(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置、及び、窒化物半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20241029BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20241029BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241029BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L21/66 N
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2021033227
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】名古 肇
(72)【発明者】
【氏名】田島 純平
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 年輝
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093170(JP,A)
【文献】特開2017-037967(JP,A)
【文献】特開2012-074544(JP,A)
【文献】特開2005-035869(JP,A)
【文献】特開2008-251966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151714(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0047412(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0009221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0237610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/812
H01L 29/778
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 21/66
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1窒化物領域、第2窒化物領域及び第3窒化物領域を含む窒化物部材を備え、
前記第2窒化物領域は、第1方向において、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間にあり、
前記第1窒化物領域は、Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含み、
前記第2窒化物領域は、Al
x2Ga
1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含み、
前記第3窒化物領域は、Al
x3In
1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAl
y3Ga
1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含み、
前記窒化物部材のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)像は、複数の明点と、前記複数の明点の間の暗領域と、を含み、前記暗領域は、前記複数の明点よりも暗く、
前記第3窒化物領域に対応する第3像領域における前記暗領域の第3明るさは、前記第1窒化物領域に対応する第1像領域における前記暗領域の第1明るさよりも低く、前記第2窒化物領域に対応する第2像領域における前記暗領域の第2明るさは、前記第3明るさよりも低く、
前記HAADF-STEM像において、前記第2像領域と前記第3像領域との間の第4像領域における前記暗領域の第4明るさは、前記第1明るさと前記第3明るさとの間である、窒化物半導体。
【請求項2】
前記HAADF-STEM像において、前記第1窒化物領域と前記第2窒化物領域との間の界面位置における前記暗領域は、第5明るさを有し、
前記第2明るさは、前記第2像領域における前記暗領域における明るさの最小値であり、
前記第2窒化物領域は、前記最小値に対応する最小値位置を有し、
前記界面位置と前記最小値位置との間の前記第1方向に沿う距離の、前記第2窒化物領域の前記第1方向に沿う第1厚さに対する比は、第1比であり、
前記第1明るさと前記第2明るさとの差の絶対値の、前記第1明るさと前記第3明るさとの差の絶対値に対する比は、第2比であり、
前記第1比の前記第2比に対する第3比は、1以上である、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項3】
第1窒化物領域、第2窒化物領域及び第3窒化物領域を含む窒化物部材を備え、
前記第2窒化物領域は、第1方向において、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間にあり、
前記第1窒化物領域は、Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含み、
前記第2窒化物領域は、Al
x2Ga
1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含み、
前記第3窒化物領域は、Al
x3In
1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAl
y3Ga
1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含み、
前記窒化物部材のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)像は、複数の明点と、前記複数の明点の間の暗領域と、を含み、前記暗領域は、前記複数の明点よりも暗く、
前記第3窒化物領域に対応する第3像領域における前記暗領域の第3明るさは、前記第1窒化物領域に対応する第1像領域における前記暗領域の第1明るさよりも低く、前記第2窒化物領域に対応する第2像領域における前記暗領域の第2明るさは、前記第3明るさよりも低く、
前記HAADF-STEM像において、前記第1窒化物領域と前記第2窒化物領域との間の界面位置における前記暗領域は、第5明るさを有し、
前記第2明るさは、前記第2像領域における前記暗領域における明るさの最小値であり、
前記第2窒化物領域は、前記最小値に対応する最小値位置を有し、
前記界面位置と前記最小値位置との間の前記第1方向に沿う距離の、前記第2窒化物領域の前記第1方向に沿う第1厚さに対する比は、第1比であり、
前記第1明るさと前記第2明るさとの差の絶対値の、前記第1明るさと前記第3明るさとの差の絶対値に対する比は、第2比であり、
前記第1比の前記第2比に対する第3比は、1以上である、窒化物半導体。
【請求項4】
前記第1窒化物領域は、GaNを含み、
前記第2窒化物領域は、AlNを含み、
前記第3窒化物領域は、AlInNを含む、請求項1~3のいずれか1つ記載の窒化物半導体。
【請求項5】
第1窒化物領域、第2窒化物領域及び第3窒化物領域を含む窒化物部材を備え、
前記第2窒化物領域は、第1方向において、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間にあり、
前記第1窒化物領域は、Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含み、
前記第2窒化物領域は、Al
x2Ga
1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含み、
前記第3窒化物領域は、Al
x3In
1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAl
y3Ga
1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含み、
前記窒化物部材のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)像は、複数の明点と、前記複数の明点の間の暗領域と、を含み、前記暗領域は、前記複数の明点よりも暗く、
前記第3窒化物領域に対応する第3像領域における前記暗領域の第3明るさは、前記第1窒化物領域に対応する第1像領域における前記暗領域の第1明るさよりも低く、前記第2窒化物領域に対応する第2像領域における前記暗領域の第2明るさは、前記第3明るさよりも低く、
前記第1窒化物領域は、GaNを含み、
前記第2窒化物領域は、AlNを含み、
前記第3窒化物領域は、AlInNを含む、窒化物半導体。
【請求項6】
前記第3窒化物領域におけるInの組成比は、0.15以上0.2以下である、請求項4または5に記載の窒化物半導体。
【請求項7】
前記第2窒化物領域の前記第1方向に沿う厚さは、0.5nm以上1.5nm以下である、請求項1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項8】
前記第3窒化物領域は、第1面及び第2面を含み、前記第2面は、前記第2窒化物領域と対向し、前記第1方向において、前記第2面は、前記第2窒化物領域と前記第1面との間にあり、
前記第1面の二乗平均粗さは、0.6nm以下である、請求項1記載の窒化物半導体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1つに記載の窒化物半導体と、
基板と、
を備え、
前記基板と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域があり、
前記基板と前記第2窒化物領域との間に前記第1窒化物領域がある、ウェーハ。
【請求項10】
前記基板は、シリコンを含む、請求項
9に記載のウェーハ。
【請求項11】
前記窒化物部材は、
AlNを含む第4窒化物領域と、
AlGaNを含む第5窒化物領域と、
をさらに含み、
前記基板と前記第1窒化物領域との間に前記第5窒化物領域があり、
前記基板と前記第5窒化物領域との間に前記第4窒化物領域がある、請求項
9または1
0に記載のウェーハ。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか1つに記載の窒化物半導体と、
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
絶縁部材と、
をさらに備え、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第1窒化物領域は、第1部分領域、第2部分領域、第3部分領域、第4部分領域、及び、第5部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第4部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第3部分領域との間にあり、
前記第5部分領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第2部分領域との間にあり、
前記第3窒化物領域は、第6部分領域及び第7部分領域を含み、
前記第4部分領域から前記第6部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第5部分領域から前記第7部分領域への方向は、前記第1方向に沿い、
前記絶縁部材は、前記第1方向において前記第3部分領域と前記第3電極との間に設けられた第1絶縁領域を含む、半導体装置。
【請求項13】
Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含む第1窒化物領域の上に、Al
x2Ga
1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含む第2窒化物領域を形成し、
前記第2窒化物領域の上に、Al
x3In
1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAl
y3Ga
1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含む第3窒化物領域を形成し、
前記第2窒化物領域の前記形成は、Alを含む第1ガスと、アンモニアを含む第2ガスと、水素及び窒素を含む第3ガスと、を含む処理ガスを用いて前記第2窒化物領域を形成することを含み、
前記第3ガスにおける前記窒素の体積比は、20%以上50%以下である、窒化物半導体の製造方法。
【請求項14】
前記第1窒化物領域、前記第2窒化物領域及び前記第3窒化物領域を含む窒化物部材のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)像において、前記第3窒化物領域に対応する第3像領域の第3明るさは、前記第1窒化物領域に対応する第1像領域の第1明るさと、前記第2窒化物領域に対応する第2像領域の第2明るさと、の間である、請求項1
3に記載の窒化物半導体の製造方法。
【請求項15】
前記第1窒化物領域は、GaNを含み、
前記第2窒化物領域は、AlNを含み、
前記第3窒化物領域は、AlInNを含む、請求項1
4に記載の窒化物半導体の製造方法。
【請求項16】
前記第3窒化物領域は、第1面及び第2面を含み、前記第2面は、前記第2窒化物領域と対向し、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1方向において、前記第2面は、前記第2窒化物領域と前記第1面との間にあり、
前記第1面の二乗平均粗さは、0.6nm以下である、請求項1
4または1
5に記載の窒化物半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置、及び、窒化物半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、GaNなどの窒化物半導体を用いた半導体装置がある。半導体装置の特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性の向上が可能な窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置、及び、窒化物半導体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、窒化物半導体は、第1窒化物領域、第2窒化物領域及び第3窒化物領域を含む窒化物部材を含む。前記第2窒化物領域は、第1方向において、前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間にある。前記第1窒化物領域は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。前記第2窒化物領域は、Alx2Ga1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含む。前記第3窒化物領域は、Alx3In1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAly3Ga1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含む。前記窒化物部材のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)像は、複数の明点と、前記複数の明点の間の暗領域と、を含む。前記暗領域は、前記複数の明点よりも暗い。前記第3窒化物領域に対応する第3像領域における前記暗領域の第3明るさは、前記第1窒化物領域に対応する第1像領域における前記暗領域の第1明るさよりも低い。前記第2窒化物領域に対応する第2像領域における前記暗領域の第2明るさは、前記第3明るさよりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、窒化物半導体を例示する原子間力顕微鏡像である。
【
図3】
図3は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、窒化物半導体のHAADF-STEM像である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、窒化物半導体のHAADF-STEM像中の明るさの分布を例示するグラフ図である。
【
図7】
図7は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る窒化物半導体の製造方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る窒化物半導体110は、窒化物部材10Mを含む。窒化物部材10Mは、第1窒化物領域10、第2窒化物領域20及び第3窒化物領域30を含む。第2窒化物領域20は、第1方向において、第1窒化物領域10と第3窒化物領域30との間にある。
【0009】
第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1窒化物領域10、第2窒化物領域20及び第3窒化物領域30のそれぞれは、X-Y平面に沿って広がる層状である。
【0010】
第1窒化物領域10は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。第1窒化物領域10は、例えば、GaNである。第1窒化物領域10におけるAlの組成比は、例えば、0以上0.1以下である。
【0011】
第2窒化物領域20は、Alx2Ga1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含む。第2窒化物領域20は、例えば、AlNである。第2窒化物領域20におけるAlの組成比は、例えば、0.9以上1以下である。
【0012】
第3窒化物領域30は、Alx3In1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAly3Ga1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含む。第3窒化物領域30は、例えばAlInNを含む。第3窒化物領域30がAlx3In1-x3Nを含む場合において、第3窒化物領域30におけるInの組成比は、0.15以上0.25以下である。第3窒化物領域30は、例えばAlGaNを含んでも良い。第3窒化物領域30がAly3Ga1-y3Nを含む場合において、Alの組成比は、0.1以上0.3以下である。以下では、第3窒化物領域30がAlx3In1-x3N(AlInN)を含む場合の例について説明する。
【0013】
例えば、第1窒化物領域10の厚さt1は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。第2窒化物領域20の厚さt2は、例えば、0.5nm以上1.5nm以下である。第3窒化物領域30の厚さt3は、例えば、5nm以上20nm以下である。これらの厚さは、第1方向(Z軸方向)に沿う長さである。
【0014】
図1に示すように、窒化物半導体110は、ウェーハ210に含まれても良い。ウェーハ210は、例えば、上記の窒化物半導体110と、基板18sと、を含む。基板18sと第3窒化物領域30との間に第2窒化物領域20がある。基板18sと第2窒化物領域20との間に第1窒化物領域10がある。基板18sは、例えば、シリコンを含む。基板18sは、例えば、シリコン基板である。
【0015】
図1に示すように、窒化物部材10Mは、第4窒化物領域14及び第5窒化物領域15を含んでも良い。基板18sと第1窒化物領域10との間に第5窒化物領域15がある。基板18sと第5窒化物領域15との間に第4窒化物領域14がある。第4窒化物領域14は、例えば、AlNを含む。第4窒化物領域14は、例えば、バッファ層として機能する。第5窒化物領域15は、AlGaNを含む。第5窒化物領域15は、Z軸方向に沿ってAl組成比が異なる複数の領域を含んでも良い。第5窒化物領域15により、例えば、歪が緩和される。
【0016】
第3窒化物領域30の表面は平坦であることが好ましい。これにより、例えば、窒化物半導体110を用いた半導体装置において安定した特性が得やすい。例えば、高い信頼性が得られる。
【0017】
図1に示すように、第3窒化物領域30は、第1面30a及び第2面30bを含む。第2面30bは、第2窒化物領域20と対向する。第1方向(Z軸方向)において、第2面30bは、第2窒化物領域20と第1面30aとの間にある。第1面30aは、第3窒化物領域30の表面に対応する。第1面30aは、平坦であることが好ましい。
【0018】
後述するように、窒化物部材10Mは、基板18sの上に窒化物結晶を成長させることにより形成できる。例えば、第1窒化物領域10の上に第2窒化物領域20が形成される。第2窒化物領域20の上に第3窒化物領域30が形成される。
【0019】
第2窒化物領域20(例えば、AlN)の形成において、キャリアガスにより、第2窒化物領域20及び第3窒化物領域30の特性が変化することが分かった。例えば、キャリアガスの成分によって、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の凹凸が変化する。以下、本願発明者が行った実験の結果の例について説明する。
【0020】
実験において、窒化物半導体の試料は、第1窒化物領域10の上に第2窒化物領域20を形成し、第2窒化物領域20の上に第3窒化物領域30を形成することで得られる。試料において、第1窒化物領域10はGaNである。第2窒化物領域20はAlNである。第3窒化物領域30は、AlInNである。第3窒化物領域30におけるInの組成比は0.2である。試料は、以下のようにして作製される。
【0021】
基板18s(シリコン基板)を反応炉に導入して加熱し、表面の酸化膜を除去する。その後、基板18sの上に第4窒化物領域14が形成される。第4窒化物領域14の形成においては、水素のキャリアガスと、TMAl(トリメチルアルミニウム)を含むガスと、アンモニアガスと、が供給される。
【0022】
第4窒化物領域14の上に、第5窒化物領域15が形成される。第5窒化物領域15の形成においては、水素のキャリアガスと、TMAl及びTMGa(トリメチルガリウム)を含むガスと、アンモニアガスと、が供給される。TMAl及びTMGaの比率が変更されることで、Al組成比が異なる領域が形成される。
【0023】
第5窒化物領域15の上に、第1窒化物領域10が形成される。第1窒化物領域10の形成においては、水素のキャリアガスと、TMGaを含むガスと、アンモニアガスと、が供給される。第1窒化物領域10の厚さt1は、2μmである。
【0024】
第1窒化物領域10の上に、第2窒化物領域20が形成される。実験の試料において、第2窒化物領域20の形成においては、キャリアガスに含まれる水素と窒素との比が変更される。このようなキャリアガスと、TMAlを含むガスと、アンモニアガスと、が供給されて、第2窒化物領域20が形成される。第2窒化物領域20の厚さt2は、1nmである。第2窒化物領域20は、AlNである。
【0025】
第2窒化物領域20の上に、第3窒化物領域30が形成される。第3窒化物領域30の形成において、キャリアガスは窒素を含み、水素を実質的に含まない。このようなキャリアガスと、TMAl及びTMIn(トリメチルインジウム)を含むガスと、アンモニアガスと、が供給されて、第3窒化物領域30が形成される。第3窒化物領域30は、AlInNである。第3窒化物領域30が形成における温度は、第1窒化物領域10及び第2窒化物領域20の形成における温度よりも低い。これにより、品質が高い第3窒化物領域30が得られる。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)は、窒化物半導体を例示する原子間力顕微鏡像である。
これらの図は、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)像である。
図2(a)は、第1試料SP1に対応する。第1試料SP1において、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスは水素である。
図2(b)は、第2試料SP2に対応する。第2試料SP2において、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比率(体積比)は、33%である。
【0027】
図2(a)に示すように、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスが水素である第1試料SP1においては、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)のAFM像において、複数の暗点が観察される。一方、
図2(b)に示すように、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスに含まれる窒素の比が33%の第2試料SP2においては、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)のAFM像において、暗点は極めて少ない。
【0028】
試料の表面の観察により、
図2(a)に例示した暗点は、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)に形成された凹部に対応することが分かった。
【0029】
第3窒化物領域30の形成の条件が同じでも、第3窒化物領域30の下地である第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスの条件により、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の凹凸が変化する。
【0030】
第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスが水素の場合は、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の凹凸が大きい。第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスが窒素を含む場合は、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の凹凸が小さい。
【0031】
図3は、窒化物半導体の特性を例示するグラフ図である。
図3の横軸は、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RN(体積比)である。縦軸は、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の二乗平均粗さRqである。
図3に示すように、比RNが0%である場合(キャリアガスが水素の場合)、二乗平均粗さRqは大きい。
図3に示すように、比RNが25%以上になると、二乗平均粗さRqは顕著に小さくなる。比RNが100%の場合、二乗平均粗さRqは若干大きくなる。
【0032】
第2窒化物領域20の形成の条件により、第2窒化物領域20の上の第3窒化物領域30の表面の凹凸が変化することが分かった。第3窒化物領域30の表面の凹凸が大きいと、安定した特性を得ることが困難である。例えば、信頼性が低くなり易い。
【0033】
実施形態においては、第2窒化物領域20の形成は、水素及び窒素を含むキャリアガス(例えば第3ガス)を含む処理ガスを用いることを含む。第3ガスにおける窒素の体積比(すなわち、比RN)は、20%以上であることが好ましい。これにより、例えば、二乗平均粗さRqは、例えば、0.4nm以下に小さくできる。第3ガスにおける窒素の体積比(すなわち、比RN)は、30%以上50%以下でも良い。これにより、例えば、二乗平均粗さRqは、例えば、0.38nm以下に、より小さくできる。
【0034】
以下、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスを変更した試料に基づく半導体装置の特性の例について説明する。半導体装置は、後述するようにトランジスタである。トランジスタにおいて、第1窒化物領域10の第2窒化物領域20と対向する部分に、キャリア領域(例えば2次元電子ガス)が形成される。第1窒化物領域10は、例えば、電子走行層に対応する。
【0035】
図4(a)~
図4(c)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
これらの図の横軸は、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RN(体積比)である。
図4(a)の縦軸は、第1窒化物領域10のシート抵抗Rsである。
図4(b)の縦軸は、移動度μである。
図4(c)の縦軸は、キャリア領域のキャリア密度CDである。
【0036】
図4(a)に示すように、キャリアガスにおける窒素の比RNが100%のときは、シート抵抗Rsが高い。比RNが0%~50%のときに低いシート抵抗Rsが得られる。比RNが30%のときに特に低いシート抵抗Rsが得られる。
【0037】
図4(b)に示すように、キャリアガスにおける窒素の比RNが100%のときは、移動度μは低い。比RNが0%~50%のときに高い移動度μが得られる。比RNが30%のときに特に高い移動度μが得られる。
【0038】
図4(c)に示すように、キャリアガスにおける窒素の比RNが100%のときは、キャリア密度CDが低い。比RNが0%~50%のときに高いキャリア密度CDが得られる。比RNが30%のときに特に高いキャリア密度CDが得られる。
【0039】
一方、
図3に関して既に説明したように、比RNが0%のときは、第3窒化物領域30の表面(第1面30a)の二乗平均粗さRqが大きい。以上の結果から、比RNは0%を越え、50%以下であることが好ましい。これにより、小さい二乗平均粗さRq、低いシート抵抗Rs、高い移動度μ、及び、高いキャリア密度CDが得られる。
【0040】
上記のように、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RNが0%を越える場合に、小さい二乗平均粗さRqが得られ、安定した特性が得やすい。実用的な比RNの範囲は、0%よりも高い。一方、実用的な範囲において、比RNが100%の場合は、電気的特性(シート抵抗Rs、移動度μ、及び、キャリア密度CD)が悪化する。これは、比RNにより第2窒化物領域20及びその界面の近傍の状態が変化することが原因であると考えられる。以下、比RNを代えたときの試料の窒化物部材10MのHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)分析の結果の例について説明する。
【0041】
図5(a)~
図5(c)は、窒化物半導体のHAADF-STEM像である。
図5(a)は、第2試料SP2に対応する。上記のように第2試料SP2において、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RNは33%である。
図5(b)は、第3試料SP3に対応する。第3試料SP3において、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RNは50%である。
図5(c)は、第4試料SP4に対応する。第4試料SP4において、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RNは100%である。
【0042】
図5(a)~
図5(c)に示すように、窒化物部材10MのHAADF-STEM像において、第1窒化物領域10に対応する第1像領域r1、第2窒化物領域20に対応する第2像領域r2、及び、第3窒化物領域30に対応する第3像領域r3がある。これらの像領域において、窒化物部材10M内の組成の差異に応じて、明暗の差がある。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、第2試料SP2及び第3試料SP3においては、これらの像領域の間の界面における明暗の差が明瞭である。一方、
図5(c)に示すように、第4試料SP4においては、これらの像領域の間の界面における明暗の差が不明瞭である。このような差が、第4試料SP4において、電気的特性(シート抵抗Rs、移動度μ、及び、キャリア密度CD)が悪化することと関係していると考えられる。
【0043】
図5(a)~
図5(c)に示すように、HAADF-STEM像は、複数の明点Pb1と、暗領域Pd1と、を含む。暗領域Pd1は、複数の明点Pb1の間の領域である。暗領域Pd1の明るさは、複数の明点Pb1の明るさよりも低い。明点Pb1は、III族原子(GaまたはAl)の位置に対応する。暗領域Pd1は、III族原子どうしの間の領域に対応する。
【0044】
第1窒化物領域10に対応する第1像領域r1において、明点Pb1の位置は、Gaの位置に対応する。第2窒化物領域20に対応する第2像領域r2において、明点Pb1の位置は、Alの位置に対応する。第3窒化物領域30に対応する第3像領域r3において、明点Pb1の位置は、AlまたはInの位置に対応する。
【0045】
HAADF-STEM像において、第2像領域r2における明点Pb1(Alに対応する点)は、第1像領域r1における明点Pb1(Gaに対応する点)よりも暗い。これは、Alの原子量がGaの原子量よりも小さいことに起因すると考えられる。第3像領域r3における明点Pb1(AlまたはInに対応する点)の明るさは、In及びAlの組成比に依存する。
【0046】
上記のように、HAADF-STEM像において、暗領域Pd1は、III族原子どうしの間の領域に対応する。結晶性が非常に高く、結晶における原子の位置の揺らぎが小さい場合は、暗領域Pd1の明るさは、低く、III族原子の種類(Al、GaまたはIn)に実質的に依存しないと考えられる。結晶性が低い場合、暗領域Pd1の明るさは、結晶性(原子の位置の揺らぎ)に応じて明るくなる。従って、結晶性が低い場合は、暗領域Pd1の明るさは、結晶性及び原子量の影響を受ける。暗領域Pd1の明るさは、結晶性に対応する指標となり得る。
【0047】
以下、暗領域Pd1の明るさのX軸方向での平均値の、Z軸方向に沿う変化(分布)の例について説明する。
【0048】
図6(a)及び
図6(b)は、窒化物半導体のHAADF-STEM像中の明るさの分布を例示するグラフ図である。
図6(a)は、第2試料SP2に対応する。第2試料SP2において、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RNは33%である。
図6(b)は、第4試料SP4に対応する。第4試料SP4において、比RNは100%である。これらの図
の横軸は、Z軸方向に沿う位置pZである。縦軸は、HAADF-STEM像中の暗領域Pd1における明るさPB(相対値)である。
【0049】
図6(a)に示すように、比RNが33%の第2試料SP2においては、第2窒化物領域20に対応する第2像領域r2において、暗領域Pd1における明るさPBは、急激に変化している。これに対して、
図6(b)に示すように、比RNが100%の第4試料SP4においては、暗領域Pd1における明るさPBの変化は急激ではない。第4試料SP4においては、第2窒化物領域20に対応する第2像領域r2の暗領域Pd1における明るさPBは十分に低くなっていない。
【0050】
例えば、
図6(a)に示すように、第3窒化物領域30に対応する第3像領域r3における暗領域Pd1の第3明るさP3は、第1窒化物領域10に対応する第1像領域r1における暗領域Pd1の第1明るさP1よりも低い。第2窒化物領域20に対応する第2像領域r2における暗領域Pd1の第2明るさP2は、第3明るさP3よりも低い。
【0051】
第3窒化物領域30は、III族元素として、Al及びInを含む。一方、第1窒化物領域20は、III族元素としてGaを含む。一般に、元素の種類が多くなると、結晶性(元素の位置の揺らぎ)が大きくなり易い。実施形態において、第3明るさP3は、第1明るさP1よりも低い。このことは、第1窒化物領域10及び第3窒化物領域30の両方の結晶性が高いことに対応する。
【0052】
実施形態において、原子量が小さい元素を含む第2窒化物領域20における第2明るさP2は、第3明るさP3よりも低い。このことは、第2窒化物領域20の結晶性が十分に高いことに対応する。例えば、他の領域から第2結晶領域20への元素の拡散が抑制されている。第2窒化物領域20において十分に結晶性が高いので、像はぼやけることなく、像の明るさは低い。第1窒化物領域10と第2窒化物領域20との間において、高い結晶性を維持しつつ組成が急峻に変化するときに、
図6(a)に例示するプロファイルが得られる。このような場合に、高い電気的特性が得られる。
【0053】
これに対して、
図6(b)に例示する第4試料SP4においては、第2明るさP2は、第3明るさP3よりも高い。このことは、第2窒化物領域20の結晶性が低いことに対応する。このような場合は、電気的特性が低い。
【0054】
図6(a)に示すように、HAADF-STEM像において、第2像領域r2と第3像領域r3との間の第4像領域r4における暗領域Pd1の第4明るさP4は、第1明るさP1と第3明るさP3との間である。第4像領域r4は、第2窒化物領域20と第3窒化物領域30との間の領域に対応する。高い第4明るさP4は、第2窒化物領域20と第3窒化物領域30との間の領域において、第3窒化物領域30に含まれる元素(例えばIn)が偏析していることに対応すると考えられる。例えば、AlNの第2窒化物領域20からAlInNの第3窒化物領域30への組成の変化が緩やかではなく、Inが偏析する程度に急峻な組成の変化が生じていると考えられる。このような第4像領域r4よりも第2像領域r2において、暗領域Pd1が十分に低いことは、第2窒化物領域20の結晶性が十分に高いことに対応する。
【0055】
図6(a)に示すように、HAADF-STEM像において、第1窒化物領域10と第2窒化物領域20との間の界面位置Pz1における暗領域Pd1は、第5明るさP5を有する。
【0056】
第2明るさP2は、第2像領域r1における暗領域Pd1における明るさPBの最小値である。第2窒化物領域20は、この最小値(第2明るさP2)に対応する最小値位置Pz2を有する。
【0057】
界面位置Pz1と最小値位置Pz2との間の第1方向(Z軸方向)に沿う距離の、第2窒化物領域20の第1方向に沿う厚さt2に対する比を第1比とする。
図6(a)の例では、界面位置Pz1と最小値位置Pz2との間の第1方向(Z軸方向)に沿う距離は、0.5nmである。厚さt2は、1nmである。第1比は、0.5である。
【0058】
第1明るさP1と第2明るさP2との差の、第1明るさP1と第3明るさP3との差に対する比を、第2比とする。
図6(a)の例では、第2比は、1.2である。
【0059】
実施形態において、第1比の第2比に対する第3比は、1以上であることが好ましい。第3比は、第1窒化物領域10と第2窒化物領域20との間の界面位置Pz1を含む領域における明るさPBの変化率に対応する。第3比が高い場合に、第1方向(Z軸方向)の変化に対して急峻に変化する。
図6(a)の例では、第3比は、2.4である。
【0060】
図6(b)の例では、上記の第1比は、約0.6であり、上記の第2比は、0.78である。従って、第3比は、1.3である。
【0061】
図7は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図7の横軸は、第2窒化物領域20の形成におけるキャリアガスにおける窒素の比RN(体積比)である。縦軸は、第3比R3である。
図7に示すように、比RNが高くなると、第3比R3が低下する。上記のように、比RNが0%~50%のときに高い電気的特性が得られる。
図7から第3比R3は、2以上であることが好ましい。窒化物部材10Mにおける急峻な組成の変化が急峻であるときに、高い電気的特性が得られる。実施形態において、第3比R3は2以上であることがさらに好ましい。高い電気的特性が安定して得られる。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態は、半導体装置に係る。
図8は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、実施形態に係る半導体装置120は、第1実施形態に係る窒化物半導体110と、第1電極51と、第2電極52と、第3電極53と、絶縁部材61と、を含む。
【0063】
第1電極51から第2電極52への方向は、第1方向と交差する第2方向に沿う。第2方向は、例えば、X軸方向である。第3電極53の第2方向における位置は、第1電極51の第2方向における位置と、第2電極52の第2方向における位置と、の間にある。
【0064】
第1窒化物領域10は、例えば、第1部分領域10a、第2部分領域10b、第3部分領域10c、第4部分領域10d、及び、第5部分領域10eを含む。第1部分領域10aから第1電極51への方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第2部分領域10bから第2電極52への方向は、第1方向に沿う。第3部分領域10cは、第2方向(例えば、X軸方向)において第1部分領域10aと第2部分領域10bとの間にある。第3部分領域10cから第3電極53への方向は、第1方向に沿う。第4部分領域10dは、第2方向において第1部分領域10aと第3部分領域10cとの間にある。第5部分領域10eは、第2方向において第3部分領域10cと第2部分領域10bとの間にある。
【0065】
第3窒化物領域30は、第6部分領域30f及び第7部分領域30gを含む。第4部分領域10dから第6部分領域30fへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。第5部分領域10eから第7部分領域30gへの方向は、第1方向に沿う。
【0066】
絶縁部材61は、第1絶縁領域61pを含む。第1絶縁領域61pは、第1方向(Z軸方向)において第3部分領域10cと第3電極53との間に設けられる。
【0067】
半導体装置120において、第1電極51と第2電極52との間に流れる電流は、第3電極53の電位により制御できる。第3電極53の電位は、例えば、第1電極51の電位を基準として電位である。第1電極51は、例えば、ソース電極である。第2電極52は、例えば、ドレイン電極である。第3電極53は、例えば、ゲート電極である。半導体装置120は、例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。実施形態において、特性の向上が可能な半導体装置が提供できる。
【0068】
(第3実施形態)
第3実施形態は、窒化物半導体の製造方法に係る。
図9は、第3実施形態に係る窒化物半導体の製造方法を例示するフローチャート図である。
図9に示すように、実施形態に係る窒化物半導体の製造方法は、第2窒化物領域20の形成(ステップS110)、及び、第3窒化物領域30の形成(ステップS120)を含む。
【0069】
ステップS110において、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1窒化物領域10の上に、Alx2Ga1-x2N(0<x2≦1、x1<x2)を含む第2窒化物領域20を形成する。ステップS120において、第2窒化物領域20の上に、Alx3In1-x3N(0<x3<1、x3<x2)またはAly3Ga1-y3N(0<y3<1、x1<y3<x2)を含む第3窒化物領域30を形成する。
【0070】
第2窒化物領域20の形成は、Alを含む第1ガスと、アンモニアを含む第2ガスと、水素及び窒素を含む第3ガスと、を含む処理ガスを用いて第2窒化物領域20を形成することを含む。第3ガスにおける窒素の体積比(比RN)は、20%以上50%以下である。これにより、小さい二乗平均粗さRq、低いシート抵抗Rs、高い移動度μ、及び、高いキャリア密度CDが得られる。体積比(比RN)は、30%以上50%以下でも良い。
【0071】
第1窒化物領域10、第2窒化物領域20及び第3窒化物領域30を含む窒化物部材10MのHAADF-STEM像において、第3窒化物領域30に対応する第3像領域r3の第3明るさP3は、第1窒化物領域10に対応する第1像領域r1の第1明るさP1と、第2窒化物領域20に対応する第2像領域r2の第2明るさP2と、の間である。
【0072】
例えば、第1窒化物領域10は、GaNを含む。第2窒化物領域20は、AlNを含む。第3窒化物領域30は、AlInNを含む。
【0073】
第3窒化物領域30は、第1面30a及び第2面30bを含む。第2面30bは、第2窒化物領域20と対向する。第1窒化物領域10から第2窒化物領域20への第1方向(Z軸方向)において、第2面30bは、第2窒化物領域20と第1面30aとの間にある。第1面30aの二乗平均粗さRqは、例えば、0.6nm以下である。
【0074】
実施形態によれば、特性の向上が可能な窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置、及び、窒化物半導体の製造方法を提供することができる。
【0075】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、窒化物半導体に含まれる、窒化物領域などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0077】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0078】
その他、本発明の実施の形態として上述した窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置、及び、窒化物半導体の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての窒化物半導体、ウェーハ、半導体装置、及び、窒化物半導体の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0079】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと解される。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10…第1窒化物領域、 10M…窒化物部材、 10a~10e…第1~第5部分領域、 14…第4窒化物領域、 15…第5窒化物領域、 18s…基板、 20…第2窒化物領域、 30…第3窒化物領域、 30a、30b…第1、第2面、 30f…第6部分領域、 30g…第7部分領域、 51~53…第1~第3電極、 61…絶縁部材、 61p…第1絶縁領域、 μ…移動度、 110…窒化物半導体、 120…半導体装置、 210…ウェーハ、 CD…キャリア密度、 P1~P5…第1~第5明るさ、 Pb1…明点、 Pd1…暗領域、 Pz1…界面位置、 Pz2…最小値位置、 PB…明るさ、 R3…第3比、 RN…比、 Rq…二乗平均粗さ、 Rs…シート抵抗、 SP1~SP4…第1~第4試料、 pZ…位置、 r1~r4…第1~第4像領域、 t1~t3…厚さ