定部151は、
図3Bに示すように、情報取得部14bにより取得された仮想停止線201Aの位置を、手前側(優先道路LN2から離れる側)に所定長さLだけオフセットした位置を、修正停止位置(目標位置)として設定する。修正停止位置は、例えば手動運転時の仮想停止線201Bの位置と等しい。なお、修正停止位置を、仮想停止線201Bの位置と異なる位置に設定してもよい。例えば、交差点200における見通しの悪さや、優先道路L2の幅や交通量などを考慮して所定長さLを設定してもよい。さらに天候や時間帯等、位置的な条件以外を考慮するようにしてもよい。修正停止位置の情報は、地図情報とともに記憶部12に記憶される。行動計画生成部15(
図1)は、この修正停止位置で自車両101が一時停止するように行動計画を生成する。
【0039】
走行制御部16は、判定部141で所定の走行シーンであると判定されると、自車両101が行動計画に従い停止線203で一時停止した後、停止線設定部151により設定された修正停止位置でさらに一時停止するように、アクチュエータACを制御する。なお、判定部141で所定の走行シーンでないと判定されると、修正停止位置での一時停止は行わず、仮に交差点200の手前で一時停止する場合には、走行履歴情報から求まる仮想停止線201(
図2)で自車両101が一時停止するようにアクチュエータACを制御する。
【0040】
図5は、予め定められたプログラムに従い
図4のコントローラ10で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば自車両101が自動運転モードで走行時に開始され、所定周期で繰り返し実行される。
【0041】
まず、ステップS1で、カメラ1aにより取得されたカメラ画像に基づいて自車両101の前方に交差点200が存在するか否かを判定する。地図データベース5の地図情報と自車位置認識部13(
図1)により認識された地図上の自車位置とに基づいて、自車両101の前方に交差点200が存在するか否かを判定するようにしてもよい。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、否定されると処理を終了する。ステップS2では、予め記憶部12に記憶された走行履歴情報に含まれる仮想停止線201A(
図3A)の情報、すなわち交差点200の位置に対応する仮想停止線201Aの情報を取得する。
【0042】
次いで、ステップS3で、カメラ1aにより取得されたカメラ画像にカーブミラー205の画像が含まれているか否かを判定する。ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、否定されるとステップS4、ステップS5をパスしてステップS6に進む。ステップS4では、カメラ1aにより取得されたカメラ画像に一時停止の標識202の画像が含まれているか否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS5に進み、否定されるとステップS5をパスしてステップS6に進む。ステップS5では、ステップS2で取得された仮想停止線201Aを所定長さLだけ手前側にオフセットさせて、修正停止位置を設定する。
【0043】
次いで、ステップS6で、交差点200における自車両101の行動計画を生成するとともに、行動計画に従い自車両101が走行するようにアクチュエータACに制御信号を出力する。すなわち、ステップS5で修正停止位置が目標位置として設定された場合には、停止線203で一時停止し、その後、修正停止位置でさらに一時停止するようにアクチュエータACを制御する。一方、修正停止位置が設定されない場合(例えばカーブミラー205が検出されない場合)には、停止線203で一時停止した後、仮想停止線201Aで一時停止するようにアクチュエータACを制御する。
【0044】
本実施形態による車両制御装置50による動作をまとめると以下のようになる。
図3Bに示すように、自車両101が自動運転で交差点200に進入するとき、自車両101のコントローラ10は、交差点200にカーブミラー205があり、かつ、一時停止の標識202があるか否かを判定する。カーブミラー205と標識202の双方がある場合には、走行履歴情報により得られる仮想停止線201Aの位置よりも所定長さLだけ手前側にオフセットした位置に修正停止線が設定される(ステップS5)。これにより、カーブミラー205が設置された見通しの悪い交差点200における、自車両101の一時停止位置が優先道路LN2に接近しすぎることがなく、自動運転での走行安全性が高まる。
【0045】
カーブミラー205は、交差点200だけでなくカーブ路に設置されることもある。この場合には、所定の走行シーンであると判定されないため(ステップS1で否定)、修正停止位置は設定されない。また、カーブミラー205がない交差点は、自動運転車両にとっても見通しがよい。このため、仮想停止線201の位置をオフセットする必要はなく、所定の走行シーンであると判定されない(ステップS3で否定)。カーブミラー205があっても一時停止の標識202がない交差点は、自車両101が走行する道路の方が優先道路であると想定される。したがって、この場合にも所定の走行シーンであると判定されないため(ステップS4で否定)、修正停止位置は設定されない。このように本実施形態では、交差点があり、かつ、カーブミラー205があり、かつ、一時停止の標識202がある場合に、修正停止位置を設定するので、修正停止位置が無駄に設定されることを防止できる。
【0046】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両制御装置50は、走行用のアクチュエータACを有する自車両101の外界を検出する外部センサ群1、特にカメラ1aと、交差点200を介して非優先道路LN1から優先道路LN2に進入した車両の走行履歴情報に含まれる、優先道路LN2に進入する直前の停止位置P1の情報を取得する情報取得部142と、自車両101が交差点200を介して優先道路LN2に進入するときに、カメラ1aにより交差点200に設置されたカーブミラー205が検出されると、情報取得部142により取得された情報に含まれる仮想停止線201Aの位置よりも手前の修正停止位置(例えば
図3Bの201B)で自車両101が一時停止するように、アクチュエータACを制御する走行制御部16と、を備える(
図4)。
【0047】
これにより、カーブミラー205が設置された見通しの悪い交差点200における自車両101の一時停止位置が、優先道路LN2に接近しすぎることを防止することができ、自動運転走行の安全性が高まる。すなわち、走行履歴情報に基づいて設定される仮想停止線201は、カーブミラー205に他車両が映っていない状態の走行履歴情報により定められる仮想停止線201Aである。このため、自車両101が非優先道路LN1から交差点200に進入するのと同時に、優先道路LN2を走行中の他車両が交差点200を通過する場合において、自車両101が仮想停止線201Aで一時停止すると、自車両101が優先道路LN2に接近しすぎるおそれがある。この点、本実施形態では、カーブミラー205に他車両が映っているか否かに拘わらず、一時停止位置を仮想停止線201Aよりも手前側にオフセットするので、自車両101が交差点200に過剰に接近することを防止することができる。また、カーブミラー205に他車両が映っているか否かに応じて一時停止位置をオフセットするのではなく、他車両が映っているか否かに拘わらず一時停止位置をオフセットする。このため、カーブミラー205のカメラ画像を識別する処理が不要であり、簡易な構成で安全性の高い自動運転走行が可能である。
【0048】
(2)車両制御装置50は、自車両101が交差点200を介して優先道路LN2に進入するときであるか否かを判定する判定部141をさらに備える(
図4)。判定部141は、カメラ1aにより一時停止を表す標識202が検出されると、自車両101が交差点200を介して優先道路LN2に進入するときであると判定する(
図5)。走行制御部16は、判定部141により、自車両101が交差点200を介して優先道路LN2に進入するときであると判定されると、修正停止位置(例えば
図3Bの201B)で自車両101が一時停止するようにアクチュエータACを制御する(
図5)。これにより、非優先道路LN1を走行中であることが確実な場合に一時停止位置がオフセットされるので、停止位置が無駄にオフセットされることがなく、自車両101は交差点200を介して非優先道路LN1から優先道路LN2に迅速に合流することができる。
【0049】
(3)走行制御部16は、カメラ1aにより路面に標示された停止線203が検出されると、自車両101が停止線203で一時停止し、その後、修正停止位置でさらに一時停止するようにアクチュエータACを制御する(
図5)。これにより、一時停止の標識202のある交差点200において、自車両101の適切な走行動作を実現できる。
【0050】
(4)車両制御装置は、走行履歴情報を地図情報に関連付けて記憶する記憶部12をさらに備える(
図4)。記憶部12には、修正停止位置の情報が地図情報とともに記憶される。これにより、交差点200の修正停止位置を一旦設定した後、当該交差点200を再び通過する場合において、交差点200を通過する度に修正停止位置を設定する必要がないため、自動運転時の処理が容易である。記憶された修正停止位置は、他の自動運転車両によっても利用可能となるように、通信ユニット7を介してサーバに送信するようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、カメラ1aによりカーブミラー205や一時停止の標識202などを検出するようにしたが、他の外界検出部を用いてこれらを検出するようにしてもよい。上記実施形態では、丁字路の交差点(
図3A,
図3B)を例にして説明したが、Y字路や十字路、五差路以上の多差路等、他の交差点においても同様に、本実施形態の車両制御装置50を適用できる。上記実施形態では、自動運転モードで自車両101が交差点200に進入する際の一時停止の動作を、カーブミラー205の有無等に応じて走行制御部16(アクチュエータ制御部)が制御するようにしたが、一時停止後に優先道路LN2に進入するまでの動作(車速等)も、カーブミラー205の有無等に応じて走行制御部16により制御される。
【0052】
上記実施形態では、走行制御部16が交差点200のカーブミラー205が検出されたときの自車両101の一時停止の動作を制御するようにしたが、一時停止を制御することに代えて、あるいは一時停止を制御することに加え、自車両の減速を制御するようにしてもよい。すなわち、外界検出部により交差点に設置された道路反射鏡が検出されると、情報取得部により取得された情報に含まれる停止位置よりも手前の目標位置で自車両が一時停止するまたは減速するように走行用アクチュエータを制御するのであれば、アクチュエータ制御部の構成はいかなるものでもよい。換言すると、目標位置は、上述した修正停止位置として意味するだけでなく、減速を行う際の目標位置としても意味する。
【0053】
上記実施形態では、判定部141が、一時停止の標識202が検出されたか否かにより、自車両101が交差点200を介して優先道路LN2に進入するときであるか否かを判定するようにしたが、路面に一時停止を表す標示が検出されたか否かにより、これを判定するようにしてもよい。一時停止の標識や標示を検出する代わりに、他の情報を用いて、自車両が交差点を介して優先道路に進入するときであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、自動運転機能を有する自動運転車両に車両制御装置50を適用したが、本発明は、自動運転車両以外の車両(例えば運転支援機能を有する車両)にも同様に適用することができる。これにより、交差点200への進入時にカーブミラー205に映った他車両をドライバが見過ごしたときなどに、自車両を適切に一時停止させることができる。
【0055】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1a カメラ、10 コントローラ、12 記憶部、16 走行制御部、141 判定部、142 情報取得部、151 停止線設定部、201 仮想停止線、AC アクチュエータ