(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】医用データ処理装置、X線CT装置、医用データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A61B6/03 573
(21)【出願番号】P 2021031529
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-02-13
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399019892
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディンプル・モッジル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ラ・リビエール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン リーウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ユウ
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-532691(JP,A)
【文献】特開2007-229464(JP,A)
【文献】特開2010-125334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0208084(US,A1)
【文献】特開2013-81765(JP,A)
【文献】Paulo R. S. Mendonca,A Flexible Method for Multi-Material Decomposition of Dual-Energy CT Images,IEEE Transactions on Medical Imaging,2014年01月01日,Volume: 33, Issue: 1,99-116,https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/6600785
【文献】Rafael Simon Maia,Parallel multi-material decomposition of Dual-Energy CT data,Proceedings of the 26th IEEE International Symposium on Computer-Based Medical Systems,2013年06月,Vol.7258,465-468,https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/6627842
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエネルギー成分に対応するデータを取得し、
前記データに物質弁別を行い前記データのボクセルの前記複数のエネルギー成分それぞれの減弱値を複数の物質成分に分解する処理回路を備え、
前記処理回路は、(1)前記ボクセルの前記減弱値がボリュームフラクション条件に一致するか判定し、(2)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致する場合、nを3以上の自然数として、前記減弱値をn個の物質成分に分解し、(3)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致しない場合、前記ボクセルの減弱値を、前記ボクセルの前記減弱値に最も近い(n-2)次元空間であって、(n-1)個の物質成分の(n-2)次元空間に射影して射影された点を生成し、前記射影された点の減弱値を前記(n-1)個の物質成分に分解するようにすることにより前記それぞれの減弱値を前記複数の物質成分に分解する、医用データ処理装置。
【請求項2】
前記ボリュームフラクション条件は、(1)前記ボクセルにおける前記複数の物質成分のボリュームフラクションはそれぞれ非負であること、および(2)前記ボクセルの前記ボリュームフラクションの総計は1であることであり、
前記処理回路は、前記ボクセルの減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致するかを判定するため、
(1)それぞれの軸に沿って、前記複数のエネルギー成分のそれぞれの成分に対応する減弱値が示されている減弱エネルギー空間での、前記ボクセルの減弱値が位置する点を決定し、
(2)前記決定された点を、n-タプルのそれぞれの(n-1)-ポリトープと比較することによってn-タプルを選択し、前記n-タプルのそれぞれの(n-1)-ポリトープは、前記n個の物質成分それぞれに対応する頂点であって、前記n個の物質成分それぞれの単位ボリュームフラクションの減弱値の座標を有する頂点を有し、
前記処理回路は、
前記決定された点が前記選択されたn-タプルの前記(n-1)-ポリトープ内にある場合、メンドンサ法を用いて、前記選択されたn-タプルにおける前記n個の物質成分のボリュームフラクションを前記ボクセルの物質弁別として決定し、
前記決定された点が前記選択されたn-タプルの前記(n-1)-ポリトープ内にない場合、前記決定された点に最も近い(n-2)-ポリトープであって、前記(n-1)-ポリトープの(n-2)-ポリトープを決定し、前記ボクセルの前記減弱値を、前記最も近い(n-2)-ポリトープに対応する(n-1)-タプルの物質成分のボリュームフラクションに分解する、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項3】
前記処理回路は、前記決定された点と前記それぞれの(n-1)-ポリトープとのハウスドロフ距離を比較し、前記決定された点と前記それぞれの(n-1)-ポリトープとのハウスドロフ距離が最も小さい前記n-タプルを選択する、請求項2に記載の医用データ処理装置。
【請求項4】
前記処理回路は、(1)前記決定された点、または、(2)前記それぞれの(n-1)-ポリトープが前記決定された点を含まない場合、前記決定された点に最も近い、前記それぞれの(n-1)-ポリトープの中の点、のいずれかを含む(n-1)-ポリトープを決定することにより、前記n-タプルを選択する、請求項2に記載の医用データ処理装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記それぞれの(n-1)-ポリトープの複数の(n-1)-ポリトープが、前記決定された点を含む、または前記決定された点に最も近い前記点を含む場合、
前記複数の(n-1)-ポリトープのうち最も小さい(n-1)-ポリトープに対応する前記n-タプルを選択する、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項6】
前記ボリュームフラクション条件は、(1)前記ボクセルの前記複数の物質成分それぞれのボリュームフラクションは非負であること、および(2)前記ボクセルの前記ボリュームフラクションの総計は1であることであり、
前記処理回路は、前記ボクセルの減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致するかを判定するため、
(1)それぞれの軸に沿って、前記複数のエネルギー成分のそれぞれの成分に対応する減弱値を示されている減弱エネルギー空間での、前記ボクセルの減弱値が位置する点を決定し、
(2)前記決定された点が、前記複数の物質成分のn-タプルそれぞれに対応する前記減弱エネルギー空間でのそれぞれの(n-1)-ポリトープの合併集合によって定義される閉領域内にあるか判定し、前記n-タプルのそれぞれの(n-1)-ポリトープは、前記n個の物質成分それぞれに対応する頂点であって、前記n個の物質成分それぞれの単位ボリュームフラクションの減弱値の座標を有する頂点を有し、
前記処理回路は、
前記決定された点が前記閉領域内にある場合、メンドンサ法を用いて、前記決定された点に最も近い前記(n-1)-ポリトープに対応する選択されたn-タプルにおける前記n個の物質成分のボリュームフラクションを決定し、
前記決定された点が前記閉領域内にない場合、前記決定された点に最も近い(n-2)-ポリトープであって、前記(n-1)-ポリトープ内の(n-2)-ポリトープを決定し、前記ボクセルの前記減弱値を、前記最も近い(n-2)-ポリトープに対応する(n-1)タプルの物質成分のボリュームフラクションに分解する、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項7】
前記射影された点は、前記決定された点の、前記最も近い(n-2)-ポリトープの(n-2)次元空間への直交射影であって、
前記処理回路は、前記決定された点が前記選択されたn-タプルの前記(n-1)-ポリトープ内になく、前記射影された点が前記最も近い(n-2)-ポリトープ内にない場合、最も近い(n-3)-ポリトープを前記決定された点に対し決定し、前記最も近い(n-3)-ポリトープは前記決定された点に最も近い、前記最も近い(n-2)-ポリトープ内の(n-3)-ポリトープであり、
前記処理回路は、前記ボクセルの前記減弱値を前記最も近い(n-3)-ポリトープに対応する(n-2)物質成分のボリュームフラクションに分解する、
請求項2に記載の医用データ処理装置。
【請求項8】
前記射影された点は、前記決定された点の、前記最も近い(n-2)-ポリトープの(n-2)次元空間への直交射影であり、
前記処理回路は、前記決定された点が前記閉領域内になく、前記射影された点が前記最も近い(n-2)-ポリトープ内にない場合、最も近い(n-3)-ポリトープを前記決定された点に対し決定し、前記最も近い(n-3)-ポリトープは前記決定された点に最も近い、前記最も近い(n-2)-ポリトープ内の(n-3)-ポリトープであり、
前記ボクセルの前記減弱値を前記最も近い(n-3)-ポリトープに対応する(n-2)物質成分のボリュームフラクションに分解する、請求項6に記載の医用データ処理装置。
【請求項9】
nは3または4であり、
nが3の場合、前記(n-1)-ポリトープは三角形であり、前記(n-2)-ポリトープは辺であり、前記選択されたn-タプルは前記物質成分の3つ組であり、前記決定された(n-1)タプルは前記物質成分のペアであり、
nが4の場合、前記(n-1)-ポリトープは三角錐であり、前記(n-2)-ポリトープは三角形であり、前記選択されたn-タプルは前記物質成分の4つ組であり、前記決定された(n-1)-タプルは前記物質成分のトライアッドである、請求項2に記載の医用データ処理装置。
【請求項10】
前記処理回路は、
複数の検出素子の各検出素子について前記エネルギー成分に対応する投影データを前記データとして取得し、前記投影データを再構成して、前記エネルギー成分それぞれに対応する画像を生成し、前記画像に対して前記物質弁別を行う、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項11】
前記処理回路は、
複数の検出素子の各検出素子について前記エネルギー成分に対応する投影データを前記データとして取得し、前記投影データに対して前記物質弁別を行い、前記物質弁別により得られたデータを再構成して画像を生成する、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項12】
X線を放射するX線源と、
前記X線源から放出され、被検体を通る前記X線の複数のエネルギー成分を検出する複数の検出素子と、
前記複数のエネルギー成分に対応するデータを取得し、
前記データに物質弁別を行い前記データのボクセルの前記複数のエネルギー成分それぞれの減弱値を複数の物質成分に分解する処理回路を備え、
前記処理回路は、(1)前記ボクセルの前記減弱値がボリュームフラクション条件に一致するか判定し、(2)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致する場合、nを3以上の自然数として、前記減弱値をn個の物質成分に分解し、(3)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致しない場合、前記ボクセルの減弱値を、前記ボクセルの前記減弱値に最も近い(n-2)次元空間であって、(n-1)個の物質成分の(n-2)次元空間に射影して射影された点を生成し、前記射影された点の減弱値を前記(n-1)個の物質成分に分解するようにすることにより前記それぞれの減弱値を前記複数の物質成分に分解する、X線CT装置。
【請求項13】
医用データ処理装置により行われる医用データ処理方法であって、
複数のエネルギー成分に対応するデータを取得し、
前記データに物質弁別を行い前記データのボクセルの前記複数のエネルギー成分それぞれの減弱値を複数の物質成分に分解し、
前記それぞれの減弱値の前記複数の物質成分への分解は、
(1)前記ボクセルの前記減弱値がボリュームフラクション条件に一致するか判定し、(2)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致する場合、nを3以上の自然数として、前記減弱値をn個の物質成分に分解し、(3)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致しない場合、前記ボクセルの減弱値を、前記ボクセルの前記減弱値に最も近い(n-2)次元空間であって、n-1個の物質成分の(n-2)次元空間に射影して射影された点を生成し、前記射影された点の減弱値を前記(n-1)個の物質成分に分解することにより実行される、医用データ処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の医用データ処理方法を計算機に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用データ処理装置、X線CT装置、医用データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトルCT等、複数のエネルギー成分に対応するデータを取得するX線CT装置において、投影データまたは画像を、各物質成分ごとの画像に分解する物質弁別処理がある。
【0003】
しかしながら、物質弁別処理は、通常、投影データまたは画像を2つの物質成分に分解することに限定される。例えばメンドンサ法などを用いれば、投影データまたは画像を3つ以上の物質成分に物質弁別を行うことも考えられる。しかしながら、メンドンサ法では、例えば、投影データに対して、ボリュームフラクション制約などの付加的な制約/仮定が要求され、投影データがこれらの付加的な制約/仮定に違反する場合、十分な画質が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0069865号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0216951号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0129673号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用データ処理装置は、処理回路を備える。処理回路は、複数のエネルギー成分に対応するデータを取得し、前記データに物質弁別を行い前記データのボクセルの前記複数のエネルギー成分それぞれの減弱値を複数の物質成分に分解する。処理回路は、(1)前記ボクセルの前記減弱値がボリュームフラクション条件に一致するか判定し、(2)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致する場合、nを3以上の自然数として、前記減弱値をn個の物質成分に分解し、(3)前記ボクセルの前記減弱値が前記ボリュームフラクション条件に一致しない場合、前記ボクセルの減弱値を、前記ボクセルの前記減弱値に最も近い(n-2)次元空間であって、(n-1)個の物質成分の(n-2)次元空間に射影して射影された点を生成し、前記射影された点の減弱値を前記(n-1)個の物質成分に分解するようにすることにより前記それぞれの減弱値を前記複数の物質成分に分解する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、X線CT装置のX線源およびX線検出器の一例を示した図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理について説明した図である。
【
図2B】
図2Bは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理について説明した図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理の手順について説明したフローチャートである。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理の手順について説明したフローチャートである。
【
図3C】
図3Cは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理の手順について説明したフローチャートである。
【
図3D】
図3Dは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理の手順について説明したフローチャートである。
【
図3E】
図3Eは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う処理の手順について説明したフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う物質弁別処理について説明した図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う物質弁別処理について説明した図である。
【
図4C】
図4Cは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う物質弁別処理について説明した図である。
【
図4D】
図4Dは、実施形態に係る医用データ処理装置が行う物質弁別処理について説明した図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るX線CT装置の例について説明した図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るX線CT装置の例について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用データ処理装置、X線CT装置、医用データ処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(実施形態)
複数物質弁別のメンドンサ法は、参照により本明細書の全体に援用される、P.Mendoncaらの「デュアルエナジーCT画像の複数物質弁別のための柔軟な方法」(IEEE Trans. Med. Imag., 33, pp. 99-116 (2014)および米国特許番号9,036,879)に記載されている。メンドンサ法は、デュアルエナジー(Dual Energy:DE)コンピュータ断層撮影(CT)画像またはスペクトラルCT画像からのボクセル減弱値を3つの物質成分に一意に分解するためのボリュームフラクション条件/制約を課す。ただし、当該ボリュームフラクション条件が有効でない場合、メンドンサ法は成功しない。したがって、よりロバストなマルチマテリアルデコンポジションの方法が望まれる。
【0010】
本書に記載の方法および装置は、よりロバストなマルチ物質弁別を提供する。例えば、前記ボリュームフラクション条件が有効な場合、メンドンサ法がマルチ物質弁別に用いられる。しかし、前記ボリュームフラクション条件が有効でない場合、最短ハウスドロフ法または最接近エッジ法を用いて物質弁別を決定する。最短ハウスドロフ法では、物質成分のタプルが最短ハウスドロフ距離基準に基づいて選択され、当該選択されたタプルから最も近いエッジの物質成分を用いて物質弁別が実行される。当該最接近エッジ法では、物質成分のタプルは、どの一辺が減弱エネルギースペースに最も近いかに基づいて選択され、物質弁別は当該選択されたタプルを用いて実行される。以下に両方法のさらなる詳細を示す。
【0011】
図面に戻ると、同一符号は複数の図で同じまたは対応する部分を示すものとし、
図1に、第3世代ジオメトリで配置されたエネルギー統合検出器および第4世代ジオメトリで配置された光子計数検出器の両方のエネルギー統合検出器を有するコンピュータ断層撮影(CT)スキャナーの線源および検出器部分を示す。これは、スペクトラルCTデータを獲得しそれぞれのエネルギー成分画像を再構成するため、ひいては本書に記載のマルチ物質弁別法に用いられ得る、X線CT装置構成の非限定的な例に過ぎない。
図1に、X線CT装置システムにおいて所定の第3世代ジオメトリの検出部103と組み合わせて所定の第4世代ジオメトリの光子計数検出器(PCD)を設置するための実装を示す。
図1に、台116に静置されるスキャン対象の被検体OBJ、X線源112、コリメータ/フィルタ114、X線検出部103、および光子計数検出器PCD1からPCDNの、相対位置を示す。
【0012】
なお、実施形態に係るX線CT装置の線源及び検出器部分以外の構成も含めた構成については、
図5及び
図6において後述する。なお、
図5で後述する処理回路1010または
図6のプロセッサ1470が、処理回路の一例である。
【0013】
一実施形態では、X線源112、コリメータ/フィルタ114は、架台に回転可能に接続される回転成分110に固定的に接続され、PCDは、架台に固定的に接続される円形成分120に固定的に接続される。X線CT装置の架台は、被検体OBJをX線源からのX線の投影面に置くことを可能にする、開口部115も含む。X線検出部103は、架台に回転可能に接続される回転成分130に固定的に接続される。回転成分120および回転成分130は、投影角の漸進で被検体OBJの投影データを取得するようにX線源112と直径方向に対向したX線検出部103を保持して、同時に回転し得る。副鼻腔撮影図は、投影角が一方の軸に沿って配置され、投影データの空間位置が他方の軸に沿って配置された投影データを配置することによって、作成される。
【0014】
この非限定的な例は、スペクトラルCTの投影データを生成する1つの選択肢である。他の選択肢は、第4世代ジオメトリの検出器なしで第3世代ジオメトリのPCDを使うことを含み得る。さらに、第3世代ジオメトリで配置されるエネルギー積分型検出器をデュアルエナジーソース(例えば、高速kVp切り替えソース)とともに用いて、PCDを用いずにスペクトラルCTを生成することもできる。通常の当業者に理解されるように、スペクトラルCTの架台構成の他のいくつかの変形例を用い得る。
【0015】
スペクトラルCTでは、複数のエネルギー成分を有する放射線を用いて被検体OBJの投影計測を行う。これらの投影計測は、非スペクトラルCTと同様の従来のCT画像再構成を可能にする、一連の角度で行われる。ただし、非スペクトラルCTと異なりスペクトラルCTは、再構成されたスペクトル画像の、通常2つの物質成分である、物質成分への分解を可能にする、付加的情報(すなわち、スペクトル減弱情報)を生成する。イメージングされた被検体OBJを横断するX線ビームの減弱を発生させる2つの主要な相互作用メカニズムがあるため、物質弁別の結果は2成分の物質になる。これらの相互作用メカニズムは、コンプトン散乱と光電吸収である。スペクトルドメインからマテリアルドメインへの投影データのマッピングは画像再構成プロセスの前後どちらでも実行し得る。
【0016】
生体物質でのX線の減弱は、2つの物理的プロセス(すなわち、光電吸収とコンプトン散乱)によって支配される。したがって、与えられたボクセルに対応する減弱値はエネルギーの関数として表すことができ、以下の式(1)で示される分解によって近似できる。
【0017】
【0018】
ここで、μPE(E,x,y)を光電減弱とし、μC(E,x,y)をコンプトン減弱とする。
【0019】
あるいは、本減弱係数は高Zマテリアル(すなわち、マテリアル1)および低Zマテリアル(すなわち、マテリアル2)の分解に再配置され得て、以下の式(2)のようになる。
【0020】
【0021】
ここで、c1(x、y)およびc2(x、y)は、それぞれ第1および第2の物質成分に対応する。
【0022】
図2Aおよび2Bに、それぞれ筋肉(水)および骨の吸収係数μ1(E)およびμ2(E)を示す。
【0023】
検出されたスペクトルは以下の式(3)で与えられる。
【0024】
【0025】
ここで、減弱係数μ1およびμ2は、X線エネルギーの周知の関数であり、吸収力のある被検体OBJがない空気中を伝播するX線に対応するスペクトルSairも、例えば前述の較正に基づいて周知である。本検出されたスペクトルは、X線エネルギービンに粗く分解され得る(例えば、それぞれが、組み合わせたエネルギービンがおよそ20keVからおよそ160keVまでのエネルギースペクトルに及ぶように、それぞれのエネルギーサブバンドをカバーする5つのエネルギービンを用い得る)。第mエネルギービンのカウント値Nmは、以下の式(4)で与えられ得る。
【0026】
【0027】
ここで、wm(E)を第mエネルギービンのエネルギーサブバンドに対応するウインドウ設定関数とする。
【0028】
エネルギービン/成分ごとに、該エネルギービン/成分に対応する投影データからそれぞれのCT画像が再構成され得る。画像再構成の任意の周知の方法を用い得る。例えば、画像再構成プロセスは、フィルタ補正逆投影法、反復的画像再構成法(例えば、合計変量最小化規則化項を使う)、フーリエベース再構成法、または確率的画像再構成法のどれかを用いて実行し得る。
【0029】
換言すると、実施形態に係る医用データ処理装置の処理回路は、検出部103等に含まれる複数の検出素子の各検出素子についてX線源112から放出され、被検体OBJを通る前記X線の複数のエネルギー成分に対応する投影データを取得し、当該投影データを再構成して、各エネルギー成分それぞれに対応する画像を生成し、当該画像に対して物質弁別を行う。なお、実施形態はこれに限られず、処理回路は、複数の検出素子の各検出素子についてエネルギー成分に対応する投影データをデータとして取得し、取得した投影データに対して物質弁別を行い、物質弁別により得られたデータを再構成して画像を生成してもよい。
【0030】
少なくとも2つの異なるエネルギー成分の画像を再構成する場合、ボクセルの減弱値は物質成分に分解され得る。「ボクセル」という用語は、ボリュームピクセルを指す。例えば、μi,j=μ(rj(ベクトル量), Ei)は第iエネルギー成分の減弱およびロケーションrj(ベクトル量)での第jボクセルである。第1および第2の物質成分の減弱値は、それぞれμi(2)=μ(2)(Ei)で与えられる。これらの減弱値は、それぞれの物質成分の単位ボリュームフラクション(すなわち、ボクセルの全体ボリュームが物質成分で満たされている場合の減弱の量)に対応するようスケーリングされ、エネルギー成分がエネルギー値の範囲に分散される場合、単位ボリュームフラクションはエネルギー値の範囲で積分される。例えば、以下の式(5)が成り立つ。
【0031】
【0032】
ここでwiは、第iエネルギー成分のエネルギー値の範囲への相対寄与を示す、正規化されたウインドウ関数である)。上記の術語を用いて、物質弁別はボリュームフラクションαiについて以下の式(6)に示される行列方程式を解くことによって実行され得る。
【0033】
【0034】
ここで、αi=Vi/ΣjVjは第i物質成分のフラクション、ΣjVjを当該ボクセルの合計ボリュームとする。
【0035】
当該ボクセルを3つの物質成分に分解するために、付加的制約が課される場合がある。例えば、3物質のボリュームフラクションは、正確に1とすることができる。すなわち、以下の式(7)で与えられる。
【0036】
【0037】
つまり、ボクセルのボリューム内で、ボリュームの各部は、3つの物質成分の1つによって占められている。その後、上記の式を以下の式(8)のように変形して3物質を含むようにできる。
【0038】
【0039】
さらに、当該ボリュームフラクションは非負かつ1以下であるとすることができる。物質成分の数を4以上に増やすため、付加的制約が課され得る。
【0040】
一般的に、ボリュームには真空で占められる部分がない(すなわち、物質がボリュームの各部を占める)ため、当該ボリュームフラクションは1になるとされるので、当該ボリュームフラクション条件は保たれる。例えば、骨と肺が混在する領域に対応するボクセルでは、3つの物質成分は空気、水、骨かもしれない。造影剤(例えば、ヨウ素、ガドリニウム)を含む血管のある領域に対応するボクセルでは、ボクセル内の異なるボリュームは水、造影剤、または何か第3の成分(例えば、脂肪または骨)によって占められる。物質成分の正しいトライアッドを選ぶことによって、一般的に、上記の行列方程式を解くボリュームフラクションの線形結合が見つかり得る(すなわち、当該線形結合は1になり、当該ボクセルの減弱値μ1、iを分解する)。
【0041】
ただし、ボリュームフラクションの線形結合が上記の行列方程式を解くためのトライアッドがなく、当該ボリュームフラクション条件が満たされない場合がある。当該ボリュームフラクション条件が満たされない場合、別の方法(例えば、最短ハウスドロフ距離法または最接近エッジ法)が代わりに用いられる。
【0042】
複数物質弁別が3つの物質成分のn-タプル(すなわち、3-タプル)になる場合、最短ハウスドロフ距離法では、減弱エネルギー空間において、ボクセルの減弱値に対応する点までの最短ハウスドロフ距離を有する物質成分の3-タプル(すなわち、トライアッド)の三角形、を選ぶものとする。その後、選ばれた三角形内で、ボクセル減弱の点に最も近い三角形の辺に対応する物質成分のペアが、物質弁別に用いられる。当該三角形の頂点が他のどの辺よりも近い場合、物質弁別は、ボクセルが完全に、最も近い頂点に対応する物質成分であるような物質弁別である。
【0043】
最接近エッジ法は最短ハウスドロフ距離法に似ているが、最短ハウスドロフ距離での三角形を使うのではなく、最も近いエッジは、それぞれの物質成分のトライアッドに対応する三角形のすべてから選択される。
【0044】
図3Aおよび3Bに、複数物質弁別を実行する方法300のフロー図を示す。すなわち、実施形態に係る医用データ処理装置(X線CT装置)は、処理回路を備える。処理回路は、複数のエネルギー成分に対応するデータを取得し、当該データに物質弁別を行い当該データのボクセルの複数のエネルギー成分それぞれの減弱値を複数の物質成分に分解する。
【0045】
図3Aでは、方法を一般化して、当該スペクトル画像をn個の物質成分に分解する。
【0046】
例えば、nが3の場合、(n-1)-ポリトープは三角形であり、(n-2)-ポリトープは辺であり、ステップ320で選択されるn-タプルは物質成分の3つ組であり、ステップ330で決定される(n-1)タプルは物質成分のペアである。
【0047】
また、nが4の場合、(n-1)-ポリトープは三角錐であり、(n-2)-ポリトープは三角形であり、ステップ320で選択されるn-タプルは物質成分の4つ組であり、ステップ330で決定される(n-1)-タプルは物質成分のトライアッドである。
【0048】
一方
図3Bでは、n個の物質成分を3とし、説明を簡略化する。方法300を、スペクトル画像303内の与えられたボクセルについて記載する。つまり、与えられたボクセルで方法300のステップを実行すると、当該与えられたボクセルのエネルギー成分減弱値は物質成分減弱値に分解される。スペクトル画像303を物質成分画像に分解するため、スペクトル画像303の各ボクセルについて、示されたステップを繰り返す。
【0049】
方法300のステップ310で、スペクトル画像303の与えられたボクセルについて、それぞれのエネルギー成分の減弱値を用いて当該減弱エネルギー空間の点を決定する。すなわち、処理回路は、それぞれの軸に沿って、複数のエネルギー成分のそれぞれの成分に対応する減弱値が示されている減弱エネルギー空間での、ボクセルの減弱値が位置する点を決定する。
図4Aから4Dに、第1のエネルギー成分の減弱値μ(E1)が水平軸に沿っており、第2のエネルギー成分の減弱値μ(E2)が垂直軸に沿っている、減弱エネルギー空間を示す。
図4Aから4Dに示す非限定的な例では、第1の軸は第1の物質成分の測定された減弱値μ(E1)に対応し、第2の軸は第2の物質成分の測定された減弱値μ(E2)に対応する。
【0050】
例えば、kVp切り替えを用いてスペクトルCTデータを取得する場合、第1のエネルギー成分は、低kVp設定がX線管に適用される場合のX線スペクトルであり得、第2のエネルギー成分は、高kVp設定がX線管に適用される場合のX線スペクトルであり得る。スペクトラルCTデータを取得するためPCDが用いられる場合、第1のエネルギー成分はPCDの第1のエネルギービンに対応し、第2のエネルギー成分はPCDの第2のエネルギービンに対応し得る。さらに、2つの別個のエネルギーE1およびE2で単一エネルギーのスペクトル画像を生成するため取得したスペクトラルCTを用い得る。例えば、
図4Dに、第1のエネルギー成分をE1=75keVとし、当該第2のエネルギー成分をE2=135keVとする、単一エネルギーのスペクトル画像について、シミュレーションされた減弱係数を示す。
【0051】
一般的には生体物質で見られる低Z(原子番号)原子のケースである、2つの支配的な減弱メカニズムのみがX線減弱に寄与する場合、前述のように、2つのエネルギー成分のみあれば、当該物質のスペクトル減弱シグネチャからのすべての非重複情報を実行し得る。ただし、Kエッジ効果による高Z原子がある原子について付加スペクトル情報が取得され得る。2エネルギー成分を超えるこの付加情報は、物質弁別に使われ、この場合減弱エネルギー空間は3次元以上を有し得る。ただし、
図4Aから4Dでは、ロバストな複数物質弁別法を説明するため、2エネルギー成分のみを有する減弱エネルギー空間の非限定的なケースが使われる。
【0052】
図4Aでは、例えば、与えられたボクセルの減弱値は、点δを定義し、3つの物質成分の単位ボリュームフラクションは三角形の各頂点を定義する。つまり、ボクセルに対応するボリュームが完全に第1の物質で満たされている場合、当該第1および第2の物質成分に対応する減弱は頂点αで示される値を有する。同様に、頂点βは、当該第2の物質の単位ボリュームフラクションの減弱値に対応し、頂点γは、当該第3の物質の単位ボリュームフラクションの減弱値に対応する。
図4Aは、点δが三角形αβγ内にあるケースを示し、
図4Bおよび4Cは、点δが三角形αβγの外にある2つのケースを示す。
【0053】
簡易化のため、
図4Aから4Cは3つの物質成分のみを示すが、一般的に複数物質弁別には3を超える物質成分が用いられ得る。3を超える物質成分が複数物質弁別に用いられ得る場合、物質成分の各3つ(トライアッド)のセットはそれぞれ三角形を形成する。
図4Dは、例えば、5つの物質成分の非限定的な例を示す。与えられたボクセルの空間的減弱値が物質成分のトライアッドに分解されており(つまり、n=3としたn-タプル)、当該トライアッドが選択され得る4以上の物質成分がある場合、当該分解の可能なトライアッドの数は、m-2の階乗と同じ大きさであり得、ここでmを、トライアッドが選択され得る物質成分の合計数とする。物質成分の各可能なトライアッドは、減弱エネルギー空間内のそれぞれの三角形に対応する。ある実施形態(例えば、ハウスドロフ法)では、対応する三角形が点δに最も近い物質成分のトライアッドが、物質弁別に選択される。
【0054】
方法300のステップ320で、物質成分のトライアッド(n-タプル)が、点δと当該トライアッドの対応する三角形((n-1)-ポリトープ)との空間的関係に基づいて物質弁別に選択される。すなわち、ステップ320において、処理回路は、ボクセルの減弱値がボリュームフラクション条件に一致するかを判定するため、ステップ310で決定された点δを、n-タプルのそれぞれの(n-1)-ポリトープと比較することによってn-タプルを選択する。当該n-タプルのそれぞれの(n-1)-ポリトープは、n個の物質成分それぞれに対応する頂点であって、n個の物質成分それぞれの単位ボリュームフラクションの減弱値の座標を有する頂点を有する。ある実施形態では、最短ハウスドロフ距離を有する三角形に対応するトライアッドが、物質弁別のトライアッドとして選択される。すなわち、ステップ320において、処理回路は、決定された点δとそれぞれの(n-1)-ポリトープとのハウスドロフ距離を比較し、決定された点δとそれぞれの(n-1)-ポリトープとのハウスドロフ距離が最も小さいn-タプルを選択する。
【0055】
他の実施形態では、点δを含む三角形であって最小領域を有する三角形に対応するトライアッドが物質弁別のトライアッドとして選択される。当該点δがそのような三角形の内側にもない場合、最小領域を有しかつ当該点δに最も近い点を含む三角形が物質弁別のトライアッドとして選択される。
【0056】
すなわち、処理回路は、(1)決定された点δまたは、(2)決定された点δに最も近い、それぞれの(n-1)-ポリトープの中の点(当該それぞれの(n-1)-ポリトープが決定された点δを含まない場合)のいずれかを含む(n-1)-ポリトープを決定することにより、n-タプルを選択する。なお、処理回路は、それぞれの(n-1)-ポリトープの複数の(n-1)-ポリトープが、決定された点δを含む、または決定された点δに最も近い点を含む場合、当該複数の(n-1)-ポリトープのうち最も小さい(n-1)-ポリトープに対応するn-タプルを選択してもよい。
【0057】
方法300のステップ325で、当該点δはステップ320で選択された当該トライアッドの当該三角形の内外どちらにあるか判定する質問が実行される。
【0058】
すなわち、ステップ325において、処理回路は、ボクセルの減弱値が、ボリュームフラクション条件に一致するか判定する。ここで、ボリュームフラクション条件は、(1)ボクセルの複数の物質成分それぞれのボリュームフラクションが非負であること、及び(2)ボクセルのボリュームフラクションの総計は1であることである。 ボクセルの減弱値が、ボリュームフラクション条件に一致することは、決定された点δが、選択されたn-タプルの(n-1)-ポリトープの内側にあることに対応する。
【0059】
当該点δが当該選択された三角形((n-1)-ポリトープ)の内側にある場合、方法300はステップ360に進む。すなわち、ボクセルの減弱値がボリュームフラクション条件に一致する場合、処理はステップ360に進み、処理回路は、nを3以上の自然数として、減弱値をn個の物質成分に分解する。例えば、決定された点δが選択されたn-タプルの(n-1)-ポリトープ内にある場合、処理回路は、メンドンサ法を用いて、選択されたn-タプルにおけるn個の物質成分のボリュームフラクションをボクセルの物質弁別として決定する。
【0060】
これに対して、点δが選択された三角形の内側にない場合、方法300はステップ330に進む。
【0061】
図4Aに、当該点δが当該三角形の内側にあるケースを示し、
図4Bおよび4Cに、当該点δが当該三角形の外側にあるケースを示す。
【0062】
方法300のステップ360で、物質成分のトライアッド(n-タプル)へボクセルの減弱値を分解するため複数物質弁別が実行される。例えば、当該物質弁別は、ボリュームフラクションαiが非負という条件のある、以下の式(8)で示される行列方程式を満足するボリュームフラクションαiについて解くことによって、実行され得る。
【0063】
【0064】
物質成分の当該選択されたトライアッドへの物質弁別を実行するその他の方法も、通常の当業者によって理解されるように、用いられ得る。
【0065】
方法300のステップ330で、ステップ320で選択された物質成分の当該トライアッド(n-タプル)から、物質成分のペア((n-1)-タプル)が選択される。物質成分のこのペア((n-1)-タプル)は、当該点δに最も近い当該三角形((n-1)-ポリトープ)の辺((n-2)-ポリトープ)に対応するように選択される。
【0066】
すなわち、処理回路は、決定された点が選択されたn-タプルの前記(n-1)-ポリトープ内にない場合、決定された点に最も近い(n-2)-ポリトープであって、(n-1)-ポリトープの(n-2)-ポリトープを決定する。
【0067】
図4Bで、当該辺αγは、当該点δに最も近い。最も近いエッジ((n-2)-ポリトープ)は、例えば、三角形((n-1)-ポリトープ)の各辺((n-2)-ポリトープ)によって定義された線分(つまり、n-1次元空間)を決定することによって、および点δを当該線分(n-1次元空間)内の投影された点εに直交に射影することによって、決定され得る。当該射影された点εが当該点δに最も近い辺((n-2)-ポリトープ)は、
図4Bおよび4Cに示すように、当該最も近いエッジ((n-2)-ポリトープ)である。
【0068】
すなわち、処理回路は、ボクセルの減弱値がボリュームフラクション条件に一致しない場合、ボクセルの減弱値を、ボクセル記減弱値に最も近い(n-2)次元空間であって、(n-1)個の物質成分の(n-2)次元空間に射影して射影された点を生成する。射影された点は、決定された点の、最も近い(n-2)-ポリトープの(n-2)次元空間への直交射影である。
【0069】
方法300のステップ340で、当該ボクセルの減弱値をステップ330からの物質成分のペア((n-1)-タプル)に分解するため複数物質弁別が実行される。例えば、
図4Bで、当該第2の物質成分のボリュームフラクションはゼロになるように決定される(すなわち、α2=0)。したがって、以下の式(9)で与えられる行列方程式を満足するボリュームフラクションαiについて解くことによって物質弁別は実行され得る。
【0070】
【0071】
ここで、μi,j(ε)を、第iエネルギー成分の射影された点εの減弱値とする。上記行列方程式はボリュームフラクションαiが非負という条件がある。
【0072】
すなわち、処理回路は、射影された点の減弱値を(n-1)個の物質成分に分解するようにすることによりそれぞれの減弱値を複数の物質成分に分解する。換言すると、処理回路は、ボクセルの前記減弱値を、最も近い(n-2)-ポリトープに対応する(n-1)-タプルの物質成分のボリュームフラクションに分解する。
【0073】
図4Cでは、当該射影された点εは、まだ当該三角形αβγ内にない。そこで、当該射影された点εおよび当該点δに最も近い点((n-2)-ポリトープ)を決定するため、第2の射影が実行され得る。この点は、単一((n-1)-タプル)の物質成分に対応する。例えば、
図4Cで、頂点γは当該射影された点εおよび当該点δに最も近い。したがって、物質弁別はα3=1になるであろう。
【0074】
すなわち、処理回路は、ステップ310において決定された点が選択されたn-タプルの(n-1)-ポリトープ内になく、射影された点が最も近い(n-2)-ポリトープ内にない場合、最も近い(n-3)-ポリトープを当該決定された点に対し決定する。ここで、最も近い(n-3)-ポリトープは、決定された点に最も近い、最も近い(n-2)-ポリトープ内の(n-3)-ポリトープである。このようにして、処理回路は、ボクセルの減弱値を最も近い(n-3)-ポリトープに対応する(n-2)物質成分のボリュームフラクションに分解する。
【0075】
ある実施形態では、空間は以下の領域に分割される(n-1次元領域)。それらは、(i)三角形αβγ、(ii)領域A(線αADおよび線αAFによって囲まれている)、(iii)領域B(線βBFおよび線βBEによって囲まれている)、(iv)領域C(線γCEおよび線γCDによって囲まれている)、(v)領域D(線分αγ、線αAD、および線γCDによって囲まれている)、(vi)領域E(線分βγ、線βBE、および線γCEによって囲まれている)、(vii)領域F(線分αβ、線αAF、および線βBFによって囲まれている)である。線αAFおよびβBFは、線分αβに直交している。線βBEおよびγCEは、線分βγに直交している。これらの線、線αADおよびγCDは、線分αγに直交している。
【0076】
物質弁別は、これら7領域のうちどの領域内に点δがあるかに依存し得る。点δが三角形αβγ内にある場合、物質弁別は、3つの物質成分のすべてに減弱値を分解することによって実行される。点δが領域A,B,およびC内にある場合、点δに最も近い、三角形内の点は、頂点である。したがって、物質弁別は、最も近い頂点に対応する物質成分に減弱値を分解することによって実行される。
【0077】
点δが領域E、F、およびG内にある場合、点δに最も近い、三角形内の点は、3辺の1つに沿っている。したがって、物質弁別は、最も近いエッジに対応する2つの物質成分に減弱値を分解することによって実行される。これは、例えば、点δを辺に直交に射影し、前述したように、以下の式(10)で与えられる行列方程式を解くことによって、実行され得る。
【0078】
【0079】
ステップ360またはステップ340で、減弱値を複数の物質成分に分解し、ステップ393で物質弁別が行われると、続いて、ステップ395において、処理回路は、ステップ393で行われた物質弁別の結果に基づいて、画像を生成する。ステップ395で生成される画像の例としては、例えば各物質成分のボリュームフラクションを示した画像や、各ボクセルでどの物質成分のボリュームフラクションが最も大きいかを示した画像である。ステップ395で生成される画像は、例えばカラーマップ画像である。また、処理回路は、これら生成した画像を、表示装置1016に表示させる。
【0080】
図3Cに、方法300の別の実施形態を示す。
図3Cでは、ステップ325の直前に実行されるのではなく、ステップ360の直前にステップ320が実行される。さらに、ステップ325では、点δが特定の三角形内にあるかを問うのではなく、点δがすべての三角形の合併集合による閉領域全体の内部にあるかを問う。
【0081】
すなわち、処理回路は、ステップ310において、決定された点が、複数の物質成分のn-タプルそれぞれに対応する減弱エネルギー空間でのそれぞれの(n-1)-ポリトープの合併集合によって定義される閉領域内にあるか判定する。ここで、n-タプルのそれぞれの(n-1)-ポリトープは、n個の物質成分それぞれに対応する頂点であって、n個の物質成分それぞれの単位ボリュームフラクションの減弱値の座標を有する頂点を有する。
【0082】
処理回路は、ステップ310において決定された点が閉領域内にある場合、ステップ320及びステップ360の処理を実行し、例えばメンドンサ法を用いて、決定された点δに最も近い(n-1)-ポリトープに対応する選択されたn-タプルにおけるn個の物質成分のボリュームフラクションを決定する。
【0083】
一方、点δがすべての三角形の閉領域内にない場合、どの三角形の領域内にもない。したがって、点δは、最も近いエッジに対応する物質のペア、または、頂点が閉領域内の点δに最も近い点である場合、最も近い頂点に対応する物質に、分解される。
【0084】
すなわち、ボクセルの減弱値がボリュームフラクション条件に一致しない場合、処理回路は、ボクセルの減弱値を、ボクセルの減弱値に最も近い(n-2)次元空間であって、(n-1)個の物質成分の(n-2)次元空間に射影して射影された点を生成し、射影された点の減弱値を前記(n-1)個の物質成分に分解するようにすることによりそれぞれの減弱値を複数の物質成分に分解する。換言すると、決定された点δが閉領域内にない場合、処理回路は、決定された点δに最も近い(n-2)-ポリトープであって、(n-1)-ポリトープ内の(n-2)-ポリトープを決定し、ボクセルの減弱値を、最も近い(n-2)-ポリトープに対応する(n-1)タプルの物質成分のボリュームフラクションに分解する。
【0085】
ここで、射影された点は、決定された点δの、最も近い(n-2)-ポリトープの(n-2)次元空間への直交射影である。
【0086】
なお、処理回路は、決定された点δが閉領域内になく、射影された点が最も近い(n-2)-ポリトープ内にない場合、最も近い(n-3)-ポリトープを決定された点δに対し決定する。ここで、最も近い(n-3)-ポリトープは決定された点δに最も近い、最も近い(n-2)-ポリトープ内の(n-3)-ポリトープである。処理回路は、ボクセルの減弱値を最も近い(n-3)-ポリトープに対応する(n-2)物質成分のボリュームフラクションに分解する。
【0087】
本実施形態において、最も近い三角形をさがすか、または辺/頂点をさがすかの選択は、点δに最も近い三角形を決定する前に、方法の初期で実施され得る。通常の当業者によって理解されるように、
図3Aが
図3Bの実施形態をより高い次元に一般化するのと同様、方法300の本実施形態は、より高い次元に一般化され得る。
図3Dに、
図3Cの方法300の実施形態の、2を超える任意のn次元への一般化を示す。
【0088】
図3Eに、ステップ340のフロー図を示す。
図4Bおよび4Cを参照し前述したように、点δが三角形内にない場合、最も近いポリトープの、減じた次元の空間への一連の直交射影により、最終的に、射影された点は三角形内にあることになり、これが実現されると物質弁別が実行され得る。例えば、
図4Bにおいて、点δを線分αγの1次元空間に射影しさえすれば、点εは三角形内にあることになる。ただし、
図4Cでは、射影された点ζが三角形内にあるという結果を得るために、2つの射影(すなわち、線分αγの1次元空間への第1の射影、および射影された点εの、頂点γのゼロ次元空間への、第2の射影)が必要だった。
【0089】
本プロセスは、n=4のケースへの一般化を可能にし、点δは最も近い三角形内にあるかを評価することで開始するのではなく、初期の質問は、点δが最も近い三角錐(すなわち、3-ポリトープ)内にあるか、である。点δが最も近い三角錐内にない場合、点δは最も近い三角形の2次元空間に射影される。2次元空間に射影された点が最も近い三角形内にない場合、上記の、n=3のケースのように、減じた次元まで本プロセスが継続する。
【0090】
図3Eで、本プロセスは任意の値nに一般化される。ステップ341で、ループ変数iが2という値に初期化され、当該n-ポリトープの(n-1)次元空間内の点は、ステップ310で決定された、点δに設定される。
【0091】
ステップ342で、(n+1-i)次元空間からの点は最も近い(n-i)-ポリトープの(n-i)次元空間に射影される。
【0092】
ステップ344で、(n-i)次元空間への射影された点は最も近い(n-i)-ポリトープ内にあるかに関する問いが実行される。ない場合、ループは、ステップ346まで継続する。ある場合、ループはステップ348まで進む。
【0093】
ステップ346で、ループ変数iは1を減じて(すなわち、i=i-1)し、(n-i)次元空間へ射影された最も近い(n-i)-ポリトープが決定される。ステップ346の後、当該ループはステップ342まで継続する。
【0094】
ステップ348で、当該射影された点を、当該最も近い(n-i)-ポリトープに対応する物質成分に分解するため、複数物質弁別が実行される。
【0095】
図4Dに、5つの物質成分を想定するケースを示す。第1のボクセルの減弱値が
図4Dに示される点Bにマッピングされる場合、当該点は、物質成分のそれぞれのトライアッドのどの三角形内にもない。
【0096】
ハウスドロフ距離を用いて最も近い三角形を決定する第1の方法(例えば、最短ハウスドロフ距離法)によれば、水のトライアッド、希釈OMNIPAQUE300(造影剤)、および骨は最も近い三角形に対応する。この三角形内で、最も近いエッジは水と骨のペアに対応する。したがって、点Bは、水および骨のボリュームフラクションの重ね合わせに分解されるであろう。
【0097】
最初に最も近い三角形を決定することなく最も近いエッジを決定する第2の方法(例えば、最接近エッジ法)によれば、最も近いエッジは水と骨のペアに対応する。したがって、物質弁別は、第1の方法と同様になるであろう。
【0098】
第2のボクセルの減弱値が
図4Dの点Aにマッピングされる場合、点は、物質成分のそれぞれのトライアッドのどの三角形内にもない。
【0099】
ハウスドロフ距離を用いた最も近い三角形を決定する第1の方法によれば、空気、脂肪、および希釈OMNIPAQUE300(造影剤)は最も近い三角形に対応する。本三角形内で、最も近いエッジは、空気および希釈OMNIPAQUE300のペアに対応する。したがって、点Aは、空気および希釈OMNIPAQUE300のボリュームフラクションの重ね合わせに分解されるであろう。
【0100】
最初に最も近い三角形を決定することなく最も近いエッジを決定する第2の方法によれば、最も近いエッジは空気と骨のペアに対応する。したがって、点Aは、空気および骨のボリュームフラクションの重ね合わせに分解されるであろう。これは、第1の方法とは異なる結果である。
【0101】
図5に、CT装置またはスキャナーに含まれる放射線撮像架台の実装を示す。
図5に示されるように、放射線撮像架台1000は、側面図で示され、X線管1001、環状枠1002、および多列または2次元アレイタイプのX線検出部1003をさらに含む。X線管1001およびX線検出部1003は、回転軸RAのまわりに回転可能に保持されている環状枠1002の上の被検体OBJをはさんで、対向するように設置されている。回転部1007は、環状枠1002を、0.4秒/回転などの高速で回転させる一方、被検体OBJは図示されたページの中へ、または中から外へ、軸RAに沿って移動する。
【0102】
本発明に係る、X線によるコンピュータ断層撮影(CT)装置の第1の実施形態を添付図面の図を参照し以下に示す。なお、X線CT装置は各種の装置、例えば、X線管およびX線検出器が検査対象である被検体のまわりを共に回転する回転/回転型装置、および多くの検知素子が環状または平面状に配列され、X線管のみが検査対象である被検体のまわりを回転する、静止/回転型装置、を含む。本発明は、いずれの型にも適用され得る。ここでは、現在主流になっている、回転/回転型装置を例示する。
【0103】
マルチスライスX線CT装置は、X線管1001がX線を生成するようにスリップリング1008によってX線管1001に印加される管電圧を生成する、高電圧装置1009をさらに含む。X線は、被検体OBJに向けて出射され、その断面積は円で示される。例えば、X線管1001は第1のスキャン時の平均X線エネルギーが第2のスキャン時の平均X線エネルギーより小さい。したがって、異なるX線エネルギーに対応して2以上のスキャンが取得され得る。X線検出部1003は、X線管1001の反対側に被検体OBJをはさんで設置され、被検体OBJを通過した、出射されたX線を検出する。X線検出部1003は、個別の検知素子または検知ユニットをさらに含む。
【0104】
X線CT装置は、X線検出部1003からの検出された信号を処理するその他の機器をさらに含む。データ取得回路またはデータ収集機構(Data Acquisition System:DAS)1004は、各チャネルのX線検出部1003から出力された信号を電圧信号に変換し、当該信号を増幅し、さらに当該信号をデジタル信号に変換する。X線検出部1003およびDAS1004は、1回転あたりの所定の全投影数(Total Number Of Projections Per Rotation:TPPR)を処理するように構成される。
【0105】
前述したデータは、放射線撮像架台1000の外にあるコンソールに収容される、前処理回路1006に、非接触データ送信装置1005によって送信される。前処理回路1006は、生データに対する感度補正など、所定の補正を実行する。記憶装置1012は、再構成処理直前の段階の投影データともいう、結果データを記憶する。記憶装置1012は、再構成装置1014、入力インタフェース1015、および表示装置1016とともに、データ/制御バス1011によって、処理回路1010に接続される。前処理回路1010は、CT装置を駆動するのに十分なレベルまで電流を制限する電流調整装置1013を制御する。
【0106】
検出器は、さまざまな世代のX線CT装置システムで、患者に対して回転および/または固定される。一実施形態では、前述のCTシステムは第3世代ジオメトリおよび第4世代ジオメトリシステムの組み合わせの一例であり得る。第3世代システムでは、X線管1001およびX線検出部1003は、対向するように環状枠1002に設置され、環状枠1002が回転軸RAを中心に回転すると被検体OBJのまわりを回転する。第4世代ジオメトリシステムでは、検出器は、患者のまわりに固定して設置され、X線管は患者のまわりを回転する。別の実施形態では、放射線撮像架台1000では、複数の検出器が、Cアームおよびスタンドによって保持されている環状枠1002に配置される。
【0107】
記憶装置1012は、X線検出部1003でのX線の照射量を示す測定値を保存し得る。さらに、記憶装置1012は、方法300を実行する専用プログラムを保存し得る。
【0108】
再構成回路1014は方法300のさまざまなステップを実行し得る。さらに、再構成回路1014は、ボリュームレンダリング処理および画像差分処理などの事前再構成画像処理を必要に応じて、実行し得る。
【0109】
前処理回路1006で実行される投影データの当該事前再構成処理は、例えば、検出器較正、検出器非線形性、および極性効果の補正を含み得る。
【0110】
再構成回路1014によって実行される事後再構成処理は、画像のフィルタリングおよび平滑化、ボリュームレンダリング処理、および画像差分処理を必要に応じて、含み得る。画像再構成処理は、スペクトル画像を生成し、方法300のさまざまなステップをスペクトル画像に実施するため、CT再構成を実行し得る。再構成回路1014は、例えば、投影データ、再構成された画像、較正データおよびパラメータ、およびコンピュータプログラムを保存するためメモリを用い得る。
【0111】
再構成回路1014は、離散論理ゲートとして実行され得るCPU(処理回路)を、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、またはその他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として含み得る。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilog、またはその他のハードウエア記述言語でコード化されてよく、当該コードは、ダイレクトにFPGAまたはCPLD内の電子メモリに、またはその他の別の電子メモリとして、保存されてよい。さらに、記憶装置1012は、ROM、EPROM、EEPROMまたはFLASH(登録商標)メモリなどの非揮発性であり得る。記憶装置1012は、静的または動的RAMなどの揮発性でもあり得て、FPGAまたはCPLDと当該メモリとの間の相互作用だけでなく当該電子メモリを管理するための、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが提供され得る。
【0112】
あるいは、再構成回路1014のCPUは、本書に記載の関数を実行するコンピュータ読み取り可能命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行し得て、プログラムは、前述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、FLASH(登録商標)ドライブのどれかまたはその他の周知の記憶媒体のどれかに記憶される。さらに、コンピュータ読み取り可能命令は、アメリカ合衆国インテル(登録商標)社のXenon(登録商標)プロセッサ、アメリカ合衆国AMD(当r九商標)社のOpteron(登録商標)プロセッサなどのプロセッサ、およびMicrosoft(登録商標)社のVISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple(登録商標)社のMAC-OS(登録商標)などの当業者に周知のオペレーティングシステムとともに実行する、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムのコンポーネント、またはそれらの組み合わせとして提供されてよい。さらに、CPUは当該命令を実行するため並列に協同的に動作する、マルチプロセッサとして実装し得る。
【0113】
一実施形態で、当該再構成された画像は表示装置1016に表示され得る。表示装置1016は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、またはその他当業者に周知の表示装置であり得る。
【0114】
記憶装置1012は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、FLASH(登録商標)ドライブ、RAM、ROMまたはその他当業者に周知の電子記憶媒体であり得る。
【0115】
図6に、第3世代ジオメトリに配置されたエネルギー統合検出器および第4世代ジオメトリに配置されたPCDの両方を有するコンピュータ断層撮影(CT)スキャナーの別の実施形態を示す。
図6には、X線CT装置システムにおいて、所定の第3世代ジオメトリの検出部103と組み合わせて所定の第4世代ジオメトリのPCDを設置するための実装が示されている。本図に、X線源112、コリメータ/フィルタ114、X線検出部103、および光子計数検出器PCD1からPCDNの、相対位置を示す。
【0116】
図6に示される、X線源112、検出部103を含む検出器、およびPCDの構成に加えて、X線検出器およびX線源のその他の型の組み合わせを、投影データを取得するため用い得る。例えば、検出部103またはPCDのいずれも
図6に示されるスキャナーから省略でき、その場合もスキャナーは投影データを取得できるが、
図6に示される完全なシステムを用いて取得される投影データとは異なる。さらに、kV切り替えをエネルギー統合検出器またはPCDとともに使うことができる。ある実施形態では、PCDを、最初にシンチレーション光子を生成することなく、X線をダイレクトに光電子に変換するために半導体を使ったダイレクトX線検出器にし得る。さらに、ある実施形態では、広帯域X線源はスペクトル的に分解するX線検出器とともに用いられ得る。これらのスペクトル的に分解するX線検出器は、任意の構成のPCD(例えば、所定の第3世代ジオメトリまたは所定の第4世代ジオメトリ)またはそれぞれのスペクトルフィルタが前にあるエネルギー統合検出器を含み得る。ある実施形態では、X線源は、2線源X線CT装置などの、複数狭帯域X線源を含み得る。一般的に、投影データを生成するために、任意の周知の組み合わせの検出器のタイプおよび構成を、任意の周知のタイプまたは組み合わせのX線源とともに用い得る。
【0117】
図6に戻ると、
図6は、X線投影データを取得、保存、処理、および分散する回路およびハードウエアも示す。当該回路およびハードウエアは、プロセッサ1470、ネットワークコントローラ1480、メモリ1476、およびデータ取得システム1476を含む。
【0118】
別の実施形態では、当該X線CT装置はPCDを含むが、エネルギー積分検出部103を含まない。
【0119】
X線源112および検出部103は架台1440に収納され、それぞれ円形路110および130のまわりを回転すると、当該光子計数検出器PCDおよび検出部103はそれぞれデータ取得時に、送出されたX線照射を検出する。光子計数検出器PCD1からPCDNは、所定のエネルギービンのそれぞれについて、送出されて光子の数を示す計数値を個別に出力したX線照射を、断続的に検出する。一方、検出部103の当該検知素子は、検出部103が回転すると送出されて検出された信号を出力したX線照射を、継続的に検出する。一実施形態では、検出部103はエネルギー統合検出器を、当該検出部表面に、所定のチャネルおよびセグメントの方向に密に設置している。
【0120】
一実施形態では、X線源112、PCDおよび検出部103は、半径が異なる3つの所定の円形路を一括して形成する。少なくとも1つのX線源112は第1の円形路110に沿って回転する一方で当該光子計数検出器は、第2の円形路120に沿って低密度に設置される。さらに、検出部103は、第3の円形路130に沿って移動する。第1の円形路110、第2の円形路120、および第3の円形路130は、架台1440に回転可能に設置されるアニュラリングによって決定され得る。
【0121】
さらに、当該X線CT装置において、所定の第3世代ジオメトリの当該検出部と組み合わせて所定の第4世代ジオメトリの当該光子計数検出器を設置するため別の実施形態を用い得る。
【0122】
一実施形態では、X線源112は任意で単一エネルギー源である。別の実施形態では、X線源112は、所定の高レベルエネルギーおよび所定の低レベルエネルギーでX線照射を放出するためkV切り替え関数を実行するように構成される。さらに別の実施形態では、X線源112はX線エネルギーの広域スペクトルを放出する単一源である。さらに別の実施形態では、X線源112は、各エミッタが空間的およびスペクトル的に別個である、マルチX線エミッタを含む。
【0123】
検出部103は、シンチレーション素子などのエネルギー統合検出器を、当該シンチレータ素子と相互作用するX線照射で発生するシンチレーションイベントからのシンチレーション光子を検出するため、光電子倍増管またはアバランシュフォトダイオードとともに用い得る。当該シンチレータ素子は結晶質、有機液体、プラスチック、またはその他の周知のシンチレータであり得る。
【0124】
PCDは、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、ケイ素(Si)、ヨウ化第二水銀(HgI2)およびガリウムヒ素(GaAs)などの半導体に基づくダイレクトX線照射検出器を用い得る。
【0125】
当該X線CT装置は、当該光子計数検出器および検出部103からの投影計測結果をデータ取得システム1476、プロセッサ1470、メモリ1478、ネットワークコントローラ1480に送信するデータチャネルも含む。データ取得システム1476は、当該検出器からの投影データの取得、デジタル化、および送信を制御する。データ取得システム1476は、環状回転枠110および130の回転を制御する放射線撮影制御回路も含む。一実施形態では、データ取得システム1476は、寝台116の移動、X線源112の操作、およびX線検出部103の操作の制御も含む。データ取得システム1476は、集中システム、あるいは、分散システムになり得る。実装において、データ取得システム1476は、プロセッサ1470と一体化される。プロセッサ1470は、投影データからの画像の再構成、投影データの事前再構成処理、および画像データの事後再構成処理を含む関数を実行する。プロセッサ1470は、本書に記載の当該関数および方法も実行する。
【0126】
投影データの事前再構成処理は、検出器較正、検出器非線形性、極性効果、ノイズバランシング、および物質弁別の補正を含み得る。
【0127】
画像再構成プロセスは、フィルタ補正逆投影法、反復画像再構成法、または確率的画像再構成法を用いて実行され得る。さらに、当該再構成プロセスは、方法300のさまざまなステップを含み得る。
【0128】
事後再構成処理は、画像のフィルタリングおよび平滑化、ボリュームレンダリング処理、および画像差異処理を必要に応じて、含み得る。さらに、当該事後再構成処理は、方法300のさまざまなステップを含み得る。
【0129】
プロセッサ1470およびデータ取得システム1476のどちらもメモリ1476を用いて、例えば、投影データ、再構成された画像、較正データおよびパラメータ、およびコンピュータプログラムを保存し得る。
【0130】
プロセッサ1470は、離散論理ゲートとして実行され得るCPU(処理回路)を、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他の複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)として含み得る。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilog、またはその他のハードウエア記述言語でコード化されてよく、当該コードは、ダイレクトにFPGAまたはCPLD内の電子メモリに、またはその他の別の電子メモリとして、保存されてよい。さらに、メモリは、ROM、EPROM、EEPROMまたはFLASH(登録商標)メモリなどの非揮発性であり得る。当該メモリは、静的または動的RAMなどの揮発性でもあり得て、FPGAまたはCPLDと当該メモリとの間の相互作用だけでなく当該電子メモリを管理するための、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが提供されてよい。
【0131】
あるいは、再構成プロセッサのCPUは、本書に記載の関数を実行するコンピュータ読み取り可能命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行してよく、当該プログラムは、前述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、FLASH(登録商標)ドライブのどれかまたはその他の周知の記憶媒体のどれかに記憶される。さらに、当該コンピュータ読み取り可能命令は、アメリカ合衆国インテル(登録商標)社のXenon(登録商標)プロセッサ、アメリカ合衆国AMD(登録商標)社のOpteron(登録商標)プロセッサなどのプロセッサ、およびMicrosoft(登録商標)社のVISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple(登録商標)社のMAC-OS(登録商標)などの当業者に周知のオペレーティングシステムとともに実行する、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムのコンポーネント、またはそれらの組み合わせとして提供されてよい。さらに、CPUは当該命令を実行するため並列に協同的に動作する、マルチプロセッサとして実装し得る。
【0132】
一実施形態では、当該再構成された画像は表示装置に表示され得る。当該表示装置は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LEDまたはその他当業者に周知の表示装置であり得る。
【0133】
メモリ1478は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、FLASH(登録商標)ドライブ、RAM、ROM、またはその他当業者に周知の電子記憶媒体であり得る。
【0134】
アメリカ合衆国のインテル(登録商標)社のインテル(登録商標)イーサネット(登録商標)PROネットワークインタフェースカードなどのネットワークコントローラ1480は、X線CT装置のさまざまな部分の間をインタフェースし得る。さらに、ネットワークコントローラ1480は、外部ネットワークともインタフェースし得る。理解されるように、当該外部ネットワークは、インターネットなどの公衆ネットワーク、またはLANまたはWANネットワークまたはそれらの組み合わせなどのプライベートネットワークであり得、また、PSTNまたはISDNサブネットワークも含み得る。当該外部ネットワークは、イーサネットネットワークなどの有線であり得、または、EDGE、3Gおよび4G無線セルラーシステムを含むセルラーネットワークなどの無線であり得る。無線ネットワークは、WiFi、Bluetooth(登録商標)、またはその他周知の通信形態の無線でもあり得る。
【0135】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0136】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
1003 X線検出部
1010 処理回路
1012 記憶装置
1016 表示装置