(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】加飾シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241029BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241029BHJP
C08F 210/06 20060101ALI20241029BHJP
C08F 222/06 20060101ALI20241029BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20241029BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20241029BHJP
C09J 123/02 20060101ALI20241029BHJP
C09J 151/06 20060101ALI20241029BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B32B27/00 E
B32B27/32 E
C08F210/06
C08F222/06
C09J123/00
C09J123/26
C09J123/02
C09J151/06
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2021024053
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】川端 駿
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義人
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-042619(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221331(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/164976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
C09J1/00-5/10、9/00-201/10、
C08C19/00-19/44、C08F6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾層と、接着層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記加飾層は、
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体が1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂を含み、
部分架橋オレフィン系熱可塑性エラストマーを含まず、
前記1価の金属がナトリウムであり、
前記2価の金属が亜鉛であり、
前記接着層は、接着剤組成物からなり、
前記接着剤組成物は、オレフィン重合体を含み、
前記オレフィン重合体は、JIS K7122に従って測定される融解熱が0J/g以上、50J/g以下であり、かつ、GPC法により測定される重量平均分子量が1×10
4以上、1000×10
4以下である、加飾シート。
【請求項2】
前記オレフィン重合体が、下記第1オレフィン重合体、および/または、下記第2オレフィン重合体を含む、請求項
1に記載の加飾シート。
第1オレフィン重合体:炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体
第2オレフィン重合体:炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含む重合体であって、その一部または全部が極性基含有単量体でグラフト変性されているオレフィン重合体
【請求項3】
前記オレフィン重合体が、前記第2オレフィン重合体を含み、
前記第2オレフィン重合体において、前記第2オレフィン重合体100質量部に対して極性基含有単量体由来の構成単位が、0.1質量部以上15質量部以下である、請求項
2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記第1オレフィン重合体または前記第2オレフィン重合体において、
炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位がプロピレン由来の構成単位を含み、
プロピレン由来の構成単位、および、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合が、50モル%以上100モル%以下であり、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の含有割合が、0モル%以上50モル%以下である、請求項
2または
3に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記極性基含有単量体が、不飽和カルボン酸、および/または、不飽和カルボン酸無水物である、請求項
2~
4のいずれか一つに記載の加飾シート。
【請求項6】
前記接着剤組成物は、炭化水素系合成油、または、半固体状炭化水素を含み、
前記炭化水素系合成油の、40℃における動粘度が30mm
2/秒以上、500000mm
2/秒以下であり、
前記半固体状炭化水素の、200℃における動粘度が、1000mm
2/秒以上100000mm
2/秒以下である、請求項1~
5のいずれか一つに記載の加飾シート。
【請求項7】
前記オレフィン重合体と、前記炭化水素系合成油または前記半固体状炭化水素との総量100質量部に対して、
前記オレフィン重合体の配合割合が、10質量部以上99質量部以下であり、
前記炭化水素系合成油、または、前記半固体状炭化水素の配合割合が、1質量部以上90質量部以下である、請求項
6に記載の加飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートに関し、詳しくは、被加飾体に貼着される加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両や建造物などの内装や外装に、加飾シートを貼着し、意匠性を付与することが、知られている。
【0003】
このような加飾シートとしては、アイオノマー樹脂を含む樹脂成分を押出成形して製造した転写加飾用基体フィルムが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような加飾シートを、被加飾体に貼り付けする際には、生産性向上の観点から、低温における接着性が要求される。
【0006】
本発明は、低温での接着性に優れる加飾シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、加飾層と、接着層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、前記加飾層は、1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂を含み、前記接着層は、接着剤組成物からなり、前記接着剤組成物は、オレフィン重合体を含み、前記オレフィン重合体は、JIS K7122に従って測定される融解熱が0J/g以上、50J/g以下であり、かつ、GPC法により測定される重量平均分子量が1×104以上、1000×104以下である、加飾シートである。
【0008】
本発明[2]は、前記アイオノマー樹脂を中和する金属が、1価の金属を含み、前記1価の金属が、ナトリウムである、上記[1]に記載の加飾シートを含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記アイオノマー樹脂を中和する金属が、2価の金属を含み、前記2価の金属が、亜鉛である、上記[1]に記載の加飾シートを含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、前記オレフィン重合体が、下記第1オレフィン重合体、および/または、下記第2オレフィン重合体を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の加飾シートを含んでいる。
第1オレフィン重合体:炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体
第2オレフィン重合体:炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含む重合体であって、その一部または全部が極性基含有単量体でグラフト変性されているオレフィン重合体
【0011】
本発明[5]は、前記オレフィン重合体が、前記第2オレフィン重合体を含み、前記第2オレフィン重合体において、前記第2オレフィン重合体100質量部に対して極性基含有単量体由来の構成単位が、0.1質量部以上15質量部以下である、上記[4]に記載の加飾シートを含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、前記第1オレフィン重合体または前記第2オレフィン重合体において、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位がプロピレン由来の構成単位を含み、プロピレン由来の構成単位、および、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合が、50モル%以上100モル%以下であり、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の含有割合が、0モル%以上50モル%以下である、上記[4]または[5]に記載の加飾シートを含んでいる。
【0013】
本発明[7]は、前記極性基含有単量体が、不飽和カルボン酸、および/または、不飽和カルボン酸無水物である、上記[4]~[6]のいずれか一つに記載の加飾シートを含んでいる。
【0014】
本発明[8]は、前記接着剤組成物は、炭化水素系合成油、または、半固体状炭化水素を含み、前記炭化水素系合成油の、40℃における動粘度が30mm2/秒以上、500000mm2/秒以下であり、前記半固体状炭化水素の、200℃における動粘度が、1000mm2/秒以上100000mm2/秒以下である、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の加飾シートを含んでいる。
【0015】
本発明[9]は、前記オレフィン重合体と、前記炭化水素系合成油または前記半固体状炭化水素との総量100質量部に対して、前記オレフィン重合体の配合割合が、10質量部以上99質量部以下であり、前記炭化水素系合成油、または、前記半固体状炭化水素の配合割合が、1質量部以上90質量部以下である、上記[8]に記載の加飾シートを含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加飾シートは、加飾層と、接着層とを厚み方向一方側に向かって順に備える。加飾層は、所定のアイオノマー樹脂を含む。接着層は、所定の融解熱および所定の重量平均分子量を有するオレフィン重合体を含む接着剤組成物からなる。
【0017】
これにより、加飾層と接着層との間の、低温における接着性に優れる。また、このような加飾シートは、耐擦傷性および耐薬品性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の加飾シートの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の加飾シートの製造方法の一実施形態を示す。
図2Aは、加飾層を準備する第1工程を示す。
図2Bは、加飾層2の厚み方向一方面に接着層3を配置する第2工程を示す。
【
図3】
図3は、本発明の加飾シートを用いて、被加飾体を加飾する一実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の加飾シートの一実施形態の変形例(表皮層を備える加飾シート)の断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の加飾シートの一実施形態の変形例(剥離層を備える加飾シート)の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本発明の加飾シートの一実施形態を説明する。
【0020】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0021】
<加飾シート>
加飾シート1は、
図1に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。加飾シート1は、厚み方向と直交する面方向に延びる。加飾シート1は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0022】
加飾シート1は、加飾層2と、接着層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、加飾シート1は、加飾層2と、加飾層2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される接着層3とを備える。
【0023】
<加飾層>
加飾層2は、被加飾体10(後述)に意匠性を付与するために備えられる意匠層である。
【0024】
加飾層2は、フィルム形状を有する。加飾層2は、接着層3の下面に接触するように、接着層3の下面全面に、配置されている。
【0025】
加飾層2は、1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂を含む。好ましくは、加飾層2は、1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂から形成されている。
【0026】
1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂は、樹脂を、1価の金属および/または2価の金属で中和することにより得られる。
【0027】
樹脂は、例えば、炭化水素から構成される高分子骨格を有する。また、樹脂は、高分子骨格の側鎖に、カルボキシル基を有する。詳しくは後述するが、このカルボキシル基の少なくとも一部が、1価の金属および/または2価の金属で中和される。
【0028】
このような樹脂として、例えば、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体が挙げられる。
【0029】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンおよび不飽和カルボン酸を含む重合成分の共重合体である。
【0030】
不飽和カルボン酸としては、例えば、炭素数3~8の不飽和カルボン酸が挙げられる。
炭素数3~8の不飽和カルボン酸としては、例えば、一塩基酸、および、二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)、クロトン酸、および、イソクロトン酸が挙げられる。二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルコハク酸、ナジック酸、メチルナジック酸、テトラヒドロフマル酸、および、メチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。炭素数3~8の不飽和カルボン酸として、好ましくは、一塩基酸、より好ましくは、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体の製造を容易にできる観点から、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0031】
不飽和カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0032】
重合成分において、エチレンおよび不飽和カルボン酸の総量100質量部に対して、エチレンの配合割合は、例えば、60質量部以上、好ましくは、75質量部以上、また、例えば、95質量部以下、好ましくは、92質量部以下である。また、エチレンおよび不飽和カルボン酸の総量100質量部に対して、不飽和カルボン酸の配合割合は、例えば、5質量部以上、好ましくは、8質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、25質量部以下である。
【0033】
重合成分に対して、エチレンおよび不飽和カルボン酸の配合割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは、90質量%以上である。
【0034】
重合成分は、さらに、他の重合成分を含むことができる。
【0035】
他の重合成分としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル、および、ビニルエステルが挙げられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および、(メタ)アクリル酸イソブチルが挙げられる。ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
【0036】
重合成分が、他の重合成分を含む場合には、重合成分に対して、他の重合成分の配合割合は、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0037】
樹脂は、重合成分を、公知の重合方法により重合することにより得られる。このような樹脂は、不飽和カルボン酸に由来するカルボキシル基を有する。
【0038】
そして、1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂は、上記樹脂のカルボキシル基を、1価の金属および/または2価の金属で中和することにより得られる。
【0039】
1価の金属としては、例えば、ナトリウム、および、カリウムが挙げられ、製造の容易さの観点から、好ましくは、ナトリウムが挙げられる。
【0040】
2価の金属としては、例えば、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、鉄、および、バリウムが挙げられ、製造の容易さの観点から、好ましくは、亜鉛が挙げられる。
【0041】
そして、樹脂のカルボキシル基を、1価の金属および/または2価の金属で中和するには、樹脂と、1価の金属を有する化合物、および/または、2価の金属を有する化合物とを混合する。
【0042】
1価の金属を有する化合物としては、上記1価の金属の水酸化物が挙げられ、好ましくは、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0043】
2価の金属を有する化合物としては、例えば、上記2価の金属の酸化物、水酸化物、および、炭化物が挙げられ、好ましくは、水酸化亜鉛が挙げられる。
【0044】
これにより、1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂が得られる。
【0045】
アイオノマー樹脂を中和する金属は、1価の金属および/または2価の金属を含み、好ましくは、1価の金属を含むか、または、2価の金属を含み、より好ましくは、1価の金属のみを含むか、または、2価の金属のみを含み、より好ましくは、1価の金属のみを含む。
【0046】
このような1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂としては、好ましくは、接着性の観点から、1価の金属で中和されたアイオノマー樹脂、または、2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂、より好ましくは、ナトリウムで中和されたアイオノマー樹脂、または、亜鉛で中和されたアイオノマー樹脂、さらに好ましくは、より接着性および耐擦傷性を向上させる観点から、ナトリウムで中和されたアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0047】
そして、加飾層2は、1価の金属および/または2価の金属で中和されたアイオノマー樹脂を、公知の方法で、成形することにより得られる。
【0048】
このような加飾層2として、市販品を用いることもできる、具体的には、ハイミランシリーズ(三井・ダウポリケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0049】
加飾層2の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上、また、例えば、200μm以下である。
【0050】
<接着層>
接着層3は、加飾シート1を、被加飾体10(後述)に配置(貼付)するための層である。
【0051】
接着層3は、フィルム形状を有する。接着層3は、加飾層2の上面全面に、加飾層2の上面に接触するように、配置されている。
【0052】
接着層3は、接着剤組成物からなる。詳しくは、接着層3は、接着剤組成物から形成されている。
【0053】
接着剤組成物は、オレフィン重合体を含む。
【0054】
オレフィン重合体の、JIS K7122に従って測定される融解熱は、0J/g以上、好ましくは、10J/g以上、より好ましくは、20J/g以上、また、50J/g以下、好ましくは、40J/g以下である。
【0055】
融解熱が、上記下限以上であれば、低温接着性に優れる。
【0056】
また、融解熱が、上記上限以下であれば、オレフィン重合体を溶媒に溶解し、ワニスを調製する場合に、安定性に優れる。
【0057】
なお、融解熱の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0058】
オレフィン重合体の融点は、例えば、60℃以上、好ましくは、70℃以上、より好ましくは、75℃以上、また、例えば、90℃以下である。
【0059】
なお、融点の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0060】
オレフィン重合体の、GPC法により測定される重量平均分子量は、1×104以上、好ましくは、10×104以上、また、1000×104以下、好ましくは、100×104以下、より好ましくは、接着性の観点から、50×104以下である。
【0061】
重量平均分子量が、上記下限以上であれば、接着層3の機械強度を高くできる。
【0062】
また、重量平均分子量が、上記上限以下であれば、オレフィン重合体を溶媒に溶解し、ワニスを調製する場合に、安定性に優れる。
【0063】
なお、重量平均分子量の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0064】
このようなオレフィン重合体は、第1オレフィン重合体、および/または、第2オレフィン重合体を含む。詳しくは、オレフィン重合体は、第1オレフィン重合体、および/または、第2オレフィン重合体を含んだ上で、上記した所定の融解熱、および、上記した所定の重量平均分子量を有する。
【0065】
第1オレフィン重合体は、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。つまり、第1オレフィン重合体は、炭素数2~20のα-オレフィンを重合してなる。
【0066】
炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および、1-エイコセンが挙げられる。
【0067】
炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位は、好ましくは、塗膜強度の観点から、プロピレン由来の構成単位を含む。
【0068】
炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位が、プロピレン由来の構成単位を含む場合には、プロピレン由来の構成単位、および、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、また、例えば、100モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。また、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の総量100モル%に対して、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の含有割合は、例えば、0モル%以上、好ましくは、20モル%以上、また、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下である。
【0069】
プロピレン由来の構成単位の含有割合、および、炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)由来の構成単位の含有割合が、上記範囲内であれば、低温接着性に優れる。
【0070】
なお、上記した含有割合は、例えば、13C-NMR測定などの公知の手段で確認される。
【0071】
また、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位が、プロピレン由来の構成単位を含む場合には、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位は、プロピレン由来の構成単位とともに、好ましくは、1-ブテン由来の構成単位を含み、より好ましくは、プロピレン由来の構成単位と、1-ブテン由来の構成単位とのみからなる。つまり、より好ましくは、第1オレフィン重合体は、プロピレン/1-ブテン共重合体である。
【0072】
そして、第1オレフィン重合体は、例えば、特許3939464号および国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法により得られる。詳しくは、第1オレフィン重合体は、メタロセン触媒の存在下で、炭素数2~20のα-オレフィンを重合させることにより得られる。
【0073】
第1オレフィン重合体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
第2オレフィン重合体は、炭素数2~20のα-オレフィンを重合してなり、その一部または全部が極性基含有単量体でグラフト変性されている。つまり、第2オレフィン重合体は、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含む重合体であって、その一部または全部が極性基含有単量体でグラフト変性されているオレフィン重合体である。
【0075】
このような第2オレフィン重合体としては、上記第1オレフィン重合体(好ましくは、プロピレン/1-ブテン共重合体)の一部または全部が極性基含有単量体でグラフト変性されているオレフィン重合体が挙げられる。
【0076】
極性基含有単量体としては、例えば、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルエステル化合物、および、それらの誘導体(不飽和カルボン酸無水物を除く)が挙げられる
【0077】
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0078】
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノメチル、および、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチルが挙げられる。
【0079】
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0080】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、および、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸が挙げられる。
【0081】
不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、および、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0082】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、および、n-酪酸ビニルが挙げられる。
【0083】
誘導体としては、不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体、シトラコン酸誘導体、フタル酸誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、および、その他の誘導体が挙げられる。マレイン酸誘導体としては、例えば、塩化マレニル、マレニルイミド、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、および、マレイン酸ジエチルが挙げられる。フマル酸誘導体としては、例えば、フマル酸ジエチルが挙げられる。イタコン酸誘導体としては、例えば、イタコン酸ジメチルが挙げられる。シトラコン酸誘導体としては、例えば、シトラコン酸ジエチルが挙げられる。フタル酸誘導体としては、例えば、テトラヒドロフタル酸ジメチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピルが挙げられる。その他の誘導体としては、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルが挙げられる。
【0084】
極性基含有単量体は、好ましくは、製造の容易さの観点から、不飽和カルボン酸、および/または、不飽和カルボン酸無水物を含み、より好ましくは、不飽和カルボン酸無水物を含み、さらに好ましくは、無水マレイン酸を含み、とりわけ好ましくは、無水マレイン酸からなる。つまり、とりわけ好ましくは、第2オレフィン重合体は、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体である。
【0085】
第2オレフィン重合体における極性基含有単量体の変性量(導入量)、すなわち、第2オレフィン重合体において極性基含有単量体に由来する構成単位の含有割合は、第2オレフィン重合体100質量部に対して、例えば、極性基材に対する密着性の観点から、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、非極性基材に対する密着性の観点から、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、4質量部以下、とりわけ好ましくは、2質量部以下である。
【0086】
上記した変性量は、例えば、1H-NMR測定などの公知の手段で確認される。具体的な1H-NMR測定条件としては、以下の条件を例示できる。
【0087】
すなわち、日本電子社製ECX400型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は1H(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件である。基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素を0ppmとするが、例えば、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素に由来するピークを7.10ppmとしてケミカルシフトの基準値とすることでも同様の結果を得ることができる。極性基含有単量体に由来する1Hなどのピークは、通常の方法により同定できる。
【0088】
また、極性基含有単量体として、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を用いた場合には、例えば、酸価を用いることも可能である。
【0089】
第2オレフィン重合体の酸価は、例えば、0.1mgKOH/g以上、好ましくは、0.5mgKOH/g以上であり、また、例えば、100mgKOH/g以下、好ましくは、30mgKOH/g以下、より好ましくは、10mgKOH/g以下である。
【0090】
ここで、酸価の測定方法としては、以下のものが挙げられる。
【0091】
つまり、基本操作はJIS K-2501-2003に準ずる。具体的には、第2オレフィン重合体 約10gを正確に測り取り、200mLトールビーカーに投入する。そこに滴定溶剤として、キシレンとジメチルホルムアミドとを1:1(体積比)で混合してなる混合溶媒を150mL添加する。指示薬として1w/v%のフェノールフタレインエタノール溶液(和光純薬工業社製)を数滴加え、液温を80℃に加熱して、試料を溶解させる。液温が80℃で一定になった後、0.1mol/Lの水酸化カリウムの2-プロパノール溶液(和光純薬工業社製)を用いて滴定し、下記式(1)に基づき、滴定量から酸価を求める。
【0092】
酸価(mgKOH/g)=(EP1-BL1)×FA1×C1/SIZE (1)
である。
【0093】
ここで、上記計算式において、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL:0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
【0094】
この測定を3回繰り返して平均値を酸価とする。
【0095】
そして、第2オレフィン重合体は、極性基含有単量体を、第1オレフィン重合体の存在下で重合反応させることにより得られる。これにより、第1オレフィン重合体が、極性基含有単量体またはその重合体によって、グラフト変性される。具体的には、第2オレフィン重合体を調製するには、例えば、下記(1)~(4)の方法が挙げられる。
【0096】
(1)第1オレフィン重合体を有機溶媒に溶解し、極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより、第1オレフィン重合体を極性基含有単量体で変性して反応させる方法。
(2)第1オレフィン重合体を加熱溶融して、得られる溶融物に極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を添加し、攪拌することにより、第1オレフィン重合体を極性基含有単量体で変性して反応させる方法。
(3)第1オレフィン重合体、極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を予め混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながら、第1オレフィン重合体を極性基含有単量体で変性して反応させる方法。
(4)第1オレフィン重合体に、極性基含有単量体およびラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解してなる溶液を含浸させた後、第1オレフィン重合体が溶解しない最高の温度まで加熱することにより、第1オレフィン重合体を極性基含有単量体で変性して反応させる方法。
【0097】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下である。反応時間は、例えば、1分以上、また、10時間以下である。
【0098】
反応方式としては、回分式、連続式が挙げられ、変性反応を均一に実施するためには、好ましくは、回分式が挙げられる。
【0099】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機パーオキシド、有機パーエステルなどが挙げられる。
【0100】
有機パーオキシドとしては、例えば、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシド)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。また、有機パーエステルとしては、例えば、tert-ブチルパーアセテート、tert-ブチルパーフェニルアセテート、tert-ブチルパーイソブチレート、tert-ブチルパーsec-オクトエート、tert-ブチルパーピバレート、クミルパーピバレート、tert-ブチルパージエチルアセテートなどが挙げられる。さらに、ラジカル重合開始剤として、その他のアゾ化合物、例えば、アゾビス-イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチルニトリルも挙げられる。
【0101】
ラジカル重合開始剤のうち、好ましくは、有機パーオキシド、より好ましくは、ジ-tert-ブチルパーオキシドが挙げられる。
【0102】
ラジカル重合開始剤の配合割合は、第2オレフィン重合体100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、10質量部以下である。
【0103】
また、第2オレフィン重合体の調製は、上記(1)~(4)の方法において、溶媒の存在下、あるいは、無溶媒で実施する。
【0104】
溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、アルコール、ケトン、セルソルブ類、エステル、および、ハロゲン化炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、および、デカンが挙げられる。脂環族炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、および、メチルシクロヘキサンが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、および、フェノールが挙げられる。ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、および、シクロヘキサノンが挙げられる。セルソルブ類としては、例えば、メチルセルソルブ、および、エチルセルソルブが挙げられる。エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、および、ギ酸ブチルが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、および、クロルベンゼンが挙げられる。
【0105】
上記変性を溶媒の存在下で実施する場合には、得られた第2オレフィン重合体は、ワニスとして調製される。
【0106】
第2オレフィン重合体の調製は、好ましくは、変性効率の観点から、上記(1)の方法が選択される。
【0107】
オレフィン重合体は、好ましくは、第1オレフィン重合体、または、第2オレフィン重合体を含み、より好ましくは、接着性および耐擦傷性の観点から、第2オレフィン重合体のみを含む。
【0108】
接着剤組成物は、さらに、炭化水素系合成油または半固体状炭化水素を含むこともできる。
【0109】
接着剤組成物は、炭化水素系合成油または半固体状炭化水素を含むと、加飾層2と接着層3との間の、低温における接着性を向上できる。
【0110】
炭化水素系合成油および半固体状炭化水素は、詳しくは後述するが、ともに、炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。つまり、炭化水素系合成油および半固体状炭化水素は、炭素数2~20のオレフィンを重合してなる。
【0111】
一方、炭化水素系合成油および半固体状炭化水素は、互いに異なる動粘度を有する。つまり、炭化水素系合成油および半固体状炭化水素は、動粘度によって区別できる。
【0112】
炭化水素系合成油の動粘度、および、半固体状炭化水素の動粘度は、例えば、炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位の種類、および、炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位の含有量を調整することによって、所定の範囲に設定できる。
【0113】
また、上記したオレフィン重合体と、炭化水素系合成油および半固体状炭化水素とは、上記したオレフィン重合体において記載した融解熱、および、重量平均分子量によって、区別できる。詳しくは、炭化水素系合成油および半固体状炭化水素は、上記したオレフィン重合体における、所定の融解熱、および、所定の重量平均分子量のうち、少なくとも1つを有さない。
【0114】
以下、炭化水素系合成油および半固体状炭化水素について、それぞれ詳述する。
【0115】
炭化水素系合成油は、炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。つまり、炭化水素系合成油は、炭素数2~20のオレフィンを重合してなる。
【0116】
炭素数2~20のオレフィンとしては、例えば、上記した第1オレフィン重合体で挙げた炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられる。炭素数2~20のオレフィンとして、好ましくは、エチレン、および、プロピレンが挙げられる。つまり、好ましくは、炭化水素系合成油は、エチレン/プロピレン共重合体である。
【0117】
炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位が、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位を含む場合には、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の総量100モル%に対して、エチレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、30モル%以上、好ましくは、40モル%以上、また、例えば、70モル%以下、好ましくは、60モル%以下である。また、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、例えば、30モル%以上、好ましくは、40モル%以上、また、例えば、70モル%以下、好ましくは、60モル%以下である。
【0118】
なお、上記した含有割合は、例えば、13C-NMR測定などの公知の手段で確認される。
【0119】
炭化水素系合成油は、公知の重合触媒の存在下で、上記の炭素数2~20のオレフィンを重合させることにより得られる。重合触媒としては、バナジウムオキシ化合物(例えば、バナジウムオキシエトキシドジクロリド)、および、有機アルミニウム化合物(例えば、エチルアルミニウムセスキクロリド)が挙げられる。
【0120】
炭化水素系合成油の、40℃における動粘度は、例えば、30mm2/秒以上、好ましくは、300mm2/秒以上、より好ましくは、5,000mm2/秒以上、さらに好ましくは、20,000mm2/秒、また、例えば、500,000mm2/秒以下、好ましくは、400,000mm2/秒以下、より好ましくは、300,000mm2/秒以下、さらに好ましくは、100,000mm2/秒、とりわけ好ましくは、50,000mm2/秒である。
【0121】
40℃における動粘度が、上記範囲内であれば、加飾層2と接着層3との間の、低温における接着性を向上できる。
【0122】
なお、40℃における動粘度は、ASTM D 445に基づいて測定できる。
【0123】
半固体状炭化水素は、炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。つまり、半固体状炭化水素は、炭素数2~20のオレフィンを重合してなる。
【0124】
炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、上記した第1オレフィン重合体で挙げた炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられる。炭素数2~20のα-オレフィンとして、好ましくは、エチレン、プロピレン、および、1-ブテンが挙げられる。
【0125】
半固体状炭化水素は、上記した炭化水素系合成油と同様の方法で製造することができる。
【0126】
半固体状炭化水素の、200℃における動粘度は、例えば、1,000mm2/秒以上、好ましくは、1,100mm2/秒以上、より好ましくは、1,200mm2/秒以上、また、例えば、100,000mm2/秒以下、好ましくは、80,000mm2/秒以下、より好ましくは、60,000mm2/秒以下である。
【0127】
200℃における動粘度が、上記範囲内であれば、加飾層2と接着層3との間の、低温における接着性を向上できる。
【0128】
なお、200℃における動粘度は、JIS K 2283に基づいて測定できる。
【0129】
オレフィン重合体と、炭化水素系合成油または半固体状炭化水素との総量100質量部に対して、オレフィン重合体の配合割合は、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、60質量部以上、さらに好ましくは、70質量部以上、また、例えば、99質量部以下である。また、炭化水素系合成油または半固体状炭化水素との総量100質量部に対して、炭化水素系合成油、または、半固体状炭化水素の配合割合は、例えば、1質量部以上、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。
【0130】
また、接着剤組成物に対して、オレフィン重合体の配合割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上、とりわけ好ましくは、75質量%以上、また、例えば、99質量%以下である。また、接着剤組成物に対して、炭化水素系合成油、または、半固体状炭化水素の配合割合は、例えば、1質量%以上、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、とりわけ好ましくは、15質量%以下である。
【0131】
オレフィン重合体の配合割合、および、炭化水素系合成油または半固体状炭化水素の配合割合が、上記範囲内であれば、加飾層2と接着層3との間の、低温における接着性を、より一層向上できる。
【0132】
また、接着剤組成物は、さらに、他の成分を含むこともできる。
【0133】
他の成分としては、例えば、他のオレフィン重合体、遷移金属化合物、粘着付与剤、顔料、揺変剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、顔料分散剤、および、帯電防止剤が挙げられ、好ましくは、粘着付与剤が挙げられる。
【0134】
他のオレフィン重合体は、上記オレフィン重合体、上記炭化水素系合成油、および、上記半固体状炭化水素に該当しないオレフィン重合体である。
【0135】
遷移金属化合物としては、例えば、酸化チタン(ルチル型)、および、酸化亜鉛が挙げられる。
【0136】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、および、テルペン樹脂が挙げられる。
【0137】
他の成分の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
詳しくは、他の成分が粘着付与剤である場合には、粘着付与剤の配合割合は、接着剤組成物に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、また、例えば、20質量%以下である。
【0138】
そして、接着剤組成物は、上記オレフィン重合体と、上記炭化水素系合成油または上記半固体状炭化水素と、必要に応じて配合される他の成分とを混合し、必要により加熱することにより得られる。
【0139】
また、接着剤組成物を溶媒(上記した溶媒)に溶解させて、ワニスとして調製することもできる。
【0140】
次いで、接着層3を形成するには、詳しくは後述するが、接着剤組成物(接着剤組成物のワニス)を加飾層2の厚み方向一方面に塗布し、乾燥させる。これにより、接着層3を形成する。
【0141】
接着層3の厚みは、例えば、3μm以上、また、例えば、50μm以下である。
【0142】
<加飾シートの製造方法>
加飾シート1の製造方法は、加飾層2を準備する第1工程と、加飾層2の厚み方向一方面に接着層3を配置する第2工程とを備える。
【0143】
第1工程では、
図2Aに示すように、加飾層2を準備する。
【0144】
第2工程では、
図2Bに示すように、加飾層2の厚み方向一方面に接着層3を配置する。
【0145】
加飾層2の厚み方向一方面に接着層3を配置するには、必要により、加飾層2の厚み方向一方面に表面処理を施す。
【0146】
表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、および、ケン化処理が挙げられ、好ましくは、コロナ処理が挙げられる。
【0147】
次いで、接着剤組成物(接着剤組成物のワニス)を加飾層2の厚み方向一方面に塗布し、乾燥させる。これにより、加飾層2の厚み方向一方面に接着層3を配置(形成)する。
【0148】
これにより、加飾シート1が得られる。
【0149】
<加飾シートの使用>
加飾フィルム1は、例えば、インサート成形法、インモールド成形法、および、特許第3733564に記載の「真空成形装置」によるTOM工法を利用することで、
図3に示すように、接着層3を介して、加飾シート1を、被加飾体10に配置(貼付)することによって、被加飾体10に加飾を施すことができる。
【0150】
被加飾体10は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン材料、ポリアミド樹脂、極性樹脂、および、無機材料が挙げられる。ポリオレフィン材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロンが挙げられる。極性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、および、アクリル樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、ED鋼板、Mg合金、SUS(ステンレス)、アルミニウム、アルミニウム合金、および、ガラスが挙げられる。
【0151】
被加飾体10は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0152】
そして、加飾フィルム1は、例えば、自動車内外装用部材、各種フロントパネル(例えば、AV機器)、表面化粧材(例えば、ボタン、エンブレム)、筐体(例えば、携帯電話)、ハウジング、表示窓、ボタン、家具用外装材、建築用内装材(浴室、壁面、天井、および、床)、表面化粧材(窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居、および、家具)、各種ディスプレイ、光学部材(例えば、レンズ、ミラー、ゴーグル、および、窓ガラス)、各種包装容器(例えば、瓶、化粧品容器、および、小物入れ)、雑貨(例えば、景品、および、小物)、白物家電(エアコン、冷蔵庫、洗濯機)、および、その他各種用途において、好適に用いることができる。
【0153】
<作用効果>
加飾シート1は、加飾層2と、接着層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。加飾層2は、所定のアイオノマー樹脂を含む。接着層3は、所定の融解熱および所定の重量平均分子量を有するオレフィン重合体を含む接着剤組成物からなる。
【0154】
つまり、加飾シート1は、特定の加飾層2と、特定の接着層3との組み合わせから構成されている。これにより、低温で被着体に融着・追従でき、また、被着体界面への薬品の侵入を防ぐ。その結果、低温における接着性に優れる。また、耐擦傷性および耐薬品性に優れる。
【0155】
とりわけ、加飾シート1は、低温における接着性に優れるため、例えば、低温(具体的には、120℃以下、好ましくは、110℃以下、また、例えば、80℃以上)であっても、加飾シート1を、被加飾体10に、強固に配置(貼付)できる。そのため、省エネルギーで、加飾シート1を用いて、被加飾体10を加飾することができる。その結果、生産性に優れる。
【0156】
<変形例>
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0157】
上記した説明では、加飾シート1は、加飾層2と、接着層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。一方、加飾シート1は、さらに、表皮層4を備えることもできる。具体的には、
図4に示すように、加飾シート1は、表皮層4と、加飾層2と、接着層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。より具体的には、加飾シート1は、表皮層4と、表皮層4の上面(厚み方向一方面)に直接配置される加飾層2と、加飾層2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される接着層3とを備える。
【0158】
表皮層4は、被加飾体10(後述)に、意匠性をさらに付与するために備えられる意匠層である。
【0159】
表皮層4は、フィルム形状を有する。表皮層4は、加飾層2の下面に接触するように、加飾層2の下面全面に、配置されている。
【0160】
表皮層4としては、樹脂シートが選択される。このような樹脂シートとしては、例えば、エチレン酢酸ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、および、ポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0161】
表皮層4の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0162】
そして、表皮層4は、例えば、加飾層2の厚み方向他方側に、公知の接着剤を介して、配置される。
【0163】
また、上記した説明では、加飾シート1は、加飾層2と、接着層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。一方、加飾シート1は、さらに、剥離層5を備えることもできる。具体的には、
図5に示すように、加飾シート1は、加飾層2と、接着層3と、剥離層5とを厚み方向一方側に向かって順に備える。より具体的には、加飾シート1は、加飾層2と、加飾層2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される接着層3と、接着層3の上面(厚み方向一方面)に直接配置される剥離層5とを備える。
【0164】
剥離層5は、使用時(加飾シート1を用いて、被加飾体10を加飾する)まで、接着層3を保護するための層である。
【0165】
剥離層5は、フィルム形状を有する。剥離層5は、接着層3の上面に接触するように、接着層3の上面全面に、配置されている。
【0166】
剥離層5としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリエステルフィルムが挙げられる。
【0167】
また、剥離層5には、好ましくは、離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、および、脂肪酸アミド系)による離型処理、または、シリカ粉による離型処理が施されている。
【0168】
剥離層5の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0169】
剥離層5は、使用時に、接着層3から剥離される。
【0170】
また、図示しないが、加飾シート1は、上記した表皮層4、および、上記した剥離層5の両方を備えることもできる。このような場合には、加飾シート1は、表皮層4と、加飾層2と、接着層3と、剥離層5とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、加飾シート1は、表皮層4と、表皮層4の上面(厚み方向一方面)に直接配置される加飾層2と、加飾層2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される接着層3と、接着層3の上面(厚み方向一方面)に直接配置される剥離層5とを備える。
【実施例】
【0171】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0172】
1.成分の詳細
各製造例、各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
【0173】
A-1:商品名「ハイミラン 1601」、ナトリウムで中和されたアイオノマー樹脂(エチレン-不飽和カルボン酸共重合体をナトリウムで中和することにより得られるアイオノマー樹脂)、厚み100μm、三井・ダウ ポリケミカル株式会社
A-2:商品名「ハイミラン 1650」、亜鉛で中和されたアイオノマー樹脂(エチレン-不飽和カルボン酸共重合体を亜鉛で中和することにより得られるアイオノマー樹脂)、厚み100μm、三井・ダウ ポリケミカル株式会社
A-3:PMMA、商品名「テクノロイ S001G」、厚み100μm、住化アクリル販売社製
A-4:ポリカーボネート樹脂、商品名「テクノロイ C000」、厚み100μm、住化アクリル販売社製
PP:ポリプロピレン、商品名「ポリプロピレン」、テストピース社製
AL:アルミニウム合金、商品名「アルミ合金 A5052」、テストピース社製
ABS:アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、商品名「ABS」、テストピース社製
PET:ポリエチレンテレフタレート、商品名「ポリエチレンテレフタレート」、テストピース社製
ロジンエステル:ロジンエステル、商品名「スーパーエステルW-125」、重量平均分子量:2,500、酸価(mgKOH/g):14.3、荒川化学工業社製
【0174】
2.融点および融解熱量の測定
示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融点および融解熱量を求めた。10℃/分で30℃から180℃まで昇温後、10℃/分で0℃まで降温し、再度10℃/分で150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に准じて融点と融解熱量を求めた。
【0175】
3.重量平均分子量の測定
GPC法に基づき、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(島津製作所社製;LC-10 series)を用いて、以下の測定条件に基づき、重量平均分子量を測定した。
検出器:島津製作所社製;C-R4A
カラム:TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(東ソー社製)
移動層:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流量:0.8ml/分
サンプルの濃度:3000ppm
注入量:100μl
【0176】
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、重量平均分子量を算出した。
【0177】
4.プロピレン含有量およびエチレン含有量
後述する製造例1について、プロピレン/1-ブテン共重合体におけるプロピレン含有量は、13C-NMRを利用して求めた。
【0178】
また、後述する製造例4について、エチレン/プロピレン共重合体のエチレン含有量は、13C-NMRを利用して求めた。
【0179】
5.変性量
後述する製造例2および製造例3について、共重合体100質量部に対する極性基含有単量体の変性量は、1H-NMRを利用して求めた。
【0180】
6.40℃動粘度の測定
ASTM D 445に基づいて測定した。
【0181】
7.200℃動粘度の測定
JIS K 2283に基づいて測定した。
【0182】
8.オレフィン重合体の調製
製造例1(第1オレフィン重合体)
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、溶媒としてのヘキサン900ml、および、1-ブテンを90g仕込んだ。次いで、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合した。これにより、プロピレン/1-ブテン共重合体(第1オレフィン重合体)を得た。その後、脱気して大量のメタノール中で第1オレフィン重合体を回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。プロピレン/1-ブテン共重合体の融点は、78.3℃であった。プロピレン/1-ブテン共重合体の融解熱量は、29.2J/gであった。プロピレン/1-ブテン共重合体の重量平均分子量は、330,000であった。プロピレン/1-ブテン共重合体のプロピレン含有量は、67.2モル%であった。融点、融解熱量および重量平均分子量の結果を、表1に示す。
【0183】
製造例2(第2オレフィン重合体)
製造例1のプロピレン/1-ブテン共重合体3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、製造例1のプロピレン/1-ブテン共重合体をトルエンに溶解させた。次いで、攪拌下で、極性基含有単量体としての無水マレイン酸382g、および、ラジカル重合開始剤としてのジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて供給し、続けて145℃で2時間攪拌した。これにより、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(第2オレフィン重合体)を得た。その後、冷却し、多量のアセトンを投入することにより、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体を沈殿させた。その後、これをろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
【0184】
無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の融点は75.8℃であった。無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の融解熱量は、28.6J/gであった。無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の重量平均分子量は、110,000であった。無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体における、無水マレイン酸の変性量は、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体100質量部に対して、1質量部であった。融点、融解熱量、重量平均分子量および変性量の結果を、表1に示す。
【0185】
製造例3
スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレン共重合体(G1652M、クレイトン社製)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレン共重合体をトルエンに溶解させた。次いで、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ -tert-ブチルペルオキシド175gを4時間かけて供給し、続けて145℃で2時間攪拌した。これにより、無水マレイン酸変性スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレンを得た。その後、冷却し、多量のアセトンを投入することにより、無水マレイン酸変性スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレンを沈殿させた。その後、これをろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
【0186】
無水マレイン酸変性スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレンの融点および融解熱量は、観察されなかった。無水マレイン酸変性スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレンの重量平均分子量は、100,000であった。無水マレイン酸変性スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレンにおける、無水マレイン酸の変性量は、無水マレイン酸変性スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレン100質量部に対して、2質量部であった。融点、融解熱量、重量平均分子量および変性量の結果を、表1に示す。
【0187】
9.炭化水素系合成油の調製
製造例4
充分窒素置換した攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1Lを加えた。次いで、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を、500ml/時間の量で連続的に1時間供給した。その後、触媒として、16mmol/Lに調整したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を500ml/時間で連続的に供給した。一方、重合器上部から、重合器内の重合液が常に1リットルになるように重合液を連続的に抜き出した。次に、バブリング管を用いてエチレンガスを47L/時間、プロピレンガスを47L/時間、水素ガスを20L/時間の量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で実施した。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥した。これにより、エチレン/プロピレン共重合体(炭化水素系合成油)を得た。
【0188】
エチレン/プロピレン共重合体のエチレン含有量は、55.9モル%であった。エチレン/プロピレン共重合体の重量平均分子量は、14,000であった。エチレン/プロピレン共重合体の、40℃動粘度は37,500mm2/秒であった。エチレン/プロピレン共重合体の、200℃動粘度は132mm2/秒であった。
【0189】
10.加飾シートの製造
実施例1
製造例1のプロピレン/1-ブテン共重合体80質量部と、製造例4の炭化水素系合成油20質量部とを、メチルシクロヘキサン/酢酸エチル=80/20の混合溶剤400質量部に加熱溶解した。これにより、接着剤組成物を得た。
【0190】
次いで、接着剤組成物を、加飾層としての「ハイミラン 1601」(A-1)の厚み方向一方面(コロナ処理面)に、アプリケーターを用いて、塗布した。これにより、加飾層の厚み方向一方面に、接着層(15g/m2)を配置した。これにより、加飾シートを製造した。
【0191】
次いで、この加飾シートを用いて、被加飾体を加飾した。具体的には、上下ボックスからなる布施真空社製「両面真空成形装置 NGF-0404」内に装備された上下昇降テーブル上に、被加飾体としての、「ポリプロピレン」(PP)を載置した。次いで、加飾シートを両面真空成型装置の成型基材(成型品)の上部にあるシートクランプ枠に、セットした。続いて、上下ボックス内の真空度が99.0kPaになるように減圧し、近赤外線ヒーターを用いて加飾シートの温度が110℃になるまで加熱し、成型基材を上昇させて、成型基材と塗加飾シートを圧着させ、5秒間保持した。その後、上ボックスのみを大気圧に開放した。これにより、被加飾体を加飾した。
【0192】
実施例2~実施例7、および、比較例1~比較例3
表2に従い、実施例1と同様の手順で、加飾シートを製造し、また、被加飾体を加飾した。
【0193】
11.評価
<接着性>
(110℃貼合せ外観)
被加飾体を加飾した後(加飾シートを110℃で圧着した後)に、加飾シートの外観について、下記の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
〇:加飾シートに、皺が観測されなかった。
×:加飾シートに、皺が観測された。
【0194】
(110℃貼合せ接着強度)
加飾された被加飾体を、幅15mmの大きさに切り出して試験片を作製した。この試験片について、万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度200mm/分にて、180°剥離試験を実施して、被加飾体から、加飾シートを剥離し、剥離強度を測定した。その結果を表1に示す。また、剥離強度について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
【0195】
(耐擦傷性)
加飾された被加飾体の表面(加飾層)について、光沢度計を用いて、光沢度(摩耗前の光沢度)を測定した。次いで、加飾された被加飾体の表面(加飾層)を、#0000のスチールウールで荷重500gをかけて10往復した(加飾層を摩擦した。)。摩擦後の加飾層について、光沢度計を用いて、光沢度(摩耗後の光沢度)を測定した。その後、下記式(2)に基づき、光沢度の変化率を算出した。光沢度の変化率が低い方が、耐擦傷性に優れることを意味する。その結果を表2に示す。
光沢度の変化率=(摩耗前の光沢度-摩耗後の光沢度)/摩耗前の光沢度×100 (2)
【0196】
(耐キシレンラビング性)
加飾された被加飾体の表面(加飾層)について、光沢度計を用いて、光沢度(摩耗前の光沢度)を測定した。次いで、加飾された被加飾体表面(加飾層)を、キシレンが染み込んだベンコットM-1で50往復した(加飾層を摩擦した。)。摩擦後の加飾層について、光沢度計を用いて、光沢度(摩耗後の光沢度)を測定した。その後、上記式(2)に基づき、光沢度の変化率を算出した。光沢度の変化率が低い方が、耐キシレンラビング性に優れることを意味する。その結果を表2に示す。
【0197】
(耐薬品性)
ASTM D-543に基づいて、10%水酸化ナトリウム溶液(和光純薬社製)を用いて耐薬品性試験をした。具体的には、加飾された被加飾体を10%水酸化ナトリウム溶液に23℃、7日間浸漬した。耐薬品性について、下記の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
〇:加飾層が剥離しなかった。
×:加飾層が剥離した。
【0198】
【0199】
【符号の説明】
【0200】
1 加飾シート
2 加飾層
3 接着層