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  • 特許-樹脂モールド用の成形型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】樹脂モールド用の成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B29C39/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021038198
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138358
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 泰典
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-263106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0057128(US,A1)
【文献】特開2001-030268(JP,A)
【文献】特開平02-127009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00-39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂モールド用の成形型であって、
上面に樹脂を注入する凹部を備える本体部と、
前記本体部の長手方向の両側に配置され、下面が樹脂モールド装置に固定される固定部と、
前記本体部と各前記固定部とをそれぞれ接続するアーム部と、を備え、
各前記アーム部は、一端が前記本体部の長手方向端の上部にそれぞれ接続され、他端が各前記固定部の各下部にそれぞれ接続されるクランク形状の板部材であり、
前記本体部と前記固定部と前記アーム部とは合成樹脂で一体に成形されていること、
を特徴とする成形型。
【請求項2】
請求項1に記載の成形型であって、
前記本体部は、前記凹部から長手方向と直交する幅方向の両端に向かって幅方向に延びる溝を備え、
前記凹部は、幅方向の開口長さが長手方向の開口長さよりも長いこと、
を特徴とする成形型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形型であって、
前記合成樹脂は、フッ素樹脂であること、
を特徴とする成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂モールド用の成形型の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上面が開放された樹脂モールド用の成形型が提案されている。例えば、特許文献1には、図7に示すような樹脂モールド用の成形型100が提案されている。図7に示すように従来技術の成形型100は、上面に所定の形状をモールド成形するための凹部101を中央に有し、周壁に溝102を備えている。
【0003】
成形型100を用いて端子接続部108のモールド成形を行う場合には、図8に示すように、電線105の芯線105aと、電線106の芯線106aとを圧着端子107にて接続した状態で、電線105および電線106を溝102に挿入し、圧着端子107を凹部101の中央に配置する。ついで、凹部101の中に、紫外線硬化樹脂やポリアミド樹脂等のモールド成形用樹脂を、圧着端子107の上面を覆う高さまで注入し、端子接続部のモールド成形を行う。モールド成形用樹脂が硬化した後に、モールド成形用樹脂で覆われた圧着端子107および電線105、電線106は、成形型100から取外す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-263106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モールド成形用樹脂には、硬化時に硬化熱が発生するものがある。硬化熱が発生すると、モールド成形用樹脂が膨張して成形型に密着し、離型性が低下する場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂モールド用の成形型の離型性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形型は、樹脂モールド用の成形型であって、上面に樹脂を注入する凹部を備える本体部と、前記本体部の長手方向の両側に配置され、下面が樹脂モールド装置に固定される固定部と、前記本体部と各前記固定部とをそれぞれ接続するアーム部と、を備え、各前記アーム部は、一端が前記本体部の長手方向端の上部にそれぞれ接続され、他端が各前記固定部の各下部にそれぞれ接続されるクランク形状の板部材であり、前記本体部と前記固定部と前記アーム部とは合成樹脂で一体に成形されていること、を特徴とする。
【0008】
このように、樹脂を注入する凹部を備える本体部と、固定部との間をクランク形状の板部材であるアーム部で接続するので、硬化熱が発生した際に、アーム部の変形により熱膨張を吸収して、凹部の長手方向の開口長さが長くなる。これにより、樹脂モールド製品を成形型から容易に取り外すことができ、離型性を向上させることができる。
【0009】
本発明の成形型において、前記本体部は、前記凹部から長手方向と直交する幅方向の両端に向かって幅方向に延びる溝を備え、前記凹部は、幅方向の開口長さが長手方向の開口長さよりも長くてもよい。
【0010】
これにより、溝と凹部とにより本体部の上面に幅方向に延びる強度低下部が形成され、樹脂モールド製品を取り外す時に本体部の上面が上に凸に変形し、凹部の長手方向の開口長さを長くすることができ、離型性をより向上させることができる。
【0011】
本発明の成形型において、前記合成樹脂は、フッ素樹脂でもよい。
【0012】
フッ素樹脂で成形することにより、より離型性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、樹脂モールド用の成形型の離型性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の樹脂モールド用の成形型の斜視図である。
図2図1に示す成形型の凹部に樹脂モールドする端子接続部を載置した状態を示す斜視図である。
図3図1に示す成形型の凹部に接続端子部を載置した状態で紫外線硬化樹脂を凹部に注入し、紫外線を照射した状態を示す斜視図である。
図4図3に示す状態における成形型の変形を示す側面図である。
図5】紫外線の照射が終了した際の樹脂モールド製品を成形型から取り外す状態を示す斜視図である。
図6図5に示す状態における成形型の変形を示す側面図である。
図7】従来技術の樹脂モールド用の成形型の斜視図である。
図8図7に示す成形型の凹部に樹脂モールドする端子接続部を載置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態の樹脂モールド用の成形型50について説明する。図1に示すように、実施形態の成形型50は、本体部10と、アーム部20と、固定部30とで構成される。尚、以下の説明では、2つの固定部30の並ぶ方向を長手方向、長手方向と直交する方向を幅方向、樹脂を注入する凹部1が設けられている方を上方、上方と反対方向を下方として説明する。
【0016】
図1に示すように、本体部10は、成形型50の長手方向の中央の直方体形状の部分である。本体部10の上面12には、樹脂モールドする部品が載置され、モールド成形用樹脂が注入される凹部1が設けられている。また、本体部10の上面12には、凹部1から幅方向端13に向かって幅方向に延びるU字型の溝2が設けられている。凹部1は、幅方向の開口長さが長手方向の開口長さよりも長く、凹部1と2つの溝2とは、本体部10の上面12に幅方向に延びる強度低下部を形成する。
【0017】
固定部30は、本体部10の長手方向の両側に配置された直方体形状の部分である。固定部30の中央には固定用のボルト孔4が設けられており、固定部30の下面31はボルトで樹脂モールド装置(図示せず)の上に固定される。
【0018】
アーム部20は、本体部10の長手方向端11の上部と固定部30の下部とを接続するクランク形状の板部材である。アーム部20は、本体部の長手方向端11の上部に接続されて長手方向に固定部30に向かって延びる上板21と、固定部30の下部に接続されて本体部10に向かって長手方向に延びる下板23と、上板21と下板23とを接続するように上下方向に延びる縦板22で構成される。上板21と縦板22と下板23とは、側面から見ると、クランク形状を構成するように接続されている。
【0019】
本体部10と、アーム部20と、固定部30とはフッ素樹脂で一体に成形されている。
【0020】
次に図2から6を参照しながら実施形態の成形型50を用いて端子接続部8を樹脂モールドして樹脂モールド製品41を製造する工程と、成形型50の変形について説明する。
【0021】
最初に、図2に示すように、電線5の芯線5aと、電線6の芯線6aとを圧着端子7で接続した端子接続部8の、電線5および電線6を溝2に挿入し、圧着端子7を凹部1の中央に配置する。
【0022】
次に、図3に示すように、凹部1の中に、紫外線硬化樹脂40を圧着端子7の上面を覆う高さまで注入する。そして、成形型50の底面または上面12の側から紫外線を数十秒照射する。これにより、紫外線硬化樹脂40が硬化する。硬化中に紫外線硬化樹脂は硬化熱を発生し温度が上昇する。これにより、図3中の一点鎖線81で囲まれる本体部10の凹部1の周縁部の温度が上昇し、凹部1の周縁部が図3中の矢印91の様に長手方向に熱膨張する。
【0023】
凹部1の周縁部が長手方向に熱膨張すると、凹部1は長手方向の開口長さが長くなるように熱膨張する。これにより、図4に示すように、アーム部20の縦板22は上側が固定部30に向かって倒れるように変形すると共にアーム部20の上板21は本体部10が上方向に少し持ち上がるように上に凸に曲がり変形する。このようにアーム部20の曲がり変形によって硬化中の紫外線硬化樹脂の熱膨張を吸収するので、凹部1の長手方向の開口長さが長くなる。これにより、図5に示すように、硬化した樹脂モールド製品41を成形型50から取り外す際の離型性を向上することができる。また、樹脂モールド製品41の取外し後、成形型50の温度は外気温により冷却され、形状は元に戻るため、何度でも同じ効果を得ることが可能である。
【0024】
また、樹脂モールド製品41が凹部1の表面に微小に貼り付いた場合に、図5に示すように樹脂モールド製品41の取外しの際に、樹脂モールド製品41を図5中の矢印94の様に上方向に引き上げると、本体部10の中央が上方向に引っ張られ、矢印95に示すようにアーム部20の上板21が上に凸になるように変形する。また、本体部10の上面12に設けられた凹部1と2つの溝2とは、本体部10の上面12に幅方向に延びる強度低下部を形成するので、本体部10は、凹部1と溝2のある中央部が上に凸に折れ曲がるように変形する。これにより、矢印96に示すように、凹部1の長手方向の開口長さが長くなり、モールド成形後の樹脂モールド製品41の取り外しが容易となり、離型性が向上する。
【符号の説明】
【0025】
1、101 凹部、2、102 溝、4 ボルト孔、5、6、105、106 電線、5a、6a、105a、106a 芯線、7、107 圧着端子、8、108 端子接続部、10 本体部、11 長手方向端、12 上面、13 幅方向端、20 アーム部、21 上板、22 縦板、23 下板、30 固定部、31 下面、40 紫外線硬化樹脂、41 樹脂モールド製品、50、100 成形型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8