(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】害獣捕獲具におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A01M23/34
(21)【出願番号】P 2021049312
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(73)【特許権者】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3176032(JP,U)
【文献】登録実用新案第3127832(JP,U)
【文献】特開2020-89294(JP,A)
【文献】特開2020-195289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏板の下方に配置した略L字状の連動トリガーと、
連動トリガーの略L字基部を筒基盤に枢支した枢支部と、
連動トリガーの後端縁部の凹部に連動トリガーの回動を契機として離脱可能となるように係止した半円弧状のワイヤガイドとよりなることを特徴とした害獣捕獲具におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、害獣捕獲具におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構に関する。
【0002】
従来、害獣捕獲具は、踏板を害獣が踏むと踏板に係合したループ状の捕獲ワイヤが踏板から離脱することで捕獲ワイヤが縮径して害獣の脚部を緊締し、害獣を捕獲するように構成されている。すなわち、害獣捕獲具の基本は、踏板とループ形状の捕獲ワイヤを踏板により隠蔽したトラップ構造と捕獲ワイヤの縮径作動を行うワイヤ縮径機構とにより構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる従来の害獣捕獲具は、害獣が踏板を踏む動作を契機として捕獲ワイヤがスプリングを介して縮径動作するまでの時間が長くなる。その理由は、踏板の下降動作から捕獲ワイヤが縮径作動するまでの連動機構が複雑で、かつ、その間に介在した連動仲介機構の部品点数が多いことに由来する。
【0005】
更には、害獣が踏む踏板のガイドとなる筒基盤は、踏板の外周縁部を囲繞した上下解放の筒形状としており、踏板に載った害獣の脚体重量により、踏板は、筒基盤内を沈降してこの沈降作動に伴って、捕獲ワイヤのループ部が害獣の脚体、特にくるぶし周辺を捕縛するように構成されている。
【0006】
このような害獣捕獲具では、害獣脚体が踏板に乗った際の荷重によって捕獲ワイヤの跳ね上がりを規制している跳ね上がり防止ピンを折損させ、捕獲ワイヤの跳ね上がり動作とループ部の縮径動作とを生起させている。したがって、罠を起動させるには跳ね上がり防止ピンを折損させる必要があるが、これには害獣捕獲具を踏み込んで更にある程度の押圧力をかける必要がある。したがって、警戒心の強い四足歩行動物であれば踏み込んだ瞬間に脚を退いて罠を回避する虞があった。また、跳ね上がり防止ピンが十分に折損しないために害獣捕獲具が作動しない虞があった。
【0007】
この発明では、罠の設置を簡易な操作で可能とする構造にも関わらず最短距離と最短時間で害獣脚体を囲繞して捕獲ワイヤの縮径作動を行い、完全な捕縛が行えるように構成した害獣捕獲具におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、踏板の下方に配置した略L字状の連動トリガーと、連動トリガーの略L字基部を筒基盤に枢支した枢支部と、連動トリガーの後端縁部の凹部に連動トリガーの回動を契機として離脱可能となるように係止した半円弧状のワイヤガイドとよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、踏板の下方に配置した略L字状の連動トリガーと、連動トリガーの略L字基部を筒基盤に枢支した枢支部と、連動トリガーの後端縁部の凹部に連動トリガーの回動を契機として離脱可能となるように係止した半円弧状のワイヤガイドとより構成したため、罠の設置を容易に行えると共に最短距離と最短時間とで作動する害獣捕獲具におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構のA―A’線断面図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構の構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の要旨は、踏板の下方に配置した略L字状の連動トリガーと、連動トリガーの略L字基部を筒基盤に枢支した枢支部と、連動トリガーの後端縁部の凹部に連動トリガーの回動を契機として離脱可能となるように係止した半円弧状のワイヤガイドとよりなることを特徴とすることである。
【0012】
この発明の実施形態を図面に基づき詳説する。なお、
図1は本実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構Aを示す平面図であり、
図2は本実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構Aを示す断面図(
図1のA―A’線断面図)であり、
図3は本実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構Aを構成する連動トリガー40の動きとその近傍を拡大視的に説明する図である。
【0013】
害獣捕獲具で害獣を捕獲する際には、害獣の踏み込み動作によって踏板70が降下しワイヤガイド20の跳ね上げが惹起される。これにより、ワイヤガイド20に捕獲ワイヤ50を囲繞して形成したループ部51は、ワイヤガイド20の跳ね上げ動作に追従しながらワイヤガイド20から離脱する。次いで、ワイヤガイド20から離脱したループ部51は、ワイヤ縮径付勢機構の付勢力によって押圧されて縮径する。そして、踏板70上にある害獣の脚体をループ部51の縮径によって締め上げて捕縛が完了する。
【0014】
このように、本発明にかかるワイヤガイドの跳ね上げ機構Aは、害獣による踏板70の踏み込みを感知してワイヤガイド20の跳ね上げを惹起するための機構である。
【0015】
ワイヤガイドの跳ね上げ機構Aの構成について説明する。本実施形態におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構Aは、
図1及び
図2に示すように、ワイヤガイドの跳ね上げ機構Aの外形をなす骨組みとなる筒基盤10と、筒基盤10の内壁に枢着すると共に害獣を捕縛する為のワイヤのループ部51を囲繞したワイヤガイド20と、ワイヤガイド20の頂部21と略対面する筒基盤10の内壁位置に配設された枢支ブラケット30と、枢支ブラケット30に枢支し、害獣の踏み込み動作を受けてワイヤガイド20の起立動作を惹起する連動トリガー40と、を備えている。
【0016】
筒基盤10は、平面視において略長方形状であり、周縁を立ち上げて側壁11を形成することで筒状に形成している。側壁11の高さは、少なくとも害獣の脚体の蹄先端(蹄尖部)から蹄基端(蹄冠部)までの長さ以上又は害獣の足底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さ以上となるように構成されている。例えば、イノシシのような偶蹄目を捕獲対象とするのであれば、側壁11の高さは、害獣の脚体の蹄先端(蹄尖部)から蹄基端(蹄冠部)までの長さ以上となるように構成する。アライグマのような蹄を有しない動物を捕獲対象とするのであれば、側壁11の高さは、害獣の足底面からくるぶし部までの高さ以上となるように構成する。
【0017】
また、側壁11は、各隅部近傍の長手方向の外周面12から外方に平面視略円弧状の固定用フランジ13を突設している(本実施形態では4箇所)。固定用フランジ13は、中心部にアンカー用孔13aを穿設している。筒基盤10は、アンカー用孔13aを介してアンカーボルト13bにより地面に固定されている。
【0018】
筒基盤10の左右側壁11(左側壁11L、右側壁11R)の内側面14には、
図1および
図2に示すように、先端部が側面視略半円弧状の枢支ブラケット30を突設している。枢支ブラケット30は左右2個組み合わせて構成しており、その基部を平面視略L字状の取付け部としており、その両方のL字状の基部を側壁11内面に取付けている。なお、略L字状の2個の枢支ブラケット30は、その先端を対面させ、その間に連動トリガー40を枢支軸32を介して枢支挟持している。このように構成することにより、連動トリガー40は枢支軸32を支点にして傾動可能に構成している。
【0019】
連動トリガー40は、略T字の横向きに形成し、T字の基部の交点上部は、踏板70の連動に従い従動するワイヤガイド20の係合部を構成しており、T字の基部の交点下部は枢支ブラケット30先端部に枢支している。すなわち、連動トリガー40は、連動トリガー本体41の先端部に踏板70に連動して昇降する踏板支持ロッド42を載置しており、踏板70の降下に伴って踏板支持ロッド42が連動トリガー本体41を押圧することにより、連動トリガー40が枢支軸32を基点に先端傾倒する。
【0020】
踏板支持ロッド42は、踏板70下方取付部にあって
図1に示すように連動トリガー本体41と交差し、連動トリガー本体41の長手部40aの先端部上方に位置している。これにより、踏板支持ロッド42が力点として作用し、枢支軸32が支点として作用するため、踏板70への押圧力が軽度であっても連動して連動トリガー40を枢支軸32を中心に下方に傾動する。
【0021】
このように害獣により踏板70の押圧がなされると踏板支持ロッド42も踏板70と共に押圧降下されて連動トリガー40のトリガー本体41が枢軸32を中心に傾動し、横向きT字のトリガー本体41基部のT字交差上部が跳ね上がり、ワイヤガイド20との係合を解きワイヤガイド20を付勢機構により跳ね上げて捕獲ワイヤ50を絞り方向に作動させる。
【0022】
すなわち、害獣の脚の踏板70押圧作動を起点として連動トリガー40のトリガー本体41が傾動し、それに伴い連動トリガー40がワイヤガイド20との係合を解除してワイヤガイド20を跳ね上げ、ワイヤガイド20に装着した捕獲ワイヤ50で害獣の脚体の捕縛を行う。
【0023】
また、踏板支持ロッド42は、踏板70と連動トリガー40との間に介在して一定のスぺース形成の役割も担っている。このように隙間を形成することによって、踏板70の降下が連動トリガー40の傾倒動作を妨害しないため、左右のワイヤガイド20の起立を円滑に生起させ捕縛動作を確実に惹起させる。さらに
図1に示すように、連動トリガー40と対面する踏板70の縁部を略U字状に切欠けば、連動トリガー40が踏板70の降下の妨げとならないため左右のワイヤガイド20の起立を確実に生起させることが可能となる。
【0024】
連動トリガー本体41の略L字の短手部41bには、
図3に示すように、ワイヤガイド20を緩く嵌め込むことによって跳ね上がりを規制する凹部43を形成している。
【0025】
ワイヤガイド20は、
図1および
図2に示すように、半円弧状に形成された2つの部材(左ワイヤガイド20L、右ワイヤガイド20R)より構成されている。左ワイヤガイド20Lおよび右ワイヤガイド20Rの基端22側は、隣接するように筒基盤10の前後の側壁11(前側壁11F、後側壁11B)にワイヤガイド回転軸25を介して枢着されている。
【0026】
また、ワイヤガイド20は、半円弧外周面23の幅員中央部に円弧状に沿ってワイヤガイド溝24を形成している。すなわち、左右のワイヤガイド20L、20Rは、略水平状に傾倒(以下、傾倒状態ともいう。)すればそれぞれのワイヤガイド溝24が連なって略円状の溝を形成することとなる。この略円状のワイヤガイド溝24に捕獲ワイヤ50のループ部51を囲繞すれば、ループ部51の縮径を規制した状態で捕獲ワイヤ50を保持することができる。
【0027】
すなわち、ワイヤガイド20は、ループ保持状態においては連動トリガー40の凹部43に緩く嵌りこんでいるが、連動トリガー40の傾動を契機として凹部43から抜け出すと共に起立(以下、起立状態ともいう。)して、ループ部51の縮径を生起させることができる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る跳ね上げ機構Aには、
図1および
図2に示すように、2個の付勢手段を左右のワイヤガイド20間に介設することにより、迅速に踏板の作動に連動してワイヤガイド20が捕獲ワイヤ50を害獣の脚体に巻き付けることができるように構成することができる。
【0029】
具体的には、2個の付勢手段は次のように構成されている。すなわち、コイルバネ60と巻きバネ61との付勢手段を左右のワイヤガイド20間に介設することにより構成している。コイルバネ60は、両端部を左右のワイヤガイド20の基部の枢支部の近傍に係止することにより踏板70の作動に対応してコイルバネ60が左右のワイヤガイド20を閉じる方向に付勢するように構成している。
【0030】
他方の巻きバネ61は、中央を巻きバネ本体61aとし、左右に伸延したバネ支持部61bを左右それぞれのワイヤガイド20の基端部近傍の該周縁部に係止しており、巻きバネ本体61aの付勢力で踏板70の降下に連動して、左右のワイヤガイド20を立ち上げ方向に付勢する。
【0031】
このように、左右のワイヤガイド20は踏板70の降下を契機として2個の付勢手段、すなわちコイルバネ60と巻きバネ61とが共同して迅速にかつ力強く左右のワイヤガイド20を跳ね上げることによって、ワイヤガイド20の傾倒状態から起立状態への移行を素早く行うことにより巻きつけた捕獲ワイヤ50をもって害獣の脚体を捕縛することができるように構成してもよい。
【0032】
ワイヤ縮径付勢機構は、連動トリガー40の回動を契機として起立する左右のワイヤガイド20の動きに伴ってループ部51を縮径させることができ、また縮径したループ部51の拡径を防ぐためのワイヤの流通規制手段を備えていれば自由に選択することができる。
【0033】
ワイヤ縮径付勢機構の構成を詳しく説明する。ワイヤ縮径付勢機構は、ループ部51を縮径させる付勢力を常時生起させている部材である。ループ部51を縮径させる付勢力は、例えばコイルバネを圧縮して配置し、その巻きバネの弾性方向への伸長よって生起されている。
【0034】
このような構成のワイヤ縮径付勢機構は、ワイヤガイド20のループ保持状態においては、ループ部51が左右のワイヤガイド20に囲繞されているために、ループ部51を縮径することができない不動状態に固定されている。
【0035】
不動状態にあるループ部51は、害獣の踏板70の踏み込みによって生起されるループ部51のワイヤガイド20からの離脱によって不動状態が解除される。すなわち、害獣捕獲具は、ワイヤガイド20の傾倒状態から起立状態への移行に伴って、ワイヤ縮径付勢機構によってループ部51を縮径させるように構成されている。ワイヤ流通規制機構は、ワイヤの流通規制手段によってループ部51の拡径を防ぐため、捕縛した害獣を取り逃がすことがない。
【0036】
以上述べたように、本実施形態に係る害獣捕獲具におけるワイヤガイドの跳ね上げ機構Aであれば、最短距離と最短時間で作動する害獣捕獲具を提供することができる。すなわち、ワイヤガイドの跳ね上げ機構Aを備えた害獣捕獲具は、害獣の踏み込みによって降下する踏板70が連動トリガー40を傾動させ、連動トリガー40の凹部43に係合させた左右のワイヤガイド20が起立し、ワイヤガイド20の起立に伴って離脱したループ部51が縮径して害獣を捕縛可能としているため、最短距離と最短時間で作動して害獣を確実に捕縛することができる。
【符号の説明】
【0037】
A ワイヤガイドの跳ね上げ機構
10 筒基盤
11 側壁
11S 短手方向の側壁
11L 長手方向の側壁
12 外周面
13 固定用フランジ
13a アンカー用孔
13b アンカーボルト
14 内周面
20 ワイヤガイド
21 頂部
22 基端
23 半円弧外周面
24 ワイヤガイド溝
25 ワイヤガイド回転軸
30 枢支ブラケット
31 先端ブラケット本体
32 枢支軸
40 連動トリガー
40a 略L字基部
41 連動トリガー本体
41a 短手部
42 踏板支持ロッド
43 凹部
50 捕獲ワイヤ
51 ループ部
60 コイルバネ
61 巻きバネ
61a 巻きバネ本体
61b バネ支持部
70 踏板